JP2002240187A - コンクリートの防食ライニング構造 - Google Patents

コンクリートの防食ライニング構造

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JP2002240187A
JP2002240187A JP2001045501A JP2001045501A JP2002240187A JP 2002240187 A JP2002240187 A JP 2002240187A JP 2001045501 A JP2001045501 A JP 2001045501A JP 2001045501 A JP2001045501 A JP 2001045501A JP 2002240187 A JP2002240187 A JP 2002240187A
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Masa Yoshida
雅 吉田
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YOSHIDA KENSETSU KOGYO KK
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 硫化水素雰囲気下で長期安定的に優れた防食
効果を呈する施工性の良い低コストのコンクリート防食
ライニング構造を提供する。 【解決手段】 コンクリート側から「抗菌性モルタル
層」、「植毛シート層」、「抗菌性モルタル層」の積層
構造を有し、前記植毛シートの植毛繊維がモルタルに絡
むことによって植毛シートとモルタルが接合してなるコ
ンクリートの防食ライニング構造。銀イオンおよび銅イ
オンの1種または2種をゼオライト中に担持させた硫黄
酸化細菌に対して抗菌力のある抗菌剤が使用できる。植
毛シートは、熱可塑性樹脂フィルム好ましくは厚さ0.05
〜0.5mmの高密度ポリエチレンフィルムの両面に、熱可
塑性樹脂繊維好ましくはポリプロピレン繊維を、片面当
たり30〜100g/m2植毛したものが好適に使用できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、下水道施設,厨房
除害施設,汚水槽などの、硫化水素雰囲気に曝されるコ
ンクリート構造物の防食ライニング構造に関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】コンクリート構造物は一般的に長期間の
耐久性を有するが、曝される環境によっては早期に腐食
が進行することがある。下水道施設を構成するコンクリ
ート構造物では、特に気相と接している部位において、
下水や汚泥から発生した硫化水素に起因した腐食が問題
になる。その腐食のメカニズムは、以下のように考えら
れている。
【0003】下水や汚泥中に含まれる硫酸塩(S
O4 2-)が硫酸還元細菌により還元され、硫化水素(H
2S)が生成する。 硫化水素は下水のpH(7〜8)ではガス化しやすく、気
相中に拡散する。 気相中の硫化水素はコンクリート壁面の結露中に再溶
解し、そこで硫黄酸化細菌により酸化され、次式のよう
に硫酸(H2SO4)が生成される。 H2S + 2O2 → H2SO4 硫酸はコンクリート表面で濃縮され、pHが1〜2に低下
するとコンクリートの主成分である水酸化カルシウム
(Ca(OH)2)が硫酸と反応し、次式のように硫酸カルシ
ウム(CaSO4・2H2O)が生成される。 Ca(OH)2 + H2SO4 → CaSO4・2H2O 硫酸カルシウムはさらにセメント硬化体中のアルミン
酸三カルシウム(3CaO・Al2O3)と反応して、次式のよ
うにエトリンガイト(3CaO・Al2O3・3CaSO4・32H2O)を
生成する。エトリンガイトは生成の際、結合水を取り込
み、大きく膨張する。この膨張によってコンクリートが
腐食し、崩壊する。 3CaSO4・2H2O + 3CaO・Al2O3 + 26H2O → 3CaO・Al2O3・3CaSO4・32H2O
【0004】従来、下水道施設のコンクリート防食方法
として、コンクリート表面を防食被覆層で覆う、いわゆ
