JP2003334075A - 簡便な変異抗体の製造方法 - Google Patents

簡便な変異抗体の製造方法

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JP2003334075A
JP2003334075A JP2002145858A JP2002145858A JP2003334075A JP 2003334075 A JP2003334075 A JP 2003334075A JP 2002145858 A JP2002145858 A JP 2002145858A JP 2002145858 A JP2002145858 A JP 2002145858A JP 2003334075 A JP2003334075 A JP 2003334075A
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amino acid
mutant
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antibody
acid sequence
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JP2002145858A
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Hiroyuki Tsunoda
弘之 角田
Yoshisuke Nishi
義介 西
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Japan Tobacco Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 抗原性を有する物質との結合性が向上した変
異抗体を、効率よく取得するための方法を提供する。 【解決手段】 抗体の一のCDRに含まれるか又はその近
傍に存在する領域であって、n(nは、3≦nの整数)個の
アミノ酸残基からなる領域から選択されるm(mは、2≦m
≦n-1の整数)個のアミノ酸残基に対してk(kは、2≦k
≦20の整数)種類のアミノ酸変異が導入されるように設
計され、アミノ酸配列としてnCm×km種類の限定されたF
vレパートリーを与えうる、変異Fvライブラリーを用い
る。好ましくは、kが20であり;かつ変異が導入される
べきアミノ酸残基に対応するヌクレオチド残基としてNN
K(N=A, G, C, T; K=G, T)変異が導入されるように設
計され、塩基配列としてnCm×32m種類の限定されたFv遺
伝子レパートリーを与えうる、変異Fvライブラリーを用
いる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、抗体の改変方法に
関する。より詳細には、抗原との結合性が向上した抗体
を効率的に得るための方法に関する。本発明は、診断
薬、測定試薬、及び治療薬等として有用な抗体の改変の
際に有用な方策を提供するものであるが、特に、触媒抗
体の改変、より詳細にはプロドラッグを分解する触媒抗
体の改変の際に有用である。
【0002】
【従来の技術】現在、生体機能性素材として抗体蛋白質
はその抗原特異的結合性により、診断薬、測定試薬、治
療薬など幅広い応用がなされている。実用抗体は標的抗
原に対してより強く特異的に結合するリード(分子種)
が求められる。
【0003】その例として、触媒抗体の場合は、遷移状
態理論(酵素はその基質の遷移状態に結合し、活性化エ
ネルギーをさげることにより化学反応を促進させる)に
基づき、基質の遷移状態に似せて作製したハプテンをマ
ウス等の哺乳動物に免疫して取得する。実用化に当たっ
ての触媒抗体の問題点は、その触媒活性の低さである。
触媒活性の上昇には、遷移状態類似ハプテンに、より強
く結合する抗体を取得することが有効であると考えられ
る。
【0004】一般的に抗体にはH鎖およびL鎖に、それぞ
れ3ヶ所づつのCDR(complementarity determining regi
on;CDR1、CDR2、CDR3;抗原相補性決定領域)が存在
し、これらの構造により抗原への特異的な結合性が決定
される。すなわち、抗体の様々な抗原と特異的に結合で
きる能力は、これらのCDRを構成するアミノ酸配列の多
様性に起因する。
【0005】したがって、結合活性を高めた抗体を得る
ためには、CDRを構成するアミノ酸に対して変異を行う
ことが有効となる。CDR1、CDR2およびCDR3のいずれかに
ついて少なくとも1のアミノ酸を、他の種々のアミノ酸
へ変異させることが可能である。変異はL鎖及びH鎖のい
ずれに対して行ってもよく、両方に対して行ってもよ
い。そして、CDRに変異を導入したscFv(single chain
Fv)ライブラリーを作製し、ファージ上に提示させ(フ
ァージディスプレー法)、ハプテンに対するバイオパニ
ングを行い、結合性が強くなったクローンの選択を行う
ことができる。対象とする抗体の抗原結合に特に重要な
CDRが予め判明していれば、変異はそのCDRのアミノ酸に
対しておこなえばよい。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】各CDRは最大でも19ア
ミノ酸程度しか有していないので、構成するアミノ酸の
すべてに各々20種類のアミノ酸変異を導入することは理
論的に可能であるが、ここで重要になるのが、どのよう
な変異を任意に導入したライブラリーを作製すれば効率
よく結合性が向上したクローンを取得できるかという点
である。
【0007】我々はビタミンB6を共通の保護基とした数
種類のプロドラッグを分解するV122抗体(特願平11-305
864(特開2000-198800)の実施例3に記載された抗体。
本明細書では、「プロドラッグ分解抗体V122」というこ
ともある。)を開発した。この抗体は図1に示した遷移
状態類似ハプテンをマウスに免疫して得られたものであ
る。この抗体を例に説明すれば、V122抗体のH鎖のCDR1
には5つのアミノ酸が存在する。5ヶ所すべてに各々20種
類のアミノ酸変異を導入した場合を想定すると、205(=
3.2×106)種類のアミノ酸レパートリーが存在すること
になる。塩基配列レベルで、実際にNNK変異(N=A, G,
C, T; K=G, T)を導入した場合では、325(=3.4×107
種類の塩基配列レパートリーを含むことになる。
【0008】多数の変異体から成るライブラリーでは、
変異体数の多様性が多くなればその中に最適な強い結合
性を示すクローンが出現する可能性は上昇するが、一方
で親株と同程度の結合性を示す変異体の数も増加する。
このライブラリーを用いてバイオパニングを行うと、少
数の強い結合性を持ったクローンと多数の中程度の結合
性を持ったクローンが競合することになる。バイオパニ
ングでは結合性の違いを厳密に振り分ける選択条件を設
定することが極めて困難であるため、このライブラリー
を用いて選択すると、中程度の結合性をもつ多数のクロ
ーンの一部が不特定に選択される確率が高くなり、真に
強い結合性のあるクローンが排除されてしまう可能性が
ある。さらに元々のレパートリー数が多い為、選択され
たクローン間においては、再現性のない多数のアミノ酸
配列パターンが見いだされる可能性が高く、その中か
ら、より強い結合性を持ったクローンを同定することが
困難になる。従って、この戦略では偶然性に頼った再現
性の低い結果が得られ、合理的に結合性の向上を目指し
た実験を行うことが困難になるといえる。
【0009】
【課題を解決するための手段】そこで、我々はこれに替
わる方法として、レパートリー数を抑えたライブラリー
を作製し、その中から選択された各クローンのアミノ酸
変異パターンを調べることにより、結合に重要であると
思われる優性変異のアミノ酸を確率的に判定し、優性変
異体を決定する戦略を考案した。
【0010】詳細には、今回、我々はレパートリー数を
抑えたライブラリーとして、V122のH鎖CDR1の5つのアミ
ノ酸に対して、一度に2ヶ所のアミノ酸部位にそれぞれ2
0種類のアミノ酸変異を導入し、すべての組み合わせを
カバーした2アミノ酸変異ライブラリーを作製した(図
3)。このライブラリーでは4000(=20×20×10)種類の
組み合わせのアミノ酸のレパートリーが存在し、塩基配
列レベルで考えると10240(=32×32×10)種類の塩基配
列が含まれる。元株と全く同じ配列をもつクローンが含
まれる割合は0.25%(1/20×1/20)程度に抑えられてい
