JP2003239083A - 装飾品の表面処理方法、装飾品および時計 - Google Patents

装飾品の表面処理方法、装飾品および時計

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Abstract

(57)【要約】 【課題】長期間にわたって優れた美的外観を保持するこ
とができる装飾品を提供すること、前記装飾品を提供す
ることができる表面処理方法を提供すること、前記装飾
品を備えた時計を提供すること。 【解決手段】本発明の表面処理方法は、基材2(1a)
の表面の少なくとも一部に、下地層40を形成する工程
(1b)と、乾式メッキ法により、主としてクロム化合
物で構成される被膜3を形成する工程(1c)とを有す
る。下地層40は、Cu、Co、Pd、Au、Ag、I
n、Sn、Ni、Ti、Zn、Cr、AlおよびFeの
うちの少なくとも1種の金属または該金属を含む合金を
主とする材料で構成されるものである。また、被膜3
は、クロムの酸化物、窒化物および炭化物のうちの少な
くとも1種を含むものである。被膜3の平均厚さは、5
〜100μmである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、装飾品の表面処理
方法、装飾品および時計に関する。
【0002】
【従来の技術】時計用外装部品のような装飾品には、優
れた美的外観が要求される。従来、このような目的を達
成するために、例えば、装飾品の構成材料として、P
d、Rd、Pt等の銀白色の金属材料を用いてきた。し
かし、これらの金属材料は、いずれも貴金属であり、装
飾品の製造コストが高くなる等の問題点を有していた。
【0003】また、前述の貴金属に代わる銀白色の材料
としては、Ti、ステンレス鋼や、TiN、TiCN等
のTi化合物等が挙げられる。しかし、これらの材料
は、前述した貴金属に比べ、反射率が低く、高級感に劣
っていた。このため、得られる装飾品は、満足な美的外
観が得られないことがあった。また、従来用いられてき
た材料では、重厚な金属光沢を有する黒色の装飾品を製
造するのが困難であった。
【0004】また、前述したように装飾品には、優れた
美的外観が要求されるが、前記のような材料で構成され
た装飾品(特に、時計用外装部品や装身具等)は、その
表面に傷が付き易く、長期間使用することにより美的外
観が著しく低下する等の問題点を有していた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、長期
間にわたって優れた美的外観を保持することができる装
飾品を提供すること、前記装飾品を提供することができ
る表面処理方法を提供すること、前記装飾品を備えた時
計を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】このような目的は、下記
(1)〜(16)の本発明により達成される。また、
(17)〜(22)であるのが好ましい。
【0007】(1) 基材上の少なくとも一部に、少な
くとも1層の下地層を形成する工程と、前記下地層上
に、乾式メッキ法により、主としてクロム化合物で構成
される被膜を形成する工程とを有する製造方法であっ
て、前記下地層のうち少なくとも1層は、Cu、Co、
Pd、Au、Ag、In、Sn、Ni、Ti、Zn、C
r、AlおよびFeのうちの少なくとも1種の金属また
は該金属を含む合金を主とする材料で構成されるもので
あり、前記被膜は、クロムの酸化物、窒化物および炭化
物のうちの少なくとも1種を含むものであり、かつ、前
記被膜の平均厚さが5〜100μmであることを特徴と
する装飾品の表面処理方法。
【0008】(2) 前記下地層のうち少なくとも1層
は、その一方の面側と他方の面側との電位差を緩和する
緩衝層である上記(1)に記載の装飾品の表面処理方
法。
【0009】(3) 前記下地層は、金属化合物で構成
されるものである上記(1)または(2)に記載の装飾
品の表面処理方法。
【0010】(4) 前記装飾品は、前記下地層を2層
以上有するものである上記(1)ないし(3)のいずれ
かに記載の装飾品の表面処理方法。
【0011】(5) 隣接する前記下地層は、互いに共
通の元素を含む材料で構成されたものである上記(4)
に記載の装飾品の表面処理方法。
【0012】(6) 前記共通の元素は、Cuである上
記(5)に記載の装飾品の表面処理方法。
【0013】(7) 前記下地層を被覆する工程の前
に、前記基材の表面の少なくとも一部に、清浄化処理を
施す工程を有する上記(1)ないし(6)のいずれかに
記載の装飾品の表面処理方法。
【0014】(8) 前記被膜を被覆する工程の前に、
前記下地層の表面の少なくとも一部に、清浄化処理を施
す工程を有する上記(1)ないし(7)のいずれかに記
載の装飾品の表面処理方法。
【0015】(9) 前記被膜は、2層以上の積層体で
ある上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の装飾品
の表面処理方法。
【0016】(10) 前記基材は、Cu、Zn、N
i、Ti、Alまたはこれらのうち少なくとも1種を含
む合金で構成されるものである上記(1)ないし(9)
のいずれかに記載の装飾品の表面処理方法。
【0017】(11) 前記基材は、その表面の少なく
とも一部に、鏡面加工、スジ目加工、梨地加工から選択
される表面加工が施されたものである上記(1)ないし
(10)のいずれかに記載の装飾品の表面処理方法。
【0018】(12) 前記被膜を形成する工程の後、
さらに、前記被膜上の一部に、マスキングを形成する工
程と、剥離剤を用いて、前記マスキングが被覆されてい
ない部位の前記被膜を除去する工程と、前記マスキング
を除去する工程とを有する上記(1)ないし(11)の
いずれかに記載の装飾品の表面処理方法。
【0019】(13) 上記(1)ないし(12)のい
ずれかに記載の装飾品の表面処理方法を用いて製造され
たことを特徴とする装飾品。
【0020】(14) 少なくともその一部が皮膚に接
触して用いられる上記(13)に記載の装飾品。
【0021】(15) 装飾品は、時計用外装部品であ
る上記(13)または(14)に記載の装飾品。
【0022】(16) 上記(13)ないし(15)の
いずれかに記載の装飾品を備えたことを特徴とする時
計。
【0023】(17) 前記被膜を被覆する工程の前
に、前記基材の表面の少なくとも一部に、清浄化処理を
施す工程を有する上記(1)ないし(12)のいずれか
に記載の装飾品の表面処理方法。
【0024】(18) 前記被膜は、イオンプレーティ
ングにより形成されたものである上記(1)ないし(1
2)のいずれかに記載の装飾品の表面処理方法。
【0025】(19) 前記積層体を構成する複数の層
のうち、前記装飾品の最外表面側の層以外の層の少なく
とも1層は、主としてクロムの窒化物で構成されたもの
である上記(9)に記載の装飾品の表面処理方法。
【0026】(20) 前記被膜のビッカース硬度Hv
が1500以上である上記(1)ないし(12)のいず
れかに記載の装飾品の表面処理方法。
【0027】(21) 前記基材は、鋳造または金属粉
末射出成形により作製されたものである上記(1)ない
し(12)のいずれかに記載の装飾品の表面処理方法。
【0028】(22) 前記マスキングの平均厚さは、
100〜2000μmである上記(12)に記載の装飾
品の表面処理方法。
【0029】
【発明の実施の形態】以下、本発明の表面処理方法、装
飾品および時計の好適な実施形態について、添付図面を
参照しつつ説明する。
【0030】図1は、本発明の表面処理方法の第1実施
形態を示す断面図である。図1に示すように、本実施形
態の表面処理方法は、基材2の表面の少なくとも一部
(1a)に、下地層40を形成する工程(1b)と、下
地層40の表面の少なくとも一部に、乾式メッキ法によ
り、主としてクロム化合物で構成される被膜3を形成す
る工程(1c)とを有する。
【0031】[基材]基材2は、いかなる材料で構成さ
れるものであってもよく、金属材料で構成されるもので
あっても、非金属材料で構成されるものであってもよ
い。基材2が金属材料で構成される場合、特に優れた強
度特性を有する装飾品1Aを提供することができる。
【0032】また、基材2が金属材料で構成される場
合、基材2の表面粗さが比較的大きい場合であっても、
後述する下地層40、被膜3を形成する際のレベリング
効果により、得られる装飾品1Aの表面粗さを小さくす
ることができる。例えば、基材2の表面に対する切削加
工、研磨加工などによる機械加工を省略しても、鏡面仕
上げを行うことが可能となったり、基材2がMIM法に
より成形されたもので、その表面が梨地面である場合で
も、容易に鏡面にすることができる。これにより、光沢
に優れた装飾品を得ることができる。
【0033】基材2が非金属材料で構成される場合、比
較的軽量で携帯し易く、かつ、重厚な外観を有する装飾
品1Aを提供することができる。また、基材2が非金属
材料で構成される場合、比較的容易に、所望の形状に成
形することができる。このため、後述するクロム化合物
では、直接成形するのが困難な形状の装飾品1Aであっ
ても、比較的容易に提供することができる。また、基材
2が非金属材料で構成される場合、電磁ノイズを遮蔽す
る効果も得られる。
【0034】基材2を構成する金属材料としては、例え
ば、Fe、Cu、Zn、Ni、Mg、Cr、Mn、M
o、Nb、Al、V、Zr、Sn、Au、Pd、Pt、
Ag等の各種金属や、これらのうち少なくとも1種を含
む合金等が挙げられる。この中でも特に、Cu、Zn、
Ni、Ti、Alまたはこれらのうち少なくとも1種を
含む合金が好ましい。基材2が前述したような材料で構
成されることにより、基材2と、後述する下地層40と
の密着性が特に優れたものとなる。また、基材2が、C
u、Zn、Niまたはこれらのうち少なくとも1種を含
む合金で構成されたものであると、基材2と、後述する
下地層40との密着性が特に優れたものとなるととも
に、基材2の加工性が向上し、基材2の成形の自由度が
さらに増す。
【0035】また、基材2を構成する非金属材料として
は、例えば、プラスチックやセラミックス、石材、木材
等が挙げられる。プラスチックとしては、各種熱可塑性
樹脂、各種熱硬化性樹脂が挙げられる。基材2がプラス
チックで構成される場合、比較的軽量で携帯し易く、か
つ、重厚な外観を有する装飾品1Aを得ることができ
る。
【0036】また、基材2がプラスチックで構成される
場合、比較的容易に、所望の形状に成形することができ
る。このため、複雑な形状を有する装飾品1Aであって
も、比較的容易に製造することができる。また、基材2
がプラスチックで構成される場合、電磁ノイズを遮蔽す
る効果が得られる。
【0037】セラミックスとしては、例えば、Al
23、SiO2、TiO2、Ti23、ZrO2、Y
23、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム等の
酸化物系セラミックス、AlN、Si34、SiN、T
iN、BN、ZrN、HfN、VN、TaN、NbN、
CrN、Cr2N等の窒化物系セラミックス、グラファ
イト、SiC、ZrC、Al43、CaC2、WC、T
iC、HfC、VC、TaC、NbC等の炭化物系のセ
ラミックス、ZrB、MoB等のホウ化物系のセラミ
ックス、あるいは、これらのうちの2以上を任意に組み
合わせた複合セラミックスが挙げられる。基材2が前記
のようなセラミックスで構成される場合、高強度、高硬
度の装飾品1Aを得ることができる。
【0038】基材2の製造方法は、特に限定されない。
基材2が金属材料で構成される場合、その製造方法とし
ては、例えば、プレス加工、切削加工、鍛造加工、鋳造
加工、粉末冶金焼結、金属粉末射出成形(MIM)、ロ
ストワックス法等が挙げられるが、この中でも特に、鋳
造加工または金属粉末射出成形(MIM)が好ましい。
鋳造加工、金属粉末射出成形(MIM)は、特に、加工
性に優れている。このため、これらの方法を用いた場
合、複雑な形状の基材2を比較的容易に得ることができ
る。
【0039】金属粉末射出成形(MIM)は、通常、以
下のようにして行われる。まず、金属粉と有機バインダ
ーとを含む材料を混合、混練して混練物を得る。次に、
この混練物を射出成形することにより成形体を形成す
る。その後、この成形体に対して、脱脂処理(脱バイン
ダー処理)を施し、脱脂体を得る。この脱脂処理は、通
常、減圧条件下で、加熱することにより行われる。さら
に、得られた脱脂体を焼結することにより、焼結体を得
る。この焼結処理は、通常、前記脱脂処理より高温で加
熱することにより行われる。本発明では、以上のように
して得られる焼結体を基材として用いることができる。
【0040】また、基材2が前記のようなプラスチック
で構成される場合、その製造方法としては、例えば、圧
縮成形、押出成形、射出成形、光造形等が挙げられる。
【0041】また、基材2が前記のようなセラミックス
で構成される場合、その製造方法は、特に限定されない
が、金属粉末射出成形(MIM)であるのが好ましい。
金属粉末射出成形(MIM)は、特に、加工性に優れて
いるため、複雑な形状の基材2を比較的容易に得ること
ができる。
【0042】また、基材2の表面に対しては、例えば、
鏡面加工、スジ目加工、梨地加工等の表面加工が施され
ているのが好ましい。これにより、得られる装飾品1A
の表面の光沢具合にバリエーションを持たせることが可
能となり、得られる装飾品1Aの装飾性をさらに向上さ
せることができる。
【0043】また、このような表面加工を施した基材2
を用いて製造される装飾品1Aは、被膜3に対して前記
表面加工を直接施すことにより得られるものに比べて、
被膜3のギラツキ等が抑制されたものとなり、特に美的
外観に優れたものとなる。
【0044】また、基材2と下地層40との密着性の向
上等を目的として、後述する下地層40の形成に先立
ち、基材2に対して、前処理を施してもよい。前処理と
しては、例えば、ブラスト処理、アルカリ洗浄、酸洗
浄、水洗、有機溶剤洗浄、ボンバード処理等の清浄化処
理、エッチング処理等が挙げられるが、この中でも特
に、清浄化処理が好ましい。基材2の表面に、清浄化処
理を施すことにより、基材2と下地層40との密着性が
特に優れたものとなる。 [下地層の形成]基材2の表面に、下地層40を形成す
る(1b)。下地層40は、例えば、基材2と被膜3と
の電位差を緩和する緩衝層として機能する。これによ
り、基材2と被膜3との電位差による腐食(異種金属接
触腐食)の発生をより効果的に防止することが可能とな
る。
【0045】また、下地層40は、例えば、基材2と被
膜3との密着性を向上させる機能や、基材2の孔、キズ
等をレベリング(ならし)により補修する機能等を有す
るものであってもよい。
【0046】下地層40の形成方法としては、例えば、
電解メッキ、浸漬メッキ、無電解メッキ等の湿式メッキ
法、熱CVD、プラズマCVD、レーザーCVD等の化
学蒸着法(CVD)、真空蒸着、スパッタリング、イオ
ンプレーティング等の乾式メッキ法、溶射、金属箔の接
合等が挙げられるが、この中でも特に、湿式メッキ法ま
たは乾式メッキ法が好ましい。
【0047】下地層40の形成方法として、湿式メッキ
法または乾式メッキ法を用いることにより、形成される
下地層40は、基材2との密着性に特に優れたものとな
る。その結果、得られる装飾品1Aの長期耐久性は、特
に優れたものとなる。
【0048】本発明においては、下地層40は、Cu、
Co、Pd、Au、Ag、In、Sn、Ni、Ti、Z
n、Cr、AlおよびFeのうちの少なくとも1種の金
属または該金属を含む合金を主とする材料で構成されて
いる。また、下地層40は、前述した材料以外の成分を
含むものであってもよい。このような成分としては、例
えば、前記金属材料のうち少なくとも1種による金属化
合物(例えば、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物
等)等が挙げられる。また、下地層40の構成材料は、
基材2を構成する材料または被膜3を構成する材料のう
ち少なくとも1種を含むものであるのが好ましい。これ
により、基材2、被膜3との密着性がさらに向上する。
【0049】下地層40の標準電位は、基材2の標準電
位と、被膜3の標準電位との間の値であるのが好まし
い。すなわち、下地層40は、その標準電位が、基材2
