JP2002161430A - 水溶性ポリビニルアルコール系繊維の製造方法 - Google Patents

水溶性ポリビニルアルコール系繊維の製造方法

Info

Publication number
JP2002161430A
JP2002161430A JP2000362008A JP2000362008A JP2002161430A JP 2002161430 A JP2002161430 A JP 2002161430A JP 2000362008 A JP2000362008 A JP 2000362008A JP 2000362008 A JP2000362008 A JP 2000362008A JP 2002161430 A JP2002161430 A JP 2002161430A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
water
fiber
temperature
spinning
shrinkage
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP2000362008A
Other languages
English (en)
Inventor
Yuji Ogino
祐二 荻野
Takashi Mizushiro
俊 水城
Junya Ide
潤也 井出
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kuraray Co Ltd
Original Assignee
Kuraray Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kuraray Co Ltd filed Critical Kuraray Co Ltd
Priority to JP2000362008A priority Critical patent/JP2002161430A/ja
Publication of JP2002161430A publication Critical patent/JP2002161430A/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Artificial Filaments (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 寸法安定性に優れ、かつ水溶解性に優れた水
溶性ポリビニルアルコール(PVA)系繊維の効率的な
製造方法を提供する。 【解決手段】 水中溶解温度X℃(ただし40≦X≦8
5)、水中最大収縮率20%以下、引張強度4cN/d
tex以上の水溶性ポリビニルアルコール系繊維を製造
するにあたって、ケン化度Aモル%、粘度平均重合度8
00〜2000のビニルアルコール系ポリマーを有機溶
媒に溶解して紡糸原液を調製し、これを該ポリマーに対
して固化能を有する固化浴に湿式紡糸又は乾湿式紡糸
し、次いで紡糸原液を構成する有機溶媒を抽出して乾燥
した後、延伸倍率1.1〜5倍、延伸温度B℃の乾熱延
伸を行い、さらに収縮率5%以下の乾熱収縮処理を施
す。 (90+0.1・X)≦A≦(90+0.1・X+10
0/X) A≦99.9 (2.4・X+10)≦B≦(2.9・X+10) B≦240

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、寸法安定性に優
れ、かつ水溶解性に優れた水溶性ポリビニルアルコール
(PVA)系繊維の効率的な製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、水溶性PVA系繊維が様々な分野
に広く使用されているが、該繊維は水に溶解する際の収
縮率が大きい問題があった。水溶解時の収縮率が大きい
場合、たとえば刺繍基布用に用いた場合に形態安定性が
不十分になる問題があり、また水溶性繊維と難溶解性の
繊維を併用して繊維集合体を製造し、次いで水溶性繊維
を溶解除去することにより嵩高で風合に優れた繊維構造
体を得る方法が採用されているが、水溶性繊維を除去す
る際に繊維が収縮して繊維構造体の形態が損われやすい
問題があった。以上のことから、溶解時の収縮率の小さ
いPVA系繊維を得る方法が検討されている。たとえば
特開平7−90714号公報では、PVAを有機溶媒に
