JP2002160466A - 平版印刷版用支持体 - Google Patents

平版印刷版用支持体

Info

Publication number
JP2002160466A
JP2002160466A JP2001090960A JP2001090960A JP2002160466A JP 2002160466 A JP2002160466 A JP 2002160466A JP 2001090960 A JP2001090960 A JP 2001090960A JP 2001090960 A JP2001090960 A JP 2001090960A JP 2002160466 A JP2002160466 A JP 2002160466A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
aluminum
printing plate
lithographic printing
treatment
aluminum alloy
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2001090960A
Other languages
English (en)
Inventor
Hirokazu Sawada
宏和 澤田
Akio Uesugi
彰男 上杉
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Fujifilm Holdings Corp
Original Assignee
Fuji Photo Film Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Fuji Photo Film Co Ltd filed Critical Fuji Photo Film Co Ltd
Priority to JP2001090960A priority Critical patent/JP2002160466A/ja
Priority to EP01121300A priority patent/EP1188580B1/en
Priority to AT01121300T priority patent/ATE404383T1/de
Priority to DE60135283T priority patent/DE60135283D1/de
Priority to CN01142135.5A priority patent/CN1216748C/zh
Priority to US09/951,406 priority patent/US6764587B2/en
Publication of JP2002160466A publication Critical patent/JP2002160466A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Printing Plates And Materials Therefor (AREA)
  • Photosensitive Polymer And Photoresist Processing (AREA)
  • Materials For Photolithography (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 高価な中間層を設ける必要がなく、また、均
一な粗面化を施す必要もなく、極めて安価な原材料を使
い、かつ、感光層との密着性および耐刷性の優れた平版
印刷版用支持体を提供する。 【解決手段】 アルミニウム含有率が95〜99.4w
t%であるアルミニウム合金板に、少なくとも、粗面化
処理および陽極酸化処理が施されてなることを特徴とす
る平版印刷版用支持体である。かかる平版印刷版用支持
体は、少なくとも、SiおよびMnを合計で、0.5w
t%以上含有することが好ましく、Cuは0.05wt
%以上含有することが好ましく、粗面化された表面の一
部に、直径0.1μm以上の金属間化合物が、5000
〜35000個/mm2存在することが好ましい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、平版印刷版用支持
体に関し、特に、原材料コストを大幅に低減でき、結晶
粒が微細で面質が優れ、かつ、耐刷性に優れた平版印刷
版用支持体に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、平版印刷版用支持体は、アルミニ
ウム合金板の片面あるいは両面に、粗面化処理を施した
後、耐磨耗性を向上させるため、陽極酸化処理を施して
製造される。この平版印刷版用支持体に感光層を設けて
平版印刷版原版が製造される。また、製版時の真空密着
時間を短くするために、感光層の表面にマット層という
微小な凹凸が設けられることもある。
【0003】このようにして製造された平版印刷版原版
は、画像露光、現像、水洗等の製版処理を施して、平版
印刷版とされる。画像露光の方法には、画像を焼き付け
たリスフィルムを密着させて光を当てることで、画像部
と非画像部との違いをつける方法や、レーザを用いる方
法や、画像を投影する方法で直接画像部もしくは非画像
部を書き込むことによって画像部と非画像部との違いを
つける方法、等が用いられる。
【0004】画像露光後の現像処理の際、未溶解の感光
層は、インク受容体として画像部を形成し、感光層が溶
解除去された部分は、その下のアルミニウム合金もしく
は陽極酸化皮膜が露出し、水受容体として非画像部を形
成する。現像後、必要によっては親水化処理、ガム引
き、バーニング処理等が行われることもある。
【0005】この平版印刷版は、印刷機の円筒状の版胴
に取り付けられて、インキと湿し水とを版胴に供給する
ことで、親油性の画像部にはインキが付着し、親水性の
非画像部には水が付着する。画像部のインキをブランケ
ット胴に転写した上で、ブランケット胴から紙に画像を
印刷する。ここで、画像部と感光層との密着が不十分だ
と、少ない枚数で印刷が終了してしまうという問題が生
じる。画像と感光層との密着性を向上させる方法として
は、アルミニウム合金板と感光層との間に中間層を設け
る方法や、アルミニウム合金板の粗面化を均一に行う方
法等が知られている。
【0006】中間層としては、特開昭60−14949
1号公報に開示されているアミノ酸およびその塩類(N
a塩、K塩等のアルカリ金属塩;アンモニウム塩;塩酸
塩;蓚酸塩;酢酸塩;リン酸塩;等)、特開昭60−2
32998号公報に開示されている水酸基を有するアミ
ン類およびその塩類(塩酸塩;蓚酸塩;リン酸塩;
等)、特開昭63−165183号公報に開示されてい
るアミノ基およびホスホン酸基を有する化合物またはそ
の塩を、下塗り用の中間層として用いることができる。
また、特開平4−282637号公報に開示されている
ホスホン酸基を有する化合物を、中間層として用いるこ
ともできる。さらに、アルカリ金属珪酸処理を行った後
に、特願平9−264309号(特開平11−1096
37号公報)に記載されている酸基とオニウム基とを含
有する高分子化合物を中間層として用いることが知られ
ている。しかし、粗面と感光層との間に、密着のための
中間層を設ける方法では、当然ながら、中間層を設ける
ための製造コストがかさむ問題がある。
【0007】一方、粗面化処理を均一に行うためには、
アルミニウム合金中に含まれていて、粗面化に大きい影
響を及ぼす合金成分を限定する方法が知られている。
【0008】合金成分を限定する方法としては多くの提
案が開示されている。例えば、JIS 1050材に関
しては、本発明者らによって、特開昭59−15386
1号公報、特開昭61−51395号公報、特開昭62
−146694号公報、特開昭60−215725号公
