JP2002532117A - 任意に活性物質をコードする遺伝子が移入された哺乳類細胞の調製物、及びそれらを含有する調製物 - Google Patents

任意に活性物質をコードする遺伝子が移入された哺乳類細胞の調製物、及びそれらを含有する調製物

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Abstract

(57)【要約】 本発明は一時的又は永続的な機能障害を生じさせる可能性があるサイズの該細胞の凝集体を含有しないことを特徴とする、任意に活性物質をコードする遺伝子が少なくとも一つ移入されており、患者への全身投与用の哺乳類細胞の調製物を目的とする。また、本発明は、医薬的に許容される運搬体及び該調製物から成る医薬組成物にも関す。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 本発明は、研究用モデルとしても、診断又は遺伝子治療、特に人間における脳
神経系疾患の治療、場合によっては動物における脳神経系疾患の治療にも有用で
ある遺伝子変更した哺乳類細胞に関する。
【0002】 人間における疾患の新しい治療法の中では、遺伝子治療、即ち、薬理物質とし
て機能する遺伝子の使用による疾患の表現型の、生体内における修正が発展して
いる。概要的に、遺伝子治療の方法は2種類区別できる: - 生体内戦略と呼ばれ、特定の遺伝子が宿主の細胞内に直接投与される戦略。 - 生体外戦略又は細胞遺伝子治療と呼ばれ、運搬体として選択した細胞を採取
し、培養し、移入遺伝子とも示される1つ又は複数の遺伝子を、管内でこれらの
細胞内に転移し、遺伝子変更した細胞を移植することから成る戦略。
【0003】 細胞遺伝子治療は、移入遺伝子の挿入及び発現が変更細胞の表現型に及ぼす影
響、移入遺伝子の複製数、移入遺伝子の転写率、生成された蛋白質の量及び蛋白
質の生物効果を、移植前に管内で確認できるという可能性等の否定し難い利点が
ある。表現型においても、所望蛋白質の発現においても均一である移植物を提供
するために、移植用の細胞個体群は精製しても良い。
【0004】 細胞遺伝子治療に使用されている細胞の中には、血管形成部位で治療物質を発
現する為に、遺伝子変更された非不死化内皮細胞を静脈経由で投与することが、
PCT国際特許出願WO93/13807号に提案されている。
【0005】 しかし、全ての内皮細胞が同一であるとは限らないことに注意するべきである
。即ち、成人の内皮細胞は、臓器間のみならず、同一臓器にて各種直径の血管間
でも極めて不均一な細胞個体群となっている。内皮の不均一性は形態差のみなら
ず、一つ又は複数の内皮細胞個体群に対して特異性を有す分子標識を発現するこ
とも特徴となる。例えば、中央神経系において、脳微細血管の内皮細胞は、脳柔
組織の星状細胞と一緒に血液脳関門を形成する。
【0006】 遺伝子治療用哺乳類細胞の調製物を開発するには、該細胞の均一性及び特徴付
けが問題となる。この問題の効果的な解決法は、細胞を不死化させることにある
。従って従来のものには、腫瘍も含めた神経疾患の治療に有用である移入遺伝子
を場合によっては有する不死化脳内皮細胞株又は網膜の内皮及び上皮細胞株が記
述されてある。特に、出願者のPCT国際特許出願WO96/11278号及び第WO97/40139
号に報告されてある研究が挙げられる。
【0007】 哺乳類細胞、特に脳内皮細胞に関する出願者の研究により、患者の疾患に対す
る遺伝子治療の効果的な工程の実施を可能とする、大量かつ均一であり完璧に特
徴付けされた移植用又は注射用の資料を得ることが出来た。従って、本発明にお
いて、中央神経系を灌注する血液区画内に注射した後、移入遺伝子を発現しない
RBE4細胞、移入遺伝子を発現するRBEZ及びRBE4/GFP細胞等の遺伝子変更不死化
脳内皮細胞は生き延び、脳微細血管の血管壁及び脳柔組織と統合する能力がある
。このアプローチの利点を確証するには、細胞の調製物及びこれらを含有し、注
射された組成物の開発と注射の手順において技術を極める必要があった。
【0008】 即ち、出願者の動物内への細胞の注射に関する研究は、注射された組成物にお
いての細胞凝集体の存在による、例えば脳血管障害又は肺塞栓症等の有毒効果を
明確にした。しかし、意外にも、細胞凝集体が注射時に存在することにより誘導
される有毒効果は、今まで考慮されていなかったようである。しかしながら、従
来の技術において、診断又は治療を実行する為に活性分子と結合した、又は結合
していない粒子を注射することが提案されている。例えば、以下の、サイズが正
確に定義された合成微球体に関して行われた研究が挙げられる: - 75〜150ミクロンの球体を心臓血管内へ注射すると心筋壊死が発生する(Bat
tlerら、1993、J. Am Coll. Cardiol.、22:2001-2006)、 - 7ミクロンの球体を心筋1グラム当り粒子105個の割合で豚の動脈内へ注射し
ても心筋組織における有毒効果は発生しない(Arrasら、1998、Nature Biotechn
ology、16:159-162)、 - 直径48ミクロンの微球体(900個の微球体)を右内頚動脈内に注射すると、
頭頂側頭皮質内で脳梗塞が発生する(Miyakeら、1993、Stroke、24:415-420)
【0009】 更に、断層撮影法により脳の梗塞領域を検出する為に、放射標識されたサイズ
