JP2002246694A - 窒化物半導体発光素子とその製法 - Google Patents

窒化物半導体発光素子とその製法

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JP2002246694A JP2001038282A JP2001038282A JP2002246694A JP 2002246694 A JP2002246694 A JP 2002246694A JP 2001038282 A JP2001038282 A JP 2001038282A JP 2001038282 A JP2001038282 A JP 2001038282A JP 2002246694 A JP2002246694 A JP 2002246694A
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    • H01S5/00Semiconductor lasers
    • H01S5/20Structure or shape of the semiconductor body to guide the optical wave ; Confining structures perpendicular to the optical axis, e.g. index or gain guiding, stripe geometry, broad area lasers, gain tailoring, transverse or lateral reflectors, special cladding structures, MQW barrier reflection layers
    • H01S5/22Structure or shape of the semiconductor body to guide the optical wave ; Confining structures perpendicular to the optical axis, e.g. index or gain guiding, stripe geometry, broad area lasers, gain tailoring, transverse or lateral reflectors, special cladding structures, MQW barrier reflection layers having a ridge or stripe structure
    • H01S5/2201Structure or shape of the semiconductor body to guide the optical wave ; Confining structures perpendicular to the optical axis, e.g. index or gain guiding, stripe geometry, broad area lasers, gain tailoring, transverse or lateral reflectors, special cladding structures, MQW barrier reflection layers having a ridge or stripe structure in a specific crystallographic orientation

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 窒化物半導体発光素子の発光寿命と発光強度
を改善するとともにクラックの発生を防止する。 【解決手段】 窒化物半導体発光素子は、窒化物半導体
の基板表面または窒化物半導体以外の基礎基板上に成長
した窒化物半導体基板層表面上に成長させられた窒化物
半導体下地層102と、この窒化物半導体下地層上でn
型層103〜105とp型層107〜110との間にお
いて量子井戸層または量子井戸層とこれに接する障壁層
とを含む発光層106を含む発光素子構造とを含み、発
光素子構造を成長させた後においてもその表面に平坦化
されていない窪みを含んでいることを特徴としている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、主として高出力動
作寿命が長くてクラックの発生も軽減された窒化物半導
体発光素子とその製法の改善に関するものである。
【0002】
【従来の技術】サファイア基礎基板上に積層されたGa
N基板層上にストライプ状に形成されたSiO2マスク
を成長抑制膜として、選択成長技術を用いて窒化物半導
体下地層を成長させ、そのSiO2マスクの上方の領域
に半導体レーザ素子を形成してレーザ発振寿命を改善す
ることがJournal of Electronic Materials, Vol.27, N
o.4, 1998において報告されている。
【0003】また、GaN基板上にストライプ状に形成
されたSiO2マスクを成長抑制膜として、選択成長技
術を用いて窒化物半導体下地層を成長させ、そのSiO
2マスクの上方の領域に半導体レーザ素子を形成するこ
とによって、その高出力時の発振寿命を改善することが
Japanese Journal of Applied Physics, vol.39(2000)
Pt.2, No.7A, L647において報告されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記のような先行技術
によって作製された窒化物半導体発光素子においても、
その高出力動作寿命のさらなる改善と生産歩留まりの改
善が望まれている。そこで、本発明は、窒化物半導体発
光素子の高出力動作寿命をさらに改善するとともに、そ
の素子におけるクラックの発生を抑制して生産歩留まり
をも改善することを主要な目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明による窒化物半導
体発光素子においては、窒化物半導体の基板表面または
窒化物半導体以外の基礎基板上に成長した窒化物半導体
基板層表面上に成長させられた窒化物半導体下地層と、
この下地層上でn型層とp型層との間において量子井戸
層または量子井戸層とこれに接する障壁層を含む発光層
を含む発光素子構造とを含み、その発光素子構造を成長
させた後においてもその表面に平坦化されていない窪み
を含んでいることを特徴としている。
【0006】なお、成長抑制膜は、ストライプ状態のパ
ターンに形成されていることが好ましい。そして、スト
ライプ状成長抑制膜の長手方向は、マスク基板に含まれ
る窒化物半導体結晶の<1−100>または<11−2
0>の方向に実質的に平行であることが好ましい。
【0007】ストライプ状成長抑制膜の上方に窪みが形
成されており、その窪みの側端部からその成長抑制膜の
幅方向に2μm以上離れかつその成長抑制膜の幅内の領
域の上方に発光素子構造の発光部が含まれていることが
好ましい。その成長抑制膜とその上方の窪みとの間に空
隙が形成される場合もある。
【0008】成長抑制膜の幅は7〜100μmの範囲内
にあることが好ましく、その厚さは0.05〜10μm
の範囲内にあることが好ましい。
【0009】成長抑制膜は、SiO2、SiO、SiNx
およびSiONxの少なくともいずれかの誘電体膜を含
むか、またはWもしくはMoの金属を含んで形成され得
る。
【0010】窒化物半導体下地層は、AlとInの少な
くとも一方を含んでいることが好ましい。
【0011】窒化物半導体下地層はGaNであって、S
i、O、Cl、S、C、Ge、Zn、Cd、Mgおよび
Beの不純物群のうちで少なくとも1種以上を含み、か
つその添加量が1×1017/cm3以上で5×1018
cm3以下であることが好ましい。
【0012】窒化物半導体下地層はAlxGa1-x
(0.01≦x≦0.15)であってもよく、Si、
O、Cl、S、C、Ge、Zn、Cd、MgおよびBe
の不純物群のうちで少なくとも1種を含み、かつその添
加量が3×1017/cm3以上で5×1018/cm3以下
であることが好ましい。
【0013】窒化物半導体下地層はInxGa1-x
(0.01≦x≦0.15)であってもよく、Si、
O、Cl、S、C、Ge、Zn、Cd、MgおよびBe
の不純物群のうちで少なくとも1種を含み、かつその添
加量が1×1017/cm3以上で4×1018/cm3以下
であることが好ましい。
【0014】窪みを2つ以上含む領域上に電極が形成さ
れることが好ましい。同様に、窪みを2つ以上含む領域
上に誘電体膜が形成されることが好ましい。ワイヤボン
ドと窒化物半導体発光素子との間の接合領域は、窪みを
1つ以上含むことが好ましい。
【0015】量子井戸層は、As、P、およびSbのう
ちで1種以上の元素を含んでいることが好ましい。
【0016】窒化物半導体発光素子は、レーザ素子と発
光ダイオード素子のいずれかであり得る。このような窒
化物半導体発光素子は種々の光学装置または半導体発光
装置の構成要素になり得る。
【0017】他方、本発明による窒化物半導体発光素子
の製造方法においては、窒化物半導体の基板表面または
窒化物半導体以外の基礎基板上に成長した窒化物半導体
基板層表面上に窒化物半導体の成長を抑制する成長抑制
膜を部分的に形成してマスク基板とし、このマスク基板
上に窒化物半導体下地層を成長させ、この窒化物半導体
下地層上でn型層とp型層との間において量子井戸層ま
たは量子井戸層とこれに接する障壁層を含む発光層を含
む発光素子構造を成長させる工程を含み、この発光素子
構造を成長させた後においても、その表面に成長抑制膜
の上方において平坦化されていない窪みが形成されるこ
とを特徴としている。
【0018】
【発明の実施の形態】以下において、本発明による種々
の実施の形態について図面を参照しつつ説明するに際し
て、いくつかの用語の意味を予め明らかにしておく。な
お、本願の図面において、長さ、幅、厚さ、深さなどの
寸法関係は図面の明瞭化と簡略化のために適宜に変更さ
れており、実際の寸法関係を表わしてはいない。
【0019】まず、「窒化物半導体基板」とは、Alx
GayInzN(0≦x≦1;0≦y≦1;0≦z≦1;
x+y+z=1)からなる基板を意味する。ただし、窒
化物半導体基板の窒素元素のうちで、その約10%以下
がAs、P、またはSbの元素で置換されてもよい(た
だし、基板の六方晶系が維持されることが前提)。ま
た、窒化物半導体基板中に、Si、O、Cl、S、C、
Ge、Zn、Cd、Mg、またはBeがドーピングされ
てもよい。n型窒化物半導体としては、これらのドーピ
ング材料のうちでも、Si、O、およびClが特に好ま
しい。窒化物半導体基板の主面方位としては、C面{0
001}、A面{11−20}、R面{1−102}、
M面{1−100}、または{1−101}面が好まし
く用いられ得る。また、これらの結晶面方位から2°以
内のオフ角度を有する基板主面であれば、その表面モホ
ロジーが良好であり得る。
【0020】「基礎基板」とは、窒化物半導体以外の基
板を意味する。具体的な基礎基板としては、サファイア
基板、SiC基板、Si基板、またはGaAs基板など
が用いられ得る。
【0021】「成長抑制膜」とは、たとえば図1(a)
に示されているように基板表面上にストライプ状に形成
された膜であって、その膜上では窒化物半導体が成長し
にくい膜を意味する。すなわち、成長抑制膜上では窒化
物半導体の成長速度が遅いかまたは直接的には成長しな
いことを意味する。成長抑制膜の材質としては、Siの
酸化物や窒化物もしくはそれらの化合物、たとえばSi
2、SiO、SiNx、SiONx、またはWやMoな
どの金属を用いることができる。また、図1に示されて
いる成長抑制膜は一方向に沿ったストライプ配列である
が、これらのストライプが互いに交差し合った桝目配列
(図2参照)であってもよい。
【0022】「窒化物半導体基板層」とは、窒化物半導
体基板ではないサファイア基板等の基礎基板を窒化物半
導体発光素子作製のための基板として用いた場合の、マ
スク基板または加工基板を作製するための基礎基板上に
成長した窒化物半導体による層であり、AlxGayIn
zN(0≦x1≦;0≦y≦1;0≦z≦1;x+y+
z=1)からなっている。ただし、この窒化物半導体基
板層中に、Si、O、Cl、S、C、Ge、Zn、C
d、Mg、およびBeの不純物群のうち少なくとも1種
類がドーピングされていてもよい。
【0023】「マスク基板」とは、窒化物半導体基板表
面上に、または基礎基板上で成長した窒化物半導体基板
層表面上に、成長抑制膜が部分的に形成された基板を意
味する。成長抑制膜の幅および成長抑制膜が形成されて
いない部分の幅は一定の周期を有していてもよいし、種
々の異なる幅を有していてもよい。また、成長抑制膜の
厚さに関しても、常に一定の厚さを有していてもよい
し、種々の異なる厚さを有していてもよい。
【0024】「溝」とはたとえば図4に示されているよ
うに基板表面でストライプ状に加工された凹部を意味
し、「丘」とは同様にストライプ状に加工された凸部を
意味する。溝と丘の断面形状は、必ずしも図4で示され
ているような矩形状である必要はなく、凹凸の段差を生
じさせるものであればよい。また、図4に示された溝と
丘は一方向に沿って加工されたストライプ配列である
が、成長抑制膜の場合(図2)と同様に溝または丘が互
いに交差し合った桝目配列であってもよい。
【0025】「加工基板」とは、窒化物半導体基板表面
上に、または基礎基板上で成長した窒化物半導体基板層
表面上に、溝と丘が形成された基板を意味する。溝の幅
と丘の幅は、一定の周期を有していてもよいし、種々に
異なる幅を有していてもよい。また、溝の深さに関して
も、すべての溝が一定の深さを有していてもよいし、種
々に異なる深さを有していてもよい。
【0026】「窒化物半導体下地層」とは、マスク基板
上または加工基板の凹凸表面上に成長させられる層であ
り、AlxGayInzN(0≦x≦1;0≦y≦1;0
≦z≦1;x+y+z=1)からなっている。ただし、
この窒化物半導体下地層中に、Si、O、Cl、S、
C、Ge、Zn、Cd、Mg、およびBeの不純物群の
うちの少なくとも1種がドーピングされてもよい。
【0027】「窪み付き基板」とは、マスク基板上また
は加工基板上に窒化物半導体下地層を被覆させ、その上
の窪みを含む全体的基板を意味する(図3および図5参
照)。
【0028】「被覆膜厚」とは、マスク基板上で成長抑
制膜が形成されていない領域上の窒化物半導体下地層の
