JP2002505100A - 種間核移植によって作製された胚性または幹細胞様細胞株 - Google Patents

種間核移植によって作製された胚性または幹細胞様細胞株

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Abstract

(57)【要約】 分化したドナー細胞核をそのドナー細胞と異なる種の除核卵母細胞に移植することを含む、改良された核移植方法が提供される。得られた核移植ユニットはアイソジェニック胚性幹細胞、特にヒトアイソジェニック胚性幹細胞の作製に有用である。これらの胚性または幹細胞様細胞は所望の分化細胞の作製、および、所望の遺伝子、例えば、そのような細胞の特定のゲノム部位において相同組換えによって導入、除去または改変するために有用である。これらの細胞は、異種遺伝子を有していてもよく、特に細胞移植療法および細胞分化のin vitro研究に有用である。また、ドナー細胞をアポトーシスが阻害されるように遺伝的に改変し、特定の細胞周期にある細胞を選抜し、および/または胚成長および発生を増強することによって核移植効率を向上させる方法が提供される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 (発明の分野) 本発明は一般に、動物またはヒト由来の細胞核を、ドナー核とは異なる種の動
物の除核した卵母細胞に移植することによって胚性または幹細胞様細胞を作製す
ることに関する。本発明はより具体的には、霊長類またはヒト細胞の核を除核し
た動物卵母細胞、例えば、霊長類または有蹄類の卵母細胞、および、好ましい実
施態様においてはウシ除核卵母細胞へ移植することによって、霊長類またはヒト
の胚性または幹細胞様細胞を作製することに関する。 本発明は更に、得られた胚性または幹細胞様細胞、好ましくは、霊長類または
ヒト胚性または幹細胞様細胞の、治療、診断応用への使用、同様に治療または診
断に使用される分化細胞の作製への使用、および、トランスジェニック胚性細胞
またはトランスジェニック分化細胞、細胞株、組織および器官の作製のための使
用に関する。また、本発明によって得られる胚性または幹細胞様細胞は、それ自
体、キメラ若しくはクローン、好ましくはトランスジェニッククローン若しくは
キメラ動物作製のための核移植または核移入手順における核ドナーとして使用し
てもよい。
【0002】 (発明の背景) 初期未着床マウス胚からin vitroで胚性幹(ES)細胞を誘導する方法はよく知ら
れている(例えば、Evansら、Nature, 29:154-156(1981);Martin, Proc. Natl.
Acad. Sci., USA, 78:7634-7638 (1981)を参照せよ)。ES細胞は未分化状態で 継代することができるが、線維芽細胞のフィーダー層が存在するか(Evansら、既
述)分化阻害源が存在することを条件とする(Smithら、Dev. Biol., 121:1-9 (1
987))。 ES細胞は従来から種々の応用性を有していることが報告されてきた。例えば、
ES細胞は分化のin vitroモデルとして、特に初期発生の制御に関与する遺伝子の
研究のために使用できることが報告されている。マウスES細胞は未着床マウス胚
に導入されると生殖細胞系列キメラを生じさせることができ、そのようにしてそ
れらの多分化能性が証明されている(Bradelyら、Nature, 309:255-256 (1984)) 。
【0003】 次の世代へ自身のゲノムを送り込める能力のために、ES細胞は、所望の遺伝的
改変を有する又は有しないES細胞を用いた家畜動物の生殖細胞系列操作のための
潜在的有用性を有している。更に、家畜動物、例えば、有蹄類の場合には、未着
床家畜胚のような胚からの核は除核卵母細胞の満期までの発生を支持する(Smit
hら、Biol. Reprod., 40:1027-1035 (1989);および、Keeferら、Biol. Reprod.
, 50:935-939 (1994))。これは、マウス胚の核と対称的である。マウス胚の核 は、報告されているところによると、移植後8細胞期を越えて除核細胞の発生を
支持しない(Cheongら、Biol. Reprod., 48:958 (1993))。従って、家畜動物の
ES細胞は、核移植方法のための、全能性の、遺伝的操作をされた又はされていな
いドナー核の潜在的供給源を提供するかもしれないため、非常に望ましい。
【0004】 いくつかの研究グループは多分化能性の胚性細胞株と称した細胞株の単離を報
告している。例えば、Notarianniら、J. Reprod. Fert. Suppl., 43:255-260 (1
991)、は安定な多分化性細胞株と思われるものをブタおよびヒツジの胚盤胞から
樹立したことを報告している。この細胞株はヒツジ胚盤胞から免疫外科的に(imm
unosurgically)単離した内部細胞塊の初代培養中の細胞と形態学的および増殖特
性類似性を示す(同上)。また、Notarianniら、J. Reprod. Fert. Suppl., 41:
51-56 (1990)はブタ胚盤胞からの多分化能性胚性細胞株候補の培養における維持
および分化を開示している。更に、Gerfenら、Anim. Biotech, 6(1):1-14 (1995
)は、ブタ胚盤胞からの胚性細胞株の単離を開示している。これらの細胞はマウ ス胚性線維芽細胞フィーダー層中で、コンディション培地を使用せずに安定に維
持される。これらの細胞は、報告によれば培養中にいくつかの分化細胞型へ分化
する(Gerfenら、同上)。
【0005】 更に、Saitoら、Roux's Arch. Dev. Biol., 201:134-141 (1992)は、培養した
ウシ胚性幹細胞様細胞株を報告しており、この細胞株は3回の継代を生き延びた
が、4回目の継代後に失われた。さらにまた、Handysideら、Roux's Arch Dev.
Biol., 196:185-190(1987)は、マウスICM由来のマウスES細胞単離を可能とする 条件下における、免疫外科的に単離されたヒツジ胚の内部細胞塊の培養を開示し
ている。Handysideら、(1987)(同上)は、そのような条件下ではヒツジICMは接
着し、広がり、ES細胞様領域および内胚葉様細胞領域の両方を発生させるが、長
期の培養後には内胚葉様細胞のみが顕著であることを報告している(同上)。 近年、Chernyら、Theriogenology, 41:175 (1994)は、長期培養維持された細 胞株に由来する、多分化能性と称するウシ始原生殖細胞を報告した。これらの細
胞は、培養およそ7日後にES様コロニーを形成し、アルカリホスファターゼで陽
性に染色され、胚様体を形成する能力を示し、かつ、少なくとも2種の細胞型へ
自発的に分化した。また、これらの細胞は、報告によれば、転写因子OCT4、OCT6
およびHES1のmRNAを発現し、もっぱらES細胞によってのみ発現されると考えられ
ているホメオボックス遺伝子のパターンを示した。
【0006】 また、近年、Campbellら、Nature, 380:64-68 (1996)は、マウスにおいてES細
胞株の単離を促進する条件下で培養したヒツジ第9日胚からの培養胚盤(ED)細胞
の核移植による生存ヒツジの作製を報告した。著者らは自身の結果に基づいて、
ヒツジ第9日胚からのED細胞は核移入によって全能性であり、その全能性は培養
中維持されていると結論した。 Van Stekelenburg-Hamersら、Mol. Reprod. Dev., 40:444-454 (1995)は、ウ シ胚盤胞の内部細胞塊からの永久細胞株と称する細胞の単離と特徴つけを報告し
た。著者らは、ウシ第8日または第9日胚盤胞からのICMを単離し、種々の条件 で培養して、どのフィーダー細胞および培地がウシICMの接着とその後の増殖を 支持するのに最も効果的であるかを決定した。彼らは、自身の結果に基づいて、
培養ICM細胞の接着およびその後の増殖は(ウシ子宮上皮細胞の代わりに)STO(
マウス線維芽細胞)フィーダー細胞の使用、および、培地を補足するために(正
常血清よりも寧ろ)活性炭除去血清(charcoal-stripped serum)の使用によって 増強されると結論した。しかしながら、Van Stekelenburgらは、自分らの細胞は
多分化能性ICM細胞よりも上皮細胞により似ていると報告した(同上)。
【0007】 更にまた、Smithら、WO 94/24274, 1994年10月27日公開、Evansら、WO 90/034
32、1990年4月5日公開、および、Wheelreら、WO94/26889、1994年11月24日公 開、はトランスジェニック動物を得るために使用できるかもしれないと称する動
物幹細胞の単離、選抜および増殖を報告している。また、Evansら、WO90/03432 、1990年4月5日公開、はブタおよびウシ由来の、トランスジェニック動物の作
製に有用であると主張する多分化能性と称する胚性幹細胞の誘導を報告した。更
に、Wheelerら、WO94/26884、1994年11月24日公開、はキメラおよびトランスジ ェニック有蹄類の作製に有用であると主張される胚性幹細胞を開示した。このよ
うに、上記に基づくと、例えば、クローン胚またはトランスジェニック胚の作製
および核移植におけるそれらの潜在的応用性ゆえに、多数のグループがES細胞株
を作製しようと試みてきた。
【0008】 有蹄類ICM細胞の核移植への使用もまた報告されている。例えば、Colloasら、
Mol. Reprod. Dev., 38:264-267 (1994)は溶解ドナー細胞のマイクロインジェク
ションによるウシICMの除核成熟卵母細胞への核移植を開示している。この文献 は胚をin vitroで7日間培養して15の胚盤胞を生じさせたこと、それらはウシレ
シピエントに移植されると4体を受胎させ2頭が誕生したことを開示した。また
、Keeferら、Biol. Reprod., 50:935-939 (1994)は、核移入手順における、胚盤
胞の作成のためのウシICM細胞のドナー核としての使用を開示している。この胚 盤胞はウシレシピエントに移植すると数頭の子孫を生じさせた。更に、Simsら、
Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 90:6143-6147 (1993)は短期のin vitro培養ウシ
ICM斉藤からの核の除核成熟卵母細胞への核移入による子ウシ作製を開示した。 また、培養胚盤細胞の核移植による生存ヒツジの作製も報告されている(Campb
ellら、Nature, 380:64-68 (1996))。更に、核移入におけるウシ多分化能性胚性
細胞の使用およびキメラウシ胎仔の作製も報告されている(Sticeら、Biol. repr
od., 54:100-110 (1996));Collasら、Mol. reprod. Dev., 38:264-267 (1994) 。
【0009】 また、以前に種間NTユニットを作製する試みもあった(Wolfeら、Theriogeno
logy, 33:350 (1990))。具体的には、ウシ胚性細胞はバイソン卵母細胞と融合さ
れ、内部細胞塊を有すると思われるいくつかの種間NTユニットが作製された。
しかしながら、核移植手順において成人細胞ではなく胚性細胞がドナー核として
使用された。胚性細胞は成人細胞よりもより容易に再プログラムされるというの
がドグマであった。これはカエルにおける初期のNT研究まで遡る(Diberardin
o Differentiation, 17:17-30 (1980))。また、この研究は系統発生的に非常に
類似した動物(ウシ核およびバイソン卵細胞)に関係している。これに対して、
