JP2002231455A - 有機エレクトロルミネッセンス素子 - Google Patents

有機エレクトロルミネッセンス素子

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JP2002231455A JP2001370225A JP2001370225A JP2002231455A JP 2002231455 A JP2002231455 A JP 2002231455A JP 2001370225 A JP2001370225 A JP 2001370225A JP 2001370225 A JP2001370225 A JP 2001370225A JP 2002231455 A JP2002231455 A JP 2002231455A
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地潮 細川
Kenichi Fukuoka
賢一 福岡
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弘 東海林
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Abstract

(57)【要約】 【課題】有機EL素子における発光輝度の向上及び長寿
命化を図る。 【解決手段】 陽極層10、発光域12、電子注入域1
4および陰極層16を順次に積層した構造を有する有機
エレクトロルミネッセンス素子において、前記電子注入
域のガラス転移点を100℃以上の値とし、かつ、前記
電子注入域に、窒素原子を含まない芳香族化合物と、M
Ar(ただし、Mはアルカリ金属、Arは無置換ま
たは置換の炭素数10〜40の芳香族環化合物を表す)
で表される還元性ドーパントとを含有し、さらに、前記
電子注入域の電子親和力を1.8〜3.6eVの範囲と
した有機エレクトロルミネッセンス素子。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、有機エレクトロ
ルミネッセンス素子(以下、「有機EL素子」とも称す
る。)に関する。さらに詳しくは、民生用および工業用
の表示機器(ディスプレイ)あるいはプリンターヘッド
の光源等に用いて好適な有機EL素子に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の有機EL素子の一例が、文献1:
「特開平4−297076号公報」に開示されている。
この文献1に開示された有機EL素子60は、図10に
示すように、陰極層58と透明電極である陽極層50と
の間に、三層の有機膜52,54および56を挟んだ有
機膜積層を構成している。そして、三層の有機膜のう
ち、陰極層58と接する第1の有機膜52には、ドナー
性不純物がドープされており、一方、陽極層50と接す
る第2の有機膜54にはアクセプタ不純物がドープされ
ている。このアクセプタ不純物としては、CN置換化合
物およびキノン化合物(例えばクロラニル)が使用され
ている。そして、第1の有機膜52と第2の有機膜とに
挟まれた第3の有機膜を発光層56としている。この発
光層56には、第1および第2の有機膜52および54
によってキャリアが閉じ込められる。そのため、この有
機EL素子60は、低い駆動電圧において、高い発光輝
度(発光効率)を得ることができる。
【0003】また、従来の有機EL素子の他の一例が、
文献2:「Digest of Thechnical
Papers(ダイジェスト・オブ・テクニカル・ペ
イパーズ) SID' 97,p.775,1997」に
開示されている。この文献2に開示された有機EL素子
は、電子輸送層を、8−ヒドロキシキノリンAl錯体
(Alq錯体)にLiを添加した材料で構成している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、文献1
に開示された有機EL素子において、アクセプタ不純物
として用いられるCN置換化合物やキノン化合物は、電
子輸送性に優れているものの、アクセプター性が強く、
その電子親和力は3.7eV以上と高い値である。した
がって、これらのアクセプタ不純物は、発光域を構成す
る化合物と反応して、電荷移動錯体または励起錯体(エ
キシプレックス)を形成しやすい傾向がある。そのた
め、有機EL素子の発光輝度が低下したり、寿命が短い
という問題があった。
【0005】また、文献1に開示された有機EL素子に
おいて、ドナー性不純物がドープされた第1の有機層の
電子親和力と、発光域の電子親和力との差は、0.5e
V以上と大きな値としてある。このため、発光域と第1
の有機層との接合がブロッキング接合となり、第1の有
機層から発光域への電子注入が不良となりやすく、結果
として、有機EL素子の発光効率がさらに低下するとい
う問題があった。
【0006】一方、文献2に開示された有機EL素子に
おいても、Alq錯体は窒素原子を含んでおり、このA
lq錯体とLi化合物とからなる電子輸送層は電子輸送
性に優れているものの、電荷移動錯体またはエキシプレ
ックスを形成しやすく、また駆動電圧が高いという傾向
がある。したがって、文献1に開示された有機EL素子
と同様に、有機EL素子の発光輝度が低下しやすく、寿
命が短いという問題があった。
【0007】そこで、本発明の発明者らは上記問題を鋭
意検討したところ、電子注入域において窒素原子を含ま
ない芳香族環化合物を使用するか、あるいは、窒素原子
を含んだ芳香族環化合物を使用した場合であっても、特
定の還元性ドーパントを組合わせて使用することによ
り、有機EL素子の駆動電圧を低減し、発光輝度を向上
させるとともに、長寿命化が図れることを見出した。す
なわち、本発明は、駆動電圧が低く発光輝度が高い上
に、寿命の長い有機EL素子の提供を目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明の有機EL素子(第一の発明)は、少なくと
も陽極層、発光域、電子注入域および陰極層を順次に積
層した構造を有し、電子注入域のガラス転移点を100
℃以上の値とするとともに、電子注入域に、窒素原子を
含まない芳香族化合物と、下記式(1)で表わされる還
元性ドーパントとを含有しており、さらに、電子注入域
の電子親和力を1.8〜3.6eVの範囲としてある。 MAr・・・(1) (ただし、Mはアルカリ金属、Arは無置換または置換
の炭素数10〜40の芳香族環化合物を表す。)
【0009】このように、電子注入域に、窒素原子を含
まない芳香族環化合物を使用することにより、優れた電
子注入性が得られるとともに、隣接する発光域の構成材
料と反応することを抑制することができる。すなわち、
窒素原子を含まない芳香族環化合物は、炭素および水素
からなる芳香族環化合物、または炭素、水素および酸素
からなる芳香族環化合物から構成されており、窒素含有
芳香族環や電気吸引基(例えば−CN基、−NO2基、
アミド基、イミド基)といった窒素含有基を含んでいな
い。したがって、電子注入域と発光域との界面に、発光
効率の低い電荷移動錯体またはエキシプレックスが発生
することを効率的に抑制することができる。
【0010】また、電子注入域に窒素原子を含まない芳
香族化合物とともに、 MAr (ただし、Mはアルカリ金属、Arは無置換または置換
の炭素数10〜40の芳香族環化合物を表す。)からな
る還元性のドーパントを含有することにより、窒素原子
を含まない芳香族化合物が有する芳香族環を効率的に還
元して、アニオン状態とすることができる。したがっ
て、発光効率の低い電荷移動錯体またはエキシプレック
スの発生をより有効に防止して、有機EL素子における
発光輝度の向上や長寿命化を図ることができる。
【0011】さらに、このように電子注入域の電子親和
力を制限することにより、優れた電子注入性が得られる
とともに、電子注入域と発光域との界面において、電荷
移動錯体またはエキシプレックスが発生することを抑制
し、さらには、電子注入域と発光域とのブロッキング接
合の発生も抑制することができる。したがって、有機E
L素子における発光輝度の向上や長寿命化をさらに図る
ことができる。
【0012】また、電子注入域のガラス転移点を100
℃以上とすることにより、有機EL素子の耐熱温度を、
例えば85℃以上とすることができる。したがって、発
光時に電流注入層から発光域への電流注入によるジュー
ル熱により、電子注入域が短時間で破壊される傾向が少
なくなり、有機EL素子の長寿命化をより図ることがで
きる。
【0013】また、第一の発明の有機EL素子を構成す
るにあたり、還元性ドーパントが、アントラセン、ナフ
タレン、ジフェニルアントラセン、ターフェニル、クォ
ーターフェニル、キンクフェニル、および、セクシフェ
ニルからなる群から選択される少なくとも一つの芳香族
環より形成された基を含有することが好ましい。
【0014】また、第一の発明の有機EL素子を構成す
るにあたり、芳香族環化合物が、アントラセン、フルオ
レン、ペリレン、ピレン、フェナントン、クリセン、テ
トラセン、ルブレン、ターフェニレン、クォーターフェ
ニレン、セクシフェニレンおよびトリフェニレンからな
る群から選択される少なくとも一つの芳香族環より形成
された基を含有することが好ましい。
【0015】また、第一の発明の有機EL素子を構成す
るにあたり、還元性ドーパントの仕事関数を3.0eV
以下とすることが好ましい。このように、仕事関数が
3.0eV以下の還元性ドーパントを使用することによ
り、還元能力を十分に発揮させて、駆動電圧の低減、発
光輝度の向上や長寿命化を図ることができる。
【0016】また、第一の発明の有機EL素子を構成す
るにあたり、電子注入領域のエネルギーギャップを2.
7eV以上とすることが好ましい。このように、電子注
入領域のエネルギーギャップを大きくしておけば、電子
注入領域にホールが移動することを有効に防止すること
ができる。したがって、電子注入域自体が発光すること
を回避することができる。
【0017】また、第一の発明の有機EL素子を構成す
るにあたり、芳香族化合物と還元性ドーパントとの添加
比率を1:20〜20:1(モル比)の範囲とすること
が好ましい。芳香族化合物と還元性ドーパントとの添加
比率が1:20〜20:1(モル比)の範囲外となる
と、有機EL素子の発光輝度が低下したり、寿命が短く
なる傾向がある。
【0018】また、第一の発明の有機EL素子を構成す
るにあたり、発光域と電子注入域とに、窒素原子を含ま
ない同一種類の芳香族化合物を含有することが好まし
い。両域に、このように同一種類の芳香族化合物を含有
することにより、優れた密着性が得られ、電子注入領域
から発光域にスムーズに電子が移動できるとともに、機
械的強度を向上させることができる。
【0019】また、第一の発明の有機EL素子を構成す
るにあたり、あるいは後述する第二の発明の有機EL素
子を構成するにあたり、陰極層と電子注入域との間およ
び陽極層と発光域との間、あるいはいずれか一方に界面
層を設けることが好ましい。このように界面層を設ける
ことにより、発光輝度や半減寿命の値を著しく向上させ
ることができる。
【0020】また、本発明の別の有機EL素子(第二の
発明)は、少なくとも陽極層、発光域、電子注入域およ
び陰極層を順次に積層した構造を有しており、電子注入
域に、電子輸送性化合物と、仕事関数が2.9eV以下
の MAr (ただし、Mはアルカリ金属、Arは無置換または置換
の炭素数10〜40の芳香族環化合物を表す。)からな
る還元性ドーパントとを含み、かつ、電子注入域の電子
親和力を1.8〜3.6eVの範囲としてある。
【0021】このように電子注入域に、仕事関数が2.