の構成材料の標準電位と、被膜3の構成材料の標準電位
との間の値である材料で構成されたものであるのが好ま
しい。これにより、基材2と被膜3との電位差による腐
食(異種金属接触腐食)の発生をより効果的に防止する
ことが可能となる。
【0050】下地層40の平均厚さは、特に限定されな
いが、例えば、0.1〜20.0μmであるのが好まし
く、0.5〜10.0μmであるのがより好ましい。下
地層40の平均厚さが前記下限値未満であると、下地層
40の効果が十分に発揮されない可能性がある。一方、
下地層40の平均厚さが前記上限値を超えると、下地層
40の各部位における膜厚のバラツキが大きくなる傾向
を示す。また、下地層40の内部応力が高くなり、クラ
ックが発生し易くなる。
【0051】このように、基材2の表面に、下地層40
を形成することにより、基材2と被膜3との密着性、装
飾品1Aの耐食性は、特に優れたものとなる。その結
果、装飾品1Aは、特に耐久性に優れたものとなる。
【0052】なお、下地層40は、図示の構成では基材
2の全面に形成されているが、基材2の表面の少なくと
も一部に形成されるものであればよい。
【0053】また、下地層40の各部位における組成
は、一定であっても、一定でなくてもよい。例えば、下
地層40は、その厚さ方向に沿って、組成が順次変化す
るもの(傾斜材料)であってもよい。
【0054】また、下地層40は、緩衝層として機能す
るものに限定されない。例えば、下地層40は、保管時
(被膜3の形成の工程までの間)等に腐食が発生するの
を防止する機能等を有するものであってもよい。
【0055】[被膜の形成]下地層40の表面に、被膜
3を形成する(1c)。
【0056】本発明は、被膜3が主としてクロム化合物
で構成されている点に特徴を有する。このように、被膜
3が主としてクロム化合物で構成されることにより、被
膜3は、優れた光沢を有し、高硬度で、耐擦傷性(耐磨
耗性)に優れたものとなる。その結果、最終的に得られ
る装飾品1Aは、長期間にわたって優れた美的外観を保
持できるものとなる。また、被膜3が主としてクロム化
合物で構成されることにより、被膜3は、適度な潤滑性
(摺動性)を有するものとなる。これにより、装飾品1
Aが摺動させて用いるようなもの(例えば、ネジ部を有
するようなものや、後述するような回転ベゼル、ボタ
ン、ネジロック式りゅうず、歯車、輪列受け等)である
場合、その操作性が向上する。
【0057】特に、本発明においては、被膜3は、少な
くともクロムの酸化物、窒化物および炭化物のうちの少
なくとも1種を含むものである。これにより、上記のよ
うな効果に加え、さらに以下のような効果が得られる。
【0058】すなわち、被膜3がクロムの酸化物、炭化
物のうち少なくとも1種を含む材料で構成されたもので
あると、被膜3は美的外観に優れた黒色の金属光沢を有
するものとなる。その結果、最終的に得られる装飾品1
Aは、従来では製造するのが困難であった、重厚な黒色
の金属光沢を有するものとすることができる。
【0059】また、被膜3がクロムの窒化物を含む材料
で構成されたものであると、被膜3は、特に明るい金属
光沢を有するものとなるとともに、高硬度で、さらに優
れた耐擦傷性を有するものとなる。その結果、最終的に
得られる装飾品1Aは、さらに長期間にわたって、優れ
た美的外観を保持できるものとなる。このような効果
は、被膜3がCrNで構成される場合に、特に顕著なも
のとなる。
【0060】クロムの酸化物としては、例えば、Cr
O、CrCO、CrNO、CrCNO等が挙げられる。
また、クロムの窒化物としては、例えば、CrN、Cr
CN、CrNO、CrCNO等が挙げられる。また、ク
ロムの炭化物としては、例えば、CrC、CrCO、C
rCN、CrCNO等が挙げられる。
【0061】また、被膜3は、クロムの酸化物、窒化物
または炭化物以外の成分を含むものであってもよい。こ
のような成分としては、各種金属材料(ただし、合金を
含む)、クロムのハロゲン化物(例えば、CrCl、C
rBr、CrI等)、硫化物(例えば、CrS等)、ケ
イ化物(CrSi)等が挙げられる。
【0062】被膜3は、乾式メッキ法(気相成膜法)に
より形成する。乾式メッキ法を用いて被膜3を形成する
ことにより、基材2、下地層40との密着性に優れた被
膜3を得ることができる。その結果、得られる装飾品1
Aは、耐食性、耐久性に優れたものとなる。また、乾式
メッキ法を用いることにより、高密度の被膜3を形成す
ることが可能となる。このため、被膜3は、高硬度で、
耐摩耗性に優れたものとなり、結果として、装飾品1A
は、長期間にわたって優れた美的外観を保持できるもの
となる。
【0063】また、乾式メッキ法を用いて被膜3を形成
することにより、以下のような効果が得られる。すなわ
ち、後述するイオンプレーティングの説明で代表される
ように、雰囲気ガスの組成を適宜選択することにより、
容易に、所望の組成を有する被膜3を形成することがで
きる。このように、被膜3の組成を容易に調整すること
により、被膜3の特性(例えば、色、光沢度、硬度等)
を調整することが可能となる。
【0064】乾式メッキ法としては、例えば、熱CV
D、プラズマCVD、レーザーCVD等の化学蒸着法
(CVD)、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレー
ティング、イオン注入等が挙げられるが、この中でも特
に、イオンプレーティングが好ましい。
【0065】乾式メッキ法としてイオンプレーティング
を用いることにより、均質で、かつ基材2、下地層40
との密着性が特に優れた被膜3を比較的容易に得ること
ができる。その結果、得られる装飾品1Aの耐久性は、
さらに向上する。また、イオンプレーティングを用いる
ことにより、特に高密度の被膜3を形成することが可能
となる。その結果、装飾品1Aは、長期間にわたって特
に優れた美的外観を保持できるものとなる。
【0066】イオンプレーティングは、例えば、以下の
ような条件で行うのが好ましい。イオンプレーティング
時におけるイオン化電圧は、例えば、15〜200Vで
あるのが好ましく、20〜130Vであるのがより好ま
しい。イオン化電圧が前記範囲の値であると、基材2、
下地層40との密着性に優れた被膜3を形成することが
できる。また、形成される被膜3は、各部位における膜
厚のバラツキが小さいものとなり、内部応力が小さく、
クラックが発生し難いものとなる。
【0067】イオンプレーティング時におけるイオン化
電流は、例えば、5〜150Aであるのが好ましく、1
0〜30Aであるのがより好ましい。イオン化電流が前
記範囲の値であると、基材2との密着性に優れた被膜3
を形成することができる。また、形成される被膜3は、
各部位における膜厚のバラツキが小さいものとなり、内
部応力が小さく、クラックが発生し難いものとなる。
【0068】被膜3をイオンプレーティングにより形成
する場合、その組成は、雰囲気ガスの組成により制御す
ることができる。例えば、上述のようなイオンプレーテ
ィングを、酸素を含む雰囲気ガス中で行うことにより、
クロムの酸化物で構成される被膜3を形成することがで
きる。同様に、イオンプレーティングを、窒素を含む雰
囲気ガス中で行うことにより、クロムの窒化物で構成さ
れる被膜3を形成することができ、また、アセチレン等
の炭化水素を含む雰囲気ガス中で行うことにより、クロ
ムの炭化物で構成される被膜3を形成することができ
る。
【0069】イオンプレーティング時における雰囲気の
圧力は、特に限定されないが、1×10−2〜5×10
−1Pa程度であるのが好ましく、1×10−1〜3×
10 −1Pa程度であるのが好ましい。
【0070】本発明では、乾式メッキ法により形成され
る被膜3の平均厚さは、5〜100μmである。被膜3
の平均厚さをこの範囲の値にすることにより、被膜3
は、優れた光沢と耐擦傷性とを有するものとなる。その
結果、長期間にわたって優れた美的外観を有する装飾品
1Aを得ることができる。一方、被膜3の平均厚さが5
μm未満であると、被膜3の効果が十分に得られなくな
る。また、被膜3にピンホールが発生し易くなり、得ら
れる装飾品1Aの美的外観が低下する。また、被膜3の
平均厚さが100μmを超えると、被膜3の内部応力が
高くなり、被膜3と下地層40との密着性が低下した
り、クラックが発生し易くなる。その結果、装飾品1A
の耐久性が低下し、安定した美的外観が得られなくな
る。上述したように、本発明では、乾式メッキ法により
形成される被膜3の平均厚さは、5〜100μmである
が、5〜30μmであるのが好ましく、5〜15μmで
あるのがより好ましい。被膜3の平均厚さがこのような
範囲の値であると、上述したような効果はより顕著なも
のとなる。
【0071】以上のようにして形成される被膜3は、ビ
ッカース硬度Hvが、1500以上であるのが好まし
く、1800以上であるのがより好ましく、2100以
上であるのがさらに好ましい。被膜3のビッカース硬度
Hvが前記下限値未満であると、装飾品1Aの用途によ
っては、十分な耐擦傷性が得られない可能性がある。
【0072】また、被膜3の表面の摩耗係数(対鋼)
は、装飾品1Aの用途等により異なるが、0.8以下で
あるのが好ましく、0.75以下であるのがより好まし
く、0.7以下であるのがさらに好ましい。被膜3の表
面の摩耗係数が前記上限値未満であると、装飾品1Aの
滑り性が向上し、ザラツキ感を軽減、防止することがで
き、装飾品1Aが皮膚等に接触したときの違和感、不快
感を軽減、防止することができる。
【0073】なお、被膜3の各部位における組成は、一
定であっても、一定でなくてもよい。例えば、被膜3
は、その厚さ方向に沿って、組成が順次変化するもの
(傾斜材料)であってもよい。
【0074】また、被膜3は、図示の構成では下地層4
0の全面に形成されているが、基材2の表面の少なくと
も一部に形成されるものであればよい。以上説明したよ
うな表面処理方法により、装飾品1Aが得られる。
【0075】装飾品1Aは、装飾性を備えた物品であれ
ばいかなるものでもよいが、例えば、置物等のインテリ
ア、エクステリア用品、宝飾品、時計ケース(胴、裏蓋
等)、時計バンド(バンド中留、バンド・バングル着脱
機構等を含む)、文字盤、時計用針、ベゼル(例えば、
回転ベゼル等)、りゅうず(例えば、ネジロック式りゅ
うず等)、ボタン等の時計用外装部品、ムーブメントの
地板、歯車、輪列受け、回転錘等の時計用内装部品、メ
ガネ、ネクタイピン、カフスボタン、指輪、ネックレ
ス、ブレスレット、アンクレット、ブローチ、ペンダン
ト、イヤリング、ピアス等の装身具、ライターまたはそ
のケース、ゴルフクラブ等のスポーツ用品、銘板、パネ
ル、賞杯、その他ハウジング等を含む各種機器部品、各
種容器等が挙げられる。この中でも特に、少なくともそ
の一部が皮膚に接触して用いられるものが好ましく、時
計用外装部品がより好ましい。時計用外装部品は、装飾
品として外観の美しさが要求されるとともに、実用品と
して、耐久性、耐食性、耐摩耗性や、優れた触感等が要
求されるが、本発明の表面処理方法によればこれらの要
件を全て満足することができる。
【0076】また、特に、本発明を回転ベゼルに適用し
た場合、クリック部のすべりが良くなり、ベゼルの回転
が滑らかになる。その結果、回転ベゼルの実用性が向上
し、また、装飾品としての高級感も向上する。また、ベ
ゼルの回転機構部のみぞ・突起部の磨耗等も好適に防止
・抑制される。また、回転ベゼルを量産した際におけ
る、各個体間でのベゼルの回転トルク値のばらつきを抑
制することができ、全体としての品質が安定する。
【0077】また、本発明をネジ式ロックりゅうずに適
用した場合、ネジ回し時における、いわゆるゴリ感(ネ
ジが噛むような感触)を好適に防止することができる。
また、ネジ式ロックりゅうずを量産した際における、各
個体間でのネジの回転トルク値のばらつきを抑制するこ
とができ、全体としての品質が安定する。
【0078】また、本発明をバンド中留バンドエンドピ
ース、バンド・バングル着脱機構、裏蓋等に適用した場
合、長期間にわたって、安定した留め力を確保すること
ができる。特に、本発明を裏蓋に適用した場合には、時
計の防水性をより確実に発揮することが可能になる。ま
た、本発明をボタンに適用した場合、ボタンの押し込み
感が滑らかになる。その結果、ボタンの実用性が向上
し、また、装飾品としての高級感も向上する。
【0079】また、本発明の時計は、上述したような本
発明の装飾品を有するものである。上述したように、本
発明の装飾品は、高硬度で、耐擦傷性(体磨耗性)、耐
食性に優れ、長期間にわたって優れた美的外観を保持す
ることができるものである。このため、このような装飾
品を備えた本発明の時計は、時計としての求められる要
件を十分に満足することができる。すなわち、本発明の
時計は、特に優れた審美性を長期間にわたって保持する
ことができる。また、変色を生じにくいため、視認しや
すい状態を長期間にわたって維持することができる。特
に、本発明によれば、特別な気密構造を必要とすること
なく、上記のような効果が得られる点に特徴を有する。
なお、本発明の時計を構成する前記装飾品以外の部品と
しては、公知のものを用いることができる。
【0080】次に、本発明の表面処理方法、装飾品およ
び時計の第2実施形態について説明する。図2は、本発
明の表面処理方法の第2実施形態を示す断面図である。
以下、第2実施形態の表面処理方法および該方法を用い
て製造される第2実施形態の装飾品について、前記第1
実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項の説明
については、その説明を省略する。
【0081】図2に示すように、本実施形態の表面処理
方法は、基材2の表面の少なくとも一部(3a)に、下
地層40を形成する工程(3b)と、下地層40の表面
の少なくとも一部に、乾式メッキ法により、主としてク
ロム化合物で構成される被膜3を積層体として形成する
工程(3c、3d)とを有する。すなわち、被膜3の構
成を、第1の層31と第2の層32との積層体とした以
外は、前述した第1実施形態と同様である。
【0082】このように、被膜3を第1の層31と第2
の層32との積層体とすることにより、第1の層31の
利点と、第2の層32の利点とを併有することができ
る。その結果、装飾品1Cの美的外観をさらに優れたも
のとすることができる。
【0083】以下、第1の層31および第2の層32に
ついて、順に説明する。 [第1の層]第1の層31の構成材料は、後述する第2
の層32の構成材料と同一の組成を有するものであって
もよいし、異なる組成を有するものであってもよい。第
1の層31は、前記第1実施形態の被膜3と同様、主と
してクロム化合物で構成されたものであればいかなるも
のであってもよいが、主としてクロムの窒化物で構成さ
れたものであるのが好ましく、主としてCrNで構成さ
れたものであるのがより好ましい。これにより、後述す
る第2の層32が比較的光沢度の低い材料で構成された
ものであっても、被膜3全体としては、十分な光沢度を
有するものとなる。
【0084】第1の層31は、前記第1実施形態の被膜
3と同様の方法で形成することができる。第1の層31
の平均厚さは、特に限定されないが、5〜100μmで
あるのが好ましく、5〜30μmであるのがより好まし
い。
【0085】[第2の層]第2の層32の構成材料は、
前述した第1の層31の構成材料と同一の組成を有する
ものであってもよいし、異なる組成を有するものであっ
てもよい。第2の層32は、前記第1実施形態の被膜3
と同様、主としてクロム化合物で構成されたものであれ
ばいかなるものであってもよい。
【0086】第2の層32は、前記第1実施形態の被膜
3と同様の方法で形成することができる。第2の層32
の平均厚さは、特に限定されないが、5〜100μmで
あるのが好ましく、5〜30μmであるのがより好まし
い。
【0087】なお、第1の層31、第2の層32は、図
示の構成では基材2の全面に形成されているが、基材2
の表面の少なくとも一部に形成されるものであればよ
い。
【0088】また、本実施形態では、被膜3は、第1の
層31と、第2の層32との2層からなる積層体である
ものとして説明したが、3層以上の層からなる積層体で
あってもよい。この場合、積層体を構成する複数の層の
うち、装飾品の最外表面側の層以外の少なくとも1層
が、主としてクロムの窒化物で構成されたものであるの
が好ましく、主としてCrNで構成されたものであるの
