【発明の詳細な説明】
肝細胞成長因子アンタゴニスト
発明の分野
本発明の分野は、慢性腎疾患の治療である。
発明の背景
肝細胞成長因子(HGF)は、特異的プロテアーゼによってタンパク質分解処
理されて、成熟HGFを形成する728個のアミノ酸のプレプロ前駆体タンパク
質由来のヘテロ二量体分子である(Miyazawaら、1993,J.Biol.Chem.268:100
24-1028)。
HGFは、チロシンキナーゼ受容体c−metによって細胞に結合する。HG
Fのc−metへの結合は、腎上皮細胞の成長が刺激され;細胞の運動性が高め
られ;腎臓の細管形成が誘導されるという効果を有する(Santosら、1993,Dev.
Biol.159:535-548;Cantleyら、1994,Am.J.Physiol.267:F27l-F280)。
従って、HGFは、各々、マイトジェン、モトゲン(motogen)およびモルホゲ
ンとして特徴付けられ、腎臓発達において役割を果たすと考えられる。
さらに、HGFは、腎摘出または虚血後の腎臓におけるHGFおよびその受容
体c−metレベルの増加によってもたらされるような損傷後の腎臓リモデリン
グに関係する(Joannidisら、1994,Am.J.Physiol.267:F231-F236)。さらに、
HGFは、塩化水銀攻撃または虚血後の腎機能における改善をもたらすことが観
察された(Kawaidaら、1994,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:4357-4361;Mille
rら、1994,Am.J.Physiol.266:Fl29-F134)。糸球体肥大は、多くの慢性腎疾
患において腎臓リモデリングの間に起こる。該事象は、糸球体基底膜膨張、糸球
体間質および上皮細胞の増殖、ならびにコラーゲンおよびフィブロネクチンの蓄
積と関連する。糸球体細胞該マトリックス膨張におけるHGFの役割は、知られ
ていない。
慢性腎機能不全は、代償的な成長およびリモデリングを伴う機能的腎臓量の進
行性の喪失である。慢性腎機能不全の間に起こる分子および細胞の事象は、成長
因子の放出、糸球体間質細胞の増殖および細胞外マトリックスの膨張を包含する
(Klahrら、1988,New Engl.J.Med.318:1657-1666;Strikerら、1989,In:Kla
hr,(Ed.)Seminars in Nephrology,pp.318,Philadelphia,W.B.Saunders);E
biharaら、1993,J.Am.Soc.Nephrol.3:1387-1397)。慢性腎機能不全の間に
変化する細胞外マトリックスの構成要素は、コラーゲン、フィブロネクチンおよ
びラミニンを包含する(Ebiharaら、前掲;Tarsioら、1988,Diabetes 37:532-53
9;Yoshiokaら、1989,Kidney Int.35:1203-1211)。慢性腎機能不全が確立され
る場合、腎臓切除モデルにおいて、フィブロネクチンおよびコラーゲンa1免疫
細胞化学染色は、腎臓量の5/6の腎摘出後2および6週で、糸球体の細胞性増
加領域において向上する(Foelgeら、1992,Lab.Invest.66:485-497)。
いくつかのタンパク質因子は、慢性腎機能不全の間の糸球体間質細胞の有糸分
裂誘発または細胞外マトリックス生産の刺激に関係している。これらは、トロン
ビン(Xuら、1995,Am.J.Pathol.146:101-110;Sraerら、1993,Ren.Fail.15
:343-348;Albrightsonら、1992,J.Pharmacol.Exp.Ther.2563:404-412)、
上皮細胞成長因子(Byynyら、1972,Endocrinology 90:1261-1266;Ki1lionら、19
93,J.Urol.150:1551-1556)、インスリン様成長因子1(Stilesら、1985,Endo
crinology 117:2397-2401;Faginら、1987,Endocrinology 120:718-724)、およ
び形質転換成長因子b1(Coimbraら、1991,Am.J.Pathol.138:223-234;Okud
aら、1990,J.Clin.Invest.86:453-462)を包含する。
腎機能不全および死または透析への依存を導く疾患を減少または除去するため
に役立つ慢性腎疾患の治療のための組成物に対する要望が残存する。
発明の概要
本発明は、肝細胞成長因子アンタゴニストをヒトに投与することからなる慢性
腎疾患を有するヒトの治療法に関する。図面の簡単な説明
図1は、マイクロ生理機能測定法によって測定した形質転換マウス糸球体間質
細胞(MMC−SV40細胞)(パネルA−C)、または正常なヒト糸球体間質細
胞(パネルD)の細胞外酸性化率を示す一連のグラフである。パネルA:MMC
−SV40細胞を0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)または0.5%胎児ウ
シ血清(FBS)の存在下または不存在下、HGF(100ng/ml)で10
分間処理した。パネルB:MMC−SV40細胞をHGF(100ng/ml)
