JP2002289411A - 摺動抵抗器 - Google Patents

摺動抵抗器

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JP2002289411A
JP2002289411A JP2001086020A JP2001086020A JP2002289411A JP 2002289411 A JP2002289411 A JP 2002289411A JP 2001086020 A JP2001086020 A JP 2001086020A JP 2001086020 A JP2001086020 A JP 2001086020A JP 2002289411 A JP2002289411 A JP 2002289411A
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Shinji Totokawa
真志 都外川
Hiroyuki Yoshida
浩之 吉田
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Denso Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 摩耗を低減しつつ、電気的導通性が安定維持
できる摺動抵抗器を提供する。 【解決手段】 基板20の表面に配設された摺動抵抗体
2(21、22)と、摺動抵抗体2(21、22)上を
摺動するコンタクト3(31、32)を備えた摺動抵抗
器1において、摺動抵抗体2(21、22)は、コンタ
クト3(31、32)の硬度以上の硬度を有するカーボ
ン蒸着膜DLCからなる。なお、カーボン蒸着膜DLC
は、ダイヤモンド構造とグラファイト構造とが所定の比
率で混在したアモルファス構造を有し、アモルファス構
造が緻密化されている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、摺動抵抗器に関
し、特に耐摩耗性と電気的導通安定性を備える摺動抵抗
体およびそれを用いた摺動抵抗器に関する。
【0002】
【従来の技術】金属ブラシいわゆる接点コンタクトを接
触摺動させることで可変抵抗とする、樹脂製摺動抵抗体
を備えた摺動抵抗器が知られている(特開平4−187
03号公報等)。
【0003】この摺動抵抗体は、カーボンブラックを樹
脂中に混練してなる厚膜抵抗体であって、カーボンブラ
ックとしては、アセチレンブラック、ファーネスブラッ
ク等の導電性カーボンが用いられ、また樹脂には、エポ
キシ樹脂等が用いられている。
【0004】このため、接点コンタクトと摺動抵抗体が
継続的に摺動摩擦する結果、複合材料である摺動抵抗体
は、摩耗の過程で、カーボンブラックと樹脂とに完全分
離していた。場合によっては、摺動抵抗体の摩耗粉、特
に樹脂が、摺動軌跡上に付着、堆積すると、接点コンタ
クトと摺動抵抗体との電気的接触が不安定、すなわち電
気的導通性が不安定となることがある。
【0005】この対策として、特開平4−18703号
公報によれば、摺動抵抗体中にアルミナ等の無機成分を
添加して、摺動抵抗体の摩耗を抑制し、摺動抵抗器の寿
命向上を図っている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】従来構造ではいずれ
も、ある程度摩耗が進むと、樹脂が摺動軌跡上に付着、
堆積するので、電気的導通性が不安定となる。
【0007】すなわち、実用範囲内で、寿命向上の飛躍
的向上は望めない。
【0008】本発明は、このような事情を考慮してなさ
れたものであり、その目的は、摩耗を低減しつつ、電気
的導通性が安定維持できる摺動抵抗器を提供することに
ある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の請求項1による
と、基板の表面に配設された摺動抵抗体と、摺動抵抗体
上を摺動するコンタクトを備えた摺動抵抗器において、
摺動抵抗体は、コンタクトの硬度以上の硬度を有するカ
ーボン蒸着膜からなる。
【0010】摺動抵抗体が、コンタクトの硬度以上の硬
度を有するカーボン蒸着膜で形成されるので、コンタク
トが摺動抵抗体上を継続的に摺動したとしても、摺動抵
抗体の摩耗防止が可能である。
【0011】本発明の請求項2によると、基板の表面に
