JP2003107936A - 定着装置 - Google Patents

定着装置

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JP2003107936A
JP2003107936A JP2001296188A JP2001296188A JP2003107936A JP 2003107936 A JP2003107936 A JP 2003107936A JP 2001296188 A JP2001296188 A JP 2001296188A JP 2001296188 A JP2001296188 A JP 2001296188A JP 2003107936 A JP2003107936 A JP 2003107936A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ベルトニップ方式の定着装置において、定着
ベルトと圧力付与部材との摺動抵抗を長期に渡って低減
することができ、さらに画像ずれの発生を防止すること
が可能な定着装置を提供すること。 【解決手段】 ロール部材(加熱定着ロール2)と、外
周面がロール部材に当接され、トナー像を担持した記録
媒体がロール部材との間に挟み込まれるニップ部を形成
するベルト部材(エンドレスベルト3)と、ロール部材
及びベルト部材の少なくとも一方を加熱する加熱源と、
ベルト部材の内側に当接されロール部材の表面に沿って
ベルト部材を押圧する圧力付与部材(パッド部材4)
と、ベルト部材と前記圧力付与部材との間に介在され少
なくともベルト部材と当接する表面に多孔質構造を有す
る摺動部材(パッドシート25)と、ベルト部材と摺動
部材との間に介在される潤滑油と、を有することを特徴
とする定着装置である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば、電子写真
方式を採用した複写機やプリンター、あるいはファクシ
ミリ等の画像形成装置において、未定着トナー像を加熱
定着する定着装置に関し、特にベルト部材を用いるベル
トニップ方式の定着装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、上記電子写真方式を採用した複写
機やプリンター、あるいはファクシミリ等の画像形成装
置において、未定着トナー像を加熱定着する定着装置と
しては、種々の方式のものが提案されてきており、実際
に製品化されている。かかる定着装置としては、例え
ば、加熱源を有する定着ロールに、定着ベルトを加圧部
材により圧接させるベルトニップ方式のものがある。
【0003】しかし、上記ベルトニップ方式の定着装置
の場合には、エンドレスベルトの内面に、表面がゴムで
形成された圧力付与部材が圧接している為、当該エンド
レスベルトと圧力付与部材との摺動抵抗が大きくなる
と、像ずれ、ギア破損、モーター消費電力アップ
等が発生するという問題点を有していた。
【0004】そこで、上記ベルトニップ方式の定着装置
において、エンドレスベルト内面の磨耗を抑制する為
に、エンドレスベルトと圧力付与部材との間に摺動部材
を設ける提案が成されている。具体的には、圧力付与部
材の表面を、ガラス繊維製のシートにフッ素樹脂(PF
A)をコーティングしたシート状部材(摺動部材)によ
って被覆するとともに、前記エンドレスベルトの内面に
シリコーンオイル等の潤滑油を塗布する様に構成したも
のが、既に提案され、実際に使用されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来技術の場合には、次の様な問題点を有している。すな
わち、上記従来のベルトニップ方式の定着装置の場合に
は、圧力付与部材の表面を、ガラス繊維製シートにフッ
素樹脂(PFA)をコーティングしたシート状部材によ
って被覆する様に構成したものであるが、定着時に、エ
ンドレスベルトの裏面と圧力付与部材が摺動すると、そ
の接触面に塗布されたシリコーンオイル等の潤滑油が圧
力により押し出され、次第に不足し、シート状部材にコ
ーティングされたフッ素樹脂(PFA)が次第に磨耗し
ていく。すると、上記シート状部材表面は、フッ素樹脂
(PFA)コート面表面の凹凸が磨耗して、徐々に鏡面
化し、この表面が、定着ベルトと摺動すると、当該定着
ベルトとシート状部材との接触面積が増大し、摺動抵抗
が急激に増加する。さらに、上記シート状部材の表面磨
耗が進行すると、ガラス繊維がシート状部材表面に露出
し、物理的な接触抵抗が大きくなって、定着ベルトとの
摺動抵抗をさらに増加させることになる。
【0006】また、上記従来のベルトニップ方式の定着
装置の場合には、上記の如く、シート状部材にコーティ
ングされたフッ素樹脂(PFA)が磨耗していくと、磨
耗によって発生した磨耗粉が潤滑油と混合して、粘性物
質へと変化する。すると、この粘性物質は、定着ベルト
を張架する張架ロールや定着ベルトの裏面に付着して、
摺動抵抗を増加させることになる。しかも、上記定着ベ
ルトの裏面に塗布される潤滑油は、磨耗粉と混合されて
粘性物質と変化する為、潤滑油本来の役割を果たさなく
なり、この点からも摺動抵抗を増加させることになる。
【0007】このように、上記従来のベルトニップ方式
の定着装置の場合には、シート状部材(摺動部材)と定
着ベルトの摺動抵抗が次第に増加し、定着ベルトを駆動
する為の駆動モーターの消費電流が増加する。
【0008】上記定着装置によって定着処理を受ける用
紙の搬送速度は、定着ベルトの移動速度に依存している
為、加熱定着ロールと定着ベルトの間に速度差が生まれ
ると、画像ずれが発生するという問題を有していた。
【0009】従って、本発明は、前記従来における諸問
題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明の目的は、ベルトニップ方式の定着装置に
おいて、定着ベルトと圧力付与部材との摺動抵抗を長期
に渡って低減することができ、さらに画像ずれの発生を
防止することが可能な定着装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記課題は、以下の手段
により解決される。即ち、本発明は、 <1> ロール部材と、外周面が前記ロール部材に当接
され、トナー像を担持した記録媒体が前記ロール部材と
の間に挟み込まれるニップ部を形成するベルト部材と、
前記ロール部材及び前記ベルト部材の少なくとも一方を
加熱する加熱源と、前記ベルト部材の内側に当接され、
前記ロール部材の表面に沿って前記ベルト部材を押圧す
る圧力付与部材と、前記ベルト部材と前記圧力付与部材
との間に介在され、少なくとも表面に多孔質構造を有す
る摺動部材と、前記ベルト部材と前記摺動部材との間に
介在される潤滑油と、を有することを特徴とする定着装
置。
【0011】<1>の発明では、前記ベルト部材と前記
圧力付与部材との間に介在され、少なくとも表面に多孔
質構造を有する摺動部材を有するので、当該摺動部材と
ベルト部材との間に介在させる潤滑油が、摺動部材にお
ける多孔質構造より良好に保持される。さらに、摺動部
材における多孔質構造中に保持された潤滑油は、前記ベ
ルト部材と前記圧力付与部材との圧力により押し出さ
れ、潤滑油が摺動部材とベルト部材との間に順次供給さ
れるかたちとなり、潤滑油不足を補い、摺動部材とベル
ト部材内面との摺動抵抗の上昇を長期に渡り防ぐことが
できる。このため、ベルト部材と圧力付与部材との摺動
抵抗を長期に渡って低減することができるばかりでな
く、摺動部材とベルト部材内面との摺動抵抗の上昇に伴
う、ロール部材とベルト部材の間の速度差を防止し、画
像ずれの発生を防止することができる。
【0012】<2>前記摺動部材が、シート状部材であ
ることを特徴とする前記<1>に記載の定着装置であ
る。
【0013】<2>の発明では、摺動部材をシート状と
