JP2003294903A - 防曇性反射防止膜およびこれを用いた光学部材ならびに防曇性反射防止膜形成方法 - Google Patents
防曇性反射防止膜およびこれを用いた光学部材ならびに防曇性反射防止膜形成方法Info
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Abstract
層からなる防曇性被膜を反射防止膜の最上層に形成する
ことにより、その防曇効果を長時間に亘って持続させ
る。 【構成】 ガラス基板1上に、Al2O3層2、ZrO
2層3を順次形成し、最上層としてMgF2層4を形成
してなる。3つの層2、3、4は全体として反射防止膜
5を構成しており、真空蒸着法やスパッタリング法等に
より作成される。この膜作成後、200℃のベーキング
によりガラス基板1および反射膜5に対して加熱処理を
行なう。その加熱時間はガラス基板1および反射防止膜
5中に含まれる水分が充分除去される時間とされ、例え
ば、小型レンズの場合には1時間から2時間程度で充分
である。
Description
防曇性反射防止膜およびこれを用いた光学部材ならびに
防曇性反射防止膜形成方法に関し、詳しくは、密閉され
たレンズ鏡胴の端部において、隔壁として機能する対物
レンズ等の光学部材に形成された反射防止膜の防曇機能
を高め得る防曇性反射防止膜、光学部材およびその膜形
成方法に関するものである。
が密閉空間とされたレンズ鏡胴等においては、その先端
に位置して外部との隔壁として機能する対物レンズが配
されており、その内側のレンズ面に反射防止膜が形成さ
れたものが知られている。
境の影響を受けやすく、その外界雰囲気の急激な温度変
化に伴いその内側のレンズ面が曇ることはよく知られて
いるところである。このレンズの曇りは、レンズ基板の
表面温度が露点以下まで下がったときに、密閉空間内部
の水分が微小な水滴となって対物レンズの内側の面に付
着し、光を散乱することによりおきる。この曇りは、光
学系の視野不良を引き起こし、その使用を困難なものと
するため、このような分野における防曇対策は重要であ
る。
して、レンズをその鏡胴内に組み込む工程において、作
業環境を低温、低湿(25℃30%RH以下)に保持す
るようにしたものが知られているが、その効果は満足で
きるものとはなっていなかった。
号公報に開示されているように、反射防止膜の表面に親
水性被膜を設ける方法が知られているが、このような方
法によれば、初期状態では極めて良好な防曇性を示すも
のの、時間の経過とともに急激に防曇性が劣化する。こ
れは、親水性被膜の接触角が5度以下(超親水性)なら
充分な防曇効果が得られるが、一般的な親水性被膜の接
触角は10〜20度であり、この親水性被膜の表面に水
滴の粒が付着すると、互いに寄り集まって非常に大きな
粒の水滴となり、しかも広い面積に亘って拡がろうとす
ることから、むしろ通常の曇り以上に光学性能に悪影響
を与えてしまうこととなる。
ので、密閉空間と外部との隔壁として機能する光学部材
の密閉空間側の光学面に反射防止膜が形成されたものに
おいて、従来に比して反射防止膜の防曇効果の持続性を
高めることができる防曇性反射防止膜およびこれを用い
た光学部材ならびに防曇性反射防止膜形成方法を提供す
ることを目的とするものである。
膜は、ベーキング処理がなされたMgF2からなる防曇
性被膜を最上層に設けてなることを特徴とするものであ
る。
位置し該鏡胴内を密閉空間とする隔壁として機能し、前
記防曇性反射防止膜を前記鏡胴側の光学面に形成してな
ることを特徴とするものである。
収納するレンズ鏡胴である場合に特に有効である。
は、光学基板上に積層され、最上層にMgF2被膜を備
える反射防止膜を形成し、この後150℃以上の温度で
ベーキング処理を行なって含有水分を除去することを特
徴とするものである。
は、前記反射防止膜が形成された光学部材を鏡胴内に組
み込む前に行われることが望ましい。
図面を用いて説明する。図1は、本発明の防曇性反射防
止膜をレンズ基板上に形成した様子を示すものである。
1上に、Al2O3層2、ZrO2層3を順次形成し、
最上層としてMgF2層4を形成してなる。なお、Mg
F2層4の厚みは例えば100nmとする。上記3つの
層2、3、4は全体として反射防止膜5を構成してお
り、真空蒸着法やスパッタリング法等により作成され
る。
グによりガラス基板1および反射膜5に対して加熱処理
