JP2004020496A - トラッキング放電検知方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】家電機器の突入電流等で誤動作すること無く、かつトラッキング放電を早期に検知することが可能なトラッキング放電検知方法を提供する。
【解決手段】S2で電路電流の平均値Iaを求めて、その平均値Iaを示す仮想正弦波y(x)を演算する。S5で該仮想正弦波y(t)と測定した電路電流波x(t)のゼロクロス点から位相π/10までの積分値を求め、S6で双方の積分値を比較する。仮想正弦波の積分値Ssに対して比較した電路電流波の積分値Sdが99%以下であれば立上がり遅れ有りと判断してS7に進み、SsがSdの90〜99%であればトラッキング放電発生と判断してトラッキング放電発生回数をカウントし、S11で例えば1秒間に20回カウントしたらトラッキング放電発生信号を出力する。
【選択図】 図2
【解決手段】S2で電路電流の平均値Iaを求めて、その平均値Iaを示す仮想正弦波y(x)を演算する。S5で該仮想正弦波y(t)と測定した電路電流波x(t)のゼロクロス点から位相π/10までの積分値を求め、S6で双方の積分値を比較する。仮想正弦波の積分値Ssに対して比較した電路電流波の積分値Sdが99%以下であれば立上がり遅れ有りと判断してS7に進み、SsがSdの90〜99%であればトラッキング放電発生と判断してトラッキング放電発生回数をカウントし、S11で例えば1秒間に20回カウントしたらトラッキング放電発生信号を出力する。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、家電機器の接続プラグ等で発生するトラッキング放電現象を検知するトラッキング放電検知方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
家電機器の接続プラグ部等で発生するトラッキング放電を検知する従来のトラッキング放電検知方法としては、機器を接続した電路の電流を常時監視して、負荷電流を含む電流値が予め設定した動作判定値を超え、且つ3サイクル以上の電流ピーク値が連続して増加した場合、トラッキング短絡と判定する方法が知られている。図5は従来のトラッキング放電検知方法の説明図であり、(a)は電流波形と固定された動作判定値の関係、(b)は電流波形と連続して増加する動作判定値の関係を示し、動作判定値は80Aに設定されている。
家電機器においては電流入力時の突入電流から定常電流に移行する電流のピーク値、或いは家電機器の電源を切ったときの電流は減少する特性を有しているため、これを判定から除外するためにこのように設定するもので、トラッキング放電現象は電流ピーク値が継続して増加する特性を有している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記検知方法の場合、トラッキング放電により発生する電流を精度良く検出するには、動作判定値を小さく抑える必要がある。しかし、動作判定値を小さくすると家電機器を複数使用したときの突入電流や負荷電流が大きくなった場合などトラッキング発生と判断して誤動作してしまうため、動作判定値を小さくでき無かった。そのため、負荷電流に対して小さい放電電流のトラッキング放電は検出することができず、放電現象が継続して発生して、発生部位の材料の劣化が激しくなり、短絡に近いアーク電流が流れてようやく検知が可能となっていた。
このように、従来のトラッキング放電検知方法は、トラッキング放電を検知した時点では、すでに樹脂製プラグの場合は劣化が激しく、火災発生の恐れが解消できなかった。
【0004】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、家電機器の突入電流等で誤動作することが無く、トラッキング放電を早期に検知できるトラッキング放電検知方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、電路電流の平均値を求めて、該平均値を示す仮想正弦波を演算するステップと、電路電流波のゼロ点近傍の所定範囲の積分値を演算すると共に前記仮想正弦半波のゼロ点近傍の所定範囲の積分値を演算するステップと、前記電路電流波の積分値と前記仮想正弦波の積分値とを比較して、前記電路電流波の積分値が前記仮想正弦波の積分値より小さければトラッキング放電発生と判断するステップを有することを特徴とする。