で2、5、10および15分間処理した。パネルC:MMC−SV40細胞を4
種類の濃度のHGFで処理した。パネルD:正常なヒト糸球体間質細胞を100
ng/ml HGFで処理した;2つの形跡を示す。
図2は、HGF(50ng/ml)で処理したMMC−SV40細胞の細胞外
酸性化率を示すグラフである。細胞を対照培地または異なる濃度のBirchallら、
1994,J.Pharmacol.Exp.Ther.268:922-929によって記載されたプロテインキ
ンアーゼ阻害剤RO−32−0432を含有する培地で潅流した。
図3は、異なる濃度のHGFで24時間処理した正常なヒト糸球体間質細胞(
HMC)、MMC−SV40細胞またはコラーゲンa1(IV)プロモーターに
よって制御されたルシフェラーゼレポータープラスミドでトランスフェクトされ
たマウス糸球体間質細胞(MMC−COL細胞)のトリチウム化チミジン取り込
みを示すグラフである。
図4は、異なる濃度のHGFに対する応答において、MMC−COL細胞にお
けるコラーゲンa1(IV)プロモーター活性を示すグラフである。データは、
4回の平均±SDである。
図5は、ビヒクルまたはHGFのいずれかの注入後21日目に測定した脂肪な
しおよび肥満(糖尿病)マウスにおけるクレアチニンクリアランスを示すグラフ
である。HGFは、肥満(糖尿病)マウスにおいてクレアチニンレベルを有意に
減少させた(*<0.05;n=5−6)。LV−脂肪なしビヒクル;LH−脂肪
なしHGF;OV−肥満ビヒクル;OH−肥満HGF処理マウス。発明の詳細な記載
本発明によると、HGFの長期間の投与の結果、慢性腎疾患を生じることが見
出された。従って、HGFは急性腎疾患の治療に有用であり得るが、該化合物を
噛乳動物に長期間投与する場合、腎機能が衰える。また、HGFで細胞を処理す
ると、フィブロネクチンmRNA、ならびに糸球体間質および上皮細胞における
転写の増加を生じることが見出された。従って、本発明は、フィブロネクチンお
よびコラーゲン合成を活性化し、それにより、糸球体硬化症を引き起こすことに
よって、HGFが腎疾患に部分的に寄与するという発見に基づく。
本発明は、浦乳動物にHGFのアンタゴニストを投与することからなる哺乳動
物における慢性腎疾患の治療法に関する。
本明細書中で使用される「慢性腎疾患」なる語によって、糸球体ろ過率によっ
て測定した腎機能の進行性の喪失を意味する。
HGFのアンタゴニストは、限定はされないが、小型非−ペプチド分子、HG
Fの特異的部分を含んでなるペプチド、抗−HGF活性を有するペプチド部分(p
eptidometic)、HGFに対して向けられた抗体、HGFをコードする核酸の全て
または一部に相補的な配列を有する核酸およびHGF−特異的プロテアーゼを阻
害する小型化学化合物を包含する。
本明細書で使用される「HGFアンタゴニスト活性」なる語によって、例えば
、本明細書に記載されるアッセイのいずれか1つまたはそれ以上において測定さ
れるようなHGFの正常な活性を阻害する化合物を意味する。例として、マウス
糸球体間質細胞のHGFでの処理は、これらの細胞の酸性化率を増加させる。従
って、HGFアンタゴニスト活性を有する化合物は、マウス糸球体間質細胞にお
けるHGFに誘導された増加を阻害する化合物として定義付けられる。
HGFのアンタゴニストを同定するために、試験化合物をHGFアンタゴニス
ト活性に関して、本明細書の実施例の部分に記載される1以上のアッセイにおい
て、またはHGF機能の測定のための他のアッセイにおいて評価した。好ましく
は、最初、イン・ビトロ試験を用いて、HGFアンタゴニスト活性を有する化合
物を同定する。かかるイン・ビトロ試験は、限定はされないが、HGFに対して
応答することが知られている細胞の細胞膜へのHGF結合、糸球体間質細胞のH
GFに誘導された酸性化率に対する試験化合物の影響を評価する試験、およびH
GFに誘導された細胞外マトリックス遺伝子発現に対する試験化合物の影響を評
価する試験を包含する。
試験化合物のHGF結合に対する効果を評価するために、[125I]−標識HG
Fを、試験化合物と共にまたは無しで、シンチレーションビーズに結合したA4
98細胞から由来の細胞膜と一緒にインキュベーションする。該化合物がHGF
の膜への結合を阻害するならば、[125I]−標識HGFはシンチレーションビー
ズの付近にはなく、シグナルの減少が得られるであろう。以下に使用する第2の
アッセイは、この化合物がアゴニストまたはアンタゴニストであるかどうかを決
定するものである。
試験化合物の細胞酸性化率に対する効果を評価するために、メサンギウム細胞
を、試験化合物と共にまたは無しで、HGFの存在下または不在下でインキュベ
ーションする。細胞の酸性化率を本明細書に記載するようにマイクロ生理機能測
定法(microphysiometry)で測定し、試験化合物のHGF−誘発細胞酸性化に対
する効果を決定する。HGF単独で処理した細胞の酸性化率と比較して、HGF
および試験化合物で処理した細胞の酸性化速度が減少することは、試験化合物が
HGFアンタゴニスト活性を有することを意味する。
試験化合物の細胞外マトリックス遺伝子発現に対する効果を評価するために、
本明細書中、実験例に記載されている条件下、試験化合物と共にまたは無しで、
