JP2003319793A - リン脂質の塩基交換方法 - Google Patents

リン脂質の塩基交換方法

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JP2003319793A
JP2003319793A JP2003052622A JP2003052622A JP2003319793A JP 2003319793 A JP2003319793 A JP 2003319793A JP 2003052622 A JP2003052622 A JP 2003052622A JP 2003052622 A JP2003052622 A JP 2003052622A JP 2003319793 A JP2003319793 A JP 2003319793A
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Misa Shiihara
美沙 椎原
Giyourei Riyuu
暁麗 劉
Yoko Fujiwara
洋子 藤原
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Nagase Chemtex Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ホスフォリパーゼDを用いたアシルグリセロ
リン脂質のホスファチジル基転移反応において、ホスフ
ァチジルエタノールアミンを原料として用い、効率よく
ホスファチジル基転移反応を行う方法を提供すること。 【解決手段】 基質としてホスファチジルエタノールア
ミンを用い、アルコール類、含窒素アルコール類、糖
類、ポリオール類、およびヒドロキシ環状炭化水素化合
物からなる群より選ばれる受容体アルコールを、放線菌
由来のホスフォリパーゼDを触媒として反応させ、ホス
ファチジル基転移反応を進行させること。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ホスフォリパーゼ
D(以下、PLDと略す)を用いたアシルグリセロリン
脂質のホスファチジル基転移反応方法に関する。特に、
大豆もしくは卵黄などに由来する天然ホスファチジルエ
タノールアミンあるいは人工的に合成したホスファチジ
ルエタノールアミンを基質とし、アルコール類をホスフ
ァチジル基の受容体として、PLDの存在下で反応させ
る、リン脂質の塩基交換方法に関する。
【0002】
【従来の技術】PLDを用いたアシルグリセロリン脂質
のホスファチジル基転移反応が知られている。このホス
ファチジル基転移反応には、ホスファチジルコリン(以
下、PCと略す)が主に用いられ、ホスファチジルエタ
ノールアミン(以下、PEと略す)は積極的に利用され
ていない。その理由は、アシルグリセロリン脂質にPL
Dを作用させた時、PEのホスファチジル基自体が加水
分解を受け易いこと、およびPCの方がPEよりもホス
ファチジル基の転移反応を受け易いこと(例えば、非特
許文献1参照)が挙げられる。例えば、特許文献1に
は、PCを用いるホスファチジル基の転移反応が記載さ
れているが、PEは利用されていない。
【0003】PCのホスファチジル基転移反応に使用さ
れる溶媒系としては、次のような種類および組成が用い
られている。例えば、酢酸エチル/2−プロパノール/
酢酸緩衝液=45:5:25による透明な均一相(特許
文献2);ジイソプロピルエーテル/酢酸緩衝液=4
0:0.35などによる逆ミセル形成(特許文献3);
ヘキサン・アセトン混液(99〜1:1)/水系緩衝液
=100:0.1〜200(特許文献4)などである。
しかし、これらの溶媒系を用いた先行技術において、積
極的にPEを基質として利用したものはない。
【0004】一方、通常用いられているアシルグリセロ
リン脂質である大豆あるいは卵黄のレシチンの主成分は
PCおよびPEである(通常、PCの方が若干含有率が
高い)。これらの大豆あるいは卵黄レシチン中のPC含
有率を向上させた製剤が製造されている。そして、その
製造の際、副産物としてPEを主成分とするレシチンが
得られるが、前記の理由により、PLDを用いたホスフ
ァチジル基転移反応の基質には使用されていない。
【0005】
【特許文献1】特公平5−42197号公報
【特許文献2】特公平5−38594号公報
【特許文献3】特公平7−16426号公報
【特許文献4】特開2001−186898号公報
