JP2003338644A - 磁気検出素子及びその製造方法 - Google Patents

磁気検出素子及びその製造方法

Info

Publication number
JP2003338644A
JP2003338644A JP2002329144A JP2002329144A JP2003338644A JP 2003338644 A JP2003338644 A JP 2003338644A JP 2002329144 A JP2002329144 A JP 2002329144A JP 2002329144 A JP2002329144 A JP 2002329144A JP 2003338644 A JP2003338644 A JP 2003338644A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
layer
magnetic
ferromagnetic
antiferromagnetic
magnetic layer
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2002329144A
Other languages
English (en)
Inventor
Masaji Saito
正路 斎藤
Naoya Hasegawa
直也 長谷川
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Alps Alpine Co Ltd
Original Assignee
Alps Electric Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Alps Electric Co Ltd filed Critical Alps Electric Co Ltd
Priority to JP2002329144A priority Critical patent/JP2003338644A/ja
Publication of JP2003338644A publication Critical patent/JP2003338644A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Magnetic Heads (AREA)
  • Thin Magnetic Films (AREA)
  • Hall/Mr Elements (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 フリー磁性層の単磁区化及び磁化方向の制御
を適切かつ容易に行ない、さらなる狭トラック化を促進
できる磁気検出素子を提供する。 【解決手段】 第2反強磁性層23と強磁性層24との
間の交換結合磁界によって、強磁性層24の磁化方向が
固定され、非磁性層25を介した強磁性層24とフリー
磁性層26のRKKY相互作用によって、フリー磁性層
26の磁化方向が固定磁性層28の磁化方向と交叉する
方向に向けられている。フリー磁性層26の磁化方向の
制御は、第2反強磁性層と強磁性層24間の交換結合磁
界の大きさと、強磁性層24とフリー磁性層26間のR
KKY相互作用の大きさの2段階で調節されることにな
り、細かな制御を容易に行うことができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、主に、磁気センサ
やハードディスクなどに用いられる磁気検出素子及びそ
の製造方法に係り、特に狭トラック幅化への対応を容易
にし、磁界検出能力を向上させることができる磁気検出
素子及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】図18は、従来の磁気検出素子の構造を
記録媒体との対向面から見た断面図である。
【0003】図18に示す磁気検出素子は、巨大磁気抵
抗効果を利用したGMR(giant magnetoresistive)素
子の1種であるスピンバルブ型磁気検出素子と呼ばれる
ものであり、ハードディスクなどの記録媒体からの記録
磁界を検出するものである。
【0004】このスピンバルブ型磁気検出素子は、下か
ら基板8、第1反強磁性層1、固定磁性層(ピン(Pinn
ed)磁性層)2、非磁性材料層3、フリー磁性層(Fre
e)4で構成された多層膜9と、この多層膜9の上層に
形成された一対の第2反強磁性層6,6及びこの第2反
強磁性層6,6の上に形成された一対の電極層7,7と
で構成されている。
【0005】前記第1反強磁性層1及び第2反強磁性層
6,6にはFe−Mn(鉄−マンガン)合金膜、Ni−
Mn(ニッケル−マンガン)合金膜、又はPt−Mn
(白金−マンガン)合金膜、固定磁性層2及びフリー磁
性層4にはNi−Fe(ニッケル−鉄)合金膜、非磁性
材料層3にはCu(銅)膜、また電極層7,7にはCr
膜が一般的に使用される。
【0006】固定磁性層2の磁化は第1反強磁性層1と
の交換異方性磁界によりY方向(記録媒体からの漏れ磁
界方向;ハイト方向)に単磁区化され、フリー磁性層4
の磁化は、前記第2反強磁性層6,6からの交換異方性
磁界の影響を受けてX方向に揃えられることが望まし
い。
【0007】すなわち固定磁性層2の磁化と、フリー磁
性層4の磁化とが、直交することが望ましい。
【0008】このスピンバルブ型磁気検出素子では、第
2反強磁性層6,6上に形成された電極層7,7から、
フリー磁性層4、非磁性材料層3及び固定磁性層2に検
出電流(センス電流)が与えられる。ハードディスクな
どの記録媒体の走行方向はZ方向であり、記録媒体から
の洩れ磁界がY方向に与えられると、フリー磁性層4の
磁化がXからY方向へ向けて変化する。このフリー磁性
層4内での磁化の方向の変動と、固定磁性層2の固定磁
化方向との関係で電気抵抗が変化し(これを磁気抵抗効
果という)、この電気抵抗値の変化に基づく電圧変化に
より、記録媒体からの洩れ磁界が検出される。
【0009】またフリー磁性層4にバイアス磁界を与え
る手段としては図18に示す方法以外に後述する図20
に示すような方法や、以下の特許文献1などの方法が種
々知られている。
【0010】
【特許文献1】USP6,023,395
【0011】
【発明が解決しようとする課題】図18のスピンバルブ
型磁気検出素子を製造するときには、多層膜9を形成し
た後、図19に示すように多層膜9上にリフトオフ用の
レジスト層Rを形成し、イオンビームスパッタ法などを
用いて第2反強磁性層6,6、及び電極層7,7を成膜
する。レジスト層R上には、第2反強磁性層6,6と同
じ組成の層6a,6a及び電極層7,7と同じ組成の層
7a,7aが形成される。
【0012】レジスト層Rの両端部によって覆われてい
る領域は、スパッタ粒子が積層されにくい。従って、レ
ジスト層Rの両端部によって覆われている領域付近は、
第2反強磁性層6,6及び電極層7,7は膜厚が薄く形
成され、図18及び図19に示されるように第2反強磁
性層6,6及び電極層7,7の膜厚方向寸法がトラック
両脇部分S,Sにおいて減少する。
【0013】このため、トラック両脇部分S,Sにおけ
るフリー磁性層4と第2反強磁性層6,6との交換結合
磁界の効果が減少してしまう。その結果、図19におけ
るフリー磁性層4のトラック両脇部分S,Sの磁化方向
が、X方向に完全に固定されず、外部磁界が印加された
ときに変化してしまう。
【0014】特に、磁気記録媒体における記録密度を向
上させるために、狭トラック化を図った場合、本来トラ
ック幅Twの領域内で読み取るべき磁気記録トラックの
情報だけでなく、隣接する磁気記録トラックの情報を、
トラック両脇部分S,Sの領域において読み取ってしま
うという、サイドリーディングが発生する可能性が生じ
るという問題があった。
【0015】また、フリー磁性層4のトラック幅方向の
両端部上に一対の第2反強磁性層6,6を積層する構造
だと、フリー磁性層4のトラック幅方向の中央部の単磁
区化及び磁化方向の制御が不十分になりやすい。
【0016】そこで、図18に示される磁気検出素子の
ように、フリー磁性層4の両端部上に、トラック幅寸法
の幅を開けて一対の第2反強磁性層6,6を積層するの
ではなく、図20に示される磁気検出素子のように、フ
リー磁性層4の上面全体に第2反強磁性層10を重ねる
ことにより、フリー磁性層4のトラック幅寸法Twの領
域を単磁区化して、磁化方向を固定磁性層1の磁化方向
に直交する方向に向けさせる構造も考えられた。
【0017】フリー磁性層4のトラック幅寸法Twの領
域を単磁区化して、磁化方向を固定磁性層1の磁化方向
に直交する方向に向けさせるためには、フリー磁性層4
と第2反強磁性層10間の交換結合磁界を大きくする必
要があるが、この交換結合磁界が大きくなりすぎると、
記録媒体からの洩れ磁界がY方向に与えられたときにフ
リー磁性層4の磁化が変化しなくなり、磁気検出能力が
失われることになる。
【0018】しかし、図20のような構造は、フリー磁
性層4の磁化方向を固定磁性層1の磁化方向に直交する
方向に向け、かつフリー磁性層4の磁化方向を洩れ磁界
によって変動させることができるような範囲に、フリー
磁性層4と反強磁性層10間の交換結合磁界の大きさを
調節することが非常に困難であり、実用性が低いもので
あった。
【0019】また特許文献1では、例えばフリー磁性層
の上にスペーサ層(spacer layer)を介してバイアス層
(biasing layer)が設けられており、前記バイアス層
のトラック幅方向の端部と前記フリー磁性層のトラック
幅方向の端部間での静磁結合により、前記フリー磁性層
の磁化を単磁区化するとしている。特許文献1のように
バイアス層との端部間での静磁結合を用いて前記フリー
磁性層の磁化を揃える方法をInstack bias方式と呼んで
いる。
【0020】しかし特許文献1のようなInstack bias方
式では、フリー磁性層に適度なバイアス磁界を供給する
ための、前記スペーサ層の膜厚の制御やフリー磁性層と
バイアス層との端部間の距離の制御が非常に難しく、素
子サイズが狭小化している近年においてはなおさらであ
る。特にフリー磁性層の端部は中央部に比べて静磁結合
の影響を強く受けるため、フリー磁性層全体に一様なバ
イアス磁界の供給はされず、フリー磁性層の端部が強く
磁化されてここが不感領域となり、この結果、フリー磁
性層の中央部も磁性層内部での磁化相互作用によって外
部磁界に対し反転しずらくなる。
【0021】また素子サイズが狭小化している近年にあ
っては、前記静磁結合によるバイアス磁界が前記フリー
磁性層のみならず他の層にも流入しやすく、再生特性に
悪影響を及ぼしやすいという問題もある。
【0022】そこで本発明は上記従来の課題を解決する
ためのものであり、フリー磁性層の単磁区化及び磁化方
向の制御を適切かつ容易に行なうことができ、狭トラッ
ク化を促進できる磁気検出素子及びその製造方法を提供
することを目的とする。
【0023】
【課題を解決するための手段】本発明は、第1反強磁性
層と、この第1反強磁性層によって磁化方向が固定され
た固定磁性層、非磁性材料層、及び外部磁界により磁化
方向が変化するフリー磁性層を有する多層膜を有する磁
気検出素子において、前記固定磁性層及び前記フリー磁
性層は強磁性材料からなる強磁性材料層を有し、前記フ
リー磁性層の少なくともトラック幅領域の上層または下
層に、非磁性層を介して強磁性層及び第2反強磁性層が
積層されており、前記第2反強磁性層との交換結合磁界
により前記強磁性層の磁化方向が前記固定磁性層の磁化
方向と交叉する方向へ向けられていることを特徴とする
ものである。
【0024】本発明では、前記第2反強磁性層との交換
結合磁界により前記強磁性層の磁化方向が前記固定磁性
層の磁化方向と交叉する方向へ向けられており、前記フ
リー磁性層が前記非磁性層を介して前記強磁性層に積層
されているため、前記フリー磁性層の単磁区化及び磁化
方向の制御は、前記反強磁性層と前記強磁性層間の交換
結合磁界の大きさと、前記強磁性層と前記フリー磁性層
間の磁気的結合の大きさの2段階で調節されることにな
り、細かな制御を容易に行うことができる。
【0025】従って、本発明では、前記フリー磁性層の
単磁区化及び磁化方向の制御を適切かつ容易に行なうこ
とができるので、磁気検出素子のさらなる狭トラック化
を促進することができる。
【0026】また本発明では、前記フリー磁性層のトラ
ック幅領域上に、前記非磁性層を介して前記強磁性層及
び前記第2反強磁性層が積層される構造でも、前記フリ
ー磁性層の磁化方向を前記固定磁性層の磁化方向に直交
する方向に確実に向けて、なおかつ前記フリー磁性層の
磁化方向を洩れ磁界によって変動させることが可能にな
る。
【0027】従って、本発明では、前記フリー磁性層の
トラック幅領域の中央部と両端部で、前記フリー磁性層
の磁化方向が異なる状態になりにくくできる。
【0028】また、本発明では、前記フリー磁性層は、
前記強磁性層との前記非磁性層を介した層間結合磁界に
よって単磁区化され、磁化方向が前記固定磁性層の磁化
方向と交叉する方向へ向けられていることが好ましい。
【0029】例えば、前記フリー磁性層と前記強磁性層
との間には、前記非磁性層を介したRKKY相互作用が
発生する。その結果、前記フリー磁性層が単磁区化し、
その磁化方向が前記固定磁性層の磁化方向と交叉する方
向へ向けられる。
【0030】このように、本発明では、前記強磁性層と
の前記非磁性層を介した層間結合磁界によって、前記フ
リー磁性層の単磁区化及び磁化方向の制御が行われるの
で、記録媒体からの洩れ磁界などの外部磁界によって、
前記フリー磁性層にかかる縦バイアス磁界が乱れ、前記
フリー磁性層の磁区構造が乱されることを抑制できる。
【0031】前記フリー磁性層と前記強磁性層との間に
安定したRKKY相互作用を生じさせるためには、前記
非磁性層が、Ru、Rh、Ir、Cr、Re、Cuのう
ち1種あるいは2種以上の合金で形成されることが好ま
しい。
【0032】前記非磁性層をRuによって形成し、前記
フリー磁性層と前記強磁性層の磁化方向を180°異な
らせた人工フェリ状態にするときには、前記Ruの膜厚
を8Å〜11Å又は15Å〜21Åにすることが好まし
い。
【0033】本発明では、前記第2反強磁性層と前記強
磁性層間の交換結合磁界を大きくして、前記強磁性層の
磁化方向を前記固定磁性層の磁化方向と交叉する方向に
強く固定した上で、前記非磁性層を介した前記フリー磁
性層と前記強磁性層間の層間結合磁界の大きさを、前記
第2反強磁性層と前記強磁性層間の前記交換結合磁界よ
りも小さくすることにより、前記フリー磁性層の磁化方
向を前記固定磁性層の磁化方向に直交する方向に確実に
向け、なおかつ前記フリー磁性層の磁化方向を洩れ磁界
によって変動させることができるように調節する必要が
ある。
【0034】前記第2反強磁性層と前記強磁性層間の交
換結合磁界を大きくし、前記フリー磁性層と前記強磁性
層間の層間結合磁界の大きさを前記交換結合磁界よりも
小さくするために、本発明では、前記強磁性層の単位面
積あたりの磁気モーメントの大きさ(Ms×t;飽和磁
束密度と膜厚の積)を前記フリー磁性層の単位面積あた
りの磁気モーメントの大きさ(Ms×t;飽和磁束密度
と膜厚の積)よりも小さくするという手法をとることが
できる。
【0035】具体的には、前記強磁性層の単位面積あた
りの磁気モーメントの大きさ(Ms×t)に対する前記
フリー磁性層の単位面積あたりの磁気モーメントの大き
さ(Ms×t)の比率が、3以上で20以下の範囲であ
ることが好ましい。
【0036】また、前記強磁性層の前記非磁性層に接す
る側をNiFe(パーマロイ)層あるいはNiFeX
(XはAl,Si,Ti,V,Cr,Mn,Cu,Z
r,Nb,Mo,Ru,Rh,Hf,Ta,W,Ir,
Ptから選ばれる1種或いは2種以上の元素)で形成す
ることにより、前記フリー磁性層と前記強磁性層間の層
間結合磁界の大きさを適度に小さくし、また、前記強磁
性層の前記第2反強磁性層に接する側をCo(コバル
ト)を含む強磁性材料で形成することにより、前記第2
反強磁性層と前記強磁性層間の交換結合磁界を大きくす
ることができる。
【0037】あるいは、本発明では、前記強磁性層をN
iFe(パーマロイ)からなる単層構造とし、前記強磁
性層の膜厚を0nmより大きく3nm以下として形成す
ることにより、前記フリー磁性層を単磁区化して、その
磁化方向を前記固定磁性層の磁化方向に直交する方向に
確実に向け、なおかつ前記フリー磁性層の磁化方向を洩
れ磁界によって変動させることができる。
【0038】また前記強磁性層は、CoFeCrあるい
はCoFeからなる単層構造であってもよい。
【0039】また、前記フリー磁性層には、少なくとも
前記非磁性層に接する側に、NiFe(パーマロイ)層
あるいはNiFeX(XはAl,Si,Ti,V,C
r,Mn,Cu,Zr,Nb,Mo,Ru,Rh,H
f,Ta,W,Ir,Ptから選ばれる1種或いは2種
以上の元素)からなる磁性領域が存在することが好まし
い。これにより、前記フリー磁性層と前記強磁性層間の
層間結合磁界の大きさを適度に小さくできる。
【0040】また前記フリー磁性層には、前記非磁性材
料層に接する側にCo(コバルト)を含む強磁性材料か
らなる磁性領域が存在することが好ましい。これによ
り、前記フリー磁性層に接する前記非磁性材料層への前
記フリー磁性層の材料(Niなど)の拡散を防止し、磁
気抵抗変化率の低下を防ぐことができる。
【0041】また前記Coを含む強磁性材料とは、Co
FeあるいはCoFeCrであることが好ましい。
【0042】なお、本発明の構造を有する磁気検出素子
であれば、再生効率η(%)を10%以上で50%以下
にすることが可能である。なお、再生効率ηは、η=
{(記録媒体からの洩れ磁界による磁気検出素子の最大
抵抗変化量)/(磁気検出素子の最大抵抗変化量の理論
値)}×100として定義される。なお、磁気検出素子
の最大抵抗変化量の理論値とは、フリー磁性層と固定磁
性層の磁化方向が反平行状態のときの抵抗値とフリー磁
性層と固定磁性層の磁化方向が平行状態のときの抵抗値
の差である。
【0043】本発明の磁気検出素子では、外部磁界が印
加されときに、前記フリー磁性層のトラック幅領域の磁
化方向が、外部磁界が印加されていないときの磁化方向
に対して12°以上傾くようにできる。
【0044】本発明では、前記多層膜は下から、前記第
1反強磁性層、前記固定磁性層、前記非磁性材料層、前
記フリー磁性層、前記非磁性層、前記強磁性層、前記第
2反強磁性層の順序で積層されているものとすることが
できる。
【0045】または、前記多層膜を下から、前記第2反
強磁性層、前記強磁性層、前記非磁性層、前記フリー磁
性層、前記非磁性材料層、前記固定磁性層及び前記第1
反強磁性層の順序で積層されているものとしてもよい。
【0046】また、本発明における前記フリー磁性層に
おいて、前記フリー磁性層の膜厚方向の一部分のみがト
ラック幅寸法のトラック幅方向寸法を有し、残りの部分
はトラック幅寸法より大きいトラック幅方向寸法を有す
るものであってもよい。
【0047】前記フリー磁性層の一部がトラック幅寸法
より大きいトラック幅方向寸法を有するものであると、
前記フリー磁性層の両側端部に生じる表面磁荷に起因す
るフリー磁性層内部の反磁界を小さくすることができ、
前記フリー磁性層内部の磁化方向の乱れを低下させるこ
とができる。
【0048】特に、磁気検出素子が、前記多層膜の膜面
と垂直方向に電流が供給されるCPP(Current
Perpendicular to the Pla
ne)型であり、前記非磁性材料層、固定磁性層及び第
1反強磁性層が前記フリー磁性層の上層にあるトップ型
の磁気検出素子であると、前記フリー磁性層の一部がト
ラック幅寸法より大きいトラック幅方向寸法を有するよ
うに形成することが容易である。
【0049】また、前記フリー磁性層は、単位面積あた
りの磁気モーメントの大きさが異なる複数の強磁性材料
層が、非磁性中間層を介して積層され、前記非磁性中間
層を介して隣接する前記強磁性材料層の磁化方向が反平
行となるフェリ磁性状態であると、前記フリー磁性層の
実質的な単位面積当りの磁気モーメントを薄くすること
ができ、前記フリー磁性層の磁化方向の外部磁界に対す
る変動率を向上させることができる。すなわち、磁気検
出素子の磁界検出感度が向上するので好ましい。また、
前記フリー磁性層内部の反磁界を少なくさせることもで
きる。
【0050】前記非磁性中間層は、例えば、Ru、R
h、Ir、Cr、Re、Cuのうち1種あるいは2種以
上の合金で形成されることが好ましい。
【0051】なお、本発明では、前記複数の強磁性材料
層の少なくとも一層を、以下の組成を有する磁性材料で
形成することが好ましい。
【0052】組成式がCoFeNiで示され、Feの組
成比は9原子%以上17原子%以下で、Niの組成比は
0.5原子%以上10原子%以下で、残りの組成比はC
oである磁性材料。
【0053】また、前記非磁性材料層に最も近い位置に
積層された前記強磁性材料層と前記非磁性材料層との間
にCoFe合金あるいはCoからなる中間層を形成する
ことが好ましい。前記中間層を形成するときには、前記
複数の強磁性材料層の少なくとも一層を、以下の組成を
有する磁性材料で形成することが好ましい。
【0054】組成式がCoFeNiで示され、Feの組
成比は7原子%以上15原子%以下で、Niの組成比は
5原子%以上15原子%以下で、残りの組成比はCoで
ある磁性材料。
【0055】さらに、本発明では、前記複数の強磁性材
料層の全ての層を前記CoFeNiで形成することが好
ましい。
【0056】フリー磁性層が、単位面積あたりの磁気モ
ーメントの大きさが異なる複数の強磁性材料層が、非磁
性中間層を介して積層され、前記非磁性中間層を介して
隣接する前記強磁性材料層の磁化方向が反平行となる人
工フェリ磁性状態であるとき、この反平行磁化状態を適
切に保つには、前記フリー磁性層の材質を改良して前記
複数の強磁性材料層間に働くRKKY相互作用における
交換結合磁界を大きくする必要性がある。
【0057】前記強磁性材料層を形成する磁性材料とし
てよく使用されるものにNiFe合金がある。NiFe
合金は軟磁気特性に優れるため従来からフリー磁性層な
どに使用されていたが、前記フリー磁性層を積層フェリ
構造にした場合、NiFe合金で形成された強磁性材料
層間の反平行結合力はさほど強くはない。
【0058】そこで本発明では、前記強磁性材料層の材
質を改良し、前記複数の強磁性材料層間の反平行結合力
を強めるために、前記複数の強磁性材料層のうち少なく
とも一層、好ましくは全ての層にCoFeNi合金を使
