JP2002360689A - 人工透析装置の洗浄方法 - Google Patents

人工透析装置の洗浄方法

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JP2002360689A
JP2002360689A JP2001178226A JP2001178226A JP2002360689A JP 2002360689 A JP2002360689 A JP 2002360689A JP 2001178226 A JP2001178226 A JP 2001178226A JP 2001178226 A JP2001178226 A JP 2001178226A JP 2002360689 A JP2002360689 A JP 2002360689A
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acid
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acidic
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Eiji Fukuda
英二 福田
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Clean Chemical Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 透析装置及び透析ラインの汚れを完全に除去
して確実に殺菌でき、THM生成の懸念がない消毒洗浄
方法を提供する。 【解決手段】 人工透析装置とこれに連通する透析液ラ
インに対し、次亜塩素酸を含まないpH9.5以上のア
ルカリ性水溶液による洗浄と、pH4.0以下の酸性水
溶液による洗浄とを施す。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、医療機関において
人工血液透析に使用された透析装置及び透析液ラインの
汚れを除去して殺菌消毒するための洗浄方法に関する。
【0002】
【従来の技術】人工透析設備を備えた医療機関において
は、患者の安全上、透析装置及び透析液ラインを清浄に
維持することが不可欠であり、このために透析後の洗浄
消毒を日々行う必要がある。しかして、透析後の透析装
置及び透析液ラインに生じる汚れは、蛋白質や脂質の如
き有機物と炭酸カルシウムの如き無機物が主であるが、
患者に投薬さた薬物成分や生体由来以外の物質も含まれ
る上、単純な付着形態ではなく、汚れ成分が積層してい
たり、有機物のマトリクス中に無機物粒子が絡めとられ
ていたり、カルシウムと有機物が複合物を形成していた
りして、内部に潜り込んだ細菌が安全な成育の場を得て
繁殖し易い状態になっている。
【0003】一方、初期の人工透析では***患者の血
液中に高濃度で存在する代謝産物(主として尿素、クレ
アチン、尿酸、グアニジン化合物等の分子量1000以下の
低分子量窒素化合物) の除去を目的としていたが、その
後に分子量3000〜5000の中分子量物質の中に神経毒を始
めとした尿毒素が含まれるとされ、また近年において透
析患者における透析アミロイド症の原因が分子量11800
のβ2-マイクログロブリンにあることも特定され、更に
他の様々な患者の症状がβ2-マイクログロブリン以外の
低分子量蛋白に由来する可能性が指摘されるに至り、現
在ではアルブミン(分子量66000)より小さい分子量の物
質を全て透析除去することが患者治療に繋がるとされて
いる。しかるに、このような除去対象の拡がりによって
透析膜の孔径が大きくなり、これに伴って除去する有機
物の量と種類が増加する傾向にあり、透析装置及び透析
液ラインに生じる汚れが多くなると共に汚れの組成や形
態の複雑化を招いている。
【0004】透析装置及び透析液ラインの消毒洗浄に
は、従来より、次亜塩素酸ナトリウム水溶液と酢酸水溶
液とを用いた二段階洗浄消毒が広く採用されている。こ
れは、前者の水溶液中に生成する次亜塩素酸の強い殺菌
性と反応性を利用し、殺菌消毒と有機系の汚れの除去を
行うと共に、次亜塩素酸では除去できない炭酸カルシウ
ムを酢酸にて溶解除去するものである。なお、一段階洗
浄で殺菌消毒を行えるように、次亜塩素酸ナトリウム水
溶液に金属封鎖剤や界面活性剤等を配合した殺菌消毒剤
も知られるが、炭酸カルシウムを確実に除去する上で金
属封鎖剤の配合量に限界があるため、酢酸等の酸水溶液
による定期的な洗浄を廃止する状況には至っていない。
【0005】また、他の一般的な殺菌消毒剤として、ジ
クロロイソシアヌル酸ナトリウムの如きイソシアヌル酸
塩の水溶液、食塩水の電解によって得られる電解酸性
水、過酢酸や過酸化モノ硫酸カリウムの水溶液、酸性加
温水溶液等がある。しかし、これらの殺菌消毒剤は、酸
性下で炭酸カルシムの除去能力を示すが、有機物の除去
性が非常に悪いために汚れの残留を生じ易い上、特に既
述のように汚れの組成や形態が複雑になる透析装置及び
透析液ラインの消毒洗浄においては、表面的な殺菌はで
きても汚れの内部まで殺菌力が及びにくく、残留した汚
れの中や下に潜む細菌の増殖に繋がることが致命的欠陥
となる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】このような現状から、
透析装置及び透析液ラインの消毒洗浄については、やは
り次亜塩素酸ナトリウムの如き次亜塩素酸塩水溶液と酢
酸の如き酸水溶液とを用いた二段階洗浄が適している。
しかしながら、次亜塩素酸塩水溶液を用いた場合、反応
性の強い次亜塩素酸によって有機物が塩素化され、これ
に伴ってトリハロメタン(以下、THMと略称する)を
発生することが問題化している。このTHMは、一般的
にクロロホルム、ジククロロブロムメタン、クロロジブ
ロモメタン、ブロムホリム等であり、水道水の塩素処理
によって生成することが知られているが、発癌性、肝毒
性、変異原生等を有するとされ、水道水基準ではTHM
として0.1mg/L以下、クロロホルムとして0.0
6mg/L以下とすることが規定されている。
【0007】現在、THMについての排水基準はない
が、当然にその排出による環境への悪影響が懸念され
る。しかして、人工透析施設においては、次亜塩素酸ナ
トリウム水溶液による消毒洗浄時のTHMの発生に加
え、その消毒洗浄後の排液と患者からの老廃物を含む透
析排液あるいは他の有機物含有排液とが排水系で接触
し、塩素化反応によってTHMを発生する可能性が非常
に高いと言える。なお、殺菌消毒成分として他の次亜塩
素酸塩、イソシアヌル酸塩、塩素ガス等を用いても、洗
浄液中に次亜塩素酸を生びるため、排水系でのTHMの
生成を回避することは困難である。また、生成したTH
Mを活性炭による吸着処理で除くことは可能であるが、
活性炭の吸着能力が早期に低下し、一定の除去性能を維
持する上で処理コストが非常に高くつくため、このよう
な処理を医療機関で行うことは非現実的である。
【0008】従って、透析施設を備えた医療機関におい
ては、THM生成の懸念がない消毒洗浄方法を採用する
ことは非常に有意義であるが、洗浄が不十分になって有
機物の残留を生じると、それを温床として細菌が繁殖
し、患者への感染、細菌に由来する発熱性物質の取り込
み、透析装置の運転不良による事故等の大事に至る可能
性があるため、その消毒洗浄方法は汚れを完全に除去し
て確実に殺菌できるものでなければならない。
【0009】本発明は、上述の情況に鑑み、透析装置及
び透析ラインの汚れを完全に除去して確実に殺菌でき、
しかもTHM生成の懸念がない消毒洗浄方法を提供する
ことを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明の請求項1に係る透析装置の消毒洗浄方法
は、人工透析装置とこれに連通する透析液ラインに対
し、次亜塩素酸を含まないpH9.5以上のアルカリ性
水溶液による洗浄と、pH4.0以下の酸性水溶液によ
る洗浄とを施すことを特徴としている。すなわち、この
消毒洗浄方法によれば、前記アルカリ性水溶液によって
有機物の汚れが確実に除去されると共に、析出した炭酸
カルシウムの如き無機物の汚れも前記酸性水溶液によっ
て確実に除去され、しかも当該アルカリ性水溶液には次
亜塩素酸が含まれないことから、この消毒洗浄時ならび
に排水系においてTHMが生成する懸念がない。
【0011】しかして、請求項2の発明では、上記請求
項1の消毒洗浄方法において、透析終了ごとに、前記ア
ルカリ性水溶液による洗浄と、前記酸性水溶液による洗
浄を行うようにしているから、人工透析装置及び透析液
ラインに付着した汚れをより確実に除去できる。また請
求項3の発明では、上記請求項1又は2の消毒洗浄方法
において、前記アルカリ性水溶液による洗浄後に前記酸
性水溶液による洗浄を行うようにしているから、一般に
量的に多い有機物の汚れが先に除去され、この有機物の
汚れに包まれていた炭酸カルシウムの如き無機物の汚れ
が露呈し、次の酸性水溶液による洗浄で該無機物の汚れ
が落ち易くなると共に、酸性水溶液によって有機物が変
性して落ちにくくなる懸念もない。
【0012】更に、本発明の消毒洗浄方法においては、
前記アルカリ性水溶液は、アルカリ金属水酸化物、アル
カリ金属炭酸塩、過酸化物アルカリ金属塩、金属封鎖剤
アルカリ金属塩より選ばれる少なくとも一種を含有する
請求項4の発明、前記酸性水溶液は、過酢酸水溶液、酸
性過酸化物水溶液、酸性のオゾン水、無機酸/または有
機酸の60℃以上の加温水溶液のいずれかである請求項
5の発明、前記アルカリ性水溶液と酸性水溶液の一方も
しくは両方に界面活性剤が配合されてなる請求項6の発
明、前記アルカリ性水溶液は蛋白分解酵素を含有する請
求項7の発明、前記アルカリ性水溶液は殺菌剤を含有す
る請求項8の発明、前記アルカリ性水溶液はpH緩衝剤
を含有する請求項9の発明、をそれぞれ好適態様として
いる。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明に係る透析装置の消毒洗浄
方法は、既述のように、次亜塩素酸を含まないpH9.
