JP2004022395A - 電池接続構造体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】高分子−金属複合ラミネートフィルムで電池要素を外装した単電池を複数個用い、前記単電池の端子を接続する接続体によって並列および/または直列接続した電池集合体を支持体内に収納した電池接続構造体であって、前記接続体を挟持する固定部材を前記支持体内面と接するように設置してなることを特徴とする電池接続構造体。
【選択図】 図5
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電池接続構造体に関する。
【0002】
【従来の技術】
二次電池を電気自動車やハイブリット自動車などの車両に適用する場合には、該車両を駆動するモーターへの電力と、電力を維持する時間から要求されるエネルギ容量を満たす必要がある。また、電池からの電力を効率良く取り出すため、電流値を小さくし電圧を高くする必要がある。そこで、電圧が低く容量の小さい単電池を直列あるいは並列接続する必要がある。
【0003】
従来の単電池と単電池を直列または並列接続する方法として、特開2000−182595号公報に記載の方法がある。かかる公報に記載の方法によれば、図1に示すように、円筒型の単電池2の正極端子3と、これに接続する別の円筒型の単電池2の負極端子4の間に、接続体5(以下、バスバーともいう)を取り付けることにより、電気的に接続するものである。該単電池が複数個接続されたものを電池集合体1とする。単電池2の正極端子3およびこれに接続する別の単電池2の負極端子4と、バスバー5の接続方法は、正極端子3および負極端子4と、バスバー5とがそれぞれ接触する位置6を溶接することで行っている。なお、車両には、電池集合体1を適当な支持体内に収納した電池接続構造体(図示せず)の形で搭載するのが一般的である。
【0004】
また、外力に対する電池集合体1の固定は、電気的に接続された複数個の単電池2を単電池固定部材7で固定することによって行っている。単電池2の正極端子3、負極端子4、バスバー5の外力に対する固定は、単電池固定部材7で複数個の単電池2を固定する以外には無い。このような構造が取れる理由は、単電池の端子3、4に太い金属線または金属棒を用い、接続体に厚い金属板を用いており、単電池と単電池の端子間に剛性があるためである。剛性のある金属ケースまたは樹脂ケース等の外装材で覆った単電池ではこのような構造をとることが可能である。
【0005】
しかしながら、これらの剛性のある金属ケースや樹脂ケース等の外装材で覆った単電池を複数個接続した電池集電体では、外装材の重量が嵩んでしまい、軽量化が容易でないという課題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明者らは、車載性の点から軽量で容積効率に優れた単電池、さらには該単電池を複数個、直列および/または並列接続する技術の開発に成功することができた。
【0007】
その単電池としては、図2に示すように、外装を高分子−金属複合ラミネートフィルム2で覆い、電池の正極端子3、負極端子4を金属箔とし、正極端子3および負極端子4をそれぞれ異なったラミネートフィルム2の1辺から外部へ取り出す構造のものを考えた。このように金属箔(本明細書では、金属板のうち厚さが250μm以下のものをいう。)で電池の端子を取り出す理由は、高分子−金属複合ラミネートフィルムのシール性の点からである。すなわち、従来の電池構造にある太い金属線や金属棒の電池端子では、該電池端子を外部に取り出す部分の高分子−金属複合ラミネートフィルムにどうしてもシワやたるみ、隙間ができてしまう。そのため、高分子−金属複合ラミネートフィルムを熱融着して接合しても、この部分のシール性を確保するのが困難である。これに対し、金属箔の電池端子では、上記のようなシワなどの問題が起きないため、シール性を確保できることがわかったものである。電池端子に用いる金属箔を厚くしていく際に、以下に図面を用いて説明するような樹脂被覆層を形成することで、優れたシール性を確保することができるためである。図3に、高分子−金属複合ラミネートフィルム(単に、ラミネートフィルムともいう)と電池端子である金属箔のシール部分の拡大図を示す。図3(A)に示すように、ラミネートフィルム22とラミネートフィルム22間に金属箔21の電池端子が入る(挟み込まれる)と、金属棒のようなシワはできないまでも、金属箔21を厚くしていくことで、その両端部にわずかな隙間、すなわちシール性が弱い部分23ができてしまう場合がある。