膜厚、または加工基板上に窒化物半導体下地層を成長さ
せたときの加工基板の溝底部から窪部を除いた窒化物半
導体下地層の表面までの膜厚を意味する。
【0029】「発光層」とは、1以上の量子井戸層また
はそれと交互に積層された複数の障壁層をも含み、発光
作用を生じさせ得る層を意味する。ただし、単一量子井
戸構造の発光層は、1つの井戸層のみから構成される
か、または障壁層/井戸層/障壁層の積層から構成され
ている。
【0030】「発光素子構造」とは、発光層に加えてそ
れを挟むn型層とp型層をさらに含む構造を意味する。
【0031】「窒化物半導体多層膜構造」とは、窒化物
半導体下地層と発光素子構造とを含むものを意味する。
【0032】「窪み」とは、マスク基板上または加工基
板の凹凸表面上に窒化物半導体下地層または窒化物半導
体多層膜構造を成長被覆させたときに、その窒化物半導
体下地層または窒化物半導体多層膜構造が平坦に埋めら
れない部分(窪みが窒化物半導体下地層の表面にある例
の図3および図5参照)を意味する。特に、本発明にお
ける窪みは、必ず窒化物半導体多層膜構造の表面に存在
していなければならない。ただし、マスク基板上または
加工基板上に窒化物半導体多層膜構造を平坦に被覆させ
た後にエッチングなどで窪みを形成しても、本願の発明
の効果は得られない。窪みが結晶成長後に加工で形成さ
れたか否かは、窒化物半導体多層膜構造の断面を観察す
れば明らかになる。なぜならば、結晶成長終了後に窪み
を加工で形成したならば発光素子構造中の積層における
横方向への連続性がその窪みによって断ち切られるが、
結晶成長に伴って窪みが形成されたならば発光素子構造
中の積層における横方向の連続性がその窪みによって断
ち切られることはなく、その窪みの側壁面に沿って連続
しているからである。
【0033】[実施形態1]まず、本発明者らは、従来
技術に従って窒化物半導体レーザ素子を作製した場合と
本発明に従って窒化物半導体レーザ素子を作製した場合
とによる素子特性の違いを調べた。
【0034】本発明によるケースAとして、図1(a)
に示された窒化物半導体基板(たとえばGaN基板)上
に成長抑制膜を形成したマスク基板上において、完全に
平坦に埋まらないで窪みが形成される窒化物半導体多層
膜構造を成長させて窒化物半導体レーザ素子を形成した
場合、レーザ出力30mWと雰囲気温度60℃の条件の
もとでそのレーザ素子の発振寿命は約18000時間程
度であった。
【0035】また、本発明による他のケースBとして、
図1(b)に示された基礎基板(たとえばサファイア基
板)上方に成長抑制膜を形成したマスク基板上におい
て、完全に平坦に埋まらないで窪みが形成される窒化物
半導体多層膜構造を成長させて窒化物半導体レーザ素子
を形成した場合、レーザ出力30mWと雰囲気温度60
℃の条件のもとでそのレーザ素子の発振寿命は約500
0時間程度であった。
【0036】次に、従来技術によるケースCとして、図
1(a)に示された窒化物半導体基板上に成長抑制膜を
形成したマスク基板上において、表面が完全に平坦に埋
まって窪みが形成されない窒化物半導体多層膜構造を成
長させて窒化物半導体レーザ素子を形成した場合、レー
ザ出力30mWと雰囲気温度60℃の条件のもとでその
レーザ素子の発振寿命は約1500時間程度であった。
【0037】さらに、従来技術による他のケースDとし
て、図1(b)に示された基礎基板上方に成長抑制膜を
形成したマスク基板上において、表面が完全に平坦に埋
まって窪みが形成されない窒化物半導体多層膜構造を成
長させて窒化物半導体レーザ素子を形成した場合、レー
ザ出力30mWと雰囲気温度60℃の条件のもとでその
レーザ素子の発振寿命は約500時間程度であった。
【0038】これらの調査結果が、図10のグラフにプ
ロットされている。この詳細は、後の実施形態で述べら
れるが、ケースAとケースBの場合に(特にケースAの
場合に)発振寿命の非常に長い窒化物半導体レーザ素子
が得られることがわかる。この結果は、各ケースにおけ
る窒化物半導体膜内に存在する結晶格子歪みの大きさや
分布の違いによって生じていると推測される。
【0039】ケースAとケースBでは、表面に窪みを生
じる状態で発光素子が形成されている。他方、ケースC
とケースDでは、表面に窪みを生じることのない従来技
術によってレーザ素子が作製されている。表面に窪みが
生じない場合、成長抑制膜上でその両側から窒化物半導
体多層膜構造の横方向成長が進んで最終的に成長抑制膜
の中央付近上方で合体すれば、その合体部に大きな結晶
格子歪みを生じることになる。
【0040】図1(a)のマスク基板を用いて窒化物半
導体多層膜構造を成長させたケースCの場合の結晶成長
形態が図6(c)に示されている。この場合、まず、成
長抑制膜で被覆されていないGaN基板の窓領域から窒
化物半導体多層膜構造の結晶成長が始まる。この窓領域
に成長する窒化物半導体多層膜構造は、通常の結晶成長
方向(基板の主面に対して垂直方向)に沿って成長す
る。窒化物半導体多層膜構造が成長抑制膜より厚く成長
すれば、成長抑制膜上では基板主面に平行な水平方向へ
の成長(横方向成長)が進むようになり、成長抑制膜上
にも窒化物半導体多層膜構造が形成されるようになる。
そして、成長抑制膜の両側から中央付近まで横方向成長
してきた窒化物半導体多層膜構造が互いに合体して、成
長抑制膜の全面が覆われることになる。このとき、この
膜の合体によって結晶格子ひずみを生じることになる。
他方、ケースAにおける窒化物半導体多層膜構造の結晶
成長形態が図6(a)に示されているが、この場合には
窒化物半導体多層膜構造の表面部分が横方向成長による
合体を窪みを形成することにより、完全には生じていな
いので、合体による結晶格子歪みを軽減することが可能
になっている。このような相違がレーザ素子の発振寿命
に影響を与え、ケースCに比べてケースAの方が発振寿
命が長く、またケースDに比べてケースBの方が発振寿
命が長くなっているものと考えられる。
【0041】また、ケースAとケースBでは、ともに窒
化物半導体多層膜構造表面に窪みが存在するが、レーザ
発振寿命はケースAの方が長くなる。ケースAでは、窒
化物半導体基板を用いている。したがって、基板とその
上に積層している窒化物半導体多層膜構造との間には基
礎基板を用いた場合に比べて熱膨張係数に大きな違いが
ないが、その積層した窒化物半導体多層膜構造特に発光
素子構造においてはレーザ素子構造に含まれるいろいろ
な混晶組成の窒化物半導体層が存在し、それらの層の間
での熱膨張係数差の問題が存在する。この熱膨張係数差
により生じる結晶格子歪みが発振寿命に影響を与えてい
るものと考えられる。他方、ケースBではケースAで述
べた結晶格子歪みの要因に加えて基礎基板としてサファ
イア基板を用いているので、サファイアと窒化物半導体
との間の熱膨張係数差が大きく、窒化物半導体多層膜構
造内にはそれによる大きな結晶歪み成分も存在する。こ
の場合の結晶成長形態が図6(b)に示されているが、
完全には横方向成長を合体させないように窪みを生成
し、横方向成長の合体による結晶格子歪みを軽減して
も、基礎基板を用いることによる結晶格子歪みが大き
く、窒化物半導体基板を用いた場合ほどには結晶格子歪
みを軽減することができない。その結果、ケースAの方
がケースBに比べてレーザ発振寿命が長くなったものと
考えられる。
【0042】なお、ケースAとケースBにおいては、表
面に窪みが形成されることによって結晶格子歪みが緩和
される効果が得られているが、さらに、成長抑制膜とそ
の上方の窪みとの間に空隙が形成されるように窒化物半
導体多層膜構造を成長させれば、その空隙部分でも結晶
格子歪みを緩和させる効果が得られるのでより好まし
い。ただし、この場合にも、窒化物半導体多層膜構造は
少なくとも一部分では連続的に膜成長していることが必
要である。
【0043】以上のように、各種類の基板を用いた場合
において、窒化物半導体多層膜構造内部の結晶格子歪み
の分布や大きさに差が現われ、その結果として半導体レ
ーザ素子の寿命に違いが現われたものと推測される。
【0044】ところで、以上に述べた格子歪みの緩和の
効果は、加工基板を用いた場合でも期待することができ
る。図7(a)と(b)には、加工基板上に窒化物半導
体多層膜構造が成長する際の結晶成長形態が示されてい
る。窒化物半導体多層膜構造の成長は、加工基板に形成
された溝の側壁から横方向に開始し、両側の溝側壁から
成長した結晶が溝中央で合体し、その後は通常の結晶成
長方向に進む。しかし、図7(a)の結晶成長形態で
は、丘の上方に窒化物半導体多層膜構造が完全には平坦
に埋まらない窪みを生じるので、基板主面に平行な水平
方向の結晶歪みが窪みを介して緩和され得る。すなわ
ち、窪みは図7(a)で示された結晶成長形態の溝中央
に集中された結晶歪みを軽減し、窒化物半導体多層膜構
造全体の結晶歪みを緩和させることができる。ただし、
窒化物半導体多層膜構造の成長をさらに進めれば、図7
(b)に示されているように、すべての窪みが平坦に埋
まってしまい、溝内で横方向成長が合体した部分で生じ
る結晶内応力を緩和できないことになってしまう。
【0045】加工基板を用いる場合の結晶成長形態にお
いてさらに好ましくは、図14に示されているように、
丘中央のみならず溝中央にも窪みが形成されることであ
る。このような結晶成長形態を利用することによって、
結晶歪みが集中する部分がなくなるので、結晶歪みが顕
著に緩和された窒化物半導体多層膜構造を形成すること
が可能になる。
【0046】なお、加工基板を用いる場合には成長抑制
膜を使用しないので、マスク基板における成長抑制膜に
よる熱膨張係数差の影響や不純物の影響を受けないとい
う利点もある。
【0047】また、本発明による結晶成長形態を利用す
ることによって、窒化物半導体多層膜構造中のクラック
の発生も抑制し得ることが本発明者らによって見出され
た。このことにより、窒化物半導体レーザ素子の生産歩
留まりが向上する。
【0048】たとえば、ケースAの場合として図6
(a)に示された窒化物半導体基板(たとえばGaN基
板)を用いて表面に窪みがある構造を含む窒化物半導体
レーザ素子を形成した場合、クラック密度は0〜3本/
cm2であった。他方、ケースCとして図6(c)に示
された従来のGaN基板上で表面に窪みが存在しない形
態の窒化物半導体発光素子を形成した場合、従来ではほ
とんどクラックが発生しないと思われていたが、実際に
発光素子を成長させた後のエピウエハ面内には多くのク
ラックが発生していた。これは、発光素子が種々の積層
構造から構成されるためであると考えられる(たとえ
ば、AlGaN層はGaN層に比べて格子定数が小さ
く、InGaN層はGaN層に比べて格子定数が大き
い)。さらに、現在の技術で得られているGaN基板で
は、その基板自体に残留歪みが潜在しているものと考え
られる。したがって、従来のGaN基板上に窒化物半導
体レーザ素子を形成した場合、クラック密度は約5〜8
本/cm2であった。このことから、本発明による結晶
成長形態を利用することによってクラック密度を低減し
得ることがわかった。
【0049】他方、ケースBの場合として図6(b)に
示された異種基板(たとえばサファイア基板)を用いて
表面に窪みがある形態で窒化物半導体レーザ素子を形成
した場合、クラック密度は約3〜5本/cm2であっ
た。しかし、ケースDの場合として、図6(d)に示さ
れたサファイア基板を用いて表面に窪みが存在しない形
態で窒化物半導体レーザ素子を形成した場合、クラック
密度は約7〜10本/cm2であった。
【0050】以上のことから、表面に窪みを生じる形態
で窒化物半導体レーザ素子を形成する場合に、クラック
の発生を抑制し得ることがわかった。このような窪みに
よるクラック発生の抑制効果は、窪みが深ければ深いほ
ど大きく、窪みの分布密度が高ければ高いほど大きかっ
た。なお、窪みの深さや密度を変えるためには、マスク
基板を用いる場合には成長抑制膜の構造を変え、加工基
板を用いる場合には溝と丘の構造を変えることによって
その制御が可能である。
【0051】さらに、本発明における窪みによるクラッ
ク抑制効果は、以下の特徴を有することがわかった。チ
ップ分割された1つの窒化物半導体発光素子内に窪みが
2つ以上含まれることによって、窪みが1つの素子と比
較して、クラック発生率が約30%程度軽減されてい
た。しかも、たとえば図19に示されたリッジストライ
プ構造を有する窒化物半導体発光素子(レーザ素子)の
ように、窪み1と窪み2との間にリッジストライプ部が
設けられた場合、とりわけその発光素子の歩留まりが向
上した。これについて詳細に調べた結果、リッジストラ
イプの長手方向を横切るようなクラックが軽減していた
ことが判明した。これは、リッジストライプ部の両側に
窪みを有することによって、クラックが窒化物半導体発
光素子のリッジストライプ部に侵入することを防止し得
たためであると考えられる。
【0052】また、本発明における窪みは、チップ分割
された1つの窒化物半導体発光素子の電極において以下
の効果を有することがわかった。1つの窒化物半導体発
光素子内に本発明における窪みが2つ以上含まれること
によって、窪みが1つの素子に比較して、電極剥がれに
よる素子不良率が約20%程度軽減されていた。しか
も、たとえば図19に示されたリッジストライプ構造を
有する窒化物半導体発光素子(レーザ素子)のように、
窪み1と窪み2との間にリッジストライプ部が設けられ
た場合、とりわけリッジストライプ部でのp電極112
(パッド電極をも含む)の剥がれが防止され、その発光
素子の歩留まりが向上した。このことから、2つ以上の
窪みを含む領域上に電極が形成されることが好ましく、
より好ましくは窪みと窪みとの間にリッジストライプ部
が設けられて、これらの窪みを含む領域上に電極が形成
されることが好ましいことがわかった。このリッジスト
ライプ部での電極剥がれの防止効果は、誘電体膜の剥が
れについても同様であった。たとえば、図19に示すと
ころのSiO2誘電体膜113についても同様である。
なお、SiO2誘電体膜113の代わりに、SiNxのよ
うな他の誘電体膜が用いられてもよい。
【0053】さらにまた、本発明における窪みは、チッ
プ分割された1つの窒化物半導体素子のワイヤボンドに
おいて以下の効果を有することがわかった。ワイヤボン
ドと窒化物半導体発光素子との間の接合領域に本発明に
おける窪みが1つ以上含まれることによって、ワイヤボ
ンド自体の剥がれまたはワイヤボンドを含む電極の剥が
れが約20%程度軽減されていた。このことから、ワイ
ヤボンドと窒化物半導体発光素子との間の接合領域に本
