【発明の詳細な説明】
変圧器内の水平空冷
技術分野
本発明は、空冷式導線巻線型電源変圧器、及び導線巻線型電源変圧器を空気冷
却する方法に関する。
背景技術
近代的電源変圧器は、通常油冷却されている。継鉄により接合されたある数の
鉄心脚から成る鉄心及び(一次、二次、制御)巻線は、油が満たされた密閉され
た容器の中に浸漬されている。コイル及び鉄心中で生成された熱は、コイルと鉄
心を通って内部を循環する油によって除去される。循環油は、外部ユニットまで
搬送され、そこで冷却される。油循環は、油が周回するように圧送されている強
制循環であってもよいし、或いは又、油中の温度差により作り出される自然循環
であってもよい。循環油は、空冷又は水冷用の装置により外部で冷却される。外
部空冷は、強制式であってもよいし、或いは又自然対流によるものであってもよ
い。熱搬送体としての役目の他に、油は同様に高圧用油冷式変圧器において絶縁
機能も有している。
乾式変圧器は、通常空冷される。今日の乾式変圧器は、低電力負荷で使用され
ることから、これらの変圧器は通常自然対流を通して冷却される。当該技術は、
GB1,147,049に記述されているようなひだ付き巻線を用いて製造され
た軸方向冷却ダクト、EP83107410.9に記述されているような注型樹
脂の中に埋込まれた巻線を冷却するための軸方向ダクト、およびSE73039
19.0に記述されているようなピーク負荷での十字流(cross−curr
ent)ファンの使用に関係する。
冷却の必要性は、導線巻線型電源変圧器の場合の方が大きい。全巻線内での冷
却要求を満たすには、強制対流が必要である。導線巻線を冷却するためには、自
然対流では不充分である。冷却材への熱の輸送経路が短いことが重要であり、ま
たこの熱が冷却材まで効率良く伝達されることが大切である。従って、全ての巻
線が、充分な量の冷却材と直接接触していることが重要である。
半導電熱分解グラスファイバの内部および外部層によって絶縁が提供されてい
る導線がUS5036165から知られている。同様に、例えば、半導電熱分解
グラスファイバ層が、導線を形成する2本の平行なロッドと接触し、固定子スロ
ット内の絶縁体が半導電熱分解グラスファイバの外部層によって取り囲まれてい
るUS5066881に記されているように、動力電気機械内の導線にかかる絶
縁体を具備することも知られている。熱分解グラスファイバは、含浸処理の後で
さえその抵抗率を保持することから適切なものとして記述されている。
発明の目的
本発明の目的は、請求の範囲に従った装置すなわち、本明細書で紹介されてい
るタイプの高圧ケーブルを含むケーブル巻線型電源変圧器の空冷を可能にするよ
うな、序文で記述されたタイプの装置を提供することにある。本発明は、ケーブ
ル層の冷却要求を満たすため適正に冷却材が分配されるケーブルの各層間の水平
冷却用ダクトを製造することを目的としている。鉄心および巻線は、巻線内の水
平ダクトを通して半径方向に流れる冷却空気によって冷却される。空気は、水平
ダクトの高さを変化させることにより、その冷却要求
に従ってダクト内で分配される。
発明の要約
本発明は、冷却用ダクトを形成するように巻線内で軸方向に各々のケーブルの
巻きを分離するスペーサが巻線に具備されるような形で配置された、ケーブル巻
線型変圧器鉄心を含む電源変圧器に関する。
かくして本発明は、図示された実施形態に見ることができるように、コイルの
巻線中にさまざまな方法で配置されたスペーサを用いて作り出された半径方向の
ディスク状の冷却用ダクトを各ケーブル層の間すなわち軸方向の巻線の各巻きの
間に含んでなる。実施形態はまた、ダクトを通して空気を輸送するための水平に
作用するファンをも含んでなる。冷却材「空気」がヘリウムガスといったような
その他の気体冷却材であってもよいということを理解すべきである。
本発明に基づく電源変圧器においては、巻線は、XLPEケーブルまたはEP
R絶縁体付きケーブルといったような、現在配電用に用いられているタイプの固
体の押出し成形絶縁体をもつケーブルで構成されている。かかるケーブルは、単
