JP2002088439A - 低サイクル疲労特性とエネルギー吸収性能に優れた制振建材用鋼およびその製造方法 - Google Patents

低サイクル疲労特性とエネルギー吸収性能に優れた制振建材用鋼およびその製造方法

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JP2002088439A
JP2002088439A JP2000275324A JP2000275324A JP2002088439A JP 2002088439 A JP2002088439 A JP 2002088439A JP 2000275324 A JP2000275324 A JP 2000275324A JP 2000275324 A JP2000275324 A JP 2000275324A JP 2002088439 A JP2002088439 A JP 2002088439A
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Yoichi Kayamori
陽一 萱森
Tadashi Ishikawa
忠 石川
Shuji Aihara
周二 粟飯原
Atsushi Watanabe
厚 渡辺
Eiichiro Saeki
英一郎 佐伯
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Nippon Steel Corp
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Nippon Steel Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 風および地震に対する低サイクル疲労特性と
エネルギー吸収性能に優れた制振建材用鋼およびその製
造方法の提供。 【解決手段】 フェライトと面積率で10〜40%の硬
質第二相からなる組織を有し、フェライト結晶粒の粒度
番号が7以上、硬質第二相の硬度がHv180以上であ
り、さらに、降伏強度が200〜350MPa で、かつ、
加工硬化指数が0.2〜0.25である低サイクル疲労
特性とエネルギー吸収性能に優れた制振建材用鋼。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、風や地震等の塑性
変形を伴う繰り返し荷重に対する低サイクル疲労特性お
よびエネルギー吸収性能に優れ、アンボンドブレース、
制振壁、制振パネル等に用いられる制振建材用鋼および
その製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】風および地震に対して、柱、梁などの建
物主体骨組の応答を低減させるため、エネルギーを吸収
させる部材・装置を導入する種々の技術が実用化されて
いる。アンボンドブレース、制振壁、制振パネル等の制
振建材がその一つである。
【0003】制振建材用鋼に要求される特性として、次
の2点が特に要求される。 低サイクル疲労特性に優れること、すなわち、繰り返
しの塑性変形に対する破断寿命が長いこと。 エネルギー吸収性能に優れること、すなわち、主体骨
組部材よりも制振建材が先行して塑性変形するよう制振
建材用鋼の降伏強度は低く、かつ、制振建材の単位体積
当たりのエネルギー吸収量が大きいこと。
【0004】現用の制振建材用鋼は、(a)強化元素の
低減、(b)フェライト単相組織、(c)比較的大きな
結晶粒径の許容を特徴とした極軟鋼が主である。極軟鋼
とすることで、極低降伏強度および高延性により前記
の達成を狙っている。例えば、特開平11−3605
1号公報では、固溶強化元素であるCを0.003%以
下、Nを0.004%以下に制限し、かつTiを微量添
加することでCとNの固溶量を減らし、さらに、Bを微
量添加することで粒界強化による靭性改善を図り、フェ
ライト単相組織で平均粒径150μm以下であることを