発明における窪みが1つ以上含まれることが好ましいこ
とがわかった。
【0054】(マスク基板について)本発明におけるマ
スク基板は、窒化物半導体基板を利用する場合にはその
窒化物半導体基板とパターニングされた成長抑制膜から
構成され、基礎基板を利用する場合にはその基礎基板と
その上の窒化物半導体基板層とその上のパターニングさ
れた成長抑制膜から構成される。ただし、窒化物半導体
基板は、その上に形成される窒化物半導体膜との熱膨張
係数差が小さいので、基板の反りが基礎基板を利用した
場合に比べてはるかに小さくなる。したがって、窒化物
半導体基板に形成される成長抑制膜、ひいては窪みの位
置は基礎基板上の窒化物半導体基板層上に形成されるそ
れらに比べて精度よく形成され得る。また、基板の反り
が非常に小さいので、後述の「(発光部の形成位置につ
いて)」において詳細に述べられるが、素子不良(たと
えばレーザ発振寿命の短命化)の起きやすい領域を避け
て発光素子構造を精度よく作製することができる。さら
に、基板の反りが小さいこと自体が新たな歪みやクラッ
クの発生を防止するように作用し、半導体レーザ素子の
長寿命化の効果と他の素子特性不良を軽減する効果をも
生じる。したがって、基礎基板を利用する場合に比べ
て、窒化物半導体基板を利用する方が好ましい。
【0055】(マスク基板を被覆する窒化物半導体下地
層の膜厚について)本発明において、マスク基板上に窒
化物半導体多層膜構造で平坦には被覆されない窪みを形
成するためには、マスク基板を被覆する窒化物半導体下
地層を薄く成長させればよい。ただし、マスク基板の成
長抑制膜領域の上方で下地層には窪みが形成されるが、
半導体レーザ素子を形成するために下地層の平坦な部分
も必要である。したがって、窒化物半導体下地層の被覆
膜厚は、2μm以上で20μm以下であることが好まし
い。その被覆膜厚が2μmよりも薄くなれば、マスク基
板の成長抑制膜の幅や厚さにも依存するが、成長抑制膜
の上方に半導体レーザ素子の発光部を作製できるほどに
平坦な下地層領域を得ることが困難になり始める。他
方、被覆膜厚が20μmよりも厚くなれば、窪みによる
結晶歪みの緩和効果とクラック抑制効果よりもマスク基
板と窒化物半導体下地層(または窒化物半導体多層膜構
造)との間の熱膨張係数差による応力歪みの方が強くな
りすぎて、本発明による効果が十分に発揮されなくなる
可能性が高くなる。
【0056】(マスク幅について)マスク基板の成長抑
制膜は、相対的にそのマスク幅が狭ければ窒化物半導体
下地層で埋没されやすく、広ければ埋没されにくい。本
発明者らの検討結果によれば、マスク基板の成長抑制膜
の上方を窒化物半導体下地層で完全に被覆せずに窪みを
生じさせるためのマスク幅M1は7μm以上で75μm
以下であることが好ましく、7μm以上で100μm以
下であってもよい。ただし、適切なマスク幅M1はマス
ク基板を被覆する窒化物半導体下地層または窒化物半導
体多層膜構造の被覆膜厚に依存するので、成長抑制膜上
方に窪みを生成させる際には、マスク幅M1とともに窒
化物半導体下地層の被覆膜厚をも調整する必要がある。
【0057】マスク幅M1の下限値と上限値は以下の観
点から見積もられた。成長抑制膜のマスク幅M1の下限
値については、発光素子中の発光部の大きさに依存す
る。たとえば、窪みを生じさせるマスク幅M1の成長抑
制膜上方に窒化物半導体レーザ素子を作製する場合、レ
ーザ発振寿命の観点から、そのレーザ素子のリッジスト
ライプ部下方の発光部が図8中の領域Iに属することが
好ましい。リッジストライプ幅は1〜3μmの範囲内で
形成されかつ最小の窪み幅は1μmに見積もることがで
きるので、マスク幅M1の下限値は窪みを含む領域II
の幅=窪み幅(1μm)+2μm×2(図8参照)とス
トライプ幅(1μm)×2とを加えた7μm以上でなけ
ればならない。
【0058】他方、マスク幅M1の上限値には特に制約
はないが、あまりにM1を広くし過ぎればウエハの単位
面積当たりの窪みの密度が減少し、結晶歪の緩和効果や
クラックの抑制効果が低減してしまう。また、ウエハ当
たりのチップ収得率も減少してしまう。したがって、マ
スク幅M1の上限値としては、100μm以下であるこ
とが望まれる。
【0059】以上ではマスク幅のみを変更したマスク基
板について説明されたが、マスク幅のみならず以下に述
べるマスク厚さおよび/またはスペース幅をも変更して
マスク基板を形成してもよいことは言うまでもない。こ
のことは、他の実施形態におけるマスク基板についても
同様である。
【0060】なお、上述の窪み幅については、次のよう
に規定される。窪みの形状は窒化物半導体下地層の成長
条件や成長抑制膜の整列方向によって変化することがあ
り、その幅も一定でないことがある。その場合には、窒
化物半導体レーザ素子のリッジストライプの幅方向に平
行に最も幅の広い部分にて窪み幅を規定するものとす
る。
【0061】(マスク厚さについて)窒化物半導体基板
上に形成するマスクは、相対的にその厚さが薄ければ窒
化物半導体下地層で埋没されやすく、厚ければ埋没され
にくい。本発明者らの検討結果によれば、マスク基板の
成長抑制膜を窒化物半導体下地層で完全に被覆せずに窪
みを生成するためのマスク厚さT1は、0.05μm以
上であることが好ましく、0.01μm以上であること
がより好ましかった。この理由は、マスク厚さT1が
0.05μmよりも薄ければ成長抑制膜が窒化物半導体
下地層の成長前の昇温時に劣化して窒化物半導体基板が
露出してしまう可能性があることと、マスク厚さの制御
が困難になることによる。そして、マスク厚さT1の下
限値が0.1μm以上になれば、そのような問題が殆ど
なくなる。
【0062】マスク厚さT1の上限値に関しては、あま
りに成長抑制膜を厚くし過ぎれば成長抑制膜と窒化物半
導体下地層との熱膨張係数差でマスク基板が割れやすく
なってしまうので、マスク厚さT1は10μm以下であ
ることが望ましい。また、適切なマスク厚さT1はマス
ク基板を被覆する窒化物半導体下地層または窒化物半導
体多層膜構造の被覆膜厚に依存するので、成長抑制膜上
方に窪みを形成する際には、マスク厚さT1とともに窒
化物半導体下地層の被覆膜厚を調整する必要がある。
【0063】(スペース幅について)マスク基板で成長
抑制膜が形成されていないスペース部分では、そのスペ
ース幅は2μm以上で30μm以下であることが望まし
い。なぜならば、スペース幅が狭すぎれば窒化物半導体
下地層の成長初期で基板主面に垂直な方向に成長する結
晶部分の結晶性が悪くなり、その後に横方向に成長する
結晶部分に悪影響を及ぼすので好ましくないからであ
る。また、スペース幅が広すぎればレーザ素子を作製で
きる下地層領域が少なくなり、ウエハあたりのレーザチ
ップ収得率が下がるので好ましくない。
【0064】(成長抑制膜の長手方向について)主面と
して{0001}C面を有する窒化物半導体基板または
基礎基板上の窒化物半導体基板層に形成されたストライ
プ状成長抑制膜の長手方向は、その窒化物半導体結晶の
<1−100>方向に平行であることが最も好ましく、
<11−20>方向に平行であることが次に好ましかっ
た。これらの特定方向に関する成長抑制膜の長手方向
は、{0001}C面内で±5°程度の開き角度を有し
ていても実質的な影響を生じなかった。
【0065】窒化物半導体結晶の<1−100>方向に
沿って成長抑制膜が形成されることの優位性は、窪みが
埋まりにくくて結晶歪みとクラック発生の抑制効果が非
常に高いことである。この方向に沿って形成された成長
抑制膜上に窒化物半導体下地層が成長する場合、窪みの
側壁面としては主に{11−20}面が形成されやす
い。この{11−20}側壁面は図9(a)に示されて
いるように基板の主面に対して垂直であるので、窪みは
ほぼ矩形形状の横断面を有しやすくなる。窪みの横断面
が矩形形状に近い場合、窒化物半導体を構成する原材料
が窪みの奥まで供給されにくく、成長抑制膜が窒化物半
導体下地層で埋没されにくくなる。このことから、マス
ク基板を窒化物半導体下地層で比較的厚く被覆したとし
ても、窪みが埋没される心配がない。また、マスク基板
上に成長した窒化物半導体下地層の結晶歪みがその深い
窪みによって緩和され、クラックの発生も効果的に抑制
され得る。
【0066】他方、窒化物半導体結晶の<11−20>
方向に沿ってストライプ状成長抑制膜が形成されること
の優位性は、窪みの形状が急峻でかつ窪みの位置の揺ら
ぎが小さくなることである。この方向に沿って形成され
た成長抑制膜上に窒化物半導体下地層が成長する場合、
窪みの側壁面には主に{1−101}面が形成されやす
い。この{1−101}側壁面は非常に平坦でかつエッ
ジ部(図5参照)が急峻で蛇行しにくいので、<11−
20>方向に沿った窪みもまっすぐになって蛇行しにく
い。したがって、後述される動作寿命の長い発光素子を
形成するための領域Iを広く取ることができ(発光素子
収得率の向上)、発光素子の形成位置の狂いによる素子
歩留まりの低下をも防止することができる。
【0067】前述の成長抑制膜はすべてストライプ状で
あったが、ストライプ状であることは以下の点において
好ましい。すなわち、窒化物半導体レーザ素子の発振に
寄与する部分(リッジストライプ部の下方)はストライ
プ状であり、後述の好ましいリッジストライプ部形成領
域Iもストライプ状であるので、その発振に寄与する部
分をその好ましい領域I内に作り込むことが容易にな
る。しかし、たとえば図2に示されているように、成長
抑制膜が桝目状に形成されてもよい。
【0068】図2(a)は、異なる2種類の方向のスト
ライプ状成長抑制膜が互いに直交するように形成された
場合におけるマスク基板の上面図を表わしている。図2
(b)は、異なる2種類のストライプ方向が互いに60
度の角度をなすように形成された場合におけるマスク基
板の上面図を表わしている。そして、図2(c)は、異
なる3種類のマスク方向が互いに60度の角度をなすよ
うに形成された場合におけるマスク基板の上面図を表わ
している。
【0069】(マスク基板を被覆する窒化物半導体下地
層について)マスク基板を被覆する窒化物半導体膜から
なる下地層としては、たとえばGaN膜、AlGaN
膜、またはInGaN膜などを用いることができる。ま
た、窒化物半導体下地層中に、Si、O、Cl、S、
C、Ge、Zn、Cd、MgおよびBeの不純物群のう
ちで少なくとも1種の不純物を添加することができる。
【0070】窒化物半導体下地層がGaN膜であれば、
以下の点において好ましい。すなわち、GaN膜は2元
混晶であるので、結晶成長の制御性が良好である。ま
た、GaN膜の表面マイグレーション長はAlGaN膜
に比べて長く、InGaN膜に比べて短いので、成長抑
制膜を埋めて平坦化したい部分は適度にGaN膜で被覆
され、窪みを形成したい部分はGaN膜による被覆が適
度に制限される。窒化物半導体下地層として利用される
GaN膜中の不純物濃度は、1×1017/cm3以上で
5×1018/cm3以下が好ましい。このような濃度範
囲で不純物を添加すれば、窒化物半導体下地層の表面モ
ホロジーが良好になって、結果的に発光層の層厚が均一
化されて素子特性が向上し得る。
【0071】窒化物半導体下地層がAlGaN膜であれ
ば、以下の点において好ましい。AlGaN膜において
は、Alが含まれているので、GaN膜やInGaN膜
に比べて表面マイグレーション長が短い。表面マイグレ
ーション長が短いということは、窪みの横断面形状が急
峻な状態を維持し(たとえば、図5中のエッジ部がだれ
ず)、窪みの底に窒化物半導体が流れ込みにくい(窪み
が埋まりにくい)ことを意味する。また、成長抑制膜の
被覆の際においても、窒化物半導体が溝の底部に流れ込
み難くて、溝の側壁からの結晶成長が促進されるので横
方向成長が顕著になって、結晶歪みを一層緩和させるこ
とが可能となる。AlxGa1-xN膜のAl組成比xは
0.01以上で0.15以下であることが好ましく、
0.01以上で0.07以下であることがより好まし
い。Alの組成比xが0.01よりも小さければ、前述
の表面マイグレーション長が長くなってしまう可能性が
ある。他方、Alの組成比xが0.15よりも大きくな
れば、表面マイグレーション長が短くなりすぎて、下地
層の結晶性自体が良好ではなくなるおそれがある。な
お、AlGaN膜に限らず、この膜と同等の効果は、窒
化物半導体下地層にAlが含まれていれば得られる。ま
た、窒化物半導体下地層として利用されるAlGaN膜
中の不純物濃度は、3×1017/cm3以上で5×10
18/cm3以下が好ましい。このような濃度範囲でAl
と同時に不純物が添加されれば、窒化物半導体下地層の
表面マイグレーション長が短くなって好ましい。このこ
とによって、結晶歪みを一層緩和させることが可能にな
る。
【0072】窒化物半導体下地層がInGaN膜であれ
ば、以下の点において好ましい。InGaN膜において
は、Inが含まれているので、GaN膜やAlGaN膜
と比べて弾性的である。したがって、InGaN膜はマ
スク基板の成長抑制膜上を被覆して、基板からの結晶歪
みを窒化物半導体多層膜構造全体に拡散させ、効果的に
結晶の歪みを緩和させる働きを有する。InxGa1-x
膜のIn組成比xは0.01以上で0.15以下である
ことが好ましく、0.01以上で0.1以下であること
がより好ましい。Inの組成比xが0.01よりも小さ
ければ、Inを含むことによる弾力性の効果が得られに
くくなる可能性がある。また、Inの組成比xが0.1
5よりも大きくなれば、InGaN膜の結晶性が低下し
てしまう可能性がある。なお、InGaN膜に限らず、
この膜と同等の効果は、窒化物半導体下地層にInが含
まれていれば得られる。また、窒化物半導体下地層とし
て利用されるInGaN膜中の不純物濃度は、1×10
17/cm3以上で4×101 8/cm3以下が好ましい。こ
のような濃度範囲でInと同時に不純物が添加されれ
ば、窒化物半導体下地層の表面モホロジーが良好になっ
て、かつ弾性力を保有し得るので好ましい。
【0073】(発光部の形成位置について)本発明者ら
による詳細な検討の結果、窒化物半導体レーザ素子の発
光部(リッジストライプ部の下方)が窪み付き基板のど
の位置に形成されるかに依存して、レーザ発振寿命が変
化することが見出された。ここで発光部とは、発光素子
に電流が注入されて、発光層のうちで実質的に発光に寄
与する部分である。たとえば、リッジストライプ構造を
有する窒化物半導体レーザ素子の場合、電流が狭窄注入
されるリッジストライプ部の下方の発光層部分である。