9eV以下の還元性ドーパントを含有することにより、
電子輸送性化合物が酸化した場合にも、効率的に還元し
てアニオン状態とすることができる。したがって、電荷
移動錯体またはエキシプレックスの発生を有効に防止し
て、有機EL素子における駆動電圧の低減、発光輝度の
向上や長寿命化を図ることができる。すなわち、第二の
発明においては、還元性ドーパントの還元能力が高いた
めに、第一の発明と異なり、電子輸送性化合物に窒素含
有芳香族環や電気吸引基といった窒素含有基(窒素原
子)を含んでいたとしても、発光域の構成材料と反応す
ることを抑制できるという利点がある。
【0022】また、このように電子注入域の電子親和力
を制限することにより、電子注入域と発光域との界面に
おいて、電荷移動錯体またはエキシプレックスが発生す
ることを抑制できると共に、電子注入域と発光域とのブ
ロッキング接合の発生も抑制することができる。したが
って、有機EL素子における発光輝度の向上や長寿命化
をさらに図ることができる。
【0023】また、第二の発明の有機EL素子を構成す
るにあたり、還元性ドーパントが、アントラセン、ナフ
タレン、ジフェニルアントラセン、ターフェニル、クォ
ーターフェニル、キンクフェニル、および、セクシフェ
ニルからなる群から選択される少なくとも一つの芳香族
環より形成された基を含有することことが好ましい。
【0024】また、第二の発明の有機EL素子を構成す
るにあたり、電子輸送性化合物が、含窒素複素環化合物
を含むことが好ましい。含窒素複素環化合物は、電子輸
送性に優れており、電子注入性がさらに向上するためで
ある。
【0025】また、第二の発明の有機EL素子を構成す
るにあたり、含窒素複素環化合物が、含窒素錯体、キノ
キサリン誘導体、キノリン誘導体、オキサジアゾール誘
導体、チアジアゾール誘導体およびトリアゾール誘導体
からなる群から選択される少なくとも一つの化合物であ
ることが好ましい。
【0026】また、第二の発明の有機EL素子を構成す
るにあたり、電子輸送性化合物と還元性ドーパントとの
添加比率を1:20〜20:1(モル比)の範囲とする
ことが好ましい。電子輸送性化合物と還元性ドーパント
との添加比率が1:20〜20:1(モル比)の範囲外
となると、有機EL素子の発光輝度が低下したり、寿命
が短くなる傾向がある。
【0027】また、第二の発明の有機EL素子を構成す
るにあたり、電子注入域のガラス転移点を100℃以上
とすることが好ましい。このように電子注入域のガラス
転移点を100℃以上とすることにより、有機EL素子
の耐熱温度を上げて、有機EL素子の長寿命化を図るこ
とができる。
【0028】また、第二の発明の有機EL素子を構成す
るにあたり、発光域と電子注入域とに、同一種類の電子
輸送性化合物を使用することが好ましい。両域に、この
ように同一種類の電子輸送性化合物を含有することによ
り、優れた密着性が得られ、電子注入領域から発光域に
スムーズに電子が移動できるとともに、機械的強度を向
上させることができる。
【0029】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して、この発明
の実施の形態について説明する。なお、参照する図面
は、この発明が理解できる程度に各構成成分の大きさ、
形状および配置関係を概略的に示してあるに過ぎない。
したがって、この発明は図示例にのみ限定されるもので
はない。また、図面では、断面を表すハッチングを省略
する場合がある。
【0030】<第一の実施形態>まず、図1を参照し
て、本発明の有機EL素子における第一の実施形態につ
いて説明する。図1は、有機EL素子100の断面図で
あり、陽極層10、発光域12、電子注入域14および
陰極層16を、基板上(図示せず。)に順次に積層した
構造を有していることを表している。以下、第一の実施
形態における特徴的な部分である電子注入域14を中心
に説明する。したがって、その他の構成部分、例えば、
陽極層10、発光域12および陰極層16等の構成や製
法については簡単に説明するものとし、言及していない
部分については、有機EL素子の分野において一般的に
公知な構成や製法を採ることができる。
【0031】(1)電子注入域 (芳香族化合物)第一の実施形態における電子注入域
は、窒素原子を含まない芳香族環化合物、すなわち、炭
素(C)および水素(H)からなる芳香族環化合物、ま
たは、炭素(C)、水素(H)および酸素(O)からな
る芳香族環化合物を含有している。なお、炭素および水
素からなる芳香族環化合物と、炭素、水素および酸素か
らなる芳香族環化合物とは、それぞれ単独で使用しても
良いし、あるいは組み合わせて使用しても良い。
【0032】ここで、好ましい窒素原子を含まない芳香
族環化合物としては、例えば、アントラセン、フルオレ
ン、ペリレン、ピレン、フェナントレン、クリセン、テ
トラセン、ルブレン、ターフェニレン、クォーターフェ
ニレン、セクシフェニレン、トリフェニレン、ピセン、
コロネル、ジフェニルアントラセン、ベンツ[a]アント
ラセンおよびビナフタレンからなる群から選択される少
なくとも一つの芳香族環より形成された基を含有するも
のが挙げられる。
【0033】また、窒素原子を含まない芳香族化合物
は、これらの芳香族のうち、三つ以上の環が縮合した芳
香族環、例えばアントラセン等を含有することがより好
ましい。このように三つ以上の環が縮合した芳香族環を
有することにより、電子移動性が高まって、有機EL素
子の発光輝度を向上させたり、高速応答性を高めること
ができる。
【0034】また、窒素原子を含まない芳香族化合物
は、スチリル置換された芳香族環、ジスチル置換された
芳香族環またはトリススチリル置換された芳香族環より
形成された基を含有するとさらに良い。このようにスチ
リル置換された芳香族環を有することにより、有機EL
素子の発光輝度や寿命をより向上させることができる。
【0035】ここで、スチリル置換された基を含有する
芳香族環化合物としては、例えば、下記の(1)式に示
す構造式で表される化合物を使用することが好ましい。
【0036】
【化1】
【0037】上記の(1)式において、nは縮合数を表
し、n=1〜4である。また、Rは、水素原子または炭
素数が6〜40の芳香族基(芳香族環)である。また、
Ar は、炭素数が6〜40の芳香族基であり、Ar
およびArは、それぞれ水素原子または炭素数が6〜
40の芳香族基である。そして、Ar、Arおよび
Arの少なくとも一つは、芳香族基である。さらに、
この芳香族基は、三つ以上の環が縮合または連結してい
ることが望ましい。
【0038】また、ジスチル置換された基を含有する芳
香族環化合物は、例えば、下記の(2)式に示す構造式
で表される化合物を使用することが好ましい。 Ar−L−Ar…(2) 上記の(2)式において、Lは、炭素数6〜30のアリ
ーレン基である。このアリーレン基としては、例えば、
フェニレン、ビフェニレン、ナフチレン、アントラセン
ディールが好ましく、さらには、アリーレン基の構造と
して、単結晶であることが望ましい。また、Arおよ
びArとしては、例えば、ジフェニルアントラセン、
ジフェニルピレンが望ましい。
【0039】また、上記の(1)式または(2)式に示
す化合物を、置換基でさらに置換することが好ましい。
このような置換基としては、例えば、炭素数が1〜30
のアルキル基、炭素数が1〜30のアルキルオキシ基、
炭素数が6〜30のアリールアルキル基、ジアリールア
ミノ基、N−アルキルカルバゾリル基またはN−フェニ
ルカルバゾリル基が望ましい。これらの置換基で置換す
ることにより、発光効率の低い錯体の発生を効率的に抑
制することができる。
【0040】(還元性ドーパント)第一の実施形態にお
ける電子注入域は、還元性ドーパントを含有しているこ
とを特徴とする。ここで、還元性ドーパントとは、芳香
族化合物が酸化された場合に、それを還元できる物質と
定義される。したがって、還元性ドーパントは、一定の
還元性を有するものであれば特に制限されるものではな
いが、具体的に、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希
土類金属、アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属のハロ
ゲン化物、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金
属のハロゲン化物、希土類金属の酸化物または希土類金
属のハロゲン化物からなる群から選択される少なくとも
一つの物質であることが好ましい。
【0041】好ましいアルカリ金属としては、例えば、
Li(リチウム、仕事関数:2.93eV)、Na(ナ
トリウム、仕事関数:2.36eV)、K(カリウム、
仕事関数:2.3eV)、Rb(ルビジウム、仕事関
数:2.16eV)およびCs(セシウム、仕事関数:
1.95eV)が挙げられる。なお、括弧内の仕事関数
の値は、化学便覧(基礎編II,P493,日本化学会
編)に記載されたものであり、以下同様である。また、
好ましいアルカリ土類金属としては、例えば、Ca(カ
ルシウム、仕事関数:2.9eV)、Mg(マグネシウ
ム、仕事関数:3.66eV)、Ba(バリウム、仕事
関数:2.52eV)、およびSr(ストロンチウム、
仕事関数:2.0〜2.5eV)があげられる。なお、
ストロンチウムの仕事関数の値は、フィジィックス オ
ブ セミコンダクターデバイス(N.Y.ワイロー19
69年,P366)に記載されたものである。また、好
ましい希土類金属としては、例えば、Yb(イッテルビ
ウム、仕事関数:2.6eV)、Eu(ユーロビウム、
仕事関数:2.5eV)、Gd(ガドニウム、仕事関
数:3.1eV)およびEn(エルビウム、仕事関数:
2.5eV)があげられる。
【0042】また、好ましいアルカリ金属酸化物として
は、例えば、LiO、LiOおよびNaOがあげられ
る。また、好ましいアルカリ土類金属酸化物としては、
例えば、CaO、BaO、SrO、BeOおよびMgO
があげられる。
【0043】また、好ましいアルカリ金属のハロゲン化
物としては、例えば、LiF、NaFおよびKFといっ
たフッ化物のほかに、LiCl、KClおよびNaCl
が挙げられる。また、好ましいアルカリ土類金属のハロ
ゲン化物としては、例えば、CaF、BaF、Sr
、MgFおよびBeFといったフッ化物や、フ
ッ化物以外のハロゲン化物が挙げられる。
【0044】また、好ましい還元性ドーパントとして、
アルカリ金属が配位した芳香族化合物も挙げられる。こ
のアルカリ金属が配位した芳香族化合物は、例えば、下
記の(3)式に示す構造式で表される。 MAr…(3) ただし、上記の(3)式中のMは、アルカリ金属を表
す。また、Arは、炭素数10〜40の芳香族環化合
物である。この(3)式で表される芳香族環化合物とし
ては、例えば、アントラセン、ナフタレン、ジフェニル
アントラセン、ターフェニル、クォーターフェニル、キ
ンクフェニル、セクシフェニルおよびこれらの誘導体が
あげられる。
【0045】次に、電子注入域における還元性ドーパン
トの添加量について説明する。還元性ドーパントの添加
量を、電子注入域を構成する材料全体を100重量%と
したときに、0.01〜50重量%の範囲とすることが
好ましい。還元性ドーパントの添加量が、0.01重量
%未満となると、有機EL素子の発光輝度が低下した
り、寿命が短くなる傾向がある。一方、還元性ドーパン
トの添加量が50重量%を超えると、逆に、発光輝度が
低下したり、寿命が短くなる傾向がある。したがって、
発光輝度や寿命のバランスがより良好となる観点から、
還元性ドーパントの添加量を0.2〜20重量%の範囲
とすることがより好ましい。
【0046】また、還元性ドーパントの添加量に関し
て、芳香族環化合物と還元性ドーパントとの添加比率を
1:20〜20:1(モル比)の範囲とすることが好ま
しい。電子輸送性化合物と還元性ドーパントとの添加比
率がこれらの範囲外となると、有機EL素子の発光輝度
が低下したり、寿命が短くなる傾向がある。したがっ
て、芳香族環化合物と還元性ドーパントとの添加比率を
1:10〜10:1(モル比)の範囲とすることがより
好ましく、1:5〜5:1の範囲とすることがさらに好
ましい。
【0047】(電子親和力)また、第一実施形態におけ
る電子注入域の電子親和力を1.8〜3.6eVの範囲
とすることが好ましい。電子親和力の値が1.8eV未
満となると、電子注入性が低下し、駆動電圧の上昇,発
光効率の低下をまねく傾向があり、一方で、電子親和力
の値が3.6eVを超えると、発光効率の低い錯体が発
生しやすくなったり、ブロッキング接合の発生を効率的
に抑制することができる。したがって、電子注入域の電
子親和力を、1.9〜3.0eVの範囲とすることがよ
り好ましく、2.0〜2.5eVの範囲とすることがさ
らに好ましい。
【0048】また、電子注入域と発光域との電子親和力
の差を1.2eV以下の値とすることが好ましく、0.
