JP2002226949A - アルミニウム合金製ピストン用耐摩環 - Google Patents

アルミニウム合金製ピストン用耐摩環

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JP2002226949A
JP2002226949A JP2001024840A JP2001024840A JP2002226949A JP 2002226949 A JP2002226949 A JP 2002226949A JP 2001024840 A JP2001024840 A JP 2001024840A JP 2001024840 A JP2001024840 A JP 2001024840A JP 2002226949 A JP2002226949 A JP 2002226949A
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ring
piston
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groove
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Nobuyuki Matsushima
伸行 松嶋
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Nippon Piston Ring Co Ltd
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    • F05INDEXING SCHEMES RELATING TO ENGINES OR PUMPS IN VARIOUS SUBCLASSES OF CLASSES F01-F04
    • F05CINDEXING SCHEME RELATING TO MATERIALS, MATERIAL PROPERTIES OR MATERIAL CHARACTERISTICS FOR MACHINES, ENGINES OR PUMPS OTHER THAN NON-POSITIVE-DISPLACEMENT MACHINES OR ENGINES
    • F05C2201/00Metals
    • F05C2201/02Light metals
    • F05C2201/021Aluminium

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  • Pistons, Piston Rings, And Cylinders (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 耐摩耗性に優れた、安価な、アルミニウム合
金製ピストン用耐摩環を提供する。 【解決手段】 アルミニウム合金製ピストンに鋳包まれ
てピストンリングを装着する溝を有する耐摩環であっ
て、質量%で、Ni:3.5 〜17.0%、Cr:15.0〜20.0%を
含む組成のオーステナイト系ステンレス鋼材で構成し、
溝表層の組織を加工誘起マルテンサイトとする。さら
に、この表層に窒化処理を施し、窒化層を形成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、内燃機関ピストン
用耐摩環に係り、特にアルミニウム合金製ピストンに使
用して好適な耐摩耗性に優れた耐摩環に関する。
【0002】
【従来の技術】近年のエンジンの軽量化および放熱性を
高める目的から、アルミニウム合金製のエンジンが一般
化しつつあり、ピストンもアルミニウム合金製としてい
る。一方で、エンジン高出力化の要請に伴い、エンジン
はより高温の燃焼環境に晒され、またピストンリングに
も厳しい耐摩耗性が要求されている。そのため、ピスト
ンリングを装着するためのピストンリング溝は、硬度の
高いピストンリングの端面で叩きを受けるので、通常の
アルミニウム合金ではピストンリング溝のへたりや変形
が生じる恐れがある。特にディーゼルエンジンのトップ
リングは、高い燃焼圧が直接作用する。このため、トッ
プリング溝はピストンリングによる叩きの繰り返しでへ
たり摩耗が生じやすくガス漏れやオイル漏れが生じ、エ
ンジン出力の低下を来すこととなる。
【0003】この問題を解決するために、従来からピス
トンリング溝にピストン材料よりは高強度の材料からな
る耐摩環を固着し、ピストンリングを装着する構成が提
案されている。例えば、ディーゼルエンジン用のピスト
ンでは、そのトップリング溝にニレジスト鋳鉄製のイン
