JP2002000299A - 複数の電位を用いる遺伝子の発現解析 - Google Patents
複数の電位を用いる遺伝子の発現解析Info
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Abstract
存在する試料核酸断片の量を、DNA分析素子を用いて
電気化学的に検出する方法を提供すること。 【解決手段】 導電性基板の表面に固定された既知の塩
基配列を有するDNA断片に相補性を有し、かつ互いに
異なる二種類以上の試料中の試料核酸断片を、各々酸化
還元電位が互いに異なる導電性物質で標識することによ
り、導電性基を結合させた試料核酸断片を調製する工
程;導電性基を結合させた試料核酸断片を含む標識試料
溶液を混合した混合試料溶液をDNA分析素子に接触さ
せる工程;該分析素子に、二以上の、導電性物質が示す
電位を順次に印加し、各々の電位における、該分析素子
と導電性基との間を流れる電流を測定する工程;各電位
における電流量を互いに比較することにより、二種類以
上の試料にそれぞれ含まれる試料核酸断片の存在量を検
出する方法。
Description
に異なる試料に発現している遺伝子のその発現量を検出
するために有用なデファレンシャル・ハイブリダイゼー
ション(differential hybridization)技術に関する。
析は、種々の状態の細胞や組織からmRNAを調製し、
調製したmRNAをメンブレン上に固定し、mRNAの
特異的プローブを用いてハイブリダイゼーションを行う
ノーザンブロット解析法もしくはドットブロット解析
法、または各遺伝子に特異的なプライマ(PCR法にお
いて、DNA合成酵素がDNAの複製開始に必要とする
20塩基程度の短いDNA断片)を用いるRT−PCR
法(逆転写反応とPCR法を組み合わせた方法)によっ
て行われてきた。一方、生命現象に関わる遺伝子研究の
進展により解析に供する遺伝子数が急速に増加し、さら
にゲノムプロジェクトの進行に伴って各生物が保持する
全遺伝子が明らかになるにつれて、多数の遺伝子の挙動
を一度に解析する必要性が高まっている。
解析された後に必須となるゲノム機能の大量で迅速な解
析を可能にする手段として注目されている。この方法で
は、スライドガラス等の担体上に高密度に整列化してい
るDNA断片に対して、標識した核酸断片をハイブリダ
イズさせる。ハイブリダイゼーションの解析は、その標
識方法によって異なるが、蛍光法、ラジオアイソトープ
法、電気化学的な方法等によるのが一般的である。電気
化学的な方法として、特開平9−288080号公報
に、DNAマイクロアレイ(DNA断片が担体上に高密
度に整列化してなるもの)および電気化学活性縫い込み
型インターカレータを用いて、試料DNA断片を検出す
る方法が開示されている。
標識法を用いる遺伝子発現解析の技術が開示されてい
る。この原理は、互いに異なる二つの試料中の特定遺伝
子(mRNAもしくはmRNAを転写したcDNA)を
互いに異なる蛍光物質で標識し、その標識遺伝子を用い
てDNAマイクロアレイ上で競合的にハイブリダイゼー
ションを行い、両者の蛍光を測定し比較することによっ
て、互いに異なる二つの試料中の遺伝子の発現の差を検
出するものである。この技術は、同一スポット上で競合
するハイブリダイズに係るシグナルを検出するので、相
対的比較ができる点で極めて有効である。二蛍光標識法
を用いる遺伝子発現解析の技術は、その他多数の文献
(P.Brown et al., Nature Genetics Supplement, 21,
1999, 33-37、細胞工学 Vol.18, No.4, 1999, 541-54
9、および実験医学 Vol.17, No.11,1999, 1362-1366)
にも報告があるが、これらは、何れも蛍光法を用いるも
のである。しかし、蛍光法では、励起光による褪色が起
こりやすいという問題点を有する。この問題点を克服す
るべく、現在では、蛍光法でこれまで一般的に使用され
てきたフルオロセインに代えて、褪色が起こりにくいC
y色素が使用されている。しかし、Cy色素は極めて高
価であるという問題点を有し、今後、価格を含めた機器
の改善と方法の改良が必要である。
アレイ法の応用例として、DNAのように負電荷を持た
ず、かつDNA(もしくはRNA)を模倣した分子であ
るPNA(peptide nucleic acid)を用いる方法が知ら
れている。
つとして知られているものである。アンチセンス分子
は、遺伝子が発現する際に、一本鎖になるDNAの塩基
配列の転写領域もしくはRNAの塩基配列の翻訳領域に
高選択的に結合して、その領域の機能を制限するように
働く分子であり、遺伝子治療の分野ではアンチセンス医
薬品として知られている。PNAは、核酸と同様にその
分子中に核酸塩基を有し、相補的な塩基配列を有する核
酸に特異的にハイブリダイズして二本鎖を形成する(P.