HGFの存在下または不在下で細胞をインキュベーションする。細胞外マトリッ
クス遺伝子(例えば、コラゲナール(IV)およびフィブロネクチン)と関連す
るmRNAの発現を測定し、種々の細胞との間で比較する。HGF単独で処理し
た細胞の細胞外マトリックスmRNA発現と比較して、HGFおよび試験化合物
で処理した細胞の細胞外マトリックスmRNA発現が減少することは、さらに、
試験化合物がHGFアンタゴニスト活性を有することを意味する。
試験化合物をまた、インビボ検定にてHGFアンタゴニスト活性について試験
してもよい。実験例に示されるデータから明らかなように、マウスのHGFでの
長期間処理は腎不全を誘発する。このように、試験化合物のHGFアンタゴニス
ト活性を評価する別の具体的方法は、少なくとも21日の期間にわたって、HG
Fを単独で、試験化合物を添加したHGFをマウスに投与することからなる。さ
らなる対照として、適当なプラヤボ化合物を投与したマウスが挙げられる。腎機
能の基準として、各セットのマウスにてクレアチンクリアランスを評価する。H
GFを単独で投与したマウスのクレアチンクリアランスと比較して、HGFを試
験化合物と一緒に投与したマウスのクレアチンクリアランスが増加することは、
試験化合物がさらにHGFアンタゴニスト活性を有することを意味する。
HGFの特異的な部分を有するペプチドを有してなるHGFアンタゴニストは
、限定されるものではないが、HGFのN−末端付近に第1のクリンクル(krink
le)領域を含むものを包含する。そのようなペプチドの一例が、末端切断された
HGFペプチドNK2である(Chanら、1991、Science254:1382−1
385)。
実質的に純粋なHGF部を有してなるペプチドの調製物を得るために、HGF
の所望の部分をコードするHGFDNAをクローンし、発現することにより該ペ
プチドを生成することができる。HGFDNAおよびアミノ酸配列が、Miyazawa
ら、1991、Eur.J.Biochem.197:15−22(配列番号1および2)に
記載されている。HGFの所望の部分をコードする単離されたDNAを発現ベク
ター中にクローンし、それからタンパク質を発現させる。ペプチドのクローン化
および発現の操作は当該分野にて周知であり、例えば、Sambrookら(1989、
Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor、New York)に
記載されている。そうして発現したペプチドを当該分野にて周知の一般的ペプチ
ド精製手段を用いて得ることができる。
本明細書で用いる場合、「実質的に純粋な」なる語は、天然に化合物を伴う成
分から単離されるもの、例えば、タンパク質またはポリペプチドをいう。典型的
には、試料中の物質全体の少なくとも10%、さらに好ましくは少なくとも20
%、さらに好ましくは少なくとも50%、さらに好ましくは少なくとも60%、
さら
に好ましくは少なくとも75%、さらに好ましくは少なくとも90%、最も好ま
しくは少なくとも98%が目的とする化合物である場合は、化合物は、実質的に
純粋である。純度は、例えば、ポリペプチドの場合には、カラムクロマトグラフ
ィー、ゲル電気泳動またはHPLC分析により、いずれか適当な方法で測定する
ことができる。化合物、例えば、タンパク質は、本質的に天然に結合した成分が
ない場合またはその天然状態でその物を含む天然の汚染物を分離した場合も、実
質的に精製されている。
本発明はまた、本発明の方法に従って得られるペプチドのアナログを包含する
。アナログは、保存アミノ酸配列の違いで、または配列に影響を及ぼさない修飾
で、あるいはその両方で天然に存在するペプチドと区別することができる。
例えば、ペプチドの一次配列を変えるが、通常は、その機能を変えない保存ア
ミノ酸変形を行ってもよい。保存アミノ酸配列は、典型的には、以下の群の置換
を包含する:
グリシン、アラニン;
バリン、イソロイシン、ロイシン;
アスパラギン酸、グルタミン酸;
アスパラギン、グルタミン;
セリン、トレオニン;
リジン、アルギニン;
フェニルアラニン、チロシン。
修飾(通常、一次配列を変形しない)は、インビボ、またはインビトロにおけ
るペプチドの化学的誘導化、例えば、アセチル化、またはカルボキシ化を包含す
る。さらには、グリコシル化の修飾、例えば、ペプチドの合成の間にそのグリコ
シル化のパターンを修飾し、プロセシングするか、またはさらなるプロセシング
工程にて、例えば、ペプチドをグリコシル化に影響を及ぼす酵素、例えば、哺乳
動物グリコシル化または脱グリコシル化酵素に曝すことによりなされる変形も包
含される。リン酸化アミノ酸残基、例えば、ホスホチロシン、ホスホセリンまた
はホスホトレオニンを有する配列も包含される。
さらに、そのタンパク質分解特性に対する耐性を改良するために、または溶解
性特性を最適化するために、通常の生物学的技法を用いて修飾されたペプチドも
包含される。かかるペプチドのアナログは、天然に存在するL−アミノ酸以外の
残基、例えば、D−アミノ酸、あるいは天然に存在しない合成アミノ酸を含むも
のを包含する。本発明のペプチドは、本明細書に挙げられる例示としての生成物
に限定されない。