【0074】図10において、グラフの横軸は窪み付き
基板のマスク中央cからその幅方向にリッジストライプ
端aまでの距離を表わし、縦軸はレーザ出力30mWと
雰囲気温度60℃の条件下でのレーザ発振寿命を表わし
ている。ここで、マスク中央cからリッジストライプ端
aまでの距離(以後、c−a距離と呼ぶ)は、マスク中
央cから幅方向に右側が正で左側が負で表示されてい
る。なお、図10で測定されたケースAの窒化物半導体
レーザ素子においてはGaN基板によるマスク基板が用
いられ、リッジストライプ幅は2μmであり、マスク幅
は18μmであり、スペース幅は15μmであり、そし
てマスク厚さは0.2μmであった。
【0075】図10のケースAからわかるように、リッ
ジストライプ部が成長抑制膜上方に形成された窒化物半
導体レーザ素子のレーザ発振寿命は、リッジストライプ
部がスペース部上方に形成されたものよりも長くなる傾
向を示した。さらに詳細に調べたところ、成長抑制膜上
方の領域内であっても、c−a距離が−5μmよりも大
きくて3μmよりも小さい領域にリッジストライプ部が
形成されれば、レーザ発振寿命が劇的に減少することが
わかった。ここで、リッジストライプ部の幅が2μmで
あることを考慮して、c−a距離−5μmがマスク中央
cからリッジストライプ端bまでの距離(以後、c−b
距離と呼ぶ)に換算されれば、c−b距離は−3μmに
なる。すなわち、窒化物半導体レーザ素子のリッジスト
ライプ部の少なくとも一部がマスク中央cから幅方向に
左右3μm未満の範囲内に含まれるように形成されたと
き、レーザ発振寿命が劇的に減少してしまうことがわか
った。
【0076】これは、次のように理解できる。このケー
スの場合、窪み端d、eはマスク中央cから左右に1μ
m離れた位置に存在することになる。よって、窪み端か
ら窪みの外側方向に2μm未満の範囲内にリッジストラ
イプ部の少なくとも一部が含まれるように形成されたと
き、レーザ発振寿命が劇的に減少することになる。
【0077】このようなレーザ発振寿命が劇的に減少す
る領域(窪み端d、eから窪みの外側方向に左右2μm
未満の範囲)を領域IIと呼ぶことにする。したがっ
て、窒化物半導体レーザ素子のリッジストライプ部は、
マスク幅範囲内で領域IIを除く範囲に、その全体(a
−b幅)が含まれるように形成されることが好ましい。
ここで、マスク幅範囲内において、窪み端d、eから窪
みの外側方向に左右2μm以上離れた範囲を領域Iと呼
ぶことにする。この領域Iは、スペース部上方の領域I
IIに比べても、レーザ発振寿命の長い窒化物半導体レ
ーザ素子を形成することが可能な領域であり、窪み付き
基板のうちで最も好ましい領域である。
【0078】図8では、上述の領域IからIIIが窪み
付き基板の模式的な断面図において示されている。すな
わち、窪み付き基板上に作製される窒化物半導体レーザ
素子の発光部は成長抑制膜上方の領域I内に形成するこ
とが望ましい。なお、マスク幅、スペース幅、およびリ
ッジストライプ幅を種々に変化させても、図10と同様
の傾向を示した。また、マスク基板をGaN基板を含む
ものから基礎基板を含むものに代えても、レーザ発振寿
命はGaN基板を含む場合に比べて短くなるものの、図
10と同様の傾向を示した。したがって、これらの場合
においても、窪み付き基板上に形成すべき発光素子の発
光部形成領域は図8に示す関係にあると考えられる。
【0079】さらに、図10における窒化物半導体レー
ザ素子はリッジストライプ構造を有するものであった
が、電流阻止構造を有する窒化物半導体レーザ素子であ
っても図10と同様の関係を示した(電流阻止構造の場
合では、図10におけるリッジストライプ幅は電流狭窄
される幅に相当する)。すなわち、窒化物半導体レーザ
素子において、発光層に電流が狭窄注入され、レーザ発
振に寄与する部分の下方に図8に示された領域Iが存在
していればよい。
【0080】しかしながら、電流阻止構造を有する窒化
物半導体レーザ素子の場合、上述されたリッジストライ
プ構造を有する素子と比較して、レーザ発振寿命は約2
0〜30%程度低かった。また、電流阻止構造を有する
窒化物半導体レーザ素子は、リッジストライプ構造を有
する素子と比べて、クラック発生による歩留まりの低下
が大きかった。これらの原因については定かではない
が、おそらく、電流阻止層に電流狭窄部分が作製される
工程とその電流狭窄部が作製された電流阻止層上に再び
窒化物半導体を結晶成長させる工程に問題があるのでは
ないかと考えられる。たとえば、電流阻止層に電流狭窄
部が作製される工程ではレジスト材などのマスク材料が
用いられるが、これらのマスク材料が本発明に係る窒化
物半導体発光素子の窪み内に付着していて、そのまま再
成長させられることによって発光素子特性に悪影響をも
たらしたのではないかと考えられる。また、たとえば、
電流狭窄部が作製された電流阻止層上に再び窒化物半導
体を結晶成長させる工程では、電流阻止層に電流狭窄部
を作製するために発光素子構造の作製途中に一旦結晶成
長装置から取出し(常温)、再び結晶成長装置に装填し
て残りの発光素子構造を結晶成長(約1000℃)させ
る。このように発光素子構造の途中で急激な温度差のあ
る熱履歴を与えれば、本発明に係る窒化物半導体発光素
子が窪みを有していても、その窪みによって発光素子構
造内の結晶歪みは十分には緩和されず、クラックが発生
するものと考えられる。
【0081】なお、レーザ素子と同様に、発光ダイオー
ド(LED)素子においても、電流注入されて発光に寄
与する部分の下方に図8に示した領域Iが存在していれ
ば本発明による効果を十分に得ることができる。
【0082】次に、本発明において加工基板を用いる場
合について説明する。 (加工基板について)本発明において用いられ得る加工
基板としては、窒化物半導体基板を加工する場合と、基
礎基板上に窒化物半導体基板層を成長させてその基板層
を加工する場合がある。ただし、マスク基板の説明にお
いて述べたのと同様の理由から、基礎基板を利用するよ
りも窒化物半導体基板を用いる方が好ましい。
【0083】(加工基板を被覆する窒化物半導体下地層
の被覆膜厚について)本発明において、加工基板が窒化
物半導体多層膜構造で平坦化されない窪みを形成するた
めには、たとえば窒化物半導体下地層を薄く成長させれ
ばよい。ただし、溝上方領域にも窪みを形成する場合は
別として、加工基板に形成された溝はレーザ素子を形成
し得る程度に平坦に埋没されなければ、その溝上方領域
に発光素子を形成することが困難になる。したがって、
窒化物半導体下地層の被覆膜厚は、約2μm以上で20
μm以下であることが好ましい。被覆膜厚が2μmより
も薄くなれば、加工基板に形成された溝幅や溝深さにも
依存するが、窒化物半導体下地層で溝を完全かつ平坦に
埋没させることが困難になり始める。他方、被覆膜厚が
20μmよりも厚くなれば、特に加工基板が基礎基板を
含む場合に、窪みによる結晶歪みの緩和効果とクラック
抑制効果よりも、加工基板と窒化物半導体下地層(また
は窒化物半導体多層膜構造)との間の熱膨張係数差によ
る応力歪みの方が強くなりすぎて、本発明による効果が
十分に発揮されなくなる可能性が高くなる。
【0084】(溝幅について)窒化物半導体基板に形成
する溝は、相対的に溝幅が狭ければ窒化物半導体下地層
で埋没されやすく、広ければ埋没されにくい。このこと
は、マスク基板におけるマスク幅との関係と同様であ
る。本発明者らの検討結果によれば、加工基板に形成さ
れる溝を窒化物半導体下地層で完全かつ平坦に被覆する
ための溝幅G1は、4μm以上で30μm以下であるこ
とが好ましく、4μm以上で25μm以下であることが
より好ましかった。他方、加工基板に形成される溝を窒
化物半導体下地層で完全には被覆せずに窪みを形成する
ための溝幅G2は、7μm以上で75μm以下であるこ
とが好ましいが、7μm以上で約100μm以下であっ
てもよかった。ただし、加工基板の溝上方に窪みが形成
されるか否かは窒化物半導体下地層の被覆膜厚に強く依
存するので、溝を完全かつ平坦に被覆する際や溝上方領
域に窪みを形成する際には、溝幅G1やG2とともに窒
化物半導体下地層の被覆膜厚を調整する必要がある。
【0085】溝幅G1の下限値と上限値は、以下の観点
から見積もられた。溝の上方に窪みが形成されない溝1
の溝幅G1の下限値は、発光素子中の発光部の大きさに
依存する。発光素子中の発光部の形成位置については、
後述の項目「(発光部の形成位置について)」において
図12を参照しつつさらに詳細に説明される。たとえ
ば、窪み付き基板のうちで平坦に被覆された溝上方領域
に窒化物半導体レーザ素子を形成する場合、レーザ発振
寿命の観点から、窒化物半導体レーザ素子のリッジスト
ライプ部下方の発光部が図11(a)中の領域Iに属す
ることが好ましい。したがって、少なくとも溝幅G1の
下限値は、リッジストライプ幅の2倍よりも広くする必
要がある。リッジストライプ幅はおよそ1μm〜3μm
の幅で形成されるので、溝幅G1は図11(a)中の領
域IIIの幅2μmとストライプ幅(1μm)×2とを
加えた4μm以上でなければならないと見積もられる。
【0086】他方、溝幅G1に上限値が存在するのは、
溝幅G1が25μmを超えれば、窒化物半導体下地層を
被覆膜厚10μm以下の積層でその溝幅G1を有する溝
1を完全に埋没させることが困難になるからである。同
様に、溝幅G1が30μmを超えれば、窒化物半導体下
地層を被覆膜厚20μm以上に積層してもその溝1を完
全に埋没させることが困難になるからである。
【0087】溝幅G2の下限値と上限値は、以下の観点
から見積もられた。溝の上方に窪みが形成される溝2の
溝幅G2の下限値についても、溝幅G1の下限値と同様
に、発光素子中の発光部の大きさに依存する。たとえ
ば、溝幅G2内に窪みが形成される溝2の上方領域に窒
化物半導体レーザ素子を作製する場合、レーザ発振寿命
の観点から、レーザ素子のリッジストライプ部の下方の
発光部は、図11(b)中の領域IIに属することが好
ましい。リッジストライプ幅はおおよそ1μm〜3μm
で、最小の窪み幅は1μmで見積もることができるの
で、溝幅G2の下限値は窪みを含む領域IVの幅=窪み
幅(1μm)+2μm×2(図11(b)参照)とスト
ライプ幅(1μm)×2とを加えた7μm以上が必要で
ある。
【0088】他方、溝の上方に窪みが形成される溝2の
溝幅G2の上限値は、レーザ発振寿命の観点からは特に
制約はない。しかしながら、あまりにG2を広くしすぎ
ればウエハの単位面積当りの窪み密度が減少し、結晶歪
みの緩和効果やクラックの抑制効果が低減してしまう。
これに伴って、ウエハ当りの発光素子チップ収得率も減
少してしまう。したがって、上記観点から、溝幅G2の
上限値は100μm以下、より好ましくは75μm以下
である。
【0089】以上では、溝幅のみを変更した加工基板に
ついて説明されたが、溝幅のみならず溝深さおよび/ま
たは丘幅をも変更して加工基板を形成してもよいことは
言うまでもない。このことは、他の実施形態における加
工基板についても同様である。
【0090】(溝深さについて)窒化物半導体基板に形
成する溝は、相対的にその深さが浅ければ窒化物半導体
下地層で埋没されやすく、深ければ埋没されにくい。こ
のことは、マスク基板におけるマスク厚さとの関係と同
様である。なお、溝深さの調整による窪みの形成は、溝
幅を調整して窪みを形成する場合に比べて、ウエハ当り
の発光素子チップ収得率が減少しないので好ましい。
【0091】本発明者らの検討結果によれば、加工基板
に形成される溝を窒化物半導体下地層で完全かつ平坦に
被覆するための溝深さH1は、1μm以上で9μm以下
であることが好ましく、2μm以上で6μm以下である
ことがより好ましかった。他方、加工基板の形成される
溝を窒化物半導体下地層で完全には被覆せずに窪みを形
成するための溝深さH2は、1μm以上であることが好
ましく、2μm以上であることがより好ましかった。溝
深さH2の上限値に関しては特に制約はなく、図4に示
されているような残し厚hが100μm以上であればよ
い。ただし、加工基板の溝上方に窪みが形成されるか否
かは窒化物半導体下地層の被覆膜厚に依存するので、溝
を完全かつ平坦に被覆する際や溝上方に窪みを形成する
際は、溝深さH1やH2とともに窒化物半導体下地層の
被覆膜厚を調整する必要がある。
【0092】溝深さH1の下限値と上限値は、以下の観
点から見積もられた。溝の上方に窪みが形成されない溝
1の溝深さH1の下限値は、1μm以上であることが好
ましく、2μm以上であることがより好ましい。なぜな
らば、溝深さH1が1μmよりも浅ければ、結晶成長形
態における横方向成長よりも基板主面に対して垂直方向
の成長が優先的になり、横方向成長による結晶歪みの低
減効果が十分に発揮されなくなる可能性があるからであ
る。そして、溝深さH1の下限値が2μm以上になれ
ば、横方向成長による結晶歪みの低減効果が十分に発揮
され得るからである。
【0093】他方、溝深さH1の上限値としては、9μ
m以下であることが好ましく、6μm以下であることが
より好ましかった。なぜならば、溝深さH1が6μmを
超えれば窒化物半導体下地層を被覆膜厚10μm以下の
積層でその溝深さH1を有する溝1を完全に埋没させる
ことが困難になり始めるからである。同様に、溝深さH
1が9μmを超えれば窒化物半導体下地層を被覆膜厚2
0μm以上に積層してもその溝1を完全に埋没させるこ
とが困難になり始めるからである。
【0094】溝深さH2の下限値と上限値は以下の観点
から見積もられた。溝の上方に窪みが形成される溝2の
溝深さH2の下限値としては、溝深さH1と同じく1μ
m以上であることが好ましく、2μm以上であることが
より好ましい。なぜならば、溝深さH1に関して述べた
ように、横方向成長による結晶歪みの低減効果が十分に
得られていなければ、溝2の上方領域に形成した発光素
子の特性(たとえばレーザ発振寿命)が低下する可能性
があるからである。溝深さH2とH1との下限値が同じ
でありながら、窒化物半導体膜によって溝上方領域に窪
みが形成されるかまたはそれが完全に埋没されるかは、
その窒化物半導体下地層の被覆膜厚に依存する。他方、
溝深さH2の上限値に関しては特に制約はなく、溝深さ
H2が深いほど窪みの形成が容易になる。ただし、あま
りに溝2を深くしすぎれば加工基板が割れやすくなるの
で、溝の底部と基板の裏面との間の残し厚hが100μ
m以上になるようにしなければならない(図4参照)。
【0095】以上では溝深さのみを変更した加工基板に
ついて説明したが、溝深さのみならず溝幅および/また