る防食被覆工法が採用されてきた。この工法にはライニ
ング工法およびシートライニング工法が挙げられる。
【0005】ライニング工法は、防食被覆層として、エ
ポキシ,ビニルエステル,ポリエステルなど、通常液状
で、硬化剤を混入することによって常温で硬化する樹脂
を用いるものである。通常、素地調整されたコンクリー
ト表面にローラーや金ゴテ等を用いて上記のような樹脂
を塗布し、被覆層を形成する。
【0006】シートライニング工法は、硬質塩化ビニル
樹脂シート,高密度ポリエチレン樹脂シートなどの防食
シートによってコンクリート表面を覆うものである。防
食シートを、コンクリート打設前に型枠に張り付ける
か、コンクリート打設後にコンクリート表面に張り付け
ることによって、防食シートはコンクリートと一体化さ
れる。
【0007】これらの防食被覆工法は、被覆層によって
硫化水素あるいは硫酸がコンクリート表面に到達しない
ようにするものである。
【0008】一方、硫黄酸化細菌の繁殖を抑制する抗菌
剤を配合した抗菌性コンクリートも開発されている。こ
のコンクリートを用いると、硫化水素雰囲気中で結露が
生じた場合でも、コンクリート表面において硫黄酸化細
菌の繁殖が抑制されるため、生成される硫酸の量は非常
に少なくなる。その結果、結露水のpHはコンクリートを
腐食するほどには低下せず、硫化水素雰囲気中でのコン
クリート構造物の耐久性向上が期待される。また、同様
の抗菌剤を配合した抗菌性モルタルも開発されており、
下水道施設の補修材料として効果が期待される。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来から採用
されている上記のライニング工法は、液状の樹脂をコン
クリート表面に塗布するものであるため、有機溶剤の使
用が不可欠である。このため、換気が不十分となりやす
い下水道施設や汚水槽においてこの工法を採用すること
は、作業環境を著しく悪化させ好ましくない。また、樹
脂の被覆層は通常数mm程度以下と薄いため損傷を受けや
すく、その部分から硫化水素や硫酸が侵入して下地のコ
ンクリートの腐食を招く。
【0010】シートライニング工法の場合には、防食シ
ートに強度の高いものを使用することで被覆層の耐久性
を向上させることができる。既設のコンクリート構造物
に防食シートを取り付けるには、接着剤を使用するか、
釘やアンカーボルトを使用するか、コンクリート側に設
けた突起金具に固定するか、あるいは防食シート自体に
設けた取り付け用突起をコンクリート上に施した補修材
に埋め込むようにするといった方法が採用できる。
【0011】しかし、接着剤を使用する場合はやはり有
機溶剤による作業環境悪化の問題が生じる。釘やアンカ
ーボルトを使用する場合にも接着剤等による補助的な接
合手段を併用することが望ましく、また、釘等の部分を
水密・気密に保つためのシーリング処理が必要になる。
コンクリート側に設けた突起金具に固定する場合にもシ
ーリング処理が必要になり、突起金具を設けるための工
程も増える。取り付け用突起を有する特殊なシートを準
備することはコスト増となり、またそれをコンクリート
に取り付けるには補修材等を用いた前処理が必要にな
る。また、これらいずれの取り付け方法を採る場合で
も、防食シートが硬質の場合には構造物の取り付け面を
平滑化しておく必要がある。さらに、防食シート端面ど
うしのジョイント部において水密・気密を保つためのシ
ーリング処理を入念に行う必要が生じる。
【0012】抗菌性コンクリートを使用する方法は、新
たに構造物を建設する際には有効であるが、既設の構造
物をあとから防食する方法としては適用しにくい。
【0013】一方、硫黄酸化細菌の繁殖を抑制する抗菌
剤を配合した抗菌性モルタルによってコンクリート表面
をライニングすれば、作業環境を悪化させずにコンクリ
ートの防食が達成できるのではないかと考えられる。し
かしながら、発明者らの検討によれば、モルタルでライ
ニングするだけでは耐久性に劣り、十分な防食効果は得
られないことがわかった。すなわち、モルタル層には経
時劣化によりひび割れが生じ、このひび割れ部分で下地
のコンクリートに腐食が生じることがある。抗菌性モル
