【発明の詳細な説明】
変圧器の磁気回路の製造で用いられる配向粒子を有する電気鋼板の製造方法
本発明は下記a)〜j)の一連の工程からなる、特に変圧器の磁気回路の製造
で用いられる配向粒子を有する電気鋼板の製造方法に関するものである:
a)化学重量組成中に0.1%以下の炭素と、2.5%以上のケイ素と、一次粒
子の発達を妨げる析出物を形成するための元素、特にアルミニウム、窒素、
マンガン、銅および硫黄とを含み、任意成分として錫を含む鋼をスラブまた
はストリップの形で連続鋳造し、
b)スラブまたはストリップを再加熱し、
c)スラブまたはストリップを熱間圧延して、厚さ1〜5mmの鋼板とし、
d)熱間圧延した熱い鋼板を巻き取り、
e)熱間圧延した鋼板またはストリップをアニールし、
f)1回の冷間圧延または中間アニールを挟んだ2回の冷間圧延(後者の場合に
は熱間圧延した鋼板またはストリップのアニールは任意である)で最終厚さ
0.65mm以下まで圧延し、
g)N2とH2を含む湿った雰囲気中を走行させて一次再結晶化および脱炭のアニ
ールをし、
h)マグネシアMgOを主成分とするアニールセパレータ(separateur de recu
it)を脱炭済み鋼板の両面に塗布し、
i)巻き取られた形で二次再結晶化および精製のアニールをし、
j)引張り応力を誘導する絶縁被覆を塗布し、一般に高温圧延で平滑処理しなが
ら被覆を焼却アニールする。
配向した粒子を有する電気鋼板を製造するために、連続鋳造で得られたスラブ
を熱間圧延前に1350℃以上まで再加熱することは知れている。1350℃以
上の温度での保持時間はAlN、MnSおよびCuSが単独または複合して析出
したの粗粒子溶解するのに十分な長さでなければならない。鋳造したままではこ
れらの粗粒子の平均粒径が非常に大きく且つその数が多いため二次再結晶化がで
きない。その結果、得られた電気鋼板は磁気特性が悪い。一次再結晶化で形成さ
れた{110}<001>方向の配向粒子の異常な発達は、MnS、AlNおよ
びCuSの単独または複合析出物の平均粒径が約100nm以下の場合にのみ起
こる。{110}<001>組織(この組織で磁化容易軸である<001>軸は
圧延方向にほぼ平行であり、{110}平面は鋼板の表面にほぼ平行である)は
配向粒子を有する電気鋼の圧延方向の磁気特性を良くする。
平均粒径が100nm以下のMnS、AlNおよびCuSの単独または複合析
出物は{110}<001>配向のない一次粒子の正常な発達の抑制剤である。
スラブを1350℃以上の温度にスラブの芯までMnS、AlNおよびCuS
の単独または複合粒子が溶解するのに十分な時間再加熱するプロセスでは、熱間
圧延ストリップ中に下記状態が得られるように熱間圧延条件を制御することは知
られている:
a)全ての硫黄が平均粒径が約100nm以下の抑制剤微粒子の形で析出し、
b)窒化アルミニウムAlNの析出が無く、平均粒径が100nm以下の抑制剤
AlN微粒子の析出が熱間圧延ストリップのアニール時に起こる。
しかし、配向粒子を有する鋼のスラブを1350℃以上の温度で十分長い時間
再加熱すると、再加熱炉にスコリア(scories)として堆積する液体酸化物の形
成が促進され、清掃のために炉を定期的に止める必要があり、そのために生産性
が失われ、維持費が高くなるるという重大な欠点がある。
スラブ再加熱炉の汚れを防ぐ方法は特に欧州特許第0219611号と第03
39474号で公知である。この方法ではスラブを1350℃以下の温度に再加
熱する。
スラブの再加熱時にAlN析出物を完全には溶解せずに、二次再結晶化の始ま
る前に主抑制剤(Al,Si)Nを微粒子に形成するように脱炭鋼板を窒化する
方法もある。この方法では硫黄の含有量は0.012%以下に制限される。
欧州特許第0619376号で公知の別の方法ではスラブの再加熱時に硫化マ
ンガンMnS粒子を溶解させない。この粒子は熱間圧延鋼板上に粗粒子の形で残
るので抑制剤の働きはしない。
窒化アルミニウムAlNの粒子は低い比率でしか溶解せず、全窒素含有量の少
なくとも60%に等しい量が熱間圧延鋼板上に粗粒子の形で残るため、抑制剤の
働きはしない。
抑制は主として熱間圧延鋼板のアニール時に形成される硫化銅の微粒子で行わ
れる。
欧州特許第0732413号に記載の別の方法では、硫黄≦0.02%,アル
ミニウム≦0.030%,(%S×%Mn)<160×10-5、(%Al×%N
)<240×10-6の化学組成の場合にスラブを再加熱して硫黄および/または
窒素を含む析出物を溶解する。
この鋼を熱間圧延して全ての硫黄を微粒子の形で析出させる。また、窒素をA
lN微粒子の形で析出させないように鋼を熱間圧延する。熱間圧延した鋼をアニ
ールして、窒素を主抑制剤となるAlN微粒子の形で析出させる。
アニールセパレーター(separateur de recuit)として用いられるマグネシア
に抑制化を助けるが少なくとも1種の硫黄および/または窒素の化合物を加えて
もよい。
本発明の目的は、スラブまたはストリップを熱間圧延前に1350℃以下の温
度に再加熱する際に鋼板の磁気特性が改良されるようにした、配向粒子を有する