E.Nielsen et al., Science, 254, 1497-1500(199
1))。PNAは、機能的には核酸とほとんど変わりない
が、その構造は全く異なり、N−(2−アミノエチル)
グリシンを単位とするポリアミドを基本骨格としてお
り、その分子中に糖およびリン酸を含まない。核酸塩基
は、ポリアミド骨格に、通常、メチレンカルボニル基を
介して結合している。下記に、PNAの代表的な構造を
DNAの構造と共に示す。
在しない条件下でも荷電することがない。PNAの有す
る機能は核酸のそれとほとんど同じと言っても、PNA
と核酸とで形成される二本鎖は、DNAと核酸とで形成
される二本鎖よりも安定であり、核酸の塩基配列をより
厳密に認識できるという特徴を持つ(杉本直巳、日本化
学会第74回春季大会要旨集、1287頁)。そのた
め、PNAは、アンチセンス医薬以外にも各種診断薬へ
の応用が期待されている分子である(特表平6−509
063号の明細書)。
相担体表面にPNA断片をその一端部にて固定してなる
PNAマイクロアレイ、およびPNAマイクロアレイを
用いるDNA断片の検出方法が開示されている。このP
NAマイクロアレイは、アビジン−ビオチン法によっ
て、表面プラズモン共鳴バイオセンサ用の測定チップに
PNA断片を固定させたものである。PNAマイクロア
レイを用いたDNA断片の検出は、表面プラズモン共鳴
シグナルを測定することによって行なわれている。ま
た、PNAマイクロアレイ、およびラジオアイソトープ
で標識した試料DNA断片を用いて、相補性を有する試
料DNA断片を検出する方法も知られている(P.E.Niel
sen et al., Science, 254, 1497-1500(1991))。上記
のアビジン−ビオチン法および上記のラジオアイソトー
プ法では、何れも、PNA断片と試料DNA断片との間
に生じる電気的反発が少なくなるため、検出感度を向上
させることができる。
る二種類以上の試料中にそれぞれ存在する試料核酸断片
の量を、DNA分析素子を用いて電気化学的に検出する
方法を提供することを、その課題とする。本発明は、ま
た、DNA分析素子の代わりに、PNA分析素子を用い
て該試料核酸断片の存在量を電気化学的に検出する方法
を提供することをも、その課題とする。
る方法〉本発明は、(1)導電性基板の表面に固定され
た既知の塩基配列を有するDNA断片に相補性を有し、
かつ互いに異なる二種類以上の試料中の試料核酸断片
を、それぞれ、酸化還元電位が互いに異なる導電性物質
で標識することにより、導電性基を結合させた試料核酸
断片を調製する工程;(2)導電性基を結合させた試料
核酸断片を含む標識試料溶液を混合し、この混合試料溶
液を、上記のDNA断片が導電性基板の表面に固定され
てなるDNA分析素子に接触させる工程;(3)該分析
素子に、二以上の、導電性物質が示す電位を順次に印加
し、それぞれの電位における、該分析素子と導電性基と
の間を流れる電流を測定する工程;そして、(4)各電
位における電流量を互いに比較することによって、二種
類以上の試料にそれぞれ含まれる試料核酸断片の存在量
を検出する方法にある。
法の好ましい特徴は以下の通りである。 (イ)互いに異なる酸化還元電位を示す導電性物質とし
て、共に、0乃至800mVの範囲に酸化還元電位を有
する物質であって、その酸化還元電位の差が50mV以
上である物質を用いる。 (ロ)電流の測定をデファレンシャルパルスボルタモグ
ラフィによって行う。
は、また、(1)導電性基板の表面に固定された既知の
塩基配列を有するPNA断片に相補性を有し、かつ互い
に異なる二種類以上の試料中の試料核酸断片を、それぞ
れ、酸化還元電位が互いに異なる導電性物質で標識する
ことにより、導電性基を結合させた試料核酸断片を調製
する工程;(2)導電性基を結合させた試料核酸断片を
含む標識試料溶液を混合し、この混合試料溶液を、上記
のPNA断片が導電性基板の表面に固定されてなるPN
A分析素子に接触させる工程;(3)該分析素子に、二
以上の、導電性物質が示す電位を順次に印加し、それぞ
れの電位における、該分析素子と導電性基との間を流れ
る電流を測定する工程;そして、(4)各電位における
電流量を互いに比較することによって、二種類以上の試
料にそれぞれ含まれる試料核酸断片の存在量を検出する
方法にもある。
法の好ましい特徴は以下の通りである。 (イ)互いに異なる酸化還元電位を示す導電性物質とし
て、共に、0乃至800mVの範囲に酸化還元電位を有
する物質であって、その酸化還元電位の差が50mV以
上である物質を用いる。 (ロ)電流の測定をデファレンシャルパルスボルタモグ
ラフィによって行う。
法を模式的に示す。互いに異なる試料a(1a)および
試料b(1b)に存在している試料核酸断片(2)を、
それぞれ、酸化還元電位が互いに異なる導電性物質(3
a)、導電性物質(3b)で標識する。そして、導電性
物質(3a)が結合した試料核酸断片(4a)を含む標
識試料溶液と導電性物質(3b)が結合した試料核酸断
片(4b)を含む標識試料溶液とを混合し、その混合試
料溶液をDNA分析素子(5)上の一つの領域(6)に
接触させることにより、DNA分析素子上に固定されて
いるDNA断片(7)と標識試料核酸断片(4a)との
ハイブリッドDNA、および該DNA断片と標識試料核
酸断片(4b)とのハイブリッドDNAを形成させる。
ここで、「DNA分析素子」は、導電性基板の表面に多