5以上のアルカリ性水溶液による洗浄と、pH4.0以
下の酸性水溶液による洗浄とを施すものであり、清浄な
透析環境の維持と排水における環境への配慮とを両立さ
せることを可能にする。
【0014】すなわち、前記のアルカリ性水溶液は、蛋
白質や脂質等の有機物系の汚れに対する除去作用と殺菌
消毒作用を有しており、これを用いて透析終了後の人工
透析装置及び透析ラインを洗浄することにより、付着し
た汚れが組成的及び形態的に複雑なものであっても、そ
の有機物部分を効果的に剥ぎ取るように除去し、細菌の
生育する場を除きつつ殺菌作用を発揮すると共に、有機
物に包まれていた炭酸カルシウムの如き無機物の汚れを
露呈させて器壁から遊離し易くする。しかして、このア
ルカリ性水溶液には次亜塩素酸を含まないため、従来汎
用の次亜塩素酸ナトリウム水溶液のように有機物との反
応によってTHMを生成することがないから、その消毒
洗浄時に汚れの有機物と接触しても、また消毒洗浄後の
排液と透析排液あるいは他の有機物含有排液とが排水系
で接触しても、有害なTHMを生じない。
【0015】一方、前記の酸性水溶液は、炭酸カルシウ
ムの如き無機物に対する溶解作用を有しており、これを
用いて人工透析装置及び透析液ラインを洗浄することに
より、前記アルカリ性水溶液では充分に除去できない無
機物の汚れが溶解除去されると共に、強い殺菌力を有す
るため、前記アルカリ性水溶液による殺菌消毒作用と相
まって透析系内の確実な滅菌に寄与する。
【0016】前記アルカリ性水溶液による洗浄と酸性水
溶液による洗浄の順序は特に制約されないが、一般的に
人工透析装置及び透析液ラインの汚れは患者の老廃物等
に由来する有機物成分が量的に多く、且つ有機物の汚れ
は系内に一様に付着して炭酸カルシウムの如き無機物の
汚れを包み込んでいるのが普通であり、先にアルカリ性
水溶液による洗浄を行った場合、この段階で有機物の汚
れは中性から酸性領域では殆ど除去できないため、有機
物の層に邪魔されて無機物の汚れに溶解除去作用が及び
にくくなると共に、汚れの有機物が酸で変性して落ちに
くい形に変質する可能性もある。従って、通常の場合
は、消毒洗浄の効率を高める上で、先にアルカリ性水溶
液による洗浄を施して有機物の汚れを除去し、これによ
って炭酸カルシウムの如き無機物の汚れを露呈させ、次
の酸性水溶液による洗浄で該無機物の汚れ溶解除去する
という操作手順が推奨される。
【0017】なお、前記アルカリ性水溶液による有機物
の洗浄除去力は、従来汎用の次亜塩素酸ナトリウム水溶
液に比べると高くはないが、人工透析によって患者より
透析膜を通して排出される物質は本来水溶性で頑固な汚
れになりにくいため、その有機物の汚れには充分に対応
できる。しかして、その洗浄除去力をより効率よく発揮
させるには、透析終了後に直ちに透析液を排出させて汚
れの蓄積を防ぎ、間を置かずにアルカリ性水溶液による
洗浄を施すようにすればよい。また、後述するように、
このアルカリ水溶液に適当な添加剤を加えることによ
り、有機物や炭酸カルシウムに対する除去性、除菌・殺
菌性等を向上させることも可能である。
【0018】本発明で用いるアルカリ性水溶液は、前記
のようにpH9.5以上のものであるが、そのpHが高
いほど有機物の汚れ、特に蛋白質の汚れに対する洗浄除
去性が高くなる。しかして、このような水溶液として
は、高いpHに容易に設定できるという利点から、アル
カリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、過酸化物アル
カリ金属塩、金属封鎖剤アルカリ金属塩より選ばれる少
なくとも一種をアルカリ化剤として含有するものが好ま
しい。
【0019】前記のアルカリ金属水酸化物は、例えば水
酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等で
あり、僅かな使用量で水溶液を高いpHに設定できると
共に、そのpH緩衝力が小さいことから、洗浄後の水溶
液の排水処理に際して中和に要する酸の量が少なくて済
むという利点がある。また、前記のアルカリ金属炭酸塩
としては、例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸
リチウム等が挙げられる。しかして、これらアルカリ金
属水酸化物及びアルカリ金属炭酸塩は共に無機物であ
り、その水溶液のBOD及びCODが0であるから、洗
浄後の排液を中和するだけで環境に負荷を与えない形で
排出できる。
【0020】前記の過酸化物アルカリ金属塩は、例えば
過炭酸ナトリウム、過ホウ酸ナトリウム等であり、アル
カリ化剤としての機能に加えて、保持した活性酸素によ
って酸化剤としても作用するため、その水溶液の使用に
よって特に蛋白質の汚れ対する除去性が向上する。ま
た、この過酸化物アルカリ金属塩の水溶液は、アルカリ
金属水酸化物の水溶液よりも高い除菌性を示すことが判
明している。なお、この水溶液はBOD及びCODによ
る環境の負荷はないが、過ホウ酸ナトリウムを用いた排
液についてはホウ素の排水基準を遵守すべきことは言う
までもない。
【0021】前記の金属封鎖剤アルカリ金属塩は、アル
カリ化剤としての機能に加え、金属封鎖力を有すること
から、その水溶液による洗浄の際に、有機物中の金属を
引き抜いて有機物の汚れを除去し易くすると共に、炭酸
カルシウムの除去溶解にも効果的に作用し、またpH緩
衝剤としても作用して水溶液のpH低下を抑えるため、
pH低下に伴う洗浄除去力の低下を生じにくいという利
点がある。なお、金属封鎖剤アルカリ金属塩は、有機物
からなるため、構成する炭素、水素及び窒素によるCO
D値がある。
【0022】このような金属封鎖剤アルカリ金属塩とし
ては、例えば、L- グルタミン酸二酢酸、L- アスパラ
ギン酸二酢酸、メチルグリシン二酢酸、[S,S]-エチレン
ヂアミン- N, N- 二コハク酸、β- アラニン二酢酸、
セリン二酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、ジヒド
ロキシエチルグリシン酸、イミノ二コハク酸、ヒドロキ
シイミノ二コハク酸、エチレンジアミン四酢酸、ヒドロ
キシエチレンジアミン三酢酸、ヒドロキシエチレンヂア
ミン三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレ
ンテトラアミン六酢酸、1, 3- プロパンジアミン四酢
酸、1, 3- ジアミノ- 2- ヒドロキシプロパンン四酢
酸、ニトリロ酢酸等のアルカリ金属塩が挙げられる。こ
れらの中で、L- グルタミン酸二酢酸、L- アスパラギ
ン酸二酢酸、メチルグリシン二酢酸、[S,S]-エチレンヂ
アミン- N, N- 二コハク酸、β- アラニン二酢酸、セ
リン二酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸等のアルカ
リ金属塩は、生分解性が良いため、環境に優しい成分と
