JP2004027017A - 導電性樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】導電性樹脂組成物のマトリクスをなす熱可塑性樹脂に、所定のアスペクト比を有する導電性フィブラス微粒子と、金属被覆の施された炭素繊維とを混合・混練させ、これにより該導電性フィブラス微粒子がそのアスペクト比により、該金属被覆の施された炭素繊維との接触および該導電性フィブラス微粒子相互間の接触が充分密になることで、導電率が向上された導電性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】電気的に不導体である熱可塑性樹脂12と、この樹脂12に混合される導電性フィブラス微粒子14と、同じく該樹脂12に混合される金属被覆の施された炭素繊維16とからなり、該導電性フィブラス微粒子14のアスペクト比は、該炭素繊維16との接触および該導電性フィブラス微粒子14相互間の接触が充分密になって、導電率を向上させ得る数値に設定されている。
【選択図】 図1
【解決手段】電気的に不導体である熱可塑性樹脂12と、この樹脂12に混合される導電性フィブラス微粒子14と、同じく該樹脂12に混合される金属被覆の施された炭素繊維16とからなり、該導電性フィブラス微粒子14のアスペクト比は、該炭素繊維16との接触および該導電性フィブラス微粒子14相互間の接触が充分密になって、導電率を向上させ得る数値に設定されている。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、導電性樹脂組成物に関し、更に詳細には、不導電体内で優れた導電特性を発現する繊維状物と、高い分散性を有すると共に、所定のアスペクト比を有する微小粒子とを有することで、良好な電磁シールド性および製品成形性を併有し得る導電性樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
コンピュータやワードプロセッサ、その他マイクロコンピュータを制御用素子として内蔵したシーケンサ等の各種電子機器は、外部から機器内に侵入する電磁波等の外乱を受けて誤作動する可能性のあることが知られている。また、これらの電子機器は、稼働時に機器成形体外部へ電磁波を輻射して有害なノイズ源となることも多い。この種の電磁波による干渉(EMI)や、より周波数の低い電波による干渉(RFI)から前記電子機器を保護したり、該機器から外部へ電磁波が漏出するのを防止する目的で、所謂電磁波シールド(遮蔽)が機器成形体に一般に施される。
【0003】
前記シールドを確保する手段として、軽量で高い意匠性を発揮し得るプラスチック等の樹脂から形成される電子機器成形体の全面または内面に、乾式メッキや湿式メッキにより金属メッキ層を電析させたり、または導電性フィブラスを含有する導電性塗料を塗布した導電層を形成させるといった、▲1▼表面処理による方法が知られている。また、前記樹脂原料中に、▲2▼金属粉またはカーボンブラックといった粒状物を混合する、或いは▲3▼金属繊維または炭素繊維といった繊維状物を混合することにより、導電性を付与する方法も知られている。これら各方法の実施により、導電性が付与されて前記電磁波シールドが確保され、外部からの電磁波を遮蔽して機器内への侵入を防止し、また内部からの電磁波の漏出を有効に防止することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前述の各方法の場合、以下の如き欠点が指摘される。すなわち、
▲1▼の表面処理法による場合、予め成形された樹脂成形品表面に、導電層を形成する導電化工程が別途必要である。一般に良好な導電性を得るためには、前記導電層を所定の厚さ以上にして、かつ均一とする必要があるが、殊に複雑な形状を有する成形品については、該導電層の形成が困難であり、また形成後に該成形体から剥離してしまう、といった問題が指摘される。
【0005】
▲2▼の導電性を有する粒状物を、前記プラスチック成形体原料に混合する方法の場合、該原料に対して、導電性を発現させる物質自体を混合するため、▲1▼の方法の如く、別途特殊な後加工を必要とせず、また導電性を発現する物質の剥離についての問題は生じない。しかしながら、導電性を有する前記粒状物がマトリクスとなる樹脂原料中に、分散して、所謂浮島構造となるように混合されてしまうため、得られる成形体全体として見た場合には、充分な導電性を発現し得ない。この問題は、前記粒状物が、前記マトリクス中で相互に接触し合う状態とすれば解決できるが、実際上、そのような状態とするためには、該粒状物の混合が多量に必要となり、粘性等の上昇による成形性の悪化および得られた成形体の各種機械的特性が著しく低下してしまう欠点がある。
【0006】
▲3▼の導電性を有する繊維状物を、前記プラスチック成形体原料に混合する方法の場合、該原料に導電性を発現させる物質自体を混合するため、▲2▼の方法と同じく、後加工および剥離に係る問題の心配はない。更に、その繊維という形状故に、接触点の不足により充分な導電性が得られない、または得られた成形体の各種機械的特性が著しく低下してしまう、といった問題を回避し得る。しかし、一般に繊維状物は、その比重が高いため得られる成形体が重たくなってしまう問題が指摘される。これは、好適な使用用途であるコンピュータ筐体用途等の軽量化・小型化が著しく進行している昨今の状況では、大きな欠点となってしまう。また、得られた成形体の表面から、前記繊維状物が突出してしまう等により、その外観が悪化してしまう問題もある。
【0007】
更に、前記プラスチック原料を所要形状に成形する際に実施される溶融混練等において、繊維状物が破断してしまい、前述の繊維状であるが故の特徴を充分に生かせない。この問題だけについては、前記繊維状物の混合量を増加させれば解消可能であるが、該混合量の増加によって、前述の▲2▼の方法と同様に、成形性の悪化等の問題が生じてしまう。この他、前述の▲2▼に係る粒状物および▲3▼に係る繊維状物を併用する方法も考えられるが、必ずしも充分な電磁波シールド特性が得られるわけではない。
【0008】
【発明の目的】
この発明は、導電性樹脂成形体を製造する、従来の導電性樹脂組成物が有する前記問題に鑑み、これを好適に解決するべく提案されたものであって、導電性樹脂組成物のマトリクスをなす熱可塑性樹脂に、所定のアスペクト比を有する導電性フィブラス微粒子と、金属被覆の施された炭素繊維とを混合・混練させ、これにより該導電性フィブラス微粒子がそのアスペクト比により、該金属被覆の施された炭素繊維との接触および該導電性フィブラス微粒子相互間の接触が充分密になることで、導電率が向上された導電性樹脂組成物およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため本発明の導電性樹脂組成物は、電気的に不導体である熱可塑性樹脂と、
前記熱可塑性樹脂に混合される導電性フィブラス微粒子と、
同じく前記熱可塑性樹脂に混合される金属被覆の施された炭素繊維とからなり、
前記導電性フィブラス微粒子のアスペクト比は、前記金属被覆の施された炭素繊維との接触および該導電性フィブラス微粒子相互間の接触が充分密になって、導電率を向上させ得る数値に設定されていることを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