ると計算された。
【0011】そして、優性変異の判定方法としては、蛋
白質における進化の過程を歩行者の蛋白質配列空間にお
ける登山に例えた適応歩行の概念を利用した。一般的に
蛋白質のfitness landscape(適応度地型)は富士山型
の単峰性の山と考えられ、アミノ酸残基の置換効果には
統計的な加算性が成立していると考えられる。最も単純
な歩行法は1ヶ所のアミノ酸ごとに変異と選択の過程を
繰り返し、山を登り、最適配列を見つける方法である。
我々はこの加算性の考え方をさらに拡張的に考えて、CD
Rの5アミノ酸の置換効果を同時に評価し、最適配列を決
定する戦略をとった。より詳細には、バイオパニングに
よって選択されたクローンを多数選び、それぞれのクロ
ーンについて、CDR1領域のアミノ酸の配列を調べ、5ヶ
所のアミノ酸部位についてアミノ酸の出現率を算出し
た。本ライブラリーでは変異を導入した部位における、
元のアミノ酸の出現頻度は約60%(6/10)であり、置換
されたアミノ酸の出現頻度は各アミノ酸当たり約2%(4/
10×1/20)と計算された。そして、選択後のクローンに
おけるの元のアミノ酸の出現頻度と新たに選択されたア
ミノ酸の出現頻度とをそれぞれの部位で確率的に比較す
ることにより、それぞれの部位における優性アミノ酸を
推定することができた。そして5アミノ酸部位すべてに
この推定を適用することにより、一度にこのCDR部位に
おける最適優性アミノ酸の組み合わせパターンを推定し
た。なお、本明細書でアミノ酸又はアミノ酸配列に関し
て「優性」というときは、特別な場合を除き、そのアミ
ノ酸に置換すると、もとのアミノ酸を有するものよりも
有利な効果を与える場合をいう。例えば、ハプテンへよ
り強く結合する複数のクローンをパニングにより選択し
た場合は、パニング後のクローンのアミノ酸配列を比較
して特定の位置の各アミノ酸配列の出現頻度を各々計算
し、確率的に予想される値より高い頻度で出現したアミ
ノ酸配列はその位置において優性であると判断される。
この場合において、その特定の位置においてはもとのア
ミノ酸の出現頻度が下がったが、別のアミノ酸は確率的
に予想される値より高い頻度で出現しているとき、その
別のアミノ酸配列は特に好ましい優性アミノ酸であると
判断される。
【0012】このように鋭意検討した結果、本発明を完
成した。すなわち、本発明は、レパートリー数を抑えた
変異ライブラリーの設計方法、そのような設計方法によ
り作製されたライブラリー、ライブラリーに関連した優
性変異体の決定方法を提供する。本発明はまた、変異抗
体の設計方法、及びその設計方法を利用した変異抗体の
製造方法、並びにそれらの設計方法又は製造方法により
得られた変異抗体を提供する。詳細には以下のとおりで
ある。
【0013】本発明は、抗体の一のCDRに含まれるか又
はその近傍に存在する領域であって、n(nは、3≦nの整
数)個のアミノ酸残基からなる領域から選択されるm(m
は、2≦m≦n-1の整数)個のアミノ酸残基に対してk(k
は、2≦k≦20の整数)種類のアミノ酸変異が導入される
ように設計され、アミノ酸配列としてnCm×km種類の限
定されたFvレパートリーを与えうる、変異Fvライブラリ
ーを提供する。例えば、5アミノ酸残基からなる領域の
任意の2ヶ所に20種類のアミノ酸変異が導入されるとす
ると、本発明のライブラリーでは、理論上、5C2×202=5
P2/2!×202=(5×4)/(2×1)×20×20=4000種類の組
み合わせのアミノ酸のレパートリーが存在することとな
る。なお、本発明でいう「与えうる」とは、「理論上与
える」ことをいう。また、本明細書でアミノ酸配列又は
塩基配列に関連して「変異」というときは、そのアミノ
酸残基又はヌクレオチド残基を欠失、置換、付加又は挿
入することにより変化させることをいうが、好ましくは
そのアミノ酸残基又はヌクレオチド残基を、一のアミノ
酸残基又はヌクレオチド残基(他のアミノ酸残基又はヌ
クレオチド残基である場合と、置換前のアミノ酸残基又
は塩基配列ヌクレオチド残基と同一のものである場合と
がある。)で置換することをいう。
【0014】選択したあるアミノ酸に対し、20種類のア
ミノ酸変異が導入されるように設計すること(すなわ
ち、k=20)は、本発明の好ましい態様の一つである。こ
の場合、変異が導入されるべきアミノ酸残基に対応する
ヌクレオチド残基としては、NNK(N=A, G, C, T; K=G,
T)変異が導入されるように設計するとよい。この場
合、得られるライブラリーは、塩基配列としてnCm×32m
種類の限定されたFv遺伝子レパートリーを与えうるもの
である。
【0015】本明細書でFvというときは、特に示さない
限り、抗体の可変領域(フラグメント)をいう。変異Fv
遺伝子又はFv遺伝子レパートリーには、Fvをコードする
遺伝子(Fv遺伝子)を変異させたものをいい、VL(L鎖
可変領域)をコードするボリヌクレオチド又はその変異
体とVH(H鎖可変領域)をコードするポリヌクレオチド
又はその変異体とをリンカーを介して結合させたものを
含む。変異Fvは、Fvを変異させたものをいい、変異Fv遺
伝子又はFv遺伝子レパートリーの発現により得られる蛋
白質ないしポリペプチドを含む。
【0016】本発明のレパートリー数を抑えたライブラ
リーは、元株(変異前)と比べて、それほどアミノ酸配
列に変化がないので、結合性が元株と比べて顕著に増加
したクローンは得られにくいことが考えられる。しかし
ながらレパートリー数の多いライブラリーと異なり、同
一配列を持つクローンの重複度が高いため、再現よく結
合性のあるクローンを選択できる可能性が高い。さらに
選択されてきたクローンのアミノ酸パターンも少なくな
るため、クローン間の配列の比較により容易に、パター
ンに傾向が認められるか否かの検討が可能である。
【0017】また、本発明のライブラリーは、複数のア
ミノ酸残基が置換されているレパートリーを与えうるか
ら、複数のアミノ酸残基の相互作用を加味した検討が可
能である。1アミノ酸残基のみ置換されたレパートリー
を与えうるライブラリーに比較し、相互作用が正に作用
するケースを逃さず選択できるという利点もある。
【0018】本発明のライブラリーの作製方法には、PC
Rを用いることができる。現在一般的に用いられるPCRに
よる変異導入法は、大きく分けて2つの方法が考えられ
ている。1つはDNAの断片を増幅し変異を導入する方法で
ある。これはベクター内の一部分をPCRで増幅する際にP
CR産物中に変異を導入することにより作製される。この
場合、最終的に増幅産物は制限酵素で切断して、ベクタ
ー内に組込む。適当な制限酵素部位がないときは、制限
酵素認識配列を新たにベクター内に導入する。2つめは
ベクター全体を増幅する変異導入法である。これにはIP
CR(inverse PCR)法などを利用してベクター全体を増
幅し、変異を導入する方法が知られている。IPCR法とは
環状のプラスミドに対して、プライマーを通常とは逆の
向きに隣りあわせで設計しPCRを行うことにより、結果
として、ベクター全体を増幅する方法である(図2)。
この場合、増幅したPCR産物のself ligationを行うこと
により、再び環状のベクターが作製できる。本発明のラ
イブラリーの作製には、いずれも用いることができる。
【0019】後者の方法は、制限酵素認識部位を新たに
ベクター内に導入する必要がない点で簡便であるが、環
状プラスミドを鋳型にしているため、一般にPCRの増幅
効率が悪く、しかもその後のself ligationの効率の問
題から、部位特異的変異を導入した単一のクローンを取
得する場合には用いられるが、多数のクローンを必要と
する変異導入ライブラリーの作製に用いることは困難な
ことがある。
【0020】しかしながら、本発明のレパートリー数を
抑えたライブラリーの作製にはIPCR法は好適である。特
に、数個(好ましくは、3〜10個、特に好ましくは3〜7
個)のアミノ酸残基からなる領域から選択される数個
(好ましくは、2〜6個、より好ましくは2個)のアミノ
酸残基に対してアミノ酸変異が導入されるように(好ま
しくは、変異が導入されるべきアミノ酸残基に対応する
ヌクレオチド残基としてNNK変異が導入されるように)
設計され、より限定されたレパートリーを与えうるよう
な本発明のライブラリーの作製には、IPCR法が好適であ
る。今回我々が開発した、図3に示したようなNNK変異を
導入したライブラリーの作製においてIPCR法を利用す
る、簡便で迅速なIPCR-mutagenesis法もまた、本発明の