して特に推奨される。
【0023】なお、アルカリ金属水酸化物の水溶液つい
ては、低濃度で高pHに設定できる反面、pH緩衝性が
弱く、各種の汚れとの混合・接触によってpHが低下
し、これに伴って有機物の汚れに対する除去性が低下す
ることになるが、この難点はpH緩衝化剤の配合によっ
て改善できる。このようなpH緩衝化剤としては、有機
酸塩、有機ホスホン酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、アルコ
ールアミン塩、重炭酸塩等あり、これらは2種以上を併
用してもよい。
【0024】前記のpH緩衝化剤に用いる有機酸塩とし
ては、クエン酸、グルコン酸、コハク酸、酒石酸、酢
酸、リンゴ酸、蟻酸、フマル酸、乳酸、ポリアクリル
酸、ポリアクリル酸- ポリマレイン酸ブロックポリマ
ー、ポリグリオキシル酸−ポリエチレンオキシドブロッ
クポリマー、ポリエチレンオキシド−ポリアクリル酸/
マレイン酸グラフトポリマー等のナトリウム塩、カリウ
ム塩、アンモニウム塩、アルコールアミン塩が挙げられ
る。有機ホスホン酸塩としては、アミノトリ( メチレン
ホスホン酸) 、1-ヒドロキシエチリデン-1,1- ジホシホ
ン酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1- ジホスホン酸、エ
チレンジアミンテトラ( メチレンホスホン酸)、ジエチ
レントリアミノペンタ( メチレンホスホン酸) 、ホスホ
ノブタントリカルボン酸等のナトリウム塩、カリウム
塩、アンモニウム塩、アルコールアミン塩が挙げられ
る。リン酸塩としては、リン酸、ピロリン酸、トリポリ
リン酸、テトラポリリン酸、ヘキサポリリン酸等のナト
リウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、アルコールア
ミン塩が挙げらえれる。ホウ酸塩としては、ホウ酸のナ
トリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩が挙げられ
る。アルコールアミンとしてモノエタノールアミン、ジ
エタノールアミン、トリエタノールアミンが挙げられ
る。重炭酸塩としては、重炭酸ナトリウム及び重炭酸カ
リウム塩が挙げられる。
【0025】これらpH緩衝化剤の中でも、特に有機酸
塩、有機ホスホン酸塩、ポリリン塩酸塩は、同時に金属
封鎖剤としても機能するから、炭酸カルシウムの除去に
も貢献できる。ただし、アンモニウム塩は、高pHでの
作用時間が長くなるほどアンモニア臭を増すので注意を
要する。なお、ホウ酸塩は、pH緩衝化剤の作用を持つ
が、ホウ素に排出基準があり、環境への配慮からは避け
ることが望ましい。
【0026】アルカリ性水溶液による有機物の汚れの除
去性を更に高める手段として、生体触媒である酵素を当
該水溶液中に含有させることも可能である。このような
酵素としては、蛋白質分解酵素、脂質分解酵素、炭水化
物分解酵素等が挙げられるが、透析装置及び透析液ライ
ンの汚れに対処する上で蛋白質分解酵素が特に有用であ
る。中でもアルカリ蛋白分解酵素は、一般にpH10〜12
に酵素活性の至適pHを持つため、本発明で用いるアル
カリ性水溶液に対応した酵素の一つでもある。なお、脂
質分解酵素であるリパーゼは、体より排出される糖脂質
や脂質蛋白質の分解に効果を示す。また、炭水化物分解
酵素は、炭水化物、糖脂質、糖蛋白の分解除去に効果を
示す。その他、過酸化物存在下での酵素活性を持つ酵素
も有用である。
【0027】前記のアルカリ蛋白分解酵素としては、例
えば、ノボ社製の商品名サビナーゼ、同エスペラーゼ、
同アルカラーゼ等がある。また脂質分解酵素としては、
同じくノボ社製の商品名リポラーゼがある。炭水化物分
解酵素としては、ノボ社製の商品名ターマミル、協和エ
ンザイム社製の商品名 Clarase等がある。そして過酸化
物存在下での酵素活性を持つ酵素としては、ノボ社製の
商品名デュラミルが挙げられる。
【0028】ただし、これら酵素は、汚れに対して優れ
た洗浄除去効果を持つが、蛋白質からなるため、透析ラ
イン中に残留した場合に患者に悪影響を及ぼす可能性が
あり、使用に当たっては残留がないように厳密に監視す
る必要がある。また、酵素は分子量が大きいため、エン
ドトキシン除去フィルター(以下、ETCFと略称す
る)の設置ラインでは使用できないという難点がある・
【0029】透析装置の接液部の一部に使用されている
ステンレス鋼は、一般的にアルカリ領域では侵されにく
いが、様々なイオン、金属封鎖剤、酸化剤及びpHの低
下等によって錆や腐食を生じることがある。本発明で
は、このような金属腐食を防止抑制するために、アルカ
リ水溶液に金属腐食抑制剤を添加することができる。こ
の金属腐食抑制剤としては、ケイ酸ナトリウムやケイ酸
カリウムの如き水溶性のケイ酸塩及びポリケイ酸塩が挙
げられる。
【0030】アルカリ性水溶液による殺菌消毒作用は、
単独では十分とは言い難いが、既述のように酸性水溶液
の殺菌力と相俟って、透析装置及び透析液ラインの充分
な殺菌消毒を行える。しかして、より確実な殺菌消毒を
行うには、アルカリ性水溶液を人工透析装置及び透析液
ラインに長時間滞留させて細菌数を減少せしめ、もって
衛生的に維持した状態で次段階の酸性水溶液による洗浄
消毒を行うようにすればよい。
【0031】更に、アルカリ性水溶液による除菌・殺菌
性を向上させるために、該水溶液中に殺菌剤として、二
酸化塩素や亜塩素酸塩の如き塩素系化合物、過酸化水素
や過硫酸カリウムの如き酸素系消毒剤、オゾンガス、殺
菌消毒剤を含有させることもできる。なお、、二酸化塩
素及び亜塩素酸塩は、残留塩素をもつ塩素化合物である
が、次亜塩素酸を形成しないため、有機物を酸化しても
塩素化させず、もってTHMが発生する懸念はない。過
酸化水素は、アルカリ領域において発生期の酸素を素早
く生成し、より速効的な殺菌作用を発揮すると共に、付
着している汚れを発生した泡によって物理的に剥離さ
せ、もって汚れの除去性を高める効果もある。またオゾ
ンガスは強力な殺菌作用を持っている。
【0032】前記の殺菌消毒剤としては、塩化ベンザル
コニウム、塩化ベンゼトニウム、ジデシルジメチルアン
モニウムクロライド、アルキルジメチルエチルベンジル
アンモニウムクロライド、ポリヘキサメチレングアニジ
ン、ポリアルキルアミノエチルグリシン等が挙げられ
る。これらのうち、ポリアルキルアミノエチルグリシン
は、洗浄性を備えた殺菌剤でもある。ただし、塩化ベン
ザルコニウムやアルキルポリアミノエチルグリシンは、
ETCF設置ラインで使用する場合、水洗除去が難しい
ため、残留がないように特に注意する必要がある。ま
た、過酸化水素や溶存オゾンについても、生成する気泡
がETCF内に溜まる場合があるので、気泡が残らない
ように注意を要する。
【0033】アルカリ性水溶液が過酸化物アルカリ金属
塩の水溶液である場合、酸化性を高める活性促進剤を含