サート(耐摩環)を鋳ぐるみ、この耐摩環によって、シ
リンダ内におけるピストン摺動によるピストンリング溝
の摩耗を防止するようにしたものが主流である。ニレジ
スト鋳鉄は、Ni−Cu−Cr系オーステナイト鋳鉄であり、
JIS G 5510に規定される、FCA−NiCuCr 15 6 2 であ
る。
【0004】しかし、ニレジスト鋳鉄で耐摩環を構成す
ると、材料費が高く、しかも鋳造品であるため歩留りが
悪く、コスト高になるとともに、鋳ぐるみ性改善のため
にアルミナイズ処理が必要不可欠となる。また、硬さも
B 200 程度であり、最近のエンジンの高出力化および
大型化に伴い、耐摩耗性が不十分となる。このような問
題に対し、例えば、特開平11-182333 号公報には、C:
0.1 〜1.0 重量%を含み、密度が6.0g/cm3以上のオース
テナイト系鋼の焼結体で形成された内燃機関用ピストン
の耐摩環が提案されている。
【0005】また、特開平8-151954号公報には、炭化珪
素SiC の粒子を含有したアルミニウム合金材の耐摩環を
アルミニウム合金製ピストンに鋳包み、耐摩環とピスト
ンの接合境界面をレーザー等高エネルギー密度の熱源に
より再溶融を接合し、密着性を改善した内燃機関用ピス
トンが提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】特開平11-182333 号公
報に記載された技術による耐摩環は、ピストンへの密着
性が向上しピストンへの鋳包みがニレジスト鋳鉄にくら
べ容易となるが、しかし、耐摩耗性はニレジスト鋳鉄と
ほぼ同等であり、最近のエンジンの高出力化および大型
化対応に対応するには依然として耐摩耗性が不十分であ
る。また、特開平8-151954号公報に記載された技術によ
る耐摩環では、近年のエンジンの高出力化とそれに伴う
ピストンリング溝部の温度上昇により、ピストンリング
溝(耐摩環)が高温と叩きとにより軟化してピストンリ
ングの端面に固着(凝着)する現象(アルミ凝着とい
う)が顕在化することが懸念される。
【0007】そこで本発明は、ピストンリングへのアル
ミ凝着の問題を生ずることがなく、ピストンリング溝の
摩耗を低減でき、耐摩耗性に優れ、安価な、アルミニウ
ム合金製ピストン用耐摩環を提供することを目的とす
る。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記した課
題を達成するために鋭意考究の結果、耐摩環を、熱膨張
係数がアルミニウム合金に近い、オーステナイト系ステ
ンレス鋼材で構成し、素材加工時に、加工誘起変態によ
り、表層を硬質なマルテンサイト組織とすることを思い
ついた。これにより、耐摩環の熱膨張をアルミニウム合
金製ピストンと同様とすることができ、また同時に耐摩
耗性が向上することを知見した。
【0009】本発明は、上記した知見に基づき、さらに
検討・実験を重ねて成されたもので、その要旨は以下の
通りである。 (1) アルミニウム合金製ピストンに鋳包まれてピストン
リングを装着する溝を有する耐摩環であって、質量%
で、Ni:3.5 〜17.0%、Cr:15.0〜20.0%を含み、好ま
しくは、C:0.08%以下、Si:1.00%以下、Mn:2.00%
以下を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成
のオーステナイト系ステンレス鋼材で構成され、前記溝
表層の組織が加工誘起マルテンサイトであることを特徴
とするアルミニウム合金製ピストン用耐摩環。 (2)(1)において、前記加工誘起マルテンサイトの熱膨張
係数が、15×10-6/℃以上であることを特徴とするアル
ミニウム合金製ピストン用耐摩環。 (3)(1)または(2) において、前記溝表層に、窒化層を有
することを特徴とするアルミニウム合金製ピストン用耐
摩環。 (4) アルミニウム合金製ピストンに鋳包まれてピストン
リングを装着する溝を有する耐摩環であって、質量%
で、Ni:3.5 〜17.0%、Cr:15.0〜20.0%を含み、好ま
しくは、C:0.08%以下、Si:1.00%以下、Mn:2.00%
以下を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成
のオーステナイト系ステンレス鋼材で構成され、前記溝
表層に窒化層を有することを特徴とするアルミニウム合
金製ピストン用耐摩環。 (5)(1)ないし(4) のいずれかに記載の耐摩環をアルミニ
ウム合金製ピストンに鋳包み、溝仕上加工を施してなる
内燃機関用アルミニウム合金製ピストン。 (6) 質量%で、Ni:3.5 〜17.0%、Cr:15.0〜20.0%を