そこで、図3(B)に示すように、金属箔21表面のシール部分に樹脂被覆層24を形成し、図3(C)に示すように、ラミネートフィルム22と金属箔21の間に樹脂被覆層24を挟み込んだ状態で熱融着してシールする構造をとった。この構造をとることによって金属箔を厚くしていっても十分にシール性を確保できることが実験により確認できたので、電池端子を金属箔としたものである。なお、厚さが50μm程度までの金属箔の場合には、上記樹脂被覆層を設けなくとも、シール性が弱い部分ができないため、シール性を確保できることもわかった。なお、樹脂被覆層24は、図3(B)に示すように、電池端子である金属箔21表面に樹脂材等を被覆(コーティング)して形成してもよいし、樹脂製のフィルム等を金属箔21表面に溶着あるいは接着するなどして形成してもよいなど、特に制限されるべきものではない。
【0008】
そして、この外装を高分子−金属複合ラミネートフィルムで覆った扁平型(角型)の単電池(ラミネート電池)と、これに接続する別のラミネート電池の電気的な接続は、バスバーを電池端子である金属箔に溶接することで行い、直列あるいは並列接続を行った。具体的には、図2に示すように、ラミネート電池2の正極端子3である金属箔と、これに接続する別のラミネート電池2の負極端子4である金属箔が、薄板状のバスバー5で電気的に接続されている。ラミネート電池2の正極端子3の金属箔およびラミネート電池2の負極端子4の金属箔と、バスバーとの接続は、溶接部6において、例えば、超音波溶接等の溶接手段によって行うことができる。そして、電気自動車やハイブリット自動車などの車両には、電池集合体1を適当な支持体内に収納した電池接続構造体の形で搭載している。また、車両搭載時にラミネート電池に加わる外力に対して、接続された複数個のラミネート電池の振動を抑えるため、電池集電体の各ラミネート電池を電池固定部材7で挟持して固定してなるものである。
【0009】
薄くて軽い高分子−金属複合ラミネートフィルムを外装材に利用し、電池の端子を金属箔とすることで、電池のシール性を確保し、重量が嵩む金属ケースや樹脂ケースなどの外装材を用いる場合に比して電池の軽量化を図ることができるものであった。
【0010】
しかしながら、本発明者らは、上記した開発成果に決して満足することなく、更なる研究を重ねた結果、車載用電池に固有の克服しなければならない新たな問題が生じることがわかった。
【0011】
すなわち、上記単電池では、電池の端子が金属箔であるため、従来の電池構造にある太い金属棒等の端子のように、車載時に外力に耐える剛性を持たせることは困難である。そのため、車両が走行するたびにバスバーが振動し、それにより生ずる負荷を長期にわたって受けることで金属疲労が生じ最終的には端子が切れてしまうという車載用電池に固有の新たな問題点を生じることがわかった。
【0012】
この問題点を解決するために、電池端子である金属箔をより厚くし剛性を持たせることを検討したが、電池のシール性の点からは電池端子である金属箔はあまり厚くすることができず、バスバーを支える(車両が走行する際にバスバーが振動するのを抑える)だけの剛性を持たせることは困難であった。そこで、電池端子でバスバーを固定する手段以外に、バスバーを固定する手段が必要であることを見出したものである。
【0013】
また、電池端子である金属箔に電流が流れた時にはジュール発熱により、金属箔の温度が上昇してしまい、金属箔を挟んでいる高分子−金属複合ラミネートフィルムの高分子(樹脂)部分や電極端子表面に形成した樹脂被覆層部分が融点に達してしまう理由から、端子と接する部位のシール性が低下するという問題点があった。そこで、電池端子のジュール発熱を、バスバーを介して放熱させることにより電池の端子温度上昇を抑えることが必要であることを見出したものである。
【0014】
上記問題点に鑑み、本発明は、外装を高分子−金属複合ラミネートフィルムで被覆し、電池端子に金属箔を用いた構造の単電池を複数個用い、これらの電池端子を接続した電池集合体を支持体内に収納した電池接続構造体において、
該電池端子を接続するバスバーを固定してバスバーの振動によって端子が切れてしまうことを防止し、同時に電池端子である該金属箔に電流が流れた時に発生するジュール発熱を放熱させることにより、電池の端子温度上昇を抑えることのできる電池接続構造体を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、高分子−金属複合ラミネートフィルムで電池要素を外装した単電池を複数個用い、
前記単電池の端子を接続する接続体によって、並列および/または直列接続した電池集合体を支持体内に収納した電池接続構造体であって、
