JP2003293264A - 抄紙用炭素繊維、炭素繊維紙、及び炭素繊維紙の製造方法 - Google Patents

抄紙用炭素繊維、炭素繊維紙、及び炭素繊維紙の製造方法

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JP2003293264A
JP2003293264A JP2002097397A JP2002097397A JP2003293264A JP 2003293264 A JP2003293264 A JP 2003293264A JP 2002097397 A JP2002097397 A JP 2002097397A JP 2002097397 A JP2002097397 A JP 2002097397A JP 2003293264 A JP2003293264 A JP 2003293264A
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Yoshinobu Suzuki
慶宜 鈴木
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Toho Tenax Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 抄紙時には炭素繊維の分散性、取扱性に優れ
且つ均一な分散状態に早くなるスラリーが得られ、抄紙
後には均一な地合の炭素繊維紙が安定して得られる抄紙
用炭素繊維を提供する。 【解決手段】 水溶性化合物を含む収束剤が付着されて
なる抄紙用炭素繊維であって、X線光電子分光法による
炭素繊維表面近傍の炭素原子数に対する酸素原子数の比
1s/C1sが0.01〜0.20、炭素繊維の繊維長L
(μm)に対する炭素繊維の直径D(μm)の比L/D
が400〜5000であり、収束剤の量S(質量%)
と、収束剤の密度d(g/cm3)と、収束剤の分子量
Mと、炭素繊維の直径D(μm)とが、 8.1 × D2 × d/M ≦ S ≦ 30 の関係を満たす抄紙用炭素繊維。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、抄紙の際の分散性
に優れた抄紙用炭素繊維及び同炭素繊維を用いて製造す
る均一性の高い炭素繊維紙、並びに、炭素繊維紙の製造
方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】炭素繊維は、高強度であり、耐熱性、耐
食性に優れ、電気伝導性や電磁波遮蔽性があることか
ら、航空機などに用いられる複合材料の強化材、二次電
池の電極材、或は電子計算機筐体の電磁波遮蔽材として
使用されている。
【0003】通常、プリプレグはストランドと呼ばれる
連続繊維束を、一方向や複数方向に配置し、樹脂を含浸
させたシート状の材料である。従来このプリプレグを積
層し、成型、硬化させることにより複合材料を製造して
いる。
【0004】また、チョップドストランドと呼ばれる短
繊維は射出成型等で用いられており、複雑な形の複合材
料を比較的容易に得ることが可能である。
【0005】このような炭素短繊維を用いた材料として
炭素繊維紙がある。この炭素繊維紙は、電極材、面状発
熱体、或は電磁波遮蔽材料として用いられており、一般
には強度に対する要求は小さく、寧ろ電流密度が均一に
保たれ、局所電流が発生しないように炭素繊維の分散状
態の均一性が求められる。
【0006】炭素繊維の分散状態の均一性が高い炭素繊
維紙を得るには、開繊させた繊維等の原料炭素短繊維
を、スプレーして堆積させる方法や、湿式抄紙機を用い
る方法が知られている。
【0007】ところが、通常、原料炭素短繊維は収束剤
を付与した連続繊維束を機械的に切断することにより製
造されるため、開繊しにくい繊維の塊として供給される
ことが多く、乾式法では完全な開繊状態と均一な分散状
態を得るのは難しい。また、湿式法においては、親水性
のパルプ繊維等と比較して炭素繊維は疎水性が強いた
