JP2003225808A - 高速断続切削で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆超硬合金製切削工具 - Google Patents
高速断続切削で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆超硬合金製切削工具Info
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Abstract
ピング性を発揮する表面被覆超硬合金製切削工具を提供
する。 【解決手段】 表面被覆超硬合金製切削工具が、炭化タ
ングステン基超硬合金基体の表面に、個々の平均層厚が
0.01〜0.3μmの第1薄層と第2薄層の交互多重
積層で構成され、かつ1〜10μmの全体平均層厚を有
する硬質被覆層と、0.05〜1μmの平均層厚を有す
る最表面切粉滑り層を蒸着形成してなり、さらに、
(a)上記第1薄層を窒化チタン層および炭窒化チタン
層のうちのいずれか、または両方、(b)上記第2薄層
を酸化アルミニウム層、(c)上記最表面切粉滑り層を
硫化モリブデン層および硫化チタン層のうちのいずれ
か、または両方、で構成する。
Description
どの切削加工を高い機械的熱的衝撃を伴う高速断続切削
条件で行なった場合にも、硬質被覆層にチッピング(微
小欠け)の発生なく、すぐれた耐摩耗性を発揮する表面
被覆超硬合金製切削工具(以下、被覆超硬工具という)
に関するものである。 【0002】 【従来の技術】従来、一般に、炭化タングステン(以
下、WCで示す)基超硬合金で構成された基体(以下、
超硬基体という)の表面に、(a)化学蒸着形成および
/または物理蒸着形成(以下、単に蒸着形成という)さ
れたTiの炭化物(以下、TiCで示す)層、窒化物
(以下、同じくTiNで示す)層、炭窒化物(以下、T
iCNで示す)層、炭酸化物(以下、TiCOで示す)
層、および炭窒酸化物(以下、TiCNOで示す)層の
うちの1層または2層以上の積層からなり、かつ0.5
〜10μmの平均層厚を有するるTi化合物層からなる
下部層、(b)0.3〜10μmの平均層厚を有し、か
つ結晶構造がα型やκ型、さらにγ型の蒸着形成された
酸化アルミニウム(以下、Al2O3で示す)層からなる
上部層、以上(a)の下部層と(b)の上部層で構成さ
れた硬質被覆層を蒸着形成してなる被覆超硬工具が知ら
れており、この被覆超硬工具が、例えば各種の鋼や鋳鉄
などの連続切削や断続切削に用いられていることも知ら
れている。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】一方、近年の切削加工
に対する省力化および省エネ化、さらに低コスト化の要
求は強く、これに伴い、切削加工は切削機械の高性能化
とも相俟って高速化の傾向にあるが、上記の従来被覆超
硬工具の場合、これを鋼や鋳鉄などの通常の条件での切
削加工に用いた場合には問題はないが、これを高い機械
的熱的衝撃を伴う高速断続切削に用いると、特に硬質被
覆層を構成するAl2O3層が、硬質被覆層内で下部層で
あるTi化合物層に対して上部位置にあるため、切削時
に前記Ti化合物層に比して被削材に優先的に当接する
ことから、Al2O3層自体が直接的に大きな機械的熱的
衝撃を受けることになり、Al2O3層はすぐれた高温硬
さと耐熱性を有するが、靭性の劣るものであるために、
これにチッピングが発生し、これが原因で比較的短時間
で使用寿命に至るのが現状である。 【0004】 【課題を解決するための手段】そこで、本発明者等は、
上述のような観点から、高速断続切削条件での切削加工
でも硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する被
覆超硬工具を開発すべく研究を行った結果、 (a)被覆超硬工具の硬質被覆層を、TiN層および/
またはTiCN層(以下、TiN/TiCN層で示す)
と、Al2O3層の構成層に特定した上で、これらTiN
/TiCN層と、Al2O3層の交互多重積層とすると共
に、これらの個々の層厚を平均層厚で0.01〜0.3
μmのきわめて薄い薄層とし、かつ全体平均層厚を1〜
10μmとすると、この結果の硬質被覆層は薄膜化交互
多重積層構造をもつことから、切削時に前記TiN/T
iCN薄層とAl2O3薄層が同時に被削材の切削に直接
的に関与し、それぞれのもつ特性、すなわち前記TiN
/TiCN薄層(以下、第1薄層という)のもつすぐれ
た強度と靭性、および前記Al2O3薄層(以下、第2薄
層という)のもつすぐれた高温硬さと耐熱性が同時に、
かつ均等に、経時的変化なく発揮され、したがって、こ
の結果の被覆超硬工具は、これを特に鋼や鋳鉄などの高
い機械的熱的衝撃を伴う高速断続切削に用いても、硬質
被覆層にチッピングの発生がなく、すぐれた耐摩耗性を