配設された摺動抵抗体と、摺動抵抗体上を摺動するコン
タクトを備えた摺動抵抗器において、コンタクトは、貴
金属からなり、摺動抵抗体はカーボン蒸着膜から形成さ
れるとともに、コンタクトの表面にはカーボン蒸着膜が
コーティングしてある。
【0012】すなわち、摺動抵抗体はカーボン蒸着膜か
ら形成されつつ、貴金属のコンタクトの表面はカーボン
蒸着膜によりコーティングすなわち薄膜成形される。
【0013】このため、摺動抵抗体とコンタクトとが摺
動するそれぞれの表面は同材質であるので、摺動抵抗体
とコンタクトの双方の摩耗防止が可能で、かつ、コンタ
クトの表面を形成するカーボン蒸着膜は薄膜成形される
ので、カーボン蒸着膜によるコンタクトの導電特性への
影響をきわめて小さくすることが可能である。
【0014】請求項1または請求項2に記載の上記カー
ボン蒸着膜は、本発明の請求項3に記載のように、ダイ
ヤモンド構造とグラファイト構造とが所定の比率で混在
したアモルファス構造を有し、アモルファス構造が緻密
化されている。
【0015】このため、絶縁物であるダイヤモンド構造
と、導電物であるグラファイト構造が混在したアモルフ
ァス構造に起因して、その混在比率を所定の範囲にすれ
ば、分子レベルで存在するアモルファス構造により、所
望の硬度と、抵抗体としての導電性を有することが可能
である。
【0016】これにより、カーボン蒸着膜は、分子レベ
ルでの所定の硬度と導電特性を有するので、摩耗が生じ
たとしたとしても、摩耗粉が導電物と絶縁物に分離して
しまうことはない。
【0017】しかも、カーボン蒸着膜すなわちアモルフ
ァス構造が緻密化されているので、カーボン蒸着膜の表
面硬度の向上と、表面粗さの向上すなわち摩擦係数低減
が可能である。
【0018】本発明の請求項4によれば、緻密化された
カーボン蒸着膜は、摩擦係数が0.2以下である。
【0019】このため、コンタクトが摺動する摺動抵抗
体の表面は、摺動摩擦抵抗を低く抑えることができるの
で、摺動摩擦による表面の面荒れにより生じる摩耗の防
止が可能である。
【0020】請求項3または請求項4に対応する上記所
定の混在比率は、請求項5に記載のように、ラマン分光
分析法のラマンスペクトルにおいて、Gバンド(155
0cm-1近傍)とDバンド(1350cm-1近傍)のラ
マン強度比が0.6〜1.2の範囲となる比率であるこ
とが望ましい。
【0021】これにより、カーボン蒸着膜は、少なくと
も摺動抵抗体としての基本特性である導電性を満たし、
さらに耐摩耗性、および摺動摩擦抵抗が低く抑えられる
結果、摺動性の向上が可能である。
【0022】請求項6によれば、カーボン蒸着膜は、水
素を含む不純物を有しており、前記水素の残存量が10
重量%以下である。
【0023】耐摩耗性を向上するために意図的に添加す
る添加物は、上述の不純物を除くとすると、一般に不純
物は硬度低下を招くので、不純物である水素は、残存量
を10重量%以下にすることが望ましい。
【0024】これにより、例えば、上記所定の混在比率
によるアモルファス構造のカーボン蒸着膜の導電性、耐
摩耗性、摺動性の各特性が安定して得られる。
【0025】請求項7によれば、カーボン蒸着膜の導電
性が、体積固有抵抗として、0.01〜10Ω・cmの
範囲にある。
【0026】これにより、カーボン蒸着膜は、摺動抵抗
器用の摺動抵抗体として好適である。
【0027】請求項1に記載のコンタクトは、請求項8
に記載のように、コンタクトの表面にロジウムメッキ処
理がなされていてもよい。
【0028】これにより、耐摩耗性が向上した摺動抵抗
体により、逆にコンタクトの摩耗量が増加するのを防止
できる。
【0029】
【発明の実施の形態】以下、本発明の摺動抵抗器を具体
化した実施形態を図面に従って説明する。
【0030】図1は、本発明の実施形態の摺動抵抗器を
内蔵するポテンショメータを示す平面図である。図2
は、図1のポテンショメータをII−IIからみた断面
図である。
【0031】図3は、本発明の実施形態である摺動抵抗
器の構成を表す構成図であって、図3(a)は、平面
図、図3(b)はA−Aからみた断面図、図3(c)
は、側面図である。
【0032】図1〜図3に示すように、本発明に係わる
摺動抵抗器1は、抵抗体基板20の表面に配設された摺
動抵抗体2と、摺動抵抗体2上を摺動するコンタクト3
とよりなる。
【0033】以下、本発明の摺動抵抗器1を自動車用ポ
