【発明の詳細な説明】
高い抗血栓症活性を有するグリコサミノグリカン類
発明の分野
本発明の目的は、インビトロ(in vitro)高抗血栓症活性を有するグリコサミノ
グリカン類であって、出発の高硫酸化されたグリコサミノグリカンの有機塩基の
塩を調製し、その塩を加溶媒分解により部分脱硫酸化し、次いで部分脱硫酸化済
み生成物をN−再硫酸化することによって高硫酸化された種々のグリコサミノグ
リカン類から得られる上記グリコサミノグリカン類を提供することにある。
ヘパリンは動物の器官から抽出された多糖類であり、抗凝固剤及び抗血栓剤と
して50年以上の間採用されてきた。ヘパリンは、ヘパラン硫酸と同様、グリコ
サミノグリカン類であって、組織及び動物種(グリコサミノグリカン類は組織及
び動物種から得られてきた)に依存しつつ、ある程度は分離工程にも依存しつつ
様々に硫酸化され、ウロン酸(イズロン酸又はグルクロン酸)とグリコサミンとの
交互配列(alternate sequences)から成るグリコサミノグリカン類に属する。
ヘパリンの構造は、式
(式中、単位Uはイズロン酸(IdoA)又はグルクロン酸(GlcA)を示し、単位AはN
−硫酸化グリコサミン(GlcNAc)を示し;R2、R3及びR6は硫酸基又は水素を示
し;R'はSO3又はAcを示す)による統計用語によって示される。
病院で使用されるヘパリンに大抵表示されている配列は、三硫酸化二糖(1d
oA2SO3−GlcNSO36SO3)のものである。一方、普通のヘパリンを形
成している鎖の約3分の1にのみ含まれ、3の位置が硫酸化されたグルコサミン単
位(GlcNSO33SO3)を特徴し、しかも、抗トロンビンIIIとしてのヘパリン
及びヘパラン硫酸の活性部位を形成している二級五糖の配列は、有意な抗凝固性
活性及び抗血栓症活性を発現するためには極めて重要である。3−O−硫酸化グ
ルコサミン単位は、前記活性部位の標識(marker)と考えられ、また、X活性化(X
a)済みトロンビン(IIa)凝固因子の抑制能力によって通常表現される抗血栓症活
性は、ヘパリン類中の前記単位の含有量%と関連付けることができる。
ヘパリン及びヘパラン硫酸の抗凝固特性及び抗血栓症特性はまた、それらを構
成する多糖の鎖長さによって調整される。例えば、低分子量(LMWH)を有するヘパ
リンは、一層低い抗凝固活性であるが従来のヘパリンのものに類似した抗血栓症
特性を有する。また、それらヘパリンは、幾つかの治療に適用されるときは、特
に、出血の危険性、及び血小板減少等のヘパリンの他の副作用を低減するために
、後者のヘパリンの代用となる傾向がある。更に、LMWHのものは、それらが皮下
経路で投与されるとき、その生体内利用効率は従来のヘパリンのものよりも一層
優れているという特徴があるが、静脈血栓症の予防においては実際上大したこと
はない。[(B.カシュ(Casu),ヘパリンの構造,Hemostasis
ンダル(Lindall)編集,ヘパリンと関連多糖類,Plenum Press,ニューヨーク,1
992]。
上述の通り、主として抗血栓症活性の原因となっている、ヘパリンの五糖の配
列は、天然ヘパリンの鎖の約3分の1の中にしか含まれていないので、前記配列
を含む鎖を集中させながら、又は既に活性部位を有する鎖の中か若しくは
活性部位が不足しているこれらの鎖の中に新たな活性部位を生成しながら、前記
活性度を強化することは実務的に興味を引く。抗トロンビンIIIに関するアフィ
ニティクロマトグラフィーによるか又は(有効性は劣るが)カチオン樹脂によるヘ
パリンの処理によって達成し得る第一目的は、普通のヘパリンのかなりの部分(
約3分の2)を使用しないこともあって、未だにコスト高であるものと考えられ
ている。
他方、従来の方法を用いたヘパリンの硫酸化によって、抗トロンビンのための
