JP2004005938A - 2層構成型光記録媒体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】基板上に2組の記録媒体を積層し、それぞれに記録あるいは再生を行う記録媒体において、最初にレーザ光が入射する第1の記録層構成体101は、第1の放熱層107をレーザ光入射の反対側に設けてあり、前記第1の記録層構成体101を透過したレーザ光が入射する第2の記録層構成体201は、前記第1の放熱層107を除いて前記第1の記録層構成体101と同様の構成とし、該層構成体と接し前記溝を形成した基板と接する部分に金属材料よりなる第2の放熱層207を設けてなる構成体であり、前記第1の記録層構成体101と第2の記録層構成体201は、前記第1の放熱層に接する中間放熱層108と該中間放熱層108に前記第2の記録層構成体201側に接する分離層109とを介して積層される。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、レーザ光の照射等の光学的な手段を用いた、高密度、高速度での情報の記録再生および書き換えが可能な大容量の光記録媒体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
光記録媒体は、記録材料にレーザ光を局所的に照射することによって生じる光学特性の違いを記録状態として利用するものである。この光学特性の変化が可逆的である材料を用いた場合、情報記録の書き換えが可能となる。書き換え形の媒体としては、光磁気形記録媒体や相変化形記録媒体が一般によく知られている。これらの光記録媒体は、大容量の情報を記録することができると共に、高速での記録、再生、及び書き換えが可能であり、かつ、可搬性にも優れているため、高度情報化社会において、今後ますますその需要が増加するものと考えられ、さらなる大容量化、高速度化が望まれている。
【0003】
相変化形記録媒体は、特定波長の光に対する反射光量が結晶状態と非晶質状態とで異なることを記録状態として利用するものであり、レーザの出力パワーを変調することにより、記録の消去と上書きの記録とを同時に行うことができる。このため、容易に高速での情報信号の書き換えを行うことができる。
【0004】
図4に、従来の相変化形記録媒体の層構成の一例を示す。図4に示すように、従来の相変化形記録媒体は、基板1と、基板1の上に順次積層された、保護層2と、記録層4と、保護層8と、反射層6とにより構成されている。基板1としては、ポリカーボネート、PMMA等の樹脂、又はガラス等が用いられ、基板1には、レーザ光を導くための案内溝が形成されている。記録層4は、光学特性の異なる状態を有し、この状態間を可逆的に変化し得る物質からなる。書き換え型の相変化形光記録材料の場合、記録層4の材料としては、Te、Sbを主成分とするカルコゲナイド系材料、例えばTe−Sb−Ge、Te−Sn−Ge、Te−Sb−Ge−Se、Te−Sn−Ge−Au、Ag−In−Sb−Te、In−Sb−Se、In−Te−Se等を主成分とする材料が一般的に用いられる。
【0005】
反射層6は、一般に、Au、Al、Cr等の金属、又はこれら金属の合金からなり、放熱効果や記録層4の効果的な光吸収を目的として設けられている。また、図中では省略しているが、光記録媒体の酸化、腐食やほこり等の付着の防止を目的として、反射層6の上にオーバーコート層を設けた構成、あるいは紫外線硬化樹脂を接着剤として用い、ダミー基板を貼り合わせた構成が一般的に用いられている。
【0006】
保護層2、8は、記録層4の材料の酸化、蒸発や変形を防止するといった記録層4の保護機能を担っている。また、保護層2、8の膜厚を調節することにより、記録媒体の吸収率や、記録部と消去部との間の反射率差を調節することができるため、保護層2、8は記録媒体の光学特性の調節機能をも担っている。保護層2、8を構成する材料の条件としては、上記目的を満たすだけではなく、記録層4の材料や基板1との接着性が良好であること、保護層2、8自身がクラックを生じない耐候性の良い膜であることが不可欠である。また、これらの保護層2、8が記録層4に接して用いられる場合には、記録層4の材料の光学的変化を損なわない材料でなければならない。
【0007】
保護層2、8の材料としては、ZnS等の硫化物、SiO2、Ta2O5、Al2O3等の酸化物、Ge−N、Si3N4、Al3N4等の窒化物、Ge−O−N、Si−O−N、Al−O−N等の窒酸化物のほか、炭化物、弗化物等の誘電体、あるいはこれらの適当な組み合わせが提案されている。一般的には、ZnS−SiO2がよく用いられている。
【0008】
従来より、記録の書き換えを行った場合、書き換え後のマーク位置が微妙にずれ、オーバーライト歪みが生じるといった現象が知られている。この歪みが生じるのは、書き換え前の記録層4の状態がアモルファスであるか結晶であるかによって、レーザ光の照射時の温度上昇の様子が異なり、書き換え後のマークが所定の長さよりもずれてしまうからである。すなわち、マークがアモルファス状態であるとすると、書き換え前の状態が結晶であった部分では、アモルファス状態に相変化するための潜熱が必要であるが、書き換え前の状態がアモルファスであった部分ではこれを必要としないため、余った熱量が所定長さ以上の記録層4をアモルファス化してしまうのである。
【0009】
これを解決するために、記録層4がアモルファス状態であるときの記録層4の光吸収率をAa、記録層4が結晶状態であるときの記録層4の光吸収率をAcとしたとき、Ac/Aaを1よりも大きいある一定の範囲に保つという、いわゆる吸収補正が可能な構成が採用されている。これにより、結晶部分での温度上昇を助けることができるため、書き換え後のマーク領域内での温度上昇が均一となり、マーク歪みが生じ難くなる。
【0010】
Ac/Aa>1を実現する具体的方法がいくつかの提案されている。例えば、アモルファス状態の反射率Raを結晶状態の反射率Rcよりも高くする構成(Rc<Ra)が提案されている。この場合には、アモルファス状態と結晶状態との間の反射率差Ra−Rcを大きくとっても、Ac/Aaの値を大きくすることができる。
【0011】
具体的には、例えば図4において基板1と保護層2との間に別の層を設け、この層の光学定数をある一定の範囲内とすることにより、Rc<Raを実現することができる。また、Rc>Raの場合でも、Ac/Aa>1を実現することができる。この方法としては、主として光透過形と光吸収形が知られている。
【0012】