め、開繊状態が得られた場合でも均一な地合の炭素繊維
紙を得ることが難しい。
【0008】抄紙用短繊維の分散性を向上するための方
法として、例えば、特開平10−162838号公報に
は炭素短繊維の分散不良を改善するために、表面処理や
収束剤の付与を省略するという記述がある。
【0009】ところが炭素短繊維は表面処理や収束剤の
付与を行わない場合、非常に取扱性が悪くなるため、前
記公報記載の方法を採用すると分散性が向上する一方、
作業効率が低下してしまう問題がある。
【0010】また、水系スラリーへの分散性改善の例と
して、特開平10−251047号公報はグリセリン類
を収束剤として使用してセメント中への分散性を改善す
ることを開示し、特開平11−246248号公報はグ
リセリン又はグリセリン水溶液を収束剤として使用しケ
イ酸カルシウム中への分散性を改善することを開示して
いる。
【0011】ところが前者の炭素繊維を抄紙用途に流用
すると、機械的撹拌により一度分散した繊維が凝集し易
く、均一な地合の炭素繊維紙が得られにくい欠点があ
る。また、後者の炭素繊維を抄紙用途に流用すると、分
散性は良好なものの均一な分散状態となる迄の時間が長
くなる傾向がある。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明者は上記問題点
の克服のため鋭意研究を行った結果、炭素繊維の、表面
近傍の酸素原子数/炭素原子数比、繊維長/直径比、並
びに、炭素繊維に付着させる収束剤の量を所定の範囲に
してなる炭素繊維は、抄紙時には炭素繊維の分散性、取
扱性に優れ、且つ早く均一な分散状態になるスラリーが
得られ、抄紙後には均一な地合の炭素繊維紙が安定して
得られる抄紙用炭素繊維であることを知得し、本発明を
完成するに至った。
【0013】従って、本発明の目的とするところは、上
記問題を解決した抄紙用炭素繊維、炭素繊維紙、及び炭
素繊維紙の製造方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成する本発
明は、以下に記載するものである。
【0015】〔1〕 水溶性化合物を含む収束剤が付着
されてなる抄紙用炭素繊維であって、X線光電子分光法
による炭素繊維表面近傍の炭素原子数に対する酸素原子
数の比O1s/C1sが0.01〜0.20、炭素繊維の繊
維長L(μm)に対する炭素繊維の直径D(μm)の比
L/Dが400〜5000であり、収束剤の量S(質量
%)と、収束剤の密度d(g/cm3)と、収束剤の分
子量Mと、炭素繊維の直径D(μm)とが、 8.1 × D2 × d/M ≦ S ≦ 30 の関係を満たす抄紙用炭素繊維。
【0016】〔2〕 水溶性化合物がグリセリンである
〔1〕に記載の抄紙用炭素繊維。
【0017】〔3〕 炭素繊維がポリアクロニトリル系
繊維から誘導された繊維である〔1〕又は〔2〕に記載
の抄紙用炭素繊維。
【0018】〔4〕 〔1〕乃至〔3〕の何れかに記載
の抄紙用炭素繊維を水中に分散させて抄紙用スラリーを
得、前記抄紙用スラリーを抄紙する炭素繊維紙の製造方
法。
【0019】〔5〕 〔4〕に記載の製造方法で製造さ
れる炭素繊維紙であって、前記炭素繊維紙の光透過写真
の画像濃淡度数分布グラフにおける横軸を30以上に等
分し、等分された横軸上の各点に対し垂直線を書き入
れ、n番目の点に対する垂直線と度数分布曲線との高さ
(Tn)を読み取り、読み取った数値から傾き(Tn-1
n)を求め、傾き(Tn-1−Tn)が+から−になる点
が1箇所のみである炭素繊維紙。
【0020】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
【0021】本発明の抄紙用炭素繊維は、ポリアクリロ
ニトリル系繊維、ピッチ繊維その他の有機繊維を原料と
して常法に従い焼成して得られた炭素繊維若しくは黒鉛
繊維である。特にポリアクリロニトリル系繊維から誘導
された所謂PAN系炭素繊維が好ましい。これはPAN
系炭素繊維が最も汎用的であり、しかも安定供給が可能