数のDNA断片がその一端部にて固定されてなる素子を
表す。DNAマイクロアレイが、一般的に、複数のDN
A断片が固定された領域が複数個整列したものを意味す
るのと異なり、本明細書におけるDNA分析素子では、
図1に示すように該領域の数が複数であっても、あるい
は一つであってもよい。次いで、領域(8)における、
導電性物質(3a)と導電性基板との間を流れる電流
量、および導電性物質(4a)と導電性基板との間を流
れる電流量を、それぞれ、導電性物質(3a)が有する
酸化還元電位、導電性物質(4a)が有する酸化還元電
位にて測定することにより、領域(8)における標識試
料核酸断片(4a)の存在量と標識試料核酸断片(4
b)の存在量との比を検出することができる。領域
(8)における存在量比は、試料a中の標識前の試料核
酸断片の存在量と試料b中の標識前の試料核酸断片の存
在量との比を示す。尚、導電性物質(3a)が有する酸
化還元電位とは、導電性物質(3a)で標識された試料
核酸断片(4a)が示す、極大電流値を与える酸化還元
電位の値をいう。
固定されているDNA断片と完全な相補性を有する試料
核酸断片であって、同一の塩基配列を有する試料核酸断
片を対象とする。試料aおよび試料bには、何れも、複
数の種類の試料核酸断片が存在していてもよいが、複数
の種類の試料核酸断片の内で、特定のDNA断片と完全
相補する試料核酸断片は一種類しか存在しないものと
し、その試料核酸断片の塩基配列は完全に同一であるこ
ととする。互いに異なる試料は、三種類以上の試料であ
ってもよいが、各試料に存在している試料核酸断片の性
質は、上記と同様である。
中心に説明するが、特に断らない限りPNA分析素子を
用いる場合についても同様とする。本明細書において用
いる用語を次のように定義する。「PNA断片」には、
合成によって得られたPNAを切断等の操作により断片
化したものを含まない。「ハイブリッドDNA」とは、
DNA分析素子上に固定されたDNA断片と標識試料核
酸断片とで形成される二本鎖断片を、「ハイブリッドP
NA」とは、PNA分析素子上に固定されたPNA断片
と標識試料核酸断片とで形成される二本鎖断片をいう。
「導電性基」とは、一つ以上の結合手を有する導電性物
質をいう。試料核酸断片に結合している状態の導電性物
質を導電性基とする。「存在」とは、試料中に試料核酸
断片が含まれている状態をいい、遺伝子の発現を含む。
性(あるいは低親水性)の導電性基板、または疎水性
(あるいは低親水性)の電気絶縁性の担体上に複数の疎
水性(あるいは低親水性)の導電性基板が設けられてな
る基板であることが好ましい。導電性の疎水性基板およ
び電気絶縁性の疎水性担体は、何れも、その表面が凹凸
を有する平面性の低いものであっても好ましく用いるこ
とができる。電気絶縁性の担体の材質としては、何れ
も、ガラス、セメント、陶磁器等のセラミックスもしく
はニューセラミックス、ポリエチレンテレフタレート、
酢酸セルロース、ビスフェノールAのポリカーボネー
ト、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート等のポリ
マー、シリコン、活性炭、多孔質ガラス、多孔質セラミ
ックス、多孔質シリコン、多孔質活性炭、織編物、不織
布、濾紙、短繊維、メンブレンフィルタ等の多孔質物質
などを挙げることができるが、各種ポリマー、ガラスも
しくはシリコンであることが特に好ましい。これは、表
面処理の容易さや電気化学的方法による解析の容易さに
よるものである。電気絶縁性の担体の厚さは、特に限定
されないが、板状である場合には、100乃至1000
0μmの範囲にあることが好ましい。疎水性の導電性基
板としては、電極、光ファイバ、フォトダイオード、サ
ーミスタ、ピエゾ素子、表面弾性波素子なども好ましく
用いることができるが、電極を用いることが特に好まし
い。電極の材料としては、グラファイト、グラシーカー
ボン等の炭素電極、白金、金、パラジウム、ロジウム等
の貴金属電極、酸化チタン、酸化スズ、酸化マンガン、
酸化鉛等の酸化物電極、Si、Ge、ZnO、CdS等
の半導体電極、チタンなどの電子伝導体を挙げることが
できるが、金もしくはグラシーカーボンを用いることが
が特に好ましい。これらの電子伝導体は、導電性高分子
によって被覆されていても、単分子膜によって被覆され
ていてもよい。
の担体上に、複数の疎水性の導電性基板が設けられてな
る基板を用いることが特に好ましい。このとき、導電性
基板は、互いに接しないように、かつ規則的に電気絶縁
性の担体上に配置されていることが好ましい。電気絶縁
性の担体上に導電性基板を設ける前に、電気絶縁性の担
体上に、電荷を有する親水性の高分子物質からなる層や
架橋剤からなる層を設けてもよい。このような層を設け
ることによって該担体の凹凸を軽減することができる。
また、担体の種類によっては、その担体中に電荷を有す
る親水性の高分子物質を含ませることも可能であり、こ
のような処理を施した担体も好ましく用いることができ
る。
れたものとしては、文献(Sosnowski,R.G. et al., Pro
c.Natl.Acad.Sci.USA, 94, 1119-1123(1997))に記載
の、核酸断片が未固定のシリコンチップも好ましく用い
ることができる。また、プリント配線導電性基板のよう
に、電極が導電性基板上に印刷されてなるものであって
もよい。