は丘幅をも変更して加工基板を形成してもよいことは言
うまでもない。
【0096】(丘幅について)加工基板に形成される丘
は、相対的に丘幅が狭ければ窒化物半導体下地層で埋没
されやすく、広ければ埋没されにくい。本発明者らの検
討結果によれば、加工基板に形成される丘を窒化物半導
体下地層で完全かつ平坦に被覆するための丘幅L1は、
4μm以上で30μm以下であることが好ましく、4μ
m以上で25μm以下であることがさらに好ましかっ
た。他方、加工基板に形成される丘を窒化物半導体下地
層で完全に被覆せずに窪みを形成するための丘幅L2
は、7μm以上で75μm以下であることが好ましく、
7μm以上で100μm以下であってもよかった。ただ
し、加工基板の丘上方に窪みが形成されるか否かは窒化
物半導体下地層の被覆膜厚に強く依存するので、丘を完
全かつ平坦に被覆する際や丘の上方領域に窪みを形成す
る際に、丘幅L1やL2とともに窒化物半導体下地層の
被覆膜厚をも調整する必要がある。
【0097】丘幅L1の下限値と上限値は、以下の観点
から見積もられた。丘の上方に窪みが形成されない丘1
の丘幅L1の下限値は前述の溝幅G1の下限値と同様に
発光素子中の発光部の大きさに依存する。たとえば、窪
み付き基板のうちで丘上方で平坦に被覆された領域に窒
化物半導体レーザ素子を形成する場合、レーザ発振寿命
の観点から、そのレーザ素子のリッジストライプ部の下
方の発光部が窪みの形成されていない領域I(図11
(b)参照)に属することが好ましい。リッジストライ
プ幅は約1μm〜3μmの幅で形成され、丘上方で窪み
の形成されない場合の領域IIIの幅は2μmと見積も
ることができるので、丘幅L1の下限値はストライプ幅
(1μm)×2と領域IIIの幅2μmを加えた4μm
以上であることが必要である。他方、丘幅L1の上限値
に関しても前述の溝1の幅の上限値と同様に見積もるこ
とができる。
【0098】さらに、丘幅L2の下限値と上限値は、以
下のようにして見積もられた。丘の上に窪みが形成され
ない丘2の丘幅L2の下限値は、前述の溝幅G2の下限
値と同様に、発光素子中の発光部の大きさに依存する。
たとえば、窪みを含む丘幅L2の丘2の上方領域に窒化
物半導体レーザ素子を形成する場合、レーザ発振寿命の
観点から、そのレーザ素子のリッジストライプ部の下方
の発光部が図11(a)中の領域IIに属することが好
ましい。リッジストライプ部は約1〜3μmの幅で形成
され、最小の窪み幅を1μmで見積もることができるの
で、丘幅L2の下限値は窪みを含む領域IVの幅=窪み
幅(1μm)+2μm×2とストライプ幅(1μm)×
2とを加えた7μm以上でなければならない。
【0099】他方、丘の上方に窪みが形成される丘2の
丘幅L2の上限値は、レーザ発振寿命の観点からは特に
制約はない。しかしながら、前述の溝2の溝幅G2の上
限値と同様の理由から、丘幅L2の上限値は100μm
以下、より好ましくは75μm以下である。
【0100】(溝の長手方向について)加工基板におけ
る溝の長手方向については、マスク基板におけるストラ
イプ状成長抑制膜の長手方向についての説明内容と基本
的に同様の内容になる。
【0101】(加工基板を被覆する窒化物半導体下地層
について)加工基板を被覆する窒化物半導体下地層とし
て、GaN膜、AlGaN膜、またはInGaN膜など
を用いることができる。このような下地層に関する内容
も、マスク基板を用いる場合の説明内容と基本的に同様
の内容になる。
【0102】(発光部の形成位置について)本発明者ら
による詳細な検討の結果、窒化物半導体レーザ素子の発
光部(リッジストライプ部の下方)が窪み付き基板のど
の位置に形成されるかに依存して、レーザ発振寿命が変
化することが見出された。ここで発光部とは、発光素子
に電流が注入されて、発光層のうちで実質的に発光に寄
与する部分である。たとえば、リッジストライプ構造を
有する窒化物半導体レーザ素子の場合、電流が狭窄注入
されるリッジストライプ部の下方の発光層部分である。
【0103】図12において、グラフの横軸は窪み付き
基板の溝中央cからその幅方向にリッジストライプ端a
までの距離を表わし、縦軸はレーザ出力30mWと雰囲
気温度60℃の条件下でのレーザ発振寿命を表わしてい
る。ここで、溝中央cからリッジストライプ端aまでの
距離(以後、c−a距離と呼ぶ)は、溝中央cから幅方
向に右側が正で左側が負で表示されている。なお、図1
2で測定された窒化物半導体レーザ素子においてはGa
N基板による加工基板が用いられ、リッジストライプ幅
は2μmであり、溝幅は18μmであり、丘幅は15μ
mであり、そして丘上方の窪み幅は3μmであった。
【0104】図12からわかるように、リッジストライ
プ部が溝の上方に形成された窒化物半導体レーザ素子の
レーザ発振寿命は、リッジストライプ部が丘の上方に形
成されたものよりも長くなる傾向を示した。さらに詳細
に調べたところ、溝上方の領域内であっても、c−a距
離が−3μmよりも大きくて1μmよりも小さい領域に
リッジストライプ部が形成されれば、レーザ発振寿命が
劇的に減少することがわかった。ここで、リッジストラ
イプ部の幅が2μmであることを考慮して、c−a距離
−3μmが溝中央cからリッジストライプ端bまでの距
離(以後、c−b距離と呼ぶ)に換算されれば、c−b
距離は−1μmになる。すなわち、窒化物半導体レーザ
素子のリッジストライプ部の少なくとも一部が溝中央c
から幅方向に左右1μm未満の範囲内に含まれるように
形成されたとき、レーザ発振寿命が劇的に減少してしま
うことがわかった。
【0105】このようなレーザ発振寿命が劇的に減少す
る領域(溝中央cから幅方向に左右1μm未満の範囲)
を領域IIIと呼ぶことにする。したがって、窒化物半
導体レーザ素子のリッジストライプ部は、領域IIIを
除く範囲に、その全体(a−b幅)が含まれるように形
成されることが好ましい。ここで、溝幅範囲内におい
て、溝中央cから幅方向に左右1μm以上の範囲を領域
Iと呼ぶことにする。この領域Iは、以下で述べる領域
IIに比べても、レーザ発振寿命の長い窒化物半導体レ
ーザ素子を形成することが可能な領域であり、窪み付き
基板のうちで最も好ましい領域である。
【0106】他方、丘の上方の領域においても溝上方領
域に類似して、c−a距離が11μmよりも大きくて2
0μmよりも小さい領域に窒化物半導体レーザ素子の発
光部を形成すれば、そのレーザ発振寿命が劇的に減少す
ることがわかる。ここで、c−a距離11μmの状態を
窪み端dからリッジストライプ端bまでの距離で表示す
れば2μmであり、同様にc−a距離20μmの状態を
窪み端eからリッジストライプ端aまでの距離で表示す
れば2μmになる。すなわち、窪み端からその両外側へ
2μmまでの範囲内にリッジストライプ部の下方の発光
部の少なくとも一部が含まれると、レーザ発振寿命が劇
的に減少してしまうことがわかる。このレーザ発振寿命
が劇的に減少する領域をIVと呼ぶことにする。したが
って、丘の上方の領域内では、領域IVを除く窪み端d
からその幅方向の左側に2μm以上または窪み端eから
右側へ2μm以上離れた範囲にリッジストライプ部全体
(a−b)が含まれるように作製されることが好まし
い。ここで、丘の上方の領域において、窪み端dから幅
方向に左側へ2μm以上で窪み端eから右側へ2μm以
上の範囲の領域を領域IIと呼びすることにする。この
領域IIでは、上述の領域Iに比べてレーザ発振寿命が
短くなるものの、数千時間の寿命を有する窒化物半導体
レーザ素子を形成することができる。
【0107】図11では、上述の領域IからIVが窪み
付き基板の模式的な断面図において示されている。すな
わち、窪み付き基板に作製される窒化物半導体レーザ素
子の発光部は、少なくとも領域IIIとIVを避けた位
置に形成されることが好ましく、そのうちでも領域Iが
最も好ましくて、領域IIがこれに次いで好ましかった
(図12参照)。
【0108】図11(a)においては丘の上方の領域内
のみに窪みが形成された場合が示されているが、たとえ
ば後述される実施形態6〜8におけるように丘の上方領
域が窒化物半導体下地層で完全かつ平坦に被覆される場
合の領域Iの範囲は、図11(b)に示されているよう
に丘の上方領域内であってかつ丘中央から幅方向に右ま
たは左側へ1μm以上離れた領域であった。なぜなら
ば、丘中央から左右に1μmの範囲(丘上方に窪みを形
成しない場合の領域III)内に発光部が含まれるよう
に形成されれば、レーザ発振寿命が劇的に減少してしま
うからである。
【0109】同様に、図11(a)では溝の上方に窪み
が形成されていなかったが、たとえば後述される実施形
態4、7、および8におけるように溝上方にも窪みが形
成される場合の領域IIの範囲は、溝上方の領域内であ
ってかつ窪みの両端から幅方向に両外側へ2μm以上離
れた領域であった(図11(b)参照)。なぜならば、
窪みの両端から左右に2μmまでの範囲(溝上方に窪み
を有する場合の領域IV)内に発光部が含まれるように
形成されれば、レーザ発振寿命が劇的に減少してしまう
からである。
【0110】なお、溝幅、丘幅、およびリッジストライ
プ幅を種々に変化させても、図12と同様の傾向を示し
た。また、加工基板をGaN基板から基礎基板を含むも
のに変えても、レーザ発振寿命はGaN基板の場合に比
べて短くなるものの、図6と同様の傾向を示した。した
がって、これらの場合においても、窪み付き基板上に形
成すべき発光素子の発光部形成領域は図7に示す関係に
あるものと考えられる。同様に、発光ダイオード(LE
D)素子についても、電流注入される発光部の下方に図
11に示された領域IまたはIIのいずれかが存在して
いれば、本発明による効果を得ることが可能である。
【0111】また、図12における窒化物半導体レーザ
素子はリッジストライプ構造を有するものであったが、
電流阻止構造を有する窒化物半導体レーザ素子であって
も図12と同様の傾向を得ることも可能である(電流阻
止構造の場合では、図12におけるリッジストライプ部
は電流狭窄される部分に該当し、リッジストライプ幅は
電流狭窄される幅に相当する)。すなわち、窒化物半導
体レーザ素子において、発光層に電流が狭窄注入され、
レーザ発振に寄与する発光部分の下方に図11に示され
た領域IまたはIIのいずれかが存在していればよい。
【0112】しかしながら、電流阻止構造を有する窒化
物半導体レーザ素子の場合、上述されたリッジストライ
プ構造を有する素子と比較して、レーザ発振寿命は約2
0〜30%程度低かった。また、電流阻止構造を有する
窒化物半導体レーザ素子は、リッジストライプ構造を有
する素子と比較して、クラックの発生による歩留まりの
低下が大きかった。これらの原因については、マスク基
板を用いた場合と同様な理由が考えられる。
【0113】[実施形態2]実施形態2としては、マス
ク基板を利用した窪み付き基板の作製方法が図3と図9
を参照して説明される。なお、本実施形態において特に
言及されていない事項に関しては、前述の実施形態1の
場合と同様である。図3は窪み付き基板の各部位の名称
を示し、図9(a)は窪みの横断面形状が矩形形状の場
合の窪み付き基板を表わし、そして図9(b)は窪みの
横断面形状が逆台形形状(さらに結晶成長が進めばV字
形形状になる)の場合の窪み付き基板を表わしている。
【0114】図9におけるマスク基板は以下のようにし
て作製され得る。まず、主面方位が(0001)面であ
るn型GaN基板の表面に、通常のリソグラフィ技術を
用いてSiO2からなる成長抑制膜がストライプ状マス
クパターンに形成された。こうして形成されたストライ
プ状成長抑制膜は、n型GaN基板の<1−100>方
向に沿って周期的に配列され、マスク幅18μm、マス
ク厚さ0.2μm、およびスペース幅7μmを有してい
た。
【0115】作製されたマスク基板は、十分に有機洗浄
されてからMOCVD(有機金属気相成長)装置内に搬
入され、被覆膜厚6μmのn型GaN膜からなる窒化物
半導体下地層が積層された。このn型GaN下地層の形
成においては、MOCVD装置内にセットされたマスク
基板上にV族元素用原料のNH3(アンモニア)とII
I族元素用原料のTMGa(トリメチルガリウム)また
はTEGa(トリエチルガリウム)が供給され、105
0℃の結晶成長温度において、それらの原料にSiH4
(Si不純物濃度1×1018/cm3)が添加された。
【0116】図9(a)は、上述の方法で作製された窪
み付き基板の模式的断面図を表わしている。この図から
わかるように、上述の成長条件では成長抑制膜の上方領
域に窪みが形成された。また、その窪みは、成長抑制膜
のマスク中央位置と窪み幅の中央位置とがほぼ一致する
ように形成された。さらに、GaN結晶の<1−100
>方向に沿って成長抑制膜が形成された場合における窪
みの横断面形状は、ほぼ矩形形状に近かった。
【0117】このようにして作製された窪み付き基板上
に、本発明に係る窒化物半導体発光素子が形成される。
このことは、他の実施形態においても同様である。
【0118】なお、本実施形態においては窒化物半導体
膜の下地層の表面に窪みが存在しているが、さらに、成
長抑制膜とその窪みとの間に空隙を生じるようにその下
地層を成長させれば、その空隙部分でも結晶格子歪を緩
和させる効果が得られるのでより好ましい。
【0119】また、マスク基板上に成長させられるn型
GaN層(窒化物半導体下地層)は、これに限られず、
AlxGayInzN(0≦x≦1;0≦y≦1;0≦z
≦1;x+y+z=1)層であってもよく、Si、O、
Cl、S、C、Ge、Zn、Cd、Mg、またはBeな
どがドーピングされてもよい。
【0120】本実施形態では、GaN結晶の<1−10
0>方向に沿ってストライプ状成長抑制膜が形成された
が、<11−20>方向に沿って形成されてもよい。G
aN結晶の<11−20>方向に沿ってストライプ状マ
スクを形成した場合、図9(b)で示されているよう
に、窪みの横断面形状は逆台形状に近かった。ただし、
窪みの底部が埋まってくれば、その断面形状はV字形に
近くなる。
【0121】本実施形態では、主面として(0001)
面を有するGaN基板が利用されたが、その他の面方位
やその他の窒化物半導体基板が利用されてもよい。ま
た、本実施形態で述べられたマスク基板に形成されるマ
スク幅、スペース幅、およびマスク厚さの数値、ならび
に窒化物半導体下地層の被覆膜厚の数値としては、前述
の実施形態1で述べた数値範囲条件を満足していれば、
他の数値が採用されてもよい。このことは、他の実施形
態においても同様である。
