JP2004020233A - 電子線管及び電子線の制御方法並びにそれを応用した電子線照射装置 - Google Patents

電子線管及び電子線の制御方法並びにそれを応用した電子線照射装置 Download PDF

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Abstract

【課題】電子源、カソード電極、及び照射窓の位置関係の組立て精度を緩和できる構成の電子線照射用の電子線管、電子線制御方法及びそれを用いた電子線照射装置を提供する。
【解決手段】電子源を中間にして互いに対向する一対の第1の電極と、その一対の第1電極の側方に前記電子源を中間にして互いに対向する一対の第2電極とをそれぞれ配置する。前記第1電極及び第2電極にそれぞれ個別に所定の電圧を印加することで電子線を制御する。
【選択図】  図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子部品の生産工程において有機溶剤を含有しない(以下、有機溶剤フリーと記す)インクの乾燥等に用いられる電子線照射装置に関する。特に大気中に置かれた被照射物に照射窓を介して効率良く電子線を照射するための電子線管及び電子線制御方法、並びにそれらを用いた電子線照射装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年環境破壊や人体に有害な有機溶剤の使用が問題視され、電子部品の生産工程などにおいて有機溶剤を使用しない、いわゆる溶剤フリーの生産工程が必要とされている。すなわち、有機溶剤が含まれる塗料やインク等の使用は、その乾燥や硬化時に大量の有機溶剤が大気中に排出されるため、排出ガスの無害化処理に多大の費用が発生していた。そこで有機溶剤を含まない溶剤フリーのインクを用いて電子線照射により乾燥や硬化を行う生産工程が提案されている。
この電子線を照射する電子管として特表平10−512092号公報に記載されているような電子線管が市販されるようになってきた。
【0003】
この真空容器の一部に照射窓が取り付けられ大気中に照射を行う構造の特表平10−512092号公報に開示されている従来の電子線管につき図13〜図15を参照しつつ説明する。
図13において、従来の電子線管では、電子線を透過させる窓10を有する電子加速部19で封止した真空容器18内に熱電子放出部12を設け、熱電子放出部12から放出される熱電子を電子加速部19で加速しつつ薄く作った下に詳述するアノードの窓10を通して大気中に電子線を放出する。この電子線管を用いると被照射物を設置する場所の雰囲気を減圧する必要がなく、減圧用の真空ポンプや真空チャンバが不要となり電子線照射装置の構成が簡素化され、しかも扱いやすくなっている。
【0004】
電子線管の内部の圧力は、熱電子放出部12が発生した電子線が減衰しないように10−6〜10−8Torrの真空に減圧されている。一方窓10は電子線が透過するとき減衰しないように、電子線加速部19を形成するシリコン単結晶アノード電極の一部をエッチング加工して形成した厚さ数μm〜数十μmの薄膜で形成されている。すなわち窓10が薄く、しかも単結晶薄膜であることにより低エネルギーの電子線でも減衰しないで透過し、外部への電子線照射が可能となっている。
窓10の面積が大きいほど発生した電子線を効率よく照射できるが、この窓10は電子線管の内部の減圧圧力と外部の大気圧を仕切る役割も果たさなければならない。窓10の面積を大きくすると大きな圧力のため窓10の薄膜が破損してしまうので、通常一辺が数十μmの四角形の小さい面積の窓を複数個配列し、長辺が1mm〜2mmで短辺が数十μmのスリット状の窓に構成している。
【0005】
上述のように真空容器18内にある熱電子放出部12であるフィラメントから発生した熱電子が、カソード電極13によって小さな照射窓10に収束され、大気中に電子線を放出する。図14に示すように、このカソード電極13は熱電子放出部12であるフィラメントの長手方向を囲むよう断面(紙面に垂直な断面)がアーチ型の形状をしており、図13の電極棒44に接続されて外部から所定の電位を与えられ電子線40を収束する。
【0006】
一方図15に示すように、特開2000−241599号公報には同様な薄膜の窓をもつ電子線管において、断面が線状の熱電子発生部41の長手方向(紙面に垂直な方向)を導電板47に設けた電界形成電極46で挟み込むように配置した電子線管が開示されている。
【0007】
