JP2002030380A - 溶接継手靭性の優れた高張力鋼とその製造方法 - Google Patents

溶接継手靭性の優れた高張力鋼とその製造方法

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JP2002030380A
JP2002030380A JP2000211116A JP2000211116A JP2002030380A JP 2002030380 A JP2002030380 A JP 2002030380A JP 2000211116 A JP2000211116 A JP 2000211116A JP 2000211116 A JP2000211116 A JP 2000211116A JP 2002030380 A JP2002030380 A JP 2002030380A
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strength steel
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Tomohiko Yamamoto
智彦 山本
Naoki Saito
直樹 斎藤
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Abstract

(57)【要約】 【課題】小中入熱から大入熱までの広範囲な入熱量の溶
接の溶接熱影響部において、優れた靭性を有する高張力
鋼ならびにその製造方法を提供する。 【解決手段】重量%で、C:0.05%以下、Si:0.01〜
0.5 %、Mn:0.2 〜2.0 %、Ti:0.001 〜0.03%、
Mg:0.0005〜0.010 %、Al:0.01%以下、P:0.02
%以下、S:0.010 %以下を含有し、且つ、TiとNの
比が2.0 ≦Ti/N≦3.5 で、残部がFe及び不可避的
不純物からなり、Ti、Mg含有の酸化物及びその酸化
物を核として析出するTiNの一種もしくは二種以上
が、粒子径0.005 〜0.2 μmの大きさで1.0 ×105 〜1.
0 ×107 個/mm2 が分散析出している高張力鋼と、前
記組成の鋼をAc3点〜1300℃の温度に加熱し、Ac1
+50℃以上の温度で熱間圧延後空冷もしくは加速冷却す
る高張力鋼の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は造船、建築、土木、
橋梁、建設機械、産業機械、圧力容器、海洋構造物、ラ
インパイプなどの分野に用いられる溶接次手靭性の優れ
た溶接構造用の高張力鋼に関するものである。特に、T
S570MPa以上の母材強度を有する鋼について有効
で、鋼としては、厚板、薄板、鋼管、形鋼、条鋼、棒鋼
のいずれでもかまわない。
【0002】
【従来の技術】造船、建築、橋梁など溶接構造物の脆性
破壊防止の観点から、使用される鋼材の溶接熱影響部
(以下、HAZと略す)靱性の向上に関する研究が数多
く報告されてきた。更に、近年では、溶接施工能率の向
上のために、大入熱溶接(〜約250kJ/cm)への要求が
増大している。
【0003】大入熱溶接継手部のHAZ靭性の低下は、
ミクロ組織の結晶粒の粗大化が影響していることが知ら
れており、靭性改善には結晶粒(特に旧オーステナイト
粒:以下、旧γ粒と略す)の粗大化の抑制が効果的であ
る。鋼板のHAZの結晶粒の粗大化に対しては、例え
ば、特公昭55−26164号公報や特開昭52−17
314号公報に記載されているように、微細なTiN
や、ZrNなどをいずれも鋼中に微細分散させること
で、それらのピニング効果を利用して旧γ粒の粗大化を
防止する対策が開示されている。
【0004】しかしながら、このような窒化物は比較的
入熱量の低い溶接では溶解せずにピニングの効果を保持
し、旧γ粒の微細化に寄与するが、1400℃以上の高
温での滞留時間が長い大入熱溶接熱では旧γ粒のピニン
グに寄与する微細な窒化物が容易に溶解し、消滅してし
まう問題点がある。
【0005】一方、近年HAZ靱性の更なる向上を目的
として、溶鋼中で生成する酸化物を用いる技術が開示さ
れている。例えば、特開昭59−190313号公報に
記載されているように、溶鋼をTiあるいはTi合金で
脱酸し、次いでAl、Mgなどを添加することを特徴と
する溶接性の優れた鋼材の製造方法が開示されている。
これは、Ti酸化物がフェライトの変態核として作用