前記接続体を挟持する固定部材を、前記支持体内面と接するように設置してなることを特徴とする電池接続構造体により達成された。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、請求項ごとにその構成および効果について説明する。
【0017】
本発明の電池接続構造体においては、接続体を挟持する固定部材を、電池集合体を収納する支持体内面と接するように設置してなることを特徴とする。
【0018】
このような固定部材を具備することで、使用時の振動等の外部入力が発生しても接続体が振動することなく固定され、よって金属箔でできた電池端子に振動等の外部入力が伝達されることがなくなり電池端子が切れるという課題は解決されることとなる。
【0019】
さらに、この固定部材は、電池使用時に電池端子および接続体に発生するジュール熱を支持体へと放熱する効果も併せ持っており、電池端子と接する部位の高分子−金属複合ラミネートフィルムのシール部(熱融着部)の密封性(シール性)が低下するという上述した課題を同時に解決できるものである。
【0020】
このとき支持体および固定部材は、本目的が達成される範囲において材質を適宜選択すれば良いが、固定部材は短絡防止の観点から樹脂、熱伝導性の良いシリコーンゴムシートといった材料が好適である。ただし、固定部材のうち、接続体が電池端子と接する部位には、短絡防止の観点から上記したような樹脂やゴムを用いる必要があるが、それ以外の部位ではより熱伝導性のよい金属を用いてもよいなど、短絡防止と熱伝導性の双方を満足できる組み合わせを適宜選択することができる。
【0021】
支持体の材質は、放熱性を良くするために金属が好適であるが、短絡防止の観点から固定部材と同じ樹脂を用いてもよい。特に、図6、9に示すように、電池端子や接続体が支持体と接触する可能性のある部分には、短絡防止の観点から固定部材と同じ樹脂を用いてもよいし、金属製の支持体の内側に別途、固定部材と同じ樹脂や熱伝導性の良いシリコーンゴムのシート材を貼り付けるなどしてもよい。
【0022】
また、固定部材の形状に関しても、本目的が達成される範囲において適宜選択すれば良く、例えば、立方体、直方体、截頭角錐台、截頭円錐台、円柱、楕円柱などが挙げられるほか、後述する図5〜6、8〜9に示すように上下別々に分離されてなる固定部材により挟持してもよいほか、図6、9に示す断面図において、かかる固定部材が断面コの字型の上下一体化した固定部材であってもよいなど、特に制限されるべきものではない。また、接続体(バスバー)や電池端子と接する面は、図8に示すように、該接続体表面と略同じ面積を有し、支持体と接する面は、放熱性を高める観点から接続体と接する面よりも大きい面積を有するものが望ましく、截頭角錐台、截頭円錐台や断面形状がコの字型の形状が望ましい。ただし、接続体(バスバー)や電池端子と接する面は、本目的が達成されるものであれば、図5に示すように、接続体表面よりも小さい面積であってもよい。
【0023】
また、固定部材は、支持体(電池ケース)内面と接するように設置してなるものである。詳しくは、本発明の目的を達成すべく、車両搭載時に電池の端子に加わる外力に対して、電池端子の縦方向(図6、9の断面図の上下方向)の振動により端子が切れてしまうのを抑えるため、接続体を挟持し、かつ図6、9の断面図における電池ケースの上面および下面に接するように設置すればよい。
【0024】
さらに電池端子および電池本体の横方向(図6、9の断面図の左右方向)のズレないし移動により電池端子が湾曲したり折れ曲がったりするのを抑えるため、図6、9の断面図における電池のケースの左面と右面にそれぞれ接するように設置するのが望ましい。この場合には、併せて電池固定部材で電池の上下振動および左右のズレや移動(振動)を抑えるのが望ましい。
【0025】
また、固定部材は、接続体を挟持するものであればよく、接続体のみを挟持するものであってもよいし、図6、9の断面図に示すように、接続体及び端子の双方を挟持するものであってもよい。
【0026】
次に、本発明の電池接続構造体に用いる単電池は、高分子−金属複合フィルムで電池要素を外装した単電池(いわゆる、ラミネート電池)であることを特徴とする。
【0027】
このような単電池(ラミネート電池)を用いることで電池重量を軽くすることができ車両重量を低減することができることから、ハイブリット自動車では燃費性能を向上でき、電気自動車では航続距離を伸ばすことができる。
【0028】
図4に示すように、上記単電池2は、電池外装材の高分子−金属複合ラミネートフィルム(本明細書中、外装ラミネートフィルムとも称する)12をその周辺部を熱融着にて接合する(図4(a)参照のこと)、あるいは該高分子−金属複合ラミネートフィルム12を袋状にしたその開口部(周辺部の一部)を熱融着にて接合する(図4(b)参照のこと)ことにより、電池要素(図示せず)を収納し封入(密封)している。正極端子3と負極端子4は、外装ラミネートフィルム12のそれぞれ異なる辺(対向する辺)の熱融着部13から取り出す構造としたが、正極端子と負極端子が外装ラミネートフィルムの同じ辺(1辺)から取り出す構造としてもよいなど、特に限定されない。