がより好ましい。これにより、それ以外の層が比較的光
沢度の低い材料で構成されたものであっても、被膜3全
体としては、十分な光沢度を有するものとなる。
【0089】また、本実施形態のように、2層以上の下
地層を有する場合、これらの下地層の平均厚さの和は、
1.0〜200μmであるのが好ましく、1.0〜30
μmであるのがより好ましい。下地層の平均厚さの和が
このような範囲の値であると、前述したような下地層の
効果がより効果的に発揮される。
【0090】次に、本発明の表面処理方法、装飾品およ
び時計の第3実施形態について説明する。図3は、本発
明の表面処理方法の第3実施形態を示す断面図である。
以下、第3実施形態の表面処理方法および該方法を用い
て製造される第3実施形態の装飾品について、前記第
1、第2実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事
項の説明については、その説明を省略する。
【0091】図3に示すように、本実施形態の表面処理
方法は、基材2の表面の少なくとも一部(4a)に、下
地層(基材側から順に、第1の下地層41、第2の下地
層42、第3の下地層43)を形成する工程(4b、4
c、4d)と、前記下地層の表面の少なくとも一部に、
乾式メッキ法により、主としてクロム化合物で構成され
る被膜3を形成する工程(4e)とを有する。すなわ
ち、被膜3の形成に先立ち形成する下地層を3層(第1
の下地層41、第2の下地層42、第3の下地層43)
とする以外は、前述した第1実施形態と同様である。本
発明においては、基材上に形成される下地層のうち少な
くとも1層が、Cu、Co、Pd、Au、Ag、In、
Sn、Ni、Ti、Zn、Cr、AlおよびFeのうち
の少なくとも1種の金属または該金属を含む合金を主と
する材料で構成されたものである。したがって、本実施
形態では、第1の下地層41、第2の下地層42、第3
の下地層43のうち少なくとも1層が、Cu、Co、P
d、Au、Ag、In、Sn、Ni、Ti、Zn、C
r、AlおよびFeのうちの少なくとも1種の金属また
は該金属を含む合金を主とする材料で構成されたもので
ある。
【0092】以下、第1の下地層41、第2の下地層4
2および第3の下地層43について、順に説明する。
【0093】[第1の下地層]基材2の表面に、第1の
下地層41を形成する。
【0094】第1の下地層41は、例えば、基材2と第
2の下地層42との密着性を向上させる機能や、基材2
の孔、キズ等をレベリング(ならし)により補修する機
能等を有する。
【0095】第1の下地層41の形成方法としては、例
えば、電解メッキ、浸漬メッキ、無電解メッキ等の湿式
メッキ法、熱CVD、プラズマCVD、レーザーCVD
等の化学蒸着法(CVD)、真空蒸着、スパッタリン
グ、イオンプレーティング等の乾式メッキ法、溶射、金
属箔の接合、基材2の表面に対する化学処理(例えば、
酸化処理、窒化処理)等が挙げられるが、この中でも特
に、湿式メッキ法または乾式メッキ法が好ましい。第1
の下地層41の形成方法として、湿式メッキ法または乾
式メッキ法を用いることにより、形成される第1の下地
層41は、基材2との密着性に特に優れたものとなる。
その結果、得られる装飾品1Dの長期耐久性は、特に優
れたものとなる。
【0096】また、第1の下地層41は、例えば、基材
2の表面に、酸化処理、窒化処理、クロメート処理、炭
化処理、酸浸漬、酸電解処理、アルカリ浸漬処理、アル
カリ電解処理等の化学処理を施すことにより形成された
被膜、特に、不動態膜であってもよい。
【0097】第1の下地層41の構成材料としては、例
えば、Cu、Sn、Ni、Zn、Fe、In、Co、A
l等の金属材料や、前記金属材料のうち少なくとも1種
を含む合金、前記金属材料のうち少なくとも1種による
金属化合物(例えば、金属酸化物、金属窒化物、金属炭
化物等)、またはこれらを2種以上組み合わせたもの等
が挙げられる。
【0098】また、第1の下地層41の構成材料は、基
材2を構成する材料または第2の下地層42を構成する
材料のうち少なくとも1種を含むものであるのが好まし
い。これにより、基材2、第2の下地層42との密着性
がさらに向上する。
【0099】第1の下地層41の平均厚さは、特に限定
されないが、例えば、0.1〜20.0μmであるのが
好ましく、0.5〜10.0μmであるのがより好まし
い。第1の下地層41の平均厚さが前記下限値未満であ
ると、第1の下地層41の効果が十分に発揮されない可
能性がある。一方、第1の下地層41の平均厚さが前記
上限値を超えると、第1の下地層41の各部位における
膜厚のバラツキが大きくなる傾向を示す。また、第1の
下地層41の内部応力が高くなり、クラックが発生し易
くなる。
【0100】なお、図示の構成では、第1の下地層41
は、基材2の全面に形成されているが、基材2の表面の
少なくとも一部に形成されるものであればよい。また、
第1の下地層41の各部位における組成は、一定であっ
ても、一定でなくてもよい。例えば、第1の下地層41
は、その厚さ方向に沿って、組成が順次変化するもの
(傾斜材料)であってもよい。
【0101】[第2の下地層]次に、第1の下地層41
の表面に、第2の下地層42を形成する。
【0102】第2の下地層42は、例えば、その一方の
面側(第1の下地層41)と他方の面側(第3の下地層
43)との電位差を緩和する緩衝層として機能する。こ
れにより、下地層42の一方の面側(第1の下地層4
1)と他方の面側(第3の下地層43)との電位差によ
る腐食(異種金属接触腐食)の発生をより効果的に防止
することが可能となる。
【0103】第2の下地層42の形成方法としては、例
えば、電解メッキ、浸漬メッキ、無電解メッキ等の湿式
メッキ法、熱CVD、プラズマCVD、レーザーCVD
等の化学蒸着法(CVD)、真空蒸着、スパッタリン
グ、イオンプレーティング等の乾式メッキ法、溶射、金
属箔の接合、第1の下地層41の表面に対する化学処理
(例えば、酸化処理、窒化処理)等が挙げられるが、こ
の中でも特に、湿式メッキ法または乾式メッキ法が好ま
しい。第2の下地層42の形成方法として、湿式メッキ
法または乾式メッキ法を用いることにより、形成される
第2の下地層42は、第1の下地層41との密着性に特
に優れたものとなる。その結果、得られる装飾品1Dの
長期耐久性は、特に優れたものとなる。
【0104】また、第2の下地層42は、例えば、第1
の下地層41の表面に、酸化処理、窒化処理、クロメー
ト処理、炭化処理、酸浸漬、酸電解処理、アルカリ浸漬
処理、アルカリ電解処理等の化学処理を施すことにより
形成された被膜、特に、不動態膜であってもよい。
【0105】第2の下地層42の標準電位は、第1の下
地層41の標準電位と、第3の下地層43の標準電位と
の間の値であるのが好ましい。すなわち、第2の下地層
42は、その標準電位が、第1の下地層41の構成材料
の標準電位と、第3の下地層43の構成材料の標準電位
との間の値である材料で構成されたものであるのが好ま
しい。これにより、第2の下地層42の一方の面側(第
1の下地層41)と他方の面側(第3の下地層43)と
の電位差による腐食(異種金属接触腐食)の発生をより
効果的に防止することが可能となる。
【0106】第2の下地層42の構成材料としては、例
えば、Cu、Sn、Zn、Fe、In、Ag、Au、P
d、Ti、Cr等の金属材料や、前記金属材料のうち少
なくとも1種を含む合金、前記金属材料のうち少なくと
も1種による金属化合物(例えば、金属酸化物、金属窒
化物、金属炭化物等)、またはこれらを2種以上組み合
わせたもの等が挙げられる。また、第2の下地層42の
構成材料は、第1の下地層41を構成する材料または第
3の下地層43を構成する材料のうち少なくとも1種を
含むものであるのが好ましい。言い換えると、隣接する
2つの下地層は、互いに共通の元素を含む材料で構成さ
れたものであるのが好ましい。これにより、隣接する下
地層(第1の下地層41、第3の下地層43)との密着
性がさらに向上する。特に、前記共通の元素がCuであ
ると、隣接する下地層との密着性は、特に優れたものと
なる。
【0107】第2の下地層42の平均厚さは、特に限定
されないが、例えば、0.1〜20.0μmであるのが
好ましく、0.5〜10.0μmであるのがより好まし
い。第2の下地層42の平均厚さが前記下限値未満であ
ると、第2の下地層42の効果が十分に発揮されない可
能性がある。一方、第2の下地層42の平均厚さが前記
上限値を超えると、第2の下地層42の各部位における
膜厚のバラツキが大きくなる傾向を示す。また、第2の
下地層42の内部応力が高くなり、クラックが発生し易
くなる。
【0108】なお、図示の構成では、第2の下地層42
は、第1の下地層41の全面に形成されているが、第1
の下地層41の表面の少なくとも一部に形成されるもの
であればよい。また、第2の下地層42の各部位におけ
る組成は、一定であっても、一定でなくてもよい。例え
ば、第2の下地層42は、その厚さ方向に沿って、組成
が順次変化するもの(傾斜材料)であってもよい。
【0109】[第3の下地層]さらに、第2の下地層4
2の表面に、第3の下地層43を形成する。
【0110】第3の下地層43は、例えば、第2の下地
層42と被膜3との密着性を向上させる機能や、保管時
(被膜3の形成の工程までの間)等に腐食が発生するの
を防止する機能等を有する。
【0111】第3の下地層43の形成方法としては、例
えば、電解メッキ、浸漬メッキ、無電解メッキ等の湿式
メッキ法、熱CVD、プラズマCVD、レーザーCVD
等の化学蒸着法(CVD)、真空蒸着、スパッタリン
グ、イオンプレーティング等の乾式メッキ法、溶射、金
属箔の接合、第2の下地層42の表面に対する化学処理
(例えば、酸化処理、窒化処理)等が挙げられるが、こ
の中でも特に、湿式メッキ法または乾式メッキ法が好ま
しい。第3の下地層43の形成方法として、湿式メッキ
法または乾式メッキ法を用いることにより、形成される
第3の下地層43は、第2の下地層42との密着性に特
に優れたものとなる。その結果、得られる装飾品1Dの
長期耐久性は、特に優れたものとなる。
【0112】また、第3の下地層43は、例えば、第2
の下地層42の表面に、酸化処理、窒化処理、クロメー
ト処理、炭化処理、酸浸漬、酸電解処理、アルカリ浸漬
処理、アルカリ電解処理等の化学処理を施すことにより
形成された被膜、特に、不動態膜であってもよい。
【0113】第3の下地層43の構成材料としては、例
えば、Ni、Au、Pd、Ag、Fe、In、Ti、C
r、Sn、Cu、Pt、Rh、Ru等の金属材料や、前
記金属材料のうち少なくとも1種を含む合金、前記金属
材料のうち少なくとも1種による金属化合物(例えば、
金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物等)、またはこれ
らを2種以上組み合わせたもの等が挙げられる。また、
第3の下地層43の構成材料は、第2の下地層42を構
成する材料または被膜3を構成する材料のうち少なくと
も1種を含むものであるのが好ましい。これにより、第
2の下地層42、被膜3との密着性がさらに向上する。
【0114】第3の下地層43の平均厚さは、特に限定
されないが、例えば、0.1〜20.0μmであるのが
好ましく、1.0〜3.0μmであるのがより好まし
い。第3の下地層43の平均厚さが前記下限値未満であ
ると、第3の下地層43の効果が十分に発揮されない可
能性がある。一方、第3の下地層43の平均厚さが前記
上限値を超えると、第3の下地層43の各部位における
膜厚のバラツキが大きくなる傾向を示す。また、第3の
下地層43の内部応力が高くなり、クラックが発生し易
くなる。
【0115】なお、図示の構成では、第3の下地層43
は、第2の下地層42の全面に形成されているが、第2
の下地層42の表面の少なくとも一部に形成されるもの
であればよい。また、第3の下地層43の各部位におけ
る組成は、一定であっても、一定でなくてもよい。例え
ば、第3の下地層43は、その厚さ方向に沿って、組成
が順次変化するもの(傾斜材料)であってもよい。
【0116】以上説明したように、基材2の表面に、第
1の下地層41と、第2の下地層42と、第3の下地層
43とを、この順に積層することにより、基材2と被膜
3との密着性、装飾品1Dの耐食性がさらに優れたもの
となる。その結果、装飾品1Dは、特に耐久性に優れた
ものとなる。
【0117】なお、第1の下地層41、第2の下地層4
2、第3の下地層43は、それぞれ前述したような機能
を有するものに限定されず、他の効果を有するものであ
ってもよい。
【0118】次に、本発明の表面処理方法、装飾品およ
び時計の第4実施形態について説明する。図4は、本発
明の表面処理方法の第4実施形態を示す断面図である。
以下、第4実施形態の表面処理方法および該方法を用い
て製造される第4実施形態の装飾品について、前記第
1、第2、第3実施形態との相違点を中心に説明し、同
様の事項の説明については、その説明を省略する。
【0119】図4に示すように、本実施形態の表面処理
方法は、基材2の表面の少なくとも一部(5a)に、下
地層(第1の下地層41、第2の下地層42、第3の下
地層43)を形成する工程(5b、5c、5d)と、前
記下地層の表面の少なくとも一部に、乾式メッキ法によ
り、主としてクロム化合物で構成される被膜3を形成す
る工程(5e)と、被膜3の表面の一部にマスキング5
を形成する工程(5f)と、剥離剤を用いて、マスキン
グ5が被覆されていない部位の被膜3を除去する工程
(5g)と、マスキング5を除去する工程(5h)とを
有する。すなわち、被膜3の形成後、被膜3の表面の一
部にマスキング5を形成する工程(5f)と、剥離剤を
用いて、マスキング5が被覆されていない部位の被膜3
を除去する工程(5g)と、マスキング5を除去する工
程(5h)とを有する以外は、前述した第3実施形態と
同様である。
【0120】[マスキングの被覆]被膜3の形成後、被
膜3の表面の一部に、マスキング5を被覆する(5
f)。このマスキング5は、後述する被膜3を除去する
工程において、被覆した部位の被膜3を保護するマスク
として機能する。
【0121】マスキング5としては、被膜3を除去する
工程において、被覆した部位の被膜3を保護する機能を
有するものであればいかなるものでもよいが、後述する
マスキング5を除去する工程において、容易に除去する
ことができるものであるのが好ましい。
【0122】このようなマスキング5を構成する材料と
しては、例えば、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、
ポリスルホン系樹脂、エポキシ系、フッ素系等の樹脂材
料や、Au、Ni、Pd、Cu、Ag、Ti、Cr等の
金属材料を用いることができる。
【0123】マスキング5の形成方法は、特に限定され
ず、例えば、ディッピング、刷毛塗り、噴霧塗装、静電
塗装、電着塗装等の塗装、電解メッキ、浸漬メッキ、無
電解メッキ等の湿式メッキ法、熱CVD、プラズマCV
D、レーザーCVD等の化学蒸着法(CVD)、真空蒸
着、スパッタリング、イオンプレーティング等の乾式メ
ッキ法、溶射等が挙げられる。
【0124】マスキング5の平均厚さは、特に限定され
ないが、例えば、100〜2000μmであるのが好ま
しく、500〜1000μmであるのがより好ましい。
マスキング5の平均厚さが前記下限値未満であると、マ
スキング5にピンホールが発生し易くなる傾向がある。
このため、後述する被膜3の除去の工程において、マス
キング5が被覆された部位の被膜3の一部が溶解、剥離
する等して、得られる装飾品1Eの美的外観が低下する
可能性がある。一方、マスキング5の平均厚さが前記上
限値を超えると、マスキング5の各部位における膜厚の
バラツキが大きくなる傾向を示す。また、マスキング5
の内部応力が高くなり、結果として、マスキング5と被
膜3との密着性が低下したり、クラックが発生し易くな
る。
【0125】また、マスキング5は透明であることが好
ましい。これにより被膜3との密着状態を外部から視認
することが可能となる。
【0126】マスキング5は、被膜3の表面に、直接、
所望の形状となるように形成されるものに限定されな
い。例えば、被膜3の表面のほぼ全面に、マスキング5
の構成材料を被覆した後、その一部を除去することによ
り、所望のパターンを有するマスキング5としてもよ
い。
【0127】被膜3の表面のほぼ全面に被覆されたマス
