JP2003197414A - 打ち抜き寸法精度および高周波磁気特性に優れる薄手電磁鋼板 - Google Patents

打ち抜き寸法精度および高周波磁気特性に優れる薄手電磁鋼板

Info

Publication number
JP2003197414A
JP2003197414A JP2001397367A JP2001397367A JP2003197414A JP 2003197414 A JP2003197414 A JP 2003197414A JP 2001397367 A JP2001397367 A JP 2001397367A JP 2001397367 A JP2001397367 A JP 2001397367A JP 2003197414 A JP2003197414 A JP 2003197414A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
mass
punching
dimensional accuracy
plate thickness
thickness
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2001397367A
Other languages
English (en)
Inventor
Masaaki Kono
雅昭 河野
Masaki Kono
正樹 河野
Takehiko Minato
武彦 港
Keiji Sato
圭司 佐藤
Toshiro Fujiyama
寿郎 藤山
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JFE Steel Corp
Original Assignee
JFE Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by JFE Steel Corp filed Critical JFE Steel Corp
Priority to JP2001397367A priority Critical patent/JP2003197414A/ja
Publication of JP2003197414A publication Critical patent/JP2003197414A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Soft Magnetic Materials (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 大型のコアをプレス打ち抜きする場合に懸念
された打ち抜き寸法精度の劣化を有利に克服した、小径
から大径まで様々な径でのプレス打ち抜きが良好でかつ
高周波磁気特性にも優れた薄手電磁鋼板を提供する。 【解決手段】 板厚が0.30mm以下で、かつ鋼板の降伏応
力YP(N/mm2) と板厚(mm)について、次式 YP×板厚≧65 の関係を満足させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、モータや発電機な
どの回転器の鉄心材料として用いられる電磁鋼板、中で
も特に打ち抜き寸法精度や高周波特性が要求される用途
に供して好適な薄手電磁鋼板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】モータや発電機などの回転器の固定子、
回転子などの鉄心コアは、主として無方向性電磁鋼板
を、打ち抜きプレス後、積層することにより製造されて
いる。この無方向性電磁鋼板は、板厚が0.50mmや0.35mm
の鋼板の表面に絶縁被膜を被覆した鋼板であり、SiやAl
などの合金元素を添加して電気抵抗を高めたり、結晶組
織を磁化し易い方位に制御するなど、磁気特性を改善す
るために種々の努力が払われている。
【0003】一方、近年、エネルギーの多様化、安定供
給化の観点から分散型電源が注目されていて、マイクロ
ガスタービンで高速発電機を回転させるシステムなどが
開発されている。また、地球温暖化や省エネルギー化な
どに対するの環境対応が求められていて、自動車分野で
は、エンジンとモータを併用したハイブリット電気自動
車(HEV)、電動モータのみで駆動する電気自動車
(EV)および燃料電池自動車(FCEV)などの開発
も進められている。さらに、アイドリングストップ機構
を持つスタータと発電機を複合化した簡易ハイブリット
(ISG)タイプも低コストシステムとして実用化段階
にある。これらの用途に使用されるモータや発電機用鉄
心材料としては、これまで主に板厚が0.35mmの無方向性
電磁鋼板が用いられてきた。
【0004】これらのモータや発電機は、コンプレッサ
モータなどの従来モータと比較して、高速回転(従来モ
ータの数千rpm に対して数万rpm に達する)であり、動
作周波数が高いため、モータ効率の点から高周波鉄損が
重視されている。
【0005】高周波域での鉄損を改善するためには、渦
電流損の増加を抑制するために電磁鋼板の板厚を薄くす
ることが有効であることが一般的に知られており、無方
向性電磁鋼板に関してもより薄い0.20mmやそれ以下の板
厚の鋼板が製造されている。例えば、特開平8−60252