用することとしたのである。Coを含有させることで上
記の反平行結合力を強めることができる。
【0059】これにより、前記複数の強磁性材料層間で
発生するRKKY相互作用における交換結合磁界を強く
することができる。具体的には、反平行状態が崩れると
きの磁界、すなわちスピンフロップ磁界(Hsf)を約
293(kA/m)にまで大きくすることができる。
【0060】また上記した組成範囲内であると、前記複
数の強磁性材料層の磁歪を−3×10−6から3×10
−6の範囲内に収めることができ、また保磁力を790
(A/m)以下に小さくできる。
【0061】なお、本発明は、前記多層膜の上面に上部
電極層が電気的に接続され、前記多層膜の下面に下部電
極層が電気的に接続され、前記多層膜の膜面と垂直方向
に電流が供給されるCPP(Current Perp
endicular tothe Plane)型の磁
気検出素子に適用することが有効である。
【0062】CPP型の磁気検出素子であるとき、前記
多層膜が半金属強磁性ホイスラー合金層を有すると、前
記多層膜内を流れるアップスピン電子とダウンスピン電
子の比率を制御でき、磁気抵抗変化率を向上させること
ができるので好ましい。
【0063】また、前記半金属強磁性ホイスラー合金層
が前記フリー磁性層の一部であるとき、前記半金属強磁
性ホイスラー合金層に軟磁気特性が高いNiFe層が接
していると、磁気抵抗変化率を向上させることができる
ので好ましい。
【0064】なお、本発明では、前記第1反強磁性層及
び前記第2反強磁性層を、同一の組成を有する反強磁性
材料によって形成することができる。
【0065】また、前記第1反強磁性層及び/又は前記
第2反強磁性層は、PtMn合金、または、X―Mn
(ただしXは、Pd,Ir,Rh,Ru,Os,Ni,
Feのいずれか1種または2種以上の元素である)合金
で、あるいはPt―Mn―X′(ただしX′は、Pd,
Ir,Rh,Ru,Au,Ag,Os,Cr,Ni,A
r,Ne,Xe,Krのいずれか1種または2種以上の
元素である)合金で形成されることが好ましい。
【0066】また本発明では、前記多層膜は、前記フリ
ー磁性層の上側あるいは下側に前記非磁性層を介して強
磁性層及び前記第2反強磁性層が積層され、少なくとも
前記フリー磁性層のトラック幅方向の両側端面に非磁性
材料層を介して固定磁性層が形成され、前記固定磁性層
上に前記1反強磁性層が積層された構造であり、前記第
1反強磁性層上に電極層が形成された磁気検出素子であ
ってもよい。
【0067】この発明では、前記フリー磁性層及び固定
磁性層をトラック幅方向に並べて配置し、前記電極層か
らの電流がトラック幅方向から固定磁性層を通ってフリ
ー磁性層へ、あるいはフリー磁性層を通って前記固定磁
性層へ通電する流れ方向となっている。
【0068】上記した構造の磁気検出素子では、抵抗変
化量(ΔR)を大きくでき再生出力の向上をより効果的
に図ることができるとともにトラック幅の狭小化により
抵抗変化率の向上を図ることができ、さらに前記フリー
磁性層及び固定磁性層をトラック幅方向に並べて配置し
た構造であっても前記フリー磁性層の上側あるいは下側
に非磁性層を介して強磁性層及び第2反強磁性層を積層
することで、前記フリー磁性層の磁化制御を適正化する
ことができる。
【0069】また、本発明の磁気検出素子の製造方法
は、以下の工程を有することを特徴とするものである。 (a)基板上に、下から第2反強磁性層、強磁性層、非
磁性層、フリー磁性層、非磁性材料層、固定磁性層、中
間反強磁性層及び非磁性保護層の順に積層する工程と、
(b)第1の磁場中アニールを施して、前記第2反強磁
性層と前記強磁性層間に交換結合磁界を発生させ、前記
強磁性層の磁化をトラック幅方向に固定する工程と、
(c)前記非磁性保護層を全部または一部削る工程と、
(d)前記非磁性保護層上または中間反強磁性層上に上
部反強磁性層を形成し、前記中間反強磁性層と前記上部
反強磁性層を有する第1反強磁性層を形成する工程と、
(e)第2の磁場中アニールを施し、前記第1反強磁性
層と前記固定磁性層間に交換結合磁界を発生させ、前記
固定磁性層の磁化を前記強磁性層の磁化方向と交叉する
方向に固定する工程。
【0070】本発明では、前記(a)工程において、基
板上に第2反強磁性層から非磁性保護層までを連続成膜
している。
【0071】本発明において、前記非磁性保護層は酸化
されにくい貴金属などからなるものであり、従来非磁性
保護層として用いられていたTa膜のように酸化によっ
て膜厚が大きくなることがない。
【0072】従って、前記非磁性保護層を薄く形成して
も、十分な酸化防止効果を得ることができるので、低エ
ネルギーのイオンミリングによって前記非磁性保護層の
除去を行うことができ、前記非磁性保護層の下に形成さ
れた前記中間反強磁性層を前記イオンミリングによるダ
メージから適切に保護できる。
【0073】また前記貴金属元素などがアニールなどに
よって中間反強磁性層及び上部反強磁性層の内部に拡散
しても、反強磁性層の性質が劣化することがない。従来
使用されていたTa膜は、Ruなどに比べて反強磁性層
の内部に拡散すると、反強磁性層の性質(機能)を劣化
させやすいので好ましくない。
【0074】本発明では、前記非磁性保護層を、Ru、
Re、Pd、Os、Ir、Pt、Au、Rh,Cu,C
rのいずれか1種または2種以上で形成することが好ま
しい。
【0075】また、前記(a)工程で、前記中間反強磁
性層を10Å以上50Å以下で形成するか、より好まし
くは、30Å以上40Å以下で形成すると、前記(b)
工程の第1の磁場中アニールによって、前記中間反強磁
性層と前記固定磁性層間に交換結合磁界が発生せず、前
記固定磁性層の磁化方向が前記フリー磁性層の磁化方向
と同じ方向を向くことを避けることができる。
【0076】なお、本発明では前記非磁性保護層を薄く
形成しても、十分な酸化防止効果を得ることができるこ
とを先に述べたが、具体的には、前記(a)工程で、前
記非磁性保護層を3Å以上10Å以下で形成することが
できる。
【0077】また、前記(c)工程で、前記非磁性保護
層の膜厚が3Å以下となるまで、前記非磁性保護層を削
り込むか、あるいは前記非磁性保護層を全て除去するこ
とが好ましい。
【0078】前記(c)工程で前記非磁性保護層を全て
除去すると、前記第1反強磁性層は、前記中間反強磁性
層及び前記上部反強磁性層のみから構成されることにな
る。しかし、前記非磁性保護層を全て除去すると、前記
中間反強磁性層の表面がイオンミリングによって損傷
し、反強磁性が低下することがある。
【0079】本発明では、前記非磁性保護層が3Å以下
残っている程度であれば、前記非磁性保護層が前記中間
反強磁性層と前記上部反強磁性層の間に残存していて
も、前記中間反強磁性層、前記非磁性保護層、及び前記
上部反強磁性層とが一体として第1反強磁性層として機
能することができる。
【0080】
【発明の実施の形態】図1は、本発明における第1の実
施形態の磁気検出素子を記録媒体との対向面側から見た
部分断面図である。
【0081】図1に示す磁気検出素子は、記録媒体に記
録された外部信号を再生するためのGMRヘッドであ
る。記録媒体との対向面は、例えば磁気検出素子を構成
する薄膜の膜面に垂直で且つ磁気検出素子のフリー磁性
層の外部磁界が印加されていないときの磁化方向と平行
な平面である。図1では、記録媒体との対向面はX−Z
平面に平行な平面である。
【0082】なお、磁気検出素子が浮上式の磁気ヘッド
に用いられる場合、記録媒体との対向面とは、いわゆる
ABS面のことである。
【0083】また磁気検出素子は、例えばアルミナ−チ
タンカーバイト(Al−TiC)で形成されたス
ライダのトレーリング端面上に形成される。スライダ
は、記録媒体との対向面と逆面側で、ステンレス材など
による弾性変形可能な支持部材と接合され、磁気ヘッド
装置が構成される。
【0084】なお、トラック幅方向とは、外部磁界によ
って磁化方向が変動する領域の幅方向のことであり、例
えば、フリー磁性層の外部磁界が印加されていないとき
の磁化方向、すなわち図示X方向である。
【0085】なお、記録媒体は磁気検出素子の記録媒体
との対向面に対向しており、図示Z方向に移動する。こ
の記録媒体からの洩れ磁界方向は図示Y方向である。
【0086】図1では、スライダのトレーリング端面上
にアルミナ層(図示せず)を介して、下部電極層を兼用
する下部シールド層20が形成され、下部シールド層2
0上に、下地層21、シード層22、第2反強磁性層2
3、第1強磁性層24a及び第2強磁性層24bからな
る強磁性層24、非磁性層25、第1磁性層26a及び
第2磁性層26bからなるフリー磁性層26、非磁性材
料層27、第2固定磁性層28a、非磁性中間層28
b、第1固定磁性層28cからなるシンセティックフェ
リピンド型の固定磁性層28、第1反強磁性層29、保
護層30が下から順に積層された多層膜Aが形成されて
いる。
【0087】多層膜Aの保護層30からフリー磁性層2
6の第1磁性層26aの膜厚方向の一部分まではトラッ
ク幅寸法Twのトラック幅方向寸法を有し、第1磁性層
26aの残りの部分から強磁性層24、第2反強磁性層
23、シード層22、下地層21のトラック幅方向寸法
はトラック幅寸法Twより大きくなっている。
【0088】また、保護層30からフリー磁性層26の
第1磁性層26aの途中までのトラック幅方向両側部に
は絶縁層32,32が形成されており、絶縁層32,3
2及び多層膜Aの保護層30上には、上部電極層を兼用
する上部シールド層31が形成されている。
【0089】下部シールド層20から上部シールド層3
1までが、本発明の第1の実施の形態の磁気検出素子で
ある。
【0090】図1では、下部シールド層20が下部電極
層を兼用し、上部シールド層31が上部電極層を兼用し
ているが、下部シールド層と下部電極層及び上部シール
ド層と上部電極層がそれぞれ異なる材料で形成されてい
る異なる層であってもよい。
【0091】図1に示される磁気検出素子は、いわゆる
トップ型のスピンバルブ型磁気検出素子である。
【0092】下部シールド層20、下地層21、シード
層22、第2反強磁性層23、強磁性層24、非磁性層
25、フリー磁性層26、非磁性材料層27、固定磁性
層28、第1反強磁性層29、保護層30、絶縁層3
2、及び上部シールド層31はスパッタ法や蒸着法など
の薄膜形成プロセスによって形成される。
【0093】スパッタ法としては、例えばマグネトロン
スパッタ、RF2極スパッタ、RF3極スパッタ、イオ
ンビームスパッタ、対向ターゲット式スパッタ等の既存
するスパッタ装置を用いたスパッタ法によって形成する
ことができる。また本発明では、スパッタ法や蒸着法の
他に、MBE(モレキュラー−ビーム−エピタキシー)
法、ICB(イオン−クラスター−ビーム)法などの成
膜プロセスが使用可能である。
【0094】図1に示すように上記した下地層21から
保護層30の各層で構成される多層膜Aは、保護層30
からフリー磁性層26の第1磁性層26aの一部までの
トラック幅方向(図示X方向)における両側端面Aa,
Aaが、多層膜Aの表面Abに対して垂直な連続面とな
っている。ただし、図1の点線Aa1、Aa1で示され
るように、保護層30からフリー磁性層26の第1磁性
層26aの一部までのトラック幅方向における両側端面
が、多層膜Aの表面Abに対する傾斜面Aa1,Aa1
であってもよい。
【0095】なお、図1の磁気検出素子の光学トラック
幅Twは、非磁性材料層27のトラック幅方向寸法で決
められる。本実施の形態の磁気検出素子では、光学トラ
ック幅Twを0.1μm以下、特に0.06μm以下に
して、200Gbit/in 以上の記録密度に対応す
ることができる。
【0096】図1に示された磁気検出素子は、いわゆる
スピンバルブ型磁気検出素子であり、固定磁性層28の
磁化方向が、適正に図示Y方向に平行な方向に固定さ
れ、しかもフリー磁性層26の磁化が適正に図示X方向
に揃えられており、固定磁性層28とフリー磁性層26
の磁化が直交関係にある。記録媒体からの洩れ磁界が磁
気検出素子の図示Y方向に侵入し、フリー磁性層26の
磁化が感度良く変動し、この磁化方向の変動と、固定磁
性層28の固定磁化方向との関係で電気抵抗が変化し、
この電気抵抗値の変化に基づく電圧変化により、記録媒
体からの洩れ磁界が検出される。
【0097】ただし、電気抵抗値の変化(出力)に直接
寄与するのは第2固定磁性層28aの磁化方向とフリー
磁性層26の磁化方向の相対角であり、これらの相対角
が検出電流が通電されている状態かつ信号磁界が印加さ
れていない状態で直交していることが好ましい。
【0098】なお、磁気検出素子の記録媒体との対向面
に対向する記録媒体は、図示Z方向に移動する。
【0099】保護層30はTaなど導電性材料からな
り、本実施の形態における膜厚は30Åである。
【0100】下部シールド層20及び上部シールド層3
1はNiFeなどの磁性材料を用いて形成される。な
お、下部シールド層20及び上部シールド層31は磁化
容易軸がトラック幅方向(図示X方向)を向いているこ
とが好ましい。下部シールド層20及び上部シールド層
31は、電解メッキ法によって形成されてもよい。
【0101】下地層21は、Ta,Hf,Nb,Zr,
Ti,Mo,Wのうち少なくとも1種以上で形成される
ことが好ましい。下地層は50Å以下程度の膜厚で形成
される。なおこの下地層は形成されていなくても良い。
本実施の形態では、下地層21の膜厚は30Åである。
【0102】シード層22は、NiFe、NiFeCr
やCrなどを用いて形成する。本実施の形態では、シー
ド層22の膜厚は50Åである。
【0103】なお本実施における磁気検出素子は各層の
膜面と垂直方向にセンス電流が流れるCPP型であるた
め、シード層にも適切にセンス電流が流れる必要性があ
る。よってシード層は比抵抗の高い材質でないことが好
ましい。すなわちCPP型ではシード層はNiFe合
金、Crなどの比抵抗の低い材質で形成されることが好
ましい。なおシード層は形成されなくても良い。
【0104】第2反強磁性層23及び第1反強磁性層2
9は、PtMn合金、または、X―Mn(ただしXは、
Pd,Ir,Rh,Ru,Os,Ni,Feのいずれか
1種または2種以上の元素である)合金で、あるいはP
t―Mn―X′(ただしX′は、Pd,Ir,Rh,R
u,Au,Ag,Os,Cr,Ni,Ar,Ne,X
e,Krのいずれか1または2種以上の元素である)合
金で形成する。
【0105】本実施の形態では、第1反強磁性層29及
び第2反強磁性層23を、同一の組成を有する反強磁性
材料を用いて形成することができる。
【0106】これらの合金は、成膜直後の状態では、不
規則系の面心立方構造(fcc)であるが、熱処理によ
ってCuAuI型の規則型の面心正方構造(fct)に
構造変態する。
【0107】第2反強磁性層23の膜厚は80Å〜30
0Å、例えば150Åである。ここで、反強磁性層を形
成するための、前記PtMn合金及び前記X−Mnの式
で示される合金において、PtあるいはXが37〜63
at%の範囲であることが好ましい。また、前記PtM
n合金及び前記X−Mnの式で示される合金において、
PtあるいはXが47〜57at%の範囲であることが
より好ましい。特に規定しない限り、〜で示す数値範囲
の上限と下限は以下、以上を意味する。
【0108】また、Pt−Mn−X’の式で示される合
金において、X’+Ptが37〜63at%の範囲であ
ることが好ましい。また、前記Pt−Mn−X’の式で
示される合金において、X’+Ptが47〜57at%
の範囲であることがより好ましい。さらに、前記Pt−
Mn−X’の式で示される合金において、X’が0.2
〜10at%の範囲であることが好ましい。ただし、
X’がPd,Ir,Rh,Ru,Os,Ni,Feのい
ずれか1種または2種以上の元素である場合には、X’
は0.2〜40at%の範囲であることが好ましい。
【0109】これらの合金を使用し、これを熱処理する
ことにより、大きな交換結合磁界を発生する反強磁性層
を得ることができる。特に、PtMn合金であれば、4
8kA/m以上、例えば64kA/mを越える交換結合
磁界を有し、前記交換結合磁界を失うブロッキング温度
が380℃と極めて高い優れた第2反強磁性層23及び
第1反強磁性層29を得ることができる。
【0110】なお、後に説明する本実施の形態の磁気検
出素子の製造方法を用いて、図1の磁気検出素子を形成
すると、第1反強磁性層29が、10Å以上50Å以下
の膜厚の中間反強磁性層29aと、1Å以上3Å以下の
膜厚の貴金属などからなる非磁性保護層29b及び上部
反強磁性層29cからなる多層構造を有するものにな
る。
【0111】中間反強磁性層29aと上部反強磁性層2
9cは、同じ組成の反強磁性材料、具体的には上述のP
tMn合金、X―Mn合金で、あるいはPt―Mn―
X′合金を用いて形成される。
【0112】中間反強磁性層29aの膜厚と上部反強磁
性層29cの膜厚を合わせた総合膜厚は80Å以上50
0Å以下である。例えば150Åである。中間反強磁性
層29aは、膜厚が10Å以上50Å以下と薄いため、
単独では反強磁性を示さず、中間反強磁性層29aと上
部反強磁性層29cが一体となって初めて反強磁性を示
すようになり、固定磁性層28との間に交換結合磁界を
生じさせる。
【0113】また、非磁性保護層29bは1Å以上3Å
以下の薄い膜厚であり、Ru、Re、Pd、Os、I
r、Pt、Au、Rh,Cu,Crのいずれか1種また
は2種以上で形成されているので、中間反強磁性層29
aと上部反強磁性層29cに反強磁性的な相互作用を生
じさせ、中間反強磁性層29aと上部反強磁性層29c
を一体の反強磁性層として機能させることが可能にな
る。また、非磁性保護層29bの材料が、中間反強磁性
層29aと上部反強磁性層29c中に拡散しても、反強
磁性の性質は劣化しない。
【0114】なお、非磁性保護層29bが存在せず、第
1反強磁性層29が中間反強磁性層29aと上部反強磁
性層29cからなるものであってもよい。また、第1反
強磁性層29が単層の反強磁性層であってもよい。
【0115】第1固定磁性層28c及び第2固定磁性層
28aは、強磁性材料により形成されるもので、例えば
NiFe合金、Co、CoFeNi合金、CoFe合
金、CoNi合金などにより形成されるものであり、特
にCoFe合金またはCoにより形成されることが好ま
しい。また、第1固定磁性層28c及び第2固定磁性層
28aは同一の材料で形成されることが好ましい。
【0116】また、非磁性中間層28bは、非磁性材料
により形成されるもので、Ru、Rh、Ir、Cr、R
e、Cuのうち1種またはこれらの2種以上の合金で形
成されている。特にRuによって形成されることが好ま
しい。
【0117】第1固定磁性層28c及び第2固定磁性層
28aは、それぞれ10〜70Å程度で形成される。例
えば、第1固定磁性層28cの膜厚は30Åであり、第
2固定磁性層28aの膜厚は40Åである。また非磁性
中間層の膜厚は3Å〜10Å程度、例えば8Åで形成さ
れる。
【0118】図1では、単位面積当りの磁気モーメント
(Ms×t;飽和磁束密度と膜厚の積)が異なる第1固
定磁性層28cと第2固定磁性層28aが、非磁性中間
層28bを介して積層されたものが、一つの固定磁性層
として機能する。
【0119】第1固定磁性層28cは第1反強磁性層2
9と接して形成され、磁場中アニールが施されることに
より、第1固定磁性層28cと第1反強磁性層29との
界面にて交換結合による交換異方性磁界(交換結合磁
界)が生じ、第1固定磁性層28cの磁化方向が図示Y
方向に固定される。第1固定磁性層28cの磁化方向が
図示Y方向に固定されると、非磁性中間層28bを介し
て対向する第2固定磁性層28aの磁化方向が、第1固
定磁性層28cの磁化方向と反平行の状態で固定され
る。
【0120】このように、第1固定磁性層28cと第2
固定磁性層28aの磁化方向が、反平行となるフェリ磁
性状態になっていると、第1固定磁性層28cと第2固
定磁性層28aとが互いに他方の磁化方向を固定しあう
ので、全体として固定磁性層の磁化方向を一定方向に強
力に固定することができる。
【0121】なお、第1固定磁性層28cの単位面積当
りの磁気モーメント(Ms×t)と第2固定磁性層28
aの単位面積当りの磁気モーメント(Ms×t)を足し
合わせた合成の単位面積当りの磁気モーメント(Ms×
t)の方向が固定磁性層の磁化方向となる。
【0122】図1では、第1固定磁性層28c及び第2
固定磁性層28aを同じ材料を用いて形成し、さらに、
それぞれの膜厚を異ならせることにより、それぞれの単
位面積当りの磁気モーメント(Ms×t)を異ならせて
いる。
【0123】また、第1固定磁性層28c及び第2固定
磁性層28aの固定磁化による反磁界(双極子磁界)
を、第1固定磁性層28c及び第2固定磁性層28aの
静磁界結合同士が相互に打ち消し合うことによりキャン
セルできる。これにより、固定磁性層28の固定磁化に
よる反磁界(双極子磁界)からの、フリー磁性層26の
変動磁化への寄与を減少させることができる。
【0124】従って、フリー磁性層26の変動磁化の方
向を所望の方向に補正することがより容易になり、アシ
ンメトリーの小さい対称性の優れたスピンバルブ型磁気
検出素子を得ることが可能になる。
【0125】ここで、アシンメトリーとは、再生出力波
形の非対称性の度合いを示すものであり、再生出力波形
が与えられた場合、波形が対称であればアシンメトリー
が小さくなる。従って、アシンメトリーが0に近づく程
再生出力波形が対称性に優れていることになる。
【0126】前記アシンメトリーは、フリー磁性層26
の磁化の方向と固定磁性層28の固定磁化の方向とが直
交しているときに0となる。アシンメトリーが大きくず
れるとメディアからの情報の読み取りが正確にできなく
なり、エラーの原因となる。このため、前記アシンメト
リーが小さいものほど、再生信号処理の信頼性が向上す
ることになり、スピンバルブ型磁気検出素子として優れ
たものとなる。
【0127】また、固定磁性層28の固定磁化による反
磁界(双極子磁界)Hdは、フリー磁性層26の素子高
さ方向において、その端部で大きく中央部で小さいとい
う不均一な分布を持ち、フリー磁性層26内における単
磁区化が妨げられる場合があるが、固定磁性層28を上
記の積層構造とすることにより双極子磁界Hdを小さく
することができ、これによってフリー磁性層内に磁壁が
できて磁化の不均一が発生しバルクハウゼンノイズなど
が発生することを防止することができる。
【0128】なお固定磁性層28は上記したいずれかの