光透過形は、媒体に透過率を生じさせ、記録層がアモルファス状態であるときの媒体の透過率をTa、記録層が結晶状態であるときの媒体の透過率をTcとしたとき、0<Tc<Taとなる構成を採る方法である。
【0013】
光吸収形は、媒体中に吸収を生じる層を設け、この層での光吸収を、記録層がアモルファス状態であるときAa2、記録層が結晶状態であるときAc2としたとき、0<Ac2<Aa2となる構成を採る方法である。
【0014】
具体的には、光透過形の場合、例えば図4において反射層6を薄くし、光透過を生じさせることによって実現することができる。光吸収形の場合には、例えば図4において反射層6と保護層8との間に光を吸収する層を挿入することによって実現することができる。
【0015】
Rc<Raの反射率構成を有する媒体の場合、上述したように、Ac/Aa>1となる構成を設計し易いという大きな利点があるが、アモルファス部と結晶部の反射率の和が、Rc>Raの反射率構成を有する媒体に比べて概して大きくなるため、信号再生時のノイズが増加し易いという欠点もある。Rc>Raの反射率構成を有する媒体の場合、このような欠点は生じにくいが、Ac/Aaの値をより大きくとるという点では不利である。従って、必要な媒体に応じてこれらの方法を使い分けるのが望ましい。
【0016】
Rc>Raかつ0<Tc<Taを満たす光透過形の構成に関して、従来より幾つかの改良が提案されている。例えば、特開平8−50739号公報(特許文献1)には、記録層と光透過形の反射層を有し、光透過形反射層の熱拡散を助ける熱拡散補助層を反射層に接して設ける技術が開示されている。しかし、該公報には、熱拡散補助層に積極的に光学的効果を持たせる技術に関する記載はなく、その膜厚は光学設計を妨げない範囲とされている。
【0017】
また、特開平9−91755号公報(特許文献2)には、光透過形反射層の上に誘電体層を設ける技術が開示されている。しかし、該公報に開示された誘電体層は、位相差を低減するために設けられたものであり、該公報には、誘電体層を設けることによる熱的な効果に関する記載はなく、また、その膜厚を調節することによって得られる光学的な効果についての記載もない。
【0018】
また、光透過形の媒体を応用した例として、2層記録媒体の技術が知られている(特開平3−157830号公報(特許文献3))。これは、媒体の大容量化を達成するために、2組の記録媒体を透明な分離層を介して設け、片側のみからレーザ光を入射させることによって全ての記録媒体へのアクセスを可能にするというものである。この技術を用いれば、レーザ光の入射方向における記録密度を増大させることができ、2層記録媒体全体としての容量を増大させることが可能となる。
【0019】
【特許文献1】
特開平8−50739号公報
【特許文献2】
特開平9−91755号公報
【特許文献3】
特開平3−157830号公報
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
光透過形の構成は、媒体中にこもる余分な熱が比較的少ないため、繰り返し特性や隣接消去特性の点で有利である。しかし、反射層が薄いため、記録層が熱せられた後の冷却を急速に行うことが困難であり、マークが形成され難いという問題点がある。さらに、特にRc>Raを満たす構成の場合、根本的にAc/Aaの値を非常に大きくとることは困難であった。
【0021】
また、2層記録媒体を構成するために、レーザ光の入射側に配置される光透過形の媒体を設計する際、従来においては、透過率を十分大きくとるために記録層の膜厚を薄くする必要があった。しかし、記録層が非常に薄い場合には、結晶化が困難となるため、高透過率と高消去率とを両立させることは困難であった。また、光透過形の媒体の繰り返し記録特性をさらに向上させる技術について考慮した例はなく、さらに繰り返し記録特性を向上させる新たな技術が求められている。
【0022】
本発明は、従来技術における上記の問題点を解決するためになされたものであり、その第1の目的は、記録媒体の冷却能の向上と繰り返し記録特性の向上を可能とし、記録容量を従来の2倍とすることができる2層記録媒体用の光透過形記録媒体を提供することにある。
また第2の目的は、このような2層記録媒体用の光透過形記録媒体の各層における記録特性がほぼ同じようになるようにすることにある。
【0023】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、幅0.10〜0.46μm、深さ0.01〜0.04μmの溝を0.28〜0.50μmピッチで形成した基板上に、2組の記録層構成体を積層し、記録層構成体側から基板に向けて波長360〜420nm、スポット径0.30〜0.52μm(1/e2)のレーザ光を照射し、2組の記録層構成体にそれぞれ記録あるいは再生を行う2層構成型光記録媒体において、最初にレーザ光が入射する第1の記録層構成体は、第1のZnS−SiO2、Ge−N、Ge−Sb−Te、Ge−N、第2のZnS−SiO2の各材料を主たる構成材料とした層をレーザ光入射側から順に積層するとともに、前記第2のZnS−SiO2層にAgを主たる構成材料とした第1の放熱層をレーザ光入射の反対側に設けてなる構成体であり、前記第1の記録層構成体を透過したレーザ光が入射する第2の記録層構成体は、前記第1の放熱層を除いて前記第1の記録層構成体と同様の層構成とし、該層構成体と接し、前記溝を形成した基板と接する部分に金属材料よりなる第2の放熱層を設けてなる構成体であり、前記第1の記録層構成体と第2の記録層構成体は、前記第1の放熱層に接する中間放熱層と該中間放熱層に前記第2の記録層構成体側に接する分離層とを介して積層され、それらの記録層構成体全体の熱容量を前記基板のそれより小さくするとともに、前記第2の記録層構成体への書き込みレーザパワーを前記第1の記録層構成体へのそれより大とし、それらの書込みレーザパワーを3〜12mWの範囲にして記録を行う2層構成型光記録媒体であって、前記第1の記録層構成体の厚さT1と中間放熱層の厚さtの比率t/T1を0.2〜1.0の範囲にしたことをを最も主要な特徴とする。
【0024】