【非特許文献1】福田ら、J. Biochem.、125巻, 263-26
9頁,1999年
【0006】
【発明が解決しようとする課題】このような実状に鑑
み、本発明は、PLDの存在下、PEを基質として用
い、効率よくホスファチジル基転移反応を行う方法を提
供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前述の課
題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、反応時に使用す
る溶媒の種類や組成、および添加するPLDの量を調節
することにより、PEを基質とした場合でも、PCと同
等のホスファチジル基転移反応率が得られることを見出
し、本発明を完成するに至った。
【0008】すなわち、本発明は、ホスファチジルエタ
ノールアミンと、アルコール類、含窒素アルコール類、
糖類、ポリオール類、およびヒドロキシ環状炭化水素化
合物からなる群から選択されるアルコールとを、放線菌
由来のホスフォリパーゼDの存在下反応させる工程を含
む、リン脂質の塩基交換方法に関する。
【0009】好ましい実施態様においては、上記ホスフ
ォリパーゼDは、ストレプトマイセス属、ミクロモノス
ポラ属、ノカルディア属、ノカルディオプシス属、およ
びアクチノマデューラ属からなる群より選択される放線
菌に属する少なくとも1つの菌株に由来する。
【0010】また、好ましい実施態様においては、上記
反応は、ヘプタン:アセトン:水系溶媒を、それぞれ容
量比率で60〜90:4〜30:2〜20の割合で含む
溶媒中で行われる。あるいは、上記反応は、ヘキサン:
アセトン:水系溶媒を、それぞれ容量比率で60〜9
0:4〜30:2〜20の割合で含む溶媒中で行われ
る。
【0011】別の好ましい実施態様においては、上記ホ
スフォリパーゼDは、ホスファチジルエタノールアミン
1gあたり、20〜8000単位添加される。
【0012】本発明は、さらに、上記方法により得られ
るアシルグリセロリン脂質に関する。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明の方法で基質として用いら
れるPEは、いかなる起源のものを用いてもよい。例え
ば、大豆、卵黄、菜種、魚油、海洋藻類などが起源とし
て挙げられる。また、合成のPEも基質として用いるこ
とができる。
【0014】本発明の方法において、アルコールは受容
体として用いられる。受容体アルコールは、アルコール
類、含窒素アルコール類、糖類、ポリオール類、および
ヒドロキシ環状炭化水素化合物からなる群より選択され
る。
【0015】アルコール類としては、例えば、メタノー
ル、エタノール、プロパノール、アスコルビン酸などが
挙げられる。含窒素アルコール類としては、例えば、セ
リンなどのアミノ酸;1−アミノ−2−プロパノールな
どが挙げられる。糖類としては、例えば、アデノシン、
グアノシン、イノシン、キサントシン、デオキシアデノ
シン、デオキシグアノシンなどのヌクレオシド;グルコ
ース、トレハロース、N−アセチル−D−グルコサミン
などが挙げられる。ポリオール類としては、例えば、グ
リセロール、エチレングリコール、プロピレングリコー
ルなどが挙げられる。ヒドロキシ環状炭化水素化合物と
しては、例えば、麹酸、アルブチンなどが挙げられる。
【0016】PEと受容体アルコールとのモル比は、受
容体アルコールの種類により適宜選択する必要がある。
一般にPE1モルに対し、0.01〜100倍モルの受
容体アルコールを用いるのが適当である。
【0017】本発明の方法で用いられる放線菌は、PL
Dを生成するものであれば全て用いることができる。特
に、ストレプトマイセス(Streptomyces)属、ミクロモノ
スポーラ(Micromonospora)属、ノカルディア(Nocardia)
属、ノカルディオプシス(Nocardiopsis)属、アクチノマ
デューラ(Actinomadura)属などに属する微生物が好まし
く用いられる。より具体的には、ストレプトマイセス・
シンナモネウム(Streptomyces cinnamoneum IFO 1285
2)、ミクロモノスポラ・チヤルセア(Micromonospora ch
alcea ATCC 12452)、ノカルディア・メディテラーネイ
(Nocardia mediterranei IFO 13142)、ノカルディオプ
シス・ダソンビレイ(Nocardiopsis dassonvillei IFO 1