磁性材料を使用した1層構造あるいは上記したいずれか
の磁性材料からなる層とCo層などの拡散防止層の2層
構造で形成されていても良い。
【0129】非磁性材料層27は、固定磁性層28とフ
リー磁性層26との磁気的な結合を防止する層であり、
Cu,Cr,Au,Agなど導電性を有する非磁性材料
により形成されることが好ましい。特にCuによって形
成されることが好ましい。非磁性材料層27は例えば1
8〜30Å程度の膜厚で形成される。本実施の形態で
は、非磁性材料層27の膜厚は、30Åである。
【0130】また非磁性材料層27は、AlやS
iOなどの絶縁材料で形成されていてもよいが、本実
施の形態のようにCPP型の磁気検出素子の場合には、
非磁性材料層27内部にも、膜面と垂直方向にセンス電
流が流れるようにしなければならないので、非磁性材料
層27が絶縁物であるときは、非磁性材料層27の膜厚
を50Å以下に薄くして形成してトンネル電流が流れる
ようにする必要がある。また非磁性材料層27をAl
やTaOまたはCu−Al複合膜のような
絶縁材料を部分的に含む材料で形成したときは、非磁性
材料層27を実効的な素子面積を低減させる電流制限層
として機能させることもできる。
【0131】図1に示される磁気検出素子では、フリー
磁性層26は、第1磁性層26a及び第2磁性層26b
の2層構造である。
【0132】非磁性層25に接する側の第1磁性層26
aは、NiFe(パーマロイ)層あるいはNiFeX
(XはAl,Si,Ti,V,Cr,Mn,Cu,Z
r,Nb,Mo,Ru,Rh,Hf,Ta,W,Ir,
Ptから選ばれる1種或いは2種以上の元素)であり、
非磁性材料層27に接する側の第2磁性層26bがC
o、CoFe、CoFeNiなどCo(コバルト)を含
む強磁性材料からなる層である。本実施の形態では、第
1磁性層26aの膜厚は100Åであり、第2磁性層2
6bの膜厚は20Åである。Coを含む強磁性材料に
は、CoFe、CoFeCrを選択することが好まし
い。
【0133】フリー磁性層26の第2磁性層26bをC
o(コバルト)を含む強磁性材料からなる層で形成する
ことにより、非磁性材料層27へのフリー磁性層26の
材料(Niなど)の拡散を防止し、磁気抵抗変化率の低
下を防ぐことができる。
【0134】なおフリー磁性層26を構成する第1磁性
層26aと第2磁性層26bとの境界面は図面のように
はっきりと見て取れない場合がある。例えば前記第1磁
性層26aと第2磁性層26bとが熱拡散を起す場合な
どである。かかる場合、前記境界面ははっきりとしなく
なる。従って図1に示す実施形態のように、第1磁性層
26aと第2磁性層26bとの境界面がはっきりと見て
取れない場合、フリー磁性層26には、少なくとも非磁
性層25に接する側に、NiFeあるいはNiFeXか
らなる磁性領域が存在し、一方、非磁性材料層27に接
する側にCoを含む強磁性材料層からなる磁性領域が存
在していればよい。
【0135】本実施の形態では、フリー磁性層26のト
ラック幅領域26cの下層に非磁性層25を介して強磁
性層24及び第2反強磁性層23が積層されている。
【0136】非磁性層25は、Ru、Rh、Ir、C
r、Re、Cuのうち1種あるいは2種以上の合金で形
成されている。本実施の形態では、非磁性層25の膜厚
は、8Åである。
【0137】強磁性層24は、第1強磁性層24a及び
第2強磁性層24bの2層構造である。本実施の形態で
は、例えば第1強磁性層24aの膜厚は8Åであり、第
2強磁性層24bの膜厚は6Åである。
【0138】図1では、強磁性層24の非磁性層25に
接する側である第2強磁性層24bをNiFe(パーマ
ロイ)層あるいはNiFeX(XはAl,Si,Ti,
V,Cr,Mn,Cu,Zr,Nb,Mo,Ru,R
h,Hf,Ta,W,Ir,Ptから選ばれる1種或い
は2種以上の元素)で形成している。
【0139】また、第2反強磁性層23に接する側であ
る第1強磁性層24aをCoやCoFeなどのCo(コ
バルト)を含む強磁性材料で形成している。第1強磁性
層24aをCo(コバルト)を含む強磁性材料で形成す
ることにより、第2反強磁性層23と強磁性層24間の
交換結合磁界を大きくすることができる。Coを含む強
磁性材料にはCoFe、CoFeCrを選択することが
好ましい。
【0140】なお強磁性層24においてもフリー磁性層
26と同様に、前記強磁性層24には、少なくとも非磁
性層25に接する側に、NiFeあるいはNiFeXか
らなる磁性領域が存在し、一方、第2反強磁性層23に
接する側にCoを含む強磁性材料層からなる磁性領域が
存在していればよい。
【0141】または、強磁性層24を、膜厚が0nmよ
り大きく3nm以下である、NiFe(パーマロイ)か
らなる単層構造としてもよい。
【0142】あるいは、前記強磁性層24を、CoFe
CrあるいはCoFeからなる単層構造で形成してもよ
い。
【0143】上記したいずれの単層構造においても後述
する実験結果によれば、良好な再生特性を得ることがで
きる。
【0144】図1に示される磁気検出素子では、強磁性
層24の磁化方向が第2反強磁性層23との交換結合磁
界により固定磁性層28の磁化方向と交叉する方向へ向
けられている。
【0145】また、強磁性材料からなる強磁性材料層で
あるフリー磁性層26が、非磁性層25を介して強磁性
層24に積層されているため、フリー磁性層26が、強
磁性層24との非磁性層25を介した層間結合磁界、こ
の場合はRKKY相互作用によって単磁区化され、磁化
方向が固定磁性層28の磁化方向と交叉する方向へ向け
られている。
【0146】このように、強磁性層24との非磁性層2
5を介した層間結合磁界によって、フリー磁性層26の
単磁区化及び磁化方向の制御が行われると、記録媒体か
らの洩れ磁界などの外部磁界によって、フリー磁性層2
6にかかる縦バイアス磁界が乱れ、フリー磁性層26の
磁区構造が乱されることを抑制できる。
【0147】また、強磁性層24は、単位面積あたりの
磁気モーメントの大きさが異なる複数の強磁性材料層
が、非磁性中間層を介して積層され、前記非磁性中間層
を介して隣接する前記強磁性材料層の磁化方向が反平行
となるフェリ磁性状態のものでもよい。これによって、
強磁性層24の磁化方向を一方向に強固に固定すること
ができる。
【0148】なお、非磁性層25をRuによって形成
し、フリー磁性層26と強磁性層24の磁化方向を18
0°異ならせた、人工フェリ状態にするときには、Ru
の膜厚を8Å〜11Å又は15Å〜21Åにすることが
好ましい。
【0149】本発明では、第2反強磁性層23と強磁性
層24間の交換結合磁界を大きくして、強磁性層24の
磁化方向を固定磁性層28の磁化方向と交叉する方向に
強く固定した上で、フリー磁性層26と強磁性層24間
の層間結合磁界の大きさを前記交換結合磁界よりも小さ
くすることにより、フリー磁性層26を単磁区化して磁
化方向を固定磁性層28の磁化方向に直交する方向に確
実に向け、なおかつフリー磁性層26の磁化方向を洩れ
磁界によって変動させることができるように調節する必
要がある。
【0150】第2反強磁性層23と強磁性層24間の交
換結合磁界を大きくし、フリー磁性層26と強磁性層2
4間の層間結合磁界の大きさを交換結合磁界よりも小さ
くするために、本実施の形態では、強磁性層24の単位
面積あたりの磁気モーメントの大きさ(Ms×t;飽和
磁束密度と膜厚の積)をフリー磁性層26の単位面積あ
たりの磁気モーメントの大きさ(Ms×t;飽和磁束密
度と膜厚の積)よりも小さくしている。
【0151】なお、強磁性層24の単位面積あたりの磁
気モーメントの大きさ(Ms×t;飽和磁束密度と膜厚
の積)は、第1強磁性層24aの単位面積あたりの磁気
モーメントの大きさ(Ms×t)と第2強磁性層24b
の単位面積あたりの磁気モーメントの大きさ(Ms×
t)の和である。また、フリー磁性層26の単位面積あ
たりの磁気モーメントの大きさ(Ms×t;飽和磁束密
度と膜厚の積)は、第1磁性層26aの単位面積あたり
の磁気モーメントの大きさ(Ms×t)と第2磁性層2
6bの単位面積あたりの磁気モーメントの大きさ(Ms
×t)の和である。
【0152】具体的には、強磁性層24の単位面積あた
りの磁気モーメントの大きさ(Ms×t)に対するフリ
ー磁性層26の単位面積あたりの磁気モーメントの大き
さ(Ms×t)の比率(フリー磁性層26のMs×t/
強磁性層24のMs×t)を、3以上で20以下の範囲
にしている。
【0153】また、強磁性層24の、非磁性層25に接
する側である第2強磁性層24bをNiFe(パーマロ
イ)層あるいはNiFeX(XはAl,Si,Ti,
V,Cr,Mn,Cu,Zr,Nb,Mo,Ru,R
h,Hf,Ta,W,Ir,Ptから選ばれる1種或い
は2種以上の元素)で形成することにより、フリー磁性
層26と強磁性層24間の層間結合磁界の大きさを適度
に小さくしている。
【0154】また、フリー磁性層26の、非磁性層25
に接する側である第1磁性層26aをNiFe(パーマ
ロイ)層あるいはNiFeX(XはAl,Si,Ti,
V,Cr,Mn,Cu,Zr,Nb,Mo,Ru,R
h,Hf,Ta,W,Ir,Ptから選ばれる1種或い
は2種以上の元素)で形成することにより、フリー磁性
層26と強磁性層24間の層間結合磁界の大きさを適度
に小さくしている。
【0155】図1に示された磁気検出素子では、フリー
磁性層26の単磁区化及び磁化方向の制御を、第2反強
磁性層23と強磁性層24間の交換結合磁界の大きさ
と、強磁性層24とフリー磁性層26間の層間結合磁界
の大きさの2段階で調節することになり、細かな制御を
容易に行うことができる。
【0156】従って、フリー磁性層26の単磁区化及び
磁化方向の制御を適切かつ容易に行なうことができるの
で、磁気検出素子のさらなる狭トラック化を促進するこ
とができる。
【0157】また、フリー磁性層26のトラック幅領域
26cの下層に、非磁性層25を介して強磁性層24及
び第2反強磁性層23が積層される構造でも、フリー磁
性層26の磁化方向を固定磁性層28の磁化方向に交叉
する方向に確実に向けて、なおかつフリー磁性層26の
磁化方向を洩れ磁界によって変動させることが可能にな
る。
【0158】従って、図1に示されるような磁気検出素
子であれば、フリー磁性層26のトラック幅領域26c
の中央部と両端部で、フリー磁性層26の磁化方向が異
なる状態になりづらい。
【0159】図1の磁気検出素子では、多層膜Aが保護
層30からフリー磁性層26の第1磁性層26aの途中
までの両側部が削り込まれてトラック幅寸法Twのトラ
ック幅方向寸法を有し、第1磁性層26aの途中から強
磁性層24、第2反強磁性層23、シード層22、下地
層21のトラック幅方向寸法はトラック幅寸法Twより
大きくなっている。
【0160】図2は、本発明における第2の実施形態の
磁気検出素子の構造を記録媒体との対向面側から見た部
分断面図、図3は、本発明における第3の実施形態の磁
気検出素子の構造を記録媒体との対向面側から見た部分
断面図である。
【0161】図2に示す実施形態では図1と異なり、フ
リー磁性層26が第1磁性層26a、第2磁性層26b
及び中間磁性層26dの3層構造となっている。このフ
リー磁性層26の構成以外は、図1の磁気検出素子と変
わるところがない。
【0162】非磁性層25と接する第1磁性層26a
は、図1で説明したようにNiFeあるいはNiFeX
(XはAl,Si,Ti,V,Cr,Mn,Cu,Z
r,Nb,Mo,Ru,Rh,Hf,Ta,W,Ir,
Ptから選ばれる1種或いは2種以上の元素)で形成さ
れる。あるいは前記フリー磁性層26には前記非磁性層
25と接する側に、NiFeあるいはNiFeXからな
る磁性領域が存在している。
【0163】また非磁性材料層27と接する第2磁性層
26bは、図1で説明したようにCoを含んだ磁性材料
層である。あるいは前記フリー磁性層26には前記非磁
性材料層27と接する側に、Coを含んだ磁性材料から
なる磁性領域が存在している。Coを含んだ磁性材料層
にはCoFeやCoFeNi、CoFeCrなどがあ
る。
【0164】この実施形態では前記第1磁性層26aと
第2磁性層26bとの間に挟まれた中間磁性層26d
は、例えばフリー磁性層26の単位面積当たりの磁気モ
ーメント(Ms×t)を調整するために設けられ、磁気
モーメントの観点から前記中間磁性層26dの材質が決
定される。
【0165】前記中間磁性層26dの材質は例えばNi
Fe、NiFeX、Coを含んだ磁性材料層である。一
例として第1磁性層26aがNi85at%Fe
10at%Nb5at%であり、中間磁性層26dがN
80at%Fe20at%であり、第2磁性層26b
がCo90at%Fe10at%である。
【0166】なお第1磁性層26aと中間磁性層26d
との境界面、および中間磁性層26dと第2磁性層26
bとの境界面は熱拡散などにより明確にわかならない場
合があり、例えば上記した具体例で言えば、フリー磁性
層26の非磁性層25と接する側に、NiFeNbから
なる磁性領域が存在し、非磁性材料層27と接する側
に、CoFeからなる磁性領域が存在し、その間にNi
Feからなる磁性領域が存在すれば、前記フリー磁性層
26は元々3層構造で形成されているものと推定するこ
とができる。
【0167】なお前記フリー磁性層26は3層よりもさ
らに多層で構成されていてもよい。図3は、フリー磁性
層26が強磁性材料の単層構造である。前記フリー磁性
層26は、NiFeあるいはNiFeX(XはAl,S
i,Ti,V,Cr,Mn,Cu,Zr,Nb,Mo,
Ru,Rh,Hf,Ta,W,Ir,Ptから選ばれる
1種或いは2種以上の元素)で形成されることが好まし
い。後述する実験結果によれば前記フリー磁性層26が
CoFeの単層構造で形成された場合、再生感度ηが低
く、またヒステリシスが悪化し、再生特性が前記フリー
磁性層26をNiFeやNiFeXで形成する場合に比
べて低下することがわかった。
【0168】また図3に示す実施形態では強磁性層24
も単層構造である。前記強磁性層24はNiFe、Ni
FeX(XはAl,Si,Ti,V,Cr,Mn,C
u,Zr,Nb,Mo,Ru,Rh,Hf,Ta,W,
Ir,Ptから選ばれる1種或いは2種以上の元素)、
CoFe、CoFeCrなどで形成できる。なお第2反
強磁性層23との交換結合磁界を大きくするため、単層
構造の強磁性層24はCoを含んだ強磁性材料で形成さ
れることが好ましい。
【0169】なお強磁性層24とフリー磁性層26のう
ち、どちらか一方が単層構造であり、他方が強磁性材料
からなる多層構造であってもよい。
【0170】なお図2及び図3において、強磁性層24
の単位面積当たりの磁気モーメントに対するフリー磁性
層26の単位面積当たりの磁気モーメントの比率等は図
1で説明したものと同じである。
【0171】次に、本発明の磁気検出素子の多層膜は、
図1に示すフリー磁性層26の第1磁性層26aの途中
まで、両側部が削り込まれた多層膜Aのような構成をし
ていなくてもかまわない。
【0172】図4に、図1の多層膜Aと同じ積層構造を
有し、トラック幅寸法の領域の両側部B,Bが削られて
いない多層膜Cを有する本発明の第4の実施形態の磁気
検出素子を、記録媒体との対向面側から見た部分断面図
を示す。
【0173】図4の磁気検出素子では、下部シールド層
20及び上部シールド層31に、それぞれ多層膜Cと接
続される突出部20a及び突出部31aが形成されてい
る。突出部20aと突出部31aの、多層膜Cとの接続
部20a1と接続部31a1のトラック幅方向寸法のう
ち、小さい方でトラック幅寸法Twが決まる。突出部2
0aと突出部31aの両側部には、アルミナなどからな
る絶縁層33または絶縁層34が形成されている。
【0174】しかし、図4に示される磁気検出素子は、
固定磁性層28及びフリー磁性層26のトラック幅方向
寸法がトラック幅寸法Twより大きいためトラック幅寸
法Twの領域の両側部B,Bの部分でも外部磁界を検出
してしまう、いわゆるサイドリーディングの割合が大き
くなり、磁気的なトラック幅が広がりやすい。
【0175】従って、多層膜Cは、少なくとも保護層3
0、第1反強磁性層29、固定磁性層28及び非磁性材
料層27で両側部B,Bが、一点鎖線L,Lを側端面と
するように、削られている方が好ましい。
【0176】ただし、両側部B,Bを強磁性層24及び
第2反強磁性層23まで完全に削って除去すると、フリ
ー磁性層26を確実に単磁区化し、磁化方向を固定磁性
層28に交叉する方向に向けることが難しくなる。ま
た、両側部B,Bをフリー磁性層26まで完全に除去す
ると、フリー磁性層26のトラック幅方向の反磁界が大
きくなり、フリー磁性層の磁区制御が困難になるので好
ましくない。
【0177】従って、図1に示されるように、フリー磁
性層26の一部まで多層膜Aの両側部が除去された構造
が好ましい形態である。
【0178】図1に示された磁気検出素子のように、多
層膜Aの膜面と垂直方向に電流が供給されるCPP(C
urrent Perpendicular to t
hePlane)型であり、非磁性材料層27、固定磁
性層28及び第1反強磁性層29がフリー磁性層26の
上層にあるトップ型の磁気検出素子であると、フリー磁
性層26の膜厚方向の一部分のみがトラック幅寸法Tw
のトラック幅方向寸法を有し、残りの部分はトラック幅
寸法Twより大きいトラック幅方向寸法を有する構造を
形成しやすい。
【0179】フリー磁性層26の一部がトラック幅寸法
Twより大きいトラック幅方向寸法を有するものである
と、フリー磁性層26の両側端部に生じる表面磁荷に起
因するフリー磁性層26内部の反磁界を小さくすること
ができ、フリー磁性層26内部の磁化方向の乱れを低下
させることができる。
【0180】図5は、本発明の第5の実施形態の磁気検
出素子を、記録媒体との対向面側から見た部分断面図で
ある。
【0181】図5の磁気検出素子は、図1の多層膜Aの
代わりに、下から順に、下地層21、シード層22、第
1反強磁性層29、第1固定磁性層28c、非磁性中間
層28b、第2固定磁性層28aからなるシンセティッ
クフェリピンド型の固定磁性層28、非磁性材料層2
7、第2磁性層26b及び第1磁性層26aからなるフ
リー磁性層26、非磁性層25、第2強磁性層24b及
び第1強磁性層24aからなる強磁性層24、第2反強
磁性層23、保護層30が下から順に積層された多層膜
Dが形成されている点で図1に示された磁気検出素子と
異っている。図5に示される磁気検出素子は、いわゆる
ボトム型のスピンバルブ型磁気検出素子である。
【0182】図5において、図1と同じ符号がつけられ
た層は、同じ材料同じ膜厚で形成されている。
【0183】ただし、図5の磁気検出素子は、図1の磁
気検出素子と異なり、第2反強磁性層23が、10Å以
上50Å以下の膜厚の中間反強磁性層23aと、1Å以
上3Å以下の膜厚の貴金属などからなる非磁性保護層2
3b及び上部反強磁性層23cからなる多層構造を有す
るものになることがある。
【0184】中間反強磁性層23aと上部反強磁性層2
3cは、同じ組成の反強磁性材料、具体的には上述のP
tMn合金、X―Mn合金で、あるいはPt―Mn―
X′合金を用いて形成される。
【0185】中間反強磁性層23aの膜厚と上部反強磁
性層23cの膜厚を合わせた総合膜厚は80Å以上で3
00Å以下である。例えば150Åである。中間反強磁
性層23aは、膜厚が10Å以上50Å以下と薄いた
め、単独では反強磁性を示さず、中間反強磁性層23a
と上部反強磁性層23cが一体となって初めて反強磁性
を示すようになり、強磁性層24との間に交換結合磁界
を生じさせる。
【0186】また、非磁性保護層23bは1Å以上3Å
以下の薄い膜厚であり、Ru、Re、Pd、Os、I
r、Pt、Au、Rh,Cu,Crのいずれか1種また
は2種以上で形成されているので、中間反強磁性層23
aと上部反強磁性層23cに反強磁性的な相互作用を生
じさせ、中間反強磁性層23aと上部反強磁性層23c
を一体の反強磁性層として機能させることが可能にな
る。また、非磁性保護層23bの材料が、中間反強磁性
層23aと上部反強磁性層23c中に拡散しても、反強
磁性層の性質は劣化しない。
【0187】なお、非磁性保護層23bが存在せず、第
2反強磁性層23が中間反強磁性層23aと上部反強磁
性層23cからなるものであってもよい。また、第2反
強磁性層23が単層の反強磁性層であってもよい。
【0188】多層膜Dの保護層30、第2反強磁性層2
3、強磁性層24、非磁性層25、フリー磁性層26、
非磁性材料層27、第2固定磁性層28aの一部までが
トラック幅寸法Twのトラック幅方向寸法を有し、第2
固定磁性層28aの途中から、非磁性中間層28b、第
1固定磁性層28c、第1反強磁性層29、シード層2
2、下地層21のトラック幅方向寸法はトラック幅寸法
Twより大きくなっている。
【0189】図5に示される磁気検出素子は、保護層3
0から第2固定磁性層28aの一部までのトラック幅方
向(図示X方向)における両側端面Da,Daが、多層
膜Dの表面Dbに対して垂直な連続面となっている。た
だし、図5の点線Da1、Da1で示されるように、保
護層30から第2固定磁性層28aの一部までのトラッ
ク幅方向における両側端面が、多層膜Dの表面Dbに対
する傾斜面であってもよい。
【0190】なお、図5の磁気検出素子の光学トラック
幅Twは、非磁性材料層27のトラック幅方向寸法で決
められる。本実施の形態の磁気検出素子では、光学トラ
ック幅Twを0.1μm以下、特に0.06μm以下に
して、200Gbit/in 以上の記録密度に対応す
ることができる。
【0191】図5に示される磁気検出素子でも、強磁性
層24の磁化方向が第2反強磁性層23との交換結合磁
界により固定磁性層28の磁化方向と交叉する方向へ向
けられている。
【0192】また、フリー磁性層26が、非磁性層25
を介して強磁性層24に積層されているため、フリー磁
性層26が、強磁性層24との非磁性層25を介した層
間結合磁界、この場合はRKKY相互作用によって単磁
区化され、磁化方向が固定磁性層28の磁化方向と交叉
する方向へ向けられている。
【0193】このように、強磁性層24との非磁性層2
5を介した層間結合磁界によって、フリー磁性層26の
単磁区化及び磁化方向の制御が行われると、記録媒体か
らの洩れ磁界などの外部磁界によって、フリー磁性層2
6にかかる縦バイアス磁界が乱れ、フリー磁性層26の
磁区構造が乱されることを抑制できる。
【0194】また、図5に示された磁気検出素子でも、
フリー磁性層26の単磁区化及び磁化方向の制御を、第
2反強磁性層23と強磁性層24間の交換結合磁界の大
