JP2002095097A - 適応信号処理システム - Google Patents

適応信号処理システム

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JP2002095097A
JP2002095097A JP2000282764A JP2000282764A JP2002095097A JP 2002095097 A JP2002095097 A JP 2002095097A JP 2000282764 A JP2000282764 A JP 2000282764A JP 2000282764 A JP2000282764 A JP 2000282764A JP 2002095097 A JP2002095097 A JP 2002095097A
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transfer function
adaptive
coefficient
value
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JP2000282764A
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Yasuo Aoyanagi
康夫 青柳
Katsuto Miwa
勝人 三輪
Masaharu Shimada
正治 島田
Haruhide Hokari
治英 穂刈
Toshiharu Horiuchi
俊治 堀内
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Oki Electric Industry Co Ltd
Japan Kyastem Co Ltd
Original Assignee
Oki Electric Industry Co Ltd
Japan Kyastem Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 収束特性を向上させ、かつ、構成を簡素化し
たシステムを実現する。 【解決手段】 未知伝達関数13と適応逆フィルタ14
との直列接続回路と、これらの回路に並列に接続された
帯域フィルタ15との入力側に、適応逆フィルタ14と
等しい特性を有する前処理フィルタ12を設ける。ま
た、係数値の初期値を格納する初期値メモリ11を設け
る。動作開始時には、初期値メモリ11から係数値の初
期値を前処理フィルタ12および適応逆フィルタ14に
転送し、適応時には、適応逆フィルタ14の係数値を前
処理フィルタ12の係数値に転送する。帯域フィルタ1
5の出力と適応逆フィルタ14の出力とは減算器16で
減算され、誤差信号として係数更新演算回路17に入力
される。係数更新演算回路17は、この誤差信号と未知
伝達関数13の出力信号とに基づき、適応逆フィルタ1
4の係数値を更新するための係数更新値を演算する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、初期値を適応逆フ
ィルタの係数に与えることによって未知の伝達関数の逆
特性を適応的に高速でかつ安定に求める適応信号処理シ
ステムであり、特に、頭外音像定位受聴において、受聴
者の外耳道伝達特性の逆特性を適応的に求める適応信号
処理で有効なものである。
【0002】
【従来の技術】従来の適応信号処理システムとして、例
えば、B.Widrow,S.D.Stearns著の“Adaptive Signal Pr
ocessing,”Prentice-Hall(ISBN0-13-004029-0)のpp.28
0-295(1985)に記載されているものがあった。図2は、
従来例のブロック図である。図3は、従来例の動作を説
明するための演算説明図である。
【0003】図2のような構成は、入力信号がフィルタ
リングされて係数更新演算回路に入力されるので、Filt
ered-Xとして一般に知られている。また、入力信号は音
声のような有色系の信号であるため、アフィン射影アル
ゴリズムが適用される。この条件のもとでは、複数のサ