3908)、アクチノマデューラ・リバノチカ(Actinomadura
libanoticaIFO 14095)などが挙げられる。これらの他
にも、上記の属に属する放線菌であれば、公知の微生
物、および自然界から単離された微生物が用いられる。
また、PLDの生産性を向上させた上記微生物の変異
株、および上記微生物から単離したPLD遺伝子を同種
または異種の宿主に導入してPLDの生産性を向上させ
た菌株も、本発明の方法に使用することができる。
【0018】PLDは、通常、上記微生物を好気的に培
養して得られる。培養に用いる培地としては、微生物の
培養に通常用いられるものが使用され得る。炭素源とし
ては、例えば、ブドウ糖、ショ糖、乳糖、麦芽糖、デン
プン、デキストリン、糖蜜、グリセリンなどの同化可能
な炭水化物;炭化水素類などが使用される。窒素源とし
ては、利用可能な窒素化合物であれば特に限定されず、
例えば、コーンスチープリカー、大豆粉、小麦グルテ
ン、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、麦芽エキス、カ
ゼインなどが使用される。その他、リン酸塩、マグネシ
ウム、カルシウム、カリウム、鉄、マンガン、亜鉛など
の塩類が必要に応じて使用される。培養温度は、菌が生
育し、かつPLDが生成される範囲内で適宜採用され得
る。通常15〜40℃で培養される。培養時間は条件に
よって異なるが、PLD活性が最大となる時点で培養を
終了すればよく、通常1〜6日程度である。なお、PL
Dは菌体外に生成されるものでもよく、菌体内に生成さ
れるものでもよい。例えば、PLDを含有する培養液で
もよく、培養液あるいは培養菌体から精製した酵素であ
ってもよい。これらはいずれも本発明の方法に使用する
ことができる。
【0019】本発明の方法で用いられる放線菌由来のP
LDの使用量は、PE1gに対し、20〜8000単位
の範囲で選択することができる。なお、酵素活性の1単
位は、95%卵黄製ホスファチジルコリン(和光純薬社
製 コード169−12751)を基質とし、基質濃度
0.16%の0.2M酢酸緩衝液(pH4.0、10m
MのCaCl、1.3%のTriton X−100
を含む)を37℃にて反応させた時、1分間に1μmo
lのコリンを遊離する酵素量である。
【0020】本発明の方法においてホスファチジル基転
移反応に使用する反応溶媒は、水系溶媒と有機溶媒の両
方である。有機溶媒としては、n-ヘプタン、n-ヘキサ
ン、石油エーテル等の脂肪族炭化水素;シクロペンタ
ン、シクロヘキサン等の環状脂肪族炭化水素;ジエチル
エーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;酢酸メ
チル、酢酸エチル等のエステル類;四塩化炭素、クロロ
ホルム等のハロゲン化炭化水素類;を挙げることができ
る。水系溶媒とは、水および水性の緩衝液をいう。水と
しては、イオン交換水、精製水、または蒸留水を用いる
ことが好ましいが、水道水も使用できる。水性の緩衝液
としては、例えば、pH4〜6の酢酸緩衝液、pH7〜
8のリン酸緩衝液などが好ましく用いられる。
【0021】上記反応溶媒中の水系溶媒と有機溶媒との
混合比は、使用する有機溶媒の種類に応じて適宜選択す
ることができる。一般的には、水系溶媒:有機溶媒を容
量比率で1:0.65〜1:100の範囲で混合して用
いることができる。副反応であるPEのホスファチジル
基の加水分解反応を抑制し、目的のホスファチジル基転
移反応を効率的に行うためには、反応系内の水系溶媒の
含量を10容量%以下で行うことが好ましい。また、有
機溶媒の選択および混合比は任意に選択することができ
る。反応溶媒が、ヘプタン、アセトン、および水系溶媒
である場合、それぞれ容量比率で60〜90:4〜3
0:2〜20の割合で含有する混合溶媒を用いるのがよ
り好ましい。あるいは、反応溶媒としてヘキサン、アセ
トン、および水系溶媒を用いる場合、それぞれ容量比率
で60〜90:4〜30:2〜20の割合で含有する混
合溶媒とするのがより好ましい。あるいは、反応溶媒と
してジエチルエーテルおよび水系溶媒を用いる場合、容
量比率でそれぞれ80〜98:2〜20の割合で含む混
合溶媒とすることがより好ましい。
【0022】上記酵素反応に使用する反応溶媒中の有機
溶媒の量は、原料として用いるPE重量の5〜500容
量倍が好ましく、さらに好ましくは、10〜100容量
倍である。有機溶媒量が5容量倍未満では、原料基質を
