JP2002167644A - 熱処理定歪み冷間工具鋼及びこれを用いた冷間工具の製造方法 - Google Patents

熱処理定歪み冷間工具鋼及びこれを用いた冷間工具の製造方法

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JP2002167644A
JP2002167644A JP2000366145A JP2000366145A JP2002167644A JP 2002167644 A JP2002167644 A JP 2002167644A JP 2000366145 A JP2000366145 A JP 2000366145A JP 2000366145 A JP2000366145 A JP 2000366145A JP 2002167644 A JP2002167644 A JP 2002167644A
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cold tool
quenching
hardness
heat treatment
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Takayuki Shimizu
崇行 清水
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Daido Steel Co Ltd
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Daido Steel Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】焼入れ後において歪み取りのための仕上加工を
省略することができ、且つ金型として必要なHRC55
以上の硬さの得られる熱処理定歪み冷間工具鋼を提供す
る。 【解決手段】冷間工具鋼を重量%で、C:0.4〜1.2%,S
i:0.1〜1.2%,Mn:0.3〜2.0%,Cr:3.0〜10.0%,M
o:0.5〜3.0%,残部実質的にFeの組成を有し、パーラ
イトノーズが250minより短時間側であり且つガス冷
却による焼入れ時の冷却速度2〜50℃/minで硬さH
RC55以上となる組成に成分調整したものとなす。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、円形や角形の比
較的単純な形状のパンチ,ダイ,ロール,抜き型,曲げ
型,絞り型,プレス型等の金型に用いて好適な冷間工具
鋼、特に焼入れによる変形の抑制された冷間工具鋼及び
これを用いた冷間工具の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】従来パ
ンチ,ダイ,ロール,抜き型,曲げ型,絞り型,プレス
型等の金型を製造する場合、焼鈍し状態の鋼材(工具
鋼)を金型形状に粗加工し、その後に焼入焼戻し処理を
行う。ここで焼入焼戻し処理を行うのは、組織をマルテ
ンサイト化して金型として必要な硬さを発現させるため
であるが、このような焼入焼戻し処理を行うと、その熱
処理によって歪みが発生するのが避けられない。そのた
め粗加工の段階で予め仕上代を持たせておき、焼入焼戻
し後において、その際に発生した歪み除去のための研削
等の仕上加工(精加工)を行う。
【0003】しかしながら焼入焼戻し後においてこのよ
うな仕上加工を実施することで金型製造のための工程数
が増し、またこれに伴って金型製造のための所要期間が
長期化し、またコストも高くなるといった問題が生ず
る。この場合冷間工具鋼の焼入れ時の歪みを抑制し、焼
入れ後の仕上加工を省略することができれば上記問題を
解決することが可能であるが、近年金型により製造され
る製品の寸法精度が向上しており、これに伴い製品を加
工するための金型に要求される寸法精度が高くなってい
る中で、こうした要請を満たし得る冷間工具鋼は従来提
供されていないのが実状である。
【0004】ここで熱処理の際の歪みとしては、形状が
変形せず寸法だけが変化する変寸と、形状が変化してし
まう変形とがあり、而して前者の変寸は組織が変態し体
積変化するために起るもので、材料と焼入焼戻し条件の
決定により、或いは繰返し行った実験データからその変
寸の値を予測することが可能である。
【0005】これに対して変形は、例えば図7に示して
いるように熱処理前に円形であったものが熱処理により
