JP2003253376A - 耐遅れ破壊性に優れた高強度鋼 - Google Patents

耐遅れ破壊性に優れた高強度鋼

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JP2003253376A JP2002049770A JP2002049770A JP2003253376A JP 2003253376 A JP2003253376 A JP 2003253376A JP 2002049770 A JP2002049770 A JP 2002049770A JP 2002049770 A JP2002049770 A JP 2002049770A JP 2003253376 A JP2003253376 A JP 2003253376A
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武典 中山
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 熱負荷や動的応力負荷が存在する用途であっ
ても耐遅れ破壊性を発揮し得る、耐遅れ破壊性に優れた
高強度鋼を提供する。 【解決手段】 引張強度が1200N/mm2以上の高
強度鋼であって、pH3.0以下の酸性溶液中に24時
間浸漬した直径10mm×厚み3mmの鋼材を、真空中
または不活性ガス中で常温から12℃/minの昇温速
度で加熱した場合に、100℃以上250℃未満の温度
域で放出される水素量をAppm、250℃以上750
℃以下の温度域で放出される水素量をBppmとしたと
き、これら水素量A、Bの値が0.01≦B/Aかつ
0.1≦Aを満たす。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、構造物・輸送機器
など機械構造用途に用いられる高強度鋼に関するもので
あって、特に1200N/mm2以上の引張強度を有
し、且つ耐遅れ破壊性に優れた高強度鋼に関するもので
ある。尚、本発明でいう高強度鋼とは、製品加工前の鋼
材はもちろん、ボルトなど鋼加工品をも含むものであ
る。
【0002】
【従来の技術】高強度鋼の最大の解決課題は耐遅れ破壊
性を向上させることにある。例えばボルト用鋼の場合、
1200N/mm2以上の強度では、ボルト首部が使用
中に脆性的に破断する現象として恐れられている、時間
依存型の「遅れ破壊」が生じやすくなることが知られて
いる。
【0003】そこで従来より、成分組織の改良により耐
遅れ破壊性を改善した高強度鋼材及びその加工品が種々
提案されてきている。例えば、(1)特開平7−706
95号公報、特開平8−60291号公報及び特開平7
−112236号公報等で提案されているように、Mo
やV、Nb、Ni、Cu等の元素の含有量を制御する方
法、(2)特開平11−229075号公報、特開20
00−26934号公報及び特開平11−270531
号公報等で提案されているように、熱処理等の規定によ
り鋼組織を制御することによって耐遅れ破壊性を改善す
る方法、が提案されている。しかし、これら提案の方法
であっても十分に耐遅れ破壊性が改善されたとはなら
ず、新たな改善策が研究されているのが実状である。
【0004】一方、特に最近、遅れ破壊を引き起こすと
されている室温で鋼中を動き回る水素(拡散性水素)を
捕捉して、特定部分への水素の濃化を防ぐ方法が注目さ
れている。このような方法に関連する提案として、例え
ば、上記特開2000−26934号公報に提案の方法
が挙げられる。すなわち、同公報では、Si、Mn、T
i、Al、V等の元素の含有量を制御し、微細な酸化
物、炭化物、窒化物を鋼中に分散させる手法が提案され
ている。また、一般的には、拡散性水素を捕捉すること
により、水素が無害化するとされているため、それらS
i、Mn、Ti、Al、V等の元素を大量に添加するこ
とが良いとされている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、本発明
者らの研究によれば、使用用途によっては、拡散性水素
を捕捉しても無害化できない炭窒化物の種類があること
がわかってきた。例えばVやMoはその炭窒化物が多く
の水素を捕捉するばかりか、焼入れ性などの特性をも高
めることができ有用であるが、通常、自動車のエンジン
部品などでかかるような熱負荷や動的応力負荷をかける
と、捕捉した拡散性水素が開放されて遅れ破壊を促進す
る恐れがあることを見出した。従って、上述した拡散性
水素を捕捉する従来知見された技術では、熱負荷や動的
応力負荷が存在しない一部の用途でしか耐遅れ破壊性を
改善できないことが懸念される。
【0006】本発明は、上記の実状に鑑みてなされたも
のであって、その目的は、熱負荷や動的応力負荷が存在
する用途であっても耐遅れ破壊性を発揮し得る、耐遅れ
破壊性に優れた高強度鋼を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記従来
技術の課題を解決するために、鋼中拡散性水素の調査に
非常に有用である水素放出曲線に着目して鋭意研究を重
ねた。その結果、得られたことは以下の通りである。
【0008】鋼材中の水素量は、酸浸漬や陰極チャージ
などの水素チャージ前後の試料を12℃/minの速度
で加熱した際に得られた水素放出曲線の面積分値の差に
よって求めることができる。また、水素を捕捉するもの
(トラップサイト)は、水素放出曲線のピーク温度・ピ
ーク高さから判定でき、あるトラップサイトにトラップ
された水素量はピークの面積分値によって求めることが
できる。従来から言われている「拡散性水素」は転位や
粒界によりトラップされていると考えられている水素で
あり、水素放出曲線において、最初に認められる第1ピ
ーク曲線として測定できる。従来より、この拡散性水素
が遅れ破壊を増長するとされている。また、鋼への種々
の添加成分により、それらの析出化合物(炭窒化物な