更なる活性部位を生成する目的を達成することはできない。これらの従来方法で
は、抗トロンビンのための活性部位は過剰の硫酸基によってマスクされる(maske
d)。偶然にもそれらが出発ヘパリンの抗凝固活性より大きな抗凝固活性を示した
としても(大抵は抗トロンビンによって提供される作用機構とは異なる作用機構
による)、それら生成物は、抗血栓剤としてのヘパリンに比べて活性は通常低く
、しかも、それら生成物は、他の血漿タンパク質との特異な相互作用によって望
ましくない副作用を生じることがある。[B.カシュ,ヘパリンの構造と生物活性
,Advances Carbohydr.Chem.Biochem.43,51〜134(1985)]。
一方、部分的に又は全体的に脱硫酸化したヘパリン類を再硫酸化することによ
って、ヘパリンの活性な配列を「再構築する(reconstruct)」ことが試みられた
が、得られた生成物は、抗血栓症活性が強化されるというよりむしろ低減した。
これは、特に、イズロン単位(iduronic units)が位置2よりむしろ位置3で硫酸化
する傾向があるため、及び/又はグルコサミン単位の位置3での硫酸化が不充分
であるためである。[R.N.レジ(Rej),K.G.ラドウィグ-バクスタ(Ludwig-Bax
ter),A.S.ペリン(Perlin),Carbohydr.Res.210,299〜310(1995)]。
発明の概要
我々は今回、インビトロ高抗血栓症活性を有し、位置2で硫酸化されているが
位置3では硫酸化されていないイズロン単位を少なくとも20%有し、位置3及
び位置6で硫酸化されたスルファミノグルコサミン単位
(sufaminoglucosaminic units)を少なくとも30%有し、しかも、2.0〜3.
5の範囲の硫酸塩/カルボキシルのモル比を有する、グリコサミノグリカン類を
得ることを可能にする方法を見出した。
この方法は、出発原料として種々の高硫酸化グリコサミノグリカン類を使用し
、しかも、この方法は、
(a) 出発の高硫酸化されたグリコサミノグリカンの有機塩基の塩を調製し、
(b) 工程(a)の有機塩基の塩を加溶媒分解によって部分的に脱硫酸化し、
(c) 工程(b)の部分脱硫酸化済み生成物をN−再硫酸化し、
(d) 工程(c)の生成物をできるだけ6−O−再硫酸化する、
諸工程を含むことを特徴とする。
得られた生成物は、抗血栓症治療に適した薬剤組成物の調製において、活性な
物質として使用することができる。
発明の詳細な説明
本発明による高抗血栓症活性を有するグリコサミノグリカン類の特性及び利点
は大部分、以下の詳細な説明の中に例証する。
本発明の方法では、出発物質として幾種類かの高硫酸化グリコサミノグリカン
類を使用することができ、特に、1,500〜8,000ダルトンの低分子量の高硫酸化ヘ
パリン(ssLMWH)、8,000〜20,000ダルトンの高分子量の高硫酸化ヘパリン、1,500
〜8,000ダルトンの低分子量の高硫酸化ヘパラン硫酸、8,000〜25,000ダルトンの
高分子量の高硫酸化ヘパラン硫酸、バイオテクノロジーによる高硫酸化ヘパラン
硫酸、及びN−硫酸化K5多糖から得られた、エピマー化した又はエピマー化し
ていないヘパリン類を使用することができる。
既知の通り、高硫酸化グリコサミノグリカン類とは、ヒドロキシル基の全水素
(又は水素の大部分)が、SO3-基で置換されたグリコサミノグリカン類であって
、それらは種々の著者によって記述された手順によって調製される[M.L.ウォ
ルフロム(Wolfrom)等,J.Am.Chem.Soc.75,1519(1953);ナガサワ等,Carboh
ydr.Res.158,183〜190(1986);欧州特許第214,879号明細書(1986);米国特許第
4,727,063号明細書;ナッギ等,Biochem.Pharmacol.