きさと、強磁性層24とフリー磁性層26間の層間結合
磁界の大きさの2段階で調節することになり、細かな制
御を容易に行うことができる。
【0195】従って、フリー磁性層26の単磁区化及び
磁化方向の制御を適切かつ容易に行なうことができるの
で、磁気検出素子のさらなる狭トラック化を促進するこ
とができる。
【0196】また、フリー磁性層26のトラック幅領域
26c上に、非磁性層25を介して強磁性層24及び第
2反強磁性層23が積層される構造でも、フリー磁性層
26の磁化方向を固定磁性層28の磁化方向に交叉する
方向に確実に向けて、なおかつフリー磁性層26の磁化
方向を洩れ磁界によって変動させることが可能になる。
【0197】従って、図5に示されるような磁気検出素
子であれば、フリー磁性層26のトラック幅領域26c
の中央部と両端部で、フリー磁性層26の磁化方向が異
なる状態になりにくい。
【0198】また、図5に示される磁気検出素子では、
第1反強磁性層29及び固定磁性層28が、強磁性層2
4及び第2反強磁性層23より下層にあるため、第1反
強磁性層29及び固定磁性層28間に強い交換異方性磁
界を発生させた後、強磁性層24及び第2反強磁性層2
3に交換異方性磁界を発生させる製造方法をとるときに
磁化方向の調節をしやすい。
【0199】図6は、本発明の第6の実施形態の磁気検
出素子を記録媒体との対向面側から見た部分断面図であ
る。
【0200】図6に示された磁気検出素子は、図1に示
された磁気検出素子と同じくトップ型の磁気検出素子で
あるが、フリー磁性層38が、単位面積あたりの磁気モ
ーメントの大きさが異なる第1フリー磁性層35と第2
フリー磁性層37が非磁性中間層36を介して積層さ
れ、第1フリー磁性層35と第2フリー磁性層37の磁
化方向が反平行となるフェリ磁性状態である、いわゆる
シンセティックフェリフリー型のフリー磁性層である点
で図1の磁気検出素子と異なっている。
【0201】図6において、図1と同じ符号がつけられ
た層は、同じ材料同じ膜厚で形成されているので説明を
省略する。
【0202】第1フリー磁性層35は、第1磁性層35
a及び第2磁性層35bの2層構造である。なおフリー
磁性層35は2層より多層であってもよいし、単層でも
よい。
【0203】非磁性層25に接する側の第1磁性層35
aは、NiFe(パーマロイ)層あるいはNiFeX
(XはAl,Si,Ti,V,Cr,Mn,Cu,Z
r,Nb,Mo,Ru,Rh,Hf,Ta,W,Ir,
Ptから選ばれる1種或いは2種以上の元素)であり、
非磁性中間層36に接する側の第2磁性層35bがC
o、CoFe、CoFeNiなどCo(コバルト)を含
む強磁性材料からなる層である。
【0204】本実施の形態では、第1磁性層35aの膜
厚は40Åであり、第2磁性層35bの膜厚は10Åで
ある。
【0205】非磁性中間層36は、Ru、Rh、Ir、
Cr、Re、Cuのうち1種あるいは2種以上の合金で
形成されている。非磁性中間層36をRuによって形成
し、フリー磁性層38をシンセティックフェリ状態にす
るときには、Ruの膜厚を8Å〜11Åにすることが好
ましい。
【0206】第2フリー磁性層37は、Co、CoF
e、CoFeNiなどCo(コバルト)を含む強磁性材
料からなる層である。第2フリー磁性層37の膜厚は8
0Åである。
【0207】第2フリー磁性層37をCo(コバルト)
を含む強磁性材料からなる層で形成することにより、非
磁性材料層27への第2フリー磁性層37の材料の拡散
を防止し、磁気抵抗変化率の低下を防ぐことができる。
なお、第1フリー磁性層35の単位面積当りの磁気モー
メント(Ms×t)と第2フリー磁性層37の単位面積
当りの磁気モーメント(Ms×t)を足し合わせた合成
の単位面積当りの磁気モーメント(Ms×t)の方向が
フリー磁性層38の磁化方向となる。
【0208】本実施の形態でも、フリー磁性層38のト
ラック幅領域38aの下層に非磁性層25を介して強磁
性層24及び第2反強磁性層23が積層されている。
【0209】なお、本実施の形態では、第1フリー磁性
層35の第2磁性層35bと第2フリー磁性層37のう
ち、少なくとも一層を、以下の組成を有する磁性材料で
形成することが好ましい。
【0210】組成式がCoFeNiで示され、Feの組
成比は9原子%以上17原子%以下で、Niの組成比は
0.5原子%以上10原子%以下で、残りの組成比はC
oである磁性材料。
【0211】また、第2フリー磁性層37と非磁性材料
層27と間にCoFe合金あるいはCoからなる中間層
を形成するときには、第1フリー磁性層35の第2磁性
層35bと第2フリー磁性層37のうち少なくとも一層
を、以下の組成を有する磁性材料で形成することが好ま
しい。
【0212】組成式がCoFeNiで示され、Feの組
成比は7原子%以上15原子%以下で、Niの組成比は
5原子%以上15原子%以下で、残りの組成比はCoで
ある磁性材料。
【0213】さらに、本発明では、第1フリー磁性層3
5の第2磁性層35bと第2フリー磁性層37の両層を
前記組成を有するCoFeNiで形成することが好まし
い。
【0214】これにより、第1フリー磁性層35の第2
磁性層35bと第2フリー磁性層37間で発生するRK
KY相互作用における交換結合磁界を強くすることがで
きる。具体的には、反平行状態が崩れるときの磁界、す
なわちスピンフロップ磁界(Hsf)を約293(kA
/m)にまで大きくすることができる。
【0215】また上記した組成範囲内であると、第1フ
リー磁性層35の第2磁性層35bと第2フリー磁性層
37の磁歪を−3×10−6から3×10−6の範囲内
に収めることができ、また保磁力を790(A/m)以
下に小さくできる。
【0216】図6に示された磁気検出素子でも、第2反
強磁性層23と強磁性層24間の交換結合磁界を大きく
して、強磁性層24の磁化方向を固定磁性層28の磁化
方向と交叉する方向に強く固定した上で、第1フリー磁
性層35と強磁性層24間の非磁性層25を介した層間
結合磁界(RKKY相互作用)の大きさを前記交換結合
磁界よりも小さくすることにより、第1フリー磁性層3
5及び第2フリー磁性層37を単磁区化して磁化方向を
固定磁性層28の磁化方向に直交する方向に確実に向
け、なおかつフリー磁性層38の磁化方向を洩れ磁界に
よって変動させることができるように調節する必要があ
る。
【0217】第2反強磁性層23と強磁性層24間の交
換結合磁界を大きくし、第1フリー磁性層35と強磁性
層24間の層間結合磁界の大きさを前記交換結合磁界よ
りも小さくするために、本実施の形態では、強磁性層2
4の単位面積あたりの磁気モーメントの大きさ(Ms×
t)を第1フリー磁性層35の単位面積あたりの磁気モ
ーメントの大きさ(Ms×t)よりも小さくしている。
【0218】具体的には、強磁性層24の単位面積あた
りの磁気モーメントの大きさ(Ms×t)に対する第1
フリー磁性層35の単位面積あたりの磁気モーメントの
大きさ(Ms×t)の比率(第1フリー磁性層のMs×
t/強磁性層24のMs×t)を、3以上で20以下の
範囲にしている。なお、第1フリー磁性層35の単位面
積あたりの磁気モーメントの大きさは、第1磁性層35
aの単位面積あたりの磁気モーメントの大きさと、第2
磁性層35bの単位面積あたりの磁気モーメントの大き
さの和である。
【0219】また、強磁性層24の、非磁性層25に接
する側である第2強磁性層24bをNiFe(パーマロ
イ)層あるいはNiFeX(XはAl,Si,Ti,
V,Cr,Mn,Cu,Zr,Nb,Mo,Ru,R
h,Hf,Ta,W,Ir,Ptから選ばれる1種或い
は2種以上の元素)で形成することにより、第1フリー
磁性層35と強磁性層24間の層間結合磁界の大きさを
適度に小さくしている。
【0220】また、第1フリー磁性層35の、非磁性層
25に接する側である第1磁性層35aをNiFe(パ
ーマロイ)層あるいはNiFeX(XはAl,Si,T
i,V,Cr,Mn,Cu,Zr,Nb,Mo,Ru,
Rh,Hf,Ta,W,Ir,Ptから選ばれる1種或
いは2種以上の元素)で形成することにより、第1フリ
ー磁性層35と強磁性層24間の層間結合磁界の大きさ
を適度に小さくしている。
【0221】図6に示された磁気検出素子でも、フリー
磁性層38の単磁区化及び磁化方向の制御を、第2反強
磁性層23と強磁性層24間の交換結合磁界の大きさ
と、強磁性層24と第1フリー磁性層35間の層間結合
磁界の大きさの2段階で調節することになり、細かな制
御を容易に行うことができる。
【0222】従って、フリー磁性層38の単磁区化及び
磁化方向の制御を適切かつ容易に行なうことができるの
で、磁気検出素子のさらなる狭トラック化を促進するこ
とができる。
【0223】また、フリー磁性層38のトラック幅領域
38a上に、非磁性層25を介して強磁性層24及び第
2反強磁性層23が積層される構造でも、フリー磁性層
38の磁化方向を固定磁性層28の磁化方向に交叉する
方向に確実に向けて、なおかつフリー磁性層38の磁化
方向を洩れ磁界によって変動させることが可能になる。
【0224】従って、図6に示されるような磁気検出素
子であれば、フリー磁性層38のトラック幅領域38a
の中央部と両端部で、フリー磁性層38の磁化方向が異
なる状態になりにくい。
【0225】図6の磁気検出素子では、下地層21、シ
ード層22、第2反強磁性層23、強磁性層24、非磁
性層25、フリー磁性層38、非磁性材料層27、固定
磁性層28、第1反強磁性層29、保護層30が下から
順に積層された多層膜Eにおいて、保護層30から第2
フリー磁性層37までの両側部が削り込まれてトラック
幅寸法Twのトラック幅方向寸法を有し、非磁性中間層
36から第1フリー磁性層35、強磁性層24、第2反
強磁性層23、シード層22、下地層21のトラック幅
方向寸法はトラック幅寸法Twより大きくなっている。
これにより、磁気検出素子のトラック幅寸法Twの領域
の外側で外部磁界を検出するサイドリーディングを低減
し、さらに、フリー磁性層38に十分な大きさの縦バイ
アス磁界(強磁性層24とフリー磁性層38間の層間結
合の磁界)を供給することができる。
【0226】図6に示される磁気検出素子は、保護層3
0から非磁性中間層36までのトラック幅方向(図示X
方向)における両側端面Ea,Eaが、多層膜Eの表面
Ebに対して垂直な連続面となっている。ただし、図6
の点線Ea1、Ea1で示されるように、保護層30か
ら非磁性中間層36までのトラック幅方向における両側
端面が、多層膜Eの表面Ebに対する傾斜面であっても
よい。
【0227】なお、図6の磁気検出素子の光学トラック
幅Twは、非磁性材料層27のトラック幅方向寸法で決
められる。本実施の形態の磁気検出素子では、光学トラ
ック幅Twを0.1μm以下、特に0.06μm以下に
して、200Gbit/in 以上の記録密度に対応す
ることができる。
【0228】図7は、本発明の第7の実施形態の磁気検
出素子を、記録媒体との対向面側から見た部分断面図で
ある。
【0229】図7の磁気検出素子は、図6の多層膜Eの
代わりに、下から順に、下地層21、シード層22、第
1反強磁性層29、第1固定磁性層28c、非磁性中間
層28b、第2固定磁性層28aからなるシンセティッ
クフェリピンド型の固定磁性層28、非磁性材料層2
7、第2フリー磁性層37、非磁性中間層36、第1フ
リー磁性層35からなるシンセティックフェリフリー型
のフリー磁性層38、非磁性層25、第2強磁性層24
b及び第1強磁性層24aからなる強磁性層24、第2
反強磁性層23、保護層30が下から順に積層された多
層膜Fが形成されている点で図6に示された磁気検出素
子と異っている。図6に示される磁気検出素子は、いわ
ゆるボトム型のスピンバルブ型磁気検出素子である。
【0230】第1フリー磁性層35は、第1磁性層35
a及び第2磁性層35bの2層構造である。
【0231】図7において、図6と同じ符号がつけられ
た層は、同じ材料及び同じ膜厚で形成されている。
【0232】ただし、図7の磁気検出素子は、図6の磁
気検出素子と異なり、第2反強磁性層23が、10Å以
上50Å以下の膜厚の中間反強磁性層23aと、1Å以
上3Å以下の膜厚の貴金属などからなる非磁性保護層2
3b及び上部反強磁性層23cからなる多層構造を有す
るものになることがある。
【0233】中間反強磁性層23aと上部反強磁性層2
3cは、同じ組成の反強磁性材料、具体的には上述のP
tMn合金、X―Mn合金で、あるいはPt―Mn―
X′合金を用いて形成される。
【0234】中間反強磁性層23aの膜厚と上部反強磁
性層23cの膜厚を合わせた総合膜厚は80Å以上で3
00Å以下である。例えば150Åである。中間反強磁
性層23aは、膜厚が10Å以上50Å以下と薄いた
め、単独では反強磁性を示さず、中間反強磁性層23a
と上部反強磁性層23cが一体となって初めて反強磁性
を示すようになり、強磁性層24との間に交換結合磁界
を生じさせる。
【0235】また、非磁性保護層23bは1Å以上3Å
以下の薄い膜厚であり、Ru、Re、Pd、Os、I
r、Pt、Au、Rh,Cu,Crのいずれか1種また
は2種以上で形成されているので、中間反強磁性層23
aと上部反強磁性層23cに反強磁性的な相互作用を生
じさせ、中間反強磁性層23aと上部反強磁性層23c
を一体の反強磁性層として機能させることが可能にな
る。また、非磁性保護層23bの材料が、中間反強磁性
層23aと上部反強磁性層23c中に拡散しても、反強
磁性層の性質は劣化しない。
【0236】なお、非磁性保護層23bが存在せず、第
2反強磁性層23が中間反強磁性層23aと上部反強磁
性層23cからなるものであってもよい。また、第2反
強磁性層23が単層の反強磁性層であってもよい。
【0237】図7に示された磁気検出素子では、単位面
積あたりの磁気モーメントの大きさが異なる複数の強磁
性材料層(第1フリー磁性層35、第2フリー磁性層3
7)が、シンセティックフェリ磁性状態である。
【0238】図7の磁気検出素子では、多層膜Fの、保
護層30から第2固定磁性層28aまでの膜厚方向の一
部分までは、両側部が削り込まれてトラック幅寸法Tw
のトラック幅方向寸法を有し、第2固定磁性層の残りの
部分から下地層21までのトラック幅方向寸法はトラッ
ク幅寸法Twより大きくなっている。これにより、磁気
検出素子のトラック幅Twの領域の外側で外部磁界を検
出するサイドリーディングを低減することができる。
【0239】図7に示される磁気検出素子は、保護層3
0から第2固定磁性層28aまでのトラック幅方向(図
示X方向)における両側端面Fa,Faが、多層膜Fの
表面Fbに対して垂直な連続面となっている。ただし、
図7の点線Fa1、Fa1で示されるように、保護層3
0から第2固定磁性層28aまでのトラック幅方向にお
ける両側端面が、多層膜Fの表面Fbに対する傾斜面で
あってもよい。
【0240】なお、図7の磁気検出素子の光学トラック
幅Twは、非磁性材料層27のトラック幅方向寸法で決
められる。本実施の形態の磁気検出素子では、光学トラ
ック幅Twを0.1μm以下、特に0.06μm以下に
して、200Gbit/in 以上の記録密度に対応す
ることができる。
【0241】図8は、本発明の第8の実施形態の磁気検
出素子を記録媒体との対向面側から見た部分断面図であ
る。
【0242】図8に示される磁気検出素子は、非磁性材
料層27とフリー磁性層26の間に半金属強磁性ホイス
ラー合金層41が、固定磁性層28と非磁性材料層27
との間に半金属強磁性ホイスラー合金層42が形成され
ている点でのみ、図1に示される磁気検出素子と異なっ
ている。
【0243】図8において、図1と同じ符号がつけられ
た層は、同じ材料同じ膜厚で形成されている。
【0244】半金属強磁性ホイスラー合金層41、42
は、例えばNiMnSb(ニッケルマンガンアンチモ
ン)、PtMnSb(白金マンガンアンチモン)、Pd
MnSb(パラジウムマンガンアンチモン)、PtMn
Sn(白金マンガンスズ)、CoMnSi、Co
nGe、CoMnSn、CoMnAlまたはCo
Mn(AlSi100−x(ただし、x=0〜
100)のいずれかの半金属強磁性ホイスラー合金から
形成される。
【0245】これらの半金属強磁性ホイスラー合金は、
半金属であり、キュリー温度が200℃以上であって室
温(25℃)で強磁性を示し、比抵抗が50μΩ・cm
である。
【0246】CPP型の磁気検出素子において、図8に
示されるような半金属強磁性ホイスラー合金層41及び
42を有すると、多層膜G内を流れるアップスピン電子
とダウンスピン電子の比率を制御でき、磁気抵抗変化量
ΔRを向上させることができるので好ましい。
【0247】また、半金属強磁性ホイスラー合金層41
はフリー磁性層26といっしょに磁化方向が変化する必
要があるので、半金属強磁性ホイスラー合金層41に軟
磁気特性が高いNiFe層が接していると、磁気抵抗変
化率をより向上させることができて好ましい。
【0248】図1から図8に示された磁気検出素子は、
多層膜A、C、D、E、F、Gの膜面垂直方向にセンス
電流が流されるCPP型の磁気検出素子であった。
【0249】しかし、本発明は固定磁性層、非磁性材料
層、及びフリー磁性層を有する多層膜の膜面水平方向に
センス電流が流される、いわゆるCIP(Curren
tIn the Plane)型のスピンバルブ型磁気
検出素子にも適用できる。
【0250】図9は、本発明の第9の実施の形態とし
て、CIP型のスピンバルブ型磁気検出素子を記録媒体
との対向面側から見た部分断面図である。
【0251】図9に示される磁気検出素子は、図1の磁
気検出素子と同じく多層膜Aを有する。ただし、多層膜
Aの上面Abに、トラック幅寸法Twの間隔をあけて、
一対の電極層50,50が形成されている点で図1の磁
気検出素子と異なっている。従って、図9の磁気検出素
子では、センス電流は、多層膜Aの膜面水平方向に流れ
る。電極層50,50はW,Ta,Cr,Cu,Rh,
Ir,Ru,Auなどを材料として用いて形成する。な
お符号51は下部ギャップ層、符号52は上部ギャップ
層である。
【0252】図9の磁気検出素子もスピンバルブ型磁気
検出素子であり、固定磁性層28の磁化方向が、適正に
図示Y方向に平行な方向に固定され、しかもフリー磁性
層の磁化が適正に図示X方向に揃えられており、固定磁
性層とフリー磁性層の磁化が直交関係にある。記録媒体
からの洩れ磁界が磁気検出素子の図示Y方向に侵入し、
フリー磁性層の磁化が感度良く変動し、この磁化方向の
変動と、固定磁性層の固定磁化方向との関係で電気抵抗
が変化し、この電気抵抗値の変化に基づく電圧変化によ
り、記録媒体からの洩れ磁界が検出される。
【0253】ただし、電気抵抗値の変化(出力)に直接
寄与するのは第2固定磁性層28aの磁化方向とフリー
磁性層26の磁化方向の相対角であり、これらの相対角
が検出電流が通電されている状態かつ信号磁界が印加さ
れていない状態で直交していることが好ましい。
【0254】なお、磁気検出素子の記録媒体との対向面
に対向する記録媒体は、図示Z方向に移動する。
【0255】図9に示された磁気検出素子でも、フリー
磁性層26の単磁区化及び磁化方向の制御を、第2反強
磁性層23と強磁性層24間の交換結合磁界の大きさ
と、強磁性層24とフリー磁性層26間の層間結合磁界
の大きさの2段階で調節することになり、細かな制御を
容易に行うことができる。
【0256】従って、フリー磁性層26の単磁区化及び
磁化方向の制御を適切かつ容易に行なうことができるの
で、磁気検出素子のさらなる狭トラック化を促進するこ
とができる。
【0257】また、フリー磁性層26のトラック幅領域
26cの下層に、非磁性層25を介して強磁性層24及
び第2反強磁性層23が積層される構造でも、フリー磁
性層26の磁化方向を固定磁性層28の磁化方向に交叉
する方向に確実に向けて、なおかつフリー磁性層26の
磁化方向を洩れ磁界によって変動させることが可能にな
る。
【0258】従って、図1に示されるような磁気検出素
子であれば、フリー磁性層26のトラック幅領域26c
の中央部と両端部で、フリー磁性層26の磁化方向が異
なる状態になりづらい。
【0259】しかし、CIP型の磁気検出素子で磁気抵
抗変化率を向上させるためには、フリー磁性層26の膜
厚が30Å〜40Åであることが好ましいが、フリー磁
性層26の膜厚をこの範囲にすると、第2反強磁性層2
3と強磁性層24間の交換結合磁界を大きくして、強磁
性層24の磁化方向を固定磁性層28の磁化方向と交叉
する方向に強く固定し、フリー磁性層26を単磁区化し
て磁化方向を固定磁性層28の磁化方向に直交する方向
に確実に向けた上で、フリー磁性層26の磁化方向を洩
れ磁界(外部磁界)によって変動させることができるよ
うに調節することが難しくなる。
【0260】また、第2反強磁性層23、強磁性層2
4、非磁性層25にセンス電流が流れることにより分流
損失が発生する。
【0261】従って、本発明はCPP型の磁気検出素子
に適用する方がより有効に作用するものである。
【0262】図10は、図1ないし図5、8、9に示さ
れた磁気検出素子のフリー磁性層26を上方向からみた
平面図である。
【0263】図中の矢印は、磁気検出素子に外部磁界が
印加されていない状態における、フリー磁性層26の磁
化方向を示している。
【0264】図1ないし図5、8、9に示された磁気検
出素子では、強磁性層24の磁化方向が第2反強磁性層
23との交換結合磁界によって、固定磁性層28の磁化
方向と交叉する方向に強く固定され、フリー磁性層26
が、非磁性層25を介した強磁性層24との層間結合磁
界によって単磁区化され、磁化方向が固定磁性層28の
磁化方向に交叉する方向に向けられている。
【0265】しかし、フリー磁性層26の磁化方向は、
記録媒体からの洩れ磁界(外部磁界)によって変動させ
ることができる程度に調節されている。すなわち、外部
磁界が印加されときに、フリー磁性層26の磁化方向
が、外部磁界が印加されていないときの磁化方向に対し
て角度θ1または角度θ2だけ動く。θ1とθ2の和
は、12°以上にできる。θ1とθ2の和が12°以上
であると、再生効率η(%)を10%以上にすることが
できる。
【0266】なお、再生効率η(%)は、η={(記録
媒体からの洩れ磁界による磁気検出素子の最大抵抗変化
量)/(磁気検出素子の最大抵抗変化量の理論値)}×
100として定義される。なお、磁気検出素子の最大抵
抗変化量の理論値とは、フリー磁性層と固定磁性層の磁
化方向が反平行状態のときの抵抗値とフリー磁性層と固
定磁性層の磁化方向が平行状態のときの抵抗値の差であ
る。