することで、簡易な構成で、前記ベルト部材と前記圧力
付与部材との間に介在させることができる。
【0014】<3>前記摺動部材における細孔の大きさ
が、0.01μm〜100μmであることを特徴とする
<1>又は<2>に記載の定着装置である。
【0015】<3>の発明では、摺動部材における細孔
の大きさを、上記範囲とすることで、機械的強度を維持
しつつ、良好に潤滑油を保持することができる。
【0016】<4>前記摺動部材が、ポリイミド樹脂か
らなることを特徴とする前記<1>〜<3>のいずれか
に記載の定着装置。
【0017】<4>の発明では、ポリイミド樹脂を用い
た摺動部材は耐熱性及び耐磨耗性に優れるので、摺動部
材とベルト部材内面との摺動特性を長期渡り好適に維持
することができる。
【0018】<5>前記摺動部材が、表面に凹凸が形成
されていることを特徴とする前記<1>〜<3>のいず
れかに記載の定着装置である。
【0019】<5>の発明では、摺動部材表面に、凹凸
が形成されてなることで、当該摺動部材とベルト部材内
面との接触点を減らし、点接触とすることができる。こ
のため、摺動部材とベルト部材内面との摺動抵抗をより
低減することができる。
【0020】<6>前記摺動部材における凹凸は、WC
−aの値が0.8μm以上であることを特徴とする前記
<5>に記載の定着装置である。
【0021】<6>の発明では、摺動部材における凹凸
のWC−aの値を、0.8μm以上とすることで、摺動
部材とベルト部材内面との摺動抵抗をより好適に低減す
ることができる。
【0022】<7>前記摺動部材における凹凸が、先端
が鋭利なものを押圧し、凸部先端を塑性変形させて形成
されてなることを特徴とする前記<5>又は<6>に記
載の定着装置である。
【0023】<7>の発明では、摺動部材における凹凸
が、先端が鋭利なものを押圧し、凸部先端を塑性変形さ
せて形成されることで、凸部の強度を向上させ、摺動部
材とベルト部材内面との摺動抵抗による前記凹凸が消失
し難くし、当該摺動抵抗の低減効果を長期間維持するこ
とができる。
【0024】<8>前記摺動部材における凹凸の凸部
が、高さ10μm以上であることを特徴とする前記<5
>〜<7>のいずれかに記載の定着装置である。
【0025】<8>の発明では、摺動部材における凹凸
の凸部を、高さ10μmとするこで、摺動部材とベルト
部材内面との摺動抵抗をより好適に低減することができ
る。
【0026】
【発明の実施の形態】以下に、この発明の実施の形態に
ついて図面を参照して説明する。なお、実質的に同じ機
能をを有する部材には、全図面通して同じ符号を付与
し、その説明を省略することがある。
【0027】図1はこの発明の実施の形態1に係る定着
装置を示す構成図である。図1に示す定着装置1は、加
熱源を内蔵した加熱定着ロール(ロール部材)2と、加
熱定着ロール2に圧接されるエンドレスベルト(ベルト
部材)3と、エンドレスベルト3の内面側に当接され、
加熱定着ロール2の表面に沿ってエンドレスベルト3を
押圧する表面に多孔質構造を有するパッド部材(圧力付
与部材)4と、パッド部材4を被覆するパッドシート
(摺動部材)25と、エンドレスベルト3内面に潤滑油
を塗布する潤滑油塗布部材27と、で主要部が構成され
ている、フリーベルトニップフューザー(FBNF)方
式の定着装置である。
【0028】定着装置1では、加熱定着ロール2の回転
に伴い、エンドレスベルト3も回転走行する。エンドレ
スベルト3と加熱定着ロール2との間に、未定着トナー
像20を担持した記録用紙等の記録媒体19を通過させ
ることで、記録媒体19上の未定着トナー像20が定着
される。このような定着方式は加熱定着ロール2から伝
導される熱が発散されにくく、エンドレスベルト3の回
転が開始されても、加熱定着ロール2から奪う熱量が少
ない。そのため、熱損失が少ないことにより省電力を達
成でき、経済的であり、かつベルトニップの温度低下も
減少し、トナーの定着性を向上させることが可能であ
る。
【0029】定着装置1では、表面に多孔質構造を有す
るパッドシート25をパッド部材4に被覆することで、
エンドレスベルト3とパッド部材4との間に介在させる
構成である。また、潤滑油塗布部材27によりエンドレ
スベルト3内面に潤滑油を塗布することで、パッドシー
ト25とエンドレスベルトとの間に潤滑油を介在させる
構成である。このため、潤滑油がパッドシート25にお
ける多孔質構造より良好に保持される。さらに、パッド
シート25における多孔質構造中に保持された潤滑油
は、エンドレスベルト3とパッド部材4とから受ける圧
力により押し出され、潤滑油がパッドシート25とエン
ドレスベルト3との間に順次供給されるかたちとなり、
潤滑油不足を補い、パッドシート25とエンドレスベル
ト内面との摺動抵抗の上昇を長期に渡り防ぐことができ
る。このため、エンドレスベルト3とパッド部材4との
摺動抵抗を長期に渡って低減することができるばかりで
なく、パッドシート25とエンドレスベルト内面との摺
動抵抗の上昇に伴う、加熱定着ロール2とエンドレスベ
ルトとの間の速度差を防止し、画像ずれの発生を防止す
ることができる。
【0030】加熱定着ロールについて説明する。加熱定
着ロール2は、図示しない駆動源によって矢印方向に沿
って所定の速度たとえば260mm/secの周速で回
転駆動されるようになっている。上記加熱定着ロール2
は、例えば、外径62mm、内径55mm、長さ350
mmの円筒状に形成された金属製コア5を備えており、
この金属製コア5としては、例えば、アルミニウムやス
テンレス等からなるものが用いられる。上記金属製コア
5の表面には、弾性体層6としてHTVシリコーンゴム
(JIS−Aのゴム硬度45度)が2mmの厚さに被覆
されているとともに、この弾性体層6の表面には、さら
にトップコート層7としてフッ素ゴムが50μmの厚さ
にティップコー卜されており、このトップコート層7の
表面は、鏡面状態に近い状態に仕上げられている。上記
下地弾性体層6のゴム硬度は、Teclock社製のス
プリングタイプのA型硬度計により、JIS K630
1に準拠して、荷重1,000gfを付加して計測した
結果の値である。なお、金属製コア5としては、アルミ
ニウムやステンレス等以外にも熱伝導率の高い金属から
なるものを使用することができ、トップコート層7とし
ては、耐熱性の高い弾性体であれば他の材料を使用する
ことができる。
【0031】金属製コア5の内部には、加熱源として出
力1000Wのハロゲンランプ8が配置されており、加
熱定着ロール2は、このハロゲンランプ8によって表面
温度が所定の温度となるよう内部から加熱されるように
なっている。上記加熱定着ロール2の表面温度は、当該
加熱定着ロール2の表面に接触する温度センサー9によ
って検出され、加熱定着ロール2の表面温度が例えば1
75℃となるように、図示しない温度コントロールーに
よって制御されるように構成されている。
【0032】加熱定着ロール2の表面には、離型剤とし
て、例えば、粘度300cs程度のアミン変性シリコン
オイルが、離型剤供給装置10により均一に供給されて
いる。この離型剤供給装置10は、オイルパイプ11a
から滴下される離型剤12が、オイルウィック1lbを
介してピックアップロール11cに供給され、当該ピッ
クアップロール11cに供給された余剰な離型剤12
は、メタリングブレード11dで掻き取られ、オイルパ
ン11eから図示しないオイルタンクへ戻される。ま
た、上記ピックアップロール11cの表面に供給された
離型剤12は、ドナーロール11fを介して加熱定着ロ
ール2の表面に塗布されるようになっている。なお、上
記ピックアップロール11cの表面は、クリーニングブ
レード11gによって付着物が除去される。また、上記
加熱定着ロール2の表面には、当該加熱定着ロール2の
表面を所定のタイミングで外部から加熱する外部加熱ロ