かくして、本発明はまたHGFアンタゴニスト活性を有するHGFの活性フラ
グメントに関する。本明細書に記載されるように、特定のポリペプチドがHGF
の作用を阻害する場合、そのポリペプチドはHGFアンタゴニスト活性を有する
と考えられる。
本明細書で用いる場合、HGFペプチドに適用される「フラグメント」なる語
は、その長さが、一般には少なくとも約10個の連続アミノ酸、典型的には少な
くとも約20個の連続アミノ酸、さらに典型的には少なくとも約50個の連続ア
ミノ酸、通常、少なくとも約78個の連続アミノ酸のものをいう。
HGFに相補的な核酸配列は、Nakamuraら(前掲)に記載のHGFの配列を用
いて得ることができる。現在、アンチセンスオリゴヌクレオチドの哺乳動物への
投与は当該分野において一般的なものであり、本明細書に記載のいずれの投与方
法を用いて行うこともできる。HGFのヌクレオチド78−950(配列番号1
)またはその一部に相補的な核酸は、RNAがアンチセンス配向(すなわち、相
補的に)にてそこからHGF mRNAに発現するように、HGFDNAまたは
その一部を発現ベクターにクローンすることで得ることができる。
本明細書で用いる場合、「単離されたDNA」は、天然に存在する状態にてそ
の側面にある配列から精製されているDNA配列、セグメントまたはフラグメン
ト、例えば、通常、そのフラグメントに隣接する配列、例えば天然に存在するゲ
ノムにてフラグメントに隣接する配列から分離したDNAフラグメントをいう。
該用語はまた、天然状態でそのDNAを伴う他の成分、例えば、細胞中にそれを
伴うRNA、DNAまたはタンパク質から実質的に精製されたDNAに用いる。
本明細書にて用いる場合、「相補的」なる語は、2つの核酸、例えば、2つの
D
NAまたはRNA分子の間のサブユニット配列相補性をいう。両方の分子のヌク
レオチド位置が相互に塩基対を形成することのできるヌクレオチドで占められて
いる場合、その時、その核酸は該位置で相互に相補的であると考えられる。すな
わち、各々の分子の対応する位置の実質的な数(少なくとも50%)が、相互に
正常な塩基対(例えば、A:TおよびG:Cヌクレオチド対)を形成する場合、
2つの核酸は相互に相補的である。
本発明は、HGF DNAまたはその一部と実質的に相同であるDNAを含む
と解されるべきであり、該DNAは、HGF相補核酸の産生、または、HGFペ
プチドの産生に有用である。好ましくは、実質的に相同であるDNAは、本発明
の方法を用いて得られたDNAと約50%相同であり、好ましくは、約70%相
同であり、より好ましくは、約80%相同であり、最も好ましくは、約90%相
同である。
本明細書で用いる場合、「相同」とは、2つの高分子の間、例えば、2つのD
NA分子または2つのRNA分子などの2つの核酸分子の間のサブユニット配列
類似性を表す。2つの分子の両方におけるサブユニット位置が同一の単量体サブ
ユニットにより占められる場合、例えば、2つのDNA分子がアデニンにより占
められる場合、それらは、その位置で相同である。2つの配列の間の相同性は、
適合または相同な位置の数の一次関数であり、例えば、2つの化合物配列におけ
る位置の半分(例えば、サブユニット10個の長さのポリマーにおける5つの位
置)が相同である場合、2つの配列は、50%相同であり、位置の90%、例え
ば、10個のうち9個が適合または相同である場合、2つの配列は、90%相同
性を共有する。例えば、DNA配列3'ATTGCC5'と3'TATGCG5'とは、50%相同性
を共有する。
抗HGF抗体は、本明細書で同定したHGFペプチドで哺乳動物を免疫化する
ことにより容易に得られる。公知のペプチドに対する抗体(モノクローナル抗体
またはポリクローナル抗体のいずれか)を得るためのプロトコールは、Harlow e
t al.(1988,In:Antibodies,A Labpratory Manual,Cold Spring Harbor,NY
)に記載されており、該プロトコールは、当業者が容易に行うことができる。H
G
Fに対するポリクローナル抗体は、マウスまたはウサギなどのいずれの適当な哺
乳動物においても生じる。モノクローナル抗HGF抗体は、HGFペプチドによ
るマウスの免疫化、次いで、抗HGF抗体分泌能を有するハイブリドーマ細胞の
産生により得られる。バクテリオファージにより発現される抗体などのモノクロ
ーナル抗体を産生する他の手段は、現在、当該技術分野でよく知られており、例
えば、Marks et al.(1991,J.Mol.Biol.222:581-597)、Barbas(1995,Natu
re Medicine 1:837-839)、de Kruif et al.(1995,J.Mol.Biol.248:97-105)
およびSternberg et al.(1995,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:1609-1613)に
記載されている。
HGF−アンタゴニスト様活性を有するペプチドメティク(peptidometic)も
また、本発明に従って設計され使用される。ペプチドメティクの投与を記載して
いるさらなる情報は、PCT出願PCT/US93/01201および米国特許第5,334,702号にお