ど)にトラップされた水素を示す、より高いピーク温度
・ピーク高さの曲線が得られる(以下炭窒化物トラップ
水素と言う)。従来、この炭窒化物トラップ水素は、遅
れ破壊に寄与しないとされている。
【0009】VやMoの炭窒化物を含む鋼は水素をチャ
ージすると、拡散性水素ピーク温度よりも少し高い温度
位置に非常に多くの炭窒化物トラップ水素量が放出され
ることが確認できる。すなわち、非常に多くの水素量を
トラップでき、応力集中部への水素の拡散濃化を防ぐこ
とができるため、無添加鋼と比較して常温定荷重で行う
遅れ破壊試験結果が良くなる。
【0010】しかしながら、本発明者等は、VやMoの
炭窒化物を含有する鋼試料に陰極チャージにより水素チ
ャージ後、拡散性水素が逃げないように皮膜を施して放
置を行った後、さらに通常、自動車のエンジン部品など
でかかる熱負荷や動的応力負荷をかけることにより、拡
散性水素ピーク量が増加し、炭窒化物トラップ水素量が
減少するという現象が見られ、遅れ破壊試験結果も悪く
なるということを見出した。すなわち、VやMo炭窒化
物のトラップ作用は弱く、熱負荷や動的応力負荷がかか
る環境では、VやMoの炭窒化物にトラップされた水素
は開放され、遅れ破壊を増長すると推察される。
【0011】逆に、TiやZr、Hfの炭窒化物を含む
鋼は水素をチャージすると、拡散性水素ピーク温度より
もかなり高い温度位置にある程度の炭窒化物トラップ水
素量が放出されることが確認できる。これらの鋼試料に
陰極チャージにより水素チャージ後、拡散性水素が逃げ
ないように皮膜を施して放置を行った後、同様に、自動
車のエンジン部品などでかかる熱負荷や動的応力負荷を
かけると、拡散性水素ピーク量が減少し、炭窒化物トラ
ップ水素量が増加するというVやMoとは異なる現象が
見られ、遅れ破壊試験結果も良くなるということを見出
した。すなわち、TiやZr、Hfの炭窒化物のトラッ
プ作用は強く、熱負荷や動的応力負荷がかかる環境で
も、TiやZr、Hfの炭窒化物にトラップされた水素
は開放されず、逆に、粒界や転位から開放された拡散性
水素を再トラップするため、遅れ破壊を抑制すると推察
される。
【0012】しかしながら、TiやZr、Hfのように
トラップ作用が強い炭窒化物を析出させる成分は鋼に大
量に含有できないため、多く炭窒化物を析出させること
が困難であり、多くの水素量をトラップすることはでき
ない。
【0013】種々の鋼種での同様の検討により、熱負荷
や動的応力負荷がかかった場合に耐遅れ破壊性に悪影響
を与える可能性があるのは、トラップ作用が弱い100
℃以上250℃未満の温度域で放出される水素であり、
トラップ作用が強い250℃以上の温度域で放出される
水素は悪影響を与えないことがわかった。そして、それ
ぞれの領域の水素量がある範囲にある鋼は、非常に多く
の水素量をトラップでき、応力集中部への水素の拡散濃
化を防ぐことができ、かつ熱負荷や動的応力負荷がかか
っても耐遅れ破壊性が高いことを実験的に見出した。す
なわち、水素のトラップ量は多いがトラップ作用が弱い
析出物と、水素のトラップ量は少ないがトラップ作用が
強い析出物の含有量比の最適値があり、しかもそれら析
出物の分布状態を制御する必要があることがわかった。
【0014】本発明は、上述の知見に基づいてなされた
もんであって、以下に本発明の構成並びに作用について
更に詳細に説明する。
【0015】(1)本発明は、引張強度が1200N/
mm2以上の高強度鋼であって、pH3.0以下の酸性
溶液中に24時間浸漬した直径10mm×厚み3mmの
鋼材を、真空中または不活性ガス中で常温から12℃/
minの昇温速度で加熱した場合に、100℃以上25
0℃未満の温度域で放出される水素量をAppm、25
0℃以上750℃以下の温度域で放出される水素量をB
ppmとしたとき、これら水素量A、Bの値が0.01
≦B/Aかつ0.1≦Aを満たすことを特徴とする耐遅
れ破壊性に優れた高強度鋼である。
【0016】pH3.0以下の酸性溶液中に24時間以
上浸漬するような実環境よりも厳しい腐食環境下での試
験では、大量の水素を鋼中に強制的に侵入させることが
できる。この試験後の鋼中にAが0.1ppm未満であ
るということは、多くの水素をトラップすることができ
ないことを示すから、耐遅れ破壊性に劣る鋼といえる。
従って、0.1≦Aとするが、望ましくは0.5≦Aが
よく、0.5≦Aであれば、多くの水素をトラップする
ことができ、耐遅れ破壊性に優れる。
【0017】しかしながら、B/A<0.01である場
合、熱負荷や動的応力負荷がかかる環境では、開放され
る水素量が多いにもかかわらず、水素トラップ作用が強
いトラップサイトが少ないため開放される水素を再トラ
ップしきれないため、遅れ破壊を抑制できない。従っ
て、0.01≦B/Aとするが、望ましくは0.1≦B
/Aがよく、0.1≦B/Aであれば、水素トラップ作
用が強いトラップサイトが多く、熱負荷や動的応力負荷
により水素トラップ作用が弱いトラップサイトから水素
が開放されても十分に再トラップすることができるた
め、遅れ破壊を抑制できる。
【0018】すなわち、0.01≦B/Aかつ0.1≦
A、望ましくは0.1≦B/Aかつ0.5≦Aである場
合、環境によらず侵入水素をトラップすることができ、
耐遅れ破壊性に優れる。
【0019】なお、本発明においては水素量を、昇温速
度12℃/minで連続加熱し、発生水素量を大気圧イ
オン化質量分析計(API−MS)や真空質量分析計
(TDS)により測定するのが望ましい。API−MS
の場合、測定温度範囲を20〜800℃、昇温速度を1
2℃/min、キャリアガス(Ar)流量を800ml
/minで測定する。また、真空昇温分析の場合は、昇
温速度を12℃/min、真空度を10-6torr以
下、試料調整終了から測定開始までの時間を20分以下
で測定する。装置の性能限界により750℃より上の水
素は測定できなかったが、700℃以上ではほとんど水
素が検出されなかったため、実際の測定では750℃ま