5eV以下の値とすることがより好ましい。この電子親
和力の差が小さいほど、電子注入域から発光域への電子
注入が容易となり、高速応答可能な有機EL素子とする
ことができる。
【0049】(ガラス転移点)また、第一実施形態にお
ける電子注入域のガラス転移点(ガラス転移温度)を、
100℃以上とするのが好ましく、より好ましくは、1
05〜200℃の範囲とすることである。このように電
子注入域のガラス転移点を制限することにより、有機E
L素子100の耐熱温度を容易に85℃以上とすること
ができる。したがって、発光時に、電流注入層から発光
域へ電流が注入されてジュール熱が発生したとしても、
電子注入域が短時間で破壊される傾向が少なくなり、有
機EL素子の長寿命化を図ることができる。なお、電子
注入域のガラス転移点は、電子注入域を構成する成分に
ついて、示差熱走査型熱量計(DSC)を用い、窒素気
流中、昇温速度10℃/分の条件で加熱した場合に得ら
れる比熱変化曲線から、比熱の変化点として求めること
ができる。この点、他の実施形態や実施例においても同
様である。
【0050】(エネルギーギャップ)また、第一実施形
態における電子注入域のエネルギーギャップ(バンドギ
ャップエネルギー)を2.7eV以上とすることが好ま
しく、3.0eV以上とすることがより好ましい。この
ように、エネルギーギャップの値を所定値以上、例えば
2.7eV以上と大きくしておけば、正孔が発光域を超
えて電子注入域に移動することが少なくなる。したがっ
て、正孔と電子との再結合の効率が向上し、有機EL素
子の発光輝度が高まるとともに、電子注入域自体が発光
することを回避することができる。
【0051】(電子注入域の構造)また、第一実施形態
における電子注入域の構造についても、特に制限される
ものではなく、一層構造に限らず、例えば、二層構造ま
たは三層構造であっても良い。また、電子注入域の厚さ
についても、特に制限されるものではないが、例えば
0.1nm〜1μmの範囲とするのが好ましく、1〜5
0nmの範囲とするのがより好ましい。
【0052】(電子注入域の形成方法)次に、電子注入
域を形成する方法について説明する。電子注入域の形成
方法については、均一な厚さを有する薄膜層として形成
出来れば特に制限されるものではないが、例えば、蒸着
法、スピンコート法、キャスト法、LB法等の公知の方
法を適用することができる。なお、窒素原子を含まない
芳香族環化合物と、還元性ドーパントとは同時蒸着する
ことが好ましいが、この蒸着法については、第六の実施
形態において詳述する。
【0053】また、電子注入域と、発光域の形成方法を
一致させることが好ましい。例えば、発光域を蒸着法で
形成する場合には、電子注入域も蒸着法で形成するのが
好ましい。このように同一方法で製膜すると、電子注入
域と発光域とを連続的に製膜できるので、設備の簡略化
や精算時間の短縮を図る上で有利である。また、電子注
入域と発光域とが酸化される機会が少なくなるので、有
機EL素子における発光輝度を向上させることも可能と
なる。
【0054】(2)発光域 (構成材料)発光域の構成材料として使用する有機発光
材料は、以下の3つの機能を併せ持つことが好ましい。 (a)電荷の注入機能:電界印加時に陽極あるいは正孔
注入層から正孔を注入することができる一方、陰極層あ
るいは電子注入域から電子を注入することができる機
能。 (b)輸送機能:注入された正孔および電子を電界の力
で移動させる機能。 (c)発光機能:電子と正孔の再結合の場を提供し、こ
れらを発光につなげる機能。 ただし、上記(a)〜(c)の各機能全てを併せもつこ
とは、必ずしも必要ではなく、例えば正孔の注入輸送性
が電子の注入輸送性より大きく優れているものの中にも
有機発光材料として好適なものがある。本発明の目的の
一つは、発光域への電子の移動を促進して、電圧を低下
させるものである。
【0055】このような有機発光材料としては、ベンゾ
チアゾール系、ベンゾイミダゾール系、ベンゾオキサゾ
ール系等の蛍光増白剤や、スチリルベンゼン系化合物、
8−キノリノール誘導体を配位子とする金属錯体が好適
に挙げられる。また、ジスチリルアリーレン骨格の有機
発光材料、例えば4,4’一ビス(2,2−ジフェニル
ビニル)ビフェニル)等をホストとし、当該ホストに青
色から赤色までの強い蛍光色素、例えばクマリン系ある
いはホストと同様の蛍光色素をドープしたものも、有機
発光材料として好適である。
【0056】また、優れた密着性が得られ、電子注入領
域から発光域にスムーズに電子が移動できるとともに、
機械的強度を向上させることができる観点から、発光域
の構成材料と電子注入域の構成材料とを部分的に一致さ
せ、窒素原子を含まない同一種類の芳香族環化合物を両
域に使用することが好ましい。なお、発光域と電子注入
域とで、同一種類の芳香族環化合物が、それぞれにおい
て50重量%以上であることが好ましく、60重量%以
上であることがより好ましい。
【0057】(形成方法)次に、発光域を形成する方法
について説明する。例えば、蒸着法、スピンコート法、
キャスト法、LB法等の公知の方法を適用することがで
きる。また、上述したように、電子注入域と発光域と
は、同一方法で形成することが好ましく、例えば、電子
注入域を蒸着法で製膜する場合には、発光域も蒸着法で
製膜することが好ましい。
【0058】また、発光域は、気相状態の材料化合物か
ら沈着されて形成された薄膜や、溶液状態または液相状
態の材料化合物から固体化されて形成された膜である、
分子堆積膜とすることが好ましい。通常、この分子堆積
膜は、LB法により形成された薄膜(分子累積膜)と
は、凝集構造や高次構造の相違や、それに起因する機能
的な相違により区分することができる。さらには、樹脂
等の結着剤と有機発光材料とを溶剤に溶かして溶液とし
た後、これをスピンコート法等により薄膜化することに
よっても、発光域を形成することができる。
【0059】(発光域の膜厚)このようにして形成され
た発光域の膜厚については特に制限はなく、状況に応じ
て適宜選択することができるが、5nm〜5μmの範囲
であることが好ましい。発光域の膜厚が5nm未満とな
ると、発光輝度が低下する傾向があり、一方、発光域の
膜厚が5μmを超えると、印加電圧の値が高くなる傾向
がある。したがって、発光域の膜厚を10nm〜3μm
の範囲とすることがより好ましく、20nm〜1μmの
範囲とすることがさらに好ましい。
【0060】(3)電極 (陽極層)陽極層としては、仕事関数の大きい(例え
ば、4.0eV以上)金属、合金、電気電導性化合物ま
たはこれらの混合物を使用することが好ましい。具体的
には、インジウムチンオキサイド(ITO)、インジウ
ム銅、スズ、酸化亜鉛、金、白金、パラジウム等の一種
を単独で、または二種以上を組み合わせて使用すること
ができる。また、陽極層の厚さも特に制限されるもので
はないが、10〜1000nmの範囲とするのが好まし
く、10〜200nmの範囲とするのがより好ましい。
さらに、陽極層に関しては、発光域から発射された光を
外部に有効に取り出すことが出来るように、実質的に透
明、より具体的には、光透過率が10%以上であること
が好ましい。
【0061】(陰極層)一方、陰極層には、仕事関数の
小さい(例えば、4.0eV未満)金属、合金、電気電
導性化合物またはこれらの混合物を使用することが好ま
しい。具体的には、マグネシウム、アルミニウム、イン
ジウム、リチウム、ナトリウム、銀等の一種を単独で、
または二種以上を組み合わせて使用することができる。
また陰極層の厚さも特に制限されるものではないが、1
0〜1000nmの範囲とするのが好ましく、10〜2
00nmの範囲とするのがより好ましい。
【0062】(4)その他 また、図1には示さないが、有機EL素子への水分や酸
素の侵入を防止するための封止層を、素子全体を覆うよ
うに設けることも好ましい。好ましい封止層の材料とし
ては、テトラフルオロエチレンと、少なくとも一種のコ
モノマーとを含むモノマー混合物を共重合させて得られ
る共重合体;共重合主鎖中に環状構造を有する合フッ素
共重合体;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチル
メタクリレート、ポリイミド、ポリユリア、ポリテトラ
フルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、
ポリジクロロジフルオロエチレンまたはクロロトリフル
オロエチレンとジクロロジフルオロエチレンとの共重合
体;吸収率1%以上の吸水性物質;吸水率0.1%以下
の防湿性物質;In,Sn,Pb,Au,Cu,Ag,
Al,Ti,Ni等の金属;MgO,SiO,Si
,GeO,NiO,CaO,BaO,FeO,Y
,TiO等の金属酸化物;MgF,LiF,
AlF,CaF等の金属フッ化物;パーフルオロア
ルカン,パーフルオロアミン,パーフルオロポリエーテ
ル等の液状フッ素化炭素;および当該液状フッ素化炭素
に水分や酸素を吸着する吸着剤を分散させた組成物等が
挙げられる。
【0063】また、封止層の形成にあたっては、真空蒸
着法、スピンコート法、スパッタリング法、キャスト
法、MBE(分子線エピタキシー)法、クラスターイオ
ンビーム蒸着法、イオンプレーティング法、プラズマ重
合法(高周波励超イオンプレーティング法)、反応性ス
パッタリング法、プラズマCVD法、レーザーCVD
法、熱CVD法、ガスソースCVD法等を適宜採用する
ことができる。
【0064】<第二の実施形態>次に、本発明の有機E
L素子における第二の実施形態について説明する。第二
の実施形態は、第一の実施形態と同様に、図1に表され
るように、陽極層10、発光域12、電子注入域14お
よび陰極層16を、基板上(図示せず。)に順次積層し
た構造を有している。そして、第二の実施形態は、第一
の実施形態と異なり、電子注入域14が、電子輸送性化
合物と、仕事関数が2.9eV以下の還元性ドーパント
とから構成されている点で異なっている。したがって、
以下の説明では電子輸送性化合物および仕事関数が2.