36,1895〜1900(1987);オガモ等,Carbohydr.Res.193,165〜172(1989)]。
その方法は次の工程によって行われる。
(a) 出発の高硫酸化グリコサミノグリカンの有機塩基の塩を調製する工程であっ
て、その有機塩基がピリジン、テトラメチルアンモニウム及びテトラブチルアン
モニウムから選ばれる上記工程。
出発の高硫酸化グリコサミノグリカンは、ナトリウム塩の形態で、蒸留水に溶
解させ、次いで、カチオン交換柱を通過させる。
得られた溶液に有機塩基を、pH9が達成されるような量で室温で添加して、
塩を得る。次いで、この塩は凍結乾燥される。
(b) 工程(a)の塩の、加溶媒分解による部分脱硫酸化。工程(a)で得た有機塩基の
塩は、H2O又はメタノールを含有する非プロトン性極性溶媒の溶液を用い、こ
の溶液と前記有機塩基塩の重量比を50:1〜100:1にして処理する。
得られた溶液は、50〜90℃の範囲の温度で撹拌しながら、5〜480分の
範囲の時間加熱して、前記塩を部分的に脱硫酸化する。
次いで、反応混合物に、水と0.25N NaOHを添加して中性のpHにし
、生成物は、酢酸ナトリウムを飽和させたEtOHを添加することによって沈降
させる。次いで、生成物は、カットオフ2000の膜を通して透析し、ゲルろ過
によって脱塩する。
(c) 工程(b)から得られた生成物のN−再硫酸化
工程(b)から得られた生成物は、10/0.1〜10/1ml/gの水の量で
溶解し、次いで、その溶液にNaHCO3を添加してpH9にし、次いで、トリ
メチルアミン三酸化イオウ(trimethylamine sulfur trioxlde)を前記生成物の重
量と同じ量で添加する。それを50〜60℃に2時間の間加熱し、次いで、トリ
メチルアミン三酸化イオウの等量を再び添加し、同じ温度で24時間の間加熱を
続ける。
生成物は、酢酸ナトリウムを飽和させたEtOHを添加することによって沈
降させ、最初NaCl溶液中で次いで蒸留水中でカットオフ2000の膜を通し
て透析し、次いで、最終的にゲルろ過によって脱塩する。
(d) 工程(c)から得られた生成物の可能な限りの6−O−再硫酸化。NMR分析
に基づき、グルコサミン単位の位置6に30%を超える量が脱硫酸化されている
ことが分かった生成物は、既知の方法により[即ち、K.ナガサワ(Nagasawa),H
.ウチヤマ(Vchiyama),N.ワジアマ(Wajiama),Carbohydr.Res.158,183〜19
0(1986)]、6−O−再硫酸化させてもよい。
得られた生成物は次の特性を呈する。
・イズロン単位の少なくとも20%は位置2で硫酸化し、位置3では硫酸化し
ていないこと;
・スルファミノグルコサミン単位の少なくとも30%は、天然ヘパリンの抗ト
ロンビンのための活性部位と同様、位置3及び位置6で硫酸化していること
・硫酸塩/カルボキシルのモル比は2.0〜3.5の範囲であること:
・インビトロ(in vitro)抗Xa活性度は100〜150U/mgの範囲である
こと。
位置2で硫酸化されているが位置3では硫酸化されていないイズロン単位、及
び位置3で硫酸化されたスルファミノグルコサミン単位の含有量は、NMR分析
によって決定された。このNMR分析は、決定される単位と決定される硫酸化の
型とに特に起因する信号を統合することに基づいている[E.A.ヤテス(Yates)
,F.サンチニ(Santini),M.グエリニ(Guerrini),A.ナッギ(Naggi),G.トリ
(Torri),B.カシュ:体系的に変性された12種のヘパリン誘導体の主要シーケ
ンスの1Hと13C NMRスペクトル帰属(1H and 13C NMR spectral ass
ignments of the major sequences of twelve systematically modified
heparin derivatives),Carbohydr.Res.294,15〜27(1996)]。
硫酸塩/カルボキシルのモル比は、溶液導電率法(conductometric method)[B
.カシュ,U.ジェナロ(Gennaro):ヘパリン及びコンドロイチン硫酸の硫
酸基とカルボキシレート基を決定するための簡便な溶液導電率法(A simple co