【0029】
ここで、電池要素を外装する高分子−金属複合ラミネートフィルムとしては、特に制限されるべきものではなく、高分子フィルム間に金属フィルムを配置し全体を積層一体化してなる従来公知のものを使用することができる。具体例としては、例えば、高分子フィルムからなる外装保護層(ラミネート最外層)、金属フィルム層、高分子フィルムからなる熱融着層(ラミネート最内層)のように配置し全体を積層一体化してなるものが挙げられる。詳しくは、高分子−金属複合ラミネートフィルムは、上記金属フィルムの両面に、高分子フィルムとして、まず耐熱絶縁樹脂フィルムを形成し、少なくとも片面側の耐熱絶縁樹脂フィルム上に熱融着絶縁性フィルムが積層されたものである。かかるラミネートフィルムは、適当な方法にて熱融着させることにより、熱融着絶縁性フィルム部分が融着して接合し熱融着部が形成される。
【0030】
上記ラミネートフィルムの構成する金属フィルムとしては、アルミニウムフィルム等が例示できる。また、上記絶縁性樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテトラフタレートフィルム(耐熱絶縁性フィルム)、ナイロンフィルム(耐熱絶縁性フィルム)、ポリエチレンフィルム(熱融着絶縁性フィルム)、ポリプロピレンフィルム(熱融着絶縁性フィルム)等が例示できる。ただし、本発明の外装材は、これらに制限されるべきものではない。
【0031】
こうしたラミネートフィルムでは、超音波溶着等により熱融着絶縁性フィルムを利用して1対ないし1枚(袋状)のラミネートフィルムの熱融着による接合を、容易かつ確実に行うことができる。なお、電池の長期信頼性を最大限高めるためには、ラミネートシートの構成要素である金属フィルム同士を直接接合してもよい。金属フィルム間にある熱融着性樹脂を除去もしくは破壊して金属フィルム同士を接合するには超音波溶着を用いることができる。
【0032】
また、上記電池要素としては、電池の種類などにより異なるため特に制限されるべきものではなく、従来の電池要素と同様に構成される。代表的な構成としては、正極板、セパレータおよび負極板を積層または巻回した電池要素が一般的であるが、これらに制限されるべきものではない。図4(c)に、図4(a)のA−A線に沿った断面図であって、正極板、セパレータおよび負極板を積層し、外装のラミネートフィルムに収納した単電池の断面図を示す。
【0033】
図4(c)に示す単電池2では、外装にラミネートフィルム12を用いて、その周辺部の全部を熱融着にて接合することにより、正極板14、セパレータ16および負極板15を積層した発電要素を収納し密封した構成を有している。また、上記の各電極板(正極板14及び負極板15)と導通される正極端子(図示せず)および負極端子4が、各電極板の正極集電体(図示せず)及び負極集電体17に超音波溶接、抵抗溶接等により取り付けられ、上記熱融着部13に挟まれて上記の外装のラミネートフィルム12の外部に露出される構造を有している。ただし、本発明の電池要素は、これらに何ら制限されるものではない。
【0034】
以下、電池要素の代表的な構成例である正極板、セパレータおよび負極板につき、リチウムイオン電池、固体電解質電池またはゲル電解質電池の例を挙げて簡単に説明するが、本発明は、これらに制限されるべきものではなく、従来公知のものを適用し得るものである。
【0035】
まず、電極には、電池の種類に応じて、適当な活物質等を用いることができる。とりわけ、電気自動車やハイブリッド自動車に搭載する高エネルギー密度、高出力密度の単電池の場合、リチウムイオンを吸蔵、脱離できる正極と、リチウムイオンを吸蔵、脱離できる負極を用いることが望ましい。
【0036】
電極以外には、セパレータとこれに染み込ませた電解液、または固体電解質若しくはゲル電解質、またはセパレータを含む固体電解質若しくはゲル電解質を用いることができる。
【0037】
こうした発電要素を用いてなる、リチウムイオン電池、固体電解質電池またはゲル電解質電池においては、図4(a)、(b)に示す扁平型の電池構造にすることが好ましい。これは、従来の円筒型の電池構造とする場合には、正極および負極端子を取り出す個所のシール性を高めることが困難であり、電気自動車やハイブリッド自動車に搭載する高エネルギー密度、高出力密度の電池では、端子の取り出し部位のシール性の長期の信頼性を確保できないおそれがあるためである。