これらの従来の電子線管は、いずれも線状の熱電子発生部を有しているため、窓の長手方向における電子線照射強度のばらつきが大きくなる。そのようなばらつきの影響を少くするため、複数の電子線管を被照射物の移動方向に対して傾斜させて配置しそれぞれの電子線管の窓の長手方向の重なり度を調整することにより、窓の長手方向における電子線照射強度のばらつきを低減した電子線照射装置が特開2001−194500号公報に開示されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上述した熱電子の発生源であるフィラメントの長手方向を挟みこむカソード電極を有する従来の電子線管では、組み立てた後に自由に電子線の軌道を変えることができない。したがって電子源であるフィラメントから発生する熱電子を小さな窓に正確に収束させ、効率良く外部に電子線を照射するためには、電子線管を組み立てる工程でフィラメント、カソード及び窓のそれぞれの位置関係を最初からきわめて精度良く配置するため厳しい組立て精度が要求される。
組立て精度が悪いと所望の窓の位置に電子線が収束されず、窓以外の電子線加速部を形成するアノード電極の領域に電子線が衝突してしまい、窓から電子線が照射できなくなるという問題があった。
【0009】
一方冷陰極のような面状の電子源に対しては窓の長短両方向の電子線の軌道をそれぞれ制御する必要があるが、従来のフィラメントの長手方向を挟みこむカソード電極では短手方向の制御ができないという問題もあった。
【0010】
本発明は、電子線管内部のフィラメント、カソード、及び窓の位置関係の組立て精度を緩くしても、組立て後に電子線の軌道を自由に制御して窓の位置に収束させることのできる電子線管を提供することを目的とする。さらに電子源がフィラメントのような線状のものだけでなく、冷陰極のような面状の電子源に対しても電子線の軌道が窓の長短手の2軸方向に制御可能な構成の電子線管を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の電子線管は、電子を放出する電子源、前記電子源から放出される電子を加速し、所定の部分に設けた窓を通して外部に電子線を照射するアノード電極、前記電子源を中間に位置せしめ、互いに対向する一対の第1の電極、前記一対の第1電極の側方に配置され、前記電子源を中間に位置せしめた互いに対向する一対の第2電極、前記第1電極及び前記第2電極を互いに電気的に絶縁して支持する絶縁支持体、前記電子源、前記第1電極、前記第2電極及び前記絶縁支持体を封止して真空状態に収容する真空容器、前記電子源、前記第1電極及び前記第2電極にそれぞれ個別に電圧を印加するように前記真空容器を通して外部に導出した導出導体を有している。
【0012】
この構成によれば、電子源を中間に位置せしめ互いに対向する一対の第1の電極と、その一対の第1電極の側方で前記電子源を中間に位置せしめた互いに対向する一対の第2電極のそれぞれに外部から個別に電圧を印加することができる。したがって電子源から放出される電子流の収束方向を窓の長手及び短手方向の2軸方向に自由に制御することができる。その結果電子源、第1及び第2電極及び窓の位置関係の組立て精度を緩くしても、組立て後に電子線の軌道を2軸方向に自由に制御して窓の位置に収束させることができる。さらに2次元(面状)に配列している電子源に対しても電子線の軌道が2軸方向に制御可能となる。
【0013】
上記構成の電子線管において、窓の形状や電子源の位置や形状に応じて、第1電極と第2電極とを構成するそれぞれの電極のうち少なくとも1つの電極の形状を他の電極と異なる形状に変えるのが好ましい。例えば第1電極または第2電極のいずれか一方を他方より対向長を短くすることにより、その電極に平行な方向の電子線の収束を弱める機能を付与することができる。このように電極の形状を異ならせることにより所望の電子線の収束を行うことができる。
【0014】
第1電極または第2電極が平行平板で構成され、2対の電極のなす角度が90度となるように配置するのが好ましい。この配置によれば電子線と垂直に交わる窓の長短手の2軸方向への制御が可能となる。
またこの第1電極または第2電極の2対の電極を非直角をなすように配置すると、窓の長手方向に垂直な方向に傾斜した電界を印加することができる。これにより例えばフィラメント電子源のように中心部と端部で電子発生の密度が異なる電子源に対して、実施例2で後述するように電子線の長手方向における電子線の密度差を小さくすることができる。
【0015】
