JP2011013629A - 摺動部材およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】摺動抵抗と強度のバランスがとれた摺動部材を提供すること。
【解決手段】多孔質フッ素樹脂膜を含む摺動部材であって、多孔質フッ素樹脂膜の孔に熱硬化性樹脂および潤滑剤を保持させたものを構成する。多孔質フッ素樹脂膜にエンボス加工を施してもよい。
【選択図】なし

Description

本発明は、機械部品の摺動部分に用いられる摺動部材に関するものである。より詳細には、複写機、プリンター、ファクシミリ等の画像定着装置(電子写真画像形成装置)の摺動面に配置されるシート状の摺動部材(「摺動シート」と記載する場合もある)、およびその製造方法に関するものである。
地球環境の保全、エネルギー資源の枯渇などの諸情勢により、近年、電気装置の省エネルギー化が求められている。例えば、プリンター、複写機、ファクシミリ等の画像形成装置の熱定着装置においても 高速化、立ち上げ時間の短縮、小型化、省エネルギーを目的として、エンドレスベルトを用いた熱定着方式が採用されている。
例えば複写装置では、ドラム状に形成された感光体を一様に帯電させ、この感光体を画像情報に基づいて制御された光で露光し、感光体上に静電潜像(トナー)を形成し、画像定着装置によって、このトナーを紙等の記録媒体上に未定着の状態で転写させ、加熱/加圧することにより記録媒体に定着させるものである。
例えば、特許文献1、2には、回転可能に配設される加圧ロールと、この加圧ロールに回転可能に圧接配置された筒状のエンドレスベルトとを備えた画像定着装置が記載されている。エンドレスベルトの内側には、加圧ロール側に向けてエンドレスベルトを押圧する加圧部材(押圧パッド)が設けられ、加圧部材とエンドレスベルトと間には、潤滑剤を含んだ摺動部材が設けられている。摺動部材は、エンドレスベルトが定着ロールの周速に遅れることなく従駆動させる役割を担っている。
摺動部材の摺動を一層円滑にする目的、及び、摺動部材の摩耗を減少させる目的で、通常は、摺動部材とエンドレスベルト間にはシリコーンオイル等の液状潤滑剤を介在させている。
この摺動部材には、特許文献2に記載されているようにガラス繊維を織ったガラスクロスに、四フッ化エチレン樹脂(ポリテトラフルオロエチレン:PTFE)を含浸コーティングし、それを焼き付けて作製したガラステフロン(テフロンは、米国デュポン社の登録商標)が重用されている。ガラステフロンは四フッ化エチレン樹脂自体が有する低摩擦性と、摺動相手部材との接触面積の少なさによる効果で、優れた摺動性を示す。これは、摺動部材の織り布構造から生じる表面凸部に起因するものである。
しかしながら、ガラステフロンは画像定着装置(電子写真画像形成装置)の熱定着装置の加熱加圧環境下で長時間使用されると、クリープ現象により表面層の四フッ化エチレン樹脂層の表面凹凸が減少し、また、四フッ化エチレン樹脂層が摩耗してガラスクロスが露出する問題がある。ガラスクロスが露出するとエンドレスベルトが損傷し、定着画像の荒れの原因となる。また摺動抵抗が増大すると、熱定着方式の画像定着装置に用いられている軸受け、ギア、モーターへの負担となり、エネルギーロスの増加や装置の故障を引き起こす原因となる。
このガラステフロンの問題を解決するために、ガラスクロスを使用しない種々の技術が知られている。例えば、特許文献3には、摺動面に特殊な凹凸構造を採用したフッ素樹脂層からなる摺動シートが記載されている。しかし、この摺動シートを画像形成装置の加熱加圧環境下で長時間使用すると、摺動面をなすフッ素樹脂のクリープ現象と摩耗のため、特殊凹凸構造が潰れ、摺動面が平滑となって摺動抵抗が高くなる。
また、特許文献4および特許文献5には、樹脂フィルムの表面にエンボス加工で凹凸を賦型した熱硬化性ポリイミドフィルムを摺動部材として使用する技術が記載されているが、薄い未硬化状態のポリイミド前駆体を取り扱う工程が煩雑であるため、生産効率の向上に限界がある。
一方、特許文献6には、PTFEの多孔質体にポリイミド樹脂を含浸した摺動材が記載されている。特許文献6では、PTFEの多孔質体にポリイミド樹脂を完全に含浸させており(第3ページ左上欄)、そのため潤滑作用を有する潤滑オイルは上記多孔質体には含ませておらず、摺動部材の摺動抵抗は高いと考えられる。
特許文献7には、摺動抵抗が小さい材料として、PTFEと耐熱性樹脂、及び固体潤滑剤からなる複合材料の多孔質摺動材が記載されている。多孔質摺動材は固体潤滑剤を混合して形成されたものであるが、多孔質摺動材の多孔部分には潤滑オイルが含浸されていない。そのため、摺動抵抗が十分に低減されていない。また、PTFEが延伸された連続体になっていないので、柔軟性と強度に欠けるものであった。