性基板表面に二本鎖のDNA断片を固定した後、一方の
鎖のみを固定させる処理を施したもの、あるいは固定前
に二本鎖のDNA断片を一本鎖のDNA断片としたもの
であることが好ましい。また、DNA断片としては、合
成オリゴヌクレオチドあるいは導電性基板表面で直接合
成して得られたオリゴヌクレオチドであることも好まし
い。
は、一般的に、導電性基板表面に該DNA断片の固定の
ための反応性基(反応性基D1とする。)を導入するこ
とが好ましい。反応性基D1は、導電性基板表面をポリ
陽イオン(例えば、ポリ−L−リシン、ポリエチレンイ
ミンもしくはポリアルキルアミンであることが好まし
く、ポリ−L−リシンであることが特に好ましい)で被
覆処理することによって導入されたものであっても、ま
たは反応性基D1を有するシランカップリング剤を導電
性基板表面に接触させることによって導入されたもので
あることが好ましい。反応性基D1としては、アミノ
基、メルカプト基、アルデヒド基、エポキシ基、カルボ
キシル基もしくは水酸基であることが特に好ましい。ア
ミノ基を有するシランカップリング剤としては、具体的
には、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β
(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラ
ンおよびN−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメ
チルジメトキシシランを挙げることができ、γ−アミノ
プロピルトリエトキシシランを用いることが特に好まし
い。
RT(reverse transcription)法によって得たcDN
A断片をベクターに組み込んだもの(cDNAのライブ
ラリ)をテンプレートとしてPCR法によって増幅して
調製することが好ましい。一本鎖のcDNA断片をPC
R法により増幅して得られる二本鎖のcDNA断片は、
一方の鎖がその末端部に反応性基(反応性基D2とす
る。)を持ち、かつ他方の鎖が反応性基を持たないもの
であり、これは、二種類のプライマ(反応性基D2を
5’末端に有するプライマと反応性基を有しないプライ
マ)を用いて調製することができる。このような反応性
基D2としては、アミノ基、イミノ基、ヒドラジノ基、
カルバモイル基、ヒドラジノカルボニル基、もしくはカ
ルボキシイミド基であることが好ましく、アミノ基であ
ることが特に好ましい。
のcDNA断片の一方の鎖の末端部(好ましくは、5’
末端)に有する反応性基D2と導電性基板表面に導入さ
れた反応性基D1との共有結合によって行うことが好ま
しい。反応性基D1と反応性基D2との共有結合は、スペ
ーサを介して行ってもよい。cDNA断片の塩基数は、
3乃至100000の範囲にあることが好ましく、3乃
至10000の範囲にあることがより好ましく、50乃
至1000の範囲にあることが特に好ましい。導電性基
板表面に固定した二本鎖のcDNA断片を解離させる変
性処理の方法としては、公知の方法を用いることができ
る。変性処理によって、反応性基D2を有する鎖が固定
される。また、特願平9−288080号公報に記載
の、導電性基板として、金で蒸着処理されているものや
グラシーカーボンが塗布されているものを用いる固定方
法も好ましい。
列決定法によって予めその配列が決定されていることが
好ましく、その塩基種も既知であることが好ましい。D
NA分析素子が複数の領域を有するものである場合に
は、導電性基板表面に区画された複数の領域のそれぞれ
に、互いに異なる塩基配列を有するDNA断片を固定さ
せることもできるが、その場合、DNA断片としては、
複数の種類のものを用いることができる。
るいは分散されてなる水性液を導電性基板上に点着して
行うことが好ましい。DNA断片を含む水性液中には、
その水性液の粘性を高める添加剤を含有させてもよい。
このような添加剤としては、ショ糖、ポリエチレングリ
コール、グリセロール等を挙げることができる。点着
後、所定の温度でそのまま数時間放置するとDNA断片
が固定される。点着は、マニュアル操作によっても行う
ことができるが、汎用されているDNAチップ作製装置
に装備されたスポッタを用いて行うこともできる。点着
後は、インキュベーションを行ってもよい。インキュベ
ート後、未固定のDNA断片を洗浄して除去することが
好ましい。上記のようにして作製したDNA分析素子の
寿命は、通常、数日間乃至数週間の範囲にある。
るPNA断片は、下記一般式(I)で表される化合物で
ある。
核酸塩基(A、T、C、G、IもしくはU)あるいは塩
基類似体を表す。B11は、天然に見出される位置、即
ち、アデニン、グアニンもしくはイノシンを含むプリン
については、9位において、チミン、ウラシルもしくは
シトシンを含むピリミジンについては、1位において結
合している。塩基類似体とは、天然に存在しない核酸塩
基に類似の有機塩基をいい、プリン環やピリミジン環の
一部がCからNへ、もしくはNからCへ置換された化合
物、またはプリン環やピリミジン環の一部に新たな修飾
を施された化合物(スルフヒドリル基やハロゲン原子が
導入された化合物)をいう。また、B11は、核酸塩基を
含まない芳香族部分、炭素原子数が1乃至4のアルカノ
イル基、水酸基あるいは水素原子であってもよい。塩基
類似体としては、7−デアザアデニン、6−アザウラシ
ルおよび5−アザシトシンを挙げることができる。典型