し、フェライト分率を増加させるという効果によるもの
で、従来、窒化物などの析出物によるピニング効果と異
なった方法でのHAZ部の靱性向上を図った。その後、
同種の発明として、特開昭61−79745号公報、特
開平5−43977号公報などでは、粒内変態核として
の酸化物の個数の増加させる工夫をするなど様々な発明
が開示されている。
【0006】特に、特開昭59−190313号公報に
記載されているように、これらの発明の骨子は、「γ→
α変態時のフェライト核生成、即ちフェライト組織の微
細化に利用可の含Ti酸化物を均一に微細分散させる・
・」ことであり、先に述べたような窒化物などによりピ
ニング効果を図るものではなく、冷却過程で生じるγ→
α変態時のフェライト変態を促進することで、粗大な脆
化組織の生成を抑制することを図り、組織の微細化を図
るのものである。これらの靱性改善方法すべて、粗大な
組織の中に、粒内でのフェライトを促進させるために、
変態核として、酸化物を利用するものである。
【0007】しかしながら、溶接構造物の大型化、軽量
化から、高張力鋼の要求が高まりつつあり、合金元素添
加量が増加する傾向にある。その場合、HAZでの焼入
れ性の増加から、HAZの組織がマルテンサイトやベイ
ナイトとなり従来のフェライト変態を利用するHAZ靱
性の向上対策は、有効ではなくなってきつつある。
【0008】また、従来は母材強度確保の容易さからC
が0.05%を超える鋼種が一般的に利用されてきてお
り、このような鋼種では焼入れ・焼戻しあるいは加工熱
処理(TMCP)による強度靭性の調整が実施されてい
るが、溶接時の予熱の回避、HAZ靭性の向上を考える
上で低C化は極めて有効かつ不可欠な技術となってきて
いる。例えば、特開平8−144019等に記載されて
いる極低C鋼では、広い範囲の冷却速度でベイナイト単
相組織となり、材質ばらつきを抑制する技術が開示され
ているが、このような冷却速度による組織変化が敏感で
ないベイナイト鋼に対しては、継手部の組織についても
フェライトやマルテンサイトではなく、ベイニティック
な組織となり、従来のフェライト変態を利用するHAZ
靱性の向上対策は利用できない。
【0009】以上のような観点から、低Cのベイニティ
ックな組織を主体とする鋼材において、母材靭性および
HAZ靱性の向上を図るためには、大入熱溶接時での旧
γ粒のピニング効果が期待できるような、高温でも溶解
しにくい酸化物・窒化物粒子などを鋼中に微細に分散で
きるような技術の開発が望まれる。
【0010】酸化物の導入方法として、鋼の溶製過程
で、Tiなどの脱酸元素を単独に添加する方法等がある
が、多くの場合、溶鋼保持中に酸化物の凝集合体がおこ
り粗大な酸化物が生成し、かえって鋼の清浄度を損ない
靱性を低下させてしまう。そこで、これらの酸化物の微
細化を図るために、先の例に述べたごとく、複合脱酸法
など様々な工夫がなされている。しかしながら、従来知
られている方法では、大入熱溶接熱時の結晶粒の粗大化
を阻止しうるほどの、微細な酸化物を分散させることは
できない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明者ら
は、C量の極めて低いベイニティックな組織を主体とす
る鋼材に対して、従来の複合脱酸方法を改良し、従来以
上に酸化物あるいは窒化物を微細かつ均一に分散させる
ことで、母材の靭性および大入熱溶接のHAZ靭性の優
れた高張力鋼の製造技術の確立を課題とした。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、以下の
通りである。重量%でC:0.05%以下、Si:0.
01〜0.5%、Mn:0.2〜2.0%、Ti:0.
001〜0.03%、Mg:0.0005〜0.010
%、Al:0.01%以下、P:0.02%以下、S:
0.010%以下を含有し、かつTiとNの比が2.0
≦Ti/N≦3.5であり、Ca:0.006%以下、
REM:0.02%以下、Cu:0.05〜1.5%、
Ni:0.05〜2.0%、Cr:0.01〜1.0
%、Mo:0.01〜0.5%、Nb:0.001〜
0.15%、V:0.001〜0.1%、B:0.00
01〜0.0050%の1種または2種以上を含有し、
残部がFeおよび不可避的不純物からなり、Ti、Mg
含有の酸化物およびその酸化物を核として析出するTi
Nの一種もしくは二種以上が、粒子径0.005〜0.