有させることにより、汚れの除去性を向上させることが
できる。このような活性促進剤としては、テトラアセチ
ルグリコウリル、テトラアセチルエチレンジアミン、ノ
ナノイルオキシベンゼンスルホン酸塩、ラウロイルオキ
シベンゼンスルホン酸塩、デカノイルオキシ安息香酸塩
等が挙げられる。これら活性促進剤の添加量は、過酸化
物の活性酸素と等分子近くあれば良い。
【0034】更に、アルカリ性水溶液による消毒洗浄性
を向上させる手段として、界面活性剤を含有させて汚れ
に対する浸透性を高めることが推奨される。この界面活
性剤としては、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンア
ルキルエーテル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキ
ルジフェニルエーテルスルホン酸塩、アシルグルタミン
酸塩、メタキシレンスルホン酸塩、パラトルエンスルホ
ン酸塩等の陰イオン界面活性剤、ポリオキシアルキレン
アルキルエーテル、アルキルポリグルコシド、ポリオキ
シエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリ
セリルアルキルエーテル、アルキルアミンオキシド、ポ
リオキシエチレンポリオキシエチレンブロックポリマ
ー、ポリオキシプロピレンジグルセリルエーテル等の非
イオン界面活性剤、アルキルベタイン、イミダゾリウム
ベタイン等の両性界面活性剤が挙げられ、これらは単独
で使用してもよいし、2種以上を併用てもよい。ただ
し、界面活性剤は、ETCF設置ラインでは水洗性が悪
く、残留する可能性が非常に大きいため、ETCFを設
置していない透析液ラインに限って使用することが望ま
しい。
【0035】前記の酸性水溶液は、既述のようにpH
4.0以下のものであり、炭酸カルシウムの如き無機物
の汚れに対する溶解除去作用と、殺菌消毒作用とを発揮
する。しかして、その殺菌消毒作用はpHが低いほど大
きくなるが、単なる有機酸や無機酸の水溶液では充分な
殺菌性を得にくいため、確実な殺菌消毒を行う上で、過
酢酸水溶液、酸性過酸化物水溶液、酸性のオゾン水、無
機酸/または有機酸の60℃以上の加温水溶液の何れか
を使用することがより好ましい。
【0036】前記の過酢酸水溶液は、0.001 %以上の濃
度で優れた殺菌消毒作用を発揮すると共に、含まれる酢
酸の量に応じて炭酸カルシウムを溶解することができ
る。このような過酢酸水溶液として、0.3 〜9 %の過酢
酸、3 〜10%の過酸化水素、3〜40%の酢酸を含むもの
が市販されている。
【0037】前記の酸性過酸化物水溶液は、過酸化物
と、酸性物質としての有機酸又は/及び無機酸とを含む
水溶液であり、酸性物質による炭酸カルシウムの除去性
と、過酸化物による殺菌消毒作用を具備している。しか
して、この殺菌消毒作用は、水溶液の有効酸素量0.002
%以上で発揮される。しかして、過酸化物としては、過
酸化水素の他、過酸化硫酸、過酸化二硫酸、過酸化リン
酸等のナトリウム、カリウム及びアンモニウム塩が挙げ
られ、これらの一種以上を使用できる。
【0038】前記の酸性のオゾン水は、オゾン水製造機
より得られたオゾン水に酸性物質を混合するか、酸性物
質よりなる酸性水溶液にオゾンガスを吹き込むことによ
って調製できる。しかして、オゾンガスは、殺菌作用が
強い反面、安定性に欠けるという難点があるが、酸性領
域では安定に水溶液中に維持でき、殺菌消毒の有効成分
として働く。
【0039】前記の酸性過酸化物水溶液及び酸性のオゾ
ン水に用いる酸性物質としての有機酸及び無機酸は、言
うまでもなく炭酸カルシウムに対する溶解力の大きいも
のが好ましい。このような有機酸としては、酢酸、コハ
ク酸、フマル酸、マレイン酸、ソルビン酸、アジピン酸
等のカルボン酸及びその無水物、グリコール酸、乳酸、
プロピオン酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、
グルコン酸等のヒドロキシカルボン酸が挙げられる。ま
た無機酸としては、リン酸、スルファミン酸、塩酸、硝
酸等が挙げられる。しかして、これらの酸性物質は、そ
れぞれ一種以上を用いることができる。なお、塩酸や硝
酸等の強酸を用いる場合は、金属腐食抑制剤の併用が望
ましい。
【0040】前記の有機酸又は/及び無機酸の加温水溶
液は、高温殺菌効果によって殺菌消毒性を向上させたも
のであり、その温度が高いほど殺菌消毒性が増すが、60
℃以上であればよい。なお、温水のみでも80℃以上の
高温であれば充分な殺菌効力を示すが、この加温水溶液
の場合は酸性であるためにより低温で高い殺菌効力が得
られることになる。しかして、この加温水溶液に用いる
有機酸及び無機酸は、やはり炭酸カルシウムに対する溶
解力の大きいものが好ましい。このような有機酸として
は、酢酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、アジピン
酸、ソルビン酸等のカルボン酸、グリコール酸、乳酸、
プロピオン酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、グルコン
酸等のヒドロキシカルボン酸が挙げられる。無機酸とし
てリン酸、スルファミン酸、塩酸、硝酸等が挙げられ
る。しかして、これらの酸は一種以上を用いることがで
きる。なお、この加温水溶液においても、なお、塩酸や
硝酸等の強酸を用いる場合は、金属腐食抑制剤の併用が
望ましい。
【0041】なお、これらの酸性水溶液についても、汚
れに対する浸透性を高めるために界面活性剤を含有させ
ることができる。この界面活性剤としては前記のアルカ
リ性水溶液に含有させるものと同様の陰イオン界面活性
剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤を使用できる
が、特に非イオン界面活性剤が好適である。ただし、こ
れらの界面活性剤は、やはりETCFを設置していない
透析液ラインに限って使用することが望ましい。
【0042】本発明による透析装置及び透析液ラインの
洗浄は、透析終了ごとに前記のアルカリ性水溶液と酸性
水溶液による2段階洗浄を施すことが望ましく、特にア
ルカリ性水溶液による洗浄を先に行うことが推奨される
が、汚れの程度や傾向、使用する洗浄液の種類等によっ
ては、必ずしも透析終了ごとの2段階洗浄に限るもので
はない。すなわち、アルカリ性水溶液の殺菌消毒性及び
炭酸カルシウムの除去性を高めた場合、アルカリ性水溶
液による洗浄を毎日欠かさず行うと共に、何日か置きに
酸性水溶液による洗浄を併用する方法を採用できる。ま
た、恒常的に有機物の汚れが少ない傾向である場合、酸
性水溶液による洗浄を毎日欠かさず行うと共に、何日か
置きにアルカリ性水溶液による洗浄を併用する方法も採
用可能である。
【0043】ただし、このようにアルカリ性水溶液と酸