電気鋼板の製造方法を提供することにある。
本発明の対象は、下記a)〜j)の一連の工程で構成される、特に変圧器の磁
気回路の製造で用いられる配向粒子を有する電気鋼板の製造方法にある:
a)化学重量組成中に0.1%以下の炭素と、2.5%以上のケイ素と、一次粒
子の発達を妨げる析出物を形成するための元素、特にアルミニウム、窒素、
マンガン、銅および硫黄とを含み、任意成分として錫を含む鋼をスラブまた
はストリップの形で連続鋳造し、
b)スラブまたはストリップを再加熱し、
c)スラブまたはストリップを熱間圧延して、厚さ1〜5mmの鋼板とし、
d)熱間圧延した熱い鋼板を巻き取り、
e)熱間圧延した鋼板またはストリップをアニールし、
f)1回の冷間圧延または中間アニールを挟んだ2回の冷間圧延(後者の場合に
は熱間圧延した鋼板またはストリップのアニールは任意である)で最終厚さ
0.65mm以下まで圧延し、
g)N2とH2を含む湿った雰囲気中を走行させて一次再結晶化および脱炭のアニ
ールをし、
h)マグネシアMgOを主成分とするアニールセパレータを脱炭済み鋼板の両面
に塗布し、
i)巻き取られた形で二次再結晶化および精製のアニールをし、
j)引張り応力を誘導する絶縁被覆を塗布し、一般に高温圧延で平滑処理しなが
ら被覆を焼却アニールする。
本発明方法の特徴は下記1)〜4)の点にある:
1) 下記重量組成:
炭素 0.1%以下、
ケイ素 2.5%以上、
硫黄 0.006%以上、
マンガン 0.02%以上、
アルミニウム 0.008%以上、
窒素 0.004%以上、
銅 0.02%以上、
錫 0.02%以上
(残部は鉄と不純物)
を有するスラブまたは鋼板を芯まで1350℃以下の温度に再加熱し、熱間
圧延して、
2)平均粒径が300ナノメートル(nm)以上の粗粒子の形で析出しない硫黄
の熱間圧延鋼板での重量比率が0.004%以上とし、
3)平均粒径が100nm以下の微粒子の形で単独で析出する窒素の重量比率が
熱間圧延鋼板中の全窒素重量比率の40%以下とし、
4)このようにして得られた熱間圧延鋼板を少なくとも1回アニールして、全窒
素重量比率の60%以上を平均粒径が100nm以下の微粒子の形にみで析
出させる。
本発明の他の特徴は下記1)〜13)の点にある:
1) スラブまたはストリップが下記重量組成を有する:
0.02% < 炭素 < 0.07%
3% < ケイ素 < 4%
0.006% < 硫黄 < 0.035%
マンガン > 0.02%
0.008% < アルミニウム < 0.035%
0.004% < 窒素 < 0.009%
0.02%<銅<0.30%
0.02%<錫<0.20%
2)スラブまたはストリップがさらに0.08%〜0.02%の錫を含み、熱間
圧延鋼板中の平均粒径が300ナノメーター(nm)以上の粗粒子として析
出しない硫黄の重量比率は0.004%である。
3)スラブまたはストリップが0.08%以下の錫をさらに含み、熱間圧延鋼板
中の平均粒径が300ナノメーター(nm)以上の粗粒子として析出しない
硫黄の重量比率は0.006%以上である。
4)アニール後の平均粒径が300ナノメーター(nm)以上の粗粒子として析
出しない硫黄の重量比率は0.006%以上、好ましくは0.008%であ
る。
5)アニールの後の平均粒径が100ナノメーター(nm)以下の微粒子として
析出した硫黄の重量比率は0.006%以上、好ましくは0.008%、
6)アニールでは鋼板を少なくとも50秒間、900℃〜1150℃の温度に保
持し、その後に急冷する。
7)アニールした後、1回で最終厚さまで冷間圧延する。
8)2回冷間圧延し、アニールは熱間圧延鋼板またはストリップの最初の冷間圧
延後に実施される中間アニールであり、その後に急冷する。
9)冷間圧延前と2回の冷間圧延で熱間圧延鋼板またはストリップを冷間圧延す
る最初の操作の後にアニールし、その後に急冷却する。
10)一次再結晶化および脱炭のアニール前の冷間圧延は圧下率70%以上で実施
する。
11)一次再結晶化および脱炭のアニール前の冷間圧延工程の少なくとも1回のパ
スを150℃以上の温度で実施する。
12)マグネシアが、二酸化チタン単独またはそれにボロンまたはボロン混合物、
硫黄または硫黄化合物、窒素化合物、硫黄と窒素の化合物、塩化アンチモン
または硫化錫を加えたものを含む。
13)脱炭鋼板をアンモニアを含む雰囲気中で気体で窒化する。
本発明の他の対象は上記方法で得られる配向粒子を有する電気鋼板にある。
本発明は下記の説明と添付図面からより明らかに理解されよう。しかし、本発
明が下記の記載に限定されるものではない。
図1で、曲線Aは平均粒径300nm以上の粗粒子の形で析出しない硫黄のア
ニール前の熱間圧延鋼板における重量比率を表し、曲線Bは1300℃に再加熱
されたスラブに含まれる全硫黄重量比率の関数であるアニール後の熱間圧延鋼板
における析出しない硫黄の重量比率を表す。
図2a、図2b、図2cは引張応力を誘導する絶縁被覆で被覆されたスラブを
1300℃で再加熱した時の、冷間圧延後の最終厚さが0.285mmである鋼