楕円形に変化し、長軸と短軸とで寸法差(寸法のばらつ
き)が生じるといった現象で予測不能なものである。
【0006】ここで変形を低減させる対策としてマルテ
ンパ等の焼入れ方法を用いたり、或いは焼入れの際の冷
却速度を低下させるなどの対策が考えられる。しかしな
がら、近年における高寸法精度の要求に対して前者の方
法では十分これを満たし得ず、また冷却速度を低下させ
る後者の対策の場合、冷却速度を低下させると、金型と
して必要な硬さが得られず、変形低減と硬さ確保の両者
をともに実現し得る材料は従来提供されていないのが実
状である。
【0007】また金型としてCVD(化学蒸着法)処理
により表面を薄い硬質膜で被覆した状態で用いるものが
あるが、この場合熱処理後において仕上加工を行うと硬
質膜が無くなってしまうこととなり、従ってこのような
金型については熱処理後において仕上加工を実施するこ
と自体ができない。従ってこのような金型に用いられる
工具鋼としては、熱処理後において仕上加工せずに所望
の高い寸法精度が得られるものでなければならないが、
こうした材料は従来実現されていない。
【0008】以下はCVD金型に対して要求される寸法
精度と加工工程ごとの寸法の変化の一例を示したもので
あるが、この例のCVD金型の場合、熱処理によって発
生する歪みが許容値よりも大であるため、尚且つ熱処理
後における仕上加工ができないため結局廃却せざるを得
ない。
【0009】 例 CVD処理金型(パンチφ100mm×高さ50mm)・・・寸法精度 最大寸 法差:0.05%以下 粗加工後 φ99.950±0.002mm 加工代:なし 硬質膜被覆後 φ99.960±0.006mm(膜形成は1000℃程度の高温熱処理 であり、多少変形する) 被覆厚さ:0.010mm(均一厚さ) 焼入れ後 φ100.000±0.030mm 最大寸法差:0.060mm(0.06%)(膜の厚さより歪みの 方が大きい) 廃棄処分
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明はこのような課題
を解決するために案出されたものである。而して請求項
1は熱処理定歪み冷間工具鋼に関するもので、重量%
で、C:0.4〜1.2%,Si:0.1〜1.2%,Mn:0.3〜2.0
%,Cr:3.0〜10.0%,Mo:0.5〜3.0%,残部実質的にF
eの組成を有し、且つパーライトノーズが250minより
短時間側であり且つガス冷却による焼入れ時の冷却速度
2〜50℃/minで、硬さHRC55以上となる組成に
成分調整して成ることを特徴とする。
【0011】請求項2のものは、請求項1において、更
に重量%で、V:≦3%,W:≦5%,Ni:≦3%,Nb:≦3
%,Co:≦3%,Ti:≦2%の1種又は2種以上を含有し
ていることを特徴とする。
【0012】請求項3のものは、請求項1,2の何れか
において、前記パーライトノーズが120minよりも長
時間側であることを特徴とする。
【0013】請求項4は冷間工具の製造方法に関するも
ので、請求項1〜3の何れかの冷間工具鋼を用いて冷間
工具を製造するに際し、該冷間工具鋼を工具形状に加工
した後、CVD装置を用いて化学蒸着により加熱状態で
工具表面に硬質膜を形成するとともに同じCVD装置を
用いて焼入れを実施することを特徴とする。
【0014】請求項5のものは、請求項4において、真
空アーク溶解若しくはエレクトロスラグ溶解により再溶
解を行って作製したインゴットを使用することを特徴と
する。
【0015】
【作用及び発明の効果】冷間工具鋼における熱処理歪み
は、焼入れの際の冷却速度をゆっくりとした方が小さく
抑えられることが一般的に言われている。これは冷却速
度が速いと部分的に温度が不均一となり、即ち不均一に
冷却されることとなって、これが変形の要因になると考
えられている。但し冷却速度を遅くすればするほど、通
常、組織が良好にマルテンサイト化せず、従って金型と
して必要な硬さが得られなくなってしまう。
【0016】そこで本発明では、金型として必要な硬さ
を確保しつつ熱処理歪みを可能な限リ、望ましくは最大
寸法差で0.05%以下に抑え得るような冷却速度の研
究評価を行ったところ、合金成分を所定範囲に成分調整
して焼入れ性を高め、パーライトノーズを250minよ
りも短時間側、つまりその上限を250minとし、そし
て冷却速度を2〜50℃/minとすることで、組織を良