での測定で十分であると考えられる。
【0020】大気圧イオン化質量分析計による測定方法
は、例えば岩田らによりR&D/神戸製鋼技報[Vol.4
7、No.1、pp24〜27(1997)]に記載されている要領に
て測定することができる。また、酸性溶液浸漬により、
錆が付着した場合、錆を化学的または機械的に除去後、
測定するものとする。除去方法は規定しないが、除去方
法によって水素が侵入すること無く、水素の放出が無視
できるほど速やかに除去する方法が望ましく、例えば陽
極電解研磨や機械的研磨が推奨される。
【0021】ちなみに、12℃/minの速度で加熱し
た際に、100℃以上250℃未満の温度域で放出され
る水素は、水素トラップエネルギーが20〜40kJ/
molであるトラップサイトにトラップされており、2
50℃以上の温度域で放出される水素は、水素トラップ
エネルギーが40kJ/mol以上であるトラップサイ
トにトラップされていることとなる。水素トラップエネ
ルギーEは、特開2000−26934号公報に記載の
手法で求められる。すなわち、次式[ln(φ/T2)
=−(E/R)/T+ln(AR/E)]より、複数の
昇温速度で水素分析を行い、その際の水素放出ピーク温
度を測定し、ln(φ/T2)と−1/Tの関係を示す
直線の傾きを求めることによって、水素トラップエネル
ギーEを求めた。ただし、φは加熱速度、Aは水素のト
ラップ脱離の反応定数、Rは気体定数、Tは水素放出曲
線のピーク温度である。
【0022】(2)また本発明では上記酸浸漬後に、さ
らに100℃で1時間放置した後に、常温より12℃/
minの速度で加熱した際に、250℃以上750℃以
下の温度域で放出される水素量をCppmとしたとき、
(C−B)/Bが0.01以上、望ましくは0.1以
上、さらに望ましくは0.5以上である鋼であることが
必要である。
【0023】カーエンジン周辺機器にかかる温度を模擬
して、100℃の熱負荷を行うとトラップ作用が弱いト
ラップサイトから開放され、鋼中を自由に動く拡散性水
素となり、一部は鋼の外に出て、一部はトラップ作用が
強いトラップサイトに再度トラップされ、残りは応力集
中部に濃化する危険性がある。250℃以上750℃以
下の温度域で放出される水素量が請求項1のものと比較
して、(C−B)/Bが0.01未満の増加の場合は、
トラップ作用が強いトラップサイトへの再トラップ効果
が低く、熱負荷や動的応力負荷がかかる環境で遅れ破壊
を増長する。(C−B)/Bが0.1以上、望ましくは
0.5以上トラップ水素が増加する鋼は、再トラップ効
果が高く、熱負荷や動的応力負荷がかかる環境でも遅れ
破壊を抑制する。
【0024】また、本発明においては耐遅れ破壊性の試
験方法を特に規定するものではなく、通常行われる定歪
み試験、定荷重試験などが可能である。水素を侵入させ
る方法としては本発明記載の酸浸漬や陰極チャージ、C
CT試験などにより行うことができる。放置や熱負荷を
行う際に、水素を放出させたくない場合は、Cd、Zn
等のめっきにより水素を逃がさないようにしてから行う
と良い。また、動的応力負荷を行う場合は、2μm/m
in以下のクロスヘッドスピードでSSRT試験(Slow
Strain Rate Technique 低歪み速度試験)を行い、水
素を侵入させた試料と水素を侵入させない試料との破断
応力や歪み量の比で比較するのが望ましい。
【0025】(3)本発明においては、以上の効果を得
る鋼として、平均粒径が50nm以下の大きさのV、M
oのうち1種以上を主成分とした化合物の単独あるいは
複合化合物(イ)が鋼中に10個/(500nm)2
上、望ましくは20個/(500nm)2以上存在し、
かつ平均粒径が50nm以下の大きさのTi、Zr、H
f、Nbのうち1種以上を主成分とした化合物の単独あ
るいは複合化合物(ロ)が鋼中に5個/(500nm)
2以上、望ましくは10個/(500nm)2以上、更に
望ましくは20個/(500nm)2以上存在し、かつ
化合物(イ)から最も近い化合物(ロ)までの距離の平
均が100nm以下、望ましくは50nm以下、より望
ましくは20nm以下であることが望ましい。
【0026】化合物(イ)としては、V、Moから選択
される1種以上を含有する酸化物、窒化物、炭化物、ほ
う化物、炭窒化物、酸炭化物、酸窒化物等の化合物、或
いは複合化合物が挙げられる。また、化合物(ロ)とし
ては、Ti、Zr、Hf、Nbから選択される1種以上
を含有する酸化物、窒化物、炭化物、ほう化物、炭窒化
物、酸炭化物、酸窒化物等の化合物、或いは複合化合物
が挙げられる。
【0027】V、Moの化合物、Ti、Zr、Hf、N
bの化合物はいずれの大きさでも水素のトラップ効果を
有しているが、平均粒径が50nmより大きいものはト
ラップ作用が弱く、熱負荷や動的応力負荷がかかる環境
で水素を開放し、遅れ破壊を増長する。また、靱性が低
下することにより、機械的特性に劣る。またV、Mo化
合物(イ)が鋼中に10個/(500nm)2未満の場
合、V、Mo化合物の有する、トラップ作用は弱いけれ
ども大量にトラップできるという効果が小さく、Ti、
Zr、Hf、Nb化合物(ロ)が鋼中に5個/(500
nm)2未満の場合は、Ti、Zr、Hf、Nb化合物
の有する、強いトラップ作用効果が小さいため、熱負荷
や動的歪み環境での耐遅れ破壊性に劣る。また、熱負荷
や動的歪み環境でのTi、Zr、Hf、Nb化合物の再
トラップ効果を十分に発揮させるには、V化合物(イ)
から最も近いTi、Zr、Hf、Nb化合物(ロ)まで
の距離が近い方が望ましく、その平均が100nmを越
えると再トラップ効果が小さいため耐遅れ破壊性に劣
る。従って、化合物(イ)と化合物(ロ)の距離は10
0nm以下の距離、望ましくは50nm以下、より望ま
しくは20nm以下の距離である方がよい。
【0028】(4)本発明においては、Ti、Zr、H
f、Nbのうち1種以上を合計質量%で0.05〜1.