キング5の一部を除去する方法としては、例えば、除去
したい部位のマスキング5に、レーザー光を照射する方
法等が挙げられる。このとき用いられるレーザーとして
は、例えば、Ne−Heレーザー、Arレーザー、CO
レーザー等の気体レーザーや、ルビーレーザー、半導
体レーザー、YAGレーザー、ガラスレーザー、YVO
レーザー、エキシマレーザー等が挙げられる。
【0128】[被膜の除去]次に、マスキング5が被覆
されていない部位の被膜3を除去する(5g)。この工
程は、マスキング5を実質的に溶解、剥離せずに、マス
キング5が被覆されていない部位の被膜3のみを選択的
に除去するような条件で行うのが好ましい。
【0129】被膜3の除去は、例えば、5〜10wt%
の炭酸ナトリウムを含む水溶液等を用いた陽極電解によ
り行うことができる。
【0130】陽極電解時における電流密度は、特に限定
されないが、通常、5A/dm程度とされる。電解液
の温度は、特に限定されないが、30〜35℃であるの
が好ましい。陽極電解の処理時間は、通常、20〜30
分程度とされる。
【0131】[マスキングの除去]その後、マスキング
5を除去することにより、装飾品1Eが得られる。
【0132】マスキング5の除去は、いかなる方法で行
ってもよいが、マスキング5を除去することが可能であ
り、かつ基材2および被膜3に対して、実質的にダメー
ジを与えないマスキング除去剤を用いて行うのが好まし
い。このようなマスキング除去剤を用いることにより、
マスキング5の除去を容易かつ確実に行うことができ
る。
【0133】マスキング5の除去に用いられるマスキン
グ除去剤は、特に限定されないが、液体、気体等の流体
であるのが好ましく、その中でも特に、液体であるのが
好ましい。これにより、マスキング5の除去をさらに容
易かつ確実に行うことが可能となる。
【0134】マスキング除去剤としては、例えば、硝
酸、硫酸、アンモニア、過酸化水素、水、二硫化炭素、
四塩化炭素等の無機溶媒や、メチルエチルケトン(ME
K)、アセトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルテ
トン(MIBK)、メチルイソプロピルケトン(MIP
K)、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、メタノー
ル、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコー
ル、ジエチレングリコール(DEG)、グリセリン等の
アルコール系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピル
エーテル、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,
4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、テト
ラヒドロピラン(THP)、アニソール、ジエチレング
リコールジメチルエーテル(ジグリム)等のエーテル系
溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、フェニル
セロソルブ等のセロソルブ系溶媒、ヘキサン、ペンタ
ン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶
媒、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素
系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオ
フェン等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチ
ルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトア
ミド(DMA)等のアミド系溶媒、ジクロロメタン、ク
ロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化合
物系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル、ギ酸エチル等のエ
ステル系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ス
ルホラン等の硫黄化合物系溶媒、アセトニトリル、プロ
ピオニトリル等のニトリル系溶媒、ギ酸、酢酸、トリク
ロロ酢酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸系溶媒等の有機
溶媒等から選択される1種または2種以上を混合したも
のや、これらに、硝酸、硫酸、塩化水素、フッ化水素、
リン酸等の酸性物質、水酸化ナトリウム、水酸化カリウ
ム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネ
シウム、アンモニア等のアルカリ性物質、過マンガン酸
カリウム(KMnO)、二酸化マンガン(Mn
)、二クロム酸カリウム(KCr)、オゾ
ン、濃硫酸、硝酸、サラシ粉、過酸化水素、キノン類等
の酸化剤、チオ硫酸ナトリウム(Na)、硫
化水素、過酸化水素、ヒドロキノン類等の還元剤を混合
したもの等が挙げられる。
【0135】マスキング5を除去する方法としては、例
えば、マスキング除去剤を噴霧する方法、液体状態のマ
スキング除去剤に浸漬する方法、液体状態のマスキング
除去剤に浸漬した状態で電解する方法等が挙げられる
が、この中でも特に、液体状態のマスキング除去剤に浸
漬する方法が好ましい。これにより、マスキング5の除
去をさらに容易かつ確実に行うことが可能となる。
【0136】マスキング5の除去を、液体状態のマスキ
ング除去剤に浸漬することにより行う場合、マスキング
除去剤の温度は、特に限定されないが、例えば、15〜
100℃であるのが好ましく、30〜50℃であるのが
より好ましい。マスキング除去剤の温度が前記下限値未
満であると、マスキング5の厚さ等によっては、マスキ
ング5を十分に除去するのに要する時間が長くなり、装
飾品1Eの生産性が低下する場合がある。一方、マスキ
ング除去剤の温度が前記上限値を超えると、マスキング
除去剤の蒸気圧、沸点等によっては、マスキング除去剤
の揮発量が多くなり、マスキング5の除去に必要なマス
キング除去剤の量が多くなる傾向を示す。
【0137】また、マスキング除去剤への浸漬時間は、
特に限定されないが、例えば、5〜60分間であるのが
好ましく、5〜30分間であるのがより好ましい。マス
キング除去剤への浸漬時間が前記下限値未満であると、
マスキング5の厚さ、マスキング除去剤の温度等によっ
ては、マスキング5を十分に除去するのが困難となる場
合がある。一方、マスキング除去剤への浸漬時間が前記
上限値を超えると、装飾品1Eの生産性が低下する。
【0138】以上説明したように、被膜3の一部を除去
することにより、被膜3を所定の形状にパターニングし
易くなる。また、被膜3の一部を除去することにより、
例えば、被膜3が残存する部位と、被膜3が除去された
部位とで、凹凸のパターンを形成したり、色彩の違いが
顕著なものとなる。その結果、装飾品1Eの美的外観
は、さらに優れたものとなる。
【0139】以上、本発明の表面処理方法、装飾品およ
び時計の好適な実施形態について説明したが、本発明
は、これらに限定されるものではない。
【0140】例えば、前述した第1、第2実施形態にお
いては1層の下地層を形成しており、また、第3、第4
実施形態においては3層の下地層(第1の下地層、第2
の下地層、第3の下地層)を形成しているが、形成する
下地層は、2層または4層以上であってもよい。この場
合、下地層の少なくとも1層がその片方の面側と他方側
との電位差を緩和する作用を有するものであるのが好ま
しい。また、下地層が2層または4層以上の場合であっ
ても、前述したように、隣接する2つの下地層は、互い
に共通の元素を含む材料で構成されたものであるのが好
ましい。これにより、隣接する下地層同士の密着性がさ
らに向上する。また、前記共通の元素がCuであると、
隣接する下地層同士の密着性は、特に優れたものとな
る。
【0141】また、装飾品の表面の少なくとも一部に
は、耐食性、耐候性、耐水性、耐油性、耐摩耗性、耐変
色性等を付与し、防錆、防汚、防曇、防傷等の効果を向
上する保護層等が形成されていてもよい。
【0142】また、前述した実施形態では、被膜3は、
1層または2層の積層体からなるものとして説明した
が、被膜3は、3層以上の積層体であってもよい。
【0143】また、第4実施形態においては、被膜3の
一部を除去しているが、被膜3とともに、その部位にお
ける下地層(第1の下地層、第2の下地層、第3の下地
層)の少なくとも一部が除去されてもよい。
【0144】
【実施例】次に、本発明の具体的実施例について説明す
る。 1. 装飾品の製造 (実施例1)以下に示すような表面処理を施すことによ
り、装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を製造した。
【0145】まず、ステンレス鋼(SUS304)を用
いて、鋳造により、腕時計ケース(裏蓋)の形状を有す
る基材を作製し、その後、必要箇所を切削、研磨した。
次に、この基材を洗浄した。基材の洗浄としては、ま
ず、アルカリ電解脱脂を30秒間行い、次いで、アルカ
リ浸漬脱脂を30秒間行った。その後、中和を10秒
間、水洗を10秒間、純水洗浄を10秒間行った。
【0146】このようにして洗浄を行った基材の表面
に、Niで構成される下地層を形成した。下地層の形成
は、湿式メッキにより、浴温:60℃、電流密度:3A
/dm、時間:10分間という条件で行った。このよ
うにして形成された下地層の平均厚さは、5μmであっ
た。次に、下地層が積層された基材を洗浄した。この洗
浄としては、まず、アルカリ電解脱脂を30秒間行い、
次いで、アルカリ浸漬脱脂を30秒間行った。その後、
中和を10秒間、水洗を10秒間、純水洗浄を10秒間
行った。
【0147】このようにして洗浄を行った下地層の表面
に、クロム化合物で構成される被膜を形成した。被膜の
形成は、以下に説明するようなイオンプレーティングに
より行った。まず、基材をイオンプレーティング装置内
に取付け、その後、装置内を予熱しながら、イオンプレ
ーティング装置内を3×10−3Paまで排気(減圧)
した。次に、アルゴンガス流量100ml/分で、ボン
バード処理を3分間行った。ボンバード処理におけるイ
オンプレーティング装置内の圧力は、9×10−2Pa
であった。
【0148】次に、イオンプレーティング装置内を2×
10−3Paまで排気(減圧)した後、窒素ガスを導入
し、イオンプレーティング装置内の圧力を3×10−1
Paとした。このような状態で、ターゲットとしてCr
を用い、イオン化電圧:30V、イオン化電流:140
Aに設定することにより、CrNで構成される被膜を形
成し、装飾品を得た。なお、形成された被膜の平均厚さ
は、10μmであった。被膜の厚さは、JIS H 5
821の顕微鏡断面試験方法により測定した。
【0149】また、基材および得られた装飾品につい
て、JIS B 0601で規定される表面粗さR
maxを測定した。基材の研磨を行った箇所の表面粗さ
maxは、0.2〜0.4μmであった。被膜の形成
後においては、これに対応する箇所の表面粗さRmax
は、0.01〜0.03μm(鏡面)となっていた。ま
た、基材の、切削、研磨を施さなかった箇所の表面粗さ
maxは、1.5〜1.8μm(梨地)であった。被
膜の形成後においては、これに対応する箇所の表面粗さ
maxは、1.0〜1.2μm(半鏡面)となってい
た。このように、被膜をイオンプレーティングにより形
成したことにより、表面が平滑化されたことが分かる。
【0150】(実施例2)以下に示すような表面処理を
施すことにより、装飾品(腕時計ケース(胴))を製造
した。まず、金属粉末射出成形(MIM)により、腕時
計ケース(胴)の形状を有するTi製の基材を作製し
た。Ti製の基材は、以下のようにして作製した。
【0151】まず、ガスアトマイズ法により製造された
平均粒径52μmのTi粉末を用意した。このTi粉
末:75vol%と、ポリエチレン:8vol%と、ポ
リプロピレン:7vol%と、パラフィンワックス:1
0vol%とからなる材料を混練した。前記材料の混練
には、ニーダーを用いた。また、混練時における材料温
度は60℃であった。次に、得られた混練物を粉砕、分
級して平均粒径3mmのペレットとした。このペレット
を用いて、射出形成機にて金属粉末射出成形(MIM)
し、腕時計ケースの形状を有する成形体を製造した。こ
のとき成形体は、脱バインダー処理、焼結時での収縮を
考慮して成形した。射出成形時における成形条件は、金
型温度40℃、射出圧力80kgf/cm、射出時間
20秒、冷却時間40秒であった。次に、前記成形体に
対して、脱脂炉を用いた脱バインダー処理を施し、脱脂
体を得た。この脱バインダー処理は、1×10−3To
rrのアルゴンガス雰囲気中、80℃で1時間、次い
で、10℃/時間の速度で400℃まで昇温した。熱処
理時におけるサンプルの重さを測定し、重量低下がなく
なった時点を脱バインダー終了時点とした。次に、この
ようにして得られた脱脂体に対し、焼結炉を用いて焼結
を行い、基材を得た。この焼結は、1×10−5〜1×
10−6Torrのアルゴンガス雰囲気中で、900〜
1100℃×6時間の熱処理を施すことにより行った。
以上のようにして得られた基材について、その必要箇所
を切削、研磨した後、この基材を洗浄した。基材の洗浄
としては、まず、アルカリ電解脱脂を30秒間行い、次
いで、アルカリ浸漬脱脂を30秒間行った。その後、中
和を10秒間、水洗を10秒間、純水洗浄を10秒間行
った。
【0152】このようにして洗浄を行った基材の表面
に、Cuで構成される下地層を形成した。下地層の形成
は、湿式メッキにより、浴温:60℃、電流密度:3A
/dm、時間:10分間という条件で行った。このよ
うにして形成された下地層の平均厚さは、5μmであっ
た。次に、下地層が積層された基材を洗浄した。この洗
浄としては、まず、アルカリ電解脱脂を30秒間行い、
次いで、アルカリ浸漬脱脂を30秒間行った。その後、
中和を10秒間、水洗を10秒間、純水洗浄を10秒間
行った。
【0153】このようにして洗浄を行った下地層の表面
に、クロム化合物で構成される被膜を形成した。被膜の
形成は、以下に説明するようなイオンプレーティングに
より行った。まず、基材をイオンプレーティング装置内
に取付け、その後、装置内を予熱しながら、イオンプレ
ーティング装置内を3×10−3Paまで排気(減圧)
した。次に、アルゴンガス流量100ml/分で、ボン
バード処理を3分間行った。ボンバード処理におけるイ
オンプレーティング装置内の圧力は、9×10−2Pa
であった。
【0154】次に、イオンプレーティング装置内を2×
10−3Paまで排気(減圧)した後、窒素ガス、酸素
ガスを、それぞれ、160ml/分、80ml/分の流
量で導入し、イオンプレーティング装置内の圧力を3×
10−1Paとした。このような状態で、ターゲットと
してCrを用い、イオン化電圧:30V、イオン化電
流:140Aに設定することにより、CrNOで構成さ
れる被膜を形成し、装飾品を得た。なお、形成された被
膜の平均厚さは、12μmであった。被膜の厚さは、J
IS H 5821の顕微鏡断面試験方法により測定し
た。
【0155】また、基材および得られた装飾品につい
て、JIS B 0601で規定される表面粗さR
maxを測定した。基材の研磨を行った箇所の表面粗さ
maxは、0.2〜0.4μmであった。被膜の形成
後においては、これに対応する箇所の表面粗さRmax
は、0.01〜0.03μm(鏡面)となっていた。ま
た、基材の、切削、研磨を施さなかった箇所の表面粗さ
maxは、1.5〜1.8μm(梨地)であった。被
膜の形成後においては、これに対応する箇所の表面粗さ
maxは、1.0〜1.2μm(半鏡面)となってい
た。このように、被膜をイオンプレーティングにより形
成したことにより、表面が平滑化されたことが分かる。
【0156】(実施例3)以下に示すような表面処理を
施すことにより、装飾品(腕時計ケース(胴))を製造
した。まず、アルミナ(Al)粉末を用いて、粉
末冶金焼結により、腕時計ケース(胴)の形状を有する