特許文献8には、フッ素樹脂からなる多孔質組織材の非摺動面に変形防止フィルムを積層接着させた摺動材が記載されている。しかし、このような摺動材は摺動面がクリープと摩耗を受けやすく、かつ、摺動相手部材との間に介在する潤滑オイルとのなじみが良すぎるため低温での起動が困難である。
特開2001−228731号公報 特開平10−213984号公報 特開2005−91557号公報 特開2005−3969号公報 特開2005−246793号公報 特開昭61−228122号公報 特開平2−118216号公報 特開2003−191389号公報
しかしながら、上記特許文献3に記載されたガラスクロステフロン材料は、長時間の使用により表面のフッ素樹脂がクリープしたり摩耗したりして、摺動相手部材となるエンドレスベルトとの接触面積が増大し、摺動抵抗が増加する。表面樹脂が摩耗し過ぎると内部のガラスクロスが剥き出しとなり、エンドレスベルトを傷付けるため、画像定着装置の致命的な損傷になっていた。
また、摺動抵抗を低く維持したままで長時間作動させるには摺動部材と摺動相手部材との界面(すなわち摺動部材の表面)に潤滑オイルを供給する必要があるが、そのためには含油フェルトや含油ロールなどの部品の設置が必要であり、画像定着装置の小型化の妨げとなっていた。
本発明は、上記のような状況に鑑みてなされたものであり、長期に渡って摺動抵抗を低く抑えることができる摺動部材を提供することを目的とする。
上記目的を達し得た本発明の摺動部材は、多孔質フッ素樹脂膜を含む摺動部材であって、前記多孔質フッ素樹脂膜の孔には熱硬化性樹脂および潤滑剤が保持されたものである。
上記摺動部材において、前記多孔質フッ素樹脂膜にエンボス加工が施されていることが望ましく、さらには、エンボス加工により前記多孔質フッ素樹脂膜に形成された凸部の個数密度が200個/平方インチ以上であることが一層望ましい。
上記摺動部材において、前記多孔質フッ素樹脂膜をポリテトラフルオロエチレン膜とすることが望ましい。
上記摺動部材において、前記多孔質フッ素樹脂膜の空孔率が40〜95%であることが望ましい。また、前記潤滑剤がオイルであることが望ましい。
上記目的を達し得た本発明の摺動部材の製造方法は、多孔質フッ素樹脂膜を作製する工程と、前記多孔質フッ素樹脂膜の一部の孔に熱硬化性樹脂を含浸する工程と、前記熱硬化性樹脂を硬化させる工程と、前記多孔質フッ素樹脂膜に更に潤滑剤を含浸する工程とを有する。
上記摺動部材の製造方法において、前記熱硬化性樹脂を硬化する工程が、熱硬化性樹脂を半硬化させるものであり、その後に、前記多孔質フッ素樹脂膜にエンボス加工を施す工程と、前記熱硬化性樹脂を更に硬化させる工程とを有することが望ましい。
本発明の摺動部材は、摺動部材の本体を多孔質フッ素樹脂膜で構成し、多孔質フッ素樹脂膜の孔に熱硬化性樹脂および潤滑剤の両方を保持させるものであり、熱硬化性樹脂が保持されていることにより、摺動部材の低摺動性および柔軟性を維持しながら摺動部材を高強度化し、さらに潤滑剤の保持により摺動抵抗を抑制できるものであり、長寿命で画像品質の高い画像定着装置を提供することが可能となる。
以下、本発明の実施の形態にかかる摺動部材およびその製造方法について説明する。本発明の実施の形態にかかる摺動部材は、多孔質フッ素樹脂膜を基本的構成要素とするものである。その多孔質フッ素樹脂膜(1)の孔には、熱硬化性樹脂(2)および潤滑剤(3)が保持されているものであり、以下、順を追ってこれらを説明する。
1.摺動部材
(1)多孔質フッ素樹脂膜
フッ素樹脂は、離型性・摺動性・柔軟性に優れるため、摺動部材の基本構成として用いる。本発明における多孔質フッ素樹脂膜は、ガラスクロス等の硬い材料を含んでいないため、表面が摩耗してもガラスクロステフロンを用いた場合のように硬い部材が露出することがなく、摺動相手部材を傷つけることが無い。
好ましい多孔質フッ素樹脂膜は、多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜(多孔質PTFE膜)である。多孔質PTFE膜は、PTFEのファインパウダーを成形助剤と混合して得られるペーストを成形し、該成形体から成形助剤を除去した後、高温高速度で延伸し、さらに必要に応じて焼成することにより得られる。延伸に供するペースト成型体は、半未焼成体、焼成体のいずれも利用可能である。
延伸は多孔質フッ素樹脂の融点以下で行う。延伸は、1軸延伸であってもよいし、2軸延伸であってもよい。例えば1軸延伸多孔質PTFEフィルムは、ミクロ的には延伸方向と略直交する細い島状のノード(折り畳み結晶)が存在し、このノード間を繋ぐようなすだれ状のフィブリル(前記折り畳み結晶が延伸により溶けて引き出された直鎖状の分子束)が延伸方向に配向している点に特徴がある。一方、2軸延伸多孔質PTFEフィルムは、フィブリルが放射状に拡がり、フィブリルを繋ぐノードが島状に点在してフィブリルとノードとで分画された空間が多数存在するクモの巣状の繊維質構造となっている点にミクロ的な特徴がある。2軸延伸多孔質PTFEフィルムは、1軸延伸多孔質PTFEフィルムよりも広幅化が容易であり、縦方向・横方向の物性バランスに優れ、単位面積あたりの生産コストが安くなるため、特に好適に用いられる。