溶解して得られた紡糸原液を固化浴に紡糸して湿延伸を
施し、さらに紡糸原液構成溶媒を抽出して乾燥後、80
〜250℃で3〜40%の乾熱収縮処理を施すものであ
る。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、該方法
において水溶解時の収縮を抑制するためには高倍率の乾
熱収縮を施す必要があり、この場合、極めて低速で収縮
処理を施す必要があるために生産性が著しく低下する問
題があった。またかかる収縮処理において繊維間膠着な
どが生じやすく、高品位の繊維が得られにくい問題があ
った。乾熱収縮率を小さくすれば生産性などは高まる
が、溶解時の寸法安定性が不十分となる。本発明の目的
は、水溶解時の収縮率が小さく高強力・高品位の水溶性
PVA系繊維を生産性を低下させることなく低コストで
効率的に製造する方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、 (1) 水中溶解温度X℃(ただし40≦X≦85)、
水中最大収縮率20%以下、引張強度4cN/dtex
以上の水溶性ポリビニルアルコール系繊維を製造するに
あたって、ケン化度Aモル%、粘度平均重合度800〜
2000のビニルアルコール系ポリマーを有機溶媒に溶
解して紡糸原液を調製し、これを該ポリマーに対して固
化能を有する固化浴に湿式紡糸又は乾湿式紡糸し、次い
で紡糸原液を構成する有機溶媒を抽出して乾燥した後、
延伸倍率1.1〜5倍、延伸温度B℃の乾熱延伸を行
い、さらに収縮率5%以下の乾熱収縮処理を施すことを
特徴とする水溶性ポリビニルアルコール系繊維の製造方
法に関する。ただし、A及びBは以下の関係式を満足す
るものである。 (90+0.1・X)≦A≦(90+0.1・X+10
0/X) A≦99.9 (2.4・X+10)≦B≦(2.9・X+10) B≦240
【0005】
【発明の実施の形態】本発明は、乾熱収縮率を小さくす
ることにより生産効率を高めるとともに、特定のビニル
アルコール系ポリマーを用い、かつ繊維製造工程におけ
る特定の乾熱延伸条件を採用することにより、繊維を構
成するポリマーの配向と結晶化をうまく制御して、膨潤
・収縮する前に水溶解する溶解時の寸法安定性、水溶解
性及び機械的性能に優れたPVA系繊維を効率的に製造
するものである。以下に本発明のPVA系繊維の製造方
法について詳細に説明する。
【0006】まず本発明においては、ケン化度Aが式
(90+0.1・X)≦A≦(90+0.1・X+10
0/X)、A≦99.9をともに充足するビニルアルコ
ール系ポリマーを用いる必要がある。なおXはPVA系
繊維の水中溶解温度(℃)である。繊維を構成するビニ
ルアルコール系ポリマーのケン化度は、PVA系水溶性
繊維の水溶解性を決定する重要なパラメータであり、効
率的に所望の水中溶解温度及び水溶解時の収縮率の小さ
い水溶性繊維を得るためには、繊維の水中溶解温度に対
して特定のケン化度を有するビニルアルコール系ポリマ
ーを用いる必要がある。上記範囲以外のケン化度を有す
るビニルアルコール系ポリマーを用いても、製造条件に
よっては所望の水中溶解温度を有する水溶性繊維を製造
することができるが、この場合、乾燥工程や乾熱延伸工
程で繊維性能に好ましくない条件を採用する必要が生じ
るため、生産効率が著しく低下したり、また繊維間膠着
が生じたり水溶解時の寸法安定性や機械的性能が低下す
るなどの問題が生じ易くなる。よって、上記範囲のケン
化度を有するビニルアルコール系ポリマーを用いること
が重要であり、かかる特定のビニルアルコール系ポリマ
ーを用いることにより、高性能の水溶性PVA系繊維を
効率的に製造することが可能となる。ケン化度は、上記
関係式を充足するとともに95〜99モル%であるのが
より好ましい。
【0007】なお、本発明においては40≦X≦85、
好ましくは40≦X≦60とする必要がある。水溶性繊
維の水中溶解温度が高すぎると、水溶性繊維を溶脱する
ための液体の温度を高める必要が生じて効率的でなく、
しかも水溶性繊維以外の繊維(繊維B)を併用して繊維
集合体を製造し、該繊維集合体から水溶性繊維を溶解除
去して嵩高性に優れた繊維構造体を得る場合、繊維Bに
毛羽立ちやピリングなど外観品位や風合が損われてしま
う。しかしながら、水溶性PVA系繊維の水中溶解温度
