JP2003082531A - 複合繊維、中空繊維および該複合繊維を用いた中空繊維の製造方法 - Google Patents

複合繊維、中空繊維および該複合繊維を用いた中空繊維の製造方法

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JP2003082531A
JP2003082531A JP2001268274A JP2001268274A JP2003082531A JP 2003082531 A JP2003082531 A JP 2003082531A JP 2001268274 A JP2001268274 A JP 2001268274A JP 2001268274 A JP2001268274 A JP 2001268274A JP 2003082531 A JP2003082531 A JP 2003082531A
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polyester
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Hitoshi Nakatsuka
均 中塚
Kazuhiko Tanaka
和彦 田中
Masao Kawamoto
正夫 河本
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Kuraray Co Ltd
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Kuraray Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 軽量性、強度、耐薬品性を損なうことなく、
優れた染色性、軽量性、ドライ感、ふくらみ感等に優れ
た多孔中空部を有する中空繊維と該繊維を含む繊維構造
物を提供する。 【解決手段】 ポリエステルブロック(IIa)と付加重
合体ブロック(IIb)とからなるポリエステル系ブロッ
ク共重合体(II)を含む重合体組成物(I)を海成分と
し、水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(II
I)を島成分とする海島型複合繊維を含む繊維構造物を
水で処理し、該複合繊維から水溶性熱可塑性ポリビニル
アルコール系重合体を少なくとも一部溶解除去する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、複合繊維及びそれ
を含む繊維構造物ならびに、該複合繊維から得られる中
空繊維及びそれを含む繊維構造物に関する。詳細には軽
量性、染色性に優れ、かつドライ感、ふくらみ感のある
良好な風合を有する中空繊維、特に、多孔状の中空繊維
とその繊維構造物に関する。
【0002】
【従来の技術】ポリオレフィン系繊維は優れた軽量性、
強度、耐薬品性からロープ類、結束糸、フィルター類、
ワイパー類、おむつ類、生理用品類等に広く用いられて
いる。また近年の環境問題からリサイクル性の高い材料
として、あるいは燃焼熱の低い材料として需要が高まっ
てきている。しかしながら、ポリオレフィン系繊維は軽
量で優れた耐薬品性を持つ反面、十分な染色性が得られ
ず、衣料用途としては殆ど用いられていないのが現状で
ある。また紙、不織布などの非衣料用素材とした場合
も、染色性が不十分であるために微妙な色合いが求めら
れる用途分野では使用されていなかった。単に色の着い
たポリオレフィン繊維であれば、顔料を混合した原着糸
として得ることができるが、微妙な色合いを出すことは
困難であり、染料を用いた染色による方法が色の多様性
の点から好ましく、ポリオレフィン系繊維に染色性を付
与する提案が古くから数多く行われている。例えば染色
性を有するポリエステルやポリアミドをポリオレフィン
に混合あるいは複合して繊維化する方法である。この場
合、確かに染色性は向上するが、ポリオレフィンとポリ
エステルやポリアミドとの接着性が低いため界面での剥
離や染色ムラを生じ、実用化されるに至っていない。さ
らにはエチレン/アクリル酸アルキルのコポリマーをポ
リプロピレンにブレンドあるいはグラフトする方法も提
案されている(特表平10−501309号公報)が、
その染色性は十分に満足できるほどではなかった。
【0003】また、一方でポリエステルやポリアミド等
の合成繊維は、染色性を含めたその優れた物理的および
化学的特性によって、衣料用のみならず産業用にも広く
使用されており、工業的に重要な価値を有している。し
かしながら、これらの合成繊維は、その単糸繊度に単一
な分布を有し、また単糸繊度が大きいことやその横断面
形状が単純であることにより、絹、綿、麻等の天然繊維
に比較して風合や光沢が単調であり、さらにポリプロピ
レンのように比重が1.0をきる繊維素材に比較して重
いものにな等ざるを得ないという課題を残していた。ま
た上記の合成繊維は冷たくて、ぬめり感のある触感を有
し品位の低いものであった。そこで合成繊維の上記のよ
うな欠点を改良するために、合成繊維の横断面形状を異
形化したり、繊維を中空化することが広く行われてい
る。通常、異形紡糸ノズルまたは中空紡糸ノズルを用い
て製造される異形断面繊維や中空繊維は、紡出後、固化
するまでの間に溶融状態にある樹脂の表面張力や紡糸時
の引き取り張力等によって異形断面が崩れたり、中空部
が潰れやすいという課題があり、特に多孔中空形状を発
現させようとすると、紡出直後は繊維に多孔状の中空構
造が付与されても、多孔状中空部が潰れて消滅したり、
該中空部の割合が減少し易く、かかる手法で多孔状の中
空部を有する繊維を得ることは実質的に不可能であっ
た。一方、特開平7−316977号公報には、アルカ
リ易分解性ポリマーを島成分とし、海成分としてはポリ
アミドやエチレンビニルアルコール系共重合体等の吸水
率が3%以上の耐アルカリ性ポリマーを用いて複合繊維
とした後、該易分解性ポリマーを熱アルカリ水溶液処理
することにより分解除去して多孔中空繊維とする技術が
提案されている。しかしながら、これらの問題点として
は、アルカリ分解生成物の排水処理の繁雑さが有り、環
境面からも大きな課題を残している。しかも、かかる手
法では、アルカリ水溶液が複合繊維の海成分を浸透して
島成分を抽出することが必要であるため、海成分として
は吸水性を有する重合体を使用しなければならないとい
う重合体の種類の制限があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、上記
の従来技術の課題を解決し、軽量性、染色性、ドライ
感、ふくらみ感等に優れたオレフィン系重合体を含有す
る中空繊維と該繊維を含む繊維構造物を提供することで
ある。また、かかる中空繊維を排水処理や環境面での問
題を起こすことなく製造するための複合繊維を提供する
ことであり、さらに、かかる複合繊維を用いた中空繊維
の製造方法を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は、ポ
リエステルブロック(IIa)と付加重合体ブロック(II
b)とからなるポリエステル系共重合体(II)を5〜9
5重量%含む重合体組成物(I)を海成分とし、水溶性
熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(III)を島成分
とする複合繊維であり、また、ポリエステルブロック
(IIa)と付加重合体ブロック(IIb)とからなるポリ
エステル系共重合体(II)を5〜95重量%含む重合体
組成物(I)からなる中空繊維であり、さらに、上記複
合繊維を水で処理し、該複合繊維から水溶性熱可塑性ポ
リビニルアルコール系重合体(III)を溶解除去するこ
とを特徴とする中空繊維の製造方法である。さらにま
た、本発明は、上記の複合繊維を含む繊維構造物を水で
処理し、該複合繊維から水溶性熱可塑性ポリビニルアル
コール系重合体(III)を溶解除去することを特徴とす
る繊維構造物の処理方法であり、かかる処理により得ら
れる中空繊維を含む繊維構造物である。
【0006】なお、本発明でいう繊維構造物とは、本発
明の複合繊維又は中空繊維の単独で構成されたマルチフ
ィラメント糸、紡績糸、織編物、不織布、紙、人工皮
革、詰物材はもちろんのこと、天然繊維、半合成繊維、
他の合成繊維との混織糸や混紡糸、合撚糸、交絡糸や捲
縮糸等の加工糸、交織物、交編物、繊維積層体、並びに
これらから構成される衣類、リビング資材、産業資材、
メディカル用品等の各種最終製品をも包含するものであ
る。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明の複合繊維においては、海
成分がポリエステルブロック(IIa)と付加重合体ブロ
ック(IIb)とからなるポリエステル系共重合体(II)
を5〜95重量%含む重合体(I)で構成され、島成分
が水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(II
I)で構成されていることが重要であり、かかる条件を
満たしていれば、複合繊維の海島の形態は特に制限され
るものではない。島数は複合繊維の断面において1個以
上存在していればよいが、高い中空率の中空繊維や中空
部の数が例えば、10個以上、さらには30個以上、特に50
個以上という多孔中空の中空繊維を得る場合に本発明の
本領が発揮される。島数の上限値は特に制限されない
が、島数が多くなるにつれて繊維化が困難になること
や、繊維物性が低下する傾向にあるので、ある程度の繊
維強度が要求される用途には使用しにくく、従って、用
途に応じて好ましくは1500個以下、より好ましく
は、1000個以下、さらに好ましくは600個以下と
することが望まれる。また、個々の島成分の形状は何ら
限定されず、円形でも楕円形でもその他の異形形状でも
よい。さらに島成分は、繊維軸方向に連続していても不
連続に形成されていてもよい。
【0008】本発明の複合繊維の代表例をその横断面図
により示すと、例えば、図1〜図6のようなものを挙げ
ることができる。図1の複合繊維は、繊維断面中央の水
溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(III)か
らなる大きな島成分2がポリエステル系共重合体(II)
を5〜95重量%含む重合体組成物(I)からなる海成
分1に包囲された形態のものであり、図2の複合繊維
は、水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(II
I)からなる小さな島成分2が、ポリエステル系共重合
体(II)を5〜95重量%含む重合体組成物(I)から
なる海成分1に包囲された形態のものであり、第3図
は、第2図においてさらに小さな多数の島成分2の形態
が円形でない不定形な形状となっているものである。ま
た図4〜図6は、繊維断面形状が三角断面になるもので
ある。
【0009】本発明において、島成分と海成分の複合比
率は特に限定されないが、最終的に得られる中空繊維の
中空部の数と中空率をどの程度に設定するかに応じて適
宜複合比率を変更することができる。しかしながら、島
成分の比率が小さすぎると、中空繊維としての軽量化等
の効果が十分に発揮されず、一方、中空部の比率が大き
すぎると実用性のある繊維物性を持つ中空繊維とするこ
とが困難となるので、好ましくは島:海=2:98〜6
5:35、さらには5:95〜60:40とすることが
好ましい。
【0010】また、複合繊維の断面形態は特に制限され
ず、図1〜図3に示した円形断面の他に例えば、偏平
形、楕円形、三角形(図4,5,6)〜八角形等の角形、