数または複数のより線部からなる内部導線、この導線をとり囲む内部半導電層、
これをとり囲む固体絶縁層およびこの絶縁層をとり囲む外部半導電層を含んでな
る。このようなケーブルは可とう性を有し、この可とう性は、本発明に基づくデ
バイスのための技術が、組立て中に湾曲されるケーブルにより巻線が形成される
巻線システムに主として基づくものであることから、この状況下で重要な1つの
特性である。XLPEケーブルの可とう性は通常、直径30mmのケーブルについ
ては約20cmの曲率半径、および直径80mmのケーブルについては約65cmの曲
率半径に対応する。本願においては、「可とう性」という語は、お
よそケーブル直径の4倍、好ましくはケーブル直径の8〜12倍の曲率半径まで
の可とう性を巻線がもつことを表すために使用されている。
本発明における巻線は、それらが湾曲されたときおよびそれらが作動中に熱応
力を受けたときでさえその特性を保持するように構成されている。この状況下で
、各層が互いに対する付着力を保持することがきわめて重要である。層の材料特
性、特にその弾性および相対的熱膨張率がここでは決定的要因である。例えば、
XLPEケーブルにおいて、絶縁層は、架橋低密度ポリエチレンからなり、半導
電層は、すす及び金属粒子が内部に混合されたポリエチレンからなる。温度変動
の結果としての体積変化は、ケーブル内の半径の変化として完全に吸収され、こ
れらの材料の弾性との関係において層内の熱膨張率間の差異が比較的わずかであ
ることから、半径方向の膨張は、層間の付着力を失なうことなく発生しうる。
上述の材料組合せは、単なる一例としてみなされるべきものである。特定され
た条件と共に半導電であること、すなわち10-1〜106ohm−cm,例えば1〜5
00ohm−cmまたは10〜200ohm−cmの範囲内の抵抗率をもつことという条件
をも満たすその他の組合せも当然、本発明の範囲内に入る。
絶縁層は例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(H
DPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレン(PB)、ポリメチルペンテ
ン(PMP)といった固体熱可塑性材料、架橋ポリエチレン(XLPE)といっ
た架橋材料または、エチレンプロピレンゴム(EPR)またはシリコンゴムとい
ったゴムで構成されていてよい。
内部および外部半導電層は、同じベース材料でできていてよいが、すすまたは
金属粉末といった導電性材料の粒子が内部に混合され
ている。
これらの材料の機械的特性、特にその熱膨張率は、少なくとも本発明に基づい
て必要な導電性を達成するのに必要とされる割合ですすまたは金属粉末が混入さ
れているか否かによって比較的影響を受けない。かくして、絶縁層および半導電
層は、実質的に同じ熱膨張率を有する。
エチレン酢酸ビニル共重合体/ニトリルゴム、ブチルグラフトポリエチレン、
エチレンアクリル酸ブチル共重合体及びエチレンアクリル酸エチル共重合体もま
た、半導電層のための適切な重合体を構成する。種々の層の中でベースとして異
なるタイプの材料が使用される場合でさえも、それらの熱膨張率が実質的に同じ
であることが望ましい。このことは、上で列挙した材料の組合せの場合にあては
まる。
以上に列挙した材料は、E係数がE<500Mpa好ましくはE<200Mp
aの比較的優れた弾性を有する。この弾性は、層中の材料についての熱膨張率の
間のわずかな差でも弾性の半径方向に吸収されいかなるひびわれやその他の損傷
も現れず層が互いから剥離しないようにするために充分なものである。層中の材
料は弾性をもち、層間の付着力は少なくともそのうち最も弱い材料と同じ大きさ
のものである。
2つの半導電層の導電率は、各層に沿って電位を実質的に均等にするのに充分
なものである。外部半導電層の導電率は、ケーブル内に電界を内含させるのに充
分大きいものの、層の長手方向に誘導された電流に起因する有意な損失を発生さ
せないよう充分小さいものである。