以前にはより広範な種がNTの際に融合された場合には(ウシ核をハムスター卵
母細胞へ)、内部細胞塊構造は得られなかった。更に、NTユニットからの内部
細胞塊を増殖可能なES細胞様コロニーを形成させるために使用できることは以前
には全く報告されていない。 また、Collasら(同上)はウシ核移植胚の作製のための顆粒膜細胞(成人体細
胞)の使用を教示する。しかし、本発明と異なり、これらの実験は種間核移植を
含まないものであった。また、本発明と異なり、ES様細胞コロニーは得られなか
った。
【0010】 極めて最近、James A.Thomsonに対して1998年12月1日に与えられ、Wiscons
in Alumni Research Foundationに譲渡された米国特許第5、843、780号は以下の霊
長類胚性幹細胞の精製された調製物の開示を意図している。その細胞は、(i)1 年以上にわたってin vitroで増殖することができる;(ii)霊長類の種に特徴的な
全ての染色体が存在し、長期の培養を通しても顕著な変化のない核型を維持する
;(iii)内胚葉、中胚葉および外胚葉組織由来物へ培養中に分化する能力を維持 する;および、(iv)線維芽細胞フィーダー層上で培養された場合は分化しない。
これらの細胞は報告によればSSEA-1マーカー陰性であり、SEA-3マーカー陽性、S
SEA-4マーカー陽性であり、アルカリホスファターゼ活性を発現し、多分化能性 であり、霊長類種に特徴的な全ての染色体の存在を含み、いかなる染色体も変化
していない核型を有している。更に、これらの細胞はTRA-1-60およびTRA-1-81マ
ーカー陽性である。この細胞はSCIDマウスに注入された場合、内胚葉、中胚葉、
外胚葉細胞に分化すると言われている。また、ヒトまたは霊長類胚盤胞由来の胚
性幹細胞株と言われるものがThomsonら、Science 282:1145-1147およびProc. Na
tl. Sci., USA 92:7844-7848 (1995)に論じられている。
【0011】 このように、Thomsonは非ヒト霊長類およびヒト胚性または幹細胞様細胞とい われる細胞およびその作製のための方法を開示している。しかし、意図している
移植レシピエントに対して自家であり、顕著な治療的および診断能力を与えられ
たヒト胚性または幹細胞様細胞の作製方法に対する大きな需要がなお存在する。 この点について、細胞移植によって治療されるかもしれない非常に多くのヒト
の疾病が明らかにされている。例えば、パーキンソン病は黒質におけるドーパミ
ン作動性ニューロンの変質によって引き起こされる。パーキンソン病の標準的な
治療はL-DOPAの投与を含むものであり、これは一時的にドーパミンの欠損を改善
するが、重大な副作用を引き起こし、この疾病の進行を結局は逆転させない。パ
ーキンソン病の治療の異なるアプローチは、多くの脳疾病および中枢神経損傷の
治療に対する広範な応用性を有する見込みのあるものだが、胎仔または新生動物
の細胞または組織を成人脳に移植することを含むものである。脳の種々の領域か
らの胎児性神経は成人脳に取り込ませることができる。そのような移植は実験動
物において実験的に誘導された、複合認知機能(complex cognitive function)を
含む行動性欠損を軽減することが示されている。ヒト臨床試験の初期試験結果も
有望なものである。しかしながら、流産によるヒト胎児細胞または組織の供給は
非常に限られている。更に、流産胎児から細胞または組織を得ることは非常に議
論のあることである。
【0012】 現在、患者から「胎児様細胞」を作製する利用可能な方法は存在しない。更に
、同種移植組織は容易に入手できず、同種移植および異種移植組織はどちらも移
植片拒絶に曝される。さらに、ある場合には、移植前に細胞または組織に遺伝的
改変を行うことが有益であろう。しかしながら、そのような改変が望ましい多く
の細胞または組織は培養中にあまり***せず、大部分の遺伝的形質転換は迅速に
***する細胞が必要である。 従って、この技術分野において、移植および、細胞および遺伝子治療に使用す
るためのヒト胚性または幹細胞様未分化細胞の供給に対する明確な需要が存在す
る。
【0013】本発明の目的 本発明の目的は、胚性または幹細胞様細胞を作製するための新規かつ改良され
た方法を提供することである。 本発明のより具体的な目的は、哺乳動物またはヒト細胞の核を異なる種の除核
卵母細胞に移植することを含む、胚性または幹細胞様細胞を作製するための新規
かつ改良された方法を提供することである。 本発明の他の目的は、特に、非-ヒト霊長類またはヒト細胞の核を、除核した 動物またはヒト卵母細胞、例えば、有蹄類、ヒトまたは霊長類除核卵母細胞に移
植することを含む、非-ヒト霊長類またはヒト胚性若しくは幹細胞様細胞を作製 するための新規かつ改良された方法を提供することである。 本発明の他の目的は、非-ヒト霊長類またはヒト細胞、例えば、ヒト成人細胞 の核を除核した非-ヒト霊長類またはヒト卵母細胞へ移植することを含む、系統-
欠損非-ヒト霊長類またはヒト胚性若しくは幹細胞様細胞を作製するための新規 な方法であって、例えばアンチセンスまたはリボザイムテロメラーゼ遺伝子の発
現を操作することにより、そのような細胞が特定の細胞系統に分化し得ないよう
に遺伝的に操作され、または、細胞が「死滅性」であるように改変されており、
それにより生存可能な子孫を生じない、前記方法を提供することである。
【0014】 更に本発明の別の目的は、核移入に使用されるドナー体細胞を遺伝的に操作し
て、胚発生を増強する遺伝子、例えば、MHC Iファミリー遺伝子、特にQ7および /またはQ9のようなPed遺伝子、を発現させることにより、核移入の効率を挙げ ることおよび特に、核移植によって作製される未着床胚の発生を促進することで
ある。 更にまた本発明の別の目的は、IVPによる核移入胚の生成を増強させること、 より具体的には核移植に使用されるドナー細胞をアポトーシス抵抗性であるよう
に、例えばアポトーシスを阻害する遺伝子、例えばBcl-2またはBcl-2ファミリー
メンバーの発現および/または初期胚発生の際にアポトーシスを誘導する遺伝子
に特異的なアンチセンスリボザイムの発現によってアポトーシス抵抗性であるよ
うに遺伝的に改変することによって、核移植胚の生成を増強させることである。 本発明の更に別の目的は、検出可能なマーカー、例えば視覚化可能な(例えば
蛍光タグ)マーカータンパク質にリンクした特定のサイクリンをコードするDNA 構築物を発現するようにドナー細胞を遺伝的に改変することにより、特定の細胞
周期段階、例えば、G1期にあるドナー細胞の選抜を改善することにより核移入の
効率を改良することである。
【0015】 また本発明の目的は、in vitroで作製された胚を、1以上のプロテアーゼ阻害
剤の存在下、好ましくは1以上のカスパーゼ阻害剤の存在下で培養し、それによ
りアポトーシスを阻害することにより、その胚の発生を増強することである。 本発明の別の目的は、動物またはヒト細胞を異なる種の除核卵母細胞へ移植す
ることによって作製される胚性または幹細胞様細胞を提供することである。 本発明の目的は、特に、霊長類またはヒト細胞を除核した動物細胞、例えば、
ヒト、霊長類または有蹄類除核卵母細胞に核を移植することによって、霊長類ま
たはヒト胚性または幹細胞様細胞細胞を提供することである。 本発明の別の目的は、そのような胚性または幹細胞様細胞を治療または診断に
使用することである。 本発明の目的は、特に、そのような霊長類またはヒト胚性または幹細胞様細胞
を、細胞、組織または器官移植が治療上または診断上有益であるような一切の疾
病の治療または診断に使用することである。 本発明の別の目的は、本発明によって作製された胚性または幹細胞様細胞を分
化した細胞、組織または器官の作製のために使用することである。
【0016】 本発明の目的は、特に、本発明によって作製された霊長類またはヒト胚性若し
くは幹細胞様細胞を分化ヒト細胞、組織または器官の作製のために使用すること
である。 本発明の別の目的は、本発明によって作製された胚性または幹細胞様細胞を、
遺伝的に操作された胚性または幹細胞様細胞であって、遺伝的に操作されたまた
はトランスジェニック分化ヒト細胞、組織または器官の作製に使用し得る細胞の
作製、例えば遺伝子治療に使用できる細胞の作製に使用することである。 本発明の別の目的は、特に、本発明によって作製された胚性または幹細胞様細
胞をin vitroで、例えば、細胞分化の研究、およびアッセイ目的で、例えば薬剤
研究のために使用することである。 本発明の別の目的は、移植治療の改良法であって、本発明によって作製された
胚性または幹細胞様細胞から作製されるアイソジェニックまたはシンゲニック細
胞、組織もしくは器官の使用を含む方法を提供することである。そのような治療
は、例えば、パーキンソン病、ハンチントン病、アルツハイマー病、ALS、脊髄 損傷、多発性硬化病、筋ジストロフィー症、糖尿病、肝臓疾病、心臓疾病、軟骨
置換(cartilage replacement)、火傷、血管疾病、尿路疾病、および他の疾病の 中でも、免疫不全、骨髄移植、癌、を含む疾病及び損傷の治療が含まれる。
【0017】 本発明の別の目的は、本発明によって作製されたトランスジェニック若しくは
遺伝的に操作された胚性または幹細胞様細胞を遺伝子治療、特に上述の疾病およ
び損傷の治療および/または予防に使用することである。 本発明の別の目的は、本発明によって作製された胚性若しくは幹細胞様細胞、
または、本発明によって作製されたトランスジェニック若しくは遺伝的に操作さ
れた胚性または幹細胞様細胞、を核移植の核ドナーとして使用することである。 更に本発明の別の目的は、本発明によって作製された遺伝的に操作されたES細
胞をトランスジェニク動物、例えば、非-ヒト霊長類、げっ歯類、有蹄類その他 の作製に使用することである。そのようなトランスジェニック動物は、例えばヒ
トの疾病の研究のための動物モデルを作製するために使用でき、または、所望の
ポリペプチド、例えば治療または栄養医薬用のもの、の作製に使用することがで
きる。 本発明の前述のおよび他の目的、利点および特徴は以下で明らかになるであろ
う。本発明の性質は以下の、本発明の好ましい実施態様の詳細な記載および添付
の請求項を参照することにより、より明瞭に理解されるであろう。
【0018】 (発明の記載) 本発明は、胚性または幹細胞様細胞を、より具体的には非ヒト霊長類またはヒ
トの胚性または幹細胞様細胞を製造する新規な方法を提供する。本出願では、核
移入、核移植またはNTは互換的に用いられる。 上記で論じたように、胚性または幹細胞様細胞の核移入、すなわち核移植によ
る実際の単離はこれまで報告されたことは全くなかった。むしろ以前に報告され
たES様細胞の単離は受精した胚からのものであった。さらにまた、遺伝的に異
なる種の細胞またはDNAを含む核移植の成功、より具体的には、ある1つの種( 例えばヒト)の成人細胞またはDNAおよび別の無関係な種の卵母細胞を含む核移 植の成功の報告はこれまで皆無であった。正確に言えば、近縁種(例えば、ウシ
とヤギおよびウシとバイソン)の細胞の融合によって製造された胚の報告はあっ
たが、そのような胚はES細胞を産生しなかった(Wolfe et al, Theriogenology,
33(1):350(1990))。さらに、非胎児組織に由来する霊長類またはヒトのES細胞
を製造する方法はこれまで報告されたことがなかった。それどころか、現在入手
できる限定的なヒト胎児細胞および組織は偶発的な流産組織および流産胎児から
入手しなければならない。 さらに、本発明の前には、種間核移植によって胚性または幹細胞様細胞を得た
者はいなかった。