T字形、3〜8葉形等の多葉形等の任意の形状とするこ
とができる。更に、本発明の複合繊維には、蛍光増白
剤、安定剤、難燃剤、着色剤等の任意の添加剤を必要に
応じて含有することができる。
【0011】本発明で使用される水溶性熱可塑性ポリビ
ニルアルコール系重合体(III)(以下、単にPVAと略
称することもある)とは、ポリビニルアルコールのホモ
ポリマーは勿論のこと、例えば、共重合、末端変性、お
よび後反応により官能基を導入した変性ポリビニルアル
コールも包含するものである。
【0012】本発明に用いられるPVAの粘度平均重合
度(以下、単に重合度と略記する)は200〜500が
好ましく、230〜470がより好ましく、250〜4
50が特に好ましい。重合度が200未満の場合には紡
糸時に十分な曳糸性が得られず、繊維化しにくい場合が
ある。重合度が500を越えると溶融粘度が高すぎて、
紡糸ノズルから重合体を吐出することができない場合が
ある。また重合度500以下のいわゆる低重合度のPV
Aを用いることにより、水溶液で複合繊維を溶解すると
きに溶解速度が速くなるばかりでなく複合繊維が溶解す
る時の収縮を小さくすることができる。
【0013】PVAの重合度(P)は、JIS−K67
26に準じて測定される。すなわち、PVAを再鹸化
し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度
[η](dl/g)から次式により求められるものである。 P=([η]×10/8.29)(1/0.62) 重合度が上記範囲にある時、本発明の目的がより好適に
達せられる。
【0014】本発明に用いられるPVAは、鹸化度が9
0〜99.99モル%であることが好ましい。より好ま
しくは93〜99.98モル%、さらに94〜99.9
7モル%が好ましく、96〜99.96モル%が特に好
ましい。鹸化度が90モル%未満の場合には、PVAの
熱安定性が悪く熱分解やゲル化によって満足な溶融紡糸
ができない場合があり、また後述する共重合モノマーの
種類によってPVAの水溶性が低下する場合がある。一
方、鹸化度が99.99モル%よりも大きいPVAは溶
解性が低下しやすく又安定に製造することができず、安
定した繊維化が困難となる。
【0015】さらに本発明で使用される好ましいPVA
は、ビニルアルコールユニットに対するトライアッド表
示による水酸基3連鎖の中心水酸基のモル分率が70〜
99.9モル%で、融点が160℃〜230℃で、かつ
PVA100質量部に対してアルカリ金属イオンがナト
リウムイオン換算で0.0003〜1質量部含有されて
いることが好ましい。
【0016】本発明において、ポリビニルアルコールの
トライアッド表示による水酸基3連鎖の中心水酸基と
は、PVAのd6−DMSO溶液での500MHz プ
ロトンNMR(JEOL GX−500)装置、65℃
測定による水酸基プロトンのトライアッドのタクティシ
ティを反映するピーク(I)を意味する。ピーク(I)
はPVAの水酸基のトライアッド表示のアイソタクティ
シティ連鎖(4.54ppm)、ヘテロタクティシティ
連鎖(4.36ppm)およびシンジオタクティシティ
連鎖(4.13ppm)の和で表されて、全てのビニル
アルコールユニットにおける水酸基のピーク(II)はケ
ミカルシフト4.05ppm〜4.70ppmの領域に
現れることから、本発明のビニルアルコールユニットに
対するトライアッド表示による水酸基3連鎖の中心水酸
基のモル分率は、100×(I)/(II)で表されるも
のである。
【0017】PVAのトライアッド表示による水酸基3
連鎖の中心水酸基の含有量が70モル%未満である場合
には、重合体の結晶性が低下し、繊維強度が低くなると
同時に、溶融紡糸時に繊維が膠着して巻取り後に巻き出
しできない場合がある。また本発明で目的とする水溶性
の熱可塑性繊維が得られない場合がある。PVAのトラ
イアッド表示による水酸基3連鎖の中心水酸基の含有量
が99.9モル%より大の場合には、重合体の融点が高
いため溶融紡糸温度を高くする必要があり、その結果、
溶融紡糸時の重合体の熱安定性が悪く、分解、ゲル化、
重合体着色が起こりやすい。
【0018】また、本発明のPVAがエチレン変性のP
VAである場合、下記式を満足することで本発明の効果
は更に高くなるものである。 -1.5×Et+100≧モル分率≧-Et+85 ここで、モル分率(単位:モル%)はビニルアルコールユ
ニットに対するトライアッド表示による水酸基3連鎖の
中心水酸基のモル分率を表し、Etはビニルアルコール系
重合体が含有するエチレン含量(単位:モル%)を表す。
【0019】従って、本発明に用いられるPVAのトラ
イアッド表示による水酸基3連鎖の中心水酸基の含有量
は72〜99モル%がより好ましく、74〜97モル%
がさらに好ましく、76〜95モル%が特に好ましい。
【0020】本発明に於いて用いられるポリビニルアル
コールの水酸基3連鎖の中心水酸基の量を制御すること
で、PVAの水溶性、吸湿性など水に関わる諸物性、強
度、伸度、弾性率など繊維に関わる諸物性、融点、溶融
粘度など溶融紡糸性に関わる諸物性をコントロールでき
る。これはトライアッド表示による水酸基3連鎖の中心
水酸基は結晶性に富み、PVAの特長を発現させるため
と思われる。
【0021】本発明に用いられるPVAの融点(Tm)
は160〜230℃であることが好ましく、170〜2
27℃がより好ましく、175〜224℃がさらに好ま
しく、180〜220℃が特に好ましい。融点が160
℃未満の場合にはPVAの結晶性が低下し、複合繊維の
繊維強度が低くなると同時に、該複合繊維の熱安定性が
悪くなり、繊維化できない場合がある。一方、融点が2
30℃を越えると溶融紡糸温度が高くなり、紡糸温度と
PVAの分解温度が近づくためにPVAと他の熱可塑性
重合体とからなる複合繊維を安定に製造することができ
ない場合がある。なお、PVAの融点は、DSCを用い
て窒素中、昇温速度10℃/分で250℃まで昇温後、
室温まで冷却し、再度昇温速度10℃/250℃まで昇
温した場合のPVAの融点を示す吸熱ピークのピークト
ップの温度を意味する。
【0022】本発明に用いられるPVAは、ビニルエス
テル系重合体のビニルエステル単位を鹸化することによ
り得られる。ビニルエステル単位を形成するためのビニ
ル化合物単量体としては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プ
ロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニ
ル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸
ビニル、ピバリン酸ビニルおよびバーサティック酸ビニ
ル等が挙げられ、これらの中でもPVAを得る点からは
酢酸ビニルが好ましい。
【0023】また本発明で使用されるPVAは、ホモポ
リマーであっても共重合単位を導入した変成PVAであ
ってもよいが、溶融紡糸性、水溶性、繊維物性の観点か
らは、共重合単位を導入した変性ポリビニルアルコール
を用いることが好ましい。共重合単量体の種類として
は、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソ
ブテン、1−ヘキセン等のα−オレフィン類、アクリル
酸およびその塩、アクリル酸メチル、アクリル酸エチ
ル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル
等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸およびその
塩、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタク
リル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル等のメ
タクリル酸エステル類、アクリルアミド、N−メチルア
クリルアミド、N−エチルアクリルアミド等のアクリル
アミド誘導体、メタクリルアミド、N−メチルメタクリ
ルアミド、N−エチルメタクリルアミド等のメタクリル
アミド誘導体、メチルビニルエーテル、エチルビニルエ
ーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビ
ニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル等のビニルエ
ーテル類、エチレングリコールビニルエーテル、1,3
−プロパンジオールビニルエーテル、1,4−ブタンジ
オールビニルエーテル等のヒドロキシ基含有のビニルエ
ーテル類、アリルアセテート、プロピルアリルエーテ
ル、ブチルアリルエーテル、ヘキシルアリルエーテル等
のアリルエーテル類、オキシアルキレン基を有する単量
体、ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル類、酢
酸イソプロペニル、3−ブテン−1−オール、4−ペン
テン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、7−オ
クテン−1−オール、9−デセン−1−オール、3−メ
チル−3−ブテン−1−オール等のヒドロキシ基含有の
α−オレフィン類、フマール酸、マレイン酸、イタコン
酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水トリメリット
酸または無水イタコン酸等に由来するカルボキシル基を
有する単量体;エチレンスルホン酸、アリルスルホン
酸、メタアリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−
メチルプロパンスルホン酸等に由来するスルホン酸基を
有する単量体;ビニロキシエチルトリメチルアンモニウ
ムクロライド、ビニロキシブチルトリメチルアンモニウ
ムクロライド、ビニロキシエチルジメチルアミン、ビニ
ロキシメチルジエチルアミン、N−アクリルアミドメチ
ルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルア
ミドエチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−ア
クリルアミドジメチルアミン、アリルトリメチルアンモ
ニウムクロライド、メタアリルトリメチルアンモニウム
クロライド、ジメチルアリルアミン、アリルエチルアミ
ン等に由来するカチオン基を有する単量体が挙げられ
る。これらの単量体の含有量は、通常20モル%以下で
ある。
【0024】これらの単量体の中でも、入手のしやすさ
などから、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブ
テン、1−ヘキセン等のα−オレフィン類、メチルビニ
ルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニ
ルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビ
ニルエーテル等のビニルエーテル類、エチレングリコー
ルビニルエーテル、1,3−プロパンジオールビニルエ
ーテル、1,4−ブタンジオールビニルエーテル等のヒ
ドロキシ基含有のビニルエーテル類、アリルアセテー
ト、プロピルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、
ヘキシルアリルエーテル等のアリルエーテル類、オキシ
アルキレン基を有する単量体、3−ブテン−1−オー
ル、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オ