多孔質フッ素樹脂膜の空孔率は、例えば、40%以上(好ましくは50%以上)、95%以下(好ましくは85%以下)程度であることが推奨される。なお多孔質PTFE膜の空孔率は、延伸倍率等によって適宜調整できる。空孔率が40%未満であると、孔径が小さく、含浸樹脂を均一にすることが困難であり、また、多孔質フッ素樹脂膜全体がフッ素樹脂膜リッチになり、クリープ現象が大きくなるので好ましくない(フッ素樹脂がPTFEである場合には一層顕著である)。一方、空孔率が95%超では熱硬化性樹脂リッチになり、摺動部材が柔軟性に劣るものになる。
多孔質フッ素樹脂膜の空孔率は、多孔質フッ素樹脂膜の質量Wと、空孔部を含む見かけの体積Vとを測定することによって求まる見かけ密度D(D=W/V:単位はg/cm)と、全く空孔が形成されていないときの真密度D(PTFE樹脂の場合は2.2g/cm)を用い、下記式(1)に基づいて算出できる。なお、体積Vを算出する際の厚みは、ダイヤルシックネスゲージで測定した(テクロック社製「SM−1201」を用い、本体バネ荷重以外の荷重をかけない状態で測定した)平均厚みによる。
空孔率(%)=[(2.2−D)/2.2)]×100 (1)
多孔質フッ素樹脂膜の厚みは特に限定されないが、例えば、250μm以下、好ましくは200μm以下、さらに好ましくは150μm以下である。厚くなりすぎると多孔質フッ素樹脂膜の熱容量が大きくなるために余分の熱量を要してしまうほか、印刷圧力が分散されることにより印刷が不鮮明となる傾向がある。一方、薄くなりすぎると、実使用時の機械的ストレスに耐えられず破断する可能性があるほか、熱硬化性樹脂を含浸処理した時に多孔質フッ素樹脂膜の表面に熱硬化性樹脂の連続層が形成されやすいため、摺動面(多孔質フッ素樹脂膜の表面)にPTFEが露出していないので、滑り特性が低下(摺動抵抗が上昇)してしまう。また、多孔質フッ素樹脂膜が薄くなりすぎることにより、潤滑オイルを空孔内に保持することが困難となる。したがって、多孔質フッ素樹脂膜の厚みは、例えば、10μm以上、好ましくは20μm以上、さらに好ましくは30μm以上、一層好ましくは40μm以上とする。
(2)熱硬化性樹脂
本実施の形態における熱硬化性樹脂は、多孔質フッ素樹脂膜の空孔内で保持されることにより、摺動部材の強度・剛性を高める作用を有する。熱硬化性樹脂は、多孔質PTFEのマトリックス中で、ある程度は連続的に形成されているものの、PTFEの微細な隔壁で仕切られた構造をとっているため、摺動部材の強度・剛性を高めながらも柔軟性は維持される。
熱硬化性樹脂は上記のように機械的強度が高いので、その分、多孔質フッ素樹脂膜を薄く構成することができ、摺動部材の熱容量を小さくできる。これにより画像定着装置の省エネルギー化に貢献し、また摺動部材が薄く柔軟であることにより印刷圧力が分散されないので印刷精度が高い。
多孔質フッ素樹脂膜に含浸された熱硬化性樹脂は、多孔質フッ素樹脂(PTFE)のクリープ現象を抑える作用を有するため、摺動部材の摺動面が平滑になって摺動相手部材との接触面積が増大するのを防ぐことができる。なお多孔質フッ素樹脂膜は少しずつ摩耗して、摩耗片が摺動部材の表面を覆い、これが移着膜となって摺動抵抗を減少させる働きを有している。
熱硬化性樹脂の硬化後のガラス転移温度は150℃以上(好ましくは200℃以上)であることが望ましい。熱転写による画像定着装置の作動温度が非常に高温であるため、硬化させた状態でのガラス転移温度が150℃未満である場合、熱圧力下でクリープ現象を起こし、摺動抵抗が増大してしまうためである。また、後述するように多孔質フッ素樹脂膜にエンボス加工を施している場合、ガラス転移温度が150℃未満では、エンボス形状を維持するのが困難となり、摺動相手部材との接触面積の増加により摺動抵抗がさらに増大してしまうからである。
熱硬化性樹脂としては、例えばフェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂やこれらの樹脂の混合物を使用することが可能である。中でも耐熱性と剛性の観点からフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、これらの樹脂の混合物を用いることが好ましい。
(3)潤滑剤