範囲に含まれる。
【0021】本発明のライブラリーは、変異遺伝子とそ
れにより発現される蛋白質(変異Fv)とを同時にあたえ
ることができる点で、ファージディスプレーライブラリ
ーとすることが好ましい。ファージディスプレーライブ
ラリーの作製には、当業者に知られた常法を用いること
ができる。
【0022】本発明のライブラリーは、抗原性を有する
物質を用いて選別する工程を含む、変異Fvのスクリーニ
ングに用いることができる。そのようなスクリーニング
方法は、変異抗体の作製において有用であり、また、抗
体の機能改変において有用である。
【0023】本発明はまた、(1)ファージディスプレ
ー変異Fvライブラリーであって:抗体の一のCDRに含ま
れるか又はその近傍に存在する領域であって、n(nは、
3≦nの整数)個のアミノ酸残基からなる領域にアミノ酸
変異を有するような変異Fvレパートリーを与えうるもの
から、抗原性を有する物質との結合性によって選別され
た、複数のクローンの該領域のアミノ酸配列を決定し;
(2)該領域の1〜n番目のそれぞれの位置について、出
現数によって一のアミノ酸配列を選択し;そして(3)
得られたアミノ酸配列パターンを、至適な変異アミノ酸
配列とする、ことにより得られうる至適な変異アミノ酸
配列からなる領域を有する、変異抗体の作製方法をも提
供する。「出現数によって一のアミノ酸配列を選択」と
は、出現数又は出現数により計算される数(例えは、出
現率、出現頻度)を基準として一のアミノ酸配列を選択
することをいい、例えば、抗原性を有する物質との結合
性が高い変異体を得る目的で本発明を実施する場合は、
出現数の最も大きいアミノ酸を選択すること、出現数が
最大ではないが、変異前のアミノ酸より大きいアミノ酸
を選択すること、又は出現数が変異前のアミノ酸と同程
度であるか若しくは小さいが、0ではないアミノ酸を選
択することをいう。
【0024】m(mは、2≦m≦n-1の整数)個のアミノ酸
残基に対してk(kは、2≦k≦20の整数)種類のアミノ酸
変異が導入されるように設計され、アミノ酸配列として
nCm×km種類の限定された変異Fvレパートリーを与えう
るような変異抗体の作製方法は、本発明の好ましい態様
の一つである。
【0025】出現数に基づいて得られるアミノ酸配列パ
ターンを至適な変異アミノ酸配列と推定する本発明の方
法は、変異を行う領域において、位置ごとに効率的に適
応歩行を進めることを可能とする。
【0026】更に本発明は、(1)ファージディスプレ
ー変異Fvライブラリーであって:抗体の一のCDRに含ま
れるか又はその近傍に存在する領域であって、n(nは、
3≦nの整数)個のアミノ酸残基からなる領域にアミノ酸
変異を有するような変異Fvレパートリーを与えうるもの
から、抗原性を有する物質との結合性によって選別され
た、複数のクローンの該領域のアミノ酸配列を決定し;
(2)該領域の1〜n番目のそれぞれの位置について、出
現数によって一のアミノ酸配列を選択し;そして(3)
得られたアミノ酸配列パターンを、至適な変異アミノ酸
配列とする、ことにより得られうる至適な変異アミノ酸
配列からなる領域を含む、変異抗体又はその一部をも提
供する。ファージディスプレー変異Fvライブラリーが、
m(mは、2≦m≦n-1の整数)個のアミノ酸残基に対してk
(kは、2≦k≦20の整数)種類のアミノ酸変異が導入さ
れるように設計され、アミノ酸配列としてnCm×km種類
の限定された変異Fvレパートリーを与えうるものである
ような、上記変異抗体又はその一部は、本発明の好まし
い態様の一つである。また、ファージディスプレー変異
Fvライブラリーが、3〜19個のアミノ酸残基からなる領
域から選択される2〜9個のアミノ酸残基に対して8〜20
種類のアミノ酸変異が実施されるように設計され、限定
された変異Fvレパートリーを含みうるものであるよう
な、上記変異抗体又はその一部は、本発明の好ましい態
様の一つである。
【0027】本発明の変異抗体は、必ずしも完全な抗体
分子からなることは要求されない。抗体の活性中心(抗
原性を有する物質と結合に関与する部位)の一般的構造
は充分に解明されており、L鎖及びH鎖が対になって形成
したもののFabと呼ばれる部分に存在する。そして、Fab
フラグメントはそれ自体完全な抗体と同様の抗原認識能
を有している。したがって、変異抗体は、実質的に抗原
結合能を有する部分、例えばFabフラグメントであれば
良い。その他、Fv、Fab'(Fab よりも若干長いフラグメ
ント)、あるいはF(ab')2(Fab'二つがS−S結合した
もの)でもよい。「F(ab')2 」及び「Fab'」は、イム
ノグロブリン(モノクローナル抗体)をタンパク質分解
酵素であるペプシンあるいはパパイン等で処理すること
により製造され、ヒンジ領域中の2本のH鎖間に存在する
ジスルフィド結合の前後で消化されて生成される抗体フ
ラグメントを意味する。例えば、IgGをパパインで処理
すると、ヒンジ領域中の2本のH鎖間に存在するジスルフ
ィド結合の上流で切断されてVL(L鎖可変領域)とCL(L
鎖定常領域)からなるL鎖、及びVH(H鎖可変領域)とCH
γ1(H鎖定常領域中のγ1領域)とからなるH鎖フラグメ
ントがC末端領域でジスルフィド結合により結合した相
同な2つの抗体フラグメントを製造することができる。
これら2つの相同な抗体フラグメントをそれぞれFab'と
いう。また、IgGをペプシンで処理すると、ヒンジ領域
中の2本のH鎖間に存在するジスルフィド結合の下流で切
断されて前記2つのFab'がヒンジ領域でつながったもの
よりやや大きい抗体フラグメントを製造することができ
る。この抗体フラグメントをF(ab')2という。さら
に、VH鎖とVL鎖とをリンカーで結合させたscFv等や、遺
伝子操作でV領域のみを発現させたものも本発明の抗体
の一部に含まれる。このような技術常識を本明細書の開
示と組み合わせて、種々の変異抗体断片を製造すること
は、本発明の範囲内である。
【0028】本発明の抗体又はその一部は、好ましくは
反応を触媒する能力を有し;かつ抗原性を有する物質が
キャリアー蛋白質と結合したハプテンであり、該ハプテ
ンは該反応の遷移状態類似物であるようなものである。
反応を触媒する能力を有する抗体、すなわち触媒抗体に
は、エステラーゼ活性などの加水分解活性を有する抗体
の他、転移活性を有する抗体又は環状化活性を有する抗
体などが含まれる。また、触媒抗体の応用例としては、
コカインの分解に関するもの(Landry, D. W.et al.,
(1993) Science, 259, 1899-1901)や、制癌剤に関す
るもの(Campbell, D. A. et al., (1994) J. Am. Ch
em. Soc., 116, 2165-2166、Wentworth,P. et al., (1
996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 93、799-803)な
どを挙げることができる。
【0029】本発明の抗体又はその一部は、さらに好ま
しくは、エステル加水分解反応を触媒する能力を有する
ものであり、最も好ましくは、プロドラッグを分解する
能力を有するもの、例えばプロドラッグ分解抗体V122で
ある。
【0030】本発明の方法(とりわけ、NNK変異とIPCR
とを用いたIPCR-mutagenesis法)では、任意の位置に変
異を導入することが可能である。従って今回見いだされ
た優性アミノ酸を有するような変異を持つクローンをリ
ード配列として、さらに本発明の方法(例えば、IPCR-m
utagenesis法)を実施し、次のライブラリーを作製でき
る。新たなライブラリーとしては他のCDR領域へ変異を
導入(CDR-jumping)したものや、CDRの近傍へ変異を導
入(CDR-walking)したものなどが考えられる。このよ
うなライブラリーの作製に関する技術、及びこのような
ライブラリーから得られた目的の活性が更に高められた
変異抗体若しくは機能が改変された抗体又はその一部
も、本発明の範囲に含まれる。本明細書に開示された技
術は、抗体のみならず、種々の蛋白質の変異の評価や機
能改変に応用可能であろう。
【0031】
【実施例】1.材料と方法 (1) プロドラッグ分解抗体V122遺伝子の増幅 プロドラッグ分解抗体V122を産生するハイブリドーマか
らISOGEN試薬(ニッポンジーン)を用いてRNAを抽出し
た。RNA 5μg分の逆転写をFirst-Strand cDNA Synthesi
s Kit(アマシャム ファルマシア)用いて行い、cDNA