nductometric method for determining the sulfate and carboxylate
groups of heparin and Chondroitin sulfates),Carbohydr.Res.39,16
8〜176(1975)]によって決定した。
インビトロ抗Xa活性度は、発色法(chromogenic method)[A.N.タイエン(
Teien)等,Thrombosis Res.8,413〜416(1976)]によって決定した。本発明は
特に、低分子量のヘパリン類(1,500〜8,000ダルトン)、高分子量のヘパリン類(8
,000〜18,000ダルトン)、低分子量のヘパラン硫酸類(1,500〜8,000ダルトン)、
高分子量のヘパラン硫酸類(8,000〜25,000ダルトン)、及びK5多糖からヘパリ
ン類とヘパラン硫酸類から成る群に属するグリコサミノグリカン類に関する。そ
れらの諸特性のおかげで、本発明のグリコサミノグリカン類は、薬理学的に許容
できる賦形剤(excipients,添加剤)又は希釈剤と混合して使用し、抗血栓症の治
療に適した薬剤組成物を調製することができる。
それによって、本発明は更に、血栓症を治療し予防するための治療法であって
、前記グリコサミノグリカン類を1〜1,500mg/日の量で投与することか
らなる治療法にも関する。
本発明を例証するために、次の諸例を公表する。
例1 …高い抗トロンビン活性を有する低分子量ヘパリンの調製(a) 高硫酸化された低分子量ヘパリン(ssLMWH)のピリジン塩の調製(G1074/4 )
米国特許第4,727,063号明細書及び刊行物「ナッギ(Naggi)等,Biochem
.Pharmacol.36,1895〜1900(1987)」に記載の手順に従って、豚の腸粘膜から
の市販ヘパリンから得られた、5,000ダルトンに等しい分子量を有するss
LMWHのナトリウム塩(これは、抗Xa活性度=87U/mg、図1Aの13
C−NMRスペクトルを有する)360mgを、蒸留水(30ml)に溶解させ、
次いで、カチオン交換柱(H+形態のアンバーライト(AMBERLITE)IR 120)を通過さ
せた。得られた溶液は、ピリジンを用いてpH9に調整した。かくして得られた
高硫酸化済み低分子量ヘパリンのピリジン塩を凍結乾燥した。 (b) ssLMWHのピリジン塩の脱硫酸化
得られた上記高硫酸化済み低分子量ヘパリンのピリジン塩は、10%DMSO
M/MeOH溶液(25ml)に溶解させた。その溶液は、80℃の油浴で撹拌し
ながら15分間の間加熱した。反応の終わりに、水15mlを添加し、次いで溶
液は0.25NNaOHで中和した。反応生成物は、酢酸ナトリウムで飽和させ
たEtOH 60mlを添加することによって沈降させ、蒸留水でカットオフ2
000膜を通して48時間の間透析し、次いで、セファデックス(Sephadex)G2
5のゲルろ過によって脱塩した。得られた生成物は次の諸特性を示す。13C−N
MRスペクトル(図1B)は、全体的にN−脱硫酸化され(C2NH2:56pp
m)、且つ部分的に6−O−脱硫酸化された(C6OH:62ppm)ヘパリンか
らの典型的な信号と、位置3では硫酸化されず位置2で硫酸化されたイズロン単
位の典型的な65ppmの信号とを示す。(c) 部分的に脱硫酸化した工程(b)の生成物のN−再硫酸化(G 2291)
工程(b)で得られた生成物100mgを、水10mlに溶解させ、NaHCO3
を用いてpH9に調整した。次いで、同じ重量のトリメチルアミン三酸化イオウ
(TMA.SO3)を添加し、次いで、溶液は、55℃の油浴で撹拌しながら加熱
した。2時間後、同じ重量のTMA.SO3を添加し、次いで、24時間放置し
反応させた。反応の終わりに、その混合物はpH9に調節した。
試料は、酢酸ナトリウムで飽和させたEtOH4体積を添加することによって
沈降させ、1N NaClで24時間の間、0.5N NaClで24時間の間、
且つ蒸留水で24時間の間、カットオフ2000膜を通過させ、次いで、セファ
デックスG25上でゲルろ過することによって、脱塩した。
得られた生成物は次の特性を呈する。
硫酸塩/カルボキシルのモル比:3.22、
抗−Xa活性度:152U/mg。
1H−NMRスペクトルによって、完全なN−硫酸化を確認した。
例2(G2 309)