00%、望ましくは0.10〜0.30%を含有し、さ
らにVの含有量が0.05%以上、望ましくは0.10
%以上で、その相関が、V×0.15≦(Ti+Zr+
Hf+Nb)、望ましくはV×0.75≦(Ti+Zr
+Hf+Nb)を満足することが望ましい。
【0029】Ti、Zr、Hf、Nbのうち1種以上が
合計質量%で0.05%未満では、熱負荷や動的歪み環
境でのTi、Zr、Hf、Nb化合物の再トラップ効果
が小さい。また1.00%を越えると、鋼の靱性が低下
するために、0.05〜1.00%、望ましくは0.1
0〜0.30%であることが望ましい。また、Vの含有
量との相関からは、以下のことがいえる。すなわち、V
の含有量の0.15倍未満の場合、熱負荷や動的歪み環
境で、V化合物から開放され、拡散性となった水素を、
再トラップするのにTi、Zr、Hf、Nb化合物量が
不十分であるため、遅れ破壊が増長される。従って、V
×0.15≦(Ti+Zr+Hf+Nb)、望ましくは
V×0.75≦(Ti+Zr+Hf+Nb)を満足する
ことが望ましい。さらに、Vの含有量は少なすぎるとV
化合物の有する、大量にトラップできるという効果が小
さくなるため、0.05%以上、望ましくは0.10%
以上含有させることが必要である。
【0030】(5)Moの含有量が、0.2%未満の場
合、トラップ量が少なくなるだけでなく、焼入れ性が悪
くなって機械的強度が得られにくくなったり、粒界の靱
性低下を引き起こす。逆に1.1%を越えると、鋼の靱
性向上への効果が飽和し、コストの上昇を招くため、
0.2〜1.1%を満足することが望ましい。
【0031】(6)さらに質量%で、C:0.30〜
0.50%、N:0.004〜0.01%、O:0.0
010〜0.005%、S:0.003〜0.015%
を含有することが望ましい。
【0032】これらの元素は鋼中に化合物を析出させる
のに必要な元素であり、炭化物、窒化物、酸化物、硫化
物及びそれらの複合化合物を生成させる。そのため、本
発明では、通常の方法よりも狭い範囲にて制御する必要
がある。
【0033】Cは、鋼の焼入れ性を高め、高強度を確保
するのに必須の元素であるが、本発明では炭化物を形成
するために0.30%以上含有する必要があり、望まし
くは0.35%以上が良い。しかしながら多過ぎると、
靭性が劣化して耐遅れ破壊性が悪くなるばかりでなく冷
間加工性も悪くなるので、0.50%以下に押さえなけ
ればならず、より好ましくは0.45%以下に抑えるの
がよい。
【0034】Nは、窒化物を形成し、析出物を微細分散
させることにより、トラップ作用を強化し、遅れ破壊を
抑制するため、0.004%以上、好ましくは0.00
5%以上含有するのが良い。しかしながら、0.010
%を越えると固溶N量が増加し、遅れ破壊を増長する。
したがって、0.010%以下、好ましくは0.007
%以下、より好ましくは0.006%以下含有するのが
よい。
【0035】Oは酸化物を形成し、析出物を微細分散さ
せることにより、トラップ作用を強化し、遅れ破壊を抑
制するため、0.001%以上含有するのが望ましい。
しかしながら、0.005%を越えると粗大な酸化物が
析出し、逆にトラップ作用が弱くなり、熱負荷や動的歪
み環境で遅れ破壊を増長する。したがって、O成分量は
通常よりも狭い範囲での制御が必要であり、0.005
%以下、好ましくは0.003%以下、更に好ましくは
0.002%以下含有するのがよい。
【0036】Sは硫化物を形成し、析出物を微細分散さ
せることにより、トラップ作用を強化し、遅れ破壊を抑
制するため、0.003%以上含有するのが望ましい。
好ましくは、0.004%以上含有するのが良い。しか
しながら、0.015%を越えると逆にトラップ作用が
弱い粗大なMnSなどが析出し、遅れ破壊を増長する。
したがって、S成分量は通常よりも狭い範囲での制御が
必要であり、0.015%以下、好ましくは0.010
%以下、更に好ましくは0.005%以下含有するのが
よい。
【0037】(7)また、本発明の高強度鋼としては質
量%で、Al:0.05%以下、W:0.20%以下、
B:0.003%以下よりなる群から選択される1種以
上を含有するものが望ましい。
【0038】Al、W、Bは、大量に添加すると巨大な
炭窒化物を生じ、靱性を低下するばかりか、遅れ破壊を
増長するため、注意が必要である。さらに好ましい上限
含有量は、Al:0.045%以下、W:0.15%以
下、B:0.0025%以下であり、より好ましくは、
Al:0.04%以下、W:0.1%以下、B:0.0
02%以下である。一方、好ましい下限含有量は、A
l:0.01%以上、W:0.01%以上、B:0.0
005%以上であり、より好ましくは、Al:0.02
%以上、W:0.02%以上、B:0.001%以上で
ある。
【0039】(8)また、本発明の高強度鋼としては質
量%で、Cr:1.5%以下、Ni:2.00%以下、
Cu:1.00%以下よりなる群から選択される1種以
上を含有するものが望ましい。
【0040】Cr:1.5%以下、Ni:2.00%以
下、Cu:1.00%以下の含有では耐食性向上に寄与
するが、Crは1.5%を超えて多く含有すると、腐食
先端のpHを下げ、耐食性が劣化する。また、NiとC
uはそれぞれ2.00%、1.00%を超えて多く含有
