JP2004009479A - インクジェットプリンタ及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明はインクジェットプリンタに関し、特に圧電素子と弾性板の接着に関するものであり、圧電素子の変位力を出来る限り全て弾性板に伝えること、且つ組立を精密に行なえることを課題とする。
【解決手段】圧電素子と弾性板の間に中継部材を設け、ノズル列方向において、中継部材の圧電素子と接着する側の幅が圧電素子と同じまたは広くし、弾性板と接着する側の幅が圧力室よりも小さくすることにより、圧電素子先端部が中継部材と接着され、圧電素子の変位をすべて中継部材を介して弾性板に伝えることが出来、また圧電素子のノズル列方向の位置ズレを吸収することが出来る。
【選択図】 図7
【解決手段】圧電素子と弾性板の間に中継部材を設け、ノズル列方向において、中継部材の圧電素子と接着する側の幅が圧電素子と同じまたは広くし、弾性板と接着する側の幅が圧力室よりも小さくすることにより、圧電素子先端部が中継部材と接着され、圧電素子の変位をすべて中継部材を介して弾性板に伝えることが出来、また圧電素子のノズル列方向の位置ズレを吸収することが出来る。
【選択図】 図7
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はオンデマンド型のインクジェットヘッドを搭載したインクジェットプリンタに関するものであり、より詳細には記録素子の駆動源として圧電素子を用いるタイプのインクジェットプリンタのプリントヘッド構成及び製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
オンデマンド型インクジェット方式は、駆動源に発熱抵抗体を用いたサーマル方式、圧電素子を用いたピエゾ方式等、様々な方式が提案されて、それぞれの方式の特徴を生かして製品化されている。製品化が進むにつれ市場のニーズとして小型化が求められるようになり、単位面積辺りのノズル数を増やした高密度ヘッドの開発が求められている。このうち、ピエゾ方式は、圧電素子の変位或いは振動を、弾性板を介して圧力室内に伝達してインクを加圧し、ノズルよりインクを吐出する構成である。小型化が進む中、ピエゾ方式において、圧電素子は板状の圧電素子と電極とを交互に積層して形成した積層型が多く用いられ、小さな形状で大きな変位を発生することが可能である。また、圧力室・弾性板・ノズルの形成には精密加工技術が、それらの組立には精密接着技術・高精度位置合わせ技術が用いられ、ノズルピッチを可能な限り狭くしたヘッドの製品化を実現している。
【0003】
このような従来のインクジェットヘッド一例として、図16にヘッドの断面図を示す。このインクジェットヘッドでは、ノズル39を有するノズルプレート40、圧力室41を有するチャンバープレート42、弾性板43を有するダイアフラムプレート44を積層して流路ユニットを形成する。駆動源は圧電素子であって、板状の圧電素子を基台52に貼り付け、ダイサー又はワイヤーソーなど機械加工により所定のピッチに歯割りして振動子45の列を形成し、両端に振動子45の先端の位置決めを行なうダミー振動子46を設けて、圧電素子ユニットを形成する。流路ユニットと圧電素子ユニットは、高い剛性を持ち、インク供給路を持つ固定部材(図示せず)に位置決めされて接合される。圧電素子ユニットは固定部材に設けられたガイド48により、ノズル列方向及びノズル列に直行する方向の位置決めを行なう。
【0004】
図17に図16の流路ユニットと圧電素子ユニットの接合部を拡大した図(図16のA部分の拡大図)を示す。ダイアフラムプレート44により形成される弾性板43には、細長い島状の突起49が設けられている。突起49のノズル列方向の幅(L1)は振動子45の幅(L2)よりも狭く、ノズル列方向に直角な方向の長さは振動子45よりも長くなっている。
【0005】
また、突起49の形成方法は、樹脂と金属板を張り合わせた積層板のうち、金属面を圧力室形状に対応するようにパターニングして、圧力室41の中央部の金属を島状に残して突起49を形成し、その周りの樹脂を露出させて弾性板とし、さらにその周りを金属として残し、弾性板周囲の剛性を上げる枠部50とするようにエッチングにより生成される。突起49と枠部50は同一の厚さであるので、枠部にダミー振動子46を突き当てることにより、振動子45先端面の位置と突起49の位置を正確に合わせることが出来る。
【0006】
このように、突起49を用いることにより、振動子45の圧力室41に対するノズル列方向の位置が多少ズレて接着されても、突起49が圧力室41の中央にある限り、圧電素子の変位あるいは振動を伝える位置を常に一定とすることが出来る。また、突起49の短手方向の幅を圧力室形状に合わせて調整することで、圧力室41内のインクに対し、最も効率よくエネルギーを伝えることが出来る作用も持つ。これらにより、流路ユニットと圧電素子ユニットの組立により累積されたズレを補正することが可能である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前述した従来例のように位置ズレを補正する作用を持たせた突起49の場合、図17に示す振動子45の接着されない部分51においては、振動子45の変位を直接圧力室に伝えることが出来ない。従って、突起49の幅は振動子45の幅より狭くなければならないという制限を受ける。
【0008】
また、突起49の周りに枠部50がある場合、枠部50と突起49は同一厚さであるため振動子45が枠部50と干渉しないようにする必要があり、これによって振動子45の幅(最大値)は枠部50により制限されることになる。
【0009】
更に、高密度化したヘッドにおいて、エッチング等で突起を作製する場合、アスペクト比により寸法の制約を受ける可能性もあり、また、オーバーエッチング等により振動子45との接着面が丸くなり、接着面積が減少する可能性がある。
【0010】
本発明は、このような問題点に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、振動子の大きさを圧力室や弾性板の形状によらずに大きくすることを可能とし、かつ圧力室に対し正確に位置決めして組立てることが出来るインクジェットヘッドを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以下の特徴・製造方法を有するインクジェットヘッドを構成し、前述した課題を効果的に解決するものである。