が低すぎると、該水溶性繊維及び該水溶性繊維を含む繊
維集合体の保管・管理が困難となり、水溶性PVA系繊
維がべたつくなどの問題が生じやすくなる。なお、本発
明にいう水中溶解温度(T℃)とは、試長10cmの繊
維に2.2mg/dtexの荷重を吊り下げ、0℃の水
に浸漬し、水を2℃/分の昇温速度で昇温したときに、
荷重が落下し、繊維が溶断する温度をいう。
【0008】ビニルアルコール系ポリマーの粘度平均重
合度は、水中溶解温度、水溶解時の寸法安定性、機械的
性能、紡糸安定性の点からは800〜2000とする必
要があり、好ましくは1000以上、さらに好ましくは
1300以上とする。該ポリマーの重合度が繊維の水中
溶解温度などに与える影響はケン化度に比して遥かに小
さいが、重合度が大きくなるほど水中溶解温度、強度は
大きくなり、水溶解時の寸法安定性が劣化する傾向があ
る。よって、本発明の範囲内で適宜使用するポリマーの
重合度を設定すればよい。なお、本発明においては汎用
で低コストのビニルアルコール系ポリマーを用いても高
性能の水溶性PVA系繊維を製造することができる。
【0009】またかかるビニルアルコール系ポリマー
は、本発明の主旨を損なわない範囲で他の単量体単位を
含有しても差し支えない。このようなコモノマーとして
例えば、アクリル酸及びその塩とアクリル酸メチルなど
のアクリル酸エステル、メタクリル酸およびその塩、メ
タクリル酸メチル等のメタクリル酸エステル類、アクリ
ルアミド、N−メチルアクリルアミド等のアクリルアミ
ド誘導体、メタクリルアミド、 N−メチロールメタク
リルアミド等のメタクリルアミド誘導体、N−ビニルピ
ロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセト
アミド等のN−ビニルアミド類、ポリアルキレンオキシ
ドを側鎖に有するアリルエーテル類、メチルビニルエー
テル等のビニルエーテル類、アクリロニトリル等のニト
リル類、塩化ビニル等のハロゲン化ビニル、マレイン酸
およびその塩またはそのエステル等がある。これらビニ
ルアルコール単位以外の変性ユニットは、水溶性繊維を
溶脱した廃液の生分解性の観点から、通常10モル%以
下が好ましい。変性ユニットの導入法は共重合による方
法でも、後反応による導入方法でもよい。
【0010】また本発明のPVA系繊維は、ビニルアル
コール系ポリマーのみから構成されている必要はなく、
場合によっては他の成分とのブレンド繊維、複合紡糸繊
維、海島構造繊維などであってもかまわない。しかしな
がら、本発明の効果を効率的に得る点からは、PVA系
繊維の60質量%以上、特に80〜100質量%がビニ
ルアルコール系ポリマーであるのが好ましい。
【0011】次いで該ポリマーを用いて紡糸原液を調製
する。紡糸原液構成溶媒を水とした場合に比して水中溶
解温度を低く、かつ溶解時最大収縮率を小さくでき、ま
た機械的性能が高くなることから、紡糸原液構成溶媒を
有機溶媒とする必要がある。紡糸原液を構成する有機溶
媒としては、例えばジメチルスルフォキサイド(以下D
MSOと略記)、ジメチルアセトアミド、ジメチルホル
ムアミド、N−メチルピロリドンなどの極性溶媒やグリ
セリン、エチレングリコールなどの多価アルコール類、
およびこれらとロダン塩、塩化リチウム、塩化カルシウ
ム、塩化亜鉛などの膨潤性金属塩の混合物、更にはこれ
ら溶媒同士、あるいはこれら溶媒と水との混合物などが
例示される。とりわけDMSOが低温溶解性、低毒性、
低腐食性などの点で最も好ましい。
【0012】エステルユニットを多く有する低DSのP
VAを用いる場合、紡糸原液のアルカリ性または酸性が
強いと溶解脱泡放置中にケン化反応が起こり、水中溶解
温度が100℃を越える温度まで上がる可能性があるの
で、苛性ソーダなどの強アルカリ性物質や硫酸などの強
酸性物質を限度を越えて添加することは避けねばならな
いが、DMSO液中や酢酸ソーダの添加などによる弱ア
ルカリ性下や同じく弱酸性下ではケン化反応は起こらな
い。したがって、原液が弱アルカリ性〜弱酸性の範囲内
に維持されるならば、アルカリ性物質や酸性物質を添加
しても構わない。またカルボン酸やスルホン酸などのイ
オン性基を有するポリマーを用いる場合には、水素イオ
ンと中和するための苛性ソーダを添加することにより紡
糸原液の酸度を調整してもよい。紡糸原液中のポリマー