好にマルテンサイト化して必要な硬さHRC55以上を
実現し、また併せて熱処理歪みを0.05%以下に抑え
得る知見を得た。本発明はこのような知見の下になされ
たものである。
【0017】本発明では、パーライトノーズを120mi
nよりも長時間側としておくことが望ましい(請求項
3)。その理由は以下の点にある。即ち、パーライトノ
ーズがこれよりも短時間側にあると、熱処理歪みを小さ
く抑えるべく焼入れ時に2〜50℃/minのゆっくりと
した速度で冷却を行うと、組織が良好にマルテンサイト
変態せずにパーライト変態を起してしまう。このような
ゆっくりとした速度で冷却を行ってもなお金型として必
要なHRC55以上の硬さを得られ易くするためには、
パーライトノーズを200minよりも長時間側としてお
くことがより望ましい。
【0018】一方パーライトノーズを250min超の長
時間側にすると、冷却については均一にこれを行い得る
ものの、焼入れ前の調質化処理として球状化焼鈍しを行
っても、組織を十分に調質化できず、材料に不均等な偏
析が残ってしまう。これにより熱処理後に歪みが大きく
発生した状態となって、同じく本発明の目的を達成でき
なくなってしまう。
【0019】尚、本発明において冷却速度を2〜50℃
/minと規定しているのは、このようなゆっくりとした
速度で冷却を行うことにより、熱処理歪みを目標とする
0.05%以下に抑え得ることによるものであり、これ
よりも速い速度、具体的には50℃/minよりも速い速
度で冷却を行うと熱処理歪みを目標である0.05%以
下に抑え得なくなってしまう。但し冷却速度を2℃/mi
nよりも更に遅くすると、冷却の際にパーライト変態を
引き起し、十分な硬さを確保できなくなってしまう。
【0020】本発明によれば、金型として必要な硬さH
RC55以上を確保しつつ、熱処理歪みを0.05%以
下となすことが可能であり、而して熱処理歪みをこのよ
うな小さい値に抑制し得ることで、熱処理後における歪
み取りのための精加工を省くことが可能となる。即ち精
加工を省略しつつ、近年要求されるような高い寸法精度
で金型を製造できるようになる。従って本発明によれ
ば、金型製造のための期間を短縮化することができ、更
にまた金型製造のための工程を削減して所要コストを低
減することができる。
【0021】尚、本発明においては上記成分に加えて更
にV,W,Ni,Nb,Co,Tiを上記所定範囲内で必要に応じ
含有した組成となしておくことができる(請求項2)。
【0022】請求項4は冷間工具の製造方法に関するも
ので、上記冷間工具鋼を工具形状に加工した後、CVD
装置を用いて化学蒸着により表面に硬質膜を形成し、且
つ同じCVD装置を用いて焼入れを実施するものであ
る。
【0023】前述したように、CVD装置で金型等工具
表面に硬質膜を形成する場合、熱処理後に歪み取りのた
めの仕上加工を行うことができない。表面に形成した硬
質膜が除去されてしまうからである。更にまたCVD装
置では焼入れ温度、即ち1000℃程度の高温度で化学
蒸着による膜形成を行うが、この装置は本来焼入れのた
めの装置ではないために、膜形成後に速い速度で処理
物、即ち工具を冷却することができず、焼入れを同時に
実施することはできない。
【0024】しかるに本発明では、従来の焼入れに比べ
て著しくゆっくりとした速度で冷却を行っても焼入れを
行うことができるため、このようなCVD装置を用いて
化学蒸着による膜形成と焼入れとを連続して同時的に実
施することが可能である。即ち本発明の冷間工具鋼はC
VD装置を用いて膜形成を行う金型の製造に適用して特
に好適なものであり、而して請求項4に従いそのCVD
装置による膜形成と焼入れとを同時に実施することで、
表面に硬質膜を有する工具を少ない工程数で簡単且つ安
価に製造することが可能となる。
【0025】本発明ではまた、工具製造に際して真空ア
ーク溶解若しくはエレクトロスラグ溶解により再溶解を
行って作製したインゴットを使用するのが好適である
(請求項5)。このような再溶解を行ったインゴットの
場合、一次溶解のインゴットに比べて組成がより均一な
ものができ、そのため熱処理したときの歪みを更に効果
的に小さく抑えることができる。
【0026】次に本発明における各化学成分の限定理由
を以下に詳述する。 C:0.4〜1.2% 硬さ,耐摩耗性を確保するのに必要であり、0.4%以下
では金型としての硬さを確保することができず、逆に1.