潤滑剤には、オイルやグリースが包含されるが、潤滑性の点からオイルを用いるのが好ましい。オイルとしては、二硫化モリブデン等の固形分を含まないものが望ましく、鉱油系、合成油系、シリコーン系オイル、フッ素系オイル、植物油系等を使用できる。シリコーン系オイルを用いる場合には、アミノ変性シリコーンオイル、ジメチルシリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、ヒンダードアミンオイル等の変性シリコーンオイルが摺動性、耐久性に優れ好ましい。この場合のシリコーンオイルにおいて、その粘度(常温)は、50cps以上(より好ましくは100cps以上、さらに好ましくは300cps以上)、3000cps以下(より好ましくは1000cps以下、さらに好ましくは500cps以下)であることが望ましい。粘度が50cps未満では、シリコーンオイルの蒸発が大きくなり、粘度が3000cpsを超えると摺動抵抗が増大し、潤滑剤を用いる効果が得られないからである。
以上説明したように、本発明の摺動部材は、多孔質フッ素樹脂膜、熱硬化性樹脂、潤滑剤を基本的構成とするものであるが、さらに以下の特徴を付加することにより優れた特性を有する摺動部材を構成することができる。
多孔質フッ素樹脂膜にエンボス加工を施せば、摺動相手部材と摺動部材との接触面積を減らせるため、摺動抵抗を低減することができる。エンボス形状は特に限定されるものではなく、エンボス加工により形成される凸部(凹部)は、半球状、錘状、矩形状、サインカーブ状など、様々な形態をとることができる。
単位面積当たりの凸部分の個数は200個/平方インチ以上、1000個/平方インチ以下とすることが好ましい。200個/平方インチ未満であると摺動面の接触面積が増え、摺動抵抗が増加するからである。より好ましくは250個/平方インチ以上、さらに好ましくは300個/平方インチ以上とする。一方、1000個/平方インチ以下としたのは、1000個/平方インチを超えるとエンボス密度が大きくなりすぎて、実使用時に多孔質フッ素樹脂膜自体から発生する削りカスなどが摺動部材にトラップされて、摺動抵抗が不安定になるからである。より好ましくは900個/平方インチ以下、さらに好ましくは800個/平方インチ以下とする。
2.摺動部材の製造方法
本発明の摺動部材の製造方法は、(1)多孔質フッ素樹脂膜を作製する工程と、(2)多孔質フッ素樹脂膜の一部の孔に熱硬化性樹脂を含浸し、熱硬化性樹脂を硬化させる工程と、(3)多孔質フッ素樹脂膜に更に潤滑剤を含浸する工程とを有するものである。
(1)多孔質フッ素樹脂膜の作製工程
多孔質フッ素樹脂膜の作製には、従来公知の方法が用いられる(例えば、特公昭51−18991号公報、特公昭56−45773号公報、特公昭56−17216号公報、特公昭53−55378号公報、特公昭55−55379号公報、特開昭59−109534号公報、特開昭61−207446号公報、特開平07−102413号公報等が参考になる)。上述の通り、PTFEのファインパウダーを成形助剤と混合して得られるペーストを成形し、該成形体から成形助剤を除去した後、延伸し、必要により焼成することにより多孔質フッ素樹脂膜が得られる。
(2)熱硬化性樹脂の含浸・硬化工程
次に、得られた多孔質フッ素樹脂膜の一部の孔に熱硬化性樹脂を含浸させ、この熱硬化性樹脂を硬化させる。多孔質フッ素樹脂膜の孔の形状は様々であり孤立して閉じた孔もあれば連続的に形成されているものも存在するため、本発明における「孔」は、多孔質フッ素樹脂膜の内部の空隙を意味する。したがって、本発明において「一部の孔に熱硬化性樹脂を含浸」とは、多孔質フッ素樹脂膜に熱硬化性樹脂を完全に含浸させるのではなく、空隙の一部は残しておくことを意味するものである。すなわち、後述する潤滑剤が含浸されるべき空隙を残しておくためである。
多孔質フッ素樹脂膜と熱硬化性樹脂の接着性を向上させるため、熱硬化性樹脂の含浸に先立って多孔質フッ素樹脂膜に表面処理を施すことが有効である。表面処理の例としては、コロナ放電処理、プラズマ処理などの乾式表面処理、液体アンモニア処理、界面活性剤を用いたパッディング処理などが実施可能である。中でも界面活性剤を用いたパッディング処理は、多孔質フッ素樹脂膜の内部まで容易に表面処理できるので好適である。
熱硬化性樹脂を多孔質フッ素樹脂膜の孔に含浸させるためには、熱硬化性樹脂を溶剤に溶解希釈する、或いは加熱して液状(加熱融液)にする等の処理をすることができるが、加熱融液は、一般的には粘度が高いために取り扱いが困難であるので、溶剤で希釈する方法が適している。
溶剤に溶解希釈した熱硬化性樹脂を多孔質フッ素樹脂膜の孔に含浸させるにはディッピングやコーティング等の方法を採用できる。前述した多孔質フッ素樹脂膜の表面処理をしておくと、含浸操作はより容易で確実なものとなる。
多孔質フッ素樹脂膜の孔の一部を残して熱硬化性樹脂を含浸処理する手段としては、例えば、溶剤で希釈した熱硬化性樹脂の濃度の調整を行う方法がある。溶剤の揮発により多孔質フッ素樹脂膜の孔の一部が残るためである。