15〜30ミクロンのアルブミン微球体を、人間の総頚動脈内又は内頚動脈内に注射
したことが記述されてある(Verhasら、1976、J. Nucl. Med.、17:170-174)が
、有毒効果は一切報告されていない。
【0010】 生成した粒子が生体に有毒効果を及ぼす可能性がある対外循環の分野では、潜
在的に有毒な粒子の数を90%低下させる為に、20ミクロンのフィルターを使用す
ることが提案されている(Loopら、1976、Ann. Thorac. Surg.、21:412-420)
【0011】 しかしながら上記の如く、数少ない従来の技術における細胞、特に内皮細胞の
注射に関する研究は、細胞凝集体の存在に起因する、注射された細胞組成物の有
毒効果は報告していない。従って、PCT国際特許出願WO93/13807号は、2 x 106
非不死化内皮細胞のマウス尾の静脈を介した静脈注射を記述し、細胞凝集体の形
成に関連する有毒効果の観察は挙げていない(Ojeifoら、1995、Cancer Res.、5
5:2240-2244)。実際に、有毒効果が一切観察されなかったことを仮定した場合
、30gのマウスに注射した細胞数が2 x 106程度の少数、即ち、本発明において30
0gのラットで実行されたよりも2倍少ない数では、細胞凝集体が形成されても有
毒効果が誘導されない可能性がある。
【0012】 同じく、2 x 106の非不死化細胞をラットの下肢内に(大腿内的に)動脈注射
した研究の著者は、有毒効果を報告せず、細胞凝集体形成による問題も全く報告
していない(Messinaら、1992、Proc. Natl. Acad. Sci.、89:12018-12022)。
これらの研究は、注射に起因する有毒効果に関するものではないが、注射された
細胞の数が本発明で実行される際のものよりも50倍少ないことに注意するべきで
ある。更に、これらの研究の対象となる標的は、虚血に対する耐性が他の臓器よ
りも高い下肢の血管である。尚、実験者が、大腿動脈を一時間鉗子で締め付けた
ことにより血流の減少を可能とし、これにより細胞の血管障壁での接着が有利に
なったことが示されている。
【0013】 従って、本発明の目的は、細胞調製物の注射による有毒効果を妨害することを
可能とする効果的で簡単な解決法を提供し、これにより細胞調製物の人間医学上
での適用を発展させることである。
【0014】 全身投与するための、任意に活性物質をコードする遺伝子を少なくとも一つ移
入した、不死化哺乳類細胞の調製物であり、一時的又は永続的な機能障害を生じ
させる可能性があるサイズの該細胞の凝集体を含有しないことを特徴とする調製
物によりこの目的を達する。
【0015】 好ましくは不死化細胞は非腫瘍形成性のものである。
【0016】 従って、本発明の調製物は、1マイクロリットル当り細胞1000〜300000個程度
の大数の細胞を含有でき、肺塞栓症、脳虚血傷害、末梢性虚血、更に死亡のよう
な、一時的又は永続的な臓器の血液供給の減少を引き起こすような有毒効果を誘
導せずに、診断又は治療において効果的な生物効果を得ることができる。
【0017】 本発明において実行された実験により、細胞を含有する調製物の全身注射時に
、有毒効果を誘導する可能性がある凝集体のサイズを特徴付けできた。従って本
発明の調製物は、有利的にはサイズが約200ミクロン以上、好ましくは50ミクロ
ン以上、特に好ましくは30ミクロン以上の細胞凝集体は含有しない。
【0018】 脳内皮細胞又は末梢性内皮細胞及びそれらの前駆体等の内胚葉細胞、表皮細胞
又は中胚葉細胞、脈絡叢細胞、上皮細胞、網膜色素細胞、上衣細胞、第三脳室の
上衣細胞(tanycyte)、神経幹細胞及び神経前駆細胞、更に胚性幹細胞等いずれ
の種類の不死化又は非不死化の細胞が、本発明の調製物の成分として含むことが
できる。
【0019】 中でも本発明は、特に哺乳類の内皮細胞及び上皮細胞、好ましくは脳又は網膜
の内皮細胞及び上皮細胞に関する。
【0020】 細胞の不死化は、WO96/11278号及びWO97/40139号として公開されたPCT特許出
願に記述されている如く、当業者に既知のいかなる方法によって実行しても良い
。不死化細胞が大量生成に際して、高度な資質の規準化を示すという利点がある
ため、本発明において特に好ましいのは不死化細胞である。不死化細胞は、上記
PCT出願に記述の如く、当業者に既知のあらゆる方法によって得られた非腫瘍形
成的特性を有す。
【0021】 本発明の調製物を投与された患者において、一時的又は永続的な機能障害を引
き起こす可能性のある細胞凝集体の非存在は、あらゆる生物的、化学的又は物理
的な細胞処理により、凝集体の形成を妨害する、又はサイズが約200ミクロン以
上、好ましくは50ミクロン以上、特に好ましくは30ミクロン以上の該細胞の凝集
体を特異的に除去する処理によって達成できる。この処理後、好ましくは細胞は
、これらの生存を可能とし、該細胞の再凝集を促進させない倍液で懸濁する。こ
のような倍液の例としてカルシウムもマグネシウムも含まないグルコース含有PB
S等のいかなる凝集をも促進させない栄養倍液が挙げられる。
【0022】 本発明による細胞の生物的処理は、例えば内皮細胞を特殊な基準の接着性のた
めに選択したり、凝集体の形成を妨害する物質、又は該細胞の凝集を促進させる
