JP5655366B2 - ベイナイト鋼 - Google Patents

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Description

本発明は、ベイナイト鋼に関するものである。
従来、各種の自動車用部品、機械構造用部品が熱間鍛造により製造されている。これら部品に対し、高強度、高靱性が求められる場合には、熱間鍛造をした後に調質処理が施されている。近年、自動車等は、低燃費化を達成するため車両の軽量化が強く求められており、そのために部品の小型化が指向されている。それに伴い、材料となる鋼材には、耐力比、耐久比のさらなる向上が求められている。
鋼材の耐力比、耐久比を高めるためには、焼入れ焼戻しによる調質処理を施し、鋼材の組織をマルテンサイト組織にすることが有効である。しかし、マルテンサイト組織は非常に硬いため、鋼材の被削性が低下する。そこで、熱間鍛造後に機械加工を施し、その後に焼入れ焼戻しによる調質処理を施すことが考えられる。ところが、この場合には、調質処理による熱処理歪や膨張により、所望形状が維持できず、結局のところ、追加の機械加工が必要となる。それ故、やはり被削性の問題が発生する。
そこで、マルテンサイト鋼より軟らかく、被削性に有利なベイナイト鋼について高強度化を図る試みがなされている。
例えば、特許文献1には、C:0.11〜0.60質量%、Si:0.03〜3.0質量%、Mn:0.01〜2.5質量%、Mo:0.3〜4.0質量%、V:0.05〜0.5質量%、Cr:0.1〜3.0質量%、残部がFeと不可避的不純物からなり、各成分間では、4C+Mn+0.7Cr+0.6Mo−0.2V≧2.5、C≧Mo/16+V/5.7、V+0.15Mo≧0.4を満たす関係が成立しており、圧延、鍛造、または、溶体化処理後に、温度800℃から300℃の間は0.05〜10℃/秒の平均冷却速度で冷却され、時効処理前においては、ベイナイト組織の面積率が50%以上で、かつ、硬さは40HRC以下であり、時効処理によって、硬さが時効処理前の硬さよりも7HRC以上高くなる時効硬化鋼が開示されている。
特開2006−37177号公報
しかしながら、従来のベイナイト鋼は、未だ改良の余地があった。すなわち、従来のベイナイト鋼は、時効処理により硬さを増加せしめることができるが、熱間鍛造性、熱間鍛造後の被削性を両立させることが困難であった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、本発明が解決しようとする課題は、熱間鍛造性、熱間鍛造後の被削性に優れ、被削後に時効硬化によって高強度化を図ることが可能なベイナイト鋼を提供することにある。
本発明に係るベイナイト鋼は、質量%で、C:0.14〜0.35%、Si:0.05〜0.70%、Mn:1.10〜2.30%、S:0.003〜0.120%、Cu:0.0〜0.40%、Ni:0.01〜0.40%、Cr:0.01〜0.50%、Mo:0.01〜0.30%、および、V:0.05〜0.45%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、13[C]+8[Si]+10[Mn]+3[Cu]+3[Ni]+22[Mo]+11[V]≦30、5[C]+[Si]+2[Mn]+3[Cr]+2[Mo]+4[V]≦7.3、2.4≦0.3[C]+1.1[Mn]+0.2[Cu]+0.2[Ni]+1.2[Cr]+1.1[Mo]+0.2[V]≦3.1、2.5≦[C]+[Si]+4[Mo]+9[V]、[C]≧[Mo]/16+[V]/3を満たすことを要旨とする。
本発明に係るベイナイト鋼は、さらに、質量%で、Ti:0.001〜0.100%、および、Ca:0.0003〜0.0100%から選択される1種または2種以上を含有していても良い。