で、電気抵抗、引っ張り弾性率、繊維直径等が異なる炭
素繊維が使用する目的に応じて容易に選択可能であるか
らである。
【0022】上記抄紙用炭素繊維の直径Dは4〜20μ
mが好ましい。繊維長Lは、直径Dとの比(L/D)が
400〜5000であり、且つ、繊維長Lは25mm以
下であることが好ましく、より好ましくは15mm以
下、更に好ましくは10mm以下であることが望まし
い。繊維長が長くなるに従って、繊維間の相互作用が強
くなり、抄紙媒体に対する分散性が低下する。分散性が
低下すると、地合の均一な炭素繊維紙を得ることが難し
くなるので好ましくない。
【0023】通常炭素繊維は、汎用される用途分野が繊
維強化樹脂複合材料であるため、マトリックス樹脂との
濡れ性を改善するための処理がされている。この処理は
いわゆる表面処理と呼ばれ、炭素繊維表面にカルボン酸
基や水酸基などの官能基を付与するために、通常は炭素
化した炭素繊維表面を酸化している。
【0024】酸化は、気相若しくは液相にて炭素繊維表
面を酸化処理することによって行うことができる。この
表面処理によって繊維表面に付与される官能基の数量の
程度は、表面分析機器であるXPS(X線光電子分光
器)を用いて、表面付近に存在する酸素含有量(酸素原
子数)O1sと炭素含有量(炭素原子数)C1sの比O1s
1sを測定する事により推定される。
【0025】このようにして測定されたO1s/C1sは、
通常の炭素繊維製造工程条件で表面処理された炭素繊維
では0.1〜0.3の範囲である。なお、このO1s/C
1s値はカルボン酸基や水酸基などの官能基の数が増加す
るに伴って増える値である。
【0026】上記のように通常、複合材料に用いられる
炭素繊維に施されている表面処理は高いレベルにある。
これに対し、本発明の炭素繊維は、この表面処理を低い
レベルに抑えた炭素繊維である。
【0027】表面処理のレベル(表面改質の程度)を表
すためには、上記のO1s/C1s値を用いることができ
る。このことを更に詳述すると、表面処理のレベルは一
般にX線光電子分光法(XPS)で測定したC1s並びに
1sの各スペクトルピークの面積比からそのまま算出し
た表面近傍の見掛け原子数比O1s/C1sが用いられてい
る。この際、電子がX線により励起されて原子核の束縛
から解放される確率が原子によって異なるため、スペク
トルピークの面積比はそのままでは原子数比を表さな
い。
【0028】このずれを補正するためには、通常、その
確率と装置による定数を加味した換算係数が用いられて
いる。本発明で用いた日本電子(株)製X線光電子分光
器ESCA JPS−9000MXの場合、その換算係
数は2.69である。
【0029】よって、本明細書においては特に断らない
限り、O1s/C1s値は上記換算係数によって補正した数
値で示している。
【0030】本発明の炭素繊維において、X線光電子分
光法による表面近傍の原子数比O1s/C1sは0.01〜
0.2であり、更に好ましくは0.01〜0.1であ
り、特に好ましくは0.01〜0.08であることが望
ましい。炭素繊維の表面処理のレベルを表す原子数比O
1s/C1sが0.2を超える場合は、炭素繊維は液中にお
いては素早く分散し始めるが、抄紙用スラリーの安定性
が悪く、繊維同士の凝集が非常に起こりやすいため繊維
が均一に分散した炭素繊維紙が得られず、本発明の目的
には適さない。
【0031】本発明における炭素繊維に付着させる収束
剤は、水溶性化合物を含むものであれば特に限定されな
いが、この水溶性化合物は、抄紙用スラリーの粘度を調
整したり、炭素繊維表面の自由エネルギーを減少させる
効果があるものが望ましい。この水溶性化合物としては
グリセリン、ポリオキシエチレン系界面活性剤、ポリア
クリルアミド系粘度調整剤等の抄紙用分散剤などが挙げ
られ、これらの中でもグリセリンが特に好ましい。
【0032】また、上記収束剤としてグリセリンに加え
て、ポリオキシエチレン系界面活性剤、ポリアクリルア
ミド系粘度調整剤等の抄紙用分散剤を炭素繊維に付着さ