【0122】[実施形態3]実施形態3としては、加工
基板を利用した窪み付き基板の作製方法が図5と図13
を参照して説明される。なお、本実施形態において特に
言及されていない事項に関しては、前述の実施形態1の
場合と同様である。図5は窪み付き基板の各部位の名称
を示し、図13(a)は窪みの横断面形状が矩形形状の
場合の窪み付き基板を表わし、そして図13(b)は窪
みの横断面形状が逆台形形状(さらに結晶成長が進めば
V字形形状になる)の場合の窪み付き基板を表わしてい
る。
【0123】図13における加工基板は以下のようにし
て作製され得る。まず、主面方位が(0001)面であ
るn型GaN基板の表面に、SiO2またはSiNxなど
の誘電体膜を蒸着した。そして、通常のリソグラフィ技
術を用いてその誘電体膜にレジスト材を塗布し、そのレ
ジスト材がストライプ状のマスクパターンに形成され
た。このマスクパターンに沿って、ドライエッチング法
を用いて誘電体膜とGaN基板の表面の一部をエッチン
グして溝が形成された。その後、レジスト材と誘電体膜
を除去した。こうして形成された溝と丘は、n型GaN
基板の<1−100>方向に沿っており、溝幅18μ
m、溝深さ3μm、および丘幅7μmを有していた。
【0124】作製された加工基板は、実施形態2の場合
と同様に、十分に有機洗浄されてからMOCVD(有機
金属気相成長)装置内に搬入され、被覆膜厚6μmのn
型GaN膜からなる窒化物半導体下地層が積層された。
このn型GaN下地層の形成においては、MOCVD装
置内にセットされた加工基板上にV族元素用原料のNH
3とIII族元素用原料のTMGaまたはTEGaが供
給され、1050℃の結晶成長温度において、それらの
原料にSiH4(Si不純物濃度1×1018/cm3)が
添加された。
【0125】図13(a)は、上述の方法で作製された
窪み付き基板の模式的断面図を表わしている。この図か
らわかるように、上述の成長条件では丘の上方領域のみ
に窪みが形成され、溝はn型GaN下地層によって平坦
に埋没された。また、その窪みは、丘幅の中央位置と窪
み幅の中央位置とがほぼ一致するように形成された。さ
らに、GaN結晶の<1−100>方向に沿って溝が形
成された場合における窪みの横断面形状は、ほぼ矩形形
状に近かった。
【0126】上述の本実施形態における溝形成方法以外
に、窒化物半導体基板の表面に直接に通常のレジスト材
料を塗布して加工基板が作製されてもよい。しかしなが
ら、上述のように、誘電体膜を介して溝を形成した方
が、溝の形状が急峻で好ましかった。
【0127】なお、本実施形態においては、低温GaN
バッファ層上に成長させられるn型GaN層(窒化物半
導体下地層)は、これに限られず、AlxGayInz
(0≦x≦1;0≦y≦1;0≦z≦1;x+y+z=
1)層であってもよく、Si、O、Cl、S、C、G
e、Zn、Cd、Mg、またはBeなどがドーピングさ
れてもよい。
【0128】本実施形態では、ドライエッチング法によ
る溝形成方法が例示されたが、その他の溝形成方法が用
いられてもよいことは言うまでもない。たとえば、ウェ
ットエッチング法、スクライビング法、ワイヤソー加
工、放電加工、スパッタリング加工、レーザ加工、サン
ドブラスト加工、またはフォーカスイオンビーム加工な
どが用いられ得る。
【0129】本実施形態では、GaN結晶の<1−10
0>方向に沿って溝が形成されたが、<11−20>方
向に沿って溝が形成されてもよい。GaN結晶の<11
−20>方向に沿って溝を形成した場合、図13(b)
で示されているように、窪みの横断面形状は逆台形状に
近かった。ただし、窪みの底部が埋まってくれば、その
断面形状はV字形に近くなる。
【0130】本実施形態では、主面として(0001)
面を有するGaN基板が利用されたが、その他の面方位
やその他の窒化物半導体が利用されてもよい。また、本
実施形態で述べられた加工基板に形成される溝幅、丘
幅、および溝深さの数値、ならびに窒化物半導体下地層
の被覆膜厚の数値としては、前述の実施形態1で述べた
数値範囲条件を満足していれば、他の数値が採用されて
もよい。このことは、他の実施形態においても同様であ
る。
【0131】[実施形態4]実施形態4においては、丘
上方のみならず溝上方にも窪みを有する窪み付き基板の
作製方法が、図14を参照して説明される。なお、本実
施形態において特に言及されていない事項に関しては、
前述の実施形態1および3と同様である。
【0132】すなわち、図14における加工基板と窒化
物半導体下地層(本実施形態ではGaN下地層)は、実
施形態3と同様にして作製される。ただし、GaN下地
層の被覆膜厚は比較的薄くされ、3μmであった。
【0133】この窪み付き基板は丘上方のみならず溝上
方にも窪みを有しているので、横方向成長によって生じ
た結晶のぶつかり合いによる結晶歪みの集中部分がな
く、結晶歪みがほとんど緩和されたGaN下地層で被覆
され得る。
【0134】なお、本実施形態4における窪み付き基板
は、主に、加工基板を被覆するGaN下地層の被覆膜厚
を薄く調整することによって容易に得ることができる。
【0135】[実施形態5]実施形態5においては、加
工基板に形成された丘幅が一定の値ではなくて種々の異
なる値にされたこと以外は、前述の実施形態1および3
と同様である。
【0136】図15の模式的な断面図は本実施形態にお
ける窪み付き基板を表わしており、溝幅G1は12μ
m、溝深さH1は3μm、そして丘幅のみがL1=8μ
mとL2=14μmの2通りの数値を有していた。この
ような加工基板上に被覆膜厚5μmのInGaN膜から
なる窒化物半導体下地層が積層されて、本実施形態5の
窪み付き基板が作製された。
【0137】図15からわかるように、加工基板に形成
される丘幅を種々に変えることによって、相対的に幅の
広い丘2の上方に形成される窪み2は、狭い丘1の上方
に形成される窪み1に比べて大きくなりやすい。そし
て、相対的に大きな窪みは、小さな窪みに比べて結晶歪
みの緩和効果やクラックの抑制効果が大きい。本実施形
態のように、大きさが異なる窪みを含む窪み付き基板
は、以下に点において好ましい。
【0138】すなわち、窪み付き基板のうちで相対的に
小さな窪みは、大きな窪みに比べて結晶歪みの緩和効果
やクラックの抑制効果は小さいものの、レーザ発振寿命
の長い発光素子を形成することが可能な領域(図11に
おける領域IとII)を広くすることができる(発光素
子チップの収得率が高くなる)ので好ましい。他方、窪
み付き基板のうちで相対的に大きな窪みは、レーザ発振
寿命の長い発光素子を形成することが可能な領域が狭く
なるものの、小さな窪みで抑制できなかった残留結晶歪
みやクラックの発生を防止することができる(このこと
によって発光素子チップの歩留まりが高くなる)ので好
ましい。すなわち、本実施形態の窪み付き基板は、生産
性と歩留まりの観点から好ましいことがわかる。
【0139】なお、本実施形態では2種類の異なる丘幅
を有する加工基板が例示されたが、2種以上の異なる丘
幅を有する加工基板が用いられてもよいことは言うまで
もない。
【0140】[実施形態6]実施形態6においては、加
工基板に形成された丘幅が一定の値ではなくて種々の異
なる値にされることによって、上述の実施形態5に示さ
れた窪み1(図16参照)が完全かつ平坦に窒化物半導
体膜で被覆されたこと以外は、その実施形態5と同様で
ある。また、本実施形態において特に言及されていない
事項に関しては、前述の実施形態1および3の場合と同
様である。
【0141】図16の模式的な断面図は本実施形態にお
ける窪み付き基板を示しており、溝幅G1は16μm、
溝深さH1は2μm、そして丘幅のみがL1=4μmと
L2=24μmの2通りの数値を有していた。このよう
な加工基板上に被覆膜厚4μmのAlGaN膜が積層さ
れ、本実施形態6の窪み付き基板が作製された。
【0142】図16からわかるように、加工基板に形成
される丘幅を種々に変えることによって、相対的に幅の
広い丘2の上方には窪み2が形成され、相対的に幅の狭
い丘1の上方は完全かつ平坦にAlGaN膜からなる窒
化物半導体下地層で埋没される。このような本実施形態
における窪み付き基板は、以下の点において好ましい。
【0143】すなわち、窪み付き基板のうちで丘1の上
方には窪みが形成されないので、結晶歪みの緩和効果や
クラックの抑制効果は小さいものの、レーザ発振寿命の
長い発光素子を形成することが可能な領域が実施形態4
に比べて広くなり得る(発光素子チップの収得率が高く
なる)。他方、窪み付き基板のうちで丘2の上方に形成
された窪み2は結晶歪みの緩和効果やクラックの抑制効
果を有している(発光素子チップの歩留まりが高くな
る)。したがって、加工基板に形成される丘のうちで一
部の丘の上方には窪みが形成されなくて他の丘の上方に
は窪みが形成された窪み付き基板は、生産性の観点から
実施形態5に比べて好ましい。
【0144】なお、本実施形態においても2種類の異な
る丘幅を有する加工基板が例示されたが、2種以上の異
なる丘幅を有する加工基板が用いられてもよいことは言
うまでもない。
【0145】[実施形態7]実施形態7においては、加
工基板に形成された溝深さが一定の値ではなくて種々の
異なる値にされたこと以外は、前述の実施形態1および
3と同様である。
【0146】図17の模式的な断面図は本実施形態にお
ける窪み付き基板を示しており、溝幅G1は18μm、
丘幅L1は5μm、そして溝深さのみがH1=2.5μ
mとH2=10μmの2通りの数値を有していた。この
ような加工基板上に被覆膜厚6μmのGaN膜からなる
窒化物半導体下地層が積層されて、本実施形態6の窪み
付き基板が作製された。
【0147】図17からわかるように、加工基板に形成
される溝深さを種々に変えることによって、相対的に深
い溝2の上方のみに窪み2が形成される。本実施形態に
おける窪み付き基板は、以下の点において好ましい。
【0148】すなわち、窪み付き基板のうちで溝2以外
の上方には窪みが形成されないので、結晶歪みの緩和効
果やクラックの抑制効果は少ないものの、レーザ発振寿
命の長い発光素子を形成することが可能な領域を広くす
ることができる(発光素子チップの収得率が高くな
る)。他方、窪み付き基板のうちで溝2の上方に形成さ
れた窪み2は、結晶歪みの緩和効果やクラックの抑制効
果を有する。したがって、加工基板に形成された溝のう
ちで一部の溝の上方には窪みが形成されかつ他の溝の上
には窪みが形成されない窪み付き基板は、発光素子チッ
プの生産性の観点から好ましい。
【0149】なお、本実施形態では2種類の異なる溝深
さを有する加工基板が例示されたが、2種以上の異なる
溝深さを有する加工基板が用いられてもよいことは言う
までもない。また、本実施形態が前述の実施形態4〜6
の少なくともいずれかと組合わされてもよいことも言う
までもない。
【0150】[実施形態8]実施形態8においては、加
工基板に形成された溝幅が一定の値ではなくて種々の異
なる値にされたこと以外は、前述の実施形態1および3
の場合と同様である。
【0151】図18の模式的な断面図は本実施形態にお
ける窪み付き基板を表わしており、丘幅L1は5μm、
溝深さH1は4μm、そして溝幅のみがG1=12μm
とG2=24μmの2通りの値を有していた。このよう
な加工基板上に被覆膜厚6μmのGaN膜からなる窒化
物半導体下地層が積層されて、本実施形態8の窪み付き
基板が作製された。
【0152】図18からわかるように、加工基板に形成
される溝幅を種々に変えることによって、相対的に幅の
広い溝2の上方のみに窪み2が形成される。本実施形態
における窪み付き基板は、上述の実施形態7と同様の効
果を有する。
【0153】なお、本実施形態では2種類の異なる溝幅
を有する加工基板が例示されたが、2種以上の異なる溝
幅を有する加工基板が用いられてもよいことは言うまで
もない。また、本実施形態は、前述の実施形態4〜7の
少なくともいずれかと組合せてよいことも言うまでもな
い。
【0154】[実施形態9]実施形態9においては、実
施形態1または2における窪み付き基板上に窒化物半導
体レーザ素子が作製された。
【0155】(結晶成長)図19は窪み付き基板上に成
長された窒化物半導体レーザのウエハがチップ分割され
た後の窒化物半導体レーザ素子を表わしている。図19
に示された窒化物半導体レーザ素子は、n型GaN基板
100、SiO2成長抑制膜101、n型Al0.05Ga
0.95N下地層102、窪み付き基板200、n型In
0.07Ga0.93Nクラック防止層103、n型Al0.1
0.9Nクラッド層104、n型GaN光ガイド層10
5、発光層106、p型Al0.2Ga0.8Nキャリアブロ
ック層107、p型GaN光ガイド層108、p型Al
0.1Ga0.9Nクラッド層109、p型GaNコンタクト
層110、n電極111、p電極112およびSiO2
誘電体膜113を含んでいる。
【0156】このような窒化物半導体レーザ素子の作製
において、まず、実施形態1または2による窪み付き基
板200が形成された。ただし、本実施形態9では、ス
トライプ状成長抑制膜101の長手方向はGaN基板の
<1−100>方向に沿って形成された。
【0157】次に、MOCVD装置を用いて、その窪み
付き基板100上において、V族元素用原料のNH3
III族元素用原料のTMGaまたはTEGaに、II
I族元素用原料のTMIn(トリメチルインジウム)と
不純物としてのSiH4(シラン)が加えられ、800
℃の結晶成長温度でn型In0.07Ga0.93Nクラック防
止層103が厚さ40nmに成長させられた。次に、基
板温度が1050℃に上げられ、III族元素用原料の
TMAl(トリメチルアルミニウム)またはTEAl
(トリエチルアルミニウム)が用いられて、厚さ0.9
μmのn型Al0. 1Ga0.9Nクラッド層104(Si不
純物濃度1×1018/cm3)が成長させられ、続いて
n型GaN光ガイド層105(Si不純物濃度1×10
18/cm3)が厚さ0.1μmに成長させられた。
【0158】その後、基板温度が800℃に下げられ、
厚さ8nmのIn0.01Ga0.99N障壁層と厚さ4nmの
In0.15Ga0.85N井戸層とが交互に積層された発光層
(多重量子井戸構造)106が形成された。この実施形
態では、発光層106は障壁層で開始して障壁層で終了
する多重量子井戸構造を有し、3層(3周期)の量子井
戸層を含んでいた。また、障壁層と井戸層の両方に、S
i不純物が1×1018/cm3の濃度で添加された。な
