JP2002324929A - トンネル磁気抵抗効果素子 - Google Patents

トンネル磁気抵抗効果素子

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JP2002324929A
JP2002324929A JP2001129591A JP2001129591A JP2002324929A JP 2002324929 A JP2002324929 A JP 2002324929A JP 2001129591 A JP2001129591 A JP 2001129591A JP 2001129591 A JP2001129591 A JP 2001129591A JP 2002324929 A JP2002324929 A JP 2002324929A
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tunnel
oxide
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tunnel barrier
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Kazuhisa Okano
一久 岡野
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    • H01FMAGNETS; INDUCTANCES; TRANSFORMERS; SELECTION OF MATERIALS FOR THEIR MAGNETIC PROPERTIES
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 トンネルバリア層の膜厚を極薄くした際に
も、スピン散乱の要因となる酸化物強磁性層の生成を回
避しつつ、トンネルバリア層自体には十分な酸化処理を
施すことが可能な新規な素子構成を有するトンネル磁気
抵抗効果素子と、その製造方法の提供。 【解決手段】 トンネルバリア層3をトンネル接合を構
成する下部強磁性層5と上部強磁性層2との間に挟む構
造とする際、トンネルバリア層3は、下部強磁性層5上
に酸素透過防止層4、高スピン分極率膜(酸化物磁性体
層)8を設けた後、トンネルバリア層3用の酸化物膜、
酸化により前記酸化物膜となる原材料膜を積層した上、
追酸化または酸化処理を施して作製するトンネル磁気抵
抗効果素子とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、トンネルバリア層
として酸化膜を用いるトンネル磁気抵抗効果素子と、そ
の製造方法に関し、より具体的には、磁気ヘッド、ラン
ダムアクセスメモリ、磁気センサなどに利用可能な、ト
ンネル磁気抵抗効果を用いる磁気抵抗素子において、高
いトンネル磁気抵抗率を維持しつつ、トンネル接合にお
ける接合抵抗の低減が可能な構造を有する素子と、かか
る構造の作製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】トンネル磁気抵抗効果素子は、例えば、
保磁力の異なる一対の磁性層の間に、薄い絶縁膜が挟さ
まれた積層構造に構成され、この薄い絶縁膜をトンネル
効果により透過して流れる電流は、それを挟んでいる二
つの磁性層の磁化方向に依存して変化する現象、すなわ
ち、この積層構造を有する素子の電気抵抗値が変化する
磁気抵抗効果を利用したものである。例えば、磁気記録
装置の一構成要素である磁気ヘッドや磁気ランダムアク
セスメモリ、磁気センサなどに、応用が図られつつあ
る。
【0003】従来より、磁気ランダムアクセスメモリに
構成すると、磁気抵抗効果を利用した磁性薄膜メモリ
は、記録した情報の読み出しに際して、半導体メモリと
同様に電気的手段のみで情報のアクセスができ、移動部
のない固体メモリとして利用できる利点が知られてい
る。加えて、この磁性薄膜メモリは、電源が遮断されて
も、一旦記録した情報が消失しない、さらに、半導体メ
モリとは異なり、放射線が入射しても情報が消失する危
険性がない、また、本質的に情報の繰り返し書き換え回
数に制限がない等の特長を有しており、従来の半導体メ
モリと比較しても、固体メモリとして有利な点を数多く
持っている。
【0004】中でも、トンネル磁気抵抗(TMR;Tunn
el Magneto Resistive)効果を利用した磁性薄膜メモリ
は、従来の異方性磁気抵抗効果、巨大磁気抵抗効果を利
用した磁性薄膜メモリと比較して、大きな出力を得るこ
とができる利点のため、特に、高密度の磁気ランダムア
クセスメモリへの応用が注目され、最近において、多く
の提案がなされている。
【0005】トンネル磁気抵抗効果を利用した磁性薄膜
メモリでは、二つの強磁性体層の間に、薄い絶縁層(ト
ンネルバリア層)を設けて、電圧を印加すると、電子が
トンネル効果によってトンネルバリア層を貫通して、ト
ンネル電流を発生するが、その際、二つの強磁性層のス
ピン分極率の差に起因して、トンネル電流の大きさに差
異が生じる現象、すなわち、磁気抵抗変化を利用して、
情報の記録をしている。具体的には、検出されるトンネ
ル電流の大きさは、二つの強磁性体層の磁化が、相対的
に平行か、反平行かに依存している。
【0006】図4に、従来のトンネル磁気抵抗効果を利
用した磁性薄膜メモリ(磁気抵抗素子)の基本的構成の
一例を模式的に示す。図4に示す従来の構成例では、ス
ピン分極率が互いに異なる二つの強磁性体層11、13
間に、トンネルバリア層12を挟み込んだ積層構造をと
り、二つの強磁性体層は、その磁化方向は、面内方向と
なっている。
【0007】図4に示す構成の磁性薄膜メモリ(磁気抵
抗素子)において、強磁性体層11,13間に、電圧1
4を印加すると、一方の強磁性体層13からの電子がト
ンネルバリア層12を貫通して他方の強磁性体層11に
進入してトンネル電流を発生させる。このトンネル電流
の大きさは、勿論、印加電圧に依存するものの、トンネ
ルが起こる確率は、強磁性体層11、13の両層の磁化
の状態に依存する。磁気抵抗素子の抵抗として捉える
と、磁化の方向が、両層で相対的に平行のとき、最小の
抵抗値をとり、反平行のとき最大の抵抗値をとる。この
トンネル磁気抵抗効果の現象は、強磁性体層11、13
が面内磁気異方性を持つ場合だけでなく、垂直磁気異方
性を持つ場合でも同様に起こることが確認されている
(日本応用磁気学会誌 24, 563−566 (2
000))。また、このトンネル磁気抵抗効果を利用し
た磁性薄膜メモリの実用化の試みとして、MRAM(Ma
gneticRandom Access Memory)と呼ばれる不揮発性の磁
気記憶装置が、日経マイクロデバイス P16,P17
2000年3月号などに紹介されている。
【0008】図7は、従来の磁性薄膜メモリを構成す
る、トンネル磁気抵抗効果素子の構造を模式的に示す図
である。トンネル磁気抵抗効果素子は、集積化を図る目
的のため基板上に形成されており、また、基板表面に対
する位置関係を示すため、基板に近い側を下部、遠い側
を上部と定義した上で、上部強磁性層と下部強磁性層、
ならびに、上部電極と下部電極と、トンネルバリア層を
挟む二つの強磁性体層、それに付随している二つの電極
を区別している。図7に示す構造では、トンネル磁気抵
抗効果素子は、基板7上に、基板と近接する側から、下
部電極6、下部強磁性層25、トンネルバリア層23、
上部強磁性層22、及び上部電極層1がこの順に積層さ
れている。例えば、下部強磁性層25と上部強磁性層2
2に、面内異方性を持つ磁性薄膜を採用する構成では、
強磁性体膜として、鉄、ニッケル、コバルトのいずれ
か、あるいはそれらの合金からなる薄膜を利用すること
ができる。また、下部強磁性層25と上部強磁性層22
に、垂直異方性を持つ磁性薄膜を採用する構成では、強
磁性体膜として、希土類金属と遷移金属との合金、例え
ば、ガドリニウム、テルビウム、ディスプロシウム、ホ
ロミウムなどの希土類金属と、鉄、ニッケル、コバルト
など遷移金属とを合金化して得られる磁性合金薄膜を利
用することができる。また、トンネルバリア層23は、
非磁性の絶縁体、例えば、酸化アルミニウムが広く利用
されている。トンネルバリア層23は、トンネル電流は
流れるが、絶縁性の不良に起因するリーク電流は流れな
い構成とする必要がある。すなわち、トンネル効果が起