号公報には、Siを 0.5〜4%、Alを1%以下含んだ板
厚:0.10〜0.25mmの薄物無方向性電磁鋼板が開示されて
いる。実際、ハードディスクドライブの駆動用モータな
ど主としてIT用途に使用されるマイクロモータの分野
では、板厚が0.20mm程度の薄手の電磁鋼板が既に実用化
されている。かかるマイクロモータは、直径が数cm程度
の超小型モータで、高速で回転駆動(〜数万rpm)され、
動作周波数が数百kHz に達するため、鉄心素材の高周波
磁気特性が重要であることから、上記したような薄手電
磁鋼板はモータ特性の向上に貢献している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】従って、前述したよう
なマイクロガスタービンでの高速発電機、EV、HEV
モータやその他の高周波特性が重要とされる用途で使用
される鉄心材料にも、板厚の薄い電磁鋼板を使用すれば
高周波鉄損が低減され、モータ特性が改善されることが
期待できる。
【0007】しかしながら、これらのモータは、一般に
高出力も必要となるため、固定子直径が 150〜450 mm程
度に達する場合が多く、IT分野用途のマイクロモータ
と比較してモータ体格がかなり大きいため、マイクロモ
ータとはプレス打ち抜き工程における製造条件が大幅に
異なる。実際、発明者らが、板厚:0.20mmの無方向性電
磁鋼板を用いて外径:300 mmのコアの連続打ち抜きを行
ったところ、板厚:0.20mmの材料を用いてマイクロモー
タと同レベルの外径(30mm) のコアを打ち抜いた場合
や、従来から用いられてきた板厚が0.35mmや0.50mmの材
料を打ち抜いた場合と比較して寸法精度が大幅に劣化
し、商用生産が可能なレベルの打ち抜き速度では十分な
品質が得られないことが判明した。
【0008】以下、その実験結果について説明する。ま
ず、薄手の電磁鋼板を使用して大径のコアを打ち抜いた
場合に、寸法精度が大幅に劣化した原因を解明するた
め、コア径が30mmφおよび 300mmφの2種類のダイおよ
びそれぞれのダイに対応してクリアランスを10μm およ
び30μm に調整したパンチを準備し、計4水準の金型で
評価した。
【0009】Si:2.8 mass%を含有し、板厚がそれぞれ
0.20mm、0.35mm、0.50mmである電磁鋼板について、打ち
抜き速度:100spm(stroke per minute)で連続打ち抜き
を行い、打ち抜き外径とダイ内径の寸法差(打ち抜き外
径−ダイ内径)を測定し、寸法精度の指標とした。ただ
し、板厚が0.50mmの材料に関しては、クリアランス:10
μm の条件は金型破損のおそれがあるため実施しなかっ
た。得られた結果を板厚ごとに、表1〜3にそれぞれ示
す。
【0010】
【表1】
【0011】
【表2】
【0012】
【表3】
【0013】表1〜3から明らかなように、コア径が30
mmと小さい条件では、各板厚、各クリアランスとも良好
な寸法精度を示した。これに対し、コア径が 300mmと大
径の場合には、コア径:30mmの場合と比較して、打ち抜
き材とダイとの寸法差が大きくなる傾向にあり、特に板
厚が0.20mmの薄手の材料は、板厚:0.35mm材、0.50mm材
と比較して寸法差が著しく大きい。また、コア径が30mm
と小さい場合には、いずれの板厚ともクリアランスによ
る寸法差は小さかったのに対し、コア径が 300mmの大径
でしかも板厚が0.20mmと薄手の場合には、クリアランス
による寸法差が大きい結果となった。
【0014】次に、同様の金型を用いて、板厚がそれぞ
れ0.20mm、0.35mm、0.50mmの材料を単発打ち抜きした際
の寸法精度について調べた結果を、板厚ごとに表4 〜6
にそれぞれ示す。
【0015】
【表4】
【0016】
【表5】
【0017】
【表6】
【0018】板厚:0.35mm材、0.50mm材の場合は、いず
れのコア径とも連続打ち抜きの場合とほぼ同様の結果で
あった。これに対し、板厚が0.20mmの薄手材の場合、コ
ア径が小さい場合には単発打ち抜きおよび連続打ち抜き
の差異はさほど見られなかったが、コア径が 300mmと大
径となった場合には、単発打ち抜きにより寸法差は大幅
に改善され、クリアランス10μm の条件では0.35mm材と
ほぼ同等の寸法精度が得られた。また、クリアランス:
30μm の場合も、単発打ち抜きの方が寸法差は大幅に小
さくなる傾向にあるが、他の条件と比較すると4〜10μ
m ほど大きい。
【0019】以上の検討結果から、板厚が0.20mmといっ
た薄手電磁鋼板の大径コアを連続プレス打ち抜きした場
合、寸法精度が劣化することが明らかとなった。また、
この寸法精度に影響を及ぼす因子として、(1) 打ち抜き
速度の影響が大きく、ついで(2) クリアランスの影響が
見られることが判明した。
【0020】コアの寸法精度が劣ると、モータのエアギ
ャップ(回転子外径と固定子内径との隙間)が不均一と
なり、最悪の場合、場所によっては回転子の外径の最大
値が固定子の内径の最小値よりも大きくなって固定子/
回転子が接触してしまうなどの不良の発生原因となるた
め、過大なエアギャップが必要となり、モータ効率の低
下を招くこととなる。これを防止するためには、金型の