次に、本発明に係る導電性樹脂組成物につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。本願の発明者は、コンピュータ筐体等を構成する樹脂成形体の好適な原料である熱可塑性樹脂に対して、所定のアスペクト比を有する導電性フィブラス微粒子と、金属被覆(コート)が施された炭素繊維とを、所要量混合することで、該2つの導電性物質が夫々の効果を相乗的に発現させると共に、良好な成形性を有し、かつ成形体とされた際に高い電磁波シールド特性を達成し得る導電性樹脂組成物が得られることを知見したものである。なお本発明において、「フィブラス」とは、所謂短繊維状の物質を指すものである。
【0011】
また、本発明に係る導電性樹脂組成物を製造するに際して、前記各種原料を混合する剪断力(所定機器における混合(混練)トルクの如き駆動力)を所定値以下にすることで、好適な導電性の発現が阻害されないことも併せて知見した。
【0012】
本発明の好適な実施例に係る導電性樹脂組成物は、基本的に少なくとも1種類の熱可塑性樹脂12と、該熱可塑性樹脂100重量部に対して、1〜10重量部混合される導電性フィブラス微粒子14と、同じく樹脂100重量部に対して、15〜40重量部混合される金属被覆の施された炭素繊維16とからなる。
【0013】
前記導電性樹脂組成物10または該組成物10から得られる所要形状の成形体の内部は、図1に示す如く、前記熱可塑性樹脂12をマトリクスとして、その中に微小な前記導電性フィブラス微粒子14が均質に分散されると共に、夫々が互いに離間している該フィブラス微粒子14を接続させるように前記金属被覆の施された炭素繊維16が混合された状態となっている。このような状態となることで、前記導電性フィブラス微粒子14が均質に分散される成形体において、微小な部分毎で高い導電性を発現させている該微粒子14が、炭素繊維16を介して接続されることで、該成形体全体としても、高い導電性を発現させるようになっている。
【0014】
なお、本発明における導電性の評価として、基本的に電磁波シールド特性、すなわち電磁波を遮蔽する度合いを採用している。本発明に係る導電性樹脂組成物が、最終的な製品である所要形状の成形体等に加工された場合に、最も要求される物性値が前記電磁波シールド特性だからである。そして本発明においては、前記電磁波シールド特性として、最も公知の測定方法である、KEC法に準拠した測定により、少なくとも一般的な電子機器等に使用し得る平均水準である50db(デシベル)の達成を最低水準として設定している。前記電磁波シールド特性は、測定に供された成形体の導電性に伴って変化する値であるので、該導電性を向上させれば該電磁波シールド特性も向上することは周知である。
【0015】
前記熱可塑性樹脂12としては、混合される前記導電性フィブラス微粒子14および金属被覆の施された炭素繊維16が、変性しない程度の加熱により溶融し、混練可能な粘稠体となる物質が好適である。一般に使用される熱可塑性樹脂であれば、その熱溶融温度に問題はなく、例えばABS樹脂、PC樹脂、PPO樹脂、PP樹脂、PS樹脂、PEI樹脂、PPS樹脂、PET樹脂、PBT樹脂、PES樹脂、PA樹脂またはPC/ABS樹脂のポリマーアロイ等が使用される。従って、実際の前記熱可塑性樹脂12の選択基準は、基本的に混合される前記導電性フィブラス微粒子14および金属被覆の施された炭素繊維16に依存せず、得るべき成形体の使用用途に応じて決定されている。
【0016】
前記導電性フィブラス微粒子14は、前記熱可塑性樹脂12中に均質に分散されることで、得られる導電性樹脂組成物10や該組成物10から得られる成形体の微小な部分毎に高い導電性を発現させるものである。そして、前述の均質な分散を効果的になし得るために、その粒径(所定のアスペクト比を有するフィブラスであるので、ここでは長手方向の寸法を指す)が、4nm〜50μm以下、好ましくは10μm以下に設定される。この粒径が大きいと、均質な分散がなされなくなってしまう。なお下限値の4nmは、以下に記す前記導電性フィブラス微粒子14の短手方向の長さ下限の0.4nmに最小アスペクト比の10を乗じた数値である。
【0017】
また前記導電性フィブラス微粒子14は、そのアスペクト比が少なくとも10以上、好適には100以上に設定される。前記微粒子14の長手方向の長さは、前述の如く、50μm、好ましくは10μmを上限としているので、短手方向の長さは500nm、好ましくは100nm以下に設定されることになり、またその下限は0.4nm程度となっている。この大きなアスペクト比により、前記熱可塑性樹脂12中での良好な分散性と、成形体とされた際の高い導電性との両立が可能となっている。これは、前記熱可塑性樹脂12に混合されている前記金属被覆の施された炭素繊維16に対して、より多くの接触点を提供し、得られる成形体が全体として高い導電性が発現されることに起因する。
【0018】
前記導電性フィブラス微粒子14は、前記熱可塑性樹脂12全体に均質に分散することで、基本的には不導電体である該樹脂12内に浮島構造の如く存在する。このために、得られる成形体全体としての導電性に対しては、直接関係しない場合が多く、これを回避するために前記炭素繊維16が混合されている。しかし、前記導電性フィブラス微粒子14として、高いアスペクト比を有する物質を採用することで、該導電性フィブラス微粒子14相互間の接触と、該導電性フィブラス微粒子14および前記炭素繊維16の接触とが、充分密になって導電性に関する大きな相乗効果が期待できる。反対に、前記アスペクト比が所定の数値に達していないと、前記相乗効果が余り期待できなくなってしまう。この他、前記アスペクト比には、2000という上限も設定されている。この数値を越えると、前記導電性フィブラス微粒子14の混合による増粘作用が大きくなり、前記成形体等への加工が困難となったり、所定の混合トルクによる分散の度合いが悪化して、導電性が低下してしまう。
【0019】
その他、前記導電性フィブラス微粒子14は、その密度については小さい方が、または熱可塑性樹脂12等に混合された場合に発現する増粘作用が少ない方が、後述([0030])する剪断力と、成形時流動性とを増大させないため好適である。一般に、前述した各条件を達成する物質として、カーボンナノチューブ等が挙げられる。この他、導電性カーボンブラック等も導電率の向上はなし得るが、前記アスペクト比や、増粘作用の点で本発明に係る導電性フィブラス微粒子14としての採用は困難である。
【0020】
前記金属被覆の施された炭素繊維16は、前述の如く、前記熱可塑性樹脂12中に均質に分散され、高い導電性を発現させる導電性フィブラス微粒子14同士を良好に接続して、得られる成形体の全体としての導電性を確保するものである。すなわち、得られる導電性繊維組成物10または該組成物10から得られる成形体において、電気の流路、所謂電路としての役割を果たす物質である。また、良好な導電性の確保と同時に、前記成形体に対して、所要の機械的な強度を与える効果も奏する。
【0021】
前記金属被覆の施された炭素繊維16は、前記導電性フィブラス微粒子14同士を接続して、電路を形成するものであるが、実際上は、効率よく該導電性フィブラス微粒子14と接触しているわけではない。そこで、繊維状の炭素を金属被覆して導電性を向上させることで、前記導電性フィブラス微粒子14との接触の度合いが小さい場合であっても、充分な導電性を確保し得るようにしている。従って、前記炭素繊維16に換えて、金属だけからなる繊維を使用した場合には、前述の電気流路の確保が良好となる一方で、その形状保持性が高いものとなっている。このため、前記成形体を得る際の成形性が悪化したり、前記熱可塑性樹脂12内に剛直に略直線的に存在してしまい、結果として、前記導電性フィブラス微粒子14との接触性が悪化してしまうため、好適には使用し得ない。