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、積分する波形ゼロ点近傍区間が電路電流波の位相0°から30°以下の間、又は180°から210°以下の間であることを特徴とする。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、電路電流波の積分値が基本正弦波の積分値の95%以下となったらトラッキング放電発生と判断することを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明に係るトラッキング放電検知方法を実施するトラッキングブレーカの回路ブロック図の一例を示し、1は制御部、2は電路10の電流を検出する変流器、3は電流−電圧変換回路、4は制御部1及び引き外しコイル5に電力を供給する電源回路、6は引き外しコイル5により開放操作(引き外し操作)される接点、7は引き外しコイル4を動作させるサイリスタである。また、11aはトラッキングブレーカの電源側端子、11bは負荷側端子を示している。
【0009】
制御部1は、A/D変換回路11、マイクロコンピュータで構成される演算回路12、演算データ等を保管するレジスタ13、出力回路14を備え、変流器2で検出した電流波情報から波形の歪み度を演算して歪み度が所定量以上であればトラッキング放電発生と判断して出力回路14に信号を送る。そして、出力回路14はサイリスタ7をオンさせて引き外しコイル5を動作させ、接点6を引き外す。
【0010】
以下、具体的な検知方法の流れを図2のフローチャートを基に説明する。先ず、S1(ステップ1)で電路10の電流情報を変流器2により入手し、その電流情報を電流−電圧変換回路3で電圧変換して制御部1に入力する。制御部1は入力された電圧値に変換された電流波情報をA/D変換回路11で例えば0.25msのサンプリング時間毎にデジタル変換されて演算回路12に出力する。そして、S2で演算回路12はその入力されたデジタルデータから電流波の半波波形x(t)を求め、そのデータを基に平均値Iaを演算する。平均値Iaは次の数1で求められる。
【0011】
【数1】
【0012】
そしてS3に進み、求めた平均値Iaを予め設定した最低レベル値と比較して、比較値より小さければ電路に漏電電流や放電電流等の電流が流れていないと判断(S4)して検知動作を終了する。また、求めた平均値Iaが最低レベル値以上であればS5に進む。このステップは電路10に電流が流れていない場合の誤動作を避けるために行っている。
【0013】
S5では、平均値Iaを示す仮想正弦波の半波y(t)を求めると共に、予め定めた立上がり時間Trまでの仮想正弦波の半波y(t)の積分値Ssを求め、更に実際の電路の電流波形の半波x(t)の立上がり時間Trまでの積分値Sdを求める。仮想正弦半波y(t)、仮想正弦半波y(t)の積分値Ss、実際の電流半波x(t)の積分値Sdは次式の数2,数3,数4で演算される。但し、立上がり時間Trを位相π/10(50Hz電路の場合は1ms)としている。
【0014】
【数2】
【数3】
【数4】
【0015】
そして、S6で2つの積分値SdとSsを比較し、例えばSd≦0.99Ssが成り立てば波形の立上がり遅れ有り(歪みが発生してトラッキング放電有り)と判断してS7に進む。そうでなければS1に戻る。
【0016】
ここで、立上がり遅れとトラッキング放電の関係を図3,図4を基に説明する。図3、図4は合成樹脂から成る接続プラグの放電特性を表した回路図及び波形図であり、図3(a)は放電が発生していない時のプラグ表面の等価回路及び電流波形図を示し、抵抗R0はプラグ表面が湿潤している状態の表面抵抗を表している。また図3(b)は放電が発生している時の等価回路及び電流波形図を示し、第1抵抗R1は放電が発生して導電路ができた際につくられるトラッキング放電電路の抵抗、第2抵抗R2は放電時の湿潤部分の抵抗を表している。そして、図4は図3(b)の電流波形の半波部分の拡大説明図である。
【0017】
この電流波形図に示すように、放電が発生すると電流波形の立上がり部の途中に急峻に立ち上がる部分が発生し、所謂立上がり遅れが発生する。これは、主に位相0〜30°、180〜210°の間で発生するので、上記立上がり時間Trは位相30°以下又は210°以下で設定する良い。そして、上記2つの積分値SdとSsの比較により実際の電路電流波形の歪み度を演算することで、この立上がり遅れを検知することができる。