基材を作製し、その後、必要箇所を切削、研磨した。次
に、この基材を洗浄した。基材の洗浄としては、まず、
アルカリ電解脱脂を30秒間行い、次いで、アルカリ浸
漬脱脂を30秒間行った。その後、中和を10秒間、水
洗を10秒間、純水洗浄を10秒間行った。
【0157】このようにして洗浄を行った基材の表面
に、Alで構成された下地層を形成した。下地層の形成
は、以下に説明するようなスパッタリングにより行っ
た。まず、基材をスパッタリング装置内に取付け、その
後、装置内を予熱しながら、スパッタリング装置内を3
×10−3Paまで排気(減圧)した。次に、アルゴン
ガス流量50ml/分で、ボンバード処理を3分間行っ
た。ボンバード処理におけるイオンプレーティング装置
内の圧力は、9×10−2Paであった。
【0158】次に、装置内を3×10−3Paまで排気
(減圧)した。このような状態で、ターゲットとしてA
lを用い、電圧:5〜7kV、電流密度:1mA/dm
という条件で放電を行うことにより、Alで構成され
る下地層を形成した。このようにして形成された下地層
の平均厚さは、10μmであった。次に、この下地層を
洗浄した。下地層の洗浄としては、まず、アルカリ浸漬
脱脂を30秒間行い、その後、中和を10秒間、水洗を
10秒間、純水洗浄を10秒間行った。
【0159】このようにして洗浄を行った下地層の表面
に、クロム化合物で構成される被膜を形成した。被膜の
形成は、以下に説明するようなイオンプレーティングに
より行った。まず、基材をイオンプレーティング装置内
に取付け、その後、装置内を予熱しながら、イオンプレ
ーティング装置内を3×10−3Paまで排気(減圧)
した。次に、アルゴンガス流量50ml/分で、ボンバ
ード処理を5分間行った。ボンバード処理におけるイオ
ンプレーティング装置内の圧力は、9×10−2Paで
あった。
【0160】次に、イオンプレーティング装置内を2×
10−3Paまで排気(減圧)した後、窒素ガス、アセ
チレンガスを、それぞれ、160ml/分、160ml
/分の流量で導入し、イオンプレーティング装置内の圧
力を3×10−1Paとした。このような状態で、ター
ゲットとしてCrを用い、イオン化電圧:30V、イオ
ン化電流:140Aに設定することにより、CrCNで
構成される被膜を形成し、装飾品を得た。なお、形成さ
れた被膜の平均厚さは、12μmであった。被膜の厚さ
は、JIS H 5821の顕微鏡断面試験方法により
測定した。
【0161】また、基材および得られた装飾品につい
て、JIS B 0601で規定される表面粗さR
maxを測定した。基材の研磨を行った箇所の表面粗さ
maxは、0.2〜0.4μmであった。被膜の形成
後においては、これに対応する箇所の表面粗さRmax
は、0.01〜0.03μm(鏡面)となっていた。ま
た、基材の、切削、研磨を施さなかった箇所の表面粗さ
maxは、1.5〜1.8μm(梨地)であった。被
膜の形成後においては、これに対応する箇所の表面粗さ
maxは、1.0〜1.2μm(半鏡面)となってい
た。このように、被膜をイオンプレーティングにより形
成したことにより、表面が平滑化されたことが分かる。
【0162】(実施例4)以下に示すような表面処理を
施すことにより、装飾品(腕時計用文字盤)を製造し
た。まず、Cu−Zn系合金(合金組成:Cu60wt
%−Zn40wt%)を用いて、鋳造により、腕時計用
文字盤の形状を有する基材を作製し、その後、必要箇所
を切削、研磨した。次に、この基材の表面に、梨地加工
を施した。梨地加工は、基材表面に、ガラスビーズを2
kg/cmの圧力で吹き付けることにより行った。次
に、梨地加工を施した基材を洗浄した。基材の洗浄とし
ては、まず、アルカリ浸漬脱脂を30秒間行い、その
後、中和を10秒間、水洗を10秒間、純水洗浄を10
秒間行った。
【0163】次に、この基材の鏡面加工を施した側の面
に、Niで構成される下地層を形成した。下地層の形成
は、湿式メッキにより、浴温:60℃、電流密度:3A
/dm、時間:10分間という条件で行った。このよ
うにして形成された下地層の平均厚さは、5μmであっ
た。次に、下地層が積層された基材を洗浄した。この洗
浄としては、まず、アルカリ電解脱脂を30秒間行い、
次いで、アルカリ浸漬脱脂を30秒間行った。その後、
中和を10秒間、水洗を10秒間、純水洗浄を10秒間
行った。
【0164】このようにして洗浄を行った下地層の表面
に、クロム化合物で構成される被膜を形成した。被膜
は、第1の層と第2の層とからなる積層体として形成し
た。第1の層および第2の層は、以下に説明するような
イオンプレーティングにより、連続して形成した。ま
ず、下地層が形成された基材を、イオンプレーティング
装置内に取付け、その後、装置内を予熱しながら、イオ
ンプレーティング装置内を3×10−3Paまで排気
(減圧)した。次に、アルゴンガス流量100ml/分
で、ボンバード処理を3分間行った。ボンバード処理に
おけるイオンプレーティング装置内の圧力は、9×10
−2Paであった。
【0165】次に、イオンプレーティング装置内を2×
10−3Paまで排気(減圧)した後、窒素ガスを導入
し、イオンプレーティング装置内の圧力を3×10−1
Paとした。このような状態で、ターゲットとしてCr
を用い、イオン化電圧:30V、イオン化電流:140
Aに設定することにより、CrNで構成される第1の層
を形成した。
【0166】引き続き、以下のようにして、第1の層の
表面に、第2の層を形成した。イオンプレーティング装
置内を2×10−3Paまで排気(減圧)した後、窒素
ガス、酸素ガスを、それぞれ、160ml/分、80m
l/分の流量で導入し、イオンプレーティング装置内の
圧力を3×10−1Paとした。このような状態で、タ
ーゲットとしてCrを用い、イオン化電圧:30V、イ
オン化電流:140Aに設定することにより、CrNO
で構成される第2の層を形成し、装飾品を得た。なお、
第1の層、第2の層の平均厚さは、それぞれ、10μ
m、1μmであった。下地層、第1の層、第2の層の厚
さは、JIS H 5821の顕微鏡断面試験方法によ
り測定した。
【0167】(実施例5)以下に示すような表面処理を
施すことにより、装飾品(腕時計用針)を製造した。ま
ず、Cu−Zn系合金(合金組成:Cu60wt%−Z
n40wt%)を用いて、鋳造により、腕時計用針の形
状を有する基材を作製し、その後、必要箇所を切削した
後、ダイヤカットにより、鏡面加工を施した。次に、こ
の基材を洗浄した。基材の洗浄としては、まず、アルカ
リ浸漬脱脂を30秒間行い、その後、中和を10秒間、
水洗を10秒間、純水洗浄を10秒間行った。
【0168】次に、この基材の鏡面加工を施した側の面
に、Cuで構成される下地層を形成した。下地層の形成
は、湿式メッキにより、浴温:60℃、電流密度:3A
/dm、時間:10分間という条件で行った。このよ
うにして形成された下地層の平均厚さは、5μmであっ
た。次に、下地層が積層された基材を洗浄した。この洗
浄としては、まず、アルカリ電解脱脂を30秒間行い、
次いで、アルカリ浸漬脱脂を30秒間行った。その後、
中和を10秒間、水洗を10秒間、純水洗浄を10秒間
行った。
【0169】このようにして洗浄を行った下地層の表面
に、クロム化合物で構成される被膜を形成した。被膜
は、第1の層と第2の層とからなる積層体として形成し
た。第1の層および第2の層は、以下に説明するような
イオンプレーティングにより、連続して形成した。ま
ず、下地層が形成された基材を、イオンプレーティング
装置内に取付け、その後、装置内を予熱しながら、イオ
ンプレーティング装置内を3×10−3Paまで排気
(減圧)した。次に、アルゴンガス流量100ml/分
で、ボンバード処理を3分間行った。ボンバード処理に
おけるイオンプレーティング装置内の圧力は、9×10
−2Paであった。
【0170】次に、イオンプレーティング装置内を2×
10−3Paまで排気(減圧)した後、窒素ガスを導入
し、イオンプレーティング装置内の圧力を3×10−1
Paとした。このような状態で、ターゲットとしてCr
を用い、イオン化電圧:30V、イオン化電流:140
Aに設定することにより、CrNで構成される第1の層
を形成した。
【0171】引き続き、以下のようにして、第1の層の
表面に、第2の層を形成した。イオンプレーティング装
置内を2×10−3Paまで排気(減圧)した後、窒素
ガス、アセチレンガスを、それぞれ、160ml/分、
160ml/分の流量で導入し、イオンプレーティング
装置内の圧力を3×10−1Paとした。このような状
態で、ターゲットとしてCrを用い、イオン化電圧:3
0V、イオン化電流:140Aに設定することにより、
CrCNで構成される第2の層を形成し、装飾品を得
た。なお、第1の層、第2の層の平均厚さは、それぞ
れ、10μm、1μmであった。下地層、第1の層、第
2の層の厚さは、JIS H 5821の顕微鏡断面試
験方法により測定した。
【0172】(実施例6)以下に示すような表面処理を
施すことにより、装飾品(腕時計ケース(胴))を製造
した。まず、鋳造により、腕時計ケース(胴)の形状を
有する、アルミニウム製の基材を作製し、その後、必要
箇所を切削、研磨した。次に、この基材の表面に、エメ
リー#180研磨にて、スジ目加工を施した。
【0173】次に、スジ目加工を施した基材の表面に、
酸化アルミニウム(Al)で構成された下地層を
形成した。下地層の形成は、陽極酸化法により、浴温:
30℃、電流密度:2A/dm、時間:60分という
条件で行った。このようにして形成された下地層の平均
厚さは、20μmであった。次に、この下地層を洗浄し
た。下地層の洗浄としては、まず、アルカリ浸漬脱脂を
30秒間行い、その後、中和を10秒間、水洗を10秒
間、純水洗浄を10秒間行った。
【0174】このようにして洗浄を行った下地層の表面
に、クロム化合物で構成される被膜を形成した。被膜
は、第1の層と第2の層とからなる積層体として形成し
た。第1の層および第2の層は、以下に説明するような
イオンプレーティングにより、連続して形成した。ま
ず、下地層が形成された基材を、イオンプレーティング
装置内に取付け、その後、装置内を予熱しながら、イオ
ンプレーティング装置内を3×10−3Paまで排気
(減圧)した。次に、アルゴンガス流量100ml/分
で、ボンバード処理を3分間行った。ボンバード処理に
おけるイオンプレーティング装置内の圧力は、9×10
−2Paであった。
【0175】次に、イオンプレーティング装置内を2×
10−3Paまで排気(減圧)した後、窒素ガスを導入
し、イオンプレーティング装置内の圧力を3×10−1
Paとした。このような状態で、ターゲットとしてCr
を用い、イオン化電圧:30V、イオン化電流:280
Aに設定することにより、CrNで構成される第1の層
を形成した。
【0176】引き続き、以下のようにして、第1の層の
表面に、第2の層を形成した。イオンプレーティング装
置内を2×10−3Paまで排気(減圧)した後、窒素
ガスを導入し、イオンプレーティング装置内の圧力を8
×10−2Paとした。このような状態で、ターゲット
としてCrを用い、イオン化電圧:30V、イオン化電
流:140Aに設定することにより、CrNで構成され
る第2の層を形成し、装飾品を得た。なお、第1の層、
第2の層の平均厚さは、それぞれ、10μm、1μmで
あった。下地層、第1の層、第2の層の厚さは、JIS
H 5821の顕微鏡断面試験方法により測定した。
【0177】(実施例7)以下に示すような表面処理を
施すことにより、装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を製
造した。まず、鋳造により、腕時計ケース(裏蓋)の形
状を有する、アルミニウム製の基材を作製し、その後、
必要箇所を切削、研磨した。次に、この基材の表面に、
エメリー#180研磨にて、スジ目加工を施した。
【0178】次に、スジ目加工を施した基材の表面に、
酸化アルミニウム(Al)で構成された下地層を
形成した。下地層の形成は、陽極酸化法により、浴温:
30℃、電流密度:2A/dm、時間:60分という
条件で行った。このようにして形成された下地層の平均
厚さは、20μmであった。次に、この下地層を洗浄し
た。下地層の洗浄としては、まず、アルカリ浸漬脱脂を
30秒間行い、その後、中和を10秒間、水洗を10秒
間、純水洗浄を10秒間行った。
【0179】このようにして洗浄を行った下地層の表面
に、クロム化合物で構成される被膜を形成した。被膜
は、第1の層と第2の層とからなる積層体として形成し
た。第1の層および第2の層は、以下に説明するような
イオンプレーティングにより、連続して形成した。ま
ず、下地層が形成された基材を、イオンプレーティング
装置内に取付け、その後、装置内を予熱しながら、イオ
ンプレーティング装置内を3×10−3Paまで排気
(減圧)した。次に、アルゴンガス流量100ml/分
で、ボンバード処理を3分間行った。ボンバード処理に
おけるイオンプレーティング装置内の圧力は、9×10
−2Paであった。
【0180】次に、イオンプレーティング装置内を2×
10−3Paまで排気(減圧)した後、窒素ガスを導入
し、イオンプレーティング装置内の圧力を3×10−1
Paとした。このような状態で、ターゲットとしてCr
を用い、イオン化電圧:30V、イオン化電流:140
Aに設定することにより、CrNで構成される第1の層
を形成した。
【0181】引き続き、以下のようにして、第1の層の
表面に、第2の層を形成した。イオンプレーティング装
置内を2×10−3Paまで排気(減圧)した後、酸素
ガスを導入し、イオンプレーティング装置内の圧力を1
×10−1Paとした。このような状態で、ターゲット
としてCrを用い、イオン化電圧:25V、イオン化電
流:110Aに設定することにより、CrOで構成され
る第2の層を形成し、装飾品を得た。なお、第1の層、
第2の層の平均厚さは、それぞれ、10μm、1μmで
あった。下地層、第1の層、第2の層の厚さは、JIS
H 5821の顕微鏡断面試験方法により測定した。
【0182】(実施例8)以下に示すような表面処理を
施すことにより、装飾品(腕時計用文字盤)を製造し
た。まず、ステンレス鋼(SUS444)を用いて、鋳
造により、腕時計用文字盤の形状を有する基材を作製
し、その後、必要箇所を切削、研磨した。次に、この基
材を洗浄した。基材の洗浄としては、まず、アルカリ電
解脱脂を30秒間行い、次いで、アルカリ浸漬脱脂を3
0秒間行った。その後、中和を10秒間、水洗を10秒
間、純水洗浄を10秒間行った。
【0183】このようにして洗浄を行った基材の表面
に、Cuで構成される第1の下地層を形成した。第1の
下地層の形成は、湿式メッキにより、浴温:60℃、電
流密度:3A/dm、時間:1分間という条件で行っ
た。このようにして形成された第1の下地層の平均厚さ
は、1μmであった。
【0184】その後、第1の下地層の表面に、Cu−S
n系合金で構成される第2の下地層を形成した。第2の
下地層の形成は、湿式メッキにより、浴温:60℃、電
流密度:3A/dm、時間:2分間という条件で行っ
た。このようにして形成された第2の下地層の平均厚さ
は、3μmであった。
【0185】さらに、第2の下地層の表面に、Auで構
成される第3の下地層を形成した。第3の下地層の形成
は、湿式メッキにより、浴温:60℃、電流密度:3A
/dm、時間:2分間という条件で行った。このよう
にして形成された第3の下地層の平均厚さは、3μmで
あった。次に、第1〜第3の下地層が積層された基材を
洗浄した。この洗浄としては、まず、アルカリ電解脱脂
を30秒間行い、次いで、アルカリ浸漬脱脂を30秒間
行った。その後、中和を10秒間、水洗を10秒間、純
水洗浄を10秒間行った。
【0186】洗浄後、第3の下地層の表面に、クロム化
合物で構成される被膜を形成した。被膜の形成は、以下
に説明するようなイオンプレーティングにより行った。
まず、基材をイオンプレーティング装置内に取付け、そ
の後、装置内を予熱しながら、イオンプレーティング装
置内を3×10−3Paまで排気(減圧)した。次に、
アルゴンガス流量100ml/分で、ボンバード処理を
3分間行った。ボンバード処理におけるイオンプレーテ
ィング装置内の圧力は、9×10−2Paであった。
【0187】次に、イオンプレーティング装置内を2×
10−3Paまで排気(減圧)した後、窒素ガス、酸素
ガスを、それぞれ、160ml/分、80ml/分の流