含み、好ましくは、C:0.08%以下、Si:1.00%以下、
Mn:2.00%以下を含み、残部Feおよび不可避的不純物か
らなる組成のオーステナイト系ステンレス鋼材を、鍛造
または引抜き加工により所定の形状とし、さらに切削加
工および研摩加工により、ピストンリングを装着する溝
を加工して耐摩環とするにあたり、前記鍛造或いは引き
抜き加工により加工誘起マルテンサイト組織を溝表面層
に有することを特徴とするアルミニウム合金製ピストン
用耐摩環の製造方法。 (7)(6)において、前記溝を加工した後に、窒化処理を施
すことを特徴とするアルミニウム合金製ピストン用耐摩
環の製造方法。 (8) 質量%で、Ni:3.5 〜17.0%、Cr:15.0〜20.0%を
含み、好ましくは、C:0.08%以下、Si:1.00%以下、
Mn:2.00%以下を含み、残部Feおよび不可避的不純物か
らなる組成のオーステナイト系ステンレス鋼材を、鍛造
または引抜き加工により所定の形状とし、さらに切削加
工および研摩加工により、ピストンリングを装着する溝
を加工して耐摩環とするにあたり、前記溝を加工した後
に、窒化処理を施すことを特徴とするアルミニウム合金
製ピストン用耐摩環の製造方法。
【0010】
【発明の実施の形態】はじめに本発明の耐摩環の使途に
ついて図1および図2に基づき説明する。図2はディー
ゼルエンジンの要部を示しており、鋳造されたクランク
ケース2内にシリンダライナ6を内周面側に圧入したシ
リンダ胴4が設けられ、このシリンダライナ6内にアル
ミ合金製のピストン3が摺動可能に案内されている。シ
リンダ胴4の外周にはシリンダ冷却用のウォータジャケ
ット5が形成されている。またクランクケース2の上部
には、シリンダヘッド1が設けられ、ピストン3の上面
との間で燃焼室が画成される。またピストン3の上部側
には複数のピストンリング7が装着されている。
【0011】ピストン3の外周面には、図1に示される
ように、ピストンリング7を装着するための受け溝であ
るリング溝8が形成されている。リング溝8は上側面、
下側面、底面からなる断面コの字状をしており、リング
溝8には、断面コの字状の耐摩環10が鋳包まれて、固着
されている。ピストン3の摺動に伴いピストンリング7
とリング溝8との間に相対的移動が生じるが、耐摩環10
によりリング溝8の摩耗やへたり、変形が防止できる。
まず、本発明の耐摩環を構成する鋼材の組成限定理由に
ついて説明する。
【0012】本発明の耐摩環は、質量%で、Ni:3.5 〜
17.0%、Cr:15.0〜20.0%を含む組成のオーステナイト
系ステンレス鋼材で構成される。なお、オーステナイト
系ステンレス鋼材の組成は、Ni:3.5 〜17.0%、Cr:1
5.0〜20.0%を含み、好ましくは、C:0.08%以下、S
i:1.00%以下、Mn:2.00%以下を含み、あるいはさら
にMo:6%以下、Cu:4%以下、Nb:1%以下、Ti:0.
6 %以下、N:0.3 %以下の1種または2種以上を含有
し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成とするの
が好ましい。不可避的不純物としてのP、Sは、P:0.
045 %以下、S:0.030 %以下とすることが、延性の観
点から好ましい。
【0013】Ni:3.5 〜17.0% Niは、オーステナイト相を安定化する作用を有し、また
加工誘起マルテンサイトの熱膨張係数を15 ×10-6/℃
以上を確保するために、3.5 %以上の含有を必要とす
る。また、Niは、オーステナイト系ステンレス鋼中への
窒素の侵入を妨害する作用があり、17.0%を超えると、
窒化時間が長時間となる。このため、本発明ではNiは3.
5 〜17.0%の範囲に限定した。
【0014】Cr:15.0〜20.0% Crは、オーステナイト系ステンレス鋼中へ侵入した窒素
と結合し高硬度の窒化クロムを形成し、窒化層の硬さを
増加させ、耐摩耗性を向上させる重要な元素となる。ま
た、Cr含有量が15%未満では高硬度の窒化クロムが十分
に得られにくく、高硬度の窒化層が得られない。また、
Crも、Niほどではないが、オーステナイト系ステンレス
鋼中への窒素の侵入を妨害する作用があり、20.0%を超
えると、窒化時間が長時間となる。このため、本発明で
はCrは15.0〜20.0%に限定した。
【0015】Ni、Cr以外の成分の限定理由は下記のとお
りである。 C:0.08%以下、 Cは、強度を増加し、オーステナイト相を安定化する元
素であるが、多量に含有すると、強度が高くなりすぎ加
工性が低下するとともに、熱膨張係数が15×10 -6/℃以