いて与えられる(引用して本明細書の記載とする)。これらの2つの文献のいずれ
かに記載されている技術のいずれかをペプチドメティクの投与のために本発明に
おいて用いてもよい。
HGFアンタゴニストとしては、また、ペプチドまたは核酸分子ではない、本
明細書で定義したHGFアンタゴニスト活性を有する小分子が挙げられる。
本発明の方法において有用なHGFアンタゴニストの例としては、限定されな
いが、Faletto et al.(PCT出願WO94/06909)、Roosetal.(PCT出願WO94/06456)
、日本特許出願公開5-208998号、および、Aaronsonetal.(PCT出願WO92/05184)
に記載されているものが挙げられる。
本発明の方法を用いて治療可能な腎臓病としては、限定されないが、多嚢胞病
、糖尿病性腎症、巣状分節性糸球体硬化症、高血圧誘発性腎症、副腎腫などが挙
げられる。
HGFのアンタゴニストの投与を含む慢性腎症を有する哺乳動物の治療用プロ
トコールは、当業者に明らかであり、疾患のタイプならびに哺乳動物のタイプお
よび年齢により変化する。意図される治療計画としては、単回投与または1時間
に1回、日に1回、週1回、月1回、または、年1回投与される投薬が挙げられ
る。投薬は、体重1kg当たりアンタゴニスト1−1000mgで変化してもよく、
化合物のデリバリーに適している形態である。投与の経路は、また、治療される
べき障害により変化する。
本発明は、慢性腎症を軽減または除去するためのヒトに対するHGFアンタゴ
ニストの投与を意図する。ヒトへのHGFの投与について以下に記載するプロト
コールは、ヒトにHGFを投与する方法の例として挙げられる。このプロトコー
ルは、用いうる唯一のプロトコールであると解されるべきではなく、むしろ、単
にその一例として解されるべきである。他のプロトコールは、本発明を所有して
いる場合に当業者に明らかになるであろう。実質的には、ヒトへの投与のため、
HGFアンタゴニストは、生理食塩水約1mlに溶解され、体重1kg当たり1−1
000mgの用量は、1日1回〜数回、経口または静脈内投与される。腎機能を、
投与期間じゅうモニターする。
HGFのアンタゴニストは、生理食塩水、塩溶液またはかかる投与において当
者に明らかな他の製剤などの医薬上許容される担体中で懸濁または溶解させるこ
とにより投与のために調製される。本発明の組成物は、噛乳動物に、生分解性生
適合性ポリマーを用いる持続放出型製剤で、または、ミセル、ゲルおよびリポソ
ームを用いるオンーサイト・デリバリーにより、慣用的な方法の1つで(例えば
、経口的、非経口的、経皮的または経粘膜的に)投与されるか、または、直腸投
与(例えば、坐剤または浣腸による)または鼻投与(例えば、鼻スプレーによる
)される。かくして、HGFアンタゴニストは、その効果を及ぼす場合にそれが
結局は哺乳動物における標的エリア、すなわち、腎臓に達するために、いずれか
の経路により哺乳動物に投与される。適切な医薬上許容される担体は、当業者に
明らかであり、投与経路に左右される。
HGFアンタゴニスト活性を有する化合物としては、また、細胞の特異的な型
を標的とするように製剤化される化合物が挙げられる。例えば、それらが細胞上
の特異的な受容体に指向されるように化合物を被包化または製剤化することが当
該技術分野で知られている。かかる製剤としては、抗体標識製剤、受容体リガン
ド結合製剤などが挙げられる。
本発明は、さらに、以下の実施例の記載により詳述される。これらの実施例は
、単に説明のためだけであり、特記しない限り、限定するものではない。かくし
て、本発明は、如何なる場合も以下の実施例に限定されると解されるべきではな
く、むしろ、本明細書に記載した教示の結果として明らかになる全ての変更を含
むと解されるべきである。
本明細書に記載のデータによるとHGFでのイン・ビトロでの細胞の処置が慢
性腎症に関係する化合物の産生における合成を生じるので、本明細書に記載の実
施例は、HGFのアンタゴニストが慢性腎症の治療に有用であることを確立する
方法および結果を提供している。同様に、HGFでのイン・ビボでの動物の長期
治療は、腎機能の低下を生じる。
実施例
細胞培養
8〜10週齢のSJL/J(H−2B)マウスの腎臓から得られた糸球体から
マウス・メサンギウム細胞培養物を確立させた(Wolfetal.,1992,Am.J.Pathol
.140:95-107)。2mM L−グルタミンおよび180mg/dlグルコースを含有し
ており、10%FBSおよび100U/mlペニシリン/ストレプマイシンで補足
されたダルベッコ修飾イーグル培地(DMEM)中で、5%CO2中、37℃で
細胞を増殖させた。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、20mM ED
TAで補足された0.05%トリプシンと一緒にインキュベートすることにより
、細胞を継代培養した。
永久細胞系を確立するために非キャプシド形成SV40ウイルスで形質転換さ
れたマウス・メサンギウム細胞(Wolfetal.,上掲)をMMC−SV40細胞と
称する。これらの細胞は、分化メサンギウム細胞の多くの特徴を示す(Wo1fetal.