濃度は、組成、重合度、溶媒によって異なるが、8〜4
0質量%の範囲が一般的である。紡糸原液構成溶媒が有
機溶媒の場合、溶解は窒素置換後減圧下で撹拌しながら
行うのが、酸化、分解、架橋反応等の防止及び発泡抑制
の点で好ましい。紡糸原液の吐出時の液温としては50
〜150℃の範囲で、原液がゲル化したり分解・着色し
ない範囲とすることが好ましい。
【0013】かかる紡糸原液を湿式紡糸又は乾湿式紡糸
により紡糸すればよい。該紡糸方法を採用することによ
り水溶性繊維を効率的に製造できる。PVAに対して固
化能を有する固化液に吐出すればよいが、特に多ホール
から紡糸原液を吐出する場合には、吐出時の繊維同士の
膠着を防ぐ点から乾湿式紡糸方法よりも湿式紡糸方法の
方が好ましい。なお、湿式紡糸方法とは、紡糸口金から
直接に固化浴に紡糸原液を吐出する方法のことであり、
一方乾湿式紡糸方法とは、紡糸口金から一旦、空気や不
活性ガス中に紡糸原液を吐出し、それから固化浴に導入
する方法のことである。なお、本発明でいう固化とは、
流動性のある紡糸原液が流動性のない固体に変化するこ
とをいい、原液組成が変化せずに固化するゲル化と原液
組成が変化して固化する凝固の両方を包含する。
【0014】紡糸原液構成溶媒が有機溶媒である場合、
たとえばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタ
ノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケ
トン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、酢酸メ
チル、酢酸エチルなどの脂肪酸エステル類、ベンゼン、
トルエンなどの芳香族類やこれらの2種以上の混合物を
固化液として吐出すればよい。繊維内部まで十分に固化
させるために、固化溶媒に紡糸原液構成溶媒を混合した
ものを用いるのが好ましく、固化溶媒/原液溶媒の混合
重量比95/5〜40/60、特に90/10〜50/
50、さらに85/15〜55/45であると最も好ま
しい。また固化浴に原液溶媒を混合することにより、固
化能を調整すると共に原液溶媒と固化溶媒の分離回収コ
ストの低下をはかることができる。固化浴の温度に限定
はないが、紡糸原液構成溶媒が有機溶媒の場合、通常−
15〜30℃の間で行う。均一固化および省エネルギー
の点からは、固化浴温度を−5〜25℃、特に0〜20
℃、さらに2〜18℃とするのが好ましい。固化浴の温
度がこの温度範囲より高くても低くても、得られる繊維
の引張り強度が低下する場合が多い。紡糸原液が高温に
加熱されている場合には、固化浴温度を低く保つために
は、固化浴を冷却するのが好ましい。
【0015】次いで固化浴から離浴後の繊維を湿延伸す
る。繊維の機械的性能、膠着防止の点からは2〜5倍、
特に2〜4倍の湿延伸を施すのが好ましく、糸篠の膠着
抑制のため、毛羽の出ない範囲で湿延伸倍率を大きくす
ることが好ましい。湿延伸倍率を大きくするためには、
抽出工程中において2段以上の多段に分けて湿延伸を行
うことが有効である。
【0016】なお紡糸原液構成溶媒が有機溶媒の場合、
固化溶媒を主体とする抽出浴に接触させて糸篠から原液
溶媒を抽出除去するのが好ましい。また湿延伸と抽出を
同工程で行ってもかまわない。この抽出処理により、糸
篠中に含まれている紡糸原液溶媒の量を糸篠質量の1%
以下、特に0.1%以下にするのが好ましい。接触させ
る時間としては5秒以上、特に15秒以上が好ましい。
抽出速度を高め、抽出を向上させるためには、抽出浴中
で糸篠をばらけさせることが好ましい。また乾燥に先立
って、PVAに対して固化能の大きい溶剤たとえばアセ
トン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンな
どのケトン類に置換したり、鉱物油系、酸化ポリエチレ
ン系、シリコン系、フッ素系などの疎水性油剤を溶液状
またはエマルジョン状で付着させたり、乾燥時の収縮応
力を緩和させるために収縮させることも膠着防止に有効
である。
【0017】次いで糸篠を乾燥する。乾燥温度は180
℃以下、特に160℃以下、特に120〜150℃とす
るのが好ましい。繊維が必要以上に結晶化せず、かつ膠
着が生じにくい温度領域で繊維を乾燥するのが好まし
い。繊維の水溶解性及び溶解時の寸法安定性を保持する