せておくことは、湿式抄造時の薬剤の追加投入の手間を
省くことができるので好ましいことである。
【0033】このように、炭素繊維にグリセリンや抄紙
用分散剤等を付着させることで、繊維の保護と湿式抄造
時の分散に対する妨害成分の抄紙用スラリーへの混入を
防ぐことが可能となる。
【0034】上記水溶性化合物を含む収束剤の付着量S
(質量%)は、8.1 × D2 × d/M ≦ S ≦ 3
0の関係を満たすものである。上記式において、D(μ
m)は炭素繊維の直径、d(g/cm3)は収束剤の密
度、Mは収束剤の分子量である。
【0035】なお、収束剤がn成分からなりnが2以上
の場合、d、M及びSは、
【0036】
【数1】
【0037】
【数2】
【0038】
【数3】S = S1 + S2 + … + Sn の式で示される。上記式において、下付き文字は収束剤
の各成分に対応する。
【0039】収束剤の付着量Sが上記式の下限未満の場
合は、チョップトストランド(カットした炭素繊維)の
束がばらけて取扱性が悪くなるので好ましくない。
【0040】収束剤の付着量Sが30質量%を超える場
合は、炭素繊維と収束剤が分離したり、抄紙用スラリー
中での収束剤の溶出除去に時間がかかるようになるので
好ましくない。
【0041】上記本発明の炭素繊維を水中に分散させて
抄紙用スラリーを得、前記抄紙用スラリーを抄紙するこ
とによって、本発明の炭素繊維紙を製造することができ
る。
【0042】本発明における炭素繊維紙の抄紙法は、湿
式抄紙法である。本発明の抄紙用炭素繊維は収束剤を付
着させているため、乾式抄紙法は、炭素繊維に付着した
収束剤を予め取り除く必要があり、繊維に対する損傷が
大きく、取扱性が悪化するので好ましくない。
【0043】前述したように炭素繊維を水中へ分散させ
るために、抄紙用分散剤としてポリオキシエチレン系界
面活性剤、ポリアクリルアミド系粘度調整剤等を用いる
ことが好ましい。
【0044】上記抄紙用分散剤は、種類や添加量等の種
々の組合せが可能であり、異なる種類の組合せによって
炭素繊維の分散を向上させることが可能である。
【0045】抄紙用分散剤の使用量は炭素繊維の使用量
に対して1〜50質量%が好ましい。
【0046】本発明の炭素繊維紙の製造方法において抄
紙用スラリー中の炭素繊維の濃度は水に対して3質量%
以下、好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1質量
%以下であることが望ましい。炭素繊維の濃度が3質量
%より高い場合は、繊維同士が絡まりやすくなるため、
分散性の良好な炭素繊維紙は得られなくなるので好まし
くない。この傾向は繊維が長くなるのに従い強くなるの
で、繊維が長くなればなるほど炭素繊維の濃度を低くす
ることが好ましい。
【0047】上記の操作で得られた抄紙用スラリーを長
網式や円網式等、通常の湿式抄紙機で、ウェブ形成、脱
液、乾燥させて炭素繊維紙を得る。
【0048】抄紙用スラリーにはバインダとなるエポキ
シ樹脂等の、若しくは他の繊維等を適宜添加することが
できる。
【0049】本発明の炭素繊維紙の製造方法において、
炭素繊維同士の固定に用いるバインダとしては有機バイ
ンダ、無機バインダ等が好ましい。
【0050】このバインダを付与する理由は、炭素繊維
同士は繊維表面の官能基量が少ないため、通常の抄紙用
パルプのように水素結合のみで単繊維同士が結合して紙
を形成することができないからである。バインダとして
は、液状、粒状、繊維状等様々なタイプのものを用いる
ことが出来、例として、エポキシ樹脂やポリビニルアル
コール、フェノール樹脂や熱可塑性樹脂繊維などが使用
できる。バインダを混合する時期はそのバインダの種類
により異なり、抄紙用スラリー作製時、ウェブ形成後、
脱液後等にバインダを添加しうる。
【0051】本発明の炭素繊維紙は、上記本発明の製造
方法で製造された炭素繊維紙であって、前記炭素繊維紙
の光透過写真の画像濃淡度数分布グラフが単一ピークを
示すものである。具体的には、画像濃淡度数分布グラフ