量で導入し、イオンプレーティング装置内の圧力を3×
10−1Paとした。このような状態で、ターゲットと
してCrを用い、イオン化電圧:30V、イオン化電
流:140Aに設定することにより、CrNOで構成さ
れる被膜を形成し、装飾品を得た。なお、形成された被
膜の平均厚さは、12μmであった。第1〜第3の下地
層、被膜の厚さは、JIS H 5821の顕微鏡断面
試験方法により測定した。
【0188】(実施例9)以下に示すような表面処理を
施すことにより、装飾品(腕時計用文字盤)を製造し
た。まず、Cu−Zn系合金(合金組成:Cu60wt
%−Zn40wt%)を用いて、鋳造により、腕時計用
文字盤の形状を有する基材を作製し、その後、必要箇所
を切削、研磨した。次に、この基材を洗浄した。基材の
洗浄としては、まず、アルカリ電解脱脂を30秒間行
い、次いで、アルカリ浸漬脱脂を30秒間行った。その
後、中和を10秒間、水洗を10秒間、純水洗浄を10
秒間行った。
【0189】このようにして洗浄を行った基材の表面
に、Cuで構成される第1の下地層を形成した。第1の
下地層の形成は、湿式メッキにより、浴温:60℃、電
流密度:3A/dm、時間:1分間という条件で行っ
た。このようにして形成された第1の下地層の平均厚さ
は、1μmであった。
【0190】その後、第1の下地層の表面に、Cu−S
n系合金で構成される第2の下地層を形成した。第2の
下地層の形成は、湿式メッキにより、浴温:60℃、電
流密度:3A/dm、時間:2分間という条件で行っ
た。このようにして形成された第2の下地層の平均厚さ
は、3μmであった。
【0191】さらに、第2の下地層の表面に、Pdで構
成される第3の下地層を形成した。第3の下地層の形成
は、湿式メッキにより、浴温:60℃、電流密度:2A
/dm、時間:3分間という条件で行った。このよう
にして形成された第3の下地層の平均厚さは、3μmで
あった。次に、第1〜第3の下地層が積層された基材を
洗浄した。この洗浄としては、まず、アルカリ電解脱脂
を30秒間行い、次いで、アルカリ浸漬脱脂を30秒間
行った。その後、中和を10秒間、水洗を10秒間、純
水洗浄を10秒間行った。
【0192】洗浄後、第3の下地層の表面に、クロム化
合物で構成される被膜を形成した。被膜の形成は、以下
に説明するようなイオンプレーティングにより行った。
まず、下地層が形成された基材を、イオンプレーティン
グ装置内に取付け、その後、装置内を予熱しながら、イ
オンプレーティング装置内を3×10−3Paまで排気
(減圧)した。次に、アルゴンガス流量100ml/分
で、ボンバード処理を3分間行った。ボンバード処理に
おけるイオンプレーティング装置内の圧力は、9×10
−2Paであった。
【0193】次に、イオンプレーティング装置内を2×
10−3Paまで排気(減圧)した後、窒素ガス、酸素
ガスを、それぞれ、160ml/分、80ml/分の流
量で導入し、イオンプレーティング装置内の圧力を3×
10−1Paとした。このような状態で、ターゲットと
してCrを用い、イオン化電圧:30V、イオン化電
流:140Aに設定することにより、CrNOで構成さ
れる被膜を形成し、装飾品を得た。なお、形成された被
膜の平均厚さは、10μmであった。第1〜第3の下地
層、被膜の厚さは、JIS H 5821の顕微鏡断面
試験方法により測定した。
【0194】(実施例10)以下に示すような表面処理
を施すことにより、装飾品(腕時計ケース(胴))を製
造した。まず、Niを用いて、鍛造により、腕時計ケー
ス(胴)の形状を有する基材を作製し、その後、必要箇
所を切削、研磨した。次に、この基材の表面に、梨地加
工を施した。梨地加工は、基材表面に、ガラスビーズを
2kg/cmの圧力で吹き付けることにより行った。
次に、梨地加工を施した基材を洗浄した。基材の洗浄と
しては、まず、アルカリ電解脱脂を30秒間行い、次い
で、アルカリ浸漬脱脂を30秒間行った。その後、中和
を10秒間、水洗を10秒間、純水洗浄を10秒間行っ
た。
【0195】このようにして洗浄を行った基材の表面
に、Cuで構成される第1の下地層を形成した。第1の
下地層の形成は、湿式メッキにより、浴温:60℃、電
流密度:3A/dm、時間:20分間という条件で行
った。このようにして形成された第1の下地層の平均厚
さは、20μmであった。
【0196】その後、第1の下地層の表面に、Cu−S
n系合金で構成される第2の下地層を形成した。第2の
下地層の形成は、湿式メッキにより、浴温:60℃、電
流密度:3A/dm、時間:3分間という条件で行っ
た。このようにして形成された第2の下地層の平均厚さ
は、3μmであった。次に、第1の下地層、第2の下地
層が積層された基材を洗浄した。この洗浄としては、ま
ず、アルカリ浸漬脱脂を30秒間行い、その後、中和を
10秒間、水洗を10秒間、純水洗浄を10秒間行っ
た。
【0197】洗浄後、第2の下地層の表面に、クロム化
合物で構成される被膜を形成した。被膜の形成は、以下
に説明するようなイオンプレーティングにより行った。
まず、基材をイオンプレーティング装置内に取付け、そ
の後、装置内を予熱しながら、イオンプレーティング装
置内を3×10−3Paまで排気(減圧)した。次に、
アルゴンガス流量100ml/分で、ボンバード処理を
3分間行った。ボンバード処理におけるイオンプレーテ
ィング装置内の圧力は、9×10−2Paであった。
【0198】次に、イオンプレーティング装置内を2×
10−3Paまで排気(減圧)した後、窒素ガス、酸素
ガスを、それぞれ、160ml/分、80ml/分の流
量で導入し、イオンプレーティング装置内の圧力を3×
10−1Paとした。このような状態で、ターゲットと
してCrを用い、イオン化電圧:30V、イオン化電
流:140Aに設定することにより、CrNOで構成さ
れる被膜を形成し、装飾品を得た。なお、形成された被
膜の平均厚さは、12μmであった。第1、第2の下地
層、被膜の厚さは、JIS H 5821の顕微鏡断面
試験方法により測定した。
【0199】(実施例11)第3の下地層の表面に形成
した被膜の一部を、以下のようにして、除去した以外
は、前記実施例9と同様にして、装飾品を製造した。ま
ず、被膜の表面の一部に、マスキングを所定の形状に形
成した。マスキングの形成は、ゴム系樹脂を刷毛塗りす
ることにより、被膜の表面の一部を被覆し、その後、1
80〜200℃で、30分間乾燥することにより行っ
た。このようにして形成されたマスキングの平均厚さ
は、500μmであった。
【0200】次に、マスキングが被覆されていない部位
の被膜の除去を行った。被膜の除去は、7wt%の炭酸
ナトリウム水溶液を用いた陽極電解により行った。陽極
電解時における電流密度、電解液の温度は、それぞれ、
5A/dm、32℃であった。また、陽極電解の処理
時間は、30分であった。その後、ハロゲン化合物系溶
媒、ケトン系溶媒よりなるマスキング除去剤に浸漬する
ことにより、マスキングを除去した。また、本工程にお
けるマスキング除去剤の温度、マスキング除去剤への浸
漬時間は、それぞれ30℃、30分であった。
【0201】(実施例12)以下に示すような表面処理
を施すことにより、装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を
製造した。まず、Cu−Zn系合金(合金組成:Cu6
0wt%−Zn40wt%)を用いて、鋳造により、腕
時計ケース(裏蓋)の形状を有する基材を作製し、その
後、必要箇所を切削、研磨した。次に、この基材の表面
に、梨地加工を施した。梨地加工は、基材表面に、ガラ
スビーズを2kg/cmの圧力で吹き付けることによ
り行った。次に、梨地加工を施した基材を洗浄した。基
材の洗浄としては、まず、アルカリ電解脱脂を30秒間
行い、次いで、アルカリ浸漬脱脂を30秒間行った。そ
の後、中和を10秒間、水洗を10秒間、純水洗浄を1
0秒間行った。
【0202】このようにして洗浄を行った基材の表面
に、Cuで構成される第1の下地層を形成した。第1の
下地層の形成は、湿式メッキにより、浴温:60℃、電
流密度:3A/dm、時間:10分間という条件で行
った。このようにして形成された第1の下地層の平均厚
さは、5μmであった。
【0203】その後、第1の下地層の表面に、Cu−S
n系合金で構成される第2の下地層を形成した。第2の
下地層の形成は、湿式メッキにより、浴温:60℃、電
流密度:3A/dm、時間:2分間という条件で行っ
た。このようにして形成された第2の下地層の平均厚さ
は、3μmであった。
【0204】さらに、第2の下地層の表面に、Pdで構
成される第3の下地層を形成した。第3の下地層の形成
は、湿式メッキにより、浴温:60℃、電流密度:2A
/dm、時間:9分間という条件で行った。このよう
にして形成された第3の下地層の平均厚さは、3μmで
あった。次に、第1〜第3の下地層が積層された基材を
洗浄した。この洗浄としては、まず、アルカリ電解脱脂
を30秒間行い、次いで、アルカリ浸漬脱脂を30秒間
行った。その後、中和を10秒間、水洗を10秒間、純
水洗浄を10秒間行った。
【0205】洗浄後、第3の下地層の表面に、クロム化
合物で構成される被膜を形成した。被膜は、第1の層と
第2の層とからなる積層体として形成した。第1の層お
よび第2の層は、以下に説明するようなイオンプレーテ
ィングにより、連続して形成した。まず、下地層が形成
された基材を、イオンプレーティング装置内に取付け、
その後、装置内を予熱しながら、イオンプレーティング
装置内を3×10−3Paまで排気(減圧)した。次
に、アルゴンガス流量100ml/分で、ボンバード処
理を3分間行った。ボンバード処理におけるイオンプレ
ーティング装置内の圧力は、9×10−2Paであっ
た。
【0206】次に、イオンプレーティング装置内を2×
10−3Paまで排気(減圧)した後、窒素ガスを導入
し、イオンプレーティング装置内の圧力を3×10−1
Paとした。このような状態で、ターゲットとしてCr
を用い、イオン化電圧:30V、イオン化電流:140
Aに設定することにより、CrNで構成される第1の層
を形成した。
【0207】引き続き、以下のようにして、第1の層の
表面に、第2の層を形成した。イオンプレーティング装
置内を2×10−3Paまで排気(減圧)した後、窒素
ガス、酸素ガスを、それぞれ、160ml/分、80m
l/分の流量で導入し、イオンプレーティング装置内の
圧力を3×10−1Paとした。このような状態で、タ
ーゲットとしてCrを用い、イオン化電圧:30V、イ
オン化電流:140Aに設定することにより、CrNO
で構成される第2の層を形成した。なお、第1の層、第
2の層の平均厚さは、それぞれ、10μm、1μmであ
った。
【0208】次に、第3の下地層の表面に形成した被膜
(第1の層および第2の層)の一部を、以下のようにし
て除去し、装飾品を得た。まず、被膜の表面の一部に、
マスキングを所定の形状に形成した。マスキングの形成
は、ゴム系樹脂を刷毛塗りすることにより、被膜の表面
の一部を被覆し、その後、180〜200℃で、30分
間乾燥することにより行った。このようにして形成され
たマスキングの平均厚さは、500μmであった。
【0209】次に、マスキングが被覆されていない部位
の被膜の除去を行った。被膜の除去は、7wt%の炭酸
ナトリウム水溶液を用いた陽極電解により行った。陽極
電解時における電流密度、電解液の温度は、それぞれ、
5A/dm、32℃であった。また、陽極電解の処理
時間は、30分であった。
【0210】その後、ハロゲン化合物系溶媒、ケトン系
溶媒よりなるマスキング除去剤に浸漬することにより、
マスキングを除去した。また、本工程におけるマスキン
グ除去剤の温度、マスキング除去剤への浸漬時間は、そ
れぞれ30℃、30分であった。なお、下地層(第1〜
第3の下地層)、第1の層、第2の層の厚さは、JIS
H 5821の顕微鏡断面試験方法により測定した。
【0211】(実施例13)以下に示すような表面処理
を施すことにより、装飾品(腕時計ケースおよび回転ベ
ゼル)を製造した。まず、ステンレス鋼(SUS316
L)を用いて、鍛造により、腕時計ケース(胴)の形状
を有する基材、回転ベゼルの形状を有する基材をそれぞ
れ作製し、その後、必要箇所を切削、研磨した。次に、
これらの基材を洗浄した。基材の洗浄としては、まず、
アルカリ電解脱脂を30秒間行い、次いで、アルカリ浸
漬脱脂を30秒間行った。その後、中和を10秒間、水
洗を10秒間、純水洗浄を10秒間行った。
【0212】このようにして洗浄を行った基材の表面
に、Auで構成される第1の下地層を形成した。第1の
下地層の形成は、湿式メッキにより、浴温:60℃、電
流密度:3A/dm、時間:5分間という条件で行っ
た。このようにして形成された第1の下地層の平均厚さ
は、0.5μmであった。
【0213】その後、第1の下地層の表面に、Pdで構
成される第2の下地層を形成した。第2の下地層の形成
は、湿式メッキにより、浴温:60℃、電流密度:3A
/dm、時間:10分間という条件で行った。このよ
うにして形成された第2の下地層の平均厚さは、3μm
であった。
【0214】次に、第1の下地層、第2の下地層が積層
された基材を洗浄した。この洗浄としては、まず、アル
カリ電解脱脂を30秒間行い、次いで、アルカリ浸漬脱
脂を30秒間行った。その後、中和を10秒間、水洗を
10秒間、純水洗浄を10秒間行った。
【0215】洗浄後、第2の下地層の表面に、クロム化
合物で構成される被膜を形成した。被膜は、第1の層と
第2の層とからなる積層体として形成した。第1の層お
よび第2の層は、以下に説明するようなイオンプレーテ
ィングにより、連続して形成した。まず、下地層が形成
された基材を、イオンプレーティング装置内に取付け、
その後、装置内を予熱しながら、イオンプレーティング
装置内を3×10−3Paまで排気(減圧)した。次
に、アルゴンガス流量100ml/分で、ボンバード処
理を3分間行った。ボンバード処理におけるイオンプレ
ーティング装置内の圧力は、9×10−2Paであっ
た。
【0216】次に、イオンプレーティング装置内を2×
10−3Paまで排気(減圧)した後、窒素ガスを導入
し、イオンプレーティング装置内の圧力を3×10−1
Paとした。このような状態で、ターゲットとしてCr
を用い、イオン化電圧:30V、イオン化電流:140
Aに設定することにより、CrNで構成される第1の層
を形成した。
【0217】引き続き、以下のようにして、第1の層の
表面に、第2の層を形成した。イオンプレーティング装
置内を2×10−3Paまで排気(減圧)した後、窒素
ガス、酸素ガスを、それぞれ、160ml/分、80m
l/分の流量で導入し、イオンプレーティング装置内の
圧力を3×10−1Paとした。このような状態で、タ
ーゲットとしてCrを用い、イオン化電圧:30V、イ
オン化電流:140Aに設定することにより、CrNO
で構成される第2の層を形成し、装飾品(腕時計ケース
および回転ベゼル)を得、これらを組み立てた。なお、
第1の層、第2の層の平均厚さは、それぞれ、10μ
m、1μmであった。
【0218】また、基材および得られた装飾品につい
て、JIS B 0601で規定される表面粗さR
maxを測定した。基材の研磨を行った箇所の表面粗さ
maxは、0.2〜0.4μmであった。被膜の形成
後においては、これに対応する箇所の表面粗さRmax
は、0.01〜0.03μm(鏡面)となっていた。ま
た、基材の、切削、研磨を施さなかった箇所の表面粗さ
maxは、1.5〜1.8μm(梨地)であった。被
膜の形成後においては、これに対応する箇所の表面粗さ
maxは、1.0〜1.2μm(半鏡面)となってい
た。このように、被膜をイオンプレーティングにより形
成したことにより、表面が平滑化されたことが分かる。
【0219】(実施例14)以下に示すような表面処理
を施すことにより、装飾品(腕時計ケースおよびネジロ
ックりゅうず)を製造した。まず、ステンレス鋼(SU
S316L)を用いて、鍛造により、腕時計ケース
(胴)の形状を有する基材、ネジロックりゅうずの形状
を有する基材をそれぞれ作製し、その後、必要箇所を切
削、研磨した。次に、これらの基材を洗浄した。基材の
洗浄としては、まず、アルカリ電解脱脂を30秒間行
い、次いで、アルカリ浸漬脱脂を30秒間行った。その
後、中和を10秒間、水洗を10秒間、純水洗浄を10
秒間行った。
【0220】このようにして洗浄を行った基材の表面
に、Auで構成される第1の下地層を形成した。第1の