を得た。V122のH鎖並びにL鎖のV領域の増幅を行うため
に、得られたcDNAの1/2量を鋳型として、Pfu turbo pol
ymerase(Stratagene)を用いてPCRを行った。プライマ
ーにはHeavy Primer Mix 及びLight Primer Mix (アマ
シャムファルマシア)をそれぞれ使用した。PCR反応は9
4℃ 1min、55℃ 1min、72℃ 1minの条件で3Oサイクル行
った。得られたPCR産物はアガロース電気泳動で目的の
バンドの増幅を確認後、GENECLEAN II Kit(BIO 101, I
NC.)を用いて分離回収した。
【0032】(2) V122遺伝子のscFv(single chain
Fv)化 以下scFvの作製はRecombinant Phage Antibody System
RPAS mouse ScFv Module(アマシャムファルマシア)に
従って行った。始めに分離回収したV122のH鎖とL鎖のPC
R産物をリンカーを介して結合させるassembly and fill
-in反応を行った。引き続き、scFv DNAの5'末端に制限
酵素のSfiIサイト、3'末端にNotIサイトを付加させるた
めにRS Primer Mixを用いて2nd PCR反応を行った。PCR
による増幅をアガロース電気泳動で確認後、目的のバン
ドをGENECLEAN II Kitを用いて分離回収した。回収した
PCR産物はSfiIとNotIで切断し、アガロース電気泳動を
行い、同様に分離回収し、SfiIとNotIで切断されている
scFv display 用ベクターpCANTAB 5Eとligation反応を
行った。
【0033】続いて、ハプテンに結合するscFv発現クロ
ーンを得る為に、ファージディスプレーによるバイオパ
ニングを行った。始めに、パニング用のBSA(bovine se
rumalbumin)-ハプテン結合プレートを作製するため
に、BSA-ハプテン(図1)をImject SuperCarrier EDC S
ystem for Peptides(PIERCE)を用いて作製した。次に
PBS(phosphate buffered saline)に溶解したBSA-ハプ
テン溶液(2μg/ml)をE.I.A./R.I.A. 8well stripプレ
ート(CORNING COSTAR)と室温で1hr反応させることに
より、パニング用プレートを作製した。次にV122scFvを
提示する組換えファージを作製するために、先程pCANTA
B 5Eとligation反応を行ったDNA産物を大腸菌TG1にトラ
ンスフォーメションし、さらに、ヘルパーファージVCSM
13を感染させ、組換えファージを産生させた。組換えフ
ァージはPEG(polyethyleneglycol)沈殿を行い精製し
た後、160μlのSM(Suspension medium)bufferに溶解
した。さらに滅菌水で4倍希釈したブロックエース液
(大日本製薬株式会社)150μlと混合した後、パニング
用プレート上で1hr室温で反応させた。PBSで20回、さら
にPBS+0.1%Tween20(PBST)で20回洗浄した後、TG1液を
加え室温で1hrインキュベートし、ハプテンに結合した
組換えファージをTG1に感染させることにより回収し
た。さらに組換えファージを増幅するために、インキュ
ベートしたTG1液にVCSM13を感染させ、一晩培養した
後、培養上清を遠心して回収し、PEG沈殿を行った。精
製した組換えファージはさらにもう一度パニング操作を
繰り返して回収した。
【0034】この回収した組換えファージをscFv蛋白発
現用大腸菌HB2151に感染させ、Amp(アンピシリン、100
μg/ml)含有LBプレート(LBA)に播いてコロニーを形
成させた。コロニーをピックアップし、96 deep wellで
培養し、scFv蛋白を培養上清に発現させた。BSA-ハプテ
ン結合96ウェルプレートで、上清のELISAを行い、ハプ
テンに結合性のあるscFvを発現しているクローンを選別
した。選別したクローンからscFv発現ファージミドを回
収し、BigDye terminator cycle sequencingready reac
tion kit(PE Applied Biosystems)を用いてPCRを行い
蛍光シークエンサー(ABI 377)を用いてV122scFVの配
列を決定した(図4及び配列番号:1)。
【0035】(3) scFv提示ライブラリー作製用鋳型
ファージミドの作製 ライブラリー作製時に使用する鋳型となるベクターの作
製を行った。ライブラリー作製時に鋳型由来のファージ
ミドが混入して野生型の V122scFvが発現されるのを防
ぐために、V122scFvのH鎖CDR1領域にあるTyrの塩基配列
TATをQuickChange Site-Directed Mutagenesis Kit( S
TRATAGENE)を用いてTAAに変えstopコドンを導入した。
また、蛋白精製用に122scFvのC末端にHis-tag配列を導
入した。これらの配列の導入はシークエンスを行うこと
により確認した。
【0036】(4) IPCR-mutagenesis法による変異導
入scFvライブラリーの作製 1つのライブラリーにつき2ヶ所のNNK(N=A, G, C, T,;
K=G, T)を導入した2アミノ酸変異ライブラリー(図3)
を作製するために、IPCRを利用した。表1で示したIRプ
ライマーとINFプライマー各々10種類を等量ずつ混ぜたI
NFプライマー混合液の組み合わせでPCRを行った。PCRの
反応液は、鋳型V122scFvプラスミド約5ng、1×ExTaq bu
ffer、150μM各dNTP、各プライマー25pmol、ExTaq 2.5U
(TaKaRa)を含み、全量50ulでPCRを行った。反応サイ
クルは94℃ 1min後、94℃ 1min、60℃ 1min、72℃ 7min
のサイクルを25回、最後に72℃ 10minの条件で行った。
PCR後、2μl分の反応物を電気泳動し、PCR産物の増幅を
確認をした。残りのPCR産物にはDpnI 20U、T4 DNA poly
merase 2U(TaKaRa)、dNTP Mixture 2.5mM each(TaKa
Ra)を0.5μl加え、37℃で1hr反応させた。反応産物はM
icropure-EZカラム(ミリポア)で蛋白質を除去した
後、電気泳動で分離してRECOCHIP(TaKaRa)を用いて目
的のバンドを回収した。サンプルを再びEZカラムに通し
た後、エタノール沈殿を行った。なおライブラリーの作
製にはこのPCRチューブ5本分(50μl×5)のDNAを用い
た。
【0037】エタノール沈殿後の5本分のサンプルは1本
にまとめて、Self ligationを行うためにリン酸化を行
った。エタノール沈殿後のサンプルを滅菌水に溶かした
後、10×ligation buffer(ニッポンジーン)を2.5μ
l、 T4 polynucleotide kinase1U(TakaRa)を加え全量
25μlの系で37℃1hrリン酸化を行った。さらに、10×li
gation bufferを2.5μl、T4 DNA ligase(ニッポンジー
ン)を1.5μ(750U)、滅菌水21μlをリン酸化産物溶液
に加えて16℃で、約20hr以上反応させSelf ligationを
行った。ligation産物はエタノール沈殿し、10ulの滅菌
水に溶解し大腸菌にエレクトロポレーション法(GENE P
ULSER II、BIO-RAD)を用いてトランスフォームした。
トランスフォーム用コンピテントセルには大腸菌TG1株
を40μl使用した。エレクトロポレーション後の大腸菌
は一部を希釈し、LBA(LB+アンピシリン100ug/ml培地)
プレートに捲き、ライブラリーのサイズを計算した。残
りの大腸菌は15%のグリセロールを含んだ培地に懸濁
し、-80℃で保存した。
【0038】(5)scFv提示ファージの調製 作製したライブラリー1ml分のストックを9mlのCG(CIRC
LEGROW, BIO101 Systems)+Amp(アンピシリンナトリウ
ム、Wako、100ug/ml CG)培地に加え、37℃で1hr培養し
た。培養液にヘルパーファージとして4×1010CFUのVCSM
13を加え、さらに37℃で1hr培養した。遠心で上清を捨
てた後、10mlのCG+Amp+Km(カナマイシ硫酸塩、Wako、2
5μg/ml CG)に懸濁し、37℃でovernight培養した。培