本発明に係るベイナイト鋼は、上述した特定元素を特定範囲で含有し、特定の式を満足している。そのため、熱間鍛造性に優れ、熱間鍛造後、時効処理前における被削性にも優れる。そして、被削後に時効処理を施せば、時効硬化により硬くなり、マルテンサイト鋼並の耐力比、耐久比が得られ、高強度化を図ることができる。また、本発明に係るベイナイト鋼は、時効処理により組織変態がほとんど生じないことから熱処理歪が生じず、寸法精度の低下も抑制することができる。
以下、本発明に係るベイナイト鋼(以下、「本ベイナイト鋼」ということがある。)について詳細に説明する。本ベイナイト鋼は、以下の元素を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる。また、特定の関係式を満たす。
本ベイナイト鋼における各添加元素の種類、含有量、限定理由ならびに各関係式の技術的意義などは以下の通りである。なお、含有量の単位は、質量%である。
C:0.14〜0.35%
Cは、強度を確保するために必要な元素であるとともに、時効処理によりMo、Vの炭化物を析出させ、鋼材芯部の強度を高める。その効果を得るため、C含有量の下限を0.14%以上とする。C含有量の下限は、好ましくは0.15%以上、より好ましくは0.16%以上である。
しかしながら、Cの過剰添加は、熱間鍛造性を損ねるとともに、熱間鍛造後の硬さ(切削加工前の素材の硬さ)が過剰となり、切削加工性を劣化させる。よって、C含有量の上限を0.35%以下とする。C含有量の上限は、好ましくは0.30%以下、より好ましくは0.28%以下である。
Si:0.05〜0.70%
Siは、鋼溶製時の脱酸剤として機能するとともに、時効硬化特性を高める。その効果を得るため、Si含有量の下限を0.05%以上とする。Si含有量の下限は、好ましくは0.07%以上、より好ましくは0.10%以上である。
しかしながら、Siの過剰添加は、熱間鍛造性を損ねるとともに、製造性を低下させる。また、熱間鍛造後の硬さが過剰となり、切削加工性を劣化させる。よって、Si含有量の上限を0.70%以下とする。Si含有量の上限は、好ましくは0.65%以下、より好ましくは0.60%以下である。
Mn:1.10〜2.30%
Mnは、本発明において重要な役割を果たす元素であり、熱間鍛造後の組織においてベイナイト組織を生成させるために不可欠な元素である。また、Mnは、被削性向上に寄与するMn系硫化物を形成させるために必須の元素でもある。その効果を得るため、Mn含有量の下限を1.10%以上とする。Mn含有量の下限は、好ましくは1.30%以上、より好ましくは1.40%以上である。
しかしながら、Mnの過剰添加は、マルテンサイト組織を現出させやすくし、熱間鍛造後の硬さを高めて被削性の低下を招く。さらに、熱間鍛造性も損ねる。よって、Mn含有量の上限を2.30%以下とする。Mn含有量の上限は、好ましくは2.10%以下、より好ましくは2.00%以下である。
S:0.003〜0.120%
Sは、Mnとともに被削性向上に寄与するMn系硫化物の生成に必要な元素である。その効果を得るため、S含有量の下限を0.003%以上とする。S含有量の下限は、好ましくは0.005%以上、より好ましくは0.010%以上である。
しかしながら、Sの過剰添加は、鋼の靭性と延性を損ねるほか、熱間鍛造時に割れ等を生じさせやすくする。また、高強度鋼においては介在物が疲労破壊の起点となり、疲労特性を低下させる。よって、S含有量の上限を0.120%以下とする。S含有量の上限は、好ましくは0.100%以下、より好ましくは0.07%以下である。
Cu:0.01〜0.40%
Cuは、Mnと同様に、ベイナイト組織を生成させるために不可欠な元素である。その効果を得るため、Cu含有量の下限を0.01%以上とする。Cu含有量の下限は、好ましくは0.05%以上、より好ましくは0.10%以上である。