特徴とする鋼材とその製造方法を開示している。
【0005】ところで、極軟鋼の低サイクル疲労特性と
エネルギー吸収性能については、日本建築学会構造系論
文集の第472号139頁および第473号159頁に
より以下の点が明らかになっている。 ・極軟鋼の低サイクル疲労特性は、普通鋼のそれと同程
度である。 ・極軟鋼のエネルギー吸収性能は、歪の変動範囲(以
後、歪範囲と称す)が0.7%より低い場合は普通鋼の
それよりも優れるが、歪範囲が0.8%よりも大きくな
ると普通鋼のそれよりも優れるとは言えない。そこで、
低サイクル疲労特性とエネルギー吸収性能の両方に優れ
る制振建材用鋼の使用が期待されている。
【0006】
【発明の解決しようとする課題】しかしながら、上記の
特開平11−36051号公報では、平均粒径を150
μmに制御し部材の均一な変形能を確保することで疲労
特性の低下を防止するよう述べているが、普通鋼と比較
して低サイクル疲労特性を著しく向上させる技術は何ら
開示していない。また、この発明例では100MPa 程度
以下の低降伏強度を達成したことは示されているが、エ
ネルギー吸収性能自体は何ら示されていないため、エネ
ルギー吸収性能が優れるのか否かは不明である。
【0007】本発明の実施例に示す通り、極軟鋼の低サ
イクル疲労特性およびエネルギー吸収性能が普通鋼のそ
れよりも優れているとは必ずしも言えない。そこで、低
サイクル疲労特性とエネルギー吸収性能の両方に優れる
制振建材用鋼の開発が強く望まれている。本発明は上記
課題を解決し、アンボンドブレース、制振壁、制振パネ
ル等に用いられる制振建材用鋼およびその製造方法を提
供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】発明者らは、低サイクル
疲労特性とエネルギー吸収性能を両立できる鋼材の具備
すべき組織、組成などの諸条件を特定するに至り本発明
を完成させたもので、その要旨とするところは以下の通
りである。 (1) フェライトと面積率で10〜40%の硬質第二
相からなる組織を有し、フェライト結晶粒の粒度番号が
7以上、硬質第二相の硬度がHv180以上であり、さ
らに、降伏強度が200〜350MPa で、かつ、加工硬
化指数が0.2〜0.25であることを特徴とする低サ
イクル疲労特性とエネルギー吸収性能に優れた制振建材
用鋼。 (2) 質量%で、C:0.05〜0.4%、Si:
0.05〜1.5%、Mn:0.5〜2%、P:0.0
3%以下、S:0.02%以下を含有し、残部がFeお
よび不可避不純物からなることを特徴とする前記(1)
に記載の低サイクル疲労特性とエネルギー吸収性能に優
れた制振建材用鋼。 (3) 質量%で、Cu:0.05〜2%、Ni:0.
05〜2%、Cr:0.05〜2%、Mo:0.05〜
0.5%、Nb:0.005〜0.2%、V:0.00
5〜0.2%、Ca:0.0005〜0.006%、希
土類元素(REM):0.0005〜0.01%の1種
または2種以上を、さらに含有することを特徴とする前
記(2)に記載の低サイクル疲労特性とエネルギー吸収
性能に優れた制振建材用鋼。 (4) 質量%で、Al:0.005〜0.06%、T
i:0.005〜0.05%の1種または2種と、N:
0.001〜0.006%を、さらに含有することを特
徴とする前記(2)または(3)に記載の低サイクル疲
労特性に優れた制振建材用鋼。 (5) 前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の鋼
の製造にあたり、スラブをAc3 〜1250℃の温度範
囲に加熱して、再結晶温度域で累積圧下率10%以上の
熱間圧延をした後、1℃/sec以下の冷却速度で冷却する
ことを特徴とする低サイクル疲労特性とエネルギー吸収
性能に優れた制振建材用鋼の製造方法。 (6) 再結晶域温度で熱間圧延をした後、引き続き、
未再結晶温度域で累積圧下率40%以上の熱間圧延をし
て、さらに1℃/sec以下の冷却速度で冷却することを特