溶解した溶液の粘度が高くなって反応効率の低下を招く
原因になり、逆に500容量倍を超えるとホスファチジ
ル基転移反応効率が悪くなる。
【0023】本発明の方法においてホスファチジル基転
移反応の温度は、10〜60℃が好ましく、25〜45
℃がより好ましい。反応の所要時間は、酵素量や反応温
度により変動するが、概ね0.5〜48時間である。本
発明の方法で使用する混合溶媒は2相系となるので、水
層と有機溶媒層とを十分に混合させるために、適宜撹
拌、振とうなどの処理を施すことが好ましい。
【0024】上記反応後、例えば、加熱などの処理でP
LDを失活させ、静置処理、遠心分離法などにより水層
を除去して有機溶媒層を得、有機溶媒を減圧下で除去す
ることによって、目的のアシルグリセロリン脂質(例え
ば、ホスファチジルセリンなど)を得ることができる。
さらに、得られたアシルグリセロリン脂質を、溶剤分
別、シリカゲル分画、高速液体クロマトグラフィーなど
の処理に供して高純度に精製することも可能である。
【0025】あるいは、上記反応後、静置処理や遠心分
離法などにより、水層と有機溶媒層とを分別し、必要に
応じて、水層にPLDや各種受容体アルコールを追加
し、新たにPEを溶解した有機溶媒に混合することによ
って、水層を繰り返してこの反応に使用することもでき
る。反応後分別された有機溶媒層から、上記と同様に目
的のアシルグリセロリン脂質を得ることができる。
【0026】
【実施例】以下に、実施例を示して本発明をさらに具体
的に説明するが、本発明はこれらに限定されることはな
い。
【0027】(実施例1)ストレプトマイセス・シンナ
モネウム IFO12852を、Tryptic SoyBro
th(Difco社製培地:本製品の使用指示に従って
調製した)中で、28℃にて約72時間、好気培養し
た。培養後、ろ過により除菌して得られた上清液を硫安
分画してPLD粗酵素品を得た。
【0028】PE0.75mg、L−セリン6.57m
g、および上記PLD粗酵素品を、ヘプタン、アセト
ン、および0.2M酢酸緩衝液(pH4.0)の混合液
450μlに添加し、30℃にて攪拌しながら2時間反
応させた。なお、ヘプタン:アセトン:0.2M酢酸緩
衝液(pH4.0)の容量比率を60〜90:4〜3
0:2〜20の範囲で、さらにPLDの添加量を0.0
6〜3単位の範囲で、それぞれ変動させ、目的とするP
Eからホスファチジルセリンへの変換率が最良となる条
件を求めた。また、比較対照として、PEの代わりにP
Cを用い、上記と同様の混合液およびPLD量の範囲内
でPCからホスファチジルセリンへの変換率が最良とな
る条件を求めた。全溶媒を減圧下にて留去し、乾燥物を
クロロホルム:アセトニトリル=7:3に溶解し、PL
Dによるホスファチジル基転移反応の生成物であるホス
ファチジルセリンの分析を、下記の条件の高速液体クロ
マトグラフ法(HPLC法)にて行った。
【0029】使用カラム…TOSOH社製 TSKgel Sil
ica-60 (4.6mmI.D.×25cm) 移動相…アセトニトリル:メタノール:リン酸=90
0:95:5(V/V/V) 流速…1.1ml/min. カラム温度…37℃ 検出…UV 210nm。
【0030】その結果、PEにおいて、変換反応の最適
条件を検討したところ、ヘプタン:アセトン:0.2M
酢酸緩衝液(pH4.0)の容量比率を78:14:8
とし、PLDを0.18単位(PE1gあたり240単
位)添加した時、PEからホスファチジルセリンへの変
換率は、最良値(62.1%)となった。比較対照であ
るPCにおいては、ヘプタン:アセトン:0.2M酢酸
緩衝液(pH4.0)の容量比率を74:19:7と
し、PLDを0.18単位(PC1gあたり240単
位)添加した時、PCからホスファチジルセリンへの変
換率は、最良値(64.3%)となった。このように最
適条件では、PEを基質とした場合、PCとほぼ同等の
変換率が得られた。
【0031】(実施例2)L−セリンの代わりにグリセ
ロール5.8mgを用いたこと以外は、実施例1と同様
に酵素反応を行った。ただし、各種リン脂質の定量分析
は、下記の条件の薄層クロマトグラフ法(TLC法)に
て行った。
【0032】 TLCプレート…Merck社製 Silica gel 60 展開溶媒…クロロホルム:石油エーテル:メタノール:酢酸:ホウ酸=40: 30:20:10:1.8(V/V/V/V/W) 展開時間…約1.5時間 検出…展開後50%硫酸を噴霧し、180〜250℃にて10分間加熱して発 色させ、高速薄層スキャナCS−920形(島津製)にて477nmでスポット を測定した。