本発明の電子線制御方法は、電子源を中間に位置せしめ互いに対向する一対の第1の電極、及び前記第1電極の側方に配置され、前記電子源を中間に位置せしめた互いに対向する一対の第2電極を構成している各々の電極に個別に所定の電圧を印加して電子線の収束方向を制御することを特徴とする。
この構成の電子線制御方法によれば、第1の電極及び第2の電極にそれぞれ個別に所定の電圧を印加することにより、それぞれの電極に垂直な方向の電子線を所望の方向に収束させることができる。
例えば第1電極または第2電極のいずれか一方の電極に印加する電圧を制御することにより電圧を印加した電極に垂直な方向の制御を行うことができる。また第1電極及び第2電極の2つの電極にそれぞれ印加する電圧を同時に制御することによりそれぞれの電極に垂直な方向の2軸方向の制御を行うことができる。
【0016】
上記電子線制御方法において、第1及び第2電極を構成している各々の電極のうち少なくとも一つに交流電圧を印加するのが好ましい。これにより交流電圧を印加した電極に垂直な方向の電子線の収束方向を周期的に振らせることができ、窓の所望の位置に電子線が収束することができる。
上記方法において、第1及び第2電極を構成している各々の電極に所定の直流電圧を印加し、さらに少なくとも一つの電極に同時に交流電圧を重畳して印加するのがさらに好ましい。これにより電子線の収束方向を所望の方向に制御しつつ交流電圧を重畳した電極に垂直な方向の電子線の収束方向を周期的に振りながら効率良く窓の所望の位置に電子線を収束することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下本発明の電子線管の好適な実施例について添付の図面を参照しつつ説明する。以下の実施例における電子発生源には線状のフィラメントを用いたものとして説明する。
【0018】
《実施例1》
図1ないし図3は第1の実施例を示し、図1は本発明の実施例1の電子線管の窓の長手方向から見た断面図、図2は、図1の破線A−A部分における窓側から電極部分を見た断面図である。
図3は実施例1の電子線管を駆動する電気回路図である。
図1及び図2において、実施例1の電子線管はガラス製の円筒形の真空容器21と真空容器21の一端に封着されたスリット状の薄膜の窓25を有するシリコン基板のアノード電極24とを有し内部の電極部分と大気とを隔離している。
【0019】
電子線管の内部には、電子源であるタングステン線をコイル状に巻回したフィラメント20と、その長手方向を挟みこむように一対の板状の第1電極22a、22bが配置されている。またフィラメント20の長手方向と直角の方向(以下短手方向と略称しておく)に、フィラメントをあたかも挟みこむように一対の板状の第2電極23a、23bが配置されている。
第1電極22a、22b及び第2電極23a、23bは、それぞれアルミナ製の絶縁支持体26の4つの側面に接続されて電気的に絶縁され、真空容器21の内部に支持されている。そしてフィラメント20、第1電極22a、22b及び第2電極23a、23bは、真空容器21から外部に対して気密に貫通したそれぞれの導出導体20a、22c、22d、23c、23dにより接続支持されている。
【0020】
電気的には図3に示すように、アノード電極24は接地され、高圧直流電源33の負の高圧側に副電源32及び接地側と絶縁トランスにより絶縁された商用周波数の所定の交流電流が流されるフィラメント20が接続されている。
ここでフィラメント20への電圧印加には交流印加に限るものではなく、別の方法として直流印加としてもよい。第1電極22a、22b及び第2電極23a、23b(図示省略)には、副電源32からそれぞれ所定の負の高電圧が印加される。負の高圧が印加されているフィラメント20に発生した熱電子は接地しているアノード電極24に向かって加速される。
【0021】
フィラメント20には商用周波数の交流電流が流され、2000℃以上に加熱されて熱電子を発生させる。この実施例1では、タングステンフィラメント40W(線径50μm)に対して1Aの電流を流している。第1電極22a、22b及び第2電極23a、23bにそれぞれ印加する負の高電圧を調整して熱電子を収束させて電子線としている。この電子線はフィラメント20に対して接地したアノード電極24との電位差により加速される。こうして加速された電子線は窓25から電子線管の外部に照射させる。
【0022】
図4及び図5は、フィラメント20から放出され窓25に向う電子線の収束軌道の図である。そのうち図4はスリット状の窓25の長手方向に対して垂直方向である断面図を示し、図5はスリット状の窓25の長手方向に平行な面による断面図を示している。