(1)列状に並んだ複数のノズルと、該ノズルと夫々対応し、かつ前記ノズルに連通する複数の圧力室と、該圧力室の一部を形成する弾性板と、前記弾性板と結合する圧電素子を有し、該圧電素子に電気信号を印加することにより、弾性板を介して前記圧力室に容積変化を与え、前記ノズルからインクを吐出するインクジェットプリンタにおいて、前記圧電素子と前記弾性板との間に中継部材を設け、該中継部材の前記弾性板に接着する面(Trd)と、前記中継部材の前記圧電素子に接着する面(Trp)と、前記圧電素子のノズル列方向の幅(Tp)と、前記圧力室のノズル列方向の幅(Tc)が、Trd<Tc、Trd<Trp、かつTp≦Trpの関係を満たしていること。
(2)前記圧電素子のノズル列方向の幅(Tp)と、前記圧力室のノズル列方向の幅(Tc)の関係がTp>Tcであること。
(3)前記中継部材の形状を凸状とし、かつ該中継部材の狭幅部の高さは、少なくとも前記圧電素子の最大変位量よりも大きいこと。
(4)前記中継部材のノズル列方向と直行する方向の幅は、前記圧電素子のノズル列方向と直行する方向の幅よりも大きいこと。
(5)前記中継部材の弾性板との接着面あるいは前記圧電素子との接着面には、接着剤の逃げ溝を設けたこと。
(6)列状に並んだ複数のノズルと、該ノズルと夫々対応し、かつ前記ノズルに連通する複数の圧力室と、該圧力室の一部を形成する弾性板と、前記弾性板と結合する圧電素子を有し、該圧電素子に電気信号を印加することにより、弾性板を介して前記圧力室に容積変化を与え、前記ノズルからインクを吐出するインクジェットプリンタにおいて、当該インクジェットプリンタの製造工程として、プリンタの前記圧電素子を櫛歯状もしくは短冊状に加工する工程と、複数の中継部材が形成されている中継部材連結プレートに前記加工された前記圧電素子を接着する工程と、前記中継部材を中継部材連結プレートから分離する工程と、前記圧電素子に接着された前記中継部材を前記弾性板に接着する工程を経ること。
(7)中継部材の材質はシリコンであり、凸形状の形成には、異方性エッチングまたはドライエッチングを用いること。
【0012】
以上のように、振動子と弾性板を、中継部材を介して固定し、さらにノズル列方向において、中継部材の振動子との接着面の幅を振動子幅よりも広くしたことにより、振動子の先端面の変位をすべて弾性板に伝えることが出来る。また、中継部材の弾性板との接着面の幅を圧力室よりも狭くしたので、振動子の幅を圧力室の幅よりも広くした場合でも、中継部材を介しているため、弾性板を押す面積は一定で、弾性板に伝えるエネルギーのみ増加させることが出来る。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の第1の例となるインクジェットヘッドの構造説明図である。本ヘッドは大きく分けて、圧電素子を搭載した圧電素子ユニットと、インク流路を有するインク流路ユニット18からなる。
【0014】
インクの流れを制御するインク流路ユニット18は、複数のノズル1を有するノズルプレート2と、ノズル1に対応する位置に圧力室3が形成されたチャンバープレート6と、圧力室3の一側壁をなす弾性板7が配列されているダイアフラムプレート11とでインク流路系を構成し、これらを流路固定プレート17により固定してユニットを形成する。各プレートはそれぞれ流路位置決めピン穴16を持ち、位置決めピン15でそれぞれを位置決めした状態で接着剤により固定される。
【0015】
ノズルプレート2は、プレス加工によりノズル列を形成する。インクを吐出する面には撥水処理が施される。ノズルプレート2の材質はFe−42%Niなどを用いている。
【0016】
チャンバープレート6は、ノズル1に対応する位置に圧力室3を形成し、インクの流れを制御するリストリクタ4、インク供給を行なうマニホールド5が形成されている。チャンバープレート6の形成にはシリコンウエハを用いている。
【0017】
ダイアフラムプレート11は、樹脂フィルム(ポリイミド)と金属板(SUS304)を張り合わせた後、圧力室やマニホールドなどの位置に合わせて金属部分をエッチングして樹脂フィルムを露出させて、弾性板やインク供給口10等を形成する。
【0018】
流路固定プレート17は、高い剛性が求められるため、SUS430などの金属が使用される。流路固定プレート17は弾性板7の列を囲う窓12と、インク供給管を通す供給管穴13とが設けられている。位置決めには専用の流路固定プレート位置決めピン穴17用いられ、ダイアフラムプレート11に接着される。
【0019】
駆動源である圧電素子ユニットは、電気信号の印加により変位する圧電素子(以下、振動子という)20と、振動子20とインク流路ユニット18を保持するヘッド基台23と、振動子20及びヘッド基台23とインク流路ユニット18とを中継する中継部材連結プレート32からなる。
【0020】
振動子20は、ペースト状の圧電材料と電極を交互に積層して形成される積層型圧電素子を用いる。本例では、分極方向に対し、直行する方向に変位するd33型の圧電素子を使用する。板状の圧電素子は圧電素子板19として、駆動源である振動子20をノズル数分含んでいる。
【0021】
ヘッド基台23の材質は樹脂または金属(SUS430)で、機械加工により門型の形状に加工され、圧電素子板19を貼り付ける圧電素子固定面21を中央に、インク流路ユニットを保持する流路固定面22を両端に位置するように形成されている。圧電素子固定面はSiO2などの絶縁層をが蒸着される。
【0022】
ヘッド基台23と圧電素子板19は、圧電素子板19の一端を圧電素子固定面21に非導電性のエポキシ系接着剤24で接合される。その後、図2に示すように、導電性接着剤25を圧電素子板19の両側面と、ヘッド基台23の付け根からヘッド基台23の側面にかけて塗布する。
【0023】
続いて、図3に示すように、流路固定面22と圧電素子板19端面が同一平面となるように研磨加工する。研磨加工後、圧電素子板19はダイサーまたはワイヤーソーで所定のピッチに歯割され、図4のように短冊状の振動子20の列を形成する。この時、両端に残る圧電素子の残部26は取り除かれる。
【0024】
図5は共通電極の配線方法について、図4のB方向(振動子20の変位方向のノズル側)から見た振動子20及びヘッド基台23の様子を示した図である。上述した工程の後、図に示すように、片面の電極を引き込む共通電極引出し線27を貼り付ける。
【0025】