が単一ピークを示すということは、画像濃淡度数分布グ
ラフにおける横軸を30以上に等分し、等分された横軸
上の各点に対し垂直線を書き入れ、n番目の点に対する
垂直線と度数分布曲線との高さ(Tn)を読み取り、読
み取った数値から傾き(Tn-1−Tn)を求め、傾き(T
n-1−Tn)が+から−になる点が1箇所のみであるとい
うことである。
【0052】本発明において炭素繊維紙中のO1s/C1s
が0.20以下の炭素繊維含有量は50質量%以上であ
ることが好ましい。この炭素繊維以外の成分は、前述し
たエポキシ樹脂等のバインダ、若しくは他の繊維等であ
る。また、ここでいう他の繊維は、炭素繊維以外の繊維
や炭素繊維であってもO1s/C1sが0.20を超えるも
のを含むが、これらの繊維を用いる場合、O1s/C1s
比較的低い例えばO1s/C1sが0.20〜0.25の炭
素繊維の割合を増やすことが好ましい。
【0053】
【実施例】以下、本発明の抄紙用炭素繊維、炭素繊維紙
及び炭素繊維紙の製造方法等を実施例及び比較例を用い
て説明するが、本発明はこれら実施例及び比較例に限定
されるものではない。
【0054】これら実施例及び比較例において、炭素繊
維のスラリー中における分散性、並びに炭素繊維紙の光
透過写真の画像濃淡度数分布に関する評価方法を以下に
説明する。
【0055】炭素繊維のスラリー中における分散性 炭素繊維のスラリー中における分散性の評価は炭素繊維
の総量に対する分散不良を起こした炭素繊維の質量比を
調査することで行った。スラリーは炭素繊維束0.2g
を水500cm3中に投入し、界面活性剤としてポリオ
キシエチレン系界面活性剤0.005g、粘度調整剤と
してポリアクリルアミド0.1gを加え、10Hzで1
0分間かき混ぜることで得た。このスラリーから分散不
良を起こした炭素繊維を取り出し、分散不良を起こした
炭素繊維の乾燥質量を最初に入れた炭素繊維の質量で除
することによって質量比(分散不良CF率(質量%))を
求めた。
【0056】分散不良とは炭素繊維を液中でかき混ぜた
際、繊維がまだ一本一本にばらけていないもの、繊維同
士の絡みや凝集作用により生ずる繊維の塊のすべてを指
すものとした。
【0057】求めた分散不良CF率が10質量%以下の
ものを、分散が良好な炭素繊維のスラリーと評価した。
【0058】炭素繊維紙の光透過写真の画像濃淡度数分
布 炭素繊維紙の光透過写真の画像濃淡度数分布は、Sci
on Corporation製ソフトウェアScio
n Image beta Release3bのPl
ot Histogram機能を使用した。
【0059】炭素繊維紙の嵩密度は0.01〜0.1g
/cm3程度であるため、繊維の凝集により発生した分
散不良の部分は光透過により検出することが可能であ
る。
【0060】すなわち、炭素繊維紙による遮光の度合い
を画像の濃淡で表し、度数分布表示することで分散不良
部分と正常な部分とを区別することが可能である。
【0061】正常な部分では、炭素繊維紙中に炭素繊維
が均一に分散しているため、画像の濃淡の度数分布は正
規分布に近い分布となるのに対し、分散不良を含む部分
では、分散不良部分でほぼ完全に遮光されるため、色の
濃い側に平均的な度数分布から明らかに外れたピークが
現れることになる。
【0062】3cm四方を256画素四方に分割、濃淡
を256階調で表すことで得られた度数分布を利用し
た。
【0063】正常な度数分布がただ一つのピークとして
現れるもの(前述の傾き(Tn-1−Tn)が+から−にな
る点が1箇所のみであるもの)を、分散が良好な炭素繊
維紙と評価した。
【0064】実施例1〜6 表面処理の施されていないPAN系炭素繊維を硫酸アン
モニウム水溶液中で陽極酸化を施し、図1及び表1に示
すO1s/C1sが異なる一連の炭素繊維束を得た。次に、
該炭素繊維束に収束剤としてグリセリンを5質量%(S
1=5.0、d1=1.26、M1=92.09)、水を
2質量%(S2=2.0、d2=1.00、M2=18.