長期に亘って発揮するようになること。 (b)上記(a)の交互多重積層からなる硬質被覆層の
表面に、硫化モリブデン(以下、MoS2で示す)層お
よび硫化チタン(以下、TiS2で示す)層のうちのい
ずれか、または両方を最表面層として蒸着形成すると、
これらMoS2層および/またはTiS2層(以下、Mo
S2/TiS2層で示す)には、切粉の切刃表面に対する
抵抗を著しく減少させて、切粉の滑りを円滑にさせ、も
ってスムースな切粉の流れを形成する作用があるので、
高速断続切削加工時の機械的衝撃が上記交互多重積層か
らなる硬質被覆層との共存において、一段と緩和される
ようになること。 以上(a)および(b)に示される研究結果を得たので
ある。 【0005】この発明は、上記の研究結果に基づいてな
されたものであって、超硬基体の表面に、個々の平均層
厚が0.01〜0.3μmの第1薄層と第2薄層の交互
多重積層で構成され、かつ1〜10μmの全体平均層厚
を有する硬質被覆層と、0.05〜1μmの平均層厚を
有する最表面切粉滑り層を蒸着形成してなり、さらに、
(a)上記第1薄層をTiN/TiCN薄層、(b)上
記第2薄層をAl2O3薄層,(c)上記最表面切粉滑り
層をMoS2/TiS2層、で構成してなる、高速断続切
削で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する被
覆超硬工具に特徴を有するものである。 【0006】なお、この発明の被覆超硬工具において、
硬質被覆層の交互多重積層を構成する第1薄層および第
2薄層の個々の平均層厚をそれぞれ0.01〜0.3μ
mとしたのは、いずれの薄層においても、その平均層厚
が0.01μm未満になると、それぞれの薄層のもつ特
性、すなわち第1薄層によるすぐれた強度と靭性、およ
び第2薄層によるすぐれた高温硬さと耐熱性を硬質被覆
層に十分に具備せしめることができず、一方その平均層
厚がそれぞれ0.3μmを越えると、それぞれの薄層の
もつ問題点、すなわち第1薄層による耐摩耗性低下およ
び第2薄層による耐チッピング性低下が硬質被覆層に現
われるようになるという理由によるものである。また、
同じく最表面切粉滑り層の平均層厚を0.05〜1μm
としたのは、その平均層厚が0.05μm未満では、所
望のすぐれた切粉滑り性を確保することができず、一方
その平均層厚が1μmを越えると、これが原因で硬質被
覆層にチッピングが発生し易くなる、という理由からで
ある。さらに、硬質被覆層の全体平均層厚を1〜10μ
mとしたのは、その層厚が1μmでは所望のすぐれた耐
摩耗性を確保することができず、一方その層厚が10μ
mを越えると、硬質被覆層にチッピングが発生し易くな
るという理由によるものである。 【0007】 【発明の実施の形態】つぎに、この発明の被覆超硬工具
を実施例により具体的に説明する。原料粉末として、い
ずれも1〜3μmの平均粒径を有するWC粉末、TiC
粉末、ZrC粉末、VC粉末、TaC粉末、NbC粉
末、Cr3 C2 粉末、TiN粉末、TaN粉末、および
Co粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される
配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中
で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、98M
Paの圧力で所定形状の圧粉体にプレス成形し、この圧
粉体を5Paの真空中、1370〜1470℃の範囲内
の所定の温度に1時間保持の条件で真空焼結し、焼結
後、切刃部にR:0.07mmのホーニング加工を施す
ことによりISO・CNMG120408に規定するス
ローアウエイチップ形状をもった超硬基体A〜Jをそれ
ぞれ製造した。 【0008】ついで、これらの超硬基体A〜Jのそれぞ
れを、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、通
常の化学蒸着装置に装入し、いずれも通常の形成条件と
して知られている、第1薄層のTiN層の形成条件を、 反応ガス組成−容量%で、TiCl4:4.2%、N2:
30%、H2:残り、反応雰囲気温度:980℃、 反応雰囲気圧力:7kPa、 とし、同TiCN層の形成条件を、 反応ガス組成−容量%で、TiCl4:4.2%、N2:
20%、CH4:4%、H2:残り、 反応雰囲気温度:980℃、 反応雰囲気圧力:7kPa、 とし、また、第2薄層のAl2O3層のうちの結晶構造が
α型のものについては、形成条件を、 反応ガス組成−容量%で、AlCl3:2.2%、C
O2:5.5%、HCl:2.2%、H2S:0.2%、
H2:残り、 反応雰囲気温度:980℃、 反応雰囲気圧力:7kPa、 とし、また、同κ型のものについては、形成条件を、 反応ガス組成−容量%で、AlCl3:3.3%、C
O2:4.0%、HCl:2.2%、H2S:0.3%、