なお、多孔質フッ素樹脂膜の表面に熱硬化性樹脂の溶液が残る程度(コーティングされる程度)に多めに含浸させておくと、溶液を乾燥させる際に溶剤が揮発しつつも表面の熱硬化性樹脂が多孔質フッ素樹脂膜の孔に入り込み、熱硬化性樹脂をフルに充填させることができる。充填される熱硬化性樹脂の量が多孔質フッ素樹脂膜の表面にコーティングさせる熱硬化性樹脂溶液の量で決まることを利用すれば、コーティング量を少なめに調整すれば、多孔質フッ素樹脂膜の孔の一部を残して熱硬化性樹脂を含浸処理することができる。また、残される孔の量は、乾燥方法の制御によっても調節することができる。
もし多孔質フッ素樹脂膜の孔が全て熱硬化性樹脂で満たされると、熱硬化させた際に表面に艶が出たり、熱硬化性樹脂の一部が玉状になるので、熱硬化性樹脂の含浸が過剰となったことを外観上判断することができる。熱硬化性樹脂の含浸量が過剰であると、摺動部材の表面に多孔質フッ素樹脂膜が露出していないので、摺動抵抗が高くなり、かつ潤滑オイルを保持する能力に乏しいので摩耗しやすくなる。
一方、熱硬化性樹脂の含浸量が少なすぎる場合には、溶剤を揮発除去させる途中の半硬化(Bステージ)の状態で白い斑模様が発現するので、外観上容易に判断できる。熱硬化性樹脂の含浸量が少な過ぎる場合、含浸不足の部分に潤滑オイルが過剰に吸着されるため、熱転写による画像定着装置の実作動環境下では吸着された潤滑オイルが放出され、印刷物を汚損する。また、熱硬化性樹脂による多孔質フッ素樹脂膜の補強が不十分であるため、多孔質フッ素樹脂膜がクリープ現象で変形し、摺動抵抗が増加してしまう。
好ましくは、多孔質フッ素樹脂膜内の溶剤を一部揮発除去させてBステージの状態にした後、多孔質フッ素樹脂膜の周囲を固定して、多孔質フッ素樹脂膜の材料、形状、厚さに応じて熱処理条件(温度・スピード)の調整を行うことにより熱収縮を防止できる。
(3)潤滑剤の含浸工程
熱処理を終え、適性量の熱硬化性樹脂が含浸された多孔質フッ素樹脂膜は適切な形状にカットして、多孔質フッ素樹脂膜の残りの孔に潤滑オイルやグリース等の潤滑剤を含浸させたうえで、摺動部材として実用に供することができる。なお、多孔質フッ素樹脂膜をカットする工程と、オイルを含浸させる工程とは、作用性やオイルのコストを考慮して適宜順番を入れ替えることができる。
以上説明したように、本発明の摺動部材の製造方法は、多孔質フッ素樹脂膜の作製工程、熱硬化性樹脂の含浸・硬化工程、潤滑剤の含浸工程を基本構成とするものであるが、さらに以下の構成を付加することにより優れた特徴を有する摺動部材の製造方法を提供することができる。
摺動部材の摺動抵抗をさらに低減するためには、上述のように、摺動部材にエンボス加工を施すことが好ましい。エンボス加工の好ましい工程は、熱硬化性樹脂を完全硬化させず、半硬化(Bステージ)の状態で摺動部材に凹凸を付ける。エンボス加工は、室温程度から熱硬化性樹脂の硬化温度の範囲で実施できる。硬化した状態でエンボス加工を施しても、熱硬化性樹脂が破壊されるのでエンボス形状が付与されにくい。
具体的には、エンボス加工は、表面に所定のエンボス形状(凹凸形状)を形有した平板、ロール、ベルト等の金型に適切な温度および圧力下にBステージ状態の摺動部材を押し付けて該金型の表面形状を写し取るものである。簡易的には、熱平板プレス機を用いて、ゴム状弾性クッションと金属ワイヤーメッシュの間に多孔質フッ素樹脂膜を挟んで熱プレス処理することにより、多孔質フッ素樹脂膜の表面にエンボス形状を付与することができる。生産性の観点からは、オス/メスの2本のエンボスローラー、或いはエンボスベルトを使用して連続加工することが好ましい。
プレス温度は、多孔質フッ素樹脂膜の融点以下の温度、好ましくは融点より20℃以上(より好ましくは30℃以上、さらに好ましくは40℃以上)低い温度とすることが望ましい。融点近辺、或いはそれ以上の温度で熱プレス処理を行うと、穴空きなど、多孔質フッ素樹脂膜にダメージを与える可能性が高くなるためである。
エンボス加工した摺動部材は、熱硬化性樹脂をさらに硬化させるため、常温または加熱環境下に置く。この際、好ましくは多孔質フッ素樹脂膜の周囲を固定して、多孔質フッ素樹脂膜の材料、形状、厚さに応じて熱処理条件(温度・スピード)の調整を行うことにより熱収縮を防止できる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
(実施例1)
ダイキン工業株式会社製のPTFEファインパウダー(商品名:ポリフロンF104)を用いてペースト押し出し、ロール圧延、潤滑剤乾燥、延伸、焼成の各工程を経て通常の方法で2軸延伸の多孔質PTFEフィルム(以下、単に「フィルム」と記載する場合もある)を製造した。これを300×500mmのサイズにカットした。