尚、放電が発生していない時は、例えば埃と水分の湿潤による漏れ電流成分(正弦波)と仮想電流波y(t)とは同じ波形になり、トラッキング放電が発生して初めてSdがSsより小さくなる。
【0018】
そして、S7では2つの積分値Sd,Ssを比較してSd≦0.95SsであればS9に進み、そうでなければ即ち0.95Ss<Sd≦0.99Ssであればトラッキング放電開始と判断してS8に進む。S8では、トラッキング放電が開始されたと判断して0.95Ss<Sd≦0.99Ssとなる回数を累積して行く。
また、S9ではSd≦0.90Ssかどうか判断し、そうであればS1に戻り、そうでなければ即ち0.90Ss<Sd≦0.95Ssであればトラッキング放電継続発生と判断してS10に進む。S10では、トラッキング放電が継続していると判断してS8に引き続きトラッキング放電発生と判断した回数のカウントを続ける。そして、S11にて、例えば1秒以内の発生回数が20回を超えたら演算回路12が出力信号を発するように設定すれば、電路電流がその条件を満たした時点で出力回路14がサイリスタ7をオンして、引外しコイル5が動作し、電路10が電源から切り離される。
【0019】
このように、トラッキング放電が発生すると、その特徴である位相0〜30°或いは180から210°付近の急激な電流の立上がりを伴う立上がりの遅れを検出してトラッキング放電発生と判断するため、トラッキング放電を早期に検知することができる。そのため、合成樹脂製の接続プラグであっても樹脂部の劣化が大きくなる前に検知することが可能となり、プラグ表面の融けを無くすことができる。
また、電流波形のゼロクロス付近で判断するため、負荷電流の大きさに影響されずに検知できるし、家電製品の負荷電流変動や突入電流変動に影響されずに検知できる。更に、無負荷状態ではプラグ表面の漏れ電流も検知できるので、樹脂部の湿潤性喪失の状況や埃の堆積状況等を有る程度予測することも可能である。
【0020】
尚、上記実施の形態では本発明のトラッキング放電検知方法をブレーカに適用した構成について説明したが、それに限定するものではなく、例えばトラッキング発生を報知する警報機として適用することができるし、制御部1は小型化が可能であるためプラグを差し込むコンセントに組み込んで、コンセントに報知機能を持たせることも可能である。
また、トラッキング放電の始まりは、漏れ電流によるジュール熱により表面が乾燥して漏れ電流が低下してトラッキング放電の導電路が形成されて始まり、トラッキング放電開始の段階では、まだ全周期における放電現象が均等でないため、漏れ電流波と仮想電流波の違いは小さいので上記実施形態のように電路電流波の積分値Sdが仮想電流波の積分値Ssに対して99%以下であればトラッキング放電発生と判断して、SdがSsの99%以下と95%以下の2段階に判断しているが、例えば97%以下のみの1段階で判断するようにしても良い。
【0021】
【発明の効果】
以上詳述したように、請求項1〜3の発明によれば、トラッキング放電を早期に検知することができ、合成樹脂製の接続プラグの樹脂部が劣化する前に検知することが可能となり、プラグ表面の融けを無くすことができる。
また、電流波形のゼロクロス付近で判断するため、負荷電流の大きさに影響されずに検知できるし、家電製品の負荷電流変動や突入電流変動に影響されずに検知できる。
また、無負荷状態ではプラグ表面の漏れ電流も検知できるので、樹脂部の湿潤性喪失の状況や埃の堆積状況等を有る程度予測できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るトラッキング放電検知方法を実施するトラッキングブレーカの回路ブロック図である。
【図2】図1の制御部の動作の流れを示すフローチャートである。
【図3】接続プラグ表面の放電特性を模式的に表した図であり、図2(a)は放電が発生していない時の等価回路及び電流波形図、図2(b)は放電が発生している時の等価回路及び電流波形図である。
【図4】図3(b)の電流波形の拡大説明図である。
【図5】従来のトラッキング放電検知方法の説明図であり、(a)は電流波形と固定された動作判定値の関係、(b)は電流波形と連続して増加する動作判定値の関係を示している。
【符号の説明】
1・・制御部、2・・変流器、3・・電流−電圧変換回路、4・・電源回路、5・・引き外しコイル、6・・接点、7・・サイリスタ、10・・電路、11・・A/D変換回路、12・・演算回路、13・・レジスタ、14・・出力回路。
【発明の属する技術分野】