下地層の形成は、湿式メッキにより、浴温:60℃、電
流密度:3A/dm、時間:5分間という条件で行っ
た。このようにして形成された第1の下地層の平均厚さ
は、0.5μmであった。
【0221】その後、第1の下地層の表面に、Pdで構
成される第2の下地層を形成した。第2の下地層の形成
は、湿式メッキにより、浴温:60℃、電流密度:3A
/dm、時間:10分間という条件で行った。このよ
うにして形成された第2の下地層の平均厚さは、3μm
であった。
【0222】次に、第1の下地層、第2の下地層が積層
された基材を洗浄した。この洗浄としては、まず、アル
カリ電解脱脂を30秒間行い、次いで、アルカリ浸漬脱
脂を30秒間行った。その後、中和を10秒間、水洗を
10秒間、純水洗浄を10秒間行った。
【0223】洗浄後、第2の下地層の表面に、クロム化
合物で構成される被膜を形成した。被膜は、第1の層と
第2の層とからなる積層体として形成した。第1の層お
よび第2の層は、以下に説明するようなイオンプレーテ
ィングにより、連続して形成した。まず、下地層が形成
された基材を、イオンプレーティング装置内に取付け、
その後、装置内を予熱しながら、イオンプレーティング
装置内を3×10−3Paまで排気(減圧)した。次
に、アルゴンガス流量100ml/分で、ボンバード処
理を3分間行った。ボンバード処理におけるイオンプレ
ーティング装置内の圧力は、9×10−2Paであっ
た。
【0224】次に、イオンプレーティング装置内を2×
10−3Paまで排気(減圧)した後、窒素ガスを導入
し、イオンプレーティング装置内の圧力を3×10−1
Paとした。このような状態で、ターゲットとしてCr
を用い、イオン化電圧:30V、イオン化電流:140
Aに設定することにより、CrNで構成される第1の層
を形成した。
【0225】引き続き、以下のようにして、第1の層の
表面に、第2の層を形成した。イオンプレーティング装
置内を2×10−3Paまで排気(減圧)した後、窒素
ガス、酸素ガスを、それぞれ、160ml/分、80m
l/分の流量で導入し、イオンプレーティング装置内の
圧力を3×10−1Paとした。このような状態で、タ
ーゲットとしてCrを用い、イオン化電圧:30V、イ
オン化電流:140Aに設定することにより、CrNO
で構成される第2の層を形成し、装飾品(腕時計ケース
およびネジロックりゅうず)を得、これらを組み立て
た。なお、第1の層、第2の層の平均厚さは、それぞ
れ、10μm、1μmであった。
【0226】また、基材および得られた装飾品につい
て、JIS B 0601で規定される表面粗さR
maxを測定した。基材の研磨を行った箇所の表面粗さ
maxは、0.2〜0.4μmであった。被膜の形成
後においては、これに対応する箇所の表面粗さRmax
は、0.01〜0.03μm(鏡面)となっていた。ま
た、基材の、切削、研磨を施さなかった箇所の表面粗さ
maxは、1.5〜1.8μm(梨地)であった。被
膜の形成後においては、これに対応する箇所の表面粗さ
maxは、1.0〜1.2μm(半鏡面)となってい
た。このように、被膜をイオンプレーティングにより形
成したことにより、表面が平滑化されたことが分かる。
【0227】(実施例15)以下に示すような表面処理
を施すことにより、装飾品(三つ折り構造のバンド中
留)を製造した。まず、ステンレス鋼(SUS316
L)を用いて、鍛造により、三つ折り構造のバンド中留
の各構成部品の形状を有する基材をそれぞれ作製し、そ
の後、必要箇所を切削、研磨した。次に、これらの基材
を洗浄した。基材の洗浄としては、まず、アルカリ電解
脱脂を30秒間行い、次いで、アルカリ浸漬脱脂を30
秒間行った。その後、中和を10秒間、水洗を10秒
間、純水洗浄を10秒間行った。
【0228】このようにして洗浄を行った基材の表面
に、Auで構成される第1の下地層を形成した。第1の
下地層の形成は、湿式メッキにより、浴温:60℃、電
流密度:3A/dm、時間:5分間という条件で行っ
た。このようにして形成された第1の下地層の平均厚さ
は、0.5μmであった。
【0229】その後、第1の下地層の表面に、Pdで構
成される第2の下地層を形成した。第2の下地層の形成
は、湿式メッキにより、浴温:60℃、電流密度:3A
/dm、時間:10分間という条件で行った。このよ
うにして形成された第2の下地層の平均厚さは、3μm
であった。
【0230】次に、第1の下地層、第2の下地層が積層
された基材を洗浄した。この洗浄としては、まず、アル
カリ電解脱脂を30秒間行い、次いで、アルカリ浸漬脱
脂を30秒間行った。その後、中和を10秒間、水洗を
10秒間、純水洗浄を10秒間行った。
【0231】洗浄後、第2の下地層の表面に、クロム化
合物で構成される被膜を形成した。被膜は、第1の層と
第2の層とからなる積層体として形成した。第1の層お
よび第2の層は、以下に説明するようなイオンプレーテ
ィングにより、連続して形成した。まず、下地層が形成
された基材を、イオンプレーティング装置内に取付け、
その後、装置内を予熱しながら、イオンプレーティング
装置内を3×10−3Paまで排気(減圧)した。次
に、アルゴンガス流量100ml/分で、ボンバード処
理を3分間行った。ボンバード処理におけるイオンプレ
ーティング装置内の圧力は、9×10−2Paであっ
た。
【0232】次に、イオンプレーティング装置内を2×
10−3Paまで排気(減圧)した後、窒素ガスを導入
し、イオンプレーティング装置内の圧力を3×10−1
Paとした。このような状態で、ターゲットとしてCr
を用い、イオン化電圧:30V、イオン化電流:140
Aに設定することにより、CrNで構成される第1の層
を形成した。
【0233】引き続き、以下のようにして、第1の層の
表面に、第2の層を形成した。イオンプレーティング装
置内を2×10−3Paまで排気(減圧)した後、窒素
ガス、酸素ガスを、それぞれ、160ml/分、80m
l/分の流量で導入し、イオンプレーティング装置内の
圧力を3×10−1Paとした。このような状態で、タ
ーゲットとしてCrを用い、イオン化電圧:30V、イ
オン化電流:140Aに設定することにより、CrNO
で構成される第2の層を形成した。その後、各部品を組
み立てることにより、装飾品(三つ折り構造のバンド中
留)を得た。なお、第1の層、第2の層の平均厚さは、
それぞれ、10μm、1μmであった。
【0234】また、基材および得られた装飾品につい
て、JIS B 0601で規定される表面粗さR
maxを測定した。基材の研磨を行った箇所の表面粗さ
maxは、0.2〜0.4μmであった。被膜の形成
後においては、これに対応する箇所の表面粗さRmax
は、0.01〜0.03μm(鏡面)となっていた。ま
た、基材の、切削、研磨を施さなかった箇所の表面粗さ
maxは、1.5〜1.8μm(梨地)であった。被
膜の形成後においては、これに対応する箇所の表面粗さ
maxは、1.0〜1.2μm(半鏡面)となってい
た。このように、被膜をイオンプレーティングにより形
成したことにより、表面が平滑化されたことが分かる。
【0235】(比較例1)以下に示すような表面処理を
施すことにより、装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を製
造した。まず、ステンレス鋼(SUS444)を用い
て、鋳造により、腕時計ケース(裏蓋)の形状を有する
基材を作製し、その後、必要箇所を切削、研磨した。次
に、この基材を洗浄した。基材の洗浄としては、まず、
アルカリ電解脱脂を30秒間行い、次いで、アルカリ浸
漬脱脂を30秒間行った。その後、中和を10秒間、水
洗を10秒間、純水洗浄を10秒間行った。
【0236】このようにして洗浄を行った基材の表面
に、Agで構成される被膜を形成した。被膜は、浴温:
50℃、電流密度:3A/dm、時間:25分間とい
う条件で電解メッキを行うことにより形成した。形成さ
れた被膜の平均厚さは、10μmであった。被膜の厚さ
は、JIS H5821の顕微鏡断面試験方法により測
定した。
【0237】(比較例2)以下に示すような表面処理を
施すことにより、装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を製
造した。まず、Cu−Zn系合金(合金組成:Cu60
wt%−Zn40wt%)を用いて、鋳造により、腕時
計ケース(裏蓋)の形状を有する基材を作製し、その
後、必要箇所を切削、研磨した。次に、この基材を洗浄
した。基材の洗浄としては、まず、アルカリ電解脱脂を
30秒間行い、次いで、アルカリ浸漬脱脂を30秒間行
った。その後、中和を10秒間、水洗を10秒間、純水
洗浄を10秒間行った。
【0238】このようにして洗浄を行った基材の表面
に、クロム化合物で構成される被膜を形成した。被膜の
形成は、以下に説明するようなイオンプレーティングに
より行った。まず、基材をイオンプレーティング装置内
に取付け、その後、装置内を予熱しながら、イオンプレ
ーティング装置内を3×10−3Paまで排気(減圧)
した。次に、アルゴンガス流量50ml/分で、ボンバ
ード処理を5分間行った。ボンバード処理におけるイオ
ンプレーティング装置内の圧力は、9×10−2Paで
あった。
【0239】次に、イオンプレーティング装置内に、窒
素ガス、アセチレンガスを、それぞれ、100ml/
分、100ml/分の流量で導入し、イオンプレーティ
ング装置内の圧力を2×10−1Paとした。このよう
な状態で、ターゲットとしてCrを用い、イオン化電
圧:25V、イオン化電流:110Aに設定することに
より、CrCNで構成される被膜を形成し、装飾品を得
た。なお、形成された被膜の平均厚さは、1μmであっ
た。被膜の厚さは、JISH 5821の顕微鏡断面試
験方法により測定した。
【0240】(比較例3)以下に示すような表面処理を
施すことにより、装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を製
造した。まず、Cu−Zn系合金(合金組成:Cu60
wt%−Zn40wt%)を用いて、鋳造により、腕時
計ケース(裏蓋)の形状を有する基材を作製し、その
後、必要箇所を切削、研磨した。次に、この基材を洗浄
した。基材の洗浄としては、まず、アルカリ電解脱脂を
30秒間行い、次いで、アルカリ浸漬脱脂を30秒間行
った。その後、中和を10秒間、水洗を10秒間、純水
洗浄を10秒間行った。
【0241】このようにして洗浄を行った基材の表面
に、次に、この基材の表面に、Niで構成される下地層
を形成した。下地層の形成は、湿式メッキにより、浴
温:60℃、電流密度:3A/dm、時間:10分間
という条件で行った。このようにして形成された下地層
の平均厚さは、5μmであった。次に、下地層が積層さ
れた基材を洗浄した。この洗浄としては、まず、アルカ
リ電解脱脂を30秒間行い、次いで、アルカリ浸漬脱脂
を30秒間行った。その後、中和を10秒間、水洗を1
0秒間、純水洗浄を10秒間行った。
【0242】このようにして洗浄を行った下地層の表面
に、クロム化合物で構成される被膜を形成した。被膜の
形成は、以下に説明するようなイオンプレーティングに
より行った。まず、基材をイオンプレーティング装置内
に取付け、その後、装置内を予熱しながら、イオンプレ
ーティング装置内を3×10−3Paまで排気(減圧)
した。次に、アルゴンガス流量50ml/分で、ボンバ
ード処理を5分間行った。ボンバード処理におけるイオ
ンプレーティング装置内の圧力は、9×10−2Paで
あった。
【0243】次に、イオンプレーティング装置内に、窒
素ガス、アセチレンガスを、それぞれ、100ml/
分、100ml/分の流量で導入し、イオンプレーティ
ング装置内の圧力を2×10−1Paとした。このよう
な状態で、ターゲットとしてCrを用い、イオン化電
圧:25V、イオン化電流:110Aに設定することに
より、CrCNで構成される被膜を形成し、装飾品を得
た。なお、形成された被膜の平均厚さは、1μmであっ
た。被膜の厚さは、JISH 5821の顕微鏡断面試
験方法により測定した。
【0244】(比較例4)以下に示すような表面処理を
施すことにより、装飾品(腕時計ケース(裏蓋))を製
造した。まず、Cu−Zn系合金(合金組成:Cu60
wt%−Zn40wt%)を用いて、鋳造により、腕時
計ケース(裏蓋)の形状を有する基材を作製し、その
後、必要箇所を切削、研磨した。次に、この基材を洗浄
した。基材の洗浄としては、まず、アルカリ電解脱脂を
30秒間行い、次いで、アルカリ浸漬脱脂を30秒間行
った。その後、中和を10秒間、水洗を10秒間、純水
洗浄を10秒間行った。
【0245】このようにして洗浄を行った基材の表面
に、Cuで構成される下地層を形成した。下地層の形成
は、湿式メッキにより、浴温:60℃、電流密度:3A
/dm、時間:10分間という条件で行った。このよ
うにして形成された下地層の平均厚さは、5μmであっ
た。次に、下地層が積層された基材を洗浄した。この洗
浄としては、まず、アルカリ電解脱脂を30秒間行い、
次いで、アルカリ浸漬脱脂を30秒間行った。その後、
中和を10秒間、水洗を10秒間、純水洗浄を10秒間
行った。
【0246】このようにして洗浄を行った下地層の表面
に、クロム化合物で構成される被膜を形成した。被膜の
形成は、以下に説明するようなイオンプレーティングに
より行った。まず、基材をイオンプレーティング装置内
に取付け、その後、装置内を予熱しながら、イオンプレ
ーティング装置内を3×10−3Paまで排気(減圧)
した。次に、アルゴンガス流量50ml/分で、ボンバ
ード処理を5分間行った。ボンバード処理におけるイオ
ンプレーティング装置内の圧力は、9×10−2Paで
あった。
【0247】次に、イオンプレーティング装置内に、窒
素ガス、アセチレンガスを、それぞれ、100ml/
分、100ml/分の流量で導入し、イオンプレーティ
ング装置内の圧力を2×10−1Paとした。このよう
な状態で、ターゲットとしてCrを用い、イオン化電
圧:25V、イオン化電流:110Aに設定することに
より、CrCNで構成される被膜を形成し、装飾品を得
た。なお、形成された被膜の平均厚さは、1μmであっ
た。被膜の厚さは、JISH 5821の顕微鏡断面試
験方法により測定した。
【0248】(比較例5)以下に示すような表面処理を
施すことにより、装飾品(腕時計ケースおよび回転ベゼ
ル)を製造した。まず、前記実施例13と同様にして、
腕時計ケース(胴)の形状を有するステンレス鋼(SU
S316L)製の基材、回転ベゼルの形状を有するステ
ンレス鋼(SUS316L)製の基材をそれぞれ作製し
た。
【0249】これらの基材の必要箇所を切削、研磨した
後、洗浄した。基材の洗浄としては、まず、アルカリ電
解脱脂を30秒間行い、次いで、アルカリ浸漬脱脂を3
0秒間行った。その後、中和を10秒間、水洗を10秒
間、純水洗浄を10秒間行った。
【0250】このようにして洗浄を行った基材の表面
に、クロム化合物で構成される被膜を形成した。被膜の
形成は、以下に説明するようなイオンプレーティングに
より行った。まず、基材をイオンプレーティング装置内
に取付け、その後、装置内を予熱しながら、イオンプレ
ーティング装置内を3×10−3Paまで排気(減圧)
した。次に、アルゴンガス流量50ml/分で、ボンバ
ード処理を5分間行った。ボンバード処理におけるイオ
ンプレーティング装置内の圧力は、9×10−2Paで
あった。
【0251】次に、イオンプレーティング装置内に、窒
素ガス、アセチレンガスを、それぞれ、100ml/
分、100ml/分の流量で導入し、イオンプレーティ
ング装置内の圧力を2×10−1Paとした。このよう
な状態で、ターゲットとしてCrを用い、イオン化電
圧:25V、イオン化電流:110Aに設定することに
より、CrCNで構成される被膜を形成し、装飾品(腕
時計ケースおよび回転ベゼル)を得、これらを組み立て
た。なお、形成された被膜の平均厚さは、1μmであっ
た。被膜の厚さは、JISH 5821の顕微鏡断面試
験方法により測定した。
【0252】(比較例6)以下に示すような表面処理を
施すことにより、装飾品(腕時計ケースおよびネジロッ
クりゅうず)を製造した。まず、前記実施例13と同様
にして、腕時計ケース(胴)の形状を有するステンレス
鋼(SUS316L)製の基材、ネジロックりゅうずの
形状を有するステンレス鋼(SUS316L)製の基材
をそれぞれ作製した。