【0022】
また前記金属被覆の施された炭素繊維16は、その繊維形状、すなわち長いという物理的形状により、前記導電性フィブラス微粒子14同士の接触を効率的になし得ている。この他、前記金属被覆による、炭素繊維16自体の機械的強度の向上も、高い導電性の発現の要因の1つとなっている。これにより、後で説明([0030])する製造時において掛けられる剪断力による破断を回避する効果も期待できる。
【0023】
この他、前記金属被覆の施された炭素繊維16の寸法については、以下のように設定される。前記炭素繊維16における長さ、すなわち繊維長は、短過ぎると、前述の電路としての役割を良好に果たし得なくなり、反対に長過ぎると、混合時の混合トルクにより容易に破断されてしまうため、1000〜10000μm程度のものが好適である。また繊維径については、5〜30μm程度とすることで、良好な導電性を発現させ得る。これは、前述の繊維径であれば、前記炭素繊維16を前記熱可塑性樹脂12中で良好に分散させることが可能であり、細過ぎると機械的強度が低下し、太過ぎると分散性が低下するので注意が必要である。
【0024】
前記炭素繊維16における被覆用金属としては、安価で耐久性に優れると共に、高い導電性を備えるニッケルが好適である。前記ニッケルは、通常、公知の電解メッキ法等で炭素繊維16に被覆されるが、既に金属被覆の施された炭素繊維を使用するようにしてもよい。また、前記被覆に供される金属としては、前記ニッケルの他、銅、コバルトまたは銀等の公知の良好な導電性を有する金属が使用される。
【0025】
【製造方法】
次に本発明に係る前記導電性樹脂組成物の好適な理解に資するため、該導電性樹脂組成物10を製造する製造方法を、以下説明する。なお、前記導電性樹脂組成物10を製造する方法は、所要形状の成形体を製造する方法における中間生成物として考えることも可能であるので、該成形体を製造する一部として以下説明する。
【0026】
本発明の好適な実施例に係る導電性樹脂組成物10を用いた成形体の製造方法は、図2に示す如く、原料混合(混練)工程S1、ペレット製造工程S2、成形体製造工程S3および最終工程S4からなる。そして、前記ペレット製造工程S2で工程を終了すれば、所要寸法のペレット形状である導電性樹脂組成物10を得ることができる。なお、ここでは、所謂ペレタライズ加工によるペレットを例として挙げているが、本発明における導電性樹脂組成物の形状は殊に限定されるものではない。
【0027】
原料混合(混練)工程S1は、所要量に計量された各原料、すなわち熱可塑性樹脂12、導電性フィブラス微粒子14および金属被覆の施された炭素繊維16を、充分に混合するに足る駆動力(混合(混練)トルク)にて混合する工程である。
【0028】
前記各原料の混合量は、前記熱可塑性樹脂12を100重量部として、前記導電性フィブラス微粒子14は、1〜10重量部に設定される。この混合量が1重量部未満であると、前記金属被覆の施された炭素繊維16の混合量が最大の値であっても、所定の電磁波シールド特性を達成することができない。また、この混合量が10重量部を越えると、殊に15重量部以上では増粘作用の増大等の影響により、後述する混合トルクでは充分な混合が不可能となったり、混合が可能であっても押出または射出成形といった成形体への加工が困難となる。
【0029】
そして前記金属被覆の施された炭素繊維16は、前記熱可塑性樹脂12を100重量部として、15〜40重量部に設定される。この混合量が15重量部未満であると、前記導電性フィブラス微粒子14の混合量が最大の10重量部であっても、所定の電磁波シールド特性を達成することができない。また、この混合量が40重量部を越えると、増粘作用の増大等の影響により、後述する混合トルクでは充分な混合が不可能となったり、混合が可能であっても押出または射出成形といった成形体への加工が困難となる。
【0030】
混合の際に掛けられる剪断力は、一般的な数値化が困難であることが多く、本実施例においては、押出径20mm、異方向回転(商品名 LABO PLASTMILL 30C150;東洋精機製)の際に計測される混合トルクにおける安定時数値が、9.0kg・m以下、好適には5.0kg・m以下となるように設定される。この値が9.0kg・mを越えてしまうと、混合される前記金属被覆の施された炭素繊維16が、その混合トルクによって破断してしまい、得られる導電性樹脂組成物10からなる成形体内で充分に電路としての役割を果たさなくなってしまう。またこの混合トルクにより、前記導電性フィブラス微粒子14も、熱可塑性樹脂12中でランダムに曲がりくねる状態となり、該導電性フィブラス微粒子14が相互に絡み合う状態となり、その結果、導電性の向上が期待できる。前記安定時数値とは、前記混合トルクは、混合開始直後にピーク値を記録した後の、混合される各原料組成および各原料の物性等で決定される時点まで下がった値を指し、該混合に使用原料から必要とされる定常的な混合トルクのことである。
【0031】
そして前記金属被覆の施された炭素繊維16の破断は、各原料の混合が開始された瞬間から起こり始めるものであるが、該破断の影響が前記導電率に出始めるのは、混合トルクが安定した後で、一定の長さを有する該炭素繊維16の量が一定値以下になったときと考えられる。従って、前記金属被覆の施された炭素繊維16の混合量が多い程、長時間の混合や高い混合トルクへの耐性を有する。例えば、前記金属被覆の施された炭素繊維16の混合量が5〜15重量部程度の場合には、前記混合トルクは5.0kg・m以下、15〜20重量部程度で6.0kg・m以下、20〜25重量部程度で7.0kg・m以下であることが確認された。なお、本発明において前記混合時間は5分程度で充分であり、その以上の混合は、前記金属被覆の施された炭素繊維16の破断割合を増加させるだけである、と経験的に分かっている。
【0032】
前記ペレット製造工程S2は、所要形状のペレット(成形物)を製造する工程であり、一般的に公知の射出成形または押出成形等が採用可能であり、適宜好適に選択される。一般的にペレット形状への加工は、後の成形体製造工程S3への投入が容易であるため好適である。また本工程S2については、殊に必須ではない。
【0033】
前記ペレットは、既に導電性樹脂組成物10としての導電性を備えており、これをこのままでも使用することは、当然可能であるが、所要形状の成形体の原料として使用することが一般的である。前記導電性樹脂組成物10は、ここまでの工程を実施すれば製造できるものである。
【0034】
前記成形体製造工程S3は、前記ペレット製造工程S2で得られたペレットを、使用すべき製品の一部の形状等に成形する工程である。具体的には、前記ペレット製造工程S2と同様に、一般的に公知の射出成形または押出成形等が採用可能である。殊に本発明の場合、射出成形または押出成形時に確認される、成形に供される原料粘度の違いにより、得られる成形体表面に導電性物質の存在率が極めて小さくなり、その結果、該成形体内部で充分な導電率が確保されていても、表面だけの抵抗値や体積抵抗値が大きく、所定の導電率を確保できなくなるという、周知の現象を回避し得る。これは、本発明に使用される導電性物質の1つである前記導電性フィブラス微粒子14が、非常に微小な物質であるため、前記射出成形または押出成形においても、マトリクスとなる熱可塑性樹脂の流れに従って成形され、部位による偏在が発生せず、得られる成形体内において均質に存在するためである。