図5に示すように、フィラメント20のような線状の電子源に対しては、窓25は補強用の梁25bを設けて矩形の窓25aをフィラメント20の長手方向に複数個配列させるのが窓の機械的強度を向上できるので好ましい。
【0023】
フィラメント20から発生する熱電子はフィラメント20の全周から全角度の方向に放出されるため、第1電極22a、22b及び第2電極23a、23bにより窓25に効率よく電子線を収束させる必要がある。そのためには図4に示す窓25の長手方向に垂直な電子線と、図5に示す窓25の長手方向の電子線とをそれぞれスリット状の窓25の領域に収束させなければならない。
【0024】
本実施例1の電子線管では、図4及び図5に示すようにフィラメント20の長手方向を挟みこむように互いに対向する一対の第1電極22a、22bと、フィラメント20の短手方向を挟みこむようにもう一対の第2電極23a、23bとを配置し、フィラメントと4つの電極とでカソードを構成している。そして第1電極22a、22bと第2電極23a、23bの各々に個別に電圧を印加すれば、第1電極22a、22bとフィラメント20との電圧差によって生じる第1電極面に垂直方向の電場によって、電子線の加速方向をフィラメント20の短手方向に制御することができる。また第2電極23a、23bとフィラメント20との電圧差によって生じる第2電極面に垂直方向の電場によって、電子線の加速方向をフィラメント20の長手方向に制御することができる。
【0025】
すなわち第1電極22a、22bと第2電極23a、23bとによってカソードからアノードへの垂直な面における2軸方向の電子線の収束方向の制御を行うことができる。また、第1電極22a、22b及び第2電極23a、23bとアノード電極25との電圧差によって、カソードからアノードへの方向の熱電子の加速制御を行うことができる。
【0026】
これらの電圧差を生じさせるためには、図3に示すように高圧電源33に対して副電源32を設けてある。この副電源32には第1電極22a、22b、第2電極23a、23bがそれぞれ電気的に絶縁されて接続されており、それぞれの電極22a、22b、23a、23bに印加する電圧を個別に制御することができる。この副電源32としては、制御の方法によって直流電源または交流電源などを用いることができる。
単純に電子線の収束位置及び軌道を一方向に変える場合には、副電源32には直流電源を用いればよい。
【0027】
フィラメント20の長手方向に第1電極22a、22b、その垂直方向に第2電極23a、23bをそれぞれ配置させた場合、第1電極22a、22bと第2電極23a、23bとの管軸に平行な方向の長さを同じ長さにすると、電子線が中心方向へ収束されすぎて、窓25の一部分に集中してしまう。電子線が一方向へ集中すると照射領域が狭くなるばかりか、電子線が集中することで熱の集中も起こるため窓25の破損が生じて真空が破れてしまう。そのため実施例1の電子線管においては、図1に示すように第2電極23a、23bを第1電極22a、22bより短くしているので長尺状のフィラメント20の長手方向の収束の状態を緩くすることができる。
【0028】
このように実施例1の電子線管によれば、長尺状のフィラメント20の長手方向及び短手方向の2軸に対してそれぞれ収束状態を適正に制御することができる。その結果電子線管を組み立てる工程でフィラメント20及び第1電極22a、22b、第2電極23a、23bで構成されるカソードと、窓25との位置関係の組立て精度をそれ程厳密にしなくても窓25の領域の全般にわたり電子線を効率よく収束することができる。
【0029】
図6は、実施例1の電子線管におけるスリット状の窓の長手方向での電子線の収束状況をシミュレーションした一例を示す図である。シミュレーションの方法は、Idaho National Engineering and Environmental LaboratoryのSIMION 3D ver.7.0のPC用シミュレーションソフトを用いて行った。フィラメント20上に存在するある点からは数個の熱電子が球状360度方向に発生したと仮定して電子の軌跡を計算した。この電子の発生点はランダムに選択しており、必ずしもフィラメント20の表面における電子発生密度を示すものではない。
なお第2電極23a、23bにはフィラメント20に対して相対的にプラスの直流電圧を与えて、窓25の長手方向の領域に最適に収束されるように計算した。この時第1電極22a、22bにはDC −50kV、第2電極23a、23bにはDC −49.5kVを与えている。