【0019】 全く予期しなかったことではあるが、本発明者らは、ヒトの胚性または幹細胞
様細胞および細胞コロニーは、ヒト細胞(例えば成人の分化細胞)の核を動物の
除核卵母細胞に移植することによって得ることができることを発見した(このよ
うな移植は核移入(NT)ユニットの作製に用いられ、核移入ユニットの細胞は
培養に際してヒトの胚性または幹細胞様細胞および細胞コロニーを生じる)。こ
の結果は非常に驚くべきことである。なぜならば、これは、分化ドナー細胞また
は核を遺伝的に異なる種の除核卵母細胞に導入して、適切な条件下で培養したと
きに胚性または幹細胞様細胞およびコロニーを生じる細胞を含む核移入ユニット
を作製することを含む有効な種間核移植、例えば動物またはヒトの分化細胞(例
えば成人の細胞)から得た細胞核の異なる動物種の除核卵への移植を実施した最
初のものだからである。
【0020】 好ましくは、ES様細胞を作製するために用いられるNTユニットは、少なくと
も2から400細胞のサイズに、好ましくは4から128細胞、もっとも好まし
くは少なくとも約50細胞のサイズに培養される。 本発明では、胚性または幹細胞様細胞とは本発明にしたがって作製された細胞
を指す。本出願では、それらが作製される典型的な態様のために、すなわち種間
核移植によって作製されるために幹細胞というよりはむしろ幹細胞様細胞と称す
る。これらの細胞は正常な幹細胞に類似する分化能力を有すると期待されるが、
それらが作製された態様のために重要ではないいくつかの相違をもつであろう。
例えば、これらの幹細胞様細胞は核移入に用いられた卵母細胞のミトコンドリア
を有し、したがって通常の胚性幹細胞と同一には振る舞わない。
【0021】 本発明は、成人細胞(特にヒトドナーの口腔から得たヒトの上皮細胞)の核の
移植は、ウシの卵母細胞に移したとき核移入ユニットの形成をもたらし、これら
核移入ユニットの細胞は、培養に際してヒト幹細胞様または胚性細胞およびヒト
胚性または幹細胞様細胞コロニーを生じるという発見に基づいて為された。最近
この結果は、ウシの除核卵母細胞に成人のケラチン細胞を移植し、胚盤胞および
ES細胞株を作製できたことによって再現された。
【0022】 これに基づき、本発明者らは、ウシの卵母細胞およびヒトの卵母細胞、さらに
は一般に哺乳類は、十分に類似したまたは保存された成熟過程を胚の発生時に経
験し、そのためにウシの卵母細胞はヒトの卵母細胞の有効な代替物または代用物
として機能できると仮説をたてた。明らかに、一般に卵母細胞は、適切な条件下
で胚の発生を誘導するおそらくはタンパク質性または核酸性因子、および異なる
種で同じかまたは非常に類似した機能を含むであろう。これらの因子には重要な
RNAおよび/またはテロメラーゼが含まれるかもしれない。
【0023】 ヒト細胞核は効果的にウシ卵母細胞に移植できるという事実に基づいて、ヒト
の細胞を他の無関係な種(例えば他の有蹄類と同様に他の動物)の卵母細胞に移
植できると期待するのは合理的なことである。特に、他の有蹄類(例えばブタ、
ヒツジ、ウマ、ヤギなど)の卵母細胞は適切なはずである。さらにまた、他の供
給源の卵母細胞も適切であろう(例えば他の霊長類、両生類、ゲッ歯類、ウサギ
、モルモットなどに由来する卵母細胞)。さらに、同様な方法を用いて、ヒトの
卵母細胞にヒトの細胞または細胞核を移植して、得られた未分化胚芽細胞を用い
てヒトのES細胞を作製することができるはずである。
【0024】 したがって、その最も範囲の広い実施態様として、本発明は、動物もしくはヒ
トの細胞核または動物もしくはヒトの細胞を、ドナー核とは異なる動物種の除核
卵母細胞に注入または融合によって移植し、胚性または幹細胞様細胞および/ま
たは細胞培養物を得るために用いることができるNTユニットを作製することを含
む。例えば、本発明は、有蹄類細胞核または有蹄類細胞を別の種(例えば別の有
蹄類または非有蹄類)の除核卵母細胞に注入または融合によって移植し、これら
の細胞および/または核を合体させてNTユニットを作製し、これらNTユニットを
多細胞NTユニット(好ましくは少なくとも約2から400細胞、より好ましくは
4から128細胞、および最も好ましくは少なくとも50細胞を含む)を得るた
めに適切な条件下で培養するすることを含む。そのようなNTユニットの細胞を用
いて培養し、胚性もしくは幹細胞様細胞または細胞コロニーを作製することがで
きる。
【0025】 しかしながら、本発明の好ましい実施態様は、ドナーのヒト細胞核またはヒト
細胞を除核したヒト、霊長類、または非霊長類動物の卵母細胞(例えば有蹄類卵
母細胞)、好ましい実施態様ではウシの除核卵母細胞に移植することによって非
ヒト霊長類またはヒトの胚性または幹細胞様細胞を作製することを含む。
【0026】 一般に、胚性または幹細胞様細胞は以下の工程を含む核移入プロセスよって作
製される: (i)ドナー核の供給源として用いたいと所望するヒトまたは動物の細胞を得
て(ドナー核は遺伝的に改変できる); (ii)適切な供給源(例えば哺乳類および最も好ましくは霊長類または有蹄
類由来、例えばウシ)から卵母細胞を得て; (iii)当該卵母細胞を除核して; (iv)ヒトもしくは動物の細胞または核をドナー細胞または核とは異なる動
物種の除核卵母細胞に、例えば融合または注入によって移し; (v)得られたNT生成物またはNTユニットを培養して、多細胞構造物を作製
し;さらに (vi)当該胚から得た細胞を培養して胚性または幹細胞様細胞および幹細胞
様コロニーを得る。
【0027】 核移入技術すなわち核移植技術は文献で知られており、従来技術で引用した参
考文献の多くに記載されている。例えば特に以下の文献を参照されたい:Campbe
ll et al, Theriogenology, 43:181(1995); Collas et al, Mol. Report Dev.,
38:264-267(1994); Keefer et al, Biol. Reprod., 50:935-939(1994); Sims et
al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6143-6147(1993); WO94/26884; WO94/24
274;およびWO90/03432(これらの文献は参照により本明細書に含まれる)。さら
にまた米国特許第4944384号および同5057420号は、ウシの核移植
の方法を開示している。さらに以下の文献を参照されたい:Cibelli et al, Sci
ence, 280:1256-1258(1998)。
【0028】 ヒトまたは動物の細胞(好ましくは哺乳類の細胞)は、周知の方法で入手し培
養することができる。本発明で有用なヒトおよび動物の細胞には、例示として上
皮細胞、神経細胞、表皮細胞、ケラチン細胞、造血細胞、メラニン細胞、軟骨細
胞、リンパ球(BおよびTリンパ球)、他の免疫細胞、赤血球、マクロファージ
、単球、単核球、線維芽細胞、心筋細胞および他の筋細胞などが含まれる。さら
に、核移入に用いられるヒトの細胞は種々の器官、例えば皮膚、肺、膵、肝、胃
、腸、心、生殖器、膀胱、腎、尿管および他の泌尿器官などから入手できる。こ
らは適切なドナー細胞例に過ぎない。適切なドナー細胞、すなわち本発明に有用
な細胞は身体の任意の細胞または器官から得ることができる。これらには全ての
体細胞または生殖細胞が含まれる。好ましくは、ドナー細胞またはドナー核は活
発に***している細胞(すなわち非休止細胞)を含む(これはクローニング効果
を強化すると報告されたためである)。さらに好ましくは、そのようなドナー細
胞は細胞のG1期にあるであろう。
【0029】 得られた未分化胚芽細胞は、文献(Thomson et al, Science 282:1145-1147(1
998); Thomson et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 92:7544-7848(1995)(こ
れらの文献は参照により本明細書に含まれる)に報告された培養法方にしたがっ
て胚性幹細胞株を得るために用いることができる。 以下の実施例では核移入のためのドナーとして用いられる細胞は、ヒトドナー
の口腔に由来する上皮細胞およびヒト成人ケラチン細胞であった。しかしながら
、既に論じたたように、本開示方法はヒトの他の細胞または核にも応用できる。
さらに、細胞核はヒトの体細胞および生殖細胞の両方から得ることができる。
【0030】 さらに、当技術分野で知られている適切な技術を用いて核移入の前にドナー細
胞を有糸***期に停止させることが可能である。細胞周期を種々のステージに停
止させる方法は綿密に米国特許第5262409号(この文献は参照により本明
細書に含まれる)に概説されている。特に、シクロヘキシミドが有糸***に抑制
作用をもつと報告されたが(Bowen & Wilson, J. Heredity 45:3-9(1995))、そ
れはまた、電気パルス処理と組み合わせたとき成熟ウシ卵胞の卵母細胞の活性化
を改善するために用いることができる(Yang et al, Biol. Reprod. 42(Suppl.
1):117(1992))。
【0031】 接合体遺伝子の活性化はヒストンH4の高アセチル化に付随している。トリコ
スタチン−Aは、他の化合物のように、ヒストンデアセチラーゼを可逆的態様で
抑制することが示された(Adenot et al, "Differential H4 acetylation of pa
ternal and maternal chromatin precedes DNA replication and Differential
transcriptional activity in pronuclei of 1-cell mouse embryos". Developm
ent 124(22):4615-4625(Nov. 1997); Yoshida et al, "Trichostatin A and tra
poxin: novel chemical probes for the role of histone acetylation in chro
matin structure and function". Bioessays 17(5):423-430(May, 1995))。
【0032】 例えば、ヒストンデアセチラーゼを抑制することによってブチレートもヒスト
ンの高アセチル化を引き起こすと考えられている。一般に、ブチレートは遺伝子
発現を改変するようであり、ほとんど全ての事例で、培養細胞へのブチレートの
添加は細胞増殖を停止させるようである。この関係でのブチレートの使用は米国
特許第5681718号(この文献は参照により本明細書に含まれる)に記載さ
れている。したがって、ドナー細胞は融合前に、トリコスタチン−Aまたは別の
適切なデアセチラーゼ抑制物質に暴露することができる。また、そのような化合
物はゲノム活性化の前に培養液に添加できる。
【0033】 さらに、DNAの脱メチルは、DNA調節配列への転写因子の適切な接近のための要
件であると考えられる。移植前の胚の8細胞期から胚盤胞期の全体的な脱メチル
は以前に記載された(Stein et al, Mol. Reprod. & Dev. 47(4):121-429)。ま
た、細胞のDNAメチル化レベルを低下させるために5−アザシチジンを用いるこ とができることが報告された(Jaenisch et al, (1997))。これは、もしかする
と転写因子のDNA調節配列への接近の増加につながる。したがって、ドナー細胞 は融合の前に5−アザシチジン(5−Aza)に暴露してもよい。また5−Az
aは8細胞期から胚盤胞期に培養液に添加してもよい。また別に、DNA脱メチル を実施するために他の既知の方法を用いることができる。