こる程度にその膜厚は薄く、また、膜厚に不均一さも無
く、しかも、絶縁破壊などによるリークの発生も生じな
いものとする必要性がある。その目的から、トンネルバ
リア層23に用いる酸化アルミニウムは、下部強磁性層
25上に酸化アルミニウムを所定の膜厚に被着し、その
絶縁性を高めるため、さらに、被着後、プラズマ酸化を
施している。この被着後、プラズマ酸化処理を施すこと
で、膜厚は1〜3nm程度の極く薄い酸化アルミニウム
膜であっても、リークの少ない、高い絶縁性の膜とな
り、前記の目的に適するトンネルバリア層が比較的容易
に作製できる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】一方、トンネル磁気抵
抗効果素子を磁気検出用デバイスに応用する際には、リ
ーク電流を抑制するための高いトンネル磁気抵抗率に加
えて、信号電流を増すため、トンネル接合の低抵抗化を
行うことが必要となる。例えば、HDDの再生ヘッドに
トンネル磁気抵抗効果素子を利用とする場合には、トン
ネル接合の抵抗値は、1μm2の接合面積で10Ω程度
にする必要がある。前記の抵抗値を達成する上では、ト
ンネルバリア層を1nm以下と非常に薄くしなければな
らず、リークの少ない、高い絶縁性を維持しつつ、厚さ
1nm以下の均一なトンネルバリア層を作製する方法
は、非常に重要な課題となる。
【0010】図5は、従来のトンネル磁気抵抗効果素子
において、トンネルバリア層の作製にプラズマ酸化を利
用した際、プラズマ酸化処理が過多となった場合の素子
構成を模式的に示す断面図である。図6は、従来のトン
ネル磁気抵抗効果において、トンネルバリア層の作製に
プラズマ酸化を利用した際、プラズマ酸化処理が不足し
た場合の素子構成を模式的に示す断面図である。以下、
これらの図面に基づき、従来のプラズマ酸化を利用した
トンネルバリア層の作製工程における問題点を説明す
る。
【0011】図5に示すように、酸化アルミニウムの絶
縁性を高めるためのプラズマ酸化処理が過多となった場
合には、トンネルバリア層23を超えて、下部強磁性層
25まで酸化が生じる結果、トンネルバリア層23と下
部強磁性層25との間に、酸化物強磁性層24が形成さ
れた素子構成となる。この酸化物強磁性層24は、本
来、下部強磁性層25を構成する強磁性体が酸化を受け
たもので、その強磁性体の種類に応じて、FeO、Ni
O、CoO、あるいは、Tb、Gd、Dy、Hoの酸化
物などである。この酸化物強磁性層24は、トンネルバ
リア層23を通過した電子のスピンを散乱させる作用を
示すため、スピンの保存性を低下させ、従って、トンネ
ル磁気抵抗効果を悪化させる要因となる。
【0012】図6示すように、プラズマ酸化処理が不足
した場合には、トンネルバリア層23を作製する際、ス
パッタ法などで堆積形成した当初の酸化アルミニウム膜
中、下部強磁性層25に近接する領域では、酸化されて
いないアルミニウム原子がそのまま残留している状態と
なる。その結果、この残留しているアルミニウム原子が
電子スピンを散乱させるため、スピンの保存性を低下さ
せ、やはり、トンネル磁気抵抗効果を悪化させる要因と
なる。
【0013】すなわち、トンネルバリア層用の酸化アル
ミニウム膜に対して、例えば、スパッタ法により被着さ
せた当初の膜質は、トンネルバリア層に必要な高い絶縁
性を満足する抵抗値に達しないため、プラズマ酸化、あ
るいは、自然酸化、UV酸化等の方法を用いて、その膜
質の向上を行っているが、どの酸化処理の手法を用いる
際にも、過不足のない適正な酸化処理量に制御して、ス
ピン散乱の要因を排した、良質のトンネルバリア膜を高
い再現性で得ることは技術的に困難であった。例えば、
リーク電流を防止する目的て、トンネルバリア層に対し
てやや過剰な条件で酸化処理を施した際にも、下層の下
部強磁性層25の酸化に起因する酸化物強磁性層24の
生成を回避できる素子構造が望まれるものである。
【0014】本発明は前記の課題を解決するもので、本
発明の目的は、絶縁性の酸化物をトンネルバリア層に利
用し、その上下に、下部強磁性層と上部強磁性層を設
け、トンネル接合を構成するトンネル磁気抵抗効果素子
において、前記トンネルバリア層用酸化物膜の絶縁性を
向上するため、酸化処理を施す工程を有する製造方法に
よる素子の作製が可能であり、加えて、トンネルバリア
層の膜厚を極薄くした際にも、スピン散乱の要因となる
酸化物強磁性層の生成を回避しつつ、トンネルバリア層
自体には十分な酸化処理を施すことが可能な新規な素子
構成を有するトンネル磁気抵抗効果素子と、その製造方
法を提供することにある。より具体的には、本発明の目
的は、トンネルバリア層を構成する酸化膜について、そ
の絶縁性を向上するため、酸化処理を施す際、かかる酸
化膜の膜厚を極薄くした際にも、十分な絶縁性を達成で
きる酸化処理条件を選択し、その際、下部強磁性層に対
して、不要な酸化が生じて、酸化物強磁性層の生成を起
こすことを回避する素子構成を採用した新規な素子構成
を有するトンネル磁気抵抗効果素子を提供することにあ
る。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明者は、前記の課題
を解決すべく、鋭意研究を進めたところ、上部強磁性層
を形成する前に、トンネルバリア層を構成する酸化物
膜、例えば、スパッタ法などで堆積形成した酸化アルミ
ニウム膜に対して、その表面から、酸化処理、例えば、
プラズマ酸化処理を施し、十分な酸化を施す状態とする
ことで、極薄い膜厚を選択した場合でも、その酸化膜自
体は所望の高い絶縁性を有することができること、ま
た、トンネルバリア層と下部強磁性層との間に、酸素透
過防止層を設けることで、前記酸化処理、例えば、プラ
ズマ酸化処理の時間を必要以上に長く設定しても、トン
ネルバリア層表面から侵入する酸素が下部強磁性層にま
で達して、酸化物強磁性層の生成を起こすことを回避で
きることを見出した。加えて、トンネルバリア層と酸素
透過防止層の間に、さらに、高いスピン分極率を持つ磁
性体層を設け、この層自体は、酸化を受けない、酸化を
受けた際にも、その特性に影響が及ばない材料を選択す
ること構成としても、トンネルバリア層表面から侵入す
る酸素が下部強磁性層にまで達して、酸化物強磁性層の
生成を起こすことを回避できることを見出した。さら
に、本発明者は、かかる知見に加えて、前記する二種の
構成を採用するトンネル磁気抵抗効果素子は、いずれ
も、トンネルバリア層と下部強磁性層との間に、酸素透
過防止層、あるいは、高いスピン分極率を持つ磁性体層
と酸素透過防止層を設けているものの、そのトンネル磁
気抵抗効果に対しては、かかる酸素透過防止層などの付
加は、本質的な影響を及ぼさず、リークが抑制され、ス
ピン散乱の要因となる酸化処理の過不足も回避でき、し
かも、トンネル接合の低抵抗化を目的とする、トンネル
バリア層の更なる薄膜化を行った際にも、高い再現性で
素子作製が可能であることを検証して、本発明を完成す
るに至った。
【0016】すなわち、第1の形態の本発明のトンネル
磁気抵抗効果素子は、基板と近接する側から順に、下部
強磁性層と上部強磁性層が、トンネルバリア層をその間
に挟んで設けられているトンネル磁気抵抗効果素子であ
って、前記トンネルバリア層は、酸化膜からなり、前記
下部強磁性層と上部強磁性層は、垂直磁気異方性を有す
る磁性体からなり、さらに、前記下部強磁性層とトンネ
ルバリア層との間に導電性の非磁性材料からなる酸素透
過防止層が設けられていることを特徴とするトンネル磁
気抵抗効果素子である。
【0017】その際、前記垂直磁気異方性を持つ磁性体
は、第一の成分として、ガドリニウム、テルビウム、デ
ィスプロシウム、ホロミウムのうちから選択される一種
または二種の成分と、第二の成分として、鉄、コバル
ト、ニッケルのうちから選択される一種または二種の成
分とを含み、前記第一の成分と第二の成分とからなる、
二元系または三元系の合金であることを特徴とするトン
ネル磁気抵抗効果素子とすることができる。
【0018】一方、前記酸素透過防止層は、貴金属から
なることが好ましい。より具体的には、前記貴金属は、
プラチナ、パラジウム、ロジウム、イリジウム、金、銀
のうちのいずれか一種、あるいは、前記6種のうち、一
又は二種以上を主成分として含む合金であることがより
好ましい。
【0019】さらには、前記下部強磁性層とトンネルバ
リア層との間に設けられている酸素透過防止層に加え、