2μmの大きさで1.0×105 〜1.0×107 個/
mm2 が分散析出していることを特徴とする溶接継手靭
性の優れた高張力鋼である。その製造方法は、上記組成
の鋼塊およびスラブをAc3点〜1300℃の温度に再
加熱し、Ac1点+50℃以上で熱間圧延を完了し、圧
延後は、空冷、加速冷却、もしくは450℃以上700
℃未満の所定の温度まで加速冷却した後、当該温度域を
空冷するか、当該温度域で一定時間保持することを特徴
とする。
【0013】
【発明の実施の形態】Mgは、従来から強脱酸剤、脱硫
剤として鋼の清浄度向上により、HAZ靭性を向上させ
ることが知られている。更に、酸化物の分散を制御して
HAZ靭性を向上させる技術として、特開昭59−19
0313号公報に記載されているTi添加後、Mgを添
加する複合添加の技術が開示されている。しかしながら
その技術の目的は、先に引用したように、Mg添加によ
り粒内フェライトの変態核であるTi酸化物の増加を促
進することであり、酸化物をより微細に分散析出させて
ピニングによる結晶粒の細粒化を達成するものではな
い。
【0014】本発明者らは、Mgの有する強脱酸剤、脱
硫剤としての作用に着目して、Alよりも凝集粗大化が
起こりにくい性質を利用して、高強度・高靭性を達成し
やすい焼戻しマルテンサイト、ベイナイト、ベイニティ
ック・フェライト等のミクロ組織(以下、ベイニティッ
クな組織と略す)主体のTi添加型の高張力鋼において
も、製鋼工程での脱酸材の添加順序および量を制御する
ことで、酸化物、窒化物の微細分散析出を期待できる余
地があると考えた。
【0015】本発明者らは、低Cのベイニティック組織
を主体とする鋼材に対して、Ti添加で弱脱酸した溶鋼
中にMgを添加した時の酸化物、窒化物の状態を系統的
に調べた。その結果、Ti脱酸後、Mgをある条件で添
加することで、TiO、MgOあるいは(Ti、Mg)
O−TiN複合粒子の量が著しく増大し、ベイニティッ
クな組織主体の鋼材においてピニング効果により旧γ粒
が細粒化し、その結果、脆性破壊の破面単位となってい
る同じ方位のベイナイト組織単位(パケット)を微細化
でき、母材靭性が向上し、更にHAZ靭性も向上するこ
とを明らかにした。
【0016】この結晶粒が微細化した鋼材を電子顕微鏡
で観察した結果、0.2μm以下のMgO粒子あるいは
MgO−TiN複合粒子が多数存在していることが分か
った。更に、超高分解能電子顕微鏡の観察から、MgO
−TiN粒子間は結晶方位学的に良好な平衡関係をとっ
ていることが明らかとなった。このことはMgOがTi
Nの優先析出サイトとして作用しているものと推定さ
れ、この析出サイトが多数存在するために、TiNやそ
れらを元に析出される硫化物により結晶粒のピニング効
果が増加するものと考えられる。
【0017】更に、高温で滞留時間の長い大入熱溶接に
おいてはTiN粒子の溶解が生じ、それ単独では旧γ粒
のピニング効果は失われてしまうが、本発明では鋼中に
多数のTiO、MgO、MgO−TiN粒子が存在して
いることで、TiN粒子が溶解したとしても、依然とし
て微細なTiO、MgO粒子が存在するために高温でも
従来鋼以上に優れたピニング効果を発揮できる。
【0018】すなわち、本発明の特徴は、TiNなどの
窒化物を利用し結晶粒のピニングを図った従来鋼に比
べ、MgOを鋼中に微細分散させることでTiNと結晶
学的に良好な平衡関係を利用して、TiNの析出核を提
供し、TiNの個数の増加を図るとともに、TiNが溶
解してしまい、従来靭性改善効果が失われてしまった高
温域でも、MgO単独の効果により、従来にない優れた
結晶粒系の微細化効果を発揮できることである。
【0019】本発明では、Ti、Mg含有の酸化物およ
びその酸化物を核として析出するTiNとの複合析出物
の個々の大きさを0.005〜0.2μmと制限した。
これは粒子径が0.005μm未満の析出物では旧γ粒