タルを使用することで、モルタル表面あるいはモルタル
中においてコンクリートを腐食させるような低pH硫酸が
生成することは防止されると考えられる。しかし、ひび
割れ部分から硫化水素が侵入し、下地のコンクリート表
面あるいはコンクリート中の亀裂内に生息する硫黄酸化
細菌によって、侵入した硫化水素から硫酸が生成し、結
果的にコンクリートの腐食に至るものと推察される。
【0014】そこで本発明は、以上のような現状に鑑
み、汚水槽や膨大な総延長を有する既設の下水道施設に
広く適用し得るとともに、新たに建設される構造物に適
用してもコスト的に有利なコンクリートの防食ライニン
グ構造であって、施工現場において有機溶剤による環境
悪化や、下地処理等の煩雑な作業が問題にならない技術
を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】発明者らは種々検討の結
果、上記目的は、抗菌性モルタルを使用したライニング
において、経時劣化によるひび割れが貫通しないような
ライニング構造を採用することによって達成できること
を知見した。
【0016】すなわち、請求項1の発明は、コンクリー
ト側から「モルタル層」、「樹脂フィルムの両面に植毛
を施した植毛シート層」、「硫黄酸化細菌に対して抗菌
力のある抗菌性モルタル層」の積層構造を有し、前記植
毛シートの植毛繊維がモルタルに絡むことによって植毛
シートとモルタルが接合してなるコンクリートの防食ラ
イニング構造である。
【0017】ここで、硫黄酸化細菌に対して抗菌力のあ
る抗菌性モルタルとは、硫黄酸化細菌の繁殖を抑制する
抗菌剤を配合したモルタルであって、適用される硫化水
素雰囲気中に曝した状態で当該モルタル表面の凝結水の
pHが3以上に維持される程度の抗菌力を有しているもの
をいう。
【0018】植毛シートの植毛繊維がモルタルに絡むこ
とによって植毛シートとモルタルが接合しているとは、
植毛繊維の間の空隙にモルタルが入り込んだ状態でモル
タルが固化し、植毛繊維がモルタルの中に封じ込められ
ることにより、植毛シートとモルタルが剥がれないよう
に接合していることをいう。
【0019】請求項2の発明は、請求項1のライニング
構造において、コンクリート側のモルタル層も「硫黄酸
化細菌に対して抗菌力のある抗菌性モルタル層」である
点を規定したものである。請求項3の発明は、請求項1
または2のライニング構造において、抗菌性モルタル
が、銀イオンおよび銅イオンの1種または2種をゼオラ
イト中に担持させた抗菌剤を含有するものである点を規
定したものである。
【0020】請求項4の発明は、請求項1〜3のライニ
ング構造において、植毛シートが、熱可塑性樹脂フィル
ムの両面に熱可塑性樹脂繊維を植毛したものである点を
規定したものである。請求項5の発明は、請求項1〜3
のライニング構造において、植毛シートが、高密度ポリ
エチレンフィルムの両面にポリプロピレン繊維を植毛し
たものである点を規定したものである。請求項6の発明
は、請求項4または5のライニング構造において、植毛
シートが、特に厚さ0.05〜0.5mmのフィルムの両面に、
片面当たり30〜100g/m2の植毛を有するものである点を
規定したものである。
【0021】
【発明の実施の形態】図1に、本発明の防食ライニング
構造を有する、コンクリート構造物表面付近の断面を模
式的に示す。コンクリート1の表面に、内側のモルタル
層2a,植毛シート層3,外側のモルタル層2bの3層
からなる積層構造の防食ライニング構造を有している。
ここで、内側のモルタル層2aは必ずしも抗菌性モルタ
ルである必要はないが、外側のモルタル層2bは、後述
のように、抗菌性モルタルでなければならない。内側の
モルタル層2aおよび外側のモルタル層2bの両方を抗
菌性モルタルで構成することが一層好ましい。
【0022】コンクリート1の表面が腐食するなどして
既に劣化している場合は、劣化部分をはつり取り、補修
しておく。その場合、基本的に従来のライニング工法の
場合と同様の補修方法が採用できる。また、図1の例で
はコンクリート1の表面に直接、モルタル層2aを設け