性水溶液の一方による洗浄を毎日行って間欠的に他方に
よる洗浄を行う方法では、清浄状態を充分に監視する必
要があると共に、また透析終了ごとの両水溶液による二
段階洗浄を行う場合よりも各々の水溶液による洗浄時間
を長くする方がよいが、少なくとも一方の水溶液による
洗浄6〜7回に1回の割合で他方の水溶液による洗浄を
行うべきある。例えば、通常の透析施設においては、月
曜日から土曜日まで人工透析を行い、日曜日に休止する
のが一般的であるから、月曜日から土曜日まで毎日の透
析終了後にアルカリ性水溶液による洗浄を施し、週末の
土曜日にはアルカリ性水溶液による洗浄後に酸性水溶液
による洗浄を施すか、逆に月曜日から土曜日まで毎日の
透析終了後に酸性水溶液による洗浄を施し、週末の土曜
日には酸性水溶液による洗浄の前にアルカリ性水溶液に
よる洗浄を施すようにすればよい。なお、人工透析装置
及び透析液ラインにおいては酸洗浄と共に消毒を行うこ
とが推奨されるが、この消毒は汚れが確実に除去された
後に実施するのが好ましい。
【0044】〔アルカリ性水溶液と人工透析排液との反
応性試験〕透析施設にて得られた患者からの人工透析排
液4容量部に対し、アルカリ性水溶液として次亜塩素酸
ナトリウム( NaClO) 、ジクロロイソシアヌル酸ナ
トリウム( SDCI) 、亜塩素酸ナトリウム(亜塩素酸
Na)、及び二酸化塩素の各々水溶液1容量部を混合
し、残留塩素量の経時的変化を調べた。その結果を後記
表1に示す。これら水溶液のpHは、水酸化ナトリウム
水溶液とリン酸水溶液を用いて調整した。なお、以下に
おいては、ナトリウムをNa、カリウムをK、水酸化ナ
トリウムをNaOH、水酸化カリウムをKOHとして表
すものとする。
【0045】
【表1】
【0046】上表の結果から、次亜塩素酸を生成する次
亜塩素酸Na水溶液(No.1〜3)及びジクロロイソシ
アヌル酸Na水溶液(No.4,5)は、透析排液との混
合によって残留塩素が急激に減少しており、それらの反
応性の強さから透析液中の物質と反応していることが判
る。これに対し、次亜塩素酸を生成しない二酸化塩素水
溶液(No.6,7)及び亜塩素酸Na水溶液(No.8、
9)は、透析排液と混合しても残留塩素の減少は僅かで
あり、反応性が殆どないことを示唆している。
【0047】〔アルカリ性水溶液と人工透析排液との混
合によるTHM生成〕透析施設にて得られた患者からの
人工透析排液4容量部に対し、前記No.1,3,5〜9
の各々水溶液1容量部を混合した場合と、同じくNaO
Hの0.012 %水溶液、エチレンジアミン四酢酸4Na塩
の1%水溶液(EDTA)、L- グルタミン酸二酢酸2
Na塩の0.4 %水溶液(GLDA)、過炭酸Naの0.5
%水溶液の各々1容量部を混合した場合について、所定
時間置きにTHM生成量を測定した。その結果を後記表
2に示す。なお、THM生成量はヘッドスペース・ガス
クロマトグラフ質量分析法により測定し、測定時に過剰
な残留塩素はチオ硫酸Naで中和した。
【0048】
【表2】
【0049】表2の結果から、次亜塩素酸を生成する次
亜塩素酸Na水溶液(No.1,3)とジクロロイソシア
ヌル酸Na水溶液(No.5)は、透析排液との混合によ
ってTHMが生成し、その生成量が時間経過と共に増加
することが判る。そして、これら次亜塩素酸を生成する
水溶液(No.1,3,5)についての表1と表2の対比
より、残留塩素の減少とTHMの生成量増加とが相関し
ていることも示唆される。これに対し、二酸化塩素水溶
液(No.5,6)、亜塩素酸Na水溶液(No.8,9)、
NaOH水溶液(No.10)、エチレンジアミン四酢酸4
Na塩水溶液(No.11)、L- グルタミン酸二酢酸2N
a塩水溶液(No.12)、過炭酸Na水溶液(No.13)は、
いずれもTHMを生成していない。従って、次亜塩素酸
を含まないアルカリ性水溶液は、THMを生成せず環境
に悪影響を与えないことが判る。また、表1に示すよう
にアルカリ性水溶液と透析廃液との混合液のpHは排水
基準の9以下になっていることから、次亜塩素酸を含ま
ないアルカリ性水溶液による洗浄排液は、透析排液との
混合によって容易に排出可能なpH域に設定できること
が明らかである。
【0050】〔模擬洗浄試験〕試験片に透析装置及び透
析ラインの汚れに対応した有機物(蛋白質,脂質) 及び
無機物(CaCO3 …炭酸カルシウム)の汚れを付着さ
せ、この試験片を25℃の各種洗浄液中に所要時間浸漬
して汚れの落ち具合を調べた。その結果を、各洗浄液の
有効成分濃度(%)及びpHと共に後記表3A〜3Dに
示す。なお、各汚れの試験片、洗浄性の評価、有効成分
の内訳は次のとおりである。
【0051】<試験片> 蛋白質汚れ・・・人血清の10%水溶液10μl をスライド
ガラスに滴下し、18時間常温で室内放置したもの。 脂質汚れ・・・・大豆油10μl をスライドガラスに滴下
し、18時間常温で室内放置したもの。 CaCO3 の汚れ・・・CaCO3 が析出し易いように
重曹濃度を所定の二倍量にした透析液(扶桑化学薬品社
製キンダリー2p)10μl をシリコンチューブに滴下
し、48時間以上常温で室内放置したもの。
【0052】<洗浄性の評価> 蛋白質・・・アミドブラック10B呈色試験液を用い、浸
漬前の試料の呈色を最大の10、呈色なしを0とし、10
から0までの数字で呈色度合つまり蛋白質の残留度合を
表した。呈色なしの0は蛋白質の残留がないことを意味
し、二時間洗浄後に評点5以下であれば洗浄性良好と言
える。 脂質・・・スライドガラス上から油滴が消失するまでの
時間によって評価し、10分以内で消失を◎、30分以内に
消失を○、60分以内に焼失を□、120分以内で消失を
△、120 分でも消失しなかった場合を×とした。 CaCO3 ・・・オルトフタレインコンプレキサン(O
CPC)法によるカルシウム呈色により、浸漬洗浄10分
後に呈色なしを○、60分後に呈色なしを□、2時間後に
呈色なしを△、2時間後に呈色有りを×とした。
【0053】<金属封鎖剤アルカリ金属塩> 中性EDTA・・・エチレンジアミン四酢酸3Na塩 EDTA・・・エチレンジアミン四酢酸4Na塩 EDTA#1・・・エチレンジアミン四酢酸4Na塩と
して0.4 %を含み、4Na塩と3N塩でpH調整 GLDA・・・L- グルタミン酸二酢酸2Na塩を40%
含有するキレスト社製キレストCMG−40 ASDA・・・L- アスパラギン酸二酢酸2Na塩を50
%含有する帝国化学産業社製クレワットBi−HDS MGDA・・・メチルグリシン二酢酸2Na塩を40%含
有するBASF社製トリロンM EDDS・・・[S,S−]エチレンヂアミン−N, N
−ジコハク酸3Na塩を37%含有するオクテル社製オク
タクエストE−30 EDDS#2・・・EDDSの1%水溶液をNaOHで
pH調整。 HIDS・・・ヒドロキシエチルイミノ二酢酸2Na塩
を25%含有するキレスト社製キレストE−25 DHEG・・・ジヒドロキシエチルグリシン酸1Na塩