報、特開昭60−215726号公報、特開昭60−2
15727号公報、特開昭60−215728号公報、
特開昭61−272357号公報、特開昭58−117
59号公報、特開昭58−42493号公報、特開昭5
8−221254号公報、特開昭62−148295号
公報、特開平4−254545号公報、特開平4−16
5041号公報、特公平3−68939号公報、特開平
3−234594号公報、特公平1−47545号公
報、特開昭62−140894号公報に技術が開示され
ている。また、特公平1−35910号公報、特公昭5
5−28874号公報等も知られている。JIS 10
70材に関しては、本発明者らによって、特開平7−8
1264号公報、特開平7−305133号公報、特開
平8−49034号公報、特開平8−73974号公
報、特開平8−108659号公報、および特開平8−
92679号公報に技術が開示されている。
【0009】Al−Mg系合金に関しては、本発明者ら
によって、特公昭62−5080号公報、特公昭63−
60823号公報、特公平3−61753号公報、特開
昭60−203496号公報、特開昭60−20349
7号公報、特公平3−11635号公報、特開昭61−
274993号公報、特開昭62−23794号公報、
特開昭63−47347号公報、特開昭63−4734
8号公報、特開昭63−47349号公報、特開昭64
−61293号公報、特開昭63−135294号公
報、特開昭63−87288号公報、特公平4−733
92号公報、特公平7−100844号公報、特開昭6
2−149856号公報、特公平4−73394号公
報、特開昭62−181191号公報、特公平5−76
530号公報、特開昭63−30294号公報、特公平
6−37116号公報に技術が開示されている。また、
特開平2−215599号公報、特開昭61−2017
47号公報等も知られている。
【0010】Al−Mn系合金に関しては、本発明者ら
によって、特開昭60−230951号公報、特開平1
−306288号公報、特開平2−293189号公報
に技術が開示されている。また、特公昭54−4228
4号公報、特公平4−19290号公報、特公平4−1
9291号公報、特公平4−19292号公報、特開昭
61−35995号公報、特開昭64−51992号公
報、US5009722、US5028276、特開平
4−226394号公報等も知られている。
【0011】Al−Mn−Mg系合金に関しては、本発
明者らによって、特開昭62−86143号公報、特開
平3−222796号公報に技術が開示されている。ま
た、特公昭63−60824号公報、特開昭60−63
346号公報、特開昭60−63347号公報、EP2
23737、特開平1−283350号公報、US48
18300、BR1222777等も知られている。
【0012】Al−Zr系合金に関して、本発明者らに
よって、特公昭63−15978号公報、特開昭61−
51395号公報に技術が開示されている。また、特開
昭63−143234号公報、特開昭63−14323
5号公報等も知られている。Al−Mg−Si系合金に
関しては、BR1421710等も知られている。
【0013】しかし、これらは何れもアルミニウム材質
に制約を加えるものであって、材料選択の自由度を低下
させ、高価な新地金と高価な所定の添加合金元素を必要
とするデメリットがあった。
【0014】これらの各種合金は、通常、アルミニウム
を主とする原材料を溶解し、それに所定の金属を加えて
所定の合金成分のアルミニウム合金溶湯を作り、引き続
きそのアルミニウム合金溶湯に清浄化処理を施し、鋳造
して製造される。清浄化処理には、溶湯中の水素等の不
要なガスを除去するために、フラックス処理;Arガ
ス、Clガス等を使った脱ガス処理;セラミックチュー
ブフィルタ、セラミックフォームフィルタ等のいわゆる
リジッドメディアフィルターや、アルミナフレーク、ア
ルミナボール等を濾材とするフィルタや、グラスクロス
フィルタ、等を使ったフィルタリング;脱ガス処理とフ
ィルタリングとを組み合わせた処理;等が行われる。こ
れらの清浄化処理は、溶湯中の非金属介在物、酸化物等
の異物による欠陥、溶湯に溶け込んだガスによる欠陥を
防ぐために実施されることが望ましい。
【0015】以上のように、清浄化処理が施された溶湯
を使って、鋳造が行われる。鋳造方法に関しては、DC
鋳造法に代表される固定鋳型を用いる方法と、連続鋳造
法に代表される駆動鋳型を用いる方法とがある。
【0016】DC鋳造法による場合、冷却速度は、1〜
300℃/秒の範囲で設定される。この過程で、先述の
合金成分元素の一部はアルミニウム中に固溶するが、ア
ルミニウムに固溶しきれない成分は、種々の金属間化合
物を形成して鋳塊中に残留する。DC鋳造法では、板厚
300〜800mmの鋳塊が製造でき、その鋳塊は、常
法に従い面削が行われ、表層から1〜30mm、好まし
くは、1〜10mm切削される。その後、必要に応じ
て、均熱化処理が行われる。均熱化処理を行うことで、
金属間化合物のうち、不安定なものはより安定な化合物
に変化したり、また一部はアルミニウム中に固溶したり
する。ここで残った金属間化合物はその後、熱間圧延、
冷間圧延を行う過程で、その径が小さくなったり分散し
たりはするが、その種類はほとんど変化しない。つま
り、平版印刷版用支持体であるアルミニウム合金板に残
ることになる。
【0017】冷間圧延の前後、またはその途中において
焼鈍と呼ばれる熱処理を施すこともある。この場合、焼
鈍の熱処理温度によってはアルミニウムに固溶していた
一部の元素が金属間化合物または、元素単体の析出物と
して析出することがある。この場合もその析出物はアル
ミニウム合金板に残ることになる。
【0018】冷間圧延によって所定の厚さ(0.1〜
0.5mm)に仕上げられたアルミニウム合金板は、平
面性を改善するために、ローラレベラ、テンションレベ
ラ等の矯正装置によって、平面性を改善してもよい。
【0019】鋳造方法としては、連続鋳造方法を用いる
こともできる。この方法では、ハンター法や3C法に代
表される双ロール連続鋳造法、ハズレー法等のベルトキ
ャスターやアルスイス法等のブロックキャスターに代表
される双ベルト連続鋳造方法が使用できる。例えば双ロ
ールを用いた場合、冷却速度は、100〜1000℃/
秒の範囲に設定される。一方、双ベルトを用いた場合、
冷却速度は、10〜500℃/秒の範囲に設定される。
いずれの方法も、鋳造後は冷間圧延または、熱間圧延と
冷間圧延とを組み合わせた圧延処理により、所定の厚さ
(0.1〜0.5mm)とされる。また、このとき適宜
熱処理を行うこともできる。冷間圧延によって所定の厚
さに仕上げられたアルミニウム合金板は、平面性を改善
するために、ローラレベラ、テンションレベラ等の矯正
装置によって、平面性を改善してもよい。これら連続鋳
造法の特徴は、DC鋳造法で必要な面削工程を省けるた
め、ランニングコストがDC鋳造法に比べて安くなるメ
リットを持つ。
【0020】ここで原材料としてのアルミニウムは、所
定の合金成分にするため、通常、新地金と呼ばれる純度
99.7%以上のアルミニウム塊が使用されたり、アル
ミニウム製造工場内で発生した合金成分のわかっている
アルミニウム屑が使用される。必要に応じて、所定の元
素を含む母合金といわれるアルミニウム合金が添加され
たり、所定の金属元素からなる金属塊が添加されて、所
望の合金成分を有するアルミニウム合金材料が製造され
る。
【0021】しかし、新地金や所定の添加元素成分を含
むアルミニウム合金材料は、それ自体のコストが高いと
いうデメリットを抱えている。またアルミニウム製造工
場内で発生した合金成分のわかっているアルミニウム屑
を使用する場合は、原材料の得率を向上する点でのメリ