ているが、コンクリート1の上に補強材などの層を設
け、その上に2a,3,2bからなる本発明のライニン
グを施してもよい。外側のモルタル層2bの上に、更に
植毛シート層や、植毛シート層とモルタル層の積層構造
を設けてもよい。あるいは2bの上をその他の補強シー
ト層などで覆うこともできる。つまり、コンクリート1
の防食ライニングとして、2a,3,2bの3層からな
る本発明のライニング構造のみをコンクリート1の上に
直接設けてもよいし、また、本発明のライニング構造
を、多層構造のライニングの一部として利用することも
できる。モルタル層の厚さに特に制限はないが、内側の
モルタル層2aは2〜10mm程度、外側のモルタル層2b
は5〜25mm程度の範囲で形成すればよい。下地のコンク
リート表面あるいはその上の補修層をできるだけ平滑に
しておき、内側のモルタル層2aは3〜5mm、外側のモル
タル層2bは10〜15mmの範囲で形成するのが好ましい。
【0023】施工に際し、コンクリートに近い側のモル
タル層2aは、コンクリート1の表面上、あるいは、コ
ンクリート1の上に設けられた補強材層等の表面上に、
コテ塗りや吹き付けなどの方法により、比較的簡単に形
成させることができる。そして、2aがまだ固まらない
うちに、この上に樹脂フィルムの両面に植毛を施した植
毛シートを張り付ける。その際、接着剤は不要である。
具体的には、モルタルの流動性がまだ残っている状態の
モルタル層2aの表面上に、植毛シートを、しわを伸ば
すような要領で軽く押しつけながら張り付けていけばよ
い。
【0024】図2に、本発明のライニング構造における
内側のモルタル層2aと植毛シート層3の接合部分を拡
大して模式的に示す。植毛シート6は樹脂フィルム4と
その表面の植毛繊維5によって構成されている。モルタ
ル層2aのモルタル7がまだ流動性を有している状態で
植毛シート6を2a上に軽く押しつけることにより、モ
ルタル7は植毛繊維5の間の空隙に入り込む。モルタル
層2aと植毛シート層3の境界部には、モルタル・植毛
繊維共存領域8が形成され、この状態でモルタル7が固
化すると、植毛繊維はモルタルの中に封じ込められる。
つまり、植毛繊維がモルタルに絡むことによって植毛シ
ートとモルタルが接合するため、両者は強固に接合され
る。
【0025】図3には、植毛シート端部のジョイント処
理の例を示す。図3(A)は、先に張り付けた植毛シー
ト6aの上に、後から張り付ける植毛シート6bの一部
を重ねあわせるようにした例であり、図3(B)は植毛
シート6aおよび6bの端部をカバーするように、6
a,6bと同質の植毛シート帯材6cを貼った例であ
る。植毛シートどうしの接合には接着剤を用いることも
できるが、モルタルを接着剤の代わりに使用するのが望
ましい。植毛繊維がモルタルに絡むことにより強固な接
合が達成でき、かつ、有機溶剤による作業環境の悪化も
生じないからである。
【0026】植毛シート層3の上には外側のモルタル層
2bを形成させる。この作業は植毛シート層3上に直接
モルタルをコテ塗りするか吹き付けるなどして、比較的
容易に行うことができる。植毛シート層3とその上のモ
ルタル層2bの接合状態は上記図2の場合と同様にな
り、外側のモルタル層2bは強固に接合される。
【0027】本発明で使用する抗菌性モルタルは、チオ
バチルス類細菌などの硫黄酸化細菌に対して抗菌力を有
するものでなくてはならない。一般に、銀イオンや銅イ
オンには抗菌作用があり、硫黄酸化細菌に対しても有効
であることが知られている。しかし、銀イオンや銅イオ
ンは化学物質と反応する可能性が高いため、これらをそ
のままモルタルやコンクリートに添加して使用すること
はできない。そこで、モルタルやコンクリートに添加す
るのに適した抗菌剤が開発されている。
【0028】例えば、銀イオン・銅イオンをゼオライト
中に担持させた抗菌剤は、粉体としてモルタルやセメン
トに添加することができ、ミキサーで混練することによ
って抗菌性モルタルや抗菌性コンクリートを製造するこ
とができる。この種の抗菌剤として、次のような物性の
ものが知られている。 外観 : 灰白色粉末 平均粒径: 約17μm 嵩密度 : 約0.7g/cm3 真比重 : 約2.8 揮発性 : なし 水溶性 : なし
