JP2003017769A - 積層型圧電アクチュエータ及びその製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】外部電極間の絶縁性を保ちながら、小型化を可
能にする圧電アクチュエータ及びその製造方法を提供す
る。 【解決手段】複数の圧電体層と、圧電体層間に配設され
た内部電極と、前記内部電極が対向する2つの側面まで
引き出された構造を備えた積層型圧電体素子を複数個積
み重ねることにより形成される積層型圧電アクチュエー
タにおいて、前記積層型圧電アクチュエータの外表面上
の一部又は全てに、一体的に形成された導電性薄膜を備
え、前記導電性薄膜を１つ又は複数の溝を形成すること
によって対向する側面部間の電気的導通を断ち、1対の
外部電極を形成する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、積層型圧電体素子
を積み重ねることにより形成される積層型圧電アクチュ
エータ及びその製造方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来から、圧電アクチュエータは、通常
セラミックグリーンシートと内部電極を交互に積層して
焼成した親基板となるセラミック基板を、複数のワーク
に分割した後、各ワークの表面に外部電極となる導電性
薄膜を形成するという工程を経て製造される。

【０００３】従来の積層型圧電アクチュエータの構造に
ついて、図５を用いて説明する。図５は従来の圧電アク
チュエータの製造工程における１つの工程を示す斜視図
である。

【０００４】この工程においては、分割された各ワーク
は、金属製のマスク６によってマスキングされ、マスク
上部からの蒸着等によって表面に導電性薄膜が形成され
る。この際、1対の外部電極を分割して形成する目的か
ら、金属製マスク６の中央付近には桟部７が形成され、
これによって形成された導電性薄膜に電極ギャップがで
き、1対の外部電極２ａ、２ｂが構成される。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】ところで、圧電アクチ
ュエータの用途として、インクジェットプリンタのヘッ
ドに使われる場合がある。インクジェットプリンタのヘ
ッドは小型化の要求が激しく、小型化しようとすれば電
極ギャップは出来るだけ狭い方が幅寸法を小さく出来て
好都合である。しかしながら、金属製マスクの桟の幅を
短くすると、桟自体がマスクの製造時や蒸着時に熱など
の要因によって変形し、ワークに対して浮き上がってし
まい、蒸着時に蒸着粒子が浮き上がった桟部の下側に入
り込み、外部電極の絶縁性が取れなくなってしまうとい
う問題があった。また、この問題は圧電アクチュエータ
の寸法が長手方向に対して長くなるほど顕著であり、長
手方向の長さが２０ｍｍの場合、桟幅は１ｍｍ程度必要
となり、長手方向の長さが短いものでも桟幅は約０．６
ｍｍ程度は必要であり、それ以上の小型化が出来なかっ
た。

【０００６】本発明の圧電アクチュエータは、上述の問
題を鑑みてなされたものであり、これらの問題を解決
し、外部電極間の絶縁性を保ちながら、小型化を可能に
する圧電アクチュエータ及びその製造方法を提供するこ
とを目的としている。

【０００７】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
本発明の圧電アクチュエータは、複数の圧電体層と、複
数の内部電極とが積層された積層体に、前記内部電極の
所定のものとそれぞれ接続された一対の外部電極が形成
されてなる積層型圧電アクチュエータにおいて、前記一
対の外部電極が、前記積層体の表面の全部または一部に
形成された導電性薄膜を、前記積層体に形成された１つ
または複数の溝によって分離して構成されたものである
ことを特徴とする。

【０００８】また、駆動時に圧電効果による振動を起こ
す活性部の両側に、駆動時に圧電効果による振動をほと
んど起こさない不活性部を形成した積層型圧電アクチュ
エータにおいて、前記活性部の両側に形成された前記不
活性部が、前記活性部に対して非対称に形成されている
ことを特徴とする。