テンショメータに適用して、具体化した実施形態につい
て説明する。
【0034】図1、図2に示すように、ポテンショメー
タ10は、摺動抵抗器1と、外部からの回転が伝達され
る回転筒体30と、ケース11とを含んで構成され、回
転位置を検出する。
【0035】摺動抵抗器1は、図1〜図3に示すよう
に、ポテンショメータ10の基板20上に、導電性を有
するカーボン蒸着膜からなる摺動抵抗体2が配設されて
いる。
【0036】摺動抵抗体2は、図2、図3に示すよう
に、回転筒体30の回転中心突起302に対応する、抵
抗体基板20側に設けられた嵌合孔202を中心とする
同心円状に形成された第1の摺動抵抗体21(内側集電
用)と、この第1摺動抵抗体21の外周に形成された第
2摺動抵抗体22(外側出力用)とからなる。言い換え
ると、摺動抵抗体2は、後述する2つのコンタクト3が
移動する摺動軌跡に対応して、円弧状に2列に並べた内
側の第1の摺動抵抗体21と外側の第2の摺動抵抗体2
2とより構成されている。
【0037】そして、内側の第1の摺動抵抗体21の一
端部と、外側の第2の摺動抵抗体22の両端部は、ケー
ス11に配された3つの電気端子12との電気的導通を
図るための接点部23を形成している。なお、ケース1
1は、ポテンショメータ10の外郭を形成するものであ
る。
【0038】また、上記2つの摺動抵抗体21、22
は、いずれも後述するダイヤモンド構造とグラファイト
構造とが混在したアモルファス構造からなるカーボン蒸
着膜で形成されている。
【0039】なお、第1、第2の摺動抵抗体21、22
すなわち摺動抵抗体2を形成する上記カーボン蒸着膜の
詳細については、後述する。
【0040】次に、コンタクト3は、図3(a)、
(c)に示すように、回転筒体30の抵抗体基板20と
の対向面側に固定配設されている。詳しくは、図3
(a)に示すように、コンタクト3は、導電板39から
二股に分岐して設けられた第1のコンタクト31と第2
のコンタクト32とにより構成されており、回転筒体3
0の上部に、導電板39を介して、固定されている。
【0041】このコンタクト3(詳しくは、第1、第2
のコンタクト31、32)は、6元合金等の貴金属また
は貴金属合金からなり、その硬度(詳しくは、ビッカー
ス硬度)は、Hv200〜300の範囲にある。
【0042】また、図2に示すように、ポテンショメー
タ10には、ケース11と摺動抵抗体2を配設した基板
20とにより囲まれた接点室4が設けてある。この接点
室4内には、上記コンタクト3を有する回転筒体30が
回動可能に配設されている。
【0043】上述した構成を有するポテンショメータ
は、回転筒体30の回転に伴い摺動抵抗体2上を摺動す
ることで、コンタクト3の位置に応じた電圧が端子23
より出力される。
【0044】ここで、本発明の摺動抵抗器1の特徴であ
るカーボン蒸着膜からなる摺動抵抗体2(詳しくは、第
1、第2の摺動抵抗体21、22)について、以下説明
する。
【0045】まず、摺動抵抗体2を形成するカーボン蒸
着膜DLCは、コンタクト3(詳しくは、第1、第2の
コンタクト31、32)の硬度以上の硬度を有する。こ
のカーボン蒸着膜DLCは、後述するダイヤモンド構造
とグラファイト構造とが混在したアモルファス構造によ
り、硬度(詳しくは、ビッカース硬度)がHv300以
上とすることが可能である。
【0046】このため、コンタクト3の硬度(Hv20
0〜300)に比べて、摺動抵抗体2は、ダイヤモンド
構造とグラファイト構造とが混在したアモルファス構造
からなる硬度がHv300以上のカーボン蒸着膜DLC
で構成されるので、摺動抵抗体2が、コンタクト3の硬
度と同等以上の硬度を有することができる。
【0047】したがって、コンタクト3の硬度以上に硬
度が大きい摺動抵抗体2は、コンタクト3が摺動抵抗体
2上を継続的に摺動したとしても、摺動抵抗体2の摩耗
防止が可能である。
【0048】次に、カーボン蒸着膜DLCの摺動抵抗体
2を形成するダイヤモンド構造とグラファイト構造とが
混在したアモルファス構造について、以下説明する。な
お、本実施形態において、DLCとは、Diamond
−Like Carbonの略語として呼ぶ。
【0049】カーボン蒸着膜DLCは、その主要成分が
カーボン(C)であり、含有不純物成分としては水素
(H)、酸素(O)を含んでいる。このカーボン蒸着膜