の細粒化に有効な十分なピニング効果が得られず、ま
た、0.2μmを超える粒子径の析出物ではその粒子自
体が脆性破壊発生の起点となって、靭性低下の原因とな
るからである。さらに、平均粒子間隔が5μm超で分散
していると、分散粒子数が減少し、全体としての旧γ粒
のピニング力が低下して十分な細粒化効果が得られない
ため、平均粒子間隔が5μm以下で分散していることを
限定した。
【0020】粒子個数の測定方法は、鋼材より抽出レプ
リカを作製し、特性X線検出器付きの透過型電子顕微鏡
で0.001〜0.2μm以上の大きさの粒子の個数を
少なくとも1000μm2 以上の面積について測定し、
単位面積当たりの個数に換算する。例えば、2万倍の倍
率にて1視野を100mm×80mmとして観察した場
合、1視野当たりの観察面積は20μm2 であるから少
なくとも50視野について観察を行う。この時の0.0
05〜0.2μm以上の粒子の個数が200個であれ
ば、粒子個数は1mm2 当たり2×105 個と換算でき
る。
【0021】次に個数を測定した粒子のうち、少なくと
も50個以上について、TiO、MgO、(Mg、T
i)−TiNの存在割合を測定し、先に求めた粒子個数
にこの存在割合をかけることで、TiO、MgO、(M
g、Ti)O−TiNの個数を求める。
【0022】本鋼に用いたTi、Mgの添加方法である
が、最初にSi、Mnを添加した後、まずTiを添加し
て溶鋼中の酸素量を調整し、Mgを添加する。Tiを先
に添加するのは、溶鋼中の酸素量の調節と共に先にでき
るTi酸化物をMgで還元するためである。最適なMg
添加量は、Ti添加後、溶鋼中に存在する酸素量などに
依存するが、実験では、その時の酸素濃度はTi添加量
に依存し、TiとMgの添加量を適正な範囲で制御すれ
ば良い。なお、Mgの添加方法については、通常の大気
圧下で溶製する場合にはMgとNiやSiなどからなる
合金として、比較的比重の重い合金による添加が望まし
い。
【0023】以下、本発明の成分の限定理由について述
べる。なお、以下の文中での%は全て重量%である。 C:Cは鋼の母材強度を向上させるが、溶接性の観点か
らは溶接熱影響部の硬化を抑制する上で低いことが望ま
しい。また0.05%以下の低Cとすることで、マルテ
ンサイトやパーライトといった硬質相の生成を抑制し、
ベイニティックな組織を主体とすることで安定した強度
・靭性が得られるため、その上限を0.05%とした。
【0024】Si:Siは鋼材の強化のみならず、製鋼
上脱酸元素として必要な元素であり、鋼中に0.01%
以上の添加が必要であるが、0.5%を超えると島状マ
ルテンサイト形成を助長してHAZ靭性を著しく低下さ
せるので、Siの範囲は0.01%〜0.5%とする。
【0025】Mn:Mnは母材の強度および靭性の確保
に必要な元素であるが、2.0%を超えるとHAZ靭性
を著しく阻害するが、逆に0.2%未満では、母材の強
度確保が困難になるため、その範囲を0.2〜2.0%
とする。
【0026】Al:Alは通常脱酸材として添加される
が、本発明においては、0.01%を超えて添加される
とMgの添加の効果を阻害するために、Alの範囲は
0.01%以下とする。
【0027】Ti:Tiは、脱酸材として、更には酸化
物、窒化物形成元素として結晶粒の細粒化効果の期待で
きる元素であるが、多量の添加は炭化物の形成による靭
性の低下をもたらすために、その上限を0.03%にす
る必要があるが、所定の効果を得るためには0.001
%以上の添加が必要である。したがって、Tiの範囲を
0.001〜0.03%とする。
【0028】Mg:Mgは主に脱酸材として添加される
が、0.010%を超えて添加されると、粗大酸化物の
生成により母材およびHAZの靭性が低下する。しかし
ながら、0.0005%未満の添加では、前述のHAZ
靭性の改善に必要な旧γ粒微細化のためのピニング粒子
として働かないために、その添加を0.0005〜0.