板の平均粒径300nm以上の粗粒子の形で析出しない硫黄のアニール前の熱間
圧延鋼板における重量比率を関数とする磁気特性を示す図。
図3はスラブを1300℃に再加熱した時の冷間圧延後の厚さが0.285m
mである製品の磁気誘導度B800を熱間圧延鋼板のアニール温度の関数で示した
図。
図4は一次再結晶化および脱炭のアニールを行った後の粒子を1300℃に再
加熱したスラブの硫黄の重量比率の関数でミクロンで示す図。熱間圧延ストリッ
プの厚さはそれぞれ2.3mm、2mmである。
図5は一次再結晶化および脱炭のアニールを行った後の厚さ0.285mmの
最終製品の磁気特性を直径15μm以上の粒子の比率の関数で示した図。スラブ
は1300℃に再加熱した。
図6a、図6b、図6cは一次再結晶化および脱炭のアニールを行った後の厚
さ0.285mmの最終製品の磁気特性を直径5μm以下の粒子の比率の関数と
して示す図。スラブは1300℃に再加熱した。
図7は厚さ0.285mmの最終製品の1.7Tと50Hzにおける損失を1
300℃に再加熱したスラブの可溶性アルミニウムの重量比率の関数で示す図。
図8a、図8b、図8cは厚さ0.285mmの最終製品の磁気特性を130
0℃に再加熱したスラブの錫の重量比率とアニール前の熱間圧延鋼板の直径30
0nm以上の粗粒子として析出しなかった硫黄の重量比率Iの関数で示した図。
一般に「微粒子」とは大部分が100nm以下の平均粒径を有する平均粒径が
300nm未満の粒子を意味し、「粗粒子」とは平均粒径が300nm以上の粒
子を意味し、「粗粒子として析出しない硫黄」とは大部分が100nm以下の平
均粒径を有する微粒子の形で析出した硫黄および固溶体の硫黄を意味する。
熱間圧延鋼板での析出状態を起こす熱的および熱機械的のサイクルを詳細かつ
正確に表すのは困難であるので、スラブを低い温度(例えば1350℃以下の温
度)で再加熱する各種のプロセスを区別化するのに抑制剤として働く粒子を電子
顕微鏡で特徴付けするのが最もよい方法と思われる。
熱間圧延鋼板の粗粒子として析出しない硫黄の重量比率Iは化学分析によって
求めた鋼スラブの全硫黄の重量比率と走査電子顕微鏡によって求められた鏡熱間
圧延鋼板の粗粒子の形で析出した硫黄の重量比率の差に等しい。検出結果に対す
る人為的な誤差を除去するために、平均粒径が300nmまたはそれ以上の硫黄
を含む析出物のみを考慮する。互いに隣接する画像部分を鋼板の上部表面から底
面にかけて1000Xの倍率で電子加速電圧15kVでミクロ断片にスキャンす
る。硫黄含有析出物の表面積率は検査した表面積全体に対する硫黄含有析出物の
全表面積の比に等しい。一つのミクロ断片での析出物の表面積率は析出物の体積
率に等しい。粗粒子として析出した硫黄の体積率が分かれば、粗粒子として析出
した硫黄の重量比率を計算することができ、その結果、平均粒径が300nm以
上の粗粒子として析出しない硫黄の重量比率を計算することができる。
本発明方法を適用した1つの実施例では、表1に示した組成の鋼を厚さ210
mmの鋼スラブの形に連続鋳造し、このスラブに下記の処理をする:
a)スラブの芯まで1300℃の温度に再加熱する。スラブの芯は1250℃以
上に50分間維持され、その30分は1280℃以上である。
b)複数回のパスで粗熱間圧延する。実施例では最終パスの最後で温度が108
0℃〜1090℃になるように厚さ45mmになるまで5回のパスを行う。
c)熱間仕上げ圧延を例えば7回のパスで行う。熱間仕上げ圧延開始時の温度は
1060℃〜1075℃、終了時の温度は925℃〜935℃である。
上記の粗熱間圧延および熱間仕上げ圧延は、例えば12台の圧延機を粗圧延で
は21%、39%、20%、25%、25%で、仕上げ圧延では53%、38%
、43%、38%、26%、18%、4%の一連の圧下率で連続的にパスさせて
行う。
厚さ2.3mmの熱間圧延鋼板を510℃〜540℃の温度で巻き取る。
走行する熱間圧延鋼板に行うアニールは100秒で1100℃まで温度を上げ
、1100℃に160秒間保持し、30秒で800℃まで冷却し、10秒で65
℃に急冷して行う。
熱間圧延されアニールされた鋼板は次いで冷間圧延されて、約30%の一連の
圧下率および87.6%の全圧下率に対応する6回のパスからなる1つの工程で
0.285mmの厚さになる。少なくとも1回のパス中に圧延温度は150℃以
上になる。
冷間圧延された鋼板はN2/H2の湿った雰囲気下で一次再決晶化および脱炭処
理を受ける。この処理では特に温度を約15秒で700℃上昇させ、約100秒
で700℃から820℃に上昇させ、40秒間120℃に保持する。
脱炭鋼板は水1リットルにつき150gのマグネシアMgOと、100gのM
gOにつき6gのTiO2と、100gのMgOにつき0.04%の塩化アンチ
モンとを含むマグネシア乳剤で被覆され、乾燥される。
次いで、マグネシア被覆した脱炭鋼板はN225%/H275%の雰囲気下で6
50℃から1200℃まで15℃/時の速度で昇温され、金属SとNの精製が完
了するまで水素中で1200℃に維持されて、二次再決晶化アニールされる。