調整に多大な労力を費やす必要が生じる。
【0021】ここで、一般に、板厚:0.50〜0.35mmの電
磁鋼板のモータコア用プレス打ち抜きの場合、適正なク
リアランスは板厚の5〜10%望ましくは5〜6%といわ
れており、実際には20〜30μm に設定されることが多
い。この基準を薄手の材料に対しても同様に適用する
と、例えば0.20mmの材料の場合には望ましいクリアラン
ス(板厚の5〜6%)は10〜12μm となる。ところが、
200mm を超える大径コアとなると、このようにクリアラ
ンスを狭めることは、金型の製作の際の工作機械精度、
焼き入れ歪みの不均一性、金型経年歪み、測定器具の精
度等の点から難しいだけでなく、プレス機の動作精度に
よっては金型破損のおそれがあることから望ましくな
い。従って、薄手の材料を用いて大径コアのプレスを行
う場合でも、従来と同程度のクリアランス(20〜30μm
)で十分な寸法精度が得られれば、工業的な意義は大
きい。
【0022】本発明は、上記のような実状に鑑み開発さ
れたもので、これまで直径数十ミリ程度のマイクロモー
タにのみ適用されてきた板厚:0.30mm以下の薄手電磁鋼
板に関し、より大型のコアを連続プレス打ち抜きする場
合に発覚した打ち抜き寸法精度が劣化するという課題を
克服して、小径から大径まで様々な径での連続プレス打
ち抜きが良好で、しかも高周波磁気特性にも優れた電磁
鋼板を提案することを目的とする。
【0023】
【課題を解決するための手段】さて、先に述べたとお
り、発明者らは、薄手電磁鋼板の大径コアの連続プレス
打ち抜き加工時の寸法精度におよぼす因子として、(1)
打ち抜き速度の影響が大きく、ついで(2) クリアランス
の影響があることを明らかにした。そこで、これらの影
響を払拭する方法について種々の検討を行った結果、電
磁鋼板素材の機械的性質、中でも降伏応力を鋼板板厚に
応じて適正範囲に制御することが、所期した目的の達成
に関し、極めて有効であるとの知見を得た本発明は、上
記の知見に立脚するものである。
【0024】すなわち、本発明の要旨構成は次のとおり
である。1.板厚が0.30mm以下で、かつ鋼板の降伏応力
YP(N/mm2) と板厚(mm)が、次式 YP×板厚≧65 の関係を満足することを特徴とする打ち抜き寸法精度お
よび高周波磁気特性に優れる薄手電磁鋼板。
【0025】2.Si≦3.5 mass%、 Mn≦1.5 mass%および Al≦3.0 mass% のうちから選んだ一種または二種以上を 2.5≦Si+Mn/
2+Al≦4.5(mass%) の範囲で含有する組成になり、し
かも板厚が0.30mm以下で、かつ鋼板の降伏応力YP(N/m
m2) と板厚(mm)が、次式 YP×板厚≧65 の関係を満足することを特徴とする打ち抜き寸法精度お
よび高周波磁気特性に優れる薄手電磁鋼板。
【0026】3.Si≦7.0 mass%、 Mn≦1.5 mass%および Al≦3.0 mass% のうちから選んだ一種または二種以上を 2.5≦Si+Mn/
2+Al≦8.0 mass%の範囲で含有し、かつCr≦7.0 mass
%、但しSi>3.5 mass%またはSi+Mn/2+Al>4.5(ma
ss%) の場合はCr≧1.5 mass%の範囲で含有する組成に
なり、しかも板厚が0.30mm以下で、かつ鋼板の降伏応力
YP(N/mm2) と板厚(mm)が、次式 YP×板厚≧65 の関係を満足することを特徴とする打ち抜き寸法精度お
よび高周波磁気特性に優れる薄手電磁鋼板。
【0027】
【発明の実施の形態】以下、本発明を具体的に説明す
る。本発明は、電磁鋼板の板厚を低減し、高周波磁気特
性を改善した薄手電磁鋼板を、小径のみならず、大径コ
アにも適用可能とすることを特徴とする。高周波磁気特
性のためには、板厚は0.30mm以下であることが必要であ
る。というのは、高周波域においては鉄損の中でも渦電
流損の影響が支配的になるからである。すなわち、板厚
と渦電流損との間には、 We =a・f2 ・Bm2・t2 ・ρ-1・D-1 ここで、We :渦電流損 f :周波数 Bm :磁束密度波高値 ρ :電気抵抗値 D :密度 の関係があり、板厚を薄くすればするほど渦電流損の低
減に寄与するからである。なお、板厚の下限は特に制限
するものではなく、適用範囲は後述する機械的特性と併
せて判断すれば良い。
【0028】次に、鋼板の好適成分組成について説明す
る。Si,MnおよびAlはいずれも、脱酸剤として作用し、
鋼の高清浄化に寄与するだけでなく、鋼の電気抵抗を増
加して鉄損の低減にも有効に寄与するため、電磁鋼板に
とって重要な元素である。さらに、固溶強化元素として
鋼の強度を高める効果もある。従って、これらの効果を
得るために、Si≦3.5 mass%、Mn≦1.5 mass%、Al≦3.
0 mass%で、かつ 2.5≦Si+Mn/2+Alの範囲で、単独
または複合添加することが必要である。しかしながら、
Si含有量が 3.5mass%を超えたり、あるいはSi+Mn/2
+Alが4.5(mass%) を超えると、素材靱性が低下して冷
間圧延が困難となるので、Si+Mn/2+Al≦4.5(mass
%) の範囲に規定する。
【0029】また、本出願人が先に特開平11−343544号
