JP2002076522A - 窒化物半導体レーザ - Google Patents

窒化物半導体レーザ

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JP2002076522A
JP2002076522A JP2000265787A JP2000265787A JP2002076522A JP 2002076522 A JP2002076522 A JP 2002076522A JP 2000265787 A JP2000265787 A JP 2000265787A JP 2000265787 A JP2000265787 A JP 2000265787A JP 2002076522 A JP2002076522 A JP 2002076522A
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gallium nitride
quantum well
light emitting
active layer
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JP2000265787A
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Atsushi Yamaguchi
敦史 山口
Masaru Kuramoto
大 倉本
Masaaki Nidou
正明 仁道
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NEC Corp
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    • H01S2304/00Special growth methods for semiconductor lasers
    • H01S2304/12Pendeo epitaxial lateral overgrowth [ELOG], e.g. for growing GaN based blue laser diodes

Abstract

(57)【要約】 【課題】窒化ガリウム系半導体材料を用いた半導体レー
ザのしきい値電流密度を低減すること。 【解決手段】低転位n−GaN基板21上に、n型クラ
ッド層22と、InxAlyGa1-x-yN(0<x<1、
0≦y≦0.2)発光層を含む多重量子井戸層24と、
を含む窒化ガリウム系半導体層が積層した構造を有し、
量子井戸一個あたりのしきい値モード利得が12cm-1
以下であり、発光層のバンドギャップエネルギーの微視
的揺らぎの標準偏差が75〜200meVであることを
特徴とする窒化物半導体レーザ。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、窒化ガリウム系材
料またはサファイアからなる基板を用いた窒化物半導体
レーザに関する。
【0002】
【従来の技術】窒化物半導体は青紫色レーザ素子の材料
としてたいへん有望であり、中村他がJpn.J.Appl.Phys.
vol.36(1997),pp.L1568-1571で報告しているように、既
に室温において2mW出力で1万時間以上の連続発振寿命
が報告されている。図10にそのレーザの断面構造図を
示す。図10のレーザ素子においては、サファイア基板
101上のGaN膜102上に、ストライプ状のSiO2
(マスク)103を形成し、その上にGaNを成長するこ
とによって選択成長させ、マスク上に横方向成長した低
転位密度のGaNを形成し、その低転位密度領域104の
上にp電極105が形成されるようにレーザ素子を作製
している。中村他による上記の方法によって作製された
GaN基板はELOG(Epitaxial Lateral Overgrowth GaN)基
板と呼ばれており、SiO2マスクの無い部分(窓領域)の
上部では、サファイア基板上GaN膜の高密度の貫通転位
がそのまま引き継がれて膜が成長するために、高い(10
12m-2以上)転位密度となっているが、SiO2マスクの上
部ではマスクによって転位の伝播がさえぎられるため
に、低い(1011m-2未満)転位密度が実現している。た
だし、SiO2マスクの中心付近では両側の窓領域から横方
向成長してきたGaNがぶつかるため、転位が新たに発生
し高い転位密度となっている。そして、低転位領域(Si
O2マスク上で中心から離れた部分:図でハッチングして
ない領域)104の上部にp電極105が形成されるよ
うにレーザ素子を作製すると、活性層内の低転位密度領
域に電流が注入されるため、転位に起因した素子の劣化
が起こりにくくなり、素子の寿命が長くなると考えられ
る。図10のレーザ素子は、Siドープn型GaN-ELOG基板
106上にSiドープn型In0.1Ga0.9N層107、120周期
のSiドープn型GaN層(厚さ2.5nm)とアンドープAl0.14G
a0.86N層(厚さ2.5nm)からなるn型クラッド層108、
Siドープn型GaN(厚さ0.1mm)からなるn型光閉じ込め層
109、Siドープn型In0.15Ga0.85N量子井戸層(厚さ3.
5nm)とSiドープn型In0.02Ga0.98N障壁層(厚さ10.5n
m)からなる多重量子井戸活性層110、Mgドープp型Al
0.2Ga0.8Nキャップ層(厚さ20nm)111、Mgドープp型
GaN(厚さ0.1mm)からなるp型光閉じ込め層112、120
周期のMgドープp型GaN層(厚さ2.5nm)とアンドープAl
0.14Ga0.86N層(厚さ2.5nm)からなるp型クラッド層1
13、Mgドープp型GaN(厚さ0.05mm)からなるp型コン
タクト層114を順に成長した後に、ドライエッチング
などにより図に示すようなリッジ構造を形成し、最後に
NiとAuからなるp電極105とTiとAlからなるn電極11
5を蒸着して作製されている。
【0003】一方、発明者らはJpn.J.Appl.Phys.vol.36
(1997),pp.L899-902あるいはNEC Research and Develop
ment vol.41(2000)No.1pp.74-85で述べているように、F
IELO(Facet-Initiated Epitaxial Lateral Overgrowth)
と呼ばれる方法によって基板あるいは活性層全面にわた
って転位密度を低くすることに成功している。FIELOに
おいては、ELOGと同様にサファイア基板上のGaN膜上
に、ストライプ状のSiO2膜(マスク)を形成するが、ハ
イドライド気相成長によって選択成長させることによっ
て貫通転位を曲げることができ、ELOGのように転位密度
の高い領域は生じず、基板全面にわたって転位密度を低
くできる。このようにして得た低転位密度のn-GaN基板
を用いて、窒化物半導体レーザを作製した例を図9に示
す。図に示すように、低転位密度のn−GaN基板21
上にSiドープn型Al0.1Ga0.9N(シリコン濃度4
×1017cm-3、厚さ1.2μm)からなるn型クラッ
ド層22,Siドープn型GaN(シリコン濃度4×1
17cm-3、厚さ0.1μm)からなるn型光閉じ込め
層23、In0.2Ga0.8N(厚さ3nm)井戸層とSi
ドープIn0.05Ga0.95N(シリコン濃度5×1018
-3厚さ5nm)バリア層からなる多重量子井戸層24
(井戸数3個)、Mgドープp型Al0.2Ga0. 8Nから
なるキャップ層25、Mgドープp型GaN(Mg濃度
2×1017cm-3、厚さ0.1μm)からなるp型光閉
じ込め層26,Mgドープp型Al0.1Ga0.9N(Mg
濃度2×1017cm-3、厚さ0.5μm)からなるp型
クラッド層27、Mgドープp型GaN(Mg濃度2×
1017cm-3、厚さ0.1μm)からなるp型コンタク
ト層28を順次成長させて、LD構造を形成した。レー
ザ構造の形成は、200hPaの減圧MOVPE(有機
金属気相エピタキシ)装置を用いて行われた。窒素原料
に用いたアンモニアの分圧は147hPaであり、G
a、Al、In材料はTMG、TMA、TMIを用い
た。成長温度は、InGaNからなる多重量子井戸活性
層24では780℃であり、その他の層においてはすべ
て1050℃で行った。ドライエッチングによりp型ク
ラッド層27そしてp型コンタクト層28を含んだメサ
型29を部分的に残した後、SiO2絶縁膜30を形成
した。また、メサ部分の頭出しを露光技術により行い、
リッジ構造を形成した。n型基板裏にはTi/Alから
なるn電極31を形成し、pコンタクト上には、Ni/
Auからなるp電極32を形成した。へき開によりレー
ザ共振器端面を形成し、片面のみをTiO2/SiO2
高反射コーティング(反射率95%)したものと両面を
TiO2/SiO2で高反射コーティング(反射率95
%)したものの2つの素子を行った。得られた半導体レ
ーザのしきい値電流密度は片面コートのものが3.0kA/
cm2、両面コートのものが1.5kA/cm2であった。
【0004】上記の従来例にも示されているように、窒
化物半導体青色レーザ素子では、通常InGaN量子井戸が
活性層に用いられている。しかし、結晶成長において均
質なInGaN混晶膜を作製することは容易ではなく、InGaN
量子井戸活性層においては、混晶組成揺らぎが生じてい
ると考えられている。従来の半導体デバイスの常識から
言えば、このような組成揺らぎはデバイス特性を悪化さ
せる要因となり、根絶すべきものである。しかしなが
ら、窒化物半導体レーザにおいては、逆に組成揺らぎの
おかげで特性の良い素子が実現しているという指摘があ
る。例えば、秩父他はAppl.Phys.Lett.,vol.71p.2346(1
997)の中で、InGaN量子井戸のカソードルミネッセンス
(CL)像の観察結果からIn組成揺らぎやキャリアの拡散長
について考察を行い、従来の半導体材料に比べて桁違い
に欠陥密度の高い窒化物において高い発光効率が実現し
ているのは、In組成揺らぎのつくる電子(あるいは正
孔)のポテンシャル揺らぎがキャリアを局在化し、非輻
射中心へのキャリア捕獲を抑制しているためであると推
察している。この議論が正しければ、欠陥密度を低減し
なくても組成揺らぎを大きくすることで発光効率が向上
し、デバイス特性が向上することが期待される。しかし
ながら、レーザ素子では光学利得がデバイス特性に関わ
るため、In組成揺らぎによって引き起こされる状態密度
の変化が利得特性を大きく変え、事情は複雑である。例
えば、Chow他はAppl.Phys.Lett.,vol.71p.2608(1997)の
中で組成揺らぎは利得スペクトルの幅を広げるため、揺
らぎにより利得ピーク値が下がり、しきい値電流密度が
上がると理論予測している。
【0005】一方、活性層のIn組成揺らぎを制御する
技術として、特開平11−340580号公報では、フ
ォトルミネッセンス(以下、「PL」と略記する)ピー
ク波長分布から測定される活性層内の組成均一性を向上
させることにより、多波長発振を防止できるとされてい
る。同公報には、従来の半導体レーザの技術水準に関
し、「InGaN混晶は非常に混ざりにくいことが知ら
れており、非混晶領域が大きく、且つ、In組成比が
0.2以下と小さい領域においても、In組成比の増加
に伴い組成分離している割合が大きくなるという問題が
ある。この結果、In組成比が0.15程度のInGa
N層において、200μm程度のマクロな領域で見たフ
ォトルミネッセンス(PL)スペクトルの半値幅は、組
成分離による結晶内不均一を反映して非常に大きく、良
い結晶でも150meVである。」ことを示している。