DLCは、後述するPVD、P−CVD等プラズマを用
いた成膜方法により、カーボンの分子構造において、結
晶性のダイヤモンド構造とグラファイト構造とが混在し
たアモルファス構造を形成する。
【0050】ダイヤモンド構造とは、単結晶体としては
いわゆるダイヤモンドであって、完全な絶縁体であり
(抵抗値>1013Ω)、かつ、非常に硬いという特徴を
有する。一方、グラファイト構造とは、単結晶体として
はいわゆるグラファイトであって、高い導電性を有し
(抵抗値>10-13Ω)、滑り性が良いという特徴を有
する。
【0051】このため、このダイヤモンド構造とグラフ
ァイト構造とが混在したアモルファス構造に起因して、
その混在比率を後述の所定の範囲に設定すれば、分子レ
ベルで存在するアモルファス構造により、所望の硬度
と、抵抗体としての導電性を有することが可能である。
【0052】これにより、コンタクト3が摺動抵抗体2
上を継続的に摺動することで摺動抵抗体2の摩耗が生じ
てしまったとしても、すなわちカーボン蒸着膜DLCが
摩耗するようなことがあったとしても、カーボン蒸着膜
DLCは、分子レベルでの所定の硬度と導電特性を有す
るので、摩耗粉が導電物と絶縁物に分離してしまうこと
はない。
【0053】したがって、カーボンブラックを樹脂中に
混練してなる、従来の樹脂製摺動抵抗体において、その
摩耗過程で、導電物のカーボンブラックと絶縁物の樹脂
に分離してしまった結果、摺動軌跡上に付着した樹脂に
起因して、コンタクトと摺動抵抗体との電気的接触が不
安定、すなわち電気的導電性が不安定となる現象を生じ
る場合があるが、本発明の摺動抵抗体2では、このよう
な現象を確実に防止できる。
【0054】なお、このカーボン蒸着膜DLCの成膜
は、PVD、P−CDV等のプラズマを用いた製造方法
にて形成する。
【0055】PVD(Physical Vapor
Depositionの略語で、いわゆる物理蒸着法
の)成膜方法については、例えば原料ガスとしてベンゼ
ン(C 66)を用いてプラズマ化したイオンプレーティ
ング法、或いは、固体カーボン(C)をターゲットとし
たイオンスパッタリング法等を適用できる。なお、上記
イオンプレーティング法は、後述する水素の残存量を低
減できる特徴を有しており望ましい。
【0056】また、P−CVD(Plasma−Che
mical Vapor Depositionの略語
で、いわゆるプラズマ化学蒸着法の)成膜方法について
は、メタン(CH4)等の原料ガスを用いたプラズマに
より形成する方法を適用することができる。
【0057】次に、本発明の摺動抵抗体2のカーボン蒸
着膜DLC、すなわち上記アモルファス構造は、上記成
膜方法における成膜条件を例えばバイアス電圧を大きく
する等で行なうことにより、緻密化されて形成されてい
てもよい。
【0058】これにより、カーボン蒸着膜DLCの表面
硬度の向上と、表面粗さの向上すなわち摩擦係数低減が
可能である。
【0059】詳しくは、この緻密化されたカーボン蒸着
膜DLCは、表面硬度をHv300以上、かつ表面粗度
をRZ3μm以下とすることが容易に可能である。
【0060】このとき、RZ3μm以下である表面粗度
に起因して、摩擦係数(詳しくは、ドライ状態の摩擦係
数)が、0.2以下とすることができる。
【0061】このため、コンタクト3が摺動する摺動抵
抗体2の表面は、摩擦係数に応じて摺動摩擦抵抗を低く
抑えることができるので、摺動摩擦による表面の面荒れ
によって生じる摩耗の防止が可能である。
【0062】ここで、上述の特徴を有するカーボン蒸着
膜DLCの物性、特に構造の特定方法について、図4に
従って以下説明する。
【0063】図4は、本発明の実施形態の要部である摺
動抵抗体、つまりカーボン蒸着膜DLCの物性を表すラ
マン分光分析法によるラマンスペクトルのグラフであ
る。なお、図4の横軸は、ラマンシフトいわゆる波数
(cm-1)を示し、縦軸は、相対強度を示す。
【0064】グラファイト構造を反映した部分は、波数
1550cm-1近傍(いわゆるGバンド)に、一方アモ
ルファスな部分は、波数1350cm-1近傍(いわゆる
Dバンド)に現れる。
【0065】そこで、ラマン分光測定には日本分光
(株)製NRS−1000を用いて、Gバンド(155
0cm-1近傍)とDバンド(1350cm-1近傍)のラ
