JP2002371438A - 黒鉛化繊維および複合材料 - Google Patents

黒鉛化繊維および複合材料

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JP2002371438A JP2001179958A JP2001179958A JP2002371438A JP 2002371438 A JP2002371438 A JP 2002371438A JP 2001179958 A JP2001179958 A JP 2001179958A JP 2001179958 A JP2001179958 A JP 2001179958A JP 2002371438 A JP2002371438 A JP 2002371438A
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Masashi Ise
昌史 伊勢
Katsumi Yamasaki
勝巳 山▲さき▼
Michinori Higuchi
徹憲 樋口
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Abstract

(57)【要約】 【課題】本発明は、高性能かつ品質ばらつきの少ない高
弾性率黒鉛化繊維および複合材料を提供せんとするもの
である。 【解決手段】本発明の黒鉛化繊維はラマン分光法で測定
される強度比I360/I1580の平均値が0.20
〜0.75である表面を有し、かつ、該パラメータの長
手方向の変動率が5%以下であることを特徴とするもの
である。また、本発明の複合材料は、黒鉛化繊維を補強
材料として構成されていることを特徴とするものであ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高性能でかつ品質
のばらつきが少なく、高い品質で高精度が要求される航
空宇宙用などの用途に好適な黒鉛化繊維および複合材料
に関する。
【0002】
【従来の技術】炭素繊維は他の補強用繊維に比べて高い
比強度および比弾性率を有するため、その優れた機械的
特性を利用して複合材料用補強繊維として工業的に広く
利用されている。中でも弾性率350GPa以上のいわ
ゆる黒鉛化繊維は、従来からのスポーツ、航空宇宙用途
に加え、高い剛性を活かし工作機械など一般産業用途へ
も大きく拡がりつつあり、市場の要求は、単なる高性能
化だけではなく、低コスト化した上でのさらなる高性能
化へと、より厳しいものとなってきている。
【0003】最も広く利用されているポリアクリロニト
リル系黒鉛化繊維は、アクリルプリカーサーを200〜
400℃の酸化性雰囲気下で耐炎化繊維へ転換する耐炎
化工程、少なくとも1000℃の不活性雰囲気下で炭素
化する炭化工程、2000℃以上の不活性雰囲気下で黒
鉛化する黒鉛化工程を経て、工業的に製造される。
【0004】これら焼成工程においては、単繊維同士の
融着が発生し、得られる炭素繊維や黒鉛化繊維の品質、
品位を低下させるという問題があった。この、問題に対
し耐熱性の高いシリコーン油剤をアクリルプリカーサー
に付与する技術が多数提案され、必要不可欠な技術とし
て工業的に広く適用されている。例えば、特公平3−4
0152号公報には、特定のアミノ変性シリコーン、エ
ポキシ変性シリコーン、アルキレンオキサイド変性シリ
コーンを混合した油剤により、空気中および窒素中での
加熱時の減量が少なく融着防止効果が高いことが開示さ
れている。しかしながら、本発明者らの検討したとこ
ろ、このような従来公知のシリコーン油剤は、確かに単
繊維同士の融着を防止する効果は十分に有しているが、
単繊維間に介在し耐炎化反応に必須となる酸素の供給の
妨げとなり、その結果、耐炎化反応の進行度むら、いわ
ゆる焼成むらの発生を誘起していることが、明らかとな
った。このような焼成むらは、続く炭化工程を経て黒鉛
化繊維とした後にも、品質のばらつきの大きな要因とな
ると考えられる。高性能な黒鉛化繊維を生産性よく製造
するためには、より表面が平滑なプリカーサーを高糸条
密度かつ高張力で焼成することが有利であるが、このよ
うな条件においては、上記焼成むらの悪影響がより一層
顕著となり、品質を維持するためには、糸条密度、張
力、処理速度を低下せざるを得ないのが現状である。
【0005】焼成むらを抑制する技術として、本発明者
らは、特定の表面粗さを有するアクリルプリカーサーを
適用する技術など(特開平11−217734号公報)
を提案したが、得られる黒鉛化繊維の強度向上に有利
な、より平滑な表面を有するアクリルプリカーサーにお
いては、必ずしもその抑制効果は十分ではないことが、
その後の検討により顕在化し、より効果的な焼成むら抑
制手段が求められているのが実状である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、かかる従来
技術の背景に鑑み、高性能かつ品質のばらつきの小さい
黒鉛化繊維および複合材料を提供せんとするものであ
る。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、かかる課題を
解決するために、次のような手段を採用するものであ
る。すなわち、本発明の黒鉛化繊維はラマン分光法で測
定される強度比I1360/I1580の平均値が0.