しても、効果が飽和し、コストアップとなるだけであ
る。従って、望ましい範囲はCr:1.05%以下、N
i:1.50%以下、Cu:0.80%以下、さらに望
ましい範囲はCr:0.55%以下、Ni:1.00%
以下、Cu:0.60%以下である。
【0041】(9)また、本発明の高強度鋼としては質
量%で、Mg:0.01%以下、Ca:0.01%以
下、REM:0.01%以下よりなる群から選択される
1種以上を含有するものが望ましい。
【0042】Mg:0.01%以下、Ca:0.01%
以下、REM:0.01%以下を含有すると鋼の清浄性
がアップし、O、S、Pなどを下げることができる。ま
た腐食先端pHを上げるため耐食性が向上する。
【0043】なお、本発明の高強度鋼としては、残部は
実質的にFeであるが、本発明の作用効果を阻害しない
範囲の更なる成分、例えばSi、Mnなどの添加や不可
避不純物の混入は許容される。
【0044】(10)また更に、本発明の高強度鋼は熱
負荷や動的応力負荷が繰り返しかかり、耐遅れ破壊性が
問題とされる機械構造用途、すなわち、カーエンジン周
辺機器のような用途に用いられる部品への適用に適す
る。
【0045】また、本発明では製造条件を規定するもの
ではないが、例えば上述した成分範囲の制御に加え、下
記のように調整して製造することで、本発明で規定した
優れた耐遅れ破壊性を有する高強度鋼が得られる。
【0046】<鋼材を製造する際の凝固過程における冷
却速度>凝固過程(1500℃から1300℃への冷却
中)において10℃/分以上の速さで冷却することによ
り、粗大な化合物の析出が抑制され、微細な化合物が多
く析出する。なお、前記冷却速度は、好ましくは20℃
/分以上、より好ましくは30℃/分以上である。
【0047】<焼入れ条件>850〜1000℃の条件
にて焼入れることによって、オーステナイト化させるだ
けでなくV、Mo化合物の大部分、Ti、Zr、Hf、
Nb化合物の一部を再固溶させる。この条件での焼入れ
後焼戻しを行うことにより、完全に固溶しなかったT
i、Zr、Hf、Nb化合物を核として、V、Moを再
析出させ、V、Mo化合物をTi、Zr、Hf、Nb化
合物の極近傍またはV、MoとTi、Zr、Hf、Nb
との複合析出物として析出させることができる。100
0℃を越えて焼入れすると、オーステナイト結晶粒が粗
大化し、靱性、延性が低下するのみならず、Ti、Z
r、Hf、Nb化合物の大部分が固溶するため、焼戻し
時にV、Mo化合物とTi、Zr、Hf、Nb化合物と
が別々に析出し距離が長くなる。また、850℃未満で
あるとオーステナイト化が不十分である。900〜95
0℃で焼入れるのが、より好ましい。
【0048】<焼戻し条件>VやMoの析出硬化を利用
して所望の強度を有することができる温度にて焼戻しを
行うと良い。
【0049】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に
説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限
を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範
囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であ
り、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含され
る。
【0050】表1及び表2に示す化学成分(質量%)を
含有し、さらに0.2%Si、0.7%Mnを含有する
供試鋼を150kg真空溶解炉にて溶製し、150kg
のインゴットに鋳造し冷却した。その後25mmφに鍛
造し、1200℃×30分の溶体化処理を施した後、焼
ならし処理し、引張強度が1400〜1500N/mm
2になる様に焼入れ・焼戻し処理した。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】上記で得られた鋼材について、化合物の数
を測定すると共に、遅れ破壊性試験片(図1)、水素放
出試験片(直径10mm×厚さ3mm)を作製した。そ
の後遅れ破壊試験及び水素放出試験を実施した。
【0054】化合物の数の測定は以下のように実施し
た。抽出レプリカ法により抽出した化合物を、透過型電
子顕微鏡(TEM)にて、加速電圧200kV、15万
倍の写真撮影をした。写真撮影は1サンプルに付き、任
意の5箇所とし、各々の500nm四方の視野中で観察
される50nm以下の微細な化合物を数え、5箇所の平
均を算出した。EDX及びGIFマッピングによって各
化合物の組成分析を実施し、1写真に付き、無作為の
V、Mo化合物5個につき、最も近いTi、Zr、H
f、Nb化合物までの距離を測定した。この際、(V、
Mo)群と(Ti、Zr、Hf、Nb)群との複合化合
物となっている場合は、距離0とした。5写真での計2
5個のV、Mo化合物に付き調査し平均距離を算出し
た。
【0055】遅れ破壊試験は以下のように実施した。図
1に示す試験片をアセトン超音波脱脂後、SSRT試験
装置に設置し、30℃、大気中で、クロスヘッド速度2
×10-3mm/minでSSRT試験を行い、大気中で
の試験片の伸びE0を得た。また、同形状の試験片をア
セトン超音波脱脂後、0.5mol/lH2SO4+0.