物質の発現を抑制する物質を発現する核酸配列により、該細胞を遺伝子的に変更
することから成る。
【0023】 即ち、二つのアプローチが実施できる: - ZO1、ZO2、E-セレクチン、V.E. カドヘリン、ICAM-1、オクルディン、P-CAM
等の接着分子をコードする配列の削除、又は - 上記接着分子の優性陰性のもの等、凝集体の形成を妨害する分子をコードす
る配列、又は擬似蛋白質をコードする配列の挿入。
【0024】 本発明による細胞の物理的処理は、例えば、ろ過又は篩分けから成る。このろ
過又は篩分けは、凝集体の排除の他に、サイズが均一の細胞個体群が得られると
いう利点を提供する。このろ過又は篩分けは、次の手順で行われる:細胞は、好
ましくは30ミクロンの篩い分け用フィルターによりろ過され、例えば多数のピペ
ット操作により希釈して緩やかに解離し、次に細胞の懸濁液を注射器により吸引
させる。フィルターは予め無菌生理食塩水で浸しておき、100度のアルコールで
殺菌し、空気乾燥し、無菌生理食塩水で再度浸した。次にフィルターを針と細胞
を含有する注射器の先端の間に配置する。ピストンは、希釈した細胞の流動が一
滴ずつになるように注意深く押す。
【0025】 しかし、物理的処理は「Fluorescent Analysis Cell Sorting(蛍光活性化細
胞分類法)」FACS型の分類法から成ってもよい。
【0026】 本発明による細胞の化学的処理は、例えば、細胞をトリプシン処理したり、他
の蛋白質分解酵素で処理することから成る。
【0027】 本発明の調製物の細胞は、治療又は診断に有用な活性物質をコードする遺伝子
を一つ又は複数移入したもの、又はしていないものでも良い。本発明において、
活性物質をコードする遺伝子を一つ又は複数移入することとは、ゲノムと統合し
た、又は細胞の細胞質内に存在し、直接に或いは間接的に活性物質と成るウィル
ス・ベクター、ポリペプチド、又は蛋白質を発現できることを可能とする発現用
ベクター等の核酸断片を細胞に移入することを意味する。例として、内容を参考
として本出願に含めたPCT特許出願第WO96/11278号に記述された、調製物の活性
物質をコードする遺伝子を移入した不死化脳内皮細胞が挙げられる。
【0028】 本発明は更に、医薬品の調製における前記細胞調製物の使用に関し、該医薬品
は、患者に対して十分な量の該細胞を全身投与する遺伝子治療による疾患の診断
、又は治療に使用するものである。
【0029】 従って発明は更に、患者において全身投与する医薬組成物であり、上記と同様
の細胞調製物を、医薬的に妥当であり、該細胞の生存を可能とし、これらの再凝
集を促進させない運搬体と結合して該組成物内に含むことを特徴とする医薬組成
物を目的とする。医薬組成物とは、治療用及び診断用組成物の両方を意味する。
【0030】 本発明の調製物を患者に注射したとき、一時的又は永続的な機能障害を生じさ
せる可能性がない凝集体のサイズは、投与経路に基づく。即ち、臓器選択的動脈
注射物質は、予め肺等のろ過性臓器を通過することなく該臓器内に到達する。従
って、動脈注射用の妥当な凝集体のサイズは、静脈注射用のものよりも小さい。
即ち、肘静脈に注射した後、肺のろ過器が機能し、他の臓器内に凝集体が存在す
ることを制限できる。しかし、予めろ過処理を受けていない内皮細胞を注射した
時、恐らく肺塞栓症による動物の死亡を出願者が観察していることから、静脈注
射に際しての有毒効果の危険は存在する。
【0031】 更に、従来の技術におけるデータの分析、及び出願者により実行された実験は
、サイズが40ミクロン以上の球体が、動脈経路で標的細胞に有毒効果を及ぼす可
能性があることを示している。従って、例えば内皮細胞の細胞群が、球体と同様
に作用すると考えると、本発明において30ミクロン以上の凝集体を除去すること
が望ましい。しかし、微少血管内における細胞の変形性の物理的基準は、合成粒
子のものと異なり、このパラメータは細胞処理時に考慮する必要がある。細胞処
理は、例えばろ過であり、30ミクロンのフィルターの使用により最高で30ミクロ
ン以上の凝集体を除去でき、従って、最低90%残った細胞は個別した細胞であり
、その平均直径は、例えば内皮細胞の場合10ミクロンである。
【0032】 従って、本発明は特に、 - 一方では、サイズが50ミクロン以上、好ましくは30ミクロン以上の細胞の凝
集体を含まない細胞調製物を含有することを特徴とする、患者に動脈内経路、好
ましくは頚動脈内経路で投与するための調製物、及び - 他方では、サイズが200ミクロン以上、好ましくは100ミクロン以上の細胞凝
集体を含まない細胞調製物を含むことを特徴とする、患者に静脈内経路で投与す
るための調製物に関する。
【0033】 標的となる臓器又は組織に注射する細胞の選択に際して、これら二つの投与経
路を考慮するべきである。即ち、標的となる臓器を直接に灌注する動脈に本発明
の調製物を注射して、臓器を標的化することが好ましい。
【0034】 逆に、該調製物の静脈内経路の注射において、標的となる臓器又は組織に対し
て、特異性を有す細胞を選択する又は該特異性を細胞に与えることが必要となる
。例えば、特異的接着性を有す内皮細胞の選択、又は標的臓器で要求される特性
を該細胞に与える遺伝子変更が挙げられる。
【0035】 動脈内の注射経路、中央神経系に関する適用で好ましくは頚動脈内経路は、本