2%より過剰にすると粗大な一次炭化物が増加し、靭性
が低下する。またCVD(化学蒸着法)処理による表面
被覆では安定して膜が形成されるのに0.4%以上が必要
となる。
【0027】Si:0.1〜1.2% 高温焼戻し硬さを増大させるが、多過ぎると靭性が低下
するためこの範囲とする。
【0028】Mn:0.3〜2.0% 焼入れ性を向上させる元素であるが、多過ぎると残留オ
ーステナイト量が増加するためこの範囲とする。
【0029】Cr:3.0〜10.0% 焼入れ性,焼戻し二次硬化を向上させる。但し過度に添
加すると靭性が低下するためこの範囲とする。
【0030】Mo:0.5〜3.0% 焼入れ性を向上させる元素であるが、過度に添加すると
靭性が低下するためこの範囲とする。
【0031】V:≦3% 結晶粒粗大化を防止し、硬質炭化物の形成により耐摩耗
性を向上させる。但し多過ぎると靭性が低下するためこ
の範囲とする。
【0032】W:≦5% 二次硬化元素として高温焼戻し硬さを向上させるが、多
過ぎると晶出炭化物により靭性が低下するためこの範囲
とする。
【0033】Ni:≦3% 基地に固溶し、焼入れ性を向上させるが、過度に添加す
ると残留オーステナイト量が増加するためこの範囲とす
る。
【0034】Nb:≦3% 硬質炭化物を形成し、結晶粒の粗大化を防止するが、多
過ぎると粗大炭化物を形成し靭性を低下させるためこの
範囲とする。
【0035】Co:≦3% マルテンサイト地を強化するが、多過ぎると焼入れ性が
低下するためこの範囲とする。
【0036】Ti:≦2% 結晶粒の粗大化を防止するが、添加し過ぎると難固溶の
一次炭化物が増大し、靭性が低下するためこの範囲とす
る。
【0037】
【実施例】次に本発明の実施例を以下に詳述する。 <実施例1> (i)表1に示す成分組成の発明鋼と比較鋼(SKD1
1)とを溶解(大気アーク溶解),鋳造した。尚パーラ
イトノーズは発明鋼:218min(620℃),比較
鋼:50min(700℃)であった。 (ii)鋳片から丸棒へ鍛造した。この丸棒の調質化処理
として球状化焼鈍し(860℃−15℃/h徐冷)を実
施した。 (iii)丸棒から、φ100×45mmの円盤状の金型
を作製した。このときの直径寸法のばらつきは最大値で
0.004mmであり、十分な真円であることを確認し
た。 (iv)金型は真空炉で熱処理を実施し、1030℃×2
時間保持後、表2に示す冷却速度で冷却(ガス冷却)し
た。冷却終了後寸法測定を行い、直径寸法のばらつきを
評価した(図1)。同時に金型表面の硬さを調査した
(表2)。ここでばらつきは最大寸法差で評価すること
とし、変形低減の目標は、この値が0.05%以下であ
るものとする。 最大寸法差(%)=(最大直径値−最小直径値)/平均
直径値
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】この結果に見られるように、比較鋼の場合
にはパーライトノーズが本発明の下限である120min
よりも短時間側の50minであるために、焼入れ時の冷
却速度を10℃/min以下のゆっくりとした速度とした
とき、金型として必要な硬さHRC55以上が得られ
ず、またHRC55以上の硬さの得られる冷却速度10
℃/min以上では、変形が目標の0.05%よりも大き
くなってしまう。しかるに本発明鋼の場合、2〜50℃
/minの冷却速度の下で金型として必要なHRC55以
上の硬さが得られ、また歪み(変形)を目標とする0.