20〜0.75である表面を有し、かつ、該パラメータ
の長手方向の変動率が5%以下であることを特徴とする
ものである。また、本発明の複合材料は、黒鉛化繊維を
補強材料として構成されていることを特徴とするもので
ある。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明は、前記課題、つまり高性
能かつ品質のばらつきの小さい黒鉛化繊維をつくるため
に、耐炎化工程における焼成むらを抑制し、かつ、生産
性を低下させることなく結晶性のばらつきを小さく制御
してみたところ、かかる課題を一挙に解決することを究
明したものである。
【0009】すなわち、本発明は、耐炎化における焼成
むらと、製糸工程で付与されるシリコーン油剤の熱処理
時の硬化挙動に相関があること、特に後述する特定組成
のシリコーン油剤を採用することにより、耐炎化での焼
成むらを効果的に抑制することができることを究明した
ものである。その結果、得られる黒鉛化繊維表面の結晶
性のばらつきを制御することができ、かつ、品質のばら
つきの小さい黒鉛化繊維が得られたものである。
【0010】本発明の黒鉛化繊維は、ラマン分光法で後
述する方法により測定される該繊維表面の強度比I13
60/I1580の平均値が、0.20〜0.75、好
ましくは0.25〜0.70、より好ましくは0.30
〜0.65であることが重要である。すなわち、かかる
平均値は、黒鉛化繊維表面の結晶性に対応し、値が大き
いほど結晶性が低い。高弾性率な黒鉛化繊維を得るため
には、該平均値を前述の範囲とするのがよく、範囲を外
れると、本発明の目的とする高性能な黒鉛化繊維が得ら
れない。
【0011】また、同時に該パラメータの長手方向の変
動率が5.0%以下であるのがよく、3.0%以下であ
るのが好ましく、1.0%以下であるのがより好まし
い。変動率の下限は、測定精度から0.01%程度であ
る。かかる変動率は黒鉛化繊維表面の微小領域の結晶性
のばらつきに対応し、低いほど品質のばらつき低下に有
効である。該変動率が5.0%を越えると、本発明の目
的とする高品質な黒鉛化繊維が得られない。
【0012】ラマン分光法により測定される強度比I1
360/I1580の測定は以下の方法により行う。黒
鉛化繊維束より任意の単糸を1本取り出し、試料台に固
定する。ビーム径1μmに絞ったレーザービームを照射
し、繊維長手方向に10μm間隔で20点ラマンスペク
トルを測定する。各測定点において、得られたスペクト
ルのうち1360cm-1と1580cm-1の強度比を読
みとり、それぞれをI1480、I1580とし、強度
比I1360/I1580を算出する。該強度比の20
点の平均を平均値とし、変動率は下記式により求める。
【0013】変動率(%)=(測定した20点の標準偏
差)/(平均値)×100また、本発明の黒鉛化繊維は
高強度な黒鉛化繊維を得る観点から、後述される方法で
原子間力顕微鏡によって測定される表面積比が1.0〜
1.05であることが好ましく、1.0〜1.02であ
るのがより好ましく、1.0〜1.01であるのがさら
に好ましい。上記範囲を外れると本発明の効果が得られ
にくいことがある。
【0014】さらに、本発明の黒鉛化繊維はストランド
強度が3.5〜6.5GPa、ストランド弾性率が35
0〜650GPaであることが好ましく、ストランド強
度が4.0GPa〜6.0GPa、ストランド弾性率が
380〜600GPaであることが、航空宇宙用複合材
料の上からさらに好ましい。
【0015】本発明の複合材料は、かかる黒鉛化繊維を
補強材料として構成されてなるものであるが、高性能か
つ品質のばらつきの小さい特徴を有することから、航空
宇宙用複合材料として、特に好適に使用される。
【0016】次に、本発明の黒鉛化繊維を製造するため
の方法について説明する。
【0017】本発明の黒鉛化繊維を製造するためには、
耐炎化工程で発生する焼成むらを高度に抑制することが
不可欠であり、下記のようなシリコーン油剤を用いるの
が好ましい。
【0018】かかるシリコーン油剤としては、アミノ変
成シリコーンとポリオキシエチレン系化合物を必須成分
とし、かつ、該アミノ変性シリコーンに含まれる末端ア
ミノ基に対する該ポリオキシエチレン系化合物のポリオ
キシエチレン部分のモル比(M)が下記式を満たすもの
を使用するのが好ましい。すなわち、該モル比(M)と
して、好ましくは12〜35であり、より好ましくは1
5〜33、特に好ましくは18〜30であるのがよい。
【0019】12≦M≦35 M=Mp/Ma Ma:シリコーン油剤100gに含まれるアミノ変成シ
リコーンの末端アミノ基のモル数 Mp:シリコーン油剤100gに含まれるポリオキシエ
チレン部分のモル数 ここで、ポリオキシエチレン系化合物とは、全部または
一部がポリオキシエチレンからなる化合物のことであ
る。また、アミノ基のモル数とは、アミノ変成シリコー
ンのアミノ変性基末端にある−NH2 のモル数のことで
ある。
【0020】さらに、ポリオキシエチレン部分のモル数
とは、該シリコーン油剤中に含まれる全ての−CH2
2 O−のモル数のことである。つまり、乳化剤、防腐
剤および安定剤などに含まれる−CH2 CH2 O−のモ
ル数をも含むことを意味するものである。特に本発明で
は、−CH2 CH2 O−を含有する特定な乳化剤を使用
するところにも特徴を有するものである。
【0021】上記の特定組成に制御することにより、熱
処理時のシリコーン油剤の架橋が促進され、本発明の目
的とする耐炎化工程での焼成むら抑制に有効に作用する