010%と限定する。
【0029】P:Pは鋼の靭性に影響を与える元素であ
り、0.02%を超えて含有すると鋼材の母材およびH
AZの靭性を著しく阻害するので、その含有される上限
を0.02%とする。
【0030】S:Sは0.010%を超えて含有すると
鋼材の母材およびHAZの靭性を著しく阻害するため、
その上限を0.010%とした。本発明においてはNの
範囲は記述しないが、TiNの析出を考慮して、Tiと
の比(Ti/N)が2.0以上3.5以下であることを
限定する。
【0031】Ca:Caは硫化物系介在物を形態制御し
てHAZ靭性を向上するのに有効であるが、0.006
%を超えて添加すると鋼中介在物を形成して鋼の性質を
圧下させるため、0.006%を上限とした。
【0032】REM:REMはオキシサルファイドとな
って、オーステナイト粒の粒成長を抑制してHAZ靭性
の向上に寄与するが、0.02%を超えて添加すると鋼
の清浄度を損なうために、その上限を0.02%とし
た。
【0033】Cu:Cuは靭性を低下させずに、強度を
上昇できる元素であるが、その効果を得るためには、
0.05%以上の添加が必要であり、1.5%を超える
と鋼片加熱時や溶接時に熱間での割れが生じ易くなる。
したがって、その含有量を0.05〜1.5%とする。
【0034】Ni:Niは靭性および強度の改善に有効
な元素である。その効果を得るためには、0.05%以
上の添加が必要であり、多量に入れるを高価となる上、
焼入れ性を増加させて溶接性が低下するため、その上限
を2.0%とした。
【0035】Cr:Crは析出強化により鋼材の強度を
上昇させるために、0.01%以上の添加が有効である
が、多量に添加すると焼入れ性が増加し、靭性が低下す
る。したがって、その上限を1.0%とする。
【0036】Mo:Moは0.01%以上の添加で、大
幅に焼入れ性を向上させると同時に、炭窒化物を形成し
て強度が増加に有効である。しかしながら、0.5%を
超えた多量の添加は必要以上の強化とともに、島状マル
テンサイトを生成しやすくして、靭性の低下をもたらす
ため、その範囲を0.01〜0.5%とする。
【0037】Nb:Nbも炭窒化物を形成し、強度の向
上に効果のある元素であるが、0.001%未満の添加
では、その効果が無く、0.15%を超える添加では、
逆に靭性の低下を招くために、その範囲を、0.001
〜0.15%以下とする。
【0038】V:Vは炭窒化物を形成し、強度の向上に
効果のある元素であるが、0.001%未満の添加で
は、その効果が無く、0.1%を超える添加では、逆に
靭性の低下を招くために、その範囲を、0.001〜
0.1%以下とする。
【0039】B:Bは一般に、固溶すると焼入れ性を増
加させるが、またBNとして固溶Nを低下させ、HAZ
靭性を向上させる元素である。したがって、その効果を
利用できる0.0001%以上の添加し、靭性の低下を
招く過剰の添加を避ける意味で、その上限を0.005
0%とする。上述した基本組成に成分調整を行うことに
より、本発明鋼材は優れた大入熱溶接HAZ靭性を示す
が、母材の特性と生産性の観点から、次に示す製造工程
が望ましい。
【0040】すなわち、上述した基本組成に成分調整し
た鋼塊あるいはスラブについて、組織をオーステナイト
化し、かつ析出物を溶解して各合金元素を一旦固溶させ
るためにAc3点〜1300℃の温度に再加熱した後、
Ac1点+50℃以上のオーステナイト域で熱間圧延を
完了する。圧延後、引き続いて、空冷あるいは加速冷却
を行うか、圧延後、450℃以上700℃未満の所定の
温度まで一定速度で加速冷却し、当該温度域を空冷、も
しくは当該温度域で一定時間保持保持することが、母材
特性および生産性の上で推奨される。圧延後の冷却につ
いては、本発明鋼が冷却速度への依存が小さく、均一な
ベイニティックな組織を呈することから、空冷あるいは
加速冷却のいずれでも構わない。また、冷却過程で45
0℃以上700℃未満の温度域で、空冷もしくは一定時
間保持することで加工歪みの緩和、島状マルテンサイト
の分解、NbやVの炭窒化物析出による析出強化を図る
ことで、より高い強度・靭性バランスを得ることができ
る。
【0041】
【実施例】次に本発明の実施例について述べる。 <実施例1>実験室溶解(50kg、120mm厚鋼
塊)で種々の成分の鋼塊を製造した。これらの鋼塊を種
々の条件で厚みが13〜30mmの鋼板に圧延し、諸機
械的性質を調査した。鋼板の機械的性質(降伏強さ:Y
S、引張強さ:TS、シャルピー衝撃試験の−20℃で
の吸収エネルギー:vE−20と50%脆性破面遷移温
度:vTrs)は圧延と直角方向で調査した。HAZ靭
性(シャルピー衝撃試験の−20℃での吸収エネルギ
ー:vE−20)は再現熱サイクル装置で再現したHA
Zで評価した(最高加熱温度:1400℃、800〜5
00℃の冷却時間 [Δt800-500 ] :237秒)。Ti
O、MgOおよびそれを核として析出したTiNの大き
さ、個数は透過型電子顕微鏡によるレプリカ・サンプル
の観察により、調査した。
【0042】実施例を表1、2に示す。本発明にしたが
って製造した鋼板は、母材靭性−40℃でのシャルピー
衝撃吸収エネルギーが200Jを超え、かつ−20℃で
のHAZのシャルピー衝撃吸収エネルギーが150Jを