,上掲)。安定なトランスフェクションは、ネズミCOL4A1遺伝子の5’フ
ランキングおよび第1イントロン領域からなる「ミニ遺伝子」により駆動される
ルシフェラーゼを発現するリポーター構築物HB35を用いてMMC−SV40
細胞に対して行われた(Fumo et al.,1994,Am.J.Physiol.267:F632-F638)。
安定な形質転換体をMMC−COL細胞と称する。これらの細胞は、MMC−S
V4
0細胞と同様の上昇したグルコース濃度に応答する増殖およびタンパク質合成の
パターンを示した(Fumoetal.,上掲)。
凍結保存したヒト・メサンギウム細胞(継代3)を、クロネティクス・コーポ
レーション(Clonetics Corp.)(カリフォルニア州サンディエゴ)から購入し、
5%FBS、50mg/mlゲンタマイシン(Gentamicin)および50ng/mlアンホ
テリシン(Amphotericin)−Bで補足したクロネティクス・メサンギウム細胞増
殖培地(Clonetics Mesangial Cell Growth Medium)(MsGM)中で増殖させた。ク
ロネティクス・コーポレーションにより提供された方法に従ってヒト・メサンギ
ウム細胞を増殖させ、継代6−8の間、これらの実験で用いた。
マイクロ生理機能測定法
細胞センサー(cytosensor)マイクロ生理機能測定器は、細胞が固定されてい
る微容量フローチャンバーの一部であるpH感受性シリコンセンサーに基づくも
のである(McConnel et al.,1992,Science 257:1906-1912)。マウス・メサンギ
ウム細胞(mesangial cell)を150cm2フラスコからトリプシンを用いて、
3mmポアサイズのポリカーボネート膜を有するカプセルキャップ中(Molecular
Devices,Inc.,Sunnyvale,CA)に、300,000細胞/キャップの密度で継
代した。各セルタイプに特異的な培地中、24時間付着させた。カプセルキャッ
プ中に、スペーサー・リングおよびインサート・キャップを嵌めた後、この組み
立てたユニットをセンサーチャンバーに移し、マイクロ生理機能測定器中で、重
炭酸塩フリーRPMI1640培地(Molecu1ar Devices,Inc.)で100ml
/分にて灌流した。酸性化率をpHオーバータイムの変化で測定し、これはボン
プを2分間隔で30秒間停止させた時に測定した。
有糸***誘発アッセイ
マウス・メサンギウム細胞でのHGFの有糸***的作用を、新たに合成したD
NAに取り込まれた[3H]チミジンの量として測定した。細胞を、24ウエル
・ディシュに継代し(2.5×103細胞/ウエル)、増殖培地で72時間インキ
ュ
ベートした。2mMのL−グルタミンおよび100mg/dlのグルコースを含
有し、さらに3%FBS、100/mlペニシリンおよび100mg/mlスト
レプトマイシンを補足したDMEM培地に48時間入れて、合した培養を静止さ
せた。HGFを非補足DMEM培地で希釈し、ウエルに3連で24時間加えた。
この24時間培養の最後の4時間、細胞に[3H]チミジンを適用した。細胞を
PBSで洗浄し、5%トリクロロ酢酸を加え、タンパク質および核酸を沈澱させ
、取り込まれなかった[3H]チミジンを除去した。ついで、0.5N NaO
Hを添加して沈澱を溶解し、その400mlをシンチレーション液に添加し、ト
ウラス(Taurus)液体シンチレーション・カウンターで計数した(ICN Biomedica
ls,Inc.,Huntsville,AL)。
ルシフェラーゼ・アッセイ
MMC−COL細胞を、増殖培地中、24ウエルプレートで、25,000細
胞/ウエルで48時間培養した。ついで、増殖アッセイにおいて細胞を静止させ
るのに使用したのと同じ培地中で、細胞をインキュベートし、HGF添加前に、
さらに48時間インキュベートした。表示した時間に、0.1mMリン酸カリウ
ムおよび1mMジチオスレイトール、1%トリトンX−100を含有するpH7
.2の緩衝液を用いて細胞を溶解するか(ルシフェラーゼ活性)、またはトリプ
シン処理した(細胞数)。溶解細胞を遠心分離し、上澄液100mlを96ウエル
マイクロタイタープレートのウエルに2連で入れた。Microlumat LB96Pルミノメ
ーター(Wallac Inc.,Gaithersburg,MD)を用いて発光を室温で直接測定し、
ルシフェリン反応混合物100mlを自動的に注入後、20秒間にわたって積分
した。この混合物は、0.1mMリン酸カリウム、10mM ATP、20mM
MgCl2および1mMジチオスレイトールのストック緩衝液(pH7.2)
と、新たに添加した0.8mg/mlのD−ルシフェリン(Boehringer Mannhei
m,Indianapolis,IN)を含有していた。ルシフェリン活性は、ウエル中で同様
に処理し、トリプシン処理し、計数(Coulter Electronic LTD,Luton,Beds,E
ngland)した細胞培養から測定された細胞数当りの相対光単位(RLU)で表し
