JP2002327374A - 繊維強化プラスチック用炭素繊維および繊維強化プラスチック - Google Patents

繊維強化プラスチック用炭素繊維および繊維強化プラスチック

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JP2002327374A
JP2002327374A JP2002035235A JP2002035235A JP2002327374A JP 2002327374 A JP2002327374 A JP 2002327374A JP 2002035235 A JP2002035235 A JP 2002035235A JP 2002035235 A JP2002035235 A JP 2002035235A JP 2002327374 A JP2002327374 A JP 2002327374A
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fiber
reinforced plastic
carbon fiber
tensile strength
prepreg
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JP2002035235A
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Moritomo Kozai
盛智 香西
Kenji Wada
健二 和田
Hiroyuki Takagishi
宏至 高岸
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Toray Industries Inc
Original Assignee
Toray Industries Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】本発明は、吸湿高温条件下および乾燥室温条件
下での、いずれの90゜引張強度においても、強度低下
の少ない優れた繊維強化プラスチックを提供せんとする
ものである。 【解決手段】本発明の繊維強化プラスチック用炭素繊維
は、X線光電子分光法により測定される表面比珪素濃度
Si/Cが0.001〜0.030であることを特徴と
するものであり、また、本発明の繊維強化プラスチック
は、かかる繊維強化プラスチック用炭素繊維と硬化剤と
エポキシ樹脂とを含む樹脂組成物が硬化されてなる繊維
強化プラスチックであって、かつ、乾燥室温条件下での
90°引張強度に対する吸湿高温条件下での90°引張
強度の強度比率が0.5〜0.8であることを特徴とす
るものである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、航空宇宙用途、ス
ポーツ・レジャー用途、一般産業用途などに好ましく使
用できる繊維強化プラスチックに関するものである。
【0002】
【従来の技術】強化繊維とマトリックス樹脂とからなる
繊維強化プラスチックは、その機械強度が優れているた
めに、スポーツ用途をはじめ、航空宇宙用途、一般産業
用途などで広範囲に用いられている。特に航空宇宙用途
では、航空機の1次構造材や2次構造材、衛星アンテ
ナ、ロケットの部材などが主要な用途として挙げられ、
繊維強化プラスチックの軽量化と機械強度を高めること
が必要となる。
【0003】航空宇宙用途では、強化繊維として炭素繊
維やガラス繊維、マトリックス樹脂としてはエポキシ樹
脂が主として用いられ、繊維強化プラスチックの製造に
は、繊維にマトリックス樹脂を含浸されたシート状中間
基材であるプリプレグを用いる方法が用いられることが
多い。この方法ではプリプレグを複数枚積層した後、加
熱することによって成形体が得られる。
【0004】このような航空宇宙用途では高温多湿下や
低温下などの過酷な条件での強度保持に対する要望が強
いが、そのためには過酷な条件下で使用した際の繊維強
化プラスチックの強度低下を抑えることが必要となる。
【0005】繊維強化プラスチックにおいては、強化繊
維の強度向上の努力が行われてきたため、配列された繊
維の方向(0゜方向)においては引張強度の高い繊維強
化プラスチックが得られるようになってきた。0゜引張
強度については強化繊維の引張強度が有効に利用できる
ため過酷な条件下で使用した際でも強度低下は少ない。
【0006】しかしながら、繊維強化プラスチックには
繊維方向以外の方向からも複雑に荷重が加わる。かかる
荷重に対しては、強化繊維の方向における強度特性が有
効に機能しないため、繊維方向以外の方向における繊維
強化プラスチックの強度は充分に満足されるものではな
かった。特に配列された繊維の垂直方向(90゜方向)
においては、樹脂と強化繊維との接着性が繊維強化プラ
スチックの強度を支配する。この接着性は温度や湿度に
よる影響を受けやすく、特に吸湿高温条件下での90゜
引張強度は通常、乾燥室温条件のそれに比べて大幅に低
下する問題がある。
【0007】この問題をクリアするには、航空機などに
使用する繊維強化プラスチックの量を増やすなど、何ら
かの補強手段を講じることで対処することができるが、
その場合には、前記したような軽量化と両立することは
難しくなる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、かかる従来
技術の背景に鑑み、吸湿高温条件下および乾燥室温条件
下での、いずれの90゜引張強度においても、強度低下
の少ない優れた繊維強化プラスチックを提供せんとする
ものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、かかる課題を
解決するために、次のような手段を採用する。すなわ