ール、7−オクテン−1−オール、9−デセン−1−オ
ール、3−メチル−3−ブテン−1−オール等のヒドロ
キシ基含有のα−オレフィン類に由来する単量体が好ま
しい。
【0025】特に、共重合性、溶融紡糸性および繊維の
水溶性の観点からエチレン、プロピレン、1−ブテン、
イソブテンの炭素数4以下のα−オレフィン類、メチル
ビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピル
ビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチ
ルビニルエーテル等のビニルエーテル類がより好まし
い。炭素数4以下のα−オレフィン類および/またはビ
ニルエーテル類に由来する単位は、PVA中に0.1〜
20モル%存在していることが好ましく、より好ましく
は1〜20モル%、さらに4〜15モル%が好ましく、
6〜13モル%が特に好ましい。さらに、α−オレフィ
ンがエチレンである場合において、繊維物性が高くなる
ことから、特にエチレン単位が4〜15モル%、より好
ましくは6〜13モル%導入された変性PVAを使用す
ることが好ましい。
【0026】本発明で使用されるPVAは、塊状重合
法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などの公知の
方法が挙げられる。その中でも、無溶媒あるいはアルコ
ールなどの溶媒中で重合する塊状重合法や溶液重合法が
通常採用される。溶液重合時に溶媒として使用されるア
ルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコー
ル、プロピルアルコールなどの低級アルコールが挙げら
れる。共重合に使用される開始剤としては、α,α'-ア
ゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,
4−ジメチル−バレロニトリル)、過酸化ベンゾイル、
nープロピルパーオキシカーボネートなどのアゾ系開始
剤または過酸化物系開始剤などの公知の開始剤が挙げら
れる。重合温度については特に制限はないが、0℃〜1
50℃の範囲が適当である。
【0027】本発明で使用されるPVAにおけるアルカ
リ金属イオンの含有割合は、PVA100質量部に対し
てナトリウムイオン換算で0.0003〜1質量部であ
ることが好ましく、0.0003〜0.8質量部がより
好ましく、0.0005〜0.6質量部がさらに好まし
く、0.0005〜0.5質量部が特に好ましい。アル
カリ金属イオンの含有割合が0.0003質量部未満の
場合には、十分な水溶性を示さず未溶解物が残る場合が
ある。またアルカリ金属イオンの含有量が1質量部より
多い場合には溶融紡糸時の分解及びゲル化が著しく繊維
化することができない場合がある。アルカリ金属イオン
としては、カリウムイオン、ナトリウムイオン等があげ
られる。
【0028】本発明において、特定量のアルカリ金属イ
オンをPVA中に含有させる方法は特に制限されず、P
VAを重合した後にアルカリ金属イオン含有の化合物を
添加する方法、ビニルエステルの重合体を溶媒中におい
て鹸化するに際し、鹸化触媒としてアルカリイオンを含
有するアルカリ性物質を使用することによりPVA中に
アルカリ金属イオンを配合し、鹸化して得られたPVA
を洗浄液で洗浄することにより、PVA中に含まれるア
ルカリ金属イオン含有量を制御する方法などが挙げられ
るが後者のほうが好ましい。なお、アルカリ金属イオン
の含有量は、原子吸光法で求めることができる。
【0029】鹸化触媒として使用するアルカリ性物質と
しては、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムがあげ
られる。鹸化触媒に使用するアルカリ性物質のモル比
は、酢酸ビニル単位に対して0.004〜0.5が好ま
しく、0.005〜0.05が特に好ましい。鹸化触媒
は、鹸化反応の初期に一括添加しても良いし、鹸化反応
の途中で追加添加しても良い。鹸化反応の溶媒として
は、メタノール、酢酸メチル、ジメチルスルホキシド、
ジメチルホルムアミドなどがあげられる。これらの溶媒
の中でもメタノールが好ましく、含水率を0.001〜
1質量%に制御したメタノールがより好ましく、含水率
を0.003〜0.9質量%に制御したメタノールがよ
り好ましく、含水率を0.005〜0.8質量%に制御
したメタノールが特に好ましい。洗浄液としては、メタ
ノール、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、ヘキサ
ン、水などがあげられ、これらの中でもメタノール、酢
酸メチル、水の単独もしくは混合液がより好ましい。洗
浄液の量としてはアルカリ金属イオンの含有割合を満足
するように設定されるが、通常、PVA100質量部に
対して、300〜10000質量部が好ましく、500
〜5000質量部がより好ましい。洗浄温度としては、
5〜80℃が好ましく、20〜70℃がより好ましい。
洗浄時間としては20分間〜10時間が好ましく、1時
間〜6時間がより好ましい。
【0030】また、本発明においては、上述のようなP
VAを用いたとしても、PVAは一般的に汎用性の熱可
塑性樹脂に比較して高温での溶融流動性に劣るため、必
要に応じて、ポリエチレングリコール、プロピレングリ
コールおよびそのオリゴマー、ブチレングリコール及び
そのオリゴマー、ポリグリセリン誘導体やグリセリン等
にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアル
キレンオキサイドが付加したグリセリン誘導体、ソルビ
トールにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等
のアルキレンオキサイドが付加した誘導体、ペンタエリ
スリトール等の多価アルコール及びその誘導体、PO/
EOランダム共重合物等の可塑剤を1〜30質量%、好
ましくは2〜20質量%の割合でPVAに配合すること
曳糸性向上の点から好ましい。そして、繊維化工程で熱
分解が起こりにくく、良好な可塑化性、紡糸性を得るた
めには、ソルビトールのアルキレンオキサイド付加物、
ポリグリセリンアルキルモノカルボン酸エステル、PO
/EOランダム共重合物などの可塑剤を1〜30質量
%、好ましくは2〜20質量%配合することが好まし
く、特にソルビトールのエチレンオキサイドを1〜30
モル付加した化合物が好ましい。
【0031】本発明の複合繊維の海成分を構成する重合
体組成物(I)において、上記のポリエステル系共重合
体(II)と配合される残余の熱可塑性重合体成分の代表
例としては、例えば、オレフィン単独重合体[以下、オ
レフィン単独重合体()ということがある];エチレ
ンと他のα−オレフィンとからなりエチレンを主成分と
する共重合体[以下、エチレン/α−オレフィン共重合
体()ということがある];プロピレンと他のα−オ
レフィンとからなりプロピレンを主成分とする共重合体
[以下、プロピレン/α−オレフィン共重合体()と
いうことがある];水添共役ジエン共重合体[以下、水
添共役ジエン共重合体()ということがある]などを
挙げることができる。
【0032】上記したオレフィン単独重合体()とし
ては、具体的には低密度、中密度、高密度ポリエチレ
ン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリヘキセン−
1、ポリ−3−メチル−ブテン−1、ポリ−4−メチル
−ペンテン−1などのオレフィンの単独重合体などを挙
げることができ、そのうちでも低密度、中密度、高密度
ポリエチレンおよび/またはポリプロピレンが、繊維特
性(強度、弾性率)などの点から好ましく用いられる。
【0033】また、エチレン/α−オレフィン共重合体
()としては、エチレンから主としてなり、それと炭
素数3〜20のα−オレフィン(例えばプロピレン、1
−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテ
ン、1−オクテン、1−デセン、3−メチル−1−ブテ
ン、4−メチル−1−ペンテン、6−メチル−1−ヘプ
テン、イソオクテン、イソオクタジエン、デカジエンな
ど)の1種または2種以上との共重合体を挙げることが
できる。そのうちでも、エチレンと、プロピレン、1−
ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、
1−オクテン、1−デセンなどの炭素数1〜10のオレ
フィンの1種または2種以上との共重合体が好ましく用
いられる。エチレン/α−オレフィン共重合体()に
おけるエチレン:α−オレフィンの質量比は、繊維特性
の点から、50:50〜98:2の範囲であるのが好ま
しく、60:40〜90:10であるのがより好まし
い。また、エチレン/α−オレフィン共重合体()
は、エチレン単位およびα−オレフィン単位と共にジエ
ン単位を有していてもよく、そのような共重合体として
は、エチレン/プロピレン/ジエン共重合体(EPD
M)などを挙げることができる。
【0034】また、プロピレン/α−オレフィン共重合
体()としては、プロピレン/エチレンブロック共重
合体やその他の、プロピレンと、エチレンおよび/また
は上記で挙げた炭素数4〜20、特に4〜10のα−オ
レフィンとの共重合体を挙げることができる。
【0035】また、水添共役ジエン共重合体()とし
ては、代表的には、 〔i〕スチレンなどの芳香族ビニル化合物から主として
なる重合体ブロックおよび水素添加された1,2−結合
量が30モル%未満のポリブタジエンブロックから選ば
れる少なくとも1種の重合体ブロックと、水素添加され
たポリイソプレンブロック、水素添加された1,2−結
合量が30〜80モル%のポリブタジエンブロックおよ
び水素添加されたイソプレン/ブタジエン共重合体ブロ
ックから選ばれる少なくとも1種の重合体ブロックから
なるブロック共重合体;および 〔ii〕芳香族ビニル化合物から主としてなる重合体ブロ
ックと水素添加されたポリイソブチレンブロックからな
るブロック共重合体; を挙げることができ、これらのブロック共重合体を用い
てもよい。
【0036】そして、上記〔i〕のブロック共重合体の
具体例としては、ポリスチレン/ポリイソプレン/ポリ
スチレンからなるブロック共重合体の水添物;ポリスチ
レン/イソプレン・ブタジエン共重合体/ポリスチレン
からなるブロック共重合体の水添物;ポリスチレン/ポ
リブタジエン/ポリスチレンからなるブロック共重合体
の水添物を挙げることができる。
【0037】本発明においては、上記したオレフィン系
重合体〜の1種類のみを使用しても、または2種以
上を併用してもよい。また、本発明の目的の妨げになら
ない範囲で、上記したオレフィン系重合体と共に他の合
成樹脂やゴムを少量使用してもよい。
【0038】また、本発明においては、オレフィン系重
合体〜として、質量平均分子量(Mw)と数平均分
子量(Mn)との比(Mw/Mn)が4以下、より好ま
しくは3.5以下のものを用いると、繊維特性の点で好
ましい。なお、本発明でいう質量平均分子量(Mw)と
数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、分子量
が既知のポリスチレンを標準物質とするゲルパーミエー
ションクロマトグラフィー(GPC)[GPC用装置:
WATERS社製「150C」、カラム:「Shode
x AT−807/S」と「Shodex AT−80
MIS」(昭和電工社製)、カラム温度:140℃、試
料濃度:0.1質量%、溶媒:o−ジクロロベンゼン]