【0030】
このシミュレーションの結果が示すように、副電源32に直流電源を用いることで電子線の収束の位置を適正な位置に移動させ、窓25の領域に常に正確に電子線を導くことができる。
【0031】
《実施例2》
図7は、実施例2の電子線管における第1電極及び第2電極とフィラメントとの位置関係を示す平面図である。ここではフィラメント20の長手方向及び窓の長手方向を矢印dで示す。実施例2の電子線管は実施例1のものと第1の電極及び第2の電極とフィラメント20との位置関係のみが異なるものである。したがって実施例1と同様な部分には同一符号を付して重複する説明は省略する。
図8に示すように、実施例1の電子線管のように第1電極22a、22bと第2電極23a、23bとのなす角度が90度となるように配置した電子線管においては、電子線の密度は図9の(a)に示すようになる。すなわちフィラメント20のように中心部と端部で電子発生の密度が異なる電子源に対して、窓25から外部に照射される電子線量のピーク点の分布は図9の(b)に太い実線で示すように、窓の短手方向でピーク点が中心線上に分布する。そして図9の(c)に示すように被照射物50上における電子線量のピークの軌跡は被照射物50の移動方向Tに平行な直線となる。
【0032】
これに対して図7に示す実施例2の電子線管では、第1電極22e、22fと第2電極23e、23fとのなす角度が非直角をなしている。この場合窓25から外部に照射される電子線量の分布は図10の(a)に示すように、窓25の短手方向の中心部C1ではピーク値を示す。ところが窓25の短手方向では図10の(b)に示すように、そのピーク値を示す点が太い実線で示すように傾斜した線上に分布する。したがって図10の(c)に示すように被照射物50上における電子線量のピークの軌跡は被照射物50の移動方向Tに平行な点線で示す幅広の領域(斜線の領域)となる。
【0033】
例えば図11に示すような平面形の被照射物50を図中の両方向矢印のように移動させながらその表面に照射を行う場合には、実施例2の電子線管では、窓25の長手方向dに対して照射量の差を小さくすることができる。
図11のc2線上の各位置dにおいて照射量を観測すると、実施例1の電子線管では図12に曲線(i)で示すように鋭いピークをもつ分布となり、実施例2の電子線管では曲線(k)で示すようになだらかなピークをもつ分布となる。すなわち実施例2の電子線管の曲線(k)の方が実施例1の曲線(i)に比べてc2線上での照射量の分布がより広くになっていることがわかる。すなわち第1電極と第2電極とを非直角をなすように配置した電極構造の方が、直角をなすように配置したものにくらべて積算された照射量がよりゆるく広い分布となる。
【0034】
《実施例3》
実施例3の電子線制御方法は、上述した実施例1の電子線管においても、電子線の収束位置を窓領域付近で、周期的にある幅で振りながら、窓領域に周期的に電子線を導く方法である。この方法は実施例1の電子線管で説明した第1及び第2電極に直流電圧を印加する方法に比べると照射に利用できる電子線量は少なくなるものの、電子線が周期的に窓領域に導かれる。このため窓領域に正確に電子線を導く必要がなく、第1及び第2電極に印加する電圧の制御を非常に厳密正確にしなくてもよいと言う利点がある。
【0035】
したがって例えば図3に示す副電源32に交流を発生させる電源を用いれば良い。特に図2のようなフィラメントの電子源20と窓25に対しては、窓25の長手方向に垂直に電子線を周期的に振らせることにより往復の一周期に対して2回は窓25の領域に電子線が導かれる。そのためには第1電極の少なくとも一方の電極に交流電圧を印加すればよい。この場合、例えば第1電極及び第2電極の対向する各電極に直流電圧を印加してより正確に窓領域に収束するとともに、第1電極の少なくとも一方の電極に交流電圧を重畳して印加することで可能である。
【0036】
さらにフィラメント20に交流電流を流して加熱する場合は、第1または第2電極を構成している各々の電極に直流電圧を印加し、少なくとも一つの電極に重畳して印加する交流電圧は、フィラメント20に流す交流成分の振幅よりも大きな振幅をもつ交流成分をもつか、または異なる周波数を持つことが好ましい。このことによりフィラメントの交流成分による電子線発生のばらつきが無視できるようになる。好ましくは振幅および周波数が各々フィラメントの交流と比べて10倍以上あるとよい。
【0037】