ンプル毎に演算を行うブロック処理法を用いれば、収束
が可能であることを、筒井他,“適応逆フィルタ推定と
同定問題との関連に関する検討,”電子情報通信学会技
術研究報告,EA98-91,pp.9-16(1998)で述べている。
【0004】そこで、ブロック射影アルゴリズム(以
下、BOPアルゴリズムと呼ぶ)を、図2の構成に適用
し、従来技術の説明を行う。このアルゴリズムは一般に
LMSアルゴリズムと比べて有色系の入力信号で高速に収
束することが知られており、詳細な説明は辻井重男、
“適応信号処理,”昭晃堂,pp.70-97に記載されてい
る。
【0005】図2において、1は未知伝達関数、2は適
応逆フィルタ、3は帯域フィルタ、4は減算器、5は参
照伝達関数、6は係数更新演算回路である。
【0006】未知伝達関数1の特性を逆同定する適応逆
フィルタ2には、FIRフィルタ構成がよく用いられる。
このFIRフィルタ特性は、外部からの係数hを与える
ことによって、容易に目的の特性を安定な動作で得るこ
とができる。今、入力信号x(n)のMサンプル個をx
(n)とすると、適応逆フィルタ2の出力信号y
(n)の関係は、図3の式(1)のように表される。但
し、Tは行列の転置を示し、x(n)=[x(n),
x(n−1),…,x(n−M+1)]、h(n)=
[h(n),h(n),…,hM-1(n)]であ
る。また、x(n)はベクトルx(n)の要素、h
(n)はベクトルh(n)の要素、iはFIRフィルタ構
成のタップ位置を、Mは適応逆フィルタ2のタップ数、
nは時刻を表す。
【0007】この適応逆フィルタ2の出力信号y(n)
は未知伝達関数1に入力される。未知伝達関数1の出力
信号z(n)は、未知伝達関数1のインパルス応答をc
とすれば、図3の式(2)で表される。但し、y
[y(n),y(n−1),…,y(n−N+
1)]、c=[c,c,…,cN-1として
表される。なお、y(n)は式(2)で表されたy
(n)の現在から過去N個の要素の適応逆フィルタ2の
出力ベクトルである。
【0008】一方、入力信号x(n)を入力とし帯域制
限を行った帯域フィルタ3の出力信号d(n)から未知
伝達関数1の出力信号z(n)を減算器4によって差し
引き、その信号を誤差信号e(n)とする。更に、未知
伝達関数1とほぼ同等の伝達関数特性を有した参照伝達
関数5に入力信号を入力したときの出力信号u(n)の
ハット(∧)を求める。ここで、参照伝達関数5のイン
パルス応答ベクトルをcのハット(∧)とすると、c
のハット(∧)は信号u(n)のハット(∧)を得る
ために用いるもので、未知伝達関数1のインパルス応答
ベクトルcとある程度の相関性を持っている。
【0009】cおよびcのハット(∧)のタップ数
をNとし、適応逆フィルタh(n)のタップ数をM(≧
2N)とし、誤差信号e(n)、cのハット(∧)の
出力信号u(n)のハット(∧)はそれぞれ図3中の式
(3)および式(4)のように表すことができる。ま
た、図2において、適応逆フィルタ推定のためのBOPア
ルゴリズムは、図3中の式(5)および式(6)で与え
られる。
【0010】但し、wは未知伝達関数のインパルス応答
の逆フィルタの最終値のインパルス応答ベクトル
で、μは緩和係数、またはステップゲイン、jはブロッ
ク番号、Lはブロック長でL=N+r−1で与えられ
る。また、rはBOPアルゴリズムにおける次数であり、
推定ベクトルの修正に用いる入力信号ベクトルの数であ
る。このとき、式(6)におけるu(j)(w−h
(j))はr次の誤差信号ベクトルe(j)=(e(j
L−1),e(jL−2),…,e(jL−r))
表される。また、行列(U(j)のハット(∧)で表
す)は、行列U(j)のハット(∧)のMoore-Penrose
型の一般逆行列を表し、行列U(j)のハット(∧)
は、各要素はu(n)のハット(∧)を持つ行列で、図
3中の式(7)のように表される。更に、帯域フィルタ
3におけるwは未知インパルス応答cの逆フィルタで
あり、cとwの直線畳み込みの結果が帯域フィルタ3
の目標インパルス応答bとなるように適応逆フィルタが