により求めたものである。
【0039】本発明において好ましく用いられる質量平
均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw
/Mn)が4以下であるオレフィン系重合体の製造法は
何ら制限されず、該比(Mw/Mn)が4以下の市販の
オレフィン系重合体をそのまま用いても、または重合に
より製造して用いてもよい。何ら限定されるものではな
いが、比(Mw/Mn)が4以下であるオレフィン系重
合体は、例えば、重合触媒としてメタロセン触媒(カミ
ンスキー触媒またはシングルサイト触媒と称されること
もある)を使用して、溶液重合法、塊状重合法、気相重
合法などによって、通常0〜250℃の温度で、常圧〜
1000気圧(100MPa)の圧力下に単量体を重合
させることにより得ることができる。メタロセン触媒と
しては、例えば、4価の遷移金属を含有するメタロセン
化合物とメチルアルミノキサンおよび/または非配位性
のホウ素系化合物との併用物が用いられる。その使用割
合は、一般にメタロセン化合物1モルに対して、メチル
アルミノキサンおよび/または非配位性のホウ素系化合
物2〜1,000,000モル、好ましくは50〜5,
000モルである。
【0040】上記のメタロセン化合物としては、例え
ば、シクロペンタジエニルチタニウムトリス(ジメチル
アミド)、メチルシクロペンタジエニルチタニウムトリ
ス(ジメチルアミド)、ビス(シクロペンタジエニル)
チタニウムジクロリド、ジメチルシリルテトラメチルシ
クロペンタジエニル−t−ブチルアミドジルコニウムジ
クロリド、ジメチルシリルテトラメチルシクロペンタジ
エニル−t−ブチルアミドハフニウムジクロリド、ジメ
チルシリルテトラメチルシクロペンタジエニル−p−n
−ブチルフェニルアミドジルコニウムクロリド、メチル
フェニルシリルテトラメチルシクロペンタジエニル−t
−ブチルアミドハフニウムジクロリド、(t−ブチルア
ミド)(テトラメチルシクロペンタジエニル)−1,2
−エタンジイルチタンジクロリド、インデニルチタニウ
ムトリス(ジメチルアミド)、インデニルチタニウムト
リス(ジエチルアミド)、インデニルチタニウムビス
(ジ−n−ブチルアミド)(ジ−n−プロピルアミド)
などを使用することができる。
【0041】本発明で用いるオレフィン系重合体のメル
トインデックス(以下これを「MI」ということがあ
る)は、得られる繊維の特性、繊維化工程性を良好なも
のにする点から、0.1〜50g/10分の範囲内であ
るのが好ましく、0.1〜30g/10分の範囲内であ
るのがより好ましく、0.1〜15g/10分の範囲内
であるのがさらに好ましい。なお、本発明でいうオレフ
ィン系重合体のMIは、JIS K7210に準じて、
190℃、2.16kg荷重の条件下に測定したときの
値をいう。
【0042】さらに、本発明で用いるオレフィン系重合
体の比重は、0.86〜0.92の範囲内であるのが好
ましく、0.86〜0.90の範囲内であるのがより好
ましい。
【0043】次に、本発明で用いるポリエステル系共重
合体(II)は、ポリエステル系樹脂から誘導されるポリ
エステルブロック(IIa)とポリエステル系樹脂と反応
し得る官能基を有する付加重合体から誘導される付加重
合体ブロック(IIb)とからなっている共重合体であ
り、ポリエステル系共重合体(II)では、上記のポリエ
ステルブロック(IIa)と付加重合体ブロック(IIb)
とは、エステル結合、アミド結合、エーテル結合などの
化学結合によって結合されている。ポリエステル系共重
合体(II)は、ポリエステルブロック(IIa)と付加重
合体ブロック(IIb)とがブロック状に結合しているブ
ロック共重合体であっても、ポリエステルブロック(II
a)と付加重合体ブロック(IIb)とがグラフト状に結
合したグラフト共重合体であっても、またはブロック状
の結合形態とグラフト状の結合形態の両方が存在する共
重合体であってもよい。
【0044】ポリエステル系共重合体(II)が、ポリエ
ステルブロック(IIa)と付加重合体ブロック(IIb)
とがブロック状に結合しているブロック共重合体である
場合は、例えば、1個のポリエステルブロック(IIa)
と1個の付加重合体ブロック(IIb)が結合しているジ
ブロック共重合体、1個のポリエステルブロック(II
a)を挟んでその両側にそれぞれ1個の付加重合体ブロ
ック(IIb)が結合しているトリブロック共重合体、1
個の付加重合体ブロック(IIb)を挟んでその両側にそ
れぞれ1個のポリエステルブロック(IIa)が結合して
いるトリブロック共重合体、ポリエステルブロック(II
a)と付加重合体ブロック(IIb)が交互に合計で4個
またはそれ以上の個数で結合しているポリブロック共重
合体などを挙げることができる。
【0045】また、ポリエステル系共重合体(II)が、
ポリエステルブロック(IIa)と付加重合体ブロック
(IIb)とがグラフト状に結合したグラフト共重合体で
ある場合は、例えば、ポリエステルブロック(IIa)を
主鎖としてそれに付加重合体ブロック(IIb)が側鎖と
して1個または2個以上結合しているグラフト共重合
体、付加重合体ブロック(IIb)を主鎖としてそれにポ
リエステルブロック(IIa)が側鎖として1個または2
個以上結合しているグラフト共重合体などを挙げること
ができる。
【0046】そして上記したうちでも、繊維化工程性が
より良好なものとなる点から、ポリエステル系共重合体
(II)が、1個のポリエステルブロック(IIa)と1個
の付加重合体ブロック(IIb)がブロック状に結合して
いるジブロック共重合体であるのが好ましい。
【0047】ポリエステル系共重合体(II)の一部を構
成しているポリエステルブロック(IIa)は、種々のポ
リエステルから形成することができ、例えばポリエチレ
ンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、
ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレ
フタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレン
ナフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレ
ンテレフタレート、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、p
−ヒドロキシ安息香酸系ポリエステル、ポリアリレート
などから形成されるブロックを挙げることができる。
【0048】上記したポリエステルのうちでも、ポリエ
チレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレー
トのうちの少なくとも一方を使用するのが好ましく、特
にポリブチレンテレフタレート(PBT)を用いるのが
好ましい。
【0049】またポリエステルは、全構造単位に基づい
て20モル%以下であれば必要に応じて基本構造を構成
するジカルボン酸単位以外の他のジカルボン酸単位、お
よび/または基本構造を構成するジオール単位以外の他
のジオール単位を有していてもよい。ポリエステルが含
み得る他のジカルボン酸単位の例としては、イソフタル
酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,
5−ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフ
ェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4’
−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−スルホイソフ
タル酸ナトリウムなどの芳香族ジカルボン酸;アジピン
酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸など
の脂肪族ジカルボン酸;1,3−シクロヘキサンジカル
ボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂
環式ジカルボン酸;およびそれらのエステル形成性誘導
体(メチルエステル、エチルエステルなどの低級アルキ
ルエステル等)などから誘導されるジカルボン酸単位を
挙げることができる。ポリエステルは、上記したジカル
ボン酸単位の1種のみを有していても、または2種以上
を有していてもよい。
【0050】また、ポリエステルが含み得る他のジオー
ル単位の例としては、エチレングリコール、プロピレン
グリコール、ネオペンチルグリコール、2−メチルプロ
パンジオール、1,5−ペンタンジオールなどの炭素数
2〜10の脂肪族ジオール;シクロヘキサンジメタノー
ル、シクロヘキサンジオールなどの脂環式ジオール;ジ
エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリ−
1,3−プロピレングリコール、ポリテトラメチレング
リコールなどの分子量6000以下のポリアルキレング
リコールなどから誘導されるジオール単位を挙げること
ができる。ポリエステルは、上記のジオール単位の1種
のみを有していても、または2種以上を有していてもよ
い。
【0051】さらに、ポリエステルは、全構造単位に基
づいて1モル%以下であれば、例えばグリセリン、トリ
メチロールプロパン、ペンタエリスリトール、トリメリ
ット酸、ピロメリット酸などの3官能以上のモノマーか
ら誘導される構造単位を有していてもよい。
【0052】また、かかるポリエステルからなるブロッ
ク(IIa)は、本発明のポリオレフィン系繊維の品質、
染色性の点から、数平均分子量が200〜150000
であるのが好ましく、200〜50000であるのがよ
り好ましい。
【0053】また、ポリエステル系共重合体(II)の別
の一部を構成する付加重合体ブロック(IIb)は、付加
重合体からなるブロックであればいずれでもよく、その
重合形態などは特に制限されない。付加重合体ブロック
(IIb)は、単一の付加重合性モノマーからなる付加重
合体、複数の付加重合性モノマーからなるランダム共重
合体、複数の重合性モノマーからなるブロック共重合体
などのいずれの付加重合体から形成されていてもよい。
そのうちでも、ポリエステル系共重合体(II)における
付加重合体ブロック(IIb)は、芳香族ビニル化合物単
位から主としてなる重合体ブロック(a1)[以下これ
を「重合体ブロック(a1)」ということがある]およ
び水素添加された1,2−結合量が30%未満のポリブ
タジエンブロック(a2)[以下これを「水添ポリブタ
ジエンブロック(a2)」ということがある]のうちの
少なくとも1種からなる重合体ブロック(A)と、水素
添加されたポリイソプレンブロック(b1)[以下これ
を「水添ポリイソプレンブロック(b1)」ということ
がある]、水素添加された1,2−結合量が30〜80
%のポリブタジエンブロック(b2)[以下これを「水
添ポリブタジエンブロック(b2)」ということがあ
る]および水素添加されたイソプレン/ブタジエン共重
合体ブロック(b3)[以下これを「水添イソプレン/
ブタジエンブロック(b3)」ということがある]から
なる群から選ばれる少なくとも1種からなる重合体ブロ
ック(B)とからなる付加重合系ブロック共重合体(II
b1);および、芳香族ビニル化合物単位から主として
なる重合体ブロック(C)[以下これを「芳香族ビニル重
合体ブロック(C)」ということがある]とポリイソブ
チレンブロック(D)とからなる付加重合系ブロック共
重合体(IIb2);のうちの少なくとも1種から誘導さ