これに対して同公報記載の半導体レーザは、品質の良好
なSiC基板を用い、結晶成長速度を調整することによ
り、PLピーク波長分布を約90meVに低減でき、多
波長発振を防止できることが示されている。
【0006】しかしながら同公報記載の技術では、PL
ピーク波長分布を低減した半導体レーザの開示は、PL
ピーク波長分布約90meVのものにとどまり、これ以
下の揺らぎの半導体レーザについての具体的開示はな
い。すなわち、PLピーク波長分布をさらに低減した場
合、レーザ特性にどのような影響を与えるか、というこ
とについては明らかにされていない。
【0007】このように、In組成揺らぎがレーザ特性に
及ぼす効果はまだ総合的に理解されたという状況に至っ
ておらず、レーザの活性層InGaN量子井戸において組成
揺らぎがどうあるべきかという基本的な疑問が解決され
ないままとなっている。
【0008】ところで、青色レーザの用途として最も注
目されているのは、DVDなどの光ディスクに対する書き
込みや読み込みの光源としての用途である。青色レーザ
の光出力としては、読み込み時には3mW程度の出力が、
書き込み時には30mW程度の出力が必要になると言われて
いる。そして、書き込みを伴うDVD-RAMなどに搭載する
レーザ(以下高出力仕様レーザと呼ぶ)においては、30m
Wという高い光出力を得るために共振器ミラー面の片面
(光出射側と逆側の面)だけを高反射コーティングする
のが望ましいと考えられている。また、読み込みしか行
わないDVD-ROMやポータブルDVDプレーヤーなどに搭載す
るレーザ(以下低出力仕様レーザと呼ぶ)においては、
低出力動作でのしきい値電流密度を下げるために2つの
共振器ミラーをともに高反射コーティング(以下、HRコ
ーティングと称する)するのが望ましいと考えられてい
る。
【0009】高出力仕様レーザでは70℃において、30mW
出力で5000時間以上の素子寿命が必要と考えられてい
る。それにもかかわらず、中村他がJSAPInternationalN
o.1pp.5-17(2000)に述べているように、これまでのとこ
ろ、60℃においても、30mW出力で500時間程度の素子寿
命しか実現していない。30mWでの動作電流を低減するこ
とができれば、この寿命は長くなると考えられ、今後よ
り低しきい値の高出力レーザが必要となる。
【0010】また、低出力仕様レーザでは、電池を電源
に用いたポータブルDVDプレーヤーの用途を考えると低
消費電力が要求される。そのために、まず第一に、レー
ザの基本的な特性であるしきい値電流密度を低減するこ
とが必要となる。しかしながら、窒化物半導体レーザに
おいては、従来の他の半導体レーザのように、1kA/cm 2
未満のしきい値電流密度は報告されておらず、著しくし
きい値電流密度が高いという状況にある。
【0011】以上のように、青色レーザは、用途に応じ
て異なる仕様、構成が採用される。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明はこうした背景
を鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするとこ
ろは、高出力仕様、低出力仕様などの半導体レーザの、
それぞれの仕様に応じて、活性層のIn組成揺らぎやバ
ンドギャップエネルギーの揺らぎを高度に制御し、これ
により、しきい値電流密度を飛躍的に低減する手法を提
供するものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明に係る半導体レー
ザは、以下の事項により特定される。 [1]窒化ガリウム系材料またはサファイアからなる基
板上に、クラッド層と、InxAlyGa1-x-yN(0<
x<1、0≦y≦0.2)発光層を含む量子井戸構造の
活性層と、を含む窒化ガリウム系半導体層が積層した構
造を有し、量子井戸一個あたりのしきい値モード利得が
12cm-1以下であり、前記発光層のバンドギャップエ
ネルギーの微視的揺らぎの標準偏差が75〜200me
Vであることを特徴とする窒化物半導体レーザ。 [2]窒化ガリウム系材料またはサファイアからなる基
板上に、クラッド層と、InxAlyGa1-x-yN(0<
x<1、0≦y≦0.2)発光層を含む量子井戸構造の
活性層と、を含む窒化ガリウム系半導体層が積層した構
造を有し、量子井戸一個あたりのしきい値モード利得が
12cm-1以下であり、前記活性層の微分利得dg/d
nが、 0.5×10-20(m2)≦dg/dn≦0.7×10
-20(m2) であることを特徴とする窒化物半導体レーザ。 [3]窒化ガリウム系材料またはサファイアからなる基
板上に、クラッド層と、InxAlyGa1-x-yN(0<
x<1、0≦y≦0.2)発光層を含むn個の量子井戸
からなる量子井戸構造の活性層と、を含む窒化ガリウム
系半導体層が積層した構造を有し、内部損失αi[c
-1]が、 αi≦12×n−αm (共振器端面のミラー損失をαm[cm-1]とする。)で
あり、前記発光層のバンドギャップエネルギーの微視的
揺らぎの標準偏差が75〜200meVであることを特
徴とする窒化物半導体レーザ。 [4]窒化ガリウム系材料またはサファイアからなる基
板上に、クラッド層と、InxAlyGa1-x-yN(0<
x<1、0≦y≦0.2)発光層を含むn個の量子井戸
からなる量子井戸構造の活性層と、を含む窒化ガリウム
系半導体層が積層した構造を有し、内部損失αi[c
-1]が、 αi≦12×n−αm (共振器端面のミラー損失をαm[cm-1]とする。)で
あり、前記活性層の微分利得dg/dnが、0.5×1
-20(m2)≦dg/dn≦0.7×10-20(m2)で
あることを特徴とする窒化物半導体レーザ。 [5]窒化ガリウム系材料またはサファイアからなる基
板上に、クラッド層と、InxAlyGa1-x-yN(0<
x<1、0≦y≦0.2)発光層を含むn個の量子井戸
からなる量子井戸構造の活性層と、を含む窒化ガリウム
系半導体層が積層した構造を有し、スロープ効率S[W/
A]が、下記式
【0014】
【数5】
【0015】R1:レーザ出射方向側の共振器端面の反射
率 R2:レーザ出射方向と逆側の共振器端面の反射率 αm:ミラー損失 を満たし、前記発光層のバンドギャップエネルギーの微
視的揺らぎの標準偏差が75〜200meVであること
を特徴とする窒化物半導体レーザ。 [6]窒化ガリウム系材料またはサファイアからなる基
板上に、クラッド層と、InxAlyGa1-x-yN(0<
x<1、0≦y≦0.2)発光層を含むn個の量子井戸
からなる量子井戸構造の活性層と、を含む窒化ガリウム
系半導体層が積層した構造を有し、スロープ効率S[W/
A]が、下記式
【0016】
【数6】
【0017】R1:レーザ出射方向側の共振器端面の反射
率 R2:レーザ出射方向と逆側の共振器端面の反射率 αm:ミラー損失 を満たし、前記活性層の微分利得dg/dnが、 0.5×10-20(m2)≦dg/dn≦0.7×10
-20(m2) であることを特徴とする窒化物半導体レーザ。 [7]窒化ガリウム系材料またはサファイアからなる基
板上に、クラッド層と、InxAlyGa1-x-yN(0<
x<1、0≦y≦0.2)発光層を含むn個の量子井戸
からなる量子井戸構造の活性層と、を含む窒化ガリウム
系半導体層が積層した構造を有し、共振器長が200μ
m以上であり、共振器端面の両面に反射率80%以上1
00%未満の高反射コーティング膜を備えた窒化物半導
体レーザであって、スロープ効率が1.4/n[W/A]以
上であり、前記発光層のバンドギャップエネルギーの微
視的揺らぎの標準偏差が75〜200meVであること
を特徴とする窒化物半導体レーザ。 [8]窒化ガリウム系材料またはサファイアからなる基
板上に、クラッド層と、InxAlyGa1-x-yN(0<
x<1、0≦y≦0.2)発光層を含むn個の量子井戸
からなる量子井戸構造の活性層と、を含む窒化ガリウム
系半導体層が積層した構造を有し、共振器長が200μ
m以上であり、共振器端面の両面に反射率80%以上1
00%未満の高反射コーティング膜を備えた窒化物半導
体レーザであって、スロープ効率が1.4/n[W/A]以
上であり、前記活性層の微分利得dg/dnが、 0.5×10-20(m2)≦dg/dn≦0.7×10
-20(m2) であることを特徴とする窒化物半導体レーザ。 [9]窒化ガリウム系材料またはサファイアからなる基
板上に、クラッド層と、InxAlyGa1-x-yN(0<
x<1、0≦y≦0.2)発光層を含む量子井戸構造の
活性層と、を含む窒化ガリウム系半導体層が積層した構
造を有し、フォトルミネッセンスピーク波長分布が40
meV以下であり、前記発光層のバンドギャップエネル
ギーの微視的揺らぎの標準偏差が75〜200meVで
あることを特徴とする窒化物半導体レーザ。 [10]窒化ガリウム系材料またはサファイアからなる
基板上に、クラッド層と、InxAlyGa1-x-yN(0
<x<1、0≦y≦0.2)発光層を含む量子井戸構造
の活性層と、を含む窒化ガリウム系半導体層が積層した
構造を有し、フォトルミネッセンスピーク波長分布が4
0meV以下であり、前記活性層の微分利得dg/dn
が、 0.5×10-20(m2)≦dg/dn≦0.7×10
-20(m2) であることを特徴とする窒化物半導体レーザ。 [11][9]または[10]に記載の窒化物半導体レ
ーザであって、量子井戸一個あたりのしきい値モード利
得が12cm-1以下であることを特徴とする窒化物半導
体レーザ。 [12][1]乃至[11]いずれかに記載の窒化物半
導体レーザであって、量子井戸一個あたりのしきい値モ
ード利得が8cm-1以下であることを特徴とする窒化物
半導体レーザ。 [13][1]乃至[12]いずれかに記載の窒化物半
導体レーザであって、量子井戸の井戸数が3以下である
ことを特徴とする窒化物半導体レーザ。 [14][1]乃至[13]いずれかに記載の窒化物半
導体レーザであって、前記基板は、表面転位密度が10
8個/cm2未満の窒化ガリウム系半導体基板であること
を特徴とする窒化物半導体レーザ。 [15]窒化ガリウム系材料またはサファイアからなる
基板上に、クラッド層と、InxAlyGa1-x-yN(0
<x<1、0≦y≦0.2)発光層を含む量子井戸構造
の活性層と、を含む窒化ガリウム系半導体層が積層した
構造を有し、量子井戸一個あたりのしきい値モード利得
が12cm-1より大きく、前記発光層のバンドギャップ
エネルギーの微視的揺らぎの標準偏差が40meV以下
であることを特徴とする窒化物半導体レーザ。 [16]窒化ガリウム系材料またはサファイアからなる
基板上に、クラッド層と、InxAlyGa1-x-yN(0
<x<1、0≦y≦0.2)発光層を含む量子井戸構造
の活性層と、を含む窒化ガリウム系半導体層が積層した
構造を有し、量子井戸一個あたりのしきい値モード利得
が12cm-1より大きく、前記活性層の微分利得dg/
dnが、 dg/dn≧1.0×10-20(m2) であることを特徴とする窒化物半導体レーザ。 [17]窒化ガリウム系材料またはサファイアからなる
基板上に、クラッド層と、InxAlyGa1-x-yN(0
<x<1、0≦y≦0.2)発光層を含むn個の量子井
戸からなる量子井戸構造の活性層と、を含む窒化ガリウ
ム系半導体層が積層した構造を有し、内部損失αi[cm
-1]が、 αi>12×n−αm (共振器端面のミラー損失をαm[cm-1]とする。)で
あり、前記発光層のバンドギャップエネルギーの微視的
揺らぎの標準偏差が40meV以下であることを特徴と
する窒化物半導体レーザ。 [18]窒化ガリウム系材料またはサファイアからなる