しかしながら、Cuの過剰添加は、熱間鍛造後の硬さを高めて被削性を低下させるだけでなく、熱間鍛造性も損ねる。さらに、コスト増にも繋がる。よって、Cu含有量の上限を0.40%以下とする。Cu含有量の上限は、好ましくは0.35%以下、より好ましくは0.30%以下である。
Ni:0.01〜0.40%
Niは、Mnと同様に、ベイナイト組織を生成させるために不可欠な元素である。その効果を得るため、Ni含有量の下限を0.01%以上とする。Ni含有量の下限は、好ましくは0.05%以上、より好ましくは0.10%以上である。
しかしながら、Niの過剰添加は、熱間鍛造後の硬さを高めて被削性を低下させるだけでなく、熱間鍛造性も損ねる。さらに、コスト増にも繋がる。よって、Ni含有量の上限を0.40%以下とする。Ni含有量の上限は、好ましくは0.35%以下、より好ましくは0.30%以下である。
Cr:0.01〜0.50%
Crは、Mnと同様に、ベイナイト組織を生成させるために不可欠な元素である。ベイナイト組織を安定に生成させるため、Cr含有量の下限を0.01%以上とする。Cr含有量の下限は、好ましくは0.02%以上、より好ましくは0.05%以上である。
しかしながら、Crの過剰添加は、熱間鍛造後の硬さを高めて被削性を低下させる。また、熱間鍛造性も損ねる。よって、Cr含有量の上限を0.50%以下とする。Cr含有量の上限は、好ましくは0.50%未満である。
Mo:0.01〜0.30%
Moは、本発明において重要な役割を果たす元素であり、時効硬化処理によって硬さを増加させ、かつ、ベイナイト組織を生成させるために不可欠な元素である。また、Mo、Vの炭窒化物を時効処理により析出させると、耐力比の向上、耐久比の向上に寄与するため、被削後の高強度化にとって重要な元素である。その効果を得るため、Mo含有量の下限を0.01%以上とする。Mo含有量の下限は、好ましくは0.02%以上、より好ましくは0.05%以上である。
しかしながら、Moの過剰添加は、熱間鍛造後の硬さを高めて被削性を低下させるだけでなく、熱間鍛造性も損ねる。さらに、コスト増にも繋がる。よって、Mo含有量の上限を0.30%以下とする。Mo含有量の上限は、好ましくは 0.30%未満である。
V:0.05〜0.45%
Vは、本発明において重要な役割を果たす元素であり、時効処理によって硬さを増加させ、かつ、ベイナイト組織を生成させるために不可欠な元素である。また、Mo、Vの炭窒化物を時効処理により析出させると、耐力比の向上、耐久比の向上に寄与するため、被削後の高強度化にとって重要な元素である。その効果を得るため、V含有量の下限を0.05%以上とする。V含有量の下限は、好ましくは0.07%以上、より好ましくは0.10%以上である。
しかしながら、Vの過剰添加は、熱間鍛造後の硬さを高めて被削性を低下させるだけでなく、熱間鍛造性も損ねる。さらに、コスト増にも繋がる。よって、V含有量の上限を0.45%以下とする。V含有量の上限は、好ましくは0.45%未満である。
本ベイナイト鋼は、上述した必須元素に加えて、必要に応じて、以下の元素を1種または2種以上含有していても良い。
Ti:0.001〜0.100%
Tiは、鋼中のOと結合して、微細な酸化物を形成する。これがMn系硫化物の析出に対し核として働く。そのため、Mn系硫化物を微細に分散させるのに役立つ。また、Tiは、鋼中のC、Nとも結合して、微細な窒化物あるいは炭窒化物を形成する。これが熱間鍛造時のオーステナイト結晶粒の粗大化を防止し、強度を向上させるのに寄与する。その効果を得るため、Ti含有量の下限を0.001%以上とする。Ti含有量の下限は、好ましくは0.002%以上、より好ましくは0.003%以上である。
しかしながら、Tiは、鍛造冷却時にフェライト生成の核となり得るため、ベイナイト組織を得ることを前提にした場合には低減させることが望ましい。Tiの過剰添加は、粗大なTi窒化物を生成させ、これが応力集中源となって部品の疲労強度を却って低下させることに繋がる。また、フェライトを生成させやすくなるため、時効硬化特性を低下させ強度低下を招く。よって、Ti含有量の上限を0.100%以下とする。Ti含有量の上限は、好ましくは0.060%以下、より好ましくは0.020%以下である。