ち、本発明の繊維強化プラスチック用炭素繊維は、X線
光電子分光法により測定される表面比珪素濃度Si/C
が0.001〜0.030であることを特徴とするもの
であり、また、本発明の繊維強化プラスチックは、かか
る繊維強化プラスチック用炭素繊維と硬化剤とエポキシ
樹脂とを含む樹脂組成物が硬化されてなる繊維強化プラ
スチックであって、かつ、乾燥室温下の90°引張強度
に対する吸湿高温下の90°引張強度の強度比率が、
0.5〜0.8であることを特徴とするものである。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明は、前記した課題につい
て、鋭意検討し、表面処理することで、表面比珪素濃度
Si/Cを特定な繊維強化プラスチック用炭素繊維をつ
くって、これとエポキシ樹脂とを含むエポキシ樹脂組成
物をつくって、これを加熱し、硬化させて繊維強化プラ
スチックとしてみたところ、前記課題を一挙に解決する
ことを究明したものである。
【0011】すなわち、かかる特定な炭素繊維からなる
エポキシ樹脂組成物により構成された繊維強化プラスチ
ックは、その乾燥室温下の90゜引張強度に対する吸湿
高温下の90゜引張強度の強度低下が、従来になく小さ
いものを提供することができ、さらに、かかる繊維強化
プラスチックは、高温多湿下で使用したときにも、90
°引張強度に優れ、しかも、軽量であることを見いだす
に至り、本発明に到達した。
【0012】本発明の繊維強化プラスチック用炭素繊維
は、下記の表面処理をすることで、その表面比珪素濃度
Si/Cが0.001〜0.030の範囲であることが
重要であり、、好ましくは0.002〜0.020さら
に好ましくは0.002〜0.005である。かかる特
定な範囲の表面比珪素濃度を有する炭素繊維のみが、高
温多湿下でも強度低下のない優れた性質を有する軽量複
合材料素材を提供することができたものである。
【0013】炭素繊維の表面比珪素濃度Si/Cを上述
の特定な範囲のものにするためには、前記炭素繊維表面
を、何らかの処理により改質する方法を採用することが
できる。かかる炭素繊維表面の改質、特にSi/Cを低
めるための手段としては、その繊維表面をアルカリで電
解処理する方法が好ましく採用される。なお、酸で電解
処理する方法を採用すると、Si/Cを低める効果が少
ないことがあるので好ましくない場合がある。
【0014】かかる電解処理手段におけるアルカリ性の
電解液に溶存させる電解質の具体例としては、水酸化ナ
トリウム、水酸化カリウムなどの水酸化物、アンモニ
ア、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどの無機塩
類、酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウムなどの有機塩
類、さらにこれらのカリウム塩、バリウム塩又は他の金
属塩、及びアンモニウム塩、水酸化テトラエチルアンモ
ニウム又はヒドラジンなどの有機化合物が好ましく使用
されるが、樹脂の硬化に対する障害をなくす観点から、
アルカリ金属を含有しないもの、つまり炭酸アンモニウ
ム、炭酸水素アンモニウム、水酸化テトラアルキルアン
モニウム類がより好ましく使用される。
【0015】なお、酸で電解処理する方法を採用したい
場合には、電解質として、硫酸、硝酸などの無機酸、酢
酸、酪酸などの有機酸、硫酸アンモニウム、硫酸水素ア
ンモニウムなどの塩を使用することができる。
【0016】また、かかる電解処理において、通電する
電気量は、炭素繊維の炭化度に応じて最適化することが
できる。すなわち、かかる電気量としては、好ましくは
3〜500クーロン/g(g:炭素繊維の重量)、さら
に好ましくは5〜200クーロン/gの範囲とする条件
が、表層の結晶性の低下を適度に抑える観点から好まし
く採用される。
【0017】かかる電解処理の後、糸条を水洗及び乾燥
するのが良い。乾燥に際しては、温度が高過ぎると、炭
素繊維の最表面に存在する官能基が熱分解により消失し
やすいため、乾燥温度はできる限り低くするのが望まし
く、好ましくは250℃以下、さらに好ましくは220
℃以下で乾燥するのがよい。
【0018】ここで、本発明でいう炭素繊維表面の表面
比珪素濃度Si/Cは、次の手順に従ってX線光電子分
光法により求めたものである。
【0019】先ず、測定する炭素繊維束から、塩化メチ
レン、メチルエチルケトン、アセトン、エタノールなど
の溶媒で洗浄し、蒸留水で洗い流し、必要に応じて超音
波洗浄するなどしてサイジング剤などを除去後、適当な
長さにカットしてステンレス製の試料支持台上に拡げて
並べた後、下記条件にて測定できるものである。また、
プリプレグなどの中間基材に使用されている場合は、塩
化メチレン、メチルエチルケトン、アセトン、エタノー
ルなどの溶媒で樹脂を除去して炭素繊維束を取り出し同
様の方法で測定できるものである。
【0020】・光電子脱出角度:35度 ・X線源:AlKα1,2 ・試料チャンバー内真空度:1×10-8Torr 尚、測定時の帯電に伴うピークの補正は、C1Sの主ピー
クの結合エネルギー値B.E.を284.6eVに合わ
せることで実施できる。
【0021】次いで、C1sピーク面積[C1s]は、28
2〜296eVの範囲で直線のベースラインを引くこと
により求め、Si1sピーク面積[Si2P]は、98〜1
06eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより
求める。
【0022】表面比珪素濃度Si/Cは、上記Si2P
ーク面積[Si2P]、C1sピーク面積[C1s]の比、及
び装置固有の感度補正値より、次式により求めることが
できる。
【0023】 Si/C=([Si2P]/[C1s])/(感度補正値) 本発明の繊維強化プラスチック用炭素繊維は、有撚糸、