のである。モル比Mが12未満であったり、35を越え
ると、架橋が生じにくく、その結果、本発明の黒鉛化繊
維が得られにくくなる。
【0022】シリコーン油剤の架橋により耐炎化工程で
の焼成むらが抑制できる理由は、必ずしも明らかではな
いが、以下のように推定される。耐炎化の焼成むらは、
糸束内への酸素の透過が阻害され十分供給されない部分
が生じることが原因であり、単繊維間に存在するシリコ
ーン油剤がその阻害要因の一つとして考えられる。すな
わち、シリコーン油剤が単繊維間に入り込み、シーリン
グ剤のようなはたらきをするのである。一般に、シリコ
ーン油剤は、製糸工程の乾燥工程直前で付与され、熱処
理を受ける。この乾燥熱処理時に架橋せず流動性を有す
るオイル状態を保持すると、その後、単繊維間の空間に
合わせて自由に変形できるため、単繊維間に厚く堆積す
る可能性が高く、結果としてシーリング効果が高まると
考えられる。一方、速やかに架橋し流動性が低く抑えら
れれば、単繊維間への堆積が防止され、また、単繊維間
の拘束も小さくなり、焼成むらが生じにくいと考えられ
る。
【0023】本発明のシリコーン油剤に用いるアミノ変
性シリコーンは、ポリジメチルシロキサンを基本構造と
し、側鎖のメチル基の一部がアミノ基で変性されたもの
が好ましく用いられる。アミノ基の他にさらに別の変性
基が付加されているものも用いることができる。変性基
としてのアミノ基はモノアミンタイプでもポリアミンタ
イプでもよいが、架橋促進の観点からはポリアミンタイ
プが好ましく、中でもジアミンタイプがさらに好ましく
使用される。
【0024】かかるアミノ基は、架橋反応の起点となる
ものと考えられ、変性量が高いほど架橋反応が促進され
るが、ローラーへの脱落堆積量、いわゆるガムアップ量
が増加することもあるため、その変性量は、末端アミノ
基量を−NH2 の重量に換算して、0.05〜10重量
%が好ましく、0.1〜5重量%がより好ましい。ま
た、アミノ変性シリコーンの25℃における粘度は、低
いほど反応性が高くなり、架橋反応が促進されるが、耐
熱性の観点からは高いほうが好ましく、従って500〜
10000cStが好ましく、700〜7000cSt
がより好ましく、1000〜4000cStがさらに好
ましい。
【0025】シリコーン油剤に含まれる全てのシリコー
ンに対するアミノ変性シリコーンの割合は20重量%以
上であるのが好ましく、30重量%以上であるのがより
好ましく、40重量%以上であるのが特に好ましい。2
0重量%を下回ると、シリコーン油剤の架橋が不十分と
なり、十分な焼成むら抑制効果が得られないことがあ
る。
【0026】かかるシリコーン油剤に用いるポリオキシ
エチレン系化合物の構造および組成は、モル比(M)を
前述した特定の範囲とすることが可能であれば、特に限
定されないが、均一な架橋反応を実現する観点から、シ
リコーンとの相溶性が高いことが好ましい。
【0027】かかるポリオキシエチレン系化合物の具体
例としては、ポリオキシエチレンエーテルやポリオキシ
エチレン変性シリコーンなどが好ましく使用されるが、
これらに限定されるものではない。従来、ポリオキシエ
チレンエーテルやポリオキシエチレン変性シリコーンは
シリコーン油剤を水に分散させるための乳化剤や、乳化
安定性向上の目的で用いられることはあったが、架橋促
進の目的で用いられている例はなく、アミノ変性シリコ
ーンと組合せ、上記特定組成とすることで始めて本発明
の黒鉛化繊維を得られるのである。
【0028】ポリオキシエチレンエーテルは、下記化学
式1で示されるものが好ましく例示することができる。
【0029】
【化1】
【0030】R1:アルキル基またはフェニル基を含む
炭素数1〜100の有機基 n1:1〜100の整数 さらに好ましくは、ポリオキシエチレンアルキルエーテ
ル、ポリオキシエチレンアルキルアミノエーテル、ポリ
オキシエチレンアルキルフェニルエーテルなどが使用さ
れる。
【0031】かかるポリオキシエチレンの付加モル数n
1 としては、より好ましくは2〜50、特に好ましくは
3〜20であるのがよい。
【0032】また、ポリオキシエチレン変性シリコーン
は、ポリジメチルシロキサンを基本構造とし、側鎖のメ
チル基の一部がポリオキシエチレンで変性されたものが
好ましく用いられる。その際、ポリオキシエチレン変性
シリコーンの変性量は、好ましくは10〜80重量%、
より好ましくは20〜70重量%、さらに好ましくは3
0〜60重量%がよい。また、25℃における粘度は、
20〜1000cStが好ましく、50〜800cSt
がより好ましく、100〜500cStが特に好まし
い。
【0033】かかるシリコーン油剤は、アミノ変性シリ
コーンおよびポリオキシエチレン系化合物を必須成分と
するものであるが、アミノ変性シリコーンとポリオキシ
エチレン系化合物の合計100重量部に対して、150
重量部を超えない範囲で、アミノ変性シリコーンとポリ
オキシエチレン系化合物以外の化合物を加えることもで
きる。かかる化合物の合計量は100重量部を超えない
のがより好ましく、50重量部を超えないのがさらに好
ましい。アミノ変性シリコーンとポリオキシエチレン系
化合物以外の化合物が150重量部を超えると、該シリ
コーン油剤の架橋が十分促進されないことがある。ここ
でいうアミノ変性シリコーンとポリオキシエチレン系化
合物以外の化合物には、該シリコーン化合物を希釈する
ための溶媒、および該シリコーン化合物を分散させるた
めの分散媒は含まれない。ここでいう分散媒とは、該シ
リコーン化合物を分散させている媒質のことであり、例