Ca:0.0003〜0.0100%
本ベイナイト鋼は、被削性向上元素として従来積極添加していたPbを低減し、具体的には不可避的不純物レベルの0.03質量%以下に留めるようにする。Caは、それによる被削性低下を補うために添加することができる元素である。また、Caは、その一部がMnS中に固溶し、熱間鍛造時の硫化物の変形を抑制するので、被削性向上に有利である。その効果を顕著なものとするため、Ca含有量の下限を0.0003%以上とする。Ca含有量の下限は、好ましくは0.0005%以上、より好ましくは0.0007%以上である。
しかしながら、Caの過剰添加は、Ca酸化物、CaSの巨大介在物を生成させて強度低下を招く。よって、Ca含有量の上限を0.0100%以下とする。Ca含有量の上限は、好ましくは0.0070%以下、より好ましくは0.0050%以下である。
また、本ベイナイト鋼は、上述の効果が損なわれない範囲内で、例えば、Al、O、P、Nなどが含有されていても良い。
Al:0.040%以下
Alは、脱酸剤として添加することもあるが、製鋼工程上不可避的不純物である。過剰なAlは粗大な酸化物の生成に繋がりやすく、これが応力集中源となって部品の疲労強度を低下させる。そのため、Al含有量の上限は、好ましくは0.040%以下、より好ましくは0.035%以下とする。
O:0.008%以下
Oは、製鋼工程上不可避的不純物である。また、Oは、Alと結合して酸化物を形成し、これが応力集中源となって部品の疲労強度を低下させる。そのため、O含有量の上限は、好ましくは0.008%以下、より好ましくは0.006%以下とする。
一方、Tiを添加して被削性を向上させる場合、Tiの酸化物を形成することが有用である。その効果を得る観点から、O含有量の下限は、好ましくは0.0003%以上、より好ましくは0.0004%以上であると良い。
P:0.04%以下
Pは、製鋼工程上の不可避的不純物として混入しうる元素である。Pは、鋼の靭性を低下させるので、その含有率は、好ましくは0.04%以下、より好ましくは0.03%以下、さらに好ましくは0.02%以下である。
N:0.003〜0.025%
Nは、Alと結合して窒化物を形成し、この窒化物が微細に析出すると熱間鍛造時の結晶粒成長を抑制して強度向上に寄与する。このような効果を得るため、N含有量の下限を、好ましくは、0.003%以上とする。より好ましくは0.004%以上である。
しかしながら、Nを多量に添加してもその効果は飽和し、かえって粗大な炭窒化物が核となってフェライトを生成させやすくなり、時効硬化特性を低下させ強度低下を招く。そのため、N含有量の上限を、好ましくは0.025%以下とする。より好ましくは0.020%以下である。
ここで、本ベイナイト鋼は、以下の関係式を満足する必要がある。なお、[X]は、元素Xの質量%を表す。
13[C]+8[Si]+10[Mn]+3[Cu]+3[Ni]+22[Mo]+11[V]≦30
上記関係式は、熱間鍛造性と密接な関わりがある。すなわち、本ベイナイト鋼は、脱炭抑制を図りつつ変形抵抗を十分に低減し、所望の部品形状への加工を効率良く行なう観点から、好ましくは900〜1300℃(A1変態点以上)、より好ましくは950〜1200℃の温度範囲にて熱間鍛造を施すことが望ましい。時効硬化特性を得るためにMo、Vを多量添加すると、熱間鍛造時における熱間変形抵抗が高くなり加工効率を落としてしまう。したがって、これら元素を低減しつつ時効硬化量を得るための工夫が重要となる。また、500〜700℃の時効処理を行った際にマトリックス組織の硬さを低減させないようにするため、Siを添加し軟化抵抗性を向上させる方法もある。しかし、SiもMo程ではないが熱間変形抵抗を高めてしまう。