公報等で示したように、Crの添加はFe−Si合金やFe−Si
−Al合金の靱性の向上および電気抵抗の向上に有効であ
る。従って、Cr添加する場合、SiやAlなどの合金添加量
を増加することができる。すなわち、Si> 3.5mass%ま
たはSi+Mn/2+Al>4.5(mass%) の場合であっても、
Crを 1.5mass%以上添加すれば、冷間圧延性を確保する
ことができるのである。一方、Si,Mn,Al, Crはいずれ
も、鉄損を低減させる効果は有するものの、磁束密度を
低下する元素であるため、Crを含有させる場合であって
も、それらの上限を、Si≦7.0 mass%、Mn≦1.5 mass
%、Al≦3.0 mass%、Cr≦7.0 mass%で、かつ 2.5≦Si
+Mn/2+Al≦8.0(mass%) に規制した。
【0030】以上、基本成分について説明したが、本発
明では、その他にも従来から電磁鋼板の成分として公知
である種々の成分を添加することができる。すなわち、
集合組織を改善する効果を有する元素としてSb, Sn, N
i, B, Cu,P, C, Nなどを添加することができる。こ
の場合、各成分の含有量はそれぞれ、 0.001≦Sb≦0.20
(mass%), 0.001≦Sn≦0.20(mass%), 0.01≦Ni≦3.
0 (mass%), 0.00001≦B≦0.005 (mass%), 0.001≦
Cu≦0.10(mass%), 0.01≦P≦0.50(mass%)程度と
することが望ましい。また、C,Nは、磁気時効により
鉄損を劣化させる作用も有するので、含有量はそれぞれ
0.005mass%以下に抑制することが好ましい。その他、
S,V,Nb.Tiなどは、析出物形成元素として磁気特性
に悪影響を及ぼすのでできる限り減少させることが望ま
しい。残部は実質的にFeとする。
【0031】次に、実験例に基づいて本発明の骨子を説
明する。高周波鉄損改善のための電気抵抗増加元素とし
て、後掲表7に示す成分組成になるSi−Al複合添加系
(鋼A,B,C)およびSi−Cr複合添加系(鋼D)の鋼
より製造された板厚:0.30〜0.10mmの鋼板を用いた。
【0032】上記の各鋼板から圧延方向に JIS5号引張
試験片を採取し、降伏点(YP)を測定した。なお、各
鋼板については、成分組成の他、熱処理温度などの製造
条件を変化させて、降伏点を 282〜684 (N/mm2) の範囲
で変化させている。
【0033】各鋼板について、コア径:300 mmφ、クリ
アランス:30μm 、打ち抜き速度:100spmの条件で連続
打ち抜きを行い、打ち抜きコアの外径とダイ内径の寸法
差から寸法精度を求めた。得られた結果を図1に示す。
同図に示したとおり、YPと板厚の積を指標として整理
すると、板厚の如何に係わらず、YP×板厚が65以上の
場合に、安定して優れた寸法精度が得られることが分か
る。
【0034】次に、YP×板厚が60.8と74.0である2種
類の材料(板厚:0.20mm)について、上記と同様の金型
(コア径:300 mmφ、クリアランス:30μm )を用い、
打ち抜き速度を変化させた場合の寸法変化について調査
を行った。得られた結果を図2に示す。同図に示したと
おり、YP×板厚が60.8である材料は、打ち抜き速度が
20spm程度の遅い領域では良好な寸法精度を示したが、
打ち抜き速度がそれ以上になると寸法精度は急激に劣化
している。これに対し、YP×板厚が74.0である材料
は、単発打ち抜きから120spmまで安定して良好な寸法精
度が得られている。
【0035】上記したように、降伏応力YP(N/mm2) と
板厚(mm)の積を65以上にすることによって、高速打ち抜
きの場合でも良好な寸法精度が得られる理由の詳細は、
まだ明確に解明されたわけではないが、発明者らは、金
型内での電磁鋼板のプレス設備での送り挙動に起因して
いるものと考えている。すなわち、薄手でかつ低YPの
鋼板は、プレス機入側から金型内へ送り出される際、コ
イルのたわみ、よじれなどの形状変形が大きくなり、そ
の影響がプレス時にも残存するため、寸法精度の劣化を
招いたものと推定している。
【0036】従って、用いられる電磁鋼板の機械特性と
板厚の関係について、以下の範囲を満足するように規制
したのである。 板厚≦0.30mm かつ YP×板厚≧65 鋼板が、上記の範囲を満足していれば、従来板厚(0.3
5, 0.50mm)の材料と同等レベルのクリアランス量であ
る30μm であっても良好な寸法精度を得ることができ
る。
【0037】次に、同じくYP×板厚が60.8と74.0であ
る2種類の材料(板厚:0.20mm)について、クリアラン
ス:30μm 、打ち抜き速度:100spmで、コア径を種々に
変更した金型を用いて、連続打ち抜き試験を実施した。
この時のコア径と寸法精度の影響について調べた結果を
図3に示す。同図に示したとおり、コア径が 128mmまで
の比較的小径においても、本発明の技術であるYP×板
厚が74.0の材料はYP×板厚が60.8の材料に比べて、若
干の寸法精度の改善が認められる。さらには、コア径が
150mm付近を超えて大きくなるとYP×板厚が60.8のも
のは寸法精度が急激にするのに対し、本発明の技術であ