図6に中継部材連結プレート32の上面図、図7に振動子20と中継部材28、インク流路の側面図を示す。中継部材連結プレート32は、振動子20と弾性板7を連結する役割を持つ中継部材28と、中継部材を連結する架橋部29、中継部材28の位置を決める中継部材位置決め穴30を持つヘッド基台中継部31から構成される。中継部材連結プレートの材質はシリコンが用いられ、異方性エッチングにより、中継部材28や中継部材位置決め穴30を寸法誤差±0.002mm以内の精度で形成される。中継部材28の形状は凸型であり、下側の狭い面が弾性板7との接着面33、上側の広い面が振動子20との接着面34である。
【0026】
図7に示すように、ノズル列方向において、中継部材28における弾性板7との接着面33の幅(Trd)は、チャンバープレート6の圧力室3の幅(Tc)に対し、Tc≒3Trpとなるように設定する。これは弾性板が撓んだ状態の形状(ほぼ台形状)より計算によって求められ、この式を満たす場合、圧電素子の変位により変形する圧力室3の体積が最も大きくなる。中継部材28の弾性板との接着面33側の高さ(hrd)は、圧電素子の変位量p、ダイアフラムプレート11の金属板9の厚さ(hm)に対し、hrd>hm+pとなるように設定している。これは、中継部材28が金属板9に接触して、変位のエネルギーが減少することを防ぐためである。pは、hm≫pであるので、hrd>hmで差し支えは無い。また、同じくノズル列方向において中継部材28の振動子との接着面34の幅(Trp)と、振動子20の幅(Tp)はTrp>Tpであるように設計される。これは振動子20の先端面全体が中継部材28の振動子側と接合されるためである。振動子20の剛性を高めるために、振動子の幅を太くした場合、Trp>Tcとなる場合がある。振動子接着面34側の高さhrpはなるべく薄い方が良いが、薄過ぎると圧力室を押す際に撓む可能性があるので、hrp≧hrdであると良い。
【0027】
図8は振動子20、中継部材28をインク流路に接着した際の断面図を示す。ノズル列方向と並行な方向(配線方向)において、中継部材28の長さ(Lr)は、圧力室3の長さ(Lc)に対し、Lr≒Lc−2Trpとなるようにすることにより、効率的に弾性板7を押すことが出来る。
【0028】
先に図6で示したように、中継部材28はそれぞれ中継部材28を連結する架橋部29にて保持される。架橋部29は中継部材28よりも薄くなっており、ダイサー等で切断することにより中継部材28を簡単に剥離することが出来る。
【0029】
ヘッド基台中継部31はヘッド基台23の流路固定面22と接合するように配置される。ヘッド基台中継部31の高さhrhは、hrh≦(hrp+hrd)であると、図9に示すように、中継部材28が弾性板7を押し込むため、確実な接着が行なえる。
【0030】
中継部材位置決め穴30は、図1に示すようにチャンバープレート6に設けられた位置決めピン穴16bと同じ位置関係に有り、位置決めピン15aを用いてお互いを接合すると、正確な位置決めを行なうことが出来る。
【0031】
複数の振動子20とヘッド基台23よりなるクミ部品と、中継部材連結プレート32の接合には、マイクロスコープやメカニカルステージを用い、図示しない治具により、位置決めして固定される。この接着には、中継部材連結プレート32にエポキシ系接着剤24を塗布して接着する。
【0032】
クミ部品と中継部材連結プレート32の接合後、図10のように中継プレート28、ヘッド基台中継部31及び架橋部29をダイサー等で切断する。ダイシング時、中継部材28が振動子20から剥離する、または振動子20がダイシング時の振動により折れるなどが発生する可能性があるので、ワックス等で中継部材28と振動子20を固定した状態で切断する。切断後、ワックスや切削粉を洗浄して除去し、電気信号を伝達するFPC(フレキシブルプリントケーブル)35を取り付けて、圧電素子ユニット36を完成させる。
【0033】
以上のように形成した圧電素子ユニット36及びインク流路ユニット18を接合は、位置決めピン15cにて行なわれる。図11に圧電素子ユニット36とインク流路ユニット18の接合方法を示す。中継部材28に非導電性のエポキシ系接着剤24を塗布し、中継部材位置決めピン穴30とインク流路ユニット18の位置決めピン穴16dを位置決めピン15cで位置決めして接合する。両ユニットを接合した後、インク供給管37をインク流路ユニット18に取り付けて、図12に示すようなインクジェットヘッドを完成させる。
【0034】
このように形成されたインクジェットヘッドは、個々の振動子20の先端面を全面積を中継部材28に接着することが出来、振動子20の変位を全て中継部材28に伝達することが出来る。また、弾性板7との接着面を最適な面積にすることが可能となる。更に、中継部材28の位置を圧力室3の中央に配置することが容易となる。
【0035】
図13は中継部材連結プレート32の第2の例を示す。圧電素子板19とヘッド基台23を固定した後、圧電素子板19を短冊状に加工する前に中継部材連結プレート32と接合する。中継部材連結プレート32は実施例1と同様に形成されるが、架橋部29がノズル列方向に設けられている。架橋部29はこの場合、中継部材28の圧電素子との接着面側と同じ厚さとなっている。この状態で圧電素子及び中継部材連結プレート32の架橋部29を切断することで、振動子20形成と中継部材28の分離を同時に行なうことが出来る。この場合、振動子20の幅(Tp)と中継部材28の振動子20側の幅(Trp)はTp=Trpとなる。
【0036】
図14は図13は中継部材連結プレート32の第3の例を示す。ノズル列方向において、圧電素子の幅(Tp)が圧力室3の幅(Tc)よりも広くなっている。本例はノズル間での相互干渉を減少させるため、圧力室3間のピッチ(Pc)を広くしたときなどで用いられる。振動子20が太くなることにより、変位力が増大し、また剛性が高まるため、破損が減少する。
【0037】
なお、本例では、振動子としてd33型を用いているが、その他としてd31型の振動子を用いたものでも適用可能である。この場合、圧電素子板19とヘッド基台23を研磨した後、圧電素子の端面に電極を蒸着させる工程が加わる。
【0038】