養液は遠心し、上清を回収し、0.2μmのフィルターを通
して、大腸菌を取り除いた後、PEG沈殿をおこない、フ
ァージ粒子を回収し、300μlのSM buffer(Suspension
medium)に懸濁した。ファージのタイターを測定するた
めにファージ懸濁液の希釈系列を作製し、大腸菌XL1-bl
ueに感染させLB-Ampプレートに播き、Amp耐性コロニー
の数を指標として、ファージのCFU(colony forming un
ite)を測定した。
【0039】(6) バイオパニングによるBSA-ハプテ
ン結合性ファージの分離 変異導入scFv提示ファージ液500μl(5×1011CFU)に60
μlのブロックエースを加えて、室温で15分間放置し
た。次にBSA-ハプテンが結合したパニング用ウェル4ウ
ェル分に、このファージ液を加えて、室温で2hr放置
し、ファージ粒子をBSA-ハプテンに結合させた。次にPB
S(-)で20回、さらにPBSTで20回ウェルを洗浄し、非特
異的に結合したファージを洗い流した。ウェル当たり50
ulの溶出バッファー(0.1M HCl、グリシンでpH2.2に調
製+BSA1mg/ml buffer)を加え、10間室温で放置し、BS
A-ハプテンに結合したファージを溶出した。ウェル当た
り3μlの2M Trisを加えて中和した後、4ウェル分の溶液
を600μlの大腸菌TG1液に加えて室温で15分間放置し、
溶出されたファージをTG1に感染させた。次にこの菌液
に4×109のヘルパーファージVCSM13を加え、100μg/ml
のAmp、2%グルコースになるように調製して、37℃で1hr
培養した。その後遠心して上清を捨て、10mlのCG+Amp+K
mでペレットを懸濁し、37℃で一晩培養し、組換えファ
ージを作らせた。培養菌液を遠心し、上清を回収、大腸
菌を取り除くために0.22μmのフィルターに通した。さ
らにPEG沈殿を行いファージを回収し、SM buffer 600μ
lに懸濁し4℃で保存した。回収したファージ液のうち32
0μl分は4倍希釈ブロックエース液と混ぜた後、再び同
様にバイオパニングを行いさらに結合性のあるクローン
を分離するために使用した。バイオパニングの操作は合
計で4回行った。
【0040】(7) ELISAによるBSA-ハプテン結合性ク
ローンの同定 バイオパニングにより選択されたファージをクローン化
し、ハプテンへの結合性を確認した。この選択されたフ
ァージを大腸菌XL1-BLueに感染させLB-Ampプレートに播
き、コロニーを形成させた。いくつかのコロニーをウェ
ル当たり800μlのGS96(BIO101.Inc.)+Amp培地を入れ
た96well deep plate(Whatman)に播種し、37℃で振と
う培養した。培養開始約8hr後に1mMになるようにIPTGを
加え、30℃でさらに一晩培養しscFvの発現を誘導した。
また、96well deep plateに播種したコロニーはファー
ジミド分離用に同時にLBAプレートに播種しコロニーを
形成させた。ELISA反応を行うため、96well deep plate
で培養した大腸菌を遠心し、沈殿させた後、上清100ul
をBSA-ハプテン結合96ウェルプレートに加え、1hr室温
で放置した。次にプレートをPBSTで5回洗浄した後、HRP
/Anti-Etag Conjugate(アマシャム・ファルマシア)を
PBSで8000倍に希釈した溶液をウェル当たり50ul加え、
室温で30分間放置した。次に、プレートをPBSTで5回洗
浄した後、ABTS試薬(Kirkegarrd & Perry Laboratorie
s. Inc.)をウェル当たり、100ul加え、室温で約20分間
放置し発色させ、プレートレリーダー(410nm)で吸光
度の測定を行った。ELISAの値は元株であるV122scFvを
大腸菌HB2151に発現させたものを同様に測定した値を1.
0として、相対値でグラフに示した(図5)。また、ファ
ージミド分離用のプレートから各クローンのコロニーを
ピックアップし、1.5mlのCGAで培養した後、キアゲンの
Plasmid Mini Kitを用いてファージミドを精製した。各
ファージミドはpCANTAB5-R1プライマー(5'-CCATGATTAC
GCCAAGCTTTGGAGCC-3')を用いて部分シークエンスを行
い、CDR1領域の配列を決定した(図5)。
【0041】(8)scFvの精製とELISAによる結合性の測
定 RPAS Purification Module(アマシャム・ファルマシ
ア)のプロトコールに従ってscFvの精製を行った。精製
したscFvの濃度を10nMから2倍の希釈系列を作製し、BS
A-ハプテンがコートされたELISA用プレートと反応させs
cFvハプテンへの結合性を調べた。
【0042】2.結果 (1) IPCRによるベクター全体の増幅とself ligation まず始めにIPCRを行うために、NNK変異が導入されたINF
プライマー(InvertedNNK Foward primer; INF)を10種
類(INFb1〜INFb10)合成した(表1)。
【0043】
【表1】
【0044】このINFプライマー10種類を等量ずつ混合
したミックスプライマーとIRプライマー(Inverted Rev
erse primer ; IR)の組み合わせでIPCRを行った。増幅
産物を電気泳動で確認したところ、ベクターの全長と等
しい約5.3kbの位置にメインバンドが確認された(図
6)。一般的にIPCRは環状プラスミドを鋳型とするた
め、PCRの増幅効率が悪く長い距離の増幅が困難である
とされるが、Ex taq(TaKaRa)を使用したことにより、
ベクター全体を増幅することができた。
【0045】増幅されたPCR産物に、制限酵素DpnIとT4
DNA polymeraseを加え、鋳型となったファージミドの分
解と増幅産物の末端の平滑化を行った。この操作は同一
チューブ内で同時に行うことにより、作業のスピード化
と簡便化を図った。この反応産物は電気泳動後切り出
し、self ligationを行った。ligation反応と、それに
先立つPCR産物の5'末端リン酸化も同一チューブ内で連
続して行い、作業の簡便化を図ることができた。
【0046】(2) ライブラリーの作製と品質の検討 Self ligation産物を大腸菌TG1にトランスフォームして
ライブラリーを作製した。ライブラリーの品質を検討す
るために、一部のクローンからファージミドを分離精製
し、CDR1部分のシークエンスを行った。
【0047】今回のIPCRは通常の1塩基置換の部位特異
的変異導入と異なり、NNK変異である3塩基置換を2ヶ所
に導入しているため、INFプライマーを取り込んで増幅
したPCR産物はNNK部位でミスマッチが起こる(図2)。
従ってself ligation後の最終産物においてdeletion等
が起きたクローンの出現頻度が上昇する可能性が考えら
れる。シークエスの結果、平均50%(11/22)のクローン
で正確なself ligationが行われていることが判明し
(表2A)、大幅なdeletionクローンの増加は見られなか
った。欠失が起こったクローンではCDR1付近の小さな欠
出が目立った(表2B)。これらのクローンではINFプラ
イマー内の配列で欠失が見られたことから(data not s
hown)、NNK部位のミスマッチが原因で起こった欠失で
ある可能性が示唆された。
【0048】次にライブラリー内のアミノ酸変異導入位
置に偏りがないか検討した。各クローンが何番目のINF
プライマーに由来する増幅産物であるかを調べた。その
結果配列が解析できた11クローン中に6種類の変異位置
パターンが存在した(表2Aの最右欄)。
【0049】従って本ライブラリーはアミノ酸変異の導
入位置に極端な偏りは存在しないと考えられた。これ
は、1種類のINFプライマーごとにIPCRを行い、増幅産物
の量を比較したところ、各プライマー間で差が見られな
かったことからも支持される(data not shown)。
【0050】導入されたアミノ酸変異の出現頻度も検討
した。NNK配列を導入すると、理論的には32通りの塩基
配列の組み合わせで20種類のアミノ酸の発現をカバーす
ることになるため、アミノ酸の種類により出現する頻度
が異なる。シークエンスの結果から、今回作製したライ
ブラリーはNNK配列で見られる本来のアミノ酸出現頻度
に近い頻度で導入されていることが確認された(表2
C)。
【0051】
【表2】
【0052】本ライブラリーのサイズを調べたところ1.