05%以下となすことができる。
【0041】<実施例2> (i)表3に示す成分組成の発明鋼と比較鋼とを実施例
1と同様に溶解(大気アーク溶解),鋳造した。尚パー
ライトノーズは発明鋼:220min(615℃),比較
鋼:350min(610℃)であった。 (ii)鋳片からφ150×1800mmの丸棒へ鍛造し
た。この丸棒への調質化処理として球状化焼鈍しを実施
した。ここで球状化焼鈍しは860℃×7時間保持後、
15℃/hの冷却速度で600℃まで冷却した。 (iii)丸棒より、φ150×10mmの試験片を切り
出し、円形面内の中心から50mm,100mmの同心
円上の位置について、20°刻みで試験片の硬さをロッ
クウェルのCスケールで測定した(図2,図3)。 (iv)丸棒よりφ130×75mmの金型を作製し、こ
の金型を真空炉により1030℃×2時間保持後、同一
冷却速度(5.4℃/min)で冷却(ガス冷却)した。 (v)冷却終了後の金型寸法を測定し、実施例1と同様
に最大寸法差で直径寸法のばらつきを評価した(図4,
図5)。
【0042】
【表3】
【0043】以上の結果に見られるように、パーライト
ノーズが本発明の上限である250minよりも長時間側
の350minである比較鋼の場合、球状化焼鈍しをした
状態で断面の円形面内の各部で硬さが大きくばらついて
いる。この硬さのばらつきは合金成分の分布の不均等、
特にCの分布の不均等に起因するものであり、組織が断
面の各部で均等となっていないことを意味している。
【0044】そしてこの結果、焼入れの際の冷却速度を
5.4℃/minと本発明で規定するゆっくりとした速度
で冷却しているにも拘わらず、比較鋼の場合、図5の結
果から明らかなように熱処理した後の状態で歪み即ち変
形が大きくなっている。
【0045】熱処理の際の変形は、オーステナイトから
マルテンサイト変態する際の変態膨張によって起り、こ
のときの膨張の程度は以下の式で表される。 (オーステナイト→マルテンサイト:ΔL/L=0.0155−0.0018×(%C))・・・式
【0046】この式に見られるように変態の際の膨張は
Cによって左右され、而してそのCが不均等に偏在してい
ることによって、上記比較鋼の場合、焼入れ性が良好で
あるにも拘わらず、即ちパーライトノーズが長時間側に
あるにも拘わらず、熱処理によって大きな変形を生じて
しまうのである。これに対して本発明鋼の場合、球状焼
鈍し状態での硬さの分布が均一であり、従ってまた図4
に示しているようにその後の焼入れによる歪みの発生、
即ち変形の程度も0.05%以下に小さく抑えられてい
る。
【0047】<実施例3> (i)表4に示す成分組成の発明鋼と比較鋼とを溶解
(発明鋼9以外は実施例1と同じ)し、鋳造した。 (ii)両鋼ともにφ200×1000mmの丸棒へ鍛造
した。 (iii)丸棒は球状化焼鈍しを実施した(870℃×5
時間保持後、15℃/h徐冷) (iv)丸棒より、CCT調査用試験片(各鋼種ともφ7
×10mmで同一),変形調査用試験片(サイズは表5
参照)を作製した。 (v)これら試験片を用いてパーライトノーズ,焼入れ
後の硬さ,変形等を調べた。 その結果が表5に各試験条件(冷却はガス冷却)ととも
に示してある。
【0048】
【表4】
【0049】
【表5】
【0050】この結果から、本発明鋼にあっては何れも
HRC55以上、熱処理による変形が目標値である0.