H2:残り、 反応雰囲気温度:980℃、 反応雰囲気圧力:7kPa、 とし、それぞれ表2に示される目標層厚の第1薄層と第
2薄層を交互に、かつ第1薄層と第2薄層の形成の間に
は30秒間のH2ガス導入による反応雰囲気の入れ替え
を行ないながら、同じく表2に示される積層数および全
体目標層厚の硬質被覆層を上記超硬基体A〜Jのそれぞ
れの表面に蒸着形成し、さらに、上記硬質被覆層の表面
に、同じく通常の化学蒸着装置を用いて、MoS2層の
形成条件を、 反応ガス組成−容量%で、MoCl5:0.2%、H
2S:0.3%、H2:残り、 反応雰囲気温度:980℃、 反応雰囲気圧力:7kPa、 とし、またTiS2層の形成条件を、 反応ガス組成−容量%で、TiCl4:1.0%、H
2S:0.3%、H2:残り、 反応雰囲気温度:980℃、 反応雰囲気圧力:7kPa、 として、同じく表2に示される目標層厚の最表面切粉滑
り層を蒸着形成することにより本発明被覆超硬工具1〜
10をそれぞれ製造した。 【0009】また、比較の目的で、同じ化学蒸着装置に
て、表3に示される条件で、表4に示される組成および
目標層厚の硬質被覆層を上記超硬基体A〜Jの表面に蒸
着形成することにより従来被覆超硬工具1〜10をそれ
ぞれ製造した。 【0010】この結果得られた各種の被覆超硬工具につ
いて、これを構成する各種硬質被覆層および最表面切粉
滑り層の組成および層厚を、オージェ分光分析装置、さ
らに走査型電子顕微鏡および透過型電子顕微鏡を用いて
測定したところ、表2、4の目標組成および目標層厚と
実質的に同じ組成および平均層厚(任意5ヶ所測定の平
均値との比較)を示した。 【0011】つぎに、上記本発明被覆超硬工具1〜10
および従来被覆超硬工具1〜10について、いずれも工
具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状態
で、 被削材:JIS・SCM415の長さ方向等間隔4本縦
溝入り丸棒、 切削速度:350m/min、 切込み:2mm、 送り:0.2mm/rev、 切削時間:3分、 の条件での合金鋼の乾式高速断続切削試験、および、 被削材:JIS・FC300の長さ方向等間隔4本縦溝
入り丸棒、 切削速度:400m/min、 切り込み:3mm、 送り:0.2mm/rev、 切削時間:3分、 の条件での鋳鉄の乾式高速断続切削試験を行い、いずれ
の切削試験でも切刃部の逃げ面摩耗幅を測定した。これ
らの試験結果を表5に示した。 【0012】 【表1】 【0013】 【表2】【0014】 【表3】 【0015】 【表4】【0016】 【表5】【0017】 【発明の効果】表2〜5に示される結果から、第1薄層
と第2薄層の交互多重積層からなる硬質被覆層と、最表
面切粉滑り層を形成してなる本発明被覆超硬工具1〜1
0は、いずれも鋼および鋳鉄の切削加工を高い機械的熱
的衝撃を伴う高速断続切削条件で行っても、硬質被覆層
が前記交互多重積層の第1薄層による高強度と高靭性お
よび第2薄層によるすぐれた高温硬さと耐熱性を層全体
に亘って均等的に具備するようになることから、前記最
表面切粉滑り層による一段の切粉滑り性の向上と相俟っ
て、硬質被覆層にチッピングの発生なく、すぐれた耐摩
耗性を長期に亘って発揮するのに対して、従来被覆超硬
工具1〜10においては、いずれも特に上部層のAl2
O3層が直接、かつ優先的に切削に関与し、主に前記上
部層による切削態様となることから、高速断続切削条件
での切削加工では、前記上部層の強度および靭性不足が
原因でチッピングが発生し、比較的短時間で使用寿命に
至ることが明らかである。上述のように、この発明の被
覆超硬工具は、各種の鋼や鋳鉄などの通常の条件での切
削加工は勿論のこと、特にこれの断続切削を高速で行な
った場合においてもすぐれた耐摩耗性を長期に亘って発
揮するものであるから、切削加工の省力化および省エネ
化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものであ
る。
Claims (1)
- 【特許請求の範囲】 【請求項1】 炭化タングステン基超硬合金基体の表面
に、個々の平均層厚が0.01〜0.3μmの第1薄層
と第2薄層の交互多重積層で構成され、かつ1〜10μ
mの全体平均層厚を有する硬質被覆層と、0.05〜1
μmの平均層厚を有する最表面切粉滑り層を蒸着形成し
てなり、さらに、 (a)上記第1薄層を窒化チタン層および炭窒化チタン
層のうちのいずれか、または両方、 (b)上記第2薄層を酸化アルミニウム層, (c)上記最表面切粉滑り層を硫化モリブデン層および
硫化チタン層のうちのいずれか、または両方、で構成し
たこと、を特徴とする高速断続切削で硬質被覆層がすぐ
れた耐チッピング性を発揮する表面被覆超硬合金製切削
工具。
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