解撚糸、又は無撚糸などいずれでも良いが、解撚糸や無
撚糸が、繊維強化プラスチックの成形性と機械強度を両
立する上から好ましく使用される。さらに、本発明の炭
素繊維を繊維強化プラスチックの強化繊維として用いる
際に炭素繊維の形態や配列については限定されず、例え
ば、一方向に引き揃えられたもの、織物、ニット、不織
布、マット、および組み紐などの繊維構造物として用い
てもよい。特に本発明の炭素繊維を一方向に引き揃えて
用いる場合には繊維の引き揃え方向に対して90°の方
向の強度向上が顕著になるものである。また、本発明の
炭素繊維を織物(クロス材)として用いる場合には、平
織り、朱子織りなど、使用する部位や用途に応じて、適
宜の組織のものを自由に選択して使用することができ
る。本発明の炭素繊維は、その表面比珪素濃度Si/C
が特定の範囲であることによりマトリックス樹脂との接
着性が向上しているため、織物形態により用いた場合に
も繊維強化プラスチックの機械特性が向上し、耐衝撃性
が高めることができる。尚、本発明の強化繊維プラスチ
ックは前記した炭素繊維の他にガラス繊維、アラミド繊
維、ボロン繊維、PBO繊維、高強力ポリエチレン繊
維、アルミナ繊維、および炭化ケイ素繊維などを組み合
わせて用いることができ、これらの繊維を2種類以上混
合して用いることもできる。
【0024】本発明において、繊維強化プラスチック用
炭素繊維としては、たとえば黒鉛繊維を含み得るもので
あり、具体的には、ポリアクリロニトリル系、ピッチ
系、レーヨン系などの前駆体繊維から製造された各種の
炭素繊維を使用することができる。中でも、容易に高強
度の炭素繊維が得られるポリアクリロニトリル系繊維を
前駆体とする炭素繊維が好ましく使用される。本発明の
炭素繊維の前駆体として好適に用いることができるポリ
アクリロニトリル系の前駆体繊維は、例えば以下に述べ
る工程を経て製造することができる。
【0025】アクリロニトリルを主成分とするモノマー
から得られるポリアクリロニトリルから成る紡糸原液
を、湿式紡糸法、乾湿式紡糸法、乾式紡糸法、又は溶融
紡糸法により紡糸する。紡糸後の凝固糸を、水洗、延
伸、乾燥及び油剤付与などの製糸工程を経てアクリル系
プリカーサーを製造し、得られたアクリル系プリカーサ
ーから耐炎化、炭化などの工程を経てアクリル系炭素繊
維を得ることができる。
【0026】ここで、紡糸方法としては湿式紡糸法また
は乾湿式紡糸法が好ましく採用でき、炭素繊維の表面が
平滑な炭素繊維を得やすい点で乾湿式紡糸法がより好ま
しい。
【0027】また、湿式紡糸法または乾湿式紡糸法にお
いて、紡糸後の凝固過程における凝固速度、凝固糸の延
伸倍率などを適宜適正化することによっても、得られる
炭素繊維の表面の粗さを制御することが可能であるので
好ましい。
【0028】さらに油剤付与に用いる油剤としてはシリ
コン系油剤や非シリコン系油剤を適宜用いることができ
るが、シリコン系油剤の方が耐熱性に優れることから好
ましい。
【0029】繊維強化プラスチック用炭素繊維のストラ
ンド引張強度は3.0〜6.5GPaであることが好ま
しい。3.0GPa未満では、繊維強化プラスチックに
した場合、十分な強度が得られず、結果として軽量化の
効果が得られないことがある。また、繊維強化プラスチ
ック用炭素繊維の引張強度は最大でも6.5GPa程度
あれば、従来用いられているスポーツ用途、航空宇宙用
途、一般産業用途において高強度化および軽量化の効果
を十分に発揮することが出来る。好ましくは3.5〜
6.5GPaである。
【0030】さらに繊維強化プラスチック用炭素繊維の
ストランド引張弾性率は200〜500GPaであるこ
とが好ましい。200GPa未満では、繊維強化プラス
チックにした場合、十分な剛性が得られず、結果として
軽量化の効果が得られないことがある。また、繊維強化
プラスチック用炭素繊維の引張弾性率は最大でも500
GPa程度あれば、従来用いられているスポーツ用途、
航空宇宙用途、一般産業用途において十分な剛性が得ら
れ、軽量化の効果を発揮することが出来る。好ましくは
230〜500GPaである。
【0031】また、繊維強化プラスチック用炭素繊維に
は取り扱い性や耐擦過性を良好にするためにサイジング
剤を付着させるのが一般的であり、本発明においてもエ
ポキシ樹脂などを含む公知のサイジング剤を適宜使用で
きる。特に多官能エポキシを含むサイジング剤は炭素繊
維とマトリックス樹脂との接着性が良好となることから
より好ましい。
【0032】本発明の繊維強化プラスチックにおいて、
マトリックス樹脂を構成するエポキシ樹脂組成物は、前
記炭素繊維の他に、少なくともエポキシ樹脂と硬化剤を
含んでいることが肝要である。
【0033】かかるエポキシ樹脂としては、分子内に複
数のエポキシ基を有する化合物が用いられる。特にアミ
ン類、フェノール類、炭素−炭素二重結合を有する化合
物が好ましく用いられる。例えば、ビスフェノールA型
エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビス
フェノールS型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノ
ールA型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ
樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾー
ルノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキ
シ樹脂、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、