基板上に、クラッド層と、InxAlyGa1-x-yN(0
<x<1、0≦y≦0.2)発光層を含むn個の量子井
戸からなる量子井戸構造の活性層と、を含む窒化ガリウ
ム系半導体層が積層した構造を有し、内部損失αi[cm
-1]が、 αi>12×n−αm (共振器端面のミラー損失をαm[cm-1]とする。)で
あり、前記活性層の微分利得dg/dnが、 dg/dn≧1.0×10-20(m2) であることを特徴とする窒化物半導体レーザ。 [19]窒化ガリウム系材料またはサファイアからなる
基板上に、クラッド層と、InxAlyGa1-x-yN(0
<x<1、0≦y≦0.2)発光層を含むn個の量子井
戸からなる量子井戸構造の活性層と、を含む窒化ガリウ
ム系半導体層が積層した構造を有し、スロープ効率S
[W/A]が、下記式
【0018】
【数7】
【0019】R1:レーザ出射方向側の共振器端面の反射
率 R2:レーザ出射方向と逆側の共振器端面の反射率 αm:ミラー損失 を満たし、前記発光層のバンドギャップエネルギーの微
視的揺らぎの標準偏差が40meV以下であることを特
徴とする窒化物半導体レーザ。 [20]窒化ガリウム系材料またはサファイアからなる
基板上に、クラッド層と、InxAlyGa1-x-yN(0
<x<1、0≦y≦0.2)発光層を含むn個の量子井
戸からなる量子井戸構造の活性層と、を含む窒化ガリウ
ム系半導体層が積層した構造を有し、スロープ効率S
[W/A]が、下記式
【0020】
【数8】
【0021】R1:レーザ出射方向側の共振器端面の反射
率 R2:レーザ出射方向と逆側の共振器端面の反射率 αm:ミラー損失 を満たし、前記活性層の微分利得dg/dnが、 dg/dn≧1.0×10-20(m2) であることを特徴とする窒化物半導体レーザ。 [21]窒化ガリウム系材料またはサファイアからなる
基板上に、クラッド層と、InxAlyGa1-x-yN(0
<x<1、0≦y≦0.2)発光層を含むn個の量子井
戸からなる量子井戸構造の活性層と、を含む窒化ガリウ
ム系半導体層が積層した構造を有し、共振器長が1mm
以下であり、共振器端面のうち、レーザ出射方向側の共
振器端面は、コーティング膜を備えずに前記活性層が露
出しているか、または、反射率20%以下のコーティン
グ膜を備えており、レーザ出射方向と逆側の共振器端面
に、反射率80%以上100%未満の高反射コーティン
グ膜を備えた窒化物半導体レーザであって、スロープ効
率が2.1/n[W/A]未満であり、前記発光層のバンド
ギャップエネルギーの微視的揺らぎの標準偏差が40m
eV以下であることを特徴とする窒化物半導体レーザ。 [22]窒化ガリウム系材料またはサファイアからなる
基板上に、クラッド層と、InxAlyGa1-x-yN(0
<x<1、0≦y≦0.2)発光層を含むn個の量子井
戸からなる量子井戸構造の活性層と、を含む窒化ガリウ
ム系半導体層が積層した構造を有し、共振器長が1mm
以下であり、共振器端面のうち、レーザ出射方向側の共
振器端面は、コーティング膜を備えずに前記活性層が露
出しているか、または、反射率20%以下のコーティン
グ膜を備えており、レーザ出射方向と逆側の共振器端面
に、反射率80%以上100%未満の高反射コーティン
グ膜を備えた窒化物半導体レーザであって、スロープ効
率が2.1/n[W/A]未満であり、前記活性層の微分利
得dg/dnが、 dg/dn≧1.0×10-20(m2) であることを特徴とする窒化物半導体レーザ。 [23][15]乃至[22]いずれかに記載の窒化物
半導体レーザであって、フォトルミネッセンスピーク波
長分布が40meV以下であることを特徴とする窒化物
半導体レーザ。 [24][15]乃至[23]いずれかに記載の窒化物
半導体レーザであって、前記基板は、表面転位密度が1
8個/cm2未満の窒化ガリウム系半導体基板であるこ
とを特徴とする窒化物半導体レーザ。
【0022】上記窒化物半導体レーザのうち、[1]〜
[14]は低出力仕様、低消費電力用途向けの半導体レ
ーザである。このレーザは、たとえばDVD用途に用い
る場合、読み込み専用の携帯型装置等に好適に用いられ
る。一方、[15]〜[24]は高出力仕様の半導体レ
ーザであり、たとえばDVD用途に用いる場合、書き込
み可能な装置等に好適に用いられる。
【0023】本発明は、活性層のIn組成分布やバンド
ギャップエネルギーの微視的揺らぎ等を所定範囲に規定
するものである。活性層の組成分布やバンドギャップエ
ネルギーの「揺らぎ」には、巨視的スケールにおける揺
らぎと、微視的スケールにおける揺らぎがある。巨視的
スケールにおける揺らぎとは、たとえば顕微PL(フォ
トルミネッセンス)測定等により測定可能な距離スケー
ルの揺らぎである。一方、微視的スケールにおける揺ら
ぎとは、これよりも近距離の揺らぎを意味する。従来技
術における「揺らぎ」とは、上記巨視的スケールにおけ
る揺らぎ、すなわち、PL測定により観測される揺らぎ
を意味するのが一般的であり、測定の原理上、1μm程
度以上の距離スケールにおけるゆらぎを意味していた。
【0024】前述した特開平11−340580号公報
に記載されているのも上記巨視的スケールにおける揺ら
ぎであり、これを低減させることにより多波長発振の防
止を図っている。しかしながら、多波長発振が起こると
いうことは、相当程度のIn組成揺らぎが存在すること
を意味しており、しきい値電流を制御する等の目的のた
めには、巨視的揺らぎをさらに低減するとともに、微視
的揺らぎについて制御することが不可欠となる。
【0025】微視的領域における揺らぎを制御すること
についての検討はこれまで報告された例はなく、かかる
揺らぎが素子性能に与える影響は知られていなかった。
また、このような微視的揺らぎを低減する具体的手段に
ついての知見は得られていなかった。巨視的スケールに
おける揺らぎを低減するためには、上記特開平11−3
40580号公報に記載されているように基板の転位密
度の低減や、活性層の成膜速度の調整によって、ある程
度実現することも可能である。しかしながら、本発明の
ように微視的揺らぎを低減するには、このような手段の
みでは実現困難であり、さらに高度な結晶成長の制御が
必要となる。
【0026】以上のように本発明に係る窒化物半導体レ
ーザは、従来、着目されることのなかった微視的スケー
ルにおける発光層組成分布やバンドギャップエネルギー
の揺らぎを制御し、あるいは、微分利得を一定範囲とし
ている。微視的スケールにおける発光層組成分布やバン
ドギャップエネルギーの揺らぎとは、キャリア拡散長
(約1μm)よりも短距離スケールにおける揺らぎとい
う意味である。実施例2および図15(カソードルミネ
ッセンス像)で後述するように、本発明では、サブミク
ロンオーダー、具体的には500nm以下のスケールに
おける微視的揺らぎを制御し、これにより発光層の局所
歪みを好適範囲に制御してしきい値電流の低減を図って
いる。
【0027】さらに本発明では、上記微視的揺らぎにつ
いて、量子井戸一個あたりのしきい値モード利得やレー
ザ内部損失の大きさに応じて、その最適範囲を規定して
いる。すなわち、低出力仕様のレーザに関しては、たと
えばしきい値モード利得を一定値以下の領域で微視的揺
らぎが所定範囲内にある半導体レーザを提案し、一方、
高出力仕様のレーザに関しては、たとえばしきい値モー
ド利得が一定値を超える領域で微視的揺らぎが所定範囲
内にある半導体レーザを提案するものである。
【0028】本発明に係る窒化物半導体レーザは、しき
い値電流密度が低く、消費電力が低い。したがって光デ
ィスク用光源等の用途に好適に用いることができる。以
下、本発明による窒化物半導体レーザのしきい値電流密
度が低減される理由を説明する。
【0029】本発明者らは、まず第一にInGaN量子井戸
活性層における混晶組成揺らぎがレーザ素子のしきい値
電流密度に及ぼす効果を明確にするため、理論的な研究
を行った。まず、In組成揺らぎによるバンドギャップの
空間変化を正規分布と仮定し、その標準偏差σgを組成
揺らぎの指標と考えた。そして、これに対応して、バン
ドオフセット比(3:7)に応じて、電子と正孔のポテンシ
ャルが空間分布していると考えた。電子、正孔ともにパ
ラボリックな分散関係を考え、電子についてはn=1の量
子準位のバンド、正孔についてはAバンドとBバンドのn=
1の量子準位のバンドを考慮し、電子、正孔の状態密度
を計算した。すると、揺らぎがない場合には鋭い立ち上
がりの階段関数となる量子井戸の状態密度が、揺らぎが
ある場合には立ち上がりが緩やかな誤差関数になること
が示される。このように、定量化された電子および正孔
の状態密度を用いると、様々な組成揺らぎをもつ量子井
戸について光学利得特性を計算することができる。
【0030】本発明者らは、電流注入時にキャリア(電
子および正孔)のフェルミエネルギーが空間的に一様で
あると仮定して、光学利得の計算を行った。この仮定は
組成揺らぎの空間的なスケールを意識して行ったもので
ある。すなわち、電流注入時にフェルミエネルギーが空
間的に一様であるという仮定は、キャリアの拡散長に比
べて組成揺らぎの空間的スケールが小さいことを意味す
る。キャリアの拡散長が1mm程度であるとすれば、組成
揺らぎはサブミクロン以下のスケールでなければならな
い。実際に、秩父他がAppl.Phys.Lett.,vol.71p.2346(1
997)で報告しているように、InGaN量子井戸のCL測定な
どで観察されるIn組成揺らぎのスケールは数十〜数百nm
程度であり、上記の仮定が妥当なものであると考えてい
る。
【0031】図1には揺らぎが小さい場合(σg=3meV)、
図2には揺らぎが大きい場合(σg=75meV)のInGaN量子井
戸について、室温(300K)での光学利得スペクトルのキャ
リア密度依存性を計算した結果を示す。まず、1x1019cm
-3のキャリア密度に着目すると、揺らぎの小さい場合に
は利得はまだ生じていないが、揺らぎが大きい場合には
すでに利得が生じていることがわかる。これは、揺らぎ
が大きい場合に、揺らいだポテンシャルの谷にキャリア
が流れ込むことによって、狭い領域にキャリアが集中
し、その領域で反転分布が実現していることに対応す
る。実際に図2に見られるように、利得は平均バンドギ
ャップエネルギー(EG0)よりも低エネルギー側の局在状
態で生じている。この場合、反転分布が起こり利得が生
じている領域は空間的に狭い領域であるが、反転分布の
実現していない領域で吸収損失が生じることはなく、こ
の領域が光に対して透明となることが前述のモデルから
理論的に証明できる。そのために、一部の領域で生じた
利得が全体で見てもそれなりの値の利得として観測され
ることになる。しかしながら、このような小さな領域
(状態密度)での利得はすぐに飽和するため、図2で見
られるように、キャリア密度を増加させたときの利得の
増加(すなわち微分利得)は小さく、また、利得のピー
クは徐々に高エネルギー側にシフトしていく。これに対
し、揺らぎが小さい場合には透明キャリア密度がある程
度大きいが、状態密度の急峻な立ち上がりを反映し利得
スペクトルは狭く微分利得も大きくなる。
【0032】図3に、様々な揺らぎ(σg)をもつInGaN
量子井戸についての最大光学利得のキャリア密度依存性
の計算結果を示す。前述のように、揺らぎの大きい系で
は透明キャリア密度が小さくなるという点で有利である
が、微分利得が小さいという欠点をもつ。しきい値キャ
リア密度という観点から揺らぎの存在が有利であるか否
かは、量子井戸一個あたりのしきい値モード利得に依存
する。図3の計算結果によれば、量子井戸一個あたりの
しきい値モード利得が12cm-1以下の場合には揺らぎ
が大きい方がしきい値キャリア密度が小さくなるが、逆