【0034】 核の移し変えに用いられる卵母細胞は、哺乳類および両生類を含む動物から得
ることができる。卵母細胞の適切な哺乳類供給源には、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウ
マ、ウサギ、ヤギ、モルモット、マウス、ハムスター、ラット、霊長類、ヒトな
どが含まれる。好ましい実施態様では、卵母細胞は、霊長類または有蹄類(例え
ばウシ)から得られる。 卵母細胞を単離する方法は当技術分野で周知である。本質的には、これは、哺
乳類(例えばウシ)または両生類の卵巣または生殖管から卵母細胞を単離するこ
とを含む。容易に入手できるウシ卵母細胞の供給源は屠場の材料である。
【0035】 遺伝子操作、核移入およびクローニングのような技術の使用を成功させるため
には、卵母細胞は一般に、これらの細胞を核移入のためのレシピエント細胞とし
て用いる前、および***細胞によって受精させて胚に発育させる前にin vitroで
成熟させる必要がある。このプロセスは一般に、未成熟(前期I)卵母細胞を動
物の卵巣(例えば屠場で得られるウシの卵巣)から採集し、受精または除核前に
、これらの卵母細胞を卵母細胞が中期IIに達するまで(これはウシ卵母細胞の
場合は一般に吸引後約18−24時間で生じる)熟成培養液で成熟させることを
必要とする。本発明の目的では、この期間は”熟成期間”として知られている。
この期間の計算で本明細書で用いられるように、”吸引”とは未成熟な卵母細胞
を卵胞から吸引することを指す。
【0036】 さらに、in vivoで成熟させた中期IIの卵母細胞は核移入技術で用いて成功 をもたらした。本質的には、非過剰***もしくは過剰***牛または未経産牛から
、発情期が開始してから35−48時間後に、またはヒト絨毛膜ゴナドトロピン
(hCG)もしくは同様なホルモンの注射後同時間を過ぎてから成熟した中期II の卵母細胞を外科的に採集した。
【0037】 除核または核の移し変え時の卵母細胞の成熟段階はNT法の成功に重要である
ことが報告された(例えば以下を参照されたい:Prather et al, Differentiati
on, 48:1-9(1991))。一般に、これまでの哺乳類胚のクローニング手法での成功
例では中期IIの卵母細胞をレシピエント卵母細胞として用いている。なぜなら
ば、卵母細胞は、受精***を処理しているので、導入された核を処理するために
この時期に十分に”活性化”されていると考えられるかである。家畜(特にウシ
)では、卵母細胞活性化の期間は、一般に吸引後約16〜52時間、好ましくは
約28〜42時間の範囲である。
【0038】 例えば、未成熟卵母細胞はHEPES緩衝ハムスター胚培養液(HECM)で文献(Ses
hagine et al, Biol. Reprod. 40:544-606(1989))の記載にしたがって洗浄し、 続いて一層の軽量パラフィンまたはシリコン下で39℃にて成熟培養液の滴下の下
に静置した。成熟培養液は、適切なゴナドトロピン(例えば黄体形成ホルモン(
LH)および卵胞刺激ホルモン(FSH))およびエストラジオールを含む、10
%ウシ胎児血清含有組織培養液(TCM)199の50マイクロリットルから成
る。
【0039】 所定の成熟時間の後に(典型的には約10から40時間、好ましくは約16−
18時間)、卵母細胞を除核した。除核に先立って、好ましくは卵母細胞を取り
出し、卵丘細胞を除去する前に1ミリグラム/ミリリットルのヒアルロニダーゼ
を含有するHECM中に静置する。卵丘細胞の除去は非常に微細な内径のピペットで
の吸引を繰り返すか、または短時間のヴォルテックスによって達成できる。続い
てむき出しにした卵母細胞を極体についてスクリーニングし、選別した中期II
の卵母細胞(極体の存在によって決定)を続いて核の移し変えに用いる。除核は
以下のとおりである。
【0040】 除核は、既知の方法、例えば米国特許第4994384号(この文献は参照に
より本明細書に含まれる)に記載された方法によって実施できる。例えば、中期
IIの卵母細胞は、即時除核の場合にはHECM(場合によって7.5マイクログラム /ミリリットルのサイトケラシンBを含む)に静置するか、または適切な培養液
(例えばCR1aa+発情期の雌牛の血清10%)に静置してから除核すること
ができるが、好ましくは24時間以後ではなく、より好ましくは16〜18時間
後である。
【0041】 除核は、極体および近傍の細胞質を除去するためにマイクロピペットを用いて
顕微手術によって達成できる。続いて、卵母細胞をスクリーニングして除核が成
功しているものを特定する。このスクリーニングは、HECM中の1マイクログラム
/ミリリットルの33342ヘキスト染料で卵母細胞を染色し、続いて10秒未
満紫外線の下で卵母細胞を観察することによって実施できる。除核が成功した卵
母細胞を続いて適切な培養液に静置する。 本発明では、レシピエント卵母細胞は好ましくは、in vitro成熟の開始後約1
0から約40時間、より好ましくはin vitro成熟の開始後約16時間から約24
時間、さらに最も好ましくはin vitro成熟の開始後約16時間から18時間の範
囲で除核される。
【0042】 典型的には除核卵母細胞とは異種である動物もしくはヒトの単一細胞またはそ
れに由来する核を、続いてNTユニットの作製に用いる除核卵母細胞の卵黄周囲間
隙に移す。当分野で既知の方法にしたがって、動物もしくはヒトの細胞または核
および除核卵母細胞を用いてNTユニットを作製する。例えば、細胞はエレクトロ
フュージョンによって融合できる。エレクトロフュージョンは、一過性の形質膜
の破壊をもたらすために十分な電気パルスを提供することによって達成できる。
膜は迅速に修復されるので、この形質膜の破壊は非常に短時間である。基本的に
は、2つの隣接する膜に破壊が誘導される場合、再形成時に脂質二重層は混ぜ合
わされ小さなチャンネルが2つの細胞間に開口される。そのような小開口部の熱
力学的不安定性のために、2つの細胞が1つになるまでその開口部は拡大される
。この方法の更なる考察のためには、米国特許第4997384号(Prather et
al)(この文献は参照により本明細書に含まれる)を参照されたい。種々のエレ
クトロフュージョンの媒体を用いることができるが、これらには例えば蔗糖、マ
ンニトール、ソルビトールおよびリン酸緩衝溶液が含まれる。融合はまた、融合
誘導剤としてセンダイウイルスを用いて達成できる(Graham, Wister Inot. Sym
p. Monogr. 9:19(1969))。
【0043】 さらにまたいくつかの事例では(例えば小さなドナー核の場合)、電気穿孔融
合を用いるよりは核を直接卵母細胞に注入するのが好ましい。そのような技術は
文献に記載されている(Collas & Barnes, Mol. Reprod. Dev. 38:264-267(1994
)この文献は参照により本明細書に含まれる)。 好ましくは、ヒトまたは動物の細胞および卵母細胞は、卵母細胞の成熟開始後
約24時間で90〜120Vの電気パルスを約15μsec適用して500μmの 小室で電気融合させる。融合後、活性化(例えば下記に示すようなもの)まで、
得られた融合NTユニットを適切な培養液に静置する。典型的には、活性化はその
後まもなく、典型的には24時間未満後に、好ましくは約4−9時間後に実施さ
れる。
【0044】 NTユニットは既知の方法で活性化できる。そのような方法には、例えば生理学
的温度より低い温度でNTユニットを培養すること(本質的には冷温(実際には低
温)ショックをNTユニットに適用することによって)が含まれる。これは、NTユ
ニットを室温で培養することによって最も簡便に実施できる。室温は、胚が通常
曝されている生理学的温度条件と比較して低温である。 また別には、活性化は既知の活性化物質の適用によって達成できる。例えば、
受精時の***による卵母細胞の進入は融合前の卵母細胞を活性化させ、多数の生
命活性をもつ妊娠をもたらし、核移植後に多数の遺伝的に同一の仔牛を生じる。
さらに、電気的および化学的ショックのような処理、またはシクロヘキシミド処
理もまた、融合後のNT胚を活性化させるために用いることができる。適切な卵
母細胞活性化方法は、米国特許第5496720号(Susko-Parrish et al)(こ
の文献は参照により本明細書に含まれる)の主題である。
【0045】 例えば、卵母細胞活性化は同時にまたは連続的に以下の工程を実施することに
よって達成できる: (i)卵母細胞中の二価陽イオンレベルを高め、さらに (ii)卵母細胞の細胞タンパク質のリン酸化を低下させる。 これは一般に、卵母細胞の細胞質に二価陽イオン、例えばマグネシウム、スト
ロンチウム、バリウムまたはカルシウムを、例えばイオノフォアの形で導入する
ことによって達成される。二価陽イオンレベルを高める他の方法には、電気ショ
ックの使用、エタノール処理およびケージキレート剤(caged chelator)による処
理が含まれる。 リン酸化は、既知の方法、例えばキナーゼ抑制物質(例えばセリン−スレオニ
ンキナーゼ抑制物質、例えば6−ジメチル−アミノ−プリン、スタウロスポリン
、2−アミノプリン、およびスフィンゴシン)の添加によって低下させることが
できる。 あるいは、細胞タンパク質のリン酸化は、卵母細胞へのホスファターゼ(例え
ばホスファターゼ2Aおよびホスファターゼ2B)の導入によって抑制できる。
【0046】 活性化NTユニットは、胚性または幹細胞様細胞および細胞コロニーの生成まで
適切なin vitro培養液中で培養できる。胚性または幹細胞様細胞の培養および成
熟に適した培養液は当分野で周知である。既知の培養液の例(これらはウシの胚
性または幹細胞様細胞の培養および維持に用いることができる)には、ハムのF
−10+10%ウシ胎児血清(FCS)、組織培養液199(TCM−199)
+10%ウシ胎児血清、タイロード−アルブミン−ラクテート−ピルベート(T
ALP)、ダルベッコのリン酸緩衝食塩水(PBS)、イーグルおよびウィテン
培養液が含まれる。卵母細胞の採集と成熟に用いられる最も一般的な培養液の1
つはTCM−199および1から20%の血清補充物(ウシ胎児血清、新生児血
清、発情期雌牛血清、仔羊の血清または去勢雄牛血清を含む)である。好ましい
維持培養液は、アールの塩類を含むTCM−199、10%ウシ胎児血清、0.2M
M Maピルベートおよび50μg/mlのゲンタマイシンスルフェートを含む。上記 のいずれも、多様な細胞タイプ(例えば顆粒層細胞、卵管細胞、BRL細胞およ
び子宮細胞およびSTO細胞)を含む同時培養物を含むことができる。
【0047】 特に、子宮内膜のヒト上皮細胞は、着床前および着床期間の間に白血病抑制因
子(LIF)を分泌する。したがって、LIFの培養液への添加は、再構築胚の
in vitro発生の強化に重要であろう。胚性または幹細胞様細胞培養にLIFを使
用することは米国特許第5712156号(この文献は参照により本明細書に含
まれる)に記載されている。 別の維持培養液は米国特許第5096822号(Rosenkrans, Jr. et al)(こ
の文献は参照により本明細書に含まれる)に記載されている。この胚培養液(C
R1と称される)は胚を維持するために必要な栄養物を含む。CR1は、ヘミカ
ルシウムL−ラクテートを1.0mMから10mM、好ましくは1.0mMから5.0mMの範囲の 量で含んでいる。ヘミカルシウムL−ラクテートは、その中にヘミカルシウム塩
を取り込んでいるL−ラクテートである。 さらに、ヒト胚細胞の培養を維持するための適切な培養液は文献に記載されて
いるとおりである(Thomson et al, Science 282:1145-1147(1998)およびProc.