マン強度比を実験的に求めた結果から、カーボン蒸着膜
DLCの物性をこの強度比の範囲にて、特定した。
【0066】すなわち、波数1550cm-1近傍と波数
1350cm-1近傍のピーク部の強度比、すなわちラマ
ン強度比は、0.6〜1.2の範囲が望ましい。
【0067】強度比が0.6より小さくなると、カーボ
ン蒸着膜DLCの所望の導電性が得られなくなる。この
状態(強度比が0.6以下)で導電性を確保しようとす
れば、カーボン蒸着膜DLCに含有する非導電性物質、
例えば水素(H)を極力低減させること、或いは逆に、
導電性の金属成分を添加する必要が生じて、摺動性が損
なわれてしまう結果となる。
【0068】一方、強度比が1.2より大きくなると、
カーボン蒸着膜DLCの導電性が低くなりすぎるととも
に、膜質がもろくなってしまうことになる。
【0069】このため、上記ラマン強度比を、0.6〜
1.2の範囲に設定するので、カーボン蒸着膜DLC
は、少なくとも摺動抵抗体2としての基本特性である後
述の所定の導電性を満たし、さらに耐摩耗性の向上(詳
しくは、硬度の向上、および摩擦係数の低減)、および
摺動摩擦抵抗を低く抑える摺動性の向上(詳しくは、摩
擦係数の低減)が可能である。
【0070】なお、本実施形態の摺動抵抗器1の摺動抵
抗体2としての導電性において、カーボン蒸着膜DLC
の導電性が、体積固有抵抗で表される0.01〜10Ω
・cmの範囲で得られる。これにより、自動車用ポテン
ショメータ10等に適用する摺動抵抗器1の摺動抵抗体
2として好適である。
【0071】ここで、カーボン蒸着膜DLCにおいて、
不純物として含まれる水素(H)の残存量は、10重量
%以下であることが望ましい。なお、逆に、この残存量
が多い場合には、カーボン蒸着膜DLCの体積固有抵抗
が大きくなり、硬度低下すなわち耐摩耗性が低下するこ
とになる。
【0072】このため、水素(H)の残存量を10重量
%以下にするので、例えば、上記所定の混在比率(詳し
くは、ラマン強度比が0.6〜1.2の範囲)によるア
モルファス構造のカーボン蒸着膜DLCの導電性、耐摩
耗性、摺動性の各特性が安定して得られる。
【0073】次に、本発明の摺動抵抗器1の寿命加速試
験を実施し、耐摩耗性向上等の効果を確認したので、図
5に従って以下説明する。
【0074】この寿命加速試験としては、雰囲気温度を
120℃と−30℃との間で繰返す冷熱作動耐久試験等
を行い、摩耗量と、寿命を評価したものである。
【0075】なお、図5中の実施例―1、実施例―2、
実施例―3は、図4に示すそれぞれのラマン分光分析法
によるラマンスペクトルに対応する。また、比較例とし
て、従来のポリマー系樹脂製抵抗体を用いた。
【0076】図5に示す如く、実施例―1、実施例―
2、実施例―3は、各硬度がHv523、542、58
0であり、本発明の摺動抵抗体2であるカーボン蒸着膜
DLCの硬度(Hv300以上)を満足する。これに対
して、比較例のポリマー系樹脂製抵抗体の硬度は、Hv
55と極めて低い。
【0077】このため、比較例が5μm摩耗しているの
に対し、実施例―1、実施例―2、実施例―3は、摺動
抵抗体2に摺動軌跡が僅かに確認できる程度であり、そ
の摩耗量も0.1μm以下という測定誤差範囲内の値し
か認められず、略摩耗しないと判断できる。
【0078】したがって、図5に示すように、寿命加速
試験結果の比較においても、比較例は、100万サイク
ルを限界としたのに対して、本発明の摺動抵抗体2のカ
ーボン蒸着膜DLCでは、いずれも200万サイクル以
上と寿命が飛躍的に向上できる。
【0079】(変形例)上述の実施形態では、摩耗を低
減しつつ、電気的導通性が安定維持できる摺動抵抗器を
提供するため、摺動抵抗体2を、カーボン蒸着膜DLC
からなる厚膜抵抗体で説明したが、近年要請されている
メンテナンスフリーな製品提供の観点から、変形例とし
て、コンタクト3の表面に、カーボン蒸着膜DLC、あ
るいはロジムメッキいわゆるRhメッキ膜が形成されて
いてもよい。
【0080】このコンタクト3の表面に設けるカーボン
蒸着膜DLCは、コーティングすなわち薄膜成形により
形成される。
【0081】このため、摺動抵抗体2とコンタクト3と
が摺動するそれぞれの表面は同材質で形成されるので、
摺動抵抗体2とコンタクト3の双方の摩耗防止を可能に
しつつ、コンタクト3の表面を形成するカーボン蒸着膜