点からは実質的に定長で乾燥を行うのが好ましい。
【0018】さらに繊維の機械的性能などを高めるため
に乾熱延伸を行う。このとき、繊維の水溶性を損うこと
なく、かつ水溶解時の寸法安定性を高めるために特定の
乾熱延伸条件を採用する必要がある。前述のように、高
倍率の乾熱収縮処理を施せば水溶解時の寸法安定性に優
れた繊維が得られるが、この場合、生産効率が著しく低
下するとともに、繊維間が膠着しやすいなどの問題が生
じる。本発明は、水溶性、溶解時の寸法安定性および機
械的性能に優れた水溶性繊維を、高倍率の乾熱収縮処理
を行うことなく製造するものである。
【0019】まず本発明においては、乾熱延伸倍率を
1.1〜5倍、好ましくは1.2〜3倍とする。乾熱延
伸倍率が小さすぎると繊維の機械的性能が十分に向上せ
ず、また繊維の配向が不十分となって繊維間膠着が生じ
やすくなる。しかしながら、逆に乾熱延伸倍率が高すぎ
ると水溶解時の寸法安定性が不十分になるとともに、繊
維に毛羽などが生じて繊維の品位が劣化したり、断糸が
生じて生産効率が低下する。ここで特定の乾熱延伸温度
を採用することが重要である。乾熱延伸を行うためには
繊維に熱を付加する必要が生じるが、必要以上に加熱す
ると繊維を構成するポリマーの結晶性が高くなって繊維
の水中溶解温度が高くなりすぎ、また結晶化が不十分で
あると繊維の機械的性能が不十分であるのみでなく、溶
解時の繊維の寸法安定性が低下する。以上のことから、
乾熱延伸工程における延伸温度は、繊維の水中溶解性、
水溶解時の寸法安定性、機械的性能などを決定する上で
極めて重要なパラメータであり、上記性能を充足する水
溶性繊維を得るためには特定の条件を採用する必要があ
る。特に水中溶解温度の低い繊維を得ようとすれば繊維
の結晶性を最低限に抑制する必要があり、また熱による
溶解性及び収縮挙動の影響を受けやすくなることから所
望の繊維を効率的に得ることはより困難となる。しかし
ながら、本発明によれば所望の繊維を効率的に得ること
が可能となる。
【0020】具体的には以下の関係式を充足するように
乾熱延伸を行う必要がある。なお下記式におけるBは乾
熱延伸工程における乾熱延伸温度(℃)であり、Xは繊
維の水中溶解温度(℃)である。 (2.4・X+10)≦B≦(2.9・X+10) B≦240 繊維の水中溶解温度に応じて、前述のように特定のケン
化度を有するビニルアルコール系ポリマーを用いるとと
もに、上記乾熱延伸温度を採用することにより所望の繊
維を効率的に得ることができる。乾熱延伸温度が上記範
囲よりも高すぎても低すぎても水溶解時の収縮率が大き
くなり、また繊維の水溶性や機械的性能が不十分となっ
たり、繊維間膠着なども生じやすくなる。乾熱延伸温度
は上記関係式を充足するとともに120〜230℃であ
るのがより好ましい。乾熱延伸は空気浴で行うのが好ま
しく、延伸時間は20〜60秒間程度とするのが好まし
い。
【0021】次いで収縮率5%以下の乾熱収縮処理を施
すことにより、水中最大収縮率をより小さくすればよ
い。収縮率がそれほど大きくなければ生産効率を実質的
に低減させることなく効率的に水溶性繊維を製造でき
る。乾熱収縮率は0.1〜4%とするのがより好まし
い。乾熱収縮処理温度は80〜240℃程度とするのが
好ましく、乾熱延伸温度Bと同程度の温度とするのが好
ましく、特に(B+5)℃以下、(B―30)℃以上で
行うのが好ましい。また乾熱収縮工程は熱風炉で行うの
が好ましく、20〜60秒間程度で行うのが好ましい。
【0022】該方法によれば高性能の水溶性PVA系繊
維を効率的に製造できるが、必要に応じてさらに他の処
理を施して繊維を製造してもよく、また上記の製造工程
に他の処理工程などを導入してもかまわない。本発明に
よれば、水溶解時の収縮率(水中最大収縮率)の小さい
水溶性PVA系繊維、具体的には水中最大収縮率20%
以下の繊維を得ることができる。水中最大収縮率の小さ
い繊維は溶解する際の寸法変化が抑制される。水中最大
収縮率が大きい場合、溶解時にゲル状物が形成されて完
全溶解しにくくなるが、本発明により得られる繊維は収
縮時にゲル化するのが抑制されるために優れた溶解性が
奏される。そのため、完全溶解させるために長時間の処
理や極めて高温の水により処理を行う必要がなく、速や
かに水溶性PVA系繊維を溶解除去することができる。