ール13が設けられている。
【0033】エンドレスベルトについて説明する。エン
ドレスベルト3は、パッド部材4により加熱定着ロール
2の表面に所定のニップ幅に渡って圧接するように配置
されている。このエンドレスベルト3は、例えば、好適
には無端ベルト状で、厚さ75μm、幅340mm、周
長214mmのポリイミドフィルムからなり、支持ロー
ルなどで超過されることなく、配置されてなる
【0034】パッド部材について説明する。パッド部材
4は、エンドレスベルト3を加熱定着ロール2の表面に
所定の圧力で押圧するようにが配置されている。このパ
ッド部材4は、図2に示すように、ステンレス等の金属
からなるベースプレート21の表面に、ポリフェニレン
サルファイド(PPS)等の合成樹脂からなるシム22
を介して、ステンレス等の金属からなる支持プレート2
3上に積層された弾性体層24を配置して構成されてい
る。また、上記パッド部材4の表面は、シート状部材と
してのパッドシート25によって全周が被覆されてい
る。上記弾性体層24が積層された支持プレート23
は、その長手方向の両端部に設けられた取り付けネジ2
6によって、シム22を介してベースプレート21に固
定されている。さらに、上記パッド部材4は、ベースプ
レート21側に配置された図示しない圧縮コイルスプリ
ングによって、加熱定着ロール2に向けて例えば50k
gfの押圧力で圧接されている。上記ベースプレート2
1としては、例えば、幅(ベルトの走行方向)20m
m、長さ(紙面の垂直方向)360mm、厚さ7.5m
mのステンレス鋼製のものが用いられる。また、弾性体
層24は、ゴム硬度20°のシリコーンスポンジ(シリ
コーンゴムの発泡体)からなる厚さ5mmのものであ
る。なお、ここでゴム硬度は、高分子科学社製のアスカ
ーCタイプのスポンジ用ゴム硬度計により、荷重300
gfを付加して計測した結果である。
【0035】ここで、上記パッド部材4に弾性体層24
を設けることにより、パッドシート25のエンドレスベ
ルト3と接触する接触面は、加熱定着ロール2の外周面
と整合可能になっている。すなわち、一定以上の荷重に
よってパッド部材4を加熱定着ロール2に向けて押圧す
れば、弾性体層24が変形し、パッドシート25の接触
面が加熱定着ロール2の外周面に沿って圧接されるよう
に変形するようになっている。したがって、パッド部材
4が図示しない圧縮コイルスプリングによって加熱定着
ロール2に押圧されると、エンドレスベルト3は加熱定
着ロール2に隙間なく圧接される。
【0036】潤滑油塗布部材について説明する。潤滑油
塗布部材27は、例えば、フェルト等からなり、図1及
び図2に示すようにエンドレスベルト3の内面に潤滑油
を塗布可能に配置されている。このような潤滑油塗布部
材27により、潤滑油をエンドレスベルト3内面とパッ
ドシート25との間に介在させることができ、エンドレ
スベルト3とパッドシート25との間の摺動抵抗(摩擦
係数)が小さくなるようになされている。潤滑油を塗布
した状態では、エンドレスベルト3は、加熱定着ロール
2の回転に伴って、パッドシート25上を滑りながら、
当該加熱定着ロール2と等しい速度で走行することが可
能となっている。なお、この潤滑油塗布部材27は、必
要に応じて設けることができるものであり、特に定着装
置1では、上述のようにパッドシート25が潤滑油を良
好に保持することができるため、潤滑油塗布部材27を
備えることなく、長期に渡って、エンドレスベルト3と
パッドシート25との摺動抵抗の上昇を抑制することが
できる。潤滑油としては、例えば粘度が100〜500
cs(好ましくは200〜400cs)のアミノ変性シ
リコンオイル、ジメチルシリコンオイル等が挙げられ
る。これらの中でも、粘度300csのアミン変性シリ
コンオイルが特に好適である。
【0037】パッドシートについて説明する。パッドシ
ート25は、表面に多孔質構造を有し、エンドレスベル
ト3とパッド部材4の間に介在させるように、パッド部
材4を被覆して配置されている。パッドシート25は、
図3に示すように、例えば、シート状のものを略円筒状
して配置されているが、エンドレスベルト3とパッド部
材4の間に介在されていれば、どのような形状で配置さ
れていてもよく、平らなシート状のまま配置されていて
もよいし、また、加熱定着ロール2の面形状に合わせて
屈曲していてもよい。
【0038】パッドシート25は、表面に多孔質構造を
有するが、少なくともエンドレスベルト3と当接する表
面近傍のみが多孔質構造であればよく、パッドシート2
5表面全て或いはパッドシート25全体が多孔質構造で
あってもよい。しかし、強度の観点からエンドレスベル
ト3と当接する表面近傍のみが多孔質構造であることが
好適である。この多孔質構造とは、多数の微細な連続孔
がパッドシート25表面から内部にかけて延在している
状態を示し、貫通している必要はない。この細孔の大き
さ(口径)としは、0.01μm以上100μm以下で
あることが、上述のように所望とする機械的強度を有し
つつ、十分な潤滑油保持性を得る観点から好ましく、よ
り好ましくは、0.05μm以上30μm以下であり、
さらに好ましくは0.1μm以上20μm以下である。
細孔の大きさが、0.01μmより小さいと、所望とす
る潤滑油保持性が十分に得られないことがあり、100
μmより大きいと、機械的強度が低下することがある。
ここで、細孔の大きさは、走査型電子顕微鏡による表面
観察像を画像解析により計算した平均値により求められ
る値である。
【0039】パッドシート25を構成する材料として
は、耐熱性、耐磨耗性を有するものであれことが好適で
あり、この条件を満たせば特に限定されないが、例え
ば、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリ
エーテルサルフォン、ポリエーテルケトン、ポリサルフ
ォン、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリアミド、ポ
リベンズイミダゾール、ポリベンズオキサゾール、ピー
ク等が挙げられるが、ポリイミド、芳香族ポリアミド
(アラミド)、サーモトロピック液晶ポリマーとして分
類されるものを使用するのが望ましい。上記サーモトロ
ピック液晶ポリマーには、完全芳香族ポリエステル、芳
香族−脂肪族ポリエステル、芳香族ポリアゾメチ、芳香
族ポリエステル−カーボネ−ト等がある。これらの中で
も、耐熱性や耐磨耗性が高い観点から、ポリイミドが特
に好ましい。このポリイミドを用いることで、耐熱性、
耐磨耗性が要求されるロール部材などに好適に適用可能
である。ポリイミドは、熱硬化性のものが望ましく、熱
硬化性ポリイミドは、分子主鎖中にイミド基が有機基と
直結し、これが繰り返し単位となって、高分子化してい
るものである。有機基は、例えば、脂肪族基、芳香族基
等を意味するが、芳香族基、例えば、フェニル基、ナフ
チル基、ジフェニル基(2つのフェニル基がメチレン基
やカルボニル基を介して結合されたものを含む)である
方が、高い使用温度で機械的特性が良好なものとなる。
ポリイミド前駆体の一つであるポリアミド酸は、有機酸
二無水物と有機ジアミンとの当量を、常温の有機極性溶
媒中で縮重合反応させることによって生成することがで
きる。
【0040】パッドシート25の厚さは、50μm〜3
00μm程度であることが好ましい。また、パッドシー
ト25は、単層から構成されてもよし、複数層から構成
されていてもよく、各層は同じ材料で構成されていても
よいし、異なる材料で構成されていてもよい。
【0041】パッドシート25は、表面に多孔質構造を
有するが、このような表面に多孔質構造を有する摺動部
材の製造方法としては、表面が多孔質構造を有するよう
に構成できれば、特に制限はないが、例えば、バルク状
の樹脂層と多孔質の樹脂層とを接着剤などで貼り合わせ
たりすることで、容易に得ることができるが、以下に示