徴とする前記(5)に記載の低サイクル疲労特性とエネ
ルギー吸収性能に優れた制振建材用鋼の製造方法。 (7) 1℃/sec以下の冷却速度で冷却後、Ac1
(Ac3 −50)℃に加熱して水焼入れ処理することを
特徴とする前記(5)または(6)に記載の低サイクル
疲労特性とエネルギー吸収性能に優れた制振建材用鋼の
製造方法。 (8) Ac1 〜(Ac3 −50)℃に加熱して水焼入
れ処理をした後、さらに、200℃〜Ac1 に加熱して
焼き戻し処理することを特徴とする前記(7)に記載の
低サイクル疲労特性とエネルギー吸収性能に優れた制振
建材用鋼の製造方法。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明
する。建築制振部材に用いられ柱・梁部材よりも低強度
な鋼材では、低サイクル疲労破壊のプロセスは、一般に
次のようなものと考えられている。 (F1)結晶粒内の特定のすべり面に沿ってすべりが繰
り返され、すべり帯が形成される。 (F2)鋼材表面のすべり帯が突き出しと入り込みを形
成し、粒内の微小表面き裂が発生する。 (F3)粒内の微小表面き裂は粒界を貫通してそれ自身
が伝播したり、隣接する他のき裂と合体して長大き裂へ
と変化し、ついには部材の破断に至る。
【0010】ここで、結晶粒界は(F3)においてき裂
伝播の抵抗となり得るが、粒径を150μm以下とする
ことで低サイクル疲労特性が著しく向上する根拠は何も
ない。さらに、フェライト単相とすることで低サイクル
疲労特性が著しく向上する根拠もない。
【0011】また、鋼材のエネルギー吸収性能は公称応
力と公称歪によるヒステリシスループで囲まれる面積
(ヒステリシスエネルギー)で示され、一般に次のよう
なものと考えられている。 (E1)ヒステリシスエネルギーは、降伏強度と加工硬
化指数で決まる。 (E2)繰り返し数の増加とともに、鋼材は硬化もしく
は軟化挙動を示し、ヒステリシスエネルギーは変化す
る。
【0012】発明者らは、低サイクル疲労特性とエネル
ギー吸収性能の支配因子を詳細に検討した結果、以下の
知見を得た。 1)繰り返しの比較的初期に(F1)と(F2)のプロ
セスが完了するため、低サイクル疲労寿命は(F3)の
プロセスに支配される。
【0013】2)結晶粒の細粒化は、(F3)のプロセ
スにおいて粒内の微小表面き裂の伝播を遅延させるのに
有効であり、その効果は図1に示すようにJIS G
0552に準拠する粒度測定による粒度番号7以上で著
しい。
【0014】3)フェライトと硬質第二相からなる混合
組織では、(F3)のプロセスにおいて、フェライトで
発生した粒内の微小表面き裂は硬質第二相に当たると停
留や迂回をするため、き裂の伝播速度は遅くなり、低サ
イクル疲労寿命が長寿命に改善される。一方、フェライ
ト単相組織では、(F3)のプロセスにおいて粒内の微
小表面き裂の粒界貫通と隣接き裂との合体が容易となる
ため、き裂の伝播速度は速く、低サイクル疲労寿命の改
善をもたらさない。
【0015】4)低サイクル疲労寿命の改善に有効な硬
質第二相は、パーライト、ベイナイト、マルテンサイ
ト、およびそれらの混合である。ただし、図2に示すよ
うに、硬質第二相がJIS Z 2244に準拠するビ
ッカース硬度測定で180より小さい場合は、フェライ
トで発生した微小表面き裂は容易に硬質第二相を貫通す
るので、低サイクル疲労寿命は改善されない。よって、
硬質第二相の硬度は180以上でなければならない。ま
た、図3に示すように、硬質第二相の面積率が10%よ
り小さいと、フェライトで発生した微小表面き裂は硬質
第二相に当たりにくいので容易に伝播し、やはり低サイ
クル疲労寿命は改善されない。よって、硬質第二相の面
積率は10%以上でなければならない。しかし、硬質第
二相の面積率が40%より大きいと、すべり変形を生じ
てエネルギーの吸収に寄与するフェライトの割合が小さ
いため、制振建材のエネルギー吸収性能は極端に低下す