かくして、2つの半導電層の各々は基本的に1つの等電位表面を構成し、これ
らの層は実質的にその層間に電界を封じ込めることに
なる。当然のことながら、絶縁層内に単数または複数の付加的な半導電層を配置
させることを妨げるものではない。
図面の簡単な説明
本発明についてここで、添付図面を参照しながらさらに詳細に記述する。
図1aは、ケーブル層間の水平ダクトを示す、本発明に基づく第1の実施形態
における巻線コイルの斜視図である。
図1bは、図1に対応するもので鉄心を含む図を示す。
図2aは、スペーサがそれに対し直角に流れる空気のための水平ダクトを構成
している状態の、図1に基づく第1の実施形態の上から見た図である。
図2bは、スペーサが流れの方向に対し平行に方向づけされている、図2aに
対応する第2の実施形態を示す。
図2cは、4つの半径方向スペーサがダクトを形成している本発明の第3の実
施形態の上から見た図を示し、ここで矢印は空気流の方向を表わしている。
図2dは、ダクトを形成する8つの半径方向スペーサを有する本発明の第4の
実施形態の上から見た図を示す。
図3は、本発明に基づくファン配置を伴う、図2cに従った実施形態の半径方
向断面を概略的に示す。
図4は、本発明に基づく巻線コイルの中で用いられる高圧ケーブルを通る断面
図を示す。
発明の説明
図1aは、ケーブルと共に配置された巻線コイル1を示す。ケーブルはディス
ク巻線の形に巻付けられ、各々の新しい巻きは先行する巻付け層の半径方向外側
に巻付けられる。巻線コイル1は、スペ
ーサ3が各巻きの間に挿入された状態で巻付けられる。スペーサは、ケーブルの
外部表面と突き合わさるように整形されたブロック30の形をしている。
これに対応する要領で、図1bは、変圧器鉄心の脚2の形で成層鉄心のまわり
に配置された、ケーブル巻線コイル1を伴う変圧器の一部を示す。巻線コイル1
は、巻線の各巻きの間に挿入された上述のとおりのスペーサ3と共に巻付けられ
ている。
図2は、4つの異なる形で設けられた、ビーム形スペーサである異なるタイプ
のスペーサが具備された巻線を示す。図2a〜dを見れば明らかであるように、
スペーサは、空気流によって巻線コイルを通した水平冷却を可能にするべく、デ
ィスク形の巻線の巻きの間に空間を得るように複数の異なる方法で配置すること
ができる。
図2aは、スペーサ3が流れ方向に対し直角な方向で各々の巻線の巻きの間に
設けられている、図1中に示されたものに対応する第1の実施形態を示す。スペ
ーサは、図の中央にあるもののように、1つのスペーサを直径方向に、および/
又は鉄心の各々の側の2つのスペーサのように各々の巻線の巻きの間で巻線を通
る少なくとも1つの弦として配置されている。スペーサは、流れの方向に対し直
角に方向づけされている。空気流は図中で矢印により表わされており直立した巻
線コイルの場合には水平でスペーサに対して直角方向である。
図2bは、図2aのものと実質的に同一であるが、スペーサが代わって流れ方
向に対し平行に方向づけされている、第2の実施形態を示す。空気流は、図中矢
印で表されており、この実施形態においては、スペーサと実質的に平行である。
図2cは、巻線の各々の巻きの間の鉄心から半径方向外向きに設置されたスペ
ーサ3を有する第3の実施形態を示す。この実施形態
は、変圧器鉄心の脚2のまわりに均等分布した少なくとも4つのスペーサ3が配
置されている。この実施形態においては、同様に、空気流は、図中矢印により表
されており、鉄心に対し垂直で、スペーサのうちの2つに対し平行で、かつその
他2つのスペーサに対して直角に方向づけされている。
図2dは、巻線の各々の巻きの間の鉄心から半径方向外向きに設置されたスペ
ーサ3が具備された第4の実施形態を示す。この実施形態では、変圧器鉄心の脚
2のまわりに8つのスペーサ3が均等分布させられている。この実施形態におい
ても同様に、空気流は、図中矢印で表され、鉄心に向かって内部に直角方向に、
スペーサのうちの2つと平行に、スペーサのもう2つと直角に、そして残りの4
つのスペーサに対し部分的に平行に導かれる。空気流は、図2cと同じであるが