また、本ベイナイト鋼においては、熱間鍛造後の組織をベイナイト単相(詳しくは、実施例にて後述)とするのが望ましい。そのためには、C、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、Vを添加すると良いが、これら元素も熱間変形抵抗を高めてしまう。これら全てを勘案すると、上記関係式を満足することが必要となる。これにより、本ベイナイト鋼の熱間変形抵抗が、一般的な熱間鍛造非調質鋼の熱間変形抵抗である140MPaを下回ることが可能となり、加工効率の維持を図ることができるという意義がある。
5[C]+[Si]+2[Mn]+3[Cr]+2[Mo]+4[V]≦7.3
上記関係式は、熱間鍛造後(時効処理前)の硬さと密接な関わりがある。すなわち、上述した化学組成を有する鋼の加熱、熱間鍛造加工、空冷工程を経た後の硬さは、その後の機械加工工程における被削性に大きな影響を与える。一般的に切削加工可能な硬さは300HV程度と言われており、本発明者らは鋭意検討した結果、上記関係式を満足させることにより、熱間鍛造後(時効処理前)の硬さを300HV以下にすることが可能なことを見出したのである。
2.4≦0.3[C]+1.1[Mn]+0.2[Cu]+0.2[Ni]+1.2[Cr]+1.1[Mo]+0.2[V]≦3.1
上記関係式は、安定してベイナイト組織を得ることと密接な関わりがある。すなわち、熱間鍛造部品はその形状が複雑であり、部位により冷却速度が異なる。そのため、広い冷却範囲でベイナイト組織が得られることが望ましい。上記関係式を満たすことにより、安定してベイナイト組織を得ることが可能となる。本ベイナイト鋼は、その組織がベイナイト単相(詳しくは、実施例にて後述)であることが好ましい。
2.5≦[C]+[Si]+4[Mo]+9[V]、[C]≧[Mo]/16+[V]/3
上記関係式は、時効硬化特性と密接な関わりがある。すなわち、疲労強度を高めるためには時効硬化量を大きくする必要がある。そのため、本ベイナイト鋼は、上記関係式を満足している必要がある。なお、十分な時効硬化特性を得るためには、好ましくは500〜700℃、より好ましくは575〜675℃の温度範囲、好ましくは0.5〜10時間、より好ましくは1〜5時間の条件で時効処理することが望ましい。最も好ましくは、効率的に効果を得る観点から、625℃にて1〜4h時効処理すると良い。
上述した本ベイナイト鋼は、具体的には、熱間鍛造部品、特にコネクティングロッド、ナックルアーム、コモンレール等の自動車部品などの用途に好適に用いることができる。
以下、本発明を実施例を用いてより具体的に説明する。
真空誘導炉にて表1および表2に示す各種化学成分の鋼の鋳塊50kgを溶製し、熱間鍛造をしてφ70mmの棒鋼とした。これをさらに1100℃以上でφ10、20、50、60mmまで1ヒートで鍛造し冷却速度を一定にするため適当な間隔を空けて空冷し、供試材とした。
(熱間鍛造性)
φ10mmの供試材を機械加工して、φ8mm×12mmの試験片を採取し、熱間加工再現試験装置(例えば、富士電波工機製「加工フォーマスター」)を用いて、温度1100℃にて熱間変形抵抗を測定した。熱間変形抵抗が140MPa以下であった場合を熱間鍛造性に優れるとした。「熱間変形抵抗140MPa以下」としたのは、一般的な熱間鍛造機の能力範囲だからである。
(被削性)
φ20mmの供試材を用いて硬さ試験片と被削性試験片を採取し試験を実施した。硬さは試験片の半径の1/2の箇所で測定した。また、超硬工具を用いてドリル加工性の評価を実施した。具体的には、切削速度200m/min、送り0.1mm/rev、穴深さ60mmの加工を実施し、横逃げ面平均工具摩耗幅が0.2mmに至るまでの加工時間を測定し、従来鋼の加工時間を100としたときの工具寿命比を被削性指数とし、100を下回った物を被削性に劣ると判断した。300HV以下のものは被削性指数が100を上回り被削性に優れている。但し、鍛造後の硬さが300HVを下回っていてもSが低いと快削性に寄与するMnSが少なくなり被削性に劣る。