脱硫酸化の反応時間を30分間に等しくして、例1を繰り返した。脱硫酸化か
ら得られた生成物は、図1Cに示される13C−NMRスペクトルを示し、例1の
項目(b)に記載の特性を有している。
N−再硫酸化の後、得られた生成物は、次の特性を示す。
抗−Xa活性度:110U/mg、
1H−NMRスペクトルによって、完全なN−硫酸化を確認した。
例3(G2 301)
(a) 脱硫酸化の反応時間を45分間に等しくして、例1を繰り返した。脱硫酸化
から得られた生成物は、図1Dに示される13C−NMRスペクトルを示し、例1
の項目(c)に記載の特性を有している。
N−再硫酸化の後、1H−NMRスペクトルによって、完全なN−硫酸化を確
認した。
(b)N−再硫酸化済み生成物は、詳細な説明に引用されている手順に従って、6
−O−再硫酸化した。
例4
項目(b)の時間と温度を変えながら、且つ、65℃で1.5時間の間精確に操
作しながら、例1を繰り返した。脱硫酸化から得られた生成物は、図1B、1C
及び1Dに示される13C−NMRスペクトルに類似したスペクトルを示した。
65ppmでの信号(位置3で脱硫酸化され位置2で硫酸化されたイズロン単
位の典型的なもの)は、例え例1の項目(b)の条件下で得られたものより小さかろ
うと、有意な量で存在する。
例5
(a) 脱硫酸化の温度を90℃に等しくし、時間を45分間に等しくして、例1を
繰り返した。脱硫酸化から得られた生成物は、例1の項目(b)に記載の特性に類
似の13C−NMRスペクトルを示した。しかし、一層高い温度及び一層短い時間
で得られた生成物のスペクトルの信号特性に比べて、位置6で硫酸化されたグル
コサミンの信号特性はかなり小さく、且つ、その位置で硫酸化さ
れていないグルコサミンの信号特性はかなり大きい。
(b) N−再硫酸化済み生成物は、詳細な説明に引用されている手順に従って、6
−O−再硫酸化を行った。
例6
55℃のDMF中のピリジン塩をSO3/ピリジンの付加物(遊離ヒドロキシル
に対するモル比3:1)で5時間の間処理しながら高硫酸化された高分子量のヘ
パリン(12,000ダルトン)から出発して、例1を繰り返した。得られた生成
物(硫酸塩/カルボキシルのモル比>3;75ppmの13C−NMR信号は、位
置2で硫酸化され位置3では硫酸化されていないイズロン単位の特性)は、例1(
c)に記載される通り、N−再硫酸化された。
表1に例証される通り、低分子量のヘパリン類についての、得られた生成物の
抗血栓症活性度(Xa因子のインビトロ抑制で表現される)は、出発の高硫酸化生
成物のものと比べて、或いは現在市販されている低分子量ヘパリン類のものと比
べて著しく大きく、治療に使用される。
表1 抗−Xa活性度★
第1群 第2群
LMW−H − 100
ssLMWH(G1074/4) 100 −
G1074/4からの15分間脱硫酸化(G2281) 175 162
G1074/4からの30分間脱硫酸化(G2309) 125 125
★)U/mg.第1群では高硫酸化済み低分子量ヘパリン(ssLMWH)に対する規準
化値であり、第2群では市販の生成物「フラキシエパリン(Fraxieparin)」と「
ラブノックス(Lovenox)」(LMWH)の1:1混合物に対する規準化値である。
例7〜17
使用されたグリコサミノグリカン類の説明
・豚の腸粘膜から得られた、市販の高分子量ヘパリン(HMWH)(Mw=12,
000Da,抗−Xa活性度192 U/mg)(例7、8、9、10)
・市販のヘパラン硫酸(HS)。イズロン酸とグルクロン酸との間の比は、使用
されたヘパランの効用として変化する:
イズロン酸30%、グルクロン酸70%(例11)
イズロン酸40%、グルクロン酸60%(例12)
・K5多糖(K5−PS)(例13、14)
・エピマー化されたK5多糖(eK5−PS)。エピマー化の度合いは、使用さ
れたeK5−PSの効用として変化する:
イズロン酸30%、グルクロン酸70%(例15)
イズロン酸60%、グルクロン酸60%(例16、17)
(a) 高硫酸化された基質の調製
使用する基質のナトリウム塩1.5gを蒸留水(30ml)に溶解し、次いで、
カチオン交換柱(H+形熊のアンバーライト IR 120)を通過させた。得ら
れた溶液は、エタノール中の10%テトラブチルアンモニウム水酸化物ノ溶液を
用いて、pH9に調整した。かくして得られたテトラブチルアンモニウム塩を凍