修正される。即ち、図3中の式(8)に示すように、c
・w=bまたはw=c -1・bである。また、bの長
さはN+M−1である。このようにして、式(7)と式
(5)より、逐次的にh(n)を求めることができる。
【0011】図4は、他の従来例のブロック図である。
図5は、他の従来例の動作を説明するための演算説明図
である。この例は、高速で安定して収束させるために考
案された方法である。この方法は、E.Bjarnason,“Acti
ve noise cancellation using a modified form of the
filered-X LMS algorithm,”Proc. EUSIPCO'92, Signa
l ProcessingVI, Brussels, Belgium, vol.2, pp.1053-
1056(1992)の資料によるものである。
【0012】図示例は、未知伝達関数1、適応逆フィル
タ2、帯域フィルタ3、減算器4、参照伝達関数5a,
5b、係数更新演算回路6、前処理フィルタ7、加算器
8、減算器9からなる。この例では、未知伝達関数1と
参照伝達関数5aとが並列接続され、それぞれの出力が
減算器4および加算器8に入力されている。また、これ
ら未知伝達関数1および参照伝達関数5aの入力には前
処理フィルタ7が設けられている。更に、入力信号は参
照伝達関数5bを介して適応逆フィルタ2に与えられる
ようになっている。また、減算器4は帯域フィルタ3の
出力d(n)から未知伝達関数1の出力z(n)を減算
する減算器、加算器8は、減算器4の出力e(n)と参
照伝達関数5aの出力z(n)のハット(∧)を加算す
る加算器、減算器9は、加算器8の出力から適応逆フィ
ルタ2の出力y(n)のハット(∧)を減算し、その出
力γ(n)を係数更新演算回路6に与える減算器であ
る。
【0013】未知伝達関数1のインパルス応答cと並列
に接続された参照伝達関数5aのインパルス応答cのハ
ット(∧)の出力信号z(n)のハット(∧)、適応逆
フィルタ2の出力信号y(n)のハット(∧)、誤差信
号γ(n)は、それぞれ図5中の式(9)、(10)、
(11)で表される。更に、適応逆フィルタ2の係数値
を前処理フィルタ7の係数値にコピーするので、z
(n)は、式(2)と同様に、図5中の式(12)のよ
うに変形できる。更に、Δz(n)=(z(n)のハッ
ト(∧))−z(n)を定義すると、図5中の式(1
3)を得る。以上より誤差信号γ(n)は、図5中の式
(14)のように表され、結局、d(n)+Δz(n)
をy(n)のハット(∧)で同定する問題となる。この
時、図4に示すように前処理フィルタ7の係数値は適応
逆フィルタ2の係数をコピーすることで、係数更新が行
われる。ここで、BOPアルゴリズムは上述した式(5)
と式(6)と同様に、図5中の式(15)で定義され
る。但し、式中のuのハット(∧)とγ(n)はそれぞ
れ図5中の式(16)と式(17)とで与えられる。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
ような2種類の従来例では以下のような問題点を有して
いたため、技術的に実用に供するものは得られなかっ
た。 (1)ブロック処理では、収束速度が遅く、また、ブロッ
ク長毎のメモリ処理が新たに必要となる。 (2)逆フィルタを適応的に求め、収束速度を向上させる
アルゴリズムが報告されているが、図4の改良ブロック
構成法では図からも明らかなように、機能ブロック数が
多く複雑である。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明は、前述の課題を
解決するため次の構成を採用する。 〈構成1〉未知伝達関数と直列に接続され、未知伝達関
数の逆特性を構成し、かつ、与えられる係数更新値に基
づき係数値を求め、係数値によってそのフィルタ特性が
可変に構成された適応逆フィルタと、未知伝達関数と適
応逆フィルタの直列接続回路に対して並列に接続され、
直列接続回路を通した出力信号と、自身を通した信号と
が等しくなるようなフィルタ特性を有する帯域フィルタ