4×105個のクローンを有していることが判った。今回の
ライブラリーでは正常なself ligationがおこる頻度が
約50%であった為に、1.4×105×0.5(正常self ligati
on率)=7×104の正常クローンが存在する計算になる。
NNK変異を2ヶ所入れたライブラリーの場合、塩基配列レ
ベルで考えると32(NNK)×32(NNK)×10(INFb 1〜1
0)=10240通りの組み合わせが存在する。従って、本ラ
イブラリーは約7倍(7×104/10240)で全配列パターン
をカバーしてる計算になり、十分なレパートリー数を保
っていることが判明した。
【0053】(3) バイオパニングによる結合クロー
ンの選択 次に本ライブラリーからの選択が実際に結合活性を向上
させる優性変異体を取得する戦略に有効な手段となり得
るかどうか検討した。本ライブラリーからscFv提示ファ
ージを調製し、BSA-ハプテンに対するバイオパニングを
行い、ハプテンに結合するクローンを取得した。パニン
グ操作を4回繰り返した後、クローンを回収し、シーク
エンスを行った(41クローン)。その結果、図5に示す
ようなクローンを得ることができた。
【0054】同一のH鎖CDR1アミノ酸配列を持つクロー
ンが2つ以上回収されたものが5種類見つかった。特にア
ミノ酸部位1番目(Ser)のSer→Arg変異体は13クローン
が出現し、全体の約3割を占めていた。また、これにア
ミノ酸部位3番目(Val)のVal→Gly変異が加わった2重
変異体も7クローン出現しており、2つの変異体で全体の
49%を占めた。この2種類のクローンでは野生型より、EL
ISAの値が大きいクローンも見られ、ハプテンへの結合
性が高い変異体であることが予想された。
【0055】これ以外に、1クローンのみが出現したVal
→Gly変異体、Ser→Arg+Val→Arg2重変異体、アミノ酸
部位4番目(Met)のMet→Val変異体などが野生型より高
いELISAの値を示していた。選択後に元のV122scFvと同
じ配列を持ったクローンが検出されなかったことから
も、これらの変異体はハプテンへの結合性が高いクロー
ンであることが推定された。
【0056】なおCDR1の配列が同一のクローン間でELIS
Aの値にばらつきがある原因としては、大腸菌上清をELI
SAに使用しているため、scFvの発現量にクローン間でば
らつきがあった可能性が考えられる。またIPCRを行った
際のPCRエラーにより、CDR1以外に変異が入ったクロー
ンが混在している可能性も考えられる。
【0057】(4) 優性アミノ酸変異の推定 パニング後シークエンスしたCDR1領域のアミノ酸の出現
数を5ヶ所のアミノ酸ごとに別個に考え、優性アミノ酸
の推定を行った。V122抗体のH鎖CDR1配列(Ser-Val-Tyr
-Met-His)である5つのアミノ酸の本ライブラリーにお
ける出現頻度は確率的にそれぞれSerが約64%[(6/10)+
(4/10)×(3/32)]、Valは約63%、Tyr、Met及びHisは
約61%である。パニング後のクローン間でこれらのアミ
ノ酸の出現頻度がこの値より高く保存されている場合、
これらのアミノ酸はパニングにより選択された優性アミ
ノ酸であると判断できる。一方、これらの元の配列の出
現頻度が下がり、なおかつ、出現頻度が確立的に予想さ
れる出現頻度よりも明らかに上がった新たなアミノ酸が
出現した場合、このアミノ酸はハプテンへの結合に関し
て優性なアミノ酸であると判断できる。
【0058】パニング後シークエンスしたCDR1領域のア
ミノ酸出現数を5ヶ所のアミノ酸について、各アミノ酸
ごとに表3に示した。元株であるV122scFvの配列である2
番目のTyr、4番目のMet、5番目のHisはパニング後でも
高頻度に保存されていることが判明した。それぞれの出
現頻度は、Tyr 85%(35/41)、Met 95%(39/41)、His
100%(41/41)であった。よってこれらアミノ酸はV122
抗体のハプテンへの結合に優性なアミノ酸として選択さ
れたと推定できた。
【0059】
【表3】
【0060】一方で、1番目のSerは出現頻度が20%(8/
41)に留まった。代わりに、Arg(22/41、約54%)やAmb
er変異(11/41、約27%)などが予想される確率より高頻
度に出現していた(Amber stopコドンはELISA時のscFv
発現用大腸菌にsupE株であるXL1-Blueを使用しているた
め、stopコドンの代わりにGluが挿入されていると考え
られる)。3番目のValでも同様に出現頻度は46%(19/4
1)に留まり、Gly(20/41,約49%)が予想値より高頻度
に出現していた。以上のことから、1番目のSerや3番目
のValは結合性に関して中立的なアミノ酸である可能性
が示唆された。さらに1番目ではArg,3番目ではGlyが高
い出現頻度で検出されたことから、新たにパニングによ
り選択さた優性アミノ酸である可能性が示唆された。
【0061】Arg及びGlyの配列を有するクローンとして
は、Ser→Arg単独変異体、Val→Gly単独変異体に加えて
Ser→Arg+Val→Glyの2重変異体の3パターン全てが出現
した(図5)。各々のクローンではELISA値が元株より大
きなクローンも見られ、アミノ酸出現頻度から推定した
ArgとGlyがハプテンへの結合性を上昇させる優性アミノ
酸である可能性を支持する結果となった。
【0062】そこで、シークエンスの結果から優性変異
体であると予想されたArg変異体(Arg-Val-Tyr-Met-Hi
s)、Gly変異体(Ser-Gly-Tyr-Met-His)、Arg+Gly二重
変異体(Arg-Gly-Tyr-Met-His)のscFvを精製し、ELISA
を行った。その結果これらの変異体ではコントロールの
親株のV122scFvと比べて、BSA-ハプテンに対する結合性
が強いことが示唆された(図7)。特に二重変異体では
他の1アミノ酸変異体より強い結合性が見られ、アミノ
酸変異が加算的に結合性を高めている可能性を示す結果
が得られた。
【0063】3.考察 今回パニングにより選択された各クローンのアミノ酸配
列の出現頻度を比較することにより、優性アミノ酸を推
定する新たな手法の開発を行った。新たに選択されたAr
gとGlyの元のライブラリーにおける出現率はそれぞれ3.
75%[(4/10)×(3/32)]、1.25%[(4/10)×(1/32)]
となっている。従ってパニング後に濃縮がかからない場
合にはシークエンスを行った41クローン中にArgは約1.5
個、Glyは約0.5個出現する計算になる。4回パニング
後、Argは22個、Glyは20個出現したことから、これらの
アミノ酸はパニングにより濃縮がかかったものであると
判断できる。そして同時に元の配列であるSerとValの出
現頻度がそれぞれ低下したことからArgとGlyはパニング
により選択された優性アミノ酸であると判断できた。
【0064】Glyは側鎖の部分に水素原子しか持たない
ため、構造の自由度が大きく、ターン構造の先頭など主
鎖が大きく変化する部分に多く出現し、蛋白の構造に大
きく影響を与えることも知られており、興味のもたれる
ところである。
【0065】一方で1番目のSerがAmberコドンへと変化
したクローンも11個出現している。本実験では大腸菌に
サプレッサー変異株(TG1, XL1-blue)を使用している
ため、アンバーストップコドンには別のアミノ酸(Gl
u)が導入されるが、それは完全ではなく、一部はアン
バーコドンで翻訳が終了する。よって通常のコドンを使
用するより完全長のscFvが発現する量が減少する。従っ
てAmber変異を持つクローンは結合性の向上より、むし
ろ大腸菌に与える毒性が減少した結果、選択されてきた
ものである可能性がある。実際、Amber変異を持ったク
ローンのELISAの値は全般的に低く、結合活性はそれほ
ど強いものではないと予想される。
【0066】本実験での優性アミノ酸変異の推定はアミ
ノ酸の置換による結合性向上の過程が各アミノ酸部位で
独立に加算的に行われることを前提に行った。一方で複
数のアミノ酸置換の間の相互作用も完全には無視できな
いと考えられている。本ライブラリーは2アミノ酸置換
ライブラリーであるため、2つのアミノ酸間における相
互作用の結果も同時に見ていることになり、1アミノ酸
置換のライブラリーと比べて相互作用が正に作用するケ
ースを逃さず選択できる利点がある。現時点でArgとGly
が相互作用をしているかは定かではないが、少なくとも
それぞれの単独変異体が存在することからArgとGlyが優
性変異であると推定することは問題ないと考えられる。
【0067】今回の様に人工的にNNK変異を導入した場
合、AGC(Ser)→CGG(Arg)変異に見られるように一度
に2ヶ所の塩基に変異を導入することができる。これは
生体内で見られる抗体の親和性向上の過程で見られる1
塩基ごとの変異の蓄積で起こるアミノ酸変異よりも簡単
にアミノ酸のレパートリーを増やすことができる有効な
方法である。従って本実験に用いたIPCR-mutagenesis法
とアミノ酸配列情報のみから優性アミノ酸を推定する方
法をあわせると、stepwiseに結合性を向上させる戦略に
おいて非常に威力を発揮することになる。
【0068】一般的に、環状プラスミドを鋳型とするIP
CRは、増幅効率が悪く長いDNA領域の増幅が困難であっ
た。しかし、Ex taq(TaKaRa)を使用した本プロトコー
ルでは、約5.3kbのベクター全体を増幅することができ
た。これらの増幅はPfu turboDNA polymerase(STRATAG
ENE)やKOD-Plus- polymerase(TOYOBO)を用いた系で
は成功しなかった(data not shown)。
【0069】今回のプロトコールでは表4に示したよう
に全ステップを標準3日間の操作で終了させることがで