9eV以下の還元性ドーパントについて中心的に説明す
るものとし、その他の構成については、第一の実施形態
と同様の構成および有機EL素子の分野において一般的
に公知な構成を採ることができる。
【0065】(電子輸送性化合物)第二の実施形態にお
ける電子注入域には、電子輸送性化合物として、第一の
実施形態と同様の、窒素原子を含まない芳香族環化合物
を含有することもできるし、さらに、含窒素複素環化合
物を含有する有機化合物(単に、含窒素複素環化合物と
称する場合がある。)を含むことも好ましい。すなわ
ち、第二の実施形態においては、第一の実施形態と異な
り、特に還元性の高い還元性ドーパントを使用している
ために、陰極から注入された電子を発光域に伝達する機
能を有している化合物であれば、広く使用することがで
き、電子輸送性化合物として含窒素複素環化合物を使用
したとしても、発光域の材料と反応することを効率的に
抑制することができる。したがって、電子注入域におい
て、電荷移動錯体またはエキシプレックスの発生を有効
に防止して、有機EL素子における発光輝度の向上や長
寿命化を図ることができる。
【0066】ここで、電子注入域に使用する含窒素複素
環化合物は、窒素原子を有する複素環を有する化合物と
定義されるが、具体的に、含窒素錯体や含窒素環化合物
が挙げられる。含窒素錯体や含窒素環化合物は、電子親
和力が2.7eV以上と大きく、また、電荷移動度も1
−6cm/V・S以上と速いためである。このう
ち、好ましい含窒素錯体として、8−キノリノール誘導
体を配位子とする金属錯体、例えば、下記式(4)で表
されるトリス(8−キノリノール)Al錯体、トリス
(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)Al錯体、ト
リス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)Al錯
体、トリス(2−メチル−8−キノリノール)Al錯
体、トリス(5−メチル−8−キノリノール)Al錯
体、トリス(8−キノリノール)Zn錯体、トリス(8
−キノリノール)In錯体、トリス(8−キノリノー
ル)Mg錯体、トリス(8−キノリノール)Cu錯体、
トリス(8−キノリノール)Ca錯体、トリス(8−キ
ノリノール)Sn錯体、トリス(8−キノリノール)G
a錯体およびトリス(8−キノリノール)Pb錯体等の
一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
【0067】
【化2】
【0068】また、含窒素錯体のうち、好ましいフタロ
シアニン誘導体として、例えばメタルフリーフタロシア
ニン、Cuフタロシアニン、Liフタロシアニン、Mg
フタロシアニン、Pbフタロシアニン、Tiフタロシア
ニン、Gaフタロシアニン、CuOフタロシアニン等の
1種単独または2種以上の組み合わせが挙げられる。
【0069】また、好ましい含窒素環化合物としては、
オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリ
アゾール誘導体、キノキサリン誘導体およびキノリン誘
導体からなる群から選択される少なくとも一つの化合物
を挙げることができる。これらのうち、好ましいオキサ
ジアゾール誘導体の代表例を、下記(5)式および
(6)式に、好ましいチアジアゾール誘導体の代表例
を、下記(7)式に、好ましいトリアゾール誘導体の代
表例を、下記(8)式に、キノキサリン誘導体の代表例
を、下記(9)式に、およびキノリン誘導体の代表例
を、下記(10)式に、それぞれ示す。
【0070】
【化3】
【0071】
【化4】
【0072】
【化5】
【0073】
【化6】
【0074】
【化7】
【0075】
【化8】
【0076】さらに、アントロン誘導体、フレオレニリ
メタン誘導体、カルボジイミド、ナフタレンペリレン等
の複素環テトラカルボン酸無水物や、あるいは特開昭5
9−194393号に発光層材料として記載の電子伝達
性化合物を使用することも好ましい。
【0077】(仕事関数が2.9eV以下の還元性ドー
パント)第二の実施形態における電子注入域は、仕事関
数が2.9eV以下の還元性ドーパントを含有してい
る。ここで、仕事関数が2.9eV以下の還元性ドーパ
ントとは、仕事関数が2.9eV以下であり、かつ、電
子輸送性化合物が酸化された場合にも、一定の還元がで
きる物質と定義される。したがって、仕事関数が2.9
eV以下であれば、第一の実施形態において例示した還
元性ドーパントである、アルカリ金属、アルカリ土類金
属、希土類金属、アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属
のハロゲン化物、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ
土類金属のハロゲン化物、希土類金属の酸化物または希
土類金属のハロゲン化物からなる群から選択される少な
くとも一つの物質を好適に使用することができる。
【0078】また、より具体的に、仕事関数が2.9e
V以下である好ましい還元性ドーパントとしては、Na
(仕事関数:2.36eV)、K(仕事関数:2.28
eV)、Rb(仕事関数:2.16eV)およびCs
(仕事関数:1.95eV)からなる群から選択される
少なくとも一つのアルカリ金属や、Ca(仕事関数:
2.9eV)、Sr(仕事関数:2.0〜2.5e
V)、およびBa(仕事関数:2.52eV)からなる
群から選択される少なくとも一つのアルカリ土類金属が
挙げられる。
【0079】これらのうち、より好ましい還元性ドーパ
ントは、K、RbおよびCsからなる群から選択される
少なくとも一つのアルカリ金属であり、さらに好ましく
は、RbまたはCsであり、最も好ましいのは、Csで
ある。これらのアルカリ金属は、特に還元能力が高く、
電子注入域への比較的少量の添加により、有機EL素子
における発光輝度の向上や長寿命化が図られる。
【0080】また、仕事関数が2.9eV以下の還元性
ドーパントとして、これら二種以上のアルカリ金属の組
み合わせも好ましく、特に、Csを含んだ組み合わせ、
例えば、CsとNa、CsとK、CsとRbあるいはC
sとNaとKとの組み合わせであることが好ましい。C
sを組み合わせて含むことにより、還元能力を効率的に
発揮することができ、電子注入域への添加により、有機
EL素子における発光輝度の向上や長寿命化が図られ
る。
【0081】次に、仕事関数が2.9eV以下の還元性
ドーパントの添加量について説明する。この還元性ドー
パントの添加量は、第一の実施形態と同様に、電子注入
域を構成する材料に対して、0.1〜50重量%の範囲
内の値であることが好ましく、1〜20重量%の範囲内
の値とすることがより好ましい。また、仕事関数が2.