精製された鋼板は次いで下記の処理を受ける:
a)シリカ、燐酸アルミニウムおよびクロム酸からなる溶液の塗布
b)鋼板を高温で圧延平滑化し、走行させながら800℃で被覆を熱処理する。
以下の実施例では、特に別の指示が無い限り製造の各工程における処理条件は
全ての同じである。
[表1]スラブの化学組成(重量%)
[表2]熱間圧延後の最終厚さが0.285mmであるスラブの芯の再加熱温
度を関数とした磁気特性
図1の曲線Aは、連続鋳造スラブを1300℃に再加熱し熱間圧延する本発明
の条件では、スラブ中の全硫黄重量比率が増加した時に、アニールされていない
熱間圧延鋼板の粗粒子として析出しない硫黄の重量比率が増加することを示して
いる。これは全く予測不可能なことである。さらに、図2a、図2b、図2cは
、熱間圧延鋼板の粗粒子として析出しない硫黄の重量比率が0.006%以上に
なると、1.5テスラでの損失は0.8W/kg以下になり、1.7テスラでの
損失は1.1W/kgになり、磁気誘導度B800は1.88テスラ以上になるこ
とを示している。ここではスラブは1300℃以上に再加熱され、最終製品の冷
間圧延後の厚さは0.285mmである。
全硫黄の比率が0.011%と低く、意図的に錫を加えていないNo.1の鋼
のスラブから得られる最終製品の磁気特性は中程度である。ここでは、平均粒径
が300nm以上の粗粒子として析出しない硫黄の熱間圧延鋼板における重量比
率は0.0055%である。
鋼No.2のスラブは0.015%の全硫黄を含み、熱間圧延鋼板が粗粒子と
して析出しない硫黄の重量比率は0.006%以上であり、これは、熱間圧延鋼
板がより粗粒子として析出しない硫黄の重量比率が高いことで特性付けられる鋼
No.3、4、5に比べて磁気特性が少し落ちる。図3は、スラブを1300℃
に再加熱した時には、アニール温度が最適アニール温度の1100℃近くから大
きく離れると鋼No.2に相当する熱間圧延鋼板の磁気誘導度B800で表される
磁気特性はアニール温度が1050℃および1150℃の時に、大きく低下する
ことを示している。ここでの冷間圧延後の最終製品の厚さは0.285mmであ
る。一方、磁気特性の低下度は鋼No.3、4、5の熱間圧延鋼板のアニール温
度が1150℃に近い時と同じ程度であるが、この磁気特性は、平均粒径が30
0nm以上の粗粒子として析出しない硫黄の重量比率が高いため、熱間圧延鋼板
のアニール温度を1050℃にしてもほとんど低下しない。
熱間圧延鋼板の粗粒子として析出しない硫黄の重量比率で表わされる基準Iの
重要性を示すために、別の実施例において鋼No.3のスラブを芯まで1250
℃に再加熱した。210mm厚さのスラブの芯を1200℃以上に45分維持し
、その32分間は1230℃以上に維持した。粗熱間圧延の終了時の温度は10
75℃、熱間仕上げ圧延の開始時の温度は1030℃、熱間仕上げ圧延の終了時
の温度は950℃、巻き取り時の温度は525℃である。熱間圧延鋼板のアニー
ルは上記温度上昇速度および冷却条件で1100℃で160秒間行う。得られた
磁気特性が非常に悪い(B800=1.63T)のは熱間圧延鋼板における平均粒
径が300nm以上の粗粒子として析出しない硫黄の重量比率I(0.0014
%)が不十分であるためである。すなわち、鋼No.3の再加熱、熱間圧延、熱
間圧延鋼板のアニール条件が正しくなく、特に1250℃での保持時間が不十分
である。スラブ中の硫黄の重量比率が低い場合に同じ条件下で1250℃に再加
熱することで磁気特性は少しだけ低下する。例えば、本発明による表2の鋼No
.2の値"I"は1250℃に再加熱し、熱間圧延した後に0.0063%
である。
熱間圧延鋼板またはストリップで、スラブまたはストリップの再加熱時間を長
うすると平均粒径が300nm以上の粗粒子として析出しない硫黄の重量比率が
増加する。すなわち、鋼No.3の芯を1300℃に再加熱した。この場合、1
250℃に65分間維持し、その内45分は1280℃に維持した。この条件下
では粗粒子として析出しない硫黄の重量比率は熱間圧延鋼板において0.008
%(表2)ではなく0.013%になる。本発明では、平均粒径が300nmま
たはそれ以上の粗粒子として析出しない硫黄の重量比率が増加しないような条件
で熱間圧延鋼板をアニールしなければならない。本発明でのアニール条件は平均
粒径が300nm以上の析出物が部分的に溶解し、冷却時に平均粒径が100n
m以下の微粒子の形で硫黄が固溶体として析出するのに有利なものでなければな
らない。本発明の実施例を示す図1の曲線Bでは、熱間圧延鋼板のアニール後に
平均粒径が300nm以上の粗粒子すなわち固溶体が析出せず、主として平均粒
径が100nm以下の微粒子の形で折出する硫黄の重量比率を示している。熱間
圧延鋼板のアニール後の微粒子の状態で析出した固溶体の硫黄の重量比率は鋼N
o.3,4,5の場合、0.010%以上である。
一般に、本発明方法では、最初の冷間圧延の前および/または後に実施される
アニール時、脱炭アニール時、二次再結晶アニール時、特に二次再結晶化開始前