れる付加重合体ブロックであることが好ましい。
【0054】そして、重合体ブロック(A)と重合体ブ
ロック(B)とからなる付加重合体ブロック(IIb1)
のブロック構造の例としては、下記の一般式(1)〜
(4)で表されるものを挙げることができる。
【0055】 (A−B)e (1) (B−A)f (2) A−(B−A’)g (3) B’−(A−B)h (4) [上記式中、AおよびA'はそれぞれ重合体ブロック
(A)を示し、BおよびB'はそれぞれ重合体ブロック
(B)を示し、e、f、gおよびhはそれぞれ独立して
1以上の整数を示す。]
【0056】上記の一般式(1)〜(4)で表される付
加重合体ブロック(IIb1)における反復数e、f、g
およびhはそれぞれ任意に決めることができるが、1〜
5の範囲内の整数であるのが好ましい。
【0057】そして、付加重合体ブロック(IIb1)
は、上記した一般式(1)〜(4)で表される付加重合
体ブロック(IIb1)のうちでも、上記の一般式(1)
においてe=1である式:A−Bで表される付加重合系
ジブロックまたは上記の一般式(3)においてg=1であ
る式:A−B−A’で表される付加重合系トリブロック
であるのがより好ましい。
【0058】また、付加重合体ブロック(IIb)を構成
し得る、芳香族ビニル重合体ブロック(C)とポリイソ
ブチレンブロック(D)とからなる付加重合体ブロック
(IIb2)のブロック構造の例としては、下記の一般式
(5)または(6)で表されるものを挙げることができ
る。
【0059】C−(D−C’)j (5) D’−(C−D)k (6) [上記式中、CおよびC’はそれぞれ芳香族ビニル重合
体ブロック(C)を示し、DおよびD’はそれぞれポリ
イソブチレンブロック(D)を示し、jおよびkはそれ
ぞれ独立して1以上の整数を示す]。
【0060】上記の一般式(5)または(6)で表され
る付加重合体ブロック(IIb2)におけるjおよびkは
それぞれ任意に決めることができるが、1〜5の範囲内
の整数であるのが好ましい。そして、上記した一般式
(5)または(6)で表される付加重合体ブロック(II
b2)のうちでも、上記の一般式(5)においてj=1
である式:C−D−C’で表される付加重合系トリブロ
ックまたは上記の一般式(6)においてk=1である式:
D’−C−Dで表される付加重合系トリブロックである
のがより好ましい。
【0061】付加重合体ブロック(IIb1)を構成する
ことのある重合体ブロック(a1)、および付加重合体
ブロック(IIb2)を構成することのある芳香族ビニル
重合体ブロック(C)においては、それらの重合体ブロ
ックにおける芳香族ビニル単位を形成する芳香族ビニル
化合物として、スチレン、α−メチルスチレン、o−メ
チルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレ
ン、2,4−ジメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビ
ニルアントラセンなどを挙げることができ、そのうちで
も、ポリオレフィン系繊維の繊維化工程性がより良好に
なる点からスチレン、α−メチルスチレンが好ましく、
スチレンが特に好ましい。重合体ブロック(a1)およ
び芳香族ビニル重合体ブロック(C)は、1種の芳香族
ビニル化合物単位から構成されていても、または2種以
上の芳香族ビニル化合物単位から構成されていてもよ
い。
【0062】また、付加重合体ブロック(IIb2)にお
ける重合体ブロック(A)の構成ブロックとなり得る水
添ポリブタジエンブロック(a2)は、そのポリブタジ
エンブロックにおける1,2−結合量が30%未満であ
るのが好ましく、25%以下であるのがより好ましい。
それと共に、水添ポリブタジエンブロック(a2)は不
飽和結合の一部または全部、好ましくは90%以上が水
添加によって飽和結合にされているポリブタジエンブロ
ックであるのが好ましい。また、水添ポリブタジエンブ
ロック(a2)を構成するポリブタジエンでは、水素添
加前では、好ましくはその30モル%未満、より好まし
くは25モル%以下がビニルエチレン基[−CH(CH
=CH2)−CH2−;1,2−結合のブタジエン単位]
であり、残りが2−ブテン−1,4−ジイル基(−CH
2−CH=CH−CH2−;1,4−結合のブタジエン単
位)である。
【0063】そして、付加重合体ブロック(IIb1)に
おける重合体ブロック(B)の構成ブロックとなり得る
水添ポリイソプレンブロック(b1)は、イソプレンに
由来するモノマー単位から主としてなるポリイソプレン
の不飽和結合の一部または全部が水素添加されて飽和結
合になっている重合体ブロックであるのが好ましい。水
添ポリイソプレンブロック(b1)では、その水素添加
前には、イソプレンに由来する単位は、2−メチル−2
−ブテン−1,4−ジイル基[−CH2−C(CH3)=
CH−CH2−;1,4−結合のイソプレン単位]、イ
ソプロペニルエチレン基[−CH{−C(CH3)=C
2}−CH2−;3,4−結合のイソプレン単位]およ
び1−メチル−1−ビニルエチレン基[−C(CH3
(CH=CH2)−CH2−;1,2−結合のイソプレン
単位]からなる群より選ばれる少なくとも1種からなっ
ているのが好ましい。
【0064】付加重合体ブロック(IIb1)における重
合体ブロック(B)の構成ブロックとなり得る水添ポリ
ブタジエンブロック(b2)は、そのポリブタジエンブ
ロックにおける1,2−結合量が好ましくは30〜80
%、より好ましくは35〜60%であり、しかも不飽和
結合の一部または全部が水素添加によって飽和結合にな
っているポリブタジエンブロックであるのが好ましい。
水添ポリブタジエンブロック(b2)を構成するポリブ
タジエンでは、水素添加前には好ましくはその30〜8
0モル%、より好ましくは35〜60モル%がビニルエ
チレン基[−CH(CH=CH2)−CH2−;1,2−
結合のブタジエン単位]であり、好ましくは70〜20
モル%、より好ましくは65〜40モル%が2−ブテン
−1,4−ジイル基(−CH2−CH=CH−CH2−;
1,4−結合ブタジエン単位)である。
【0065】また、付加重合体ブロック(IIb1)にお
ける重合体ブロック(B)の構成ブロックとなり得る水
添イソプレン/ブタジエン共重合体ブロック(b3)
は、イソプレンに由来する単位およびブタジエンに由来
する単位から主としてなっているイソプレン/ブタジエ
ン共重合体であって、且つその不飽和結合の一部または
全部が水素添加によって飽和結合になっている共重合体
ブロックである。水添イソプレン/ブタジエン共重合体
ブロック(b3)においては、その水素添加前には、イ
ソプレンに由来する単位は、2−メチル−2−ブテン−
1,4−ジイル基、イソプロペニルエチレン基および1
−メチル−1−ビニルエチレン基からなる群より選ばれ
る少なくとも1種の基であり、またブタジエンに由来す
る単位はビニルエチレン基および/または2−ブテン−
1,4−ジイル基であるのが好ましい。そして、水素添
加前におけるイソプレン/ブタジエン共重合体ブロック
におけるそれらの基の割合は特に制限されない。また、
水添イソプレン/ブタジエン共重合体ブロック(b3)
において、ブタジエンに由来する単位とイソプレンに由
来する単位とは、ランダム状、ブロック状、テーパーブ
ロック状のいずれの配置形態になっていてもよい。
【0066】そして、付加重合体ブロック(IIb1)の
構成ブロックとなり得る水添ポリブタジエンブロック
(a2)、水添ポリイソプレンブロック(b1)、水添ポ
リブタジエンブロック(b2)および水添イソプレン/
ブタジエン共重合体ブロック(b3)では、上記したよ
うに、その炭素−炭素二重結合の一部が水素添加されて
いても、または全部が完全に水素添加されていてもよい
が、付加重合体ブロック(IIb1)において、ブタジエ
ン単位および/またはイソプレン単位における炭素−炭
素間二重結合の50モル%以上、特に80モル%以上が
水素添加されていること(すなわち不飽和度が50モル
%以下、特に20モル%以下になっていること)が、ポ
リエステル系共重合体(II)の耐熱劣化性および耐候性
が良好となり、それを用いて得られるポリオレフィン系
繊維の繊維化工程性の悪化を防止することができる点で
好ましい。
【0067】また、付加重合体ブロック(IIb2)にお
けるポリイソブチレンブロック(D)は、イソブチレン
単位[−C(CH3)2−CH2−]から主としてなる重合
体ブロックである。
【0068】付加重合体ブロック(IIb1)における
{重合体ブロック(A)の合計含有量}:{重合体ブロ
ック(B)の合計含有量}、および付加重合体ブロック
(IIb2)における{芳香族ビニル重合体ブロック
(C)の合計含有量}:{ポリイソブチレンブロック
(D)の合計含有量}が、それぞれ1:9〜9:1(質
量比)の範囲であるのが、ポリオレフィン系繊維の繊維
化工程性を良好なものとする点から好ましく、それぞれ
が2:8〜7:3(質量比)であるのがより好ましい。
【0069】また、付加重合体ブロック(IIb1)にお
ける重合体ブロック(A)および付加重合体ブロック
(IIb2)における芳香族ビニル重合体ブロック(C)
は、それぞれその数平均分子量が1,000〜100,
000が好ましく、さらには2500〜50000の範
囲にあるのが好ましい。また、付加重合体ブロック(II
b1)における重合体ブロック(B)および付加重合体
ブロック(IIb2)におけるポリイソブチレンブロック
(D)の数平均分子量はそれぞれ1,000〜100,
000の範囲にあるのが好ましい。そして、付加重合体
ブロック(IIb1)および付加重合体ブロック(IIb2)
の数平均分子量は、それぞれ12500〜150000
の範囲にあるのが好ましい。そして、本発明のポリエス
テル系樹脂組成物では、1種類または2種類以上の付加
重合体ブロック(IIb1)を使用しても、また1種類ま
たは2種類以上の付加重合体ブロック(IIb2)を使用
してもよい。
【0070】そして、本発明の複合繊維で用いる、ポリ
エステルブロック(IIa)と付加重合体ブロック(II
b)とからなるポリエステル系共重合体(II)は、その
数平均分子量が12700〜300000の範囲である
のが好ましく、15000〜200000の範囲である
のがより好ましい。
【0071】本発明の複合繊維で用いるポリエステル系
共重合体(II)の製造法は特に制限されず、例えば、ポ
リエステル系樹脂、およびポリエステル系樹脂と反応し
得る官能基を分子中に有する付加重合体とを溶融条件下
で混練し、続いて固相重合し、その結果得られるポリエ
ステル系反応生成物からポリエステル系共重合体(II)
を抽出・回収することによって得ることができる。
【0072】その際に、ポリエステル系樹脂と付加重合
体との溶融混練は、単軸押出機、2軸押出機、ニーダ
ー、バンバリーミキサーなどの溶融混練装置を用いて行
うことができる。溶融混練の条件は、使用するポリエス
テル系樹脂や付加重合体の種類、装置の種類などに応じ
て適宜選択することができるが、通常、180〜300
℃の温度で3〜15分間程度行うとよい。また、溶融混
練後の固相重合は、ポリエステル系樹脂と付加重合体と
の溶融混練により得られた樹脂を固化し、粒状化した
後、それを適当な固相重合反応装置に移し、予備処理と
して120〜180℃の温度下で乾燥や結晶化などを行
い、ついで固相重合させることにより行うことができ
る。固相重合反応は、通常、樹脂の温度をポリエステル
系樹脂の融点よりも5〜60℃程度低い温度に保ちなが
ら、不活性気流下または真空中で行うとよい。固相重合