(ベイナイト単相化)
φ10mm、20mm、50mm、60mmの供試材の軸横断面全面の金属組織を観察した。ベイナイト組織の面積率が90%以上であった場合を「○」、ベイナイト組織とフェライト組織の混合(フェライト組織の面積率10%以上)であった場合を「F」、ベイナイト組織とマルテンサイト組織の混合(マルテンサイト組織の面積率10%以上)であった場合を「M」とした。そして、φ50mmの丸棒、φ10mmの丸棒がともに「○」となる場合を、ベイナイトに単相化されていると判断した。
φ20mmの供試材を温度625℃±10℃で2時間の条件で時効処理を施した。その後、φ20mm×10mm板の硬さ試験片を採取し、時効処理後のビッカース硬さを測定した。硬さは試験片の半径の1/2の箇所で測定した。300HV以上であった場合に、時効処理により十分に硬さが増加したと判断した。
(引張強度、0.2%耐力、耐力比)
上記時効処理後の供試材よりJIS Z 2201 4号引張試験片を採取し、これを用いて引張強度、0.2%耐力、耐力比(0.2%耐力/引張強度)を測定した。上記引張強度が950MPa以上、耐力比が0.80以上であった場合に高耐力を有すると判断した。
(疲労強度、耐久比)
上記時効処理後の供試材よりJIS Z 2274 1号回転曲げ疲労試験片を採取し、これを用いて回転曲げ疲労強度、耐久比(疲労強度/引張強度)を測定した。上記疲労強度が510MPa以上、耐久比が0.50以上であった場合に高耐久を有すると判断した。
表1、2に作製した実施例および比較例に係る鋼材の化学成分を、表3、4に各試験結果を示す。
Figure 0005655366
Figure 0005655366
Figure 0005655366
Figure 0005655366
表3、4の結果を相対評価すると、次のことが分かる。
比較例1は、C含有量が本願で規定される量を下回っている。そのため、時効処理によりMo、Vの炭化物を十分に析出させることができず、十分な硬さが得られなくなって高強度化を図ることができない。
比較例2は、C含有量が本願で規定される量を上回っている。そのため、熱間鍛造性に劣り、製造性が悪い。また、熱間鍛造後の硬さ(切削加工前の素材の硬さ)も比較的高めである。
比較例3は、Si含有量が本願で規定される量を上回っている。そのため、熱間鍛造性に劣り、製造性が悪い。
比較例4は、Mn含有量が本願で規定される量を下回っている。そのため、ベイナイト単相化を図るために他の合金元素を多量に添加している。その結果、熱間鍛造性や被削性が損なわれている。これは以下の理由によるものと考えられる。すなわち、Mn、Cr、Mo、C、Vはいずれも添加することで、ベイナイトができやすくなるが、硬さを高くし、熱間鍛造性や被削性を悪化させる。しかし、ベイナイト単相化に必要な同等量の他元素を添加した場合、硬さも同等に高くなるわけではない。Cr、Mo、C、Vはベイナイト単相化に対する貢献よりも硬さを高くすることによる熱間鍛造性や被削性に対する悪影響の方が大きいため、上記のような結果になったものと考えられる。
比較例5は、Mn含有量が本願で規定される量を上回っている。そのため、マルテンサイト組織が現れやすく、熱間鍛造後の硬さが高くなり、被削性に劣る。また、熱間鍛造性にも劣る。
比較例6は、S含有量が本願で規定される量を下回っている。そのため、硫化物の生成量が不足し、被削性に劣る。
比較例7は、S含有量が本願で規定される量を上回っている。そのため、介在物が粗大化し、それが疲労破壊の起点となって疲労強度に劣る。
比較例8は、Cu、Ni含有量が本願で規定される量を上回っている。そのため、熱間鍛造性に劣り、製造性が悪い。また、コスト増にもつながる。
比較例9は、Cr含有量が本願で規定される量を上回っている。そのため、熱間鍛造後の硬さが高くなり、被削性に劣る。また、熱間鍛造性に劣り、製造性も悪い。