下に低下してしまう。このため、Cは0.08%以下に限定
するのが好ましい。
【0016】Si:1.00%以下 Siは、製鋼過程で脱酸剤として必要な元素であるが、フ
ェライト生成元素であり、多量の含有は機械的特性を劣
化させるため、できるだけ低減するのが望ましいが、本
発明では1.00%までは許容できる。 Mn:2.00%以下 Mnは、鋼中に固溶し強度を向上させ、オーステナイト相
を安定化する作用を有するが、2.00%を超えると強度が
高くなりすぎ、切削性が低下する。このため、Mnは2.00
%以下に限定するのが好ましい。
【0017】Mo:6%以下、Cu:4%以下、Nb:1%以
下、Ti:0.6 %以下、N:0.3 %以下の1種または2種
以上 Mo、Cu、Nb、Ti、Nは、耐食性、強度や加工性を改善さ
せる元素であり、必要に応じ選択して上記した範囲で含
有することができる。 熱膨張係数:15.0×10-6/℃以上 本発明の耐摩環はアルミニウム合金製のピストンに鋳包
まれるため、実用に供するに際しては、熱膨張係数の相
違が問題となる。上記した本発明の鋼材組成範囲内であ
れば、耐摩環の熱膨張係数は15〜18×10-6/℃となり、
アルミニウム合金(JIS AC8A)の熱膨張係数:19×10-6
/℃に近く、使用に際しての不都合はない。
【0018】さらに、耐摩環の溝表層に形成される加工
誘起マルテンサイトの熱膨張係数も、アルミニウム合金
製のピストンの熱膨張に追従することができるように、
15.0×10-6/℃以上となるようにすることが好ましい。
上記したオーステナイト系ステンレス鋼材の組成範囲内
で、各成分の含有量を、上記熱膨張係数となるように調
整するのが好ましい。
【0019】本発明の耐摩環では、溝表層の組織を加工
誘起変態により、硬質なマルテンサイトとする。表層を
硬質な加工誘起マルテンサイトとすることにより、耐摩
環表層の硬さが増加し、ピストンの摺動に伴うピストン
リングによる摩耗、へたり、変形が防止できる。表層を
加工誘起マルテンサイトとすることにより、本発明の鋼
材組成範囲であれば、Hv400程度までの硬さ増加が認め
られる。
【0020】また、本発明の耐摩環は、表層を加工誘起
マルテンサイト相とし、さらに窒化層を形成するのが好
ましい。窒化層の厚さは、30〜70μm とするのが好まし
い。加工誘起マルテンサイト相の形成に加えて、窒化層
を形成することにより、耐摩耗性は格段に向上する。な
お、窒化層は、耐摩環表面の全表面に形成しても、また
ピストンリングと接触する溝部分のみとしてもよい。な
お、耐摩耗性の要求程度に応じ、表層に加工誘起マルテ
ンサイト相を形成することなく、窒化層を形成してもよ
い。
【0021】つぎに、本発明の耐摩環の製造方法につい
て説明する。まず、所定の耐摩環が採取可能な大きさ
の、上記した組成のオーステナイト系ステンレス鋼材
を、鍛造或いは引抜き加工し、所定の形状とする。その
際、鍛造あるいは引抜き加工により加工誘起マルテンサ
イト相を析出させる。鍛造あるいは引抜き加工後、さら
に切削加工および研磨加工を施す。本発明では、少なく
ともピストンリングを装着する溝の表層が加工誘起マル
テンサイト相とすることが肝要である。
【0022】また、硬さをさらに増加させるためには、
切削加工による溝加工を行ったのち、窒化処理を行い、
窒化層を形成するのが好ましい。窒化処理としては、ガ
ス窒化、イオン窒化、塩浴窒化、浸硫窒化等、従来公知
の窒化処理がいずれも好適である。窒化処理により形成
される窒化層の厚さは、30〜70μm とするのが好まし
い。
【0023】また、硬さ要求が低い場合には、鋼材に鍛
造或いは引抜き加工することなく、溝加工を施してもよ
い。この場合には、硬さ増加のために、窒化処理を施
し、窒化層を形成して所望の硬さとすることもできる。
かくして得られた耐摩環を、ピストンの高圧ダイカスト
に使用する鋳型内のリング溝対応部位に装着し、その鋳
型内に溶融Al合金を注湯してピストンを高圧ダイカスト
することによって耐摩環を鋳包みする。なお、形成され
た加工誘起マルテンサイトは、鋳包み時の熱履歴により
特性が大きく変化することは全くない。
【0024】鋳包み後、溝仕上加工を行って、所定の寸
法に仕上げることにより耐摩環を鋳包んだアルミニウム
合金製ピストンが完成する。
【0025】
【実施例】表1に示す組成のオーステナイト系ステンレ
ス鋼材を素材として、試験片に加工して図3に示す試験
機(高温弁座摩耗試験機)11のピストン側材(模擬耐摩
環)13とし、同試験機11を使用してすべりたたき試験を
行った。ここで、「すべりたたき試験」とは、模擬耐摩
環13を試験機11に対して軸方向移動不能に固定し、ピス