えば、水エマルジョンの場合には水のことをいう。
【0034】かかるシリコーン油剤は、耐熱性向上の観
点から、エポキシ変性シリコーンを含むことが好まし
い。その場合、ポリジメチルシロキサンを基本構造と
し、側鎖のメチル基の一部が変性されたものが好ましく
用いられる。エポキシ変性基は、脂環式でもグリシジル
型でもよいが、長期安定性の観点から脂環式の化合物で
あるのが好ましい。かかるエポキシ変性シリコーンの変
性量は、0.05〜10重量%が好ましく、0.1〜5
重量%がより好ましい。また、エポキシ変性シリコーン
の25℃における粘度は、耐熱性の観点からは高いほう
がよく、1000〜30000cStが好ましく、50
00〜20000cStがより好ましく、8000〜1
5000cStがさらに好ましい。また、エポキシ変性
シリコーンの含有量は、多いと焼成むら抑制効果を低下
させることがあり、少ないと耐熱性向上効果が小さくな
ることがあるため、アミノ変性シリコーン100重量部
に対して、エポキシ変性シリコーンは10〜300重量
部が好ましく、20〜200重量部がより好ましく、3
0〜100重量部がさらに好ましい。
【0035】かかるシリコーン油剤には、該シリコーン
油剤の架橋を遅延させる可能性があることから、酸化防
止剤は加えないことが好ましい。
【0036】かかるシリコーン油剤は、オイルの状態で
も、有機溶媒などを用いて希釈した溶液の状態でも、エ
マルジョンの状態でもよいが、黒鉛化繊維用前駆体繊
維、たとえばアクリルプリカーサーへの均一付与性、付
与簡便性の観点から、水系のエマルジョンとするのが好
ましい。水系のエマルジョンとする際には、該シリコー
ン化合物に適当な乳化剤を加えることもできるが、該シ
リコーン化合物100重量部に対して、乳化剤は40重
量部以下とするのが好ましい。乳化剤の種類は特に限定
されないが、ノニオン系、アニオン系の乳化剤が好まし
く用いられる。中でも、乳化安定性の観点からノニオン
系の乳化剤がより好ましく、具体例としては前述したポ
リオキシエチレンエーテルを用いるのが好ましい。
【0037】乳化剤としてポリオキシエチレンエーテル
を使用し、水エマルジョンとすることにより、シリコー
ン油剤内でのアミノ変性シリコーンとポリオキシエチレ
ン部分の混合状態が、より均一かつ微細なものとなり、
本発明の黒鉛化繊維を得るために好ましい。
【0038】さらに、かかるシリコーン油剤は、耐熱性
が高いことが焼成工程での融着防止の観点から好まし
い。耐熱性の指標としては、後述する方法で測定される
加熱残存率(R)が、40〜90%であるのが好まし
く、50〜85%であるのがより好ましく、60〜80
%であるのが特に好ましい。40%を下回ると本発明の
効果が得にくくなる上に、融着により最終的に得られる
黒鉛化繊維の強度低下が生じることがある。90%を上
回ると、複合材料として用いたときの黒鉛化繊維とマト
リックスとの接着強度が低下することがある。
【0039】本発明の複合材料に用いるマトリックス材
料としては、プラスチック、金属、セラミックス、炭素
など任意のものを用いることができるが、航空宇宙用途
として用いる場合には、軽量であり、また、炭素繊維と
の接着特性の良好なプラスチックが好ましい。中でもエ
ポキシ樹脂に代表される耐熱性に優れた熱硬化性樹脂が
より好ましく用いられる。
【0040】本発明の複合材料における炭素繊維の体積
割合は、30〜90vol%が好ましく、40〜80v
ol%がより好ましく、50〜70vol%がさらに好
ましい。該体積割合が低いと、本発明の炭素繊維による
複合材料の高性能化が不十分なものとなることがある。
また、該体積割合が高いと、炭素繊維間にマトリックス
材料が存在しない部分が生じ、十分な複合効果を得られ
ないことがある。
【0041】また、本発明の複合材料の構成は、炭素繊
維が連続繊維として一方向に配列していても、複数方向
に配列していてもよく、また、織物や短繊維として含ま
れていてもよく、目的に合わせた構成を選択することが
できる。航空宇宙用途として用いる場合には、連続繊維
を等方的に配列させることが好ましい。
【0042】次に、本発明の黒鉛化繊維の製造方法につ
いて説明する。本発明に用いるプリカーサーとしては、
アクリル系、ピッチ系、レーヨン系などが好ましく例示
できるが、高性能な黒鉛化繊維を得るという観点からは
アクリル系がより好ましい。以下、本発明の黒鉛化繊維
用前駆体繊維をアクリルプリカーサーに代表させて説明
する。かかるアクリルプリカーサーの成分としては、少
なくとも95モル%以上、より好ましくは98モル%以
上のアクリロニトリルと、5モル%以下、より好ましく
は2モル%以下の、耐炎化を促進し、かつ、アクリロニ
トリルと共重合性のある、耐炎化促進成分を共重合した
ものを好適に使用することができる。
【0043】かかる耐炎化促進成分としては、ビニル基
含有化合物(以下ビニル系モノマーという)からなる共
重合体が好適に使用される。ビニル系モノマーの具体例
としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸など
使用することができるが、これらに限定されるものでは
ない。また、一部または全量をアンモニア中和したアク
リル酸、メタクリル酸、またはイタコン酸のアンモニウ
ム塩からなる共重合体は、耐炎化促進成分としてより好
適に使用される。
【0044】紡糸原液は、従来知られている溶液重合
法、懸濁重合法、乳化重合法などを採用し得る。紡糸原
液に使用される溶媒としては、有機、無機の従来公知の