01mol/lKSCNの液中で1A/dm2で60分
陰極チャージをした。その後水素逃散防止の目的で亜鉛
めっきを施した。亜鉛めっきは、硫酸亜鉛7水和物、硫
酸ナトリウム、硫酸に錯化剤を添加した浴にて、50A
/dm2の電流を3分流すことによって得た。その後、
200時間常温にて保管して鋼中水素濃度を平衡化した
後、クロスヘッド速度2×10-3mm/minでSSR
T試験を行い、チャージ後の試験片の伸びE1を得た。
また、同様に鋼中水素濃度を平衡化した後、100℃×
1時間の熱処理を行い、その後クロスヘッド速度2×1
-3mm/minでSSRT試験を行い、熱負荷後の試
験片の伸びE2を得た。遅れ破壊評価指標として、DF1
=100×(1−E1/E2)により得られる遅れ破壊感
受性、DF2=100×(1−E2/E0)により得られ
る熱負荷がかかった時の遅れ破壊感受性を算出した。
【0056】また、水素放出試験は、以下の2種類の方
法で実施した。水素放出試験(1)として、水素放出試
験片(直径10mm×厚さ3mm)を、pH3に調整し
た30℃の5%NaCl水溶液中にそれぞれ24時間浸
漬した後、錆を機械的研磨により除去して、測定に供し
た。なお、測定装置には、日立東京エレクトロニクス
(株)製超高感度ガス分析装置UG240APNに、資
料の昇温機構として真空理工(株)製E410−710
1型赤外線イメージ炉を組み付けたAPI−MSを用い
た。測定にはキャリアーガスとしてArガスを使用し、
次の条件[測定温度範囲:20〜800℃、昇温速度:
12℃/min、キャリアガス(Ar)流量:800m
l/min]にて測定し、図2で示す水素放出曲線を得
た。また、測定は3回ずつ測定し、100℃以上250
℃未満の温度域で放出される水素量をAppmとし、か
つ250℃以上750℃以下の温度域で放出される水素
量をBppmとして、B/A、Aの最低値を評価値とし
た。
【0057】また水素放出試験(2)として、水素放出
試験片(直径10mm×厚さ3mm)を、pH3に調整
した30℃の5%NaCl水溶液中にそれぞれ24時間
浸漬した後、さらに100℃で1時間放置した後に、錆
を機械的研磨により除去して、上述した手法によりAP
I−MSを用いて測定した。測定は3回ずつ測定し、2
50℃以上750℃以下の温度域で放出される水素量を
Cppmとして、(C−B)/Bの最低値を評価値とし
た。
【0058】上述した試験結果を表3乃至4に示す。
【0059】
【表3】
【0060】この表3は、製造方法とV、Mo化合物、
Ti、Zr、Hf、Nb化合物の大きさ、量、両化合物
間の距離、水素放出試験結果[A、B/A、(C−B)
/Bの値]及び遅れ破壊評価結果(DF1、DF2の値)
を整理した表である。
【0061】この表3から明らかなように、比較例1
は、凝固速度が3℃/分と遅いためV、Mo化合物、T
i、Zr、Hf、Nb化合物の何れの化合物も粗大化し
個数が少ない(請求項3の化合物平均粒径、化合物個数
を満たさない)。またそのため水素トラップ量が全体に
少なく[請求項1のA及び請求項2の(C−B)/Bを
満たさない]、遅れ破壊評価が最も悪い。比較例2は、
焼き入れ温度が800℃と低すぎるため所望の強度が得
られない(請求項1の引張強度1200N/mm 2以上
を満たさない)。比較例3は、凝固速度が8℃/分と比
較例1と同様に遅い。ただし比較例1の凝固速度よりは
速いためV、Mo化合物が小さくなり、そのため水素を
トラップでき、請求項1の0.1≦Aの要件を満たした
が、依然としてTi系化合物が大きく数も少ないため請
求項1のB/Aの要件を満たさず、遅れ破壊評価も悪
い。比較例4は、焼き入れ温度が1150℃と高いため
両化合物間距離が長い(請求項3の両化合物間距離10
0nm以下を満たさない)。そのため請求項1のB/
A、請求項2の(C−B)/Bの値がいずれも小さい。
また遅れ破壊評価はどちらも悪いが特にDF2が悪い。
【0062】上記比較例に対して実施例5は、焼入れ温
度が1100℃と比較例4と同様に高い。ただし比較例
4の焼き入れ温度よりは低いため、請求項1の要件は満
たされた。しかし請求項2の(C−B)/Bの値が小さ
いため、遅れ破壊評価DF1は良いが、DF2が悪い。実
施例6は、焼入れ温度が1050℃と実施例5の焼き入
れ温度よりは50℃低く、推奨範囲よりは50℃高かっ
たため、請求項3の両化合物間距離は比較的大きい方
で、請求項1のA、B/Aの各値は低い方でそれぞれ満
たし、また請求項2の(C−B)/Bの値も満たしてい
た。遅れ破壊評価もどちらも良い。実施例7〜10は、
凝固速度、焼き入れ温度とも推奨範囲のもので、遅れ破
壊評価はいずれも優れていた。
【0063】表3に示す比較例、実施例より明らかなこ
とは、鋼成分が本発明限定範囲内であっても、製造方法
によって化合物の大きさ、距離が異なり、水素放出試
験、遅れ破壊試験結果が異なることである。すなわち、
製造方法を、例えば上述した製造条件の如く、化合物の
大きさ、距離を本発明限定範囲内になるように適正化す
ると、A、B/A、(C−B)/Bの各値がともに大き
くなり、DF1、DF2の各値をともに低下させることが
できる。
【0064】
【表4】
【0065】この表4は、製造方法を適正化した各鋼種
のV、Mo化合物、Ti、Zr、Hf、Nb化合物の大
きさ、量、両化合物間の距離、水素放出試験結果[A、
B/A、(C−B)/Bの値]及び遅れ破壊評価結果
(DF1、DF2の値)を整理した表である。
【0066】表4から明らかなように、比較例11は、
表1の供試材Aを用いたもので、供試材AはTi量が
0.007%と少ない(請求項4を満たさない)ため、
Ti化合物量が少なく(請求項3を満たさない)、化合
物間距離が大きい(請求項3を満たさない)。その結
果、B/Aが小さく(請求項1を満たさない)、(C−
B)/Bが小さい(請求項2を満たさない)。遅れ破壊
評価はどちらも良くないが特にDF2が悪い。
【0067】比較例12は、表1の供試材Cを用いたも