【0038】
さらに、上記正極には、LiCoO2、LiMn2O4、LiNiO2を主材料とする正極活物質、負極には、グラファイトまたは非晶質炭素であるハードカーボンを主材料とする負極活物質を用いることが望ましいが、特に限定されない。
【0039】
正極とは、正極活物質を有する正極集電体と該正極集電体の先端部に取り付けられた正極端子とを含めたものとする。また、正極板とは、正極集電体のうち正極活物質を有する反応部をいうものとする。
【0040】
同様に、負極とは、負極活物質を有する負極集電体と該負極集電体の先端部に取り付けられた負極端子とを含めたものとする。負極板とは、負極集電体のうち負極活物質を有する反応部をいうものとする。
【0041】
また負極板と導通される(電気的に接続される)負極端子と、正極板と導通される(電気的に接続される)正極端子は、いずれも単電池の構成要件の1つであって、電池要素の一部とみなしてもよいし、これと区別してもよく、特に制限されるものではない。
【0042】
また、上記セパレータとしては、特に制限されるべきものではなく、従来公知のものを用いることができる。なお、本発明のセパレータにおいては、その名称に拘泥されるべきものではなく、セパレータの代わりにセパレータとしての機能(役割)を有するような、固体電解質やゲル電解質を用いるものであってもよい。すなわち、固体電解質電池やゲル状電解質電池の中には、正極板の正極活物質層と負極板の負極活物質層との間に固体電解質またはゲル状電解質を配設してなる電池要素を外装ラミネートフィルムに収納し周囲を熱融着することにより封入されてなるものも含まれるためである。また、電池内部(発電要素)には電解液ないし電解質も含まれている。
【0043】
また、請求項2に記載のように、単電池の電池端子である金属箔の厚さは、10〜500μmの範囲が好適であり、特に10〜250μmの範囲がより好適である。
【0044】
電池端子である金属箔の厚さを10〜500μmとすることにより、高分子−金属複合ラミネートフィルムを熱融着して接合しても、電池端子を外部に取り出す部分のシール性を確保することができるものである。特に、10〜50μmの範囲とする場合には、図3に示す樹脂被覆層を形成する必要がなく、電池端子を安価に製造できる。また、電池端子を外部に取り出す部分に樹脂被覆層がくるように位置決めを行う必要がない点でも有利である。なお、電池端子の厚さが10μm未満の金属箔も存在するが、接続体を接続する際など固定部材で固定する前の不安定な状態での取り扱い時に折れ曲がったりシワになりやすく、切れるおそれもあるため取り扱いに注意が必要となる場合もある。一方、電池端子の厚さが500μmを越える場合には、樹脂被覆層を形成してもなお、シール不良率をゼロにすることが困難であり、歩留まりが低下するようになり、製品コストの上昇につながるおそれがある。
【0045】
また、請求項3に記載のように、少なくとも電池端子である金属箔表面のうち、高分子−金属複合ラミネートフィルムとのシール部分に樹脂被覆層が形成されており、高分子−金属複合ラミネートフィルムと共に熱融着にて接合されていることが望ましい。電池端子である金属箔の両端部にわずかな隙間、すなわちシール性が弱い部分ができてしまう場合に、金属箔表面に樹脂被覆層を形成し、シールする構造をとることによって、金属箔を厚くしても良好なシール性を確保できることができるためである。また、電池端子表面のうち、接続体と接続する部分などは、樹脂被覆層を形成しない、あるいは接続体と接続させる際に、該樹脂被覆層を取り除いて使用する必要がある。
【0046】
請求項4に記載のように、単電池が、正極端子と負極端子をそれぞれ異なったラミネートフィルムの1辺から外部へ取り出す構造であることが望ましい。これにより、単電池に比べ熱容量が小さい電池端子の大きさを、正極端子と負極端子をラミネートフィルムの同じ辺から外部へ取り出す場合に比して大きくすることができる。そのため、該電池端子に電流が流れた時のジュール発熱により電池端子の温度が上昇するのを抑えることができるものである。
【0047】
次いで、電池の端子を接続する接続体は、電気抵抗による電力損失を防止する観点から銅、アルミニウムといった電気伝導性の良い材料が好適である。
【0048】
該接続体は、端子の片面にのみ接続すればよいが、端子の両面に接続することも可能である。
【0049】