と、係数値として特定の初期値を格納する初期値メモリ
と、その出力信号が未知伝達関数と帯域フィルタに与え
られるよう接続され、かつ、適応逆フィルタと等しい特
性を有すると共に、与えられた係数値によってフィルタ
特性が可変に構成された前処理フィルタと、帯域フィル
タの出力信号から適応逆フィルタの出力信号を差し引く
減算器と、未知伝達関数の出力信号および減算器の出力
信号から、適応逆フィルタの係数更新値を演算するため
の係数更新回路とを備え、動作開始時には、初期値メモ
リから係数値の初期値を前処理フィルタおよび適応逆フ
ィルタにそれぞれ転送し、適応時には、適応逆フィルタ
の係数値を前処理フィルタの係数値に転送するよう構成
したことを特徴とする適応信号処理システム。
【0016】〈構成2〉構成1に記載の適応信号処理シ
ステムにおいて、適応時は、係数更新演算回路から得ら
れた更新係数値を前処理フィルタに転送し、前処理フィ
ルタでは、係数更新値から係数値を求めるよう構成した
ことを特徴とする適応信号処理システム。
【0017】〈構成3〉構成1または2に記載の適応信
号処理システムにおいて、初期値は、未知伝達関数のイ
ンパルス応答をベクトルで表現した重心ベクトルの逆イ
ンパルス応答サンプル、または最も重心点に近い未知伝
達関数の逆インパルス応答サンプルであることを特徴と
する適応信号処理システム。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を具体
例を用いて詳細に説明する。先ず、具体例の説明に先立
ち、本発明の前提となる適応逆フィルタの初期値問題に
ついて若干触れることにする。
【0019】堀内,穂刈,島田,“頭外音像定位に適用
する適応逆フィルタの構成法に関する検討,”電子情報
通信学会技術研究報告,EA99-93,pp.1-8(1999)によれ
ば、未知伝達関数と参照伝達関数とがある程度相関があ
れば、またはその伝達関数の変動がある範囲内で判って
いるような場合、その未知伝達関数の逆インパルス応答
をベクトルで表現した変動の重心ベクトル、またはその
重心点に最も近いサンプルの逆インパルス応答を初期値
として適応逆フィルタの係数値に設定することで、適応
逆フィルタを安定にしかも収束時間が短くなることが述
べられている。即ち、未知伝達関数の変動範囲が予めあ
る程度判っているならば、その中心に初期値を設定すれ
ば収束時間の短い特性を得ることが報告されている。そ
こで、本具体例では、適応逆フィルタの係数値の初期値
を、未知伝達関数の逆インパルス応答をベクトルで表現
した変動の重心ベクトル、またはその重心点に最も近い
サンプルの逆インパルス応答に設定するようにしてい
る。
【0020】《具体例》 〈構成〉図1は、本発明の適応信号処理システムの具体
例を示すブロック図である。図示のシステムは、初期値
メモリ11、前処理フィルタ12、未知伝達関数13、
適応逆フィルタ14、帯域フィルタ15、減算器16、
係数更新演算回路17とからなる。
【0021】初期値メモリ11は、係数値として特定の
初期値を格納するためのメモリで、本具体例では、未知
伝達関数13のインパルス応答をベクトルで表現した重
心ベクトルの逆インパルス応答サンプル、または最も重
心点に近い未知伝達関数13の逆インパルス応答サンプ
ルを初期値として持っている。前処理フィルタ12は、
初期値メモリ11からの係数値、または適応逆フィルタ
14からの係数値でフィルタ特性を可変できるフィルタ
であり、適応逆フィルタ14と等しい特性を持ってい
る。この前処理フィルタ12は、入力信号x(n)を入
力し、その出力u(n)を未知伝達関数13と帯域フィ
ルタ15とに出力するよう構成されている。
【0022】適応逆フィルタ14は、未知伝達関数13
の逆特性を構成し、かつ、未知伝達関数13の出力信号
z(n)を入力として、係数更新演算回路17からの係
数更新値Δh(n)でその特性を逐次可変できるフィル
タである。帯域フィルタ15は、未知伝達関数13およ
び適応逆フィルタ14の直列接続された回路と並列に接
続され、未知伝達関数13の逆特性を得るのに必要な遅
延と帯域制限を施したフィルタであり、前処理フィルタ