ので、供試材CはV量が0.04%と少ない(請求項4
を満たさない)ため、V化合物量が少ない(請求項3を
満たさない)。その結果、Aが0.1未満(請求項1を
満たさない)で遅れ破壊評価はどちらも良くないが特に
DF1が悪い。
【0068】比較例13は、表1の供試材Dを用いたも
ので、供試材DはTi系量がV量×0.15未満である
(請求項4を満たさない)ため、V化合物量に対して、
Ti化合物量が少ない。その結果、化合物間距離が大き
く(請求項3を満たさない)、B/Aが小さく(請求項
1を満たさない)、(C−B)/Bが小さい(請求項2
を満たさない)。遅れ破壊評価はDF1は良いがDF2
悪い。
【0069】比較例14は、表1の供試材Eを用いたも
ので、供試材EはV量が0.75%と多くTi系量がV
量×0.15未満である(請求項4を満たさない)た
め、V化合物量が非常に多いのに対して、Ti化合物量
が少ない。その結果、上記比較例13と同様に、化合物
間距離が大きく(請求項3を満たさない)、B/Aが小
さく(請求項1を満たさない)、(C−B)/Bが小さ
い(請求項2を満たさない)。遅れ破壊評価はDF1
大変優れるがDF2が悪い。
【0070】比較例15は、表1の供試材Gを用いたも
ので、供試材Gは請求項4のTi系量がV量×0.15
以上を満たす。しかし、Mo量が少ない(請求項6を満
たさない)。そのためV系化合物量が少ない(請求項3
を満たさない)。その結果、Aが0.1未満(請求項1
を満たさない)で遅れ破壊評価はどちらも良くない。
【0071】比較例16は、表1の供試材Iを用いたも
ので、供試材Iは請求項4、6の要件を満たす。しか
し、O量が0.0077%と多い(請求項7を満たさな
い)。そのため化合物が粗大化し面積当たりの数が減少
し、V系化合物量が少なくTi系化合物平均粒径が大き
い(請求項3を満たさない)。そのため、Aが0.1未
満(請求項1を満たさない)でB/A、(C−B)/B
の各値も小さい値で満たしている。その結果遅れ破壊評
価はどちらも良くない。
【0072】比較例17は、表1の供試材Jを用いたも
ので、供試材Jは請求項4,6の要件を満たす。しか
し、N量が0.0125%と多い(請求項7を満たさな
い)。そのため化合物が粗大化し面積当たりの数が減少
し、V系、Ti系化合物量が共に少なくTi系化合物平
均粒径が大きく化合物間距離も大きい(請求項3を満た
さない)。そのため、Aが0.1未満(請求項1を満た
さない)でB/Aが小さく(請求項1を満たさない)、
(C−B)/Bが小さい(請求項2を満たさない)。そ
の結果遅れ破壊評価はどちらも悪い。
【0073】比較例18は、表1の供試材Lを用いたも
ので、供試材Lは請求項4、6の要件を満たす。しか
し、C量が少ない(請求項7を満たさない)ため、所望
の強度が得られない(請求項1の引張強度1200N/
mm2以上を満たさない)。
【0074】実施例19は、表1の供試材Hを用いたも
ので、供試材Hは請求項4,6の要件を満たす。しか
し、S量が多い(請求項7を満たさない)ため、化合物
が粗大化し面積当たりの数が減少し、請求項3のV系、
Ti系化合物量、平均粒径はいずれも限界値に近い値で
あったが、化合物間距離が大きい(請求項3を満たさな
い)。また、B/Aは限界値に近い値で請求項1は満た
したが、(C−B)/Bが小さい(請求項2を満たさな
い)。その結果、遅れ破壊評価はDF1は54とまずま
ずであったが、DF2が59と良くない。
【0075】実施例20は、表1の供試材Bを用いたも
ので、供試材BはTi系量が多い(請求項4を満たさな
い)が、請求項1乃至3の要件は全て満たし、遅れ破壊
評価もDF1、DF2とも50以下と良い。ただし、用途
によっては靱性が問題となることが懸念され、用途が限
定される可能性がある。
【0076】実施例21は、表1の供試材Fを用いたも
ので、供試材FはMo量が多い(請求項6を満たさな
い)が、請求項1乃至3の要件は全て満たし、遅れ破壊
評価も良い。ただし、用途によっては靱性が問題となる
ことが懸念され、用途が限定される可能性がある。
【0077】実施例22は、表1の供試材Kを用いたも
ので、供試材KはC量が多い(請求項7を満たさない)
が、請求項1乃至3の要件は全て満たし、遅れ破壊評価
も良い。ただし、用途によっては靱性が問題となること
が懸念され、用途が限定される可能性がある。
【0078】実施例23は、表2の供試材Mを用いたも
ので、供試材MはV量が0.1%未満と少なく且つTi
系量も0.1%未満と少ない上にそのTi系量がV量×
0.75未満と少ない(請求項5を満たさない)。しか
し、請求項1乃至3の要件は全て満たし、DF1、DF2
とも50以下で遅れ破壊評価も良い。
【0079】実施例24は、表2の供試材Nを用いたも
ので、供試材NはTi系量がV量×0.75以上を満た
すもののV量が0.1%未満と少なく、またTi系量が
0.3%を超えて多い(請求項5を満たさない)。しか
し、請求項1乃至3の要件は全て満たし、DF1、DF2
とも50以下で遅れ破壊評価も良い。
【0080】実施例25は、表2の供試材Oを用いたも
ので、供試材OはV量が0.70%と多いためTi系量
がV量×0.75未満と少ない(請求項5を満たさな
い)。しかし、請求項1乃至3の要件は全て満たし、D
1、DF2とも50以下で遅れ破壊評価も良い。
【0081】実施例26は、表2の供試材Pを用いたも
ので、供試材Pは請求項5の要件を満たすと共に、請求
項1乃至3の要件は全て満たし、DF1、DF2とも50
以下で遅れ破壊評価も良い。
【0082】実施例27は、表2の供試材Qを用いたも
ので、供試材QはV量が0.1%以上を満たすものの、
Ti系量が0.1%未満と少ない上にそのTi系量がV
量×0.75未満と少ない(請求項5を満たさない)。
しかし、請求項1乃至3の要件は全て満たし、DF1
DF2とも40以下で遅れ破壊評価は極めて良い。
【0083】実施例28と29は、表2の供試材RとS
をそれぞれ用いたもので、各供試材RとSはV量が0.