【0035】
前記最終工程S4は、得られた成形体に対して、最終製品として出荷するのに必要な、乾燥、研磨および検査といった作業を実施する工程である。場合によっては、実施しなくてもよい。
【0036】
ここまでに施された原料混合(混練)工程S1、ペレット製造工程S2、成形体製造工程S3および最終工程S4成形体製造工程S1を経ることにより、本発明に係る導電化樹脂組成物10または該組成物10から得られる成形体が夫々製造される。
【0037】
【実験例】
以下に実施例に係る導電性樹脂組成物から得られた成形体の実験例を示す。以下に記載される熱可塑性樹脂、導電性フィブラス微粒子および金属被覆の施された炭素繊維を使用し、これら原料を混合してペレットを製造、該ペレットを原料として、各実施例1〜13、比較例1〜5および参考例1〜11に係る厚み1.5mmの平板状試験片を製造し、該試験片について以下の各測定等を実施して、各数値および評価を得た。前記各原料の混合量は、以下の表1および表2に示す。
【0038】
(使用原料)
・熱可塑性樹脂(A成分):PC/ABS樹脂
・導電性フィブラス微粒子(B成分):
B−1:商品名 MB6015−00;ハイペリオンキャタリシス製(15wt%マスターバッチ 直径10nm 粒径1〜10μm アスペクト比100〜1000)
B−2:商品名 EC−600JD;ケッチェンブラックインターナショナル(ケッチェンブラック、粒径30mμm)
B−3:商品名 ミルド黒鉛繊維;コノコ(ミルドカーボンファイバー、直径10μm 繊維長150〜200μm アスペクト比15〜20)
・金属被覆の施された炭素繊維(C成分):
C−1:商品名 ベスファイトMC HTA−C6−US;東邦テナックス製(ニッケルコート炭素繊維、直径7.5μm)
C−2:商品名 DIAREAD K223SE;三菱化学製(ピッチ系炭素繊維、直径10μm)
【0039】
(測定項目、評価項目およびその方法)
▲1▼EMIシールド性:KEC法準拠のシールド効果測定治具に、製造した導電性樹脂組成物から150×150mm角の試験片を切り出して取り付け、トラッキングジェネレータを備えるスペクトラムアナライザ(商品名 8560A;ヒューレット・パッカード製)により、平均的な500MHzの周波数帯域で入射波の強度に対する透過波の強度の減衰比を電磁波シールド特性として測定した。
▲2▼成形性:得られた成形体の成形性を、○:成形可能または×:成形不可、で評価した。
▲3▼表面抵抗値:JIS K 7194準拠の測定方法で、得られた成形体の表面抵抗値を測定した。
▲4▼混合トルク:前述した所要の押出機器条件:押出径20mm、異方向回転(商品名 LABO PLASTMILL 30C150;東洋精機製)において、各原料の混合に必要とされた安定時の混合トルクを測定した。
▲5▼総合評価:電磁波シールド特性を有する成形体としての総合評価を、○:使用可(電磁波シールド特性50db以上、かつ成形可能である)または×:使用不可(電磁波シールド特性50db未満、または成形不能である)で評価した。
【0040】
(参考例に係る実験)
本発明に係る試験片の実験を実施するに先立ち、本発明において好適に使用される物質、すなわち導電性フィブラス微粒子として、B−1だけをその混合量を変えて使用した場合、金属被覆の施された炭素繊維として、C−1だけをその混合量を換えて使用した場合に係る参考例1〜11に係る試験片を夫々得て、前述の各測定を行ない、各物質の混合量の違いにおける概略的な挙動を調べた。各物質の混合量は、以下の表1に記す。
【0041】
【表1】
【0042】
(参考例の結果)
得られた結果を上記表1に併記する。この表1から、導電性フィブラス微粒子または金属被覆の施された炭素繊維の混合量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して、夫々15重量部以上、50重量部以上で、成形が不能となることが確認された。実際には、前記2つの成分は同時に使用されることで、より粘性が高まるため、該導電性フィブラス微粒子の混合量が15重量部以上、または金属被覆の施された炭素繊維の混合量が50重量部以上の場合においても、本発明に係る導電性樹脂組成物を得ることは困難であると推論された。また、何れの参考例についても、発現する電磁波シールド特性が50db以下であり、導電性フィブラス微粒子または金属被覆の施された炭素繊維の単一での使用においては、充分な性能を発揮し得ないことも併せて確認された。なお参考例5および参考例6から、成形する際に限界と思われる混合トルク9.0kg・mが確認された。
【0043】
(実施例および比較例に係る実験)
前述の参考例の実験結果を基として、導電性フィブラス微粒子または金属被覆の施された炭素繊維の混合量の上限を、夫々10重量部または40重量部に設定し、下記の表2に従い、その混合量を変化させて夫々の試験片を得て、前述の各測定を実施した。なお、比較例1は、実施例5と対比される例で、金属被覆の施された炭素繊維と、被覆されない炭素繊維との違いを示すものである。比較例2〜5は、実施例7と対比される例で、導電性フィブラス微粒子の換わりに、導電性微粒子や、導電性フィブラス粒子を使用した場合の違いを示すものである。
【0044】
【表2】
【0045】
(実施例および比較例の結果)
得られた結果を上記表2に併記する。この表2から、導電性フィブラス微粒子および金属被覆の施された炭素繊維の、熱可塑性樹脂100重量部に対する混合量が、夫々1〜10の範囲内、15〜40範囲内であれば、成形可能でかつ該2つの物質を使用による相乗効果も確認される。また、比較例1〜5の結果から、本発明に係る構成要素である導電性フィブラス微粒子と、金属被覆の施された炭素繊維とは、成形可能な混合量内において、相乗的な効果を発現するために欠いてはならない物質であることも確認された。なお、実施例8および実施例9と、実施例10および実施例11との関係から、前記金属被覆の施された炭素繊維の混合量により、掛けることができる混合トルクの上限値に変動があることも確認された。
【0046】
【発明の効果】
以上に説明した如く、本発明に係る導電性樹脂組成物よれば、マトリクスをなす熱可塑性樹脂に、所定のアスペクト比を有する導電性フィブラス微粒子と、金属被覆の施された炭素繊維とを混合・混練させ、これにより該導電性フィブラス微粒子がそのアスペクト比により、該金属被覆の施された炭素繊維との接触および該導電性フィブラス微粒子相互間の接触が充分密になるようにしたので、導電率が向上された導電性樹脂組成物が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好適な実施例に係る導電性樹脂組成物を拡大して示す断面図である。
【図2】実施例に係る導電性樹脂組成物の製造方法および該導電性樹脂組成物から成形体を製造する方法を示す工程図である。
【符号の説明】
12 熱可塑性樹脂
14 導電性フィブラス微粒子
16 金属被覆の施された炭素繊維
【発明の属する技術分野】
この発明は、導電性樹脂組成物に関し、更に詳細には、不導電体内で優れた導電特性を発現する繊維状物と、高い分散性を有すると共に、所定のアスペクト比を有する微小粒子とを有することで、良好な電磁シールド性および製品成形性を併有し得る導電性樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