【0033】その結果、PEにおいて、変換反応の最適
条件を検討したところ、ヘプタン:アセトン:0.2M
酢酸緩衝液(pH4.0)の容量比率を74:18:8
とし、PLDを0.12単位(PE1gあたり160単
位)添加した時、PEからホスファチジルグリセロール
への変換率は、最良値(77.5%)となった。比較対
照であるPCにおいては、ヘプタン:アセトン:0.2
M酢酸緩衝液(pH4.0)の容量比率を73:18:
9とし、PLDを0.18単位(PE1gあたり240
単位)添加した時、PCからホスファチジルグリセロー
ルへの変換率は、最良値(67.3%)となった。この
ように、PEでは、PCを基質とした場合と同等以上の
変換率が得られた。
【0034】(実施例3)L−セリンの代わりにN−ア
セチル−D−グルコサミン5.8mgを用いたこと以外
は、実施例1と同様に酵素反応を行った。ただし、各種
リン脂質の定量分析は、実施例2と同条件の薄層クロマ
トグラフ法(TLC法)にて行った。
【0035】その結果、PEにおいて、変換反応の最適
条件を検討したところ、ヘプタン:アセトン:0.2M
酢酸緩衝液(pH4.0)の容量比率を76:14:1
0とし、PLDを3.0単位(PE1gあたり4000
単位)添加した時、PEからホスファチジル−N−アセ
チル−D−グルコサミンへの変換率は、最良値(24
%)となった。比較対照であるPCにおいては、ヘプタ
ン:アセトン:0.2M酢酸緩衝液(pH4.0)の容
量比率を73:18:9とし、PLDを3.0単位(P
C1gあたり4000単位)添加した時、PCからホス
ファチジルN−アセチル−D−グルコサミンへの変換率
は、最良値(13.9%)となった。このように、PE
を基質とした場合、最適条件においてはPCと同等以上
の変換率が得られた。
【0036】(実施例4)L−セリンの代わりにL−ア
スコルビン酸6.6mgを用いたこと以外は、実施例1
と同様に酵素反応を行った。ただし、各種リン脂質の定
量分析は、下記の条件の薄層クロマトグラフ法(TLC
法)にて行った。
【0037】TLCプレート…Merck社製 Silica
gel 60 展開溶媒…クロロホルム:メタノール:28%アンモニ
ア:水=50:20:2:1(V/V/V/V) 展開時間…約1.5時間 検出…展開後50%硫酸を噴霧し、180〜250℃に
て10分間加熱して発色させ、高速薄層スキャナCS−
920形(島津製)にて477nmでスポットを測定し
た。
【0038】その結果、PEにおいて、変換反応の最適
条件を検討したところ、ヘプタン:アセトン:0.2M
酢酸緩衝液(pH4.0)の容量比率を76:14:1
0とし、PLDを3.0単位(PE1gあたり4000
単位)添加した時、PEからホスファチジル−L−アス
コルビン酸への変換率は、最良値(22.1%)となっ
た。比較対照であるPCにおいては、ヘプタン:アセト
ン:0.2M酢酸緩衝液(pH4.0)の容量比率を7
9:14:7とし、PLDを3.0単位(PC1gあた
り4000単位)添加した時、PCからホスファチジル
−L−アスコルビン酸への変換率は、最良値(23.4
%)となった。このように、PEを基質とした場合、最
適条件においてはPCとほぼ同等の変換率が得られた。
【0039】(実施例5)L−セリンの代わりにD−グ
ルコース8.6mgを用いたこと以外は、実施例1と同
様に酵素反応を行った。ただし、各種リン脂質の定量分
析は、実施例2と同条件の薄層クロマトグラフ法(TL
C法)にて行った。
【0040】その結果、PEにおいて、変換反応の最適
条件を検討したところ、ヘプタン:アセトン:0.2M
酢酸緩衝液(pH4.0)の容量比率を81:9:10
とし、PLDを0.9単位(PE1gあたり1200単
位)添加した時、PEからホスファチジル−D−グルコ
ースへの変換率は、最良値(61.8%)となった。比
較対照であるPCにおいては、ヘプタン:アセトン:
0.2M酢酸緩衝液(pH4.0)の容量比率を74:
18:8とし、PLDを0.9単位(PC1gあたり1
200単位)添加した時、PCからホスファチジル−D
−グルコースへの変換率は、最良値(60.0%)とな
った。このように、PEを基質とした場合、最適条件に
おいてはPCとほぼ同等の変換率が得られた。
【0041】(実施例6)ストレプトマイセス・シンナ
モネウム IFO 12852の代わりに、ミクロモノスポラ・チ