るYP×板厚が74.0の材料では、コア径が 150mm以上で
の寸法精度の劣化は大幅に抑制されている。
【0038】以上の結果より、本発明は、小型のコアの
打ち抜きにも有利であるが、比較的大型のコアを高速で
プレス打ち抜きする場合に特に有利であることが分か
る。
【0039】
【実施例】実施例1 表7に示す成分組成(鋼A〜D)になる鋼スラブを、熱
間圧延し、ついで鋼A〜Cの熱延板については、 940〜
990 ℃で20〜100 秒の熱延板焼鈍を施した後、また鋼D
の熱延板については、焼鈍を行わずに酸洗によりスケー
ル除去を行い、その後冷間圧延により0.35〜0.10mmの種
々の板厚に仕上げた。これらの冷延板に対し、 800〜10
50℃で10〜60秒の仕上げ焼鈍を施したのち、絶縁コーテ
ィング処理を施して、種々の板厚の電磁鋼板を製造し
た。この際、上記したように焼鈍条件を調整することに
より、機械的特性および磁気特性を種々に変化させた。
得られた鋼板の機械的特性および磁気特性および打ち抜
き寸法精度について調べた結果を表8に示す。
【0040】なお、機械的特性は、圧延方向に平行に切
り出した JIS5号引張試験により、また磁気的特性は、
圧延方向および圧延直角方向に25cmエプスタイン試験片
を切り出し、周波数:1000Hz、励磁磁束密度:1.0 Tに
おける鉄損W10/1000 により評価した。さらに、打ち抜
き寸法精度は、コア径:300 mmφ、クリアランス:30μ
m 、打ち抜き速度:100spmの条件で連続打ち抜きを実施
し、打ち抜いたコアの外径とダイ内径の寸法差で評価し
た。
【0041】
【表7】
【0042】
【表8】
【0043】表8に示したとおり、YP×板厚が 65 に
満たない比較例No.3, 4, 9, 12, 15はいずれも、良好な
寸法精度が得られていない。また、板厚が0.35mmと本発
明の範囲を外れた比較例No.1, 6は、発明例と比較する
と鉄損が劣っている。これに対し、YP×板厚≧65を満
足する発明例はいずれも、良好な寸法精度が得られ、ま
た高周波磁気特性にも優れている。
【0044】実施例2 次に、表8のNo.4, 5 の材料について、同様の金型(コ
ア径:300 mmφ、クリアランス:30μm)を用い、打ち抜
き速度を種々に変化させた場合の寸法精度について調査
した。得られた結果を表9に示す。
【0045】
【表9】
【0046】同表から明らかなように、YP×板厚が65
より小さいNo.4は、単発打ち抜きおよび打ち抜き速度が
比較的遅い20spm までは比較的安定した寸法精度が得ら
れたが、打ち抜き速度がそれ以上になると寸法精度が急
激に劣化している。これに対し、発明例であるNo.5は、
単発抜きにおいてもNo.4よりもコア−金型間の寸法差が
小さく、120 spm の打ち抜き速度まで安定して良好な寸
法精度を示している。
【0047】実施例3 同じく、No.4, 5 の材料について、コア外径を種々に変
化させた金型(クリアランスは30μm の一定)を用い、
打ち抜き速度:100 spm で連続打ち抜き試験を実施した
時の寸法精度について調査した。得られた結果を表10に
示す。
【0048】
【表10】
【0049】同表から明らかなように、コア外径が 130
mm付近までは、比較例であるNo.4の材料でも良好な寸法
精度が得られたが、それ以上となると打ち抜き寸法精度
は大きく劣化した。これに対し、発明例であるNo.5は、
コア外径が 130mm付近まで比較例No.4に比べて寸法精度
の改善が認められ、また 130mm以上での寸法精度の劣化
程度は、比較例No.4に比べると、大幅に改善されること
が分かる。
【0050】
【発明の効果】かくして、本発明によれば、小径から大
型まで様々なサイズのコアを、高速でプレス打ち抜きす
る場合にも打ち抜き寸法精度が良好で、しかも高周波磁
気特性にも優れた薄手電磁鋼板を安定して得ることがで
きる。従って、本発明により、これまで直径数十ミリ程
度のマイクロモータにしか適用されてこなかった板厚:
0.30mm以下の薄手電磁鋼板を、マイクロモータは勿論の
こと、例えば近年注目されている高速発電機やEVやH
EVのような高回転、高出力の自動車駆動用モータなど
比較的大型のモータにも大量生産可能な工業レベルで適
用することが可能となり、モータの高効率化に貢献でき
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 YP×板厚の値と寸法精度との関係を示した
図である。
【図2】 打ち抜き速度と寸法精度との関係を示したグ
ラフである。
【図3】 コア外径と寸法精度との関係を示したグラフ
である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 港 武彦 岡山県倉敷市水島川崎通1丁目(番地な し) 川崎製鉄株式会社水島製鉄所内 (72)発明者 佐藤 圭司 岡山県倉敷市水島川崎通1丁目(番地な し) 川崎製鉄株式会社水島製鉄所内 (72)発明者 藤山 寿郎 岡山県倉敷市水島川崎通1丁目(番地な し) 川崎製鉄株式会社水島製鉄所内 Fターム(参考) 5E041 AA02 AA19 CA08 NN01 NN06 NN17