12の出力信号u(n)を入力し、その出力d(n)を
減算器16に与えるよう接続されている。減算器16
は、帯域フィルタ15の出力d(n)から適応逆フィル
タ14の出力y(n)のハット(∧)を減算して誤差信
号e(n)を出力する減算器である。係数更新演算回路
17は、未知伝達関数13の出力信号z(n)および減
算器16の出力信号e(n)から適応逆フィルタ14の
係数更新値Δh(n)を演算するための回路である。
【0023】〈動作〉先ず、動作開始時では、前処理フ
ィルタ12と適応逆フィルタ14の係数値として、初期
値メモリ11の係数値がコピーされる。次に、入力信号
x(n)が前処理フィルタ12に入力されると、前もっ
て初期値メモリ11から転送された係数と入力信号x
(n)との畳み込み演算結果u(n)が出力される。前
処理フィルタ12の出力信号u(n)は未知伝達関数1
3に入力され、この未知伝達関数13の出力信号z
(n)が出力される。未知伝達関数13の出力信号z
(n)は、適応逆フィルタ14に入力され、その出力信
号y(n)のハット(∧)が出力される。一方、前処理
フィルタ12の出力信号u(n)は帯域フィルタ15に
入力され、その出力信号d(n)が出力される。そし
て、減算器16は、帯域フィルタ15の出力信号d
(n)から適応逆フィルタ14の出力信号y(n)のハ
ット(∧)を減算する。その出力を誤差信号e(n)と
し、未知伝達関数13の出力信号z(n)と誤差信号e
(n)を入力とする係数更新演算回路17にて係数更新
が行われる。
【0024】図6は、以上の説明を数式で表した演算説
明図である。但し、図中のx(n)、u(n)、z
(n)はそれぞれ、 x(n)=[x(n),x(n−1),…,x(n−
M+1)](n)=[u(n),u(n−1),…,u(n−
M+1)](n)=[z(n),z(n−1),…,z(n−
M+1)] で定義される時間ベクトルである。
【0025】ここで、LMSアルゴリズムでは周知のよう
にΔh(n)=μz(n)e(n)で与えられる。この
ように、本具体例では、逆フィルタといっても、帯域フ
ィルタ15の伝達関数を未知伝達関数13で割った伝達
関数を同定する問題に置き換えた形になっているので、
係数更新演算回路17には通常の逐次アルゴリズムであ
るLMS以外のNLMS、アフィン射影(AP)、再帰(RLS)
が適用できることは明らかである。従って、係数更新演
算回路17のΔh(n)を求める説明は省略する。
【0026】〈効果〉上記具体例の効果を明らかにする
ために、次に具体的に頭外音像定位に適用した場合を説
明する。先ず、頭外音像定位の説明を行う。図7は、頭
外音像定位を実現する原理説明図である。図7中、
(a)はスピーカによる受聴、(b)は両耳イヤホンに
よる受聴を表している。図において、100は音源信
号、101はスピーカ、102は受聴者、103はディ
ジタルフィルタ、104はイヤホン、105は受聴者の
外耳道内に設置されたマイクである。尚、SSTF
SSTF等の、添え字L、Rは、左側、右側を示して
いる。
【0027】頭外音像定位の原理を図7に沿って以下説
明する。空間にある音源(図7(a)ではスピーカ10
1)から鼓膜までの音刺激と同じ刺激を、イヤホン10
4から鼓膜に与えることにより、音源が外にあるように
知覚することができる。しかしながら、音波による鼓膜
上の振動刺激信号を生体から電気信号で捉えることは極
めて危険であるので、図7(a)中の、音源信号100
から鼓膜までの電気信号の伝達関数を厳密に測定するこ
とはできない。
【0028】そこで、超小型のマイク105を両耳の外
耳道に装着し、スピーカ101から放射される音源信号
100からマイク105の出力までの伝達関数、即ち、
左右両耳における空間音響伝達関数(SSTF:Spacia
l Sound Transfer Function)を測定する。
【0029】ここで、文献:イエンス・ブラウエルト、
森本政之、後藤敏幸“空間音響”鹿島出版のp.20〜
p.28の2.4節の外耳道内の音波伝搬にも記述され
ているように、外耳道内の音波は1次元モデルで表され