に、平均粒径100nm以下の微粒子として固溶体の硫黄を析出させることがで
きる。
本発明では、熱間圧延鋼板またはストリップのアニールは、全窒素の60重量
%以上が平均粒径100nm以下の微粒子として大量に析出する条件で行わなけ
ればならない。
[表3]熱間圧延ストリップでAlNの状態で析出した窒素の重量比率 析出した窒素の重量比率の測定方法の原理は下記の通りである:
母材をブロム-メタノール混合物で溶解し、析出したアルミニウムをメンブレ
ンでろ過分離し、窒化アルミニウムを希釈した水酸化ナトリウムで溶解し、アル
ミニウムをICP発光分光解析法で定量し、対応する窒素含有量を計算する。
[表4]熱間圧延ストリップのアニール後にAlNの状態で
析出された窒素の重量比率
表3と表4は熱間圧延鋼板のアニール前および後に析出した窒素の重量比率の
典型値を示す。熱間圧延鋼板のアニール前後の窒素含有粒子の平均粒径が100
nm以下であることは電子透過顕微鏡で確認されている。
本発明では、平均粒径が300nm以上の粗粒子として析出する硫黄の重量比
率を減少させ且つ単独または硫黄と複合した状態で平均粒径100nm以下のA
lN微粒子の形で窒素を析出させるのに有利な熱間圧延鋼板またはストリップの
アニール条件が存在する。上記の実施例での本発明のアニールサイクルは昇温、
所定温度での保持および急冷工程で構成され、特に900℃〜1150℃に少な
くとも50秒間保持する工程を含む。
より複雑なサイクル、例えば50秒で800℃まで昇温し、40秒で800℃
から1100℃にし、50秒間1100℃〜1125℃に保持し、30秒で11
25℃から900℃に冷却し、160秒間900℃に保持し、40秒以下で90
0℃から100℃まで冷却するサイクルを用いることもできる。
本発明では、1300℃に再加熱し、引張応力を誘導する絶縁被覆で被覆され
、1回の冷間圧延後に最終厚さ0.285mmの最終製品になるようにした、鋼
No.3のスラブから1.7テスラ、50Hzでの損失が1.01W/kg、1
.5テスラ、50Hzでの損失が0.75W/kg、磁気誘導度B800が1.9
4テスラが得られた。
この特性は特に%Al×%N>×120×10-6の製品および%Mn×%S>
×140×10-5の製品の時に得られる。この場合のスラブ中の硫黄と可溶性ア
ルミニウム含有量はそれぞれ0.018%以上で、錫の含有量は0.05%以上
である。
図2a、図2b、図2cは、1回の冷間圧延後の厚さが0.285mmである
引張応力を誘導する絶縁被覆で被覆した最終製品の電磁特性の例を示しており、
周波数50Hz、動作磁気誘導がそれぞれ1.5テスラおよび1.7テスラでの
ワット/kgで表したエネルギー損失Wが(1.5/50)および(1.7/50
)の場合の、スラブを1300℃に再加熱した熱間圧延鋼板(アニール前)の8
00A/mの磁場での磁気誘導度B800を粗粒子として析出しない硫黄の重量比率
の関数で表している。
本発明の別の実施例では、可溶性アルミニウム含有量が0.020%、硫黄含
有量が0.018%、錫含有量が0.02%以下であるスラブを1300℃に再
加熱した場合に、熱間圧延鋼板のアニール前後に粗粒子として析出しない硫黄の
重量比率は0.006%以上、平均粒径100nm以下の微粒子として単独で析
出した窒素の重量比率は熱間圧延鋼板のアニール前には40%以下、アニール後
には60%以上になる。この場合、硫黄1gをボロンや二酸化チタンを含むアミ
ド硫酸の状態でマグネシア100gに添加した。1回の冷間圧延で厚さを0.2
85mmにし、絶縁被覆で被覆した最終製品は0.86W/kg以下の損失W(
1.5/50)および1.25W/kg以下の損失W(1.7/50)と、1.8
6T以上のB800を示す。
1回の冷間圧延で最終厚さを0.335mmにした場合、損失W(1.5/5
0)は0.92W/kg以下、損失W(1.7/50)は1.25W/kg以下で
、B800は1.86T以上である。厚さ0.335mmの場合の損失W(1.7/
50)が厚さ0.285mmの時の損失と同じであるということは予測できなか
ったことである。錫を加えないことで脱炭は促進される。
1回の冷間圧延後に同じ厚さ0.335mmで、粗粒子として析出しない硫黄
の重量比率Iを0.006%以上にするために、本発明に従ってスラブを130
0℃に再加熱し、熱間圧延し、アニールした場合、下記の磁気特性が得られる:
W(1.5/50)=0.88W/kg
W(1.7/50)=1.15W/kg
B800=1.91T
スラブの化学組成(重量%):
C=0.058%;Si=3.24%;Mn=0.083%;S=0.029%;
Alsol=0.022%;N=0.0062%;Sn=0.07%;Cu=0.08
%。
本発明でスラブまたはストリップを1350℃以下の温度に再加熱する過程で
一次再結晶化および脱炭アニール前の冷間圧延の圧下率を70%以上にすること
によって、1.84テスラ以上の磁気誘導度B800を得ることができ、一次再結
晶化および脱炭アニール前の平均粒径が300nm以上の粗粒子として析出し
ない硫黄の重量比率が0.006%以上であれば、可能性として1.9テスラ以