る。よって、硬質第二相の面積率は40%以下でなけれ
ばならない。
【0016】5)ある、歪範囲に対して、ヒステリシス
エネルギーを大きくするのに最適な降伏強度と加工硬化
指数が存在する。図4と図5に示すように、風や地震に
より制振建材に付与されるであろう歪範囲0.5〜5%
に対しては、降伏強度は200〜350MPa 、加工硬化
指数は0.2〜0.25とするとで、大きなヒステリシ
スエネルギーが得られる。降伏強度と加工硬化指数のい
ずれかが上記範囲外の場合、風や地震の歪に対する大き
なヒステリシスエネルギーは得られない。
【0017】6)繰り返し硬化あるいは軟化の挙動は、
破断寿命の1/2近傍の繰り返し数で飽和して定常状態
になるが、上記5)に示す範囲内の降伏強度および加工
硬化指数を有する鋼材は、繰り返し硬化あるいは軟化挙
動が定常となる前でも後でも高いエネルギー吸収性能を
示す。
【0018】本発明は上記のように組織などの要件を満
たしておれば、成分や製造方法を特に限定するものでは
ないが、本発明の実施の形態として、具体的な成分や製
造方法の詳細を以下に記す。まず、成分については、各
元素を以下のように限定する。
【0019】Cの下限0.05%は、硬質第二相の硬度
と面積率、および鋼材の降伏強度を確保するための最小
量である。しかし、C量が多すぎると、硬質第二相の面
積率や鋼材の降伏強度の上限を超えエネルギー吸収性能
が低下するとともに、溶接性、HAZ靭性が低下するの
で、上限を0.4%とした。
【0020】Siは、降伏点の向上と脱酸に有効な成分
であり、0.05%以上添加することによりその効果が
現れる。しかし、多く添加すると降伏強度が上限を超え
エネルギー吸収性能が低下するとともに、溶接性、HA
Z靭性を劣化させるため、上限を1.5%とした。
【0021】Mnは、強度、靭性を確保する上で不可欠
な元素であり、その下限は0.5%である。しかし、多
量に添加すると焼入れ性が増加して、溶接性、HAZ靭
性を劣化させるだけでなく、降伏強度が上限を超えエネ
ルギー吸収性能が低下するので、Mnの上限を2%とし
た。
【0022】本発明鋼において、不純物であるP,Sを
それぞれ0.03%,0.02%以下とした理由は、母
材、溶接部の靭性を一層向上させるためである。Pの低
減により粒界破壊を防止し、Sの低減により介在物Mn
Sの形成に起因する靭性劣化を防止する。そのために好
ましいP,S量は、0.01%,0.005%以下であ
る。
【0023】本発明鋼の基本成分は以上の通りであり、
十分に目的を達成できるが、基本成分に加えてCu,N
i,Cr,Mo,Nb,V,Ca,REMを適宜添加す
ることで、本発明鋼の優れた特徴を損なうことなく、溶
接性、母材・HAZ靭性の向上を図ることができる。し
たがって、その添加量は自ら制限される性質のものであ
る。
【0024】Cu,Ni,Cr,Mo,Nb,Vは、強
度、靭性の向上に効果を有し、その下限はCu,Ni,
Cr,Moで0.05%、Nb,Vで0.005%であ
る。しかし多量に添加すると、Cuは熱間圧延時にCu
割れが発生して製造が困難になり、Ni,Crは極めて
高価になり、Mo、Nb、VはHAZ靭性上好ましくな
く、かつ、いずれの元素も過剰な添加は鋼材の降伏点の
上限を超えさせエネルギー吸収性能が低下するため、上
限をCu,Ni,Crは2%、Moは0.5%、Nb,
Vは0.2%とした。
【0025】Caは、介在物MnSの形態を制御し、靭
性を向上させる効果があり、その下限は0.0005%
である。しかし、0.006%を超えるとCaO、Ca
Sが多量に生成して大型介在物となり、鋼の靭性のみな
らず清浄度も害し、溶接性にも悪影響を与えるので、C
a添加量の範囲を0.0005〜0.006%とした。
【0026】希土類元素(REM)はCaの場合と同様
にMnSの形態制御のために0.0005%以上添加す
ると効果があるが、0.01%を超えて添加すると清浄
度が損なわれ、溶接性が劣化するので、上限値を0.0