また、接続体により接続する端子間は、単電池間の接続方式(直列接続、並列接続、直列−並列接続、並列−直列接続)により異なるものであり、正極端子と正極端子間、負極端子と負極端子間、正極端子と負極端子間、およびこれらの組み合わせが可能である。このほか、例えば、図5に示すように、複数個の単電池を直列接続する場合、単電池間の正極端子と負極端子間を順に接続するのに用いられる以外に、複数個の単電池が直列接続された両端の正極端子と負極端子にそれぞれ接続体を接続することもある。これらの接続体は、電池接続構造体全体の端子として用いることができる。そして、これらの接続体も、図6に示すように、バスバー固定部材で挟持され、バスバーからバスバー固定部材を介して電池ケースに固定されるものである。なお、図5〜6に示す直列接続の場合を例に取り説明したが、他の並列接続、直列−並列接続、並列−直列接続においても同様である。
【0050】
また、請求項5に記載のように、接続体の幅と厚さの比が2.0〜10.0の範囲であることを特徴とする。この範囲にあることで、電池端子に電流が流れた時に発生するジュール発熱を、バスバーからバスバー固定部材を介して支持体へと放熱する場合に、放熱性能が確保できるものである。なお、接続体の幅(W)、厚さ(H)および長さ(L)は、図5に示す通りである。
【0051】
請求項6に記載のように、電池集合体の各単電池を固定する電池固定部材を、支持体内面と接するように設置したことが望ましい。これにより、電池集合体の各単電池が支持体内で振動したり(図6、9の断面図の上下方向)、移動する(図6、9の断面図の横方向)ことにより、電池端子を振動して切れたり、折れ曲がったりするのを防止することができるものである。
【0052】
なお、電池固定部材は、図5、8に示すように、電池集電体の周囲を取り囲むようにして、電池集合体の各単電池を固定し、支持体と接するように設置してもよいし、図2に示すように、電池集合体の各単電池を挟持し、支持体と接するように設置してもよいし、電池集合体の各単電池の上下(図6、9の断面図の上下方向)のいずれか一方のみより、該単電池を固定し支持体と接するように設置してもよいなど、特に制限されるべきものではない。
【0053】
該電池固定部材に関しても、バスバー固定部材と同様に、放熱性を良くするために金属が好適であるが、短絡防止の観点から樹脂、熱伝導性の良いシリコーンゴムシートといった材料を用いてもよい。
【0054】
請求項7に記載のように、本発明の電池接続構造体を車両に搭載することにより、信頼性が高く、放熱性に優れたEV、HEVが実現可能となる。
【0055】
【実施例】
以下、この発明を図面に基づいて説明する。
【0056】
本発明に係る電池接続構造体の第一実施の形態を説明する。図5に、第一の実施例の電池接続構造体(ただし、支持体は図示せず)の構成図を示す。
【0057】
この実施例の電池集合体1は、単電池2の正極端子3と、これに接続する別の単電池2の負極端子4が接続体(バスバー)5で電気的に接続されている。単電池2の正極端子3および単電池2の負極端子4とバスバー5の接続は、溶接部6で超音波溶接等によって行っている。車両搭載時に単電池に加わる外力に対して、単電池2の振動を抑えるため電池固定部材7で電池集合体1の各単電池2を挟持、固定し、かつ支持体である電池ケース(図示せず)と接するように設置している。同様にバスバー固定部材8で、バスバー5を挟持、固定し、かつ電池ケース(図示せず)と接するように設置している。
【0058】
図6に、図5のA−A線に沿った電池接続構造体の断面図を示す。電池固定部材7とバスバー固定部材8は、電池ケース9によって押さえられている。ここで、バスバー5を挟持、固定し、電池ケース9と接するようにバスバー固定部材8を設置する方法としては、特に制限されるべきものではないが、例えば、電池ケース9を、図6の断面図で見て上面側と下面側の2つの電池ケース部材を張り合わせるものとする。各電池ケース部材の所定の位置にバスバー固定部材8を予め溶接や接着などにより固定しておく。下面側の電池ケース部材に電池固定部材7で固定された電池集合体1を載せた後、上面側の電池ケース部材を張り合わせることにより、バスバー5を挟持、固定し、電池ケース9と接するようにバスバー固定部材8を設置すると共に、バスバー5によって直列接続した電池集合体1を電池ケース9内に収納することができるものである。また、電池集合体1の各単電池2を挟持、固定し、電池ケース9と接するように電池固定部材7を設置する方法としては、特に制限されるべきものではないが、例えば、図5に示すように、複数枚の電池固定部材7を用いて、これを接着などにより張り合わせることにより、バスバー5によって直列接続した電池集合体1の各単電池2の周囲を取り囲むように固定することができるものである。
【0059】