、さらに4つのスペーサのまわりにある。
図3は、以上で示したスペーサを用いて冷却用ダクトが具備されているコイル
を構成する巻線1の備わった3相電源変圧器の一部分を上から見た図である。冷
却という面からすると、スペーサの形状および材料は、あまり意味をもたない。
変圧器の機械的、磁気的および電気的な面から、スペーサの形状、数および材料
が決定される。この図は同様に、変圧器の鉄心の一部をなすその継鉄5を示して
いる。継鉄5は、断面で示され、変圧器鉄心の脚2に対応する層構造が備わって
いる。各々の巻線コイルはまた、冷却用空気が内側を流れるようになっているフ
ァンカウル(fan cowl)6によってとり囲まれている。ファンカウル6
の一方の側で、巻線1には、それを通して冷却用空気を強制送風するかまたは吸
込むように配置されたファン7が具備されている。ファンと反対の側では、ファ
ンカウル6には、数多くのやり方で整形されうるものの好ましくは巻線コイルの
長さ全体に沿って延びる開口部8が備わっている。こ
の開口部8の幅は0.1φ〜0.6φであり、ここでφは、コイルの外径である
。冷却要求は、巻線の巻き毎について異なり、このことはすなわち、水平ダクト
内の冷却材の流れが異なることを意味している。冷却材の流れの適正な分配を達
成するために、ダクトは、その中に異なる抵抗を与えかくしてダクトのニーズに
応じて流れを分配するべく、軸方向に異なる寸法をもつ。わずかな冷却要求しか
ないダクトは、かくして、より大きな冷却要求をもつダクトに比べ小さい軸方向
延長部分をもつ。矢印は、巻線コイルを通して空気を強制送風するファン7によ
り実施される、図中の冷却用空気の流れを示す。ファンカウル6は、鉄心の脚に
沿って軸方向に冷却用空気が流出できるように、巻線の最も外側の巻きに対し密
封するよう内側に湾曲するかまたは図3に破線で示されているエンドプレート9
に対しコイルの両端で、密封するように配置されている。図3の実施形態は、1
つの巻線コイルあたり1つのファンを有する。
図4は、本発明に基づく変圧器巻線として使用するための高圧ケーブル111
の断面図を示す。高圧ケーブル111は、何本かの例えば円形断面をもつ銅(C
u)のより線112からなる。これらのより線112は高圧ケーブル111の中
央に配置されている。より線112のまわりには第1の半導電層113がある。
第1の半導電層113のまわりには、例えばXLPE絶縁体といった絶縁層11
4がある。絶縁層114のまわりには、第2の半導電層115がある。かくして
、本願中の「高圧ケーブル」という概念は、配電のためかかるケーブルを通常と
り囲んでいる外部被覆を含んでいない。
この高圧ケーブルは、20〜250mmの範囲内の直径および40〜3000mm2
の範囲内の導電性部域を有する。
本発明は、図示された例に制限されるわけではない。本発明の範囲内でいくつ
かの修正が実施できる。例えば、各コイルについて1
基のファンは必要でない。3つのコイル全てに充分な空気を供給する1基のファ
ンを有する構成も実現可能である。同じく上述した通り、空気は、望ましい冷却
を達成するべくコイルを通して吸込まれてもよいし又強制送風されてもよい。ま
た、スペーサの数もその形状も固定されておらず、複数の異なるスペーサ変形形
態が、適正な冷却を達成するために可能である。
もう1つの修正は、変圧器内の負荷に応じて、冷却要求を変更させることがで
きるように、温度センサを用いたファンの速度制御を配備することにある。
さらに、上述の実施形態に示されているものと異なる数多くのやり方でケーシ
ングを配置することもできる。最も外側のケーブル巻線は外側ケーシングとして
使用でき、かくして自然対流により外側を冷却できる。同様に、エンドプレート
として最上位または最下位側のケーブル層を使用することも可能である。ケーブ
ル層の最上位および最下位側はこのとき、自己対流を通して冷却されることにな
る。
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