【0029】本発明では、少なくとも外側のモルタル層
2bには抗菌性モルタルを使用する。これによって、硫
黄酸化細菌が生成する硫酸のpHをコンクリートあるいは
モルタル自体が腐食しない範囲にコントロールする。た
だし、下水道施設等のコンクリートが曝される環境によ
って、硫黄酸化細菌の繁殖力には差がある。このため、
適用される環境において十分な抗菌力が得られる量の抗
菌剤を配合した抗菌性モルタルを使用しなければならな
い。発明者らの検討によれば、ある抗菌性モルタルが本
発明に適用し得る抗菌力を有しているかどうかについ
て、以下のように評価することができる。すなわち、当
該モルタルのサンプル(固化したもの)を、適用される
硫化水素雰囲気中に曝したとき、サンプル表面の凝結水
のpHが3以上に維持される程度の抗菌力を有しているも
のであれば、本発明に適用することができる。上記のゼ
オライト抗菌剤を使用する場合、モルタルを構成する粉
体材料(セメントおよびその他の粉体材料を含み、水を
除く)100質量部に、1〜3質量部の抗菌剤を添加して混
練したモルタルは、一般的な多くの下水道施設や汚水槽
に適用できる抗菌力を有していることが確認された。よ
り腐食性の強い環境に適用する場合には抗菌剤の添加量
を例えば3〜5質量部といったようにさらに増やすことで
対応できる。
【0030】本発明に適用する植毛シートは、2つのモ
ルタル層の間に介在させることにより、経時劣化により
生じるモルタルのひび割れがライニング層を貫通するの
を防止する機能を果たす。すなわち、内側のモルタル層
2aに発生したひび割れは、植毛シート層に遮られて、
外側のモルタル層2bに伝播しない。同様に、外側のモ
ルタル層2bに発生したひび割れは、内側のモルタル層
2aに伝播しない。つまり、外部と内部を貫くようなひ
び割れは生じない。このため、外部の硫化水素がモルタ
ル中のひび割れを通って内部へ侵入することが防止され
る。
【0031】植毛シートには、両面に植毛を有すること
以外に、以下のような性質が要求される。 両側のモルタルが接触しないこと、 強度および耐酸性に優れること、 下地モルタル面の凹凸に追従しやすいこと。 は両側のモルタル間でひび割れの伝播をくい止めるた
めに必要な条件、はコンクリートの防食ライニング構
造を構成するうえで必要な条件、は作業性を向上させ
るために必要な条件である。以上の条件を種々検討した
結果、本発明では、樹脂フィルムの両面に植毛を施した
植毛シートを用いることとした。
【0032】樹脂フィルムおよび植毛材には、熱可塑性
樹脂を用いることができる。例えば、ポリエチレン,ポ
リプロピレン,ポリ塩化ビニルなどが挙げられる。本発
明にとって好ましい植毛シートは、高密度ポリエチレン
のフィルムに高密度ポリプロピレンの繊維を植毛したも
のである。この場合、厚さ0.05〜0.5mmのフィルムの両
面に、片面当たり30〜100g/m2(繊維太さ3デニールの
場合)程度の植毛を有するものであるのが好ましい。
【0033】このような植毛シートは、樹脂フィルムの
両面に植毛材を張り合わせるラミネート加工法により工
業的に製造することができる。具体的には例えば、高密
度ポリエチレンのペレットを加熱ヒータをもつホッパー
に入れて240〜250℃で加熱し、これをホッパーのスリッ
トからインペラーで押し出して連続したフィルムの流れ
を形成し、この流れている昇温したポリエチレンフィル
ムの両面に、ポリプロピレンの植毛材ウェブを連続的に
供給しながらローラーで転圧してラミネートし、ついで
空冷帯を通過させて冷却したあと帯状シートの両耳部を
トリミングした後、巻取ロールへ巻き取ることにより、
フィルム面に植毛をもつ植毛シートが得られる。前記植
毛材ウェブとしては、例えば、綿状の集合繊維を針によ
って機械的に絡ませて平らな不織布とした、いわゆるニ
ードルパンチフェルトが製造されている。
【0034】次に、本発明のライニング構造による防食
メカニズムについて、比較例を挙げながら説明する。 〔比較例1〕図4には、コンクリート1の表面に抗菌性
モルタル層2のみからなるライニングを施した比較例を