発明の組成物の好ましい実施様態である。即ち、最も幅広い生体分布を可能とす
る全身注射の方が最適であるようだが、本発明の組成物を実施する遺伝子治療の
工程を最適化するための出願者によるこのパラメータの分析により、特に好まし
くは、中央神経系に最も近接な血路である頚動脈血管網を選ぶことにした。この
血管網は、人間の中央神経系の正常な機能に必要な脳血流の80%を供給し、人間
の臨床のみならず、動物に対しての実験者にも利用可能である。
【0036】 即ち、本発明において発明者は、血流に影響を及ぼさない内皮細胞の頚動脈内
への注射が実行可能であることを示した。この投与経路を選択したことにより、
脳血流の変動を最小限にすることが可能である。即ち、この手順を実行中、内頚
動脈の血流は全く中断されない。更に、対照動物において行った分析によると、
実質性影響は全く認められなかった。ラットにおいて、注射は一般的頚動脈循環
で行われ、対象の領域全体に分布される。人間においては、介入性神経放射線学
の手法により、カテーテルを用いて、中大脳動脈、前大脳動脈又は後大脳動脈、
更にこれらの動脈枝等のより小さい血管に注射することは、従って潜在的により
優れた標的化及びより少ない有毒効果を得ることが可能である。これらの手法は
、当然浸襲性法であるが、同様の手順を必要とする動脈造影法よりも、浸襲性が
高度であるという訳ではない。逆に、遺伝子治療用の生成物を送達するための脳
室内注射、又は脳内注射における操作よりもはるかに浸襲性が低い。
【0037】 ある条件において、頚動脈注射は、死亡及び実質傷害を引き起こした。死亡は
一般的に即時的であり、大半が呼吸困難に関連するものであった。最も可能性の
高い原因は、細胞の注射が致命的な肺塞栓症を引き起こしていたことである。実
質傷害は、内皮細胞の数が高かった場合、及び細胞懸濁液がろ過されていなかっ
た場合に発生した。これらのデータは、脳実質傷害及び死亡がろ過後に最小化さ
れることから、細胞凝集体が脳実質傷害及び死亡の原因であるという本発明の概
念を確証するものである。脳実質傷害は、T2にて高信号として表示され、かつ内
頚動脈の血管領域に配置されていることから、脳梗塞に相当する可能性が最も高
い。ろ過により、これらの有毒効果をほぼ完全に除去することができた。注射側
の側脳室の膨張が観察されたこともあったが、少なかった。
【0038】 前記の如く、本発明の組成物内における凝集体の非存在は、従来の技術による
ものより、大量の細胞を含む組成物を得ることができる。即ち、本発明の組成物
は組成物1マイクロリットル当り1,000〜300,000個の細胞を含む。
【0039】 本発明の組成物は、特に遺伝子治療の領域で有用であるが、診断においての使
用も考慮できる。
【0040】 本発明の組成物の治療適用例として、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハ
ンチントン舞踏病等の神経変性疾患、脳血管障害、癌、眼球の疾患、リウマチ性
多発関節炎等の炎症性疾患、免疫疾患の、動脈又は静脈の奇形治療及び/又は予
防が挙げられる。
【0041】 上記治療適用の中から、本発明は特に、患者の中央神経系疾患の遺伝子治療法
において、全身経投与、好ましくは動脈投与するための医薬組成物であり、該組
成物に含まれる調製物の細胞が、神経疾患の治療又は予防において活性を有す物
質をコードする遺伝子を、少なくとも一つ移入したものであることを特徴とする
医薬組成物に関する。
【0042】 中央神経系疾患とは、中央神経系そのもの、眼球、特に網膜、及び中央神経系
を構成する又は灌注する血管を示す。中央神経系疾患の例としては、脳腫瘍、脳
梗塞、前記同様の神経変性疾患、動脈瘤又は単なる静脈瘤等の動静脈奇形又は単
なる動脈奇形、眼疾患、特に網膜変性疾患が挙げられる。
【0043】 従って、本発明の組成物の細胞は、以下の病状の治療及び/又は予防において
活性を有す物質をコードする遺伝子を移入したものである。
【0044】 細胞に移入した遺伝子によりコードされる物質は、直接又は間接的に活性化、
即ち: - 第一の物質或いはそれをコードする遺伝子と相互作用する第二の物質を患者
に投与すること、又は - エネルギー源に曝露すること、又は - 自然に生体内に存在する物質により変形することを、 治療効果を実施する為に必要とするものでも良い。
【0045】 物質及び遺伝子は、特に次の中から選ばれるものが挙げられる:成長因子、抗
アポトーシス剤、キラー遺伝子、抗蛋白分解酵素、免疫調整剤、腫瘍抑制剤、細
胞周期を遮断する遺伝子、又は当業者に既知の中央神経系疾患の予防又は治療に
有用な、いかなる遺伝子又は活性物質。
【0046】 中央神経系疾患の治療に有用な本発明の組成物は、例えば、細胞を治療する患
者の体重1キログラム当り100万〜2億個投与できるように用量調節してある。
【0047】 本発明では特に、この中央神経系での適用において、好ましくは不死化した脳
内皮細胞を考慮している。
【0048】 実際に、中央神経系の限られた領域における障害に起因する神経欠損に適用す
る遺伝子変更細胞の脳内移植による遺伝子治療が知られている。この治療法では
、小さい移植体が量の治療分子を生成することにより、正常な機能を回復させる
ことが可能である。脳実質内での直接的な機械的直移植により、届く範囲よりも
幅広い領域を対象とするには、全身経路による注射が最適と思われる。即ち、血