るので、マイク105の設置位置を固定していれば、鼓
膜上での振動による電気信号は図7において左右等価に
なることは自明である。従って、外耳道に超小型のマイ
ク105を固定して、伝達関数、即ち、時間領域でのイ
ンパルス応答を測定してもその結果は同等となる。
【0030】しかしながら、上記文献でも指摘されてい
るように、スピーカ101は周波数特性を有しているの
で、スピーカ101の入力からマイク105の出力まで
の電気信号の真の伝達関数は、スピーカ101の伝達関
数をLSTF(Loud SpeakerTransfer Function)とす
れば、SSTF/LSTFである。ちょうど、この値は
頭部音響伝達関数HRTF(Head Related Transfer Fu
nction)とほぼ等価となる。尚、LSTFはスピーカ1
01の周波数特性を補正するためのスピーカ伝達関数で
ある。
【0031】HRTFは、上記文献で定義されているよ
うに、頭部が存在する時の伝達関数と存在しない時の伝
達関数の比であり、更に頭部が存在しない時の関数は空
間伝搬の関数とLSTFの積であって、空間伝搬は遅延
量だけであるので、HRTF≒SSTF/LSTFとな
る。
【0032】一方、図7(b)において、両耳イヤホン
(またはステレオヘッドホン)104を用いて、これと
等価な伝達関数を作成するには、両耳イヤホン104の
入力から外耳道に装着されたマイク105の出力までの
伝達関数、即ち、外耳道伝達関数(ECTF:Ear Cana
l Transfer Function)を測定し、このECTFと、デ
ィジタルフィルタ103の伝達関数との積の伝達関数が
伝達関数SSTF/LSTFと合致すれば、外耳道に設
置したマイク105の場所にスピーカ受聴と同じ受聴信
号を再生できる。
【0033】以上説明したように、ディジタルフィルタ
103の伝達関数は計算機によって求めることができ
る。即ち、この伝達関数(頭外音像定位伝達関数)をS
LTF(Soundimage Localization Transfer Functio
n)とすると、
【0034】SLTF={SSTF/(ECTF・LS
TF)}≒HRTF/ECTFとなり、この式の右辺の
各項は全て測定によって求められ、後は数学的な演算を
実施すればSLTFを求めることができる。
【0035】しかしながら、上記のSLTFを求めるこ
とができたとしても、伝達関数ECTFとHRTFは、
受聴者の外耳道の大きさ、耳の大きさ、更に顔の大きさ
によって、それぞれ異なる。即ち、個人の顔形状に合致
した伝達関数でないと、頭の外に正確な音像が定位せ
ず、最悪の場合には音像の前後判定ができなくなった
り、頭外定位しなくなることもある。
【0036】このため、伝達関数の個人差によって頭外
定位しないのでは不特定多数の受聴者に対して汎用的に
利用されないので、前もって測定した数種の伝達関数を
選択させるようなハード的な解決手法、または個人毎に
伝達関数を測定できるシステムが必要となる。しかし、
前述したハード的な解決手法ではハード量の増加を生
み、また個人毎に伝達関数を測定するシステムを用いる
手法では、このような測定システムが非常に高価であ
る。
【0037】ところで、伝達関数ECTFとSSTFに
ついての個人性に関する検討については既になされてい
る。例えば、S.Yano,H.Hokari,andS.Simada:"A Study o
n Personal Difference in the Transfer Functions of
Sound Localization",AES the 106th Convention,NO.4
922,May8-11(1999)によれば、伝達関数ECTFの方が
伝達関数SSTFより個人性が大きいと結論されてい
る。
【0038】そこで、適応信号処理技術を導入すること
によって、個人毎のECTFの伝達関数を測定すること
なく、楽音や音声を聞きながら、自分に合致したECT
Fの伝達関数を求める方法が、既に、特願平10−26
1292号明細書“イヤホンおよび頭外音像定位装置”
で出願されている。
【0039】図8は、頭外音像定位装置における片耳側