本発明は、家電機器の接続プラグ等で発生するトラッキング放電現象を検知するトラッキング放電検知方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
家電機器の接続プラグ部等で発生するトラッキング放電を検知する従来のトラッキング放電検知方法としては、機器を接続した電路の電流を常時監視して、負荷電流を含む電流値が予め設定した動作判定値を超え、且つ3サイクル以上の電流ピーク値が連続して増加した場合、トラッキング短絡と判定する方法が知られている。図5は従来のトラッキング放電検知方法の説明図であり、(a)は電流波形と固定された動作判定値の関係、(b)は電流波形と連続して増加する動作判定値の関係を示し、動作判定値は80Aに設定されている。
家電機器においては電流入力時の突入電流から定常電流に移行する電流のピーク値、或いは家電機器の電源を切ったときの電流は減少する特性を有しているため、これを判定から除外するためにこのように設定するもので、トラッキング放電現象は電流ピーク値が継続して増加する特性を有している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記検知方法の場合、トラッキング放電により発生する電流を精度良く検出するには、動作判定値を小さく抑える必要がある。しかし、動作判定値を小さくすると家電機器を複数使用したときの突入電流や負荷電流が大きくなった場合などトラッキング発生と判断して誤動作してしまうため、動作判定値を小さくでき無かった。そのため、負荷電流に対して小さい放電電流のトラッキング放電は検出することができず、放電現象が継続して発生して、発生部位の材料の劣化が激しくなり、短絡に近いアーク電流が流れてようやく検知が可能となっていた。
このように、従来のトラッキング放電検知方法は、トラッキング放電を検知した時点では、すでに樹脂製プラグの場合は劣化が激しく、火災発生の恐れが解消できなかった。
【0004】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、家電機器の突入電流等で誤動作することが無く、トラッキング放電を早期に検知できるトラッキング放電検知方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、電路電流の平均値を求めて、該平均値を示す仮想正弦波を演算するステップと、電路電流波のゼロ点近傍の所定範囲の積分値を演算すると共に前記仮想正弦半波のゼロ点近傍の所定範囲の積分値を演算するステップと、前記電路電流波の積分値と前記仮想正弦波の積分値とを比較して、前記電路電流波の積分値が前記仮想正弦波の積分値より小さければトラッキング放電発生と判断するステップを有することを特徴とする。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、積分する波形ゼロ点近傍区間が電路電流波の位相0°から30°以下の間、又は180°から210°以下の間であることを特徴とする。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、電路電流波の積分値が基本正弦波の積分値の95%以下となったらトラッキング放電発生と判断することを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明に係るトラッキング放電検知方法を実施するトラッキングブレーカの回路ブロック図の一例を示し、1は制御部、2は電路10の電流を検出する変流器、3は電流−電圧変換回路、4は制御部1及び引き外しコイル5に電力を供給する電源回路、6は引き外しコイル5により開放操作(引き外し操作)される接点、7は引き外しコイル4を動作させるサイリスタである。また、11aはトラッキングブレーカの電源側端子、11bは負荷側端子を示している。
【0009】
制御部1は、A/D変換回路11、マイクロコンピュータで構成される演算回路12、演算データ等を保管するレジスタ13、出力回路14を備え、変流器2で検出した電流波情報から波形の歪み度を演算して歪み度が所定量以上であればトラッキング放電発生と判断して出力回路14に信号を送る。そして、出力回路14はサイリスタ7をオンさせて引き外しコイル5を動作させ、接点6を引き外す。
【0010】