また少なくとも2つ以上の交流電圧を印加する場合、これらの交流電圧に異なる位相を持たせて制御することも好ましい。例えば一対を構成する第1電極、第2電極の各々の電極に印加される交流電圧が異なる位相の場合、第1電極によって第1電極の対向面に垂直方向に作られる電場が、異なる位相をもつ交流波形の重ね合わせとして作られる。第2電極の対向面に垂直方向の電場も同様にできる。
【0038】
例えば第1電極の対向する各電極に印加される交流が振幅は同じで位相差が原理的に180度の場合、第1電極間に存在する電子から見ると、電極間の電圧差が電場となるため原理的に元の交流振幅の2倍となり、制御振幅は2倍となる。また、例えば同様に対向する電極間の電圧が原理的に位相差が0の場合、電場が打消しあって制御振幅が0となる。これらは第2電極についても同様である。このことから位相を固定せず、位相差を調整することによって電子線の制御振幅を自在に調整することができる。
特に第1電極と第2電極の各々に印加する交流電圧のうちの2つ以上が、各々120度の位相差を持つ場合、交流波形のひずみの原因となる第3高調波成分が打ち消され制御波形が理想的な交流波形に近づきより正確な制御ができる。
【0039】
実施例1〜実施例3では電子源として熱電子を発生させるフィラメントのような線状のものをもつ例について説明したが、平面状の電子源(例えば、冷陰極などの2次元に形成される電子源を用いても同様の効果が得られる。)であってもよいのはいうまでもない。この場合は電子線の照射領域を線状の電子源に比べて広くできるので、本発明の第1及び第2電極による2軸方向の電子線収束が必要条件となる。
【0040】
【発明の効果】
以上実施例で詳細に説明したように、本発明の電子線管によれば、第1及び第2電極による2軸方向の電子線収束により窓に正確に電子線を収束するために、1次元の線状電子源および2次元の面状電子源に対して、電子管を組み立てる工程でフィラメント、カソード、窓の位置関係の組立て精度をゆるやかにすることができる。
また電子源の発生電子密度分布が大きい場合に、第1電極と第2電極とを非直角をなすように配置することによって、積算照射量の分布ををより広くすることができる。
【0041】
本発明の電子線制御方法によれば、カソードを構成する第1及び第2の各電極に交流電圧を印加することによって、窓領域に対して電子線の収束方向を振らせることができ、さらに組立て精度をゆるくすることができる。
また印加する交流電圧に位相差を持たせることによって、より実用的な電子線の制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1の電子線管の構成を示す窓の長手方向から見た断面図
【図2】図1のAーAにおける窓側からみた断面図
【図3】本発明の実施例1の電子線管における電子線発生原理を示す回路図
【図4】実施例1の電子線管における窓の長手方向から見た電子線の窓に対する収束軌道図
【図5】実施例1の電子線管における窓の短手方向から見た電子線の窓に対する収束軌道図
【図6】本発明の実施例1の電子線制御方法による電子線の収束状況をシミュレーションした結果を示す図
【図7】本発明の実施例2の電子線管における第1電極及び第2電極の配置を示す平面図
【図8】本発明の実施例1の電子線管における第1電極及び第2電極の配置を示す平面図
【図9】(a) 実施例1の電子線管におけるフィラメントのような中心部と端部で電子発生の密度が異なる電子源を用いた場合の窓の位置での電子線密度の分布を示すグラフ
(b) 実施例1の電子線管における窓領域での電子線量のピーク点の分布を示す図
(c) 実施例1の電子線管における被照射物上での電子線量のピーク点の軌跡を示す図
【図10】(a) 実施例2の電子線管におけるフィラメントのような中心部と端部で電子発生の密度が異なる電子源を用いた場合の窓の中央位置での電子線密度の分布を示すグラフ
(b) 実施例2の電子線管における窓領域での電子線量のピーク点の分布を示す図
(c) 実施例2の電子線管における被照射物上での電子線量のピーク点の軌跡を示す図
【図11】被照射物に対して照射される電子線を示す斜視図
【図12】図11の被照射物のC2線上における電子線の照射量を表すグラフ
【図13】従来の電子線管の断面図
【図14】図13における熱電子発生部を横方向から見た断面図
【図15】従来の別の熱電子発生部とカソード電極の構成を示す部分断面図
【符号の説明】
20   フィラメント
20a 導出導体(フィラメント)
21   真空容器
22a、22b、22e、22f   第1電極
22c、22d 導出導体(第1電極)