9eV以下の還元性ドーパントの添加量に関して、電子
輸送性化合物と還元性ドーパントとの添加比率を1:2
0〜20:1(モル比)の範囲とすることが好ましい。
電子輸送性化合物と還元性ドーパントとの添加比率がこ
れらの範囲外となると、有機EL素子の発光輝度が低下
したり、寿命が短くなる傾向がある。したがって、電子
輸送性化合物と還元性ドーパントとの添加比率を1:1
0〜10:1(モル比)の範囲とすることがより好まし
く、1:5〜5:1の範囲とすることがさらに好まし
く、最も好ましいのは、1:3〜3:1の範囲とするこ
とである。
【0082】(電子親和力)また、第二実施形態におけ
る電子注入域の電子親和力を、第一の実施形態と同様
に、1.8〜3.6eVの範囲とすることが好ましく、
1.9〜3.0eVの範囲とすることがより好ましく、
2.0〜2.5eVの範囲とすることがさらに好まし
い。電子親和力の値がこれらの範囲外となると、発光効
率の低い錯体が発生しやすくなったり、ブロッキング接
合の発生を抑制することが困難となる傾向がある。な
お、電子注入域の電子親和力は、電子注入域を構成する
電子輸送性化合物や還元性ドーパントの種類あるいは混
合比率等を変更することにより、適宜調節することがで
きる。
【0083】また、第二実施形態における電子注入域に
おいても、第一の実施形態と同様に、電子注入域の電子
親和力と、発光域の電子親和力との差を0.5eV以下
の値とすることが好ましく、0.2eV以下の値とする
ことがより好ましい。この電子親和力の差が小さいほ
ど、電子注入域から発光域への電子注入が容易となり、
高速応答可能な有機EL素子とすることができるためで
ある。
【0084】(ガラス転移点について)また、第二実施
形態における電子注入域のガラス転移点についても、第
一の実施形態と同様に、100℃以上の値とするのが好
ましく、より好ましくは、105〜200℃の範囲内の
値とすることである。
【0085】<第三の実施形態>次に、図2を参照し
て、この発明の第三の実施形態について説明する。図2
は、第三の実施形態にかかる有機EL素子102の断面
図であり、陽極層10、正孔注入輸送層18、発光域1
2、電子注入域14および陰極層16を順次に積層した
構造を有している。そして、この有機EL素子102
は、陽極層10と発光域12との間に、正孔注入輸送層
18を挿入してある点を除いては、第一および第二の実
施形態の有機EL素子100と同一の構造を有してい
る。したがって、以下の説明は、第三の実施形態におけ
る特徴的な部分である正孔注入輸送層18についてのも
のであり、その他の構成部分、例えば電子注入域14等
については、第一または第二の実施形態と同様の構成と
することができる。
【0086】第三の実施形態における正孔注入輸送層1
8は、正孔注入層と実質的に同じように正孔をスムーズ
に注入する機能を有しているほか、注入された正孔を効
率的に輸送する機能をも有している。したがって、正孔
注入輸送層18を設けることにより、正孔の注入および
発光域への移動が容易となり、有機EL素子の高速応答
が可能となる。
【0087】ここで、正孔注入輸送層18は、有機材料
または無機材料で形成されている。好ましい有機材料と
しては、例えば、ジアミン化合物、含ジアミンオリゴマ
ーおよび含チオフェンオリゴマーをあげることができ
る。また、好ましい無機材料としては、例えば、アモル
ファスシリコン(α−Si)、α−SiC、マイクロク
リスタルシリコン(μC−Si)、μC−SiC、II−
VI族化合物、III−V族化合物、非晶質炭素、結晶質炭
素およびダイヤモンドをあげることができる。
【0088】なお、正孔輸送層18は、一層構造に限ら
ず、例えば、二層構造または三層構造であっても良い。
また、正孔輸送層18の厚さについて特に制限されるも
のではないが、例えば0.5nm〜5μmの範囲とする
のが好ましい。
【0089】<第四の実施形態>次に、図3を参照し
て、この発明の第四の実施形態について説明する。図3
は、第三の実施形態にかかる有機EL素子104の断面
図であり、陽極層10、正孔注入輸送層18、発光域1
2、電子注入域14、第一の界面層20および陰極層1
6を順次に積層した構造を有している。
【0090】この有機EL素子は、電子注入域14と陰
極層16との間に、第一の界面層20を挿入してある点
を除いては、第三の実施形態の有機EL素子102と同
一の構造を有している。したがって、以下の説明は、第
四の実施形態における特徴的な部分である第一の界面層
についてのものであり、その他の構成部分については、
第一〜三の実施形態と同様の構成あるいは有機EL素子
の分野において一般的に公知な構成とすることができ
る。
【0091】第四の実施形態における第一の界面層は、
電子注入性を高める機能を有している。したがって、第
一の界面層を設けることにより、電子の注入および発光
域への移動が容易となり、有機EL素子の高速応答が可
能となる。ここで、第一の界面層は、電子注入性を有す
る材料、例えば、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金
属化合物、アルカリ金属が含有されたアモルファスまた
はアルカリ金属が含有されたマイクロクリスタルを用い
ることが好ましい。より具体的に、好ましいアルカリ金
属化合物としては、例えば、LiF、Li O、LiO
およびLiClがあげられる。また、好ましいアルカリ
土類金属化合物としては、例えば、BaO、SrO、M
gO、MgF、SrClがあげられる。
【0092】また、第一の界面層は、一層構造に限ら
ず、例えば、二層構造また構造であっても良い。さら
に、第一の界面層の厚さについても特に制限されるもの
ではないが、例えば0.1nm〜10μmの範囲とする
のが好ましい。
【0093】<第五の実施形態>次に、図4を参照し
て、この発明の第五の実施形態について説明する。図4
は、第五の実施形態における有機EL素子106の断面
図であり、陽極層10、第二の界面層20、正孔注入輸
送層18、発光域12、電子注入域14および陰極層1
6を順次に積層した構造を有している。
【0094】この有機EL素子106は、陽極16と正
孔注入輸送層18との間に、第二の界面層20を挿入し
てある点を除いては、第三の実施形態の有機EL素子1
02と同一の構造を有する。したがって、以下の説明
は、第四の実施形態における特徴的な部分である陽極1
6と正孔注入輸送層18との間に設けられた第二の界面
層20についてのものであり、その他の構成部分につい
ては、第一〜四の実施形態と同様の構成あるいは有機E
L素子の分野において一般的に公知な構成とすることが
できる。
【0095】第五の実施形態における第二の界面層20
は、陽極16からの正孔注入性を高める機能を有してい
る。したがって、第二の界面層を設けることにより、正
孔の注入および発光域への移動が容易となり、有機EL
素子の高速応答が可能となる。
【0096】ここで、第二の界面層の構成材料として
は、ポリアニリン、非晶質炭素またはフタロシアニン類
などを用いることができる。また、第二の界面層は、一
層構造に限らず、例えば、二層構造また構造であっても
良い。さらに、第二の界面層の厚さについても特に制限
されるものではないが、例えば0.5nm〜5μmの範
囲とするのが好ましい。
【0097】<有機EL素子の製造方法>次に、図7〜
9を参照して、本発明の有機EL素子の製造方法につい
て説明する。具体的には、電子注入域等が大面積であっ
ても構成材料の組成比を均一とし、有機EL素子の駆動
電圧のばらつきを低下させ、寿命の均一化を図ることが
できるとともに、省スペース可が可能な有機EL素子の
製造方法を説明する。
【0098】すなわち、図7および図8に示すような真
空蒸着装置201を一例として用い、基板203に対向
して配置した複数の蒸着源212A〜212Fから、異
なる蒸着材料を同時に蒸発させて製膜を行う有機EL素
子用薄膜層の蒸着方法であって、基板203に、当該基
板203を自転させるための回転軸線213Aを設定
し、蒸着源212A〜212Fをそれぞれ基板203の
回転軸線213Aから離れた位置に配設し、基板203
を自転させながら蒸着を行う。
【0099】ここで、図7および図8に示す真空蒸着装
置201は、真空槽210と、この真空槽210内の上
部に設置された、基板203を固定するための基板ホル
ダ211と、この基板ホルダ211の下方に対向配置さ
れた、蒸着材料を収容するための複数(6個)の蒸着源
212A〜212Fとを含んで構成されている。この真
空槽210は、排気手段(図示せず。)により、内部を
所定の減圧状態に維持できるようになっている。なお、
蒸着源の数は、図面上6つ示されているが、これに限定
されるものではなく、5つ以下であってもよく、あるい
は7つ以上であってもよい。
【0100】また、基板ホルダ211は、基板203の
周縁部を支持する保持部212を備え、真空槽210内
で、基板203を水平に保持するように構成されてい
る。この基板ホルダ211の上面の中央部分には、基板
203を回転(自転)させるための回転軸部213が垂
直方向に立設されている。この回転軸部213には、回
転駆動手段であるモータ214が接続され、モータ21
4の回転動作により、基板ホルダ211に保持された基
板203が、当該基板ホルダ211とともに回転軸部2
13を回転中心として自転するようになっている。すな
わち、基板203の中心には、回転軸部213による回
転軸線213Aが垂直方向に設定されている。
【0101】次に、このように構成された真空蒸着装置
201を用いて、電子注入域14を基板203上に製膜
する方法について、具体的に説明する。まず、図7およ
び図8に示すような平面正方形状の基板203を用意
し、この基板203を基板ホルダ211の保持部212
に係止して水平な状態とする。
【0102】ここで、電子注入域14を製膜するにあた
り、仮想円221上で、隣接する二つの蒸着源212B
および212Cに、電子輸送性化合物と電子注入性材料
とをそれぞれ収容した後、排気手段により、真空槽21
0内を所定の真空度、例えば1.0×10−4Paにな
るまで減圧する。
【0103】次いで、蒸着源212Bおよび212Cを
加熱して、各蒸着源212Bおよび212Cからそれぞ
れ電子輸送性化合物および還元性ドーパントを同時に蒸
発させるとともに、モータ214を回転駆動させて、基
板203を回転軸線213Aに沿って所定速度、例えば
1〜100rpmで回転させる。このようにして、基板
203を自転させながら電子輸送性化合物および還元性
ドーパントを共蒸着して電子注入域14を製膜する。こ
のとき、図8に示すように、蒸着源212Bおよび21
2Cは、基板203の回転軸線213Aから、水平方向
に所定距離Mだけずれた位置に設けられているので、基
板203の回転により、電子輸送性化合物および還元性
ドーパントの基板203への入射角度を規則的に変化さ
せることができる。したがって、蒸着材料を基板203
に対して一様に付着させることができ、電子注入域14
の膜面内で、蒸着材料の組成比が均一、例えば、濃度ム
ラが±10%(モル換算)である薄膜層を確実に製膜す
ることができる。また、このように蒸着を実施すること
により、基板203を公転させなくてもよいので、その
スペースや設備が不要になり、最小限のスペースで経済
的に製膜を行うことができる。なお、基板を公転させる
とは、基板以外に存在する回転軸の周りを回転させるこ
とをいい、自転させる場合よりも広い空間が必要とな