コンピュータやワードプロセッサ、その他マイクロコンピュータを制御用素子として内蔵したシーケンサ等の各種電子機器は、外部から機器内に侵入する電磁波等の外乱を受けて誤作動する可能性のあることが知られている。また、これらの電子機器は、稼働時に機器成形体外部へ電磁波を輻射して有害なノイズ源となることも多い。この種の電磁波による干渉(EMI)や、より周波数の低い電波による干渉(RFI)から前記電子機器を保護したり、該機器から外部へ電磁波が漏出するのを防止する目的で、所謂電磁波シールド(遮蔽)が機器成形体に一般に施される。
【0003】
前記シールドを確保する手段として、軽量で高い意匠性を発揮し得るプラスチック等の樹脂から形成される電子機器成形体の全面または内面に、乾式メッキや湿式メッキにより金属メッキ層を電析させたり、または導電性フィブラスを含有する導電性塗料を塗布した導電層を形成させるといった、▲1▼表面処理による方法が知られている。また、前記樹脂原料中に、▲2▼金属粉またはカーボンブラックといった粒状物を混合する、或いは▲3▼金属繊維または炭素繊維といった繊維状物を混合することにより、導電性を付与する方法も知られている。これら各方法の実施により、導電性が付与されて前記電磁波シールドが確保され、外部からの電磁波を遮蔽して機器内への侵入を防止し、また内部からの電磁波の漏出を有効に防止することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前述の各方法の場合、以下の如き欠点が指摘される。すなわち、
▲1▼の表面処理法による場合、予め成形された樹脂成形品表面に、導電層を形成する導電化工程が別途必要である。一般に良好な導電性を得るためには、前記導電層を所定の厚さ以上にして、かつ均一とする必要があるが、殊に複雑な形状を有する成形品については、該導電層の形成が困難であり、また形成後に該成形体から剥離してしまう、といった問題が指摘される。
【0005】
▲2▼の導電性を有する粒状物を、前記プラスチック成形体原料に混合する方法の場合、該原料に対して、導電性を発現させる物質自体を混合するため、▲1▼の方法の如く、別途特殊な後加工を必要とせず、また導電性を発現する物質の剥離についての問題は生じない。しかしながら、導電性を有する前記粒状物がマトリクスとなる樹脂原料中に、分散して、所謂浮島構造となるように混合されてしまうため、得られる成形体全体として見た場合には、充分な導電性を発現し得ない。この問題は、前記粒状物が、前記マトリクス中で相互に接触し合う状態とすれば解決できるが、実際上、そのような状態とするためには、該粒状物の混合が多量に必要となり、粘性等の上昇による成形性の悪化および得られた成形体の各種機械的特性が著しく低下してしまう欠点がある。
【0006】
▲3▼の導電性を有する繊維状物を、前記プラスチック成形体原料に混合する方法の場合、該原料に導電性を発現させる物質自体を混合するため、▲2▼の方法と同じく、後加工および剥離に係る問題の心配はない。更に、その繊維という形状故に、接触点の不足により充分な導電性が得られない、または得られた成形体の各種機械的特性が著しく低下してしまう、といった問題を回避し得る。しかし、一般に繊維状物は、その比重が高いため得られる成形体が重たくなってしまう問題が指摘される。これは、好適な使用用途であるコンピュータ筐体用途等の軽量化・小型化が著しく進行している昨今の状況では、大きな欠点となってしまう。また、得られた成形体の表面から、前記繊維状物が突出してしまう等により、その外観が悪化してしまう問題もある。
【0007】
更に、前記プラスチック原料を所要形状に成形する際に実施される溶融混練等において、繊維状物が破断してしまい、前述の繊維状であるが故の特徴を充分に生かせない。この問題だけについては、前記繊維状物の混合量を増加させれば解消可能であるが、該混合量の増加によって、前述の▲2▼の方法と同様に、成形性の悪化等の問題が生じてしまう。この他、前述の▲2▼に係る粒状物および▲3▼に係る繊維状物を併用する方法も考えられるが、必ずしも充分な電磁波シールド特性が得られるわけではない。
【0008】
【発明の目的】
この発明は、導電性樹脂成形体を製造する、従来の導電性樹脂組成物が有する前記問題に鑑み、これを好適に解決するべく提案されたものであって、導電性樹脂組成物のマトリクスをなす熱可塑性樹脂に、所定のアスペクト比を有する導電性フィブラス微粒子と、金属被覆の施された炭素繊維とを混合・混練させ、これにより該導電性フィブラス微粒子がそのアスペクト比により、該金属被覆の施された炭素繊維との接触および該導電性フィブラス微粒子相互間の接触が充分密になることで、導電率が向上された導電性樹脂組成物およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため本発明の導電性樹脂組成物は、電気的に不導体である熱可塑性樹脂と、
前記熱可塑性樹脂に混合される導電性フィブラス微粒子と、
同じく前記熱可塑性樹脂に混合される金属被覆の施された炭素繊維とからなり、
前記導電性フィブラス微粒子のアスペクト比は、前記金属被覆の施された炭素繊維との接触および該導電性フィブラス微粒子相互間の接触が充分密になって、導電率を向上させ得る数値に設定されていることを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
次に、本発明に係る導電性樹脂組成物につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。本願の発明者は、コンピュータ筐体等を構成する樹脂成形体の好適な原料である熱可塑性樹脂に対して、所定のアスペクト比を有する導電性フィブラス微粒子と、金属被覆(コート)が施された炭素繊維とを、所要量混合することで、該2つの導電性物質が夫々の効果を相乗的に発現させると共に、良好な成形性を有し、かつ成形体とされた際に高い電磁波シールド特性を達成し得る導電性樹脂組成物が得られることを知見したものである。なお本発明において、「フィブラス」とは、所謂短繊維状の物質を指すものである。
【0011】
また、本発明に係る導電性樹脂組成物を製造するに際して、前記各種原料を混合する剪断力(所定機器における混合(混練)トルクの如き駆動力)を所定値以下にすることで、好適な導電性の発現が阻害されないことも併せて知見した。
【0012】
本発明の好適な実施例に係る導電性樹脂組成物は、基本的に少なくとも1種類の熱可塑性樹脂12と、該熱可塑性樹脂100重量部に対して、1〜10重量部混合される導電性フィブラス微粒子14と、同じく樹脂100重量部に対して、15〜40重量部混合される金属被覆の施された炭素繊維16とからなる。
【0013】
前記導電性樹脂組成物10または該組成物10から得られる所要形状の成形体の内部は、図1に示す如く、前記熱可塑性樹脂12をマトリクスとして、その中に微小な前記導電性フィブラス微粒子14が均質に分散されると共に、夫々が互いに離間している該フィブラス微粒子14を接続させるように前記金属被覆の施された炭素繊維16が混合された状態となっている。このような状態となることで、前記導電性フィブラス微粒子14が均質に分散される成形体において、微小な部分毎で高い導電性を発現させている該微粒子14が、炭素繊維16を介して接続されることで、該成形体全体としても、高い導電性を発現させるようになっている。
【0014】