また第2に、上記第1の2層構成型光記録媒体において、前記第1の記録層構成体の厚さを前記第2の記録層構成体の厚さより厚くしたことを主要な特徴とする。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いてさらに具体的に説明する。図1は単層の光記録媒体の層構成を示す断面図である。図1に示すように、単層の光記録媒体は、基板1と、基板1の上に順次積層された、保護層2と、界面層3と、記録層4と、界面層5と、光透過形反射層6と、熱拡散層7とにより構成されている。ここで、記録層4は、レーザ光の照射によって光学特性が可逆的に変化する材料からなっている。なお、このような光記録媒体は上記構成に限定されるものではなく、記録層4と、光透過形反射層6と、光透過形反射層6に接する熱拡散層7を備えた構成であればよい。
【0026】
例えば、図1において、界面層5と光透過形反射層6との間に保護層などの別の層を設けた構成、保護層2をすべて界面層3で置き換えた構成、あるいは界面層3を設けない構成等、種々の構成に本発明を適用することが可能である。
【0027】
基板1の材料としては、ポリカーボネート、PMMA等の樹脂、又はガラス等を用いるのが好ましい。また、基板1にはレーザ光を導くための案内溝が形成されているのが好ましい。
【0028】
保護層2は、記録層4での効果的な光吸収を可能にするといった光学特性の調節を主な目的として設けられている。保護層2の材料としては、ZnS等の硫化物、SiO2、Ta2O5、Al2O3等の酸化物、Ge−N、Si3N4、Al3N4等の窒化物、Ge−O−N、Si−O−N、Al−O−N等の窒酸化物のほか、炭化物、弗化物等の誘電体、あるいはこれらの適当な組み合わせ(ZnS−SiO2等)など、上記目的を達成することが可能な材料が用いられる。
【0029】
界面層3、5は記録層4の酸化、腐食、変形等の防止といった記録層4を保護する役割を担うと共に、以下に述べるような、記録層4に接して設けられることによる重要な2つの役割を担っている。
【0030】
界面層の1つ目の重要な役割は、記録層4と保護層2との原子拡散、特に保護層2中に硫黄又は硫化物が含まれる場合に、これらの成分が記録層4へ拡散することを防止するという役割である。この原子拡散を防止することにより、媒体の繰り返し特性が飛躍的に向上する。界面層を設ける位置は、記録層4のいずれか一方側であっても両側であってもよいが、原子拡散をより効果的に防止するためには、両側に設けるのが好ましい。記録層4のいずれか一方の界面にのみ界面層を設ける場合には、熱の負荷が大きくかかる側、すなわち、記録、消去時において温度上昇が高い側(多くの場合、レーザ光の入射側となる)に設けることにより、原子拡散の抑制効果を高めることができる。尚、界面層中に含有される成分が情報の繰り返し記録後に記録層4中に拡散する場合もあり得るが、このような場合であっても、界面層の構成材料として、記録層4の光学変化を妨げにくい材料を用いればよい。
【0031】
界面層の2つ目の重要な役割は、記録層4に接して設けた場合に、記録マーク(アモルファス部分)の熱的安定性を損なわずに、記録材料の結晶化を促進する効果を発揮するという役割である。界面層がこのような重要な役割を果たすために、さらなる高速消去が可能となる。この効果は、特に、界面層を、記録層がレーザ光を照射されて冷却される時により冷却が速く進む側の界面、あるいはより結晶核が形成されやすくなる側の界面、すなわち、多くの場合にはレーザ入射側と反対側の記録層界面に設けた場合に顕著となる。
【0032】
以上、界面層の2つの役割を鑑みたとき、高速での良好な書き換え特性と、良好な繰り返し特性の両方を兼ね備えるためには、界面層を記録層4の両側に設けるのが好ましい。但し、媒体の記録条件がロースペックでよい場合、例えば低線速、低密度の条件の場合や、良好な繰り返し特性が特に必要とされない場合などには、界面層を特に設けなくてもよい場合もある。
【0033】
界面層3、5を構成する材料は、上記した役割を果たす材料であればよいが、窒化物、窒酸化物、酸化物、炭化物あるいは弗化物を主成分とする材料であるのが好ましい。場合によっては、硫化物あるいはセレン化物を混合してもよい。例えば、窒化物としては、Ge−N、Cr−N、Si−N、Al−N、Nb−N、Mo−N、Ti−N、Zr−N、Ta−N等、窒酸化物としては、Ge−O−N、Cr−O−N、Si−O−N、Al−O−N、Nb−O−N、Mo−O−N、Ti−O−N、Zr−O−N、Ta−O−N等、酸化物としては、SiO2、Al2O3、TiO2、Ta2O5、Zr−O等、炭化物としては、Ge−C、Cr−C、Si−C、Al−C、Ti−C、Zr−C、Ta−C等、弗化物としては、Li−F、Ca−F等を用いることができる。あるいは、これらの適当な混合物としてもよい。また、適量の硫化物やセレン化物を混合する場合には、ZnS、ZnSe等を用いることができる。いずれにせよ、界面層3、5の材料としては、記録層4と拡散を起こしにくい材料であるか、又は記録層4に拡散した場合であっても記録層4の光学変化を妨げにくい材料であり、かつ、記録層4と接して設けた場合に、記録層4の結晶化を促進する材料を用いればよい。
【0034】
界面層3、5の膜厚は、1nm以上であるのが好ましい。界面層3、5の膜厚が1nm未満である場合には、原子拡散の防止効果が低下するからである。
【0035】
記録層4の材料としては、光学特性が可逆的に変化する材料が用いられる。相変化形記録媒体の場合には、Te、Sbを主成分とするカルコゲナイド系材料を用いるのが好ましい。例えば、Ge−Sb−Te、Sb−Te、Sb−Te−Zn、Sb−Te−Ag、Te−Bi−Ge、Sb−Te−Ge−Se、Te−Sn−Ge−Au、Sb−Te−Ag−In、Se−In−Sb、Te−Se−Inを主成分とする材料等が挙げられる。
【0036】
記録層4中にはAr、Kr等のスパッタガス成分やH、C、H2O等が不純物として含まれることがあるが、その含有率が信号の記録再生を妨げない程度に抑えられていればよい。また、種々の目的のために記録層4の主成分に他の物質を微量(約10at%以下)添加する場合もあるが、この場合にもその含有率が信号の記録再生を妨げない程度に抑えられていればよい。
【0037】
記録層4の膜厚は、3nm以上40nm以下であるのが好ましい。記録層4の膜厚が3nm未満の場合には、記録材料が均一な層状になりにくく、アモルファスと結晶との間で効果的な相変化が起こりにくくなるからであり、記録層4の膜厚が40nmより大の場合には、記録層膜面内での熱拡散が大きくなるために、高密度で記録を行った際に隣接消去が生じ易くなるからである。
【0038】