DLCは薄膜成形され、従ってカーボン蒸着膜によるコ
ンタクトの導電特性への影響をきわめて小さくすること
が可能である。
【0082】なお、摺動抵抗体2として実施例−2を用
い、またコンタクト3のコーティングとしては、コーテ
ィングなし、カーボン蒸着膜DLC(Hv542)、R
hメッキ(Hv700)のそれぞれを用いて、前述の寿
命加速試験の試験条件にて耐久試験を実施したところ、
コンタクト3の摩耗は、コーティングなしに比べて、カ
ーボン蒸着膜DLC(Hv542)、Rhメッキ(Hv
700)の方が少なく、硬度が最も高いRhメッキを施
したコンタクト3の摩耗が特に小さい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の摺動抵抗器を内蔵するポテ
ンショメータを示す平面図である。
【図2】図1のポテンショメータをII−IIからみた
断面図である。
【図3】本発明の実施形態である摺動抵抗器の構成を表
す構成図であって、図3(a)は、平面図、図3(b)
はA−Aからみた断面図、図3(c)は、側面図であ
る。
【図4】本発明の実施形態の要部である摺動抵抗体、つ
まりカーボン蒸着膜DLCの物性を表すラマン分光分析
法によるラマンスペクトルのグラフである。
【図5】本発明の摺動抵抗体のカーボン蒸着膜DLCの
効果を確認するため、寿命加速試験を実施した評価結果
を示し、硬度、摩耗量、寿命等を比較した表である。
【符号の説明】
1 摺動抵抗器 2、(21、22) 摺動抵抗体、(第1の摺動抵抗
体、第1の摺動抵抗体) 3、(31、32) コンタクト、(第1のコンタク
ト、第2のコンタクト) 10 ポテンショメータ 20 基板 DLC カーボン蒸着膜

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基板の表面に配設された摺動抵抗体と、
    該摺動抵抗体上を摺動するコンタクトを備えた摺動抵抗
    器において、前記摺動抵抗体は、前記コンタクトの硬度
    以上の硬度を有するカーボン蒸着膜からなることを特徴
    とする摺動抵抗器。
  2. 【請求項2】 基板の表面に配設された摺動抵抗体と、
    該摺動抵抗体上を摺動するコンタクトを備えた摺動抵抗
    器において、 前記コンタクトは、貴金属からなり、 前記摺動抵抗体はカーボン蒸着膜から形成されるととも
    に、前記コンタクトの表面には前記カーボン蒸着膜がコ
    ーティングしてあることを特徴とする摺動抵抗器。
  3. 【請求項3】 前記カーボン蒸着膜は、ダイヤモンド構
    造とグラファイト構造とが所定の比率で混在したアモル
    ファス構造を有し、前記アモルファス構造が緻密化され
    ていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載
    の摺動抵抗器。
  4. 【請求項4】 前記緻密化されたカーボン蒸着膜は、摩
    擦係数が0.2以下であることを特徴とする請求項3に
    記載の摺動抵抗器。
  5. 【請求項5】 前記所定の混在比率は、ラマン分光分析
    法のラマンスペクトルにおいて、Gバンド(1550c
    -1近傍)とDバンド(1350cm-1近傍)のラマン
    強度比が0.6〜1.2の範囲となる比率であることを
    特徴とする請求項3または請求項4に記載の摺動抵抗
    器。
  6. 【請求項6】 前記カーボン蒸着膜は、水素を含む不純
    物を有しており、前記水素の残存量が10重量%以下で
    あることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか
    一項に記載の摺動抵抗器。
  7. 【請求項7】 前記カーボン蒸着膜の導電性が、体積固
    有抵抗として、0.01〜10Ω・cmの範囲にあるこ
    とを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に
    記載の摺動抵抗器。
  8. 【請求項8】 請求項1に記載の前記コンタクトは、前
    記コンタクトの表面にロジウムメッキ処理がなされてい
    ることを特徴とする摺動抵抗器。
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