ットはあるが、決して低コストなものではない。
【0022】このような原材料コストが高いという問題
に対し、本発明者らは、特開平7−81260号公報に
て、純度99.7%以上のアルミニウム塊のみを使用
し、所定の元素を含む母合金や金属塊の添加を不要とす
る方法を提案した。また、本発明者らは、特開平7−2
05534号公報において、使用済みの平版印刷版や製
造途中で不良となった平版印刷版を、アルミニウム原材
料として再利用する方法を提案した。
【0023】しかしこれらの方法を使っても、アルミニ
ウム純度99.7%以上のアルミニウム塊自体がそれほ
ど安価なわけではなく、使用済みの平版印刷版は、安定
した原材料として確保することが難しいため、実際上の
大きな効果は得られなかった。
【0024】以上の問題を解決するためには、原材料と
して、合金成分を制御していない材料、即ち、各種の不
純物を含むスクラップ材、あるいは、新地金に比較して
市場価格が安く、多くの不純物元素を含む2次地金ある
いは再生地金と呼ばれる地金を使用することが考えられ
る。しかしこれらは、合金成分の制御がほとんど行われ
ていないので、平版印刷版のように、高品質な表面処理
外観および印刷性能が要求される原材料にはまったく使
用することができなかった。特に、均一な粗面化ができ
ないため、感光層との密着性が不十分で、耐刷性能が劣
る問題があった。
【0025】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的
は、高価な中間層を設ける必要がなく、また、均一な粗
面化を施す必要もなく、極めて安価な原材料を使い、か
つ、感光層との密着性および耐刷性の優れた平版印刷版
用支持体を提供することである。
【0026】
【課題を解決するための手段】上記課題に鑑み鋭意研究
の結果、本発明者らは、アルミニウム含有率が95〜9
9.4wt%であって、所定の不純物を含むアルミニウ
ム合金板に、少なくとも、粗面化処理、陽極酸化処理を
施すと、感光層との密着性および耐刷性の優れた平版印
刷版用支持体を低コストで製造できることを見出し、本
発明に想到した。すなわち、本発明は、 <1> アルミニウム含有率が95〜99.4wt%で
あるアルミニウム合金板に、少なくとも、粗面化処理お
よび陽極酸化処理が施されてなることを特徴とする平版
印刷版用支持体である。
【0027】<2> 少なくとも、SiおよびMnを合
計で、0.5wt%以上含有することを特徴とする<1
>に記載の平版印刷版用支持体である。
【0028】<3> 粗面化された表面の一部に、直径
0.1μm以上の金属間化合物が、5000〜3500
0個/mm2存在することを特徴とする<1>または<
2>に記載の平版印刷版用支持体である。
【0029】<4> Cuを0.05wt%以上含有す
ることを特徴とする<1>〜<3>のいずれかに記載の
平版印刷版用支持体である。
【0030】<5> 前記アルミニウム合金板の原材料
がアルミニウム再生地金およびスクラップ材の少なくと
も1種を1wt%含有することを特徴とする<1>〜<
4>のいずれかに記載の平版印刷版用支持体である。
【0031】
【発明の実施の形態】本発明の平版印刷版用支持体は、
アルミニウム含有率が95〜99.4wt%であるアル
ミニウム合金板に、少なくとも、粗面化処理および陽極
酸化処理が施されてなる。前記アルミニウム合金板の原
料として、Al再生地金、スクラップ材の少なくとも1
種を1wt%以上含むことが望ましい。スクラップ材と
しては、使用済み飲料缶(UBC)等が望ましい。かか
る再生地金やスクラップ材を使用することで、さらなる
原材料コストの低減を図ることができる。前記粗面化処
理は、少なくとも、アルカリエッチング処理工程と、電
解粗面化処理工程と、デスマット処理工程と、からな
り、該デスマット処理工程は、少なくとも、アルカリ処
理工程と、酸による酸処理工程と、からなるのが好まし
い。以下、本発明の平版印刷版用支持体について、その
製造方法等に言及しながら詳細に説明する。
【0032】<<1.平版印刷版用支持体の製造方法>
>本発明の平版印刷版用支持体は、例えば、アルミニウ
ム合金からなるウエブ状のアルミニウム合金板(以下、
これを「アルミニウム帯状体」と称する。)を準備し、
これに少なくとも、粗面化処理、陽極酸化処理を施すこ
とにより製造される。具体的には、前記粗面化処理は、
少なくとも、(1)機械的粗面化処理工程およびアルカ
リエッチング処理工程、(2)電解粗面化処理工程、
(3)デスマット処理工程、からなるのが好ましい。前
記粗面化処理後に、(4)陽極酸化処理(陽極酸化処理
工程)が施されて最終的に平版印刷版用支持体が製造さ
れる。上記(1)、(2)の工程における粗面化処理
は、機械的粗面化処理と電解粗面化処理との両方を行っ
てもよく、いずれか一方を行ってもよい。
【0033】実際には、常法でアルミニウム原材料を鋳
造し、適宜圧延や熱処理を行って、厚さ0.1〜0.7
mmのアルミニウム合金板を作り、必要に応じて平面性
矯正を行って作製した平版印刷版用のアルミニウム合金
板をアルミニウム帯状体とし、上記(1)〜(4)の各
処理工程により連続的に処理され、コイル状に巻き取ら
れ、平版印刷版用支持体が製造される。
【0034】ここで、本発明の平版印刷版用支持体の製
造方法に使用できるアルミニウム合金としては、新地金
と呼ばれる純度99.7%以上のアルミニウム塊ではな
く、これまで、使用が困難とされていたスクラップアル
ミニウム材、2次地金、再生地金、等のような純度の低
いアルミニウム塊を挙げることができる。純度の低いア
ルミニウム塊を原材料とすることで、平版印刷版用支持
体を従来の方法より低コストで製造することができる。
【0035】本発明の平版印刷版用支持体の好ましい製
造方法は、アルミニウム含有率(純度)が95〜99.
4wt%であるアルミニウム合金板を使用する。純度が
99.4wt%より高いと不純物の許容量が少なくな
り、コスト削減効果が減少してしまう。95wt%より
低いと不純物を多く含むことで圧延中に割れ等の不具合
が発生してしまう。より好ましいアルミニウムの純度は
95〜99wt%で、更に好ましくは95〜97wt%
である。
【0036】また、前記アルミニウム合金中に、少なく
ともSiおよびMnが合計で、0.5wt%以上含有さ
れているのが好ましく、0.8〜2.0wt%含有され
ているのがより好ましい。SiおよびMnが合計で、
0.5wt%に満たないと、コスト削減効果が発揮され
ないことがある。さらに、Cuは少なくとも0.05w
t%以上、望ましくは、0.1wt%以上含有されてい
るのが好ましい。Cuが0.05wt%に満たないと、
コスト削減効果が減少することに加えて、スクラップ材
に多く含まれるMn起因で電解粗面化が不均一になり、
異常粗大砂目の発生を抑制できないことがある。ここ
で、異常粗大砂目とは、一度生成した1つの電解ピット
が横方向に異常成長することで粗大になった砂目のこと
をいう。
【0037】Siの含有率は0.15〜1.0wt%で
あるのが好ましい。SiはJIS2000系、4000
系、6000系材料のスクラップに多く含まれる元素で
ある。また、新地金においても0.03〜0.1wt%
前後含有される元素で、アルミニウム中に固溶した状
態、または、金属間化合物として存在する。平版印刷版
用支持体の製造過程で加熱されると、固溶していたSi
が単体Siとして析出することがある。Siの含有率が
0.15wt%より少ないと、コスト削減効果が減少し
てしまう。より好ましいSiの含有率は0.3〜1.0
wt%である。
【0038】Mnの含有率は0.1〜1.5wt%であ
るのが好ましい。MnはJIS3000系材料のスクラ
ップに多く含まれる元素である。特にcan body
材に多く含まれるため、スクラップ材に含まれる主要な