超え、優れた母材およびHAZ靭性を有する。これに対
し、比較鋼は化学成分またはTi、Mg酸化物粒子およ
びそれを核として析出したTiN粒子の個数が少なく、
−20℃でのHAZのシャルピー衝撃吸収エネルギーが
低い。鋼KはC量が多く、粗大で硬質な炭化物を含む組
織となっておりHAZのシャルピー衝撃吸収エネルギー
が低い。鋼LおよびOはTi/Nのバランスが不適切、
Ti過剰であるため、Tiの炭化物が生成すると同時に
TiN粒子も粗大になっており、HAZのシャルピー衝
撃吸収エネルギーが低い。鋼M、NはSi、Mn量が多
いために、焼入れ性が向上し、硬質層(島状マルテンサ
イトなど)の生成が増加し、HAZのシャルピー衝撃吸
収エネルギーが低い。鋼PはAl量が多く、Ti、Mg
酸化物の個数が減少しており、充分なピニング効果が得
られずにHAZのシャルピー衝撃吸収エネルギーが低
い。鋼QはMg量が多いために、粗大なMgO粒子を形
成し、個数も減少していることから、HAZのシャルピ
ー衝撃吸収エネルギーが低い。鋼RはMgの添加がない
ため、HAZのシャルピー衝撃吸収エネルギーが低い。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】(表1のつづき)
【0045】
【発明の効果】本発明の化学成分および製造方法に限定
し、TiとMgを適切に添加することで大入熱溶接熱影
響部の靭性の低下を防止し、構造物の脆性破壊に対する
安全性を大幅に向上することができる。
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Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%で C:0.05%以下 Si:0.01〜0.5% Mn:0.2〜2.0% Ti:0.001〜0.03% Mg:0.0005〜0.010% Al:0.01%以下 P:0.02%以下 S:0.010%以下 を含有し、かつTiとNの比が2.0≦Ti/N≦3.
    5であり、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、
    Ti、Mg含有の酸化物およびその酸化物を核として析
    出するTiNの一種もしくは二種以上が、粒子径0.0
    05〜0.2μmの大きさで1.0×105 〜1.0×
    107 個/mm2 が分散析出していることを特徴とする
    溶接継手靭性の優れた高張力鋼。
  2. 【請求項2】重量%で Ca:0.006%以下 REM:0.02%以下 の1種または2種を含有する請求項1に記載の溶接継手
    靭性の優れた高張力鋼。
  3. 【請求項3】重量%で Cu:0.05〜1.5% Ni:0.05〜2.0% Cr:0.01〜1.0% Mo:0.01〜0.5% Nb:0.001〜0.15% V:0.001〜0.1% B:0.0001〜0.0050% の1種または2種以上を含有する請求項1または請求項
    2のいずれかに記載の溶接継手靭性の優れた高張力鋼。
  4. 【請求項4】請求項1〜3に記載の鋼組成からなる鋼塊
    またはスラブを、再加熱後、熱間圧延を行い、溶接継手
    靭性の優れた高張力鋼を製造するのに際し、Ac3点〜
    1300℃の温度に加熱し、 Ac1+50℃以上の温
    度で熱間圧延を完了し、圧延後空冷もしくは加速冷却す
    ることを特徴とする溶接継手靭性の優れた高張力鋼の製
    造方法。
  5. 【請求項5】請求項1〜3に記載の鋼組成からなる鋼塊
    またはスラブを、再加熱後、熱間圧延を行い、溶接継手
    靭性の優れた高張力鋼を製造するのに際し、Ac3点〜
    1300℃の温度に加熱し、Ac1+50℃以上の温度
    で熱間圧延を完了し、圧延後、450℃以上700℃未
    満の所定の温度まで加速冷却し、当該温度域を空冷する
    か、もしくは当該温度域で一定時間保持することを特徴
    とする溶接継手靭性の優れた高張力鋼の製造方法。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US8668784B2 (en) 2009-05-19 2014-03-11 Nippon Steel & Sumitomo Metal Corporation Steel for welded structure and producing method thereof
US8920713B2 (en) 2009-05-21 2014-12-30 Nippon Steel & Sumitomo Metal Corporation Steel for welded structure and producing method thereof
CN112912527A (zh) * 2018-10-26 2021-06-04 株式会社Posco 具有优异的低温韧性和优异的延展性的压力容器用钢板及其制造方法
CN114107828A (zh) * 2020-08-27 2022-03-01 宝山钢铁股份有限公司 一种抗拉强度570MPa级高热输入焊接用钢板及其制造方法

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