に量子井戸一個あたりのしきい値モード利得が12cm
-1を超える場合には揺らぎが小さい方が有利となってい
る。量子井戸一個あたりのしきい値モード利得は内部損
失、共振器ミラーの反射率、量子井戸数に依存するた
め、レーザ素子の設計によってIn組成揺らぎの功罪が入
れ替わることになる。
【0033】以上述べたように、In組成揺らぎには、透
明キャリア密度を下げるという利点と、微分利得を下げ
るという欠点とがあり、量子井戸一個あたりのしきい値
モード利得の大きさによって両者の効き方が変わり、そ
れによって活性層に望ましい揺らぎの度合いが決まって
くる。これまでに、In組成揺らぎがLD特性に及ぼす効果
についてはChow他がAppl.Phys.Lett.,vol.71p.2608(199
7)の中で理論予測を報告しているが、彼らは揺らぎが利
得スペクトルを広げる効果を取り扱っているだけで、揺
らぎにより透明キャリア密度を下がる効果は無視してい
る。したがって、彼らの結果では組成揺らぎは、レーザ
特性に悪影響を及ぼす因子として扱われている。
【0034】組成揺らぎの空間的なスケールがミクロン
オーダー以上と大きい場合には、キャリアがポテンシャ
ルの谷に集まることができず、彼らの計算のような描像
になると考えられる。しかし、ミクロンスケールでは均
一組成だがサブミクロンスケールで揺らぎが存在してい
るような活性層では、前述のような描像となり、微視的
揺らぎの存在がレーザ特性向上に寄与し得る。実際、サ
ブミクロンスケールの組成揺らぎが、前述の秩父他の報
告などによって実証されており、このような描像が実現
しているものと考えられる。本発明で議論するIn組成揺
らぎは上記のサブミクロンスケールの揺らぎであり、ミ
クロン以上のスケールの揺らぎではない。
【0035】図4と図5には、しきい値電流密度の揺ら
ぎ依存性を示す。図4は共振器の片面(光出射側と逆側
の面)のみをHRコートした場合、図5は共振器の両面を
HRコートした場合の計算結果である。いずれにおいて
も、活性層は3個の量子井戸からなり、内部損失は15c
-1としてある。ミラー損失は、片面HRコートで20cm
-1、両面HRコートで1cm-1とした。光閉じ込め係数を
一井戸あたり1%とすると、片面HRコートの場合は量子井
戸一個あたりのしきい値モード利得14cm-1程度に相当
し、両面HRコートの場合は量子井戸一個あたりのしきい
値モード利得6cm-1程度に相当する。図4では、In組
成揺らぎの度合いが小さいほどしきい値電流密度が低減
しており、特に揺らぎの標準偏差を40meV以下にするこ
とによって顕著なしきい値低減効果が予測される。一
方、図5では、In組成揺らぎを大きくした方がしきい値
が下がり、揺らぎの標準偏差を75〜200meVにすることに
よって顕著なしきい値電流密度低減効果が現れ、しきい
値電流密度は1kA/cm2以下に下がることが予測される。
上記の計算例以外の場合においても、量子井戸一個あた
りのしきい値モード利得が12cm-1よりも大きな値で
ある場合には揺らぎの標準偏差を40meV以下にすること
によってしきい値電流密度が低減され、一方、量子井戸
一個あたりのしきい値モード利得が12cm-1以下であ
る場合には揺らぎの標準偏差を75〜200meVにすることに
よってしきい値電流密度が低減されることが示される。
【0036】以上のように、しきい値モード利得(1井
戸あたり)が12cm-1以下の場合に揺らぎを75〜200meV
にするとしきい値キャリア密度が低減する。しきい値電
流密度はしきい値キャリア密度に比例する量であるか
ら、しきい値モード利得(1井戸あたり)が12cm-1以下
で揺らぎ75〜200meVのときにしきい値電流密度が低減さ
れる。
【0037】ここで、上記議論では、しきい値キャリア
密度としきい値電流密度が1対1に対応するものとして
取り扱った。ところが、これらは厳密には1対1に対応
する量ではない。正しくは、しきい値電流密度は、
[(しきい値キャリア密度)/(キャリアの再結合寿
命)]に比例するので、キャリア再結合寿命もしきい値
電流密度に関係する。以下、この点を考慮した取り扱い
を示す。
【0038】キャリア再結合寿命は、窒化物半導体の場
合、主に非輻射再結合寿命と一致すると考えられてお
り、非輻射再結合寿命を長くすることが、キャリア寿命
を長くし、しきい値電流密度の低減につながる。ところ
で、In組成揺らぎはキャリアが欠陥に捕まるのを抑制す
るので、非輻射再結合寿命を長くする効果がある。しか
し、揺らぎが大きい場合でも、キャリア密度が大きくな
るとキャリアがポテンシャルの谷を埋め尽くし外にまで
溢れてしまうので、欠陥に捕まりやすくなり、非輻射再
結合寿命は短くなる。これを具体的に計算した結果を図
7に示す。図からわかるように、揺らぎが75〜200meVの
範囲の場合、キャリア密度が1.5x1019cm-3未満で、非輻
射再結合寿命が顕著に長くなっている。そして、図3か
らわかるように、しきい値モード利得が8cm-1以下で
あれば、揺らぎ75〜200meVではしきい値キャリア密度1.
5×1019cm-3以下が実現される。以上のことから、しき
い値モード利得(1井戸あたり)12cm-1以下ではしきい
値キャリア密度の低減によりしきい値電流密度が低減さ
れる効果があるが、8cm-1以下になると、さらにキャ
リア寿命が長くなる効果が加わって、より顕著にしきい
値電流密度の低減が起こることがわかる。
【0039】次に、量子井戸一個あたりのしきい値モー
ド利得とレーザ素子構造の関連について述べる。しきい
値モード利得は内部損失とミラー損失の和になる。InGa
N系LDでは量子井戸1個あたりの光閉じ込め係数が1%
と見積もられるので、n個の量子井戸を活性層にもつレ
ーザ素子では、量子井戸一個あたりのしきい値モード利
得が12cm-1よりも大きな値であるということは、内
部損失αiが、 αi>12×n−αm を満たすことに対応する。逆に、12cm-1以下である
ということは、内部損失αiが、 αi≦12×n−αm を満たすことに対応する。なお、量子井戸一個あたりの
しきい値モード利得が8cm-1以下であるということ
は、内部損失αiが αi≦8×n−αm さらに、量子井戸一個あたりのしきい値モード利得は、
内部損失を通じてスロープ効率とも対応付けられる。波
長400nmの半導体レーザでは、理論限界のスロープ
効率が3[W/A]となるが、実際の素子におけるスロー
プ効率Sは、次式のように、3[W/A]に所定のファク
タを乗じた値となる。
【0040】
【数9】
【0041】この式と前記したαi>12×n−αm
ら、下記式が導かれる。
【0042】
【数10】
【0043】R1、R2の通常とり得る範囲を考慮し、共
振器長を1mm以下すると、上式は、S<2.1/n
[W/A]となる。また、前記したαi≦12×n−αm
ら、下記式が導かれる。
【0044】
【数11】
【0045】R1、R2の通常とり得る範囲を考慮し、共
振器長を200μm以上すると、上式は、S≧1.4/
n[W/A]となる。
【0046】一方、バンドギャップエネルギー揺らぎの
標準偏差は、In組成揺らぎや微分利得と換算可能であ
る。InxGa1-xN中のIn組成微視的揺らぎの標準偏
差Δxと上述したバンドギャップエネルギーの微視的揺
らぎの標準偏差の標準偏差σとの関係を次に説明する。
Osamuraらがジャーナル・オブ・アプライドフィ
ジックス、第46巻、3432頁、1975年に述べて
いるように、InxGa1-xNのバンドギャップエネルギ
ーは、 Eg(x)=3.40(1−x)+2.07x−1.0
x(1−x) (単位eV)と表される。この式を用いると、青色レー
ザーダイオードの活性層に用いるInGaNの組成の範
囲(x=0.15近傍:x=0.1〜0.3程度)で
は、dE g/dx=0.6(eV) となる。したがって、In組成xの空間分布の標準偏差
Δxとバンドギャップエネルギーの標準偏差σgとの関
係は、 Δx=σg/0.6(eV) となる。この関係により、前述の「バンドギャップエネ
ルギーの微視的揺らぎの標準偏差の標準偏差が40me
V以下であること」は「In組成微視的揺らぎの標準偏
差Δxが0.067以下であること」に言い換えること
ができ、「バンドギャップエネルギーの微視的揺らぎの
標準偏差の標準偏差が75〜200meVであること」
は「In組成微視的揺らぎの標準偏差Δxが0.125
〜0.333であること」と言い換えることができる。
【0047】なお、これまで述べた事項については、I
xAlyGa1-x-yN(0<x<1、0≦y≦0.2)
発光層を備えた素子に共通にあてはまるが、本発明にお
ける発光層は、特に、InxAlyGa1-x-yN(0<x
≦0.3、0≦y≦0.05)、あるいは、InxGa
1-xN(0<x≦0.3)の組成を有するものとするこ
とが好ましい。
【0048】また、バンドギャップエネルギー揺らぎの
標準偏差は微分利得と対応付けられる。図6は揺らぎの
標準偏差と微分利得の関係を前述の理論モデルに基づい
て計算した結果である。図より、揺らぎが大きいほど微
分利得が小さくなるのがわかる。揺らぎが大きい場合、
バンド端での状態密度の立ち上がりが緩やかになるの
で、キャリア注入による利得飽和が起こりやすく微分利
得は小さな値となる。これに対し、揺らぎが小さい場合
には、量子井戸の2次元性による階段関数の状態密度が
有効となり、大きな微分利得が得られる。このような機
構によって、組成揺らぎの度合いと微分利得の対応関係
が生じている。図6より、揺らぎの標準偏差が40meVで
の微分利得が1.0×10-16cm2(1.0×10-20m2)に対応し
ていることから、前述の「揺らぎの標準偏差が40meV以
下であること」は「微分利得が1.0x10- 20m2以上である
こと」と言い換えることもできる。また、図6より「揺
らぎの標準偏差が75〜200meVであること」は「微分利得
が0.5x10-20m2以上0.7x10-20m2以下」に対応する。
【0049】次に、本発明と従来技術との関係について
説明する。ここでは従来技術の代表例として、従来技術
1(IEEE JOURNAL OF SELECTED TOPICS IN QUANTUM ELE
CTRONICS, VOL.3, NO.3, JUNE 1997に記載)、従来技術
2、3(特開平11−340580号公報に記載)を挙
げ、これらと本発明との関係について説明する。
【0050】まず本発明は、基板として窒化ガリウム系
材料またはサファイアを用いた上で、活性層の組成分布
やバンドギャップエネルギーの揺らぎを規定している。
基板としてSiCを用いる技術もあるが、本発明におい
てはSiCを使用すると、しきい値電流を安定的に充分
に低減することが困難となる。SiC、サファイアおよ
びGaN系半導体の熱膨張率の大小関係は、 サファイア>GaN系半導体>SiC となっている。このため、SiC基板上にGaN系半導
体層を成膜後、冷却すると、基板に拘束されたGaN系
半導体層の水平面内に引っ張り歪みが残存する。したが
って、SiC基板を用いた半導体レーザでは、一般に、
活性層に引っ張り熱歪みが残存する。引っ張り歪みが残
存した場合、組成揺らぎ、特に微視的揺らぎを安定的に
調節することが困難となりやすい。
【0051】これに対してサファイア基板を用いた場合
は、GaN系半導体層の水平面内には圧縮熱歪みが残存
することとなる。圧縮歪みに対する半導体層の強度は、
引っ張り歪みに対する強度よりも高いことから、この場
合は、組成揺らぎを比較的安定に調節できる。また、G
aNやAlGaNからなる基板を用いた場合は、基板と
その上に形成されるGaN系半導体層が等しい熱膨張率