結乾燥した。基質のテトラブチルアンモニウム塩はDMF(60ml)に溶解さ
せ、次いで、ピリジン三酸化イオウ(Py.SO3)を、遊離ヒドロキシルの3当
量の量で添加し、次いで、その溶液は、55℃の油浴中で撹拌しながら一晩中加
熱した。反応の終わりに、水5mlを添加し、次いで、反応性生物は、酢酸ナト
リウムで飽和させたEtOH 200mlを添加することによって沈降させ、蒸
留水で48時間の間、カットオフ6000〜8000の透析膜を通して透析し、
次いで、セファデックスG25上でゲルろ過することによって脱塩した。得られ
た生成物は次の特性を呈する。
13H−NMRスペクトルは、完全にN−脱硫酸化された(A2NH2)C2:5
6ppmグルコサミン及び全体的に6−O−硫酸化された(A6S)C669pp
mの典型的な信号と、同一の残基(U2,3S)C1Å101.5ppm上の位置
2及び3で硫酸化されたウロン単位(Uronic units)の信号とを示す。ウロン単位
上に得られた硫酸化の度合いは、使用されるグリコサミノグリカンの効用として
変化する。得られた高硫酸化済み生成物について得られたデ
ータは、表2に記載する。
(b) 高硫酸化済み基質のピリジン塩の調製(ssHMWH)
工程(a)に記載の方法によって得られたナトリウム塩 1gを、蒸留水(30m
l)に溶解させ、次いで、カチオン交換柱(H+形態のアンバーライトIR 12
0)を通過させた。得られた溶液は、ピリジンを用いてpH9に調整した。かく
して得られた高硫酸化済み基質のピリジン塩を凍結乾燥した。
(c) 高硫酸化済み基質のピリジン塩の脱硫酸化
上述の通りにして得たピリジン塩100mgを、DMSO/MeOH 10%
溶液(10ml)に溶解させた。その溶液は、表3に記載の温度と時間と使用して
(油浴で)撹拌しながら加熱した。反応の終わりに、水5mlを添加し、次いで、
反応性生物は、酢酸ナトリウムで飽和させたEtOH 100mlを添加するこ
とによって沈降させ、蒸留水で48時間の間、カットオフ6000〜8000の
透析膜を通して透析し、次いで、セファデックスG25上でゲルろ過することに
よって脱塩した。得られた生成物は表3に記載の特性を示す。
(d) 工程(c)から得られた、部分的に脱硫酸化した生成物のN−再硫酸化
工程(c)から得られた生成物100mgを水10mlに溶解させ、NaHCO3
を用いてpH9に調整した。次いで、同じ重量のトリメチルアミン三酸化イオウ
(TMA.SO3)を添加し、次いで、その溶液は、55℃の油浴で撹拌しながら
加熱した。2時間後、同一重量のTMA.SO3を更に添加し、次いで、24時
間の間放置した。反応の終わりに、水5mlを添加し、次いで、反応性生物は、
酢酸ナトリウムで飽和させたEtOH 50mlを添加することによって沈降さ
せ、蒸留水で48時間の間、カットオフ6000〜8000の透析膜を通して透
析し、次いで、セファデックスG25上でゲルろ過することによって脱塩した。
13H−NMRスペクトルは、得られた生成物の完全なN−脱硫酸化を示す。得
られた諸生成物の、硫酸塩/カルボキシル(DS)の比として表される硫酸化度合
いと、分子量(Mw)と、生物活性度(aPTT、抗IIa及びXa)とを決
定した。得られたデータを表4に記載する。
表2 項目(a)に記述の通りにして得られた高硫酸化済みグリコサミノグリカ
ン類の説明。表1の第1欄は、諸例においてそのような生成物が使用されたこと
を示す。
表3 使用された反応条件(基質、温度及び時間)と、得られた諸生成物の特性
との説明。表4 N−再硫酸後に得られた諸生成物とそれらの特性との説明。
【手続補正書】特許法第184条の8第1項
【提出日】平成11年4月6日(1999.4.6)
【補正内容】
明細書
高い抗血栓症活性を有するグリコサミノグリカン類
発明の分野
本発明の目的は、インビトロ(in vitro)高抗血栓症活性を有するグリコサミノ
グリカン類であって、出発の高硫酸化されたグリコサミノグリカンの有機塩基の
塩を調製し、その塩を加溶媒分解により部分脱硫酸化し、次いで部分脱硫酸化済
み生成物をN−再硫酸化することによって高硫酸化された種々のグリコサミノグ
リカン類から得られる上記グリコサミノグリカン類を提供することにある。
ヘパリンは動物の器官から抽出された多糖類であり、抗凝固剤及び抗血栓剤と