溶媒を使用することができる。特に有機溶媒を使用する
のが好ましく、具体的には、ジメチルスルホキシド、ジ
メチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどが使用
され、特にジメチルスルホキシドが好ましく使用され
る。
【0045】紡糸方法は、乾湿式紡糸法や湿式紡糸法が
好ましく採用されるが、より表面が平滑な原糸を、生産
性よく製造することができることから、前者がより好ま
しく使用される。
【0046】口金から直接または間接に凝固浴中に紡糸
原液を吐出し、凝固糸を得る。凝固浴液は、紡糸原液に
使用する溶媒と凝固促進成分とから構成するのが、簡便
性の点から好ましく、凝固促進成分として水を用いるの
がさらに好ましい。凝固浴中の紡糸溶媒と凝固促進成分
の割合、および凝固浴液温度は、得られる凝固糸の緻密
性、表面平滑性および可紡性などを考慮して適宜選択し
て使用される。
【0047】得られた凝固糸は、20〜98℃に温調さ
れた単数または複数の水浴中で水洗、延伸するのがよ
い。延伸倍率は、糸切れや単繊維間の接着が生じない範
囲で、適宜設定することができるが、より表面が平滑な
アクリルプリカーサーを得るためには、5倍以下が好ま
しく、4倍以下がより好ましく、3倍以下がさらに好ま
しい。また、得られるアクリルプリカーサーの緻密性を
向上させる観点から、延伸浴の最高温度は、50℃以上
とするのが好ましく、70℃以上がより好ましい。
【0048】水洗、延伸された後の水膨潤状態の糸条
に、前述したシリコーン油剤を付与するのが好ましい。
付与方法としては、糸条内部まで均一に付与できること
を勘案し、適宜選択して使用すればよいが、具体的に
は、糸条の油剤浴中への浸漬、走行糸条への噴霧および
滴下などの手段が採用される。
【0049】かかるシリコーン油剤の付着量は、繊維の
乾燥重量に対する純分の割合が、0.1〜5重量%が好
ましく、0.3〜3重量%がより好ましく、0.5〜2
重量%がさらに好ましい。0.1重量%を下回ると、単
繊維同士の融着が生じ、得られる黒鉛化繊維の引張強度
が低下することがある。また、5重量%を超えると、本
発明の黒鉛化繊維が得にくくなることがある。
【0050】油剤を付与された糸条は、速やかに乾燥さ
れるのがよい。乾燥の方法は、特に限定されないが、加
熱された複数のローラーに直接接触させる方法が好まし
く用いられる。乾燥温度は、高いほどシリコーン油剤の
架橋反応を促進し、また、生産性の観点からも好ましい
ので、単繊維間の融着が生じない範囲で高く設定でき
る。具体的には、150℃以上が好ましく、180℃以
上がより好ましい。通常、乾燥温度の上限は200℃程
度である。乾燥時間は、膨潤糸条が乾燥するのに十分な
時間とするのがよい。また、糸条への加熱状態が均一に
なるよう、糸条をできるだけ拡幅した状態でローラーに
接触させるのがよい。
【0051】乾燥された糸条は、さらに加圧スチーム中
または乾熱下で後延伸されるのが、得られるアクリルプ
リカーサーの緻密性や生産性の観点から好ましい。後延
伸時のスチーム圧力または温度や後延伸倍率は、糸切
れ、毛羽発生のない範囲で適宜選択して使用するのがよ
い。
【0052】本発明に用いるアクリルプリカーサーは、
該表面が平滑であることが高性能な黒鉛化繊維を得る観
点から好ましい。平滑度は後述する方法でAFM(原子
間力顕微鏡)により測定される表面積比を指標とし、該
表面積比が1.00〜1.05であることが好ましく、
1.00〜1.02であることがより好ましく、1.0
0〜1.01がさらに好ましい。平滑であるほど、本発
明のシリコーン油剤の適用効果が顕著に発現しやすく、
1.05を超えると、本発明の黒鉛化繊維が得にくくな
ることがある。
【0053】また、本発明に用いるアクリルプリカーサ
ーの単糸繊度は、0.1〜2.0dTexであることが
好ましく、0.3〜1.5dTexであることがより好
ましく、0.5〜1.2dTexがさらに好ましい。該
繊度は小さいほど、得られる黒鉛化繊維の引張強度や弾
性率の点で有利であるが、生産性は低下するため、性能
とコストのバランスを勘案し選択するのがよい。
【0054】さらに本発明の黒鉛化繊維の製造方法につ
いて説明する。
【0055】前述したような好ましい方法により、アク
リルプリカーサーが製造され、さらに以下に述べるよう
な方法で、該アクリルプリカーサーを焼成することによ
り、本発明の黒鉛化繊維を製造することができる。
【0056】耐炎化温度は、200〜300℃がよく、
糸条が反応熱の蓄熱によって糸切れが生じる温度より
も、10〜20℃低い温度で耐炎化するのがコスト削減
および得られる黒鉛化繊維の性能を高める観点から好ま
しい。耐炎化進行度は、後述する方法で測定される耐炎
化糸の炎収縮保持率を指標とし、70〜90%の範囲と
するのが好ましく、74〜86%がより好ましく、76
〜84%がさらに好ましい。耐炎化時間は、生産性およ
び得られる黒鉛化繊維の性能を高める観点から、10〜
100分間が好ましく、30〜60分間がより好まし
い。この耐炎化時間とは、糸条が耐炎化炉内に滞留して
いる全時間をいう。この時間が30分を下回ると、各単
繊維の二重構造が全体的に顕著となり、本発明の効果が
得にくくなることがある。耐炎化工程の延伸比は0.8
5〜1.05が良く、0.87〜1.02がより好まし
く、0.90〜1.00がさらに好ましい。
【0057】予備炭化工程の温度は300〜800℃が
よい。また、延伸比は0.98〜1.10であるのがよ
く、0.99〜1.05であるのがより好ましく、1.