【0267】なお、フリー磁性層26は第1磁性層26
aと第2磁性層26bからなる2層構造であるが、第1
磁性層26aと第2磁性層26bの磁化は常に同じ方向
を向く。
【0268】また図6、7では、フリー磁性層38は、
第1フリー磁性層35と第2フリー磁性層37との積層
フェリ構造であるが、この場合も、これら第1フリー磁
性層35及び第2フリー磁性層37の磁化変動を、図1
0で説明したフリー磁性層26の磁化変動と同じに考え
ることができる。ただし前記第1フリー磁性層35と第
2フリー磁性層37の磁化方向は反平行状態を保ってい
る。
【0269】図11は図1ないし図9とは異なる形態の
磁気検出素子である。図11に示す磁気検出素子は記録
媒体との対向面側から見た部分断面図である。なお図1
ないし図9のいずれかに付された符号と同じ符号の層
は、それらと同じ層を表している。
【0270】図11に示す磁気検出素子は、少なくとも
フリー磁性層60のトラック幅方向(図示X方向)の両
側に非磁性材料層27を介して固定磁性層28が設けら
れ、前記固定磁性層28の上に第1反強磁性層29が形
成されている。電極層50は前記第1反強磁性層29上
に設けられている。また前記フリー磁性層60の下側に
非磁性層25を介して強磁性層24及び第2反強磁性層
23が積層されている。
【0271】図11に示す磁気検出素子では、前記電極
層50からの電流は、固定磁性層28、非磁性材料層2
7及びフリー磁性層60を膜面と平行な方向(図示X方
向)に流れるため電流の流れ方向は図9で説明したCI
P型の磁気検出素子と同じであるが、図11では前記電
流は固定磁性層28−非磁性材料層27−フリー磁性層
50の順にあるいはその逆の順に各層を流れるため、こ
の点は図1ないし図8で説明したCPP型の磁気検出素
子と同じである。
【0272】図1ないし図8で説明したCPP型の磁気
検出素子は、今後の高記録密度化により対応可能な構造
としてCIP型の磁気検出素子に変わるものと期待され
ているが、CPP型の磁気検出素子の欠点は平面での素
子サイズをかなり小さくし、且つ総膜厚を厚くしないと
出力を稼げないという点である。これに対し図11に示
す磁気検出素子のようにフリー磁性層60と固定磁性層
28とを非磁性材料層27を介してトラック幅方向(図
示X方向)に並べて配置し、前記固定磁性層28上に第
1反強磁性層29及び電極層50を積層した構造である
と、上記した素子サイズ及び総膜厚はCPP型と逆の関
係になる(すなわちCPP型で言う「素子サイズ」は図
11では膜厚方向(図示Z方向)と平行な方向のY−Z
平面のサイズに該当し、CPP型で言う「総膜厚」と
は、図11ではフリー磁性層60のトラック幅方向(図
示X方向)の幅寸法に該当する)ため、図11の構造で
は、CPP型で言う「平面の素子サイズ」を小さくで
き、且つCPP型で言う「総膜厚」を厚くできることに
なり、この結果、再生出力の向上を図ることが可能にな
っている。またトラック幅Twの狭小化によって抵抗変
化率を向上させることができる。
【0273】また図11に示す磁気検出素子では、図1
ないし図9に示す磁気検出素子に比べてフリー磁性層6
0の上下に形成されるシールド層20、31の間隔、す
なわちギャップ長を小さくできるという利点もある。ま
た前記非磁性材料層27は、フリー磁性層60のトラッ
ク幅方向の両側端面に形成される膜厚H1が、固定磁性
層28とシード層22間に形成される非磁性材料層27
の膜厚H2に比べて厚く形成されることが、前記固定磁
性層28とシード層22間に形成される非磁性材料層2
7に電流が分流する量を減らすことができて好ましい。
ただし後述のように固定磁性層28下に絶縁層66を設
けた場合には、シード層22上の非磁性材料層27に電
流の分流ロスは発生しないため、上記の点を考慮する必
要性が無くなる。
【0274】ところで図11に示す磁気検出素子の構造
の問題点の一つは、フリー磁性層60を如何にして単磁
区化し磁化制御するかという点である。
【0275】そこで図11に示す磁気検出素子では、図
1ないし図9で説明した非磁性層25、強磁性層24及
び第2反強磁性層23の積層構造を採用することとし、
すなわちフリー磁性層60の下側に非磁性層25を介し
て強磁性層24及び第2反強磁性層23を積層したので
ある。これにより前記フリー磁性層60の単磁区化及び
磁化制御を適切に且つ容易に行うことが可能となったの
である。
【0276】図11に示す磁気検出素子では、前記フリ
ー磁性層60のトラック幅方向(図示X方向)の少なく
とも両側にのみ固定磁性層28が存在していれば良いか
ら、第2反強磁性層23、強磁性層24及び非磁性層2
5の任意の高さ位置まで絶縁層66を埋めて、その上に
固定磁性層28を設けてもよい。これによって電流の分
流ロスを低減させることができる。
【0277】また図11に示す磁気検出素子では前記フ
リー磁性層60は、単層構造や磁性層の多層構造、ある
いはシンセティックフェリ構造など種々の構造を任意に
選択することができるが、図11では複数の磁性層6
1、63、65を各層間にスペキュラー層(鏡面反射
層)62、64を挟んで積層した構造となっている。こ
の構造は図1ないし図9のいずれの磁気検出素子でも採
用できる。
【0278】前記スペキュラー層62、64の材質に
は、Fe−O、Ni−O、Co−O、Co−Fe−O、
Co−Fe−Ni−O、Al−O、Al−Q−O(ここ
でQはB、Si、N、Ti、V、Cr、Mn、Fe、C
o、Niから選択される1種以上)、R−O(ここでR
はCu、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、T
a、Wから選択される1種以上)の酸化物、Al−N、
Al−Q−N(ここでQはB、Si、O、Ti、V、C
r、Mn、Fe、Co、Niから選択される1種以
上)、R−N(ここでRはTi、V、Cr、Zr、N
b、Mo、Hf、Ta、Wから選択される1種以上)の
窒化物、半金属ホイッスラー合金などを提示できる。
【0279】例えば前記磁性層61、63、65はCo
Feなどの磁性材料で形成されるが、これら磁性層6
1、63、65の表面を既存の方法で酸化させること
で、前記表面にスペキュラー層62、64を設けること
が可能になる。あるいは前記磁性層間にスペキュラー層
62、64をスパッタ法などで成膜してもよい。
【0280】これらスペキュラー層62、64の膜厚は
非常に薄く、各磁性層61、62、65はスペキュラー
層62、64を介したRKKY的な強磁性結合、前記ス
ペキュラー層62、64に形成されたピンホールなどを
介した直接的な強磁性結合、前記スペキュラー層62、
64の界面粗さによる静磁結合(トポロジカル・カップ
リングまたはオレンジ・ピールカップリング)などによ
って、同じ方向に単磁区化されている。
【0281】各磁性層61、63、65のうち真中に設
けられた磁性層63は、その上下の磁性層61、65に
比べて膜厚が厚くなっている。前記磁性層63よりも下
側の磁性層61は、強磁性層24との間で発生するRK
KY交換相互作用によって磁化がトラック幅方向(図示
X方向)に固定される可能性があるが、真中の磁性層6
3は、膜厚が厚いことと、直接、RKKY交換相互作用
を受けないなどの理由によって外部磁化に対して磁化変
動できる程度に弱く単磁区化された状態にあり、実質的
に磁性層63がフリー磁性層63として機能している。
なお前記磁性層63よりも上側の磁性層65は有っても
無くてもよい。
【0282】なお各磁性層61、63、65にスペキュ
ラー層62、64を設ける利点は、例えばアップスピン
を持つ伝導電子の平均自由行程λ+を従来に比べて伸ば
すことが可能になり、よって前記アップスピンを持つ伝
導電子の平均自由行程λ+と、ダウンスピンを持つ伝導
電子の平均自由行程λ−との差を大きくすることがで
き、抵抗変化率(ΔR/R)の向上とともに、再生出力
の向上を図ることが可能になるという点である。
【0283】また図11のフリー磁性層60の上側に非
磁性層25、強磁性層24及び第2反強磁性層23を設
けてもよい。図1に示された磁気検出素子の製造方法を
説明する。
【0284】まず、図示しない基板(スライダとなるウ
ェハ)上にアルミナ層(図示せず)を形成した後、下か
ら下部シールド層20、下地層21、シード層22、第
2反強磁性層23、第1強磁性層24a及び第2強磁性
層24bからなる強磁性層24、非磁性層25、第1磁
性層26a及び第2磁性層26bからなるフリー磁性層
26、非磁性材料層27、第2固定磁性層28a、非磁
性中間層28b、第1固定磁性層28cからなるシンセ
ティックフェリピンド型の固定磁性層28、中間反強磁
性層29a、非磁性保護層29bをスパッタ法によって
成膜する。
【0285】スパッタ法としては、例えばマグネトロン
スパッタ、RF2極スパッタ、RF3極スパッタ、イオ
ンビームスパッタ、対向ターゲット式スパッタ等の既存
するスパッタ装置を用いたスパッタ法によって形成する
ことができる。また本発明では、スパッタ法や蒸着法の
他に、MBE(モレキュラー−ビーム−エピタキシー)
法、ICB(イオン−クラスター−ビーム)法などの成
膜プロセスが使用可能である。
【0286】図12において、図1と同じ符号がつけら
れた層は、同じ材料同じ膜厚で形成されている。
【0287】なお、中間反強磁性層29aは、後に第1
反強磁性層29を構成する層であり、第2反強磁性層2
3と同じ組成の材料で形成される。
【0288】具体的には、中間反強磁性層29aを、P
tMn合金、または、X―Mn(ただしXは、Pd,I
r,Rh,Ru,Os,Ni,Feのいずれか1種また
は2種以上の元素である)合金で、あるいはPt―Mn
―X′(ただしX′は、Pd,Ir,Rh,Ru,A
u,Ag,Os,Cr,Ni,Ar,Ne,Xe,Kr
のいずれか1または2種以上の元素である)合金で形成
する。
【0289】非磁性保護層29bは大気暴露によって酸
化されにくい緻密な層である必要がある。本発明では非
磁性保護層29bを次の材料を用いて形成する。例え
ば、Ru、Re、Pd、Os、Ir、Pt、Au、R
h,Cu,Crのいずれか1種または2種以上からなる
材料で形成することが好ましい。
【0290】Ruなどの貴金属などを用いてスパッタ成
膜することにより、大気暴露によって酸化されにくい緻
密な非磁性保護層29bを得ることができる。したがっ
て非磁性保護層29bの膜厚を薄くしても固定磁性層2
8が大気暴露によって酸化されることを適切に防止でき
る。
【0291】本発明では非磁性保護層29bを3Å以上
で10Å以下で形成することが好ましい。より好ましく
は、3Å以上で8Å以下で形成することである。この程
度の薄い膜厚の非磁性保護層29bによっても中間反強
磁性層29aが大気暴露によって酸化されるのを適切に
防止することが可能である。
【0292】このように薄い膜厚で非磁性保護層29b
を形成したことによって図13工程でのイオンミリング
を低エネルギーで行うことができミリング制御を従来に
比べて向上させることができる。この点については図1
3工程で詳しく説明する。
【0293】図12に示すように基板上に下部シールド
層20から非磁性保護層29bまでの各層を積層した
後、第1の磁場中アニールを施す。トラック幅Tw(図
示X方向)方向に第1の磁界を印加しつつ、第1の熱処
理温度で熱処理し、第2反強磁性層23と強磁性層24
との間に交換結合磁界を発生させて、強磁性層24の磁
化を図示X方向、すなわちトラック幅方向に固定する。
非磁性層25を介した磁性層24との間で働く層間結合
磁界、この場合はRKKY相互作用によって、フリー磁
性層26は単磁区化され、磁化方向が図示X方向とは1
80°反対方向に向けられる。なお、例えば第1の熱温
度を270℃とし、磁界の大きさを800k(A/m)
とする。なお、第1の磁界の大きさは、強磁性層24と
フリー磁性層26の飽和磁界より大きい。
【0294】第2反強磁性層23は、PtMn合金、ま
たは、X―Mn(ただしXは、Pd,Ir,Rh,R
u,Os,Ni,Feのいずれか1種または2種以上の
元素である)合金で、あるいはPt―Mn―X′(ただ
しX′は、Pd,Ir,Rh,Ru,Au,Ag,O
s,Cr,Ni,Ar,Ne,Xe,Krのいずれか1
または2種以上の元素である)合金で形成する。これら
の合金は、成膜直後の状態では、不規則系の面心立方構
造(fcc)であるが、熱処理によってCuAuI型の
規則型の面心正方構造(fct)に構造変態する。第2
反強磁性層の膜厚は80Å〜300Å、例えば150Å
である。
【0295】ここで、反強磁性層を形成するための、前
記PtMn合金及び前記X−Mnの式で示される合金に
おいて、PtあるいはXが37〜63at%の範囲であ
ることが好ましい。また、前記PtMn合金及び前記X
−Mnの式で示される合金において、PtあるいはXが
47〜57at%の範囲であることがより好ましい。特
に規定しない限り、〜で示す数値範囲の上限と下限は以
下、以上を意味する。
【0296】また、Pt−Mn−X’の式で示される合
金において、X’+Ptが37〜63at%の範囲であ
ることが好ましい。また、前記Pt−Mn−X’の式で
示される合金において、X’+Ptが47〜57at%
の範囲であることがより好ましい。さらに、前記Pt−
Mn−X’の式で示される合金において、X’が0.2
〜10at%の範囲であることが好ましい。ただし、
X’がPd,Ir,Rh,Ru,Os,Ni,Feのい
ずれか1種または2種以上の元素である場合には、X’
は0.2〜40at%の範囲であることが好ましい。
【0297】これらの合金を使用し、これを第1の磁場
中アニールにかけることにより、大きな交換結合磁界を
発生する反強磁性層を得ることができる。特に、PtM
n合金であれば、48kA/m以上、例えば64kA/
mを越える交換結合磁界を有し、前記交換結合磁界を失
うブロッキング温度が380℃と極めて高い優れた第2
反強磁性層23を得ることができる。
【0298】なお、固定磁性層28上に積層された中間
反強磁性層29aは、膜厚が10Å〜50Å、より好ま
しくは30Å〜40Åと薄いため反強磁性を示さない
か、または反強磁性を示したとしても非常に弱いため、
第1の磁場中アニールでは、第1固定磁性層28cと中
間反強磁性層29aの間に交換結合磁界は発生せず、固
定磁性層28の磁化方向は図示X方向に固定されない。
【0299】また上記した第1の磁場中アニールによっ
て、非磁性保護層29bを構成するRuなどの貴金属元
素などが、中間反強磁性層29a内部に拡散するものと
考えられる。従って熱処理後における中間反強磁性層2
9aの表面近くの構成元素は、中間反強磁性層29aを
構成する元素と貴金属元素などとから構成される。また
中間反強磁性層29a内部に拡散した貴金属元素など
は、中間反強磁性層29aの下面側よりも中間反強磁性
層29aの表面側の方が多く、拡散した貴金属元素など
の組成比は、中間反強磁性層29aの表面から下面に向
うに従って徐々に減るものと考えられる。
【0300】また強磁性層24を構成する第1強磁性層
24a及び第2強磁性層24b間、さらにはフリー磁性
層26を構成する第1磁性層26aと第2磁性層26b
間も組成が熱拡散を起しやすい。
【0301】上記した組成変調は、SIMS分析装置な
ど薄膜の化学組成を分析する装置で確認することが可能
である。
【0302】次に、図13に示す工程では、非磁性保護
層29bをイオンミリングで削る。非磁性保護層29b
は、1Å〜3Åの膜厚で残されるかあるいは全て除去さ
れる。
【0303】図13に示すイオンミリング工程では、低
エネルギーのイオンミリングを使用できる。その理由
は、非磁性保護層29bが3Å〜10Å程度の非常に薄
い膜厚で形成されているからである。
【0304】低エネルギーのイオンミリングとは、ビー
ム電圧(加速電圧)が1000V未満のイオンビームを
用いたイオンミリングであると定義される。例えば、1
50V〜500Vのビーム電圧が用いられる。本実施の
形態では、200Vの低ビーム電圧のアルゴン(Ar)
イオンビームを用いている。
【0305】これに対し、非磁性保護層29bに例えば
Ta膜を使用すると、このTa膜自体、大気暴露によっ
て酸化されるので、30Å〜50Å程度の厚い膜厚で形
成しないと、十分にその下の層を酸化から保護できず、
しかもTa膜は酸化によって体積が大きくなり、Ta膜
の膜厚は約50Å以上にまで膨れ上がる。
【0306】このような厚い膜厚のTa膜をイオンミリ
ングで除くには、高エネルギーのイオンミリングでTa
膜を除去する必要があり、高エネルギーのイオンミリン
グを使用すると、Ta膜のみが除去されるようにミリン
グ制御することは非常に難しい。
【0307】従って、Ta膜の下に形成されている中間
反強磁性層29aも深く削られ、中間反強磁性層29a
に、イオンミリング時に使用されるArなどの不活性ガ
スが露出した中間反強磁性層29aの表面から内部に入
り込んだり、中間反強磁性層29aの表面部分の結晶構
造が壊れ、格子欠陥が発生(Mixing効果)する。
これらのダメージによって中間反強磁性層29aの磁気
特性が劣化しやすい。また、約50Å以上の膜厚を有す
るTa膜を低エネルギーのイオンミリングで削ると処理
時間がかかりすぎて実用的でなくなる。また、Taは前
記貴金属などに比べると、成膜時に中間反強磁性層29
aに拡散浸入しやすく、Ta膜のみを削って除去できた
としても、露出した中間反強磁性層29a表面には、T
aが混入する。Taが混入した中間反強磁性層29a
は、反強磁性特性が劣化する。
【0308】一方、本発明では、低エネルギーのイオン
ミリングによって非磁性保護層29bを削ることができ
る。低エネルギーのイオンミリングはミリングレートが
遅く、ミリング止め位置のマージンを狭くすることが可
能になる。特に、非磁性保護層29bをイオンミリング
で除去した瞬間にミリングを止めることも可能になる。
従って、中間反強磁性層29aはイオンミリングによっ
て大きなダメージを受けなくなる。なお、図13工程に
おけるイオンミリングの入射角度は、非磁性保護層29
b表面に対する法線方向から30°〜70°にすること
が好ましい。また、イオンミリングの処理時間は1分程
である。
【0309】ただし、非磁性保護層29bを完全に除去
すると、中間反強磁性層29aの表面がイオンミリング
によって損傷し、反強磁性が低下することがあるので、
非磁性保護層29bを1Å〜3Åの膜厚で残す方が好ま
しい。
【0310】次に図14工程を施す。図14工程では、
中間反強磁性層29a、或いは非磁性保護層29bが完
全に除去されないときには残された非磁性保護層29b
上に、上部反強磁性層29cを真空中で成膜し、さら
に、保護層30を真空中で連続成膜する。成膜には上述
したスパッタや蒸着法を使用できる。下地層21から保
護層30までの各層が多層膜Aを構成する。
【0311】上部反強磁性層29cに使用される材質
は、中間反強磁性層29aに使用される反強磁性材料と
同じ組成の反強磁性材料、具体的には上述のPtMn合
金、X―Mn合金で、あるいはPt―Mn―X′合金を
用いて形成されることが好ましい。
【0312】図14では、中間反強磁性層29a、残存
している非磁性保護層29b、及び上部反強磁性層29
cが一体となって第1反強磁性層29を構成している。
非磁性保護層29bが完全に除去される場合には、中間
反強磁性層29aと上部反強磁性層29cが一体となっ
て第1反強磁性層29を構成する。
【0313】中間反強磁性層29aの膜厚と上部反強磁
性層29cの膜厚を合わせた総合膜厚は80Å以上で5
00Å以下である。例えば150Åである。上述したよ
うに、中間反強磁性層29aは、膜厚が10Å以上で5
0Å以下と薄いため、単独では反強磁性を示さず、中間
反強磁性層29aと上部反強磁性層29cが一体となっ
て初めて反強磁性を示すようになり、固定磁性層28と
の間に交換結合磁界を生じさせる。
【0314】また、非磁性保護層29bが残存している
場合でも、残存している非磁性保護層29bの膜厚は1
Å以上で3Å以下と薄く、また、Ru、Re、Pd、O
s、Ir、Pt、Au、Rh,Cu,Crのいずれか1
種または2種以上で形成されているので、中間反強磁性
層29aと上部反強磁性層29cに反強磁性的な相互作
用を生じさせ、中間反強磁性層29a、非磁性保護層2
9b、上部反強磁性層29cが一体の反強磁性層29と
して機能することが可能になる。また、非磁性保護層2
9bの材料が、中間反強磁性層29aと上部反強磁性層
29c中に拡散しても、反強磁性は劣化しない。
【0315】次に第2の磁場中アニールを施す。このと
きの磁場方向は、トラック幅方向に垂直な方向(図示Y
方向)、すなわち記録媒体からの洩れ磁界方向である。
なおこの第2の磁場中アニールは、第2の印加磁界を、
第2反強磁性層23と強磁性層24間の交換異方性磁界
よりも小さく、しかも熱処理温度を、第2反強磁性層2
3のブロッキング温度よりも低くする。これによって第
2反強磁性層23と強磁性層24間の交換異方性磁界の
方向をトラック幅方向に向けたまま、第1反強磁性層2
9と固定磁性層28間の交換異方性磁界を記録媒体から
の洩れ磁界方向(図示Y方向)に向けることができる。
従って、固定磁性層28の磁化方向は強磁性層24及び
フリー磁性層26の磁化方向と交叉する方向に固定され
る。
【0316】なお第2の磁場中アニールの熱処理温度は
例えば250℃であり、磁界の大きさは8〜30(kA
/m)、例えば24(kA/m)である。第2の印加磁
界の大きさは、第2固定磁性層28a及び第1固定磁性
層28cの保磁力より大きく、第2固定磁性層28aと
第1固定磁性層28cの間のスピンフロップ磁界より小
さい。
【0317】このため上記の第2の磁場中アニールによ
って、第1反強磁性層29は適切に規則化変態し、第1
反強磁性層29と固定磁性層28との間に適切な大きさ
の交換結合磁界が発生する。
【0318】本実施の形態のように、多層膜Aを2段階
に分けて成膜し、2回の磁場中アニールを施す製造方法
を用いると第1反強磁性層29及び第2反強磁性層23
を、同一の組成を有する反強磁性材料を用いて形成する
ことができる。
【0319】次に図15に示す工程では多層膜Aの保護
層30の上面にレジスト層を形成し、このレジスト層を
露光現像することによって、図15に示す形状のレジス
ト層Rを保護層30上に残す。レジスト層Rは例えばリ
フトオフ用のアンダーカット形状を有するレジスト層で
あり、トラック幅寸法Twに等しいトラック幅方向の幅
寸法を有している。
【0320】次に、レジスト層Rに覆われていない多層
膜Aの両側部B,Bを、多層膜Aの表面Abに対する垂