トンリング相当のリング材12を模擬耐摩環13に同心に装
着し、リング材12の内周面側に備わっているシリンダラ
イナ相当の鋳鉄製円棒15を軸方向に往復させることによ
り、リング材12に、回転しつつピストン側材13を叩く動
作モードを付与する試験である。試験機11は被験材加熱
用のヒータ14を有しており、実際に燃料を燃焼させずと
もエンジン内の燃焼時の高温状態を再現することがで
き、耐摩環の状態変化を模すことができる。
【0026】なお、試験片(模擬耐摩環)のリング材と
接触する部分(溝相当部)の加工条件は、 鍛造後、切削加工による研摩加工、 切削加工による研摩加工 とした。
【0027】また、試験片を加工したのち、試験片表面
の加工誘起マルテンサイト相の存在をX線回折法で確認
した。また、加工誘起マルテンサイトを含めた熱膨張係
数は、熱機械分析(Thermo-mechanical analysis)TM
Aにより測定した。また、試験片に加工したのち、一部
の試験片には、リング材と接触する部分(溝相当部)に
窒化処理を施し、窒化層を形成した。なお、窒化層の厚
さは、硬さ試験機により硬度分布を求め測定した。
【0028】「すべりたたき試験」の試験条件は以下の
通りとした。 ピストン側材温度 340 ℃ 繰り返し数 1500回/分 ローテーション(リング材回転数) 3.0 rpm 面圧 20 kg/cm2 試験時間 10h 一方、リング材12としては、以下のものを使用した。
【0029】リング材A:JIS FCD(球状黒鉛鋳鉄)
を母材として外周摺動面をCrメッキしたもの リング材B:Si−Cr鋼を母材として外周摺動面をCrメッ
キしたもの リング材C:17Crステンレス鋼をガス窒化したもの また、従来例として、表1に示す4種の材料を実施例、
比較例と同様に試験片加工して試験を行った。従来例1
は表1に示す組成になるAl鍛造引き抜き材、従来例2は
Al材(JIS AC8A)生材、従来例3は従来例2の生材
をアルマイト処理したもの、従来例4はニレジスト鋳鉄
材である。
【0030】この試験により、ピストン側摩耗(模擬耐
摩環の摩耗量)、リング摩耗(リング材の摩耗量)を評
価した。その結果を表2に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
【表3】
【0034】なお、表2において、摩耗に関しては当然
ながら摩耗量(mg)が小さいほど良好である。本発明例
(ピストン側材No.1〜No.17 )はいずれの加工条件であ
っても、すべりたたき試験結果は現行のニレジスト鋳鉄
(ピストン側材No.35 )により良好な結果が確認でき
る。熱膨張係数も15.0×10-6/℃より大きい。
【0035】本発明の範囲を外れる比較例(ピストン側
材No.18 、No.20 、No.24 、No.26、No.27 )では、熱
膨張係数が15.0×10-6/℃より小さくなっている。また
比較例(ピストン側材No.18 〜No.31 )はいずれもリン
グB材において、ピストン側摩耗量が多く従来例である
ニレジスト鋳鉄(ピストン側材No.31 )より耐摩耗性が
劣化している。これは耐摩環材とリングB材(Si−Cr
鋼)との相性が悪く、リング材のピストン材への相手攻
撃性が大きく、ピストン側材を摩耗させたと考えられ
る。すべりたたき摩耗試験結果より、窒化処理を行うこ
とで、リングA材、リングC材においてピストン側材の
摩耗量の低下はみられるが、リング材の摩耗量はニレジ
スト鋳鉄(ピストン側材No.35 )と同等またはそれ以上
となるため、適さない。
【0036】表2より、本発明例は、相手材(リング
材)の種類によらず、ピストン側摩耗の点で従来例(ピ
ストン側材No.32 〜No.34 )より格段に良好で、また従
来例(ピストン側材No.35 )と比べても良好である。ま
た、リング摩耗の点では、従来例(ピストン側材No.32
〜No.35 )のどれと比べても良好である。
【0037】
【発明の効果】このように、本発明によれば、耐摩環自
体の耐摩耗性が向上するばかりか、ピストン側の摩耗量
を減少させることができる。また、耐摩環の熱膨張率を
ピストン本体の値に近づけることができる。また、本発
明は、ディーゼルエンジンのインクラターボあるいはE
GR(排気ガス再循環システム)における高温雰囲気に
おいて、とくに耐磨耗性向上に効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】耐摩環を備えたピストンの部分断面図である。
【図2】耐摩環が装着される内燃機関を示す断面図であ
る。
【図3】耐摩環の特性試験を行う試験機を示す一部切欠