示す。この場合、モルタルは抗菌性を有するため、モル
タル表面やモルタル中では硫黄酸化細菌による硫酸の発
生が抑制される。したがって、抗菌性のないモルタルを
ライニングした場合と比べると、コンクリートの腐食は
かなり軽減される。しかし、モルタルは経時劣化によっ
てひび割れを生じ、その割れは最終的にモルタル層を貫
通する割れ9になる。すると、外部の硫化水素はモルタ
ルのひび割れを通ってコンクリートに達し、コンクリー
ト表面や内部に生息していた硫黄酸化細菌によって硫酸
が生成される。その結果、コンクリート1には腐食部1
0が形成され、これが成長していくことになる。この場
合、抗菌性のないモルタルをライニングした場合と比べ
るとコンクリートの腐食は軽減されるものの、長期にわ
たって腐食を防止することは困難である。
【0035】〔比較例2〕図5には、コンクリート1の
表面に「抗菌性モルタル層2」と「植毛シート層3」か
らなる2層構造のライニングを施した比較例を示す。こ
こで、植毛シートは本発明において使用できるものと同
等のものであるとする。この植毛シートは、硫化水素な
どの気体成分をある程度透過する性質がある。この場
合、モルタルは経時劣化によってひび割れを生じ、やは
り最終的にモルタル層を貫通する割れ9になる。したが
って、外部の硫化水素が植毛シートを透過して侵入した
後は、比較例1と事情は同じであり、結局、コンクリー
ト1には腐食部10が生じる。
【0036】〔比較例3〕図6には、コンクリート1の
表面に「植毛シート層3」と「抗菌性モルタル層2」か
らなる2層構造のライニングを施した比較例を示す。こ
こで、植毛シートは本発明において使用できるものと同
等のものであるとする。この場合、モルタルに生じたひ
び割れは、やはり最終的にモルタル層を貫通する割れ9
になる。すると、外部の硫化水素はそのひび割れを通っ
て侵入して植毛シート層に達し、さらに植毛シート層を
透過してコンクリートに達する。したがって、この場合
もコンクリート1に腐食部10が生じることは避けられ
ない。
【0037】〔発明例〕図7には、コンクリート1の表
面に「内側のモルタル層2a」,「植毛シート層3」,
「外側の抗菌性モルタル層2b」の3層構造を有する本
発明に係るライニングを施した例を示す。2つのモルタ
ル層の間には植毛シート層が介在しており、両側のモル
タルは接触していない。このため、いずれかのモルタル
に生じたひび割れの進行は植毛シートによって阻まれ、
外部からコンクリートまでを貫く割れに成長することは
極めて稀である。
【0038】この場合、外側のモルタル層2bを貫通す
る割れ9bを通って侵入した硫化水素は、植毛シート層
3を透過して内側のモルタル層2aの表面までは届く。
しかし、内側のモルタル層2aの植毛シート接合面に
は、外側のモルタル層2bの植毛シート接合面の割れ形
状にぴったり一致するようなひび割れは、通常、生じ得
ない。つまり、内側のモルタル層2aの表面に届いた硫
化水素の大部分をさらに内部へ運ぶようなひび割れは、
内側のモルタル中に存在しないことになる。内側のモル
タル層2aを貫通する割れ9aに硫化水素がさらに侵入
するとしても、その量は極めて少量であると考えられ、
コンクリート1の表面で仮に硫黄酸化細菌により硫酸が
生成したとしてもコンクリートを腐食させるに至るまで
pHが低下するには非常に時間がかかると考えられる。し
たがって、当該ライニング構造は長期間防食性能を発揮
するものである。特に、内側のモルタル層2aを抗菌性
モルタルとした場合には、内側のモルタル層2aの抗菌
剤がコンクリート1の表面付近に及ぼす抗菌力の方が、
コンクリート1の表面付近で硫黄酸化細菌が硫酸を生成
する力(すなわち、繁殖力)を上回り、結果として、コ
ンクリートの腐食はほぼ完全に防止されるものと考えら
れる。
【0039】なお、外側のモルタル層2bが仮に抗菌力
のない通常のモルタルであるとすれば、外側のモルタル
表面またはモルタル中で硫黄酸化細菌により硫酸が生成
される。ところが、前記植毛シートは、その樹脂フィル
ムによって硫酸をほとんど透過しない。このため、外側
のモルタル層2bが抗菌力のないものであっても、コン