を50%含有するキレスト社製キレストG−50 DPTA・・・ジエチレンテトラアミン五酢酸5Na塩
を40%含有するキレスト社製キレストP HEDTA・・・ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸3
Na塩を35%含有するキレスト社製キレストH TTHA・・・トリエチレンテトラアミン六酢酸6Na
塩を33%含有するキレスト社製キレストQ NTA・・・ニトリロ三酢酸3Na塩
【0054】<過酸化物アルカリ金属塩> 過炭酸Na・・・日本パーオキサイド社製SPC−G 過ホウ酸Na・・・過ホウ酸Na四水和物
【0055】<pH緩衝剤> クエン酸Na・・・クエン酸3Naの0.4%水溶液を
NaOHでpH調整 HEDP・・・1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジ
ホスホン酸を60%含有するキレスト社マスコールP−2
10を使用し、KOHでpH調整
【0056】<殺菌剤> 亜塩素酸Na・・・残留塩素量 500ppmの亜塩素酸N
a水溶液をNaOHでpH調整 二酸化塩素・・・残留塩素量 500ppmの二酸化塩素水
溶液をNaOHでpH調整 アルカリ性オゾン水・・・オゾン水製造機( 三菱電機社
製OW1020,オゾンガス20mg/L含有) で得たオゾン
ガス溶存水をNaOHでpH調整 両性殺菌剤・・・アルキルポリアミノエチルグリシンを
30%含有する日本油脂社製ニッサンアノンLG。
【0057】<界面活性剤> S1・・・ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステルN
aを25%含有する日本油脂社製パーソフトEF S2・・・ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(ラ
イオン社製レオックス2008C) S3・・・アルキルジメチルアミノ酢酸ベタインを36%
含有する社製レボンLD−36 S4・・・ポリオキシエチレンアルキルエーテル(三洋
化成社製ナロアクティN−95) S5・・・ポリオキシエチレンアルキルエーテル(旭電
化社製アデカトールSO−135)
【0058】<酵素> 蛋白分解酵素・・・ノボ社製サビナーゼ。
【0059】<酸性水溶液> 0.01%過酢酸・・・過酢酸0.01%,酢酸0.15%,過酸化
水素0.05%を含有。 0.02%過酢酸・・・過酢酸0.02%,酢酸 0.3%,過酸化
水素 0.1%を含有。 過酸化硫酸塩・・・過酸化硫酸モノカリウム化合物(デ
ュポン社製オキソン、有効酸素量約5%)。 過酸化二硫酸塩・・・過酸化二硫酸Na(MGC社製、
有効酸素量約5%)。 酸性オゾン水・・・前記オゾン製造機で作製したオゾン
水に酢酸0.2 %を溶解したもの。
【0060】
【表3A】
【0061】
【表3B】
【0062】
【表3C】
【0063】
【表3D】
【0064】表3A〜3Dの結果より、中性水溶液では
アルカリ金属塩、金属封鎖剤、過酸化物等を含有してい
ても有機物の汚れは殆ど除去できず、酸性水溶液でも除
去できないが、アルカリ性水溶液ではpHが高くなるほ
ど除去性が増している。しかして、金属封鎖剤アルカリ
金属塩水溶液と過酸化物アルカリ金属塩水溶液は共に、
同一pHであるアルカリ金属水酸化物単独の水溶液より
も蛋白質に対する洗浄性が優れている。また蛋白質に対
する洗浄性は、酸素系殺菌剤である過酸化水素ならびに
pH緩衝剤の含有によって改善され、蛋白分解酵素の配
合では特に顕著に向上している。更に界面活性剤の配合
は、脂質に対する洗浄性を飛躍的に高めると共に、蛋白
質の除去性も若干改善し、特に陰イオン界面活性剤と非
イオン界面活性剤が効果的である。一方、炭酸カルシウ
ムの洗浄性については、酸性水溶液が速効的な効果を示
し、アルカリ性水溶液でも金属封鎖剤及び金属封鎖力が
あるpH緩衝化剤の含有によって改善されている。80
℃温水では、脂質がある程度除去されるのみで、蛋白質
及び炭酸カルシウムは殆ど除去されない。
【0065】〔金属腐食試験〕37℃に保持したアルカ
リ性水溶液中にSUS−410板(20×50×1mm、約
7.5g)を7日間浸漬し、その状態変化と重量変化を
調べた。その結果を表4に示す。アルカリ性水溶液とし
ては、表3A,3BのNo.a8及びNo.a26と、これら
にケイ酸カリウムを加えたものを使用した。
【0066】
【表4】
【0067】表4の結果から、アルカリ性水溶液による
金属腐食の防止に、ケイ酸塩の配合が有効であることが
判る。
【0068】〔殺菌効果試験1〕メシチリン耐性黄色ブ
ドウ球菌( MRSA) に対するアルカリ性水溶液及び酸
性水溶液の殺菌効果について試験を行った。その結果を
表5に示す。試験は、試験液10mlに107 個/mlの
試験菌液0.1mlを接種し、これを20℃で5分間保
存し、その1mlを9mlのSCDLP寒天培値(日本
製薬社製)に添加し、35℃にて2日間培養後に生菌数
を測定した。各試験液のNo.は表3A〜3Dに示す試験
液に対応する。
【0069】
【表5】
【0070】表5の結果から明らかなように、MRSA
に対し、アルカリ性水溶液ではpHが高いほど除菌効果
が増し、過炭酸やオゾン及び過酸化水素の存在で除菌効
果がより向上し、また次亜塩素酸を含まない亜塩素酸塩
水溶液や二酸化塩素水溶液は遅効性ではあるが100 %の
殺菌が可能であり、殺菌消毒剤である塩化ベンザルコニ
ウムやアルキルポリアミノエチルグリシンを含有するア
ルカリ性水溶液では60分後に100 %の殺菌が達成されて
いる。一方、酸性水溶液では、全て短時間で100 %の殺
菌効果が得られている。
【0071】〔殺菌効果試験2〕酸性水溶液として、過
酢酸水溶液(過酢酸:酢酸:過酸化水素=1:15:
5)、過酸化硫酸塩(過酸化モノ硫酸カリウム=デュポ
ン社製オキソン)水溶液、過酸化水素−クエン酸水溶
液、酸性オゾン水、クエン酸加熱水と、0.25%有機
酸(コハク酸,リンゴ酸,クエン酸)水溶液を用い、ま
た参考として60℃温水溶液を用い、それぞれ黄色ブドウ
球菌、大腸菌、緑膿菌に各106 個/mlの割合で接触
させて殺菌効果を調べた。その結果を表6に示す。な
お、No.を付した各試験液は表3C,3Dに示す試験液
に対応する。
【0072】
【表6】
【0073】表6の結果から明らかなように、過酢酸水
溶液の場合、過酢酸濃度0.002 %では5分の接触で緑膿
菌の生育を認めたが、同濃度を0.003 %にすると3種の
菌全ての生育が認められなかった。また過酸化硫酸塩及
び過酸化水素の酸性水溶液では有効酸素量0.002 %及び
0.005 %で優れた殺菌効果が得られており、酸性オゾン
水及び酸性加熱水溶液も確実な殺菌消毒を行えることが
判る。しかるに、有機酸及び無機酸の単なる水溶液や60
℃程度の温水では充分な殺菌効果は得られていない。
【0074】
【実施例】以下、本発明の実施例について、比較例と対