路は従来の治療物質の投与経路であり、最も幅広い生体分布を可能とする。この
注射のアプローチを細胞遺伝子治療に拡張するためには、脳内皮細胞が現在最適
の手段と思われる。
【0049】 しかしながら、中央神経の遺伝子治療は、中央神経を構成する各種細胞の型数
、そして特にそれらの結合の数及び複雑性という一部の問題に衝突する。更に、
中央神経系の特徴である血液脳関門の存在により、中央神経系の治療において、
脳に到達することが困難であり、新しい治療物質の開発が複雑になり、従ってこ
れらの物質の使用が頭蓋内注射及び眼内注射に制限されている。
【0050】 出願者は、脳内皮細胞が中央神経系の遺伝子治療において、優れた運搬体とし
ての可能性を有することを明らかにした。即ち、血管網を構成している脳内皮細
胞は、血液と脳実質の境目に存在し、中央神経系の特徴である血液脳関門を形成
している。更に、脳内移植後、これらの脳内皮細胞が中央神経系にて生存し、植
込まれる能力があることが解明された(Quinoneroら、Gene therapy、1997、4、
111-119)。
【0051】 本発明に関する研究は、異なった3つの技法、ビスベンズイミド染色及びレポ
ーター遺伝子(ベータガラクトシダーゼ及びGFP)により、内皮細胞が、一方で
は血管と統合し、他方では血管の管空外で実質内にて生存できることを解明した
。即ちこれらの結果は、脳内にて移入遺伝子を発現できることを示す。本発明の
組成物の治療潜在性は、特に中央神経系疾患を目的とする。特にこのアプローチ
の対象となる疾患は、脳腫瘍及び脳梗塞である。神経変性疾患特にパーキンソン
病、アルツハイマー病、ハンチントン病も対象になる。
【0052】 従って本発明は、特に、場合によっては活性物質をコードする遺伝子を移入し
た不死化脳内皮細胞の、十分な量の該細胞を患者に動脈投与(頚動脈投与)する
ことにより、中央神経系に該活性物質を送達する中央神経系疾患の遺伝子治療に
よる治療又は予防用の医薬調製での使用を目的とする。
【0053】 I 資料及び方法 次の3つの細胞株を使用した:親株であるRBE4、及びRBE4由来の株であるRBEZ
株及びRBE4/GFP株。RBEZ株及びRBE4/GFP株は国際特許出願WO96/11278号に記述さ
れてある。
【0054】 アデノウィルス2型のE1A配列を含む不死化プラスミドを、初代培養のルイスラ
ット脳内皮細胞に移入して、RBE4株を得た。RBE4細胞及びRBE4由来の細胞の培養
条件は、既に記述されてある(Durieu-Trautmannら、Frontiers in CVB、1993、
331:205-210)。
【0055】 RBE4細胞を、核局在配列(nls)に結合したE. coliのベータガラクトシダーゼ
をコードするLacZ遺伝子を含有する非複製的MFG-NBレトロウィルスベクターと接
触させて、RBEZ細胞を得た(Lalら、PNAS、1944、91:9695-9699)。次に、RBEZ
細胞をベータガラクトシダーゼの蛍光基質であるフルオロセイン・ジ・ベータガ
ラクトピラノシドを用いて、FACS法(fluorescent-activted cell sorting)に
より選択した(Lalら、PNAS、1944、91:9695-9699)。
【0056】 ユビキチン・プロモータの制御下のGFP配列を含有する構成物をRBE4細胞に移
入し、GFP(Green Fluorescent Protein)を発現するRBE4/GFP株を得た。
【0057】 II 細胞の調製及び標識化 培養中の細胞は、トリプシンにより分離し、数回濯ぎ、1マイクロリットル当
り細胞30万の初期濃度で溶液にて懸濁した。希釈液は、カルシウム及びマグネシ
ウムを含んだグルコース(10 mMol)含有PBS、又はカルシウムもマグネシウムも
含まないグルコース含有PBS。注射には、様々な濃度の細胞を使用した。これら
の細胞の最終濃度は1ミクロリットル当り1万〜30万の細胞であった。注射した全
体積は500〜1000ミクロリットルであった。
【0058】 培養中のRBE4細胞を、予め7.5 mg/mlのビスベンズイミド(Hoechst 33342、シ
グマ社)で15分間、37℃で標識化した。この核染色剤は、蛍光顕微鏡の紫外線下
青色に蛍光するものである。
【0059】 III 細胞ろ過 場合によっては、最終溶液は30ミクロンの篩用フィルター(篩用ナイロンフィ
ルター#87404 NY 30 HC、ポリラボ社)で、次の手順に従ってろ過した:初期濃
度の細胞を希釈液に入れ希釈するために、P200ピペットの黄色チップを用いて吸
引した。次に細胞は、P1000ピペット及び相当する青色チップの使用により、調
製物を多数のピペット操作で処理することで希釈し、緩やかに解離した。次に細
胞の懸濁液を18ゲージのピンク色注射針を備えた1 mlの注射器により吸引した。
30ミクロンのフィルターは予め無菌生理食塩水で浸しておき、100度のアルコー
ルで殺菌し、空気乾燥し、無菌生理食塩水で再度浸した。次にフィルターは、注
射針と細胞を含有する注射器の先端の間に配置する。ピストンは、希釈した細胞
の流動が一滴ずつになるように注意深く押される。ピストンの押し込みが困難で
ある場合、フィルターを交換する。この交換作業は1 ml当り2回まで可能である
。細胞の生存率は、ろ過前及びろ過後に、トリパンブルーによる染色後、Malass