1%とした。
【0027】さらに、以下に述べる元素を添加すると、
母材・HAZ靭性の向上に関して、いっそう好ましい結
果が得られる。Al、TiはNと結合してAlN、Ti
Nを形成し、再加熱時のγ粒粗大化を抑制し、圧延後の
組織を微細化する。これらの効果を得るための下限とし
て、Al、Tiは0.005%、Nは0.001%必要
である。しかし、Al、Ti、Nが多量になるとかえっ
てHAZ靭性が低下するので、上限をそれぞれ0.06
%,0.05%,0.006%とした。
【0028】次に、前述のように結晶粒径、硬質第二
相、降伏強度、加工硬化指数を適切な範囲に制御するた
めには、以下に説明する製造方法が推奨される。まず、
いずれの製造方法でも、熱間圧延する前には、スラブを
100%オーステナイト(以下γと記載)化する必要が
ある。γ化するためにはAc3 以上に加熱すれば良い
が、1250℃を超えて加熱するとγ粒が著しく粗大化
し、圧延後のフェライト粒が細粒化されないため、低サ
イクル疲労寿命が向上しない。したがって、再加熱温度
はAc3 〜1250℃とする必要がある。
【0029】また、スラブを加熱することにより、γ粒
径が非常に大きくなっているため、γ粒径を小さくでき
る再結晶温度域(約900〜1250℃)で熱間圧延を
行う。γ粒の微細化に有効な再結晶域累積圧下率((h
0 −h1 )×100/h0 、h0 :スラブ厚、h1 :再
結晶温度域での圧延後板厚)は10%以上のため、下限
を10%とした。
【0030】さらに、再結晶温度域で熱間圧延をした後
に鋼板を冷却する。このときの冷却速度は1℃/sec以下
でなければならない。その理由は、1℃/secよりも高速
で冷却すると、フェライト中の固溶C量が多くなり、フ
ェライトのすべり変形によるエネルギー吸収性能が低下
するからである。
【0031】本発明鋼の基本製造方法は以上の通りであ
り、十分な鋼材特性を達成できるが、再結晶温度域圧延
の後、制御圧延(約750〜900℃の未再結晶温度域
での圧延)を施すことでさらに高靭性が得られる。この
場合には、γ粒内に圧延による変形帯を導入し、フェラ
イト生成核を増加させた後に、1℃/sec以下の冷却速度
で冷却することが有効である。変形帯を導入するために
は未再結晶域累積圧下率((h1 −h2 )×100/h
1 、h1 :再結晶温度域での圧延後板厚もしくは未再結
晶温度域での圧延前板厚、h2 :未再結晶温度域での圧
延後板厚)は40%以上のため、下限を40%とした。
【0032】以上の製造方法によると、硬質第二相は主
にパーライト、ベイナイト、およびそれらの混合となる
が、硬質第二相をマルテンサイト化することも低サイク
ル疲労寿命向上には有効である。そのためには、鋼材を
Ac1 〜(Ac3 −50)℃に加熱して水焼き入れする
必要がある。加熱温度は、Ac1 よりも低温では硬質第
二相となる部分すらγ化できず、硬質第二相の面積率が
低くなり、(Ac3 −50)℃よりも高温ではγ分率が
大きくなりすぎて、その結果硬質第二相の面積率が高く
なるため、範囲をAc1 〜(Ac3 −50)℃とした。
【0033】さらに、鋼材の靭性改善や残留応力および
脱水素処理による寸法狂いを防止するために、焼き入れ
後の焼き戻し処理が製造上必要なことがある。焼き戻し
温度が200℃よりも低温ではこれらの防止が期待され
ず、Ac1 点を超える温度では変態が開始して強度が著
しく低下する。よって、焼き戻し温度は200℃〜Ac
1 点とした。
【0034】なお、鋼材の成分や製造方法を限定して
も、製造された鋼材の組織、降伏強度、および加工硬化
指数のすべてが適切でなければ、低サイクル疲労特性と
エネルギー吸収性能は向上しない。本発明は低サイクル
疲労特性とエネルギー吸収性能を確実に向上させるもの
であり、本発明が提供する制振建材用鋼は、厚鋼板に限
らず、薄鋼板、形鋼、棒線、鋼管に対しても同様に適用
できる。
【0035】