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 板厚が0.30mm以下で、かつ鋼板の降伏応
    力YP(N/mm2) と板厚(mm)が、次式 YP×板厚≧65 の関係を満足することを特徴とする打ち抜き寸法精度お
    よび高周波磁気特性に優れる薄手電磁鋼板。
  2. 【請求項2】Si≦3.5 mass%、 Mn≦1.5 mass%および Al≦3.0 mass% のうちから選んだ一種または二種以上を 2.5≦Si+Mn/
    2+Al≦4.5(mass%) の範囲で含有する組成になり、し
    かも板厚が0.30mm以下で、かつ鋼板の降伏応力YP(N/m
    m2) と板厚(mm)が、次式 YP×板厚≧65 の関係を満足することを特徴とする打ち抜き寸法精度お
    よび高周波磁気特性に優れる薄手電磁鋼板。
  3. 【請求項3】Si≦7.0 mass%、 Mn≦1.5 mass%および Al≦3.0 mass% のうちから選んだ一種または二種以上を 2.5≦Si+Mn/
    2+Al≦8.0 mass%の範囲で含有し、かつCr≦7.0 mass
    %、但しSi>3.5 mass%またはSi+Mn/2+Al>4.5(ma
    ss%) の場合はCr≧1.5 mass%の範囲で含有する組成に
    なり、しかも板厚が0.30mm以下で、かつ鋼板の降伏応力
    YP(N/mm2) と板厚(mm)が、次式 YP×板厚≧65 の関係を満足することを特徴とする打ち抜き寸法精度お
    よび高周波磁気特性に優れる薄手電磁鋼板。
JP2001397367A 2001-12-27 2001-12-27 打ち抜き寸法精度および高周波磁気特性に優れる薄手電磁鋼板 Pending JP2003197414A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001397367A JP2003197414A (ja) 2001-12-27 2001-12-27 打ち抜き寸法精度および高周波磁気特性に優れる薄手電磁鋼板