お、障壁層と井戸層との間または井戸層と障壁層との間
に、1秒以上で180秒以内の結晶成長中断期間が挿入
されてもよい。こうすることによって、各層の平坦性が
向上し、発光スペクトルの半値幅が減少するので好まし
い。
【0159】発光層106にAsが添加される場合には
AsH3またはTBAs(ターシャリブチルアルシン)
を用い、Pが添加される場合にはPH3またはTBP
(ターシャリブチルホスフィン)を用い、そしてSbが
添加される場合にはTMSb(トリメチルアンチモン)
またはTESb(トリエチルアンチモン)を用いればよ
い。また、発光層が形成される際に、N原料として、N
3以外にN24(ジメチルヒドラジン)が用いられて
もよい。
【0160】次に、基板が再び1050℃まで昇温され
て、厚さ20nmのp型Al0.2Ga0.8Nキャリアブロ
ック層107、厚さ0.1μmのp型GaN光ガイド層
108、厚さ0.5μmのp型Al0.1Ga0.9Nクラッ
ド層109、および厚さ0.1μmのp型GaNコンタ
クト層110が順次に成長させられた。p型不純物とし
ては、Mg(EtCP2Mg:ビスエチルシクロペンタ
ジエニルマグネシウム)が5×1019/cm3〜2×1
20/cm3の濃度で添加された。p型GaNコンタク
ト層110のp型不純物濃度は、p電極112との界面
に近づくに従って増大させることが好ましい。こうする
ことによって、p電極との界面におけるコンタクト抵抗
が低減する。また、p型不純物であるMgの活性化を妨
げているp型層中の残留水素を除去するために、p型層
成長中に微量の酸素が混入されてもよい。
【0161】このようにして、p型GaNコンタクト層
110が成長させられた後、MOCVD装置のリアクタ
内の全ガスが窒素キャリアガスとNH3に変えられ、6
0℃/分の冷却速度で基板温度が冷却された。基板温度
が800℃に冷却された時点でNH3の供給が停止さ
れ、5分間だけその基板温度に保持されてから室温まで
冷却された。この基板の保持温度は650℃から900
℃の間にあることが好ましく、保持時間は3分以上で1
0分以下であることが好ましかった。また、室温までの
冷却速度は、30℃/分以上であることが好ましい。こ
うして形成された結晶成長膜がラマン測定によって評価
された結果、従来のp型化アニールが行なわれていなく
ても、その成長膜は既にp型化の特性を示していた(す
なわち、Mgが活性化していた)。また、p電極112
を形成したときのコンタクト抵抗も低減していた。これ
に加えて従来のp型化アニールが組合わされれば、Mg
の活性化率がさらに向上して好ましかった。
【0162】なお、本実施形態による結晶成長工程にお
いては、マスク基板から窒化物半導体レーザ素子まで連
続して結晶成長させてもよいし、マスク基板から窪み付
き基板までの成長工程が予め行なわれた後に窒化物半導
体レーザ素子を成長させるための再成長が行なわれても
よい。
【0163】本実施形態におけるIn0.07Ga0.93Nク
ラック防止層103は、In組成比が0.07以外であ
ってもよいし、InGaNクラック防止層が省略されて
もよい。しかしながら、クラッド層とGaN基板との格
子不整合が大きくなる場合には、InGaNクラック防
止層が挿入される方が好ましい。
【0164】本実施形態の発光層106は、障壁層で始
まり障壁層で終わる構成であったが、井戸層で始まり井
戸層で終わる構成であってもよい。また、発光層中の井
戸層数は、前述の3層に限られず、10層以下であれば
しきい値電流値が低くなって室温連続発振が可能であっ
た。特に、井戸層数が2以上で6以下のときにしきい値
電流値が低くなって好ましかった。
【0165】本実施形態の発光層106においては、井
戸層と障壁層の両方にSiが1×1018/cm3の濃度
で添加されたが、Siが添加されなくてもよい。しかし
ながら、Siが発光層に添加された方が、発光強度が強
くなった。発光層に添加される不純物としては、Siに
限られず、O、C、Ge、Zn、およびMgの少なくと
もいずれかが添加されてもよい。また、不純物の総添加
量としては、約1×1017〜1×1019/cm3程度が
好ましかった。さらに、不純物が添加される層は井戸層
と障壁層の両方であることに限られず、これらの片方の
層のみに不純物が添加されてもよい。
【0166】本実施形態のp型Al0.2Ga0.8Nキャリ
アブロック層107は、Al組成比が0.2以外であっ
てもよいし、このキャリアブロック層が省略されてもよ
い。しかしながら、キャリアブロック層を設けたほうが
しきい値電流値が低くなった。これは、キャリアブロッ
ク層107が発光層106内にキャリアを閉じ込める働
きがあるからである。キャリアブロック層のAl組成比
を高くすることは、これによってキャリアの閉じ込めが
強くなるので好ましい。逆に、キャリアの閉じ込めが保
持される範囲内でAl組成比を小さくすれば、キャリア
ブロック層内のキャリア移動度が大きくなって電気抵抗
が低くなるので好ましい。
【0167】本実施形態では、p型クラッド層109と
n型クラッド層104として、Al 0.1Ga0.9N結晶が
用いられたが、そのAl組成比は0.1以外であっても
よい。そのAlの混晶比が高くなれば発光層106との
エネルギギャップ差と屈折率差が大きくなり、キャリア
や光が発光層内に効率よく閉じ込められ、レーザ発振し
きい値電流値の低減が可能になる。逆に、キャリアや光
の閉じ込めが保持される範囲内でAl組成比を小さくす
れば、クラッド層内でのキャリア移動度が大きくなり、
素子の動作電圧を低くすることができる。
【0168】AlGaNクラッド層の厚みは0.7μm
〜1.5μmの範囲内にあることが好ましく、このこと
によって垂直横モードの単峰化と光閉じ込め効率が増大
し、レーザの光学特性の向上とレーザしきい値電流値の
低減が可能になる。
【0169】クラッド層はAlGaN3元混晶に限られ
ず、AlInGaN、AlGaNP、またはAlGaN
Asなどの4元混晶であってもよい。また、p型クラッ
ド層は、電気抵抗を低減するために、p型AlGaN層
とp型GaN層を含む超格子構造、またはp型AlGa
N層とp型InGaN層を含む超格子構造を有していて
もよい。
【0170】本実施形態ではMOCVD装置による結晶
成長法が例示されたが、分子線エピタキシー法(MB
E)、またはハイドライド気相成長法(HVPE)など
が用いられてもよい。
【0171】(チップ化工程)前述の結晶成長で形成さ
れたエピウエハ(マスク基板上に窒化物半導体多層膜構
造がエピタキシャル成長させられたウエハ)がMOCV
D装置から取出され、レーザ素子に加工される。ここ
で、窒化物半導体多層膜構造が形成されたエピウエハの
表面には窪みが存在し、完全かつ平坦には埋没されてい
なかった。
【0172】マスク基板100はn型導電性の窒化物半
導体であるので、その裏面側上にHf/Alの順の積層
でn電極111が形成された(図19参照)。n電極と
しては、Ti/Al、Ti/Mo、またはHf/Auな
どの積層も用いられ得る。n電極にHfが用いられれ
ば、そのコンタクト抵抗が下がるので好ましい。
【0173】p電極部分はマスク基板100の成長抑制
膜の長手方向に沿ってストライプ状にエッチングされ、
これによってリッジストライプ部(図19参照)が形成
された。マスク基板の成長抑制膜が桝目状の場合は、そ
れらのマスクの長手方向として窒化物半導体の<1−1
00>方向と<11−20>方向のいずれかを選択すれ
ばよい。リッジストライプ部はストライプ幅W=2.0
μmを有し、前述の領域I(図8参照)に含まれるよう
に形成された。その後、SiO2誘電体膜113が蒸着
され、p型GaNコンタクト層110の上面がこの誘電
体膜から露出されて、その上にp電極112がPd/M
o/Auの積層として蒸着されて形成された。p電極と
しては、Pd/Pt/Au、Pd/Au、またはNi/
Auなどの積層が用いられてもよい。また、p電極11
2とワイヤボンドとの間にAuからなるパッド電極を介
してもよい。
【0174】最後に、エピウエハはリッジストライプの
長手方向に対して垂直な面でへき開され、共振器長50
0μmのファブリ・ペロー共振器が作製された。共振器
長は、一般に300μmから1000μmの範囲内であ
ることが好ましい。溝が<1−100>方向に沿って形
成された共振器長のミラー端面は、窒化物半導体結晶の
M面{1−100}が端面になる。ミラー端面を形成す
るためのへき開とレーザ素子の分割は、マスク基板10
0の裏面側からスクライバを用いて行なわれた。ただ
し、へき開はウエハの裏面全体を横断してスクライバに
よる罫書き傷がつけられて行なわれるのではなく、ウエ
ハの一部、たとえばウエハの両端のみにスクライバによ
る罫書き傷がつけられてへき開された。これにより、素
子端面の急峻性やスクライブによる削りかすがエピ表面
に付着しないので、素子歩留まりが向上する。チップ分
割された窒化物半導体発光素子(レーザ素子)の表面に
は、窒化物半導体発光素子のリッジストライプ部を挟ん
で窪みが2つ以上存在していた。また、p電極112は
2つ以上の窪みを含む領域上に、ワイヤボンドは1つ以
上の窪みを含む領域上に形成された。
【0175】なお、レーザ共振器の帰還手法としては、
一般に知られているDFB(分布帰還)、DBR(分布
ブラッグ反射)なども用いられ得る。
【0176】ファブリ・ペロー共振器のミラー端面が形
成された後には、そのミラー端面にSiO2とTiO2
誘電体膜を交互に蒸着し、70%の反射率を有する誘電
体多層反射膜が形成された。この誘電体多層反射膜とし
ては、SiO2/Al23などの多層膜を用いることも
できる。
【0177】なお、n電極111はマスク基板100の
裏面上に形成されたが、ドライエッチング法を用いてエ
ピウエハの表側からn型Al0.05Ga0.95N膜102の
一部を露出させて、その露出領域上にn電極が形成され
てもよい。
【0178】(パッケージ実装)得られた半導体レーザ
素子は、パッケージに実装される。高出力(30mW以
上)の窒化物半導体レーザ素子を用いる場合、放熱対策
に注意を払わなければならない。高出力窒化物半導体レ
ーザ素子はInはんだやPbSn系はんだ、AuSn系
はんだ等のはんだ材を用いて半導体接合を上または下の
いずれかにしてパッケージ本体に接続することができる
が、半導体接合を下側にして接続するほうが放熱の観点
から好ましい。なお、高出力窒化物半導体レーザ素子
は、通常は直接パッケージ本体やヒートシンク部に取付
けられ得るが、Si、AlN、ダイヤモンド、Mo、C
uW、BN、Fe、SiC、Cu、またはAuなどのサ
ブマウントを介して接続されてもよい。
【0179】以上のようにして、本実施形態による窒化
物半導体レーザ素子が作製された。なお、本実施形態で
はGaNのマスク基板100が用いられたが、他の窒化
物半導体の加工基板が用いられてもよい。たとえば、窒
化物半導体レーザの場合、垂直横モードの単峰化のため
にはクラッド層よりも屈折率の低い層がそのクラッド層
の外側に接している必要があり、AlGaN基板が好ま
しく用いられ得る。
【0180】本実施形態においては、窪み付き基板上に
窒化物半導体レーザ素子が形成されることによって、結
晶歪みが緩和されるとともにクラック発生が抑制され、
雰囲気温度60℃の条件の下で30mWのレーザ出力で
約18000時間のレーザ発振寿命が得られるととも
に、クラックの抑制効果による素子歩留まりの向上が達
成された。
【0181】[実施形態10]実施形態10において
は、実施形態1〜8におけるいずれかの窪み付き基板上
に窒化物半導体発光ダイオード(LED)素子が形成さ
れた。この際に、窒化物半導体LED素子層は、従来と
同様の方法で形成された。
【0182】本実施形態による窒化物半導体LED素子
においては、その色むらが低減するとともに発光強度が
従来に比べて向上した。特に、窒化物半導体を原材料と
する白色窒化物半導体LED素子や琥珀色窒化物半導体
LED素子のように、発光波長が短波長(450nm以
下)または長波長(600nm以上)のLED素子は、
実施形態1〜8における窪み付き基板上に形成されるこ
とによって、従来に比較して約2倍以上の発光強度を有
することができた。
【0183】[実施形態11]実施形態11において
は、Nの一部と置換すべきAs、P、およびSbの少な
くともいずれかの置換元素を発光層に含ませたこと以外
は、実施形態9および10と同様であった。より具体的
には、As、P、およびSbの少なくともいずれかの置
換元素が、窒化物半導体発光素子の発光層中で少なくと
も井戸層のNの一部に置換して含められた。このとき、
井戸層に含まれたAs、P、および/またはSbの総和
の組成比をxとしてNの組成比をyとするときに、xは
yよりも小さくかつx/(x+y)は0.3(30%)
以下でなければならず、好ましくは0.2(20%)以
下である。また、As、P、および/またはSbの総和
の好ましい濃度の下限値は、1×1018/cm3以上で
あった。
【0184】この理由は、置換元素の組成比xが20%
よりも高くなれば井戸層内において置換元素の組成比の
異なる濃度分離が生じ始め、さらに組成比xが30%よ
りも高くなれば濃度分離から六方晶系と立方晶系が混在
する結晶系分離に移行し始めて、井戸層の結晶性が低下
する可能性が高くなるからである。他方、置換元素の総
和の濃度が1×1018/cm3よりも小さくなれば、井
戸層中に置換元素を含有させたことによる効果が得られ
難くなるからである。
【0185】本実施形態による効果としては、井戸層に
As、P、およびSbの少なくともいずれかの置換元素
を含ませることによって、井戸層中の電子とホールの有
効質量が小さくなりかつ移動度が大きくなる。半導体レ
ーザ素子の場合、小さな有効質量は小さい電流注入量で
レーザ発振のためのキャリア反転分布が得られることを
意味し、大きな移動度は発光層中で電子とホールが発光
再結合によって消滅しても新たな電子とホールが拡散に
よって高速で注入され得ることを意味する。すなわち、
発光層にAs、P、およびSbのいずれをも含有しない
InGaN系窒化物半導体レーザ素子に比べて、本実施
形態では、しきい値電流密度が低くかつ自励発振特性の
優れた(雑音特性に優れた)半導体レーザを得ることが
可能である。
【0186】他方、本実施形態が窒化物半導体LEDに
適用された場合、井戸層にAs、P、および/またはS
bの置換元素を含ませることによって、従来のInGa
N井戸層を含む窒化物半導体LED素子と比較して、井
戸層中のIn組成比が低減され得る。これは、Inの濃