前記酸素透過防止層とトンネルバリア層との間に高いス
ピン分極率を持つ酸化物磁性体層が設けられていること
を特徴とするトンネル磁気抵抗効果素子とすることもで
きる。
【0020】また、第2の形態の本発明のトンネル磁気
抵抗効果素子は、基板と近接する側から順に、下部強磁
性層と上部強磁性層が、トンネルバリア層をその間に挟
んで設けられているトンネル磁気抵抗効果素子であっ
て、前記トンネルバリア層は、酸化膜からなり、前記下
部強磁性層と上部強磁性層は、面内平行磁気異方性を有
する磁性体からなり、さらに、前記下部強磁性層とトン
ネルバリア層との間に導電性の非磁性材料からなる酸素
透過防止層が設けられ、加えて、前記酸素透過防止層と
トンネルバリア層との間に高いスピン分極率を持つ酸化
物磁性体層が設けられていることを特徴とするトンネル
磁気抵抗効果素子である。
【0021】なお、かかる酸素透過防止層と高いスピン
分極率を持つ酸化物磁性体層とを設ける構成において
は、前記高いスピン分極率を持つ酸化物磁性体層は、鉄
またはクロムの酸化物と、La、Mn、Srのうちの一種また
は二種以上の元素を含む混合酸化物とからなる群から選
択される一種以上の酸化物からなることを特徴とするト
ンネル磁気抵抗効果素子とすることができる。
【0022】一方、前記トンネルバリア層は、酸化膜で
あるが、前記トンネルバリア層が酸化アルミニウムから
なることを特徴とするトンネル磁気抵抗効果素子とする
ことが好ましい。
【0023】上記第2の形態においても、前記面内平行
磁気異方性を持つ磁性体は、第一の成分として、ガドリ
ニウム、テルビウム、ディスプロシウム、ホロミウムの
うちから選択される一種または二種の成分と、第二の成
分として、鉄、コバルト、ニッケルのうちから選択され
る一種または二種の成分とを含み、前記第一の成分と第
二の成分とからなる二元系または三元系の合金であるこ
とが好ましい。
【0024】一方、前記面内平行磁気異方性を持つ磁性
体は、鉄、コバルト、ニッケルのうちから選択されるい
ずれか一種、あるいは、鉄、コバルト、ニッケルのうち
から選択される一種または二種以上を主成分として含む
合金のいずれか1種であることが好ましい。
【0025】加えて、本発明は、上記する構成を有する
本発明のトンネル磁気抵抗効果素子の製造方法をも提供
しており、すなわち、本発明のトンネル磁気抵抗効果素
子の製造方法は、トンネル磁気抵抗効果素子を構成する
各層を積層して作製する一連の工程として、基板と近接
させて、下部強磁性層を形成する工程、この下部強磁性
層上に導電性の非磁性材料からなる酸素透過防止層を形
成する工程、この酸素透過防止層上に高いスピン分極率
を持つ酸化物磁性体層を形成する工程、この高いスピン
分極率を持つ酸化物磁性体層上にトンネルバリア層を形
成する工程、このトンネルバリア層の上に上部強磁性体
体層を形成する工程を有し、前記トンネルバリア層を形
成する工程では、前記トンネルバリア層は、酸化物の膜
からなり、前記高いスピン分極率を持つ酸化物磁性体層
上に、前記酸化物の原材料あるいは前記酸化物自体から
なる膜を形成し、膜に形成された前記酸化物の原材料を
酸化する、または、前記酸化物に追酸化処理を施すこと
により、所定の酸化物の膜に変換することを特徴とする
トンネル磁気抵抗効果素子の製造方法である。
【0026】その際、前記高いスピン分極率を持つ酸化
物磁性体層が、鉄またはクロムの酸化物により形成され
ていることを特徴とするトンネル磁気抵抗効果素子の製
造方法とすることが好ましい。
【0027】また、前記トンネルバリア層は、酸化アル
ミニウムであり、その原材料として、アルミニウムまた
は酸化アルミニウムを用いることを特徴とするトンネル
磁気抵抗効果素子の製造方法とすることが好ましい。
【0028】
【発明の実施の形態】以下に、本発明について、より詳
細に説明する。
【0029】本発明に係るトンネル磁気抵抗効果素子
は、トンネルバリア層を構成する酸化物膜に対して、堆
積形成された酸化物膜を所望の絶縁性を有するものとす
るため、その表面から酸化処理、例えば、プラズマ酸化
を施す工程を含む製造工程で作製されるトンネル磁気抵
抗効果素子である。その際、酸化処理が不足することの
ないように、若干余剰な酸化処理時間を設定した際に
も、得られるトンネル磁気抵抗効果素子の素子特性に影
響・劣化要因を生じさせることのない素子構成としたも
のである。具体的には、下部強磁性層と上部強磁性層
が、トンネルバリア層をその間に挟んで設けられている
トンネル磁気抵抗効果素子において、トンネルバリア層
と下部強磁性層との間に、酸素透過防止層を設けて、酸
化処理が不足することのないように、若干余剰な酸化処
理時間を設定した際にも、下部強磁性層の一部まで酸化
が進行することの回避を図ったものである。
【0030】本発明のトンネル磁気抵抗効果素子におい
ては、下部強磁性層と上部強磁性層を垂直異方性強磁性
体材料を利用して作製する形態とする場合、基板上に、
下部垂直異方性強磁性層、酸素透過防止層、トンネルバ
リア層及び上部垂直異方性強磁性層がこの順に積層され
てなる構造とし、前記トンネルバリア層は酸化物を利用
する。
【0031】前記垂直異方性強磁性体材料を利用する、
本発明に係る強磁性トンネル効果素子を製造する方法
は、基板上に下部電極、下部垂直異方性強磁性層を順に
形成し、この下部垂直異方性強磁性層上に酸素透過防止
層を形成する。さらに、この酸素透過防止層上にトンネ
ルバリア層用の原材料層を被着し、この原材料層に、例
えば、プラズマ酸化を施して絶縁性皮膜として、前記ト
ンネルバリア層に形成する。このトンネルバリア層上
に、上部強磁性層を形成し、さらに、上部電極を作製す
る。
【0032】かかる構成において、酸素透過防止層の材
料は、トンネルバリア層用の原材料層に対して酸化処理
を実施する間、この酸素透過防止層を超えた酸素の透過
を防止できる限り特に制限はないものの、良導電性で、
耐酸化性を有する非磁性材料、好ましくは貴金属、より
好ましくは、プラチナ、パラジウム、ロジウム、イリジ
ウム、金、銀のうちのいずれか一種、又はこれらを含む
合金、特には、プラチナ、パラジウム、ロジウム、イリ
ジウムのいずれか一種、又はこれらを含む合金を用いる
ことが望ましい。一方、前記下部垂直異方性強磁性層及
び上部垂直異方性強磁性層を作製する垂直異方性強磁性
体材料としては、希土類金属と遷移金属の合金薄膜が好
適に利用できる。具体的には、ガドリニウム、テルビウ
ム、ディスプロシウム、ホロミウムなどの希土類金属
と、鉄、ニッケル、コバルトなどの遷移金属とを合金化
して、下部垂直異方性強磁性層及び上部垂直異方性強磁
性層を作製することが好ましい。トンネルバリア層の材
料としては、好ましくは、酸化アルミニウムを用いる。
【0033】さらに、本発明に係るトンネル磁気抵抗効
果素子では、酸素透過防止層を、トンネルバリア層と下
部強磁性層の間に設ける構造に代えて、酸素透過防止層
の上に、さらに、高いスピン分極率を持つ酸化物磁性体
層を設ける構成とすることができる。すなわち、基板上
に、下部強磁性層、酸素透過防止層、高いスピン分極率
を持つ酸化物磁性体層、トンネルバリア層及び上部強磁
性層がこの順に積層されてなる構造とすることもでき
る。このトンネル磁気抵抗効果素子においても、前記ト
ンネルバリア層は酸化物を利用し、同じく、高いスピン
分極率を持つ磁性体層も酸化物磁性材料を用いて、酸素
透過防止層とトンネルバリア層との間に、この高いスピ
ン分極率を持つ酸化物磁性体層を設ける構造とする。こ
の高いスピン分極率を持つ酸化物磁性体層を設ける形態
を有する、本発明に係る強磁性トンネル効果素子を製造
する方法では、基板上に、下部電極、下部強磁性層を順
に形成し、この下部強磁性層上に酸素透過防止層を形成
する。次いで、さらにこの上に高いスピン分極率を持つ
酸化物磁性体層を形成した後、この高いスピン分極率を
持つ酸化物磁性体層上にトンネルバリア層用の原材料層
を被着する。この原材料層を、例えば、プラズマ酸化を
施して前記トンネルバリア層を形成し、このトンネルバ
リア層上に上部強磁性層を形成し、最後に上部電極を形
成するものである。
【0034】前記高いスピン分極率を持つ酸化物磁性体
層の材料は、好ましくはCrO2、Fe34、または
(La-Sr)MnO3である。なお、この高いスピン分
極率を持つ酸化物磁性体層の膜厚は、0.5nm〜1.