トリグリシジルアミノフェノール、テトラグリシジルキ
シレンジアミンのようなグリシジルアミン型エポキシ樹
脂等あるいはこれらの組み合わせが好適に用いられる。
【0034】かかるエポキシ樹脂組成物に使用される硬
化剤としては、エポキシ基と反応し得る活性基を有する
化合物であれば用いることができるが、アミノ基、酸無
水物基、アジド基を有する化合物が、好ましくは使用さ
れる。具体的には、ジシンジアミド、ジアミノジフェニ
ルスルホンの各種異性体、アミノ安息香酸エステル類が
好ましく使用される。
【0035】かかるエポキシ樹脂組成物に、上記のエポ
キシ樹脂、硬化剤の他、高分子化合物、有機又は無機の
粒子など、他の成分を、適宜、その目的に応じて配合す
ることができる。
【0036】かかる高分子化合物としては、熱可塑性樹
脂が好ましく用いられる。かかる熱可塑性樹脂を配合す
ることにより、前記樹脂組成物の粘度やプリプレグの取
り扱い性の適性化、あるいは、接着性を改善する効果を
増進する作用がある。
【0037】かかる熱可塑性樹脂としては、主鎖に、炭
素−炭素結合、アミド結合、イミド結合、エステル結
合、エーテル結合、カーボネート結合、ウレタン結合、
尿素結合、チオエーテル結合、スルホン結合、イミダゾ
ール結合、カルボニル結合から選ばれる結合を有する熱
可塑性樹脂が好ましく使用される。これら熱可塑性樹脂
の中でも、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリアラミ
ド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリフェニレン
スルフィド、ポリベンズイミダゾール、ポリイミド、ポ
リエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホ
ンのようなエンジニアリングプラスチックに属する熱可
塑性樹脂の一群がより好ましく使用される。特に好まし
くは、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホ
ン、ポリエーテルスルホンなどが、耐熱性にも優れるこ
とから好適に使用される。
【0038】かかる熱可塑性樹脂の配合量は、エポキシ
樹脂組成物における全エポキシ樹脂100重量%に対し
て、好ましくは1〜20重量%配合するのが、エポキシ
樹脂組成物に適度な粘弾性を与え、得られる繊維強化プ
ラスチックの機械強度を高める作用を有するのでよい。
【0039】また、かかるエポキシ樹脂組成物に配合す
る有機粒子としては、ゴム粒子及び熱可塑性樹脂粒子が
好ましく用いられる。これらの粒子は、樹脂の靭性向
上、繊維強化プラスチック製部材の耐衝撃性向上の効果
を有する。
【0040】さらに、かかるゴム粒子としては、架橋ゴ
ム粒子、及び架橋ゴム粒子の表面に異種ポリマーをグラ
フト重合したコアシェルゴム粒子が好ましく用いられ
る。
【0041】市販の架橋ゴム粒子としては、カルボキシ
ル変性のブタジエン−アクリロニトリル共重合体の架橋
物からなるXER−91(型番、日本合成ゴム工業
(株)製)、アクリルゴム微粒子からなるCX−MNシ
リーズ(型番、日本触媒(株)製)、YR−500シリ
ーズ(型番、東都化成(株)製)などを使用することが
できる。
【0042】市販のコアシェルゴム粒子としては、ブタ
ジエン・メタクリル酸アルキル・スチレン共重合体から
なるパラロイドEXL−2655(登録商標、呉羽化学
工業(株)製)、アクリル酸エステル・メタクリル酸エ
ステル共重合体からなるスタフィロイドAC−335
5、TR−2122(登録商標、型番、武田薬品工業
(株)製)、アクリル酸ブチル・メタクリル酸メチル共
重合体からなるPARALOIDEXL−2611、E
XL−3387(登録商標、型番、Rohm & Haas社製)
などを使用することができる。
【0043】また、熱可塑性樹脂粒子としては、ポリア
ミドあるいはポリイミドの粒子が好ましく用いられる。
市販のポリアミド粒子としては、東レ(株)製、型番S
P−500、ATOCHEM社製、オルガソール(登録
商標)などを使用することができる。
【0044】また、かかるエポキシ樹脂組成物に配合す
る無機粒子としては、シリカ、アルミナ、スメクタイ
ト、合成マイカなどを、好ましく使用することができ
る。これらの無機粒子は、主としてレオロジー制御、す
なわち、増粘や揺変性付与するために配合されるもので
ある。
【0045】さらに本発明の繊維強化プラスチックにお
いて、繊維強化プラスチック中の炭素繊維含有率が40
〜90重量%であることが好ましい。炭素繊維含有率が
40%未満では必要な強度を得るための繊維強化プラス
チックの量が増加し、軽量化の効果が十分でないことが
ある。炭素繊維含有率が90%を越えると、炭素繊維に
対するエポキシ樹脂組成物量が少なくなるために繊維強
化プラスチック中にボイド(空隙)が生じやすく、その
結果、繊維強化プラスチックの強度が低下することがあ
る。尚、繊維強化プラスチック中の炭素繊維の含有率
(重量%)は、例えば還元炎により樹脂硬化物を焼きと
ばし炭素繊維の質量を求める燃焼法や濃硫酸により樹脂
硬化物を除去し炭素繊維の質量を求める硫酸分解法によ
って求めることができる。燃焼時に炭化物の残る樹脂な
どは硫酸分解法により求めることが好ましい。また、中
間基材としてプリプレグを用いる場合には、プリプレグ
の重量(W1)とプリプレグ中の炭素繊維をメチルチル
ケトンなどの有機溶剤で抽出したときの炭素繊維の重量
(W2)から次式 (W2/W1)×100で算出する
方法などにより繊維強化プラスチック中の炭素繊維の含
有量を概算することが可能である。
【0046】本発明の繊維強化プラスチックは、前記繊
維強化プラスチック用炭素繊維とかかるエポキシ樹脂組
成物を、加熱、硬化して得られるものであり、かつ乾燥