上の磁気誘導度B800を得ることができる。
最終厚さが0.285mm以下の鋼板を得るための冷間圧延は中間アニールを
含めて2回行うのが望ましい。中間アニール後の二度目の冷間圧延における圧下
率を70%にすることによって1.84テスラ以上を得ることができ、熱間圧延
鋼板において粗粒子として析出しない硫黄の重量比率Iが0.006%以上で、
スラブが0.08%以下の錫を含むか、重量比率Iが0.004%以上でスラブ
が0.08%以上の錫を含む場合には、可能性としては1.9テスラ以上の磁気
誘導度B800を得ることができる。すなわち、
I>0.004%または>0.006%ならば、
Sn>0.08%または<0.08%。
例えば、C=0.056%;Si=3.19%;Mn=0.081%;S=0.0
22%;Alsol=0.022%;N=0.0070%;Sn=0.112%;Cu
=0.081%の化学重量%組成のスラブを、本発明に従って、厚さ2.3mm
の熱間圧延鋼板の平均粒径300nm以上の粗粒子として析出しない硫黄の重量
比率Iが0.0054%となるように、1300℃に再加熱し、熱間圧延し、厚
さ1.55mmまで冷間圧延し、アニールして最終厚さ0.215mmまで冷間
圧延する(少なくとも1回のパスで圧延温度は150℃以上になる)。
この金属を一次再結晶化、脱炭、二次再結晶化、精製そして絶縁被覆を施した
後に得られる磁気特性は下記のとおりである:
W(1.5/50)=0.69W/kg
W(1.7/50)=0.98W/kg
B800=1.89T。
スラブの錫含有量がより多い場合には、アニール前の熱間圧延鋼板の平均粒径
が300nm以上の粗粒子として析出しない硫黄の重量比率は0.006%以下
になるが、良い磁気特性を得るためには0.004%以上でなければならない。
1回の冷間圧延前の熱間圧延鋼板またはストリップのアニール操作と2回の冷
間圧延操作の2番目の冷間圧延前の中間アニールは、900℃〜1150℃に少
なくとも50秒間保持し、その後に急冷する工程を含む。
2回冷間圧延する場合には、熱間圧延鋼板またはストリップを最初の冷間圧延
操作前にアニールしてもよい。このアニールによって良い磁気特性が得られる。
このアニールには900℃〜1150℃に少なくとも50秒間保持した後に急冷
する工程が含まれる。それによって硫黄含有粗粒子が部分溶解し、硫黄および/
または窒素を含む微粒子が析出する。いずれにせよ硫黄および/または窒素を含
む粒子は形成されない。
本発明方法では、スラブを芯まで1350℃以下の温度に再加熱する過程にお
いて鋼板は150℃以上の温度で少なくとも一次再結晶化および脱炭のアニール
する前に、1回のパスで冷間圧延される。この冷間圧延は1または2回で行われ
る。複数回のパスで150℃以上に鋼板の温度を上昇させ、特に冷間圧延の圧下
率を70%以上にすると、良い磁気特性が得られる。
驚くべきことに、粗粒子として析出しない硫黄は一次再結晶化によって形成さ
れた粒子の大きさに影響を与えるが、一次再結晶化や脱炭後の粒子の平均粒径は
15ミクロン以下である。本発明による条件が組み合わされていない時、特に粗
粒子として折出しない硫黄の重量比率が一次再結晶化と脱炭アニール前に0.0
06%以下の時には、固溶体の硫黄の量が不十分なため、一次粒子のいくつかは
15ミクロン以上の直径を有し、直径100nm以下の微粒子として析出する。
その結果、二次再結晶が悪くなり、磁気特性は低下する。図4はスラブ中の硫黄
の重量比率(μmで表した)が一次再結晶化および脱炭アニール後の粒子の平均
粒径に与える影響を示す。
熱間圧延および冷間圧延されたストリップの厚さがそれぞれ2.3mmおよび
0.285mmの時に、1回の冷間圧延の圧下率は87.60%に相当するが、
スラブの全硫黄重量比率が増加すると、一次粒子の平均粒径は減少する。
一方、熱間圧延ストリップの厚さが2mmで、圧下率が85.75%の場合に
は、一次粒子の平均粒径はスラブの全硫黄重量比率に対してほとんど変化しない
。この比率は図1に示される関係により熱間圧延鋼板の平均粒径が300nm以
上の粗粒子として析出しない硫黄の重量比率と関連している。
この実施例では、厚さ2mmの熱間圧延ストリップを用いることが磁気特性の
改良に好ましいようである。1.5Tおよび17Tの損失およびB800での改良
度は、厚さ2.3mmでストリップがC=0.058%;Si=3.20%;Mn
=0.079%;S=O.023%;Alsol=0.020%;N=0.0076%
;Sn=0.065%;Cu=0.085%の重量化学組成の熱間圧延ストリップ
の損失およびB800に比べて、それぞれ3%、4%、1%である。
冷間圧延ストリップの最終厚さが0.261mmの場合、熱間圧延ストリップ
の厚さが2.3mmではなく2mmで、冷間圧延を1回行った時の損失およびB800
の改良はそれぞれ6%、5%、1%である。
図5と図6は、上記実施例において熱間圧延と冷間圧延したストリップの厚さ
がそれぞれ2.00mmと0.285mmの場合に、直径15μm以上の一次粒