を行なったものである。その加熱時間はガラス基板1お
よび反射防止膜5中に含まれる水分が充分除去される時
間とされ、ガラス基板1のサイズにもよるが、例えば、
小型レンズの場合には1時間から2時間程度で充分であ
る。
形成された対物レンズ10を、テレビレンズ等の撮像装
置に用いられるレンズ鏡胴20に組み込んだ様子を示す
ものである。すなわち、この対物レンズ10は、上述し
たように、反射防止膜5が形成され、ベーキングによる
加熱処理がなされた後、他の光学部材(レンズ、フィル
タ等)11、12、13とともにレンズ鏡胴20内に組
み込まれる。この組立工程においては、温度、湿度が各
々25℃、30%以下の雰囲気に保持されている。
に、レンズ鏡胴20の端部において外部との隔壁として
機能し、レンズ(光学部材)11との間に狭い密閉空間
30を形成する。上述した防曇性の反射防止膜5は、こ
の対物レンズ10がレンズ鏡胴20内に組み込まれた際
に、密閉空間30側に位置するレンズ面(以下、内側レ
ンズ面と称する)上の略全面に形成される。なお、この
対物レンズ10の内側レンズ面の外周領域にはコバ部6
が形成されており、そのコバ部6には墨塗り処理が施さ
れている。
その回りの各部材(対物レンズ10、レンズ(光学部
材)11、レンズ鏡胴20等)は、水分を完全に排除す
ることは難しく、また水分を充分に除去しても、時間の
経過と共に、上記各部材を透して内部密閉空間30内に
水分が浸入する。そして、特に対物レンズ10の外部と
接するレンズ面(以下、外側レンズ面と称する)が冷気
に触れたり、冷水を掛けられたりして表面の温度が低下
した場合には、対物レンズ10の内側レンズ面の温度が
低下し、この部分における露点が低下し、この内側レン
ズ面上に微小な水滴の粒が付着する。
経過と共にこの対物レンズ10の内側レンズ面に曇りが
生じてしてしまう。このような曇り現象は対物レンズ1
0の厚みが薄い場合に顕著である。
施して防曇性を高める技術が知られているが、親水性コ
ートの場合、親水性被膜の接触角が5度以下(超親水
性)なら充分な防曇効果が得られるが、一般的な親水性
被膜の接触角は10〜20度であり、内側レンズ面に一
旦水滴の粒が形成されると、各々の粒が寄り集まって大
きな水滴となり、しかも内側レンズ面上で拡がろうとす
る傾向があるため単なる曇りよりもさらに深刻な視界不
良を引き起こす虞があった。
想の転換により、反射防止膜5の最上層に防曇性被膜と
して機能するMgF2層4を形成し、さらに、このMg
F2層4にベーキングによる加熱処理を施すことにより
反射防止膜5の防曇効果を持続させる手法を見出した。
明されていないが、所定温度で所定時間のベーキングが
なされ、一旦水分がその空気層との界面から充分に除去
されたMgF2層4は水滴の粒を球状化し、内側レンズ
面の表面から離脱させるため、曇り現象の発生が遅延
し、また、少なくともこれら微小な水滴の粒が寄り集ま
る状態を回避し得るからではないかとも考えられる。
較することによって、その効果をより明らかにする。な
お、反射防止膜5の層構成は上記実施形態のものに限ら
れるものではなく、最上層にMgF2層4を形成するこ
とができれば種々の構成の態様が可能であり、MgF2
層4の単層とすることも可能である。
+ベーク処理 対物レンズ(ガラス基板)上にAl2O3、ZrO2の
各層を積層し、さらに最上部にMgF2層を積層し反射
防止膜を作成した。膜作成初期状態でのMgF 2層上で
の水滴の接触角は5度以下であった。
対して加熱温度200℃で1時間のベーキング処理を行
った。この処理により対物レンズ基材内および反射防止
膜内の水分除去が充分に行われた。この後、この対物レ
ンズを充分乾燥した雰囲気中(温度25℃,湿度30%
以下)でレンズ鏡胴内に組み込み、密封した。そのアッ
センブリを温度40℃,湿度90%の雰囲気中に放置し
た。放置したアッセンブリを、一旦60℃で加熱処理
し、その加熱処理がなされた対物レンズの外表面に5℃
の冷水を掛けた。その後の経過日数と曇りが生じた対物
レンズの割合の関係を調べた。なお、曇りが一部に生じ
た時点でNG品とした。
O3、ZrO2の各層を積層し、さらに最上部にMgF
2層を積層し反射防止膜を作成した。
レンズを充分乾燥した雰囲気中(温度25℃,湿度30
%以下)でレンズ鏡胴内に組み込み、密封した。そのア
ッセンブリを温度40℃,湿度90%の雰囲気中に放置
した。放置したアッセンブリを、一旦60℃で加熱処理