はバッチ方式または連続方式のいずれで行ってもよく、
固相重合反応装置における滞留時間や処理温度などを適
宜調節することによって、所望の重合度および反応率と
することができる。
【0073】上記において、固相重合により得られるポ
リエステル系反応生成物からのポリエステル系共重合体
(II)の抽出・回収は、例えば、ポリエステル系反応生
成物をヘキサフルオロイソプロパノール/クロロホルム
混合溶媒に溶解させ、その溶液をテトラヒドロフラン中
に注入して沈殿させ、沈殿物を回収してクロロホルムに
溶解させ、そのクロロホルム溶液から不溶物を濾過など
により除去した後、そのクロロホルム溶液を濃縮、乾固
してポリエステル系共重合体(II)を固形分として回収
する方法により行うことができる。
【0074】ポリエステル系共重合体(II)[ポリエス
テル系共重合体(II)を含む反応生成物]の製造に用い
る、ポリエステル系樹脂と反応し得る官能基を有する付
加重合体としては、上記した付加重合体ブロック(II
b)に官能基がついた構造を有する付加重合体が好まし
く用いられる。その場合の官能基としては、ポリエステ
ル系樹脂と反応し得る官能基であれば特に制限はなく、
例えば、水酸基、カルボキシル基、エステル基、アミド
基、アミノ基、エポキシ基、チオール基、チオエステル
基、2−オキサゾリン基などの環状イミノエーテル基、
無水コハク酸−2−イル基、無水コハク酸−2,3−ジ
イル基などの酸無水物構造を有する基などを挙げること
ができる。これらの官能基を有する付加重合体は、例え
ば、官能基を持たないモノマーと官能基を有するモノマ
ーとの共重合、活性末端を有する付加重合体への官能基
を有するモノマーの付加反応、官能基を有するモノマー
と付加重合体とのラジカル反応などにより製造すること
ができる。
【0075】ポリエステル系樹脂と反応し得る官能基を
有する付加重合体においては、その官能基は、付加重合
体の分子主鎖や分子側鎖の途中または分子末端のいずれ
に位置していてもよいが、ポリエステル系共重合体(I
I)の好ましいブロック形態である、1個のポリエステ
ルブロック(IIa)と1個の付加重合体ブロック(II
b)とが鎖状に結合したジブロック形態のポリエステル
系共重合体(II)を形成するためには、付加重合体の末
端に官能基を有しているのが好ましい。また、付加重合
体における官能基の含有量は、平均して1分子当たり
0.5個以上であることが好ましく、0.7個以上であ
るのがより好ましい。
【0076】本発明の繊維は上記のブロック共重合体
(II)を5〜95重量%含んでいなければならない。ブ
ロック共重合体の含有量が5重量%未満の場合には本発
明の特徴である軽量性と十分な染色性を同時に達成する
ことができない。また該ブロック共重合体が95重量%
を超えて含まれる場合には、曳糸性が低下し、実用性の
ある強度の繊維が得られにくい。
【0077】本発明の複合繊維は、前述のようなPVA
を島成分とし、ポリエステルブロック(IIa)と付加重
合体ブロック(IIb)とからなるポリエステル系共重合
体(II)を5〜95重量%含む重合体組成物(I)を海
成分とした断面形態を形成することができる紡糸技術で
あれば特に限定されず、熱溶融時に島成分のPVAと反
応、ゲル化しないポリマーの組み合わせの系において
は、例えば、混合紡糸による方法が可能であり、島成分
となるPVAと海成分となる重合体組成物(I)とを、
1つの押し出し機で溶融混練し、引き続き同一の紡糸ノ
ズルから吐出させて巻取り、繊維化することができる。
また複合紡糸による方法では、PVAと重合体組成物
(I)とをそれぞれ別の押し出し機で溶融混練し、引き
続き、PVAが島成分となり、ポリエステル系共重合体
(I)を5〜95重量%含む重合体組成物(I)が海成分と
なるようにして海島型複合紡糸ノズルから吐出させて巻
き取り、繊維化することができる。
【0078】繊維化条件は、重合体の組合せ、複合断面
形態に応じて設定する必要があるが、主に、以下のよう
な点に留意して繊維化条件を決めることが望ましい。 (1)一般的にPVAは高温時での溶融流動性に劣り、ま
た滞留部の存在で自己架橋し、ゲル化し易いポリマーで
あるので、極力ポリマーの押出しゾーン及びジェットパ
ック(複合紡糸部品の集合体)内部のポリマー流動部で滞
留部が生じにくくすることが重要である。 (2)紡糸口金温度は、複合繊維を構成する重合体のうち
高い融点を持つ重合体の融点をMpとするときMp〜Mp+80
℃が好ましく、せん断速度(γ)1,000〜25,000sec-1
ドラフトV10〜500で紡糸することが好ましい。 (3)複合する重合体の組み合わせから見た場合、紡糸時
おける口金温度とノズル通過時のせん断速度で測定した
ときの溶融粘度が近接した重合体を組合せて複合紡糸す
ることが紡糸安定性の面から好ましい。
【0079】本発明におけるPVAの融点Tmとは、示
差走査熱量計(DSC:例えばMettler社TA3000)で観
察される主吸熱ピークのピーク温度である。せん断速度
(γ)は、ノズル半径をr(cm)、単孔あたりの重合
体吐出量をQ(cm3/sec)とするときγ=4Q/πrで計
算される。またドラフトVは、引取速度をA(m/分)とす
るときV=5A・πr/3Qで計算される。
【0080】本発明の複合繊維を製造するに際して、紡
糸口金温度がPVAの融点Tmより低い温度では該PV
Aが溶融しないために紡糸できない。またTm+80℃を
越えるとPVAが熱分解あるいは自己架橋によるゲル化
が発生しやすくなるために紡糸性が低下する。また、せ
ん断速度は1,000sec-1よりも低いと断糸しやすく、25,0
00sec-1より高いとノズルの背圧が高くなり紡糸性が悪
くなる。ドラフトは10より低いと繊度むらが大きくなり
安定に紡糸しにくくなり、ドラフトが500より高くな
ると断糸しやすくなる。
【0081】紡糸ノズルから吐出された糸条は延伸せず
にそのまま高速で巻き取るか必要に応じて延伸される。
延伸は破断伸度(HDmax)×0.55〜0.9倍の延伸倍率でガラ
ス転移点(Tg)以上の温度で延伸される。延伸倍率がHD
max×0.55未満では十分な強度を有する複合繊維が安定
して得られず、HDmax×0.9を越えると断糸しやすくな
る。延伸は紡糸ノズルから吐出された後に一旦巻き取っ
てから延伸する場合と、延伸に引き続いて施される場合
があるが、本発明においてはいずれでもよい。延伸は通
常熱延伸され、熱風、熱板、熱ローラー、水浴等のいず
れを用いて行ってもよい。延伸工程において、延伸倍率
の絶対値が大きいほど、毛羽発生、断糸しやすくなるた
め高速紡糸〜低延伸倍率による繊維化条件あるいは公知
の高速紡糸・巻取りのみによる手法が好ましい。
【0082】延伸温度は、複合の組み合わせポリマーに
応じて適宜設定されるが、本発明に用いるポリビニルア
ルコールは結晶化速度が速いため未延伸糸の結晶化がか
なり進み、Tg前後では結晶部分の可塑変形が生じにく
い。ポリオレフィン重合体との複合においては熱ローラ
ー延伸などの接触加熱延伸をする場合でも比較的高い温
度(70〜100℃程度)を目安に延伸する。また、加
熱炉、加熱チューブなどの非接触タイプのヒーターを使
用して加熱延伸する場合は、さらに高温で150〜20
0℃程度の温度条件とすることが好ましい。
【0083】但し、本発明においては繊維化条件とし
て、紡糸口金温度がTm〜Tm+80℃で、せん断速度
(γ)1,000〜25,000sec−1、ドラフト
(V)10〜500で紡糸することが重要である。
【0084】また、本発明における複合繊維断面形状は
特に限定されず、紡糸ノズルの形状により真円状にも中
空にも異型断面にもできる。繊維化や製織化での工程通
過性の点から真円が好ましい。
【0085】本発明の複合繊維は、製造条件によって島
成分であるPVAの水溶解時の複合繊維の収縮挙動を制
御することが可能であり、PVA溶解時に該複合繊維が
収縮しないか又は収縮量を小さく抑えようとする場合に
は、該複合繊維に熱処理を施しておくことが望ましい。
この熱処理は、延伸を伴う繊維化工程においては、延伸
と同時に行ってもよいし、延伸と別個に行う熱処理であ
ってもよい。熱処理温度を高くすると島成分PVAを溶
解して得られる中空繊維の最大収縮率を低くすることが
可能であるが、逆に島成分PVAの水中溶解温度が高く
なる傾向にあるので、該複合繊維の加工工程における最
大収縮率とのバランスを見ながら熱処理条件を設定する
ことが望ましく、大凡は島成分PVAのガラス転移点〜
(Tm−10)℃の範囲内で条件設定することが好まし
い。
【0086】処理温度がTgより低い場合には十分に結
晶化した複合繊維が得られず、例えば、布帛にして熱セ
ットして用いる場合の収縮が大きくなり、布帛の風合い
が硬化するため好ましくない。また処理温度が(Tm−
10)℃を越える場合には繊維間の膠着が生じ好ましく
ない。
【0087】熱処理は延伸後の複合繊維に収縮を加えて
行ってもよい。複合繊維に収縮を加えると水中でのPV
A溶解までの複合繊維の収縮率が小さくなる。加える収
縮は0.01〜5%好ましく、0.1〜0.5%がより
好ましく、1〜4%が特に好ましい。加える収縮が0.
01%以下の場合にはPVA溶解時の複合繊維の最大収
縮率を小さくする効果が実質的に得られず、加える収縮
が5%を超える場合には収縮処理中に複合繊維がたるん
で安定に収縮を加えることができない。
【0088】本発明において、PVAが「水溶性」であ
るということは、溶解するまでの時間の長短にかかわら
ず40℃以上の温度で溶解することを意味する。そし
て、PVAの種類や複合繊維の製造条件を変更すること
により、本発明ではPVA島成分の溶解温度が30℃〜
100℃となる複合繊維を得ることができるが、実用性
及び水溶性のすべての特性のバランスをとるためには、
40℃以上の溶解温度を有するPVA島成分からなる複
合繊維とすることが好ましい。
【0089】溶解処理温度はPVAの溶解温度に応じて
適宜調整すればよいが、もちろん処理温度は高い程処理
時間が短くなる。熱水を用いて溶解する場合、100℃
以上の高温高圧下での熱水処理が最も好ましい。なお、
水溶液には通常は軟水が用いられるがアルカリ水溶液、
酸性水溶液であってもよいし、界面活性剤等を含んだも
のであってもよい。
【0090】本発明の複合繊維を熱水処理してPVA成
分を溶解除去するに当っては、ノニオン系界面活性剤、
アニオン系界面活性剤等を成分とする精練剤、その他の
添加剤等を含んで行ってもよい。また、上記の熱水処理
によるPVAの溶解除去は、複合繊維単独に対して行な
ってもよいし、該複合繊維を含む繊維構造体を構成させ
た後に熱水処理を施してもよい。熱水処理時の温度およ
び処理時間は、複合繊維の繊度、複合繊維における島成
分の割合、島成分の分布状態、海成分の熱可塑性重合体
の比率、種類、繊維構造物の形態等の種々の要件により
適宜調節できる。熱水処理温度としては60℃以上、好
ましくは80℃以上がよい。熱水処理の方法としては、
熱水液中に複合繊維、繊維構造物を浸漬する方法、或い
はそれらに熱水液をパッド、スプレー等の方式で施す方
法等を挙げることができる。
【0091】本発明においてPVAは、上記のような熱
水処理により複合繊維から水溶液として除去されるが、
かかるPVAは生分解性を有しており、活性汚泥処理あ
るいは土壌に埋めておくと分解されて水と二酸化炭素に
なる。また溶解除去された該PVAは水溶液の状態で活
性汚泥で連続処理すると2日〜1ヶ月でほぼ完全に分解
される。生分解性の点から該繊維の鹸化度は90〜9
9.99モル%が好ましく、92〜99.98モル%が
より好ましく、93〜99.97モル%が特に好まし
い。また該繊維の1,2−グリコール結合含有量は1.