別途、ノニオン系のフッ素系界面活性剤(商品名:F−480SF、DIC株式会社製)をメチルエチルケトンに溶解し、3%濃度とした溶液を調製し、これをステンレス製バットに注ぎ入れて表面処理用の浴として準備した。
上記多孔質PTFEフィルムを表面処理用の浴中に3秒間浸漬した後、引き上げて弛みの無いようにステンレス製のフレームに固定して150℃の乾燥器に10分間入れて溶剤分を乾燥除去した。
次に、ナフタレン型エポキシ樹脂(商品名:HP−4032、DIC株式会社製)200gと粉末ジシアンジアミド(商品名:DICY7、ジャパンエポキシレジン株式会社製)10g、2−エチル−4−メチルイミダゾール2g、及び、メチルエチルケトン(和光純薬工業株式会社製)200gをステンレス製容器に入れ、ミキサーで30分間混合分散させることによりエポキシ樹脂溶液を調製した。これをステンレス製バットに移した。
上記フッ素系界面活性剤で表面処理した多孔質PTFEフィルムの全体を端から順番に上記エポキシ樹脂溶液中にゆっくりと浸漬した。多孔質PTFEフィルムに白い斑点が見えなくなるのを確認してからフィルムの両面にドクターナイフを押し付けながら、端から順にゆっくりと引き上げた。次いでこれを弛みの無いようにステンレス製のフレームに固定して120℃の乾燥器に10分間入れることにより含浸されたエポキシ樹脂をBステージ化した。得られたフィルムの外観は艶の無い表面で、かつ白い斑点も見られなかったため、エポキシ樹脂の含浸量に過不足がないことが確認される。
Bステージ化されたエポキシ樹脂を含浸したフィルムを半分の大きさに切断して、その一方をステンレス製のフレームに固定し、180℃の乾燥器に3時間入れてCステージ化(完全硬化)させた。
次いでフィルムをステンレス製のフレームに固定したままフィルムの片面にシリコーンオイル(商品名:KF−96、信越化学工業株式会社製)を刷毛で塗り150℃の乾燥器に10分間入れてシリコーンオイルを吸収させた。その後、余分のシリコーンオイルをペーパータオルで拭って本発明の摺動部材のサンプル1を得た。
(実施例2)
実施例1においてBステージ化されたエポキシ樹脂が含浸されたフィルムの残り半分を、シリコーン樹脂で離型処理した0.23mmφ×30メッシュのステンレスメッシュ金網に合わせて、上下に75μm厚さのポリイミドフィルムを配して150℃・10分間、熱板プレスで多孔質PTFEフィルムに2kg/cmの圧力をかけ、それによりステンレスメッシュ金網の凹凸模様を写し取った半硬化のフィルムとした。その後、フィルムをステンレス製のフレームに固定して乾燥器にて180℃・3時間の熱処理を施してCステージ化(完全硬化)させた。
次いでフィルムをステンレス製のフレームに固定したまま、シリコーンオイル(商品名:KF−96、信越化学工業株式会社製)をフィルムの片面に刷毛で塗り、150℃の乾燥器に10分間入れてシリコーンオイルを吸収させた。その後、余分のシリコーンオイルをペーパータオルで表面を拭って、表面に凹凸のエンボス処理された本発明の摺動部材のサンプル2を得た。
(実施例3)
実施例3では、PTFEファインパウダー(商品名:ポリフロンF104、ダイキン工業株式会社製)を使用してペースト押し出し、ロール圧延、潤滑剤乾燥、延伸、焼成の各工程を通常の方法により1軸延伸の多孔質PTFEフィルムを作製した。これを300×500mmのサイズにカットした。
別途、ノニオン系のフッ素系界面活性剤(商品名:F−480SF、DIC株式会社製)をメチルエチルケトンに溶解し3%濃度とした溶液を調製し、これをステンレス製バットに注ぎ入れて表面処理用の浴として準備した。
上記多孔質PTFEフィルムを表面処理用の浴中に3秒間浸漬した後、引き上げて弛みの無いようにステンレス製のフレームに固定して150℃の乾燥器に10分間入れて溶剤分を乾燥除去した。
また、特殊熱硬化性フェノール樹脂(商品名:ニッカトールN−210、日本合成化工株式会社製)100gとメチルエチルケトン50gをステンレス製容器に入れ、ミキサーで10分間混合分散させることによりフェノール樹脂溶液を調製した。これをステンレス製バットに移した。
上記フッ素系界面活性剤で表面処理した1軸延伸の多孔質PTFEフィルムの全体を端から順番に上記フェノール樹脂溶液中にゆっくりと浸漬した。多孔質PTFEフィルムに白い斑点が見えなくなるのを確認してからフィルムの両面にドクターナイフを押し付けながら、端から順にゆっくりと引き上げた。次いでこれを弛みの無いようにステンレス製のフレームに固定して120℃の乾燥器に10分間入れることにより含浸されたフェノール樹脂をBステージ化した。得られたフィルムの外観は艶の無い表面で、かつ白い斑点も見られなかったため、フェノール樹脂の含浸量に過不足がないことが確認された。