不純物金属の1つである。Mnも比較的アルミニウム中
に固溶しやすく、AlFeSiと金属間化合物を形成す
る。Mnの含有率が0.1wt%より少ないと、コスト
削減効果が減少してしまう。より好ましいMnの含有率
は0.5〜1.5wt%、更に好ましくは1.0〜1.
5wt%である。
【0039】Cuの含有率は0.05〜1.0wt%で
あるのが好ましい。CuはJIS2000系、4000
系材料のスクラップに多く含まれる元素であり、比較的
アルミニウムに中に固溶しやすい。Cuが少ないと、M
n起因で生じる電解粗面化の異常を抑制できないことに
加えて、原材料のスクラップを厳密に選別せざるをえな
くなり、スクラップを使用することによるコスト削減効
果が減少することがあるので好ましくない。Cuの含有
率が0.05wt%より少ないと、コスト削減効果が減
少してしまうことがある。より好ましいCuの含有率は
0.08〜1.0wt%であり、特に好ましい含有率は
0.12〜1.0wt%である。
【0040】その他の金属として、アルミニウム合金中
には、Fe、Mg、Zn、Cr、Tiのうち少なくとも
3種以上の金属を含有するのが好ましい。Feの含有率
は0.3〜1.0wt%であるのが好ましい。Feは新
地金においても0.1〜0.2wt%前後含有される元
素で、アルミニウム中に固溶する量は少なく、殆どが金
属間化合物として残存する。1.0wt%より多いと圧
延途中に割れが発生しやすくなり、0.3wt%より少
ないとコスト削減効果が減少するため好ましくない。よ
り好ましいFeの含有率は0.5〜1.0wt%であ
る。
【0041】Mgの含有率は0.1〜1.5wt%であ
るのが好ましい。MgはJIS2000系、3000
系、5000系、7000系材料のスクラップに多く含
まれる元素である。特にcan end材に多く含まれ
るため、スクラップ材に含まれる主要な不純物金属の1
つである。Mgも比較的アルミニウム中に固溶しやす
く、Siと金属間化合物を形成する。Mgの含有率が
0.1wt%より少ないと、コスト削減効果が減少して
しまう。より好ましいMgの含有率は0.5〜1.5w
t%で、さらに好ましくは1.0〜1.5wt%であ
る。
【0042】Znの含有率は0.03〜0.5wt%で
あるのが好ましい。Znは特にJIS7000系のスク
ラップに多く含まれる元素である。比較的アルミニウム
中に固溶しやすい。Znの含有率が0.1wt%より少
ないと、コスト削減効果が減少してしまう。より好まし
いZnの含有率は0.06〜0.5wt%であり、特に
好ましくは、0.1〜0.5wt%である。
【0043】Crの含有率は0.01〜0.1wt%で
あるのが好ましい。CrはJIS5000系、6000
系、7000系のスクラップに少量含まれる不純物金属
である。Crの含有率が0.01wt%より少ないと、
コスト削減効果が減少してしまう。より好ましいCrの
含有率は0.05〜0.1wt%である。
【0044】Tiの含有率は0.03〜0.5wt%で
あるのが好ましい。Tiは通常結晶微細化材として0.
01〜0.04wt%添加される元素である。JIS5
000系、6000系、7000系のスクラップには不
純物金属として比較的多めに含まれる。Tiの含有率が
0.03wt%より少ないと、コスト削減効果が減少し
てしまう。より好ましいTiの含有率は0.05〜0.
3wt%である。
【0045】以下、本発明の平版印刷版用支持体の製造
方法における各処理工程について、順を追って説明す
る。ただし、以下の各処理工程は例示であり、本発明
は、以下の各工程の内容に限定されるものではない。
【0046】<1.機械的粗面化処理工程およびアルカ
リエッチング処理工程>まず、パミストン懸濁液を使用
したブラシグレインでアルミニウム帯状体の機械的粗面
化処理を行う(機械的粗面化処理工程)。その後、アル
ミニウム帯状体は、表面の凹凸形状をなだらかとすると
ともに、表面に残った研磨材粒子を除去するために、ア
ルカリ剤の水溶液でアルカリエッチング処理が施される
(アルカリエッチング処理工程)。アルカリエッチング
処理に使用するアルカリ剤としては、苛性ソーダ、苛性
カリ、メタ珪酸ソーダ、炭酸ソーダ、アルミン酸ソー
ダ、グルコン酸ソーダ等が好ましい。水溶液中のアルカ
リ剤の濃度としては0.01〜30wt%が好ましく、
処理温度としては、生産性を高めるため、60〜80℃
とするのが好ましい。アルミニウム帯状体のエッチング
量としては、0.1〜15g/m2とするのが好まし
い。また処理時間は、エッチング量に対応して2秒〜5
分の範囲とするのが好ましく、生産性向上のためには2
〜10秒とするのがより好ましい。
【0047】なお、前記機械的粗面化処理の工程は、任
意の工程であり、かかる処理を施さずにアルカリエッチ
ング処理後、直接アルミニウム帯状体に電解粗面化処理
を施して、後の処理を行ってもよい。また、アルカリエ
ッチング処理後にアルミニウム帯状体表面に形成される
スマットを除去するため、硝酸によるデスマット処理
(硝酸処理)を行ってもよい。
【0048】<2.電解粗面化処理工程>近年、アルミ
ニウム帯状体から平版印刷版用支持体を製造する製造工
程では、平版印刷版に形成される画像部における感光層
と、アルミニウム帯状体表面との密着性を向上させた
り、また非画像部における保水性を向上させるために、
塩酸や硝酸を主体とする電解液を使用して、アルミニウ
ム帯状体に対する電解粗面化処理が行われることが多
い。この電解粗面化処理は、前述のブラシグレイン等の
機械的粗面化処理で得られたアルミニウム帯状体の表面
に重畳して行うことも、あるいはアルミニウム帯状体の
表面にアルカリ洗浄等の前処理を行った後に直接行うこ
ともできる。
【0049】ここで、本明細書において、「主体とす
る」とは、酸またはアルカリ溶液において、主体となる
酸またはアルカリが、酸性またはアルカリ成分全体に対
して、30重量%以上、好ましくは50重量%以上含ま
れていることをいう。
【0050】アルミニウム帯状体に対する電解粗面化処
理は、塩酸または硝酸を主体とする電解液中で交流電流
を電解電流として、エッチングすることにより行われ
る。交流電解電流の周波数の範囲としては、0.1〜1
00Hzに設定するのが好ましく、10〜60Hzとす
るのがより好ましい。電解液としては、塩酸および硝酸
の何れを主体とする場合も、液濃度を3〜150g/リ
ットルとするのが好ましく、5〜50g/リットルとす
るのがより好ましい。
【0051】電解槽内でのアルミニウムの溶解量として
は50g/リットル以下とするのが好ましく、2〜20
g/リットルとするのがより好ましい。必要に応じて各
種の添加剤を電解液へ添加してもよいが、このような添
加剤はアルミニウム帯状体を大量生産する場合は、電解
液の液濃度制御等を難しくするため、適宜選択する必要
がある。
【0052】また、電流密度は5〜100A/dm2
するのが好ましく、10〜80A/dm2とするのがよ
り好ましい。さらに、電解電流の波形としては、要求さ
れる品質、使用されるアルミニウム帯状体の成分等によ
って適宜選択されるが、特公昭56−19280号公
報、特公昭55−19191号公報に開示されている特
殊交流波形を用いることが好ましい。このような電解電
流の波形や電解液の条件は、アルミニウム帯状体の単位
面積当たりの供給電気量とともに、要求される品質、使
用されるアルミニウム帯状体の成分等に応じて適宜選択
される。
【0053】<3.デスマット処理工程>上記のように
して電解粗面化されたアルミニウム帯状体表面には、ス
マットや金属間化合物が存在する。ここでは、スマット
のみを除去するため、少なくとも、アルカリ溶液を使用
したアルカリ処理(アルカリ処理工程)を行った後、低
温の酸性溶液を使用した、2段階のデスマット処理(デ