反射層6の材料としては、Au、Ag、Cuのうち少なくとも1つを含んだ材料が用いられる。これらの材料を用いるのは、その光学定数がAc/Aaの値を大きくとる上で有利であるからであり、また、熱伝導率が高いために、膜厚が薄くても大きい冷却能を得ることができるからである。また、反射層6の材料としては、Au、Ag、Cuのうちの少なくとも1つと、他の材料との混合物、又は合金を用いてもよい。これらの他の材料は、腐食防止やより効果的な光学設計を可能にする目的のために用いられる。具体的には、Cr、Pt、Pd、Al、Mg、W、Ni、Mo、Si、Ge等が挙げられるが、用途に応じて適宜選択された材料を用いればよい。
【0039】
反射層6の膜厚は、1nm以上40nm以下であるのが好ましい。反射層6の膜厚が1nm未満の場合には、膜が均一な層状とすることが困難となって、熱的、光学的な反射層の効果が低下するからであり、反射層6の膜厚が40nmよりも厚い場合には、媒体の光透過が小さくなるために、既述の光吸収補正(Ac/Aa>1)を実現することが困難となるからである。
【0040】
次に、本発明の特徴をなす主な部分である熱拡散層7について説明する。熱拡散層7は2つの重要な役割を担っている。熱拡散層7の役割は、記録層4で生じた熱を冷却することである。反射層6として光透過形の薄い層を用いる場合、反射層6での冷却効果は低下してしまう。これを補うために、媒体としての光学的な特性を損なわずに、すなわち媒体の透過率を保ったまま、熱拡散層7において効果的に熱拡散が行われる。このため、熱拡散層7の記録再生レーザ波長域における吸収はある程度低くなければならない。熱拡散層7の、記録再生レーザ波長における複素屈折率をn−ikとおいたとき、吸収係数kはk≦1.5の関係を満たすのが好ましい。また、熱拡散層7での冷却効果をより大きなものとするために、熱拡散層7を構成する材料の熱伝導率はできるだけ大きい方がよい。目安としては、500Kにおける熱伝導率が0.05W/m・K以上の材料を用いるのが好ましい。なお、これらに加えて、熱拡散層7がクラックや腐食、剥離等を生じない良好な膜であるべきことは言うまでもない。
【0041】
この熱拡散層7の冷却効果により、記録信号のC/N比を向上させることが可能となる。また、媒体への熱負荷を低下することができるため、繰り返し記録特性も向上させることが可能となる。これらの条件を満たす具体的な材料としては、例えば、Al−N、Al−O−N、Al−C、Si、Si−N、SiO2、Si−O−N、Si−C、Ti−N、TiO2、Ti−C、Ta−N、Ta2O5、Ta−O−N、Ta−C、Zn−O、ZnS、ZnSe、Zr−N、Zr−O−N、Zr−C、W−Cが挙げられる。あるいは、これらの混合物を用いてもよいし、これらの材料と適量の金属、半金属との混合物、又は合金を用いてもよい。
【0042】
本発明における光記録媒体は、光透過形となるように構成するものであるため、片面からのレーザ光の照射による情報の記録再生が可能な多層記録媒体を構成することができる。これにより、さらに高密度記録が可能な光記録媒体を実現することができる。
【0043】
図2に、2組の媒体によって構成される2層記録媒体の構成例を示す。図2に示すように、この2層記録媒体は、基板(カバー基板)100と溝付基板200の間に、第1の記録層構成体101と、第2の記録層構成体201とが挟み込まれた構成となっており、第1の記録層構成体101と第2の記録層構成体201とは、中間放熱層(中間層)108と分離層109とを間に介した構成とされている。ここで、溝付基板200は、幅0.10〜0.46μm、深さ0.01〜0.04μmの溝を0.28〜0.50μmピッチで形成した基板であり、その溝は図示しないが、第2の記録層構成体201と接する側に設けている。また、波長360〜420nm、スポット径0.30〜0.52μm(1/e2:レーザビームの光強度の1/e2のところのビームスポット径をさす(e=2.7なので光強度を1とした場合の強度0.137のビーム径))のレーザ光が、基板(カバー基板)100側から照射され、書き込み時のパワーは、3〜12mWの範囲にして記録を行うようにしている。
【0044】
第1の記録層構成体101は、基板(カバー基板)100側から順次積層された、保護層102と、界面層103と、記録層104と、界面層105と、保護層106と、第1の放熱層107とにより構成されている。また、第2の記録層構成体201は、分離層109側から順次積層された、保護層202と、界面層203と、記録層204と、界面層205と、保護層206と、第2の放熱層207とにより構成されている。
【0045】
保護層102、106、202、206は、記録層104、204での効果的な光吸収を可能にするといった光学特性の調節を主な目的として設けられている。保護層102、106、202、206の材料としては、ZnS等の硫化物、SiO2、Ta2O5、Al2O3等の酸化物、Ge−N、Si3N4、Al3N4等の窒化物、Ge−O−N、Si−O−N、Al−O−N等の窒酸化物、炭化物、弗化物等の誘電体、あるいはこれらの適当な組み合わせ(ZnS−SiO2等)など、上記目的を達成することが可能な材料が用いられる。本発明者らの検討結果では、図2に示したような本発明の構成においては、ZnS−SiO2が最も良好な性能を示した。
【0046】
界面層103、105、203、205は、記録層104、204の酸化、腐食、変形等の防止といった記録層104、204を保護する役割を担うとともに、記録層104、204と保護層102、106、202、206との原子拡散、特に保護層102、106、202、206中に硫黄又は硫化物が含まれる場合に、これらの成分が記録層104、204へ拡散することを防止するという役割である。この原子拡散を防止することにより、媒体の繰り返し特性が飛躍的に向上する。界面層を設ける位置は、記録層のいずれか一方側であっても両側であってもよいが、原子拡散をより効果的に防止するためには、両側に設けるのが好ましい。
【0047】
界面層の他の重要な役割は、記録層に接して設けた場合に、記録マーク(アモルファス部分)の熱的安定性を損なわずに、記録材料の結晶化を促進する効果を発揮するという役割である。界面層がこのような重要な役割を果たすために、さらなる高速消去が可能となる。以上、界面層の2つの役割を鑑みたとき、高速での良好な書き換え特性と、良好な繰り返し特性の両方を兼ね備えるためには、界面層を記録層の両側に設けるのが好ましい。
【0048】