室温下の90゜引張強度に対する吸湿高温下の90゜引
張強度の強度比率が、0.5〜0.8の範囲にあること
が重要であり、好ましくは0.55〜0.8、より好ま
しくは0.6〜0.8の範囲にあることが特徴的であ
る。かかる強度比率が0.5未満であると、高温・多湿
条件下で破損され易くなり、0.8以上を越えると、前
記炭素繊維とマトリックス樹脂との接着性(以下、単に
接着性と略記する)が過大となる傾向があり、繊維強化
プラスチックの0゜引張強度が低下する場合がある。
【0047】ここでいう吸湿高温下の90゜引張強度と
は、水分率を0.7〜1.4%とした繊維強化プラスチ
ックを用いて温度75〜95℃、湿度40〜60%の雰
囲気下で、ASTM D3039に基づいて90°引張
強度を測定することにより求められる。尚、繊維強化プ
ラスチックの水分率を0.7〜1.4%とするには、7
1℃の温水に2週間浸水するなどの方法によることがで
きる。
【0048】また、乾燥室温下の90゜引張強度は温度
18〜28℃、湿度40〜60%の雰囲気で、水分率
0.01〜0.4%の繊維強化プラスチックを用いて、
ASTM D3039に基づいて、90°引張試験を行
ったときの強度である。尚、繊維強化プラスチックの水
分率は測定用サンプルを室温で48時間静置し、その水
分率を0.01〜0.4%とすることができる。
【0049】このように求めた吸湿高温下の90°引張
強度を乾燥室温下の90°引張強度で除した値を乾燥室
温下の90°引張強度に対する吸湿高温下の90°引張
強度の強度比率とする。
【0050】尚、水分率とは100℃雰囲気下で2時間
乾燥させたサンプルの重量(W3)を基準とし、各測定
雰囲気下での重量(W4)から次式、((W4−W3)
/W3)×100で求めることができる。
【0051】かかる繊維強化プラスチックの吸湿高温下
の90゜引張強度と乾燥室温下の90゜引張強度との強
度比率は、前記炭素繊維の表面比珪素濃度Si/C(以
下Si/Cと略記)を低めると、向上させることができ
る。すなわち、Si/Cが高すぎる場合、本発明の効果
は得られない。これは、繊維強化プラスチックに使用す
る前記炭素繊維表面に存在するSiが、吸湿・高温条件
下で、強化繊維とマトリックス樹脂との接着性を低下さ
せるためだと考えられる。
【0052】本発明のかかる繊維強化プラスチックの製
造には、その目的に応じて各種の方法が用いられる前述
したようなエポキシ樹脂組成物を、繊維強化プラスチッ
ク用炭素繊維に含浸させてプリプレグを作成し、これを
積層し、積層物に圧力を付与しながら樹脂を加熱し硬化
させて繊維強化プラスチックを製造する方法を採用する
のが、取り扱い容易性、成形時の利便性などの観点から
好ましい。
【0053】かかるプリプレグは、マトリックス樹脂
を、メチルエチルケトン、メタノール、溶媒に溶解さ
せ、低粘度化し、繊維強化プラスチック用炭素繊維に含
浸させるウエット法と、加熱により低粘度化し、繊維強
化プラスチック用炭素繊維に含浸させるホットメルト法
などの方法により製造することができる。
【0054】ウエット法は、繊維強化プラスチック用炭
素繊維を樹脂組成物からなる溶液に浸漬した後に引き上
げ、オーブンなどを用いて加熱しながら溶媒を蒸発させ
てプリプレグを得る方法である。
【0055】ホットメルト法には、加熱により低粘度化
した樹脂組成物を、直接、繊維強化プラスチック用炭素
繊維に含浸させる方法、あるいは、一旦、前記樹脂組成
物を離型紙などの上にコーティングしたフィルムを作成
しておき、ついで、繊維強化プラスチック用炭素繊維の
両側あるいは片側から、かかるフィルムを重ね、加熱す
ることにより、樹脂組成物を含浸させて、プリプレグと
する方法など使用することができる。中でも、ホットメ
ルト法が、溶媒をプリプレグ中に、実質的に残留させな
いことから好ましく採用される。
【0056】積層したプリプレグに熱及び圧力を付与す
る方法には、プレス成形法、オートクレーブ成形法、バ
ッギング成形法、ラッピングテープ法、内圧成形法など
がある。特に航空機用途品に関しては、オートクレーブ
成形法、バッギング成形法が好ましく採用される。また
スポーツ用途品に関しては、ラッピングテープ法、内圧
成形法が好ましく採用される。
【0057】オートクレーブ成形法は成形型にプリプレ
グを適宜積層し、ナイロンバッグ等で積層対全体を覆
い、バッグ内を真空引きした状態でオートクレーブに入
れて樹脂を加熱硬化させた後、成形型から外すことで必
要な繊維強化プラスチック製部材を得る方法であり、車
両や航空機用部材などの比較的大型の部材を得るのに適
している。
【0058】ラッピングテープ法は、マンドレルなどの
芯金にプリプレグを巻いて、管状体を成形する方法であ
り、ゴルフクラブ用シャフト、釣り竿などの棒状体を作
製する際に好適である。具体的には、マンドレルにプリ
プレグを巻き付け、プリプレグの固定及び圧力付与のた
めに、プリプレグの外側に熱可塑性樹脂フィルムからな
るラッピングテープを巻き付け、オーブン中で樹脂を加
熱硬化させた後、芯金を抜き去ることで繊維強化プラス
チック製管状体を得ることができる。
【0059】内圧成形法では、熱可塑性樹脂のチューブ
などの内圧付与体にプリプレグを巻きつけたプリフォー
ムを金型中にセットし、次いで内圧付与体に高圧の気体
を導入して圧力をかけると同時に金型を加熱することに
よって繊維強化プラスチック製管状体を成形することが
できる。
【0060】加熱硬化温度や時間は用いる樹脂組成物に
応じて適宜選択することができる。例えば、硬化剤とし
てジアミノジフェニルスルホンやm−フェニレンジアミ
ンなどを用いる場合は170〜190℃が好ましく、硬
化剤としてジシアンジアミドを、さらに3−(3,4−
ジクロロフェニル)を硬化助剤として用いる場合は12