スマット処理工程)を行う。
【0054】まず、アルカリ処理として、アルカリ溶液
でアルミニウム帯状体を処理しスマットを溶解する。ア
ルカリ溶液としては、苛性ソーダ等各種のものがある
が、pHが10以上で,液温25〜80℃とされたアル
カリ溶液でアルミニウム帯状体を処理するのが好まし
い。このとき、生産性向上の点からは、アルカリ溶液の
液温を60〜80℃とするのがより好ましい。液温を6
0〜80℃とすることで、アルミニウム帯状体に対する
アルカリ処理を1〜10秒という極めて短い時間で完了
できる。このアルカリ溶液によるアルカリ処理は、浸漬
方式、シャワー法、あるいは、アルカリ溶液をアルミニ
ウム帯状体へ塗布する方法等が採用できる。
【0055】次に、酸性溶液によりアルミニウム帯状体
を酸処理する(酸処理工程)。酸性溶液としては、硫酸
を主体とするものが好ましい。また、処理設備として
は、特願2000−123805号に記載の設備を使用
するのが好ましい。液濃度(酸濃度)としては100〜
200g/リットルとするのが好ましい。酸濃度が10
0g/リットル未満だとスマットの除去効果が小さくな
る。一方、200g/リットルより高いと、金属間化合
物が除去され始めるため、感光層とアルミニウム合金板
との密着性が低下するので好ましくない。より好ましい
酸濃度は120〜190g/リットルである。
【0056】酸性溶液の液温は20〜50℃とするのが
好ましい。20℃未満では、温度制御のための冷却装置
が必要となるので、設備コスト上好ましくない。50℃
より高いと金属間化合物の除去が促進されるので、感光
層とアルミニウム合金板との密着性が低下するため、好
ましくない。酸性溶液による酸処理は、一般的には、浸
漬方式、シャワー法、溶液をアルミニウム帯状体へ塗布
する方法等が採用できる。上記デスマット処理により、
スマットを除去しつつ、平版印刷版用支持体上の直径
(粒径)0.1μm以上の金属間化合物の存在率を50
00〜35000個/mm2とすることができる。
【0057】<4.陽極酸化処理工程>上記のようにア
ルカリ溶液および酸性溶液によりデスマット処理を行っ
たアルミニウム帯状体に対し、陽極酸化処理を施す(陽
極酸化処理工程)。これにより表層部に陽極酸化皮膜が
形成される。形成される陽極酸化皮膜の量は0.1〜1
0g/m2が好ましく、0.3〜5g/m2がより好まし
い。また陽極酸化処理の他の条件は、使用される電解液
(硫酸、リン酸、シュウ酸、クロム酸等)によって設定
を変更する必要があるので一概には言えないが、一般的
には、電解液の濃度(酸濃度)は1〜80wt%、液温
は5〜70℃、電流密度は0.5〜60A/dm2、電
圧は1〜100V、電解時間は1秒〜5分とするのが好
ましい。
【0058】以上の各処理工程を経たアルミニウム帯状
体は、コイル状に巻き取られ、平版印刷版用支持体が製
造される。上記のような平版印刷版用支持体の製造方法
によれば、陽極酸化処理に先立ち、デスマット処理とし
て、所定のアルカリ処理および酸処理を順次行うこと
で、アルミニウム帯状体の表面における有害なスマット
を除去できるとともに、一定量の金属間化合物を残留さ
せ、アルミニウム帯状体の表面を適度に粗面化できるの
で、その後の陽極酸化処理では、陽極酸化皮膜にスマッ
トに起因する欠陥の発生を抑制し、さらに感光層を設け
て平版印刷版用支持体とした場合は、該感光層と平版印
刷版用支持体との密着性を向上させることができる。
【0059】アルミニウム帯状体に形成される陽極酸化
皮膜は、それ自体安定で十分高い親水性を有しているこ
とから、その陽極酸化皮膜表面には、直ちに感光性材料
を塗布して感光層を形成することも可能であり、また必
要に応じて表面処理を施すこともできる。該表面処理と
しては、例えば、アルミニウム帯状体の表面にアルカリ
金属珪酸塩によるシリケート層、あるいは、親水性高分
子化合物等よりなる下塗層を設けること等が挙げられ
る。このとき、下塗層の塗布量としては、1〜150m
g/m2とするのが好ましい。
【0060】このようにして必要に応じて下塗層が設け
られた平版印刷版用支持体表面に感光層を設けて、平版
印刷版原版が製造される。また、感光層の塗布乾燥後に
マット層を塗布することもできる。このようにして得ら
れた平版印刷版原版は、画像露光、現像等の工程を経て
平版印刷版とされ、印刷機にセットされる。
【0061】以上のような製造方法によれば、原材料と
してのアルミニウム原料の合金組成や製造工程を厳密に
管理することなく、アルミニウムスクラップ材等の低純
度アルミニウム原料から平版印刷版用支持体を製造する
ことができる。このような平版印刷版用支持体から、平
版印刷版原版、並びに平版印刷版を製造して使用すれ
ば、印刷時における感光層とアルミニウム合金板との密
着性が優れ、耐刷性能を向上させることができる。
【0062】<<2.平版印刷版用支持体>>本発明の
平版印刷版用支持体は、上述したような製造方法により
製造されるのが好ましく、平版印刷版用支持体の粗面化
された表面の一部には、直径(粒径)0.1μm以上の
金属間化合物が、5000〜35000個/mm2存在
するのが好ましい。当該金属間化合物は、平版印刷版用
支持体と感光層との間で、スパイクのような役割を果た
すので、両者の密着性が向上し、優れた耐刷性が示され
る。
【0063】金属間化合物の存在率が、5000個/m
2未満では、上記のような効果が十分に得られず、3
5000個/mm2より大きいと、陽極酸化皮膜の欠陥
が発生しやすくなるため好ましくない。より好ましい金
属間化合物の存在率は、10000〜30000個/m
2である。また、金属間化合物の直径(粒径)は0.
1μm以上が好ましいが、0.2〜2.0μmがより好
ましい。金属間化合物の直径(粒径)が0.1μm未満
では、平版印刷版用支持体表面に設けられる感光層との
密着性が劣ってしまう場合がある。
【0064】金属間化合物の直径(粒径)と存在率と
は、平版印刷版用支持体の製造条件を適宜変更すること
で、調整することができる。例えば、デスマット処理工
程の酸処理工程における処理温度や硫酸の酸濃度等を低
くして、酸による金属間化合物の除去能を低減させたり
して、所定の範囲内に適宜変更すればよい。
【0065】また、金属間化合物の存在率は、SEM
(走査型電子顕微鏡)等により、粗面化された表面を観
察し、例えば、5ヶ所(n=5)について、60μm×
50μmの範囲で、金属間化合物をカウントし、1mm
2に当たりに換算することで容易に算出することができ
る。
【0066】
【実施例】本発明を以下の実施例により具体的に説明す
るが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0067】(実施例1〜5および比較例1〜4)表1
に示す合金成分を有するアルミニウム合金溶湯から、実
施例1〜5および比較例1〜4の平版印刷版用支持体の
原材料となるアルミニウム合金板を作製した。アルミニ
ウム合金板の製造方法としては、まず、表1に示す組成
になるように調整したアルミニウム合金溶湯に、脱ガス
と濾過とからなる溶湯処理を施し、DC鋳造法で厚さ5
00mmの鋳塊を作製した。鋳塊表面を10mm面削し
た後、該鋳塊を加熱し均熱化処理を行わずに、400℃
で板厚4mmになるまで熱間圧延した後、冷間圧延で板
厚1.5mmとし、中間焼鈍を行って、再度冷間圧延で
0.24mmに仕上げ、平面性を矯正して、実施例1〜
5および比較例1〜4の平版印刷版用支持体の原材料と
なるアルミニウム合金板を作製した。
【0068】
【表1】
【0069】ここで、実施例1〜5におけるアルミニウ
ム合金板は、アルミニウム純度が所定範囲内であり、本
発明に規定する範囲内にある。一方、比較例1における
アルミニウム合金板は、アルミニウム純度が本発明に規