クリート1が直ちに腐食することはない。しかし、この
場合、外側のモルタル層2b自体が、生成した硫酸に曝
されることによって早期に腐食し、外側のモルタル層2
bはライニング効果を失ってしまう。そうなると、実質
的に上記比較例2と場合と同様の状態となり、結果的に
コンクリート1は腐食に至る。したがって、本発明では
外側のモルタル層2bは抗菌性モルタルで構成すること
とした。
【0040】
【実施例】寸法100×100×200mmのコンクリートブロッ
クを用い、この表面に本発明のライニングを施したサン
プルAと抗菌性モルタル層のみを施したサンプルBを準
備した。これらをビルの厨房排水が流れ込む厨房除害排
水槽の内部(気相部)に60日間放置してコンクリートの
腐食状況等を調査した。なお、この気相部には、その臭
気から、硫化水素が存在していることが明らかであっ
た。
【0041】使用したコンクリートブロックはA,Bと
も、水/セメント比59.5%,細骨材率46.5%のポルトラ
ンドセメントコンクリートからなるものである。抗菌性
モルタルに使用した抗菌剤は銅イオンおよび銀イオンを
ゼオライト中に担持させた抗菌剤であり、先に例示した
平均粒径約17μmの灰白色粉末からなるものである。こ
の抗菌剤を水/セメント比55%のモルタルに添加し混練
して抗菌性モルタルを作製した。抗菌剤の配合量は、モ
ルタルを構成する粉体材料(セメントおよびその他の粉
体材料を含み、水を除く)100質量部に対し、抗菌剤1質
量部とした。
【0042】サンプルAのライニング構造は、コンク
リートに接する内側のモルタル層3〜5mm,植毛シート
層,気相に接する外側のモルタル層約10mmの3層構造
とした。のモルタル層はいずれも上記抗菌性モルタ
ルを用いた。の植毛シートは、厚さ0.1mmの高密度ポ
リエチレンフィルムの両面に、繊維太さ3デニールの高
密度ポリプロピレン繊維からなるニードルパンチフェル
トを、ラミネート加工法により片面当たり約50g/m2植毛
したものである。ライニング施工の手順は、まずのモ
ルタル層をコテ塗りで形成した後、これがまだ固まらな
いうちにの植毛シートを、しわを伸ばすような要領で
軽く押しつけるようにして張り付けた。植毛シートのジ
ョイント処理は図6(A)に示したように端部どうしを
重ねる方式とし、その部分の接着は抗菌性モルタルを上
下の植毛シートの間に薄く介在させることによって行っ
た。この植毛シート層の上にのモルタル層をコテ塗り
で形成し、3層構造のライニングを完成させた。
【0043】サンプルBのライニング構造は、前記抗菌
性モルタルを使用した厚さ15mmのモルタル層のみからな
る1層構造とした。このモルタル層もコテ塗りで形成し
た。
【0044】これらを厨房除害排水槽の気相部に60日間
放置したのち、ライニング層およびコンクリートの腐食
状況を調べた。本発明のライニング構造を採用したサン
プルAでは、内側のモルタル層および外側のモルタル層
に若干ひび割れの生じている部分があった。しかし、こ
れらは軽微であり、モルタル層は健全であると判断され
た。植毛シートを挟む2つのモルタル層を貫通するよう
な割れは生じていなかった。植毛シートとその両側のモ
ルタル層は強固に接合していた。また、下地のコンクリ
ートには腐食は全く認められなかった。以上のことか
ら、本発明のライニング構造は十分な耐久性を有し、硫
化水素雰囲気中において長期間安定的にコンクリートを
防食し得るものであることが確認された。
【0045】これに対し、サンプルBでは、抗菌性モル
タル層に軽微なひび割れが生じている現象はサンプルA
と同様であったが、その割れが外部とコンクリート表面
を貫通している部分があった。コンクリートには、その
貫通割れに接触している部分で白化の生じている箇所が
あった。この白化は硫酸による初期の腐食形態であると
考えられ、成長過程にあるものと判断された。
【0046】
【発明の効果】以上のように、本発明のライニング構造
は以下のようなメリットを有するものである。 施工において、有機溶剤による作業環境の悪化が問題
にならない。 煩雑な下地処理や型枠の使用が不要であり、既設のコ
ンクリート構造物表面に簡単な作業で形成することがで