を有するため、GaN系半導体層中の残存熱歪みはほと
んど発生しない。このため、組成揺らぎ、特に微視的揺
らぎを安定的に調節することができる。
【0052】以上のことから、本願発明では基板として
窒化ガリウム系材料またはサファイアを用いている。
【0053】次に揺らぎや利得の数値範囲について本発
明と従来技術とを対比した結果を示す。従来技術1に記
載された半導体レーザの構造を図16に示す。このレー
ザはサファイア基板を用いた一般的な窒化ガリウム系レ
ーザの構造を示すものである。サファイア基板上に、G
aNバッファ層を介して、AlGaNクラッド層、In
GaN多重量子井戸(MQW)活性層が形成された層構
造となっている。
【0054】従来技術2、3には、SiC基板を用いた
窒化ガリウム系半導体レーザが開示されている。上記公
報には、従来の半導体レーザは、共振器内の活性層のフ
ォトルミネッセンス波長の分布が150meV程度であ
る(これを従来技術2とする)のに対し、同公報記載の
発明では90meV以下程度に低減されている(これを
従来技術3とする)と記載されている。SiC基板を用
いる理由については、同公報の段落161に以下のよう
に記載されている。すなわち、「従来の短波長半導体レ
ーザにおいては、ナイトライド系化合物半導体との格子
不整合が13%程度と非常に大きなサファイアを成長基
板として用いていたため、共振器内の活性層の転位密度
は1010cm-2程度であるが、ナイトライド系化合物半
導体においては、転位は非発光中心を形成しないのでデ
バイスの特性には影響しないと言われているので、この
様な転位密度を全く問題にせずにデバイス化が進められ
ていたが、上述の様に、転位密度と組成不均一とが相関
を示し、転位密度が小さくなると組成不均一も小さくな
るので、格子不整合が3%と大幅に低減されるSiC基
板を用いることにより、転位密度を109cm-2以下
に、少なくとも、107cm-2程度までは低減すること
ができ、それによって、多波長発振の抑制された短波長
半導体発光素子を実現することができる。」と記載され
ている。
【0055】本発明に係る低出力仕様の半導体レーザの
一例と上記従来技術との関係を図13および図14に示
す。図中、ハッチングを施した領域が本発明に係る窒化
物半導体レーザを含む領域である。
【0056】図13は、横軸をIn組成の微視的揺らぎ
(サブミクロンオーダーの揺らぎ)、縦軸をIn組成の
巨視的揺らぎ(PL波長分布;1ミクロン以上の距離ス
ケールの揺らぎ)としたものである。従来技術1には、
微分利得が5.8×10-17cm2と記載されており、こ
れは、活性層バンドギャップの巨視的揺らぎに換算する
と約100meVとなる。
【0057】従来技術では、いずれも巨視的揺らぎが大
きくなっている。従来技術1には巨視的揺らぎについて
の言及はないが、レーザ構造およびその作製プロセスを
考慮すると、従来技術2や3と同様の一般的な水準にあ
るものと考えられる。これに対して本発明に係る半導体
レーザの一例を示す図中斜線の領域は、40meV以下
と従来技術に比べて低い巨視的揺らぎとなっている。
【0058】図14は、横軸をIn組成の微視的揺らぎ
(サブミクロンオーダーの揺らぎ)、縦軸を一量子井戸
あたりのしきい値モード利得(cm-1)としたものであ
る。従来技術では、いずれも一量子井戸あたりのしきい
値モード利得が大きくなっている。従来技術に係る窒化
ガリウム系半導体レーザの内部損失は、通常、40cm
-1程度以上であり、量子井戸数が3以下であれば、ミラ
ー損失を考慮すると一量子井戸あたりのしきい値モード
利得は14cm-1以上となる。これに対して本発明は、
内部損失を抑えるための手段(実施例等で後述)を採用
することにより、一量子井戸あたりのしきい値モード利
得を12cm-1以下あるいは8cm-1以下に抑えてい
る。
【0059】次に本発明に係る高出力仕様の半導体レー
ザの一例と上記従来技術との関係を図17および図18
に示す。図中、ハッチングを施した領域が本発明に係る
窒化物半導体レーザを含む領域である。
【0060】図17は、横軸をIn組成の微視的揺らぎ
(サブミクロンオーダーの揺らぎ)、縦軸をIn組成の
巨視的揺らぎ(PL波長分布;1ミクロン以上の距離ス
ケールの揺らぎ)としたものである。従来技術では、巨
視的揺らぎおよび微視的揺らぎともに大きくなってい
る。
【0061】図18は、横軸をIn組成の微視的揺らぎ
(サブミクロンオーダーの揺らぎ)、縦軸を一量子井戸
あたりのしきい値モード利得(cm-1)としたものであ
る。従来技術では微視的揺らぎが大きくなっている。
【0062】
【発明の実施の形態】本発明における発光層のバンドギ
ャップエネルギーやIn組成の微視的揺らぎに関し、そ
の測定方法について説明する。前記したように、従来、
In組成揺らぎを測定する方法として顕微PL測定が利用
されてきたが、これではサブミクロンオーダーの微視的
揺らぎを観測することは困難である。そこで本発明者ら
は、サブミクロンオーダーの微視的揺らぎを観測できる
手法を見出した。以下、詳細に説明する。図8は、前述
の図9に示す半導体レーザに対して、発光寿命の温度変
化を測定した結果である。発光寿命は次のように測定し
た。まず、半導体レーザ試料にピコ秒チタンサファイア
レーザの第2高調波(波長370nm、出力5mW、繰
り返し周波数80MHz)の光を表面から照射して励起
した。発光はレンズで分光器に集光し、分光された光を
光電子増倍管で検出し、単一光子計数法によって時間分
解測定を行った。時間分解測定はストリークカメラを用
いて行うこともできる。温度は、液体ヘリウムを用いた
温度可変クライオスタットにより、5Kから300Kの
範囲で変化させた。発光寿命の温度変化はバンドギャッ
プエネルギーの微視的揺らぎの標準偏差と関係してい
る。微視的揺らぎがある場合、光励起された電子はIn
組成微視的揺らぎによって形成されたポテンシャル微視
的揺らぎの谷に捕まるため、自由に動けなくなり、欠陥
(非輻射中心)に捕まる確率が減り、発光寿命は長い値
となる。しかし、温度が高くなり、熱エネルギーによっ
て微視的揺らぎによるポテンシャル障壁を超えることが
できるようになると、電子は自由に動けるようになり非
輻射中心に捕まる確率が急増し、発光寿命も急激に短く
なる。図8で100K程度から発光寿命が短くなり始め
ているのは、この温度以上で熱励起の効果が効き始めて
いるからであると説明できる。定量的には、図8の曲線
は τPL -1=τ0 -1+AT1/2exp(−T0/T) (1) という式でフィッティングすることができる。ここで、
τPLは発光寿命、Tは温度、τ0、A、T0はフィッティ
ングのパラメータである。上記の式は次のように説明さ
れる。温度が低い場合には、電子は揺らぎによるポテン
シャルの谷に捕まってほとんど動けないため、そこでの
固有の寿命τ0によって再結合する。低温では上式の第
二項は効かず、第一項のみが効くので発光寿命はτ0
一定となる。温度が高くなると、電子の熱励起が起こる
が、揺らぎによるポテンシャル障壁の大きさをkT
0(kはボルツマン定数)とすれば、励起されるキャリ
アの割合はexp(−T0/T)に比例する。そして、
励起されたキャリアの一部は熱速度で動き回っている間
に欠陥(非輻射中心)に捕獲される。この捕獲の確率
は、Nvsで表される。ここで、Nは欠陥密度、vは熱
速度、sは捕獲断面積を表す。温度依存性のみに着目す
ると熱速度が温度の平方根に比例することより、 Nvs=AT1/2 と記述できる。したがって、温度が高くなると、上記の
メカニズムによって、非輻射再結合が活発化するため
に、キャリアの再結合速度は、AT1/2exp(−T0
T)、すなわち式(1)の第二項によって増加すること
になる。このように、フィッティングによって求められ
るパラメータT0はIn組成揺らぎの度合いの指標とな
るパラメータとなる。図8ではフィッティングによりT0
は460Kと求められる。
【0063】次に、パラメータT0と実際のバンドギャ
ップエネルギー揺らぎの関係について述べる。kT0
電子が自由に動けるために必要な熱エネルギーの大きさ
なので、空間的に分布する電子のポテンシャル微視的揺
らぎと比例関係にあるはずである。量子井戸のような2
次元系においてポテンシャル微視的揺らぎがある場合、
ポテンシャルの空間的な平均値以下のエネルギーの電子
は局在し(すなわち自由に動けない)、平均値以上のエ
ネルギーをもつ電子は自由に動けることが、古典的なパ
ーコレーション理論から導かれる。したがって、kT0
はポテンシャルの谷底から平均ポテンシャルまでのエネ
ルギーと考えられる。ポテンシャルの空間分布が正規分
布であるとし、その標準偏差をσeとすると、ポテンシ
ャルの谷は平均値から2σe程度低エネルギー側にある
ので、σe=0.5kT0となることが導かれる。InG
aNのバンドギャップエネルギーの微視的揺らぎの標準
偏差(標準偏差:σg)は、伝導帯(電子)のポテンシ
ャル微視的揺らぎと価電子帯(正孔)のポテンシャル微
視的揺らぎを加えたものになるので、「アプライド・フ
ィジックス・レターズ(APPLIED PHYSISCS LETTERS)、
第68巻、2541頁、1996年」においてMart
inらが述べているように、InGaN系の伝導帯と価
電子帯のバンドオフセット比を3:7とすると、σg
3.33σe=1.67kT0となる。この式を用いるこ
とによって、実験から求められるT0から、InGaN
のバンドギャップエネルギーの揺らぎ(標準偏差σg
を求めることができる。図8の場合、バンドギャップエ
ネルギーの微視的揺らぎの標準偏差の標準偏差σgとし
て、66meVという値が得られる。
【0064】図9の半導体レーザについて1μmの微小
スポット径でPL測定をした結果からは、PLピーク波
長の分布が±1nmに入っており、1μmを超えるサイズの
In組成揺らぎが存在しなかった。ところが、発光寿命の
温度依存性から求める方法で測定した場合には、バンド
ギャップエネルギーの揺らぎが観測される。このことか
ら、図9の半導体レーザに代表される従来の半導体レー
ザでは、PL測定では観測にかからない微視的揺らぎ、
すなわち、サブミクロンオーダーの揺らぎが存在してい
ることがわかる。
【0065】本発明においてIn組成やバンドギャップ
エネルギーの巨視的揺らぎを低減するための具体的手段
として、アンモニア分圧を低くすることが有効である。
たとえばアンモニア分圧を110hPa以下とし、窒化
ガリウム系半導体層の成長速度を適切に選択することに
よりバンドギャップエネルギーの巨視的揺らぎを20m
eV以下とすることができる。
【0066】このように巨視的揺らぎを低減した上でバ
ンドギャップエネルギーの微視的揺らぎの標準偏差を7
5〜200meVとするには、上記のようにアンモニア
分圧を低くしてレーザ構造を形成した後、比較的高温に
よる加熱処理を行うことが有効である。熱処理温度は、
850℃以上とし、より好ましくは900℃以上とす
る。上限についてはたとえば1200℃以下とする。処
理時間は、通常、40分以上必要となる。この熱処理
は、In組成の微視的揺らぎを形成するためのものであ
り、電極形成時のアニールのように低温による穏やかな
熱処理では目的を果たすことが困難である。
【0067】本発明において、内部損失を減らし量子井
戸一個あたりのしきい値モード利得を低減するために
は、p型SCH(Self Confinement Heterostructure)
層をノンドープとし、成長温度をたとえば1100℃以
上と高くすることが有効である。これにより内部損失を
減らすことができる。一般にSCH層のp型ドープには
Mgが用いられるが、Mgドープした場合、結晶性が低