23a、23b、23e、23f   第2電極
23c、23d 導出導体(第2電極)
24   アノード電極
25   窓
26   絶縁物
32   副電源
33   高圧直流電源
40  電子線
50  被照射物

Claims (16)

  1. 電子を放出する電子源、
    前記電子源ら放出される電子を加速し、所定の部分に設けた窓を通して外部に電子線を照射するアノード電極、
    前記電子源を中間に位置せしめ、互いに対向する一対の第1の電極、
    前記一対の第1電極の側方に配置され、前記電子源を中間に位置せしめた互いに対向する一対の第2電極、
    前記第1電極及び前記第2電極を互いに電気的に絶縁して支持する絶縁支持体、
    前記電子源、前記第1電極、前記第2電極、及び前記絶縁支持体を封止して真空状態に収容する真空容器、および
    前記電子源、前記第1電極及び前記第2電極にそれぞれ個別に電圧を印加するように前記真空容器を通して外部に導出した導出導体
    を有する電子線管。
  2. 前記第1電極及び前記第2電極を構成する、少なくとも1つの電極の外形形状が、他の電極と異なる形状をもつ
    ことを特徴とする請求項1に記載の電子線管。
  3. 前記第1電極または前記第2電極のいずれか一方の対向長が他方より短い
    ことを特徴とする請求項2に記載の電子線管。
  4. 前記第1電極と前記第2電極とがともに平行平板で構成され、前記第1電極と前記第2電極との平行平板がなす角度が90度である
    ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の電子線管。
  5. 前記第1電極と前記第2電極との平行平板のなす角度が非直角である
    ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の電子線管。
  6. 電子源を中間に位置せしめ、互いに対向する一対の第1の電極、及び前記第1電極の側方に配置され、前記電子源を中間に位置せしめた互いに対向する一対の第2電極を構成している各々の電極に個別に所定の電圧を印加して電子線の収束方向を制御する
    ことを特徴とする電子線制御方法。
  7. 前記第1電極または前記第2電極のいずれか一方に印加する電圧のみを制御することにより、
    前記第1電極または前記第2電極のいずれかの対向面に垂直な1軸方向の制御を行う
    ことを特徴とする請求項6に記載の電子線制御方法。
  8. 前記第1電極及び前記第2電極に印加する電圧を同時に制御することにより、
    前記第1電極及び前記第2電極のそれぞれの対向面に垂直な2軸方向の制御を同時に行う
    ことを特徴とする請求項6に記載の電子線制御方法。
  9. 前記第1電極及び第2電極を構成している各々の電極のうち少なくとも一つの電極に交流電圧を印加する
    ことを特徴とする請求項6に記載の電子線制御方法。
  10. 前記第1電極及び前記第2電極に直流電圧を印加し、少なくとも一つの電極に交流電圧を重畳させて印加する
    ことを特徴とする請求項6に記載の電子線制御方法。
  11. 電子源に印加する電圧が交流である場合に、
    前記重畳させて印加する交流電圧は、前記電子源に印加する電圧の振幅よりも大きな振幅をもつ
    ことを特徴とする請求項10に記載の電子線制御方法。
  12. 前記重畳させて印加する交流電圧は、前記電子源に印加する交流電圧と異なる周波数である
    ことを特徴とする請求項11に記載の電子線制御方法。
  13. 前記第1電極及び第2電極を構成しているそれぞれの電極のうち少なくとも2つの電極に交流電圧を印加する場合に、交流電圧を印加するそれぞれの電極に異なる位相をもつ交流電圧を印加する
    ことを特徴とする請求項9に記載の電子線制御方法。
  14. 前記異なる位相をもつ交流電圧の位相差を変化させる
    ことを特徴とする請求項13に記載の電子線制御方法。
  15. 前記異なる位相の交流電圧の位相差が120度である
    ことを特徴とする請求項13に記載の電子線制御方法。
  16. 請求項1〜請求項5のいずれかに記載の電子線管を、
    請求項6〜請求項15のいずれかに記載の電子線制御方法により制御して、
    前記電子線管の窓を通して電子線を被照射物に照射する
    ことを特徴とする電子線照射装置。
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