子の比率が25%以下、好ましくは20%以下で、直径5μm以下の一次粒子の
比率が10%以上、一次再結晶化と脱炭アニール後の平均粒径が約10μmの時
に、最も良い磁気特性すなわち1.5Tおよび1.7Tにおける最も小さい損失
および最も大きいB800が得られる。
二酸化チタンの単独追加またはそれに加えてボロンまたはボロン混合物、硫黄
または硫黄化合物、窒素化合物、硫黄と窒素の化合物、塩化アンチモンまたは硫
化錫をマグネシアに添加することによって磁気特性を改良できる。マグネシアに
加えられたこれらの添加物は二次再結晶アニールにおける通常の一次粒子の発達
の抑制を強化する。これらの添加物の中で硫化マグネシウム、硫化マンガン、チ
オ硫化ナトリウム、硫化アンモニウム、チオ硫化アンモニウム、硫酸アミド(ま
たはスルファミン酸)、尿素、チオ尿素、硫化錫が磁気特性を改良することがで
きる。
脱炭後、500℃以上の温度でN2/H2混合物で希釈されたアンモニア(NH3
)を用いた窒化は抑制を強化し、磁気特性を改良するもう一つの方法である。
本発明方法では:
a)連続鋳造されたスラブまたはストリップ中の硫黄の重量比率は、熱間圧延鋼
板またはストリップ中に重量比率0.006%以上の平均粒径が300nm
以上の粗粒子として析出しない硫黄が得られるように、0.006%以上で
なければいけない。精製アニール中に完仝に脱硫するように0.05%以下
となるのが好ましい。スラブまたはストリップの熱間圧延中に縁のひび割れ
を形成するのを防ぐためには、0.035%以下にするのが好ましい。
b)主抑制剤を構成するAlN微粒子を十分大量に得るために、連続鋳造された
スラブまたはストリップ中の窒素の重量比率は0.004%以上でなければ
ならない。鋼板の表而のふくれ(膨れる現象)の形成を防ぐため、0.01
2%以下、好ましくは0.009%以下であるとよい。
c)脱炭後の気体窒化によってまたはマグネシアへの1つかそれ以上の窒素化合
物を添加することで窒素を添加する場合、主抑制剤を形成するAlN微粒子
を十分大量に得るため、そして化合していない非混合アルミニウムを十分利
用できるようにするため、連続鋳造されたスラブまたはストリップ中の可溶
性アルミニウムの重量比率は0.008%以上でなければならない。AlN
析出物が熱間圧延前の再加熱の間に溶解するためには0.04%以下、好ま
しくは0.03%以下であるとよい。
図7は、C=0.058%;Si=3.20%;Mn=0.080%;S=0
.023%;N=0.007%;Sn=0.07%;Cu=0.08%の重量
化学組成のスラブ中の可溶性のアルミニウムの重量比率の増加の好ましい効
果を示す。ここではスラブは1300℃に再加熱され、冷間圧延前の熱間圧
延およびアニールで本発明のI値は0.006%以上となり、最終製品は1
回の冷間圧延の圧下率87.6%で得られた厚さ0.285mmを有する。
S含有量を0.023%から0.029%に増加することで損失を削減する
ことができる。可溶性アルミニウム含有量が多すぎると二次再結晶化がなか
ったり、許容できない磁気特性となったりする。熱間圧延前のアニールや、
冷間圧延、一次再結晶化が同じ条件で、可溶性アルミニウム含有量0.02
2%を有する熱間圧延ストリップや、可溶性アルミニウム含有物を非常に多
く、例えば0.030%有する熱間圧延ストリップの脱炭、二次再結晶アニ
ール処理することはできない。
d)マグネシアに硫黄または硫黄化合物を加えて硫黄を添加する場合、主抑制剤
を増加するMnS微粒子を十分大量に得るため、そして化合していない非混
合マンガンを十分利用できるようにするため、連続鋳造されたスラブまたは
ストリップ中の可溶性アルミニウムの重量比率は0.02%以上でなければ
ならない。
e)熱間圧延鋼板の粗粒子としての硫黄析出物を制限するため、連続鋳造された
スラブまたはストリップ中の銅の重量比率は0.02%以上でなければなら
ない。酸洗の問題を避けるためには、0.50%以下、好ましくは0.30
%以下であるのがよい。
スラブ中の銅を重量比率を0.08%から0.15%に増加することで、
アニール前に本発明による熱間圧延鋼板の粗粒子として析出されていない硫
黄の重量比率Iを0.010%から0.015%に増加することが可能にな
った。ここで、スラブの化学組成はC=0.058%;Si=3.23%;M
n=0.079%;S=0.025%;Alsol=0.022%;N=0.00
67%;Sn=0.069%;Cu=0.08%またはCu=0.15%の重
量%で、本発明によりスラブを1300℃に再加熱される。厚さ0.285
mmの最終鋳造物の磁気特性は下記のとおりである:
Cu=0.08%の場合;
W(1.5/50)=0.77W/kg
W(1.7/50)=1.04W/kg
B800=1.90T
Cu=0.15%の場合
W(1.5/50)=0.76W/kg
W(1.7/50)=1.03W/kg
B800=1.91T
f)磁気特性に大きく有益な効果をもたらすために、連続鋳造されたスラブまた
はストリップ中の錫の重量比率は0.02%以上でなければならない。酸洗