図15は中継部材連結プレート32の第4の例を示す。中継部材28の弾性板との接着面33、または振動子との接着面34に溝38が設けられている。弾性板7側において、エポキシ系接着剤24が所望の範囲外(Cの領域)にはみ出すと、中継部材28と弾性板7の接着面積が変化し、接着状態によりインク吐出特性にバラツキが発生する。そこで、溝38を設けることにより、接合時の押圧によるエポキシ系接着剤24のはみ出し量を低減し、接着面積の均一化を図ることが出来る。この場合、溝38はノズル列方向と平行な方向に複数設けると、中継部材20の接着面積をあまり減少させずにはみ出しを防止できる。また、振動子20側において、接合時に接着剤24がはみ出して、中継部材28のノズル列側に流れ出た場合、ダイアフラムプレート11の金属板9と接触する可能性があり、振動子20の変位を妨げることに繋がる。よって、この場合、溝38は中継部材28のノズル列方向と直行する方向に設けられる。
【0039】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明によるインクジェット記録ヘッドは、列状に並んだ複数のノズルと、該ノズルと夫々対応し、かつ前記ノズルに連通する複数の圧力室と、該圧力室の一部を形成する弾性板と、前記弾性板と結合する圧電素子を有し、該圧電素子に電気信号を印加することにより、弾性板を介して前記圧力室に容積変化を与え、前記ノズルからインクを吐出するインクジェットプリンタにおいて、前記圧電素子と前記弾性板との間に中継部材を設け、該中継部材の前記弾性板に接着する面(Trd)と、前記中継部材の前記圧電素子に接着する面(Trp)と、前記圧電素子のノズル列方向の幅(Tp)と、前記圧力室のノズルの列方向の幅(Tc)が、Trd<Tc、Trd<Trp、かつTp≦Trpの関係を満たすようにすることで、振動子と弾性板との接着面積を一定とし、振動子のノズル列方向の組立誤差を吸収し、且つ振動子の変位を余すことなくインクに伝達出来することが出来る。
【0040】
また、振動子の幅を圧力室の幅よりも広く取ることが出来る為、振動子の力を大きくすることが出来る上、振動子が太くなる為、加工時や取り扱いでの破損が減少する。
【0041】
また、中継部材の凸状の肉厚が細い部分の高さが、少なくとも振動子の最大変位量よりも大きくしたことで、中継部材が周囲の部材と接触して、変位エネルギーを吸収されて、インク吐出性能を低下させる現象を防ぐことが出来る。
【0042】
また、中継部材のノズル列方向と直行する方向の長さが圧電素子板の厚さよりも長いことにより、圧電素子の先端面積よりも広い範囲において、弾性板を変形させることが出来る。
【0043】
また、中継部材の材質をシリコンとしたことで、高精度な形状加工が可能となり、圧力室への位置決めを精密に行なうことが出来る。
【0044】
また、中継部材の弾性板または振動子との接着面に、接着剤の逃げ溝を設けたことで、弾性板と中継部材の接合部における接着剤のはみ出しが減少し、ノズル毎の接着状態が均一となり、インク吐出特性を安定にすることが出来る。また、振動子側でも、接着剤の流れ出しによる不必要な部分への付着を防ぎ、組立時の部品同士の干渉や接触を防ぐことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のインクジェットプリンタに適用されるインクジェットヘッドの分解斜視図。
【図2】本発明の一例となる振動子とヘッド基台の接着状況を示す断面図。
【図3】本発明の一例となる振動子の加工方法を示す概念図(図2のA方向から見た図)。
【図4】本発明の製造方法における圧電素子の加工状態を示す図(図2のA方向から見た図)。
【図5】本発明の製造方法における圧電素子の配線状態を示す図(図4のB方向から見た図)
【図6】本発明の中継部材連結プレートを示す平面図。
【図7】本発明の一例となる圧電素子、中継部材及び圧力室の関係を示す断面図。
【図8】図7のC方向から見た場合の、圧電素子及び中継部材をインク流路に接着した状態を示す断面図。
【図9】本発明のインクジェットプリンタに用いられるインクジェットヘッドの部分拡大断面図。
【図10】本発明の製造方法の一例を示す斜視図及び平面図。
【図11】本発明のインクジェットプリンタに用いられるインクジェットヘッドのクミ部品の分解斜視図。
【図12】本発明のインクジェットプリンタに用いられるインクジェットヘッドの斜視図。
【図13】本発明の製造方法の他の例を示す斜視図及び平面図。
【図14】本発明の他の例となる圧電素子、中継部材及び圧力室の関係を示す断面図。
【図15】本発明の他の例となる圧電素子、中継部材及び圧力室の関係を示す側面断面図。
【図16】従来のインクジェットヘッドの構成を示す平面図。
【図17】図16のA領域の拡大図。
【符号の説明】
1はノズル、2はノズルプレート、3は圧力室、4はリストリクタ、5はマニホールド、6はチャンバープレート、7は弾性板、8は樹脂フィルム、9は金属板、10はインク供給口、11はダイアフラムプレート、12は窓、13は供給管穴、14は流路固定プレート、15は位置決めピン、16は流路位置決めピン穴、17は流路固定プレート、18は流路ユニット、19は圧電素子板、20は振動子、21は圧電素子固定面、22は流路固定面、23はヘッド基台、24はエポキシ系接着剤、25は導電性接着剤、26は残部、27は共通電極引出し線、28は中継部材、29は架橋部、30は中継部材位置決めピン穴、31はヘッド基台中継部、32は中継部材連結プレート、33は弾性板との接着面、34は振動子との接着面、35はFPC、36は圧電素子ユニット、37はインク供給管、38は溝を示す。
【発明の属する技術分野】
本発明はオンデマンド型のインクジェットヘッドを搭載したインクジェットプリンタに関するものであり、より詳細には記録素子の駆動源として圧電素子を用いるタイプのインクジェットプリンタのプリントヘッド構成及び製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
オンデマンド型インクジェット方式は、駆動源に発熱抵抗体を用いたサーマル方式、圧電素子を用いたピエゾ方式等、様々な方式が提案されて、それぞれの方式の特徴を生かして製品化されている。製品化が進むにつれ市場のニーズとして小型化が求められるようになり、単位面積辺りのノズル数を増やした高密度ヘッドの開発が求められている。このうち、ピエゾ方式は、圧電素子の変位或いは振動を、弾性板を介して圧力室内に伝達してインクを加圧し、ノズルよりインクを吐出する構成である。小型化が進む中、ピエゾ方式において、圧電素子は板状の圧電素子と電極とを交互に積層して形成した積層型が多く用いられ、小さな形状で大きな変位を発生することが可能である。また、圧力室・弾性板・ノズルの形成には精密加工技術が、それらの組立には精密接着技術・高精度位置合わせ技術が用いられ、ノズルピッチを可能な限り狭くしたヘッドの製品化を実現している。