0nmの範囲に選択することが好ましい。また、酸素透
過防止層に利用する良導電性で、耐酸化性を有する非磁
性材料は、好ましくは貴金属、より好ましくは、プラチ
ナ、パラジウム、ロジウム、イリジウム、金、銀のうち
のいずれか一種、又はこれらを含む合金、特には、白金
属金属であるプラチナ、パラジウム、ロジウム、イリジ
ウムのうちのいずれか一種、又はこれらを含む合金であ
る。酸素透過防止層の膜厚は、高いスピン分極率を持つ
酸化物磁性体層を設ける際には、1nm〜3nmの範囲
に選択することができ、また、高いスピン分極率を持つ
酸化物磁性体層を設けない場合、0.5nm〜1.5n
mの範囲に選択することもできる。一方、前記下部強磁
性層及び上部強磁性層の材料は、好ましくは、面内異方
性を持つ磁性体材料膜としては、鉄、ニッケル、コバル
トのいずれか、又はこれらを含む合金であり、一方、垂
直異方性を持つ磁性体材料膜としては、希土類金属と遷
移金属の合金薄膜であり、より具体的には、ガドリニウ
ム、テルビウム、ディスプロシウム、ホロミウムなどの
希土類金属と、鉄、ニッケル、コバルトなどの遷移金属
とを合金化した材料を用いて作製する。なお、前記トン
ネルバリア層の材料は、好ましくは酸化アルミニウムを
利用する。
【0035】また、本発明にかかるトンネル磁気抵抗効
果素子の製造方法では、酸素透過防止層、高いスピン分
極率を持つ酸化物磁性体層を積層した上で、トンネルバ
リア層用の酸化物膜、あるは、酸化した際、トンネルバ
リア層用の酸化物となる原材料膜を形成した上で、この
酸化物膜または原材料膜に対して、追酸化または酸化処
理を施す工程を有する。この追酸化または酸化処理を施
す工程は、やや過剰な酸化処理がなされる条件を選択す
ることで、酸化の不足による未酸化の原材料が残留し
て、絶縁性が不足することを効果的に回避できる。一
方、高いスピン分極率を持つ酸化物磁性体層として、F
eまたはクロムからなる酸化物を好適に利用することが
できる。このFeまたはクロムからなる酸化物は、前記
追酸化または酸化処理に際して、トンネルバリア層を透
過する酸素があったとしても、本来の高いスピン分極率
に対して、実質的な影響を与えないものである。一方、
トンネルバリア層用の酸化物膜、あるは、酸化した際、
トンネルバリア層用の酸化物となる原材料膜としては、
所望の膜厚、特に極薄い膜厚に高い再現性で堆積が可能
なアルミニウム、または酸化アルミニウムを利用するこ
とが好ましい。その場合、十分な追酸化または酸化処理
を施すことで、膜自体の絶縁性は極めて良好な緻密な酸
化アルミニウム膜を簡単に、再現性よく作製することが
可能である。
【0036】
【実施例】以下に実施例を挙げて、本発明をより具体的
に説明する。これら実施例は、本発明の最良の実施の形
態の一例ではあるものの、本発明はこれら実施例により
限定を受けるものではない。
【0037】(実施例1)図1は、本発明に係るトンネ
ル磁気抵抗効果素子における、第1の実施の形態の素子
構成を模式的にを示す断面図である。以下、この図1を
参照して、本実施例のトンネル磁気抵抗効果素子の構造
上の特徴と、その作製工程を説明する。
【0038】本実施例のトンネル磁気抵抗効果素子は、
図1に示す通り、基板7上に、下部電極層6、下部垂直
異方性強磁性層5、酸素透過防止層4、トンネルバリア
層3、上部垂直異方性強磁性層2、上部電極層1がこの
順に積層された構造を有している。
【0039】具体的には、基板7は、表面の絶縁性層を
設けた非磁性材料からなる基板であり、例えば、高温水
蒸気などにより表面上に酸化膜を形成したシリコン基板
が利用できる。一方、下部電極層6及び上部電極層1
は、ともに、非磁性の良導電性金属層であり、例えば、
アルミニウム、銅などの非磁性導電膜が通常利用され
る。
【0040】トンネル接合を構成する、下部垂直異方性
強磁性層5及び上部垂直異方性強磁性層2の強磁性材料
は、その磁化方向は基板面に対して、垂直方向として使
用されるものであり、好ましくは、希土類金属と遷移金
属の合金薄膜、例えば、ガドリニウム、テルビウム、デ
ィスプロシウム、ホロミウムなどの希土類金属と、鉄、
ニッケル、コバルトなどの遷移金属とを合金化して作製
される、垂直異方性を示す強磁性体薄膜を用いる。
【0041】一方、酸素透過防止層4は、非磁性の良導
電性金属から選択され、酸素透過性を有さない金属、特
には、貴金属のうち、例えば、それ自体酸化を受け難
く、しかも、極めて、膜厚の薄い層を容易に形成でき、
更に、下部垂直異方性強磁性層5へ熱拡散などにより相
互拡散を生じることのないものが好適に利用される。従
って、白金族金属、プラチナ(Pt)、パラジウム(P
d)、ロジウム(Rh)及びイリジウム(Ir)のうちのい
ずれか、またはこれらのうちの一また二種以上を含む合
金がこの用途により適している。なお、トンネルバリア
層3は、トンネル接合に要求される、高い絶縁性を有す
る非磁性酸化物材料が用いられ、加えて、その膜厚を極
薄くした際にも、緻密な膜となり、リークを起こすこと
もない酸化物材料であるものが利用され、従って、従来
より、例えば、酸化アルミニウムが好適に利用されてい
る。
【0042】次に、上記の素子構成を有するトンネル磁
気抵抗効果素子について、その具体的な形態と、作製工
程を説明する。
【0043】まず、表面上に、膜厚1μm程度の酸化シ
リコン層を形成されたシリコン基板1を用意した。この
シリコン基板上には、トンネル磁気抵抗効果素子に加え
て、付随する種々の素子要素を形成することが可能であ
る。第1の工程では、この基板上、その酸化シリコン層
上に、マグネトロンスパッタ法を用いて、下部電極層6
に利用する、Alを厚さ25nm成膜した。
【0044】第2の工程では、前記Al層上に、下部垂直
異方性強磁性層5用の強磁性体として、GdFe合金を厚さ
50nm成膜した。第3の工程では、下部垂直異方性強
磁性層5用のGdFe合金膜上に、酸素透過防止層4とす
る、Ptを厚さ1nm成膜した。第4の工程では、酸素透
過防止層4とするPt膜上に、スパッタ法を利用して、酸
化アルミニウムを厚さ1nm成膜した。引き続く第5工
程では、前記酸化アルミニウム膜に対して、その表面か
ら、酸素雰囲気中で逆スパッタ法を用いてプラズマ酸化
を施し、当初スパッタ時に不足を生じた酸素を補い、絶
縁性に優れる酸化アルミニウム膜とする改質を行うこと
により、トンネルバリア層3を形成した。
【0045】第6の工程では、このプラズマ酸化を施
し、トンネルバリア層3とした酸化アルミニウム膜上
に、上部垂直異方性強磁性層2用の強磁性体として、T
bFe合金を厚さ30nm成膜した。第7の工程では、
上部垂直異方性強磁性層2用のTbFe合金膜上に、上
部電極層1として利用する、Alを厚さ50nm成膜し
た。以上の一連の工程で形成される積層構造を、目的と
するトンネル磁気抵抗効果素子の平面形状、素子面積に
応じて、パターニングして、トンネル磁気抵抗効果素子
とした。なお、図1には明示していないが、下部電極層
6ならびに上部電極層1に対して、トンネル電流の測定
に利用する配線部をそれぞれ付設している。