直方向からのイオンミリングによって、図16に示され
るように保護層30からフリー磁性層26の第1磁性層
26aの一部まで削る。
【0321】図16工程のイオンミリングの結果、多層
膜Aの保護層30からフリー磁性層26の第1磁性層2
6aの途中までがトラック幅寸法Twのトラック幅方向
寸法を有し、第1磁性層26aの途中から強磁性層2
4、第2反強磁性層23、シード層22、下地層21の
トラック幅方向寸法はトラック幅寸法Twより大きくな
る。
【0322】また、多層膜Aの、保護層30からフリー
磁性層26の第1磁性層26aの一部までのトラック幅
方向(図示X方向)における両側端面Aa,Aaが、多
層膜Aの表面Abに対して垂直な連続面となっている。
ただし、図16の点線Aa1、Aa1で示されるよう
に、保護層30からフリー磁性層26の第1磁性層26
aの一部までのトラック幅方向における両側端面が、多
層膜Aの表面Abに対する傾斜面であってもよい。
【0323】イオンミリング工程終了後、保護層30か
らフリー磁性層26の第1磁性層26aの途中までのト
ラック幅方向両側部にAlやSiOからなる絶
縁層32,32を形成する。なお絶縁層32,32を構
成する絶縁材料の層は、レジスト層Rの上面や側面にも
付着する。絶縁層32,32を形成した後、レジスト層
Rを有機溶剤などを用いたリフトオフで除去する。
【0324】さらに、図17工程で、絶縁層32,32
及び多層膜Aの保護層30上に、上部電極層を兼用する
上部シールド層31を形成する。こうして、図1に示さ
れる磁気検出素子が得られる。
【0325】本発明では、第2反強磁性層23と強磁性
層24間の交換結合磁界を大きくして、強磁性層24の
磁化方向を固定磁性層28の磁化方向と交叉する方向に
強く固定した上で、フリー磁性層26と強磁性層24間
の層間結合磁界の大きさを前記交換結合磁界よりも小さ
くすることにより、フリー磁性層26を単磁区化して磁
化方向を固定磁性層28の磁化方向に直交する方向に確
実に向け、なおかつフリー磁性層26の磁化方向を洩れ
磁界によって変動させることができるように調節する必
要がある。
【0326】第2反強磁性層23と強磁性層24間の交
換結合磁界を大きくし、フリー磁性層26と強磁性層2
4間の層間結合磁界の大きさを交換結合磁界よりも小さ
くするために、図12工程で、強磁性層24の単位面積
あたりの磁気モーメントの大きさ(Ms×t)がフリー
磁性層26の単位面積あたりの磁気モーメントの大きさ
(Ms×t)よりも小さくなるように、強磁性層24と
フリー磁性層26を成膜する。
【0327】具体的には、強磁性層24の単位面積あた
りの磁気モーメントの大きさ(Ms×t)に対するフリ
ー磁性層26の単位面積あたりの磁気モーメントの大き
さ(Ms×t)の比率(フリー磁性層のMs×t/強磁
性層24のMs×t)を、3以上で20以下の範囲にし
ている。
【0328】また、強磁性層24の、非磁性層25に接
する側である第2強磁性層24bをNiFe(パーマロ
イ)層あるいはNiFeX(XはAl,Si,Ti,
V,Cr,Mn,Cu,Zr,Nb,Mo,Ru,R
h,Hf,Ta,W,Ir,Ptから選ばれる1種或い
は2種以上の元素)で形成することにより、フリー磁性
層26と強磁性層24間の層間結合磁界の大きさを適度
に小さくしている。
【0329】また、フリー磁性層26の、非磁性層25
に接する側である第1磁性層26aをNiFe(パーマ
ロイ)層あるいはNiFeX(XはAl,Si,Ti,
V,Cr,Mn,Cu,Zr,Nb,Mo,Ru,R
h,Hf,Ta,W,Ir,Ptから選ばれる1種或い
は2種以上の元素)で形成することにより、フリー磁性
層26と強磁性層24間の層間結合磁界の大きさを適度
に小さくしている。
【0330】上述した製造方法によれば、第2反強磁性
層23と強磁性層24間の交換結合磁界の大きさと、強
磁性層24とフリー磁性層26間の層間結合磁界の大き
さの2段階で調節することになり、フリー磁性層26の
単磁区化及び磁化方向の細かな制御を容易に行うことが
できる。
【0331】従って、フリー磁性層26の単磁区化及び
磁化方向の制御を適切かつ容易に行なうことができるの
で、磁気検出素子のさらなる狭トラック化を促進するこ
とができる。
【0332】また、フリー磁性層26のトラック幅領域
26cの下層に、非磁性層25を介して強磁性層24及
び第2反強磁性層23が積層される構造でも、フリー磁
性層26の磁化方向を固定磁性層28の磁化方向に交叉
する方向に確実に向けて、なおかつフリー磁性層26の
磁化方向を洩れ磁界によって変動させることが可能にな
る。従って、フリー磁性層26のトラック幅領域26c
の中央部と両端部で、フリー磁性層26の磁化方向が異
なる状態になりにくい。
【0333】また、非磁性層25、強磁性層24、及び
第2反強磁性層23といった、フリー磁性層26に縦バ
イアス磁界を与えるための層を、図12工程でベタ膜状
に形成し、図15及び図16工程で、多層膜Aの両側部
B,Bを削るだけで良いので、製造工程が簡単になる。
また、トラック幅寸法Twの精度が良くなるので、狭ト
ラック化が容易になる。
【0334】図4ないし図9に示された磁気検出素子
も、上述した製造方法と同様の製造方法を用いて形成す
ることができる。また図11の磁気検出素子は、まず先
に第2反強磁性層23、強磁性層24、非磁性層25及
びフリー磁性層60を成膜した後、フリー磁性層60の
磁化制御のための磁場中アニールを施し、前記第2反強
磁性層23から前記フリー磁性層60までの各層を図1
1のように略台形状に加工した後、その両側に非磁性材
料層27及び固定磁性層28を成膜し、さらに前記固定
磁性層28上に第1反強磁性層29及び電極層50を成
膜した後、固定磁性層28の磁化制御のための磁場中ア
ニールを施して形成される。
【0335】また本発明では、磁気検出素子の非磁性材
料層27をAlやSiOなどの絶縁材料で形成
することにより、トンネル型磁気抵抗効果型素子と呼ば
れる磁気検出素子とすることもできる。
【0336】なお本発明における磁気検出素子は、ハー
ドディスク装置に搭載される薄膜磁気ヘッドにのみ使用
可能なものではなく、テープ用磁気ヘッドや磁気センサ
などにも使用可能なものである。
【0337】以上本発明をその好ましい実施例に関して
述べたが、本発明の範囲から逸脱しない範囲で様々な変
更を加えることができる。
【0338】なお、上述した実施例はあくまでも例示で
あり、本発明の特許請求の範囲を限定するものではな
い。
【0339】
【実施例】本実施例では、図5のようにフリー磁性層2
6が固定磁性層28よりも上側に形成された磁気検出素
子を用い、前記フリー磁性層26の膜構成及び強磁性層
24の膜構成を種々変化させ、そのときのフリー磁性層
26及び強磁性層24に使用される好ましい材質、及び
強磁性層24の単位面積当たりの磁気モーメント(Ms
×t)に対するフリー磁性層26の単位面積当たりの磁
気モーメント(Ms×t)の比率(フリー磁性層26の
Ms×t/強磁性層24のMs×t)等について調べ
た。
【0340】まず、以下に示す表1では、フリー磁性層
26を構成する材質および層構造を変化させたときの、
強磁性層24の単位面積当たりの磁気モーメント(Ms
×t)に対するフリー磁性層26の単位面積当たりの磁
気モーメント(Ms×t)の比率(フリー磁性層26の
Ms×t/強磁性層24のMs×t)と、再生感度η及
びヒステリシスとの関係を示す表である。
【0341】
【表1】
【0342】表1に示すように実施例1ないし7および
比較例1ないし3では、強磁性層24の第1強磁性層2
4aを10ÅのCo80at%Fe12at%Cr
8at%で形成し、第2強磁性層24bを10ÅのNi
80at%Fe20at%で形成している。また比較例
4ないし6では、強磁性層24を20ÅのCo
90at%Fe10at%で形成している。
【0343】表1に示す「フリー磁性層26」欄では、
前記フリー磁性層26を「フリー」、「フリー」、
「フリー」の3つに分けている。ここでフリーと
は、図1に示す非磁性層25と接する側の層を表し、フ
リーとは、図1に示す非磁性材料層27と接する側の
層を表す。「フリー」は、「フリー」と「フリー
」との中間層を表すが、例えば実施例1では、フリー
とフリーが合体した単一層であり、したがって実施
例1のフリー磁性層26は2層構造である。このような
見方は、表1における他の実施例、比較例、および表2
以降についても同じである。また表1のフリー磁性層2
6の各材質に記載された括弧書きは膜厚である。
【0344】表1では、フリー磁性層26を構成する層
数、材質及びフリー磁性層26を構成する各層の膜厚を
変化させ、そのときの強磁性層24の単位面積当たりの
磁気モーメント(Ms×t)に対するフリー磁性層26
の単位面積当たりの磁気モーメント(Ms×t)の比
率、再生感度η、およびヒステリシスを求めた。なおフ
リー磁性層26の膜厚はトータルで120Åとなるよう
に設定している。
【0345】また再生感度ηは、(記録媒体からの漏れ
磁界を±40Oeと想定した印加磁界に対する抵抗変化
量/±5kOeの印加磁界範囲内で得られる最大抵抗変
化量)×100で求めた。
【0346】またヒステリシスは、(ヒステリシスルー
プの原点で残るヒステリシス抵抗変化量/±40Oeの
印加磁界における抵抗変化量)×100で求めた。
【0347】なお1Oe(エルステッド)は約79A/
mである。また上記した再生感度η及びヒステリシスの
求め方は表2以降でも同じである。
【0348】表1に示すように、実施例1ないし7は、
比較例1ないし6よりも高い再生感度ηを有し、且つヒ
ステリシスも小さい値となっており、再生特性が良好で
あることがわかった。
【0349】次に、以下の表2では、強磁性層24を構
成する第1強磁性層24a及び第2強磁性層24bの材
質を変化させ、そのときの強磁性層24の単位面積当た
りの磁気モーメント(Ms×t)に対するフリー磁性層
26の単位面積当たりの磁気モーメント(Ms×t)の
比率、再生感度η、およびヒステリシスを求めた。なお
前記第1強磁性層24a及び第2強磁性層24bは共に
10Åの膜厚に固定している。
【0350】またフリー磁性層26は、実施例2、およ
び実施例8ないし13では、2層構造とし、第1磁性層
26a(すなわち表2におけるフリーのみ)を膜厚2
0ÅのNi85at%Fe15at%Nb5at%で形
成した。また第2磁性層26b(すなわち表2における
フリー及び)を膜厚100ÅのCo90at%Fe
10at%で形成した。なお実施例14、15では、3
層構造とし、第1磁性層26a(すなわち表2における
フリーのみ)を膜厚20ÅのNi85at%Fe
10at%Nb5at%で形成した。また第2磁性層2
6b(すなわち表2におけるフリー)を膜厚20Åの
Co90at%Fe10at%で形成した。さらに中間
磁性層(すなわち表2におけるフリー)を膜厚80Å
のNi80a t%Fe20at%で形成した。
【0351】
【表2】
【0352】表2に示した全ての実施例は、表1に示し
た実施例と同様に、高い再生感度ηを有し且つヒステリ
シスが小さい値であり再生特性に優れていることがわか
った。
【0353】次に以下に示す表3では、強磁性層24及
びフリー磁性層26を構成する各層の材質を固定し、前
記フリー磁性層26を構成する第2磁性層26b(すな
わち表3のフリー及び)の膜厚を徐々に変化させ
た。以下の表3に示すように強磁性層24を構成する第
1強磁性層24aを膜厚が10ÅのCo80at%Fe
12at%Cr8at%で形成した。また強磁性層24
を構成する第2強磁性層24bを膜厚が10ÅのNi
80at%Fe20at%で形成した。さらにフリー磁
性層26を構成する第1磁性層26a(すなわち表3に
示すフリーのみ)を膜厚が20ÅのNi85at%
10at%Nb5at%で形成した。またフリー磁性
層26を構成する第2磁性層26bをCo90at%
10at%で形成した。
【0354】
【表3】
【0355】次に以下に示す表4では、強磁性層24及
びフリー磁性層26を構成する各層の材質を固定し、前
記強磁性層24を構成する第2強磁性層24bの膜厚を
徐々に変化させた。以下の表4に示すように強磁性層2
4を構成する第1強磁性層24aを膜厚が10ÅのCo
80at%Fe12at%Cr8at%で形成した。ま
た強磁性層24を構成する第2強磁性層24bをNi
80at%Fe20at で形成した。さらにフリー磁
性層26を構成する第1磁性層26a(すなわち表3に
示すフリーのみ)を膜厚が20ÅのNi85at%
10at%Nb 5at%で形成した。またフリー磁性
層26を構成する第2磁性層26bを膜厚が100Åの
Co90at%Fe10at%で形成した。
【0356】
【表4】
【0357】まず表3及び表4から、強磁性層24の単
位面積当たりの磁気モーメント(Ms×t)に対するフ
リー磁性層26の単位面積当たりの磁気モーメント(M
s×t)の比率(以下、単に磁気モーメントの比率と呼
ぶ)を求めた。
【0358】表3及び表4に示す各実施例での磁気モー
メントの比率は、3以上で20以下の範囲内であること
がわかる。
【0359】磁気モーメントの比率は大きければ大きい
ほど、外部磁界に対しフリー磁性層が敏感に動きやすく
なるから好ましいが、大きすぎると今度は、ヒステリシ
スが大きくなり、エラーレートが高くなり再生特性の低
下を余儀なくされる。
【0360】例えば表3に示す比較例10や11を見て
みると、これら実施例では磁気モーメントの比率が大き
く、このため再生感度ηも50%を越えていることがわ
かる。しかし逆にヒステリシスは3%を越え、表3に示
す実施例に比べてヒステリシスが悪化していることがわ
かった。
【0361】このように、磁気モーメントの比率は再生
感度η及びヒステリシスの両側面から求める必要性があ
る。表3及び表4に示す実施例を見てみると、全て磁気
モーメントの比率が3以上で20以下である。そして再
生感度ηは10%以上で50%以下である。さらにヒス
テリシスは3%以下である。
【0362】このように磁気モーメントの比率を3以上
で20以下にすることにより、再生感度ηを10%以上
で50%以下にでき、且つヒステリシスを3%以下にす
ることができ良好な再生特性を得られることがわかっ
た。
【0363】次に、フリー磁性層26及び強磁性層24
の好ましい材質や層構造を表1及び表2から検討する。
【0364】例えば表1に示す比較例1ないし6はすべ
て磁気モーメントの比率が、3以上で20以下の範囲内
である。この磁気モーメントの比率が本発明の好ましい
範囲内にあるにも関わらず、再生感度ηが10%以下で
且つヒステリシスが3%よりも高いのは、フリー磁性層
26の第1磁性層26aをCoFeで形成しているから
であると考えられる。
【0365】フリー磁性層26の第1磁性層26aは、
前記強磁性層24の第2強磁性層24bとの間で層間結
合を生じる。この層間結合は強すぎてはいけない。なぜ
なら強すぎるとフリー磁性層26が外部磁界に対し磁化
反転しにくくなり、すなわち再生感度ηの低下を余儀な
くされるからである。
【0366】ところが表1のようにフリー磁性層26の
第1磁性層26aにCoFeを用いると、強磁性層24
の第2強磁性層24bとの層間結合が強まると考えられ
る。このため磁気モーメントの比率は好ましい範囲内で
あるにも関わらず、再生感度ηが低下し、さらにヒステ
リシスも大きくなってしまったものと考えられる。
【0367】このことから、まずフリー磁性層26を構
成する第1磁性層26aにはCo系の強磁性材料を使用
しない方が好ましいことがわかる。表1ないし表4に示
す実施例を見ると、全てフリー磁性層26の第1磁性層
26aに使用されている材質はNiFe系の合金であ
る。このため本発明では前記フリー磁性層26の第1磁
性層26aにNiFe合金あるいはNiFeX合金(X
はAl,Si,Ti,V,Cr,Mn,Cu,Zr,N
b,Mo,Ru,Rh,Hf,Ta,W,Ir,Ptか
ら選ばれる1種或いは2種以上の元素)を使用すること
が好ましいとした。
【0368】次にフリー磁性層26の層数についてであ
るが、例えば表1の実施例6や実施例7のように前記フ
リー磁性層26を1層で形成してもよいし、あるいは実
施例1ないし4のように前記フリー磁性層26を2層で
形成してもよいし、さらには実施例5のように前記フリ
ー磁性層26を3層構造で形成してもよい。
【0369】ただし、フリー磁性層26は1層よりも2
層以上で形成された方が好ましい。前記フリー磁性層2
6が実施例6や実施例7のようにNiFe系の単層で形
成されると、図1に示す非磁性材料層27へNiなどが
拡散しやすくなり、磁気抵抗変化率の低下を招きやすい
からである。このため、好ましいフリー磁性層26の層
構造としては、図1に示す非磁性層25と接する側にN
iFeあるいはNiFeXからなる磁性領域が存在し、
前記非磁性材料層27に接する側にCo(コバルト)を
含む強磁性材料からなる磁性領域が存在することであ
る。
【0370】次に強磁性層24の材質についてである
が、フリー磁性層26との層間結合をあまり強くしない
ようにするためには、前記強磁性層24の第2強磁性層
24bをNiFe系の合金で形成することが好ましい。
表1ないし表4に示す殆どの実施例がそのような構造に
なっている。ただし実施例11や実施例12のように強
磁性層24全体をCoFe系の強磁性材料で形成して
も、磁気モーメントの比率は3以上で20以下にあり、
また再生感度η及びヒステリシスも好ましい範囲内にあ
る。
【0371】強磁性層24は、特に図1に示す第2反強
磁性層23との間で大きな交換結合磁界を発生させて、
磁化が強固に一定方向に固定されていなければならな
い。そのため強磁性層24に対し好ましい材質の選択と
しては、第2反強磁性層23と接する側にCoを含む強
磁性材料からなる磁性領域が存在するようにすることで
ある。
【0372】また前記強磁性層の層数としては、表2に
示す実施例11ないし13のように1層構造でもよい
し、2層構造であってもよい。あるいは3層構造以上で
あってもよい。
【0373】ただし前記強磁性層24は少なくとも2層
構造であることが好ましいと考えられる。その理由は、
第2反強磁性層23との間で大きな交換結合磁界を発生
させるために、第2反強磁性層23と接する側にCoを
含む強磁性材料からなる磁性領域を形成し、一方、フリ
ー磁性層26との層間結合を適度に弱めるために非磁性
層25と接する側にNiFeあるいはNiFeXからな
る磁性領域を形成した方がより再生特性に優れた磁気検
出素子を製造できるからである。
【0374】
【発明の効果】以上詳細に説明した本発明によれば、前
記第2反強磁性層との交換結合磁界により前記強磁性層
の磁化方向が前記固定磁性層の磁化方向と交叉する方向
へ向けられており、前記フリー磁性層が前記非磁性層を
介して前記強磁性層に積層されているため、前記フリー
磁性層の単磁区化及び磁化方向の制御は、前記反強磁性
層と前記強磁性層間の交換結合磁界の大きさと、前記強
磁性層と前記フリー磁性層間の磁気的結合の大きさの2
段階で調節されることになり、細かな制御を容易に行う
ことができる。
【0375】従って、本発明では、前記フリー磁性層の
単磁区化及び磁化方向の制御を適切かつ容易に行なうこ
とができるので、磁気検出素子のさらなる狭トラック化
を促進することができる。
【0376】また本発明では、前記フリー磁性層のトラ
ック幅領域上に、前記非磁性層を介して前記強磁性層及
び前記第2反強磁性層が積層される構造でも、前記フリ
ー磁性層の磁化方向を前記固定磁性層の磁化方向に直交
する方向に確実に向けて、なおかつ前記フリー磁性層の
磁化方向を洩れ磁界によって変動させることが可能にな
る。
【0377】また、本発明では、前記フリー磁性層は、
前記強磁性層との前記非磁性層を介した層間結合磁界に
よって単磁区化され、磁化方向が前記固定磁性層の磁化
方向と交叉する方向へ向けられることができる。
【0378】例えば、前記フリー磁性層と前記強磁性層
との間には、前記非磁性層を介したRKKY相互作用が
発生する。その結果、前記フリー磁性層が単磁区化し、
その磁化方向が前記固定磁性層の磁化方向と交叉する方
向へ向けられる。
【0379】このように、本発明では、前記強磁性層と
の前記非磁性層を介した層間結合磁界によって、前記フ
リー磁性層の単磁区化及び磁化方向の制御が行われるの
で、記録媒体からの洩れ磁界などの外部磁界によって、
前記フリー磁性層にかかる縦バイアス磁界が乱れ、前記
フリー磁性層の磁区構造が乱されることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態の磁気検出素子の断
面図、
【図2】本発明の第2の実施の形態の磁気検出素子の断
面図、
【図3】本発明の第3の実施の形態の磁気検出素子の断
面図、
【図4】本発明の第4の実施の形態の磁気検出素子の断
面図、
【図5】本発明の第5の実施の形態の磁気検出素子の断
面図、
【図6】本発明の第6の実施の形態の磁気検出素子の断
面図、
【図7】本発明の第7の実施の形態の磁気検出素子の断
面図、
【図8】本発明の第8の実施の形態の磁気検出素子の断
面図、
【図9】本発明の第9の実施の形態の磁気検出素子の断
面図、
【図10】本発明の磁気検出素子のフリー磁性層の平面
図、
【図11】本発明の第10の実施の形態の磁気検出素子
の断面図、
【図12】本発明の磁気検出素子の製造方法の実施の形
態を示す一工程図、
【図13】本発明の磁気検出素子の製造方法の実施の形
態を示す一工程図、
【図14】本発明の磁気検出素子の製造方法の実施の形
態を示す一工程図、
【図15】本発明の磁気検出素子の製造方法の実施の形
態を示す一工程図、
【図16】本発明の磁気検出素子の製造方法の実施の形
態を示す一工程図、
【図17】本発明の磁気検出素子の製造方法の実施の形
態を示す一工程図、
【図18】従来の磁気検出素子の断面図、
【図19】従来の磁気検出素子の製造方法を示す一工程
図、
【図20】従来の磁気検出素子の断面図、
【符号の説明】
20 下部シールド層 21 下地層 22 シード層 23 第2反強磁性層 24 強磁性層 25 非磁性層 26、60 フリー磁性層 27 非磁性材料層 28 固定磁性層 29 第1反強磁性層 30 保護層 31 上部シールド層 32 絶縁層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) H01L 43/10 H01L 43/10 43/12 43/12 Fターム(参考) 5D034 BA03 DA07 5E049 AA04 AA09 AC05 BA16 CB02 DB12