【0003】
このような従来のインクジェットヘッド一例として、図16にヘッドの断面図を示す。このインクジェットヘッドでは、ノズル39を有するノズルプレート40、圧力室41を有するチャンバープレート42、弾性板43を有するダイアフラムプレート44を積層して流路ユニットを形成する。駆動源は圧電素子であって、板状の圧電素子を基台52に貼り付け、ダイサー又はワイヤーソーなど機械加工により所定のピッチに歯割りして振動子45の列を形成し、両端に振動子45の先端の位置決めを行なうダミー振動子46を設けて、圧電素子ユニットを形成する。流路ユニットと圧電素子ユニットは、高い剛性を持ち、インク供給路を持つ固定部材(図示せず)に位置決めされて接合される。圧電素子ユニットは固定部材に設けられたガイド48により、ノズル列方向及びノズル列に直行する方向の位置決めを行なう。
【0004】
図17に図16の流路ユニットと圧電素子ユニットの接合部を拡大した図(図16のA部分の拡大図)を示す。ダイアフラムプレート44により形成される弾性板43には、細長い島状の突起49が設けられている。突起49のノズル列方向の幅(L1)は振動子45の幅(L2)よりも狭く、ノズル列方向に直角な方向の長さは振動子45よりも長くなっている。
【0005】
また、突起49の形成方法は、樹脂と金属板を張り合わせた積層板のうち、金属面を圧力室形状に対応するようにパターニングして、圧力室41の中央部の金属を島状に残して突起49を形成し、その周りの樹脂を露出させて弾性板とし、さらにその周りを金属として残し、弾性板周囲の剛性を上げる枠部50とするようにエッチングにより生成される。突起49と枠部50は同一の厚さであるので、枠部にダミー振動子46を突き当てることにより、振動子45先端面の位置と突起49の位置を正確に合わせることが出来る。
【0006】
このように、突起49を用いることにより、振動子45の圧力室41に対するノズル列方向の位置が多少ズレて接着されても、突起49が圧力室41の中央にある限り、圧電素子の変位あるいは振動を伝える位置を常に一定とすることが出来る。また、突起49の短手方向の幅を圧力室形状に合わせて調整することで、圧力室41内のインクに対し、最も効率よくエネルギーを伝えることが出来る作用も持つ。これらにより、流路ユニットと圧電素子ユニットの組立により累積されたズレを補正することが可能である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前述した従来例のように位置ズレを補正する作用を持たせた突起49の場合、図17に示す振動子45の接着されない部分51においては、振動子45の変位を直接圧力室に伝えることが出来ない。従って、突起49の幅は振動子45の幅より狭くなければならないという制限を受ける。
【0008】
また、突起49の周りに枠部50がある場合、枠部50と突起49は同一厚さであるため振動子45が枠部50と干渉しないようにする必要があり、これによって振動子45の幅(最大値)は枠部50により制限されることになる。
【0009】
更に、高密度化したヘッドにおいて、エッチング等で突起を作製する場合、アスペクト比により寸法の制約を受ける可能性もあり、また、オーバーエッチング等により振動子45との接着面が丸くなり、接着面積が減少する可能性がある。
【0010】
本発明は、このような問題点に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、振動子の大きさを圧力室や弾性板の形状によらずに大きくすることを可能とし、かつ圧力室に対し正確に位置決めして組立てることが出来るインクジェットヘッドを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以下の特徴・製造方法を有するインクジェットヘッドを構成し、前述した課題を効果的に解決するものである。
(1)列状に並んだ複数のノズルと、該ノズルと夫々対応し、かつ前記ノズルに連通する複数の圧力室と、該圧力室の一部を形成する弾性板と、前記弾性板と結合する圧電素子を有し、該圧電素子に電気信号を印加することにより、弾性板を介して前記圧力室に容積変化を与え、前記ノズルからインクを吐出するインクジェットプリンタにおいて、前記圧電素子と前記弾性板との間に中継部材を設け、該中継部材の前記弾性板に接着する面(Trd)と、前記中継部材の前記圧電素子に接着する面(Trp)と、前記圧電素子のノズル列方向の幅(Tp)と、前記圧力室のノズル列方向の幅(Tc)が、Trd<Tc、Trd<Trp、かつTp≦Trpの関係を満たしていること。
(2)前記圧電素子のノズル列方向の幅(Tp)と、前記圧力室のノズル列方向の幅(Tc)の関係がTp>Tcであること。
(3)前記中継部材の形状を凸状とし、かつ該中継部材の狭幅部の高さは、少なくとも前記圧電素子の最大変位量よりも大きいこと。
(4)前記中継部材のノズル列方向と直行する方向の幅は、前記圧電素子のノズル列方向と直行する方向の幅よりも大きいこと。
(5)前記中継部材の弾性板との接着面あるいは前記圧電素子との接着面には、接着剤の逃げ溝を設けたこと。
(6)列状に並んだ複数のノズルと、該ノズルと夫々対応し、かつ前記ノズルに連通する複数の圧力室と、該圧力室の一部を形成する弾性板と、前記弾性板と結合する圧電素子を有し、該圧電素子に電気信号を印加することにより、弾性板を介して前記圧力室に容積変化を与え、前記ノズルからインクを吐出するインクジェットプリンタにおいて、当該インクジェットプリンタの製造工程として、プリンタの前記圧電素子を櫛歯状もしくは短冊状に加工する工程と、複数の中継部材が形成されている中継部材連結プレートに前記加工された前記圧電素子を接着する工程と、前記中継部材を中継部材連結プレートから分離する工程と、前記圧電素子に接着された前記中継部材を前記弾性板に接着する工程を経ること。
(7)中継部材の材質はシリコンであり、凸形状の形成には、異方性エッチングまたはドライエッチングを用いること。
【0012】