た。
ノーザン・ブロット・ハイブリダイゼーション
MMC−SV40細胞を150cm2フラスコ中で培養し、上記増殖培地中で
3〜4日間インキュベートした。HGF添加48時間前、培地を2mM L−グ
ルタミンおよび100mg/dlグルコースを含有し、3%FBS、100U/
mlペニシリンおよび100mg/mlストレプトマイシンを補足したDMEM
培地に変えた。細胞を、HGFと共に、2、6および16時間インキュベートし
た。全RNAをマウス細胞から、チオシアン酸グアニジウム変性およびフェノー
ル−クロロホルム抽出により抽出した(Chomczynski et al.,1987,Anal.Bioch
em.162:156-159)。全RNA(10mg/レーン)を、0.2Mホルムアルデヒ
ド−1%アガロースゲル上で分画し、4×SSC中のナイロン膜(Nylon-1;Beth
esda Research Laboratories,Bethesda,MD)に移した。等価物のロードおよび
移行をメチレンブルー染色で確認した。7.6kbのmRNAを認識するランダ
ムプライムした[32P]DNAプローブをフィブロネクチンについて作製した。
フィブロネクチンはATCCから購入した。ハイブリダイゼーションは、50%
ホルムアミド、225mM NaCl、20mM NaH2PO4、1.5mM
EDTA、1%ドデシル硫酸ナトリウム、0.5%ドライミルク、100mg・
ml酵母、全RNAおよびサケDNA中で、ラベルしたDNA106cpm/m
lを用い、42℃で16時間行なった。ブロットを、0.2×SSCの最終スト
リンジェンシー、0.2%ドデシル硫酸ナトリウムで、65℃にて洗浄した。膜
をホスホル・イメージング・プレート(phosphor imaging plate)に暴露し、バ
ンドをImageQuantソフトウエアー(Molecular Dynamics,Inc.)で定量した。
動物実験
Alzetミニオスモティックポンプ(Alza,Palo Alto,CA)に、14.6ng/
mlHGFまたはビヒクル(350mM NaCl,10mMリン酸塩pH7.
3、625mg/mlヒト血清アルブミン)を充填した。劣性db変異を有する
C57BL/Ks系の細身および肥満マウスJackson Laboratory(Bar Harbor,
ME)から購入した。マウスにKetalarの下、腹腔内移植し(60mg/kg)、2
1日後に殺した。殺す日に、代謝ケージ内で24時間尿試料を採集した。殺すと
きに、血液を採集した。Synchron Clinical System AS8(Beckman;Columbia,MD
)で、尿および血清クレアチニン・レベルを測定した。クレアチニン・クリアラ
ンスを計算して腎機能を測定した。
HGF媒介酸性化率
FBSまたはBSAのHGF媒介酸性化率に対する影響を評価するため、MM
C−SV40細胞を、0.1%BSA、0.5%FBSまたは両方で30分間前
処理した。この実験は、R&D Systems,Minneapolis,MNから得た組換HGFが、
酵素活性化の必要な一本鎖前駆体形で生じるので行なった。血清中のプロテアー
ゼまたは細胞によって分泌されるプロテアーゼがHGFを活性化でき、またはF
BSに含まれるプロテアーゼが必要となりうる。さらに、他の成長因子と同様に
、HGFは、プラスチックチューブに付着しやすく、HGFの細胞へのデリバリ
ーに担体分子が必要となりうる。予備インキュベーションの後、0.1%BSA
または0.5%FBSの存在下、または不存在下に、細胞を100mg/mlH
GFに10分間暴露した。
FBSの存在下、ベースライン応答がHGF投与前より30%高くセットされ
たが、HGF誘発酸性化の弱まりが観察された。BSAは、FBSの存在下また
は不存在下でHGFのピーク応答を劇的に弱めた(図1、パネルA)。したがって
、残りの実験においては、HGFはランニング培地中、FBSまたはBSA不存
在下で投与した。
細胞をHGFに暴露する時間の長さの酸性化率に対する影響を、MMC−SV
40細胞を100ng/ml HGFで2、5、10および15分間処理して評
価した。細胞をHGFの存在下、5、10および15分間のインキュベーション
は、各々、同様な酸性化率のピークを生じたが、さらなる実験には、この処理後
の細胞の迅速な回収のために5分の暴露時間を選択した(図1、パネルB)。
HGF用量応答を、3、10、30または100ng/mlのHGFでMMC
−SV40細胞を処理して評価した。30ng/ml HGF濃度が酸性化率の
最大増加を示し、100ng/ml HGFではさらなる増加は見られなかった
(図1、パネルC)。
非形質転換メサンギウム細胞もHGFに応答するかを測定するため、一次ヒト
メサンギウム細胞を第7継代で処理した。100ng/mlのHGFは、ヒトネ
メサンギウム細胞の酸性化率増加を誘発した(図1、パネルD)。
メサンギウムのHGFに対する応答におけるPKC媒介第二メッセンジャー系
の関与を、PKC阻害剤RO−32−0432を用いて評価した。形質転換マウ