ez式セルで読み取り、測定した。
【0060】 IV 頚動脈注射 揮発性吸入麻酔薬(イソフルラン)含有の酸素と亜酸化窒素の混合ガスにより
体重平均300gの成人雄ルイスラット(Iffa-Credo)に麻酔をかけた。イソフルラ
ン5%による誘導後、通常30〜40分かかる手術の間1%の濃度を保持した。皮膚及
び皮下切開は単極の電気メスを用いて行った。次に筋肉組織を開いて総頚動脈の
左側に頚動脈枝、外頚動脈及び内頚動脈を十分に露出した。注意深く頚動脈枝を
切開した後、外頚動脈の側副枝を2極式熱凝固装置を用いて焼灼した。更に外頚
動脈の頭部側末端を熱凝固処理し、出来るだけ長いカテーテル処置可能の断端を
得た。次に、予め希釈したへパリンに浸けた血管用クリップ(動静脈奇形用のSU
NDT型)を外頚動脈上、頚動脈枝近接に配置する。動脈循環から除かれた断端の
カテーテル処置は、予め希釈したへパリンで洗浄した小翼付きビアロン(Vialon
)製カテーテルを用いて行う。カテーテルと断端を一体化する為に、カテーテル
周辺の動脈の縁に強力接着剤(Loctite)を一滴着ける。クリップを開くことに
より、動脈血液をカテーテル内に逆流させ、場合により生じた凝血を排出させる
。細胞を含めた注射器をカテーテルの開口に設置する為に、再度血流を遮断する
。次に血流を再現させ、手動で、又は総頚動脈からの血液とカテーテルからの溶
液の液流が平衡になるようにその速度を予め調節した注射器用電動ポンプで注射
する。注射は手術用ルーペ(Leica)で確認しながら行う。注射終了後、総頚動
脈及び内頚動脈の血流が確実に保持されていることを確認しながら断端を焼灼す
る。参考動物は上記同様の手術を受けたが、細胞培養の希釈用緩衝液のみ、即ち
細胞を含まないものを注射した。
【0061】 V 画像による組織の研究 ラットの一部では、7テスラの装置(Varian装置)による脳MRI、更には分光分
析を行った。大脳全部の1 mmの連続冠状断面、及び前大脳(嗅球を除く端脳及び
間脳)を中心とした500ミクロンの連続冠状断面でMRI画像を作成した。大半の場
合、T2により加重したシーケンスを用いた。まれに24時間以前にMRIを実行した
場合には、T2のシーケンスでは観られない可能性がある傷害を確認するために、
拡散シーケンスを追加した。MRIにより、脳に実質的な異常が観られなかった場
合、分光法により、同じ動物において右左の分光プロフィールを比較した。
【0062】 VI 組織的研究 注射後それぞれの時間を置いて動物を屠殺した。即時に屠殺した場合、各種臓
器(脳、心臓、肝臓、腎臓、眼球、脾臓、精巣、左頚動脈)を採取し、液体窒素
により冷却されたイソペンタン内で即時に凍結した。時間を置いて屠殺した動物
の場合は、まずPBS 100 mlで、続いて4% PFA 500 mlで、経心臓の潅流をした。
採取した脳は、2〜4時間4% PFA内で後固定し、48時間ショ糖(20〜30%)内で凍
結保護した。その後、脳はイソペンタン内で凍結した。全ての組織は、スライド
に固定された厚さ30ミクロン(全臓器)の切片、又は厚さ40ミクロン(脳)の浮
遊切片を得るためにクリオスタットで薄切した。次に、RBEZ細胞を使用した場合
、浮遊切片はWeisらにより記述された技法(1991)に従い、X-galを含有する溶
液で3時間半インキュベートした。参考組織は常に同時に処理した。
【0063】 VII 結果 48匹のラットを手術、注射の対象とした。9匹が手動の注射を受け、39匹が、
発明者がデザインした携帯電気モーターによる低速で安定した注射を受けた。最
初の手術では、総頚動脈及び内頚動脈での注射において、血栓症の非存在が認め
られた。
【0064】 1) 死亡率 7匹のラットが早期死亡し、その内5匹が注射後数分で死亡し、呼吸混乱らしき
問題(n=3)、痙攣を含めた神経障害(n=1)が観られ、又は一見確かな原因が
観られなかった(n=1)。全ての場合、これらの死亡はフィルターの使用前に発
生したものである。ラット7匹中6匹に注射した投与量は細胞5千万個であった。
参考群で死亡は全く認められなかった。
【0065】 2)組織的有毒効果 a)MRI及び分光法 遺伝子変更した内皮細胞の頚動脈注射による組織傷害を研究するために脳MRI
及び分光学的研究を行った。付録の図1及び図2に示す脳MRIは形態的データをを
提供し、分光法は化学的データを提供する。分光法は特にMRIが正常であった場
合に実行した。20件のMRI(ラット第17号、第18号、第20号、第22号、第23号、
第24号、第25号、第26号、第27号、第29号、第30号(2回)、第31号、第32号、
第33号、第34号、第35号、第37号、第38号、第39号)及び6件の分光を行った。
これらは参考動物では常に正常であった(n=3)。
【0066】 図1の写真には、T2により加重したシーケンスの1 mmの連続MRI冠状断面が観れ
る。A、B、C:非ろ過RBEZ細胞2千5百万個注射;D、E、F:ろ過済みRBEZ細胞2
千5百万個注射。A、B、Cでは:注射と同側の皮質及び左被殻にて高シグナルが
観られ、これは脳梗塞の徴候である;左右の側脳室(高シグナルが傷害のものよ
りも強度かつ均一である)が膨張している;更に傷害は、中線の移動を含める質
量効果を引き起している。D、E、Fでは実質の高シグナル、脳室の膨張及び質量