以下、具体的な検知方法の流れを図2のフローチャートを基に説明する。先ず、S1(ステップ1)で電路10の電流情報を変流器2により入手し、その電流情報を電流−電圧変換回路3で電圧変換して制御部1に入力する。制御部1は入力された電圧値に変換された電流波情報をA/D変換回路11で例えば0.25msのサンプリング時間毎にデジタル変換されて演算回路12に出力する。そして、S2で演算回路12はその入力されたデジタルデータから電流波の半波波形x(t)を求め、そのデータを基に平均値Iaを演算する。平均値Iaは次の数1で求められる。
【0011】
【数1】
【0012】
そしてS3に進み、求めた平均値Iaを予め設定した最低レベル値と比較して、比較値より小さければ電路に漏電電流や放電電流等の電流が流れていないと判断(S4)して検知動作を終了する。また、求めた平均値Iaが最低レベル値以上であればS5に進む。このステップは電路10に電流が流れていない場合の誤動作を避けるために行っている。
【0013】
S5では、平均値Iaを示す仮想正弦波の半波y(t)を求めると共に、予め定めた立上がり時間Trまでの仮想正弦波の半波y(t)の積分値Ssを求め、更に実際の電路の電流波形の半波x(t)の立上がり時間Trまでの積分値Sdを求める。仮想正弦半波y(t)、仮想正弦半波y(t)の積分値Ss、実際の電流半波x(t)の積分値Sdは次式の数2,数3,数4で演算される。但し、立上がり時間Trを位相π/10(50Hz電路の場合は1ms)としている。
【0014】
【数2】
【数3】
【数4】
【0015】
そして、S6で2つの積分値SdとSsを比較し、例えばSd≦0.99Ssが成り立てば波形の立上がり遅れ有り(歪みが発生してトラッキング放電有り)と判断してS7に進む。そうでなければS1に戻る。
【0016】
ここで、立上がり遅れとトラッキング放電の関係を図3,図4を基に説明する。図3、図4は合成樹脂から成る接続プラグの放電特性を表した回路図及び波形図であり、図3(a)は放電が発生していない時のプラグ表面の等価回路及び電流波形図を示し、抵抗R0はプラグ表面が湿潤している状態の表面抵抗を表している。また図3(b)は放電が発生している時の等価回路及び電流波形図を示し、第1抵抗R1は放電が発生して導電路ができた際につくられるトラッキング放電電路の抵抗、第2抵抗R2は放電時の湿潤部分の抵抗を表している。そして、図4は図3(b)の電流波形の半波部分の拡大説明図である。
【0017】
この電流波形図に示すように、放電が発生すると電流波形の立上がり部の途中に急峻に立ち上がる部分が発生し、所謂立上がり遅れが発生する。これは、主に位相0〜30°、180〜210°の間で発生するので、上記立上がり時間Trは位相30°以下又は210°以下で設定する良い。そして、上記2つの積分値SdとSsの比較により実際の電路電流波形の歪み度を演算することで、この立上がり遅れを検知することができる。
尚、放電が発生していない時は、例えば埃と水分の湿潤による漏れ電流成分(正弦波)と仮想電流波y(t)とは同じ波形になり、トラッキング放電が発生して初めてSdがSsより小さくなる。
【0018】
そして、S7では2つの積分値Sd,Ssを比較してSd≦0.95SsであればS9に進み、そうでなければ即ち0.95Ss<Sd≦0.99Ssであればトラッキング放電開始と判断してS8に進む。S8では、トラッキング放電が開始されたと判断して0.95Ss<Sd≦0.99Ssとなる回数を累積して行く。
また、S9ではSd≦0.90Ssかどうか判断し、そうであればS1に戻り、そうでなければ即ち0.90Ss<Sd≦0.95Ssであればトラッキング放電継続発生と判断してS10に進む。S10では、トラッキング放電が継続していると判断してS8に引き続きトラッキング放電発生と判断した回数のカウントを続ける。そして、S11にて、例えば1秒以内の発生回数が20回を超えたら演算回路12が出力信号を発するように設定すれば、電路電流がその条件を満たした時点で出力回路14がサイリスタ7をオンして、引外しコイル5が動作し、電路10が電源から切り離される。
【0019】
このように、トラッキング放電が発生すると、その特徴である位相0〜30°或いは180から210°付近の急激な電流の立上がりを伴う立上がりの遅れを検出してトラッキング放電発生と判断するため、トラッキング放電を早期に検知することができる。そのため、合成樹脂製の接続プラグであっても樹脂部の劣化が大きくなる前に検知することが可能となり、プラグ表面の融けを無くすことができる。