Natl. Acad. Sci. USA, 92:7844-7848(1995))。
【0048】 その後、培養NTユニットは好ましくは洗浄され、続いて適切な培養液、例えば
CRIaa培養液、ハムのF−10、組織培養液−199(TCM−199)、
タイロード−アルブミン−ラクテート−ピルベート(TALP)ダルベッコリン
酸緩衝食塩水(PBS)、イーグルまたはウィッテンの培養液(好ましくは約1
0%のFCSを含む)に静置される。そのような培養は、適切なコンフルエント
なフィーダー層を含むウェルプレートで実施できる。例示としての適切なフィー
ダー層には、線維芽細胞および上皮細胞、例えば有蹄類に由来する線維芽細胞お
よび子宮上皮細胞、ニワトリ線維芽細胞、ネズミ(例えばマウスまたはラット)
の線維芽細胞、STOおよびSI−m220フィーダー細胞株、並びにBRL細
胞が含まれる。
【0049】 好ましい実施態様では、フィーダー細胞はマウス胚の線維芽細胞を含むであろ
う。適切な線維芽細胞のフィーダー層の調製手段は以下の実施例に記載されてい
るが、充分に当業者の技術範囲内である。 NTユニットは、胚性幹細胞様細胞または細胞コロニーを作製するために用いる
ことができる細胞を得るために適切なサイズに達するまでフィーダー層上で培養
される。好ましくは、これらのNTユニットは、少なくとも約2から400細胞、
より好ましくは約4から128細胞、最も好ましくは少なくとも50細胞のサイ
ズに達するまで培養されるであろう。培養は適切な条件下で(すなわち約38.5℃
および5%CO2)、増殖を最適化するために典型的には約2〜5日毎に、好ま しくは約3日毎に培養液を交換しながら実施される。
【0050】 ヒト細胞/除核ウシ卵母細胞に由来するNTユニットの場合には、ES細胞コロニ
ーを産生するために十分な細胞(典型的には約50細胞の規模で)が、卵母細胞
の活性化の開始から約12日で得られるであろう。しかしながら、これは、核ド
ナーとして用いられた個々の細胞、個々の卵母細胞の種、および培養条件にした
がって変動するであろう。いつ所望された十分な数の細胞が得られるかは、当業
者には培養NTユニットの形態を基に視覚的に容易に確認できる。 ヒト/ヒト核移入胚の場合には、ヒトの組織培養細胞の維持で有用であること
が知られている培養液を使用するのが有利であろう。ヒトの胚に適した培養液の
例には文献に報告された培養液(Jones et al, Human Reprod. 13(1):169-177(1
998))、P1−カタログ番号#99242培養液およびP1−カタログ番号#9
9292培養液(ともにアービン・サイエンティフィック(Irvine Scientific)
(カリフォルニア州、サンタアナ)から入手できる)、並びにThomson・ら((199
8)および(1995)上掲書)が用いているものが含まれる。
【0051】 上記で考察したように、本発明で用いられる細胞は、好ましくは哺乳類の体細
胞、もっとも好ましくは活発に***している(非休止)哺乳類細胞培養物に由来
する細胞を含む。特に好ましい実施態様では、ドナー細胞は、所望のDNA配列の 付加、欠失または置換によって遺伝的に改変されるであろう。例えば、ドナー細
胞(例えばケラチン細胞または線維芽細胞(例えばヒト、霊長類またはウシ由来
))は、所望の遺伝子生成物、例えば治療ペプチドの発現を提供するDNA構築物を トランスフェクトされるか、または当該構築物で形質転換される。治療ポリペプ
チドの例にはリンホカイン(例えばIGF-I、IGF-II)、インターフェロン、コロニ
ー刺激因子、結合組織ポリペプチド(例えばコラーゲン)、遺伝因子、凝固因子
、酵素、酵素抑制物質などが含まれる。 さらに上記で考察したように、ドナー細胞は核移入の前に改変して、所望の作
用(例えば障害された細胞系列の発生、胚の発生の強化、および/またはアポト
ーシスの抑制)を達成することができる。所望の改変の例は下記でさらに考察す
る。
【0052】 本発明の特徴の1つは、欠損系列であって、したがって核移入に用いた場合に
生存子孫を生じることができないようなドナー細胞(例えばヒトの細胞)の遺伝
的改変を含む。これは、倫理的理由のために生存能を有する胚の作製が望まれな
い結果である場合に、特にヒトの核移入胚の場合に望まれる。これは、核移入に
用いたときに、ヒトの細胞を特定の細胞系列に分化できないように遺伝的に操作
することによって実施できる。特に、核移入ドナーとして用いるとき、得られた
”胚”が中胚葉、内胚葉または外胚葉組織の少なくとも1つを含まないか、実質
的に欠いているように細胞を遺伝的に改変できる。 これは、1つまたは2つ以上の中胚葉、内胚葉または外胚葉に特異的な遺伝子
をノックアウトするか、または損傷させることによって達成できることが予想さ
れる。その様な遺伝子の例には以下が含まれる: 中胚葉:SRF、MESP-1、HNF-4、β-Iインテグリン、MSD; 内胚葉:GATA-6、GATA-4; 外胚葉:RNAヘリカーゼA、Hβ58
【0053】 上記リストは、中胚葉、内胚葉または外胚葉の発育に含まれる既知遺伝子の代
表例であり非排他的リストを意図している。中胚葉欠損、内胚葉欠損または外胚
葉欠損細胞並びに胚の発生は以前に文献に報告されている。例えば以下を参照さ
れたい:Arsenian et al, EMBO J. 17(2):6289-6299(1998); Y. Saga, Mech. De
v. 75(1-2):53-66(1998); Holdener et al, Development, 120:(5):1355-1346(1
994); Chen et al, Genes Dev. 8(20):2466-2477(1994); Rohedel et al, Dev.
Biol. 201(2):167-189(1998)(中胚葉);Morrisey et al, Genes Dev. 12(22):
3579-3590(1998); Soudais et al, Development 121(11):3877-3888(1995)(内胚
葉);およびLee et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 95(23):13709-13713(19
98);Radice et al, Development 111(3):801-811(1991)(外胚葉)。
【0054】 一般に、所望の体細胞(例えばヒトのケラチン細胞、上皮細胞または線維芽細
胞)は、特定の細胞系列に特異的な1つまたは2つ以上の遺伝子が”ノックアウ
ト”されるか、および/またはそのような遺伝子の発現が顕著に障害されるよう
に遺伝的に操作されるであろう。これは、既知の方法(例えば同種組換え)によ
って達成できる。所望の遺伝子の”ノックアウト”を実施する好ましい遺伝シス
テムは、米国特許第5631153号(Capecchi et al)および同546476
4号に開示されている。同特許は、所望の哺乳類ゲノムでDNA配列の標的誘導改 変を可能にする正負選別(positive-negative selection, PNS)ベクターを開示 する。そのような遺伝的改変は、核移入ドナーとして用いたとき特定の細胞系列
に分化することができない細胞を生じるであろう。
【0055】 この遺伝的に改変された細胞は、欠損系列(lineage-defective)核移入胚、す
なわち機能的中胚葉、内胚葉または外胚葉の少なくとも1つを発育させない胚を
産生するために用いられる。それによって、得られた胚はたとえ、例えばヒトの
子宮に移植されたとしても生存能をもつ子孫を生じないであろう。しかしながら
、そのような核移入から得られたES細胞は、残余の損傷されていない1つまたは
2つの系列の細胞を産生するという点で有用である。例えば、外胚葉欠損ヒト核
移入胚は中胚葉および外胚葉由来分化細胞を生じるであろう。外胚葉欠損細胞は
、RNAヘリカーゼAまたはHβ58遺伝子の一方または両方の欠失および/また は損傷によって作製できる。
【0056】 これら欠損系列ドナー細胞はまた遺伝的に改変して、別の所望のDNAを発現さ せることができる。 したがって遺伝的に改変したドナー細胞は欠損系列胚盤胞を生じ、この欠損系
列胚盤胞は、移植されたときせいぜい2つの胚葉に分化するであろう。 また別に、ドナー細胞は”致死”であるように改変できる。これはアンチセン
スまたはリボザイムテロメラーゼ遺伝子を発現させることによって達成できる。
これは、アンチセンスDNAまたはリボザイムの発現を提供する既知の遺伝的方法 によって、または遺伝子のノックアウトによって実施できる。これらの”致死”
細胞は、核移入に用いたとき生存能をもつ子孫に分化できないであろう。
【0057】 本発明の別の好ましい実施態様は、組織培養でより効率的に増殖する核移入胚
の作製である。このことは、それがES細胞および/または子孫を産生するために
必要な時間および融合を減少させるという点で有利である(胚盤胞を代理母に移
植する場合)。これはまた、核移入によって生じた胚盤胞およびES細胞は、発育
が障害される可能性があることが観察されたので望ましいことである。これらの
問題は組織培養条件の変更によってしばしば軽減されるが、また別の解決は、胚
の発生に必要な遺伝子の発現を強化することにより胚の発生を強化するものであ
る。
【0058】 例えば、Pedタイプの遺伝子生成物(これはMHC−Iファミリーに属する
)は胚の発生に極めて重要であることが報告された。より具体的には、マウスの
着床前の胚の場合、Q7およびQ9遺伝子が”迅速成長”表現型に必要であるこ
とが報告された。したがって、これらの遺伝子および関連する遺伝子の発現を提
供するDNA、またはそれらのヒト対応物もしくは他の哺乳類の対応物のドナー細 胞への導入は、より迅速に成長する核移入胚を生じるであろうということは予想
される。このことは、同じ種の細胞または核の融合によって生じた核移入胚より
も組織培養で効率の悪い発生を示す種間核移入胚の場合には特に望ましいことで
ある。
【0059】 特に、Q7および/またはQ8遺伝子を含むDNA構築物は、核移入の前にドナー体細
胞に導入されるであろう。例えば、Q7および/またはQ8遺伝子、IRES、1つまたは2
つ以上の選択性マーカー(例えばネオマイシン、ADA、DHFR)およびポリ-A配列(例
えばbGHポリA配列)に機能的に連結した強力な構成的哺乳類プロモーターを含む
発現構築物を構築できる。また、遮蔽配列(insulates)を加えることによってQ7 およびQ9遺伝子発現をさらに強化することは有益であろう。これらの遺伝子は異
なる種(例えばウシ、ヤギ、ブタ、イヌ、ネコ、およびヒト)で高度に保存され
ているので、胚盤胞の発育で初期に発現されることが予想される。さらにまた、
ドナー細胞を操作して、胚の発生を強化する他の遺伝子に影響を与えることがで
きることが予想される。したがって、これらの遺伝的に改変したドナー細胞はよ
り効率的に胚盤胞および着床前の段階の胚を生ずるはずである。
【0060】 本発明のまた別の特徴では、アポトーシス(すなわちプログラムされた細胞死
)に耐性をもつドナー細胞の構築が含まれる。細胞死に関連する遺伝子は着床前
の段階の胚に存在することが文献に報告されている(Adams et al, Science 281
(5381):1322-1326(1998))。アポトーシスを誘導すると報告された遺伝子には、
Bad、Bok、BH3、Bik、Hrk、BNIP3、BiML、Bad、BidおよびBGL-1が含まれる。反対にプロ グラムされた細胞死から細胞を保護すると報告された遺伝子には、例示すればBc
L-XL、Bcl-w、Mcl-1、A1、Nr-13、BHRF-1、LMW5-HL、ORF16、Ks-Bel-2、E1B-19KおよびCED
-9が含まれる。
【0061】 したがって、アポトーシスを誘導する遺伝子が”ノックアウト”されているか
、または胚の発生時には細胞をアポトーシスから保護する遺伝子の発現が強化も
しくは開始するドナー細胞を構築できる。 例えば、これは、胚の発生時にそのような保護遺伝子(例えばBc1−2)ま
たは関連遺伝子の調節発現を提供するDNA構築物を導入することによって実施で きる。したがって、特定の増殖条件下で胚を培養することによってこの遺伝子を
”始動させる”ことができる。また別には、この遺伝子は構成的プロモーターに
連結してもよい。
【0062】 より具体的には、調節性または構成的プロモーター(例えばPGK、SV40、CMV、ユ
ビキチンまたはβ−アクチン、IRES)に連結したBcl-2遺伝子、適切な選択性マ ーカーおよびポリ−A配列を含むDNA構築物を構築して、所望のドナー哺乳類細 胞(例えばヒトのケラチン細胞または線維芽細胞)に導入できる。 核移入胚を作製するために用いられる場合、これらドナー細胞はアポトーシス