【０００９】さらに、前記積層体に形成された１つまた
は複数の溝が、前記不活性部のうち、不活性領域の広い
側に設けられたことを特徴とする。

【００１０】さらに、前記溝の幅が０．６ｍｍ以下であ
ることを特徴とする。

【００１１】さらに、複数の圧電体層と、複数の内部電
極とが積層された積層体に、前記内部電極の所定のもの
とそれぞれ接続された一対の外部電極が形成されてなる
積層型圧電アクチュエータの製造方法において、前記積
層体を粘着テープに貼着する工程、前記積層体に導電性
薄膜を形成する工程、前記積層体に溝を形成し、前記導
電性薄膜を電気的に分離して一対の外部電極を形成する
工程を含んでなることを特徴とする。

【００１２】これにより、圧電アクチュエータ素子の表
面に形成された導電性薄膜を確実に分割して絶縁性を確
保し、1対の外部電極とすることが可能になり、かつ幅
寸法の小さい圧電アクチュエータ素子の製造が可能にな
る。

【００１３】

【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例である積層
型圧電アクチュエータを、図１、図２、図３に基づいて
説明する。図１は本発明の一実施例に係る圧電アクチュ
エータの斜視図、図２は図１のａ―ａ’面における断面
図、図３（ａ）〜（ｄ）は本発明の圧電アクチュエータ
の製造工程における順序を表した斜視図である。

【００１４】まず図２を用いて、本発明の積層型圧電ア
クチュエータの内部構造について説明する。この圧電ア
クチュエータは、圧電体素子である複数のＰＺＴ（チタ
ン酸ジルコン酸鉛）系セラミック層４及び複数の内部電
極５ａ〜５ｉを交互に重ね合せ、一体焼成されている。
内部電極５ａ、５ｂ、５ｄ、５ｅ、５ｇ、５ｈは、各々
1層毎に対向する側面部に引き出されている。内部電極
５ｃ、５ｆ、５ｉは、各々内部電極５ｂ、５ｅ、５ｈに
対して厚み方向に差が生じないようにするために設けら
れた電極であって、いずれも内部電極５ａ、５ｄ、５ｇ
と同じ側の側面部に引き出されているため、電圧が印加
された場合でも、この部分では圧電効果はほとんど生じ
ない。

【００１５】次に図３（ａ）〜（ｄ）を用いて、この圧
電アクチュエータの製造工程について説明する。まず、
ＰＺＴ系セラミック層と内部電極とを積層し、一体焼成
した親基板となるセラミック基板８を作る（図３
（ａ））。これを伸縮性のある粘着シート９に張り付け
たうえ、ダイシング等によって、ワークと呼ばれる積層
型圧電アクチュエータ１の単位ごとに分割する（図３
（ｂ））。その後、粘着シートを伸長して各ワーク間の
隙間を広げ（図３（ｃ））、蒸着等によって各ワークの
外表面に導電性薄膜２を形成する（図３（ｄ））。その
後、さらにダイシング等により各ワークの長手方向に対
して導電性薄膜２を分割するように溝を形成する（図示
せず）。

【００１６】こうして製造された積層型圧電アクチュエ
ータを図１に示す。導電性薄膜２は溝３によって分断さ
れ、外部電極２ａ、２ｂを構成している。この時の溝３
の溝幅は約０．１ｍｍである。

【００１７】図２において、該圧電アクチュエータ１の
外部電極２ａ、２ｂ間に電圧を印加した場合、内部電極
５ａ、５ｂ、５ｄ、５ｅ、５ｇ、５ｈが重なり合ってい
る部分において、圧電効果による振動が生じる。この部
分を活性部と呼ぶ。また、内部電極５ａ、５ｃ、５ｄ、
５ｆ、５ｇ、５ｉが重なり合った部分はいずれも外部電
極２ｂに接続されているので電圧が印加されても同電位
となり、圧電効果は生じない。さらに、同図の左端部近
辺において、内部電極５ａ、５ｂ、５ｄ、５ｅ、５ｇ、
５ｈが重なり合っていない部分も圧電効果はほとんど生
じない。この部分を不活性部と呼ぶ。