0〜3.0モル%が好ましく、1.2〜2.5モル%が
より好ましく、1.3〜1.9モル%が特に好ましい。
PVAの1,2−グリコール結合量が1.0モル%未満
の場合には、PVAの生分解性が悪くなるばかりでな
く、溶融粘度が高すぎて該複合繊維の紡糸性が悪くなる
場合がある。PVAの1,2−グリコール結合含有量が
3.0モル%以上の場合にはPVAの熱安定性が悪くな
り紡糸性が低下する場合がある。
【0092】本発明においては、熱水処理によって複合
繊維中のPVAが選択的に除去されて、1個または複数
個の中空部を有するオレフィン系単量体単位50〜10
0重量%および該単量体と共重合可能なビニル系単量体
単位50〜0重量%よりなる重合体ブロック(A)、並
びに(メタ)アクリル酸系単量体単位0.1〜100重
量%および該単量体と共重合可能なビニル系単量体単位
99.9〜0重量%よりなる重合体ブロック(B)から
構成されるブロック共重合体(I)を5〜95重量%含む
ポリオレフィン系重合体(II)からなる中空繊維が製造
されるものであるが、本発明の最大の特徴は、殆ど水に
膨潤しないと考えられている、ポリプロピレン等の熱可
塑性重合体からなる海成分に完全に包囲されているPV
A島成分が熱水処理により奇麗に溶解除去されて中空繊
維が形成されることである。複合繊維がステープル繊維
など切断面を持っている場合は、繊維の端面からPVA
が抜けていくことが考えられるが、本発明においては、
実質的に切断面のない長繊維の状態であってもPVAが
奇麗に溶解除去されるものであり、かかる事実は従来の
常識を覆すものといっても過言ではない。特に、多孔中
空構造を有するポリプロピレン繊維は、発泡剤を含有さ
せたり、極めて特殊な方法によっても得られにくかった
ものであるが、本発明の複合繊維を用いることで極めて
合理的、かつ実用的に製造することが可能となるもので
ある。また、島成分のPVAは吸湿性、保湿性に優れる
ため、この特性を応用し、目的(用途)によってPVAを
一部溶解除去し、空隙を形成せしめると同時に島成分の
PVAを残すことも可能である。
【0093】本発明の中空繊維における中空部の面積割
合(中空率)は2%以上であることが好ましく、2%よ
りも低いと軽量性、ふくらみ感等のが十分に発現しない
場合がある。従って、中空部の面積割合を5%以上にす
るのが好ましい。中空部の面積割合が大き過ぎると繊維
強度が不足してくるので、好ましくは70%以下、より
好ましくは50%以下の面積割合であることが望まれ
る。
【0094】このようにして得られる本発明の中空繊維
は、軽量性、柔軟性、不透明性、ふくらみ感のある風合
等から特にタフタ、デシン、ジョーゼット、ちりめん、
加工糸、ツイルなどの織物、または天竺、スムース、ト
リコットなどの編物にするのに適している。さらに、衣
料用途に限らず、不織布用途、メディカル用途や衛生材
料、詰め物材として各種リビング資材にも使用可能であ
るし、繊維積層体として自動車等の内装材、消音材、防
振材として利用可能であり、さらに抄紙することもでき
る。
【0095】
【実施例】以下、本発明を具体的に実施例で説明する
が、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお実施例中の部及び%はことわりのない限り質量に関
するものである。
【0096】[PVAの分析方法]PVAの分析方法は
特に記載のない限りはJIS−K6726に従った。変
性量は変性ポリビニルエステルあるいは変性PVAを用
いて500MHzプロトンNMR(JEOL GX−5
00)装置による測定から求めた。アルカリ金属イオン
の含有量は原子吸光法で求めた。
【0097】1,2-グリコール結合含有量は先に記載した
方法で測定した。本発明のPVAのトライアッド表示に
よる3連鎖の水酸基量の割合は以下の測定により求め
た。PVAを鹸化度99.5モル%以上に鹸化後、十分
にメタノール洗浄を行い、次いで90℃減圧乾燥を2日
間したPVAを用いて、d6−DMSOに溶解した後、
500MHz プロトンNMR(JEOL GX−50
0)装置により65℃測定を行った。PVA中のビニル
アルコールユニットの水酸基由来のピークはケミカルシ
フト4.05ppmから4.70ppmの領域に現れ、
この積分値をビニルアルコールユニット量(II)とす
る。PVAのトライアッド表示による水酸基3連鎖の中
心水酸基はそれぞれアイソタクティシティ連鎖の場合
4.5ppm、ヘテロタクティシティ連鎖の場合4.3
6ppmおよびシンジオタクティシティ連鎖の場合は
4.13ppmに現れる。この3者の積分値の和をトラ
イアッド表示による水酸基3連鎖の中心水酸基量(I)
とする。本発明のPVAのビニルアルコールユニットに
対するトライアッド表示による水酸基3連鎖の中心水酸
基のモル分率は、100×(I)/(II)で表され
る。
【0098】[融点]PVAの融点は、DSC(メトラ
ー社、TA3000)を用いて、窒素中、昇温速度10
℃/分で250℃まで昇温後室温まで冷却し、再度、昇
温速度10℃/分で250℃まで昇温した場合のPVA
の融点を示す吸熱ピークのピークトップの温度で表し
た。
【0099】[熱水中でのPVAの除去率]本発明の複
合繊維について、該複合繊維を構成するPVAの熱水中
での溶解温度をTα(℃)とする時、(Tα+40)℃の
熱水で40分間処理、水洗5分、乾燥後の質量減少率を
PVAの除去率とした。なお、Tαは、たとえば、当該
PVA単独からなる繊維に2.2mg/デシテックスの
荷重を掛け、水中に吊るし、水温を上げていき切断する
時の温度として求めることができる。
【0100】[中空部面積率の測定]中空繊維の糸の横
断面をSEM写真撮影し、その横断面における多孔状の
中空部面積および中空繊維全体部面積から算出した。
【0101】[染着率の測定]染色前後の染料溶液をア
セトン/水(容量比1/1)の混合溶媒により希釈し、
その希釈液の吸光度を測定して次式により算出した。 先着率(%)={(D−C)/C}×100 C:染料溶液の染色後の最大吸収波長における吸光度 D:染料溶液の染色前の最大吸収波長における吸光度
【0102】[洗濯堅牢度]JIS L−0844に記
載のA−2法に準じて評価した。
【0103】[風合評価(軽量感、風合い)] 織物についてパネラー10名で実施し、下記の基準で評
価した。 ◎:9名以上が軽量感、ソフト感、ふくらみ感共に優れ
ていると判定 ○:7〜8名が軽量感、ソフト感、ふくらみ感共に優れ
ていると判定 △:5〜6名が軽量感、ソフト感、ふくらみ感共に優れ
ていると判定 ×:6名以上が軽量感、ソフト感、ふくらみ感共に劣っ
ていると判定
【0104】[エチレン変性PVAの製造]攪拌機、窒
素導入口、エチレン導入口および開始剤添加口を備えた
100L加圧反応槽に酢酸ビニル29.0kgおよびメ
タノール31.0kgを仕込み、60℃に昇温した後3
0分間窒素バブリングにより系中を窒素置換した。次い
で反応槽圧力が5.9kg/cm(5.8×105Pa)となる
ようにエチレンを導入仕込みした。開始剤として2,
2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレ
ロニトリル)(AMV)をメタノールに溶解した濃度
2.8g/L溶液を調整し、窒素ガスによるバブリング
を行って窒素置換した。上記の重合槽内温を60℃に調
整した後、上記の開始剤溶液170mlを注入し重合を
開始した。重合中はエチレンを導入して反応槽圧力を
5.9kg/cm(5.8×105Pa)に、重合温度を60℃
に維持し、上記の開始剤溶液を用いて610ml/hr
でAMVを連続添加して重合を実施した。10時間後に
重合率が70%となったところで冷却して重合を停止し
た。反応槽を開放して脱エチレンした後、窒素ガスをバ
ブリングして脱エチレンを完全に行った。ついで減圧下
に未反応酢酸ビニルモノマーを除去しポリ酢酸ビニルの
メタノール溶液とした。得られた該ポリ酢酸ビニル溶液
にメタノールを加えて濃度が50%となるように調整し
たポリ酢酸ビニルのメタノール溶液200g(溶液中の
ポリ酢酸ビニル100g)に、46.5g(ポリ酢酸ビ
ニル中の酢酸ビニルユニットに対してモル比(MR)
0.10)のアルカリ溶液(NaOHの10%メタノー
ル溶液)を添加して鹸化を行った。アルカリ添加後約2
分で系がゲル化したものを粉砕器にて粉砕し、60℃で
1時間放置して鹸化を進行させた後、酢酸メチル100
0gを加えて残存するアルカリを中和した。フェノール
フタレイン指示薬を用いて中和の終了を確認後、濾別し
て得られた白色固体のPVAにメタノール1000gを
加えて室温で3時間放置洗浄した。上記洗浄操作を3回
繰り返した後、遠心脱液して得られたPVAを乾燥機中
70℃で2日間放置して乾燥PVAを得た。得られたエ
チレン変性PVAの鹸化度は98.4モル%であった。
また該変性PVAを灰化させた後、酸に溶解したものを
用いて原子吸光光度計により測定したナトリウムの含有
量は、変性PVA100質量部に対して0.01質量部
であった。また、重合後未反応酢酸ビニルモノマーを除
去して得られたポリ酢酸ビニルのメタノール溶液をn−
ヘキサンに沈殿、アセトンで溶解する再沈精製を3回行
った後、80℃で3日間減圧乾燥を行って精製ポリ酢酸
ビニルを得た。該ポリ酢酸ビニルをDMSO−d6に溶
解し、500MHzプロトンNMR(JEOL GX−
500)を用いて80℃で測定したところ、エチレンの
含有量は8.4モル%であった。上記のポリ酢酸ビニル
のメタノール溶液をアルカリモル比0.5で鹸化した
後、粉砕したものを60℃で5時間放置して鹸化を進行
させた後、メタノールソックスレーを3日間実施し、次
いで80℃で3日間減圧乾燥を行って精製されたエチレ
ン変性PVAを得た。該PVAの平均重合度を常法のJ
IS K6726に準じて測定したところ330であつ
た。該精製PVAの1,2−グリコール結合量および水
酸基3連鎖の水酸基の含有量を500MHzプロトンN
MR(JEOL GX−500)装置による測定から前
述のとおり求めたところ、それぞれ1.50モル%およ
び83%であつた。さらに該精製された変性PVAの5
%水溶液を調整し厚み10ミクロンのキャスト製フィル
ムを作成した。該フイルムを80℃で1日間減圧乾燥を
行った後に、DSC(メトラー社、TA3000)を用