る。
【0104】また、この製造方法を実施するにあたり、
基板203の形状は特に限定されないが、例えば、図7
および図8に示すように、基板203が短形平板状であ
る場合、この基板203の回転軸線213Aを中心とす
る仮想円221の円周上に沿って複数の蒸着源212A
〜212Eを配設し、仮想円221の半径をM、基板2
03の一辺の長さをLとしたときに、M>1/2×Lを
満足することが望ましい。なお、基板203の辺の長さ
がそれぞれ同一でなく、異なる場合には、最も長い辺の
長さをLとする。このように構成することにより、複数
の蒸着源212A〜212Fから、基板203に対する
蒸着材料の入射角度を互いに同一にできるので、蒸着材
料の組成比をより容易に制御することができる。また、
このように構成することにより、蒸発材料が、基板20
3に対して一定の入射角度をもって蒸発されるため、垂
直に入射することがなくなり、膜面内における組成比の
均一性を一層向上させることができる。
【0105】また、この製造方法を実施するにあたり、
図7に示すように、複数の蒸着源212A〜212F
を、基板203の回転軸線213Aを中心とする仮想円
221の円周上に配設の方法は、本発明の電子輸送性化
合物と還元性ドーパントのように2種類以上の材料から
なる混合域を均一の組成比で作成する場合には、それら
の蒸着源を互いに近接した位置に設けることが望まし
い。また、組成比を厚さ方向に異ならせる場合には、互
いに離れた位置に設けることが望ましい。例えば、蒸着
源の数をnとしたときに各蒸着源を円の中心から360
°/nの角度で配設してもよい。
【0106】次に、この製造方法により製膜した薄膜層
の均一性についてより詳細に説明する。一例として、電
子輸送性化合物としてAlqを用い、還元性ドーパント
としてCsを用い、図9に示す基板203を5rpmで
回転させながら、厚さ約1000オングストローム(設
定値)の薄膜層を以下の条件で同時蒸着した。 Alqの蒸着速度: 0.2nm/s Csの蒸着速度: 0.03nm/s Alq/Csの膜厚:1000オングストローム(設定
値)
【0107】次いで、図9に示すガラス基板203上の
測定点(4A〜4M)における、薄膜層の膜厚を蝕針式
膜厚計を用いて測定するとともに、Cs/Alの組成比
をX線光電子分光装置(ESCA)を用いて測定した。
なお、図9に示すガラス基板203上の測定点(4A〜
4M)は、基板203の表面を、予め16等分して、一
辺の長さPが50mmの正方形の区画を設定し、これら
の区画における任意の角部(13箇所)としたものであ
る。得られた結果を表1に示す。
【0108】
【表1】
【0109】一方、203を回転させないほかは、この
製造方法と同様に、厚さ約1000オングストローム
(設定値)の薄膜層を形成した。なお、蒸着条件につい
ては、上述したとおりである。次いで、得られた薄膜層
の測定点(4A〜4M)におけるの膜厚およびCs/A
lの組成比を測定した。その結果を表2に示す。
【0110】
【表2】
【0111】これらの結果から明らかなように、この製
造方法を用いた場合、基板203上の測定点(4A〜4
M)にて、膜厚が1008〜1091オングストローム
の範囲内という極めて均一な厚さで、かつ、Cs/Al
の組成比(モル比)が1.0〜1.10(−)の範囲内
という極めて均一な組成比である薄膜層が得られたこと
を確認した。一方、この製造方法と異なる製造方法を用
いた場合、基板203上の測定点(4A〜4M)にて、
膜厚が884〜1067オングストロームの範囲内であ
り、Cs/Alの組成比が0.6〜1.2(−)の範囲
内であることが確認された。
【0112】以上、説明した実施形態においては、この
発明を特定の条件で構成した例について説明したが、こ
の実施形態は、種々の変更を行うことができる。例え
ば、上述した実施形態においては、発光域と、電子注入
域とを個別に設けたが、発光域と電子注入域とを併せて
一つの層としても良い。また、陰極層と陽極層との間
に、任意好適な層を介在させても良い。
【0113】
【実施例】[実施例1]次に、図5および図7、8を参
照しながら、この発明の実施例1について説明する。図
5に示す実施例1の有機EL素子102aの構造は、図
2に示す第三の実施形態における有機EL素子102の
構造に相当する。ただし、実施例1の有機EL素子10
2aにおいては、正孔注入輸送層18を、順次に積層さ
れた正孔注入層18aと正孔輸送層18bとをもって構
成している点で、第三の実施形態における有機EL素子
102と異なる。
【0114】(1)有機EL素子の製造準備 実施例1の有機EL素子102aを製造するにあたって
は、まず、厚さ1.1mm、縦200mm、横200m
mの透明なガラス基板22上に、陽極層10としてIT
Oの透明電極膜を形成した。以下、このガラス基板10
と陽極層10とを併せて基板30(図7および図8で
は、203)とする。続いて、この基板30をイソプロ
ピルアルコールで超音波洗浄し、さらに、N(窒素ガ
ス)雰囲気中で乾燥させた後、UV(紫外線)およびオ
ゾンを用いて10分間洗浄した。
【0115】次いで、基板30を、図8に示すように、
真空蒸着装置201における真空槽210の基板ホルダ
211に装着するとともに、正孔注入層18a構成する
正孔注入性有機物(HI−1)を蒸着源212Aに、正
孔輸送層18bを構成する正孔注入性輸送有機物(HT
−1)を蒸着源212Bに、電子注入域および発光域を
構成する窒素を含まない芳香族環化合物(EM−1)を
蒸着源212Cに、電子注入域を構成する還元性ドーパ
ント(Li)を蒸着源212Dに、陰極を構成する金属
(Al)を蒸着源212Eにそれぞれ収容した。なお、
(11)式で表されるHI−1、(12)式で表される
HT−1および(13)式で表されるEM−1の構造式
をそれぞれ以下に示す。また、EM−1のガラス転移点
は、105℃であり、それを含む電子注入域の電子親和
力は、2.8eVであった。
【0116】
【化9】
【0117】
【化10】
【0118】
【化11】
【0119】(2)有機EL素子の製造 次いで、真空槽210内を、5×10−5Pa以下の真
空度になるまで減圧した後、基板30の陽極層10上
に、正孔注入層18a、正孔輸送層18b、発光域1
2、電子注入域14および陰極層16を、この順で順次
積層して有機EL素子102aを得た。なお、このと
き、正孔注入層18aの形成から陰極層16の形成まで
の間は、一度も真空状態を破ることなく有機EL素子1
02aを作製した。
【0120】より具体的には、蒸着源212AからHI
−1を下記条件で蒸発させて、陽極層10上に正孔注入
層18aを蒸着し、続いて蒸着源212BからHT−1
を蒸発させて、正孔注入層18a上に、正孔輸送層18
bを蒸着した。これらの蒸着時には、基板30は、特に
加熱も冷却もしなかった。 HI−1の蒸着速度:0.1〜0.3nm/s HI−1の膜厚: 60nm HT−1の蒸着速度:0.1〜0.3nm/s HT−1の膜厚: 20nm
【0121】次いで、蒸着源212Cから、有機発光材
料としてのEM−1を正孔注入層18a製膜時と同様の
条件で蒸発させて、正孔輸送層18b上に有機発光域1
2を蒸着した。 EM−1の蒸着速度:0.1〜0.3nm/s EM−1の膜厚: 40nm
【0122】次いで、蒸着源212Cおよび蒸着源21
2Dから、以下に示す条件で、それぞれEM−1および
Liを同時に蒸発させて、有機発光域12上に電子注入
域14を製膜した。 EM−1の蒸着速度: 0.1〜0.3nm/s Liの蒸着速度: 0.05〜0.01nm/s EM−1/Liの膜厚:20nm
【0123】なお、同時蒸着は、上記製造方法によって
行った。すなわち、蒸着源212Cおよび212Dは、
基板30(203)の回転軸線213Aから、水平方向
に30mmずれた位置にそれぞれ設けられており、その
状態で加熱して、各蒸着源212Bおよび212Cから
それぞれEM−1およびLiを同時に蒸発させるととも
に、モータ214を回転駆動させて、基板203を回転
軸線213Aに沿って5rpmで自転させながら電子注
入域14を製膜した。
【0124】最後に、蒸着源212Dから、以下の条件
でAlを蒸発させて、電子注入域14上に陰極層16を
蒸着した。 Alの蒸着速度: 1nm/s Alの膜厚: 200nm
【0125】(3)有機EL素子の評価 得られた有機EL素子102aにおける陰極層16をマ
イナス(−)電極、陽極層10をプラス(+)電極とし
て、両電極間に7Vの直流電圧を印加した。このときの
電流密度は、下記の表1に示すように、1.0mA/c
であり、そのときの輝度は40cd/cmであ
り、発光色は青色であった。また、この素子102aの
半減寿命は、1000時間であった。なお、半減寿命と
は、輝度が最大輝度の半値になるまでに要する時間をい
う。例えば、実施例1では、輝度が最大輝度40cd/
cmからその半値の20cd/cmになるまでに要
する時間をいう。それぞれ得られた結果を表3に示す。
【0126】
【表3】
【0127】[実施例2]次に、この発明の実施例2に
ついて説明する。実施例2の有機EL素子の構造は、実
施例1の有機EL素子102aの構造と同様であり、実
施例1と同様に製造した。ただし、実施例2において
は、電子注入域に、還元性ドーパントとして、Li金属
の代わりに、Ca(カルシウム)金属を添加した。そし
て、有機EL素子に、実施例1と同様に7Vの直流電圧
を印加した。このときの電流密度は、下記の表1に示す
ように、1.2mA/cmであり、輝度は50cd/
であった。また、実施例2の有機EL素子の半減寿
命は、1500時間であった。それぞれ得られた結果を
表3に示す。
【0128】[実施例3]次に、この発明の実施例3に
ついて説明する。実施例3の有機EL素子の構造は、実
施例1の有機EL素子102aの構造と同様であり、実
施例1と同様に製造した。ただし、実施例3において
は、電子注入域に、還元性ドーパントとして、Li金属
の代わりに、Na(ナトリウム)金属を添加した。
【0129】そして、有機EL素子に、実施例1と同様
に7Vの直流電圧を印加した。このときの電流密度は、
下記の表1に示すように、1.0mA/cmであり、
輝度は60cd/mであった。また、実施例3の有機
EL素子の半減寿命は、1600時間であった。それぞ
れ得られた結果を表3に示す。
【0130】[実施例4]次に、この発明の実施例4に
ついて説明する。実施例4の有機EL素子の構造は、実
施例1の有機EL素子102aの構造と同様であり、実
施例1と同様に製造した。ただし、実施例4において
は、電子注入域に、還元性ドーパントとして、Li金属
の代わりに、K(カリウム)金属を、EM−1 1モル
に対して、1.3モル添加した。
【0131】そして、有機EL素子に、実施例1と同様
に7Vの直流電圧を印加した。このときの電流密度は、
下記の表3に示すように、4.0mA/cmであり、
発光輝度は146cd/mであった。また、実施例4
の有機EL素子の半減寿命は、1800時間であった。
それぞれ得られた結果を表3に示す。
【0132】[実施例5〜7]次に、この発明の実施例
5〜7について説明する。実施例5〜7の有機EL素子
の構造は、実施例1の有機EL素子102aの構造と同
様であり、実施例1と同様に製造した。ただし、実施例
5〜7においては、電子注入域に、還元性ドーパントと
して、Li金属の代わりに、Cs(セシウム)金属を、
EM−1 1モルに対して、1モル(実施例5)、1.