【0046】本実施例のトンネル磁気抵抗効果素子で
は、トンネル接合を構成する二つの強磁性体層を、垂直
異方性を持つ強磁性体を用いた構成とし、一方を、軟磁
性材料とし、他方を、硬磁性材料としている。具体的に
は、図1に示す構成において、下部垂直異方性強磁性層
5のGdFe合金[50nm厚]は、反転磁界が100 O
e〜500 Oe程度であり、一方、上部垂直異方性強
磁性層2のTbFe合金[30nm厚]は、反転磁界が
10kOe〜20kOe程度である。
【0047】図8は、トンネル磁気抵抗効果素子につい
て、磁気抵抗効果を実際に測定するための構造の一例を
模式的な示す断面図である。本実施例では、前記する垂
直異方性を持つ強磁性体の組み合わせを利用するトンネ
ル磁気抵抗効果素子であり、その上面より磁気強度を検
出することが可能な構成となっている。図8に示す構造
は、フォトリソグラフィーと逆スパッタ法を用いて、そ
の形状に加工したものである。また、隣接する素子等と
の分離を図るため、層間絶縁層16を、トンネル磁気抵
抗効果素子の側壁に設けている。測定時に、上部電極1
5から、トンネル接合のトンネルバリア層18を介し
て、下部電極20へとトンネル電流が流れる。この電流
・電圧測定は、直流4端子法を用いる。
【0048】トンネル磁気抵抗効果素子では、トンネル
バリア層18を挟む、下部強磁性層19と上部強磁性層
17との磁化の向きが反平行の時にはトンネル電流が流
れ難くなる結果、素子抵抗が高くなり、逆に、平行の時
にはトンネル電流が流れ易くなる結果、素子抵抗が低く
なる。この二つの状態間での素子抵抗差から、磁気抵抗
効果率を評価した。
【0049】この評価結果から、磁化の向きが平行の
際、トンネル電流を減少させるスピン散乱を引き起こす
下部強磁性層に達する酸化の進行がなく、具体的には、
下部強磁性層の上面領域に酸化物強磁性層が生成するこ
とに起因する素子抵抗上昇に伴う、磁気抵抗効果率の劣
化が少なく、従って、低抵抗のトンネル磁気抵抗効果素
子が得られた。
【0050】以上に説明した、実施例1では、トンネル
バリア層を形成する工程などの成膜にスパッタ法を利用
して、本発明を実施する形態について説明したが、他の
成膜方法、例えば、真空蒸着法やCVD法を用いて成膜し
ても、この実施例1と同様の結果(効果)を得ることが
できる。特に、トンネルバリア層の形成手法について
は、堆積形成した酸化アルミニウムに、さらにプラズマ
酸化を施す手法について記載したが、例えば、アルミニ
ウムをプラズマ酸化して、酸化アルミニウムに変換する
手法や、大気中、酸素雰囲気中での自然酸化、ラジカル
ビームによる酸化、オゾン酸化、UV酸化など、他の酸化
手段を利用して、酸化アルミニウムを形成する際にも、
同様の効果が得られる。
【0051】(実施例2)図2は、本発明に係るトンネ
ル磁気抵抗効果素子における、第2の実施の形態の素子
構成を模式的にを示す断面図である。以下、この図2を
参照して、本実施例のトンネル磁気抵抗効果素子の構造
上の特徴と、その作製工程を説明する。
【0052】本実施例のトンネル磁気抵抗効果素子は、
図2に示す通り、基板7上に、下部電極層6、下部垂直
異方性強磁性層5、酸素透過防止層4、高いスピン分極
率を持つ酸化物磁性体層8、トンネルバリア層3、上部
垂直異方性強磁性層2、上部電極層1がこの順に積層さ
れた構造を有している。
【0053】具体的には、基板7は、表面の絶縁性層を
設けた非磁性材料からなる基板であり、例えば、高温水
蒸気などにより表面上に酸化膜を形成したシリコン基板
が利用できる。一方、下部電極層6及び上部電極層1
は、ともに、非磁性の良導電性金属層であり、例えば、
アルミニウム、銅などの非磁性導電膜が通常利用され
る。
【0054】トンネル接合を構成する、下部垂直異方性
強磁性層5及び上部垂直異方性強磁性層2の強磁性材料
は、その磁化方向は基板面に対して、垂直方向として使
用されるものであり、好ましくは、希土類金属と遷移金
属の合金薄膜、例えば、ガドリニウム、テルビウム、デ
ィスプロシウム、ホロミウムなどの希土類金属と、鉄、
ニッケル、コバルトなどの遷移金属とを合金化して作製
される、垂直異方性を示す強磁性体薄膜を用いる。
【0055】一方、酸素透過防止層4は、非磁性の良導
電性金属から選択され、酸素透過性を有さない金属、特
には、貴金属のうち、例えば、それ自体酸化を受け難
く、しかも、極めて、膜厚の薄い層を容易に形成でき、
更に、下部垂直異方性強磁性層5へ熱拡散などにより相
互拡散を生じることのないものが好適に利用される。従
って、白金族金属、プラチナ(Pt)、パラジウム(P
d)、ロジウム(Rh)及びイリジウム(Ir)のうちのい
ずれか、またはこれらのうちの一また二種以上を含む合
金がこの用途により適している。また、高いスピン分極
率を持つ酸化物磁性体層8は、垂直異方性を有する下部
垂直異方性強磁性層5の磁化の向きと平行な磁化方向に
磁化可能な酸化物磁性体材料が利用され、より具体的に
は、好適な高いスピン分極率を有する酸化物磁性体材料
として、CrO2、Fe34、または(La-Sr)Mn
3を選択することができる。
【0056】なお、本実施例でも、トンネルバリア層3
は、トンネル接合に要求される、高い絶縁性を有する非
磁性酸化物材料が用いられ、加えて、その膜厚を極薄く
した際にも、緻密な膜となり、リークを起こすこともな
い酸化物材料であるものが利用され、従って、従来よ
り、例えば、酸化アルミニウムが好適に利用されてい
る。
【0057】次に、上記の素子構成を有するトンネル磁
気抵抗効果素子について、その具体的な形態と、作製工
程を説明する。
【0058】まず、表面上に、膜厚1μm程度の酸化シ
リコン層を形成されたシリコン基板7を用意した。この
シリコン基板上には、トンネル磁気抵抗効果素子に加え
て、付随する種々の素子要素を形成することが可能であ
る。第1の工程では、この基板上、その酸化シリコン層
上に、マグネトロンスパッタ法を用いて、下部電極層6
に利用する、Alを厚さ25nm成膜した。
【0059】第2の工程では、前記Al層上に、下部垂直
異方性強磁性層5用の強磁性体として、GdFe合金を厚さ
50nm成膜した。第3の工程では、下部垂直異方性強
磁性層5用のGdFe合金膜上に、酸素透過防止層4とす
る、Ptを厚さ1nm成膜した。第4の工程では、酸素透
過防止層4とするPt膜上に、スパッタ法を利用して、高
いスピン分極率を持つ酸化物磁性体層8に利用する、F
34を厚さ1nm成膜した。
【0060】第5の工程では、高いスピン分極率を持つ
酸化物磁性体層8とするFe34膜上に、スパッタ法を
利用して、酸化アルミニウムを厚さ1nm成膜した。引
き続く第6工程では、前記酸化アルミニウム膜に対し
て、その表面から、酸素雰囲気中で逆スパッタ法を用い
てプラズマ酸化を施し、当初スパッタ時に不足を生じた
酸素を補い、絶縁性に優れる酸化アルミニウム膜とする
改質を行うことにより、トンネルバリア層3を形成し
た。その際、下層の高いスピン分極率を持つ酸化物磁性
体層8とするFe34膜に対しても、酸化アルミニウム