界面層103、105、203、205を構成する材料は、上記した役割を果たす材料であればよいが、窒化物、窒酸化物、酸化物、炭化物あるいは弗化物を主成分とする材料であるのが好ましい。場合によっては、硫化物あるいはセレン化物を混合してもよい。例えば、窒化物としては、Ge−N、Cr−N、Si−N、Al−N、Nb−N、Mo−N、Ti−N、Zr−N、Ta−N等、窒酸化物としては、Ge−O−N、Cr−O−N、Si−O−N、Al−O−N、Nb−O−N、Mo−O−N、Ti−O−N、Zr−O−N、Ta−O−N等、酸化物としては、SiO2、Al2O3、TiO2、Ta2O5、Zr−O等、炭化物としては、Ge−C、Cr−C、Si−C、Al−C、Ti−C、Zr−C、Ta−C等、弗化物としては、Li−F、Ca−F等を用いることができる。あるいは、これらの適当な混合物としてもよい。また、適量の硫化物やセレン化物を混合する場合には、ZnS、ZnSe等を用いることができる。いずれにせよ、界面層の材料としては、記録層と拡散を起こしにくい材料であるか、又は記録層に拡散した場合であっても記録層の光学変化を妨げにくい材料であり、かつ、記録層と接して設けた場合に、記録層の結晶化を促進する材料を用いればよい。
【0049】
本発明者らの検討結果では、図2に示したような本発明の構成においては、Ge−Nが最も良好な性能を示した。これは、前述のように本発明では、保護層材料としてはZnS−SiO2が最も良好な性能を示しており、それとの組み合わせを考えた場合、硫黄の成分が記録層へ拡散することを防止するという役割が特に重要となり、Ge−Nが最も良好な性能を示したものである。
【0050】
界面層103、105、203、205の膜厚は、1nm以上であるのが好ましい。これは界面層の膜厚が1nm未満の場合には、原子拡散の防止効果がほとんどなかったという実験結果に基づいている。
【0051】
記録層104、204の材料としては、光学特性が可逆的に変化する材料が用いられる。相変化形記録媒体の場合には、Te、Sbを主成分とするカルコゲナイド系材料を用いるのが好ましい。例えば、Ge−Sb−Te、Sb−Te、Sb−Te−Zn、Sb−Te−Ag、Te−Bi−Ge、Sb−Te−Ge−Se、Te−Sn−Ge−Au、Sb−Te−Ag−In、Se−In−Sb、Te−Se−Inを主成分とする材料等が挙げられる。
【0052】
記録層104、204中にはAr、Kr等のスパッタガス成分やH、C、H2O等が不純物として含まれることがあるが、その含有率が信号の記録再生を妨げない程度に抑えられていればよい。また、種々の目的のために記録層104、204の主成分に他の物質を微量(約10at%以下)添加する場合もあるが、この場合にもその含有率が信号の記録再生を妨げない程度に抑えられていればよい。本発明者らの検討結果では、図2に示したような本発明の構成においては、Ge−Sb−Teが最も良好な性能を示した。
【0053】
記録層104、204の膜厚は、3nm以上40nm以下であるのが好ましい。記録層104、204の膜厚が3nm未満の場合には、記録材料が均一な層状になりにくく、アモルファスと結晶との間で効果的な相変化が起こりにくくなるからであり、記録層104、204の膜厚が40nmより大の場合には、記録層膜面内での熱拡散が大きくなるために、高密度で記録を行った際に隣接消去が生じ易くなるからである。
【0054】
第1の放熱層107の材料としては、Au、Ag、Cuのうち少なくとも1つを含んだ材料が用いられる。これらの材料を用いるのは、その光学定数がAc/Aaの値を大きくとる上で有利であるからであり、また、熱伝導率が高いために、膜厚が薄くても大きい冷却能を得ることができるからである。また、第1の放熱層107の材料としては、Au、Ag、Cuのうちの少なくとも1つと、他の材料との混合物、又は合金を用いてもよい。これらの他の材料は、腐食防止やより効果的な光学設計を可能にする目的のために用いられる。具体的には、Cr、Pt、Pd、Al、Mg、W、Ni、Mo、Si、Ge等が挙げられるが、用途に応じて適宜選択された材料を用いればよい。本発明者らの検討結果では、図2に示したような本発明の構成においては、Agを主たる構成材料とした場合に最も良好な性能を示した。
【0055】
第1の放熱層107の膜厚は、1nm以上80nm以下であるのが好ましい。第1の放熱層107の膜厚が1nm未満の場合には、膜が均一な層状とすることが困難となって、熱的、光学的な反射層の効果が低下するからであり、第1の放熱層107の膜厚が80nmよりも厚い場合には、媒体の光透過が小さくなるために、既述の光吸収補正(Ac/Aa>1)を実現することが困難となるからである。
【0056】
第2の放熱層207の材料としては金属材料が用いられ、Al、Au、Ag、Cuのうち少なくとも1つを含んだ材料が用いられる。これらの材料を用いるのは、その光学定数がAc/Aaの値を大きくとる上で有利であるからであり、また、熱伝導率が高いために、膜厚が薄くても大きい冷却能を得ることができるからである。また、第2の放熱層207の材料としては、Al、Au、Ag、Cuのうちの少なくとも1つと、他の材料との混合物、又は合金を用いてもよい。これらの他の材料は、腐食防止やより効果的な光学設計を可能にする目的のために用いられる。具体的には、Cr、Pt、Pd、Mg、W、Ni、Mo、Si、Ge等が挙げられるが、用途に応じて適宜選択された材料を用いればよい。本発明者らの検討結果では、図2に示したような本発明の構成においては、Al合金を主たる構成材料とした場合に最も良好な性能を示した。
【0057】
第2の放熱層207の膜厚は、1nm以上80nm以下であるのが好ましい。第2の放熱層207の膜厚が1nm未満の場合には、膜が均一な層状とすることが困難となって、熱的、光学的な反射層の効果が低下するからであり、第2の放熱層207の膜厚が80nmよりも厚い場合には、媒体の光透過が小さくなるために、既述の光吸収補正(Ac/Aa>1)を実現することが困難となるからである。
【0058】
次に、本発明の特徴をなす主な部分である中間放熱層108について説明する。中間放熱層(中間層)108は2つの重要な役割を担っている。すなわち、第1の記録層構成体101で生じた熱を冷却することと、記録再生レーザ光を第2の記録層構成体201へ良好に透過することである。
【0059】
第1の放熱層107の材料として光透過型の薄い層を用いる場合、第1の放熱層107での冷却効果は低下してしまう。これを補うために、媒体としての光学的な特性を損なわずに、すなわち媒体の透過率を保ったまま、中間放熱層108において効果的に熱拡散が行われる。このため、中間放熱層108の記録再生レーザ波長域における吸収はある程度低くなければならない。このような中間放熱層108に要求される熱的特性としては、その材料の熱伝導率は一般に0.15〜17W/m・K程度のものであるが、安定した熱的特性(放熱特性)はその中間放熱層108の熱容量によってほぼ決まる。そしてそれは中間放熱層108単独で決められるものではなく、記録層の熱容量も考慮して決められる。なお、熱容量は各層の厚さによってほぼ決まる。