5モル(実施例5)、4.0モル(実施例7)をそれぞ
れ添加した。
【0133】そして、有機EL素子に、実施例1と同様
に7Vの直流電圧を印加した。このときの電流密度は、
実施例5においては40mA/cmであり、実施例6
においては38mA/cmであり、実施例7において
は25mA/cmであった。検討した範囲では、Cs
金属の添加量が少ないほど、若干、電流密度が高い傾向
が見られた。また、このときの発光輝度は、実施例5に
おいては1000cd/cmであり、実施例6におい
ては1300cd/cmであり、実施例7においては
1100cd/cmであった。また、有機EL素子の
半減寿命については、実施例5においては2500時間
であり、実施例6においては3000時間であり、実施
例7においては1700時間であった。
【0134】[実施例8]次に、この発明の実施例8に
ついて説明する。実施例8の有機EL素子の構造は、実
施例1の有機EL素子102aの構造と同様であり、実
施例1と同様に製造した。ただし、実施例8において
は、電子注入域に、還元性ドーパントとして、Li金属
の代わりに、CsとNaの混合物を、それぞれEM−1
1モルに対して、1.0モルおよび0.5モル添加し
た。
【0135】そして、有機EL素子に、実施例1と同様
に7Vの直流電圧を印加した。このときの電流密度は、
40mA/cmであり、発光輝度は1000cd/c
であった。また、実施例9の有機EL素子の半減寿
命は、2500時間であった。それぞれ得られた結果を
表3に示す。
【0136】[実施例9]次に、この発明の実施例9に
ついて説明する。実施例9の有機EL素子の構造は、実
施例1の構造と同様である。ただし、実施例9では、電
子注入域の材料に、EM−1の代わりに、下記の(1
4)式に示すジフェニルアントラセンダイマー(DFA
D)を用いた。この場合の電子注入域のガラス転移点を
DSCにより測定したところ、120℃であった。な
お、電子注入域の以外の各層は、実施例1と同一の材料
および膜厚とした。
【0137】
【化12】
【0138】そして、有機EL素子に、実施例1と同様
に7Vの直流電圧を印加した。このときの電流密度は、
1.5mA/cmであり、輝度は60cd/cm
あった。また、実施例9の有機EL素子の半減寿命は、
1800時間であった。それぞれ得られた結果を表3に
示す。
【0139】[実施例10]次に、この発明の実施例1
0について説明する。実施例10の有機EL素子の構造
は、実施例1の有機EL素子の構造と同様である。ただ
し、実施例10においては、電子注入域の材料に、EM
−1の代わりに、(4)式に示すAlqを用いるととも
に、還元性ドーパントとして、Li金属の代わりに、C
s(セシウム)金属を使用し、Alq 1モルに対し
て、1.0モルとなるような比率で添加した。この場合
の電子注入域のガラス転移点をDSCにより測定したと
ころ、180℃であった。また、電子注入域の以外の各
層は、実施例1と同一の材料および膜厚とした。
【0140】そして、有機EL素子に、実施例1と同様
に7Vの直流電圧を印加した。このときの電流密度は、
25mA/cmであり、輝度は500cd/cm
あった。また、実施例10の有機EL素子の半減寿命
は、2500時間であった。それぞれ得られた結果を表
3に示す。
【0141】[実施例11]次に、この発明の実施例1
1について説明する。実施例11の有機EL素子の構造
は、実施例1の有機EL素子の構造と同様である。ただ
し、実施例11においては、発光域および電子注入域の
材料に、EM−1の代わりに、(4)式に示すAlqを
用いるとともに、還元性ドーパントとして、Li金属の
代わりに、Na(ナトリウム)金属を使用し、Alq
1モルに対して、0.5モルとなるような比率で添加し
た。また、電子注入域の以外の各層は、実施例1と同一
の材料および膜厚とした。
【0142】そして、有機EL素子に、実施例1と同様
に7Vの直流電圧を印加した。このときの電流密度は、
3mA/cmであり、輝度は200cd/cmであ
った。また、実施例11の有機EL素子の半減寿命は、
3000時間であった。それぞれ得られた結果を表3に
示す。
【0143】[実施例12]次に、この発明の実施例1
2について説明する。実施例12の有機EL素子の構造
は、実施例1の有機EL素子の構造と同様である。ただ
し、実施例12においては、電子注入域の材料に、EM
−1の代わりに、(9)式に示すキノキキサリン化合物
(H1)を用いるとともに、還元性ドーパントとして、
Li金属の代わりに、Cs金属を使用し、H1 1モル
に対して、1.0モルとなるような比率で添加した。
【0144】この場合の電子注入域のガラス転移点をD
SCにより測定したところ、103℃であった。また、
電子注入域の以外の各層は、実施例1と同一の材料およ
び膜厚とした。
【0145】そして、有機EL素子に、実施例1と同様
に7Vの直流電圧を印加した。このときの電流密度は、
5mA/cmであり、輝度は700cd/cmであ
った。また、実施例12の有機EL素子の半減寿命は、
1000時間であった。それぞれ得られた結果を表3に
示す。
【0146】[実施例13]次に、この発明の実施例1
3について説明する。実施例13の有機EL素子の構造
は、実施例1の有機EL素子の構造と同様である。ただ
し、実施例13においては、電子注入域の材料に、EM
−1の代わりに、下記(15)式に示すオキサジアゾー
ル化合物(H2)を用いるとともに、還元性ドーパント
として、Li金属の代わりに、Sr金属を使用し、H2
1モルに対して、1.0モルとなるような比率で添加
した。この場合の電子注入域のガラス転移点をDSCに
より測定したところ、101℃であった。また、電子注
入域の以外の各層は、実施例1と同一の材料および膜厚
とした。
【0147】
【化13】
【0148】そして、有機EL素子に、実施例1と同様
に7Vの直流電圧を印加した。このときの電流密度は、
1.5mA/cmであり、輝度は200cd/cm
であった。また、実施例13の有機EL素子の半減寿命
は、2000時間であった。それぞれ得られた結果を表
3に示す。
【0149】[実施例14]次に、図6を参照して、実
施例14について説明する。実施例14の有機EL素子
の構造は、第四の実施形態にかかる有機EL素子104
の構造とほぼ同様である。ただし、実施例14では、第
一の界面層20として、厚さ5nmのBaO(酸化バリ
ウム)層を、蒸着速度0.1nm/sで、真空蒸着によ
り形成した。なお、第一の界面層20以外の各層は、実
施例1と同一の材料および膜厚とした。
【0150】そして、有機EL素子に、実施例1と同様
に7Vの直流電圧を印加した。このときの電流密度は、
2.0mA/cmであり、輝度は140cd/cm
であった。また、実施例5の有機EL素子の半減寿命
は、2500時間であった。それぞれ得られた結果を表
4に示す。したがって、第一の界面層20を介在させる
ことにより、電流密度、輝度、および半減寿命が実施例
1よりも向上したことが分かった。
【0151】
【表4】
【0152】[実施例15]次に、この発明の実施例1
5について説明する。実施例15の有機EL素子の構造
は、実施例14の構造と同様である。ただし、実施例1
5では、第一の界面層20として、BaO層の代わり
に、厚さ5nmのLiF(フッ化リチウム)層を真空蒸
着により形成した。なお、第一の界面層20以外の各層
は、実施例1と同一の材料および膜厚とした。
【0153】そして、有機EL素子に、実施例1と同様
に7Vの直流電圧を印加した。このときの電流密度は、
2.2mA/cmであり、発光輝度は150cd/c
であった。また、実施例15の有機EL素子の半減
寿命は、3000時間であった。それぞれ得られた結果
を表4に示す。
【0154】[実施例16]次に、この発明の実施例1
6について説明する。実施例16の有機EL素子の構造
は、実施例14の有機EL素子の構造と同様である。た
だし、実施例16では、第一の界面層20として、Ba
O層の代わりに、厚さ5nmのSrO(酸化ストロンチ
ウム)層を真空蒸着により形成した。なお、第一の界面
層20以外の各層は、実施例1と同一の材料および膜厚
とした。
【0155】そして、有機EL素子に、実施例1と同様
に7Vの直流電圧を印加した。このときの電流密度は、
2.0mA/cmであり、輝度は100cd/cm
であった。また、実施例16の有機EL素子の半減寿命
は、2000時間であった。それぞれ得られた結果を表
4に示す。
【0156】[比較例1]次に、比較例1について説明
する。比較例1の有機EL素子の構造は、実施例1の構
造と同様である。ただし、比較例1では、電子注入域の
材料に、「EM−1」の代わりに、下記の(16)式に
示すトリニトロフルオレノン(TNF)を用いた。この
場合の電子注入域の電子親和力は、4.1eVであっ
た。なお、電子注入域の以外の各層は、実施例1と同一
の材料および膜厚とした。
【0157】
【化14】
【0158】そして、有機EL素子に、実施例1と同様
に7Vの直流電圧を印加した。このときの電流密度は、
0.1mA/cmであり、輝度は観測されなかった。
比較例1の有機EL素子では、電子注入域の電子親和力
が4.1eVと高いため、TNFが発光域の材料と反応
して錯体を形成したか、または、発光域で生成した励起
状態が電子注入域へ移動して失活したものと考えられ
る。
【0159】[比較例2]次に、比較例2について説明
する。比較例2の有機EL素子の構造は、実施例1の構
造と同様である。ただし、比較例2では、電子注入域の
材料に、「EM−1」の代わりに、下記の(17)式に
示すジフェノキノンを用いた。この場合の電子注入域の
ガラス転移点は、50℃であった。なお、電子注入域の
以外の各層は、実施例1と同一の材料および膜厚とし
た。
【0160】
【化15】
【0161】そして、有機EL素子に、実施例1と同様
に7Vの電圧を印加した。このときの電流密度は、0.