比較例10は、Mo含有量が本願で規定される量を下回っている。そのため、時効硬化による硬さの増加が不十分となり、高強度化を図ることができない。
比較例11は、Mo含有量が本願で規定される量を上回っている。そのため、熱間鍛造性に劣り、製造性が悪い。また、コスト増にもつながる。
比較例12は、V含有量が本願で規定される量を下回っている。そのため、時効硬化による硬さの増加が不十分となり、高強度化を図ることができない。
比較例13は、V含有量が本願で規定される量を上回っている。そのため、熱間鍛造性に劣り、製造性が悪い。また、熱間鍛造後の硬さも比較的高めである。
比較例14は、式1の値が30を上回っている。そのため、熱間鍛造性に劣り、製造性が悪い。
比較例15は、式2の値が7.3を上回っている。そのため、熱間鍛造後の硬さが高くなり、被削性に劣る。
比較例16は、式3の値が2.4を下回っている。そのため、ベイナイト単相化を図り難く、高強度化が困難である。
比較例17は、式4(1)の値が2.5を下回っている。そのため、時効硬化による高強度化が困難である。
比較例18は、式4(2)値がC含有量を上回っている。そのため、時効処理によりMo、Vの炭化物を十分に析出させることができず、十分な硬さが得られなくなって高強度化を図ることができない。
比較例19は、Ti含有量が本願で規定される量を上回っている。そのため、粗大介在物が生成し、これが応力集中源となって疲労強度の低下を招く。
比較例20は、Ca含有量が本願で規定される量を上回っている。そのため、粗大介在物が生成し、これが応力集中源となって疲労強度の低下を招く。
これらに対し、本願に規定される条件を満足する、実施例1〜21は、熱間鍛造性、熱間鍛造後の被削性に優れ、被削後に時効硬化によって高強度化を図ることが可能なことが分かる。それ故、小型化が要求される自動車用部品、機械構造用部品等の材料として好適に用いることができる。
以上、本発明に係るベイナイト鋼について説明したが、本発明は、上記実施形態、実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。

Claims (3)

  1. 質量%で、
    C :0.14〜0.35%、
    Si:0.05〜0.70%、
    Mn:1.10〜2.30%、
    S :0.003〜0.120%、
    Cu:0.0〜0.40%、
    Ni:0.01〜0.40%、
    Cr:0.01〜0.50%、
    Mo:0.01〜0.30%、および、
    V :0.05〜0.45%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、
    13[C]+8[Si]+10[Mn]+3[Cu]+3[Ni]+22[Mo]+11[V]≦30、
    5[C]+[Si]+2[Mn]+3[Cr]+2[Mo]+4[V]≦7.3、
    2.4≦0.3[C]+1.1[Mn]+0.2[Cu]+0.2[Ni]+1.2[Cr]+1.1[Mo]+0.2[V]≦3.1、
    2.5≦[C]+[Si]+4[Mo]+9[V]、[C]≧[Mo]/16+[V]/3
    を満たすことを特徴とするベイナイト鋼。
  2. 質量%で、
    Ti:0.001〜0.100%、および、
    Ca:0.0003〜0.0100%から選択される1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載のベイナイト鋼。
  3. Niの含有量は、0.05質量%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のベイナイト鋼。
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