なお、本発明にいう水中最大収縮率(Sr)とは、上記
水中溶解温度(T)を測定する際に、繊維の各水温での
収縮率を同時に測定し、最も大きく収縮した温度での収
縮率をいう。なお本発明においては、製造されるPVA
系繊維の水中溶解温度と、用いるビニルアルコール系ポ
リマーのケン化度、乾熱延伸条件が上記範囲となるよう
に条件を設定する必要があるが、予めPVA系繊維の目
的とする水中溶解温度を設定し、該温度に基づいてポリ
マーのケン化度や乾熱延伸条件を設定することにより、
所望の繊維を効率的に製造できる。
【0023】本発明によれば、引張強度4cN/dte
x以上、特に5cN/dtex以上の水溶性PVA系繊
維が得られる。水溶性繊維は通常の繊維に比して結晶化
が抑制されているため機械的性能が低下する傾向がある
が、本発明によれば、水溶性に優れているにもかかわら
ず機械的性能に優れた繊維を得ることができる。機械的
性能が高い繊維は、紡績工程や布帛化工程などで断糸し
にくく、また形態安定性も向上する。強度が低いと高速
生産性が劣り、また幅広い用途への適用ができなくな
る。本発明により得られた繊維はあらゆる形態に加工で
き、またカットファイバー、紡績糸、布帛(不織布、織
編物など)のあらゆる繊維構造体に加工できる。もちろ
ん、他の繊維と併用して繊維構造体とすることも可能で
あり、さらにかかる繊維構造体から水溶性PVA系繊維
を除去することにより、嵩高で風合に優れた繊維製品を
得ることも可能である。また本発明の繊維はあらゆる用
途に適用可能であり、たとえば衣料用、産業資材用、医
療用、生活資材用などのあらゆる分野に適用できる。
【0024】
【実施例】以下に本発明を実施例によりさらに詳細に説
明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものでは
ない。なおPVAの諸性能については特に記載のない限
りはJIS K6726に従った。
【0025】[PVAの重合度,ケン化度 モル%]JI
S K6726に準じて測定した。 [水中溶解温度 ℃、溶解時最大収縮率 %]試長10
mの繊維束に2.2mg/detxの荷重をかけ、0℃
の水中に吊し、水温を2℃/分の速度で昇温し、繊維の
収縮率を測定し、繊維が溶解し、荷重が落下した時点の
温度を水中溶解温度とした。また水中溶解温度(T)を
測定する際に、繊維の各水温での収縮率を同時に測定
し、最も大きく収縮した温度での収縮率=(水浸漬前の
繊維長―収縮後の繊維長)/(水浸漬前の繊維長)×1
00を溶解時最大収縮率とした。 [繊維の強度 (cN/dtex)]JIS L101
5に準じて引張試験を行なって求めた。
【0026】[実施例1]重合度1700、ケン化度9
6.0モル%のPVAをDMSOに溶解し、孔数100
00ホール、孔径0.08mmφの紡糸口金を通して、
5℃のDMSO/メタノール=30/70の固化浴中に
冷却ゲル紡糸し、10℃以下のメタノールでDMSOを
抽出するとともに2.5倍の湿延伸を行った後、140
℃の熱風乾燥機で定長乾燥を行った。次いで全延伸倍率
が5倍となるよう140℃の熱風中で25秒間かけて2
倍の乾熱延伸をし、引き続き120℃の熱風炉で30秒
かけて3%の収縮処理を施した。かかる方法によれば工
程安定性、高速製造性を保持しつつ繊維を製造すること
ができ、得られた繊維の水中溶解温度は48℃、水中最
大収縮率19%、単繊維繊度2.0dtex、単繊維強
度4.6cN/dtexであり、機械的強度及び水溶解
性に優れ、しかも水溶解時の収縮率が小さくゲル化しに
くいものであり優れた溶解性を奏するものであった。
【0027】[実施例2]紡糸原糸を160℃の空気雰
囲気からなる熱風炉で20秒かけて3倍の乾熱延伸を行
い、引続き100℃の熱風炉で25秒かけて3%の乾熱
収縮処理を行った以外は実施例1と同様に繊維を製造し
た。かかる方法によれば工程安定性、高速製造性を保持
しつつ繊維を製造することができ、得られた繊維の水中
溶解温度は65℃、水中最大収縮率12%、単繊維繊度
2.0dtex、単繊維強度4.6cN/dtexであ
り、機械的強度及び水溶解性に優れ、しかも水溶解時の
収縮率が小さくゲル化しにくいものであり優れた溶解性
を奏するものであった。
【0028】[実施例3]重合度1700、ケン化度9
8.5モル%のPVAをDMSOに溶解し、孔数100
00ホール、孔径0.08mmφの紡糸口金を通して、