なお、本発明における導電性の評価として、基本的に電磁波シールド特性、すなわち電磁波を遮蔽する度合いを採用している。本発明に係る導電性樹脂組成物が、最終的な製品である所要形状の成形体等に加工された場合に、最も要求される物性値が前記電磁波シールド特性だからである。そして本発明においては、前記電磁波シールド特性として、最も公知の測定方法である、KEC法に準拠した測定により、少なくとも一般的な電子機器等に使用し得る平均水準である50db(デシベル)の達成を最低水準として設定している。前記電磁波シールド特性は、測定に供された成形体の導電性に伴って変化する値であるので、該導電性を向上させれば該電磁波シールド特性も向上することは周知である。
【0015】
前記熱可塑性樹脂12としては、混合される前記導電性フィブラス微粒子14および金属被覆の施された炭素繊維16が、変性しない程度の加熱により溶融し、混練可能な粘稠体となる物質が好適である。一般に使用される熱可塑性樹脂であれば、その熱溶融温度に問題はなく、例えばABS樹脂、PC樹脂、PPO樹脂、PP樹脂、PS樹脂、PEI樹脂、PPS樹脂、PET樹脂、PBT樹脂、PES樹脂、PA樹脂またはPC/ABS樹脂のポリマーアロイ等が使用される。従って、実際の前記熱可塑性樹脂12の選択基準は、基本的に混合される前記導電性フィブラス微粒子14および金属被覆の施された炭素繊維16に依存せず、得るべき成形体の使用用途に応じて決定されている。
【0016】
前記導電性フィブラス微粒子14は、前記熱可塑性樹脂12中に均質に分散されることで、得られる導電性樹脂組成物10や該組成物10から得られる成形体の微小な部分毎に高い導電性を発現させるものである。そして、前述の均質な分散を効果的になし得るために、その粒径(所定のアスペクト比を有するフィブラスであるので、ここでは長手方向の寸法を指す)が、4nm〜50μm以下、好ましくは10μm以下に設定される。この粒径が大きいと、均質な分散がなされなくなってしまう。なお下限値の4nmは、以下に記す前記導電性フィブラス微粒子14の短手方向の長さ下限の0.4nmに最小アスペクト比の10を乗じた数値である。
【0017】
また前記導電性フィブラス微粒子14は、そのアスペクト比が少なくとも10以上、好適には100以上に設定される。前記微粒子14の長手方向の長さは、前述の如く、50μm、好ましくは10μmを上限としているので、短手方向の長さは500nm、好ましくは100nm以下に設定されることになり、またその下限は0.4nm程度となっている。この大きなアスペクト比により、前記熱可塑性樹脂12中での良好な分散性と、成形体とされた際の高い導電性との両立が可能となっている。これは、前記熱可塑性樹脂12に混合されている前記金属被覆の施された炭素繊維16に対して、より多くの接触点を提供し、得られる成形体が全体として高い導電性が発現されることに起因する。
【0018】
前記導電性フィブラス微粒子14は、前記熱可塑性樹脂12全体に均質に分散することで、基本的には不導電体である該樹脂12内に浮島構造の如く存在する。このために、得られる成形体全体としての導電性に対しては、直接関係しない場合が多く、これを回避するために前記炭素繊維16が混合されている。しかし、前記導電性フィブラス微粒子14として、高いアスペクト比を有する物質を採用することで、該導電性フィブラス微粒子14相互間の接触と、該導電性フィブラス微粒子14および前記炭素繊維16の接触とが、充分密になって導電性に関する大きな相乗効果が期待できる。反対に、前記アスペクト比が所定の数値に達していないと、前記相乗効果が余り期待できなくなってしまう。この他、前記アスペクト比には、2000という上限も設定されている。この数値を越えると、前記導電性フィブラス微粒子14の混合による増粘作用が大きくなり、前記成形体等への加工が困難となったり、所定の混合トルクによる分散の度合いが悪化して、導電性が低下してしまう。
【0019】
その他、前記導電性フィブラス微粒子14は、その密度については小さい方が、または熱可塑性樹脂12等に混合された場合に発現する増粘作用が少ない方が、後述([0030])する剪断力と、成形時流動性とを増大させないため好適である。一般に、前述した各条件を達成する物質として、カーボンナノチューブ等が挙げられる。この他、導電性カーボンブラック等も導電率の向上はなし得るが、前記アスペクト比や、増粘作用の点で本発明に係る導電性フィブラス微粒子14としての採用は困難である。
【0020】
前記金属被覆の施された炭素繊維16は、前述の如く、前記熱可塑性樹脂12中に均質に分散され、高い導電性を発現させる導電性フィブラス微粒子14同士を良好に接続して、得られる成形体の全体としての導電性を確保するものである。すなわち、得られる導電性繊維組成物10または該組成物10から得られる成形体において、電気の流路、所謂電路としての役割を果たす物質である。また、良好な導電性の確保と同時に、前記成形体に対して、所要の機械的な強度を与える効果も奏する。
【0021】
前記金属被覆の施された炭素繊維16は、前記導電性フィブラス微粒子14同士を接続して、電路を形成するものであるが、実際上は、効率よく該導電性フィブラス微粒子14と接触しているわけではない。そこで、繊維状の炭素を金属被覆して導電性を向上させることで、前記導電性フィブラス微粒子14との接触の度合いが小さい場合であっても、充分な導電性を確保し得るようにしている。従って、前記炭素繊維16に換えて、金属だけからなる繊維を使用した場合には、前述の電気流路の確保が良好となる一方で、その形状保持性が高いものとなっている。このため、前記成形体を得る際の成形性が悪化したり、前記熱可塑性樹脂12内に剛直に略直線的に存在してしまい、結果として、前記導電性フィブラス微粒子14との接触性が悪化してしまうため、好適には使用し得ない。
【0022】
また前記金属被覆の施された炭素繊維16は、その繊維形状、すなわち長いという物理的形状により、前記導電性フィブラス微粒子14同士の接触を効率的になし得ている。この他、前記金属被覆による、炭素繊維16自体の機械的強度の向上も、高い導電性の発現の要因の1つとなっている。これにより、後で説明([0030])する製造時において掛けられる剪断力による破断を回避する効果も期待できる。
【0023】
この他、前記金属被覆の施された炭素繊維16の寸法については、以下のように設定される。前記炭素繊維16における長さ、すなわち繊維長は、短過ぎると、前述の電路としての役割を良好に果たし得なくなり、反対に長過ぎると、混合時の混合トルクにより容易に破断されてしまうため、1000〜10000μm程度のものが好適である。また繊維径については、5〜30μm程度とすることで、良好な導電性を発現させ得る。これは、前述の繊維径であれば、前記炭素繊維16を前記熱可塑性樹脂12中で良好に分散させることが可能であり、細過ぎると機械的強度が低下し、太過ぎると分散性が低下するので注意が必要である。
【0024】
前記炭素繊維16における被覆用金属としては、安価で耐久性に優れると共に、高い導電性を備えるニッケルが好適である。前記ニッケルは、通常、公知の電解メッキ法等で炭素繊維16に被覆されるが、既に金属被覆の施された炭素繊維を使用するようにしてもよい。また、前記被覆に供される金属としては、前記ニッケルの他、銅、コバルトまたは銀等の公知の良好な導電性を有する金属が使用される。
【0025】
【製造方法】