だけの機能ブロック図である。図示のシステムは、図7
(b)の機能を実現するための片耳側だけのブロックを
示しており、ECTFの逆伝達関数だけを適応等化しよ
うとするものである。図のシステムは、ディジタルフィ
ルタ201、適応フィルタ202、イヤホン(スピー
カ)203、マイク204、帯域フィルタ205、減算
器206からなる。
【0040】更に、このECTFの代表的な特性の一部
を明らかにするために、ECTFの時間領域のインパル
ス応答特性と、周波数振幅特性を示す。図9は、ECT
Fの時間領域のインパルス応答特性と、周波数振幅特性
を示す説明図である。これらの特性によれば、インパル
ス応答長は、ほぼ5msec以内であり、また48kHz以内
が有効であり、この特性は主に受聴者の外耳特性とイヤ
ホンの特性によるものである。従って、このECTFが
図1に示した本発明の未知伝達関数13に対応する。
【0041】以上述べた頭外音像定位技術に本具体例を
適用したときの効果を以下に述べる。本具体例と従来例
との性能の良否を明らかにするためには、収束特性を示
すことが大切である。そこで推定誤差ε(n)を定義す
ることにする。図10は、推定誤差ε(n)の演算説明
図である。但し、B(f)、C(f)、H(f,n)
は、それぞれ帯域フィルタ15、未知伝達関数13およ
び適応逆フィルタ14の周波数特性である。即ち、式
(23)は収束時の各時刻での推定誤差を示すことにな
り、未知伝達関数13と適応逆フィルタ14の伝達関数
の積が目標伝達関数である帯域フィルタ15に近づくこ
とを示している。
【0042】図11は、従来例と本具体例の収束特性を
比較して示す説明図である。図中、(a)は図2に示し
た従来例、(b)は図4に示した他の従来例、(c)が
図1に示した本具体例の収束特性を示している。また、
従来例にはブロック処理を、他の従来例および本具体例
には逐次処理を用い、更に、白色信号、音声信号を入力
したときの係数更新演算にアフィン射影(AP)アルゴ
リズムを適用したときの推定誤差を表している。
【0043】図示のように、従来例(a)および他の従
来例(b)が本具体例(c)と比べて明らかに収束特性
が悪いことが判る。尚、音声入力信号において図4の他
の従来例では、緩和係数μ=0.5では発散して不安定で
あるので、μ=0.05の場合を示した。本具体例において
は、初期値として前処理フィルタ12、適応逆フィルタ
14のそれぞれの係数値に、未知伝達関数13の逆イン
パルス応答ベクトルで表現した変動の重心ベクトル、ま
たは最も重心点に近いサンプル(ECTF)の逆インパ
ルス応答を設定している。これらから判るように、前処
理フィルタ12と未知伝達関数13の総合伝達関数は、
ほぼ帯域フィルタ15の特性と同じになるので、信号z
(n)は、ほぼ入力信号x(n)と同じスペクトルを持
った信号となる。
【0044】これは、Filtered-X構成法と本質的に異な
る構成となっている。即ち、Filtered-X構成法では、入
力信号x(n)を未知伝達関数と同等な特性(参照伝達
関数)でフィルタリングした信号を係数更新に用いてい
るために、未知伝達関数と参照伝達関数との差が大きい
と、収束特性に悪化を来している。このことは図4の他
の従来例においても同様である。これに反して、本具体
例の構成法では参照伝達関数を必要としないので、通常
の未知伝達関数を同定する演算結果と大略同じとなるこ
とが判る。
【0045】また、本具体例において、前処理フィルタ
12には、適応逆フィルタ14の係数値からその係数値
をコピーしてもよいが、係数更新演算回路17の係数更
新値Δh(n)を前処理フィルタ12に送り(図1中の
破線矢印参照)、前処理フィルタ12で、係数更新値Δ
h(n)から直接計算した結果を係数値に代入するよう
構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の適応信号処理システムの具体例を示す
ブロック図である。
【図2】従来例の適応信号処理システムを示すブロック
図である。
【図3】従来例の動作を説明するための演算説明図であ