的な核酸塩基リガンドおよび例示的合成リガンドについ
ては、WO92/20702に図示されており、5−プ
ロピルチミンおよび3−デアザウラシルは、DNA断片
への結合親和性を増加させることが知られている(特開
平11−236396号公報)。他の有用な天然にない
核酸塩基としては、6−チオグアニンやピラゾロ[4,
3d]−ピリミジンが有用である(国際出願PCT/U
S92/04795)。さらに、B11は、DNAインタ
ーカレータ、レポーターリガンド(例えば、フルオロフ
ォア)、ハプテンやビオチンのタンパク質標識、スピン
標識、あるいは放射性標識であってもよい。B11は、核
酸塩基(A、T、C、GもしくはU)であることが特に
好ましい。
ミノ酸の側鎖を表す基を表す。天然のα−アミノ酸の側
鎖を表す基としては、炭素原子数が1乃至6のアルキル
基、炭素原子数が6乃至20のアリール基、炭素原子数
が1乃至6のアルキル基を含む炭素原子数が7乃至26
のアラルキル基、炭素原子数が6乃至20のヘテロアリ
ール基、水酸基、炭素原子数が1乃至6のアルコキシ
基、炭素原子数が1乃至6のアルキルチオ基、−NR13
R14基、−SH基、および炭素原子数が1乃至6のアル
キル基からなる群より選ばれる基であることが好まし
い。炭素原子数が1乃至6のアルキル基は、さらに、水
酸基、炭素原子数が1乃至6のアルコキシ基もしくは炭
素原子数が1乃至6のアルキルチオ基で置換されていて
もよい。R13およびR14は、互いに独立に、水素原子、
炭素原子数が1乃至3のアルキル基、炭素原子数が1乃
至3のアルコキシ基、炭素原子数が1乃至3のアルキル
チオ基および水酸基からなる群より選ばれる原子もしく
は水酸基を表す。天然のα−アミノ酸の側鎖を表す基
は、R11が結合している炭素原子の水素原子と一緒にな
って脂環あるいは複素環を形成していてもよい。
は−CO−NR12−基であることが好ましく、−CO−
基であることが特に好ましい。R12は、水素原子、炭素
原子数が1乃至4のアルキレン基、水酸基、炭素原子数
が1乃至4のアルコキシ基およびアミノ基からなる群よ
り選ばれる原子もしくは基を表す。炭素原子数が1乃至
4のアルキレン基、炭素原子数が1乃至4のアルコキシ
基およびアミノ基は、何れも炭素原子数が1乃至4のア
ルキル基、炭素原子数が1乃至4のアルコキシ基もしく
は水酸基で置換されていてもよい。
乃至40の整数であることが好ましい。a、bおよびc
は、それぞれ独立に0乃至5の整数を表す。a、bおよ
びcは、何れも1であることが好ましい。
(II)で表される化合物であることが特に好ましい。式
中、B11およびdは、それぞれ、上記一般式(I)のB
11、dを表す。
法によって合成することができ、合成されたものは市販
もされている。PNAの合成法については、特表平6−
509063号の明細書、米国特許2758988号の
明細書、P.E.Nielsen et al., Journal of American Ch
emical Society, 114, 1895-1987(1992)、P.E.Nielsen
et al., Journal of American Chemical Society, 114,
9677-9678(1992)などに詳細が記載されている。
ゼーションは、DNA分析素子に、互いに異なる二種類
以上の、標識試料核酸断片が溶解あるいは分散してなる
標識試料溶液を接触させることによって実施する。互い
に異なる二種類以上の標識試料溶液は、混合したものを
接触させる。混合の割合は、特にその割合を問わない
が、通常等量である。ハイブリダイゼーションは、室温
乃至70℃の温度範囲で、そして0.5乃至20時間の
範囲で実施することが好ましいが、導電性基板に固定す
るDNA断片の鎖長、試料核酸断片の種類などに応じ
て、ハイブリダイゼーションの最適条件を設定すること
が望ましい。例えば、遺伝子発現の解析を目的とする場
合には、低発現の遺伝子も充分に検出できるように、長
時間のハイブリダイゼーションを行うことが好ましい。
ハイブリダイゼーション終了後は、洗浄を行い、未反応
の標識試料核酸断片を除去することが好ましい。
は、生物試料に存在しているmRNAもしくはmRNA
を逆転写反応させることによって得られるcDNA断片
を用いることが好ましい。標識試料核酸断片は、試料核
酸断片の一方の末端部(もしくは末端部付近)に導電性
物質を結合させることによって調製することができる。
その調製方法については、文献(S.Takenaka et al., A
nalytical Biochemistry, 218, 436-443(1994))に詳細
が記載されている。標識試料核酸断片は、試料核酸断片
に、導電性基を結合させたdNTPを逆転写反応により
取り込ませることによって調製することもできる。さら
に、試料核酸断片に、アミノアリル基を結合させたdN
TPを逆転写反応により取り込ませて、複数のアミノ基
を有するcDNA断片に導き、次いで、導電性物質の活
性体をこれらのアミノ基と反応させる方法によって、標
識試料核酸断片を調製する方法も知られている。この方
法は、導電性物質を結合させたdNTPの取り込み率が
低いことに比べ、多数の導電性物質を取り込むことがで
きる点で優れた方法である。上記前者の、導電性基を結
合させたdNTPを取り込ませる方法、およびアミノア
リル基を結合させたdNTPを取り込ませる方法では、