す製造方法も好適に挙げられる。なお、この製造方法に
おいては、パッドシート25の構成材料としてポリイミ
ド樹脂を用いて樹脂層(シート状部材)を形成する場合
を説明する。 (a)ポリイミド前駆体溶液を塗布してポリイミド前駆
体塗膜を形成し(以下、「PI前駆体塗膜形成工程」と
いう)、ポリイミド前駆体塗膜表面に貫通孔を多数有す
る溶剤置換速度調節材を被覆し、ポリイミド前駆体塗膜
を凝固溶媒に接触させて、表面に多孔質構造を有するポ
リイミド前駆体塗膜を形成し(以下、「PI前駆体析出
工程」という)、表面に多孔質構造を有するポリイミド
前駆体塗膜を、熱イミド化処理して、表面に多孔質構造
を有するポリイミド樹脂層を形成する(以下、「PI樹
脂層形成工程」という)方法(以下、この方法を(a)
の方法という)。以下、(a)の方法について説明す
る。 −PI前駆体塗膜形成工程− PI前駆体塗膜形成工程では、通常、基体表面に、ポリ
イミド前駆体溶液を塗布することでポリイミド前駆体塗
膜を形成するが、当該溶液に使用するポリイミド前駆体
としては、ジアミノ化合物とテトラカルボン酸二無水物
とから得られるポリアミド酸等が挙げられる。また、ポ
リイミド前駆体を溶解する溶剤としては、N−メチルピ
ロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトアミ
ド、N,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン系極
性溶剤が挙げられる。また、ポリイミド前駆体溶液に
は、目的に応じて、滑剤、可塑剤、導電性粒子、酸化防
止剤その他の添加物が添加されてもよい。
【0042】基体としては、摺動部材(パッドシート2
5)の形状によってことなるが、円筒状とする場合、円
筒或いは円柱状の基体が、平らなフィルム状とする場
合、板状の基体が用いられる。基体の構成材料として
は、アルミニウム等の金属などが一般的に用いられる。
【0043】ポリイミド前駆体含有液は、例えば、芳香
族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミン成分とを
有機極性溶媒中で反応させポリイミド前駆体を合成する
ことによって得ることできる。芳香族テトラカルボン酸
の代表例としては、次のようなものが挙げられる。例え
ば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビ
フェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,
4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,
3,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、
2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水
物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無
水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)
エーテル二無水物、あるいはこれらのテトラカルボン酸
エステル、または上記各テトラカルボン酸類の混合物等
が挙げられる。一方、芳香族ジアミン成分としては、特
に制限はなく、パラフェニレンジアミン、メタフェニレ
ンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、
4,4’−ジアミノフェニルメタン、ベンジジン、3,
3’−ジメトキシベンチジン、4,4’−ジアミノジフ
ェニルプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェ
ノキシ)フェニル]プロパン等が挙げられる。
【0044】ポリイミド前駆体溶液の基体への塗布量
は、所望とする膜厚によるが、200〜1800g/m
2とすることが好ましい。200g/cm2未満であると
膜厚不足となることがあり、1800g/m2を超える
と膜厚過多となることがある。
【0045】ポリイミド前駆体溶液を塗布する方法は特
に制限されず、例えば特開昭57−74131号公報に
記載の遠心成形塗布法、特開昭62−19437号公報
に記載の内面塗布法、特開平6−23770号公報に記
載の外面塗布法、特開平3−180309号公報に記載
の浸漬塗布法、特開平9−85756号公報に記載のら
せん塗布法等が挙げられるが、基体として柱状或いは筒
体を用いる場合、特願平11−314011号公報等に
記載の浸漬塗布法を適用することが好ましい。
【0046】浸漬塗布法は生産性が高いことが特徴であ
るが、通常の方法では塗布膜厚が、塗布液の粘度と引き
上げ速度に支配される。また、ポリイミド前駆体溶液は
濃度が低い割には粘度が非常に高い問題があるので、塗
布後の被膜の濡れ膜厚が厚くなりすぎ、所望の膜厚に塗
布することが難しい。そこで、例えば、円筒状の部材を
形成する場合、塗布液に所定の円孔を設けたフロートを
浮かべ、基体をその円孔を通して引き上げる特願平11
−314011号に記載の浸漬塗布法を適用することが
特に好ましい。この浸漬塗布法におけるフロートの円孔
の大きさ(直径)は所望の膜厚により適宜調整すること
がよい。塗布される濡れ膜厚は、円孔と基体の間隙によ
って規制され、乾燥膜厚は濡れ膜厚と塗布液の濃度との
積になる。但し、上記間隙は所望の濡れ膜厚の1〜3倍
であるのがよい。1〜3倍とするのは、塗布液の粘度お
よび/または表面張力、並びに、硬化時の収縮等によ
り、乾燥膜厚が濡れ膜厚に比例するとは限らないからで
ある。
【0047】−PI前駆体析出工程− PI前駆体析出工程では、ポリイミド前駆体塗膜を凝固
溶媒に接触させる際、ポリイミド前駆体塗膜表面に貫通
孔を多数有する溶剤置換速度調節材を被覆しておく。こ
の凝固溶剤は、ポリイミド前駆体には不溶で、ポリイミ
ド前駆体溶液の溶剤(非プロトン系極性溶剤)には相溶
する溶剤である。このため、ポリイミド前駆体塗膜を、
凝固溶媒に接触させると、ポリイミド前駆体塗膜から溶
剤(プロトン系極性溶剤)が凝固溶媒に染み出て、代わ
りに凝固溶媒が浸透する。ポリイミド前駆体は凝固溶媒
には不溶なのでポリイミド前駆体は析出する。この凝固
溶剤に接触させる際に、ポリイミド前駆体塗膜表面に、
溶剤置換速度調節材を被覆することで、当該調節材の貫
通孔からのみ、凝固溶剤がポリイミド前駆体塗膜と接触
する。そして、この接触した部分にのみ、溶剤(プロト
ン系極性溶剤)が凝固溶媒に染み出て、代わりに凝固溶
媒が浸透し、ポリイミド前駆体塗膜では、上記調節材の
貫通孔の部分にのみ細孔が形成される。このため、表面
に多孔質構造を有するポリイミド前駆体塗膜を形成する
ことができる。なお、表面に多孔質構造を有するポリイ
ミド前駆体塗膜を形成後、溶剤置換速度調節材は剥離す
る。
【0048】溶剤置換速度調節材は、ポリイミド前駆体
塗膜表面に被覆する構造であれば、どのようなものでも
よいが、一般的には、シート状のものが用いられる。ま
た、その材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプ
ロピレン等のポリオレフィン、セルロース、ポリフッ化
エチレン系繊維(例えば、テフロン(R))等からなる
不織布、或いは多孔質膜が挙げられる。また、溶剤置換
速度調節材は、多数の貫通孔が設けられてなるが、これ
は、所望とする多孔質構造によって、その数や大きさは
異なる。貫通孔の大きさ(口径)は、所望とするポリイ
ミド樹脂層における多孔質構造の細孔の大きさよりも、
大きめに設定することが好適である。
【0049】凝固溶剤としては、例えば、水、アルコー
ル類(例えばメタノール、エタノール等)、炭化水素類