以上のように、振動子と弾性板を、中継部材を介して固定し、さらにノズル列方向において、中継部材の振動子との接着面の幅を振動子幅よりも広くしたことにより、振動子の先端面の変位をすべて弾性板に伝えることが出来る。また、中継部材の弾性板との接着面の幅を圧力室よりも狭くしたので、振動子の幅を圧力室の幅よりも広くした場合でも、中継部材を介しているため、弾性板を押す面積は一定で、弾性板に伝えるエネルギーのみ増加させることが出来る。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の第1の例となるインクジェットヘッドの構造説明図である。本ヘッドは大きく分けて、圧電素子を搭載した圧電素子ユニットと、インク流路を有するインク流路ユニット18からなる。
【0014】
インクの流れを制御するインク流路ユニット18は、複数のノズル1を有するノズルプレート2と、ノズル1に対応する位置に圧力室3が形成されたチャンバープレート6と、圧力室3の一側壁をなす弾性板7が配列されているダイアフラムプレート11とでインク流路系を構成し、これらを流路固定プレート17により固定してユニットを形成する。各プレートはそれぞれ流路位置決めピン穴16を持ち、位置決めピン15でそれぞれを位置決めした状態で接着剤により固定される。
【0015】
ノズルプレート2は、プレス加工によりノズル列を形成する。インクを吐出する面には撥水処理が施される。ノズルプレート2の材質はFe−42%Niなどを用いている。
【0016】
チャンバープレート6は、ノズル1に対応する位置に圧力室3を形成し、インクの流れを制御するリストリクタ4、インク供給を行なうマニホールド5が形成されている。チャンバープレート6の形成にはシリコンウエハを用いている。
【0017】
ダイアフラムプレート11は、樹脂フィルム(ポリイミド)と金属板(SUS304)を張り合わせた後、圧力室やマニホールドなどの位置に合わせて金属部分をエッチングして樹脂フィルムを露出させて、弾性板やインク供給口10等を形成する。
【0018】
流路固定プレート17は、高い剛性が求められるため、SUS430などの金属が使用される。流路固定プレート17は弾性板7の列を囲う窓12と、インク供給管を通す供給管穴13とが設けられている。位置決めには専用の流路固定プレート位置決めピン穴17用いられ、ダイアフラムプレート11に接着される。
【0019】
駆動源である圧電素子ユニットは、電気信号の印加により変位する圧電素子(以下、振動子という)20と、振動子20とインク流路ユニット18を保持するヘッド基台23と、振動子20及びヘッド基台23とインク流路ユニット18とを中継する中継部材連結プレート32からなる。
【0020】
振動子20は、ペースト状の圧電材料と電極を交互に積層して形成される積層型圧電素子を用いる。本例では、分極方向に対し、直行する方向に変位するd33型の圧電素子を使用する。板状の圧電素子は圧電素子板19として、駆動源である振動子20をノズル数分含んでいる。
【0021】
ヘッド基台23の材質は樹脂または金属(SUS430)で、機械加工により門型の形状に加工され、圧電素子板19を貼り付ける圧電素子固定面21を中央に、インク流路ユニットを保持する流路固定面22を両端に位置するように形成されている。圧電素子固定面はSiO2などの絶縁層をが蒸着される。
【0022】
ヘッド基台23と圧電素子板19は、圧電素子板19の一端を圧電素子固定面21に非導電性のエポキシ系接着剤24で接合される。その後、図2に示すように、導電性接着剤25を圧電素子板19の両側面と、ヘッド基台23の付け根からヘッド基台23の側面にかけて塗布する。
【0023】
続いて、図3に示すように、流路固定面22と圧電素子板19端面が同一平面となるように研磨加工する。研磨加工後、圧電素子板19はダイサーまたはワイヤーソーで所定のピッチに歯割され、図4のように短冊状の振動子20の列を形成する。この時、両端に残る圧電素子の残部26は取り除かれる。
【0024】
図5は共通電極の配線方法について、図4のB方向(振動子20の変位方向のノズル側)から見た振動子20及びヘッド基台23の様子を示した図である。上述した工程の後、図に示すように、片面の電極を引き込む共通電極引出し線27を貼り付ける。
【0025】
図6に中継部材連結プレート32の上面図、図7に振動子20と中継部材28、インク流路の側面図を示す。中継部材連結プレート32は、振動子20と弾性板7を連結する役割を持つ中継部材28と、中継部材を連結する架橋部29、中継部材28の位置を決める中継部材位置決め穴30を持つヘッド基台中継部31から構成される。中継部材連結プレートの材質はシリコンが用いられ、異方性エッチングにより、中継部材28や中継部材位置決め穴30を寸法誤差±0.002mm以内の精度で形成される。中継部材28の形状は凸型であり、下側の狭い面が弾性板7との接着面33、上側の広い面が振動子20との接着面34である。
【0026】
図7に示すように、ノズル列方向において、中継部材28における弾性板7との接着面33の幅(Trd)は、チャンバープレート6の圧力室3の幅(Tc)に対し、Tc≒3Trpとなるように設定する。これは弾性板が撓んだ状態の形状(ほぼ台形状)より計算によって求められ、この式を満たす場合、圧電素子の変位により変形する圧力室3の体積が最も大きくなる。中継部材28の弾性板との接着面33側の高さ(hrd)は、圧電素子の変位量p、ダイアフラムプレート11の金属板9の厚さ(hm)に対し、hrd>hm+pとなるように設定している。これは、中継部材28が金属板9に接触して、変位のエネルギーが減少することを防ぐためである。pは、hm≫pであるので、hrd>hmで差し支えは無い。また、同じくノズル列方向において中継部材28の振動子との接着面34の幅(Trp)と、振動子20の幅(Tp)はTrp>Tpであるように設計される。これは振動子20の先端面全体が中継部材28の振動子側と接合されるためである。振動子20の剛性を高めるために、振動子の幅を太くした場合、Trp>Tcとなる場合がある。振動子接着面34側の高さhrpはなるべく薄い方が良いが、薄過ぎると圧力室を押す際に撓む可能性があるので、hrp≧hrdであると良い。
【0027】
図8は振動子20、中継部材28をインク流路に接着した際の断面図を示す。ノズル列方向と並行な方向(配線方向)において、中継部材28の長さ(Lr)は、圧力室3の長さ(Lc)に対し、Lr≒Lc−2Trpとなるようにすることにより、効率的に弾性板7を押すことが出来る。
【0028】
先に図6で示したように、中継部材28はそれぞれ中継部材28を連結する架橋部29にて保持される。架橋部29は中継部材28よりも薄くなっており、ダイサー等で切断することにより中継部材28を簡単に剥離することが出来る。
【0029】