0〜140℃が好ましく用いられることがある。
【0061】また、本発明の繊維複合材料を得る方法と
しては、プリプレグを用いて得る方法の他に、ハンドレ
イアップ、RTM、SCRIMP(登録商標)、フィラ
メントワインディング、プルトルージョン、レジンフィ
ルムインフュージョンなどの成形法を目的に応じて選択
し適用することが出来る。
【0062】さらに、用途に応じて適当なストランド弾
性率の本発明の炭素繊維を用いることができる。また本
発明の炭素繊維によりJIS K7079記載の方法に
より測定される面内剪断強度、JIS K7077記載
の方法により測定されるシャルピー衝撃試験強度、層間
強度なども向上することができる。
【0063】
【実施例】以下、本発明を実施例により、さらに詳細に
説明する。
【0064】実施例における、炭素繊維、樹脂組成物、
プリプレグの作成、各物性の測定方法については、次に
示す方法で行った。 (1)炭素繊維の作製 アクリロニトリル99.8mol%とイタコン酸0.2
mol%からなる共重合体を紡糸原液として用い、乾湿
式紡糸法により単糸繊度1.1dtex、フィラメント
数12000のアクリル系プリカーサーを得た。紡糸後
の繊維プリカーサーには1重量%の油剤を付着した。得
られたプリカーサーを230〜270℃の空気中で延伸
比1.15%で加熱処理し、耐炎化繊維を得た。つい
で、窒素雰囲気中300〜900℃の温度領域での昇温
速度を250℃/分とし、さらに1400℃まで焼成す
ることで炭素繊維束を得た。得られた炭素繊維束に下記
実施例、比較例で記載する表面処理を行った。表面処理
に際し、アルカリ性電解液には2wt%の炭酸アンモニ
ウム水溶液を、酸性電解液には10wt%の硫酸水溶液
を用いた。その後、多官能エポキシ樹脂からなるサイジ
ング剤を浸積法により付与し、サイジング付着量0.8
%の炭素繊維を得た。 (2)樹脂組成物の作製 下記原料をニーダーで混合して樹脂組成物を得た。 ビスフェノールF型エポキシ樹脂 15重量部 (EPICLON(登録商標)830、大日本インキ化学工業(株)製) ビスフェノールA型エポキシ樹脂 35重量部 (エピコート(登録商標)825、油化シェルエポキシ(株)製) 多官能グリシジルアミン型エポキシ樹脂 50重量部 (スミ−エポキシ(登録商標)ELM−434、住友化学工業(株)製) ポリエーテルスルホン 15重量部 (‘VICTREX’(登録商標)PES 5003P、ICI PLC製) ジアミノジフェニルスルホン 45重量部 (スミキュアーS、登録商標、住友化学工業(株)製) (3)プリプレグの作製 樹脂組成物をリバースロールコーターを用いて離型紙上
に塗布し、樹脂目付52g/m2の樹脂フィルムを作製
した。次に、この樹脂フィルム2枚を、シート状に一方
向に整列させた炭素繊維の両側から挟み込むようにして
重ね合わせ、加圧しながら加熱して炭素繊維に樹脂を含
浸させ、炭素繊維目付195g/m2の一方向プリプレ
グを得た。 (4)繊維強化プラスチック製部材の90°引張強度試
験片の作製 一方向プリプレグを12枚積層して得られる一方向複合
材料から、オートクレーブ中で温度180℃、圧力29
0Paで2時間加熱して硬化させて、幅25.4mm、
長さ250mm、厚み2.3mmの試験片を90゜方向
が長手方向になるようにサンプルを作製した。 (5)繊維強化プラスチック製部材の90°引張強度 吸湿高熱下の90゜引張強度は測定に先立ち、上記サン
プルを71℃の温水に2週間浸水し、試験片の水分率を
0.7〜1.4%とした。乾燥室温下の90゜引張強度
はサンプルを室温(24℃、湿度50%)で48時間静
置し、試験片の水分率を0.01〜0.4%とした。こ
れらのサンプルを使用してASTM D3039に従い
引張試験を行い、90゜引張強度を測定した。なお、吸
湿高温下の90゜引張強度は75〜95℃、湿度40〜
60%の雰囲気で、また乾燥室温下の90゜引張強度は
18〜28℃、湿度40〜60%の雰囲気で測定した。
また、ヘッド速度は2mm/minとした。 (6)炭素繊維のストランド引張強度、ストランド引張
弾性率 測定する炭素繊維に、ユニオンカーバイド(株)製 、
ベークライト(登録商標)ERL−4221を1000
g(100重量部)、三フッ化ホウ素モノエチルアミン
(BF3・MEA)を30g(3重量部)及びアセトン
を40g(4重量部)混合した樹脂組成物を含浸させ、
次に130℃で、30分間加熱し、硬化させ、樹脂含浸
ストランドを得た。樹脂含浸ストランド試験法(JIS
R7601)に従い、引張強度と引張弾性率を求め
た。 (7)炭素繊維の引張伸度 JIS R7601に基づいて測定した。 (8)炭素繊維表面の表面比珪素濃度Si/C 表面比珪素濃度Si/Cは、次の手順に従ってX線光電
子分光法により求めた。 先ず、測定する炭素繊維束か
ら、濃硫酸で1回、蒸留水で10回洗浄、乾燥すること
でサイジング剤などを除去後、適当な長さにカットして
ステンレス製の試料支持台上に拡げて並べた後、下記条
件にて測定した。
【0065】・光電子脱出角度:35度 ・X線源:AlKα1,2 ・試料チャンバー内真空度:1×10-8Torr 次に、測定時の帯電に伴うピークの補正のため、C1S
主ピークの結合エネルギー値B.E.を284.6eV
に合わせた。
【0066】次いで、C1sピーク面積[C1s]は、28
2〜296eVの範囲で直線のベースラインを引くこと
により求め、Si1sピーク面積[Si2P]は、98〜1
06eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより
求めた。
【0067】表面比珪素濃度Si/Cは、上記Si2P
ーク面積[Si2P]、C1sピーク面積[C1s]の比、及
び装置固有の感度補正値より、次式により求めた。