(例えばヘキサン、ヘプタン、等)、ケトン類(例えば
アセトン、ブタノン等)、エステル類(例えば酢酸エチ
ル等)が挙げられ、水が最も扱いが簡便で好ましい。
【0050】ポリイミド前駆体塗膜を凝固溶剤と接触さ
せる方法としては、ポリイミド前駆体塗膜を内面に形成
した基体を、凝固溶剤で満たした槽に浸漬する方法、等
が好適である。この方法では、ポリイミド前駆体塗膜を
凝固溶剤に均一に接触させることができる。この浸漬方
法では、より効率よくポリイミド前駆体を析出させ、多
孔質構造を形成する観点から、凝固溶剤を攪拌して、溶
剤置換速度調節材における貫通孔内部に流通させやすく
することが好ましい。
【0051】ポリイミド前駆体塗膜を凝固溶剤と接触さ
せる方法としては、その他、ポリイミド前駆体塗膜に凝
固溶剤を流下させたり、吹き付けてもよい。
【0052】PI前駆体析出工程においては、ポリイミ
ド前駆体塗膜を凝固溶剤に接触させる時間により、ポリ
イミド前駆体塗膜からの非プロトン系極性溶剤の溶出量
が変化する。即ち、この時間により、多孔質構造の細孔
の大きさや深さ(長さ)などを適宜制御することができ
る。また、ポリイミド前駆体塗膜から凝固溶剤への非プ
ロトン系極性溶剤の溶出量は、通常、凝固溶剤の温度が
高いほど速くなるので、温度によっても、上記多孔質構
造の細孔の大きさや深さなどを適宜制御することができ
る。さらに、凝固溶剤にあらかじめ非プロトン系極性溶
剤を混合しておくことにより、ポリイミド前駆体塗膜か
らの非プロトン系極性溶剤の溶出量を調整することもで
きるので、これによっても、上記多孔質構造の細孔の大
きさや深さなどを適宜制御することができる。
【0053】−PI樹脂層形成工程− PI樹脂層形成工程においては、まず、非プロトン系極
性溶剤を除去する目的で、乾燥を行うことが好ましい。
乾燥条件は、20〜120℃の温度で10〜60分間、
行うのが好ましい。筒状体の内部に温風を送ることも効
果的である。乾燥温度は、段階的、または一定速度で上
昇させてもよい。
【0054】乾燥を、基体の長手方向を縦にして行う
と、塗膜の一部分に筋やむらが生じることもある。その
ような場合には、基体の長手方向を縦にして、さらに回
転させることが有効である。回転速度は、10〜100
rpm程度が好ましいが、回転装置によってはこれより
速くても遅くてもかまわない。基体の長手方向を縦にし
て回転させることは、筒状体の長手方向を横にして回転
させるよりも装置の構造は簡単である。
【0055】PI樹脂層形成工程において、乾燥の後、
好ましくは、350℃前後(好ましくは300〜450
℃)の温度で、20〜60分間、ポリイミド前駆体塗膜
を加熱することで、熱イミド化処理し、ポリイミド樹脂
層を形成することができる。熱イミド化処理の際、溶剤
が残留しているとポリイミド樹脂層に膨れが生じること
があるため、熱イミド化処理前には、完全に残留溶剤を
除去することが好ましく、具体的には、熱イミド化処理
前に、200〜250℃の温度で、10〜30分間加熱
乾燥することが好ましく、続けて、温度を段階的、また
は一定速度で上昇させて、熱イミド化処理することが好
ましい。
【0056】このような方法により、表面に多孔質構造
を有するポリイミド樹脂層からなる摺動部材(パッドシ
ート25)を形成することができる。
【0057】また、表面に多孔質構造を有する樹脂層
(シート状の摺動部材)の製造方法としては、以下に挙
げる方法も好適に挙げられる。 (b)樹脂材料塗布液を用いてバルク状の樹脂層を形成
し(以下、「バルク状の樹脂層形成工程」という)、前
記バルク状の樹脂層表面に、発泡剤を含む樹脂材料塗布
液を用いて多孔質の樹脂層(以下、「多孔質の樹脂層形
成工程」という)を形成する方法((b)の方法とい
う)。
【0058】以下、(b)の方法について説明する。な
お、(b)の方法では、ポリイミド前駆体溶液を用いて
ポリイミド樹脂層を形成する方法に準じて説明するが、
これに限定されるわけではない。
【0059】−バルク状の樹脂層形成工程− バルク状の樹脂層形成工程では、上記(a)の方法にお
ける、PI析出工程で溶剤置換速度調節材を用いない以
外は、同様の工程で、バルク状の樹脂層(ポリイミド樹
脂層)を形成することができる。ここで、「バルク状」
とは、多孔質構造を有する樹脂層と区別するための文言
であり、多孔質構造を有さない樹脂層を意味する。な
お、場合によっては、PI析出工程は行わなくてよい。
【0060】―多孔質の樹脂層形成工程― 多孔質の樹脂層形成工程では、上記(a)の方法におけ
るポリイミド前駆体溶液中に、発泡剤を添加し、さら
に、ポリイミド析出工程で溶剤置換速度調節材を用いな
い以外は、同様の工程で、バルク状の樹脂層(ポリイミ
ド樹脂層)を形成することができる。このように、多孔
質の樹脂層は、樹脂材料(ポリイミド前駆体)と共に、
発泡剤を用い、加熱硬化処理(熱イミド化処理)させる
ことで、容易に形成することができる。なお、場合によ
っては、PI析出工程は行わなくてよい。
【0061】発泡剤としては、「セルマイクC191
(三協化成(株)製)」(主成分アゾジカルボンアミ
ド)や、「セルマイク417(三協化成(株)製)」
(無機系)、その他、テトラソニル系発泡剤等が挙げら
れる。
【0062】また、(b)の方法のように、樹脂層を複
数層で構成する場合、下層の樹脂層を乾燥或いは半硬化
させて、上層の樹脂層における加熱硬化(熱イミド化処
理)と共に、下層の樹脂層を完全に加熱硬化(熱イミド
化処理)させることも好適である。このような方法を取
ることで、各層間が溶融接着し優れた接着強度が得られ
るため好適である。
【0063】なお、上記(a)、(b)の方法のよう
に、通常は、樹脂層は、基体表面に形成する際、樹脂材
料溶液(ポリイミド前駆体溶液)を塗布するが、例え
ば、フィルム状にする場合、基体としては板状のものが
用いられる。無端ベルト状にする場合、例えば、円柱状
又は円筒状、楕円柱状又は楕円筒状が用いられる。基体
の材質は、アルミニウムや銅、ステンレス等の金属が好
ましい。その際、表面をクロムやニッケルでメッキした
り、フッ素樹脂やシリコーン樹脂で表面を被覆したり、
あるいは表面にポリイミド樹脂が接着しないよう、表面
に離型剤を塗布することも有効である。
【0064】パッドシート25の表面には、少なくとも
エンドレスベルト3の表面に当接(圧接)する部分25
aに、凹凸28が形成されていることが好ましい。この
パッドシート25表面の大きな凹凸28は、例えば、当
該パッドシート25を構成するシート材料の表面に、当
該特殊なエンボス加工や、サンディング加工を施すこと
によって形成することができる。
【0065】パッドシート25の表面に凹凸28を形成
することにより、当該パッドシート25とエンドレスベ
ルト3内面との接触点を減らし、点接触とすることによ
り、パッドシート25とエンドレスベルト3内面との摺
動抵抗を低減することができる。
【0066】更に説明すると、上記パッドシート25
は、図4に示すように、厚さ75μm程度のポリイミド
フィルム30に、所定の大きさの凹凸31を有するエン
ボス加工用のエンボス型32を用いて、加圧エンボス加
工を施すことにより、当該パッドシート25の表面に凹
凸28が形成される。
【0067】ところで、本発明者らは、図4に示すよう
に、先端が鋭利なエンボス型32と、先端が丸いエンボ
ス型32とを用いて、ポリイミドフィルム30の表面に
所定の大きさの凹凸28をエンボス加工により形成し
て、当該エンボス加工が施されたポリイミドフィルム3
0によってパッドシート25を構成して、後述するよう
に、当該パッドシート25の表面に凹凸28を形成する
ことによる摺動抵抗の低減効果を確認する実験を行った
ところ、図5に示すような結果が得られた。
【0068】その結果、図5に示すように、先端が鋭利
なエンボス型32を用いて表面に大きな凹凸28を形成