る。
【図4】他の従来例の適応信号処理システムを示すブロ
ック図である。
【図5】他の従来例の動作を説明するための演算説明図
である。
【図6】本発明の適応信号処理システムの具体例の動作
を説明するための演算説明図である。
【図7】頭外音像定位を実現する原理説明図である。
【図8】頭外音像定位装置における片耳側だけの機能ブ
ロック図である。
【図9】外耳道伝達関数の特性説明図である。
【図10】推定誤差ε(n)の演算説明図である。
【図11】従来例と本具体例の収束特性を比較して示す
説明図である。
【符号の説明】
11 初期値メモリ 12 前処理フィルタ 13 未知伝達関数 14 適応逆フィルタ 15 帯域フィルタ 16 減算器 17 係数更新演算回路
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (71)出願人 597032206 穂刈 治英 新潟県長岡市上富岡町1603−1 長岡技術 科学大学内 (71)出願人 500139822 堀内 俊治 新潟県長岡市上富岡町1603−1 長岡技術 科学大学内 (72)発明者 青柳 康夫 東京都港区虎ノ門1丁目7番12号 沖電気 工業株式会社内 (72)発明者 三輪 勝人 東京都立川市錦町1丁目4番4号 日本キ ャステム株式会社内 (72)発明者 島田 正治 新潟県長岡市上富岡町1603−1 長岡技術 科学大学内 (72)発明者 穂刈 治英 新潟県長岡市上富岡町1603−1 長岡技術 科学大学内 (72)発明者 堀内 俊治 新潟県長岡市上富岡町1603−1 長岡技術 科学大学内 Fターム(参考) 5D020 CE04 5D062 AA65 BB04

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 未知伝達関数と直列に接続され、前記未
    知伝達関数の逆特性を構成し、かつ、与えられる係数更
    新値に基づき係数値を求め、当該係数値によってそのフ
    ィルタ特性が可変に構成された適応逆フィルタと、 前記未知伝達関数と前記適応逆フィルタの直列接続回路
    に対して並列に接続され、前記直列接続回路を通した出
    力信号と、自身を通した信号とが等しくなるようなフィ
    ルタ特性を有する帯域フィルタと、 係数値として特定の初期値を格納する初期値メモリと、 その出力信号が前記未知伝達関数と前記帯域フィルタに
    与えられるよう接続され、かつ、前記適応逆フィルタと
    等しい特性を有すると共に、与えられた係数値によって
    フィルタ特性が可変に構成された前処理フィルタと、 前記帯域フィルタの出力信号から前記適応逆フィルタの
    出力信号を差し引く減算器と、 前記未知伝達関数の出力信号および前記減算器の出力信
    号から、前記適応逆フィルタの係数更新値を演算するた
    めの係数更新回路とを備え、 動作開始時には、前記初期値メモリから係数値の初期値
    を前記前処理フィルタおよび前記適応逆フィルタにそれ
    ぞれ転送し、適応時には、前記適応逆フィルタの係数値
    を前記前処理フィルタの係数値に転送するよう構成した
    ことを特徴とする適応信号処理システム。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の適応信号処理システム
    において、 適応時は、前記係数更新演算回路から得られた更新係数
    値を前記前処理フィルタに転送し、前記前処理フィルタ
    では、係数更新値から係数値を求めるよう構成したこと
    を特徴とする適応信号処理システム。
  3. 【請求項3】 請求項1または2に記載の適応信号処理
    システムにおいて、 初期値は、未知伝達関数のインパルス応答をベクトルで
    表現した重心ベクトルの逆インパルス応答サンプル、ま
    たは最も重心点に近い未知伝達関数の逆インパルス応答
    サンプルであることを特徴とする適応信号処理システ
    ム。
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