ヘッド基台中継部31はヘッド基台23の流路固定面22と接合するように配置される。ヘッド基台中継部31の高さhrhは、hrh≦(hrp+hrd)であると、図9に示すように、中継部材28が弾性板7を押し込むため、確実な接着が行なえる。
【0030】
中継部材位置決め穴30は、図1に示すようにチャンバープレート6に設けられた位置決めピン穴16bと同じ位置関係に有り、位置決めピン15aを用いてお互いを接合すると、正確な位置決めを行なうことが出来る。
【0031】
複数の振動子20とヘッド基台23よりなるクミ部品と、中継部材連結プレート32の接合には、マイクロスコープやメカニカルステージを用い、図示しない治具により、位置決めして固定される。この接着には、中継部材連結プレート32にエポキシ系接着剤24を塗布して接着する。
【0032】
クミ部品と中継部材連結プレート32の接合後、図10のように中継プレート28、ヘッド基台中継部31及び架橋部29をダイサー等で切断する。ダイシング時、中継部材28が振動子20から剥離する、または振動子20がダイシング時の振動により折れるなどが発生する可能性があるので、ワックス等で中継部材28と振動子20を固定した状態で切断する。切断後、ワックスや切削粉を洗浄して除去し、電気信号を伝達するFPC(フレキシブルプリントケーブル)35を取り付けて、圧電素子ユニット36を完成させる。
【0033】
以上のように形成した圧電素子ユニット36及びインク流路ユニット18を接合は、位置決めピン15cにて行なわれる。図11に圧電素子ユニット36とインク流路ユニット18の接合方法を示す。中継部材28に非導電性のエポキシ系接着剤24を塗布し、中継部材位置決めピン穴30とインク流路ユニット18の位置決めピン穴16dを位置決めピン15cで位置決めして接合する。両ユニットを接合した後、インク供給管37をインク流路ユニット18に取り付けて、図12に示すようなインクジェットヘッドを完成させる。
【0034】
このように形成されたインクジェットヘッドは、個々の振動子20の先端面を全面積を中継部材28に接着することが出来、振動子20の変位を全て中継部材28に伝達することが出来る。また、弾性板7との接着面を最適な面積にすることが可能となる。更に、中継部材28の位置を圧力室3の中央に配置することが容易となる。
【0035】
図13は中継部材連結プレート32の第2の例を示す。圧電素子板19とヘッド基台23を固定した後、圧電素子板19を短冊状に加工する前に中継部材連結プレート32と接合する。中継部材連結プレート32は実施例1と同様に形成されるが、架橋部29がノズル列方向に設けられている。架橋部29はこの場合、中継部材28の圧電素子との接着面側と同じ厚さとなっている。この状態で圧電素子及び中継部材連結プレート32の架橋部29を切断することで、振動子20形成と中継部材28の分離を同時に行なうことが出来る。この場合、振動子20の幅(Tp)と中継部材28の振動子20側の幅(Trp)はTp=Trpとなる。
【0036】
図14は図13は中継部材連結プレート32の第3の例を示す。ノズル列方向において、圧電素子の幅(Tp)が圧力室3の幅(Tc)よりも広くなっている。本例はノズル間での相互干渉を減少させるため、圧力室3間のピッチ(Pc)を広くしたときなどで用いられる。振動子20が太くなることにより、変位力が増大し、また剛性が高まるため、破損が減少する。
【0037】
なお、本例では、振動子としてd33型を用いているが、その他としてd31型の振動子を用いたものでも適用可能である。この場合、圧電素子板19とヘッド基台23を研磨した後、圧電素子の端面に電極を蒸着させる工程が加わる。
【0038】
図15は中継部材連結プレート32の第4の例を示す。中継部材28の弾性板との接着面33、または振動子との接着面34に溝38が設けられている。弾性板7側において、エポキシ系接着剤24が所望の範囲外(Cの領域)にはみ出すと、中継部材28と弾性板7の接着面積が変化し、接着状態によりインク吐出特性にバラツキが発生する。そこで、溝38を設けることにより、接合時の押圧によるエポキシ系接着剤24のはみ出し量を低減し、接着面積の均一化を図ることが出来る。この場合、溝38はノズル列方向と平行な方向に複数設けると、中継部材20の接着面積をあまり減少させずにはみ出しを防止できる。また、振動子20側において、接合時に接着剤24がはみ出して、中継部材28のノズル列側に流れ出た場合、ダイアフラムプレート11の金属板9と接触する可能性があり、振動子20の変位を妨げることに繋がる。よって、この場合、溝38は中継部材28のノズル列方向と直行する方向に設けられる。
【0039】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明によるインクジェット記録ヘッドは、列状に並んだ複数のノズルと、該ノズルと夫々対応し、かつ前記ノズルに連通する複数の圧力室と、該圧力室の一部を形成する弾性板と、前記弾性板と結合する圧電素子を有し、該圧電素子に電気信号を印加することにより、弾性板を介して前記圧力室に容積変化を与え、前記ノズルからインクを吐出するインクジェットプリンタにおいて、前記圧電素子と前記弾性板との間に中継部材を設け、該中継部材の前記弾性板に接着する面(Trd)と、前記中継部材の前記圧電素子に接着する面(Trp)と、前記圧電素子のノズル列方向の幅(Tp)と、前記圧力室のノズルの列方向の幅(Tc)が、Trd<Tc、Trd<Trp、かつTp≦Trpの関係を満たすようにすることで、振動子と弾性板との接着面積を一定とし、振動子のノズル列方向の組立誤差を吸収し、且つ振動子の変位を余すことなくインクに伝達出来することが出来る。
【0040】
また、振動子の幅を圧力室の幅よりも広く取ることが出来る為、振動子の力を大きくすることが出来る上、振動子が太くなる為、加工時や取り扱いでの破損が減少する。
【0041】
また、中継部材の凸状の肉厚が細い部分の高さが、少なくとも振動子の最大変位量よりも大きくしたことで、中継部材が周囲の部材と接触して、変位エネルギーを吸収されて、インク吐出性能を低下させる現象を防ぐことが出来る。
【0042】
また、中継部材のノズル列方向と直行する方向の長さが圧電素子板の厚さよりも長いことにより、圧電素子の先端面積よりも広い範囲において、弾性板を変形させることが出来る。
【0043】
また、中継部材の材質をシリコンとしたことで、高精度な形状加工が可能となり、圧力室への位置決めを精密に行なうことが出来る。