したパッドシート25を使用した場合には、摺動抵抗の
低減効果が長期間にわたって維持することができたが、
先端が丸いエンボス型32を用いて表面に凹凸28を形
成したパッドシート25を使用した場合には、摺動抵抗
の低減効果が急速に失われ、摺動抵抗が急激に増加し
て、ベルト駆動負荷電流値が早い時期に高い値を示すこ
とがわかった。
【0069】これは、パッドシート25の表面に凹凸2
8を形成するのに、先端が鋭利なエンボス型32を用い
た場合には、図6に示すように、パッドシート25が塑
性変形して、凹凸28形状が長期間維持されるのに対し
て、先端が丸いエンボス型32を用いた場合には、パッ
ドシート25が弾性変形して、凹凸28形状が早い時期
に失われるか、平面に近い形状に復帰してしまうためと
考えられる。
【0070】次に、上記の如く表面に凹凸28が形成さ
れたパッドシート25の製造方法を、例えば、以下に示
す方法により好適に製造することができる。
【0071】パッドシート25を構成する材料としてポ
リイミドを用いる場合、例えば、上記(a)の方法によ
り、ポリイミドフィルムを得る。このポリイミドフィル
ム30は、図7(a)に示すように、まず、所定の長方
形状に外形が外被きされると同時に、取り付け用の穴3
5が打ち抜かれる。次に、上記ポリイミドフィルム30
の表面には、エンボス成形によって所定の幅にわたって
大きな凹凸28が形成される。
【0072】このエンボス成形による大きな凹凸28の
形成は、図8に示すように、エンボス加工機の下型40
上に、エンボス加工を施すエンボス型32を載置し、当
該エンボス型32の上に、所定の形状に形成されたポリ
イミドフィルム30を載せ、その上にクッション材とし
て厚さ2.0mmのシリコンゴム41を介して、上型4
2によって、所定の圧力P(例えば、60kg/c
2)で押圧することにより、エンボス型32によって
ポリイミドフィルム30にエンボス加工を施す。プレス
時間は、例えば、1.0min程度に設定され、エンボ
ス加工を施す前に、エンボス加工機の下型40及び上型
42を、175℃程度に加熱しておくとともに、エンボ
ス加工を施す環境温度も、175℃程度に設定される。
【0073】上記エンボス加工に使用されるエンボス型
32は、図9に示すように、S45C等の鋼材によっ
て、平面長方形状に形成されており、このエンボス型3
2の表面には、ポリイミドフィルム30のエンボス加工
を施す幅に応じて、所定の大きさの凹凸31が一様に形
成されている。上記エンボス型32表面の凹凸31は、
例えば、正四角錘状に形成されており、当該凹凸31の
凸部は、高さ10μm以上であることが好ましく、より
好ましくは50μm〜500μmであり、さらに好まし
くは100μm〜300μmである。高さ10μm以上
とすることで、パッドシート25とエンドレスベルト内
面との摺動抵抗より好適に低減することができる。ま
た、凸部のピッチは、1mm〜10mmであることが好
ましく、より好ましく、2mm〜8mm、さらに好まし
くは3mm〜6mmである。このピッチを上記範囲とす
ることで、パッドシート25とエンドレスベルト内面と
の摺動抵抗より好適に低減することができる。ここで、
凸部の高さとは、凹部の最下点と凸部の頂点との面方向
に直交する方向の距離を示し、ピッチとは、各凸部の頂
点間の面方向の距離を示す。
【0074】次に、図7(a)に示すように、上記の如
くエンボス加工が施されたポリイミドフィルム30を、
円筒形状に形成するとともに、当該円筒形状に形成され
たポリイミドフィルム30の重なり部分に、接着剤を塗
布する。
【0075】その後、上記ポリイミドフィルム30に塗
布された接着剤を加熱して硬化させる。
【0076】このようにして、図7(b)に示すよう
に、ポリイミドフィルム30によって表面に大きな凹凸
28が形成されたパッドシート25が製造される。この
パッドシート25の表面には、図7(c)に示すよう
に、所定の幅にわたって大きな凹凸28が形成される。
上記パッドシート25の表面に大きな凹凸28が形成さ
れた領域25aは、図7(d)に示すように、少なくと
も加熱定着ロール2の表面に圧接する部分にわたるよう
に設定される。
【0077】また、上述したように、エンボス加工を1
75℃程度に加熱した環境下で行うことにより、ポリイ
ミドフィルム30にエンボス加工を施すことに伴って、
当該ポリイミドフィルム30を円筒形状に形成して、パ
ッドシート25を製造する際に、当該パッドシート25
に残留応力によって変形が生じるのを防止するように構
成することが好適である。
【0078】すなわち、上記ポリイミドフィルム30に
エンボス加工を施すことによって、パッドシート25を
製造する際に、当該パッドシート25を構成するポリイ
ミドフィルム30に残留応力が生じる。そのため、上記
ポリイミドフィルム30をそのまま円筒状に形成してパ
ッドシート25を製造した場合には、図10(a)に示
すように、当該ポリイミドフィルム30の残留応力によ
って、円筒状のパッドシート25が一方の径方向に競り
上がり、パッドシート25の軸方向の途中が楕円形状に
変形してしまうことがある。このように変形したパッド
シート25を、図1に示す定着装置1において使用する
と、パッドシート25の変形によって、ニップ部内のパ
ッドシート25が座屈し、圧力のかからない部分が発生
するか、または、座屈している周りの圧力が上がり、本
来の図11(a)から、図11(b)に示すように、パ
ッド部材4の圧力分布がW型となり、紙しわの原因とな
ることがある。
【0079】そこで、上述したように、エンボス加工を
175℃程度に加熱した環境下で行うことにより、ポリ
イミドフィルム30にエンボス加工を施すことに伴っ
て、当該ポリイミドフィルム30を円筒形状に形成し
て、パッドシート25を製造する際に、図10(b)に
示すように、当該パッドシート25に残留応力によって
変形が生じるのを防止することができ、パッド部材4の
圧力分布も狙いとする荷重分布を得ることができ、紙し
わの発生を確実に防止することができる。
【0080】また、表面に凹凸28が形成されたパッド
シート25を製造する際に、エンボス加工以外に、サン
ディング加工によって、凹凸28をパッドシート25の
表面に形成するように構成してもよい。
【0081】このサンディング加工は、ポリイミドフィ
ルム30を円筒状に形成した後、当該円筒状に形成され
たポリイミドフィルム30の表面に施される。更に説明
すると、図12に示すように、円筒状に形成されたポリ
イミドフィルム30を、サンディング加工を施すための
治具である割りフィックスに挿入し、この割りフィック
スをサンディング機に装着する。そして、このサンディ
ング機によって、連続紙からなるサンディングペーパー
によって研磨することによって、当該円筒状に形成され
たポリイミドフィルム30の表面に、所定の大きさの凹
凸28を形成する。このポリイミドフィルム30の表面
に形成される凹凸28は、サンディングペーパーの粗さ
を適宜設定することにより、所定の大きさに設定され
る。
【0082】パッドシート25の表面に形成される凹凸
28の大きさは、例えば、当該パッドシート25の表面
粗さに伴ううねり曲線の特性値を表すWC−aの値によ
って評価される。このWC−a値は、図13に示すよう
に、ろ波中心線うねりと呼ばれるものであり、ろ波中心
線うねり曲線から中心線の方向に、測定長さLの部分を
抜取り、この抜取り部分の中心線とろ波中心線うねり曲
線との偏差の絶対値を算術平均した値をいう。
【0083】本発明者らは、表面に形成された凹凸28
のWC−a値が異なる種々のパッドシート25を試作
し、初期的に摺動抵抗の低減効果がどのように異なるか
を確認する実験を行った。
【0084】その際、上記パッドシート25の表面に図
14に示すようにサンディング加工を施す際に、当該サ
ンディング加工を施すときの方向性を、図15(a)〜