【0068】 Si/C=([Si2P]/[C1s])/(感度補正値) なお、ここでは、測定装置として米国SSI社製モデル
SSX-100-206を用いた。この装置固有のC1sピーク面積
に対するSi2Pピーク面積の感度補正値kは0.85で
あった。
【0069】実施例1 アルカリ性電解液中、10クーロン/gで表面処理した
炭素繊維を用いて、前記した方法に従い、繊維方向にお
けるストランド引張強度が4.9GPa、ストランド引
張弾性率が240GPaの炭素繊維を用い、マトリック
ス樹脂の含有率を35重量%としてプリプレグを作製し
た。このプリプレグの取り扱い性および品位は良好であ
った。このプリプレグを加熱し硬化させて得られた繊維
強化プラスチックの乾燥室温下の90゜引張強度、吸湿
高温下の90゜引張強度を表1に示す。得られた繊維強
化プラスチックの炭素繊維含有率は硫酸分解法により測
定すると67重量%であった。
【0070】実施例2 アルカリ性電解液中、80クーロン/gで表面処理した
炭素繊維を用いて、前記した方法に従い、繊維方向にお
けるストランド引張強度が4.9GPa、ストランド引
張弾性率が240GPaの炭素繊維を用い、マトリック
ス樹脂の含有率を35重量%としてプリプレグを作製し
た。このプリプレグの取り扱い性および品位は良好であ
った。このプリプレグを加熱し硬化させて得られた繊維
強化プラスチックの乾燥室温下の90゜引張強度、吸湿
高温下の90゜引張強度を表1に示す。得られた繊維強
化プラスチックの炭素繊維含有率は硫酸分解法により測
定すると67重量%であった。
【0071】実施例3 アルカリ性電解液中、120クーロン/gで表面処理し
た炭素繊維を用いて、前記した方法に従い、繊維方向に
おけるストランド引張強度が4.9GPa、ストランド
引張弾性率が240GPaの炭素繊維を用い、マトリッ
クス樹脂の含有率を35重量%としてプリプレグを作製
した。このプリプレグの取り扱い性および品位は良好で
あった。このプリプレグを加熱し硬化させて得られた繊
維強化プラスチックの乾燥室温下の90゜引張強度、吸
湿高温下の90゜引張強度を表1に示す。得られた繊維
強化プラスチックの炭素繊維含有量は硫酸分解法により
測定すると67重量%であった。
【0072】実施例4 アルカリ性電解液中、600クーロン/gで表面処理し
た炭素繊維を用いて、前記した方法に従い、繊維方向に
おけるストランド引張強度が3.3GPa、ストランド
引張弾性率が240GPaの炭素繊維を用い、マトリッ
クス樹脂の含有率を35重量%としてプリプレグを作製
した。表面処理が強かったため、従来の処理時に比べて
炭素繊維のストランド引張強度が低下したが、その他の
特性に変化はなかった。このプリプレグの取り扱い性お
よび品位は良好であった。このプリプレグを加熱し硬化
させて得られた繊維強化プラスチックの乾燥室温下の9
0゜引張強度、吸湿高温下の90゜引張強度を表1に示
す。得られた繊維強化プラスチックの炭素繊維含有量は
硫酸分解法により測定すると67重量%であった。
【0073】実施例5 アルカリ性電解液中、80クーロン/gで表面処理した
炭素繊維を用いて、前記した方法に従い、繊維方向にお
けるストランド引張強度が4.0GPa、ストランド引
張弾性率が230GPaの炭素繊維を用い、マトリック
ス樹脂の含有率を35重量%としてプリプレグを作製し
た。このプリプレグの取り扱い性および品位は良好であ
った。このプリプレグを加熱し硬化させて得られた繊維
強化プラスチックの乾燥室温下の90゜引張強度、吸湿
高温下の90゜引張強度を表1に示す。得られた繊維強
化プラスチックの炭素繊維含有率は硫酸分解法により測
定すると67重量%であった。
【0074】実施例6 アルカリ性電解液中、80クーロン/gで表面処理した
炭素繊維を用いて、前記した方法に従い、繊維方向にお
けるストランド引張強度が6.0GPa、ストランド引
張弾性率が300GPaの炭素繊維を用い、マトリック
ス樹脂の含有率を35重量%としてプリプレグを作製し
た。このプリプレグの取り扱い性および品位は良好であ
った。このプリプレグを加熱し硬化させて得られた繊維
強化プラスチックの乾燥室温下の90゜引張強度、吸湿
高温下の90゜引張強度を表1に示す。得られた繊維強
化プラスチックの炭素繊維含有率は硫酸分解法により測
定すると67重量%であった。
【0075】実施例7 酸性電解液中、15クーロン/gで表面処理した炭素繊
維を用いて、前記した方法に従い、繊維方向におけるス
トランド引張強度が5.5GPa、ストランド引張弾性
率が290GPaの炭素繊維を用い、マトリックス樹脂
の含有率を35重量%としてプリプレグを作製した。こ
のプリプレグの取り扱い性および品位は良好であった。
このプリプレグを加熱し硬化させて得られた繊維強化プ
ラスチックの乾燥室温下の90゜引張強度、吸湿高温下
の90゜引張強度を表1に示す。得られた繊維強化プラ
スチックの炭素繊維含有率は硫酸分解法により測定する
と67重量%であった。
【0076】実施例8 アルカリ性電解液中、80クーロン/gで表面処理した
炭素繊維を用いて、前記した方法に従い、繊維方向にお
けるストランド引張強度が3.8GPa、ストランド引
張弾性率が590GPaの炭素繊維を用い、マトリック
ス樹脂の含有率を35重量%としてプリプレグを作製し
た。このプリプレグの取り扱い性および品位は良好であ
った。このプリプレグを加熱し硬化させて得られた繊維
強化プラスチックの乾燥室温下の90゜引張強度、吸湿
高温下の90゜引張強度を表1に示す。得られた繊維強
化プラスチックの炭素繊維含有率は硫酸分解法により測
定すると67重量%であった。
【0077】比較例1 アルカリ性電解液中、0クーロン/gで表面処理した炭
素繊維を用いて、前記した方法に従い、繊維方向におけ