1%以上で且つTi系量がV量×0.75以上を満たす
ものの、Ti系量が0.3%を超えて多い(請求項5を
満たさない)。しかし、請求項1乃至3の要件は全て満
たし、DF1、DF2とも40以下で遅れ破壊評価は極め
て良い。
【0084】実施例30と31は、表2の供試材TとU
をそれぞれ用いたもので、各供試材TとUは請求項5の
要件を満たすことはもとより、請求項1乃至3の要件は
全て満たし、DF1、DF2とも40以下で遅れ破壊評価
も極めて良い。
【0085】表4に示す比較例、実施例より明らかなこ
とは、成分によって化合物の大きさ、数、距離が異な
り、水素放出試験、遅れ破壊試験結果が異なる。すなわ
ち、V、Mo、Ti、Zr、Hf、Nb成分を本発明範
囲内とした場合に、A、B/A、(C−B)/Bの各値
が共に大きくなり、DF1、DF2の値を共に低下させる
ことができる。更に、Al、W、B、C、N、O、Sの
各成分の量を本発明範囲内にすると、さらに遅れ破壊評
価DF1、DF2の値を共に低下させることができること
がわかる。
【0086】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
熱負荷や動的応力負荷が存在する用途であっても耐遅れ
破壊性を発揮し得る、耐遅れ破壊性に優れた高強度鋼が
実現でき、こうした高強度鋼はボルトを始めとする各種
構造材料として適用が期待でき、産業上大変有用であ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るSSRT試験用試験片の説明図で
ある。
【図2】本発明に係る加熱時の水素放出曲線のグラフ図
である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 並村 裕一 兵庫県神戸市灘区灘浜東町2番地 株式会 社神戸製鋼所神戸製鉄所内 (72)発明者 茨木 信彦 兵庫県神戸市灘区灘浜東町2番地 株式会 社神戸製鋼所神戸製鉄所内

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 引張強度が1200N/mm2以上の高
    強度鋼であって、pH3.0以下の酸性溶液中に24時
    間浸漬した直径10mm×厚み3mmの鋼材を、真空中
    または不活性ガス中で常温から12℃/minの昇温速
    度で加熱した場合に、100℃以上250℃未満の温度
    域で放出される水素量をAppm、250℃以上750
    ℃以下の温度域で放出される水素量をBppmとしたと
    き、これら水素量A、Bの値が0.01≦B/Aかつ
    0.1≦Aを満たすことを特徴とする耐遅れ破壊性に優
    れた高強度鋼。
  2. 【請求項2】 pH3.0以下の酸性溶液中に24時間
    浸漬した上記直径10mm×厚み3mmの鋼材を、更に
    100℃で1時間放置した後に、真空中または不活性ガ
    ス中で常温から12℃/minの昇温速度で加熱した場
    合に、250℃以上750℃以下の温度域で放出される
    水素量をCppmとしたとき、水素量C、Bの値が(C
    −B)/B≧0.01を満たす請求項1に記載の耐遅れ
    破壊性に優れた高強度鋼。
  3. 【請求項3】 V、Moから選ばれる元素の1種以上を
    含有する化合物(イ)と、Ti、Zr、Hf、Nbから
    選ばれる元素の1種以上を含有する化合物(ロ)が、い
    ずれも平均粒径が50nm以下であって、しかも鋼中に
    化合物(イ)が10個/(500nm)2以上、化合物
    (ロ)が5個/(500nm)2以上存在し、かつ、化
    合物(イ)から最も近い化合物(ロ)までの距離の平均
    が100nm以下である請求項1又は2に記載の耐遅れ
    破壊性に優れた高強度鋼。
  4. 【請求項4】 Ti、Zr、Hf、Nbから選ばれる元
    素の1種以上を合計で0.01〜0.50%(質量%、
    以降同じ)、Vを0.05%以上含有し、且つ、各含有
    量がV×0.15≦(Ti+Zr+Hf+Nb)の関係
    を満たすものである請求項1乃至3のいずれかに記載の
    耐遅れ破壊性に優れた高強度鋼。
  5. 【請求項5】 Ti、Zr、Hf、Nbから選ばれる元
    素の1種以上を合計で0.1〜0.3%(質量%、以降
    同じ)、Vを0.1%以上含有し、且つ、各含有量がV
    ×0.75≦(Ti+Zr+Hf+Nb)の関係を満た
    すものである請求項1乃至3のいずれかに記載の耐遅れ
    破壊性に優れた高強度鋼。
  6. 【請求項6】 更に、Moを0.2〜1.1%を含有す
    るものである請求項4又は5に記載の耐遅れ破壊性に優
    れた高強度鋼。
  7. 【請求項7】 更に、C:0.30〜0.50%、N:
    0.004〜0.01%、O:0.0010〜0.00
    5%、S:0.003〜0.015%を含有するもので
    ある請求項4乃至6のいずれかに記載の耐遅れ破壊性に
    優れた高強度鋼。
  8. 【請求項8】 更に、Al:0.05%以下、W:0.
    20%以下、B:0.003%以下よりなる群から選択
    される1種以上を含有するものである請求項4乃至7の
    いずれかに記載の耐遅れ破壊性に優れた高強度鋼。
  9. 【請求項9】 更に、Cr:1.5%以下、Ni:2.
    00%以下、Cu:1.00%以下よりなる群から選択
    される1種以上を含有するものである請求項4乃至8の
    いずれかに記載の耐遅れ破壊性に優れた高強度鋼。
  10. 【請求項10】 更に、Mg:0.01%以下、Ca:
    0.01%以下、REM:0.01%以下から選択され
    る1種以上を含有するものである請求項4乃至9のいず
    れかに記載の耐遅れ破壊性に優れた高強度鋼。
  11. 【請求項11】 カーエンジン周辺機器に用いられるも
    のである請求項1乃至10のいずれかに記載の耐遅れ破
    壊性に優れた高強度鋼。
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