00〜1.02であるのがさらに好ましい。
【0058】炭化工程の温度は800〜2000℃であ
るのがよい。また、その最高温度は、所望する黒鉛化繊
維の要求特性に応じて適宜選択して使用されるが、10
00℃を下回ると、得られる黒鉛化繊維の引張強度、弾
性率が低下することがある。炭化工程の延伸比は、所望
する黒鉛化繊維の要求特性に応じて、毛羽発生など品位
低下の生じない範囲で適宜選択するのがよい。
【0059】黒鉛化工程の温度は2000〜2800℃
であるのがよい。また、その最高温度は、所望する黒鉛
化繊維の要求特性に応じて適宜選択して使用される。黒
鉛化工程の延伸比は、所望する黒鉛化繊維の要求特性に
応じて、毛羽発生など品位低下の生じない範囲で適宜選
択するのがよい。
【0060】得られた黒鉛化繊維に対して、表面処理に
より複合材料としたときのマトリックスとの接着強度を
より高めることができる。表面処理方法としては、気
相、液相処理を採用できるが、生産性、品質ばらつきを
考慮すると、液相処理における電解処理が好ましく適用
される。
【0061】電解処理に用いられる電解液としては、硫
酸、硝酸、塩酸といった酸、水酸化ナトリウム、水酸化
カリウム、テトラエチルアンモニウムヒドロキシドとい
ったアルカリあるいはそれらの塩を用いることができる
が、より好ましくはアンモニウムイオンを含む水溶液が
好ましい。例えば、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウ
ム、過硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、臭化アン
モニウム、燐酸2水素アンモニウム、燐酸水素2アンモ
ニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、あ
るいは、それらの混合物を用いることができる。
【0062】電解処理の電気量は、使用する黒鉛化繊維
により異なり、例えば、炭化度の高い黒鉛化繊維ほど、
高い通電電気量が必要となる。表面処理量としては、X
線光電子分光法(ESCA)により測定される黒鉛化繊
維の表面酸素濃度O/Cおよび表面窒素濃度N/Cが、
それぞれ0.05以上0.40以下、および、0.02
以上0.30以下の範囲になることが好ましい。
【0063】これらの条件を満足することにより、黒鉛
化繊維とマトリックスとの接着が、適正なレベルとな
り、したがって接着が強すぎて非常にブリトルな破壊と
なって強度が低下してしまうという欠点も、あるいは、
強度は強いものの接着力が低すぎて、非縦方向の機械的
特性が発現しないといった欠点も防止することができ、
縦および横方向にバランスのとれたコンポジット特性を
有する特徴が発現される。
【0064】得られた黒鉛化繊維は、さらに、必要に応
じて、サイジング処理がなされる。サイジング剤には、
マトリックスとの相溶性の良いサイジング剤が好まし
く、マトリックスに合せて選択して使用される。
【0065】前述した各測定値、および後述する実施例
中での各測定値は、以下の方法により測定した。 <黒鉛化繊維のラマン分光法>測定装置および、測定条
件は以下のとおりで行った。
【0066】測定装置:JobinYvon製RamaonorT-64000 マイクロプローブ ・Beam Splitter:右 ・対物レンズ:100倍 ・ビーム径:1μm ・クロススリット:400μm 光源 ・レーザー種類:Ar+(NEC製5145A) ・レーザーパワー:80mW 分光器 ・構成:640mm Triple Monochromator ・回折格子:600gr/mm(Spectrograph製) ・分散:Single、21A/mm ・スリット:100μm 検出器:CCD(JobinYvon製1024×256) <アクリルプリカーサーおよび黒鉛化繊維のAFMによ
る表面積比>測定に供するアクリルプリカーサーまたは
黒鉛化繊維を試料台に固定し、原子間力顕微鏡としてD
igital Instruments社製NanoS
copeIIIを用い、下記条件にて3次元表面形状の像
を得る。
【0067】探針:SiNカンチレバー(オリンパス工
学工業社製、バネ定数0.7N/m) 測定環境:室温大気中 観察モード:コンタクトモード(力一定) 走査速度:0.2〜0.5Hz 走査範囲:2.4μm×2.4μm 得られた像について、前記装置付属ソフトウェア(Na
noScopeIIIバージョン4.22r2、1次Fl
attenフィルタ、Lowpassフィルタ、3次P
lane Fitフィルタ使用)によりデータ処理し、
実表面積と投影面積を算出する。なお、投影面積につい
ては、繊維断面の曲率を考慮し近似した2次曲面などへ
の投影面積を算出し、用いる。表面積比は以下の式で定
義される。
【0068】表面積比=実表面積/投影面積 <シリコーン油剤の加熱残存率R>加熱残存率は、シリ
コーン油剤を240℃の空気中で60分間熱処理した
後、引き続いて450℃の窒素中で30秒間した後の残
存率のことを言う。測定は、次の手順による。付与する
シリコーンが油剤が、エマルジョンや溶液の場合には、
直径が約60mm、高さが約20mmのアルミ製の容器
に、エマルジョンまたは溶液約1gを採取し、オーブン
により、105℃で5時間乾燥し、得られたシリコーン
分について、次の条件で、熱天秤(TG)により、その
耐熱残存率を測定する。
【0069】サンプルパン:アルミニウム製直径5m
m、高さ5mm サンプル量:15〜20mg 空気中熱処理条件:空気流量30ml/分、昇温速度1
0℃/分、240℃ 熱処理時間:60分 雰囲気変更:240℃のまま空気から窒素へ変更して5
分間保持 窒素中熱処理条件:窒素流量30ml/分、昇温速度
は、10℃/分、450℃ 熱処理時間:30秒 この熱処理における、トータルの重量保持率を、加熱残
存率Rとする。 <剛体振り子の自由減衰振動法によるシリコーン油剤の
振動周期>剛体振り子の自由減衰振動法に基づき、株式
会社エーアンドディ社製剛体振り子型物性試験機RPT
−3000を用いて振動周期を測定する。測定に供する
シリコーン油剤がエマルジョンまたは溶液の場合には、
直径が約60mm、高さが約20mmのアルミ製の容器