るストランド引張強度が4.9GPaの炭素繊維を用
い、マトリックス樹脂の含有率を35重量%としてプリ
プレグを作製した。このプリプレグの取り扱い性および
品位は良好であった。このプリプレグを加熱し硬化させ
て得られた繊維強化プラスチックの乾燥室温下の90゜
引張強度、吸湿高温下の90゜引張強度を表2に示す。
得られた繊維強化プラスチックの炭素繊維含有量は硫酸
分解法により測定すると67重量%であった。
【0078】比較例2 酸性電解液中、2クーロン/gで表面処理した炭素繊維
を用いて、前記した方法に従い、繊維方向におけるスト
ランド引張強度が4.9GPaの炭素繊維を用い、マト
リックス樹脂の含有率を35重量%としてプリプレグを
作製した。このプリプレグの取り扱い性および品位は良
好であった。このプリプレグを加熱し硬化させて得られ
た繊維強化プラスチックの乾燥室温下の90゜引張強
度、吸湿高温下の90゜引張強度を表2に示す。得られ
た繊維強化プラスチックの炭素繊維含有量は硫酸分解法
により測定すると67重量%であった。
【0079】比較例3 表面処理を全くしていない炭素繊維を用いて、前記した
方法に従い、繊維方向におけるストランド引張強度が
4.9GPaの炭素繊維を用い、マトリックス樹脂の含
有率を35重量%としてプリプレグを作製した。このプ
リプレグの取り扱い性および品位は良好であった。この
プリプレグを加熱し硬化させて得られた繊維強化プラス
チックの乾燥室温下の90゜引張強度、吸湿高温下の9
0゜引張強度を表2に示す。得られた繊維強化プラスチ
ックの炭素繊維含有量は硫酸分解法により測定すると6
7重量%であった。
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
【0082】表1、表2から明らかなように、実施例1
〜4の、表面比珪素濃度Si/Cを0.001〜0.0
30とした繊維強化プラスチック用炭素繊維と硬化剤と
エポキシ樹脂とを少なくとも含む樹脂組成物を硬化され
てなる繊維強化プラスチックは、前述の乾燥室温下の9
0°引張強度に対する吸湿高温下の90°引張強度の強
度比率が、0.5〜0.8となり、かかる繊維強化プラ
スチックでは、乾燥室温下の90゜引張強度に対する吸
湿高温下の90゜引張強度の強度低下が、従来になく小
さいものを提供することができることがわかる。
【0083】また本発明の繊維強化プラスチック用炭素
繊維を用いて得られたプリプレグの取り扱い性および品
位は良好であった。
【0084】
【発明の効果】本発明によれば、乾燥・室温条件下だけ
でなく、吸湿・高温条件下であっても強度低下が少な
く、優れた90゜引張強度を有する繊維強化プラスチッ
クを提供することができるので、航空宇宙用途では、主
翼、尾翼、フロアビームなどの航空機一次構造材、フラ
ップ、エルロン、カウル、フェアリング、内装材などの
二次構造材、ロケットモーターケース、人工衛星構造材
など、さらにまた、スポーツ用途では、ゴルフシャフ
ト、釣り竿、テニス、バドミントン、スカッシュなどの
ラケット、ホッケーなどのスティック、スキーポールな
ど、さらに、一般産業用途では、自動車、船舶、鉄道車
両などの移動体の構造材、ドライブシャフト、板バネ、
風車ブレード、圧力容器、フライホイール、製紙用ロー
ラ、屋根材、ケーブル、補強筋、補修補強材料などの土
木・建築材料などに好ましく用いられる素材を提供する
ことができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) D06M 13/268 C08L 63:00 Z 15/53 D06M 101:40 // C08L 63:00 7/00 A D06M 101:40 Fターム(参考) 4F072 AA04 AA08 AB10 AB29 AD23 AE01 AG03 AH02 AK14 AL02 AL04 4L031 AA27 BA10 BA12 BA16 CA01 CB10 4L033 AA09 AB01 AC11 AC15 BA31 CA48 CA49 4L037 AT03 AT05 CS03 FA01 FA05 FA08 FA10 PA55 PC11 PS02 PS12 UA12

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 X線光電子分光法により測定される表面
    比珪素濃度Si/Cが0.001〜0.030であるこ
    とを特徴とする繊維強化プラスチック用炭素繊維。
  2. 【請求項2】ストランド引張強度が3.0〜6.5GP
    aである請求項1に記載の繊維強化プラスチック用炭素
    繊維。
  3. 【請求項3】ストランド引張弾性率が200〜500G
    Paである請求項1または2に記載の繊維強化プラスチ
    ック用炭素繊維。
  4. 【請求項4】請求項1〜3のいずれかに記載の繊維強化
    プラスチック用炭素繊維を硬化剤とエポキシ樹脂とを少
    なくとも含む樹脂組成物に含浸させてなることを特徴と
    するプリプレグ。
  5. 【請求項5】 請求項1〜3のいずれかに記載の繊維強
    化プラスチック用炭素繊維と、硬化剤とエポキシ樹脂と
    を少なくとも含む樹脂組成物が硬化されてなる繊維強化
    プラスチックであって、かつ、乾燥室温下の90°引張
    強度に対する吸湿高温下の90°引張強度の強度比率
    が、0.5〜0.8であることを特徴とする繊維強化プ
    ラスチック。
  6. 【請求項6】 繊維強化プラスチック中の炭素繊維含有
    率が40〜90重量%である請求項5に記載の繊維強化
    プラスチック。
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