【発明の詳細な説明】
抗微生物活性を有する環状ヘキサペプチド
技術分野
この発明は、医薬として有用な新規ポリペプチド化合物および医薬として許容
されるその塩に関する。
背景技術
米国特許No.5,376,634、米国特許No.5,502,033など
において、抗菌活性(特に抗真菌活性)を有するポリペプチド化合物および医薬
として許容されるその塩が開示されている。
発明の開示
この発明は医薬として有用な新規ポリペプチド化合物および医薬として許容さ
れるその塩に関する。
より詳しくは、この発明は、抗菌活性[特に抗真菌活性であって、真菌として
は、アスペルギルス(Aspergillus)、クリプトコッカス(Cryptococcus)、カンジ ダ
(Candida)、ムコール(Mucor)、アクチノマイセス(Actinomyces)、ヒストプラ スマ
(Histoplasma)、皮膚糸状菌(Dermatophyte)、マラセジア(Malassezia)、フ ザリウム
(Fusarium)などを挙げることができる。]、およびβ−1,3−グル
カンシンターゼ阻害活性を有し、ヒトまたは動物におけるニューモシスティスカ リニ
感染症(たとえばニューモシスティスカリニ肺炎)の予防および/または治
療に有用であると予想され、さらには、その毒性が従来のポリペプチド化合物と
比べて遙かに低いと予想される新規ポリペプチド化合物および医薬として許容さ
れるその塩、それらの製造方法、それらを含有する医薬組成物、ならびにヒトま
たは動物におけるニューモシスティスカリニ感染などの感染症(たとえばニュー モシスティスカリニ
肺炎)の予防および/または治療方法に関する。
この発明の目的ポリペプチド化合物は新規であり、下記の一般式[I]で示さ
れる。[式中、R1は水素またはアシル基を意味する。]
で表される化合物またはその塩。
この発明のポリペプチド化合物[I]は下記の反応式で示す諸方法によって製
造することができる。製造法1 製造法2 製造法3 目的化合物[I]の好適な塩は、慣用の無毒の単塩または二塩などの医薬とし
て許容される塩であって、金属塩、たとえばアルカリ金属塩[たとえばナトリウ
ム塩、カリウム塩など]およびアルカリ土類金属塩[たとえばカルシウム塩、マ
グネシウム塩など]、アンモニウム塩、有機塩基塩[たとえばトリメチルアミン
塩、トリエチルアミン塩、ピリジン塩、ピコリン塩、ジシクロヘキシルアミン塩
、N,N−ジベンジルエチレンジアミン塩など]、有機酸付加塩[たとえばギ酸
塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸
塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩など]、無機酸付加塩[たと
えば塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、燐酸塩など]、アミノ酸
との塩[たとえばアルギニン塩、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩など]など
を挙げることができる。
この明細書の以上および以下の記述において、種々の定義の好適な例を次に詳
細に説明する。
「低級」とは、特記ない限り、炭素原子数1ないし6を意味する。
「高級」とは、特記ない限り、炭素原子数7ないし20を意味する。
好適な「アシル基」としては、カルボン酸、炭酸、カルバミン酸、スルホン酸
などから誘導された脂肪族アシル、芳香族アシル、複素環アシル、アリール脂肪
族アシルおよび複素環脂肪族アシルを挙げることができる。
このように説明されるアシル基の好適な例としては、
低級アルカノイル[たとえばホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、
イソブチリル、バレリル、ヘキサノイル、ピバロイルなど]であって、この低級
アルカノイルは、
ハロゲン(たとえばフッ素、塩素、臭素、ヨウ素);アリール(たとえばフェニ
ル、ナフチル、アントリルなど)であって、ヒドロキシ、後述の高級アルコキシ
、前記のアリールなどの適当な置換基を1個またはそれ以上(好ましくは1ない
し3個)有していてもよい;後述の低級アルコキシ;アミノ;
保護されたアミノ、好ましくは低級アルコキシカルボニルアミノ(たとえばメト
キシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、プロポキシカルボニルアミ
ノ、ブトキシカルボニルアミノ、第三級ブトキシカルボニルアミノ、ペンチルオ
キシカルボニルアミノ、ヘキシルオキシカルボニルアミノなど)などのアシルア
ミノ;など;
ジ(低級)アルキルアミノ(たとえばジメチルアミノ、N−メチルエチルアミノ
、ジエチルアミノ、N−プロピルブチルアミノ、ジペンチルアミノ、ジヘキシル
アミノなど);低級アルコキシイミノ(たとえばメトキシイミノ、エトキシイミ
ノ、プロポキシイミノ、ブトキシイミノ、第三級ブトキシイミノ、ペンチルオキ
シイミノ、ヘキシルオキシイミノなど);
アル(低級)アルコキシイミノ、たとえばフェニル(低級)アルコキシイミノ(
たとえばベンジルオキシイミノ、フェネチルオキシイミノ、ベンズヒドリルオキ
シイミノなど)であって、後述の高級アルコキシなどの適当な置換基を1個また
はそれ以上(好ましくは1ないし3個)有していてもよい;
複素環チオ、好ましくはピリジルチオであって、高級アルキル(たとえばヘプチ
ル、オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル、3,7−ジメチルオクチ
ル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、3−メ
チル−10−エチルドデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノ
ナデシル、イコシルなど)などの適当な置換基を1個またはそれ以上(好ましく
は1ないし3個)有していてもよい;
複素環基(たとえばチエニル、イミダゾリル、ピラゾリル、フリル、テトラゾリ
ル、チアゾリル、チアジアゾリルなど)であって、アミノ、前記の保護されたア
ミノ、前記の高級アルキルなどの適当な置換基を1個またはそれ以上(好ましく
は1ないし3個)有していてもよい;など;
などの適当な置換基を1個またはそれ以上(好ましくは1ないし3個)有してい
てもよい;
高級アルカノイル[たとえばヘプタノイル、オクタノイル、ノナノイル、デカ
ノイル、ウンデカノイル、ラウロイル、トリデカノイル、ミリストイル、ペンタ
デカノイル、パルミトイル、10,12−ジメチルテトラデカノイル、ヘプタデ
カノイル、ステアロイル、ノナデカノイル、イコサノイルなど]、
なかでも好ましいものとしては(C7−C17)アルカノイルを、最も好ましい
ものとしてはパルミトイルを挙げることができ;
低級アルケノイル[たとえばアクリロイル、メタクリロイル、クロトノイル、
3−ペンテノイル、5−ヘキセノイルなど]であって、後述の高級アルコキシな
どの適当な置換基を1個またはそれ以上(好ましくは1ないし3個)有していて
もよい前記のアリールなどの適当な置換基を1個またはそれ以上(好ましくは1
ないし3個)有していてもよい、など;
高級アルケノイル[たとえば4−ヘプテノイル、3−オクテノイル、3,6−
デカジエノイル、3,7,11−トリメチル−2,6,10−ドデカトリエノイ
ル、4,10−ヘプタデカジエノイルなど];
低級アルコキシカルボニル[たとえばメトキシカルボニル、エトキシカルボニ
ル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、第三級ブトキシカルボニル、
ペンチルオキシカルボニル、ヘキシルオキシカルボニルなど];
高級アルコキシカルボニル[たとえばヘプチルオキシカルボニル、オクチルオ
キシカルボニル、2−エチルヘキシルオキシカルボニル、ノニルオキシカルボニ
ル、デシルオキシカルボニル、3,7−ジメチルオクチルオキシカルボニル、ウ
ンデシルオキシカルボニル、ドデシルオキシカルボニル、トリデシルオキシカル
ボニル、テトラデシルオキシカルボニル、ペンタデシルオキシカルボニル、3−
メチル−10−エチルドデシルオキシカルボニル、ヘキサデシルオキシカルボニ
ル、ヘプタデシルオキシカルボニル、オクタデシルオキシカルボニル、ノナデシ
ルオキシカルボニル、イコシルオキシカルボニルなど];
アリールオキシカルボニル[たとえばフェノキシカルボニル、ナフチルオキシ
カルボニルなど];
アリールグリオキシロイル[たとえばフェニルグリオキシロイル、ナフチルグ
リオキシロイルなど];
アル(低級)アルコキシカルボニルであって、ニトロまたは低級アルコキシを