定する範囲外である。比較例2におけるアルミニウム合
金板は、99.7%以上の純度を有するアルミニウム新
地金を溶解し、所定の成分になるように母合金を添加し
て、JIS1050材の平版印刷版として一般的な組成
にしたもので、本発明に規定する範囲外である。比較例
3におけるアルミニウム合金板は、原材料の70%に使
用済みの平版印刷版用支持体を使用し、特開平7−20
5534号公報に記載の実施例3を再現させたものであ
り、アルミニウム純度が本発明に規定する範囲外であ
る。比較例4におけるアルミニウム合金板は、比較例3
とほぼ同じアルミニウム純度であるが、Mnが比較的多
い材料である。
【0070】実施例1〜5および比較例1〜4における
アルミニウム合金板について、原料コストの比較、アル
ミニウム合金板を作製する際の圧延性の評価を行った。
結果を表2に示す。なお、原料コストの比較、圧延性の
評価は、以下のようにして行った。
【0071】(1)原料コストの比較:原料コストは、
主に、アルミニウム地金のコストと、該アルミニウム地
金を板状に加工するための加工コストと、からなる。製
造方法が同じであれば加工コストは同じとなるため、こ
こでは、アルミニウム地金のコストについて比較した。
アルミニウム地金のコストは、アルミニウム地金相当分
のコスト(g当たりの金額)を算出し、比較例2のアル
ミニウム合金板を作製するのに要したコスト(アルミニ
ウム地金相当分のコスト)を100として、実施例1〜
5および比較例1、3のアルミニウム合金板を作製する
のに要したコストを相対値で評価した。
【0072】(2)圧延性の評価 圧延性は、アルミニウム合金板を作製する際に、最終的
に所定の板厚(冷間圧延で厚さ0.24mm)まで問題
なく、圧延を行えるかどうかで評価した。評価指標は以
下の通りである。 ○:問題なし ○△:軽度の割れの発生があるが、圧延可能 ×:割れが発生し圧延不可能
【0073】
【表2】
【0074】比較例3は、特開平7−205534号公
報に記載の実施例3を再現させたものであり、使用済み
平版印刷版を原材料の70%に使用したことで、5%の
原材料コストダウン効果が得られたが、実施例1〜5
は、35〜65%と比較例3よりさらに大きなコストダ
ウン効果が得られた。また、比較例3に用いた使用済み
平版印刷版は、安定して入手することができないという
問題を有する。
【0075】比較例1は、コストダウン効果は大きい
が、アルミニウム純度が本発明に規定する範囲外なの
で、圧延中に割れが発生し、安定してアルミニウム合金
板を作製することができなかった。比較例4はMnを比
較的多く含み、かつCuが本発明の好ましい範囲未満で
ある0.03wt%しか含まれていないアルミニウム合
金板である。
【0076】最終的にアルミニウム合金板を作製するこ
とができた実施例1〜5および比較例2〜4のアルミニ
ウム合金板について、以下のようにして粗面化処理を行
った。
【0077】まず、パミストン懸濁液を使用したブラシ
グレイン(8号ブラシ×3本)により、実施例1〜5お
よび比較例2〜4のアルミニウム合金板について粗面化
処理を行った(機械的粗面化処理工程)。水洗後、75
℃にて25%のNaOH溶液により6g/m2までアル
カリエッチングした(アルカリエッチング処理工程)。
水洗後、40℃にて9g/リットルの硝酸によりデスマ
ット処理を行った後、電解粗面化処理を行った(電解粗
面化処理工程)。電解粗面化処理は、9g/リットルの
硝酸を電解液とし、50℃で電気量を180C/dm2
として行った。
【0078】水洗後、デスマット処理として、シャワー
法により、25wt%のNaOH溶液を使用したアルカ
リ処理(アルカリ処理工程)を行った。使用したNaO
H溶液は、pHが13、液温が75℃であった。また、
アルカリ処理時間は4秒とし、エッチング量は1g/m
2とした。アルカリ処理後、水洗して、シャワー法によ
り、液温30℃、酸濃度170g/リットルの硫酸によ
る酸処理(酸処理工程)を行った(以上、デスマット処
理工程)。なお、酸処理時間4秒とした。
【0079】電解粗面化処理およびデスマット処理後、
目視評価による外観評価を行った。結果を表2に示す。
評価指標は以下の通りである。 ○:ムラなし ○△:ややざらつき状のムラあり △:ざらつき状のムラあり
【0080】また、SEM(走査型電子顕微鏡:日本電
子製のT220Aを使用)を用いて表面に存在する金属
間化合物を観察した。観察は、3000倍のSEM写真
を5視野撮影(60μm×50μm)して、各視野中の
金属間化合物粒子をもとに単位面積(mm2)あたりの
金属間化合物の存在率を算出した。結果を表2に示す。
【0081】デスマット処理後、酸濃度170g/リッ
トル、30℃の硫酸溶液中で直流電解を行う陽極酸化処
理(平均電流密度は15A/dm2とし、形成される陽
極酸化皮膜の量は2.5g/m2)を行い、水洗して、
平版印刷版用支持体を作製した。
【0082】作製した平版印刷版用支持体の片面に、常
法により下塗り処理を行った後、下記の組成を有する感
光液を乾燥後の塗布重量が2.5g/m2になるように
塗布して感光層を設け、感光性平版印刷版原版を作製し
た。
【0083】 感光液組成: ナフトキノン−1,2−ジアジド−5−スルホニルクロライドとピロガロール、 アセトン樹脂とのエステル化合物(米国特許第3,635,709号 明細書 実施例1に記載のもの)・・・0.75g、 クレゾールノボラック樹脂・・・2.00g、 オイルブルー#603(オリエント化学製)・・・0.04g、 エチレンジクロライド・・・16g、 2−メトキシエチルアセテート・・・12g
【0084】また、電解粗面化において、異常粗大砂目
が生成していないかどうかを調べるため、感光層塗布前
の支持体表面を走査型電子顕微鏡(日本電子社製 T−
20)を用い、1000倍、2000倍で観察を行っ
た。結果を表2に示す。なお、評価指標は以下の通りで
ある。 ○:異常粗大砂目が発生しなかったもの △:異常粗大砂目ではないが、やや大きい砂目が発生し
たもの ×:異常粗大砂目が発生したもの
【0085】それぞれの平版印刷版原版を、常法によ
り、画像を露光、現像を行って平版印刷版を作製し、こ
れを印刷機に取り付けて、耐刷性の評価を行った。耐刷
性は、比較例2を100として、実施例および比較例の
それぞれを相対値で評価した。
【0086】表2に示すように、実施例1〜5はいずれ
も従来の一般的なJIS1050材組成の比較例2に対
して、粗面化処理および陽極酸化処理後の耐刷性が向上
していた。これは実施例1〜5では、表層の金属間化合
物が比較例2〜4に比べて多いため、感光層との密着性
が向上し、優れた耐刷性が示されたものと考えられる。
特に、比較例4は異常粗大砂目が発生しているため、感
光層との密着性が低下したものと考えられる。
【0087】以上の実施例では、アルミニウムの鋳造方
法としてDC鋳造法の場合を示したが、本発明は、鋳造
方法には全く限定されず、例えば双ロール式、あるいは
双ベルト式で代表される連続鋳造法を用いることもでき
る。この場合、DC鋳造法に比べて、ランニングコスト
を一層安くできるため、更に大きなコストダウン効果が
得られる。
【0088】
【発明の効果】本発明の平版印刷版用支持体は、感光層
との密着性および耐刷性の優れており、製造段階で、高
価な中間層を設けるが必要なく、また、均一な粗面化を
施す必要もなく、極めて安価な原材料を使って製造され
るためコストの削減を図ることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 2H025 AA12 AA14 AB03 2H096 AA06 CA03 2H114 AA04 AA14 AA23 DA04 DA73 EA01 EA03 GA03 GA05 GA06 GA08 GA09