5℃のDMSO/メタノール=30/70の固化浴中に
冷却ゲル紡糸し、10℃以下のメタノールでDMSOを
抽出するとともに3.5倍の湿延伸を行った後、140
℃の熱風乾燥機で定長乾燥を行った。次いで220℃の
熱風中で22秒間かけて2.3倍の乾熱延伸をし、引き
続き200℃の熱風炉で20秒かけて1%の収縮処理を
施した。かかる方法によれば工程安定性、高速製造性を
保持しつつ繊維を製造することができ、得られた繊維の
水中溶解温度は78℃、水中最大収縮率1%、単繊維繊
度2.0dtex、単繊維強度4.6cN/dtexで
あり、機械的強度及び水溶解性に優れ、しかも水溶解時
の収縮率が小さくゲル化しにくいものであり優れた溶解
性を奏するものであった。
【0029】[比較例1]紡糸原糸を200℃の空気雰
囲気からなる熱風炉で23秒かけて2倍の乾熱延伸を行
い、引続き200℃の熱風炉で30秒かけて3%の乾熱
収縮処理を行った以外は実施例1と同様に繊維を製造し
た。得られた繊維の水中溶解温度は54℃、単繊維繊度
2.0dtex、単繊維強度4.6cN/dtexであ
り、機械的性能及び水溶性に優れた繊維が得られたが、
繊維の水中溶解温度に比して乾熱延伸温度が高すぎたた
めに水中最大収縮率62%と水溶解時の寸法安定性の低
いものとなった。
【0030】[比較例2]紡糸原糸を160℃の空気雰
囲気からなる熱風炉で25秒かけて2倍の乾熱延伸を行
い、引続き100℃の熱風炉で30秒かけて3%の乾熱
収縮処理を行った以外は実施例3と同様に繊維を製造し
た。得られた繊維の水中溶解温度は65℃、水中最大収
縮率60%、単繊維繊度2.0dtex、単繊維強度
4.6cN/dtexであり、水中溶解温度に比してポ
リマーのケン化度が高く、しかも乾熱延伸温度が低すぎ
るために水溶解時の収縮率の大きい繊維となった。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4L035 BB03 BB04 BB66 BB72 BB76 BB89 BB91 EE04 EE08 EE20 HH10

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水中溶解温度X℃(ただし40≦X≦8
    5)、水中最大収縮率20%以下、引張強度4cN/d
    tex以上の水溶性ポリビニルアルコール系繊維を製造
    するにあたって、ケン化度Aモル%、粘度平均重合度8
    00〜2000のビニルアルコール系ポリマーを有機溶
    媒に溶解して紡糸原液を調製し、これを該ポリマーに対
    して固化能を有する固化浴に湿式紡糸又は乾湿式紡糸
    し、次いで紡糸原液を構成する有機溶媒を抽出して乾燥
    した後、延伸倍率1.1〜5倍、延伸温度B℃の乾熱延
    伸を行い、さらに収縮率5%以下の乾熱収縮処理を施す
    ことを特徴とする水溶性ポリビニルアルコール系繊維の
    製造方法。 (90+0.1・X)≦A≦(90+0.1・X+10
    0/X) A≦99.9 (2.4・X+10)≦B≦(2.9・X+10) B≦240
JP2000362008A 2000-11-29 2000-11-29 水溶性ポリビニルアルコール系繊維の製造方法 Withdrawn JP2002161430A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000362008A JP2002161430A (ja) 2000-11-29 2000-11-29 水溶性ポリビニルアルコール系繊維の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000362008A JP2002161430A (ja) 2000-11-29 2000-11-29 水溶性ポリビニルアルコール系繊維の製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2002161430A true JP2002161430A (ja) 2002-06-04

Family

ID=18833352