02)付着せしめた後、繊維長6mmにカットし、抄紙
用炭素繊維(S=7.0、D=7.0、d=1.19、
M=70.93、8.1×D2×d/M=6.64)を
得た。該炭素繊維が分散した抄紙用スラリーからを抄き
箱を用いることで炭素繊維紙を得た。バインダーにはエ
ポキシ樹脂を用いた。炭素繊維紙中の炭素繊維含有量は
79質量%であった。
【0065】尚、各抄紙用炭素繊維を同条件で分散させ
た時の分散不良CF率は図1及び表1に示す通りであ
り、実施例1乃至6の何れも炭素繊維のスラリー中にお
ける分散性は良好なものであった。
【0066】比較例1、2 O1s/C1sを0.20以上に変更した以外は実施例1と
同様にして抄紙用炭素繊維及び炭素繊維紙を得た。炭素
繊維紙中の炭素繊維含有量は79質量%であった。
【0067】尚、各抄紙用炭素繊維を同条件で分散させ
た時の分散不良CF率は図1及び表1に示す通りであ
り、比較例1及び2の何れも炭素繊維のスラリー中にお
ける分散性は良好なものではなかった。
【0068】
【表1】 表1 ────────────────────────── 実施例No 分散不良CF率 又は比較例No O1s/C1s (質量%) ────────────────────────── 実施例1 0.02 0.1以下 実施例2 0.05 0.1以下 実施例3 0.08 0.3 実施例4 0.10 1.7 実施例5 0.14 3.1 実施例6 0.17 5.1 比較例1 0.22 14.2 比較例2 0.32 37.0 ────────────────────────── 実施例7 O1s/C1sを0.02としたPAN系炭素繊維束に収束
剤としてグリセリンを5質量%(S1=5.0、d1
1.26、M1=92.09)、水を2質量%(S2
2.0、d2=1.00、M2=18.02)付着せしめ
た後、繊維長6mmにカットし、抄紙用炭素繊維(S=
7.0、D=7.0、d=1.19、M=70.93、
8.1×D2×d/M=6.64)を得た。界面活性剤
としてポリエチレングリコールアルキルエーテルを抄紙
用炭素繊維に対して2.5質量%相当と、粘度調整剤と
してポリアクリルアミドを抄紙用炭素繊維に対して50
質量%相当を含む水中にこの抄紙用炭素繊維を分散さ
せ、湿式抄紙機を用いて炭素繊維紙を得た。
【0069】この一連の操作で得られた炭素繊維紙の炭
素繊維含有量は85質量%であった。炭素繊維紙中の繊
維の分散状態は図2(a)に示す通りであり、繊維の凝集
は見あたらなかった。炭素繊維紙の光透過写真の画像濃
淡度数分布は図3(a)に示す通り現れたピークは1つだ
けであり、炭素繊維紙中の繊維の分散状態は良好なもの
であった。
【0070】比較例3 PAN系炭素繊維束にグリセリンも水も付着せしめなか
った以外は実施例7と同様にして炭素繊維紙を得た。こ
の一連の操作で得られた炭素繊維紙の炭素繊維含有量は
84質量%であった。炭素繊維紙中には繊維の凝集は見
あたらなかったが、炭素繊維を抄紙機に投入する際に浮
遊繊維が多く発生し、作業効率を悪化させた。
【0071】比較例4 炭素繊維のO1s/C1sを0.22とした以外は実施例7
と同様にして炭素繊維紙を得た。この一連の操作で得ら
れた炭素繊維紙の炭素繊維含有量は80質量%であっ