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アルミニウム含有率が95〜99.4w
    t%であるアルミニウム合金板に、少なくとも、粗面化
    処理および陽極酸化処理が施されてなることを特徴とす
    る平版印刷版用支持体。
  2. 【請求項2】 少なくとも、SiおよびMnを合計で、
    0.5wt%以上含有することを特徴とする請求項1に
    記載の平版印刷版用支持体。
  3. 【請求項3】 粗面化された表面の一部に、直径0.1
    μm以上の金属間化合物が、5000〜35000個/
    mm2存在することを特徴とする請求項1または2に記
    載の平版印刷版用支持体。
  4. 【請求項4】 Cuを0.05wt%以上含有すること
    を特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の平版印刷
    版用支持体。
  5. 【請求項5】 前記アルミニウム合金板の原材料がアル
    ミニウム再生地金およびスクラップ材の少なくとも1種
    を1wt%含有することを特徴とする請求項1〜4のい
    ずれかに記載の平版印刷版用支持体。
JP2001090960A 2000-09-14 2001-03-27 平版印刷版用支持体 Pending JP2002160466A (ja)

Priority Applications (6)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001090960A JP2002160466A (ja) 2000-09-14 2001-03-27 平版印刷版用支持体
EP01121300A EP1188580B1 (en) 2000-09-14 2001-09-05 Aluminum support for planographic printing plate, process for its production, and planographic printing master place
AT01121300T ATE404383T1 (de) 2000-09-14 2001-09-05 Aluminiumträger für flachdruchplatte, verfahren zu seiner herstellung und originalflachdruckplatte
DE60135283T DE60135283D1 (de) 2000-09-14 2001-09-05 Aluminiumträger für Flachdruchplatte, Verfahren zu seiner Herstellung und Originalflachdruckplatte
CN01142135.5A CN1216748C (zh) 2000-09-14 2001-09-13 平版印刷版支撑体及其生产方法、平版印刷模版
US09/951,406 US6764587B2 (en) 2000-09-14 2001-09-14 Process for producing aluminum support for planographic printing plate, aluminum support for planographic printing plate, and planographic printing master plate