Bステージ化されたフェノール樹脂を含浸したフィルムを半分の大きさに切断して、その一方をステンレス製のフレームに固定して230℃の乾燥器に2時間入れてCステージ化(完全硬化)させた。
次いでフィルムをステンレス製のフレームに固定したまま、フィルムの片面にシリコーンオイル(商品名:KF−96、信越化学工業株式会社製)を刷毛で塗り、150℃の乾燥器に10分間入れてシリコーンオイルを吸収させた。その後、余分のシリコーンオイルをペーパータオルで表面を拭って本発明の摺動部材のサンプル3を得た。
(実施例4)
実施例3においてBステージ化されたフェノール樹脂が含浸されたフィルムの残り半分を使用し、シリコーン樹脂で離型処理した0.23mmφ×30メッシュのステンレスメッシュ金網に合わせて、上下に75μm厚さのポリイミドフィルムを配して150℃で10分間、熱板プレスで多孔質PTFEフィルムに2kg/cmの圧力をかけ、それによりステンレスメッシュ金網の凹凸模様を写し取った半硬化のフィルムとした。その後、フィルムをステンレス製のフレームに固定して乾燥器にて230℃・2時間の熱処理を施してCステージ化(完全硬化)させた。
次いでフィルムをステンレス製のフレームに固定したまま、シリコーンオイル(商品名:KF−96、信越化学工業株式会社製)をフィルムの片面に刷毛で塗り、150℃の乾燥器に10分間入れてシリコーンオイルを吸収させた。その後、余分のシリコーンオイルをペーパータオルで表面を拭って、表面に凹凸のエンボス処理された本発明の摺動部材のサンプル4を得た。
(比較例1)
実施例1と同様に2軸延伸多孔質PTFEフィルムを製造した。熱硬化性樹脂の含浸は行わずに、多孔質PTFEフィルムをステンレス製のフレームに固定して、フィルムの片面にシリコーンオイル(商品名:KF−96、信越化学工業株式会社製)を刷毛で塗り、乾燥器により150℃で10分間加熱処理した。さらにフィルムにシリコーンオイルを吸収させた。その後、余分のシリコーンオイルをペーパータオルで表面を拭って摺動部材のサンプル5を得た。
(比較例2)
実施例3と同様に1軸延伸の多孔質PTFEフィルムを製造した。熱硬化性樹脂の含浸は行わずに、シリコーン樹脂で離型処理した0.23mmφ×30メッシュのステンレスメッシュ金網に合わせて、上下に75μm厚さのポリイミドフィルムを配して150℃で10分間、熱板プレスで多孔質PTFEフィルムに2kg/cmの圧力をかけ、それによりステンレスメッシュ金網の凹凸模様を写し取ったフィルムとした。
次いでフィルムをステンレス製のフレームに固定したまま、フィルムの片面にシリコーンオイル(商品名:KF−96、信越化学工業株式会社製)を刷毛で塗り、150℃の乾燥器に10分間入れてシリコーンオイルを吸収させた。その後、余分のシリコーンオイルをペーパータオルで表面を拭って摺動部材のサンプル6を得た。
(比較例3)
実施例1と同様にサンプルを作製したが、多孔質PTFEフィルムの孔にシリコーンオイルを含浸させていない。これをサンプル7とした。
(比較例4)
実施例4と同様にサンプルを作製したが、多孔質PTFEフィルムの孔にシリコーンオイルを含浸させていない。これをサンプル8とした。
(比較例5)
市販のガラスクロステフロン(商品名:FGF−500−4、中興化成株式会社製)を、そのままサンプル9とした。
上記実施例1〜4、比較例1〜5で作製した摺動部材のサンプル1〜9の特性を下記1〜7の条件により測定した。その結果を表1に示す。
1.厚さ
ダイヤルシックネスゲージで測定した(テクロック社製「SM−1201」を用い、本体バネ荷重以外の荷重をかけない状態で測定した)平均厚みによる。
2.空孔率
上記式(1)に基づいてサンプルの空孔率を算出した。
3.PTFE材料/熱硬化性樹脂の質量比率
多孔質PTFEフィルムの空孔に熱硬化性樹脂を含浸させたサンプル(サンプル1〜4、7、8)について、未含浸部分と含浸部分の単位面積当たりの質量比較により、含浸部分のPTFE材料と含浸樹脂の質量比を計算した。
4.ガラス転移点温度(Tg)
JIS K 7197に準拠した線膨張係数(TMA引張モード)により、サンプル1〜8のガラス転移点温度を測定した。
5.含油量
摺動部材のサンプル1〜9をシリコーンオイル(商品名:KF96、信越化学工業株式会社製)中に浸漬し、150℃に1時間保った後取り出し、表面をペーパータオルでよく拭った。この状態でサンプルの質量を測定したとき、元の質量との差分が新たに含浸されたシリコーンオイルの質量である。その量に基づき、サンプル1〜9に元々含まれていたシリコーンオイルの質量比を含油量(質量%)として計算した。
6.静止摩擦係数