第一の実施例において、電池集合体1の充電または放電を行うと、内部抵抗によりジュール発熱する。単電池2および電池端子3、4は夫々ジュール発熱によって、温度上昇する。そこで、上記構造を有する電池接続構造体とすることにより、単電池2で発生したジュール熱は、電池固定部材7を介して電池ケース9へ逃がすことが可能となる。また、電池端子3、4は、単電池2に比べ熱容量が小さいことから温度上昇が大きい。そのため、電池端子3、4で発生したジュール熱は、バスバー5から電池ケース9へ逃がす必要があるが、上記構造を有する電池接続構造体とすることにより、バスバー5からバスバー固定部材8を介して電池ケース9へ逃がすことが可能となる。このように、電池端子3、4を挟持、固定するバスバー固定部材8は、電池ケース9と接するように設置することで、電池端子3、4の固定とジュール熱の放熱機能を両立できるものである。
【0060】
このときバスバー5の表面積によって放熱特性が変化するが、バスバー5の幅をW、厚さをH、長さをLとし(図5参照のこと)、バスバー5の長さLを一定とする。バスバー5の重量と電気抵抗が一定でバスバー5の表面積が大きい場合、つまりバスバー5の幅Wと厚さHの積が一定で、幅Wを大きくした場合を考えると、単電池の単位重量あたりの出力(W/kg)を落とさず放熱性能を良くすることができるが、バスバー5の占める体積が増えるので電池集合体1の体積が増えてしまう。図7にバスバーの幅/厚さ比(W/H)と端子の温度上昇、電池集合体の体積を示す。バスバーの幅と厚さの比(W/H)が大きくなるにつれて、放熱面積が増えるため端子の温度上昇が低下する。一方、バスバーの幅と厚さの比(W/H)が大きくなるにつれて、端子部分の体積が大きくなるため、電池集合体の体積が大きくなる。なお、図7の温度上昇を示す線は、電池の使用条件として10〜50Aの幅で充放電を行った際の平均値を示している。端子の許容温度上昇を30℃とすると、バスバーの幅と厚さの比が2.0以上必要となってくる。バスバーの幅と厚さの比を大きくすると電池集合体の体積が大きくなるので、自動車用の電源として電池を使用する場合には搭載性の点から小さくしたい。よって、バスバーの幅と厚さの比が2.0〜10.0の範囲であることが望ましい。なお、端子の許容温度上昇を30℃としたのは、電池を電気自動車やハイブリッドカーに搭載して用いる場合、電池温度が60℃程度にまで上昇することもある。その際、電池端子では、充放電時に大電流を使うため、電池温度よりもさらに高くなることもあり、電池温度より30℃を超える場合には、ラミネートフィルム中の樹脂や樹脂被覆層の軟化点(90℃程度)にまで達することもあり、電池の内圧の増加により、電池端子と接する部位のシール性が損なわれるおそれがあるためである。
【0061】
本発明に係る電池接続構造体の第二実施の形態を説明する。図8に、第二の実施例の電池接続構造体(ただし、支持体は図示せず)の構成図を示す。
【0062】
図8に示すように、この実施例の電池集合体1は、単電池2を2枚重ね、各端子を溶接により接続することにより並列に接続している。並列接続された単電池2の正極端子3と、他の並列接続された単電池2の負極端子4がバスバー5で電気的に接続されている。並列接続された単電池2の正極端子3および並列接続された単電池2の負極端子4と、バスバー5との接続は、溶接部6で超音波溶接等によって行っている。車両搭載時に単電池に加わる外力に対して、単電池2の振動を抑えるため電池固定部材7で単電池2を挟持、固定し、かつ支持体である電池ケース(図示せず)と接するように設置している。同様に、バスバー固定部材8でバスバー5を挟持、固定し、かつ電池ケースと接するように設置している。
【0063】
図9に、図8のA−A線に沿った電池接続構造体の断面図を示す。単電池2を重ねて並列接続し、並列接続された単電池2を第一の実施例の単電池のように直列接続して構成したものである。この実施例は、2個の単電池を重ねたものとしたが、3個以上の単電池を重ねたものとしても良い。同様に2個の単電池を左右に並べたものとしたが、3個以上の単電池を左右に並べたものとしても良い。
【0064】
電池固定部材7とバスバー固定部材8は、電池ケース9よって押さえられている。バスバーおよび単電池を挟持、固定し、かつ電池ケースと接するようにバスバー固定部材および電池固定部材を設置する方法は、上記第一の実施例と同様にすることができる。
【0065】