効果の非存在が観られる。
【0067】 図2では、予めビスベンズイミドで標識化し、紫外線内での放射による落射蛍
光法で視覚化したRBE4細胞の認識を可能とする脳の組織的冠状断面が観られる。
A〜Dは、頚動脈注射数分後の脳実質の観察である。F、Gは7日後の観察である。B
及びCにおける矢印は、標識化した細胞を脳内微細血管において識別するもので
ある。標識化した細胞の脈絡叢内の存在をEにおいて示す。Fにおける矢印は、ポ
ジティブ細胞を発現する血管を示すものである。Gにおける矢印は、脈絡叢内の
標識化細胞を示す。
【0068】 2匹のラットにおいて、MRIを細胞の注射後約15時間後に行い、この内一匹の場
合、実質的変化を確実に可視化するために、T2シーケンスの他に拡散シーケンス
を行った。他の場合、MRIは注射後4〜7日後に行った。ろ過の手順前は13件のMRI
、その後は7件のMRIを行った。ろ過前は、千万個の細胞を注射したラット(n=3
)では、MRI及び分光により実質的傷害は検出されなかったが、3匹中2匹におい
ても、注射した頚動脈に相当する左側の脳室に膨張が観られた。2千5百万個の
細胞を注射したラット(n=4)においては、3匹に脳室膨張が観られたが、実質
の異常は無く、ラットの一匹は実質の高シグナルを示した。
【0069】 ろ過の手順を適用した後では、2千5百万個の細胞を注射したラット(n=2)
の脳には実質的高シグナルは観られなかったが、一匹においては脳室の膨張が認
められた。5千百万個の細胞を注射したラット(n=4)中、一匹のみの脳に左皮
質に高シグナルが観られた。しかしながらこのラットは、血液脳関門を開くため
に予めマンニトールによる処理を受けていた。残った3匹中別の1匹は、注射と
同側の脳室の膨張を示した。
【0070】 b)注射を受けた組織の組織学 ろ過済みの細胞を注射した後、ニッスル色素(クレシルバイオレット)では、
確実な実質の傷害は示されなかった。反対に、ろ過前では、細胞の注射は組織的
異常を引き起こした。これらの異常は、一方では、脳における各種層の積層の領
域的損失と伴う細胞の損失、他方ではミクログリア及び星状細胞の炎症反応の徴
候である細胞過多であった。
【0071】 3)細胞の位置付け a)予めビスベンズイミドで標識化したRBE4細胞の同定 ビスベンズイミドで標識化したRBE4内皮細胞を注射した後、図3に示す如く、
細胞は脳内微細血管において明確に確認された。注射7日後、幾つかの細胞が未
だ血管と一体して観れるが、実質内においても同様である。
【0072】 図3は、Aにおいて脳内血管の内腔と一体化したRBEZ細胞を示す。Bでは、実質
内かつ内腔外に位置されたRBEZを示す。C(Bの拡大)では血管の縁(黒矢印)に
注意すべきである。
【0073】 b)X-gal染色によるRBEZ細胞の同定 RBEZ細胞の全身移植は、注射7日後、血管と一体化した又は血管壁から距離を
置いた実質内にて、核が青色の細胞を認識することが可能である。X-gal標識の
核における配置は、核用染色であるビスベンズイミド(Hoechst)による切片の
標識化により確認した。標識が確かに核におけるものであった場合、Hoechstの
蛍光標識は、X-gal染色によりマスクされた。逆に、標識が細胞質におけるもの
であった場合、核における標識は確かに観察可能であり、マクロファージ細胞の
特徴である内因性ベータガラクトシダーゼの発現の徴候である。
【0074】 c)落射蛍光法によるGFP細胞の同定 GFPを発現する細胞は、GFP内皮細胞の注射後、1、3、5日後に、緑色の蛍光染
色として観察可能であった。ビスベンズイミドによる核の対比染色 が裏付した
と同様に、GFPの緑色の標識は、細胞の細胞質及び核内両方において観察可能で
あった。2種類の形態の内皮細胞が観られた。一方は、単離した丸型の細胞であ
り血管内に位置した様子であるもの、他方は細長い細胞であり、実質内にて頻繁
に2個の群としたものである。
【図面の簡単な説明】
本発明の他の利点及び特徴は、以下の、活性物質をコードする遺伝子を移入し
た不死化脳内皮細胞、及びそれらを患者に動脈投与する中央神経系疾患の遺伝子
治療による治療の医薬調製での使用の例により明らかになる。これらの例は付録
の図面を参考とするものであり、
【図1】 内皮細胞の注射による実質傷害を表示する。
【図2】 予め標識化したRBE4細胞の脳においての確認を表示する。
【図3】 X-Galによる核内ベータガラクトシダーゼの現像後のRBEZ細胞の脳においての
確認を表示する。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML, MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K E,LS,MW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZW ),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU, TJ,TM),AE,AL,AM,AT,AU,AZ, BA,BB,BG,BR,BY,CA,CH,CN,C R,CU,CZ,DE,DK,DM,EE,ES,FI ,GB,GD,GE,GH,GM,HR,HU,ID, IL,IN,IS,JP,KE,KG,KP,KR,K