【0253】これらの基材の必要箇所を切削、研磨した
後、洗浄した。基材の洗浄としては、まず、アルカリ電
解脱脂を30秒間行い、次いで、アルカリ浸漬脱脂を3
0秒間行った。その後、中和を10秒間、水洗を10秒
間、純水洗浄を10秒間行った。
【0254】このようにして洗浄を行った基材の表面
に、クロム化合物で構成される被膜を形成した。被膜の
形成は、以下に説明するようなイオンプレーティングに
より行った。まず、基材をイオンプレーティング装置内
に取付け、その後、装置内を予熱しながら、イオンプレ
ーティング装置内を3×10−3Paまで排気(減圧)
した。次に、アルゴンガス流量50ml/分で、ボンバ
ード処理を5分間行った。ボンバード処理におけるイオ
ンプレーティング装置内の圧力は、9×10−2Paで
あった。
【0255】次に、イオンプレーティング装置内に、窒
素ガス、アセチレンガスを、それぞれ、100ml/
分、100ml/分の流量で導入し、イオンプレーティ
ング装置内の圧力を2×10−1Paとした。このよう
な状態で、ターゲットとしてCrを用い、イオン化電
圧:25V、イオン化電流:110Aに設定することに
より、CrCNで構成される被膜を形成し、装飾品(腕
時計ケースおよびネジロックりゅうず)を得、これらを
組み立てた。なお、形成された被膜の平均厚さは、1μ
mであった。被膜の厚さは、JISH 5821の顕微
鏡断面試験方法により測定した。
【0256】(比較例7)以下に示すような表面処理を
施すことにより、装飾品(三つ折り構造のバンド中留)
を製造した。まず、前記実施例13と同様にして、三つ
折り構造のバンド中留の各構成部品の形状を有するステ
ンレス鋼(SUS316L)製の基材を作製した。
【0257】これらの基材の必要箇所を切削、研磨した
後、洗浄した。基材の洗浄としては、まず、アルカリ電
解脱脂を30秒間行い、次いで、アルカリ浸漬脱脂を3
0秒間行った。その後、中和を10秒間、水洗を10秒
間、純水洗浄を10秒間行った。
【0258】このようにして洗浄を行った基材の表面
に、クロム化合物で構成される被膜を形成した。被膜の
形成は、以下に説明するようなイオンプレーティングに
より行った。まず、基材をイオンプレーティング装置内
に取付け、その後、装置内を予熱しながら、イオンプレ
ーティング装置内を3×10−3Paまで排気(減圧)
した。次に、アルゴンガス流量50ml/分で、ボンバ
ード処理を5分間行った。ボンバード処理におけるイオ
ンプレーティング装置内の圧力は、9×10−2Paで
あった。
【0259】次に、イオンプレーティング装置内に、窒
素ガス、アセチレンガスを、それぞれ、100ml/
分、100ml/分の流量で導入し、イオンプレーティ
ング装置内の圧力を2×10−1Paとした。このよう
な状態で、ターゲットとしてCrを用い、イオン化電
圧:25V、イオン化電流:110Aに設定することに
より、CrCNで構成される被膜を形成した。その後、
各部品を組み立てることにより、装飾品(三つ折り構造
のバンド中留)を得た。なお、形成された被膜の平均厚
さは、1μmであった。被膜の厚さは、JISH 58
21の顕微鏡断面試験方法により測定した。各実施例お
よび各比較例の表面処理方法の条件を表1、表2にまと
めて示す。
【0260】
【表1】
【0261】
【表2】
【0262】2.装飾品の外観評価 上記実施例1〜15および比較例1〜7で製造した各装
飾品について、目視および顕微鏡による観察を行い、こ
れらの外観を以下の4段階の基準に従い、評価した。 ◎:外観優良(光沢度大)。 ○:外観良(光沢度中)。 △:外観やや不良(光沢度やや小、または表面の荒れあ
り)。 ×:外観不良(光沢度小、または表面の荒れ顕著)。
【0263】3.被膜の耐擦傷性評価 上記実施例1〜15および比較例1〜7で製造した各装
飾品について、以下に示すような試験を行い、耐擦傷性
を評価した。
【0264】ステンレス製のブラシを、各装飾品の表面
上に押し付け、50往復摺動させた。このときの押し付
け荷重は、0.2kgfであった。その後、装飾品表面
を目視により観察し、これらの外観を以下の4段階の基
準に従い、評価した。 ◎:被膜の表面に、傷の発生が全く認められない。 ○:被膜の表面に、傷の発生がほとんど認められない。 △:被膜の表面に、傷の発生がわずかに認められる。 ×:被膜の表面に、傷の発生が顕著に認められる。
【0265】4.装飾品の耐摩耗性評価 上記実施例1〜15および比較例1〜7で製造した各装
飾品について、摩耗係数(耐鋼)の測定を行い、以下の
3段階の基準に従い、評価した。 ◎:摩耗係数が0.7未満。 ○:摩耗係数が0.7以上0.8未満。 ×:摩耗係数が0.8以上。
【0266】5.装飾品の耐酸性評価 上記実施例1〜15および比較例1〜7で製造した各装
飾品について、以下に示すような試験を行うことによ
り、耐酸性を評価した。
【0267】まず、46vol%フッ化水素酸と、60
vol%硝酸とを用意し、これらを、混合容量比1:1
で混合することにより、混合溶液を得た。この混合溶液
に、各装飾品を浸漬した。1分間放置した後、各装飾品
を前記混合溶液内から取り出し、水洗、乾燥した。その
後、各装飾品の外観を目視により観察した。各装飾品の
耐食性は、以下の3段階の基準に従い、評価した。 ◎:被膜の腐食が全く認められない。 △:被膜の腐食がわずかに認められる。 ×:被膜の腐食がはっきりと認められる。
【0268】6.装飾品の耐酸化性評価 上記実施例1〜15および比較例1〜7で製造した各装
飾品を、大気雰囲気中で、200℃×8時間の加熱を行
った。その後、各装飾品を放冷し、これらの外観を以下
の3段階の基準に従い、評価した。 ◎:被膜の変色が全く認められない。 △:被膜の変色がわずかに認められる。 ×:被膜の変色がはっきりと認められる。
【0269】これらの結果を、被膜の色、ビッカース硬
度Hvとともに表3に示す。なお、ビッカース硬度Hv
としては、各装飾品の被膜表面について、測定荷重25
gfにて測定した値を示す。
【0270】
【表3】
【0271】表3から明らかなように、本発明の表面処
理方法を用いて製造された装飾品は、いずれも優れた美
的外観を有しており、耐擦傷性、耐摩耗性にも優れてい
た。
【0272】また、本発明の表面処理方法を用いて製造
された装飾品は、耐酸化性、耐酸性(耐食性)にも優れ
ていた。これらの結果から、本発明の装飾品は、長期間
にわたって優れた美的外観を保持することができるもの
であることがわかる。また、緩衝層として機能する下地
層を有する装飾品は、特に優れた耐食性を有していた。
【0273】また、本発明の表面処理方法を用いて製造
された装飾品は、いずれも、ザラツキ感のない、優れた
触感を有していた。
【0274】また、実施例1〜15においては、イオン
プレーティング時の雰囲気組成を適宜選択することによ
り、容易に、所望の組成、特性を有する被膜を形成する
ことができた。
【0275】これに対し、比較例の表面処理方法により
製造された装飾品は、美的外観に劣り、耐擦傷性、耐摩
耗性にも劣っていた。また、耐酸化性、耐酸性にも劣っ
ていた。
【0276】7.回転ベゼルの回転トルク 上記実施例13および比較例5で製造した装飾品(腕時
計ケースおよび回転ベゼル)を用いて、時計を製造し
た。得られた各時計について、300gfの荷重を掛け
る条件で、回転ベゼルの回転トルクの測定を行った。ま
た、回転ベゼルを10000回回転させた後、同様の条
件で回転トルクを測定した。その結果を表4に示す。
【0277】
【表4】
【0278】表4から明らかなように、本発明の表面処
理方法を用いて製造された装飾品(腕時計ケースおよび
回転ベゼル)を備えた時計では、回転ベゼルの回転操作
を繰り返し行った後でも、安定した回転トルクを有して
いた。これに対し、比較例の表面処理方法を用いて製造
された装飾品(腕時計ケースおよび回転ベゼル)を備え
た時計では、製造直後における回転トルクは比較的大き
いものであったが、回転ベゼルの回転操作を繰り返し行
うことにより、回転トルクの顕著な低下が認められた。
【0279】8.ネジロックりゅうずの着脱操作性評価 上記実施例14および比較例6で製造した装飾品(腕時
計ケースおよびネジロックりゅうず)を用いて、時計を
製造した。得られた各時計について、ケースからネジロ
ックりゅうずを回転着脱する、回転着脱操作を行ったと
きの操作のし易さ(着脱操作性)を以下の4段階の基準
に従い、評価した。 ◎:回転着脱操作を非常にスムーズに行うことができ
る。 ○:回転着脱操作を十分にスムーズに行うことができ
る。 △:回転着脱操作を行う際に、若干のゴリ感がある。 ×:回転着脱操作を行う際に、顕著なゴリ感がある。 また、ネジロックりゅうずの回転着脱操作を10000
回行った後、上記と同様の基準に従い、着脱操作性を評
価した。その結果を表5に示す。
【0280】
【表5】
【0281】表5から明らかなように、本発明の表面処
理方法を用いて製造された装飾品(腕時計ケースおよび
ネジロックりゅうず)を備えた時計では、製造直後、回
転着脱操作を繰り返し行った後のいずれにおいても、優
れた着脱操作性を示した。これに対し、比較例の表面処
理方法を用いて製造された装飾品(腕時計ケースおよび
ネジロックりゅうず)を備えた時計では、製造直後にお
いては、比較的優れた着脱操作性を示したものの、回転
着脱操作を繰り返し行うことにより、着脱操作性が著し
く低下した。
【0282】9.バンド中留の着脱性評価 上記実施例15および比較例7で製造した装飾品(バン
ド中留)を用いて、時計を製造した。得られた各時計に
ついて、バンド中留の着脱操作を行ったときの操作のし
易さ(着脱操作性)を以下の4段階の基準に従い、評価
した。 ◎:着脱操作を非常にスムーズに行うことができる。 ○:着脱操作を十分にスムーズに行うことができる。 △:着脱操作を行う際に、若干の引っかかりが認められ
る。 ×:着脱操作を行う際に、顕著な引っかかりが認められ
る。 また、バンド中留の着脱操作を10000回行った後、
上記と同様の基準に従い、着脱操作性を評価した。その
結果を表6に示す。
【0283】
【表6】
【0284】表6から明らかなように、本発明の表面処
理方法を用いて製造された装飾品(バンド中留)を備え
た時計では、製造直後、着脱操作を繰り返し行った後の
いずれにおいても、優れた着脱操作性を示した。これに
対し、比較例の表面処理方法を用いて製造された装飾品
(バンド中留)を備えた時計では、製造直後において
は、比較的優れた着脱操作性を示したものの、着脱操作
を繰り返し行うことにより、着脱操作性が著しく低下し
た。
【0285】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、美
的外観に優れた装飾品、時計を容易かつ迅速に製造する
ことができる。
【0286】また、本発明の装飾品、時計は、耐擦傷
性、耐摩耗性、耐酸性、耐酸化性等に優れ、長期間にわ
たって、優れた美的外観を保持することができる。ま
た、本発明の装飾品、時計は、適度な潤滑性(摺動性)
を長期間にわたって維持することができる。これによ
り、装飾品の操作性、高級感が向上する。
【0287】また、被膜形成時における雰囲気ガスの組
成を適宜選択することにより、容易に、所望の組成、特
性を有する被膜を形成することができる。
【0288】また、基材の構成材料等を選択することに
より、複雑な形状を有する装飾品を容易に製造すること
が可能となり、また、装飾品の軽量化、製造コストの低
減等を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の表面処理方法の第1実施形態を示す
断面図である。
【図2】 本発明の表面処理方法の第2実施形態を示す
断面図である。
【図3】 本発明の表面処理方法の第3実施形態を示す
断面図である。
【図4】 本発明の表面処理方法の第4実施形態を示す
断面図である。
【符号の説明】
1A、1C、1D、1E……装飾品 2……基材 3…
…被膜 31……第1の層 32……第2の層 40…
…下地層 41……第1の下地層 42……第2の下地
層 43……第3の下地層 5……マスキング
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4K044 AA01 AA02 AA03 AA06 AA09 AA11 AA13 AA16 AB06 BA02 BA06 BA08 BA10 BA12 BA15 BA18 BA21 BB02 BB06 BB10 BC06 BC09 CA11 CA12 CA13 CA14 CA15 CA17 CA18 CA53

Claims (16)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基材上の少なくとも一部に、少なくとも
    1層の下地層を形成する工程と、 前記下地層上に、乾式メッキ法により、主としてクロム
    化合物で構成される被膜を形成する工程とを有する製造
    方法であって、 前記下地層のうち少なくとも1層は、Cu、Co、P
    d、Au、Ag、In、Sn、Ni、Ti、Zn、C
    r、AlおよびFeのうちの少なくとも1種の金属また
    は該金属を含む合金を主とする材料で構成されるもので
    あり、 前記被膜は、クロムの酸化物、窒化物および炭化物のう
    ちの少なくとも1種を含むものであり、かつ、 前記被膜の平均厚さが5〜100μmであることを特徴
    とする装飾品の表面処理方法。
  2. 【請求項2】 前記下地層のうち少なくとも1層は、そ
    の一方の面側と他方の面側との電位差を緩和する緩衝層
    である請求項1に記載の装飾品の表面処理方法。
  3. 【請求項3】 前記下地層は、金属化合物で構成される
    ものである請求項1または2に記載の装飾品の表面処理
    方法。
  4. 【請求項4】 前記装飾品は、前記下地層を2層以上有
    するものである請求項1ないし3のいずれかに記載の装
    飾品の表面処理方法。
  5. 【請求項5】 隣接する前記下地層は、互いに共通の元
    素を含む材料で構成されたものである請求項4に記載の
    装飾品の表面処理方法。
  6. 【請求項6】 前記共通の元素は、Cuである請求項5
    に記載の装飾品の表面処理方法。
  7. 【請求項7】 前記下地層を被覆する工程の前に、前記
    基材の表面の少なくとも一部に、清浄化処理を施す工程
    を有する請求項1ないし6のいずれかに記載の装飾品の
    表面処理方法。
  8. 【請求項8】 前記被膜を被覆する工程の前に、前記下
    地層の表面の少なくとも一部に、清浄化処理を施す工程
    を有する請求項1ないし7のいずれかに記載の装飾品の
    表面処理方法。
  9. 【請求項9】 前記被膜は、2層以上の積層体である請
    求項1ないし8のいずれかに記載の装飾品の表面処理方
    法。
  10. 【請求項10】 前記基材は、Cu、Zn、Ni、T
    i、Alまたはこれらのうち少なくとも1種を含む合金
    で構成されるものである請求項1ないし9のいずれかに
    記載の装飾品の表面処理方法。
  11. 【請求項11】 前記基材は、その表面の少なくとも一
    部に、鏡面加工、スジ目加工、梨地加工から選択される
    表面加工が施されたものである請求項1ないし10のい
    ずれかに記載の装飾品の表面処理方法。
  12. 【請求項12】 前記被膜を形成する工程の後、さら
    に、前記被膜上の一部に、マスキングを形成する工程
    と、 剥離剤を用いて、前記マスキングが被覆されていない部
    位の前記被膜を除去する工程と、 前記マスキングを除去する工程とを有する請求項1ない
    し11のいずれかに記載の装飾品の表面処理方法。
  13. 【請求項13】 請求項1ないし12のいずれかに記載
    の装飾品の表面処理方法を用いて製造されたことを特徴
    とする装飾品。
  14. 【請求項14】 少なくともその一部が皮膚に接触して
    用いられる請求項13に記載の装飾品。
  15. 【請求項15】 装飾品は、時計用外装部品である請求
    項13または14に記載の装飾品。
  16. 【請求項16】 請求項13ないし15のいずれかに記
    載の装飾品を備えたことを特徴とする時計。
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