して50年以上の間採用されてきた。ヘパリンは、ヘパラン硫酸と同様、グリコ
サミノグリカン類であって、組織及び動物種(グリコサミノグリカン類は組織及
び動物種から得られてきた)に依存しつつ、ある程度は分離工程にも依存しつつ
様々に硫酸化され、ウロン酸(イズロン酸又はグルクロン酸)とグリコサミンとの
交互配列(alternate sequences)から成るグリコサミノグリカン類に属する。
ヘパリンの構造は、式
(式中、単位Uはイズロン酸(IdoA)又はグルクロン酸(GlcA)を示し、単位AはN
硫酸化グリコサミン(GlcNAc)を示し;R2、R3及びR6は硫酸基又は水素を示し
R'はSO3又はAcを示す)による統計用語によって示される。
病院で使用されるヘパリンに大抵表示されている配列は、三硫酸化二糖(do
A2SO3−GlcNSO36SO3)のものである。一方、…二級…。
これらの従来方法では、抗トロンビンのための活性部位は過剰の硫酸基によっ
てマスクされる(masked)。偶然にもそれらが出発ヘパリンの抗凝固活性より大き
な抗凝固活性を示したとしても(大抵は抗トロンビンによって提供される作用機
構とは異なる作用機構による)、それら生成物は、抗血栓剤としてのヘパリンに
比べて活性は通常低く、しかも、それら生成物は、他の血漿タンパク質との特異
な相互作用によって望ましくない副作用を生じることがある。[B.カシュ,ヘパ
リンの構造と生物活性,Advances Carbohydr.Chem.Biochem.43,51〜134(198
5)]。
一方、部分的に又は全体的に脱硫酸化したヘパリン類を再硫酸化することによ
って、ヘパリンの活性な配列を「再構築する(reconstruct)」ことが試みられた
が、得られた生成物は、抗血栓症活性が強化されるというよりむしろ低減した。
これは、特に、イズロン単位(iduronic units)が位置2よりむしろ位置3で硫酸化
する傾向があるため、及び/又はグルコサミン単位の位置3での硫酸化が不充分
であるためである。[R.N.レジ(Rej),K.G.ラドウィグ-バクスタ(Ludwig-Bax
ter),A.S.ペリン(Perlin),Carbohydr.Res.210,299〜310(1995)]。
発明の概要
我々は今回、インビトロ高抗血栓症活性を有し、位置2で硫酸化されているが
位置3では硫酸化されていないイズロン単位を少なくとも20%有し、位置3及
び位置6で硫酸化されたスルファミノグルコサミン単位(sufaminogiucosaminic
units)を少なくとも30%有し、しかも、2.0〜3.5の範囲の硫酸塩/カル
ボキシルのモル比を有する、グリコサミノグリカン類を得ることを可能にする方
法を見出した。
この方法は、出発原料として種々の高硫酸化グリコサミノグリカン類を使用し
、しかも、この方法は、
(a) 出発の高硫酸化されたグリコサミノグリカンの有機塩基の塩を調製し、
(b) 工程(a)の有機塩基の塩を加溶媒分解によって部分的に脱硫酸化し、
(c) 工程(b)の部分脱硫酸化済み生成物をN−再硫酸化し、
(d) 工程(c)の生成物をできるだけ6−O−再硫酸化する、
諸工程を含むことを特徴とする。
得られた生成物は、抗血栓症治療に適した薬剤組成物の調製において、活性な
物質として使用することができる。
発明の詳細な説明
本発明による高抗血栓症活性を有するグリコサミノグリカン類の特性及び利点
は大部分、以下の詳細な説明の中に例証する。
本発明の方法では、出発物質として幾種類かの高硫酸化グリコサミノグリカン
類を使用することができ、特に、1,500〜8,000ダルトンの低分子量の高硫酸化ヘ
パリン(ssLMWH)、8,000〜20,000ダルトンの高分子量の高硫酸化ヘパリン、1,500
〜8,000ダルトンの低分子量の高硫酸化ヘパラン硫酸、8,000〜25,000ダルトンの
高分子量の高硫酸化ヘパラン硫酸、バイオテクノロジーによる高硫酸化ヘパラン
硫酸、及びN−硫酸化K5多糖から得られた、エピマー化した又はエピマー化し
ていないヘパリン類を使用することができる。
既知の通り、高硫酸化グリコサミノグリカン類とは、ヒドロキシル基の全水素
(又は水素の大部分)が、SO3-基で置換されたグリコサミノグリカン類であって
、それらは種々の著者によって記述された手順によって調製される[M.L.ウォ