比して具体的に説明する。なお、これら実施例及び比較
例で使用したアルカリ性水溶液及び酸性水溶液は、表3
A〜3Dに示すNo.の試験液に対応するものである。
【0075】実施例1〜46 透析装置及び透析液ラインにおける透析後の汚れに擬し
て、有機物と無機物が混合した汚れを有する試験片とし
て、CaCO3 が析出し易いように重曹濃度を所定の二
倍量にした透析液(扶桑化学薬品社製キンダリー2p)
9容量部に人血清1容量部を混和溶解させ、この液10μ
lをスライドガラスに滴下し、24時間常温で室内放置
したものを使用した。そして、この試験片を、後記表7
に記載のアルカリ性水溶液に液温25℃で1時間浸漬し
たのち、水洗し、次いで同表記載の酸性水溶液に液温2
5℃(加温水を除く)に浸漬し、水洗後に汚れの除去性
を調べた。その結果を後記表7に示す。表中の「実」は
実施例を意味する。なお、有機物の汚れに対する洗浄性
は、酸性水溶液に1時間浸漬して水洗したものについ
て、既述のアミドブラック10B試験液を用いた呈色に
基づく評価方法により、蛋白質の残留度合を判定した。
また、無機物の汚れに対する洗浄性は、酸性水溶液に1
0分間浸漬して水洗したものについて、既述のOCPC
法によるカルシウム呈色により、既述同様に判定評価し
た。
【0076】比較例1〜4 実施例1〜46で用いたものと同様の試験片を後記表7
に記載のアルカリ性水溶液、酸性水溶液、温水の各々に
液温25℃で2時間浸漬し、水洗後に前記同様にして汚
れの除去性を調べた。その結果を後記表7に示す。表中
の「比」は比較例を意味する。
【0077】
【表7】
【0078】表7より、本発明によるアルカリ性水溶液
と酸性水溶液による2段階洗浄を行うことにより、有機
物の汚れに対する洗浄性がアルカリ性水溶液の単独洗浄
による同洗浄性よりも向上すると共に、無機物にの汚れ
に対する洗浄性も酸性水溶液の単独洗浄による同洗浄性
よりも向上していることが判る。このような差異を生じ
るのは、試験片に付着した汚れが有機物と無機物の複合
状態になっているため、アルカリ性水溶液の単独洗浄で
は除去されるべき蛋白質の汚れが落ちにくく、また酸性
水溶液の単独洗浄でも除去されるべき炭酸カルシウムが
有機物に邪魔されて落ちにくいのに対し、本発明の2段
階洗浄では、アルカリ性水溶液による洗浄後に蛋白質等
がある程度残留していても、炭酸カルシウムの汚れが露
呈した状態となるため、次の酸性水溶液による洗浄によ
って炭酸カルシウムは容易に溶解除去され、この溶解除
去に伴って残留していた蛋白質等も遊離して同時に除去
されることによると推定される。
【0079】実施例47〜57 実施例1〜46で用いたものと同様の試験片を、実施例
1〜46とは順序を逆にして、後記表8に記載の酸性水
溶液に液温25℃(加温水を除く)で1時間浸漬したの
ち、水洗し、次いで同表記載のアルカリ性水溶液に液温
25℃で1時間浸漬し、水洗後に汚れの除去性を調べ
た。その結果を後記表8に示す。表中の「実」は実施例
を意味する。
【0080】
【表8】
【0081】表8より、前記とは逆に酸性水溶液による
洗浄を先にしてアルカリ性水溶液による洗浄を後にする
2段階洗浄でも、両水溶液での浸漬が1時間と長けれ
ば、有機物の汚れに対する洗浄性と無機物にの汚れに対
する洗浄性は共に良好になることが判る。
【0082】実施例58〜68 人工透析施設を有する医療機関において、毎日1回の人
工透析が行われる透析装置及び透析液ラインに、透析終
了後、RO( 逆浸透) 水を15分間供給して流し、次い
で後記表9記載のアルカリ性水溶液による所要時間の洗
浄、RO水による90分間の水洗、同表記載の酸性水溶液
による所要時間の洗浄、RO水による90分間の水洗を順
次施すことを6日間継続したのち、その清浄度を調べ
た。結果を表9に示す。なお、実施例58〜65では、
ETCF(日機装社製EF−01)を設置した患者監視
装置(日機装社製DBB−22B)にアルカリ性水溶液
及び酸性水溶液を通液した。また実施例66〜68で
は、ETCFを設置していない患者監視装置(東レ社T
R−230)にアルカリ性水溶液及び酸性水溶液を通液
した。各水溶液の供給量は500 ml/分である。
【0083】清浄度は、生菌数、エンドトキシン値(E
T値)、蛋白質系汚れの有無、炭酸カルシウムの有無の
各項目について調べた。その結果を表8に示す。しかし
て、生菌数とエンドトキシン値は透析膜の供給直前位置
より測定用試料を採水した。蛋白質系汚れの有無は、透
析膜からの排液直後の位置のシリコンチューブを対象と
し、既述のアミドブラック10B試験液による呈色の有無
によって判定した。炭酸カルシウムの有無については、
患者監視装置への供給直前位置と患者監視装置からの排
液直後の位置のシリコンチューブについて、既述のOC
PC法で調べた。
【0084】
【表9】
【0085】表9に示すように、実施例58〜68の洗
浄方法を適用した透析装置及び透析液ラインは、いずれ
も菌数0でエンドトキシン値が1EU/L以下となり、
蛋白質系汚れ及び炭酸カルシウムの残留も認められず、
極めて清浄に維持されていることが明らかである。
【0086】実施例69〜74 実施例58〜68と同様に毎日1回の人工透析が行われ
る透析装置及び透析液ラインに、透析終了後、RO水を
15分間供給して流し、次いで後記表10記載の酸性水
溶液による所要時間の洗浄、RO水による90分間の水
洗、同表記載のアルカリ性水溶液による所要時間の洗
浄、RO水による90分間の水洗を順次施すことを6日間
継続したのち、その清浄度を調べた。結果を表10に示
す。なお、実施例69〜73では、ETCF(前記と同
じ)を設置した患者監視装置(日機装社製DBB−22
B)に酸性水溶液及びアルカリ性水溶液を通液した。ま
た実施例74では、ETCFを設置していない患者監視
装置(東レ社TR−230)にアルカリ性水溶液及び酸
性水溶液を通液した。各水溶液の供給量は500 ml/分
である。
【0087】
【表10】
【0088】表10に示すように、実施例69〜74の
洗浄方法を適用した透析装置及び透析液ラインは、いず
れも菌数0でエンドトキシン値が1EU/L以下とな
り、蛋白質系汚れ及び炭酸カルシウムの残留も認められ
ず、極めて清浄に維持されていることが明らかである。
ただし、これら実施例では、酸性水溶液による洗浄後に
アルカリ性水溶液による洗浄を行うため、各洗浄液の供
給及び滞留時間を長めに設定している。
【0089】実施例75〜77 実施例58〜74と同様に毎日1回の人工透析が行われ
る透析装置及び透析液ラインに、透析終了後、RO水を
15分間供給して流し、次いで後記表11記載のアルカ
リ性水溶液による所要時間の洗浄と、RO水による90分
間の水洗を施すことを6日間行った。そして、6日目の
アルカリ性水溶液による洗浄及び水洗後に、同表記載の
酸性水溶液にて所要時間の洗浄を行い、次いでRO水に
よる90分間の水洗を行ったのち、その清浄度を調べた。