05%以下が得られており、従って本発明例によれば、
熱処理後において仕上加工を必要とせず、少ない工程数
で短期間に且つ安価に、金型を求める高い寸法精度で製
造できることが分る。
【0051】<実施例4> (i)表6に示す成分組成の発明鋼と比較鋼(SKD1
1)とを実施例1と同様に溶解(大気アーク溶解)し、
鋳造した。 (ii)両鋼ともにφ250×1500mmの丸棒へ鍛造
し、鍛造後球状化焼鈍しを実施した(870℃×5時間
保持後、15℃/h徐冷)。 (iii)丸棒より、リング形金型試験片(φ220×φ
100×80mm)を各3個ずつ作製した。 (iv)熱処理前に、何れの試験片も寸法測定を実施し、
外径,内径ともに真円であることを確認した。 (v)両材料から作製した試験片に対してCVD処理
(兼・焼入れ)を実施した。CVD処理条件は図6に示
す通りであり、TiC,TiCN,TiNから成る3層の硬質膜を
試験片全面に約7μmの厚さで被覆した。膜形成後は同
じCVD装置を用いて約4℃/minの冷却速度で室温ま
で冷却(ガス冷却)した。この後、通常行う焼入れ処理
は実施しなかった。 (vi)CVD処理後、焼戻し(図6参照)を実施した。 (vii)焼戻し後の試験片の変形評価と硬さを測定した
結果を表7に示す。変形評価は実施例1と同様に寸法の
ばらつきで評価することとし、変形(%)=最大寸法差
が0.05%以下であることが必要である。また同様に
金型として必要な硬さHRC55以上が同時に要求され
る。
【0052】
【表6】
【0053】
【表7】
【0054】以上の結果から分るように、パーライトノ
ーズが120minよりも長時間側である180minの本発
明鋼の場合、CVD処理して表面に硬質膜を形成した
後、同じCVD装置を用いてそのまま連続して冷却によ
る焼入れ処理を行った場合であっても、金型として必要
なHRC55以上が得られ、また変形の程度も目標であ
る0.05%以下に抑えることができる。即ち、CVD
装置を用いて膜形成処理するのと実質的に同時に焼入れ
処理を完了して、所望の硬質膜を有する金型を得ること
ができる。
【0055】以上本発明の実施例を詳述したがこれらは
あくまで一例示であり、本発明はその主旨を逸脱しない
範囲において種々変更を加えた態様で実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例において得られた冷却速度と
最大寸法差との関係を表す図である。
【図2】本発明の実施例において得られた硬さ分布を表
す図である。
【図3】比較例において得られた硬さ分布を表す図であ
る。
【図4】本発明の実施例において得られた歪み分布を表
す図である。
【図5】図3と同じ比較例において得られた歪み分布を
表す図である。
【図6】本発明における実施例において行ったCVD処
理及び焼戻しの条件を表す図である。
【図7】熱処理による変形のパターンの一例を示す図で
ある。
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C21D 6/00 101 C21D 6/00 101K C22B 9/04 C22B 9/04 9/18 9/20 9/20 C22C 38/38 C22C 38/38 38/58 38/58 C22B 9/18

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%で、 C :0.4〜1.2% Si:0.1〜1.2% Mn:0.3〜2.0% Cr:3.0〜10.0% Mo:0.5〜3.0% 残部実質的にFeの組成を有し、且つパーライトノーズが
    250minより短時間側であり且つガス冷却による焼入
    れ時の冷却速度2〜50℃/minで、硬さHRC55以
    上となる組成に成分調整して成ることを特徴とする熱処
    理定歪み冷間工具鋼。
  2. 【請求項2】 請求項1において、更に重量%で、 V :≦3% W :≦5% Ni:≦3% Nb:≦3% Co:≦3% Ti:≦2% の1種又は2種以上を含有していることを特徴とする熱
    処理定歪み冷間工具鋼。
  3. 【請求項3】 請求項1,2の何れかにおいて、前記パ
    ーライトノーズが120minよりも長時間側であること
    を特徴とする熱処理定歪み冷間工具鋼。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3の何れかの冷間工具鋼を用
    いて冷間工具を製造するに際し、該冷間工具鋼を工具形
    状に加工した後、CVD装置を用いて化学蒸着により加
    熱状態で工具表面に硬質膜を形成するとともに同じCV
    D装置を用いて焼入れを実施することを特徴とする冷間
    工具の製造方法。
  5. 【請求項5】 請求項4において、真空アーク溶解若し
    くはエレクトロスラグ溶解により再溶解を行って作製し
    たインゴットを使用することを特徴とする冷間工具の製
    造方法。
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