下するとともに不純物準位が形成され、内部損失の低下
をもたらす原因となる。この影響を排除し、さらに成長
条件を適切に選択することによって内部損失を有効に低
減できる。
【0068】本発明において、フォトルミネッセンスの
ピーク波長分布(最大波長と最小波長の差)は、好まし
くは40meV以下、より好ましくは20meV以下と
する。このようにすることによってしきい値電流をより
効果的に低減できる。この値が大きすぎると、しきい値
電流が大きくなって消費電力が大きくなる。
【0069】本発明において、発光層のバンドギャップ
エネルギーの微視的揺らぎの標準偏差は、好ましくは7
5〜200meV、より好ましくは80〜150meV
である。また、In組成xの微視的揺らぎの標準偏差
は、好ましくは0.125〜0.333、より好ましく
は0.133〜0.266とする。このようにすること
によって半導体レーザのしきい値電流をより効果的に低
減できる。
【0070】本発明において、「発光層におけるIn組
成の微視的揺らぎ」、および、「バンドギャップエネル
ギーの微視的揺らぎの標準偏差」とは、空間分布におけ
る揺らぎ(変動)をいう。また、「微視的揺らぎ」と
は、前述したように、サブミクロオーダー以下の揺らぎ
をいう。従来行われていたPL測定では、通常、スポッ
ト径が1μm以上であり、測定の原理上、1μm以上の
距離スケールにおけるゆらぎが観測されていた。これに
対し本発明における微視的揺らぎとは、この方法では観
測し得ない狭い領域内の揺らぎをいう。
【0071】本発明において、活性層を多重量子井戸構
造とする場合、上記揺らぎは、各量子井戸層全体にわた
る揺らぎを意味する。
【0072】本発明における基板とは、レーザ等を構成
する層を成長させる際に下地となる基板をいう。基板の
表面転位密度とは、基板表面に存在する貫通転位の密度
をいう。
【0073】表面転位密度が108個/cm2未満の窒化
ガリウム系半導体基板は、以下に示すFIELO(Face
t-Initiated Epitaxial Lateral Overgrowth)あるいは
ペンディオエピタキシ法等により窒化ガリウム系半導体
層を形成後、成長に用いたサファイア等の基板を除去す
ることにより得ることができる。以下、これらの方法に
ついて説明する。
【0074】(FIELO)たとえば、サファイア等の
基板上に薄いGaNを形成し、その上にストライプ状の
SiO2マスクを形成する。マスク開口部にGaNを選
択横方向成長させることにより、表面転位密度の少ない
GaN層が得られる。これは転位がSiO2マスクでブロッ
クされるだけでなく、選択横方向成長時に基板水平方向
に曲げられる為である。この方法は、「応用物理 第6
8巻、第7号(1999年)第774頁〜第779頁」
等に記載されている。
【0075】(ペンディオエピタキシ法)たとえば、サ
ファイア等の基板上に低温バッファ層を形成した後、単
結晶からなるGaN層を形成する。次いでマスクを用い
て選択エッチングすることによりストライプ状に延びた
GaNのパターンを形成する。このGaNストライプの
上面または側面から結晶成長させることにより、表面転
位密度の少ない下地層を形成することができる。ペンデ
ィオエピタキシ法については、たとえば「Tsvetankas.Z
helevaet.Al.;MRSInternet J. Nitride Semicon
d.Res. 4S1、G3.38(1999)」等に記載されている。
【0076】また、以下のような手法を用いれば、さら
に転位密度を低減した基板を得ることもできる。すなわ
ち、サファイア基板上に直接、またはバッファ層を介し
て、窒化ガリウム系材料からなる単結晶層を形成する。
次いで、この単結晶層をエッチングして離間した島状の
形態とする。このような形態とされた単結晶層を起点と
して結晶成長させることにより、表面転位密度の少ない
下地層を形成することができる。なお、上記島状の形態
は、エッチングによらず、単結晶層成長条件を適切に選
択し、直接島状の形態を有する単結晶層を形成してもよ
い。
【0077】本発明における基板の表面転位密度は、1
8個/cm2未満であるが、より好ましくは107個/
cm2以下とする。基板の転位密度が高いと、In組成
やバンドギャップの微視的揺らぎを低減し、あるいは微
分利得を向上させても、素子寿命を向上させることは困
難である。表面転位密度を108個/cm2未満、特に1
7個/cm2以下とした場合は、上記微視的揺らぎの低
減等によりる作用との相乗作用が得られ、良好な素子特
性を維持しつつ素子寿命の向上を図ることができる。な
お、基板の表面転位密度は、エッチピットを測定する、
あるいは、断面部をTEM観察する等、公知の方法によ
り測定することができる。このような低転位密度の基板
は、上記島状の形態を有する単結晶層を形成し、これを
起点として結晶成長を行うことにより実現することがで
きる。
【0078】以上、低転位密度の窒化ガリウム系半導体
基板について述べたが、基板としてサファイアを用い、
その上に低転位密度の窒化ガリウム系半導体層を成長
し、レーザ構造を形成した構成とすることもできる。こ
の場合の窒化ガリウム系半導体層の転位密度の好ましい
範囲、およびその測定方法は、上記したのと同様であ
る。
【0079】本発明の下地層は窒化ガリウム系材料から
なるものであるが、ここでいう「窒化ガリウム系材料」
とは、AlGaN、GaN等、構成元素として窒素およ
びガリウムを含む材料をいう。ここで、下地層としてG
aNまたはAlGaNを用いた場合、光閉じ込め率を良
好にしつつ素子寿命の改善を図ることができる。窒化ガ
リウム系半導体レーザでは、通常、AlGaNからなる
クラッド層が用いられるが、良好な光閉じ込め率を実現
するためには、クラッド層のAl組成比を高く、膜厚を
厚くすることが望まれる。たとえば光ディスク用途に用
いる発光波長390〜430nmの半導体レーザにおい
ては、クラッド層の膜厚を1μm以上とすることが望ま
しく、Al組成比を、0.05以上、より好ましくは
0.07以上とすることが望まれる。このような場合に
おいて、下地層としてGaNまたはAlGaNを選択す
ることが有効となる。このようにすれば下地層とクラッ
ド層の熱膨張係数や格子定数が近似することとなり、異
種材料を下地層として用いた場合に比べ、クラッド層の
残留歪みが低減するため、高温動作時における活性層の
劣化を一層有効に防止できる。一方、クラッド層の膜厚
やAl組成を所望の範囲とすることが可能となり、光閉
じ込め率を良好にすることができる。
【0080】以上、本発明における基板について説明し
たが、発光層におけるIn組成やバンドギャップエネル
ギーの微視的揺らぎの標準偏差、微分利得が好適な範囲
にある窒化物半導体レーザを得るためには、基板の選択
だけでなく、発光層の成長条件等についても留意する必
要がある。たとえば、発光層を、アンモニアガスを含む
原料ガスを用いて有機金属気相成長法により形成するも
のとし、この際、アンモニアガスの分圧を110hPa
以下、より好ましくは95hPa以下とすれば、上記微
視的揺らぎ、微分利得が好適な範囲にある窒化物半導体
レーザを得ることができる。
【0081】本発明における「発光層」とは、活性層中
に含まれる層であって、反転分布により利得の発生する
層をいうものとする。量子井戸構造の活性層において
は、量子井戸層が本発明における発光層に相当し、量子
井戸構造以外の構造の活性層では、通常、活性層全体が
発光層となる。
【0082】本発明に係る低出力仕様のレーザにおいて
は、活性層の井戸数は3以下とすることが好ましい。し
きい値電流の大きさは井戸数に依存するので、このよう
にすることによって消費電力を低減できる。また、量子
井戸に対するキャリア注入を均一にできる。量子井戸数
が4以上になると、キャリア、特にホールの注入が不均
一となり、キャリア密度の不足した量子井戸において内
部損失の低下が顕著となる。なお、この点に関し、Dome
nらは、Appl.Phys.vol.73(1998),pp.2775-2777におい
て、井戸数が3の場合はキャリアの注入が均一となり、
井戸数5の場合は不均一となることを報告している。
【0083】
【実施例】はじめに、実施例で作製した半導体レーザの
反射率、ミラー損失、内部損失、しきい値モード利得の
測定方法について述べる。 (i)反射率 試作したレーザ共振器の反射率Rは、半導体の面をへき
開しただけの場合R=(n-1/n+1)2と表される(例えば末
松安晴伊賀健一共著光ファイバ通信入門オーム社)。但
し、nは半導体の屈折率である。GaNの屈折率は波長に
よっても違うが典型的な窒化物半導体レーザ波長である
400nmでは2.553程度であることが知られているので、反
射率は19%となる。一方高反射ミラーを得るには通常
誘電体多層膜を利用することが多い。これは、高い屈折
率と低い屈折率の誘電体を交互に形成することで高い反
射率を得ることが可能である。この時の反射率は使用す
る材料の屈折率と層厚と層数できまり、例えばTiO2(屈
折率2.31)とSiO2(屈折率1.44)を100nmづつ交互に形
成した場合の反射スペクトルを図12に示した。
【0084】図12にあるように波長400nm付近で大き
な反射率を有するスペクトルが得られた。これらのスペ
クトルは層数を増やすことで反射率を変えることがで
き、TiO2/SiO2のペアを1つ形成するとおよそ50%の反
射が得られ、3つにすると90%以上の反射率が得られ
る。従って、コーティング材料と層厚が分かれば反射率
の大きさを調べることが可能である。
【0085】形成された高反射コーティングの反射率を
測定するもう一つの手段として、半導体レーザを使用す
ることが考えられる。半導体レーザの端面の反射率R1、
R2から出てくる光出力P1とP2の関係は、P1/P2=(1-R1)
/(1-R2)×(R2/R1)0.5である。従って、P1とP2の光出力
比と片方の反射率が分かればもう一つの反射率が分か
る。特に片方がアンコートの場合19%の反射率が見込
まれるのでこの方法は有効である。 (ii)ミラー損失 ミラー損失はレーザの発振条件と共振器の反射率R1、
R2から求められる(例えば伊賀健一著「半導体レー
ザ」(オーム社))。レーザの共振器長をLとするとミ
ラー損失αmはαm=1/2L×ln(1/R1/R2)となる。従っ
て、共振器長とミラー反射率からミラー損失を求めるこ
とができる。
【0086】なお、通常の窒化物半導体レーザの高反射
コートにはTiO2/SiO2などの誘電体多層膜ミラーが用い
られ、反射率は80%以上である。この場合、両面HRコー
トの場合はミラー損失が1cm-1程度になる。また、片
面HRコートの場合、共振器長が400μm程度であれば、
ミラー損失が20cm-1程度になる。 (iii)内部損失 内部損失αiは電流―出力特性から調べることができ
る。反射率がR1、R2である半導体レーザにおいて、R1側
から出る光出力P1は
【0087】
【数12】
【0088】と表すことができる。ここで、Iは電流で
あり、Ithはしきい値電流であり、Vdは接合電位であ
る。Vdは発振波長に対応する光エネルギーをほぼ同じと
考えて良く、反射率やミラー損失が分かっている素子に
対しては、電流―光出力特性を調べれば内部損失が分か
る。 (iv)しきい値モード利得 レーザは利得と損失が釣り合ったところで発振をおこな
う。従って、しきい値モード利得は内部損失とミラー損
失の和で求めることができる。
【0089】実施例1 図11は本実施例に係る窒化物半導体レーザーの断面構
造図である。前述のFIELOにより作製した、表面転
位密度が5×107個/cm2の低転位n−GaN基板2