結果を表11に示す。なお、各水溶液の供給量は500 m
l/分とし、ETCF(前記と同じ)を設置した患者監
視装置(日機装社製DBB−22B)に通液した。
【0090】実施例78,79 実施例58〜77と同様に毎日1回の人工透析が行われ
る透析装置及び透析液ラインに、透析終了後、RO水を
15分間供給して流し、次いで後記表12記載の酸性水
溶液による所要時間の洗浄と、RO水による90分間の水
洗を施すことを5日間行った。そして、6日目の透析終
了後に、RO水で15分間水洗し、次いで同表記載のア
ルカリ性水溶液による所要時間の洗浄を行い、RO水に
よる90分間水洗後、更に同表記載の酸性水溶液による所
要時間の洗浄を行い、RO水にて90分間の水洗を行った
のちに清浄度を調べた。結果を表12に示す。なお、各
水溶液の供給量は500 ml/分とし、ETCF(前記と
同じ)を設置した患者監視装置(日機装社製DBB−2
2B)に通液した。
【0091】
【表11】
【0092】
【表12】
【0093】表11,12に示すように、実施例75〜
79のように、アルカリ性水溶液と酸性水溶液の一方に
て毎日の洗浄を行い、週1回の割合で他方による洗浄を
行う方法であっても、各水溶液の供給及び滞留時間を充
分に長く設定することにより、透析装置及び透析液ライ
ンを極めて清浄に維持できることが明らかである。
【0094】
【発明の効果】請求項1の発明によれば、人工透析装置
とこれに連通する透析液ラインに対し、次亜塩素酸を含
まないpH9.5以上のアルカリ性水溶液による洗浄
と、pH4.0以下の酸性水溶液による洗浄とを施すこ
とから、蛋白質や脂質の如き有機物の汚れと炭酸カルシ
ウムの如き無機物の汚れを確実に除去して系内を清浄に
維持でき、しかも消毒洗浄時ならびに排水系において有
害なトリハロメタンが生成しない。
【0095】請求項2の発明によれば、上記洗浄方法に
おいて、透析終了ごとにアルカリ性水溶液による洗浄と
酸性水溶液による洗浄を行うことから、人工透析装置及
び透析液ラインに付着した汚れをより確実に除去でき
る。
【0096】請求項3の発明によれば、上記洗浄方法に
おいて、アルカリ性水溶液による洗浄後に酸性水溶液に
よる洗浄を行うことから、一般に量的に多い有機物の汚
れが先に除去され、この有機物の汚れに包まれていた炭
酸カルシウムの如き無機物の汚れが露呈し、次の酸性水
溶液による洗浄で該無機物の汚れが落ち易くなると共
に、酸性水溶液によって有機物が変性して落ちにくくな
る懸念がない。
【0097】請求項4の発明によれば、上記洗浄方法に
おいて、使用するアルカリ性水溶液が特定のアルカリ化
剤を含有することから、当該水溶液を高いpHに容易に
設定できるという利点がある。
【0098】請求項5の発明によれば、上記洗浄方法に
おいて、特定の酸性水溶液を使用することから、人工透
析装置及び透析液ラインを確実に殺菌消毒できるという
利点がある。
【0099】請求項6の発明によれば、上記洗浄方法に
おいて、アルカリ性水溶液と酸性水溶液の一方もしくは
両方に界面活性剤が配合されていることから、当該水溶
液による洗浄性がより向上するという利点がある。
【0100】請求項7の発明によれば、上記洗浄方法に
おいて、アルカリ性水溶液が酵素を含有することから、
有機物の汚れの除去性がより向上するという利点があ
る。
【0101】請求項8の発明によれば、上記洗浄方法に
おいて、アルカリ性水溶液が殺菌剤を含有することか
ら、人工透析装置及び透析液ラインをより確実に殺菌消
毒できるという利点がある。
【0102】請求項9の発明によれば、上記洗浄方法に
おいて、アルカリ性水溶液がpH緩衝剤を含有すること
から、有機物の汚れに対し、優れた除去性を持続的に発
揮できるという利点がある。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) A61L 2/20 A61L 2/20 J C11D 3/48 C11D 3/48 7/06 7/06 7/08 7/08 7/10 7/10 7/12 7/12 7/18 7/18 17/08 17/08 Fターム(参考) 4C058 AA17 BB07 CC01 CC06 JJ07 JJ08 JJ14 JJ21 4C077 AA05 BB01 CC08 EE03 GG02 GG04 GG13 JJ04 JJ12 KK09 PP21 PP28 4H003 DA20 EA02 EA16 EA20 EA21 EB07 EB13 EB15 EB16 FA28 FA29 FA34 4H011 AA02 BA06 BB06 BB18 DD01

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 人工透析装置とこれに連通する透析液ラ
    インに対し、次亜塩素酸を含まないpH9.5以上のア
    ルカリ性水溶液による洗浄と、pH4.0以下の酸性水
    溶液による洗浄とを施す人工透析装置の洗浄方法。
  2. 【請求項2】 透析終了ごとに、前記アルカリ性水溶液
    による洗浄と、前記酸性水溶液による洗浄を行う請求項
    1記載の人工透析装置の洗浄方法。
  3. 【請求項3】 前記アルカリ性水溶液による洗浄後に前
    記酸性水溶液による洗浄を行う請求項1又は2に記載の
    人工透析装置の洗浄方法。
  4. 【請求項4】 前記アルカリ性水溶液は、アルカリ金属
    水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、過酸化物アルカリ金属
    塩、金属封鎖剤アルカリ金属塩より選ばれる少なくとも
    一種を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の人工透
    析装置の洗浄方法。
  5. 【請求項5】 前記酸性水溶液は、過酢酸水溶液、酸性
    過酸化物水溶液、酸性のオゾン水、無機酸/または有機
    酸の60℃以上の加温水溶液のいずれかである請求項1
    〜4のいずれかに記載の人工透析装置の洗浄方法。
  6. 【請求項6】 前記アルカリ性水溶液と酸性水溶液の一
    方もしくは両方に界面活性剤が配合されてなる請求項1
    〜5のいずれかに記載の人工透析装置の洗浄方法。
  7. 【請求項7】 前記アルカリ性水溶液は蛋白分解酵素を
    含有する請求項1〜6のいずれかに記載の人工透析装置
    の洗浄方法。
  8. 【請求項8】 前記アルカリ性水溶液は殺菌剤を含有す
    る請求項1〜7のいずれかに記載の人工透析装置の洗浄
    方法。
  9. 【請求項9】 前記アルカリ性水溶液はpH緩衝剤を含
    有する請求項1〜8のいずれかに記載の人工透析装置の
    洗浄方法。
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