膜を透過した酸素が一部供給される。
【0061】第7の工程では、このプラズマ酸化を施
し、トンネルバリア層3とした酸化アルミニウム膜上
に、上部垂直異方性強磁性層2用の強磁性体として、T
bFe合金を厚さ30nm成膜した。第8の工程では、
上部垂直異方性強磁性層2用のTbFe合金膜上に、上
部電極層1として利用する、Alを厚さ50nm成膜し
た。以上の一連の工程で形成される積層構造を、目的と
するトンネル磁気抵抗効果素子の平面形状、素子面積に
応じて、パターニングして、トンネル磁気抵抗効果素子
とした。なお、図2には明示していないが、下部電極層
6ならびに上部電極層1に対して、トンネル電流の測定
に利用する配線部をそれぞれ付設している。
【0062】本実施例において、高いスピン分極率を持
つ酸化物磁性体層8に利用するFe 34は、一般に面内
磁化膜として利用される高いスピン分極率を持つ酸化物
磁性体であるが、極薄の酸素透過防止層4を通り抜けて
下部垂直異方性強磁性層5から漏れ出る磁界により、そ
の磁化の方向は垂直方向にピン止めされ、下部垂直異方
性強磁性層5と一体となって磁化反転することが可能と
されている。
【0063】本実施例においても、実施例1と同様に、
トンネル接合を構成する二つの強磁性体層を、垂直異方
性を持つ強磁性体を用いた構成とし、一方を、軟磁性材
料とし、他方を、硬磁性材料としている。具体的には、
図2に示す構成において、下部垂直異方性強磁性層5の
GdFe合金[50nm厚]は、反転磁界が100 Oe〜
500 Oe程度であり、一方、上部垂直異方性強磁性
層2のTbFe合金[30nm厚]は、反転磁界が10
kOe〜20kOe程度である。実際には、下部垂直異
方性強磁性層5と一体となって磁化反転する、高いスピ
ン分極率を持つ酸化物磁性体層8のFe34膜を介し
て、トンネル電流が流れるものの、その動作は、実施例
1と同様なものとなる。
【0064】具体的には、実施例1と同様に、高い絶縁
性で、極めて薄い膜厚の酸化アルミニウムからなる平坦
なトンネルバリア層が得られるので、不要なリーク電流
は抑制しつつ、素子の低抵抗化が実現できるとともに、
実際に、トンネル接合を構成する高スピン分極率膜にお
いて、スピンが保存されるので、高MR比を実現できる。
【0065】以上に説明した、実施例2では、トンネル
バリア層を形成する工程などの成膜にスパッタ法を利用
して、本発明を実施する形態について説明したが、他の
成膜方法、例えば、真空蒸着法やCVD法を用いて成膜し
ても、この実施例2と同様の結果(効果)を得ることが
できる。特に、トンネルバリア層の形成手法について
は、堆積形成した酸化アルミニウムに、さらにプラズマ
酸化を施す手法について記載したが、例えば、アルミニ
ウムをプラズマ酸化して、酸化アルミニウムに変換する
手法や、大気中、酸素雰囲気中での自然酸化、ラジカル
ビームによる酸化、オゾン酸化、UV酸化など、他の酸化
手段を利用して、酸化アルミニウムを形成する際にも、
同様の効果が得られる。
【0066】(実施例3)図3は、本発明に係るトンネ
ル磁気抵抗効果素子における、第3の実施の形態の素子
構成を模式的にを示す断面図である。以下、この図3を
参照して、本実施例のトンネル磁気抵抗効果素子の構造
上の特徴と、その作製工程を説明する。
【0067】本実施例のトンネル磁気抵抗効果素子は、
図3に示す通り、基板7上に、下部電極層6、下部面内
異方性強磁性層10、酸素透過防止層4、高いスピン分
極率を持つ酸化物磁性体層8、トンネルバリア層3、上
部面内異方性強磁性層9、上部電極層1がこの順に積層
された構造を有している。
【0068】具体的には、基板7は、表面の絶縁性層を
設けた非磁性材料からなる基板であり、例えば、高温水
蒸気などにより表面上に酸化膜を形成したシリコン基板
が利用できる。一方、下部電極層6及び上部電極層1
は、ともに、非磁性の良導電性金属層であり、例えば、
アルミニウム、銅などの非磁性導電膜が通常利用され
る。
【0069】トンネル接合を構成する、下部面内異方性
強磁性層10及び上部面内異方性強磁性層9の強磁性材
料は、その磁化方向は基板面に対して、平行方向として
使用されるものであり、好ましくは、鉄、ニッケル、コ
バルトなどの遷移金属の合金薄膜からなる、面内異方性
を示す強磁性体薄膜を用いる。
【0070】一方、酸素透過防止層4は、非磁性の良導
電性金属から選択され、酸素透過性を有さない金属、特
には、貴金属のうち、例えば、それ自体酸化を受け難
く、しかも、極めて、膜厚の薄い層を容易に形成でき、
更に、下部垂直異方性強磁性層5へ熱拡散などにより相
互拡散を生じることのないものが好適に利用される。従
って、白金族金属、プラチナ(Pt)、パラジウム(P
d)、ロジウム(Rh)及びイリジウム(Ir)のうちのい
ずれか、またはこれらのうちの一また二種以上を含む合
金がこの用途により適している。また、高いスピン分極
率を持つ酸化物磁性体層8は、垂直異方性を有する下部
垂直異方性強磁性層5の磁化の向きと平行な磁化方向に
磁化可能な酸化物磁性体材料が利用され、より具体的に
は、好適な高いスピン分極率を有する酸化物磁性体材料
として、CrO2、Fe34、または(La-Sr)Mn
3を選択することができる。
【0071】なお、本実施例でも、トンネルバリア層3
は、トンネル接合に要求される、高い絶縁性を有する非
磁性酸化物材料が用いられ、加えて、その膜厚を極薄く
した際にも、緻密な膜となり、リークを起こすこともな
い酸化物材料であるものが利用され、従って、従来よ
り、例えば、酸化アルミニウムが好適に利用されてい
る。
【0072】次に、上記の素子構成を有するトンネル磁
気抵抗効果素子について、その具体的な形態と、作製工
程を説明する。
【0073】まず、表面上に、膜厚1μm程度の酸化シ
リコン層を形成されたシリコン基板7を用意した。この
シリコン基板上には、トンネル磁気抵抗効果素子に加え
て、付随する種々の素子要素を形成することが可能であ
る。第1の工程では、この基板上、その酸化シリコン層
上に、マグネトロンスパッタ法を用いて、下部電極層6
に利用する、Alを厚さ25nm成膜した。
【0074】第2の工程では、前記Al層上に、下部面内
異方性強磁性層10用の強磁性体として、NiFe合金
を厚さ25nm成膜した。第3の工程では、下部面内異
方性強磁性層10用のNiFe合金膜上に、酸素透過防
止層4とする、Ptを厚さ1nm成膜した。第4の工程で
は、酸素透過防止層4とするPt膜上に、スパッタ法を利
用して、高いスピン分極率を持つ酸化物磁性体層8に利
用する、Fe34を厚さ1nm成膜した。
【0075】第5の工程では、高いスピン分極率を持つ
酸化物磁性体層8とするFe34膜上に、スパッタ法を
利用して、酸化アルミニウムを厚さ1nm成膜した。引
き続く第6工程では、前記酸化アルミニウム膜に対し
て、その表面から、酸素雰囲気中で逆スパッタ法を用い
てプラズマ酸化を施し、当初スパッタ時に不足を生じた
酸素を補い、絶縁性に優れる酸化アルミニウム膜とする
改質を行うことにより、トンネルバリア層3を形成し