1上にSiドープn型Al0.1Ga0.9N(シリコン濃度
4×1017cm-3、厚さ1.2μm)からなるn型クラ
ッド層22,Siドープn型GaN(シリコン濃度4×
1017cm-3、厚さ0.1μm)からなるn型光閉じ込
め層23、In0.2Ga0.8N(厚さ3nm)井戸層とS
iドープIn0.05Ga0.95N(シリコン濃度5×1018
cm-3厚さ5nm)バリア層からなる多重量子井戸層2
4(井戸数3個)、Mgドープp型Al0.2Ga0.8Nか
らなるキャップ層25、アンドープGaN(厚さ0.1
μm)からなる光閉じ込め層26,Mgドープp型Al
0.1Ga0.9N(Mg濃度2×1017cm-3、厚さ0.5
μm)からなるp型クラッド層27、Mgドープp型G
aN(Mg濃度2×1017cm-3、厚さ0.1μm)か
らなるp型コンタクト層28を順次成長させて、レーザ
構造を形成した。レーザ構造の形成は、200hPaの
減圧MOVPE(有機金属気相エピタキシ)装置を用い
て行われた。窒素原料に用いたアンモニアの分圧は53
hPaであり、Ga、Al、In材料はTMG、TM
A、TMIを用いた。成長は、基本的には1050℃で
行った。ただし、InGaNからなる多重量子井戸活性
層24では780℃で、アンドープGaN(厚さ0.1
μm)からなる光閉じ込め層26では1150℃で成長
を行った。成長した試料を900℃で1時間熱処理した
後、ドライエッチングによりp型クラッド層27そして
p型コンタクト層28を含んだメサ型29を部分的に残
した後、SiO2絶縁膜30を形成した。また、メサ部
分の頭出しを露光技術により行い、リッジ構造を形成し
た。n型基板裏にはTi/Alからなるn電極31を形
成し、pコンタクト上には、Ni/Auからなるp電極
32を形成した。へき開によりレーザ共振器端面を形成
し、両面をTiO2/SiO2で高反射コーティング(反
射率80%)を行った。共振器長は300μmとした。
【0090】「従来の技術」に記載した図9のレーザ素
子(両面コート)と本実施例のレーザ素子の作製方法の
相違点は(1)成長時のアンモニア分圧が低いこと、
(2)成長後900℃で1時間熱処理していること、
(3)GaN(厚さ0.1μm)からなる光閉じ込め層
26がアンドープであることと成長温度が1150℃と
高いことである。(1)は活性層量子井戸の微視的揺ら
ぎ、巨視的揺らぎをともに小さくするための手法であ
る。(1)で揺らぎの小さい量子井戸を作製した後に、
(2)の熱処理を行うと、巨視的揺らぎを小さくしたま
まで微視的な揺らぎだけを大きくすることができること
を、発明者らは今回見出した。また、発明者らは、Ga
N光閉じ込め層26での光吸収がレーザ素子の内部損失
の主な原因となっていることを発見し、この層での光吸
収を低減するために、結晶性の向上させるために成長温
度を高くし、また、不純物準位を介した吸収を減らすた
めにMg添加を行わないことにした。得られた半導体レー
ザの諸特性を表1中のNO.1に示す。しきい値電流密
度は、0.8kA/cm2と低く、良好な性能を示し
た。
【0091】上記のようにして作製した半導体レーザに
ついて、以下の測定を行った。 顕微PL測定(1μm分解能)による巨視的組成揺ら
ぎの測定 微分利得測定(緩和振動測定)による微視的組成揺ら
ぎの測定 CL(カソードルミネッセンス)観察による微視的組
成揺らぎの測定 カソードルミネッセンスによる測定では、量子井戸活性
層上にキャップ層を形成した段階で成長を止めて得た評
価用サンプルを別途作製し、このサンプルに対し電子線
を照射して分光しながら特定の波長でのマッピングを行
なった。加速電圧は3kVとし、室温において測定を行
った。
【0092】1μm分解能の顕微PLで観察した結果、P
L波長分布20meV以下という結果が得られたが、緩
和振動測定による測定の結果、微視的揺らぎは100me
Vと求まった。また、CL像では400〜500nmの大きさの領
域が観測された(図15)。以上のことから、本実施例
で作製したレーザでは、巨視的な揺らぎはほとんど存在
しないがサブミクロンオーダーの微視的な揺らぎが適度
に存在することが分かった。
【0093】実施例2 本実施例に係る窒化物半導体レーザーの概略断面構造図
を図11に示す。但し、本実施例では井戸数を1として
いるので、量子井戸層24の構造は図示したものと若干
異なる。実施例1の半導体レーザは低出力仕様であるの
に対し、本実施例では高出力仕様となっている。以下、
この半導体レーザを作製した手順について説明する。ま
ず、FIELO法により作製した表面転位密度が5×1
7個/cm2の低転位n−GaN基板21上にSiドー
プn型Al0.1Ga0.9N(シリコン濃度4×1017cm
-3、厚さ1.2μm)からなるn型クラッド層22,S
iドープn型GaN(シリコン濃度4×1017cm-3
厚さ0.1μm)からなるn型光閉じ込め層23、In
0.2Ga0.8N(厚さ3nm)井戸層とSiドープIn
0.05Ga0.95N(シリコン濃度5×1018cm-3厚さ5
nm)バリア層からなる量子井戸層24(井戸数1
個)、Mgドープp型Al0.2Ga0.8Nからなるキャッ
プ層25、アンドープGaN(厚さ0.1μm)からな
る光閉じ込め層26,Mgドープp型Al0.1Ga0.9
(Mg濃度2×1017cm-3、厚さ0.5μm)からな
るp型クラッド層27、Mgドープp型GaN(Mg濃
度2×10 17cm-3、厚さ0.1μm)からなるp型コ
ンタクト層28を順次成長させて、レーザ構造を形成し
た。レーザ構造の形成は、200hPaの減圧MOVP
E(有機金属気相エピタキシ)装置を用いて行われた。
窒素原料に用いたアンモニアの分圧は53hPaであ
り、Ga、Al、In材料はTMG、TMA、TMIを
用いた。成長は、基本的には1050℃で行った。ただ
し、InGaNからなる多重量子井戸活性層24では7
80℃で、アンドープGaN(厚さ0.1μm)からな
る光閉じ込め層26では1150℃で成長を行った。ド
ライエッチングによりp型クラッド層27そしてp型コ
ンタクト層28を含んだメサ型29を部分的に残した
後、SiO2絶縁膜30を形成した。また、メサ部分の
頭出しを露光技術により行い、リッジ構造を形成した。
n型基板裏にはTi/Alからなるn電極31を形成
し、pコンタクト上には、Ni/Auからなるp電極3
2を形成した。へき開によりレーザ共振器端面を形成し
た後、光出射側と逆側の端面について、TiO2/Si
2で高反射コーティング(反射率95%)を行った。
なお、光出射側端面についてはコーティング膜を形成せ
ず、アンコートとした。共振器長は500μmとした。
【0094】得られた半導体レーザの諸特性を表1中の
NO.2に示す。しきい値電流密度は、0.8kA/c
2と低く、良好な性能を示した。
【0095】
【表1】
【0096】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、半
導体レーザのしきい値電流密度を飛躍的に低くすること
ができる。したがって、本発明により、光ディスク用光
源として、実用可能な窒化物半導体レーザが実現できる
ようになり、産業上の利用価値は非常に大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】揺らぎの標準偏差が3meVの場合の利得スペクト
ルである。
【図2】揺らぎの標準偏差が75meVの場合の利得スペク
トルである。
【図3】様々な揺らぎ(σg)をもつInGaN量子井戸につ
いての最大光学利得のキャリア密度依存性の計算結果を
示す図である。
【図4】しきい値電流密度の揺らぎ依存性を示す図であ
る。
【図5】しきい値電流密度の揺らぎ依存性を示す図であ
る。
【図6】揺らぎの標準偏差と微分利得の関係を計算した
結果を示す図である。
【図7】キャリア密度と非輻射再結合寿命の関係を示す
図である。
【図8】発光寿命の温度変化を測定した結果を示す図で
ある。
【図9】従来の半導体レーザの構造を示す図である。
【図10】従来の半導体レーザの構造を示す図である。
【図11】実施例に係る半導体レーザの構造を示す図で
ある。
【図12】TiO2とSiO2を交互に形成した多層膜の反射ス
ペクトルである。
【図13】本発明に係る半導体素子と従来の半導体素子
の関係を示す図である。
【図14】本発明に係る半導体素子と従来の半導体素子
の関係を示す図である。
【図15】カソードルミネッセンスの観察結果である。
【図16】従来の半導体レーザの構造を示す図である。
【図17】本発明に係る半導体素子と従来の半導体素子
の関係を示す図である。
【図18】本発明に係る半導体素子と従来の半導体素子
の関係を示す図である。
【符号の説明】
21 n−GaN基板 22 n型クラッド層 23 n型光閉じ込め層 24 量子井戸層 25 キャップ層 26 光閉じ込め層 27 p型クラッド層 28 p型コンタクト層 29 メサ型 30 SiO2絶縁膜 31 n電極
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 仁道 正明 東京都港区芝五丁目7番1号 日本電気株 式会社内 Fターム(参考) 5F073 AA13 AA74 AA83 BA06 CA17 CB05 DA07 DA21 EA23

Claims (24)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 窒化ガリウム系材料またはサファイアか
    らなる基板上に、クラッド層と、InxAlyGa1-x-y
    N(0<x<1、0≦y≦0.2)発光層を含む量子井
    戸構造の活性層と、を含む窒化ガリウム系半導体層が積
    層した構造を有し、量子井戸一個あたりのしきい値モー
    ド利得が12cm-1以下であり、前記発光層のバンドギ
    ャップエネルギーの微視的揺らぎの標準偏差が75〜2
    00meVであることを特徴とする窒化物半導体レー
    ザ。
  2. 【請求項2】 窒化ガリウム系材料またはサファイアか
    らなる基板上に、クラッド層と、InxAlyGa1-x-y
    N(0<x<1、0≦y≦0.2)発光層を含む量子井
    戸構造の活性層と、を含む窒化ガリウム系半導体層が積
    層した構造を有し、量子井戸一個あたりのしきい値モー
    ド利得が12cm-1以下であり、前記活性層の微分利得
    dg/dnが、 0.5×10-20(m2)≦dg/dn≦0.7×10
    -20(m2) であることを特徴とする窒化物半導体レーザ。
  3. 【請求項3】 窒化ガリウム系材料またはサファイアか
    らなる基板上に、クラッド層と、InxAlyGa1-x-y
    N(0<x<1、0≦y≦0.2)発光層を含むn個の
    量子井戸からなる量子井戸構造の活性層と、を含む窒化
    ガリウム系半導体層が積層した構造を有し、内部損失α
    i[cm-1]が、 αi≦12×n−αm (共振器端面のミラー損失をαm[cm-1]とする。)で
    あり、前記発光層のバンドギャップエネルギーの微視的
    揺らぎの標準偏差が75〜200meVであることを特
    徴とする窒化物半導体レーザ。
  4. 【請求項4】 窒化ガリウム系材料またはサファイアか
    らなる基板上に、クラッド層と、InxAlyGa1-x-y
    N(0<x<1、0≦y≦0.2)発光層を含むn個の
    量子井戸からなる量子井戸構造の活性層と、を含む窒化
    ガリウム系半導体層が積層した構造を有し、内部損失α
    i[cm-1]が、 αi≦12×n−αm (共振器端面のミラー損失をαm[cm-1]とする。)で