ス・メサンギウム細胞を1、3または5mM RO−32−0432で30分間
前処理し、前処理培地の存在下に50ng/mlの濃度のHGFを5分間加えた
。RO−32−0432は、HGF誘発酸性化率を濃度依存的に部分的にブロッ
クした(図2)。
有糸***誘発に対するHGFの影響
正常ヒト細胞および固定化マウス・メサンギウム細胞の増殖を、トリチウム化
チミジンの取り込みにより評価した。ヒト腎糸球体メサンギウム細胞を48時間
血清欠乏させた。マウス・メサンギウム細胞を3%血清で増殖させた。各セット
の細胞を100ng/mlまで増加する用量のHGFで24時間処理した。HG
Fは、正常ヒト細胞および固定化マウス・メサンギウム細胞の両方において、テ
ストしたいずれの用量においても、トリチウム化チミジンの取り込みに影響しな
かった(図3)。
HGFの細胞外マトリックス遺伝子発現に対する影響
HGFの細胞外遺伝子発現に対する影響を、MMC−COL細胞におけるルシ
フェラーゼ・レポーター遺伝子のコラーゲンa1(IV)プロモーター活性化の
査定およびMMC−SV40細胞におけるコラーゲンa1(IV)とフィブロネ
クチンmRNAのノーザン・ブロット・ハイブリダイゼーション分析によって評
価した。
マウス・メサンギウム細胞におけるコラーゲンプロモーターのHGF誘発活性
化は、用量依存的であった。30ng/mlのHGF存在下、コラーゲンプロモ
ーターの活性は、非処理細胞と比較して2倍であった(図4)。
MMC−SV40細胞を、1mM 5−アミノ−2−(4−アミノアニリノ)
ベンセンスルホン酸(ICN Biomedicals,Inc.,Costa Mesa,CA)、プロテインキ
ナーゼC阻害剤、の存在下または不存在下、50ng/mlのHGFで処理した
。ノーザン・ブロットは、HGFによりマウス・メサンギウム細胞においてコラ
ーゲンa1(IV)mRNAレベルが増加し、該阻害剤がHGF誘発増加をブロ
ックしたことを示した(データは示していない)。
また、MMC−SV40細胞を、3%血清の存在下で2、6および16時間、
50ng/mlのHGFで処理した。ノーザン・ブロットは、HGFが、HGF
投与後、6および16時間でフィブロネクチンmRNAレベルの増加を誘発した
ことを示した(データは示していない)。
腎機能におけるHGFの作用
腎機能におけるHGFの作用を、正常および糖尿病マウスにおいて21日間の
HGFの長期投与後に、クレアチニンクリアランスを評価することにより決定し
た。正常および糖尿病ビヒクル移植されたマウスにおけるクレアチニンクリアラ
ンスは、それぞれ、400および454ml/分/100gであった。HGFは
、両方の群においてクレアチニンクリアランスを、それぞれ、283および28
7*ml/分/100g(ビヒクル群に対して*p<0.05;n=5〜6マウス
;図5)に減少させた。
本明細書に示すデータは、糸球体間質細胞が、酸性化率および細胞外マトリッ
クス遺伝子発現においてHGFが示す変化に応答することを確証する。糸球体間
質細胞におけるHGFの作用は、プロテインキナーゼCセカンドメッセンジャー
システムにより部分的に媒介される。
内皮細胞におけるHGFの細胞***促進性の活性と対照的に、HGFはマウス
またはヒトの糸球体間質細胞の増殖において何ら作用しない。HGFは、慢性腎
機能不全の間、糸球体間質細胞において異なる作用を有する。さらには、腎機能
不全に作用することが知られる他のタンパク質に加えて、本発明のデータ−は、
HGFもまた糸球体間質細胞におけるマトリックス産生に寄与し、それゆえ慢性
腎障害に寄与することを示す。
要約すると、HGFは糸球体間質細胞の細胞外酸性化率を促進し、糸球体間質
細胞においてフィブロネクチンおよびコラーゲンa1(IV)の遺伝子発現を増
加する。それゆえ、HGFは、糸球体問質細胞を活性化して細胞外マトリックス
沈着を増加させることにより糸球体硬化症に寄与する。さらに、HGFで21日
間動物を処置すると(長期間処置)、クレアチニンクリアランスが減少し、このこ
とは、腎機能の減少を示唆する。それゆえ、多くの慢性腎疾患において観察され
るHGFが慢性的に高いことは、糸球体における細胞外マトリックスの拡大を引
き起こすことにより腎機能の減少に寄与するらしい。
本明細書に引用した特許、特許出願および出版物の各々およびすべての開示は
、そのすべてを出典明示により本明細書の一部とする。本発明を特定の具体例を
参照して開示するが、本発明の他の具体例および変形が、本発明の真の精神およ
び範囲から逸脱することなく、当業者により案出されることは明らかであろう。
添付する請求の範囲は、すべてのかかる具体例および等価な変形を含むように構
築されることを意図する。
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(51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考)
C12Q 1/68 C12Q 1/68 A
G01N 33/15 G01N 33/15 Z