表面性測定器(商品名:HEIDON−14D、新東工業株式会社製)を用いて静止摩擦係数を測定した。この試験では、ポリイミドフィルム(商品名:ユーピレックス、宇部興産株式会社製)に上記シリコーンオイルKF96を薄くコーティングしたものを摺動相手材として使用した。なお、後掲の表1から分かるように、比較例であるサンプル7〜9の静止摩擦係数は、本発明の実施例であるサンプル1〜4と比べてさほど悪い値ではない。これは、サンプル7〜9ではオイルが使用されていないため、オイルによる付着(貼り付き)効果がないためである。サンプル2及び4は、エンボス加工を施しているためにオイルによる付着効果が軽減され、サンプル1及び3に比べて静止摩擦係数が低くなっている。
7.実機評価
カラープリンター(商品名:DocuPrint−C1100、富士ゼロックス株式会社製)の画像定着装置及び紙の反転装置のユニット部分にあるフリーベルトロールセットを取り出し、オイル塗布用のフェルトを取り除き、メチルエチルケトンを染み込ませたペーパータオルでベルトの内部に配置されている部材およびベルトの内面をよく拭ってシリコーンオイル分を除去した。付属の摺動フィルムと同一形状にカットしたサンプル1〜9を替わりに取り付け上記プリンターに組み込んだ。本プリンターを用い、A4サイズの紙を20万枚処理した後、摺動部材とベルトの内面の状態を観察した。
Figure 2011013629
表1から分かるように、熱硬化性樹脂を含浸していないサンプル5及びサンプル6では、エンドレスベルトの回転がスムーズではなかったので試験を中止した。また、潤滑剤(シリコーンオイル)を含浸していないサンプル7及びサンプル8では、通紙が5万枚を過ぎたところでエンドレスベルト付近から異音が発生したため、プリンターを分解して点検すると、摩耗粉が多量に見られた。また、ガラスクロステフロンのサンプル9では、エンドレスベルト内面には艶があるが、筋状の傷が付いていた。また、白い摩耗粉が多量に発生しており、摺動部材の表面(接触部)は平滑になっていた。
これに対して、多孔質フッ素樹脂膜の孔に熱硬化性樹脂および潤滑剤を保持した摺動部材であるサンプル1〜4では、エンドレスベルト内面には艶があり滑らかであった。また、多少の摩耗粉が観察されたものの、摺動部材の表面は艶があり滑らかであった。エンボス加工を施したサンプル2及びサンプル4では、凹部で多少の摩耗粉が観察されたが印刷画像は最後まで優れていた。
以上説明したように、本発明の摺動部材は、ガラスクロスを含んでいないので摺動相手部材であるエンドレスベルトを傷つけることがない。また、潤滑オイルを摺動部材自身に含有しているため、オイル塗布のための付加的な部品を必要としないため、画像定着装置の小型化に寄与する。また、摺動面に潤滑オイルの液膜を形成するので多孔質フッ素樹脂膜の摩耗量が少なく耐久性に優れている。
また、微細構造を有する多孔質PTFE膜のマトリックス中に 熱硬化性樹脂が微細に分布しているため、熱硬化性樹脂が低ガラス転移温度の多孔質PTFE膜のクリープ現象を抑え、多孔質PTFE膜が熱硬化性樹脂の周りをカバーするので摺動相手部材に対する摩擦抵抗が低く抑えられる。

Claims (8)

  1. 多孔質フッ素樹脂膜を含む摺動部材であって、前記多孔質フッ素樹脂膜の孔には熱硬化性樹脂および潤滑剤が保持されている摺動部材。
  2. 前記多孔質フッ素樹脂膜にエンボス加工が施されている請求項1に記載の摺動部材。
  3. 前記エンボス加工により前記多孔質フッ素樹脂膜に形成された凸部の個数密度が200個/平方インチ以上である請求項2に記載の摺動部材。
  4. 前記多孔質フッ素樹脂膜がポリテトラフルオロエチレン膜である請求項1〜3のいずれかに記載の摺動部材。
  5. 前記多孔質フッ素樹脂膜の空孔率が40〜95%である請求項1〜4のいずれかに記載の摺動部材。
  6. 前記潤滑剤がオイルである請求項1〜5のいずれかに記載の摺動部材。
  7. 摺動部材の製造方法であって、多孔質フッ素樹脂膜を作製する工程と、前記多孔質フッ素樹脂膜の一部の孔に熱硬化性樹脂を含浸する工程と、前記熱硬化性樹脂を硬化させる工程と、前記多孔質フッ素樹脂膜に更に潤滑剤を含浸する工程とを有する摺動部材の製造方法。
  8. 前記熱硬化性樹脂を硬化する工程が、熱硬化性樹脂を半硬化させるものであり、その後に、前記多孔質フッ素樹脂膜にエンボス加工を施す工程と、前記熱硬化性樹脂を更に硬化させる工程とを有する請求項7に記載の摺動部材の製造方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2017047724A1 (ja) * 2015-09-17 2017-03-23 Ntn株式会社 定着装置用摺動部材の製造方法
JP2017058676A (ja) * 2015-09-17 2017-03-23 Ntn株式会社 定着装置用摺動部材の製造方法

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