し、その加熱処理がなされた対物レンズの外表面に5℃
の冷水を掛けた。その後の経過日数と曇りが生じた対物
レンズの割合の関係を調べた。なお、曇りが一部に生じ
た時点でNG品とした。
各層を積層し、さらに最上部に親水性のSiO2層を積
層し反射防止膜を作成した。膜作成初期状態でのSiO
2層上の水滴の接触角は5度以下であった。
囲気中(温度25℃,湿度30%以下)でレンズ鏡胴内
に組み込み、密封した。そのアッセンブリを温度40
℃,湿度90%の雰囲気中に放置した。放置したアッセ
ンブリを、一旦60℃で加熱処理し、その加熱処理がな
された対物レンズの外表面に5℃の冷水を掛けた。その
後の経過日数と曇りが生じた対物レンズの割合の関係を
調べた。なお、曇りが一部に生じた時点でNG品とし
た。
MgF2の各層を積層し、さらに最上層にフッ素系の撥
水被膜を積層し反射防止膜を形成した。この後、この対
物レンズを充分乾燥した雰囲気中(温度25℃,湿度3
0%以下)でレンズ鏡胴内に組み込み、密封した。その
アッセンブリを温度40℃,湿度90%の雰囲気中に放
置した。放置したアッセンブリを、一旦60℃で加熱処
理し、その加熱処理がなされた対物レンズの外表面に5
℃の冷水を掛けた。その後の経過日数と曇りが生じた対
物レンズの割合の関係を調べた。なお、曇りが一部に生
じた時点でNG品とした。
%となるまでの日数を示す)に示すように、比較例2で
は、2日経過した時点で全数がNG品となり、比較例3
では、4日経過した時点で全数がNG品となり、比較例
1では、7日経過した時点で全数がNG品となった。な
お、比較例の中では防曇効果の持続性が一番高かった比
較例1のものも、2日経過した時点で40%がNG品と
なった。これに対し、本実施例のものでは、18日経過
した時点でも全数がNG品とはならず(NG発生率86
%)、NG品の発生率が40%を超えたのは10日経過
した時点であった。
効果を極めて長く維持することができるものであること
が明らかである。なお、上記経過日数に対するNG発生
率の関係をグラフに表したものを図3に示す。
反射防止膜およびこれを用いた光学部材ならびに防曇性
反射防止膜形成方法によれば、ベーキングによる加熱処
理を施したMgF2層からなる防曇性被膜を反射防止膜
の最上層に形成することにより、その防曇効果を長時間
に亘って持続させることができる。これにより、この防
曇性反射防止膜が形成された光学部材においては、曇り
現象により、その使用を中断しなければならないという
不都合を減少させることができる。
図
対物レンズをレンズ鏡胴に組み込んだ様子を示す概略図
Claims (5)
- 【請求項1】 ベーキング処理がなされたMgF2から
なる防曇性被膜を最上層に設けてなることを特徴とする
防曇性反射防止膜。 - 【請求項2】 鏡胴の端部に位置し該鏡胴内を密閉空間
とする隔壁として機能し、請求項1記載の防曇性反射防
止膜を前記密閉空間側の光学面に形成してなることを特
徴とする光学部材。 - 【請求項3】 前記鏡胴は撮像装置の撮影光学系を収納
するレンズ鏡胴であることを特徴とする請求項2記載の
光学部材。 - 【請求項4】 光学基板上に積層され、最上層にMgF
2被膜を備える反射防止膜を形成し、この後150℃以
上の温度でベーキング処理を行なって含有水分を除去す
ることを特徴とする防曇性反射防止膜形成方法。 - 【請求項5】 前記ベーキング処理は、前記反射防止膜
が形成された光学部材を鏡胴内に組み込む前に行われる
ことを特徴とする請求項4記載の防曇性反射防止膜形成
方法。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2007017591A (ja) * | 2005-07-06 | 2007-01-25 | Pentax Corp | 光学機器 |
JP2020016863A (ja) * | 2018-07-27 | 2020-01-30 | 京セラ株式会社 | 結合方法、レンズ、保持機構、カメラ装置および移動体 |
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- 2002-03-29 JP JP2002094871A patent/JP4018420B2/ja not_active Expired - Fee Related
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