【００１８】さらに、該圧電アクチュエータをインクジ
ェットプリンタのヘッドに用いた場合の斜視図を図４に
示す。通常、インクジェットプリンタ用ヘッドとして使
われる圧電アクチュエータは、活性部に対して、不活性
部を非対称に配置し、その不活性部の大きい方を固定部
として基板等に取り付けるため、固定部とされる不活性
部には十分なスペースが必要とされる一方で、かつヘッ
ド寸法の小型化も同時に求められている。本発明の圧電
アクチュエータにおいては、外部電極として形成された
導電性薄膜を溝によって分離することにより、幅寸法を
小さくしながら、固定部とされる不活性部のスペースを
十分取ることが出来る。

【００１９】

【発明の効果】以上のように本発明によれば、圧電アク
チュエータの外表面一面に、導電性薄膜を付着させた
後、ダイシング等により溝を形成することによって、１
対の外部電極を形成することができ、溝幅も約０．１ｍ
ｍ程度で十分に導電性薄膜を分断できるため、金属製マ
スクを用いて電極間ギャップを形成する従来の方法に比
べて、圧電アクチュエータの幅寸法を約１ｍｍ程度小型
化することが出来る。また、幅寸法を小型化しながら
も、不活性部を、活性部に対して非対称に配置すること
により、基板への固定等に必要な不活性部に十分なスペ
ースを得ることが出来る。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の積層型圧電アクチュエータの斜視図で
ある。

【図２】図１におけるａ―ａ’線断面図である。

【図３】本発明の積層型圧電アクチュエータの製造工程
順序を表した斜視図である。

【図４】本発明の積層型圧電アクチュエータを、インク
ジェットプリンタ用ヘッドとして搭載した場合の斜視図
である。

【図５】従来の積層型圧電アクチュエータの製造工程途
中における斜視図である。

【符号の説明】

１ 積層型圧電アクチュエータ ２ 導電性薄膜 ２ａ、２ｂ 外部電極 ３ 溝 ４ ＰＺＴ系セラミック層 ５ａ〜５ｉ 内部電極 ６ 金属製マスク ７ 桟部 ８ セラミック基板 ９ 粘着シート

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】複数の圧電体層と、複数の内部電極とが積
   層された積層体に、前記内部電極の所定のものとそれぞ
   れ接続された一対の外部電極が形成されてなる積層型圧
   電アクチュエータにおいて、 前記一対の外部電極が、前記積層体の表面の全部または
   一部に形成された導電性薄膜を、前記積層体に形成され
   た１つまたは複数の溝によって分離して構成されたもの
   であることを特徴とする積層型圧電アクチュエータ。
2. 【請求項２】駆動時に圧電効果による振動を起こす活性
   部の両側に、駆動時に圧電効果による振動をほとんど起
   こさない不活性部を形成した積層型圧電アクチュエータ
   において、 前記活性部の両側に形成された前記不活性部が、前記活
   性部に対して非対称に形成されていることを特徴とす
   る、請求項１に記載の積層型圧電アクチュエータ。
3. 【請求項３】前記積層体に形成された１つまたは複数の
   溝が、前記不活性部のうち、不活性領域の広い側に設け
   られたことを特徴とする、請求項２に記載の積層型圧電
   アクチュエータ。
4. 【請求項４】前記溝の幅が０．６ｍｍ以下であることを
   特徴とする請求項１または２に記載の積層型圧電アクチ
   ュエータ。
5. 【請求項５】複数の圧電体層と、複数の内部電極とが積
   層された積層体に、前記内部電極の所定のものとそれぞ
   れ接続された一対の外部電極が形成されてなる積層型圧
   電アクチュエータの製造方法において、 前記積層体を粘着テープに貼着する工程、 前記積層体に導電性薄膜を形成する工程、 前記積層体に溝を形成し、前記導電性薄膜を電気的に分
   離して一対の外部電極を形成する工程を含んでなること
   を特徴とする積層型圧電アクチュエータの製造方法。