た。炭素繊維紙中の繊維の分散状態は図2(b)に示す通
りであり、繊維の凝集が多数見られ、品位に欠けるもの
であった。炭素繊維紙の光透過写真の画像濃淡度数分布
は図3(b)に示す通り現れたピークは2つあり、炭素繊
維紙中の繊維の分散状態は良好なものではなかった。
【0072】
【発明の効果】本発明の抄紙用炭素繊維は、炭素繊維
の、表面近傍の酸素原子数/炭素原子数比、繊維長/直
径比、並びに、炭素繊維に付着させる収束剤の量を所定
の範囲にしてなるので、抄紙時には炭素繊維の分散性、
取扱性に優れ且つ均一な分散状態に早くなるスラリーが
得られ、抄紙後には均一な地合の炭素繊維紙が安定して
得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1乃至6、並びに、比較例1及び2にお
けるO1s/C1sと、各抄紙用炭素繊維を同条件で分散さ
せた時の分散不良CF率との関係を示すグラフである。
【図2】炭素繊維紙中の繊維の分散状態を示す図面代用
電子顕微鏡写真であって、(a)は実施例7における炭
素繊維紙中の繊維の分散状態を示し、(b)は比較例4
における炭素繊維紙中の繊維の分散状態を示す。
【図3】炭素繊維紙の光透過写真の画像濃淡度数分布を
示すグラフであって、(a)は実施例7における炭素繊
維紙の光透過写真の画像濃淡度数分布を示し、(b)は
比較例4における炭素繊維紙の光透過写真の画像濃淡度
数分布を示す。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水溶性化合物を含む収束剤が付着されて
    なる抄紙用炭素繊維であって、X線光電子分光法による
    炭素繊維表面近傍の炭素原子数に対する酸素原子数の比
    1s/C1sが0.01〜0.20、炭素繊維の繊維長L
    (μm)に対する炭素繊維の直径D(μm)の比L/D
    が400〜5000であり、収束剤の量S(質量%)
    と、収束剤の密度d(g/cm3)と、収束剤の分子量
    Mと、炭素繊維の直径D(μm)とが、 8.1 × D2 × d/M ≦ S ≦ 30 の関係を満たす抄紙用炭素繊維。
  2. 【請求項2】 水溶性化合物がグリセリンである請求項
    1に記載の抄紙用炭素繊維。
  3. 【請求項3】 炭素繊維がポリアクロニトリル系繊維か
    ら誘導された繊維である請求項1又は2に記載の抄紙用
    炭素繊維。
  4. 【請求項4】 請求項1乃至3の何れかに記載の抄紙用
    炭素繊維を水中に分散させて抄紙用スラリーを得、前記
    抄紙用スラリーを抄紙する炭素繊維紙の製造方法。
  5. 【請求項5】 請求項4に記載の製造方法で製造される
    炭素繊維紙であって、前記炭素繊維紙の光透過写真の画
    像濃淡度数分布グラフにおける横軸を30以上に等分
    し、等分された横軸上の各点に対し垂直線を書き入れ、
    n番目の点に対する垂直線と度数分布曲線との高さ(T
    n)を読み取り、読み取った数値から傾き(Tn-1
    n)を求め、傾き(Tn-1−Tn)が+から−になる点
    が1箇所のみである炭素繊維紙。
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