次に本発明に係る前記導電性樹脂組成物の好適な理解に資するため、該導電性樹脂組成物10を製造する製造方法を、以下説明する。なお、前記導電性樹脂組成物10を製造する方法は、所要形状の成形体を製造する方法における中間生成物として考えることも可能であるので、該成形体を製造する一部として以下説明する。
【0026】
本発明の好適な実施例に係る導電性樹脂組成物10を用いた成形体の製造方法は、図2に示す如く、原料混合(混練)工程S1、ペレット製造工程S2、成形体製造工程S3および最終工程S4からなる。そして、前記ペレット製造工程S2で工程を終了すれば、所要寸法のペレット形状である導電性樹脂組成物10を得ることができる。なお、ここでは、所謂ペレタライズ加工によるペレットを例として挙げているが、本発明における導電性樹脂組成物の形状は殊に限定されるものではない。
【0027】
原料混合(混練)工程S1は、所要量に計量された各原料、すなわち熱可塑性樹脂12、導電性フィブラス微粒子14および金属被覆の施された炭素繊維16を、充分に混合するに足る駆動力(混合(混練)トルク)にて混合する工程である。
【0028】
前記各原料の混合量は、前記熱可塑性樹脂12を100重量部として、前記導電性フィブラス微粒子14は、1〜10重量部に設定される。この混合量が1重量部未満であると、前記金属被覆の施された炭素繊維16の混合量が最大の値であっても、所定の電磁波シールド特性を達成することができない。また、この混合量が10重量部を越えると、殊に15重量部以上では増粘作用の増大等の影響により、後述する混合トルクでは充分な混合が不可能となったり、混合が可能であっても押出または射出成形といった成形体への加工が困難となる。
【0029】
そして前記金属被覆の施された炭素繊維16は、前記熱可塑性樹脂12を100重量部として、15〜40重量部に設定される。この混合量が15重量部未満であると、前記導電性フィブラス微粒子14の混合量が最大の10重量部であっても、所定の電磁波シールド特性を達成することができない。また、この混合量が40重量部を越えると、増粘作用の増大等の影響により、後述する混合トルクでは充分な混合が不可能となったり、混合が可能であっても押出または射出成形といった成形体への加工が困難となる。
【0030】
混合の際に掛けられる剪断力は、一般的な数値化が困難であることが多く、本実施例においては、押出径20mm、異方向回転(商品名 LABO PLASTMILL 30C150;東洋精機製)の際に計測される混合トルクにおける安定時数値が、9.0kg・m以下、好適には5.0kg・m以下となるように設定される。この値が9.0kg・mを越えてしまうと、混合される前記金属被覆の施された炭素繊維16が、その混合トルクによって破断してしまい、得られる導電性樹脂組成物10からなる成形体内で充分に電路としての役割を果たさなくなってしまう。またこの混合トルクにより、前記導電性フィブラス微粒子14も、熱可塑性樹脂12中でランダムに曲がりくねる状態となり、該導電性フィブラス微粒子14が相互に絡み合う状態となり、その結果、導電性の向上が期待できる。前記安定時数値とは、前記混合トルクは、混合開始直後にピーク値を記録した後の、混合される各原料組成および各原料の物性等で決定される時点まで下がった値を指し、該混合に使用原料から必要とされる定常的な混合トルクのことである。
【0031】
そして前記金属被覆の施された炭素繊維16の破断は、各原料の混合が開始された瞬間から起こり始めるものであるが、該破断の影響が前記導電率に出始めるのは、混合トルクが安定した後で、一定の長さを有する該炭素繊維16の量が一定値以下になったときと考えられる。従って、前記金属被覆の施された炭素繊維16の混合量が多い程、長時間の混合や高い混合トルクへの耐性を有する。例えば、前記金属被覆の施された炭素繊維16の混合量が5〜15重量部程度の場合には、前記混合トルクは5.0kg・m以下、15〜20重量部程度で6.0kg・m以下、20〜25重量部程度で7.0kg・m以下であることが確認された。なお、本発明において前記混合時間は5分程度で充分であり、その以上の混合は、前記金属被覆の施された炭素繊維16の破断割合を増加させるだけである、と経験的に分かっている。
【0032】
前記ペレット製造工程S2は、所要形状のペレット(成形物)を製造する工程であり、一般的に公知の射出成形または押出成形等が採用可能であり、適宜好適に選択される。一般的にペレット形状への加工は、後の成形体製造工程S3への投入が容易であるため好適である。また本工程S2については、殊に必須ではない。
【0033】
前記ペレットは、既に導電性樹脂組成物10としての導電性を備えており、これをこのままでも使用することは、当然可能であるが、所要形状の成形体の原料として使用することが一般的である。前記導電性樹脂組成物10は、ここまでの工程を実施すれば製造できるものである。
【0034】
前記成形体製造工程S3は、前記ペレット製造工程S2で得られたペレットを、使用すべき製品の一部の形状等に成形する工程である。具体的には、前記ペレット製造工程S2と同様に、一般的に公知の射出成形または押出成形等が採用可能である。殊に本発明の場合、射出成形または押出成形時に確認される、成形に供される原料粘度の違いにより、得られる成形体表面に導電性物質の存在率が極めて小さくなり、その結果、該成形体内部で充分な導電率が確保されていても、表面だけの抵抗値や体積抵抗値が大きく、所定の導電率を確保できなくなるという、周知の現象を回避し得る。これは、本発明に使用される導電性物質の1つである前記導電性フィブラス微粒子14が、非常に微小な物質であるため、前記射出成形または押出成形においても、マトリクスとなる熱可塑性樹脂の流れに従って成形され、部位による偏在が発生せず、得られる成形体内において均質に存在するためである。
【0035】
前記最終工程S4は、得られた成形体に対して、最終製品として出荷するのに必要な、乾燥、研磨および検査といった作業を実施する工程である。場合によっては、実施しなくてもよい。
【0036】
ここまでに施された原料混合(混練)工程S1、ペレット製造工程S2、成形体製造工程S3および最終工程S4成形体製造工程S1を経ることにより、本発明に係る導電化樹脂組成物10または該組成物10から得られる成形体が夫々製造される。
【0037】
【実験例】
以下に実施例に係る導電性樹脂組成物から得られた成形体の実験例を示す。以下に記載される熱可塑性樹脂、導電性フィブラス微粒子および金属被覆の施された炭素繊維を使用し、これら原料を混合してペレットを製造、該ペレットを原料として、各実施例1〜13、比較例1〜5および参考例1〜11に係る厚み1.5mmの平板状試験片を製造し、該試験片について以下の各測定等を実施して、各数値および評価を得た。前記各原料の混合量は、以下の表1および表2に示す。
【0038】
(使用原料)
・熱可塑性樹脂(A成分):PC/ABS樹脂
・導電性フィブラス微粒子(B成分):
B−1:商品名 MB6015−00;ハイペリオンキャタリシス製(15wt%マスターバッチ 直径10nm 粒径1〜10μm アスペクト比100〜1000)
B−2:商品名 EC−600JD;ケッチェンブラックインターナショナル(ケッチェンブラック、粒径30mμm)
B−3:商品名 ミルド黒鉛繊維;コノコ(ミルドカーボンファイバー、直径10μm 繊維長150〜200μm アスペクト比15〜20)
・金属被覆の施された炭素繊維(C成分):
C−1:商品名 ベスファイトMC HTA−C6−US;東邦テナックス製(ニッケルコート炭素繊維、直径7.5μm)