きる。各ステップの酵素反応も1チューブ内で行えるよ
うにしているため、作業が非常に簡便化している。self
ligationの効率の問題からライブラリーのサイズは1.4
×105程度であったが、PCR産物の量を増やしてスケール
アップすることにより、さらにサイズを上げることが可
能である。従って今回の様な比較的大きなサイズを必要
としないライブラリーの作製において、制限酵素サイト
の制約を受けない本方法は非常に有用な変異導入ライブ
ラリー作製法であると考える。
【0070】
【表4】
【0071】IPCR-mutagenesis法では塩基配列の情報さ
えあれば、容易に好きな位置に、変異を導入することが
可能である。従って今回見いだされた優性アミノ酸であ
るArgやGly変異を持つクローンを鋳型にして、さらにIP
CR-mutagenesisを行い、迅速に次のライブラリーを作製
できる。新たなライブラリーとしてはCDR1領域の近傍へ
の変異導入(CDR-walking)、あるいは他のCDR領域への
変異導入(CDR-jumping)などが考えられる(図8)。従
ってNNK変異を迅速に導入できる本方法は、迅速で合理
的に、さらにはハイスループット化も念頭において結合
活性上昇抗体の取得を行える非常に有用な方法となる可
能性がある。
【0072】
【配列表】 SEQUENCE LISTING <110> Japan Tobacco Inc. <120> 簡便な変異抗体の製造方法 <130> 020483 <160> 2 <210> 1 <211> 852 <212> DNA <400> 1 gtg aaa aaa tta tta ttc gca att cct tta gtt gtt cct ttc tat gcg 48 Val Lys Lys Leu Leu Phe Ala Ile Pro Leu Val Val Pro Phe Tyr Ala 1 5 10 15 gcc cag ccg gcc atg gcc cag gtg aaa ctg cag cag tca gga cct gag 96 Ala Gln Pro Ala Met Ala Gln Val Lys Leu Gln Gln Ser Gly Pro Glu 20 25 30 ctg gta aag cct ggg gct tca gtg aag atg tcc tgc aag gct tct gga 144 Leu Val Lys Pro Gly Ala Ser Val Lys Met Ser Cys Lys Ala Ser Gly 35 40 45 tac aca ttc act agc tat gtt atg cac tgg gtg aag cag aag cct ggg 192 Tyr Thr Phe Thr Ser Tyr Val Met His Trp Val Lys Gln Lys Pro Gly 50 55 60 cag ggc ctt gag tgg att gga tat gtt aat cct tac aat gat ggt att 240 Gln Gly Leu Glu Trp Ile Gly Tyr Val Asn Pro Tyr Asn Asp Gly Ile 65 70 75 80 aac tac aat gag aag ttc aaa ggc aag gcc aca ctg act tca gac aaa 288 Asn Tyr Asn Glu Lys Phe Lys Gly Lys Ala Thr Leu Thr Ser Asp Lys 85 90 95 tcc tcc agc aca gcc tac atg gag ctc agc agc ctg acc tct gac gac 336 Ser Ser Ser Thr Ala Tyr Met Glu Leu Ser Ser Leu Thr Ser Asp Asp 100 105 110 tct gcg gtc tat tac tgt gca aga aag ggt ttg gac tat tgg ggc caa 384 Ser Ala Val Tyr Tyr Cys Ala Arg Lys Gly Leu Asp Tyr Trp Gly Gln 115 120 125 ggg acc acg gtc acc gtc tcc tca ggt gga ggc gct tca ggc gga ggt 432 Gly Thr Thr Val Thr Val Ser Ser Gly Gly Gly Ala Ser Gly Gly Gly 130 135 140 ggc tct ggc ggt ggc gga tcg gac atc gag ctc act cag tct cca aaa 480 Gly Ser Gly Gly Gly Gly Ser Asp Ile Glu Leu Thr Gln Ser Pro Lys 145 150 155 160 ttc atg tcc aca tca gta gga gac agg gtc agc gtc acc tgc aag gcc 528 Phe Met Ser Thr Ser Val Gly Asp Arg Val Ser Val Thr Cys Lys Ala 165 170 175 agt cag ttt gtg ggt act tat gta gcc tgg tat caa cag aaa cca gga 576 Ser Gln Phe Val Gly Thr Tyr Val Ala Trp Tyr Gln Gln Lys Pro Gly 180 185 190 caa tct cct aaa gca ctg att tac tcg gca tcc acc cgg cgc act gga 624 Gln Ser Pro Lys Ala Leu Ile Tyr Ser Ala Ser Thr Arg Arg Thr Gly 195 200 205 gtc cct gat cgc ttc aca ggc agt gga tct ggg aca gat ttc act ctc 672 Val Pro Asp Arg Phe Thr Gly Ser Gly Ser Gly Thr Asp Phe Thr Leu 210 215 220 acc att agc aat gtg cag tct gaa gac ttg gca gag tat ttc tgt gag 720 Thr Ile Ser Asn Val Gln Ser Glu Asp Leu Ala Glu Tyr Phe Cys Glu 225 230 235 240 caa tac agc agc tct ccg tat acg ttc gga tcg ggc acc aag ctg gaa 762 Gln Tyr Ser Ser Ser Pro Tyr Thr Phe Gly Ser Gly Thr Lys Leu Glu 245 250 255 atc aaa cgg gcg gcc gca ggt gcg ccg gtg ccg tat ccg gat ccg ctg 816 Ile Lys Arg Ala Ala Ala Gly Ala Pro Val Pro Tyr Pro Asp Pro Leu 260 265 270 gaa ccg cgt gcc gca cat cac cat cac cat cac tag 852 Glu Pro Arg Ala Ala His His His His His His * 275 280 <210> 2 <211> 283 <212> PRT <400> 2 Val Lys Lys Leu Leu Phe Ala Ile Pro Leu Val Val Pro Phe Tyr Ala 1 5 10 15 Ala Gln Pro Ala Met Ala Gln Val Lys Leu Gln Gln Ser Gly Pro Glu 20 25 30 Leu Val Lys Pro Gly Ala Ser Val Lys Met Ser Cys Lys Ala Ser Gly 35 40 45 Tyr Thr Phe Thr Ser Tyr Val Met His Trp Val Lys Gln Lys Pro Gly 50 55 60 Gln Gly Leu Glu Trp Ile Gly Tyr Val Asn Pro Tyr Asn Asp Gly Ile 65 70 75 80 Asn Tyr Asn Glu Lys Phe Lys Gly Lys Ala Thr Leu Thr Ser Asp Lys 85 90 95 Ser Ser Ser Thr Ala Tyr Met Glu Leu Ser Ser Leu Thr Ser Asp Asp 100 105 110 Ser Ala Val Tyr Tyr Cys Ala Arg Lys Gly Leu Asp Tyr Trp Gly Gln 115 120 125 Gly Thr Thr Val Thr Val Ser Ser Gly Gly Gly Ala Ser Gly Gly Gly 130 135 140 Gly Ser Gly Gly Gly Gly Ser Asp Ile Glu Leu Thr Gln Ser Pro Lys 145 150 155 160 Phe Met Ser Thr Ser Val Gly Asp Arg Val Ser Val Thr Cys Lys Ala 165 170 175 Ser Gln Phe Val Gly Thr Tyr Val Ala Trp Tyr Gln Gln Lys Pro Gly 180 185 190 Gln Ser Pro Lys Ala Leu Ile Tyr Ser Ala Ser Thr Arg Arg Thr Gly 195 200 205 Val Pro Asp Arg Phe Thr Gly Ser Gly Ser Gly Thr Asp Phe Thr Leu 210 215 220 Thr Ile Ser Asn Val Gln Ser Glu Asp Leu Ala Glu Tyr Phe Cys Glu 225 230 235 240 Gln Tyr Ser Ser Ser Pro Tyr Thr Phe Gly Ser Gly Thr Lys Leu Glu 245 250 255 Ile Lys Arg Ala Ala Ala Gly Ala Pro Val Pro Tyr Pro Asp Pro Leu 260 265 270 Glu Pro Arg Ala Ala His His His His His His 275 280