何れも、互いに異なる試料核酸断片への取り込み率は同
一であることが好ましい。
試料中に含まれる試料核酸断片は、それぞれ、互いに異
なる導電性物質で標識する。互いに異なる導電性物質と
は、試料核酸断片に結合していない状態で導電性物質そ
のものが与える極大電流値を比較したとき、極大電流値
を与える酸化還元電位が互いに異なるような物質をい
う。但し、互いに異なる導電性物質であって、その当量
(モル)の導電性物質が与える極大電流値は同一の値を
示すことが好ましい。極大電流値である必要はないが、
極大電流値を与える酸化還元電位を比較することが望ま
しい。互いに異なる酸化還元電位は、酸化還元電位が何
れも0乃至800mVの範囲にあることが好ましく、互
いの酸化還元電位の差が50mV以上であることが好ま
しい。
物質としては、有機金属化合物と金属原子を含まないが
導電性を有する物質とを挙げることができる。結合手に
ついては省略する。
金属原子の電子供与に加えて、中心金属原子の軌道から
配位子の原子の空軌道へ電子がπ結合を通じて供与され
るタイプのπ錯体を用いることが好ましい。また、有機
金属化合物としては、繰り返し単位どうしが配位結合に
よって結合している配位高分子も好ましく用いることが
できる。π錯体は、金属原子に対する配位が、単座配
位、二座配位、多座配位もしくは架橋配位の何れの配位
によるものであってもよい。π錯体の具体例としては、
下記式に示すメタロセン錯体をあげることができる。M
は、金属原子を表す。
子は、Fe、Ni、Co、Mo、Zn、Cr、Tl、T
a、Ti、Cu、Mn、W、V、RuもしくはOsであ
ることが好ましく、Fe、Co、Ni、Ru、Os、V
もしくはCrであることがさらに好ましく、Feである
ことが特に好ましい。
ブタジエン錯体、シクロペンタジエニル錯体、フェナン
トロリン錯体、ビピリジン錯体もしくはトリフェニルホ
スフィン錯体も好ましく用いることができる。
y)2]2+、[CoCl2(bpy)2]+、[Fe(bp
y)3]n、もしくは[Cr(bpy)3]nであること
が好ましい。但し、bpyは2,2’−ビピリジンを表
し、nは、−1乃至3の整数を表わす。トリフェニルホ
スフィン錯体としては、CoCH3(PPh3)3、Co
H(N2)(PPh3)3、RuH2(PPh3)4もしくは
RhH(PPh3)4であることが好ましい。Phは、フ
ェニル基を示す。
ム、クロロフィリド、クロロフィル、ヘム、ビタミンB
12等のポルフィリン系錯体も好ましく用いることができ
る。
下記式で表されるビオロゲン、2,2’−ビピリジン、
1,10−フェナントロリン、カテコールアミン等を挙
げることができる。但し、RA、RBは、互いに独立に、
炭素原子数が1乃至6のアルキル基、炭素原子数が1乃
至6のアルコキシ基、炭素原子数が6乃至12のアリー
ル基、並びにN、OおよびSからなる群より選ばれるヘ
テロ原子を1乃至4個含む炭素原子数が2乃至12の複
素環基からなる群より選ばれる基であることが好まし
い。上記のアルキル基、アルコキシ基、アリール基およ
び複素環基は、何れも炭素原子数が1乃至6のアルキル
基、炭素原子数が1乃至6のアルコキシ基および炭素原
子数が6乃至10のアリール基からなる群より選ばれる
基で置換されていてもよい。RA、RBは、何れも、炭素
原子数が1乃至6のアルキル基もしくは炭素原子数が6
乃至12のアリール基であることがさらに好ましく、フ
ェニル基であることが特に好ましい。
い。特定の構造を持つ導電性物質を主骨格とした場合、
酸化還元電位の相違は、その導電性物質が有する置換基
の性質に依存することが多い。従って、互いに異なる導
電性物質としては、上記の導電性物質を主骨格として、
その主骨格に互いに異なる性質の置換基が結合してなる
ものを用いることが、調製の簡便さの点からも好まし
い。上記置換基は、試料核酸断片と結合する際に、結合
手となる二価の基を含むものであることが特に好まし
い。置換基の数が複数の場合には、その内の一つが結合
手となる二価の基を含むものであることが好ましい。
る導電性物質の好ましい具体例を下記式(III)に示
す。結合手となる二価の基とは、−X−、−Y−もしく
は−X−Y−をいう。−X−および−Y−の内何れか一
方は単結合であってもよい。。−X−の左側に核酸断片
が結合する。
応によって形成される基を表す。Yは、単結合、置換基
を有していてもよい炭素原子数が1乃至6のアルキレン
基、あるいは置換基を有していてもよい炭素原子数が1
乃至6のアルケニレン基を表す。炭素原子数が1乃至6
のアルキレン基としては、メチレン基もしくはエチレン
基であることが好ましい。置換基としては、ヒドロキシ
ル基、ハロゲン原子、カルボキシル基、アミノ基、シア
ノ基、ニトロ基、ホルミル基、ホルミルアミノ基、炭素
原子数が1乃至6のアルキル基、炭素原子数が1乃至6
のアルキルアミノ基、炭素原子数が1乃至6のハロゲン
化アルキル基、炭素原子数が5乃至7のシクロアルキル
アミノ基、炭素原子数が2乃至12のジアルキルアミノ
基、炭素原子数が6乃至12のアリール基、炭素原子数
が1乃至6のアルキル基を有する炭素原子数が7乃至1
8のアラルキル基、1乃至6のアルキル基を有する炭素
原子数が7乃至18のアラルキルアミノ基、炭素原子数
が2乃至7のアルカノイル基、炭素原子数が2乃至7の
アルカノイルアミノ基、炭素原子数が3乃至10のN−
アルカノイル−N−アルキルアミノ基、アミノカルボニ