度分離による結晶性の低下が抑制され得ることを意味す
る。したがって、置換元素の添加による効果は、実施形
態8の窒化物半導体LEDに関する効果と相乗され、よ
り一層の発光強度の向上と色むらの低減を生じる。特
に、窒化物半導体を原材料とする白色窒化物半導体LE
D素子や琥珀色窒化物半導体LED素子のように、発光
波長が短波長(450nm以下)または長波長(600
nm以上)の窒化物半導体LED素子の場合、In組成
比が低いか全く含有されることなく井戸層が形成され得
るので、従来のInGaN系窒化物半導体LED素子と
比較して色むらが小さく、強い発光強度が得られる。
【0187】[実施形態12]実施形態12において
は、実施形態9または11の窒化物半導体レーザ素子が
光学装置において適用された。実施形態9または11に
よる青紫色(380〜420nmの波長)の窒化物半導
体レーザ素子は、種々の光学装置において好ましく利用
することができ、たとえば光ピックアップ装置に利用す
れば以下の点において好ましい。すなわち、そのような
窒化物半導体レーザ素子は、高温雰囲気中(60℃)に
おいて高出力(30mW)で安定して動作し、素子不良
が少なくかつレーザ発振寿命が長いことから、信頼性の
高い高密度記録再生用光ディスク装置に最適である(光
波長が短いほど、より高密度の記録再生が可能であ
る)。
【0188】図20において、実施形態9または11に
よる窒化物半導体レーザ素子が光学装置に利用された一
例として、たとえばDVD装置のように光ピックアップ
を含む光ディスク装置が模式的なブロック図で示されて
いる。この光学情報記録再生装置において、窒化物半導
体レーザ素子を含む光源1から射出されたレーザ光3は
入力情報に応じて光変調器4で変調され、走査ミラー5
およびレンズ6を介してディスク7上に記録される。デ
ィスク7は、モータ8によって回転させられる。再生時
にはディスク7上のビット配列によって光学的に変調さ
れた反射レーザ光がビームスプリッタ9を介して検出器
10で検出され、これによって再生信号が得られる。こ
れらの各要素の動作は、制御回路11によって制御され
る。レーザ素子1の出力については、通常は記録時に3
0mWであり、再生時には5mW程度である。
【0189】本発明によるレーザ素子は上述のような光
ディスク記録再生装置に利用され得るのみならず、レー
ザプリンタ、バーコードリーダ、光の3原色(青色、緑
色、赤色)レーザによるプロジェクタなどにも利用し得
る。
【0190】[実施形態13]実施形態13において
は、実施形態10または11による窒化物半導体発光ダ
イオード素子が半導体発光装置において利用された。す
なわち、実施形態10または11による窒化物半導体発
光ダイオード素子は、少なくとも光の3原色(赤色、緑
色、青色)の1つとして、たとえば表示装置のような
(半導体発光装置)において利用可能である。そのよう
な窒化物半導体発光ダイオード素子を利用することによ
って、色むらが少なくかつ発光強度の高い表示装置が作
製され得る。
【0191】また、そのような光の3原色を生じ得る窒
化物半導体発光ダイオード素子は、白色光源装置におい
ても利用され得る。他方、発光波長が紫外領域から紫色
領域(380〜420nm程度)にある本発明による窒
化物半導体発光ダイオード素子は、蛍光塗料を塗布する
ことによって白色光源素子としても利用し得る。
【0192】このような白色光源を用いることによっ
て、従来の液晶ディスプレイに用いられてきたハロゲン
光源に代わって、低消費電力で高輝度のバックライトの
実現が可能になる。これは、携帯ノートパソコンや携帯
電話におけるマン・マシンインターフェイスの液晶ディ
スプレイ用バックライトとしても利用することができ、
小型で高鮮明な液晶ディスプレイを提供することができ
る。
【0193】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、窒化物
半導体発光素子において、発光寿命と発光強度を改善す
ることができる。また、本発明によれば、窒化物半導体
発光素子において、クラック発生と電極剥がれとワイヤ
ボンドの剥がれとを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a)は本発明において用いられ得る窒化物
半導体基板を含むマスク基板の一例を示す模式的な断面
図であり、(b)は基礎基板を含むマスク基板を示して
いる。
【図2】 本発明において用いられ得るマスク基板に含
まれる成長抑制の形態を示しており、(a)は2種類の
方向を有するストライプ状成長抑制膜が互いに直交する
場合を示し、(b)は2種類の方向を有するストライプ
状成長抑制膜が互いに60°の角度で交差する場合を示
し、そして(c)は3種類の方向を有するストライプ状
成長抑制膜が互いに60°の角度で交差する場合を示し
ている。
【図3】 本発明において用いられ得る窪み付き基板の
一例を示す模式的な断面図である。
【図4】 本発明において用いられ得る加工基板の一例
を示す模式的な断面図である。
【図5】 本発明において加工基板を利用した場合の窪
み付き基板を示す模式的な断面図である。
【図6】 マスク基板上における窒化物半導体膜の結晶
成長形態を表わす模式的な断面図である。
【図7】 加工基板上における窒化物半導体膜の結晶成
長形態を表わす模式的な断面図である。
【図8】 本発明においてマスク基板を含む窪み付き基
板上において発光素子構造を形成するために好ましい領
域を示す模式的な断面図である。
【図9】 本発明において用いられ得るマスク基板を含
む窪み付き基板の例を示す模式的な断面図である。
【図10】 本発明において用いられ得るマスク基板を
含む窪み付き基板上に形成された窒化物半導体レーザ素
子のリッジストライプ部の形成位置とレーザ発振寿命と
の関係を示す図である。
【図11】 本発明において用いられ得る加工基板を含
む窪み付き基板上に形成される発光素子構造における発
光部の好ましい領域を示す模式的な断面図である。
【図12】 本発明において用いられ得る加工基板を含
む窪み付き基板上に形成された窒化物半導体レーザ素子
のリッジストライプ部の形成位置とレーザ発振寿命との
関係を示す図である。
【図13】 本発明において用いられ得る窪み付き基板
の他の例を示す模式的な断面図である。
【図14】 本発明において用いられ得る窪み付き基板
の他の例を示す模式的な断面図である。
【図15】 本発明において用いられ得る窪み付き基板
の他の例を示す模式的な断面図である。
【図16】 本発明において用いられ得る窪み付き基板
の他の例を示す模式的な断面図である。
【図17】 本発明において用いられ得る窪み付き基板
の他の例を示す模式的な断面図である。
【図18】 本発明において用いられ得る窪み付き基板
の他の例を示す模式的な断面図である。
【図19】 本発明における窪み付き基板上に形成され
た窒化物半導体レーザ素子の一例を示す模式的な断面図
である。
【図20】 本発明による窒化物半導体レーザ素子を利
用した光ピックアップ装置を含む光学装置の一例を示す
模式的なブロック図である。
【符号の説明】
200 窪み付き基板、100 n型GaN基板、10
1 成長抑制膜、102 n型Al0.05Ga0.95N下地
層、103 n型In0.07Ga0.93Nクラック防止層、
104 n型Al0.1Ga0.9Nクラッド層、105 n
型GaN光ガイド層、106 発光層、107 p型A
0.2Ga0.8Nキャリアブロック層、108 p型Ga
Nガイド層、109 p型Al0.1Ga0.9Nクラッド
層、110p型GaNコンタクト層、111 n電極、
112 p電極、113 SiO 2誘電体膜。
フロントページの続き Fターム(参考) 5F041 AA03 AA40 CA04 CA05 CA34 CA40 CA46 CA53 CA54 CA56 CA57 CA58 CA65 DA07 EE25 5F073 AA13 AA45 AA51 AA72 AA77 AA89 CA17 CB02 CB05 CB13 CB19 DA05 DA34 EA23 EA28

Claims (19)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 窒化物半導体の基板表面または窒化物半
    導体以外の基礎基板上に成長した窒化物半導体基板層表
    面上に成長させられた窒化物半導体下地層と、 前記窒化物半導体下地層上でn型層とp型層との間にお
    いて量子井戸層または量子井戸層とこれに接する障壁層
    を含む発光層を含む発光素子構造とを含み、 前記発光素子構造を成長させた後においてもその表面に
    平坦化されていない窪みを含んでいることを特徴とする
    窒化物半導体発光素子。
  2. 【請求項2】 前記窒化物半導体の基板表面または前記
    窒化物半導体以外の基礎基板上に成長した窒化物半導体
    基板層表面の上で窒化物半導体の成長を抑制する成長抑
    制膜が部分的に形成されてマスク基板にされており、前
    記窒化物半導体下地層は前記マスク基板上に成長させら
    れていることを特徴とする請求項1に記載の窒化物半導
    体発光素子。
  3. 【請求項3】 前記成長抑制膜はストライプ状のパター
    ンに形成されていることを特徴とする請求項2に記載の
    窒化物半導体発光素子。
  4. 【請求項4】 前記ストライプ状成長抑制膜の長手方向
    が前記マスク基板に含まれる窒化物半導体結晶の<1−
    100>方向または<11−20>方向に実質的に平行
    であることを特徴とする請求項3に記載の窒化物半導体
    発光素子。
  5. 【請求項5】 前記ストライプ状成長抑制膜の上方に前
    記窪みが形成されており、前記窪みの側端部からその成
    長抑制膜の幅方向に2μm以上離れかつその成長抑制膜
    の幅内の領域の上方に前記発光素子構造の発光部が含ま
    れていることを特徴とする請求項3または4のいずれか
    の項に記載の窒化物半導体発光素子。
  6. 【請求項6】 前記成長抑制膜とその上方の前記窪みと
    の間に空隙が存在していることを特徴とする請求項5に
    記載の窒化物半導体発光素子。
  7. 【請求項7】 前記成長抑制膜の幅が7〜100μmの
    範囲内にあることを特徴とする請求項3から6のいずれ
    かの項に記載の窒化物半導体発光素子。
  8. 【請求項8】 前記成長抑制膜の厚さが0.05〜10
    μmの範囲内にあることを特徴とする請求項2から7の
    いずれかの項に記載の窒化物半導体発光素子。
  9. 【請求項9】 前記成長抑制膜はSiO2、SiO、S
    iNx、およびSiONxの少なくともいずれかの誘電体
    またはW、Moの少なくともいずれかの金属を含むこと
    を特徴とする請求項2から8のいずれかの項に記載の窒
    化物半導体発光素子。
  10. 【請求項10】 前記窒化物半導体下地層はAlとIn
    の少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項1から
    9のいずれかの項に記載の窒化物半導体発光素子。
  11. 【請求項11】 前記窒化物半導体下地層はGaNであ
    って、Si、O、Cl、S、C、Ge、Zn、Cd、M
    gおよびBeの不純物群のうちで少なくとも1種類以上
    を含み、かつその添加量が1×1017/cm3以上で5
    ×1018/cm3以下であることを特徴とする請求項1
    から9のいずれかの項に記載の窒化物半導体発光素子。
  12. 【請求項12】 前記窒化物半導体下地層はAlxGa
    1-xN(0.01≦x≦0.15)であって、Si、
    O、Cl、S、C、Ge、Zn、Cd、MgおよびBe
    の不純物群のうちで少なくとも1種類以上を含み、かつ
    その添加量が3×1017/cm3以上で5×1018/c
    3以下であることを特徴とする請求項1から9のいず
    れかの項に記載の窒化物半導体発光素子。
  13. 【請求項13】 前記窒化物半導体下地層はInxGa
    1-xN(0.01≦x≦0.15)であって、Si、
    O、Cl、S、C、Ge、Zn、Cd、MgおよびBe
    の不純物群のうちで少なくとも1種類以上を含み、かつ
    その添加量が1×1017/cm3以上で4×1018/c
    3以下であることを特徴とする請求項1から9のいず
    れかの項に記載の窒化物半導体発光素子。
  14. 【請求項14】 前記窪みを2つ以上含む領域上に電極
    が形成されていることを特徴とする請求項1から13の
    いずれかの項に記載の窒化物半導体発光素子。
  15. 【請求項15】 前記窪みを2つ以上含む領域上に誘電
    体膜が形成されていることを特徴とする請求項1から1
    4のいずれかの項に記載の窒化物半導体発光素子。
  16. 【請求項16】 ワイヤボンドと前記窒化物半導体素子
    との間の接合領域に前記窪みが1つ以上含まれているこ
    とを特徴とする請求項1から15のいずれかの項に記載
    の窒化物半導体発光素子。
  17. 【請求項17】 前記量子井戸層はAs、P、およびS
    bのうちの少なくとも1種の元素を含んでいることを特
    徴とする請求項1から16のいずれかの項に記載の窒化
    物半導体発光素子。
  18. 【請求項18】 請求項1から17のいずれかの項に記
    載された窒化物半導体発光素子を含むことを特徴とする
    光学装置または半導体発光装置。
  19. 【請求項19】 窒化物半導体の基板表面または窒化物
    半導体以外の基礎基板上に成長した窒化物半導体基板層
    表面上に窒化物半導体の成長を抑制する成長抑制膜を部
    分的に形成してマスク基板とし、 前記マスク基板上に窒化物半導体下地層を成長させ、 前記窒化物半導体下地層上でn型層とp型層との間にお
    いて量子井戸層または量子井戸層とこれに接する障壁層
    を含む発光層を含む発光素子構造を成長させる工程を含
    み、 前記発光素子構造を成長させたあとのその表面において
    も前記成長抑制膜の上方において平坦化されていない窪
    みが形成されていることを特徴とする窒化物半導体発光
    素子の製造方法。
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