【実施例】転炉、連続鋳造、厚板工程により鋼板を製造
し、その金属組織、降伏点、加工硬化指数、低サイクル
疲労特性、エネルギー吸収性能などを調査した。表1の
1〜15に本発明鋼、16〜31に比較鋼の化学成分を
示す。表2に本発明鋼と比較鋼の鋼板製造条件とその機
械的性質を示す。表3に本発明鋼と比較鋼を用いた歪制
御低サイクル疲労試験の結果を示す。
【0036】歪制御低サイクル疲労試験は以下の方法で
行った。それぞれの鋼板から全長150mm、平行部長さ
22mm、平行部直径10mmの丸棒疲労試験片を採取し
た。平行部にゲージ長21mmの伸び計を固定し、コンピ
ュータ制御の電気油圧式疲労試験機を用いて、平行部歪
範囲(最大歪−最小歪)を制御した低サイクル疲労試験
を実施した。歪波形は三角波、歪比(最小歪/最大歪)
−1、歪速度0.5%/secとし、歪範囲は代表的な条件
として0.5%(風振動相当)と5%(地震動相当)の
2種類とした。試験の最中は、随時、試験片平行部の公
称応力−歪の関係を記録し、試験片が破断するか試験中
の最大荷重が試験初期の最大荷重の75%まで減少した
ら試験片破断と見なした。
【0037】本発明鋼1〜15は、フェライト粒度、硬
質第二相の硬度と面積率、降伏強度、加工硬化指数が適
切範囲内となっており、低サイクル疲労寿命とエネルギ
ー吸収性能は優れている。
【0038】これに対し、比較鋼16はC量が不足し、
硬質第二相の面積率が低いため、低サイクル疲労寿命が
改善されない。逆に、比較鋼17はC量が過剰で、硬質
第二相の面積率が大きすぎるため、低サイクル疲労寿命
は改善されるが、エネルギー吸収性能が改善されない。
比較鋼18〜24は特定元素量が過剰なため、降伏強度
が350MPa を超え、かつ、加工硬化指数が0.20よ
り小さくなっており、その結果、エネルギー吸収性能が
改善されない。比較鋼25はフェライト粒度が7に達し
ないため低サイクル疲労寿命が改善されないことに加
え、V量が過剰なことにより降伏硬度が超過し加工硬化
指数が不足しているため、エネルギー吸収性能が改善さ
れない。比較鋼26はスラブの再加熱温度が高すぎるた
め、比較鋼27は再結晶温度域圧延の累積圧下率が小さ
いため、フェライト粒度が7に到達せず低サイクル疲労
寿命が改善されない。さらに、比較鋼27は降伏硬度が
超過し加工硬化指数が不足しているため、エネルギー吸
収性能も改善されない。比較鋼28は熱間圧延後の冷却
速度が速いため、降伏硬度が超過し加工硬化指数が不足
して、エネルギー吸収性能は改善されない。比較鋼29
は焼き入れ温度が低いため、硬質第二相の面積率が低す
ぎ、低サイクル疲労寿命が改善されない。逆に、比較鋼
30は焼き入れ温度が高いため、硬質第二相の面積率が
大きすぎ、降伏硬度が超過し加工硬化指数が不足して、
エネルギー吸収性能が改善されない。比較鋼31はC量
が不足していることに加え、再加熱温度が高すぎ、粗大
なフェライト単一組織となっている。その結果、低サイ
クル疲労寿命とエネルギー吸収性能のいずれも改善され
ない。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
【表3】
【0042】
【発明の効果】以上の実施例からも明らかなように、本
発明により低サイクル疲労特性とエネルギー吸収性能が
良好な制振建材用鋼を提供することができる。従って、
本発明の産業上の価値は極めて高いといえる。
【図面の簡単な説明】
【図1】鋼材のフェライト粒度番号と低サイクル疲労寿
命の関係を示す図である。
【図2】鋼材の硬質第二相の硬度と低サイクル疲労寿命
の関係を示す図である。
【図3】鋼材の硬質第二相の面積率と低サイクル疲労寿
命の関係を示す図である。
【図4】鋼材の降伏強度とエネルギー吸収性能の関係を
示す図である。
【図5】鋼材の加工硬化指数とエネルギー吸収性能の関