(c)に示すように、プロセス方向研磨、ラテラル方向
研磨、及びランダム方向研磨と異ならせて、摺動抵抗の
低減効果をそれぞれ評価した。この結果を図16に示
す。
【0085】この図16から明らかなように、パッドシ
ート25の表面に、ラテラル方向に沿って研磨を施した
場合には、凹凸28のWC−a値が0.8以上であれ
ば、摺動抵抗の低減効果が非常に高く、摺動抵抗の増加
に伴う像ずれの発生を防止することができ、好適である
ことがわかる。
【0086】本発明の定着装置において、図1に示す定
着装置1に限定されるわけではなく、ベルトニップ方式
の定着装置であれば、どのような構成の定着装置であっ
てもよい。例えば、図17に示すような、電磁誘導発熱
方式の定着装置も好適に挙げられる。図17に示す定着
装置100は、図1に示す定着装置1における加熱定着
ロール2の代わりに加圧ロール200、エンドレスベル
ト3の代わりに金属層を有する加熱定着ベルト(ベルト
部材)300を備え、さらに加熱源として金属層を有す
る加熱定着ベルト300表面周辺に電磁誘導コイル80
0を備える、IHベルトフューザー(IH−BNF)方
式の定着装置である。
【0087】
【実施例】以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体
的に説明する。ただし、これら各実施例は、本発明を制
限するものではない。
【0088】(実施例1) ―シート状部材の作製― 厚さ75μmのPIシート(バルク状)表面に、2μm
の微細孔を有する多孔質構造のPI層(30μm)を形
成した後、このシートを150℃にて80μmの先端が
鋭利な凹凸を有する金型でプレスして凸部先端を塑性変
形させ、凸部の高さ50μm、ピッチ5mm、WC−a
の値2.0μmのエンボス加工を施した。
【0089】得られたシート状部材の端部を接着し、筒
状に形成して、図1に示す定着装置にパッドシート25
として装着し、空回しランニングテストを実施した。こ
のテスト中に、摺動抵抗の代用特性として、ベルトの駆
動負荷電流値を測定した。その結果、初期:0.5Aで
100kpv相当経過後でも0.55Aであった。以上
の様に摺動抵抗の上昇はなく、さらに画像像ずれ等の画
像欠陥も発生しなかった。なお、図1に示す定着装置の
加熱定着ロール2、エンドレスベルト3としては、それ
ぞれ以下のようにして作製した加熱ロール、加圧ベルト
を用いた。
【0090】−加熱ロールの作製− チューブ内面に接着用プライマーを塗布した外径50m
m、長さ340mm、厚さ30μmのフッ素樹脂チュー
ブと金属製の中空芯金コアを成形金型内にセットし、フ
ッ素樹脂チューブとコア間に液状シリコーンゴム、層
厚:3mmを注入後、加熱処理(150℃×2hrs)
によりシリコーンゴムを加硫させゴム弾性を有した加熱
ロールを作製した。
【0091】−加圧ベルト− 外径68mm、長さ340mm、厚さ75μmのポリイ
ミド製エンドレスベルトの表面にフッ素樹脂ディスパー
ジョン塗料をディップコートにより塗布後、加熱処理
(350℃×1hrs)によりフッ素樹脂を焼き付ける
ことにより加圧ベルトを作製した。
【0092】(実施例2)厚さ50μmのPIシート
(バルク状)表面に、50μmの微細孔を有する多孔質
構造のPI層(100μm)を形成した後、このシート
を150℃にて50μmの先端が鋭利な凹凸を有する金
型でプレスして凸部先端を塑性変形させ、凸部の高さ2
0μm、ピッチ6mm、WC−aの値3.0μmのエン
ボス加工を施した以外は、実施例1と同様してシート状
部材を作製し、定着装置に装着して、空回しランニング
テストを実施したところ、初期:0.4Aで100kp
v相当経過後でも0.45Aであった。以上の様に摺動
抵抗の上昇はなく、さらに画像ずれ等の画像欠陥も発生
しなかった。
【0093】(比較例1)シート状部材として厚さ10
0μmのPIシート(バルク状)を用いた以外は、実施
例1と同様して定着装置の装着し、空回しランニングテ
ストを実施したところ、初期:0.7Aであった電流値
が100kpv相当経過後1.8Aに上昇すると同時に
画像ずれも発生した。
【0094】(実施例3) ―シート状部材の作製― 厚さ70μmのPIシート(バルク状)表面に、5μm
の微細孔を有する多孔質構造のPI層(30μm)を形
成した。
【0095】得られたシート状部材をの端部を接着し、
筒状に形成して、図2に示す定着装置にパッドシート2
5として装着し、空回しランニングテストを実施した。
このテスト中に、摺動抵抗の代用特性として、ベルトの
駆動負荷電流値を測定した。その結果、初期:0.6A
で100kpv相当経過後でも0.65Aであった。以
上の様に摺動抵抗の上昇はなく、さらに画像ずれ等の画
像欠陥も発生しなかった。なお、図2に示す定着装置の
加圧ロール200、加熱定着ベルト300としては、そ
れぞれ以下のようにして作製した加圧ロール、加熱ベル
トを用いた。
【0096】−加圧ロール− チューブ内面に接着用プライマーを塗布した外径50m
m、長さ340mm、厚さ30μmのフッ素樹脂チュー
ブと金属製の中空芯金コアを成形金型内にセットし、フ
ッ素樹脂チューブとコア間に液状シリコーンゴム、層
厚:2mmを注入後、加熱処理(150℃×2hrs)
によりシリコーンゴムを加硫させゴム弾性を有した加圧
ロールを作製した。
【0097】−加熱ベルト− 外径68mm、長さ340mm、厚さ75μmのポリイ
ミド製エンドレスベルトの表面に、金属層として、無電
解Cuめっきにより0.3μmの薄膜Cu層を形成後、
電解Cuめっきによりトータル8μmのCu層(IH発
熱層)を形成した。さらに、その表面にフッ素樹脂ディ
スパージョン塗料をディップコートにより塗布後、加熱
処理(350℃×1hrs)によりフッ素樹脂を焼き付
けることにより加熱ベルトを作製した。
【0098】(実施例4)厚さ60μmのPIシート
(バルク状)表面に、30μmの微細孔を多孔質のPI
層(100μm)を形成した以外は、実施例3と同様し
てシート状部材を作製し、定着装置に装着して、空回し
ランニングテストを実施したところ、初期:0.55A
で100kpv相当経過後でも0.60Aであった。以
上の様に摺動抵抗の上昇はなく、さらに像ずれ等の画像
欠陥も発生しなかった。
【0099】(比較例2)シート状部材として、厚さ1
20μmのPIシート(バルク状)を用いた以外は、実
施例3と同様にして定着装置に装着し、空回しランニン
グテストを実施したところ、初期:0.9Aであった電
流値が100kpv相当経過後2.5Aに上昇すると同
時に画像ずれも発生した。
【0100】(比較例3)シート状部材として、厚さ1
50μmのPFAコートガラス繊維シートを用いた以外
は実施例1と同様にして定着装置に装着し、空回しラン
ニングテストを実施したところ、初期:0.8Aであっ
た電流値が100kpv相当経過後3.0Aに上昇する
と同時に画像ずれも発生した。
【0101】(実施例5)シート状部材として、以下に
示すように作製したものを用いた以外は、実施例1と同
様にして定着装置に装着し、空回しランニングテストを
実施したところ、実施例1と同様な結果が得られた。
【0102】―シート状部材の作製― ポリイミド前駆体であるポリアミド酸のN,N−ジメチ
ルアセトアミド溶液(商品名:Uイミド、(株)ユニチカ
製)(ポリイミド前駆体溶液)を用意した。固形分濃度
は20%、粘度は約1Pa・sに調整した。
【0103】基体として、厚さ0.2mmで20×15
0mmの大きさのガラス板基材を用意し、長手方向を垂
直にしてポリイミド前駆体溶液に浸漬し、次いで100
mm/minの速度で引き上げて、ポリイミド前駆体塗
膜を形成した。
【0104】その後、ポリイミド前駆体塗膜表面に、貫
通孔を多数有する溶剤置換速度調節材(「ユーポアUP
2015(宇部興産(株)製)」)を被覆して、水中に
浸漬し、1分間放置した。基材を引き上げると、ポリイ