に耐性で、それによって組織培養でより効率的に分化するはずである。したがっ
て、核移入によって製造される適切な着床前の胚の速度および/または数を増加
させることができる。
【0063】 同じ結果を得る別の手段は、アポトーシスを誘導する1つまたは2つ以上の遺
伝子の発現を弱めることである。これは、ノックアウトによるか、または胚の発
生で発現され、胚の発生の初期にアポトーシスを誘導する遺伝子に対するアンチ
センスまたはリボザイムを使用することによって達成されるであろう。その例は
上記と同じである。あるいはまた、ドナー細胞は、両方の改変(すなわちアポト
ーシス誘導遺伝子の損傷およびアポトーシスを遅らせまたは妨害する遺伝子の発
現の強化)を含むように構築してもよい。アポトーシスに影響を及ぼす遺伝子の
構築および選別、並びにそのような遺伝子を発現する細胞株は米国特許第564
6008号(Craig B. Thompson et al., ミシガン大学に譲渡)に開示されてい
る(この特許は参照により本明細書に含まれる)。
【0064】 効率を強化する1つの方法は、特定の細胞周期にある細胞をドナー細胞として
選択することである。これは核移入効率に対して顕著な効果をもつことが報告さ
れた(Barmes et al, Mol. Reprod. Devel. 36(1):33-41(1993))。特定の細胞サ
イクル期の細胞を選別する種々の方法は報告されているが、これには、血清欠乏
(Campbell et al, Nature, 380:64-66(1966); Wilmut et al, Nature, 385:810
-813(1977))および化学物質による同調(Urbani et al, Exp. Cell Res. 219(1
):159-168(1995))が含まれる。
【0065】 例えば、特定のサイクリンDNAを、検出可能なマーカー(例えば緑色蛍光タン パク質(GFP))とともに調節配列に機能的に連結することができ、サイクリン破 壊ボックス、および場合によってサイクリンとマーカータンパク質の発現を強化
する遮蔽配列(insulation sequence)がこれに続く。それによって、核移入ドナ ーとして使用する所望の細胞サイクルをもつ細胞を容易に視覚により検出および
選別できる。その例は、G1期の細胞を選別するためのサイクリンD1遺伝子である
。しかしながら、いずれのサイクリン遺伝子も本発明での使用に適しているはず
である(例えば以下の文献を参照されたい:King et al, Mol. Biol. Cell 7(9)
:1343-1357(1996))。 しかしながら、所望の細胞周期段階の細胞を作製するための、より侵襲的でな
くより効率のよい方法が必要とされている。これは、検出可能な条件下で特定の
サイクリンを発現するように遺伝的に改変されているドナー細胞によって実行で
きると期待される。これにより、特定の細胞周期の細胞を他の細胞周期から容易
に区別することができる。
【0066】 サイクリンは細胞周期の特定のステージでのみ発現されるタンパク質である。
それらには、G1期のサイクリンD1、D2およびD3、G2/M期のサイクリンB1およびB2、
並びにS期のサイクリンE、AおよびHが含まれる。これらのタンパク質は容易に翻
訳され、サイトゴルサイトトゾル(cytogolcytosol)で破壊される。そのようなタ
ンパク質のこの”一過性”発現は部分的には”破壊ボックス”の存在に起因する
。破壊ボックスは、ユジキチン(ugiquitin)経路によるこれらのタンパク質の即 時破壊を誘導するタグとして機能するタンパク質の一部分である短いアミノ酸配
列である(Adams et al, Science 281(5321):1322-1326(1998))。
【0067】 本発明では、1つまたは2つ以上のそのようなサイクリン遺伝子を容易に検出
できる条件下で、好ましくは目でみることができるように(例えば蛍光標識の使
用によって)発現するドナー細胞が構築されるであろう。例えば、特定のサイク
リンDNAは好ましくは調節配列に、検出可能なマーカー(例えば緑色蛍光タンパ ク質(GEP))とともに機能的に連結することができ、サイクリン破壊ボックス、 および場合によってサイクリンおよび/またはマーカータンパク質の発現を強化
する遮蔽配列がこれに続く。それによって、核移入ドナーとして使用する所望の
細胞サイクルの細胞が容易に視覚によって検出および選別できる。その例は、G1
期の細胞の選別に使用できるサイクリンD1遺伝子である。しかしながら、いずれ
のサイクリン遺伝子も本発明での使用に適しているはずである(例えば以下の文
献を参照されたい:King et al, Mol. Biol. Cell 7(9):1343-1357(1996))。
【0068】 更に本発明の別の側面は、核移入の効率、好ましくは種間核移入法の効率を向
上させる方法である。本発明者らは一つの種の核または細胞は異なる種の除核卵
母細胞に挿入されまたは融合された場合、胚盤胞を形成する核移植胚を生じさせ
ることができ、その胚はES細胞株を生じさせることを証明したが、そのような方
法の効率は極めて低い。従って、多数の融合は典型的には胚盤胞を形成するため
に効率化される必要がある。ここで、胚盤胞の細胞はES細胞およびES細胞株を生
じさせるために培養されることがあるものである。 更に、in vitroで核移入胚の発生を増強するための別の方法は、培養条件を最
適化することによるものである。この結果を得るための一つの手段は、アポトー
シスを阻害する条件下でNT胚を培養することである。本発明のこの実施態様につ
いては、カスパーゼのようなプロテアーゼが他の細胞型に類似したアポトーシス
によって卵母細胞の死を引き起こすことができることが見出されている(Jurisi
cosavaら、Mol. Reprod. Devel., 51(3):243-253 (1998)を参照せよ)。
【0069】 胚盤胞の発生は、核移入に使用され、胚盤胞の維持に使用される、または、未
着床段階の胚の培養に使用される培地に1以上のカスパーゼ阻害剤を含めること
によって増強されるであろうことが予想される。そのような阻害剤には、例とし
て、カスパーゼ-4阻害剤I、カスパーゼ-3阻害剤I、カスパーゼ-6阻害剤II、カ スパーゼ-9阻害剤II、およびカスパーゼ-1阻害剤Iが含まれる。それらの量はア ポトーシスを阻害するために効果的な量、例えば、培地に対して0.00001〜5.0質
量%であろう;より好ましくは、培地に対して0.01質量%〜1.0質量%であろう 。従って、上述の方法は、続く組織培養における胚盤胞および胚発生を増強する
ことにより、核移入の効率を増大させるために使用することができるであろう。 所望のサイズのNTユニットが得られたならば、細胞はそのゾーンから機械的に
除去され、次に胚性または肝細胞用細胞および細胞株を作製するために使用され
る。これは好ましくはNTユニットを含む凝集塊、これは細胞典型的には少なくと
も約50細胞を含むが、その凝集塊をとり、そのような細胞を洗浄し、その細胞を
フィーカー層上にプレーティング、例えば、放射線照射線維芽細胞上にプレーテ
ィングすることによって与えられる。しなしながら、より少ないまたはより多い
細胞数のNTユニットおよびNTユニットの他の部分からの細胞もES様細胞および細
胞コロニーを得るために使用してよい。
【0070】 ドナー細胞DNAの卵母細胞細胞質へのより長期の曝露が分化過程を容易にする かもしれない。この観点から、再構成胚から分割細胞を取り出しそれらを新しい
除核卵母細胞と優等させることによって再クローニングを達成することができる
。あるいは、ドナー細胞を除核細胞と融合させ4〜6時間後に、活性化なしに、
染色体を取り出し、より若い卵母細胞と融合させることができる。活性化はその
後起こるであろう。 細胞は適切な増殖培地中、例えば、10%FCSおよび0.1mMβ-メルカプトエタノ ール(Sigma)およびL―グルタミンを添加したαMEM中で、フィーダー層において
維持される。増殖培地は増殖を最適化するために必要に応じて頻繁に、例えば、
2〜3日ごとに交換する。 この培養過程は胚性または幹細胞様細胞または細胞株の形成を引き起こす。ヒ
ト細胞/ウシ卵母細胞由来NT胚の場合、コロニーはαMEM培地中での培養約第2 日目までに観察される。しかしながら、この時間は個別の核ドナー細胞、特定の
卵母細胞および培養条件に依存して変動することがある。当業者は特定の胚性ま
たは幹細胞様細胞の最適な増殖に望まれる培養条件を変えることができるであろ
う。
【0071】 得られた胚性または幹細胞様細胞および細胞コロニーは、典型的にはドナー卵
母細胞の種よりも核細胞ドナーとして用いられた種の胚性または幹細胞様細胞に
類似した外観を示す。例えば、ヒト核ドナー細胞を除核ウシ卵母細胞に移入する
ことによって得られた胚性または幹細胞様細胞の場合、この細胞はウシES様細胞
よりもマウス胚性幹細胞により類似した形態を示す。 より具体的には、ヒトES-系統細胞コロニーの個々の細胞はあまりよく特定さ れず、コロニーの周辺は屈折性でその外観がスムーズである。更に、この細胞コ
ロニーは長い細胞倍加時間を有しており、マウスES細胞の約2倍である。また、
ウシおよびブタ由来ES細胞と異なり、コロニーは上皮様外観を有していない。
【0072】 上で議論したように、Thomsonらによって米国特許第5,843,780号において、霊
長類幹細胞はSSEA-1(-)、SSEA-4(+)、TRA-1-60(+)、TRA-1-81(+)、およびアルカ
リホスファターゼ(+)であることが報告されている。本発明によって作製された ヒトおよび霊長類ES細胞は類似または同一のマーカー発現を示すことが予想され
る。 あるいは、そのような細胞が実際にヒトまたは霊長類胚性幹細胞であることは
、全ての内胚葉、中胚葉および外胚葉組織を生じさせる能力に基づいて確認され
るであろう。このことは、本発明によって作製されたES細胞を適切な条件下、例
えば、Thomson、米国特許5,843,780に開示された条件下で培養することによって
証明されるであろう。この文献の開示は本発明に含まれるものとする。 生じた胚性または幹細胞様細胞および細胞株、好ましくはヒト胚性または幹細
胞様細胞および細胞株は多数の治療的および診断的応用性を有している。特に、
そのような胚性または幹細胞様細胞は細胞移植治療のために使用されることがあ
る。ヒト胚性または幹細胞様細胞は多数の疾病状態の治療に応用性がある。
【0073】 この観点から、マウス胚性幹細胞(ES細胞)はほとんどどのような細胞型、例え
ば造血幹細胞にも分化し得ることが知られている。従って、本発明によって作製
されたヒト胚性または幹細胞様細胞は同様な分化能を持っている筈である。本発
明による胚性または幹細胞様細胞は既知の方法によって所望の細胞型を得るため
に分化が誘導されるであろう。例えば、主題のヒト胚性または幹細胞様細胞は、
そのような細胞を分化培地および細胞分化を与える条件下で培養することにより
、造血幹細胞、筋細胞、心筋細胞、幹細胞、軟骨細胞、上皮細胞、尿路細胞その
他に分化誘導されることがある。胚性幹細胞の分化を生じさせる培地および方法
は適切な培養条件としてこの技術分野で知られたものである。 例えば、 Palaciosら、Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 92:7530-7537(1995) 、は、始めに幹細胞の凝集塊をレチノイン酸を欠く懸濁培地中で培養し、次にレ
チノイン酸を含む同じ培地で培養し、次に細胞凝集塊を細胞接着を与える基質に
移すことを含む誘導手順に幹細胞をかけることによって、胚性細胞株から造血幹
細胞を作製することを開示する。
【0074】 更に、Pedersen, J. Reprod. Fertil. Dev., 6:543-552(1994)は、胚性幹細胞
の種々の分化細胞型、特に造血幹細胞、筋細胞、心筋細胞、神経細胞を含む細胞
型へのin vitro分化のための方法を開示する多数の論文を参照している総説であ
る。 更に、Bainら、Dev. Biol., 168:342-357 (1995)は神経の性質を有する神経細
胞を作製するための胚性幹細胞のin vitro分化を教示する。これらの文献は胚性
または幹細胞様細胞からの分化細胞を得るための報告された方法の例である。こ
れらの文献、特にその中の胚性幹細胞を分化させるための方法に関する開示は引
用により完全に本明細書に含まれるものとする。 このように、既知の方法および培地を用いて、当業者は主題の胚性または幹細
胞様細胞を培養して所望の分化細胞型、例えば、神経細胞、筋細胞、造血幹細胞
その他を得ることができるであろう。 加えて、誘導可能なBcl-2またはBcl-xlを用いることは特定の細胞系統のin vi