C−2:商品名 DIAREAD K223SE;三菱化学製(ピッチ系炭素繊維、直径10μm)
【0039】
(測定項目、評価項目およびその方法)
▲1▼EMIシールド性:KEC法準拠のシールド効果測定治具に、製造した導電性樹脂組成物から150×150mm角の試験片を切り出して取り付け、トラッキングジェネレータを備えるスペクトラムアナライザ(商品名 8560A;ヒューレット・パッカード製)により、平均的な500MHzの周波数帯域で入射波の強度に対する透過波の強度の減衰比を電磁波シールド特性として測定した。
▲2▼成形性:得られた成形体の成形性を、○:成形可能または×:成形不可、で評価した。
▲3▼表面抵抗値:JIS K 7194準拠の測定方法で、得られた成形体の表面抵抗値を測定した。
▲4▼混合トルク:前述した所要の押出機器条件:押出径20mm、異方向回転(商品名 LABO PLASTMILL 30C150;東洋精機製)において、各原料の混合に必要とされた安定時の混合トルクを測定した。
▲5▼総合評価:電磁波シールド特性を有する成形体としての総合評価を、○:使用可(電磁波シールド特性50db以上、かつ成形可能である)または×:使用不可(電磁波シールド特性50db未満、または成形不能である)で評価した。
【0040】
(参考例に係る実験)
本発明に係る試験片の実験を実施するに先立ち、本発明において好適に使用される物質、すなわち導電性フィブラス微粒子として、B−1だけをその混合量を変えて使用した場合、金属被覆の施された炭素繊維として、C−1だけをその混合量を換えて使用した場合に係る参考例1〜11に係る試験片を夫々得て、前述の各測定を行ない、各物質の混合量の違いにおける概略的な挙動を調べた。各物質の混合量は、以下の表1に記す。
【0041】
【表1】
【0042】
(参考例の結果)
得られた結果を上記表1に併記する。この表1から、導電性フィブラス微粒子または金属被覆の施された炭素繊維の混合量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して、夫々15重量部以上、50重量部以上で、成形が不能となることが確認された。実際には、前記2つの成分は同時に使用されることで、より粘性が高まるため、該導電性フィブラス微粒子の混合量が15重量部以上、または金属被覆の施された炭素繊維の混合量が50重量部以上の場合においても、本発明に係る導電性樹脂組成物を得ることは困難であると推論された。また、何れの参考例についても、発現する電磁波シールド特性が50db以下であり、導電性フィブラス微粒子または金属被覆の施された炭素繊維の単一での使用においては、充分な性能を発揮し得ないことも併せて確認された。なお参考例5および参考例6から、成形する際に限界と思われる混合トルク9.0kg・mが確認された。
【0043】
(実施例および比較例に係る実験)
前述の参考例の実験結果を基として、導電性フィブラス微粒子または金属被覆の施された炭素繊維の混合量の上限を、夫々10重量部または40重量部に設定し、下記の表2に従い、その混合量を変化させて夫々の試験片を得て、前述の各測定を実施した。なお、比較例1は、実施例5と対比される例で、金属被覆の施された炭素繊維と、被覆されない炭素繊維との違いを示すものである。比較例2〜5は、実施例7と対比される例で、導電性フィブラス微粒子の換わりに、導電性微粒子や、導電性フィブラス粒子を使用した場合の違いを示すものである。
【0044】
【表2】
【0045】
(実施例および比較例の結果)
得られた結果を上記表2に併記する。この表2から、導電性フィブラス微粒子および金属被覆の施された炭素繊維の、熱可塑性樹脂100重量部に対する混合量が、夫々1〜10の範囲内、15〜40範囲内であれば、成形可能でかつ該2つの物質を使用による相乗効果も確認される。また、比較例1〜5の結果から、本発明に係る構成要素である導電性フィブラス微粒子と、金属被覆の施された炭素繊維とは、成形可能な混合量内において、相乗的な効果を発現するために欠いてはならない物質であることも確認された。なお、実施例8および実施例9と、実施例10および実施例11との関係から、前記金属被覆の施された炭素繊維の混合量により、掛けることができる混合トルクの上限値に変動があることも確認された。
【0046】
【発明の効果】
以上に説明した如く、本発明に係る導電性樹脂組成物よれば、マトリクスをなす熱可塑性樹脂に、所定のアスペクト比を有する導電性フィブラス微粒子と、金属被覆の施された炭素繊維とを混合・混練させ、これにより該導電性フィブラス微粒子がそのアスペクト比により、該金属被覆の施された炭素繊維との接触および該導電性フィブラス微粒子相互間の接触が充分密になるようにしたので、導電率が向上された導電性樹脂組成物が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好適な実施例に係る導電性樹脂組成物を拡大して示す断面図である。
【図2】実施例に係る導電性樹脂組成物の製造方法および該導電性樹脂組成物から成形体を製造する方法を示す工程図である。
【符号の説明】
12 熱可塑性樹脂
14 導電性フィブラス微粒子
16 金属被覆の施された炭素繊維
Claims (8)
- 電気的に不導体である熱可塑性樹脂(12)と、
前記熱可塑性樹脂(12)に混合される導電性フィブラス微粒子(14)と、
同じく前記熱可塑性樹脂(12)に混合される金属被覆の施された炭素繊維(16)とからなり、
前記導電性フィブラス微粒子(14)のアスペクト比は、前記金属被覆の施された炭素繊維(16)との接触および該導電性フィブラス微粒子(14)相互間の接触が充分密になって、導電率を向上させ得る数値に設定されている
ことを特徴とする導電性樹脂組成物。 - 前記導電性フィブラス微粒子(14)のアスペクト比は、10〜2000の範囲に、好適には100〜2000の範囲に設定される請求項1記載の導電性樹脂組成物。
- 前記導電性フィブラス微粒子(14)の長手方向の寸法は、4nm〜50μm、好ましくは4nm〜10μmの範囲に設定される請求項1または2記載の導電性樹脂組成物。
- 前記導電性フィブラス微粒子(14)の混合量は、100重量部の前記熱可塑性樹脂(12)に対して、1〜10重量部に設定される請求項1〜3の何れかに記載の導電性樹脂組成物。
- 前記導電性フィブラス微粒子(14)として、カーボンナノチューブが使用される請求項1〜4の何れかに記載の導電性樹脂組成物。
- 前記炭素繊維(16)を被覆する金属として、ニッケルが使用される請求項1〜5の何れかに記載の導電性樹脂組成物。
- 前記炭素繊維(16)の混合量は、100重量部の前記熱可塑性樹脂(12)に対して、15〜40重量部に設定される請求項1〜6の何れかに記載の導電性樹脂組成物。
- 前記導電性の向上に伴い改善される電磁波シールド特性は、KEC(関西電子)法に準拠した測定方法によれば、50db以上となっている請求項1〜7の何れかに記載の導電性樹脂組成物。
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JP2007059835A (ja) * | 2005-08-26 | 2007-03-08 | Matsushita Electric Works Ltd | 電磁波シールド成形体 |
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