【0060】
前述のように本発明は図2に示したような2組の媒体によって構成される2層記録媒体である。このように第1の記録層構成体101を透過して、第2の記録層構成体201に良好に記録を行うには、放熱特性や透過率などを考慮した構成を検討する必要がある。
【0061】
また、記録層構成体が2層ある(第1、第2)ので、使用時の発熱量も通常の単層の光記録媒体の時よりもはるかに大であり、放熱特性を十分に考慮する必要がある。本発明ではこの点に鑑み、これら2層の記録層構成体全体の熱容量をこれら2層の記録層構成体をはさむ構成をなしている基板(カバー基板)100や溝付基板200のそれより小さくなるようにしている。これらの基板はたとえばポリカーボネート、PMMA等の樹脂、又はガラス等によって形成され、その材料の種類によって、それぞれ熱伝導率が異なるが、全体の熱容量を大きく左右する因子はその体積である。
【0062】
よって本発明では、これらの基板の厚さを上記2層の記録層構成体全体(中間放熱層および分離層も含む)の厚さより大とし、言い換えるならば記録層構成体全体の厚さを基板の厚さより小とし、記録層構成体全体の熱容量を基板のそれより小さくなるようにしている。
【0063】
これを実現する具体的な基板厚さとしてたとえば本発明では、0.2mmから1.5mmの厚さのポリカーボネート基板を使用するが、0.2mmから1.5mmの厚さあるいはそれ以上であれば熱容量的には問題ない。他の材料でも、厚さをこの程度にすれば熱容量的には問題ない。
【0064】
本発明ではこの点を考慮し、第1の記録層構成体101と中間放熱層108の厚さを変えた図2の層構成の光記録媒体を製作して、その記録特性を評価した。なおここで中間放熱層108は、InOとSnOからなるITOによって形成した。
【0065】
またこの時の第1の記録層構成体101の構成および各層の厚さは、第1の記録層構成体101全体が210nmの場合に、記録層104としてGe−Sb−Teを25nm、保護層102、106としてZnS−SiO2をそれぞれ40nm、界面層103、105としてGe−Nをそれぞれ30nm、放熱層107としてAgを45nmとしたものである。なお第1の記録層構成体101全体が320nm、430nmの場合には、各層の厚さはほぼ比例して増加した厚さであり、第2の記録層構成体201もほぼ同構成およびほぼ比例して減少した厚さである。
【0066】
また基板は、カバー基板、溝付基板とも、1mm厚さのポリカーボネート基板を使用した。分離層109は紫外線硬化樹脂層とした。
【0067】
なお書き込みレーザパワーは本発明においては3〜12mWの範囲が好適に使用されるが、第2の記録層構成体201へのレーザ書き込み(記録)は、第1の記録層構成体101を透過して行われるため、そのパワーロスを考慮して、第2の記録層構成体201への書き込みレーザパワー(記録パワー)を第1の記録層構成体101へのそれより大としている。
【0068】
また同様に、第1の記録層構成体101はその書き込み時にパワーロスがなく、また第2の記録層構成体201への書き込み時のパワーロス分の熱エネルギーが第1の記録層構成体101に蓄熱されることもあって、第1の記録層構成体101は第2の記録層構成体201よりも熱がたまりやすい。そこで、本発明では、第1の記録層構成体101の厚さを第2の記録層構成体201の厚さより大とし、そのバランスをとっている。すなわち、記録層構成体全体の厚さが厚いほど放熱体としての機能もはたすので、第1の記録層構成体101の厚さを第2の記録層構成体201の厚さより大とすることにより、第1の記録層構成体101の蓄熱を防止し、第2の記録層構成体201と同程度の熱容量になるようにして、2つの記録層構成体の記録特性がそろうようにしているのである。
【0069】
この時の記録条件等は以下のとおりである。
【0070】
【0071】
以下にその評価結果を示す。表1は実験1の結果、表2は実験2の結果である。ここで記録特性は、実際に実用に供しうるかどうかということで表中に○および×を付けたが、第1の記録層における評価で、○はジッタ特性が10%未満で、記録再生特性が実用に供しうる良好な状態を示している。×は蓄熱により急激にジッタ特性が悪く(15%以上)なり、エラー修復不能な状態になったものである。また、第2の記録層における評価においても、○はジッタ特性が10%未満で、記録再生特性が実用に供しうる良好な状態を示している。×は記録層において良好なアモルファス化ができなかった(=記録ができない)ため、再生特性が実用に供しないレベルにあるものを示している。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
以上の結果より、第1の記録層構成体と中間放熱層の厚さ比を0.2〜1.0の範囲にすることによって、第1の記録層構成体で発生した熱が蓄熱されることなく良好に放熱され、良好な記録特性が得られることがわかる。よって本発明のような2層構成とすることにより、記録媒体への熱負荷を低下することができ、繰り返し記録特性も向上し、従来の光記録媒体の2倍の記録容量を実現することが可能となった。上記比は、より好ましくは0.3〜0.8、さらに好ましくは0.5〜0.7である。
【0075】
なお、このような本発明に適用される中間放熱層としては、上記実施例の他に以下の材料の中から選んでもよい。例えば、Al−N、Al−O−N、Al−C、Si、Si−N、SiO2、Si−O−N、Si−C、Ti−N、TiO2、Ti−C、Ta−N、Ta2O5、Ta−O−N、Ta−C、Zn−O、ZnS、ZnSe、Zr−N、Zr−O−N、Zr−C、W−Cなどが挙げられる。あるいは、これらの混合物を用いてもよいし、これらの材料と適量の金属、半金属との混合物、又は合金を用いてもよい。さらに他の例として、In2O3−SnO2、ZrO2−Y2O3、InO2−ZrO2、Al2O3−ZrO2などが挙げられる。
【0076】
分離層109は、第1の記録層構成体101と第2の記録層構成体201とを光学的に分離することを主な目的として設けられ、記録再生に用いるレーザ光に対する光吸収ができるだけ小さくなる材料により構成される。例えば、紫外線硬化樹脂や遅効性樹脂等の有機材料からなる樹脂、光ディスク用両面接着シート、SiO2、Al2O3、ZnS等の無機誘電体、あるいはガラス材料などを用いることができる。