きる。 新規建設物件においても、高価な抗菌性コンクリート
を多量に用いて構造物を建設するより、通常のコンクリ
ート表面に本発明のライニング構造を形成する方がコス
ト的に有利な場合が多い。 硫化水素の湿潤雰囲気下においてライニング層の耐久
性に優れ、長期安定的に優れたコンクリート防食効果が
得られる。したがって本発明は、下水道施設や汚水槽な
どのコンクリート防食手段として広く利用することがで
き、これらのコンクリート防食事業の促進に貢献するも
のである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の防食ライニング構造を有する、コンク
リート構造物表面付近の断面図である。
【図2】本発明のライニング構造における内側のモルタ
ル層(または外側のモルタル層)と植毛シート層の接合
部分を模式的に表した拡大断面図である。
【図3】植毛シート端部のジョイント処理の例を示す断
面図である。
【図4】抗菌性モルタル層のみからなる比較例のライニ
ング構造におけるコンクリートの腐食メカニズムを模式
的に表した断面図である。
【図5】抗菌性モルタル層と植毛シートからなる比較例
のライニング構造におけるコンクリートの腐食メカニズ
ムを模式的に表した断面図である。
【図6】植毛シートと抗菌性モルタル層からなる比較例
のライニング構造におけるコンクリートの腐食メカニズ
ムを模式的に表した断面図である。
【図7】本発明のライニング構造におけるコンクリート
の防食メカニズムを模式的に表した断面図である。
【符号の説明】
1 コンクリート 2 モルタル層 2a 内側のモルタル層 2b 外側のモルタル層 3 植毛シート層 4 樹脂フィルム 5 植毛繊維 6,6a,6b 植毛シート 6c 植毛シート帯材 7 モルタル 8 モルタル・植毛繊維共存領域 9 モルタル層を貫通する割れ 10 コンクリートの腐食部

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 コンクリート側から「モルタル層」、
    「樹脂フィルムの両面に植毛を施した植毛シート層」、
    「硫黄酸化細菌に対して抗菌力のある抗菌性モルタル
    層」の積層構造を有し、前記植毛シートの植毛繊維がモ
    ルタルに絡むことによって植毛シートとモルタルが接合
    してなるコンクリートの防食ライニング構造。
  2. 【請求項2】 コンクリート側から「硫黄酸化細菌に対
    して抗菌力のある抗菌性モルタル層」、「樹脂フィルム
    の両面に植毛を施した植毛シート層」、「硫黄酸化細菌
    に対して抗菌力のある抗菌性モルタル層」の積層構造を
    有し、前記植毛シートの植毛繊維がモルタルに絡むこと
    によって植毛シートとモルタルが接合してなるコンクリ
    ートの防食ライニング構造。
  3. 【請求項3】 抗菌性モルタルが、銀イオンおよび銅イ
    オンの1種または2種をゼオライト中に担持させた抗菌
    剤を含有するものである請求項1または2に記載の防食
    ライニング構造。
  4. 【請求項4】 植毛シートが、熱可塑性樹脂フィルムの
    両面に熱可塑性樹脂繊維を植毛したものである請求項1
    〜3に記載の防食ライニング構造。
  5. 【請求項5】 植毛シートが、高密度ポリエチレンフィ
    ルムの両面にポリプロピレン繊維を植毛したものである
    請求項1〜3に記載の防食ライニング構造。
  6. 【請求項6】 植毛シートが、厚さ0.05〜0.5mmのフィ
    ルムの両面に、片面当たり30〜100g/m2の植毛を有する
    ものである請求項4または5に記載の防食ライニング構
    造。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010189834A (ja) * 2009-02-13 2010-09-02 Nippon Steel Composite Co Ltd 酸性腐食環境下におけるコンクリート構造物の補修方法

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