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2000362008A Withdrawn JP2002161430A (ja) 2000-11-29 2000-11-29 水溶性ポリビニルアルコール系繊維の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2002161430A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7985473B2 (en) * 2007-06-07 2011-07-26 Kuraray Co., Ltd. Resinous-substance-impregnated planar paper and adhesive tape using the same
KR101938487B1 (ko) 2017-07-31 2019-01-14 서울대학교산학협력단 전기적 변수 인가 습식방사법

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7985473B2 (en) * 2007-06-07 2011-07-26 Kuraray Co., Ltd. Resinous-substance-impregnated planar paper and adhesive tape using the same
KR101938487B1 (ko) 2017-07-31 2019-01-14 서울대학교산학협력단 전기적 변수 인가 습식방사법

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP7307873B2 (ja) 高性能な繊維および該繊維の製造に用いられる紡糸原液
JPH10110329A (ja) ポリベンザゾール繊維およびその製造方法
JP2002161430A (ja) 水溶性ポリビニルアルコール系繊維の製造方法
JP3737969B2 (ja) 炭素繊維前駆体用アクリロニトリル系繊維束およびその製造方法
JPH10168753A (ja) ポリビニルアルコール系繊維及びその製造方法
JP3364099B2 (ja) 分割性アクリル系合成繊維及びその製造方法
JP4480858B2 (ja) 軽量複合アクリル繊維及びその製造方法
JPS6018332B2 (ja) アクリル系中空繊維の製造法
JP2010235794A (ja) ポリアクリロニトリル系重合体溶液と炭素繊維前駆体繊維と炭素繊維の製造方法
JP2008190063A (ja) ソフトで風合いの良好な紡績原糸の製造方法及びそれから得られる繊維製品
JPH10280228A (ja) 紡糸原液の製造法および繊維の製造法
JP2001271222A (ja) ポリビニルアルコール系水溶性繊維
JP6217342B2 (ja) 炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維の製造方法
JP2869137B2 (ja) 耐熱水性にすぐれたポリビニルアルコール系繊維の製造方法
JP2001192930A (ja) ポリビニルアルコール系バインダー繊維及びその製造方法
JPH10226917A (ja) 低温水溶性太径繊維及びその製造法
WO2022138241A1 (ja) ポリビニルアルコール系繊維、繊維構造体およびその製造方法
JP2010116651A (ja) 海島複合繊維、および該繊維を用いたポリアクリロニトリル系ポリマー繊維の製造方法
JP2865736B2 (ja) 高強度ポリビニルアルコール繊維の製造法
JP2024084198A (ja) アクリロニトリル系繊維の製造方法
JPS6190708A (ja) アクリル系中空繊維の製造方法
JP2000248424A (ja) 低温水溶性ポリビニルアルコール系繊維の製造法
JPS6233328B2 (ja)
JPH08158147A (ja) セルロース繊維の製造方法
JP2013043904A (ja) アクリロニトリル系重合体およびその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20071009

A761 Written withdrawal of application

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A761

Effective date: 20090223