ミド前駆体塗膜表面は、多数の細孔を有した多孔質構造
を有していた。
【0105】表面の水滴を拭き取り、次いで上記基材を
乾燥炉に入れた。設定温度は最初が30℃で、1時間後
に100℃になるよう、徐々に温度が上昇するようにし
た。この乾燥後、皮膜は透明化した。更に150℃で2
0分間、200℃で20分間加熱乾燥させ、N,N−ジ
メチルアセトアミドと水を完全に除去した。
【0106】その後、350℃で30分間加熱して熱イ
ミド化処理した。これにより基材上には表面に多孔質構
造を有したポリイミド樹脂層が全面に形成された。ポリ
イミド樹脂層の膜厚は75μmでほぼ均一であった。ま
た、この多孔質構造における細孔の大きさは、2μmで
あった。
【0107】(実施例6)シート状部材として、以下に
示すように作製したものを用いた以外は、実施例1と同
様にして定着装置に装着し、空回しランニングテストを
実施したところ、実施例1と同様な結果が得られた。
【0108】―シート状部材の作製― まず、貫通孔を多数有する溶剤置換速度調節材をポリイ
ミド前駆体塗膜に被覆しなかった以外は、実施例5にお
けるシート状部材の作製と同様にしてポリイミド前駆体
塗膜を形成し、これを100℃にて半硬化させた(バル
ク状のポリイミド樹脂層)。続いて、ポリイミド前駆体
溶液に発泡剤(「セルマイクC−191(三協化成
(株)製)」)を添加し、さらに貫通孔を多数有する溶
剤置換速度調節材をポリイミド前駆体塗膜に被覆しなか
った以外は、実施例5におけるシート状部材の作製と同
様にして、上記半硬化されたバルク状のポリイミド樹脂
層表面に、ポリイミド前駆体塗膜を形成し、熱イミド処
理を行い、バルク状のポリイミド樹脂層と、多孔質のポ
リイミド樹脂層とを順次積層した。このようにして、表
面に多孔質構造を有するポリイミド樹脂層を形成した。
このポリイミド樹脂層の膜厚は0.5μmでほぼ均一で
あった(バルク状のポリイミド樹脂層0.3μm、多孔
質のポリイミド樹脂層0.2μm)。また、この多孔質
構造における細孔の大きさは、0.5μmであった。
【0109】実施例から、ベルトニッブ方式の定着装置
において、ベルト部材と圧力付与部材との間に介在させ
るシート状部材の摺動抵抗を長期にわたって低減するこ
とができ、当該シート状部材の磨耗や摺動抵抗等に伴う
画像ずれの発生を防止できることがわかる。
【0110】
【発明の効果】以上、本発明によれば、ベルトニップ方
式の定着装置において、定着ベルトと圧力付与部材との
摺動抵抗を長期に渡って低減することができ、さらに画
像ずれの発生を防止することが可能な定着装置を提供す
ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本発明の実施の形態に係る定着装置
を示す構成図である。
【図2】 図2は、本発明の実施の形態に係る定着装置
の要部を示す構成図である。
【図3】 図3は、本発明の実施の形態に係る定着装置
のパッドシート(摺動部材)を示す斜視構成図である。
【図4】 図4は、本発明の一実施の形態に係る定着装
置のパッドシート(摺動部材)の加工方法を示す説明図
である。
【図5】 図5は、エンドレスベルト(ベルト部材)の
空回転数とベルト駆動付加電流値との関係を示す構グラ
フである。
【図6】 図6(a)、(b)は、本発明の実施の形態
に係る定着装置のパッドシート(摺動部材)の加工に使
用する型の形状の違いによる加工形状をそれぞれ示す説
明図である。
【図7】 図7(a)〜(d)は、本発明の実施の形態
に係る定着装置のパッドシート(摺動部材)の製造工程
をそれぞれ示す説明図である。
【図8】 図8は、本発明の実施の形態に係る定着装置
のパッドシート(摺動部材)のエンボス加工を示す説明
図である。
【図9】 図9は、パッドシート(摺動部材)のエンボ
ス加工に使用する型を示す構成図である。
【図10】 図10(a)、(b)は、エンボス加工時
のパッドシート(摺動部材)の加熱処理の有無によるパ
ッドシート(摺動部材)の形状等をそれぞれ示す説明図
である。
【図11】 図11(a),(b)は、エンボス加工時
のパッドシート(摺動部材)の加熱処理の有無によるパ
ッドシートの荷重部分布をそれぞれ示す説明図である。
【図12】 図12は、本発明の実施の形態に係る定着
装置のパッドシート(摺動部材)のサンディング加工を
示す説明図である。
【図13】 図13は、パッドシート(摺動部材)表面
の凹凸を評価するパラメータを示す説明図である。
【図14】 図14は、本発明の実施の形態に係る定着
装置のサンディング加工されたパッドシート(摺動部
材)を示す説明図である。
【図15】 図15(a)〜(c)はサンディング加工
の方向性をそれぞれ示す説明図である。
【図16】 図16は、サンディング加工の方向性によ
るパッドシート表面の凹凸を示すパラメータとベルト駆
動負荷電流値との関係を示すグラフである。
【図17】 図17は、本発明の他の実施の形態に係る
定着装置を示す構成図である。
【符号の説明】
1 定着装置 2 加熱定着ロール(ロール部材) 3 エンドレスベルト(ベルト部材) 4 パッド部材(圧力付与部材) 8 ハロゲンランプ(加熱源) 25 パッドシート(摺動部材)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 2H033 AA14 AA23 BA11 BA25 BA42 BA43 BB03 BB05 BB06 BB18 BB39 BE03 BE06

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ロール部材と、 外周面が前記ロール部材に当接され、トナー像を担持し
    た記録媒体が前記ロール部材との間に挟み込まれるニッ
    プ部を形成するベルト部材と、 前記ロール部材及び前記ベルト部材の少なくとも一方を
    加熱する加熱源と、 前記ベルト部材の内側に当接され、前記ロール部材の表
    面に沿って前記ベルト部材を押圧する圧力付与部材と、 前記ベルト部材と前記圧力付与部材との間に介在され、
    少なくとも前記ベルト部材と当接する表面に多孔質構造
    を有する摺動部材と、 前記ベルト部材と前記摺動部材との間に介在される潤滑
    油と、 を有することを特徴とする定着装置。
  2. 【請求項2】 前記摺動部材が、シート状部材であるこ
    とを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
  3. 【請求項3】 前記摺動部材における細孔の大きさが、
    0.01μm〜100μmであることを特徴とする請求
    項1又は2に記載の定着装置。
  4. 【請求項4】 前記摺動部材が、ポリイミド樹脂からな
    ることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の定
    着装置。
  5. 【請求項5】 前記摺動部材が、表面に凹凸が形成され
    ていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載
    の定着装置。
  6. 【請求項6】 前記摺動部材における凹凸は、WC−a
    の値が0.8μm以上であることを特徴とする請求項5
    に記載の定着装置。
  7. 【請求項7】 前記摺動部材における凹凸は、先端が鋭
    利なものを押圧し、凸部先端を塑性変形させて形成され
    てなることを特徴とする請求項5又は6に記載の定着装
    置。
  8. 【請求項8】 前記摺動部材における凹凸の凸部が、高
    さ10μm以上であることを特徴とする請求項5〜6の
    いずれかに記載の定着装置。
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