た。その際、下層の高いスピン分極率を持つ酸化物磁性
体層8とするFe34膜に対しても、酸化アルミニウム
膜を透過した酸素が一部供給される。
【0076】第7の工程では、このプラズマ酸化を施
し、トンネルバリア層3とした酸化アルミニウム膜上
に、上部面内異方性強磁性層9用の強磁性体として、C
oを厚さ30nm成膜した。その際、Coを一軸磁気異
方性を持たせるため、200 [Oe]の磁界を印加し
て成膜を行った。第8の工程では、上部面内異方性強磁
性層9用のCo膜上に、上部電極層1として利用する、
Alを厚さ50nm成膜した。以上の一連の工程で形成さ
れる積層構造を、目的とするトンネル磁気抵抗効果素子
の平面形状、素子面積に応じて、パターニングして、ト
ンネル磁気抵抗効果素子とした。なお、図3には明示し
ていないが、下部電極層6ならびに上部電極層1に対し
て、トンネル電流の測定に利用する配線部をそれぞれ付
設している。
【0077】本実施例において、高いスピン分極率を持
つ酸化物磁性体層8に利用するFe 34は、一般に面内
磁化膜として利用される高いスピン分極率を持つ酸化物
磁性体であるので、極薄の酸素透過防止層4を通り抜け
て下部面内異方性強磁性層10から漏れ出る磁界によ
り、その磁化の方向は下部面内異方性強磁性層10と同
じ方位の面内方向にピン止めされ、下部面内異方性強磁
性層10と一体となって磁化反転することが可能とされ
ている。
【0078】本実施例においても、実施例2と同様に、
トンネル接合を構成する二つの強磁性体層を、ともに面
内異方性を持つ強磁性体を用いた構成とし、一方を、軟
磁性材料とし、他方を、硬磁性材料としている。具体的
には、図3に示す構成において、下部面内異方性強磁性
層10のNiFe合金は、軟磁性材料であり、その反転
磁界が5 Oe〜20 Oe程度であり、一方、上部面
内異方性強磁性層9のCoは、硬磁性材料であり、その
反転磁界が20 Oe〜40 Oe程度である。実際に
は、下部面内異方性強磁性層10と一体となって磁化反
転する、高いスピン分極率を持つ酸化物磁性体層8のF
34膜を介して、トンネル電流が流れるものの、その
動作は、実施例2と同様なものとなる。
【0079】具体的には、実施例2と同様に、高い絶縁
性で、極めて薄い膜厚の酸化アルミニウムからなる平坦
なトンネルバリア層が得られるので、不要なリーク電流
は抑制しつつ、素子の低抵抗化が実現できるとともに、
実際に、トンネル接合を構成する高スピン分極率膜にお
いて、スピンが保存されるので、高MR比を実現できる。
【0080】以上に説明した、実施例3では、トンネル
バリア層を形成する工程などの成膜にスパッタ法を利用
して、本発明を実施する形態について説明したが、他の
成膜方法、例えば、真空蒸着法やCVD法を用いて成膜し
ても、この実施例3と同様の結果(効果)を得ることが
できる。特に、トンネルバリア層の形成手法について
は、堆積形成した酸化アルミニウムに、さらにプラズマ
酸化を施す手法について記載したが、例えば、アルミニ
ウムをプラズマ酸化して、酸化アルミニウムに変換する
手法や、大気中、酸素雰囲気中での自然酸化、ラジカル
ビームによる酸化、オゾン酸化、UV酸化など、他の酸化
手段を利用して、酸化アルミニウムを形成する際にも、
同様の効果が得られる。
【0081】
【発明の効果】本発明のトンネル磁気抵抗効果素子は、
強磁性トンネル接合を構成する下部強磁性層とトンネル
バリア層との間に酸素透過防止層を挟んだ構造とするこ
とで、その製造工程中、トンネルバリア層とする絶縁性
酸化物膜を得る目的で酸化処理を施す工程において、利
用される酸素の透過は、酸素透過防止層よりも下層の下
部強磁性層に達することが阻止される。その結果、酸化
処理をやや過剰に行った際にも、下部強磁性層の部分的
な酸化による、酸化物強磁性層の形成を防止することが
できる。あるいは、酸化処理をやや過剰に行う条件を選
択することで、トンネルバリア層に対する酸化処理が不
足して、トンネルバリア層用の原材料が一部酸化処理を
受けずに残留する事態を未然に防止できる。従って、ト
ンネルバリア層を極薄くする際にも、下部強磁性層の部
分的な酸化による、酸化物強磁性層の形成を回避しつ
つ、トンネルバリア層とする絶縁性酸化物膜を得る目的
の酸化処理は十分に実施することが可能となり、リーク
電流の要因となる酸化処理の不足も効果的に排除でき
る。この効果に因って、良好な絶縁性を有し、膜厚は極
薄いトンネルバリア層を用いて、トンネル電流の低下を
引き起こす不要な酸化物強磁性層の形成もなく、トンネ
ル磁気抵抗効果素子の低抵抗化を実現できる。加えて、
トンネルバリア層と接して、酸素透過防止層との間に、
高スピン分極率を持つ酸化物磁性体層をも付与する形態
とすると、高磁気抵抗変化率のトンネル磁気抵抗効果素
子を得ることができる。素子サイズを小さくした際に
も、トンネル接合自体の低抵抗化が図られ、同時に高磁
気抵抗変化率をも達成できるので、本発明のトンネル磁
気抵抗効果素子を利用して、高性能な磁気ランダム・ア
クセス・メモリを作製することができる。また、素子サ
イズを小さくできる利点を生かし、高密度のハードディ
スク装置における、読み取り・再生ヘッドへの応用も可
能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るトンネル磁気抵抗効果素子の第一
の実施形態を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明に係るトンネル磁気抵抗効果素子の第二
の実施形態を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明に係るトンネル磁気抵抗効果素子の第三
の実施形態を模式的に示す断面図である。
【図4】従来のトンネル磁気抵抗効果を利用した磁性薄
膜メモリの一構成例を模式的に示す断面図である。
【図5】従来のトンネル磁気抵抗効果素子において、プ
ラズマ酸化を行い過ぎた際の酸化物強磁性層が形成され
た構造を模式的に示す断面図である。
【図6】従来のトンネル磁気抵抗効果素子において、プ
ラズマ酸化が足りなかった際の酸化されていないアルミ
ニウム原子が残留する構造を模式的に示す断面図であ
る。
【図7】従来のトンネル磁気抵抗効果素子の構成を模式
的に示す断面図である。
【図8】トンネル磁気抵抗効果素子において、磁気抵抗
効果を実際に測定するための全体素子構造を模式的に示
す断面図である。
【符号の説明】
1,15 上部電極層 2 上部垂直磁気異方性強磁性層 3,12,18,23 トンネルバリア層 4 酸素透過防止層 5 上部垂直磁気異方性強磁性層 6,20 下部電極層 7,21,26 基板 8 高スピン分極率膜(酸化物磁性体層) 9 上部面内磁気異方性強磁性層 10 下部面内磁気異方性強磁性層 11 強磁性層 13 強磁性層 14 印加電圧 16 層間絶縁層 17,22 上部強磁性層 19,25 下部強磁性層 24 酸化物強磁性層 27 酸化されていないアルミニウム原子 28 酸化が足りなかった絶縁膜