いて、前述の方法によりPVAの融点を測定したところ
208℃であった。
【0105】《製造例1》[ポリエステル系共重合体
(II)の製造] 予備乾燥したPBT(株式会社クラレ製「S1000
F」;極限粘度[η]=0.85)50質量部および1
分子当たり0.8個の割合で水酸基を片末端に有するポ
リスチレンブロック/1,3−ブタジエン・イソプレン
水添共重合体ブロック/ポリスチレンブロックよりなる
トリブロック共重合体(以下「水添SBIS−OH」と
いうことがある)の50質量部を予備混合した後、二軸
押出機(株式会社日本製鋼所製「TEX44C」)に供
給して250℃で溶融混練して押し出した後、冷却、切
断してペレットを製造した。このペレットをガス導入
口、排気口、真空連結器などを有する固相重合装置に移
して、窒素ガスの導入下に120℃で約4時間処理して
乾燥および結晶化を行った。その後、固相重合装置の内
圧を約26.7Paまで減圧すると共に200℃まで昇温
して固相重合反応を開始した。約20時間の固相重合反
応の後に、窒素ガスを供給して系を常圧に戻した。固相
重合により得られた反応生成物を、ヘキサフルオロイソ
プロパノール/クロロホルム(1/1容)の混合溶媒に
溶解させ、その溶液をテトラヒドロフラン中に注入して
沈殿を生成させ、その沈殿物を回収した。それにより得
られた沈殿物を、クロロホルム中で加熱還流した後に濾
別し、クロロホルム溶液を濃縮、乾固することによっ
て、PBTから誘導されたブロックと、水添SBIS−
OHから誘導されたブロックとからなるジブロック共重
合体を単離した。
【0106】実施例1 上記で得られた変性PVAを島成分として、製造例1で
得られたポリエステル系共重合体(II)とポリプロピレ
ン(日本ポリケム、SA2D)とを20:80の割合で
混合した重合体組成物(I)を海成分として用い、PV
Aのゾーン最高温度230℃、PVAの溶融滞留が極力
生じない複合紡糸部品を用い、紡糸温度250℃、紡糸
速度1000m/分で紡出した後、この未延伸糸を10
0℃の熱ローラ及び140℃の熱プレートに接触させ、
延伸倍率3.5倍で延伸することにより、表1に示すよ
うな繊維断面及び複合比率を有する83dtex/24fの
複合繊維を得た。さらに筒編み機で編み地にし、170℃
で約40秒間プレセットを行なった。次にイントールMTコ
ンク(アニオン活性剤、明成化学社製)1g/リットルを
含む水溶液にて浴比50:1、温度120℃、時間40分間の熱
水処理を行なった。十分に水洗して表1に示すPVAの除
去率を有する筒編み地を得、分散染料を用いて染色加工
した。染色性、軽量感を含む筒編みの評価結果を表2に
示す。 1)染色条件 温度×時間=130℃×40分 染料:Dianix Navy Blue SPH (Dystar) 5%omf 分散剤:Disper TL (明成化学工業) 1g/l 酢酸(50%): 1cc/l 浴比 =1:50 2)還元洗浄条件 80℃×20分 ハイドロサルファイト 1g/l 水酸化ナトリウム 1g/l アミラジンD(第一工業製薬) 1g/l
【0107】
【表1】
【0108】
【表2】
【0109】上記表2の結果から、本発明の規定する多
孔状の中空繊維からなる編み地は、染色された編地は深
みのある濃色なもので、堅牢度も優れたものであった。
また、軽量感が極めて良好で、ソフトでふくらみのある
優れた風合いを有するものであった。
【0110】実施例2〜7 実施例2は、複合比率、島成分の除去率を変更し、実施
例3〜7は繊維断面、島数、島成分の除去率等を変更
し、表1に示す条件で実施すること以外は実施例1と同
様にして繊維化、編み地の作成、評価を行なった。いず
れの布帛も染色性は良好であり、軽量感にすぐれ、ソフ
トでふくらみ感のある優れた風合いを有するものであっ
た。
【0111】実施例8〜11 表1に示すように島成分の変性種、変性量を変更するこ
と以外は実施例1と同様にして繊維化、編み地の作成、
評価を行なった。いずれの布帛も染色性は良好であり、
軽量感にすぐれ、ソフトでふくらみ感のある優れた風合
いを有するものであった。
【0112】実施例12〜13 表1に示すように海成分ポリマーのポリエステル系共重
合体(II)とオレフィン系重合体の比率を変更すること
以外は実施例1と同様にして繊維化、編み地の作成、評
価を行なった。いずれの布帛も染色性は良好であり、軽
量感にすぐれ、ソフトでふくらみ感のある優れた風合い
を有するものであった。
【0113】実施例14〜15 表1に示すように重合体組成物(I)のオレフィン系重合
体の種類,繊維断面等を変更すること以外は実施例1と
同様にして繊維化、編み地の作成、評価を行なった。い
ずれの布帛も染色性は良好であり、軽量感にすぐれ、ソ
フトでふくらみ感のある優れた風合いを有するものであ
った。
【0114】比較例1、2 表1に示すように海成分ポリマーのポリエステル系共重
合体(II)とオレフィン系重合体の比率を変更すること
以外は実施例1と同様にして繊維化、編み地の作成、評
価を行なった。比較例1の混合割合が1:99のものは
染着率が低く汚染程度で、染色されているとはいえない
ものであった。比較例2の混合割合が98:2のもの
は、紡糸性が悪く、極短時間しか捲き取ることができな
かった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の複合繊維の断面形状の一例を示す繊
維断面図
【図2】 本発明の複合繊維の断面形状の一例を示す繊
維断面図
【図3】 本発明の複合繊維の断面形状の一例を示す繊
維断面図
【図4】 本発明の複合繊維の断面形状の一例を示す繊
維断面図
【図5】 本発明の複合繊維の断面形状の一例を示す繊
維断面図
【図6】 本発明の複合繊維の断面形状の一例を示す繊
維断面図
【符号の説明】
1:海成分 2:島成分
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4L031 AB06 AB11 BA33 CA07 CA16 CA17 DA00 DA02 DA09 4L041 AA07 BA02 BA05 BA16 CA10 CA41 DD11 EE14

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリエステルブロック(IIa)と付加重
    合体ブロック(IIb)とからなるポリエステル系共重合
    体(II)を5〜95重量%含む重合体組成物(I)を海
    成分とし、水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系重合
    体(III)を島成分とする複合繊維。
  2. 【請求項2】 水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系
    重合体(III)が、炭素数4以下のα−オレフィン単位お
    よび/またはビニルエーテル単位を0.1〜20モル%
    含有する変性ポリビニルアルコールである請求項1に記
    載の複合繊維。
  3. 【請求項3】 α−オレフィン単位として4〜15モル
    %のエチレン単位及び/又はプロピレン単位を含有する
    請求項2に記載の複合繊維。
  4. 【請求項4】 ブロック共重合体(IIb)を構成する、重
    合体ブロック(A)の数平均分子量が1,000〜10
    0,000であり、重合体ブロック(B)の数平均分子
    量が1,000〜100,000である請求項1記載の
    繊維。
  5. 【請求項5】 海成分の重合体組成物(I)がポリエチ
    レン、ポリプロピレン、エチレン/α−オレフィン共重
    合体および水素添加された共役ジエン共重合体のうちの
    少なくとも1種の重合体を含んでなる請求項1に記載の
    複合繊維。
  6. 【請求項6】 ポリエステルブロック(IIa)と付加重
    合体ブロック(IIb)とからなるポリエステル系共重合
    体(II)を5〜95重量%含む重合体組成物(I)から
    なる中空繊維。
  7. 【請求項7】 重合体組成物(I)がポリエチレン、ポ
    リプロピレン、エチレン/α−オレフィン共重合体およ
    び水素添加された共役ジエン共重合体のうちの少なくと
    も1種の重合体を含んでなる請求項6に記載の中空繊
    維。
  8. 【請求項8】 中空部の数が1個以上で、中空率が2%
    以上65%以下である請求項6に記載の中空繊維。
  9. 【請求項9】 中空部の数が10個以上である請求項8
    に記載の中空繊維。
  10. 【請求項10】 長繊維である請求項6〜9のいずれか
    1項に記載の中空繊維。
  11. 【請求項11】 請求項6〜10のいずれか1項に記載
    の中空繊維を少なくとも一部に含む繊維構造物。
  12. 【請求項12】 請求項1〜5のいずれか1項に記載の
    複合繊維を水で処理し、該複合繊維から水溶性熱可塑性
    ポリビニルアルコール系重合体(III)を少なくとも一
    部溶解除去することを特徴とする中空繊維の製造方法。
  13. 【請求項13】 請求項1〜5のいずれか1項に記載の
    複合繊維を含む繊維構造物を水で処理し、該複合繊維か
    ら水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(II
    I)を少なくとも一部溶解除去することを特徴とする繊
    維構造物の処理方法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2012219385A (ja) * 2011-04-05 2012-11-12 Kuraray Co Ltd 複合繊維および該複合繊維を用いた中空繊維の製造方法
CN105133077A (zh) * 2015-07-30 2015-12-09 恒天海龙股份有限公司 一种细旦纤维素纤维及其制备方法
WO2021133116A1 (ko) * 2019-12-27 2021-07-01 도레이첨단소재 주식회사 자동차 내장재용 섬유집합체 및 이를 포함하는 자동차 내장재

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