【0077】
分離層109の厚さは、一方の媒体を記録再生する際に、他方の媒体からのクロストークを無視できる程度に小さく抑えるために、レーザ光の焦点深度△Z以上の厚さとすることが必要である。ここで、焦点深度△Zは、集光点の強度が無収差の場合の80%の点を基準とした場合、近似的に下記の式で標記することができる。
△Z=λ/{2×(NA)2}
ここで、NAは対物レンズの開口数、λは記録・再生を行う際のレーザ光の波長である。例えば、λ=400nm、NA=0.60の場合、焦点深度は△Z=0.56μmとなる。従って、この場合、約±0.60μmの範囲内は焦点深度内となってしまうため、分離層109の厚さを少なくとも1.20μmよりも大きい値に設定する必要がある。
【0078】
また、分離層109の厚さは、2つの媒体間の距離が対物レンズの集光可能な範囲となるように、対物レンズの許容可能な公差内とするのが望ましい。
【0079】
第2の記録層構成体201の記録再生は、レーザ光を第1の記録層構成体101中を透過させることにより行われる。このため、記録再生を行うレーザ光の波長に対する第1の記録層構成体101の透過率をT1、反射率をR1、第2の記録層構成体201のみでの反射率をR2としたとき、第1の記録層構成体101を通して第2の記録層構成体201を再生する際の反射率r2は、下記の式で標記される。
r2=R2×T1×T1
また、信号振幅についても同様に、第2の記録層構成体201そのものの反射率差を△R2、第1の記録層構成体101を通して第2の記録層構成体201を再生する場合の第2の記録層構成体201の反射率差を△r2としたとき、下記の関係式が成り立つ。
△r2=△R2×T1×T1
例えば、△R2=24%、T1=50%のときは、第1の記録層構成体101を通して第2の記録層構成体201を再生する場合の第2の記録層構成体201の反射率差△r2は、△r2=24%×0.5×0.5=6%となる。
【0080】
以上のことから分かるように、第2の記録層構成体201から十分な信号を得るためには、第1の記録層構成体101の透過率T1をできるだけ高く、第2の記録層構成体201の信号振幅をできるだけ大きくとる必要がある。それと同時に、第1の記録層構成体101の反射率差をある程度高くする必要があり、かつ、第2の記録層構成体201の記録感度を非常に高くする必要がある。第1の記録層構成体101、第2の記録層構成体201の光学設計は、これらの要因が全てバランスするように定めなければならない。
【0081】
以下に、具体的な光学設計例を示す。一例として、第1の記録層構成体101の記録層104が結晶状態のときの反射率R1cが7.5%、アモルファス状態のときの反射率R1aが0.5%、第2の記録層構成体201の記録層204が結晶状態のときの反射率R2cが15%、アモルファス状態のときの反射率R2aが43%、第1の記録層構成体101にのみ記録を行った場合の第1の記録層構成体101の透過率が50%となるように設計した。光学設計値の調節は、主に記録層104、保護層102、106、第1の放熱層107の膜厚を変化させることによって行った。
【0082】
以上の例の場合、第1の記録層構成体101を通して第2の記録層構成体201を記録再生する場合の反射率差は、△r2=(43−15)×0.5×0.5=7%、また、第1の記録層構成体101の反射率差も7.5−0.5=7%となっている。このように、第1の記録層構成体101、第2の記録層構成体201の反射率差、すなわち信号振幅の大きさがほぼ同等となるように設計するのが望ましい。このように設計すれば、記録再生を行う媒体を第1の記録層構成体101と第2の記録層構成体201との間で切り替える際、信号振幅が極端に変化することによってトラッキングが不安定になるのを防止することができる。
【0083】
また、第1の記録層構成体の高透過率と第2の記録層構成体の高反射率差とを両立させることは大変困難であるため、設計を行った後の反射率差は比較的小さく、信号振幅が比較的小さくなってしまうことが多い。この場合には、再生光のパワーレベルP3を従来よりもやや大きく設定し、再生信号振幅を大きくとるのが好ましい。但し、P3のレベルを大きく設定し過ぎると、記録マークが熱的に影響を受け、再生信号が劣化してしまうため、この再生光による信号劣化が生じない範囲でP3のレベルを設定しなければならない。また、第1の記録層構成体101と第2の記録層構成体201の再生パワーレベルはそれぞれ異なっていても構わない。また、第1の記録層構成体101と第2の記録層構成体201の再生を行うレーザ光の波長は異なっていてもよいが、同一波長のレーザ光を用いるのが一般的である。
【0084】
次に、以上説明した光記録媒体の製造方法について説明する。上記光記録媒体を構成する多層膜を作製する方法としては、スパッタリング法、真空蒸着、CVD等の方法がある。ここでは、スパッタリング法を用いた場合を例に挙げて説明する。図3は成膜装置の一例を示す概略図である。
【0085】
図3に示すように、真空容器9には、排気口15を介して真空ポンプ(図示せず)が接続されており、これにより真空容器9内を高真空に保つことができるようにされている。また、真空容器9にはガス供給口14が設けられており、このガス供給口14から一定流量の希ガス、窒素、酸素、又はこれらの混合ガスを供給することができるようにされている。図3中、10は真空容器9内に配置された基板であり、この基板10は、基板10の自転・公転を行うための駆動装置11に取り付けられている。12は真空容器9内に基板10と対向させて複数配置されたスパッタターゲットであり、これらのスパッタターゲット12はそれぞれ陰極13に接続されている。ここで、陰極13は、図示しないスイッチを介して直流電源又は高周波電源(図示せず)に接続されている。また、真空容器9を接地することにより、真空容器9及び基板10は陽極に保たれている。
【0086】
成膜ガスとしては、希ガス、あるいは場合に応じて希ガスに微量の窒素又は酸素等を混合したガスが用いられる。希ガスとしては、Ar、Kr等の成膜可能なガスを用いればよい。一般に、記録層104、204や保護層102、106、202、206を成膜する際に、希ガスと微量の窒素又は微量の酸素との混合ガスを用いると、媒体の繰り返し記録時の物質移動を抑制することができ、繰り返し特性が向上することが知られている。