の問題や脱炭の問題を避けるためには0.20%に制限されなければならな
い。
図8はスラブ中の錫含有物の増加が磁気特性にもたらす有益な効果を示
す。ここで、スラブは1300℃に再加熱され、熱間圧延、アニールを受け
る。熱間圧延と冷間圧延されたストリップはそれぞれ2.3mmと0.28
5mmである。アニールされていない熱感圧延鋼板の粗粒子として析出しな
い硫黄の重量比率が図8に示されている。重量比率Iが0.006%または
それ以上の時のみ、錫の有益な効果が充分にもたらされる。錫の目的添加が
無い場合、比率Iは0.008%またはそれ以上であるのが好ましい。錫の
含有率が高い時、比率Iは0.006%以下でよいが、磁気特性は最適とは
いえない結果となる。重量比率0.112%の錫と重量比率I=0.005
4%による実験点は損失やB800の値を錫の関数として与える線上にはない
。(図8a、図8b、図8c)
g)磁気の損失を低くするために、連続鋳造されたスラブまたはストリップ中の
ケイ素の重量比率は2.5%以上でなければならない。このケイ素の比率が
高ければ高い程、損失は低いが、ケイ素の比率を4%以上に増加することに
よって冷間圧延が難しくなる。
h)連続鋳造されたスラブまたはストリップ中の炭素の重量比率は0.10%、
好ましくは0.07%に制限される。この値以上になると脱炭が難しくなる
ためである。よい磁気特性を得るための炭素の比率は0.02%以上である
。
本発明では、マンガン含有量は、一次再結晶化や脱炭アニールの前の直径30
0mmまたはそれ以上の粗粒子として析出しない硫黄の重量比率が0.006%
以上である限り、0.20%以上に増加してもよい。マンガンの含有量(オース
テナイトの形成を促進するガンマジェニック元素)の増加は硫黄含有量の減少と
炭素含有物(ガンマジェニック元素)の減少と/またはケイ素含有量(フェライ
トの形成を促進するアルファジェニック元素)の増加を伴う。スラブまたはスト
リップの再加熱中にAlNを溶解するために、一定留分のオーステナイトを維持
することが必要である。
一定の再加熱温度Tと一定の窒素の重量比率において、AlN析出物が熱間圧
延前の再加熱中に完全に溶解されるような、本発明による連続鋳造されたスラブ
やストリップ中のアルミニウムの重量比率は下記式から推定することができる:
log(%Al×%N)=−10.062/T+2.72
個々に記載の本発明方法は150mm〜300mmの厚さの連続鋳造スラブに
ついてのものである。スラブの厚みが大きい程、望ましいスラブの芯温度を得る
ために必要な時間が長くなる。例えば、走行再加熱の場合、スラブの厚さが21
0mm〜240mmの時、スラブが炉を通過する速度は緩やかにするのが好まし
い。スラブが薄い時、例えば約15mm〜100mmの厚さの時、スラブが再加
熱炉を通過する速度を上げることは可能である。高温での巻き取り温度は、粗粒
子として析出しない硫黄の重量比率が0.004%かそれ以上、好ましくは0.
006%かそれ以上で、微粒子として単独で析出した窒素の重量比率が熱間圧延
鋼板の窒素の仝重量比率の40%以下となるものでなくてはならない。この温度
は一般に700℃以下である。
本発明方法はまた、2本の冷却ロールの間で液体鋼を鋳造して得られる厚さ1
〜10mmの薄いストリップにも適用できる。ここでストリップは熱間圧延の前
に、厚みが小さいため芯まで急速に1350℃以下の温度に再加熱される。
熱間圧延のパスの回数はスラブまたはストリップの最初の厚さと熱間圧延鋼板
の厚さに依存する。連続鋳造スラブまたはストリップが充分に薄ければ粗熱間圧
延は省いてもよい。
直径が300nmまたはそれ以上の粗粒子として析出しない硫黄の重量比率が
0.006%であるか、2本のロール間で鋳造された鋼板の微粒子の形の単独で
析出する窒素の重量比率が窒素の全重量の40%以下であれば、薄い連続鋳造ス
トリップの再加熱や熱間圧延は省いてもよい。本発明では薄いストリップは少な
くとも1回アニールされる。
最終厚さが0.30mm以上の本発明で得られた鋼板は800A/mの磁場に
対して1.86テスラ以上の磁気誘導度Bと、1.7テスラ、50ヘルツでの損
失1.30W/kg以下を示す。厚さが0.30mm以下では、本発明で得られ
た鋼板は800A/mの磁場に対して1.86テスラ以上の磁気誘導度Bと、1
.7テスラ、50ヘルツでの損失1.25W/kg以下を示す。
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フロントページの続き
(51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考)
H01F 41/02 H01F 41/02 A
(72)発明者 メサン,フレディ
フランス国 62550 フロランガン リュ
ロジェ サラングロ 1
(72)発明者 マルタン,フィリップ
フランス国 62120 エール―シュル―ラ
―リス リュ ドゥ サン トメール 52
(72)発明者 マチュリエ,フレデリク
フランス国 62400 ベトゥーヌ リュ
サン―テグジュペリ 170