ヤルセア ATCC 12452、ノカルディア・メディテラーネ
イ IFO 13142、ノカルディオプシス・ダソンビレイ IFO
13908、またはアクチノマデューラ・リバノチカ IFO 1
4095を使用した以外は実施例1と同様にして、各菌株由
来のPLD粗酵素を調製した。
【0042】上記得られた各菌株由来のPLDまたは市
販のPLDを用いたこと以外は、実施例1と同様に酵素
反応を行い、それぞれ最適の条件でのPCおよびPEか
らホスファチジルセリンへの変換率を比較した。結果を
表1に示す。なお、表中の数値は、PEおよびPCから
ホスファチジルセリンへの変換率(%)を示す。
【0043】
【表1】
【0044】表1からわかるように、PEを基質とした
場合、最適条件においては、PCとほぼ同様またはそれ
以上の変換率が得られた。
【0045】(実施例7)ヘプタン、アセトン、および
0.2M酢酸緩衝液(pH4.0)の混合液の代わりに
ヘキサン、アセトン、および0.2M酢酸緩衝液(pH
4.0)の混合液を用いたこと以外は、実施例1と同様
に酵素反応を行った。なお、ヘキサン:アセトン:0.
2M酢酸緩衝液(pH4.0)の容量比率を60〜9
0:4〜30:2〜20の範囲で、さらにPLDの添加
量を0.06〜3単位の範囲で、それぞれ変動させ、目
的とするPEからホスファチジルセリンへの変換率が最
良となる条件を求めた。比較対照として、PEの代わり
にPCを用い、上記と同様の混合液およびPLD量の範
囲内でPCからホスファチジルセリンへの変換率が最良
となる条件を求めた。
【0046】その結果、PEにおいて、変換反応の最適
条件を検討したところ、ヘキサン:アセトン:0.2M
酢酸緩衝液(pH4.0)の容量比率を78:14:8
とし、PLDを0.18単位(PE1gあたり240単
位)添加した時、PEからホスファチジルセリンへの変
換率は、最良値(58.0%)となった。比較対照であ
るPCにおいては、ヘキサン:アセトン:0.2M酢酸
緩衝液(pH4.0)の容量比率を74:19:7と
し、PLDを0.18単位(PC1gあたり240単
位)添加した時、PCからホスファチジルセリンへの変
換率は、最良値(55.4%)となった。このように、
PEを基質とした場合、最適条件においてはPCとほぼ
同等の変換率が得られた。
【0047】(実施例8)PE0.75mg、L−セリ
ン6.57mg、および上記実施例7で用いたPLD
(旭化成社製)を、ジエチルエーテルおよび0.2M酢
酸緩衝液(pH4.0)の混合液450μlに添加し、
30℃にて攪拌しながら2時間反応させた。全溶媒を減
圧下にて留去し、乾燥物をクロロホルム:アセトニトリ
ル=7:3に溶解し、PLDによるホスファチジル基転
移反応の生成物であるホスファチジルセリンの分析をH
PLC法にて行った。なお、ジエチルエーテル:0.2
M酢酸緩衝液(pH4.0)の容量比率を80〜98:
2〜20の範囲で、さらにPLDの添加量を0.06〜
3単位の範囲で、それぞれ変動させ、目的とするPEか
らホスファチジルセリンへの変換率が最良となる条件を
求めた。比較対照として、PEの代わりにPCを用い、
上記と同様の混合液およびPLD量の範囲内でPCから
ホスファチジルセリンへの変換率が最良となる条件を求
めた。各種リン脂質の定量分析は、実施例1と同様の条
件で行った。
【0048】その結果、PEにおいて、変換反応の最適
条件を検討したところ、ジエチルエーテル:0.2M酢
酸緩衝液(pH4.0)の容量比率を90:10とし、
PLDを0.3単位(PE1gあたり400単位)添加
した時、PEからホスファチジルセリンへの変換率は、
最良値(80.32%)となった。比較対照であるPC
においては、ジエチルエーテル:0.2M酢酸緩衝液
(pH4.0)の容量比率を93:7とし、PLDを
0.3単位(PC1gあたり400単位)添加した時、
PCからホスファチジルセリンへの変換率は、最良値
(70.31%)となった。このように、PEを基質と
した場合、最適条件においてはPCと同等以上の変換率
が得られた。
【0049】(実施例9)PE0.75mg、L−セリ
ン6.57mg、および上記実施例1で得られたPLD
粗酵素品を、ヘプタン、アセトン、および0.2M酢酸
緩衝液(pH4.0)の混合液450μlに添加し、3
0℃にて攪拌しながら2時間反応させた。なお、ヘプタ
ン:アセトン:0.2M酢酸緩衝液(pH4.0)の容
量比率を表2のように変動させ、PLDの添加量を0.