また、電流波形のゼロクロス付近で判断するため、負荷電流の大きさに影響されずに検知できるし、家電製品の負荷電流変動や突入電流変動に影響されずに検知できる。更に、無負荷状態ではプラグ表面の漏れ電流も検知できるので、樹脂部の湿潤性喪失の状況や埃の堆積状況等を有る程度予測することも可能である。
【0020】
尚、上記実施の形態では本発明のトラッキング放電検知方法をブレーカに適用した構成について説明したが、それに限定するものではなく、例えばトラッキング発生を報知する警報機として適用することができるし、制御部1は小型化が可能であるためプラグを差し込むコンセントに組み込んで、コンセントに報知機能を持たせることも可能である。
また、トラッキング放電の始まりは、漏れ電流によるジュール熱により表面が乾燥して漏れ電流が低下してトラッキング放電の導電路が形成されて始まり、トラッキング放電開始の段階では、まだ全周期における放電現象が均等でないため、漏れ電流波と仮想電流波の違いは小さいので上記実施形態のように電路電流波の積分値Sdが仮想電流波の積分値Ssに対して99%以下であればトラッキング放電発生と判断して、SdがSsの99%以下と95%以下の2段階に判断しているが、例えば97%以下のみの1段階で判断するようにしても良い。
【0021】
【発明の効果】
以上詳述したように、請求項1〜3の発明によれば、トラッキング放電を早期に検知することができ、合成樹脂製の接続プラグの樹脂部が劣化する前に検知することが可能となり、プラグ表面の融けを無くすことができる。
また、電流波形のゼロクロス付近で判断するため、負荷電流の大きさに影響されずに検知できるし、家電製品の負荷電流変動や突入電流変動に影響されずに検知できる。
また、無負荷状態ではプラグ表面の漏れ電流も検知できるので、樹脂部の湿潤性喪失の状況や埃の堆積状況等を有る程度予測できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るトラッキング放電検知方法を実施するトラッキングブレーカの回路ブロック図である。
【図2】図1の制御部の動作の流れを示すフローチャートである。
【図3】接続プラグ表面の放電特性を模式的に表した図であり、図2(a)は放電が発生していない時の等価回路及び電流波形図、図2(b)は放電が発生している時の等価回路及び電流波形図である。
【図4】図3(b)の電流波形の拡大説明図である。
【図5】従来のトラッキング放電検知方法の説明図であり、(a)は電流波形と固定された動作判定値の関係、(b)は電流波形と連続して増加する動作判定値の関係を示している。
【符号の説明】
1・・制御部、2・・変流器、3・・電流−電圧変換回路、4・・電源回路、5・・引き外しコイル、6・・接点、7・・サイリスタ、10・・電路、11・・A/D変換回路、12・・演算回路、13・・レジスタ、14・・出力回路。
Claims (3)
- 電路電流の平均値を求めて、該平均値を示す仮想正弦波を演算するステップと、
電路電流波のゼロ点近傍の所定範囲の積分値を演算すると共に前記仮想正弦半波のゼロ点近傍の所定範囲の積分値を演算するステップと、
前記電路電流波の積分値と前記仮想正弦波の積分値とを比較して、前記電路電流波の積分値が前記仮想正弦波の積分値より小さければトラッキング放電発生と判断するステップを有することを特徴とするトラッキング放電検知方法。 - 積分する波形ゼロ点近傍区間が電路電流波の位相0°から30°以下の間、又は180°から210°以下の間である請求項1記載のトラッキング放電検知方法。
- 電路電流波の積分値が基本正弦波の積分値の95%以下となったらトラッキング放電発生と判断する請求項1又は2記載のトラッキング放電検知方法。
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN108666972A (zh) * | 2017-04-01 | 2018-10-16 | 苏州益而益电器制造有限公司 | 漏电保护装置 |
CN109633362A (zh) * | 2019-01-30 | 2019-04-16 | 努比亚技术有限公司 | 智能终端设计电路、智能终端及智能终端短路检测方法 |
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2002
- 2002-06-19 JP JP2002178980A patent/JP2004020496A/ja active Pending
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