Claims (36)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 第1反強磁性層と、この第1反強磁性層
    によって磁化方向が固定された固定磁性層、非磁性材料
    層、及び外部磁界により磁化方向が変化するフリー磁性
    層を有する多層膜を有する磁気検出素子において、 前記固定磁性層及び前記フリー磁性層は強磁性材料から
    なる強磁性材料層を有し、 前記フリー磁性層の少なくともトラック幅領域の上層ま
    たは下層に、非磁性層を介して強磁性層及び第2反強磁
    性層が積層されており、前記第2反強磁性層との交換結
    合磁界により前記強磁性層の磁化方向が前記固定磁性層
    の磁化方向と交叉する方向へ向けられていることを特徴
    とする磁気検出素子。
  2. 【請求項2】 前記フリー磁性層は、前記強磁性層との
    前記非磁性層を介した層間結合磁界によって単磁区化さ
    れ、磁化方向が前記固定磁性層の磁化方向と交叉する方
    向へ向けられている請求項1記載の磁気検出素子。
  3. 【請求項3】 前記非磁性層が、Ru、Rh、Ir、C
    r、Re、Cuのうち1種あるいは2種以上の合金で形
    成されている請求項1または2に記載の磁気検出素子。
  4. 【請求項4】 前記非磁性層がRuによって形成され、
    膜厚が8Å〜11Å又は15Å〜21Åである請求項3
    に記載の磁気検出素子。
  5. 【請求項5】 前記非磁性層を介した前記フリー磁性層
    と前記強磁性層間の層間結合磁界の大きさが、前記第2
    反強磁性層と前記強磁性層間の交換結合磁界の大きさよ
    り小さい請求項2ないし4のいずれかに記載の磁気検出
    素子。
  6. 【請求項6】 前記強磁性層の単位面積あたりの磁気モ
    ーメントの大きさ(Ms×t)が、前記フリー磁性層の
    単位面積あたりの磁気モーメントの大きさ(Ms×t)
    よりも小さい請求項1ないし5のいずれかに記載の磁気
    検出素子。
  7. 【請求項7】 前記強磁性層の単位面積あたりの磁気モ
    ーメントの大きさ(Ms×t)に対する前記フリー磁性
    層の単位面積あたりの磁気モーメントの大きさ(Ms×
    t)の比率が、3以上で20以下の範囲である請求項6
    に記載の磁気検出素子。
  8. 【請求項8】 前記強磁性層は、前記非磁性層に接する
    側がNiFe(パーマロイ)層あるいはNiFeX(X
    はAl,Si,Ti,V,Cr,Mn,Cu,Zr,N
    b,Mo,Ru,Rh,Hf,Ta,W,Ir,Ptか
    ら選ばれる1種或いは2種以上の元素)であり、前記第
    2反強磁性層に接する側がCo(コバルト)を含む強磁
    性材料からなる層である積層構造を有する請求項1ない
    し7のいずれかに記載の磁気検出素子。
  9. 【請求項9】 前記強磁性層がNiFe(パーマロイ)
    からなる単層構造であり、膜厚が0nmより大きく3n
    m以下である請求項1ないし7のいずれかに記載の磁気
    検出素子。
  10. 【請求項10】 前記強磁性層は、CoFeCrあるい
    はCoFeからなる単層構造である請求項1ないし7の
    いずれかに記載の磁気検出素子。
  11. 【請求項11】 前記フリー磁性層には、少なくとも前
    記非磁性層に接する側に、NiFe(パーマロイ)層あ
    るいはNiFeX(XはAl,Si,Ti,V,Cr,
    Mn,Cu,Zr,Nb,Mo,Ru,Rh,Hf,T
    a,W,Ir,Ptから選ばれる1種或いは2種以上の
    元素)からなる磁性領域が存在する請求項1ないし10
    のいずれかに記載の磁気検出素子。
  12. 【請求項12】 前記フリー磁性層には、前記非磁性材
    料層に接する側にCo(コバルト)を含む強磁性材料か
    らなる磁性領域が存在する請求項11記載の磁気検出素
    子。
  13. 【請求項13】 前記Coを含む強磁性材料とは、Co
    FeあるいはCoFeCrである請求項8または12に
    記載の磁気検出素子。
  14. 【請求項14】 再生効率η(%)は、10%以上で5
    0%以下である請求項1ないし13のいずれかに記載の
    磁気検出素子。
  15. 【請求項15】 前記フリー磁性層のトラック幅領域の
    磁化方向は、外部磁界が印加されると、外部磁界が印加
    されていないときの磁化方向に対して12°以上傾く請
    求項1ないし14のいずれかに記載の磁気検出素子。
  16. 【請求項16】 前記多層膜は下から、前記第1反強磁
    性層、前記固定磁性層、前記非磁性材料層、前記フリー
    磁性層、前記非磁性層、前記強磁性層、前記第2反強磁
    性層の順序で積層されている請求項1ないし15のいず
    れかに記載の磁気検出素子。
  17. 【請求項17】 前記多層膜は下から、前記第2反強磁
    性層、前記強磁性層、前記非磁性層、前記フリー磁性
    層、前記非磁性材料層、前記固定磁性層及び前記第1反
    強磁性層の順序で積層されている請求項1ないし15の
    いずれかに記載の磁気検出素子。
  18. 【請求項18】 前記フリー磁性層は、膜厚方向の一部
    分のみがトラック幅寸法のトラック幅方向寸法を有し、
    残りの部分はトラック幅寸法より大きいトラック幅方向
    寸法を有する請求項17に記載の磁気検出素子。
  19. 【請求項19】 前記フリー磁性層は、単位面積あたり
    の磁気モーメントの大きさが異なる複数の強磁性材料層
    が、非磁性中間層を介して積層され、前記非磁性中間層
    を介して隣接する前記強磁性材料層の磁化方向が反平行
    となるフェリ磁性状態である請求項1ないし18のいず
    れかに記載の磁気検出素子。
  20. 【請求項20】 前記非磁性中間層は、Ru、Rh、I
    r、Cr、Re、Cuのうち1種あるいは2種以上の合
    金で形成されている請求項19に記載の磁気検出素子。
  21. 【請求項21】 前記複数の強磁性材料層の少なくとも
    一層を、以下の組成を有する磁性材料で形成する請求項
    19または20に記載の磁気検出素子。組成式がCoF
    eNiで示され、Feの組成比は9原子%以上17原子
    %以下で、Niの組成比は0.5原子%以上10原子%
    以下で、残りの組成比はCoである磁性材料。
  22. 【請求項22】 前記非磁性材料層に最も近い位置に積
    層された前記強磁性材料層と前記非磁性材料層との間に
    CoFe合金あるいはCoからなる中間層を形成する請
    求項19または20に記載の磁気検出素子。
  23. 【請求項23】 前記複数の強磁性材料層の少なくとも
    一層を、以下の組成を有する磁性材料で形成する請求項
    22記載の磁気検出素子。組成式がCoFeNiで示さ
    れ、Feの組成比は7原子%以上15原子%以下で、N
    iの組成比は5原子%以上15原子%以下で、残りの組
    成比はCoである磁性材料。
  24. 【請求項24】 前記複数の強磁性材料層の全ての層を
    前記CoFeNiで形成する請求項21または23に記
    載の磁気検出素子。
  25. 【請求項25】 前記多層膜の上面に上部電極層が電気
    的に接続され、前記多層膜の下面に下部電極層が電気的
    に接続され、前記多層膜の膜面と垂直方向に電流が供給
    される請求項1ないし24のいずれかに記載の磁気検出
    素子。
  26. 【請求項26】 前記多層膜が、半金属強磁性ホイスラ
    ー合金層を有する請求項1ないし25のいずれかに記載
    の磁気検出素子。
  27. 【請求項27】 前記半金属強磁性ホイスラー合金層に
    はNiFe層が接している請求項26に記載の磁気検出
    素子。
  28. 【請求項28】 前記第1反強磁性層及び前記第2反強
    磁性層が、同一の組成を有する反強磁性材料によって形
    成されている請求項1ないし27のいずれかに記載の磁
    気検出素子。
  29. 【請求項29】 前記第1反強磁性層及び/又は前記第
    2反強磁性層は、PtMn合金、または、X―Mn(た
    だしXは、Pd,Ir,Rh,Ru,Os,Ni,Fe
    のいずれか1種または2種以上の元素である)合金で、
    あるいはPt―Mn―X′(ただしX′は、Pd,I
    r,Rh,Ru,Au,Ag,Os,Cr,Ni,A
    r,Ne,Xe,Krのいずれか1種または2種以上の
    元素である)合金で形成される請求項1ないし28のい
    ずれかに記載の磁気検出素子。
  30. 【請求項30】 前記多層膜は、前記フリー磁性層の上
    側あるいは下側に前記非磁性層を介して強磁性層及び前
    記第2反強磁性層が積層され、少なくとも前記フリー磁
    性層のトラック幅方向の両側端面に非磁性材料層を介し
    て固定磁性層が形成され、前記固定磁性層上に前記1反
    強磁性層が積層された構造であり、前記第1反強磁性層
    上に電極層が形成される請求項1ないし15、19ない
    し21、23、24、26ないし29のいずれかに記載
    の磁気検出素子。
  31. 【請求項31】 以下の工程を有することを特徴とする
    磁気検出素子の製造方法。 (a)基板上に、下から第2反強磁性層、強磁性層、非
    磁性層、フリー磁性層、非磁性材料層、固定磁性層、中
    間反強磁性層及び非磁性保護層の順に積層する工程と、
    (b)第1の磁場中アニールを施して、前記第2反強磁
    性層と前記強磁性層間に交換結合磁界を発生させ、前記
    強磁性層の磁化をトラック幅方向に固定する工程と、
    (c)前記非磁性保護層を全部または一部削る工程と、
    (d)前記非磁性保護層上または中間反強磁性層上に上
    部反強磁性層を形成し、前記中間反強磁性層と前記上部
    反強磁性層を有する第1反強磁性層を形成する工程と、
    (e)第2の磁場中アニールを施し、前記第1反強磁性
    層と前記固定磁性層間に交換結合磁界を発生させ、前記
    固定磁性層の磁化を前記強磁性層の磁化方向と交叉する
    方向に固定する工程。
  32. 【請求項32】 前記非磁性保護層を、Ru、Re、P
    d、Os、Ir、Pt、Au、Rh,Cu,Crのいず
    れか1種または2種以上で形成する請求項31に記載の
    磁気検出素子の製造方法。
  33. 【請求項33】 前記(a)工程で、前記中間反強磁性
    層を10Å以上50Å以下で形成する請求項31または
    32に記載の磁気検出素子の製造方法。
  34. 【請求項34】 前記中間反強磁性層を30Å以上40
    Å以下で形成する請求項33記載の磁気検出素子の製造
    方法。
  35. 【請求項35】 前記(a)工程で、前記非磁性保護層
    を3Å以上10Å以下で形成する請求項31ないし34
    のいずれかに記載の磁気検出素子の製造方法。
  36. 【請求項36】 前記(c)工程で、前記非磁性保護層
    の膜厚が3Å以下となるまで、前記非磁性保護層を削り
    込むか、あるいは前記非磁性保護層を全て除去する請求
    項31ないし35のいずれかに記載の磁気検出素子の製
    造方法。
JP2002329144A 2001-11-19 2002-11-13 磁気検出素子及びその製造方法 Pending JP2003338644A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002329144A JP2003338644A (ja) 2001-11-19 2002-11-13 磁気検出素子及びその製造方法