    あり、前記活性層の微分利得dg/dnが、 0.5×10-20(m2)≦dg/dn≦0.7×10
    -20(m2) であることを特徴とする窒化物半導体レーザ。
  5. 【請求項5】 窒化ガリウム系材料またはサファイアか
    らなる基板上に、クラッド層と、InxAlyGa1-x-y
    N(0<x<1、0≦y≦0.2)発光層を含むn個の
    量子井戸からなる量子井戸構造の活性層と、を含む窒化
    ガリウム系半導体層が積層した構造を有し、スロープ効
    率S[W/A]が、下記式 【数1】 R1:レーザ出射方向側の共振器端面の反射率 R2:レーザ出射方向と逆側の共振器端面の反射率 αm:ミラー損失 を満たし、前記発光層のバンドギャップエネルギーの微
    視的揺らぎの標準偏差が75〜200meVであること
    を特徴とする窒化物半導体レーザ。
  6. 【請求項6】 窒化ガリウム系材料またはサファイアか
    らなる基板上に、クラッド層と、InxAlyGa1-x-y
    N(0<x<1、0≦y≦0.2)発光層を含むn個の
    量子井戸からなる量子井戸構造の活性層と、を含む窒化
    ガリウム系半導体層が積層した構造を有し、スロープ効
    率S[W/A]が、下記式 【数2】 R1:レーザ出射方向側の共振器端面の反射率 R2:レーザ出射方向と逆側の共振器端面の反射率 αm:ミラー損失 を満たし、前記活性層の微分利得dg/dnが、 0.5×10-20(m2)≦dg/dn≦0.7×10
    -20(m2) であることを特徴とする窒化物半導体レーザ。
  7. 【請求項7】 窒化ガリウム系材料またはサファイアか
    らなる基板上に、クラッド層と、InxAlyGa1-x-y
    N(0<x<1、0≦y≦0.2)発光層を含むn個の
    量子井戸からなる量子井戸構造の活性層と、を含む窒化
    ガリウム系半導体層が積層した構造を有し、共振器長が
    200μm以上であり、共振器端面の両面に反射率80
    %以上100%未満の高反射コーティング膜を備えた窒
    化物半導体レーザであって、スロープ効率が1.4/n
    [W/A]以上であり、前記発光層のバンドギャップエネル
    ギーの微視的揺らぎの標準偏差が75〜200meVで
    あることを特徴とする窒化物半導体レーザ。
  8. 【請求項8】 窒化ガリウム系材料またはサファイアか
    らなる基板上に、クラッド層と、InxAlyGa1-x-y
    N(0<x<1、0≦y≦0.2)発光層を含むn個の
    量子井戸からなる量子井戸構造の活性層と、を含む窒化
    ガリウム系半導体層が積層した構造を有し、共振器長が
    200μm以上であり、共振器端面の両面に反射率80
    %以上100%未満の高反射コーティング膜を備えた窒
    化物半導体レーザであって、スロープ効率が1.4/n
    [W/A]以上であり、前記活性層の微分利得dg/dn
    が、 0.5×10-20(m2)≦dg/dn≦0.7×10
    -20(m2) であることを特徴とする窒化物半導体レーザ。
  9. 【請求項9】 窒化ガリウム系材料またはサファイアか
    らなる基板上に、クラッド層と、InxAlyGa1-x-y
    N(0<x<1、0≦y≦0.2)発光層を含む量子井
    戸構造の活性層と、を含む窒化ガリウム系半導体層が積
    層した構造を有し、フォトルミネッセンスピーク波長分
    布が40meV以下であり、前記発光層のバンドギャッ
    プエネルギーの微視的揺らぎの標準偏差が75〜200
    meVであることを特徴とする窒化物半導体レーザ。
  10. 【請求項10】 窒化ガリウム系材料またはサファイア
    からなる基板上に、クラッド層と、InxAlyGa
    1-x-yN(0<x<1、0≦y≦0.2)発光層を含む
    量子井戸構造の活性層と、を含む窒化ガリウム系半導体
    層が積層した構造を有し、フォトルミネッセンスピーク
    波長分布が40meV以下であり、前記活性層の微分利
    得dg/dnが、 0.5×10-20(m2)≦dg/dn≦0.7×10
    -20(m2) であることを特徴とする窒化物半導体レーザ。
  11. 【請求項11】 請求項9または10に記載の窒化物半
    導体レーザであって、量子井戸一個あたりのしきい値モ
    ード利得が12cm-1以下であることを特徴とする窒化
    物半導体レーザ。
  12. 【請求項12】 請求項1乃至11いずれかに記載の窒
    化物半導体レーザであって、量子井戸一個あたりのしき
    い値モード利得が8cm-1以下であることを特徴とする
    窒化物半導体レーザ。
  13. 【請求項13】 請求項1乃至12いずれかに記載の窒
    化物半導体レーザであって、量子井戸の井戸数が3以下
    であることを特徴とする窒化物半導体レーザ。
  14. 【請求項14】 請求項1乃至13いずれかに記載の窒
    化物半導体レーザであって、前記基板は、表面転位密度
    が108個/cm2未満の窒化ガリウム系半導体基板であ
    ることを特徴とする窒化物半導体レーザ。
  15. 【請求項15】 窒化ガリウム系材料またはサファイア
    からなる基板上に、クラッド層と、InxAlyGa
    1-x-yN(0<x<1、0≦y≦0.2)発光層を含む
    量子井戸構造の活性層と、を含む窒化ガリウム系半導体
    層が積層した構造を有し、量子井戸一個あたりのしきい
    値モード利得が12cm-1より大きく、前記発光層のバ
    ンドギャップエネルギーの微視的揺らぎの標準偏差が4
    0meV以下であることを特徴とする窒化物半導体レー
    ザ。
  16. 【請求項16】 窒化ガリウム系材料またはサファイア
    からなる基板上に、クラッド層と、InxAlyGa
    1-x-yN(0<x<1、0≦y≦0.2)発光層を含む
    量子井戸構造の活性層と、を含む窒化ガリウム系半導体
    層が積層した構造を有し、量子井戸一個あたりのしきい
    値モード利得が12cm-1より大きく、前記活性層の微
    分利得dg/dnが、 dg/dn≧1.0×10-20(m2) であることを特徴とする窒化物半導体レーザ。
  17. 【請求項17】 窒化ガリウム系材料またはサファイア
    からなる基板上に、クラッド層と、InxAlyGa
    1-x-yN(0<x<1、0≦y≦0.2)発光層を含む
    n個の量子井戸からなる量子井戸構造の活性層と、を含
    む窒化ガリウム系半導体層が積層した構造を有し、内部
    損失αi[cm-1]が、 αi>12×n−αm (共振器端面のミラー損失をαm[cm-1]とする。)で
    あり、前記発光層のバンドギャップエネルギーの微視的
    揺らぎの標準偏差が40meV以下であることを特徴と
    する窒化物半導体レーザ。
  18. 【請求項18】 窒化ガリウム系材料またはサファイア
    からなる基板上に、クラッド層と、InxAlyGa
    1-x-yN(0<x<1、0≦y≦0.2)発光層を含む
    n個の量子井戸からなる量子井戸構造の活性層と、を含
    む窒化ガリウム系半導体層が積層した構造を有し、内部
    損失αi[cm-1]が、 αi>12×n−αm (共振器端面のミラー損失をαm[cm-1]とする。)で
    あり、前記活性層の微分利得dg/dnが、 dg/dn≧1.0×10-20(m2) であることを特徴とする窒化物半導体レーザ。
  19. 【請求項19】 窒化ガリウム系材料またはサファイア
    からなる基板上に、クラッド層と、InxAlyGa
    1-x-yN(0<x<1、0≦y≦0.2)発光層を含む
    n個の量子井戸からなる量子井戸構造の活性層と、を含
    む窒化ガリウム系半導体層が積層した構造を有し、スロ
    ープ効率S[W/A]が、下記式 【数3】 R1:レーザ出射方向側の共振器端面の反射率 R2:レーザ出射方向と逆側の共振器端面の反射率 αm:ミラー損失 を満たし、前記発光層のバンドギャップエネルギーの微
    視的揺らぎの標準偏差が40meV以下であることを特
    徴とする窒化物半導体レーザ。
  20. 【請求項20】 窒化ガリウム系材料またはサファイア
    からなる基板上に、クラッド層と、InxAlyGa
    1-x-yN(0<x<1、0≦y≦0.2)発光層を含む
    n個の量子井戸からなる量子井戸構造の活性層と、を含
    む窒化ガリウム系半導体層が積層した構造を有し、スロ
    ープ効率S[W/A]が、下記式 【数4】 R1:レーザ出射方向側の共振器端面の反射率 R2:レーザ出射方向と逆側の共振器端面の反射率 αm:ミラー損失 を満たし、前記活性層の微分利得dg/dnが、 dg/dn≧1.0×10-20(m2) であることを特徴とする窒化物半導体レーザ。
  21. 【請求項21】 窒化ガリウム系材料またはサファイア
    からなる基板上に、クラッド層と、InxAlyGa
    1-x-yN(0<x<1、0≦y≦0.2)発光層を含む
    n個の量子井戸からなる量子井戸構造の活性層と、を含
    む窒化ガリウム系半導体層が積層した構造を有し、共振
    器長が1mm以下であり、共振器端面のうち、レーザ出
    射方向側の共振器端面は、コーティング膜を備えずに前
    記活性層が露出しているか、または、反射率20%以下
    のコーティング膜を備えており、レーザ出射方向と逆側
    の共振器端面に、反射率80%以上100%未満の高反
    射コーティング膜を備えた窒化物半導体レーザであっ
    て、スロープ効率が2.1/n[W/A]未満であり、前記
    発光層のバンドギャップエネルギーの微視的揺らぎの標
    準偏差が40meV以下であることを特徴とする窒化物
    半導体レーザ。
  22. 【請求項22】 窒化ガリウム系材料またはサファイア
    からなる基板上に、クラッド層と、InxAlyGa
    1-x-yN(0<x<1、0≦y≦0.2)発光層を含む
    n個の量子井戸からなる量子井戸構造の活性層と、を含
    む窒化ガリウム系半導体層が積層した構造を有し、共振
    器長が1mm以下であり、共振器端面のうち、レーザ出
    射方向側の共振器端面は、コーティング膜を備えずに前
    記活性層が露出しているか、または、反射率20%以下
    のコーティング膜を備えており、レーザ出射方向と逆側
    の共振器端面に、反射率80%以上100%未満の高反
    射コーティング膜を備えた窒化物半導体レーザであっ
    て、スロープ効率が2.1/n[W/A]未満であり、前記
    活性層の微分利得dg/dnが、 dg/dn≧1.0×10-20(m2) であることを特徴とする窒化物半導体レーザ。
  23. 【請求項23】 請求項15乃至22いずれかに記載の
    窒化物半導体レーザであって、フォトルミネッセンスピ
    ーク波長分布が40meV以下であることを特徴とする
    窒化物半導体レーザ。
  24. 【請求項24】 請求項15乃至23いずれかに記載の
    窒化物半導体レーザであって、前記基板は、表面転位密
    度が108個/cm2未満の窒化ガリウム系半導体基板で
    あることを特徴とする窒化物半導体レーザ。
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