ルフロム(Wolfrom)等,J.Am.Chem.Soc.75,1519(1953);ナガサワ等,Carboh
ydr.Res.158,183〜190(1986);欧州特許第214,879号明細書(1986);米国特許第
4,727,063号明細書;ナッギ等,Biochem.Pharmacol.36,1895〜1900(1987);オ
ガモ等,Carbohydr.Res.193,165〜172(1989)]。
その方法は次の工程によって行われる。
(a) 出発の高硫酸化グリコサミノグリカンの有機塩基の塩を調製する工程であっ
て、その有機塩基がピリジン、テトラメチルアンモニウム及びテトラブチルアン
モニウム塩から選ばれる上記工程。
出発の高硫酸化グリコサミノグリカンは、ナトリウム塩の形態で、蒸留水に
溶解させ、次いで、カチオン交換柱を通過させる。
得られた溶液に有機塩基を、pH9が達成されるような量で室温で添加して、
塩を得る。次いで、この塩は凍結乾燥される。
(b) 工程(a)の塩の、加溶媒分解による部分脱硫酸化。工程(a)で得た有機塩基の
塩は、H2O又はメタノールを含有する非プロトン性極性溶媒の溶液を用い、こ
の溶液と前記有機塩基塩の重量比を50:1〜100:1にして処理する。
得られた溶液は、50〜…の範囲の温度で撹拌しながら、加熱して…。請求の範囲
1. インビトロ高抗血栓症活性を有し、位置2で硫酸化され位置3では硫酸化
されていないイズロン単位を少なくとも20%有し、位置3及び位置6で硫酸化
されたスルファミノグルコサミン単位を少なくとも30%有し、しかも、1.5
〜3.5の範囲の硫酸塩/カルボキシルのモル比を有する、グリコサミノグリカ
ン類。
2. 低分子量のヘパリン(1,500〜8,00ダルトン)から成る、請求項1記
載のグリコサミノグリカン類。
3. 高分子量のヘパリン(8,000〜18,000ダルトン)から成る、請求項
1記載のグリコサミノグリカン類。
4. 低分子量のヘパラン硫酸(1,500〜8,000ダルトン)から成る、請求
項1記載のグリコサミノグリカン類。
5. 高分子量のヘパラン硫酸(8,000〜25,000ダルトン)から成る、請
求項1記載のグリコサミノグリカン類。
6. K5多糖から得られたヘパリンとヘパラン硫酸とから成る、請求項1記載
のグリコサミノグリカン類。
7. 種々の高硫酸化済みグリコサミノグリカン類から出発する請求項1記載の
グリコサミノグリカン類の調製方法であって、
(a) 出発の高硫酸化済みグリコサミノグリカンの有機塩基の塩を調製し、
(b) 水又はメタノールを含有する非プロトン性極性溶媒を用いて、50〜80℃
の温度で5〜480分の範囲の時間の間処理することによって、加溶媒分解によ
り工程(a)の有機塩基の塩を部分的に脱硫酸化し、
(c) 工程(b)の部分脱硫酸化済み生成物をN−再硫酸化し、
(d) 工程(c)の生成物を可能な限り6−O−再硫酸化する、
諸工程を含むことを特徴とする、上記方法。
8. 出発の高硫酸化済みグリコサミノグリカン類は、1,500〜8,000ダ
ルトンの低分子量の高硫酸化済みヘパリン類、8,000〜20,000ダルトン
の高分子量の高硫酸化済みヘパリン類、1,500〜8,000ダルトンの
低分子量の高硫酸化済みヘパラン硫酸類、8,000〜25,000ダルトンの高
分子量の高硫酸化済みヘパラン硫酸、バイオテクノロジーにより高硫酸化された
ヘパラン硫酸、及びN−硫酸化K5多糖から得られた、エピマー化した又はエピ
マー化していないヘパリン類から成る群から選ばれる、請求項7記載の方法。
9. 工程(a)の調製は、出発のグリコサミノグリカンのナトリウム塩の溶液を
有機塩基で処理しpH9に調整することにより達成する、請求項7記載の方法。
10.工程(c)のN−再硫酸化は、工程(b)で得られた生成物の水溶液を、該生成
物の重量に等しい量のトリメチルアミン三酸化イオウを用いてpH9で処理し;
50〜60℃まで加熱し;次いで、再び等量のトリメチルアミン三酸化イオウを
添加する;ことによって行う、請求項7記載の方法。
11.請求項1に定義されるグリコサミノグリカンを1〜1,500mg/日の量
で投与することを含む、抗血栓症治療のための治療法。
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