Applications Claiming Priority (5)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001-352571 2001-11-19
JP2001352571 2001-11-19
JP2002-64780 2002-03-11
JP2002064780 2002-03-11
JP2002329144A JP2003338644A (ja) 2001-11-19 2002-11-13 磁気検出素子及びその製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2003338644A true JP2003338644A (ja) 2003-11-28

Family

ID=29715877

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2002329144A Pending JP2003338644A (ja) 2001-11-19 2002-11-13 磁気検出素子及びその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2003338644A (ja)

Cited By (20)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005286340A (ja) * 2004-03-30 2005-10-13 Headway Technologies Inc 磁気抵抗効果素子およびその形成方法
US7057861B2 (en) 2002-08-20 2006-06-06 Tdk Corporation Electromagnetic transducer laminate with different widths for the semi-hard magnetic layer and the first ferromagnetic layer
JP2008034857A (ja) * 2006-07-31 2008-02-14 Magic Technologies Inc 磁気トンネル接合素子およびその形成方法
JP2008103728A (ja) * 2006-10-17 2008-05-01 Magic Technologies Inc 磁気トンネル接合素子およびその製造方法
US7510787B2 (en) 2006-02-06 2009-03-31 Tdk Corporation Magneto-resistance effect element and thin-film magnetic head
US7564661B2 (en) 2005-02-23 2009-07-21 Tdk Corporation Magnetic sensing element including free layer having gradient composition and method for manufacturing the same
US7567413B2 (en) 2005-04-08 2009-07-28 Tdk Corporation Magnetic detecting element with diffusion-preventing layer between spacer Cu and magnetic layer, and method of manufacturing the same
JPWO2007126071A1 (ja) * 2006-04-27 2009-09-10 独立行政法人科学技術振興機構 磁性薄膜及びそれを用いた磁気抵抗効果素子並びに磁気デバイス
US7691215B2 (en) 2001-02-23 2010-04-06 International Business Machines Corporation Compounds and methods of fabricating compounds exhibiting giant magnetoresistance and spin-polarized tunneling
JP2011082477A (ja) * 2009-10-08 2011-04-21 Korea Advanced Inst Of Sci Technol 磁気トンネル接合デバイスおよびその製造方法
JP2015065223A (ja) * 2013-09-24 2015-04-09 株式会社東芝 半導体装置及びその製造方法
WO2018079404A1 (ja) * 2016-10-26 2018-05-03 株式会社デンソー 磁気センサおよびその製造方法
CN109560192A (zh) * 2017-09-26 2019-04-02 Tdk株式会社 层叠结构、磁阻效应元件、磁头、传感器、高频滤波器以及振荡器
WO2019064994A1 (ja) * 2017-09-27 2019-04-04 アルプスアルパイン株式会社 交換結合膜ならびにこれを用いた磁気抵抗効果素子および磁気検出装置
WO2019065690A1 (ja) * 2017-09-27 2019-04-04 アルプスアルパイン株式会社 交換結合膜ならびにこれを用いた磁気抵抗効果素子および磁気検出装置
WO2019131392A1 (ja) * 2017-12-26 2019-07-04 アルプスアルパイン株式会社 磁界印加バイアス膜ならびにこれを用いた磁気検出素子および磁気検出装置
WO2019131394A1 (ja) * 2017-12-26 2019-07-04 アルプスアルパイン株式会社 トンネル磁気抵抗効果膜ならびにこれを用いた磁気デバイス
WO2019131391A1 (ja) * 2017-12-26 2019-07-04 アルプスアルパイン株式会社 磁界印加バイアス膜ならびにこれを用いた磁気検出素子および磁気検出装置
WO2019131393A1 (ja) * 2017-12-26 2019-07-04 アルプスアルパイン株式会社 位置検出素子およびにこれを用いた位置検出装置
CN111615636A (zh) * 2018-01-17 2020-09-01 阿尔卑斯阿尔派株式会社 磁检测装置及其制造方法

Cited By (52)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7691215B2 (en) 2001-02-23 2010-04-06 International Business Machines Corporation Compounds and methods of fabricating compounds exhibiting giant magnetoresistance and spin-polarized tunneling
US8277575B2 (en) 2001-02-23 2012-10-02 International Business Machines Corporation Compounds and methods of fabricating compounds exhibiting giant magnetoresistence and spin-polarized tunneling
US7057861B2 (en) 2002-08-20 2006-06-06 Tdk Corporation Electromagnetic transducer laminate with different widths for the semi-hard magnetic layer and the first ferromagnetic layer
JP2005286340A (ja) * 2004-03-30 2005-10-13 Headway Technologies Inc 磁気抵抗効果素子およびその形成方法
JP4658659B2 (ja) * 2004-03-30 2011-03-23 ヘッドウェイテクノロジーズ インコーポレイテッド Cpp構造の磁気抵抗効果素子およびその形成方法
US7564661B2 (en) 2005-02-23 2009-07-21 Tdk Corporation Magnetic sensing element including free layer having gradient composition and method for manufacturing the same
US7567413B2 (en) 2005-04-08 2009-07-28 Tdk Corporation Magnetic detecting element with diffusion-preventing layer between spacer Cu and magnetic layer, and method of manufacturing the same
US7510787B2 (en) 2006-02-06 2009-03-31 Tdk Corporation Magneto-resistance effect element and thin-film magnetic head
JP4582488B2 (ja) * 2006-04-27 2010-11-17 独立行政法人科学技術振興機構 磁性薄膜及びそれを用いた磁気抵抗効果素子並びに磁気デバイス
JPWO2007126071A1 (ja) * 2006-04-27 2009-09-10 独立行政法人科学技術振興機構 磁性薄膜及びそれを用いた磁気抵抗効果素子並びに磁気デバイス
US8125745B2 (en) 2006-04-27 2012-02-28 Japan Science And Technology Agency Magnetic thin film, and magnetoresistance effect device and magnetic device using the same
JP2008034857A (ja) * 2006-07-31 2008-02-14 Magic Technologies Inc 磁気トンネル接合素子およびその形成方法
JP2008103728A (ja) * 2006-10-17 2008-05-01 Magic Technologies Inc 磁気トンネル接合素子およびその製造方法
US8329478B2 (en) 2009-10-08 2012-12-11 Korea Institute Of Science And Technology Magnetic tunnel junction device and method for manufacturing the same
JP2011082477A (ja) * 2009-10-08 2011-04-21 Korea Advanced Inst Of Sci Technol 磁気トンネル接合デバイスおよびその製造方法
JP2015065223A (ja) * 2013-09-24 2015-04-09 株式会社東芝 半導体装置及びその製造方法
US9349942B2 (en) 2013-09-24 2016-05-24 Kabushiki Kaisha Toshiba Semiconductor device having magnetic shield layer surrounding MRAM chip
WO2018079404A1 (ja) * 2016-10-26 2018-05-03 株式会社デンソー 磁気センサおよびその製造方法
JP2018073913A (ja) * 2016-10-26 2018-05-10 株式会社デンソー 磁気センサおよびその製造方法
CN109560192B (zh) * 2017-09-26 2022-11-25 Tdk株式会社 层叠结构、磁阻效应元件、磁头、传感器、高频滤波器以及振荡器
CN109560192A (zh) * 2017-09-26 2019-04-02 Tdk株式会社 层叠结构、磁阻效应元件、磁头、传感器、高频滤波器以及振荡器
WO2019064994A1 (ja) * 2017-09-27 2019-04-04 アルプスアルパイン株式会社 交換結合膜ならびにこれを用いた磁気抵抗効果素子および磁気検出装置
WO2019065690A1 (ja) * 2017-09-27 2019-04-04 アルプスアルパイン株式会社 交換結合膜ならびにこれを用いた磁気抵抗効果素子および磁気検出装置
CN111052424B (zh) * 2017-09-27 2024-03-08 阿尔卑斯阿尔派株式会社 交换耦合膜以及使用该交换耦合膜的磁阻效应元件及磁检测装置
JPWO2019065690A1 (ja) * 2017-09-27 2020-10-15 アルプスアルパイン株式会社 交換結合膜ならびにこれを用いた磁気抵抗効果素子および磁気検出装置
US11428757B2 (en) 2017-09-27 2022-08-30 Alps Alpine Co., Ltd. Exchange-coupling film and magnetoresistive element and magnetic detector using the same
CN111052424A (zh) * 2017-09-27 2020-04-21 阿尔卑斯阿尔派株式会社 交换耦合膜以及使用该交换耦合膜的磁阻效应元件及磁检测装置
JPWO2019064994A1 (ja) * 2017-09-27 2020-10-15 アルプスアルパイン株式会社 交換結合膜ならびにこれを用いた磁気抵抗効果素子および磁気検出装置
WO2019131393A1 (ja) * 2017-12-26 2019-07-04 アルプスアルパイン株式会社 位置検出素子およびにこれを用いた位置検出装置
JP7022764B2 (ja) 2017-12-26 2022-02-18 アルプスアルパイン株式会社 磁界印加バイアス膜ならびにこれを用いた磁気検出素子および磁気検出装置
CN111512455B (zh) * 2017-12-26 2024-04-02 阿尔卑斯阿尔派株式会社 隧道磁阻效应膜以及使用其的磁装置
CN111512455A (zh) * 2017-12-26 2020-08-07 阿尔卑斯阿尔派株式会社 隧道磁阻效应膜以及使用其的磁装置
CN111512172A (zh) * 2017-12-26 2020-08-07 阿尔卑斯阿尔派株式会社 磁场施加偏置膜及使用其的磁检测元件及磁检测装置
JPWO2019131392A1 (ja) * 2017-12-26 2020-11-19 アルプスアルパイン株式会社 磁界印加バイアス膜ならびにこれを用いた磁気検出素子および磁気検出装置
JPWO2019131394A1 (ja) * 2017-12-26 2020-11-19 アルプスアルパイン株式会社 トンネル磁気抵抗効果膜ならびにこれを用いた磁気デバイス
JPWO2019131393A1 (ja) * 2017-12-26 2020-11-19 アルプスアルパイン株式会社 位置検出素子およびにこれを用いた位置検出装置
JPWO2019131391A1 (ja) * 2017-12-26 2020-12-03 アルプスアルパイン株式会社 磁界印加バイアス膜ならびにこれを用いた磁気検出素子および磁気検出装置
JP7022766B2 (ja) 2017-12-26 2022-02-18 アルプスアルパイン株式会社 トンネル磁気抵抗効果膜ならびにこれを用いた磁気デバイス
JP7022765B2 (ja) 2017-12-26 2022-02-18 アルプスアルパイン株式会社 磁界印加バイアス膜ならびにこれを用いた磁気検出素子および磁気検出装置
CN111542937A (zh) * 2017-12-26 2020-08-14 阿尔卑斯阿尔派株式会社 位置检测元件以及使用其的位置检测装置
US11320498B2 (en) 2017-12-26 2022-05-03 Alps Alpine Co., Ltd. Magnetic-field-applying bias film, and magnetic detection element and magnetic detector including the same
US11333720B2 (en) 2017-12-26 2022-05-17 Alps Alpine Co., Ltd. Magnetic-field-applying bias film and magnetic detecting element and magnetic detection device therewith
JP7104068B2 (ja) 2017-12-26 2022-07-20 アルプスアルパイン株式会社 位置検出素子およびにこれを用いた位置検出装置
CN111512172B (zh) * 2017-12-26 2022-07-26 阿尔卑斯阿尔派株式会社 磁场施加偏置膜及使用其的磁检测元件及磁检测装置
CN111542937B (zh) * 2017-12-26 2024-04-02 阿尔卑斯阿尔派株式会社 位置检测元件以及使用其的位置检测装置
WO2019131391A1 (ja) * 2017-12-26 2019-07-04 アルプスアルパイン株式会社 磁界印加バイアス膜ならびにこれを用いた磁気検出素子および磁気検出装置
US11476413B2 (en) 2017-12-26 2022-10-18 Alps Alpine Co., Ltd. Tunnel magnetoresistance effect device and magnetic device using same
WO2019131394A1 (ja) * 2017-12-26 2019-07-04 アルプスアルパイン株式会社 トンネル磁気抵抗効果膜ならびにこれを用いた磁気デバイス
US11578996B2 (en) 2017-12-26 2023-02-14 Alps Alpine Co., Ltd. Position detection element and position detection apparatus using same
WO2019131392A1 (ja) * 2017-12-26 2019-07-04 アルプスアルパイン株式会社 磁界印加バイアス膜ならびにこれを用いた磁気検出素子および磁気検出装置
US11415644B2 (en) 2018-01-17 2022-08-16 Alps Alpine Co., Ltd. Magnetic detector and method for producing the same
CN111615636A (zh) * 2018-01-17 2020-09-01 阿尔卑斯阿尔派株式会社 磁检测装置及其制造方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4421822B2 (ja) ボトムスピンバルブ磁気抵抗効果センサ素子およびその製造方法
US7023670B2 (en) Magnetic sensing element with in-stack biasing using ferromagnetic sublayers
US8107201B2 (en) Hard bias design for extra high density recording
JP3793725B2 (ja) 磁気検出素子及びその製造方法並びに前記磁気検出素子を用いた磁気検出装置
JP3587797B2 (ja) 薄膜磁気ヘッド
JP2003338644A (ja) 磁気検出素子及びその製造方法
US6714388B2 (en) Magnetic sensing element having improved magnetic sensitivity
US20010040781A1 (en) Spin valve thin film magnetic element and thin film magnetic head
JP2003086860A (ja) 磁気検出素子及びその製造方法
JP2001216612A (ja) スピンバルブ型薄膜磁気素子およびこのスピンバルブ型薄膜磁気素子を備えた薄膜磁気ヘッド
JP2003067904A (ja) 磁気抵抗効果型磁気ヘッドおよびその製造方法
JP2003188440A (ja) 磁気検出素子
JP2003298139A (ja) 磁気検出素子
JP3670928B2 (ja) 交換結合膜と、この交換結合膜を用いた磁気抵抗効果素子、ならびに前記磁気抵抗効果素子を用いた薄膜磁気ヘッド
JP2001217480A (ja) スピンバルブ型薄膜磁気素子およびその製造方法、およびこのスピンバルブ型薄膜磁気素子を備えた薄膜磁気ヘッド
JP2003086861A (ja) 磁気検出素子及びその製造方法
JP3137598B2 (ja) 磁気抵抗効果素子、磁気変換素子および反強磁性膜
JP2002305336A (ja) スピンバルブ型薄膜素子およびその製造方法
JP3774375B2 (ja) 磁気検出素子及びその製造方法、ならびに前記磁気検出素子を用いた薄膜磁気ヘッド
JP2001345495A (ja) スピンバルブ型薄膜磁気素子およびこのスピンバルブ型薄膜磁気素子を備えた薄膜磁気ヘッド
JP3872958B2 (ja) 磁気抵抗効果素子及びその製造方法
JP3859959B2 (ja) スピンバルブ型薄膜磁気素子およびこのスピンバルブ型薄膜磁気素子を備えた薄膜磁気ヘッド
JP2004119755A (ja) 磁気検出素子及びその製造方法
JP3939519B2 (ja) 磁気検出素子及びその製造方法
JP2002151755A (ja) 磁気抵抗効果素子及びその製造方法、ならびに前記磁気抵抗効果素子を用いた薄膜磁気ヘッド

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20050425

A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A711

Effective date: 20080108

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20080111

RD02 Notification of acceptance of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422

Effective date: 20080111

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20090317

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20090721