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001397367A JP2003197414A (ja) 2001-12-27 2001-12-27 打ち抜き寸法精度および高周波磁気特性に優れる薄手電磁鋼板

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2003197414A true JP2003197414A (ja) 2003-07-11

Family

ID=27603191

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2001397367A Pending JP2003197414A (ja) 2001-12-27 2001-12-27 打ち抜き寸法精度および高周波磁気特性に優れる薄手電磁鋼板

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2003197414A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2020188783A1 (ja) 2019-03-20 2020-09-24 日本製鉄株式会社 無方向性電磁鋼板およびその製造方法
JPWO2022210867A1 (ja) * 2021-03-31 2022-10-06

Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS5273120A (en) * 1975-12-16 1977-06-18 Nippon Telegr & Teleph Corp <Ntt> Preparation of magnetic materials
JPS64226A (en) * 1987-03-11 1989-01-05 Nippon Steel Corp Production of high tensile non-oriented electrical steel sheet
JPH1024333A (ja) * 1996-07-10 1998-01-27 Nippon Steel Corp 無方向性電磁鋼板の打抜き方法
JPH1025552A (ja) * 1996-07-10 1998-01-27 Nippon Steel Corp 打抜き寸法精度の優れた無方向性電磁鋼板
JP2000129409A (ja) * 1998-10-23 2000-05-09 Kawasaki Steel Corp 回転機の実機特性が優れた無方向性電磁鋼板およびその製造方法
JP2001247943A (ja) * 2000-03-03 2001-09-14 Kawasaki Steel Corp 鉄損が低くかつ磁束密度が高い無方向性電磁鋼板およびその製造方法