tro発生を増強するために有用かもしれない。in vivoでは、Bcl-2は全てではな いが、リンパ球系細胞および神経発生の際に生じる多くのアポトーシス性細胞死
を阻害する。ドナー細胞のトランスフェクション後の関連する細胞系統のアポト
ーシスを阻害するためにBcl-2発現がどのように使用できるかの詳細な議論は、 米国特許第5,646,008号に開示されている。この文献は本明細書に含まれるもの とする。
【0075】 主題の胚性または幹細胞様細胞はどのような所望の分化細胞型を得るためにも
使用してよい。そのような分化ヒト細胞の治療的使用は並ぶもののないものであ
る。例えば、ヒト造血幹細胞は、骨髄移植を必要とする医学的治療に使用される
かもしれない。そのような手順は多くの疾病、例えば、卵巣癌および白血病のよ
うな後期段階の癌、およびAIDSのような免疫系を危険に曝す疾病の治療に使用さ
れる。造血幹細胞は、例えば番またはAIDS患者の成人体細胞、例えば上皮細胞ま
たはリンパ細胞と除核卵母細胞、例えばウシ卵母細胞と融合させ、上述した胚性
または幹細胞様細胞を得て、そのような細胞を分化に適した条件で、造血幹細胞
が得られるまで培養することによって得ることができる。そのような造血幹細胞
は癌およびAIDSを含む疾病の治療に使用されることがある。
【0076】 あるいは、神経障害のある患者の成人体細胞を除核動物卵母細胞、例えば、霊
長類またはウシ卵母細胞と融合し、それからヒト胚性または幹細胞様細胞を得、
そのような細胞を分化条件下で培養し、神経細胞株を作製してもよい。そのよう
なヒト神経細胞の移植によって治療し得る具体的な疾病には、例えば、特に、パ
ーキンソン病、アルツハイマー病、ALSおよび脳性麻痺が含まれる。特にパーキ ンソン病の場合、移植胎児脳神経細胞は周辺細胞と適切な連絡を取り、ドーパミ
ンの産生することが証明されている。これはパーキンソン病症状の長期の逆転を
起こすことができる。 分化細胞の特異的な選択ができるために、ドナー細胞は誘導可能なプロモータ
ーによって発現される選択マーカーでトランスフェクションされることがあり、
それにより分化が誘導された場合に特定の細胞系統の選抜または濃縮が可能とな
る。例えば、CD34-neoは造血幹細胞の選抜に、Pw1-neoが筋細胞の選抜に、Mash-
1-neoが交感神経細胞の選抜に、Mal-neoが大脳皮質の灰白質のヒトCNS神経細胞 の選抜に使用されることがある等。
【0077】 主題の発明の大きな利点は、本発明は移植に適したアイソジェニックまたはシ
ンジェニックヒト細胞を実質的に無制限に供給することである。従って、本発明
は現行の移植法と関連した重要な問題、すなわち、宿主対移植片または移植片対
宿主拒絶によって起こるかもしれない移植組織の拒絶を除去するであろう。伝統
的には、拒絶はシクロスポリンのような抗−拒絶剤の投与によって防がれ、ある
いは軽減される。しかし、そのような薬剤は有意に有害な副作用、例えば、免疫
抑制、癌原特性を有し、かつ、非常に高価である。本発明は、抗−拒絶剤の使用
を排除、または少なくとも大きく低減させるはずである。 アイソジェニック細胞療法によって治療し得る疾病および健康状態には、例え
ば、脊髄損傷、多発性硬化症、筋ジストロフィー、糖尿病、肝臓疾病、すなわち
高コレステロール血症、心臓疾病、軟骨置換、火傷、脚潰瘍、胃腸疾患、血管疾
患、腎疾患、尿路疾患および疾病および健康状態と関連した老化が含まれる。
【0078】 また、本発明によって作製されたヒト胚性または幹細胞様細胞は遺伝的に改変
されたまたはトランスジェニックヒト分化細胞を作製するために使用されること
がある。これは本質的には、異種であってもよい所望の遺伝子を導入すること、
または本発明によって作製されたヒト胚性若しくは幹細胞様細胞の内在性遺伝子
の全部又は一部を除去し、そのような細胞が所望の細胞型へ分化できるようにす
ることにより達成されるであろう。そのような改変を達成するための好ましい方
法は、相同組換えによるものである。なぜならば、そのような技法は幹細胞様細
胞ゲノムの特定の部位における遺伝子の挿入、欠失または改変を行なうために使
用できるからである。 この方法論は欠損遺伝子、例えば、欠損免疫系遺伝子、嚢胞性繊維症遺伝子、
を置換するため、または、治療的に有益なタンパク質、例えば、成長因子、リン
フォカイン、サイトカイン、酵素等の発現をもたらす遺伝子の導入に使用できる
。例えば、脳由来成長因子をコードする遺伝子はヒト胚性または幹細胞様細胞に
導入されることがあり、神経細胞に分化した細胞はパーキンソン病患者に移植さ
れそのような疾病の際に神経細胞の損失を遅らせる。
【0079】 従来、BDNFでトランスフェクションされた細胞型は初代細胞から不死細胞株に
わたっており、神経または非神経(筋芽細胞および線維芽細胞)由来細胞のいず
れにもわたっていた。例えば、星状細胞がレトロウイルスベクターを用いてBDNF
遺伝子でトランスフェクションされており、この細胞がパーキンソン病のラット
モデルへ移植された(Yoshimotoら、Brain Research, 691:25-36, (1995))。 このex vivo治療はラットにおいて移植後32日でパーキンソン様症状を45%軽 減した(Lundbergら、Develop. Neurol., 139:38-53 (1996)およびその引用文献
)。 しかしながら、そのようなex vivo系は問題を抱えている。特に、現在使用さ れているレトロウイルスベクターはin vivoでダウンレギュレーションされ、導 入遺伝子は一過性にしか発現しない(Mulliganによる総説、Science, 226-932 (
1993))。また、そのような研究は初代細胞、星状細胞を使用したが、この細胞 は有限な生存期間を有し自己複製が遅い。そのような特性はトランスフェクショ
ンの率に有害な影響を与え、安定な形質転換細胞の選抜を妨害する。さらに、相
同組換え技法において使用される遺伝子標的初代細胞の大集団を増殖させること
はほとんど不可能である。
【0080】 これに対して、レトロウイルス系に関連する難しさはヒト胚性または幹細胞様
細胞の使用によって除去されるはずである。以前に、ウシおよびブタ胚性細胞株
がトランスフェクションでき、異種DNAの安定組込みについて選抜できることが 本譲受人によって証明されている。そのような方法は、共同譲渡された、1996年
4月1日出願の米国第08/626,054号に記載されている。この文献は本明細書に含
まれるものとする。従って、そのような方法、あるいは他の既知の方法を使用し
て、所望の遺伝子を主題の胚性または幹細胞様細胞に導入してよく、その細胞は
所望の細胞型、例えば、造血幹細胞、神経細胞、膵臓細胞、軟骨細胞等に分化す
る。 主題の胚性または幹細胞様細胞に導入してよい遺伝子には、例えば、上皮成長
因子、塩基性線維芽細胞成長因子、グリア由来神経栄養成長因子、インシュリン
様成長因子(IおよびII)、ニューロトロフィン-3、ニューロトロフィン-4/5、 シリア神経栄養因子、AFT-1、サイトカイン遺伝子(インターロイキン、インタ ーフェロン、コロニー刺激因子、腫瘍壊死因子(α、β)、その他)、治療酵素
、コラーゲン、ヒト血清アルブミンをコードする遺伝子、その他が含まれる。
【0081】 加えて、必要であれば、患者から治療細胞を除去するために、この分野で知ら
れたネガティブ選択システムの一つを使用することもできる。例えば、チミジン
キナーゼ(TK)遺伝子でトランスフェクションされたドナー細胞はTK遺伝子を有す
る胚細胞の産生へつながる。これらの細胞の分化は、これもTK遺伝子を発現して
いる注目している治療細胞の単離につながる。そのような細胞はガンシクロビル
投与によって任意の時点で患者から除去することができる。そのようなネガティ
ブ選択システムは米国特許第5,698,446号に記載されている。この文献は本明細 書に含まれるものとする。 主題の胚性または幹細胞様細胞、好ましくはヒト細胞、は分化のin vitroモデ
ルとして使用してもよく、特に、初期発生に関与する遺伝子の研究のために使用
されることがある。 また、主題の胚性または幹細胞様細胞を使用した分化した細胞、組織および器
官は薬剤研究に使用してもよい。 さらに、主題の胚性または幹細胞様細胞は他の胚性または幹細胞様細胞作製の
ための核ドナーとして使用してもよい。 主題の発明をより明瞭に記載するために、以下の実施例が提供される。
【0082】 (実施例) 実施例1 材料と方法核移入のためのドナー細胞 標準的なスライドグラスで同意を得た成人の口内から軽く上皮細胞をかきとっ
た。この細胞をスライドからCaまたはMgを含まないリン酸緩衝生理食塩水を含む
ペトリ皿へ洗い出した。細胞を小口径のピペットでピペッティングし、細胞塊を
破壊して単一細胞懸濁物にした。次にこの細胞を除核ウシ卵母細胞への核移入の
ため、オイル下で10%ウシ胎仔血清(FCS)を含むTL-HEPES培地の微小液滴内へ移 した。
【0083】核移入手順 基本的な核移入手順は従前に記載されている。手短には、屠殺場卵母細胞をin
vitroで成熟させた後、成熟後時間(hpm)にしておよそ18時間で卵母細胞を卵 丘細胞から剥がし、斜面マイクロピペットで除核した。除核は、TL-HEPES培地+
ビスベンジミド(Hoechst 33342、3μg/ml;Sigma)中で確認した。次に、個々の
ドナー細胞をレシピエント卵母細胞の卵黄周囲腔中に置いた。ウシ卵母細胞細胞
質およびドナー核(NTユニット)をエレクトロフュージョン法を用いて融合させた
。90V、15μ秒からなる1回のフュージョンパルスをこのNTユニットに作用させ た。これは卵母細胞の成熟開始後(hpm)24時間で行なった。NTユニットをCR1aa培
地中で28hpmまで置いた。
【0084】 卵母細胞を人工的に活性化する方法は別の所に記載されている。NTユニット活
性化は28hpmで行った。この活性化手順は簡単な記載は以下の通りである:NTユ ニットを、1mg/mlBSAを添加したTL-HEPES中でイオノマイシン(5μM;CalBioch
em, La Jolla, CA)に4分間曝し、その後5分間30mg/mlのBSAを添加したTL-HEPES
中で洗浄した。次にこのNTユニットを0.2mM DMAP(Sigma)を含むCR1aa培地の微小
液滴に移し、38.5℃、5%CO2で4〜5時間培養した。このNTユニットを洗浄し 、マウス胚線維芽細胞のコンフルエントなフィーダー層(以下に記載)を含む4 穴プレート中で10%FCSと6mg/ml BSAを加えたCR1aa培地中に置いた。このNTユ ニットを更に3日間38.5℃および5%CO2にて培養した。培地は活性化後の第12 日目まで3日後ごとに交換した。この時点で所望の細胞数、すなわち、約50細胞
に達したNTユニットをゾーンから機械的に外し胚性細胞株の作製に用いた。上述
のようにして得られたNTユニットの写真は図1に含まれている。
【0085】線維芽細胞フィーダー層 14〜16日齢のマウス胎仔から胚性線維芽細胞の初代培養を得た。頭、肝臓、心
臓および消化管を無菌的に除去した後、胚を切り刻み、予備加温したトリプシン
EDTA溶液(0.05%トリプシン/0.02%EDTA;GIBCO、Grand Island、NY)中で37℃ にて30分間インキュベーションした。線維芽細胞を組織培養フラスコ中に入れ、
10%ウシ胎仔血清(FCS)(Hyclone、Logen、UT)、ペニシリン(100IU/ml)およびス トレプトマイシン(50μg/ml)を添加したα-MEM培地(BioWhittaker, Walkersvil
le, MD)中で培養した。継代3〜4日後に、35x10Nunc培養皿中の(Baxter Sci
entific, McGaw Park, IL)胚性線維芽細胞を放射線照射した。放射線照射した 線維芽細胞を37℃にて5%CO2を含む加湿大気中で増殖させ維持した。次に、均 一な単層細胞を有するこの培養皿を胚性細胞株を培養するために使用した。
【0086】胚性細胞株の作製 上述のように得られたをNTユニット細胞を洗浄し、放射線照射フィーダー線
維芽細胞上に直接プレーティングした。これらの細胞はNTユニットの内部部分
の細胞を含んでいた。細胞を10%FCSおよび0.1mMβ-メルカプトエタノール(Sigm
a)を添加したαMEMからなる増殖培地中で維持した。増殖培地は2〜3日毎に交 換した。最初のコロニーは培養第2日目に観察された。コロニーは増殖し、前に
開示されたマウス胚性幹細胞(ES細胞)に類似の形態を示した。コロニー内部の
個々の細胞はあまり明瞭ではないが、コロニーの周辺は屈折性で外観はスムーズ
である。コロニーはマウスES細胞よりも細胞倍加時間が遅いように見える。また
、ウシおよびブタ由来ES細胞と異なり、このコロニーはこれまでは上皮細胞的外
観を有していない。図2〜5は上述したように得られたES様細胞コロニーの写真