係を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 粟飯原 周二 千葉県富津市新富20−1 新日本製鐵株式 会社技術開発本部内 (72)発明者 渡辺 厚 東京都千代田区大手町2−6−3 新日本 製鐵株式会社内 (72)発明者 佐伯 英一郎 東京都千代田区大手町2−6−3 新日本 製鐵株式会社内 Fターム(参考) 4K032 AA01 AA04 AA05 AA08 AA11 AA12 AA14 AA15 AA16 AA19 AA21 AA22 AA23 AA24 AA27 AA29 AA31 AA32 AA35 AA36 AA40 BA01 CA01 CA02 CA03 CB02 CC04 CD01 CF01 CF02 CF03

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 フェライトと面積率で10〜40%の硬
    質第二相からなる組織を有し、フェライト結晶粒の粒度
    番号が7以上、硬質第二相の硬度がHv180以上であ
    り、さらに、降伏強度が200〜350MPa で、かつ、
    加工硬化指数が0.2〜0.25であることを特徴とす
    る低サイクル疲労特性とエネルギー吸収性能に優れた制
    振建材用鋼。
  2. 【請求項2】 質量%で、 C :0.05〜0.4%、 Si:0.05〜1.5%、 Mn:0.5〜2%、 P:0.03%以下、 S:0.02%以下を含有し、残部がFeおよび不可避
    不純物からなることを特徴とする請求項1に記載の低サ
    イクル疲労特性とエネルギー吸収性能に優れた制振建材
    用鋼。
  3. 【請求項3】 質量%で、 Cu:0.05〜2%、 Ni:0.05〜2%、 Cr:0.05〜2%、 Mo:0.05〜0.5%、 Nb:0.005〜0.2%、 V :0.005〜0.2%、 Ca:0.0005〜0.006%、 希土類元素(REM):0.0005〜0.01%の1
    種または2種以上を、さらに含有することを特徴とする
    請求項2に記載の低サイクル疲労特性とエネルギー吸収
    性能に優れた制振建材用鋼。
  4. 【請求項4】 質量%で、 Al:0.005〜0.06%、 Ti:0.005〜0.05%の1種または2種と、 N :0.001〜0.006%を、さらに含有するこ
    とを特徴とする請求項2または3に記載の低サイクル疲
    労特性とエネルギー吸収性能に優れた制振建材用鋼。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4のいずれか1項に記載の鋼
    の製造にあたり、スラブをAc3 〜1250℃の温度範
    囲に加熱して、再結晶温度域で累積圧下率10%以上の
    熱間圧延をした後、1℃/sec以下の冷却速度で冷却する
    ことを特徴とする低サイクル疲労特性とエネルギー吸収
    性能に優れた制振建材用鋼の製造方法。
  6. 【請求項6】 再結晶域温度で熱間圧延をした後、引き
    続き、未再結晶温度域で累積圧下率40%以上の熱間圧
    延をして、さらに1℃/sec以下の冷却速度で冷却するこ
    とを特徴とする請求項5に記載の低サイクル疲労特性と
    エネルギー吸収性能に優れた制振建材用鋼の製造方法。
  7. 【請求項7】 1℃/sec以下の冷却速度で冷却後、Ac
    1 〜(Ac3 −50)℃に加熱して水焼入れ処理するこ
    とを特徴とする請求項5または6に記載の低サイクル疲
    労特性とエネルギー吸収性能に優れた制振建材用鋼の製
    造方法。
  8. 【請求項8】 Ac1 〜(Ac3 −50)℃に加熱して
    水焼入れ処理をした後、さらに、200℃〜Ac1 に加
    熱して焼き戻し処理することを特徴とする請求項7に記
    載の低サイクル疲労特性とエネルギー吸収性能に優れた
    制振建材用鋼の製造方法。
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