【0087】
界面層103、105、203、205、あるいは中間放熱層108として、窒化物や酸化物を用いる場合、反応性スパッタリング法によってスパッタすると、良好な膜質の膜が得られる。例えば、界面層103、105、203、205としてGe−Cr−Nを用いる場合、Ge−Cr、もしくはGeとCrとOとを含む材料をターゲットとし、成膜ガスとして希ガスと窒素との混合ガスを用いる。あるいは、N2O、NO2、NO、N2等の窒素原子を含むガスや、これらの適当な組み合わせと希ガスとの混合ガスを用いてもよい。また、膜が硬質である場合や膜応力が大きい場合等には、必要に応じて微量の酸素を成膜ガス中に混合することにより、良好な膜質の層を得ることができる場合がある。
【0088】
次に、以上のようにして形成した光記録媒体の記録再生方法、消去方法について説明する。信号の記録再生、消去には、レーザ光源と対物レンズを搭載した光ヘッドと、レーザ光を照射する位置を所定の位置へと導くための駆動装置と、トラック方向及び膜面に垂直な方向の位置を制御するためのトラッキング制御装置及びフォーカシング制御装置と、レーザパワーを変調するためのレーザ駆動装置と、媒体を回転させるための回転制御装置とが用いられる。
【0089】
信号の記録、消去は、まず、媒体を回転制御装置を用いて回転させ、光学系を用いてレーザ光を微小スポットに絞りこんで、媒体へ照射することによって行われる。レーザ光の照射によって記録層4のうちの局所的な一部分がアモルファス状態へと可逆的に変化し得るアモルファス状態生成パワーレベルをP1、同じくレーザ光の照射によって結晶状態へと可逆的に変化し得る結晶状態生成パワーレベルをP2とし、レーザパワーをP1とP2との間で変調させることによって記録マーク、あるいは消去部分を形成する。これにより、情報の記録、消去、及び上書き記録が行われる。P1のパワーを照射する部分は、パルスの列で形成する、いわゆるマルチパルスとするのが一般的である。
【0090】
また、前記P1、P2のいずれのパワーレベルよりも低く、そのパワーレベルでのレーザ光の照射によって記録マークの光学的な状態が影響を受けず、かつその照射によって媒体から記録マークの再生のために十分な反射率が得られるパワーレベルを再生パワーレベルP3とし、P3のパワーのレーザ光を照射することによって得られる媒体からの信号を検出器で読み取ることにより、情報信号の再生が行われる。
【0091】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1によれば、このような2層構成型光記録媒体において、記録層構成体全体の熱容量を基板のそれより小さくするとともに、最初にレーザ光が入射する記録層構成体の厚さと中間放熱層の厚さの関係を最適化したので、第1、第2のそれぞれの記録層構成体において良好な記録再生が可能となり、通常の1層だけのものに対して2倍の記録容量を実現できるようになった。またこの最適化により、記録媒体への熱負荷を低下することができるため、繰り返し記録特性も向上させることが可能となった。
【0092】
請求項2によれば、このような2層構成型光記録媒体において、第1の記録層構成体の厚さを第2の記録層構成体の厚さより厚くしたので、上記第1の効果に加えて、各層の放熱バランスが取れてそれぞれの層の記録特性がほぼ同じようになり、安定性の高い2層構成型光記録媒体を実現できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態における光記録媒体の層構成を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施の形態における2組の媒体によって構成される2層記録媒体の層構成を示す断面図である。
【図3】本発明の一実施の形態における光記録媒体の製造に用いられる成膜装置の一例を示す概略図である。
【図4】従来の相変化形記録媒体の層構成の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
1、10 基板
100 基板(カバー基板)
200 溝付基板
2、102、106、202、206 保護層
3、5、103、105、203、205 界面層
4、104、204 記録層
6 反射層
107 第1の放熱層
207 第2の放熱層
7 熱拡散層
108 中間放熱層(中間層)
9 真空容器
11 基板駆動装置
12 ターゲット
13 陰極
14 ガス供給口
15 排気口
109 分離層
101 第1の記録層構成体
201 第2の記録層構成体
Claims (2)
- 幅0.10〜0.46μm、深さ0.01〜0.04μmの溝を0.28〜0.50μmピッチで形成した基板上に、2組の記録層構成体を積層し、記録層構成体側から基板に向けて波長360〜420nm、スポット径0.3〜0.52μm(1/e2)のレーザ光を照射し、2組の記録層構成体にそれぞれ記録あるいは再生を行う2層構成型光記録媒体において、
最初にレーザ光が入射する第1の記録層構成体は、第1のZnS−SiO2、Ge−N、Ge−Sb−Te、Ge−N、第2のZnS−SiO2の各材料を主たる構成材料とした層をレーザ光入射側から順に積層するとともに、前記第2のZnS−SiO2層にAgを主たる構成材料とした第1の放熱層をレーザ光入射の反対側に設けてなる構成体であり、
前記第1の記録層構成体を透過したレーザ光が入射する第2の記録層構成体は、前記第1の放熱層を除いて前記第1の記録層構成体と同様の層構成とし、該層構成体と接し、前記溝を形成した基板と接する部分に金属材料よりなる第2の放熱層を設けてなる構成体であり、
前記第1の記録層構成体と第2の記録層構成体は、前記第1の放熱層に接する中間放熱層と該中間放熱層に前記第2の記録層構成体側に接する分離層とを介して積層され、それらの記録層構成体全体の熱容量を前記基板のそれより小さくするとともに、前記第2の記録層構成体への書き込みレーザパワーを前記第1の記録層構成体へのそれより大とし、それらの書込みレーザパワー3〜12mWの範囲にして記録を行う2層構成型光記録媒体であって、
前記第1の記録層構成体の厚さT1と中間放熱層の厚さtの比率t/T1を0.2〜1.0の範囲にしたことを特徴とする2層構成型光記録媒体。 - 前記第1の記録層構成体の厚さを前記第2の記録層構成体の厚さより厚くしたことを特徴とする請求項1に記載の2層構成型光記録媒体。
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