Z,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,MA ,MD,MG,MK,MN,MW,MX,NO,NZ, PL,PT,RO,RU,SD,SE,SG,SI,S K,SL,TJ,TM,TR,TT,TZ,UA,UG ,US,UZ,VN,YU,ZA,ZW (71)出願人 Batiment Genopole−I ndustries、4、rue Pie rre Fontaine、F−91000 EVRY、France Fターム(参考) 4B024 AA01 AA10 CA02 DA02 DA03 GA11 HA17 4B065 AA90X AA93X AC20 CA24 CA44 4C084 AA13 CA25 CA53 CA56 MA66 NA10 ZA02 4C087 AA01 BB63 BB64 BB65 CA12 NA10 ZA02

Claims (16)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】任意に活性物質をコードする遺伝子が少なくとも一つ移入され
    ており、患者への全身投与用の哺乳類細胞の調製物であって、一時的又は永続的
    な機能障害を生じさせる可能性があるサイズの該細胞の凝集体を含有しないこと
    を特徴とする哺乳類細胞の調製物。
  2. 【請求項2】サイズが約200ミクロン以上、好ましくは50ミクロン以上、更
    に好ましくは30ミクロン以上の該細胞の凝集体を含有しないことを特徴とする請
    求項1記載の哺乳類細胞の調製物。
  3. 【請求項3】該細胞が不死化細胞であることを特徴とする請求項1ないし請
    求項2記載の哺乳類細胞の調製物。
  4. 【請求項4】細胞が非腫瘍形成性のものである請求項1ないし請求項3記載
    のいずれかの哺乳類細胞の調製物。
  5. 【請求項5】該細胞が哺乳類の内皮細胞及び上皮細胞を含む群から選ばれた
    ものであることを特徴とする請求項1ないし請求項4記載のいずれかの哺乳類細
    胞の調製物。
  6. 【請求項6】該細胞が脳細胞及び網膜細胞を含む群から選ばれたものである
    ことを特徴とする請求項1ないし請求項5記載のいずれかの哺乳類細胞の調製物
  7. 【請求項7】該細胞が、凝集体の形成を妨害する、又はサイズが約200ミク
    ロン以上、好ましくは50ミクロン以上、特に好ましくは30ミクロン以上の該細胞
    の凝集体を特異的に除去する、生物的、化学的又は物理的な細胞処理をして、そ
    の後該細胞の生存を可能とし、再凝集を促進させない倍液で懸濁することを特徴
    とする請求項1ないし請求項6記載のいずれかの哺乳類細胞の調製物。
  8. 【請求項8】生物的処理が、凝集体の形成を妨害する物質を発現する、又は
    該細胞の凝集を促進させる物質の発現を抑制する、核酸配列により該細胞を遺伝
    子的に変更することから成ることを特徴とする請求項7記載の哺乳類細胞の調製
    物。
  9. 【請求項9】物理的処理が、ろ過又は篩分けから成ることを特徴とする請求
    項7記載の哺乳類細胞の調製物。
  10. 【請求項10】患者において全身投与用の医薬組成物であって、該組成物内
    、医薬的に許容され、該細胞の生存を可能とし、これらの再凝集を促進させない
    運搬体と結合された請求項1ないし請求項9記載のいずれかの哺乳類細胞の調製
    物を含まれていることを特徴とする医薬組成物。
  11. 【請求項11】患者において、動脈内経路、好ましくは頚動脈内経路で投与
    用の組成物であって、サイズが50ミクロン以上、好ましくは30ミクロン以上の細
    胞の凝集体を含まない細胞調製物を含むことを特徴とする請求項10記載の組成物
  12. 【請求項12】患者において静脈内経路での投与用の組成物であって、サイ
    ズが200ミクロン以上、好ましくは100ミクロン以上の細胞凝集体を含まない細胞
    調製物を含有することを特徴とする請求項10記載の組成物。
  13. 【請求項13】組成物1マイクロリットル当り約1千〜30万個の細胞を含むこ
    とを特徴とする請求項10ないし請求項12記載のいずれかの組成物。
  14. 【請求項14】患者の中央神経系疾患の遺伝子治療法において、全身経投与
    用の医薬組成物であって、細胞が、神経疾患の治療又は予防において活性を有す
    物質をコードする遺伝子を少なくとも一つ移入したものであることを特徴とする
    請求項10ないし請求項13記載のいずれかの医薬組成物。
  15. 【請求項15】中央神経系疾患の予防又は治療に有用な物質及び遺伝子が、
    成長因子、抗アポトーシス剤、キラー遺伝子、抗蛋白分解酵素、免疫調整剤、腫
    瘍抑制遺伝子、細胞周期を停止する遺伝子の中から選ばれることを特徴とする請
    求項14に記載の組成物。
  16. 【請求項16】活性物質をコードする遺伝子が、少なくとも一つ移入されて
    ある哺乳類の不死化細胞を、治療する患者の体重1キログラム当り100万〜2億個
    を投与できるように用量調節してあることを特徴とする請求項14ないし請求項1
    5記載のいずれかの組成物。
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