に、エマルジョンまたは溶液約1gを採取し、50℃で
乾燥および/または真空乾燥により溶媒を除去してお
く。水エマルジョンは、50℃で10時間乾燥する。次
に、長さ5cm、幅2cm、厚み0.5mmの亜鉛メッ
キ鋼板製塗布基板(株式会社エーアンドディ社製 ST
P−012)の上に、測定に供するシリコーン油剤を厚
みが20〜30μmとなるように基板幅方向全面に塗布
する。塗布後速やかに、試験機にセットし測定を開始す
る。試験機は予め30℃に温調しておき、塗布板および
振り子をセットした後、50℃/分の速度で180℃ま
で昇温し、180℃で10分間ホールドする。その間、
7秒間隔で連続的に周期の測定を行う。なお、振り子
は、下記のものを使用する。
【0070】使用エッジ:ナイフ形状エッジ(株式会社
エーアンドディ社製RBE−160) 振り子重量/慣性能率:15g/640g・cm(株式
会社エーアンドディ社製FRBー100) 振動周期差Tは下記式により求められる。
【0071】T=T30−T180 T30:30℃における振動周期(秒) T180:180℃で10分間熱処理後の振動周期
(秒) 剛体振り子の自由減衰振動法の原理は、例えば、色材、
51(1978)、403pなどに解説されているが、
該測定方法により測定される振動周期は、シリコーン油
剤の架橋度に対応し、小さいほど架橋度が高いことを示
す。従って、振動周期差Tは、加熱時の硬化挙動に対応
し、大きくなるほど架橋しやすいことを示している。 <黒鉛化繊維の強度および弾性率>黒鉛化繊維の強度
は、日本工業規格(JIS)−R−7601「樹脂含浸
ストランド試験法」に記載された手法により、求められ
る。ただし、測定する黒鉛化繊維の樹脂含浸ストランド
は、”BAKELITE”ERL4221(100重量
部)/3フッ化ホウ素モノエチルアミン(3重量部)/
アセトン(4重量部)を、黒鉛化繊維に含浸させ、13
0℃、30分で硬化させて形成する。また、ストランド
の測定本数は、10本とし、各測定結果の平均値を、そ
の黒鉛化繊維の強度、弾性率とする。 <耐炎化糸の炎収縮保持率>耐炎化糸束を約40cm採
取し、試長20cmとなるようにクリップなどの不燃物
でマークをつける。次に、一端を固定し、もう一端に3
300dTexあたり10gの張力をかけ、マークした
試長間をブンセンバーナーの炎によって加熱する。この
際、ブンセンバーナーの炎の高さは約15cmとし、炎
の上部約1/3の部分を用い、マーク間を約15秒/2
0cmの速さで1往復半移動させながら加熱する。その
後、マーク間の長さを測定し、これをWb(mm)とす
ると、炎収縮保持率(%)は以下の式で定義される。
【0072】 炎収縮保持率(%)=(Wb/200)×100 <予備炭化工程での延伸性>耐炎化糸を、昇温速度50
0℃/分で最高温度650℃まで昇温する条件下におい
て、予備炭化工程を連続的に通過させ、糸切れが発生す
る限界延伸比を測定する。
【0073】
【実施例】以下、実施例を用いて、本発明をさらに具体
的に説明する。
【0074】なお、実施例および比較例で用いている、
アミノ変性シリコーン、ポリオキシエチレン(POE)
ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(POE)変性
シリコーン、エポキシ変性シリコーンはそれぞれ下記に
示すものを用いた。
【0075】アミノ変性シリコーン:末端にメチル基を
有するジメチルシリコーンの側鎖の一部を、下記化学式
2で示したアミノ基で置換したものを用いた。アミノ基
の変性量は、末端アミノ基のアミノ当量に換算して40
00とした。また、25℃における粘度は3000cS
tとした。
【0076】
【化2】
【0077】POEラウリルエーテル:下記化学式3で
示したものを用いた。
【0078】
【化3】
【0079】POE変性シリコーン:末端にメチル基を
有するジメチルシリコーンの側鎖の一部を、下記化学式
4で示したポリオキシエチレン基で置換したものを用い
た。ポリオキシエチレン基の変性量は、POE変性シリ
コーンの重量に対するポリオキシエチレン基の重量の割
合に換算して50重量%とした。また、25℃における
粘度は500cStとした。
【0080】
【化4】
【0081】エポキシ変性シリコーン:末端にメチル基
を有するジメチルシリコーンの側鎖の一部を、下記化学
式5で示したエポキシ基で置換したものを用いた。エポ
キシ基の変性量は、エポキシ当量に換算して4000と
した。また、25℃における粘度は15000cStと
した。
【0082】
【化5】
【0083】[実施例1]表1のA〜Eに示した組成比
をもつ、アミノ変性シリコーン、POE変性シリコー
ン、POEラウリルエーテル、エポキシ変性シリコーン
に水を加え、ホモミキサー、ホモジナイザーを用いて乳
化を行い、純分30重量%のシリコーン油剤とした。
【0084】該シリコーン油剤を用い、熱処理時の油剤
の架橋度の指標として剛体振り子の自由減衰振動法によ
る振動周期差Tを測定した。
【0085】さらに下記方法によりアクリルプリカーサ
ーを作製した。
【0086】アクリロニトリル99.5モル%とイタコ
ン酸0.5モル%からなる共重合体をジメチルスルホキ
シドを溶媒とする溶液重合法により重合し、濃度22重
量%の紡糸原液を得た。重合後、アンモニアガスをpH
8.5になるまで吹き込み、イタコン酸を中和して、ア
ンモニウム基をポリマー成分に導入することにより、紡
糸原液の親水性を向上させた。得られた紡糸原液を40
℃として、直径0.15mm、孔数4000の紡糸口金
を用いて、一旦空気中に吐出し、約4mmの空間を通過
させた後、3℃にコントロールした35%ジメチルスル
ホキシド水溶液からなる凝固浴に導入する乾湿式紡糸に
より凝固させた。得られた凝固糸を水洗したのち70℃
の温水中で3倍に延伸し、さらに油剤浴中を通過させる
ことにより、作製したシリコーン油剤を付与した。油剤
浴中の濃度は、純分2.0%となるように水で希釈して
調整した。さらに180℃の加熱ローラーを用いて、接
触時間40秒の乾燥処理を行った。得られた乾燥糸を、
0.4MPa-Gの加圧スチーム中で延伸することによ
り、製糸全延伸倍率を14倍とし、単糸繊度0.8dT
ex、単繊維本数12000本のアクリルプリカーサー