ル基、炭素原子数が2乃至7のアルコキシカルボニル
基、S、NおよびOからなる群より選ばれるヘテロ原子
を1乃至4個含む炭素原子数2乃至10の複素環基、並
びに置換基として炭素原子数1乃至6のアルキル基、炭
素原子数1乃至6のアルコキシ基、もしくはハロゲン原
子を1乃至5個有していてもよい環構成炭素原子数の数
が6乃至12のアリール基からなる群より選ばれる原子
もしくは基である。置換基の数は、炭素原子数が1乃至
6のアルキレン基については、1乃至12個であること
が好ましく、1乃至3個であることが特に好ましい。炭
素原子数が1乃至6のアルケニレン基については、その
数は1乃至10個であることが好ましく、1乃至3個で
あることが特に好ましい。
置を除く他の位置がさらに置換されていてもよい。置換
基としては、カルボン酸基、炭素原子数が2乃至6のジ
アルキルアミノ基を有する炭素原子数が8乃至12のジ
アルキルアミノアルキレン基、および−CONH−炭素
原子数が1乃至6のアルキレン基−炭素原子数が2乃至
6のジアルキルアミノ基からなる群より選ばれる基であ
ることが好ましい。置換基の数は、フェロセン一分子に
ついて1乃至9個であることが好ましく、1個であるこ
とが特に好ましい。フェロセン一分子が有する置換基の
種類は複数であってもよい。
表される導電性物質の特に好ましい組み合わせとして
は、Yが単結合を表す導電性基とYがメチレン基を表す
導電性基との組み合わせを挙げることができる。Yを変
化させずに、導電性基の何れか一方のフェロセン分子に
電子吸引性基あるいは電子供与性基を置換させてもよ
い。
基板と導電性物質との間を流れる電流量が測定できる方
法であれば如何なる方法であってもよい。サイクリック
ボルタモグラフィ(CV)、デファレンシャルパルスボ
ルタモグラフィ(DPV)、リニアスィープボルタモグ
ラフィ、ポテンショスタット等を用いることが好まし
い。カウンタ電極とハイブリッドDNAが固定された導
電性電極を電解質溶液に浸漬し、一対の電解系を形成さ
せ、デファレンシャルパルスボルタモグラフィを測定す
ることが特に好ましい。
に異なる二種類以上の試料にそれぞれ含まれる試料核酸
断片の存在量(数)比を求めることができる。互いに異
なる二種類の試料の例としては、正常細胞と異常細胞と
の組み合わせ、あるいは特定の菌体の野生株と変異株と
の組み合わせを挙げることができる。具体的には、DN
A分析素子上のDNA断片が、例えば、フィブロネクチ
ン産生に関与する遺伝子に相補性を有する塩基配列を持
つものであれば、正常細胞に発現しているフィブロネク
チン産生に関与する遺伝子と胃がん由来の株細胞NUG
C3に発現している該遺伝子とについて、それらの量比
を求めることができる。また、分析素子上のDNA断片
の種類を変えることによって、例えば、正常細胞と慢性
骨髄性白血病由来の株細胞K562とにそれぞれ発現し
ているフィブロネクチン産生に関与する遺伝子の量比を
求めることもできる。さらに、DNA分析素子上の複数
の領域のそれぞれに互いに異なる種類のDNA断片を固
定しておけば、互いに異なる試料中にそれぞれ発現して
いる複数の種類の遺伝子について、同時に、各遺伝子の
発現量比の解析を行うこともできる。
ヘキシル基を導入した100ピコモル/1μLのチミン
の20量体を含む水溶液2μLを滴下し、室温で1時間
放置することによってDNA分析素子を作製した。 (2)標識試料DNA断片の調製 文献(Takenaka et al., Analytical Biochemistry, 21
8, 436-443(1994))に記載された方法に従って、下記式
で順に表される、酸化還元電位が互いに異なる二種類の
フェロセン標識オリゴヌクレオチド、F1−A20および
F2−A20を調製した。Aはアデニンを示す。
ルのフェロセン標識オリゴヌクレオチドF1−A20を含
む10mMトリス緩衝液(pH7.5)溶液の2μLを
滴下し、25℃にて30分間インキュベートした。次い
で、分析素子表面を純水にて洗浄し、未反応のF1−A
20を除去した。38℃にて、0.1M塩化カリウム−
0.1M酢酸緩衝液(pH5.6)溶液に、純水で洗浄
後の分析素子を浸漬し、印加電圧が100乃至700m
Vの範囲にて、デファレンシャル・パルス・ボルタンメ
トリを行ったところ、460mVにおいてF1−A20に
由来する応答電流が認められ、その電流値は6.0μA
であった(図2の1)。 (ロ)F2−A20の検出 F1−A20の代わりにF2−A20を用いる以外は上記
(イ)と同様にしてデファレンシャル・パルス・ボルタ
ンメトリを行ったところ、260mVの印加電圧におい
てF2−A20に由来する応答電流が認められ、その電流
値は6.0μAであった(図2の2)。
デニンの20量体を用いる以外は実施例1の(1)と同
様にしてDNA分析素子を作製し、そのDNA分析素子
を使用する以外は、実施例1の(3)と同様にして、F
1−A20およびF2−A20についてそれぞれデファレン
シャル・パルス・ボルタンメトリを行ったところ、何れ
の場合にも応答電流は認められなかった。
片に相補的な試料DNA断片の試料中の存在量比の確認 試料DNA断片として、40ピコモルのF1−A20と4
0ピコモルのF2−A 20とからなる混合物を含むトリス
緩衝液を用いる以外は、実施例1と同様にして、印加電
圧460mVおよび260mVにおける応答電流をそれ
ぞれ測定した(図3)。また、F1−A20のモル数が