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000279766 2000-09-14
JP2000-279766 2000-09-14
JP2001090960A JP2002160466A (ja) 2000-09-14 2001-03-27 平版印刷版用支持体

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2002160466A true JP2002160466A (ja) 2002-06-04

Family

ID=26599984

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2001090960A Pending JP2002160466A (ja) 2000-09-14 2001-03-27 平版印刷版用支持体

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2002160466A (ja)

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2011037005A1 (ja) 2009-09-24 2011-03-31 富士フイルム株式会社 平版印刷版原版
JP2011068014A (ja) * 2009-09-25 2011-04-07 Fujifilm Corp 平版印刷版原版
JP2011068008A (ja) * 2009-09-25 2011-04-07 Fujifilm Corp 平版印刷版原版
JP2011067971A (ja) * 2009-09-24 2011-04-07 Fujifilm Corp 平版印刷版原版
JP2011068006A (ja) * 2009-09-25 2011-04-07 Fujifilm Corp 平版印刷版原版

Cited By (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2011037005A1 (ja) 2009-09-24 2011-03-31 富士フイルム株式会社 平版印刷版原版
JP2011067971A (ja) * 2009-09-24 2011-04-07 Fujifilm Corp 平版印刷版原版
US8883401B2 (en) 2009-09-24 2014-11-11 Fujifilm Corporation Lithographic printing original plate
US9207537B2 (en) 2009-09-24 2015-12-08 Fujifilm Corporation Lithographic printing original plate
JP2011068014A (ja) * 2009-09-25 2011-04-07 Fujifilm Corp 平版印刷版原版
JP2011068008A (ja) * 2009-09-25 2011-04-07 Fujifilm Corp 平版印刷版原版
JP2011068006A (ja) * 2009-09-25 2011-04-07 Fujifilm Corp 平版印刷版原版

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US4939044A (en) Aluminum alloy support for lithographic printing plate
JP4607692B2 (ja) 平版印刷版用支持体の製造方法
EP0581321B1 (en) Method of producing planographic printing plate support
JPH1161364A (ja) 平版印刷版用アルミニウム合金支持体の製造方法および平版印刷版用アルミニウム合金支持体
EP0638435B1 (en) Support for planographic printing plate
JP2002160466A (ja) 平版印刷版用支持体
JP3148057B2 (ja) 平版印刷版用支持体の製造方法
JP3177079B2 (ja) 平版印刷版用支持体の製造方法
JPS6280255A (ja) オフセツト印刷用アルミニウム合金支持体の製造方法
JP2004292862A (ja) 平版印刷版用アルミニウム合金支持体およびその製造方法
JP3650507B2 (ja) 平版印刷版用アルミニウム合金支持体とその製造方法
JP4016310B2 (ja) 平版印刷版用アルミニウム合金支持体および該支持体用素板の製造方法
JP4714576B2 (ja) 平版印刷版用アルミニウム合金板およびその製造方法
JP2000108534A (ja) 平版印刷版用支持体
JPH04254545A (ja) 平版印刷版用アルミニウム合金支持体
JP3582819B2 (ja) Ps版支持体用アルミニウム合金溶湯圧延板の製造方法およびps版支持体用アルミニウム合金溶湯圧延板
JP5116267B2 (ja) 平版印刷版用アルミニウム合金板の製造方法
JP2005105366A (ja) 平版印刷版用支持体の製造方法
JP4359384B2 (ja) 平版印刷版用支持体およびその製造方法
JP2002331767A (ja) 平版印刷版用支持体の製造方法
JP4098462B2 (ja) 平版印刷版用支持体の製造方法
JP2002086942A (ja) 平版印刷版用支持体の製造方法
JP3107191B2 (ja) 平版印刷版用アルミニウム合金支持体の製造方法
JP4064258B2 (ja) 平版印刷版用アルミニウム合金板およびその製造方法
JP2002180289A (ja) 平版印刷版用支持体の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20051226

A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A712

Effective date: 20061227

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20070724

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20070925

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20071204