である。
【0087】分化ヒト細胞の作製 得られたヒト胚性細胞を分化培地に移し、分化したヒト細胞型が観察されるま
で培養した。
【0088】 結果
【表1】 表1.NTユニット作製および発生におけるドナー核としてのヒト細胞
【0089】 16細胞よりも多い細胞を有する構造に発生した一つのNTユニットを線維芽細
胞フィーダー層上に置床した。この構造はフィーダー層に接着しておりES細胞様
形態を有するコロニーを形成しながら増殖を開始した(例えば図2参照)。更に
、4〜16細胞期構造はES細胞コロニーの作製のために、およびそのテストのため
に使用しなかったが、この段階はES細胞またはES様細胞株を生成しエルことが以
前に示されている(マウス、Eistetterら、Devel. Grouwth and Differ., 31:27
5-282 (1989);ウシ、 Sticeら、1996)。従って、4〜16細胞期NTユニットも 胚性または幹細胞様細胞および細胞コロニーを生じさせることが期待される。 また、ACM、ウリジンおよび1000IUのLIFを含む培地中で培養された成人ヒトケ
ラチン細胞株と除核ウシ卵母細胞との融合によって類似の結果が得られた。50
の再構成胚のうち、22が分割し1つが約第12日目に胚盤胞へ発達した。この胚盤
胞をプレーティングしES細胞株の作製を続けた。
【0090】 本発明は種々の具体的な材料、手順、および実施例を参照することによって記
載し説明してきたが、本発明は特定の材料、材料の組合せ、およびその目的のた
めに選択した手順に限定されないことは言うまでもない。そのような詳細の種々
のバリエーションが当業者に理解され、認識されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は成人ヒト細胞の除核ウシ卵母細胞への移植によって作製さ
れた核移植(NT)ユニットの写真である。
【図2】 図2は、図1に示したようなNTユニット由来の胚性幹細胞用細胞
の写真である。
【図3】 図3は、図1に示したようなNTユニット由来の胚性幹細胞用細胞
の写真である。
【図4】 図4は、図1に示したようなNTユニット由来の胚性幹細胞用細胞
の写真である。
【図5】 図5は、図1に示したようなNTユニット由来の胚性幹細胞用細胞
の写真である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML, MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K E,LS,MW,SD,SL,SZ,UG,ZW),E A(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ ,TM),AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB ,BG,BR,BY,CA,CH,CN,CU,CZ, DE,DK,EE,ES,FI,GB,GD,GE,G H,GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP ,KE,KG,KP,KR,KZ,LC,LK,LR, LS,LT,LU,LV,MD,MG,MK,MN,M W,MX,NO,NZ,PL,PT,RO,RU,SD ,SE,SG,SI,SK,SL,TJ,TM,TR, TT,UA,UG,UZ,VN,YU,ZW (72)発明者 ローブル ジェームズ アメリカ合衆国 マサチューセッツ州 01007 ベルチャータウン オールド エ ンフィールド 196 (72)発明者 シーベリー ジョージ アメリカ合衆国 マサチューセッツ州 01002 アムハースト ヴィレッジ パー ク 166 (72)発明者 スタイス スティーヴン エル アメリカ合衆国 マサチューセッツ州 01007 ベルチャータウン アムハースト ロード 468 Fターム(参考) 4B024 AA01 BA21 CA01 DA02 DA03 FA02 GA18 HA01 4B065 AA90X AA90Y AA93Y AB01 AB04 AB05 AB06 AB08 AC20 BA01 BA08 CA27 CA44 CA60

Claims (50)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 胚性または幹細胞様細胞を作製する方法であって、 (i) 所望の分化したヒト細胞または哺乳動物細胞または細胞核を、除核した動 物卵母細胞へ挿入することであって、前記卵母細胞が核移植(NT)ユニットの形成
    に適した条件下でヒトまたは哺乳動物細胞と異なる種から誘導されたものである
    こと; (ii) 得られた核移植ユニットを活性化すること; (iii) 前記活性化核移植ユニットを2細胞発生期よりも大きくなるまで培養す ること;および、 (iv) 前記培養NTユニットから得られた細胞を培養して胚性または幹細胞様細
    胞株を得ること、 を含む前記方法。
  2. 【請求項2】 除核した動物卵母細胞へ挿入される細胞がヒト細胞である、
    請求項1に記載の方法。
  3. 【請求項3】 ヒト細胞が成人細胞である、請求項2に記載の方法。
  4. 【請求項4】 ヒト細胞が上皮細胞、ケラチン細胞、リンパ細胞または線維
    芽細胞である、請求項2に記載の方法。
  5. 【請求項5】 卵母細胞が哺乳動物から得たものである、請求項2に記載の
    方法。
  6. 【請求項6】 動物卵母細胞が有蹄類から得たものである、請求項5に記載
    の方法。
  7. 【請求項7】 有蹄類が、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ、ヤギ、バッファロー
    からなる群より選ばれる、請求項6に記載の方法。
  8. 【請求項8】 除核細胞が除核に先だって成熟させたものである、請求項1
    に記載の方法。
  9. 【請求項9】 融合核移植ユニットがin vitroで活性化される、請求項1に
    記載の方法。
  10. 【請求項10】 活性化核移植ユニットが培養フィーダー層上で培養される
    、請求項1に記載の方法。
  11. 【請求項11】 フィーダー層が線維芽細胞を含む,請求項10に記載の方
    法。
  12. 【請求項12】 (iv)において16以上の細胞を有するNTユニットがフィーダ
    ー細胞層上で培養される、請求項1に記載の方法。
  13. 【請求項13】 フィーダー細胞層が線維芽細胞を含む、請求項12に記載
    の方法。
  14. 【請求項14】 線維芽細胞がマウス胚線維芽細胞を含む、請求項13に記
    載の方法。
  15. 【請求項15】 得られた胚性または幹細胞様細胞が分化誘導される、請求
    項1に記載の方法。
  16. 【請求項16】 得られた胚性または鐶細胞様細胞が分化誘導される、請求
    項2に記載の方法。
  17. 【請求項17】 融合がエレクトロフュージョンによって行われる、請求項
    1に記載の方法。
  18. 【請求項18】 請求項1に記載の方法によって得られる胚性または幹細胞
    様細胞。
  19. 【請求項19】 請求項2に記載の方法によって得られるヒト胚性または幹
    細胞様細胞。
  20. 【請求項20】 請求項3に記載の方法によって得られるヒト胚性または幹
    細胞様細胞。
  21. 【請求項21】 請求項4に記載の方法によって得られるヒト胚性または幹
    細胞様細胞。
  22. 【請求項22】 請求項6に記載の方法によって得られるヒト胚性または幹
    細胞様細胞。
  23. 【請求項23】 請求項7に記載の方法によって得られるヒト胚性または幹
    細胞様細胞。
  24. 【請求項24】 請求項16に記載の方法によって得られる分化ヒト細胞。
  25. 【請求項25】 神経細胞、造血幹細胞、膵臓細胞、筋細胞、軟骨細胞、尿
    路細胞、肝細胞、生殖細胞、皮膚細胞、腸管細胞、胃細胞からなる群より選ばれ
    る、請求項24に記載の分化ヒト細胞。
  26. 【請求項26】 細胞移植治療を必要としている患者に、請求項24に記載
    のアイソジェニック分化ヒト細胞を投与することを含む、治療方法。
  27. 【請求項27】 細胞移植治療が、パーキンソン病、ハンチントン病、アル
    ツハイマー病、ALS、脊髄疾患または損傷、多発性硬化症、筋ジストロフィー、 嚢胞性繊維症、肝臓疾病、糖尿病、心臓疾病、軟骨疾病または損傷、火傷、脚潰
    瘍、血管疾病、尿路疾病、AIDSおよび癌からなる群より選ばれる疾病または健康
    状態を治療するために行われる、請求項26に記載の方法。
  28. 【請求項28】 分化ヒト細胞が造血幹細胞または神経細胞である、請求項
    26に記載の方法。
  29. 【請求項29】 治療がパーキンソン病の治療であり、分化細胞が神経細胞
    である、請求項26に記載の方法。
  30. 【請求項30】 治療が癌の治療であり、分化細胞が造血幹細胞である、請
    求項26に記載の方法。
  31. 【請求項31】 挿入遺伝子を含み、かつ発現する、請求項24に記載の分
    化ヒト細胞。
  32. 【請求項32】 胚性若しくは幹細胞様細胞において、所望の遺伝子が挿入
    、除去または改変される、請求項1に記載の方法。
  33. 【請求項33】 所望の遺伝子が治療酵素、成長因子またはサイトカインを
    コードする遺伝子である、請求項32に記載の方法。
  34. 【請求項34】 胚性または幹細胞様細胞がヒトの胚性または幹細胞様細胞
    である、請求項32に記載の方法。
  35. 【請求項35】 所望の遺伝子が相同組換えによって除去、改変または欠失
    される、請求項32に記載の方法。
  36. 【請求項36】 ドナー細胞が、内胚葉、中胚葉および外胚葉の少なくとも
    1つの発生を阻害するように遺伝的に改変されている、請求項1に記載の方法。
  37. 【請求項37】 分化効率が上昇するようにドナー細胞が改変されている、
    請求項1に記載の方法。
  38. 【請求項38】 培養核移植ユニットが少なくとも1種のカスパーゼ阻害剤
    を含む培地中で培養される、請求項36に記載の方法。
  39. 【請求項39】 ドナー細胞が特定のサイクリンの発現指標となる検出可能
    な標識を発現する、請求項1に記載の方法。
  40. 【請求項40】 ドナー細胞が、SRF、MESP-1、HNF-4、ベータ-1、インテグ
    リン、MSD、GATA-6、GATA-4、RNAヘリカーゼAおよびHベータ58からなる群よ り選ばれる遺伝子の発現を変化させるように改変されている、請求項36に記載
    の方法。
  41. 【請求項41】ドナー細胞がQ7および/またはQ9の発現を与えるDNAを導入 されて遺伝的に改変されている、請求項37に記載の方法。
  42. 【請求項42】 遺伝子が機能可能に制御可能なプロモーターに接続されて
    いる、請求項41に記載の方法。
  43. 【請求項43】 ドナー細胞がアポトーシスを阻害するように遺伝的に改変
    されている、請求項1に記載の方法。
  44. 【請求項44】 アポトーシスの低下が、Bad、Bok、BH3、Bik、Blk、Hrk、
    BNIP3、GimL、Bid、BGL-1、Bcl-XL、Bcl-w、Mcl-1、A1、Nr-13、BHRF-1、LMW5-H
    L、ORF16、Ks-Bcl-2、E1B-19KおよびCED-9からなる群より選ばれる1以上の遺伝
    子の発現を変化させることによって与えられる、請求項43に記載の方法。
  45. 【請求項45】 遺伝子が誘導可能なプロモーターに機能可能に接続されて
    いる、請求項44に記載の方法。
  46. 【請求項46】 検出可能なマーカーをコードするDNAを発現する哺乳動物 体細胞であって、前記DNAの発現が特定のサイクリンとリンクしている前記細胞 。
  47. 【請求項47】 サイクリンが、サイクリンD1、D2、D3、B1、B2、E,Aおよ
    びHからなる群より選ばれる、請求項46に記載の細胞。
  48. 【請求項48】 検出可能なマーカーが蛍光ポリペプチドである、請求項4
    6に記載の細胞。
  49. 【請求項49】 哺乳動物細胞が、ヒト細胞、霊長類細胞、げっ歯類細胞、
    有蹄類細胞、イヌ細胞、ネコ細胞からなる群より選ばれる、請求項48に記載の
    細胞。
  50. 【請求項50】 ヒト細胞、ウシ細胞、または霊長類細胞である、請求項4
    8に記載の細胞。
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