【0044】
また、中継部材の弾性板または振動子との接着面に、接着剤の逃げ溝を設けたことで、弾性板と中継部材の接合部における接着剤のはみ出しが減少し、ノズル毎の接着状態が均一となり、インク吐出特性を安定にすることが出来る。また、振動子側でも、接着剤の流れ出しによる不必要な部分への付着を防ぎ、組立時の部品同士の干渉や接触を防ぐことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のインクジェットプリンタに適用されるインクジェットヘッドの分解斜視図。
【図2】本発明の一例となる振動子とヘッド基台の接着状況を示す断面図。
【図3】本発明の一例となる振動子の加工方法を示す概念図(図2のA方向から見た図)。
【図4】本発明の製造方法における圧電素子の加工状態を示す図(図2のA方向から見た図)。
【図5】本発明の製造方法における圧電素子の配線状態を示す図(図4のB方向から見た図)
【図6】本発明の中継部材連結プレートを示す平面図。
【図7】本発明の一例となる圧電素子、中継部材及び圧力室の関係を示す断面図。
【図8】図7のC方向から見た場合の、圧電素子及び中継部材をインク流路に接着した状態を示す断面図。
【図9】本発明のインクジェットプリンタに用いられるインクジェットヘッドの部分拡大断面図。
【図10】本発明の製造方法の一例を示す斜視図及び平面図。
【図11】本発明のインクジェットプリンタに用いられるインクジェットヘッドのクミ部品の分解斜視図。
【図12】本発明のインクジェットプリンタに用いられるインクジェットヘッドの斜視図。
【図13】本発明の製造方法の他の例を示す斜視図及び平面図。
【図14】本発明の他の例となる圧電素子、中継部材及び圧力室の関係を示す断面図。
【図15】本発明の他の例となる圧電素子、中継部材及び圧力室の関係を示す側面断面図。
【図16】従来のインクジェットヘッドの構成を示す平面図。
【図17】図16のA領域の拡大図。
【符号の説明】
1はノズル、2はノズルプレート、3は圧力室、4はリストリクタ、5はマニホールド、6はチャンバープレート、7は弾性板、8は樹脂フィルム、9は金属板、10はインク供給口、11はダイアフラムプレート、12は窓、13は供給管穴、14は流路固定プレート、15は位置決めピン、16は流路位置決めピン穴、17は流路固定プレート、18は流路ユニット、19は圧電素子板、20は振動子、21は圧電素子固定面、22は流路固定面、23はヘッド基台、24はエポキシ系接着剤、25は導電性接着剤、26は残部、27は共通電極引出し線、28は中継部材、29は架橋部、30は中継部材位置決めピン穴、31はヘッド基台中継部、32は中継部材連結プレート、33は弾性板との接着面、34は振動子との接着面、35はFPC、36は圧電素子ユニット、37はインク供給管、38は溝を示す。
Claims (7)
- 列状に並んだ複数のノズルと、該ノズルと夫々対応し、かつ前記ノズルに連通する複数の圧力室と、該圧力室の一部を形成する弾性板と、該弾性板と結合する圧電素子を有し、該圧電素子に電気信号を印加することにより、弾性板を介して前記圧力室に容積変化を与え、前記ノズルからインクを吐出するインクジェットプリンタにおいて、
前記圧電素子と前記弾性板との間に中継部材を設け、該中継部材の前記弾性板に接着する面(Trd)と、前記中継部材の前記圧電素子に接着する面(Trp)と、前記圧電素子のノズル列方向の幅(Tp)と、前記圧力室のノズル列方向の幅(Tc)が、Trd<Tc、Trd<Trp、かつTp≦Trpの関係を満たしていることを特徴とするインクジェットプリンタ。 - 前記圧電素子のノズル列方向の幅(Tp)と、前記圧力室のノズル列方向の幅(Tc)の関係がTp>Tcであることを特徴とする請求項1記載のインクジェットプリンタ。
- 前記中継部材の形状を凸状とし、かつ該中継部材の狭幅部の高さは、少なくとも前記圧電素子の最大変位量よりも大きいことを特徴とする請求項1記載のインクジェットプリンタ。
- 前記中継部材のノズル列方向と直行する方向の幅は、前記圧電素子のノズル列方向と直行する方向の幅よりも大きいことを特徴とする請求項1記載のインクジェットプリンタ。
- 前記中継部材の弾性板との接着面あるいは前記圧電素子との接着面には、接着剤の逃げ溝が形成されていることを特徴とする前記請求項1記載のインクジェットプリンタ。
- 列状に並んだ複数のノズルと、該ノズルと夫々対応し、かつ前記ノズルに連通する複数の圧力室と、該圧力室の一部を形成する弾性板と、該弾性板と結合する圧電素子を有し、該圧電素子に電気信号を印加することにより、前記弾性板を介して前記圧力室に容積変化を与え、前記ノズルからインクを吐出するインクジェットプリンタにおいて、
当該インクジェットプリンタの製造工程として、プリンタの前記圧電素子を櫛歯状もしくは短冊状に加工する工程と、複数の中継部材が形成されている中継部材連結プレートに前記加工された前記圧電素子を接着する工程と、前記中継部材を中継部材連結プレートから分離する工程と、前記圧電素子に接着された前記中継部材を前記弾性板に接着する工程を経ることを特徴とするインクジェットプリンタの製造方法。 - 前記中継部材はシリコンよりなり、該中継部材の形成は異方性エッチングまたはドライエッチングにて行なうことを特徴とする前記請求項6記載のインクジェットプリンタの製造方法。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2008221694A (ja) * | 2007-03-14 | 2008-09-25 | Seiko Epson Corp | 液体噴射ヘッド |
CN102069642A (zh) * | 2009-10-20 | 2011-05-25 | 精工爱普生株式会社 | 液体喷射装置及其控制方法 |
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2002
- 2002-06-06 JP JP2002165184A patent/JP2004009479A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2008221694A (ja) * | 2007-03-14 | 2008-09-25 | Seiko Epson Corp | 液体噴射ヘッド |
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