第二の実施例においても、電池集合体1の充電または放電を行うと、内部抵抗によるジュール発熱する。電池2および電池端子3、4は夫々ジュール発熱によって、温度上昇する。そこで、上記構造を有する電池接続構造体とすることにより、単電池2で発生したジュール熱は、電池固定部材7を介して電池ケース9へ逃がすことが可能となる。また、電池端子3、4は、単電池2に比べ熱容量が小さいことから温度上昇が大きい。そのため、電池端子3、4で発生したジュール熱は、バスバー5から電池ケース9へ逃がす必要があるが、上記構造を有する電池接続構造体とすることにより、バスバー5からバスバー固定部材8を介して電池ケース9へ逃がすことが可能となる。このように、電池端子3、4を挟持、固定するバスバー固定部材8は、電池ケース9と接するように設置することで、電池端子3、4の固定とジュール熱の放熱機能を両立できるもので、上述した第一の実施例と同様の効果を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来技術の電池集合体を模式的に表わす概略斜視図である。
【図2】単電池を2個、直列接続してなる電池集合体の様子を模式的に表わす概略斜視図である。
【図3】高分子−金属複合ラミネートフィルムと電池端子である金属箔のシール部分の様子を模式的に表した拡大断面図であって、図3(a)は、ラミネートフィルム間に金属箔が入った状態を表わす図面であり、図3(b)は、金属箔表面に樹脂被覆層を形成し、ラミネートフィルム間に挟む前の状態を表わす図面であり、図3(c)は、金属箔表面に樹脂被覆層を形成し、ラミネートフィルム間に挟み込んでシールした状態を表わす図面である。
【図4】外装を高分子−金属複合ラミネートフィルムで覆い、端子を金属箔とし、正極および負極端子を該ラミネートフィルムの異なる2辺からそれぞれ外部に取り出した構造を有する単電池を模式的に表わす図面であって;
図4(a)は、ラミネートフィルムをその周辺部を熱融着にて接合することにより電池要素を収納し封入した単電池の斜視図であり、
図4(b)は、ラミネートフィルムを袋状にしたその開口部を熱融着にて接合することにより、電池要素を収納し封入した単電池の斜視図であり、
図4(c)は、図4(a)のA−A線に沿った断面図であって、正極板、セパレータおよび負極板を積層し、上記ラミネートフィルムに収納した単電池の断面図である。
【図5】本発明に係る第一の実施例の電池接続構造体(ただし、支持体は図示せず)の様子を模式的に表わす概略構成図を示す。
【図6】図5のA−A線に沿った断面図である。
【図7】バスバーの幅/厚さ比と、端子の温度上昇及び電池集合体の体積の関係を示すグラフである。
【図8】本発明に係る第二の実施例の電池接続構造体(ただし、支持体は図示せず)の様子を模式的に表わす概略構成図である。
【図9】図8のA−A線に沿った断面図である。
【符号の説明】
1…電池集合体、 2…単電池、
3…正極端子、 4…負極端子、
5…接続体(バスバー)、 6…溶接部、
7…電池固定部材、 8…バスバー固定部材、
9…支持体(電池ケース)、
10…並列接続された単電池の正極端子、
11…並列接続された単電池の負極端子、
12…高分子−金属複合ラミネートフィルム、
13…熱融着部、 14…正極板、
15…負極板、 16…セパレータ、
17…負極集電体、 21…薄い金属板(金属箔を含む)、
22…高分子−金属複合ラミネートフィルム、
23…シール性の弱い部分、 24…樹脂(樹脂被覆層)。
Claims (7)
- 高分子−金属複合ラミネートフィルムで電池要素を外装した単電池を複数個用い、
前記単電池の端子を接続する接続体によって並列および/または直列接続した電池集合体を、支持体内に収納した電池接続構造体であって、
前記接続体を挟持する固定部材を、前記支持体内面と接するように設置したことを特徴とする電池接続構造体。 - 前記電池端子の厚さが、10〜500μmの範囲であることを特徴とする請求項1に記載の電池接続構造体。
- 少なくとも電池端子表面のうち、前記ラミネートフィルムとのシール部分に樹脂被覆層が形成され、該ラミネートフィルムと共に熱融着にて接合されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電池接続構造体。
- 前記単電池の正極端子と負極端子が、それぞれ異なった前記ラミネートフィルムの1辺から外部へ取り出す構造であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電池接続構造体。
- 前記接続体の幅と厚さの比が2.0〜10.0の範囲であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電池接続構造体。
- 前記電池集合体の各単電池を固定する電池固定部材を、支持体内面と接するように設置したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の電池接続構造体。
- 請求項1〜6に記載の電池接続構造体を搭載した車両。
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