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) H01F 10/32 H01L 43/12 H01L 43/12 G01R 33/06 R

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基板と近接する側から順に、下部強磁性
    層と上部強磁性層が、トンネルバリア層をその間に挟ん
    で設けられているトンネル磁気抵抗効果素子であって、 前記トンネルバリア層は、酸化膜からなり、 前記下部強磁性層と上部強磁性層は、垂直磁気異方性を
    有する磁性体からなり、 さらに、前記下部強磁性層とトンネルバリア層との間に
    導電性の非磁性材料からなる酸素透過防止層が設けられ
    ていることを特徴とするトンネル磁気抵抗効果素子。
  2. 【請求項2】 前記垂直磁気異方性を持つ磁性体は、第
    一の成分として、ガドリニウム、テルビウム、ディスプ
    ロシウム、ホロミウムのうちから選択される一種または
    二種の成分と、第二の成分として、鉄、コバルト、ニッ
    ケルのうちから選択される一種または二種の成分とを含
    み、前記第一の成分と第二の成分とからなる、二元系ま
    たは三元系の合金であることを特徴とする請求項1に記
    載のトンネル磁気抵抗効果素子。
  3. 【請求項3】 前記酸素透過防止層は、貴金属からなる
    ことを特徴とする請求項1または2に記載のトンネル磁
    気抵抗効果素子。
  4. 【請求項4】 前記貴金属は、プラチナ、パラジウム、
    ロジウム、イリジウム、金、銀のうちのいずれか一種、
    あるいは、前記6種のうち、一又は二種以上を主成分と
    して含む合金であることを特徴とする請求項3記載のト
    ンネル磁気抵抗効果素子。
  5. 【請求項5】 前記下部強磁性層とトンネルバリア層と
    の間に設けられている酸素透過防止層に加え、前記酸素
    透過防止層とトンネルバリア層との間に高いスピン分極
    率を持つ酸化物磁性層が設けられていることを特徴とす
    る請求項1〜4のいずれか記載のトンネル磁気抵抗効果
    素子。
  6. 【請求項6】 基板と近接する側から順に、下部強磁性
    層と上部強磁性層が、トンネルバリア層をその間に挟ん
    で設けられているトンネル磁気抵抗効果素子であって、 前記トンネルバリア層は、酸化膜からなり、 前記下部強磁性層と上部強磁性層は、面内平行磁気異方
    性を有する磁性体からなり、 さらに、前記下部強磁性層とトンネルバリア層との間に
    導電性の非磁性材料からなる酸素透過防止層が設けら
    れ、 加えて、前記酸素透過防止層とトンネルバリア層との間
    に高いスピン分極率を持つ酸化物磁性体層が設けられて
    いることを特徴とするトンネル磁気抵抗効果素子。
  7. 【請求項7】 前記高いスピン分極率を持つ酸化物磁性
    体層は、 鉄またはクロムの酸化物と、La、Mn、Srのうちの一種ま
    たは二種以上の元素を含む混合酸化物とからなる群から
    選択される一種以上の酸化物からなることを特徴とする
    請求項5または6に記載のトンネル磁気抵抗効果素子。
  8. 【請求項8】 前記トンネルバリア層が酸化アルミニウ
    ムからなることを特徴とする請求項5または6に記載の
    トンネル磁気抵抗効果素子。
  9. 【請求項9】 前記垂直磁気異方性を持つ磁性体は、第
    一の成分として、ガドリニウム、テルビウム、ディスプ
    ロシウム、ホロミウムのうちから選択される一種または
    二種の成分と、第二の成分として、鉄、コバルト、ニッ
    ケルのうちから選択される1または2種の成分とを含
    み、前記第一の成分と第二の成分とからなる二元系また
    は三元系の合金であることを特徴とする請求項5に記載
    のトンネル磁気抵抗効果素子。
  10. 【請求項10】 前記面内平行磁気異方性を持つ磁性体
    は、鉄、コバルト、ニッケルのうちから選択されるいず
    れか一種、あるいは、鉄、コバルト、ニッケルのうちか
    ら選択される一種または二種以上を主成分として含む合
    金のいずれか1種であることを特徴とする請求項6に記
    載のトンネル磁気抵抗効果素子。
  11. 【請求項11】 トンネル磁気抵抗効果素子を構成する
    各層を積層して作製する一連の工程として、基板と近接
    させて、下部強磁性層を形成する工程、この下部強磁性
    層上に導電性の非磁性材料からなる酸素透過防止層を形
    成する工程、この酸素透過防止層上に高いスピン分極率
    を持つ酸化物磁性体層を形成する工程、この高いスピン
    分極率を持つ酸化物磁性体層上にトンネルバリア層を形
    成する工程、このトンネルバリア層の上に上部強磁性層
    を形成する工程を有し、前記トンネルバリア層を形成す
    る工程では、前記トンネルバリア層は、酸化物の膜から
    なり、前記高いスピン分極率を持つ酸化物磁性体層上
    に、前記酸化物の原材料あるいは前記酸化物自体からな
    る膜を形成し、膜に形成された前記酸化物の原材料を酸
    化する、または、前記酸化物に追酸化処理を施すことに
    より、所定の酸化物の膜に変換することを特徴とするト
    ンネル磁気抵抗効果素子の製造方法。
  12. 【請求項12】 前記高いスピン分極率を持つ酸化物磁
    性体層が、鉄またはクロムの酸化物により形成されてい
    ることを特徴とする請求項11に記載のトンネル磁気抵
    抗効果素子の製造方法。
  13. 【請求項13】 前記トンネルバリア層は、酸化アルミ
    ニウムであり、その原材料として、アルミニウムまたは
    酸化アルミニウムを用いることを特徴とする請求項11
    に記載のトンネル磁気抵抗効果素子の製造方法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2007005803A (ja) * 2005-06-22 2007-01-11 Tdk Corp 磁気抵抗素子及び装置
JP2012104825A (ja) * 2010-11-05 2012-05-31 Grandis Inc スイッチングが改良されたハイブリッド磁気トンネル接合要素を提供するための方法およびシステム
JP2014529743A (ja) * 2011-08-30 2014-11-13 ジャンス マルチディメンション テクノロジー シーオー., エルティーディー 3軸磁場センサ

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JP2012104825A (ja) * 2010-11-05 2012-05-31 Grandis Inc スイッチングが改良されたハイブリッド磁気トンネル接合要素を提供するための方法およびシステム
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