を得た。なお、得られたアクリルプリカーサーのシリコ
ーン油剤付着量は純分で1.0%、アクリルプリカーサ
ーの表面積比は1.01であった。
【0087】得られたアクリルプリカーサーを、240
〜280℃の空気中で、炎収縮保持率が80%の耐炎化
糸に転換した。耐炎化時間は40分、耐炎化工程の延伸
比は0.90とした。得られた耐炎化糸について、焼成
むらの指標となる予備炭化工程の延伸性を測定した。
【0088】測定結果は、表1に示す。
【0089】[比較例1]シリコーン油剤の組成比が表
1のF、Gであることの他は、実施例1と同様にシリコ
ーン油剤を作製し、振動周期差T、耐炎化糸の予備炭化
工程での延伸性を測定した。
【0090】測定結果は、表1に示す。
【0091】
【表1】
【0092】表1から明らかなように、比較例1のもの
は、実施例1のものに比して、シリコーン油剤の熱処理
時の架橋度が低く、得られた耐炎化糸の予備炭化工程で
の延伸性も低い、すなわち焼成むらが顕著であることが
わかる。
【0093】[実施例2]実施例1で作製した耐炎化糸
について、300〜800℃の不活性雰囲気中で予備炭
化した後、最高温度1900℃で炭化し、さらに最高温
度2600℃で黒鉛化した。予備炭化工程の延伸比は、
0.98とした。さらに、得られた黒鉛化繊維を硫酸水
溶液中で、250クーロン/g-CFの陽極酸化処理を
行い黒鉛化繊維を作製した。得られた黒鉛化繊維のラマ
ン分光法による強度比I360/I1580、強度、弾
性率、、AFMによる表面積比を測定した。該表面積比
は、すべて1.00であった。
【0094】その他の測定結果は、表2に示す。
【0095】[比較例2]比較例1で作製した耐炎化糸
を用いたことの他は、実施例2と同様に黒鉛化繊維を作
製した。得られた黒鉛化繊維のラマン分光法による強度
比I1360/I1580、強度、弾性率、AFMによ
る表面積比を測定した。該表面積比は、1.00であっ
た。
【0096】その他の測定結果は、表2に示す。
【0097】
【表2】
【0098】表2から明らかなように、比較例2のもの
は、実施例2のものに比して、得られる黒鉛化繊維表面
の結晶性のばらつきが大きく、強度、弾性率のばらつき
が大きいことがわかる。
【0099】[実施例3]表1に示した油剤Cを用い、
実施例1で作製した耐炎化糸を用いたことと、黒鉛化工
程の最高温度を2300℃としたことの他は、実施例2
と同様に黒鉛化繊維を作製した。得られた黒鉛化繊維の
ラマン分光法による強度比I1360/I1580、強
度、弾性率、AFMによる表面積比を測定した。該表面
積比は、1.00であった。
【0100】その他の測定結果は、表3に示す。
【0101】[比較例3]表1に示した油剤Fを用い、
比較例1で作製した耐炎化糸を用いたことの他は、実施
例3と同様に黒鉛化繊維を作製した。得られた黒鉛化繊
維のラマン分光法による強度比I1360/I158
0、強度、弾性率、AFMによる表面積比を測定した。
該表面積比は、1.00であった。
【0102】その他の測定結果は、表3に示す。
【0103】[実施例4]黒鉛化工程の最高温度を28
00℃としたことの他は、実施例3と同様に黒鉛化繊維
を作製した。得られた黒鉛化繊維のラマン分光法による
強度比I1360/I1580、強度、弾性率、AFM
による表面積比を測定した。該表面積比は、1.00で
あった。
【0104】その他の測定結果は、表3に示す。
【0105】[比較例4]黒鉛化工程の最高温度を28
00℃としたことの他は、比較例3と同様に黒鉛化繊維
を作製した。得られた黒鉛化繊維のラマン分光法による
強度比I1360/I1580、強度、弾性率、AFM
による表面積比を測定した。該表面積比は、1.00で
あった。
【0106】その他の測定結果は、表3に示す。
【0107】
【表3】
【0108】表3から明らかなように、比較例3、4の
ものは、実施例3、4のものに比して、得られる黒鉛化
繊維表面の結晶性のばらつきが大きく、強度、弾性率の
ばらつきが大きいことがわかる。
【0109】[実施例5] 表1に示した油剤Cを用
い、実施例2で作製した炭素繊維と、マトリックス材料
としてエポキシ樹脂を用いて複合材料を作製した。複合
材料は該炭素繊維の体積含有率が60vol%の連続繊
維一方向プリプレグを、等方的に積層し、オートクレー
ブ成形することにより作製した。
【0110】得られた複合材料は、引張強度、圧縮強度
などの機械的特性に優れ、かつそのばらつきの少ないも
のであった。
【0111】
【発明の効果】本発明によれば、高性能かつ品質ばらつ
きの小さい高弾性率の黒鉛化繊維および複合材料を生産
性よく提供することができる。
フロントページの続き Fターム(参考) 4F072 AA04 AA07 AB10 AD23 4G046 EA02 EA03 EB02 EB13 EC01 4L037 AT02 CS04 FA01 FA07 FA08 FA09 FA10 FA12 PA55 PC11 PF12 PF19 PF45 PG04 PS02 PS12 UA12 UA20

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ラマン分光法で測定される強度比I136
    0/I1580の平均値が0.20〜0.75である表
    面を有し、かつ、該強度比の長手方向の変動率が5%以
    下であることを特徴とする黒鉛化繊維。
  2. 【請求項2】AFMで測定される表面積比が1.00〜
    1.05であることを特徴とする請求項1に記載の黒鉛
    化繊維。
  3. 【請求項3】該黒鉛化繊維のストランド強度が3.5〜
    6.5GPaで、かつ、ストランド弾性率が350〜6
    50GPaであることを特徴とする請求項1または2に
    記載の黒鉛化繊維。
  4. 【請求項4】請求項1〜3のいずれかに記載の黒鉛化繊
    維を補強材料として構成されていることを特徴とする複
    合材料。
  5. 【請求項5】該複合材料が、航空宇宙用であることを特
    徴とする請求項4に記載の複合材料。
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