2mA/cmであり、輝度は一瞬2cd/mを得た
が、すぐに消光した。それぞれ得られた結果を表3に示
す。比較例2の有機EL素子では、電子注入域の材料が
窒素原子を含んでおり、ガラス転移点も50℃と低いた
め、ジュール熱のため電子注入域が破壊されたものと考
えられる。
【0162】[比較例3]次に、比較例3について説明
する。比較例3の有機EL素子の構造は、実施例1の構
造と同様である。ただし、比較例3では、電子注入域の
材料に、「EM−1」の代わりに、下記の(18)式に
示す窒素含有化合物を用いた。この場合の電子注入域の
ガラス転移点は、62℃であった。なお、電子注入域の
以外の各層は、実施例1と同一の材料および膜厚とし
た。
【0163】
【化16】
【0164】そして、有機EL素子に、6Vの直流電圧
を印加した。このときの電流密度は、1.0mA/cm
であり、輝度は90cd/mを得た。しかし、有機
EL素子の半減寿命はわずか200時間であった。ま
た、発光スペクトルを観測したところ、赤色発光するス
ペクトル成分が生じていた。それぞれ得られた結果を表
3に示す。
【0165】比較例3で使用した(18)式の窒素含有
化合物は、アクセプター性が強いため、発光域の材料と
相互作用して、消光をもたらす可能性が強いと考えられ
る。また、分子量が300以下であって、ガラス転移点
が低い化合物は、発光域と容易に混合しやすく、その結
果、相互作用して消光をもたらしたと考えられる。
【0166】
【発明の効果】以上、詳細に説明したように、本発明の
第一の発明によれば、電子注入域と発光域との界面に、
発光効率の低い電荷移動錯体またはエキシプレックスが
発生することを抑制できるとともに、電子注入域から発
光域へ電子を注入する上で好ましくないブロッキング接
合の発生を抑制することもできる。したがって、この発
明によれば、発光効率の向上を図ることができ、さらに
は長寿命化した有機EL素子を提供することができる。
【0167】また、本発明の第二の発明によれば、窒素
原子を含まない芳香族環化合物を使用した場合はもちろ
んのこと、窒素原子を含んだ芳香族環化合物を使用した
場合であっても、電子注入域と発光域との界面に、発光
効率の低い電荷移動錯体またはエキシプレックスが発生
することを抑制できるとともに、電子注入域から発光域
へ電子を注入する上で好ましくないブロッキング接合の
発生を抑制することもできる。したがって、第二の発明
によれば、より自由度が高く、発光効率の向上を図るこ
とができ、さらには長寿命化した有機EL素子を提供す
ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第一および第二の実施形態における有機EL素
子の断面図である。
【図2】第三の実施形態における有機EL素子の断面図
である。
【図3】第四の実施形態における有機EL素子の断面図
である。
【図4】第五の実施形態における有機EL素子の断面図
である。
【図5】実施例1における有機EL素子の断面図であ
る。
【図6】実施例2における有機EL素子の断面図であ
る。
【図7】本発明の有機EL素子を製造するための真空蒸
着装置例の斜視図である。
【図8】図7における真空蒸着装置の断面図である。
【図9】基板における測定点の説明に供する図である。
【図10】従来の有機EL素子の断面図である。
【符号の説明】
10 陰極層 12 発光域 14 電子注入域 16 陽極層 18 正孔注入輸送層 18a 正孔注入層 18b 正孔輸送層 20 第一の界面層 22 ガラス基板 20 第二の界面層 30 基板 50 陰極 52 第一の有機膜 54 第二の有機膜 56 第三の有機膜、発光域 58 陽極 60 有機EL素子 100、102,102a、104、04a、106
有機EL素子 201 真空蒸着装置 203 基板 210 真空槽 211 基板ホルダ 212 蒸着源 213 回転軸部 213A 回転軸線 214 モータ 221 仮想円
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 3K007 AB02 AB03 AB04 AB06 AB11 CA01 CB01 DA01 DB03 EB00

Claims (17)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくとも陽極層、発光域、電子注入域
    および陰極層を順次に積層した構造を有する有機エレク
    トロルミネッセンス素子において、 前記電子注入域のガラス転移点を100℃以上の値と
    し、 かつ、前記電子注入域に、窒素原子を含まない芳香族化
    合物と、下記式で表される還元性ドーパントとを含有
    し、 さらに、前記電子注入域の電子親和力を1.8〜3.6
    eVの範囲とすることを特徴とする有機エレクトロルミ
    ネッセンス素子。 MAr (ただし、Mはアルカリ金属、Arは無置換または置換
    の炭素数10〜40の芳香族環化合物を表す。)
  2. 【請求項2】 請求項1記載の有機エレクトロルミネッ
    センス素子において、 前記還元性ドーパントが、アントラセン、ナフタレン、
    ジフェニルアントラセン、ターフェニル、クォーターフ
    ェニル、キンクフェニル、および、セクシフェニルから
    なる群から選択される少なくとも一つの芳香族環より形
    成された基を含有することを特徴とする有機エレクトロ
    ルミネッセンス素子。
  3. 【請求項3】 請求項1または2記載の有機エレクトロ
    ルミネッセンス素子において、 前記芳香族化合物が、アントラセン、フルオレン、ペリ
    レン、ピレン、フェナントレン、クリセン、テトラセ
    ン、ルブレン、ターフェニレン、クォーターフェニレ
    ン、セクシフェニレンおよびトリフェニレンからなる群
    から選択される少なくとも一つの芳香族環より形成され
    た基を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネ
    ッセンス素子。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3のいずれかに記載の有機エ
    レクトロルミネッセンス素子において、 前記芳香族化合物が、スチリル置換された芳香族環、ジ
    スチル置換された芳香族環からなる群から選択される少
    なくとも一つの芳香族環より形成された基を含有するこ
    とを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4のいずれかに記載の有機エ
    レクトロルミネッセンス素子において、 前記還元性ドーパントの仕事関数を3.0eV以下の値
    とすることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス
    素子。
  6. 【請求項6】 請求項1〜5のいずれかに記載の有機エ
    レクトロルミネッセンス素子において、 前記電子注入域のエネルギーギャップを2.7eV以上
    とすることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス
    素子。
  7. 【請求項7】 請求項1〜6のいずれかに記載の有機エ
    レクトロルミネッセンス素子において、 前記芳香族化合物と還元性ドーパントとの添加比率を
    1:20〜20:1(モル比)の範囲とすることを特徴
    とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  8. 【請求項8】 請求項1〜7のいずれかに記載の有機エ
    レクトロルミネッセンス素子において、 前記発光域と前記電子注入域とに、窒素原子を含まない
    同一種類の芳香族化合物を含有することを特徴とする有
    機エレクトロルミネッセンス素子。
  9. 【請求項9】 請求項1〜8のいずれかに記載の有機エ
    レクトロルミネッセンス素子において、 前記陰極層と前記電子注入域との間および前記陽極層と
    前記発光域との間、あるいはいずれか一方に、界面層を
    設けることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス
    素子。
  10. 【請求項10】 少なくとも陽極層、発光域、電子注入
    域および陰極層を順次に積層した構造を有する有機エレ
    クトロルミネッセンス素子において、 前記電子注入域に、電子輸送性化合物と、仕事関数が
    2.9eV以下の下記式で表される還元性ドーパントを
    含有し、 かつ、該電子注入域の電子親和力を1.8〜3.6eV
    の範囲とすることを特徴とする有機エレクトロルミネッ
    センス素子。 MAr (ただし、Mはアルカリ金属、Arは無置換または置換
    の炭素数10〜40の芳香族化合物を表す。)
  11. 【請求項11】 請求項10に記載の有機エレクトロル
    ミネッセンス素子において、 前記還元性ドーパントが、アントラセン、ナフタレン、
    ジフェニルアントラセン、ターフェニル、クォーターフ
    ェニル、キンクフェニル、および、セクシフェニルから
    なる群から選択される少なくとも一つの芳香族環より形
    成された基を含有することを特徴とする有機エレクトロ
    ルミネッセンス素子。
  12. 【請求項12】 請求項10または11に記載の有機エ
    レクトロルミネッセンス素子において、 前記電子輸送性化合物が、含窒素複素環化合物を含むこ
    とを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  13. 【請求項13】 請求項12に記載の有機エレクトロル
    ミネッセンス素子において、 前記含窒素複素環化合物が、含窒素錯体、キノリン誘導
    体、キノキサリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、チ
    アジアゾール誘導体およびトリアゾール誘導体からなる
    群から選択される少なくとも一つの化合物であることを
    特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  14. 【請求項14】 請求項10〜13のいずれかに記載の
    有機エレクトロルミネッセンス素子において、 前記芳香族化合物と還元性ドーパントとの添加比率を
    1:20〜20:1(モル比)の範囲とすることを特徴
    とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  15. 【請求項15】 請求項10〜14のいずれかに記載の
    有機エレクトロルミネッセンス素子において、 前記電子注入域のガラス転移点を100℃以上の値とす
    ることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素
    子。
  16. 【請求項16】 請求項10〜15のいずれかに記載の
    有機エレクトロルミネッセンス素子において、 前記発光域と前記電子注入域とに、同一種類の電子輸送
    性化合物を含有することを特徴とする有機エレクトロル
    ミネッセンス素子。
  17. 【請求項17】 請求項10〜16のいずれか一項に記
    載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、 前記陰極層と前記電子注入域との間および前記陽極層と
    前記発光域との間、あるいはいずれか一方に、界面層を
    設けることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス
    素子。
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