0、20、60および80ピコモルの場合についても、
それぞれ、混合物の総モル数が80ピコモルとなるよう
に調製した混合物を用いて、印加電圧460mVおよび
260mVにおける応答電流を測定した(図3)。図3
の−黒塗り四角−は、印加電圧460mVにおける応答
電流を、−黒塗り丸−は、印加電圧260mVにおける
応答電流をそれぞれ表す。
値と460mVにおけるピーク電流値との比は、試料に
含まれるF2−A20の濃度とF1−A20の濃度との比に
対応することが分かる。
片に相補的な試料DNA断片の試料中の存在量比の確認 (1)PNA分析素子の作製 下記式で表されるペプチド核酸:PNA−H2N−Ly
s−T10−H(以下「PNA−T10」という。)を、文
献(P.E.Nielsen et al., Journal of American Chemic
al Society, 114, 1895-1897(1992)および同114, 9677-
9678(1992))に記載の方法に従って合成した。Tは、チ
ミンを表し、式の左端がPNAのC末端、右端がPNA
のN末端をそれぞれ表す。
5mm2の金電極に、1,2−ビス(ビニルスルホニル
アセトアミド)エタンのリン酸緩衝液を滴下して得られ
る、一方の端部のビニルスルホニル基が遊離な金電極
に、100ピコモル/1μLのチミンの10量体である
PNA−T10の水溶液(2μL)を滴下し、室温で1時
間放置してPNA修飾電極を作製した。 (2)試料DNA断片の検出 DNA分析素子を用いる代わりに上記(1)で作製した
PNA分析素子を用いる以外は実施例2と同様の操作を
行って、F1−A20とF2−A20とからなる混合物の応
答電流を測定した。図4の−黒塗り四角−は、印加電圧
460mVにおける応答電流を、−黒塗り丸−は、印加
電圧260mVにおける応答電流をそれぞれ表す。
NA分析素子を用いた場合と同様な結果が認められた。
また、DNA分析素子と比べると、さらに感度よく検出
できることが分かる。
類以上の試料中における試料核酸断片の存在量の差を検
出する二蛍光標識法に対して、標識を導電性物質に変え
た初めての電気化学的な方法である。本発明の検出方法
は、従来の二蛍光標識法と比較して、迅速・簡便であ
り、感度が高く、コストが低い。また、試料核酸断片と
して、試料中に発現しているmRNAあるいはそのmR
NAから作製されたcDNAを用いれば、互いに異なる
試料中の、特定のタンパク質の産生に関与する遺伝子の
発現の差を求めることもできる。DNA分析素子をPN
A分析素子に代えても、上記と同様な検出が可能であ
る。
す模式図である。
係を示すグラフである。
合と応答電流との関係を示すグラフである。
合と応答電流との関係を示すグラフである。
ら得られた試料核酸断片 3a 導電性物質a 3b 導電性物質b 4a 導電性物質aが結合した試料核酸断片 4b 導電性物質bが結合した試料核酸断片 5 DNA分析素子 6 DNA分析素子上の一領域 7 DNA分析素子上の一領域に固定されている、試料
核酸断片に相補性を有するDNA断片 8 DNA分析素子上の一領域におけるハイブリッドD
NA
Claims (4)
- 【請求項1】 (1)導電性基板の表面に固定された既
知の塩基配列を有するDNA断片に相補性を有し、かつ
互いに異なる二種類以上の試料中の試料核酸断片を、そ
れぞれ、酸化還元電位が互いに異なる導電性物質で標識
することにより、導電性基を結合させた試料核酸断片を
調製する工程;(2)導電性基を結合させた試料核酸断
片を含む標識試料溶液を混合し、この混合試料溶液を、
上記のDNA断片が導電性基板の表面に固定されてなる
DNA分析素子に接触させる工程;(3)該分析素子
に、二以上の、導電性物質が示す電位を順次に印加し、
それぞれの電位における、該分析素子と導電性基との間
を流れる電流を測定する工程;そして、(4)各電位に
おける電流量を互いに比較することによって、二種類以
上の試料にそれぞれ含まれる試料核酸断片の存在量を検
出する方法。 - 【請求項2】 (1)導電性基板の表面に固定された既
知の塩基配列を有するPNA断片に相補性を有し、かつ
互いに異なる二種類以上の試料中の試料核酸断片を、そ
れぞれ、酸化還元電位が互いに異なる導電性物質で標識
することにより、導電性基を結合させた試料核酸断片を
調製する工程;(2)導電性基を結合させた試料核酸断
片を含む標識試料溶液を混合し、この混合試料溶液を、
上記のPNA断片が導電性基板の表面に固定されてなる
PNA分析素子に接触させる工程;(3)該分析素子
に、二以上の、導電性物質が示す電位を順次に印加し、
それぞれの電位における、該分析素子と導電性基との間
を流れる電流を測定する工程;そして、(4)各電位に
おける電流量を互いに比較することによって、二種類以
上の試料にそれぞれ含まれる試料核酸断片の存在量を検
出する方法。 - 【請求項3】 互いに異なる酸化還元電位を示す導電性
物質として、共に、0乃至800mVの範囲に酸化還元
電位を有する物質であって、その酸化還元電位の差が5
0mV以上である物質を用いることを特徴とする請求項
1もしくは2に記載の方法。 - 【請求項4】 電流の測定をデファレンシャルパルスボ
ルタモグラフィによって行うことを特徴とする請求項1
もしくは2に記載の方法。
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