Patent Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS5273120A (en) * 1975-12-16 1977-06-18 Nippon Telegr & Teleph Corp <Ntt> Preparation of magnetic materials
JPS64226A (en) * 1987-03-11 1989-01-05 Nippon Steel Corp Production of high tensile non-oriented electrical steel sheet
JPH1024333A (ja) * 1996-07-10 1998-01-27 Nippon Steel Corp 無方向性電磁鋼板の打抜き方法
JPH1025552A (ja) * 1996-07-10 1998-01-27 Nippon Steel Corp 打抜き寸法精度の優れた無方向性電磁鋼板
JP2000129409A (ja) * 1998-10-23 2000-05-09 Kawasaki Steel Corp 回転機の実機特性が優れた無方向性電磁鋼板およびその製造方法
JP2001247943A (ja) * 2000-03-03 2001-09-14 Kawasaki Steel Corp 鉄損が低くかつ磁束密度が高い無方向性電磁鋼板およびその製造方法

Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2020188783A1 (ja) 2019-03-20 2020-09-24 日本製鉄株式会社 無方向性電磁鋼板およびその製造方法
KR20210125074A (ko) 2019-03-20 2021-10-15 닛폰세이테츠 가부시키가이샤 무방향성 전자 강판 및 그 제조 방법
JPWO2022210867A1 (ja) * 2021-03-31 2022-10-06
WO2022210867A1 (ja) * 2021-03-31 2022-10-06 日本製鉄株式会社 無方向性電磁鋼板、無方向性電磁鋼板の打ち抜き方法および無方向性電磁鋼板の打ち抜き用金型
JP7260841B2 (ja) 2021-03-31 2023-04-19 日本製鉄株式会社 無方向性電磁鋼板の打ち抜き方法および無方向性電磁鋼板の打ち抜き用金型
TWI813236B (zh) * 2021-03-31 2023-08-21 日商日本製鐵股份有限公司 無方向性電磁鋼板、無方向性電磁鋼板的衝孔方法及無方向性電磁鋼板的衝孔用模具

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6651759B2 (ja) 無方向性電磁鋼板およびその製造方法
JP5228379B2 (ja) 強度と磁気特性に優れた無方向性電磁鋼板とその製造方法
JP5825494B2 (ja) 無方向性電磁鋼板およびその製造方法
JP5699642B2 (ja) モータコア
JP4019608B2 (ja) 無方向性電磁鋼板およびその製造方法
JP2012036459A (ja) 無方向性電磁鋼板およびその製造方法
JP5671869B2 (ja) 無方向性電磁鋼板およびその製造方法
WO2020149405A1 (ja) 無方向性電磁鋼板、分割型固定子および回転電機
JP3815336B2 (ja) 無方向性電磁鋼板
JP4265166B2 (ja) 方向性電磁鋼板およびその製造方法
JP2011236486A (ja) 無方向性電磁鋼板およびその製造方法
JP5824965B2 (ja) 無方向性電磁鋼板の製造方法
JP2004183002A (ja) 自動車用無方向性電磁鋼板およびその製造方法
JP5671872B2 (ja) 無方向性電磁鋼板およびその製造方法
JP3835216B2 (ja) 無方向性電磁鋼板およびその製造方法
JP5671871B2 (ja) 無方向性電磁鋼板およびその製造方法
JP2005060811A (ja) 高張力無方向性電磁鋼板およびその製造方法
JP2003096548A (ja) 無方向性電磁鋼板とその製造方法
JP3835137B2 (ja) 無方向性電磁鋼板およびその製造方法
JP2003197414A (ja) 打ち抜き寸法精度および高周波磁気特性に優れる薄手電磁鋼板
JP4424075B2 (ja) 無方向性電磁鋼板および時効熱処理用無方向性電磁鋼板、ならびにそれらの製造方法
JP2010185119A (ja) 無方向性電磁鋼板
JP4670230B2 (ja) 無方向性電磁鋼板
JP2004152791A (ja) 打ち抜き寸法精度および高周波磁気特性に優れる高効率モータ用薄手電磁鋼板
JP3823548B2 (ja) 切削性と磁気特性に優れた電磁鋼板

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20041027

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20070104

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20070116

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20070319

RD03 Notification of appointment of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423

Effective date: 20070319

RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20070622

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20071225