【図面の簡単な説明】
【図1】 BSA-ハプテンの構造式。我々はビタミンB6を
共通の保護基とした数種類のプロドラッグを分解する、
V122触媒抗体を開発した。この抗体はBSAに結合したこ
の遷移状態類似ハプテン(4−(N−アセチルアミノメチ
ル)−5−(ヒドロキシメチル)−2−メチル−3−ピリ
ジル ヒドロジェン 5−カルボキシペンチルホスホナ
ート)をマウスに免疫して得られた。
【図2】 IPCR-mutagenesis法によるNNK変異の導入。
実施例においては、IPCR法を利用してライブラリーを作
製した。また、通常の1塩基置換の部位特異的変異導入
と異なり、NNK(N=A, G, C, T,; K=G, T)変異である3
塩基置換を2ヶ所に導入した。INFプライマー(Inverted
NNK Foward primer)を取り込んで増幅したPCR産物はN
NK部位でミスマッチが起こる。
【図3】 ライブラリーの変異導入部位。実施例におい
ては、V122触媒抗体のH鎖CDRの5アミノ酸残基のうち、
この図に示したように、2ヶ所にNNKを導入した2アミノ
酸変異ライブラリーを設計した。
【図4】 V122scFVの配列。実施例において作製したラ
イブラリーから、ハプテンに結合性のあるscFvを発現し
ているクローンを選別した。得られたV122scFVの配列
は、この図に示したようなものであった。
【図5】 パニング後の各クローンのCDR1部位の配列と
ELISAの値。ELISAの値は、元株であるV122scFvを大腸菌
HB2151に発現させたものを同様に測定した値を1.0とし
て、相対値でグラフに示した。
【図6】 IPCR産物のアガロース電気泳動図。INFプラ
イマー10種類を等量ずつ混合したミックスプライマーと
IRプライマー(Inverted Reverse primer ;IR)の組み
合わせでIPCRを行った。増幅産物を電気泳動で確認した
ところ、ベクターの全長と等しい約5.3kbの位置にメイ
ンバンドが見られ、ベクター全体の増幅が確認できた。
【図7】 パニング後のクローンのELISA。実施例のシ
ークエンスの結果から優性変異体であると予想された3
つの変異体のscFvを精製し、ELISAを行った結果、これ
らの変異体ではコントロールの親株のV122scFvと比べ
て、BSA-ハプテンに対する結合性が強いことが示され
た。
【図8】 IPCR-mutagenesis法による加算的な結合性向
上クローン取得の戦略。本発明のIPCR-mutagenesis法
(NNK変異と、IPCR法とを利用した、迅速簡易な変異の
導入方法)で見いだされた優性アミノ酸を持つクローン
を鋳型にして、さらにIPCR-mutagenesisを行い、迅速に
次のライブラリーを作製し、さらに結合性の上昇したク
ローンを取得できる。新たなライブラリーとしてはCDR1
領域の近傍への変異導入(CDR-walking)、あるいは他
のCDR領域への変異導入(CDR-jumping)などが考えられ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4B024 AA01 AA11 BA43 CA04 CA11 HA15 4B050 CC04 DD07 LL01 LL03 4B064 AG27 CA19 CC24 DA01 DA13 4H045 AA11 AA20 BA10 CA40 DA76 EA50 FA74

Claims (16)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 抗体のひとつのCDRに含まれるか又はそ
    の近傍に存在する領域であって、n(nは、3≦nの整数)
    個のアミノ酸残基からなる領域から選択されるm(mは、
    2≦m≦n-1の整数)個のアミノ酸残基に対してk(kは、2
    ≦k≦20の整数)種類のアミノ酸変異が導入されるよう
    に設計され、アミノ酸配列としてnCm×km種類の限定さ
    れたFvレパートリーを与えうる、変異Fvライブラリー。
  2. 【請求項2】 kが20であり;かつ変異が導入されるべ
    きアミノ酸残基に対応するヌクレオチド残基としてNNK
    (N=A, G, C, T; K=G, T)変異が導入されるように設計
    され、塩基配列としてnCm×32m種類の限定されたFv遺伝
    子レパートリーを与えうる、変異Fvライブラリー。
  3. 【請求項3】 nが、3≦n≦10であり;mが2であり;か
    つIPCR法を利用して作製された、請求項2に記載のライ
    ブラリー。
  4. 【請求項4】 変異Fvレパートリーをファージに提示さ
    せる、請求項1〜3のいずれか1項に記載のライブラリ
    ー。
  5. 【請求項5】 請求項4に記載のファージディスプレー
    変異Fvライブラリーを、抗原性を有する物質を用いて選
    別する工程を含む、変異Fvのスクリーニング方法。
  6. 【請求項6】 請求項5に記載のスクリーニング方法を
    利用した、変異抗体の作製方法。
  7. 【請求項7】 請求項5に記載のスクリーニング方法を
    利用した、抗体の機能改変方法。
  8. 【請求項8】 以下の手順により得られうる至適な変異
    アミノ酸配列からなる領域を有する、変異抗体の作製方
    法: (1)ファージディスプレー変異Fvライブラリーであっ
    て:抗体の一のCDRに含まれるか又はその近傍に存在す
    る領域であって、n(nは、3≦nの整数)個のアミノ酸残
    基からなる領域にアミノ酸変異を有するような変異Fvレ
    パートリーを与えうるものから、抗原性を有する物質と
    の結合性によって選別された、複数のクローンの該領域
    のアミノ酸配列を決定し; (2)該領域の1〜n番目のそれぞれの位置について、出
    現数によって一のアミノ酸配列を選択し;そして (3)得られたアミノ酸配列パターンを、至適な変異ア
    ミノ酸配列とする。
  9. 【請求項9】 ファージディスプレー変異Fvライブラリ
    ーが、m(mは、2≦m≦n-1の整数)個のアミノ酸残基に
    対してk(kは、2≦k≦20の整数)種類のアミノ酸変異が
    導入されるように設計され、アミノ酸配列としてnCm×k
    m種類の限定された変異Fvレパートリーを与えうるもの
    である、請求項8に記載の変異抗体の作製方法。
  10. 【請求項10】 以下の手順により得られうる至適な変
    異アミノ酸配列からなる領域を含む、変異抗体又はその
    一部: (1)ファージディスプレー変異Fvライブラリーであっ
    て:抗体の一のCDRに含まれるか又はその近傍に存在す
    る領域であって、n(nは、3≦nの整数)個のアミノ酸残
    基からなる領域にアミノ酸変異を有するような変異Fvレ
    パートリーを与えうるものから、抗原性を有する物質と
    の結合性によって選別された、複数のクローンの該領域
    のアミノ酸配列を決定し; (2)該領域の1〜n番目のそれぞれの位置について、出
    現数によって一のアミノ酸配列を選択し;そして (3)得られたアミノ酸配列パターンを、至適な変異ア
    ミノ酸配列とする。
  11. 【請求項11】 ファージディスプレー変異Fvライブラ
    リーが、m(mは、2≦m≦n-1の整数)個のアミノ酸残基
    に対してk(kは、2≦k≦20の整数)種類のアミノ酸変異
    が導入されるように設計され、アミノ酸配列としてnCm
    ×km種類の限定された変異Fvレパートリーを与えうるも
    のである、請求項10に記載の変異抗体又はその一部。
  12. 【請求項12】 ファージディスプレー変異Fvライブラ
    リーが、3〜19個のアミノ酸残基からなる領域から選択
    される2〜9個のアミノ酸残基に対して8〜20種類のアミ
    ノ酸変異が実施されるように設計され、限定された変異
    Fvレパートリーを含みうるものである、請求項10に記載
    の変異抗体又はその一部。
  13. 【請求項13】 反応を触媒する能力を有し;かつ抗原
    性を有する物質がキャリアー蛋白質と結合したハプテン
    であり、該ハプテンは該反応の遷移状態類似物である、
    請求項10〜12のいずれか1項に記載の変異抗体又はその
    一部。
  14. 【請求項14】 エステル加水分解反応を触媒する能力
    を有する、請求項13に記載の変異抗体又はその一部。
  15. 【請求項15】 プロドラッグを分解する能力を有す
    る、請求項14に記載の変異抗体又はその一部。
  16. 【請求項16】 H鎖のCDR3において1〜5個の優性アミ
    ノ酸を有する、エステル加水分解反応を触媒する能力を
    有する、変異抗体又はその一部。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009530374A (ja) * 2006-03-23 2009-08-27 バイオアークティック ニューロサイエンス アーベー 改良型プロトフィブリル選択的抗体及びその使用

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