18単位(PE1gあたり240単位)として、PEか
らホスファチジルセリンへの変換率を求めた。なお、生
成物であるホスファチジルセリンの分析は、上記実施例
1と同様の方法で行った。結果を、表2に示す。
【0050】
【表2】
【0051】表2からわかるように、ヘプタン:アセト
ン:0.2M酢酸緩衝液(pH4.0)の容量比率が6
0〜90:4〜30:2〜20の範囲にある場合は、良
好な変換率が得られた。
【0052】ヘキサン:アセトン:0.2M酢酸緩衝液
(pH4.0)の容量比率についても同様の検討を行っ
た結果、容量比率が60〜90:4〜30:2〜20の
範囲にある場合は、良好な変換率が得られた(データを
示さず)。
【0053】
【発明の効果】本発明によれば、PLDを用いたアシル
グリセロリン脂質のホスファチジル基転移反応におい
て、反応時に使用する溶媒の種類や組成、および添加す
るPLDの量を調節することにより、従来利用されてい
なかったPEを基質として用いた場合でも、PCと同等
のホスファチジル基転移反応率を得ることができる。そ
のため、効率よくホスファチジル基転移反応を行うこと
ができ、食品用途をはじめ各種産業分野において使用で
きる各種アシルグリセロリン脂質を高効率で得る生産方
法を提供できる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) (C12P 9/00 C12R 1:03 C12R 1:365) (C12P 9/00 C12R 1:01) (C12P 9/00 C12R 1:03) (72)発明者 藤原 洋子 京都府福知山市長田野町1−52 ナガセケ ムテックス株式会社福知山工場内 Fターム(参考) 4B064 AE45 AE63 AF02 AF21 CA21 CB30 CC03 CD15 DA01 DA10

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ホスファチジルエタノールアミンと、ア
    ルコール類、含窒素アルコール類、糖類、ポリオール
    類、およびヒドロキシ環状炭化水素化合物からなる群よ
    り選択されるアルコールとを、放線菌由来のホスフォリ
    パーゼDの存在下で反応させる工程を含む、リン脂質の
    塩基交換方法。
  2. 【請求項2】 前記ホスフォリパーゼDが、ストレプト
    マイセス属、ミクロモノスポラ属、ノカルディア属、ノ
    カルディオプシス属、およびアクチノマデューラ属から
    なる群より選択される放線菌に属する少なくとも1つの
    菌株に由来する、請求項1に記載の方法。
  3. 【請求項3】 前記反応が、ヘプタン:アセトン:水系
    溶媒を、それぞれ容量比率で60〜90:4〜30:2
    〜20の割合で含む溶媒中で行われる、請求項1または
    2に記載の方法。
  4. 【請求項4】 前記反応が、ヘキサン:アセトン:水系
    溶媒を、それぞれ容量比率で60〜90:4〜30:2
    〜20の割合で含む溶媒中で行われる、請求項1または
    2に記載の方法。
  5. 【請求項5】 前記ホスフォリパーゼDが、ホスファチ
    ジルエタノールアミン1gあたり、20〜8000単位
    添加される、請求項1から4のいずれかの項に記載の方
    法。
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