斜視図である。
【符号の説明】
1 シリンダヘッド 2 クランクケース 3 ピストン 4 ライナ 5 ウォータジャケット 6 シリンダライナ 7 ピストンリング 8 リング溝 10 耐摩環 11 試験機(高温弁座摩耗試験機) 12 リング材 13 ピストン側材(模擬耐摩環) 14 ヒータ 15 鋳鉄製円棒
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) F02F 3/00 F02F 3/00 G F16J 1/00 F16J 1/00 9/00 9/00 A

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アルミニウム合金製ピストンに鋳包まれ
    てピストンリングを装着する溝を有する耐摩環であっ
    て、質量%で、Ni:3.5 〜17.0%、Cr:15.0〜20.0%を
    含む組成のオーステナイト系ステンレス鋼材で構成さ
    れ、前記溝表層の組織が加工誘起マルテンサイトである
    ことを特徴とするアルミニウム合金製ピストン用耐摩
    環。
  2. 【請求項2】 前記オーステナイトステンレス鋼材は、
    質量%で、C:0.08%以下、Si:1.0 %以下、Mn:2.0
    %以下を含むことを特徴とする請求項1に記載のアルミ
    ニウム合金製ピストン用耐摩環。
  3. 【請求項3】 前記加工誘起マルテンサイトの熱膨張係
    数が、15.0×10-6/℃以上であることを特徴とする請求
    項1または2に記載のアルミニウム合金製ピストン用耐
    摩環。
  4. 【請求項4】 前記溝表層に、窒化層を有することを特
    徴とする請求項1及至3のいずれかに記載のアルミニウ
    ム合金製ピストン用耐摩環。
  5. 【請求項5】 アルミニウム合金製ピストンに鋳包まれ
    てピストンリングを装着する溝を有する耐摩環であっ
    て、質量%で、Ni:3.5 〜17.0%、Cr:15.0〜20.0%を
    含む組成のオーステナイト系ステンレス鋼材で構成さ
    れ、前記溝表層に窒化層を有することを特徴とするアル
    ミニウム合金製ピストン用耐摩環。
  6. 【請求項6】 前記オーステナイトステンレス鋼材は、
    質量%でC:0.08%以下、Si:1.0 %以下、Mn:2.0 %
    以下を含むことを特徴とする請求項5に記載のアルミニ
    ウム合金製ピストン用耐摩環。
  7. 【請求項7】 請求項1及至6のいずれかに記載の耐摩
    環をアルミニウム合金製ピストンに鋳包み、溝仕上加工
    を施してなる内燃機関用アルミニウム合金製ピストン。
  8. 【請求項8】 質量%で、Ni:3.5 〜17.0%、Cr:15.0
    〜20.0%を含む組成のオーステナイト系ステンレス鋼材
    を、鍛造または引抜き加工により所定の形状とし、さら
    に切削加工および研摩加工により、ピストンリングを装
    着する溝を加工し耐摩環とするにあたり、前記鍛造、ま
    たは引抜き加工により加工誘起マルテンサイト組織を溝
    表面層に有することを特徴とするアルミニウム合金製ピ
    ストン用耐摩環の製造方法。
  9. 【請求項9】 前記オーステナイトステンレス鋼材は、
    質量%でC:0.08%以下、Si:1.0 %以下、Mn:2.0 %
    以下を含むことを特徴とする請求項8記載にのアルミニ
    ウム合金製ピストン用耐摩環の製造方法。
  10. 【請求項10】 前記溝を加工した後に、さらに窒化処理
    を施すことを特徴とする請求項8または9に記載のアル
    ミニウム合金製ピストン用耐摩環の製造方法。
  11. 【請求項11】 質量%で、Ni:3.5 〜17.0%、Cr:15.0
    〜20.0%を含む組成のオーステナイト系ステンレス鋼材
    を、鍛造または引抜き加工により所定の形状とし、さら
    に切削加工および研摩加工により、ピストンリングを装
    着する溝を加工し耐摩環とするにあたり、前記溝を加工
    したのち、窒化処理を施すことを特徴とするアルミニウ
    ム合金製ピストン用耐摩環の製造方法。
  12. 【請求項12】 前記オーステナイトステンレス鋼材は、
    質量%でC:0.08%以下、Si:1.0 %以下、Mn:2.0 %
    以下を含むことを特徴とする請求項11に記載のアルミニ
    ウム合金製ピストン用耐摩環の製造方法。
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