有していてもよいフェニル(低級)アルコキシカルボニル[たとえばベンジルオ
キシカルボニル、フェネチルオキシカルボニル、p−ニトロベンジルオキシカル
ボニル、p−メチルベンジルオキシカルボニルなど]などの適当な置換基を1個
またはそれ以上有していてもよい;
低級アルキルスルホニル[たとえばメチルスルホニル、エチルスルホニル、プ
ロピルスルホニル、イソプロピルスルホニル、ペンチルスルホニル、ブチルスル
ホニルなど];
アリールスルホニル[たとえばフェニルスルホニル、ナフチルスルホニルなど
]であって、後述の低級アルキル、後述の高級アルコキシなどの適当な置換基を
1個またはそれ以上(好ましくは1ないし3個)有していてもよい;
アル(低級)アルキルスルホニル、たとえばフェニル(低級)アルキルスルホ
ニル[たとえばベンジルスルホニル、フェネチルスルホニル、ベンズヒドリルス
ルホニルなど]など;
アロイル[たとえばベンゾイル、ナフトイル、アントリルカルボニルなど]で
あって、前記のハロゲン;低級アルキル(たとえばメチル、エチル、プロピル、
ブチル、第三級ブチル、ペンチル、ヘキシルなど);前記の高級アルキル;低級
アルコキシ(たとえばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、第三級ブト
キシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシなど)であって、前記の低級アルコキシ
、前記のハロゲン、前記のアリールなどの適当な置換基を1個またはそれ以上(
好ましくは1ないし10個)有していてもよい;高級アルコキシ(たとえばヘプ
チルオキシ、オクチルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ、ノニルオキシ、デシ
ルオキシ、3,7−ジメチルオクチルオキシ、ウンデシルオキシ、ドデシルオキ
シ、トリデシルオキシ、テトラデシルオキシ、ペンタデシルオキシ、3−メチル
−10−エチルドデシルオキシ、ヘキサデシルオキシ、ヘプタデシルオキシ、オ
クタデシルオキシ、ノナデシルオキシ、イコシルオキシなど)であって、前記の
ハロゲンなどの適当な置換基を1個またはそれ以上(好ましくは1ないし17個
)有していてもよい;
などの適当な置換基を1個またはそれ以上(好ましくは1ないし5個)有してい
てもよい。
なかでも好ましいものとしては(C7−C17)アルコキシを有するアロイルを
、より好ましいものとしては(C7−C17)アルコキシを有するベンゾイルを、
最も好ましいものとしてはオクチルオキシ;高級アルケニルオキシ(たとえば3
−ヘプテニルオキシ、7−オクテニルオキシ、2,6−オクタジエニルオキシ、
5−ノニルオキシ、1−デセニルオキシ、3,7−ジメチル−6−オクテニルオ
キシ、3,7−ジメチル−2,6−オクタジエニルオキシ、8−ウンデセニルオ
キシ、3,6,8−ドデカトリエニルオキシ、5−トリデセニルオキシ、7−テ
トラデセニルオキシ、1,8−ペンタデカジエニルオキシ、15−ヘキサデセニ
ルオキシ、11−ヘプタデセニルオキシ、7−オクタデセニルオキシ、10−ノ
ナデセニルオキシ、18−イコセニルオキシなど);カルボキシ;
前記のアリールであって、前記の高級アルコキシなどの適当な置換基を1個また
はそれ以上(好ましくは1ないし3個)有していてもよい;アリールオキシ(た
とえばフェノキシ、ナフチルオキシ、アントリルオキシなど)であって、前記の
低級アルコキシまたは前記の高級アルコキシなどの適当な置換基を1個またはそ
れ以上(好ましくは1ないし3個)有していてもよい;
を有するベンゾイル;
低級アルコキシを有するアリールを有する複素環基で置換されたアロイル;
高級アルコキシを有するアリールを有する複素環基で置換されたアロイル;
低級アルコキシを有するアリールで置換されたアル(低級)アルケノイル;
高級アルコキシを有するアリールで置換されたアル(低級)アルケノイル;
低級アルコキシを有するアリールを有するアリールで置換されたアロイル;
高級アルコキシを有するアリールを有するアリールで置換されたアロイル;など
を挙げることができる。
「アロイル基」の好適な例としては、ベンゾイル、トルオイル、ナフトイル、
アントリルカルボニルなどを挙げることができ、なかでも好ましいものとしては
ベンゾイルを挙げることができる。
「アリール」および「アル」部分の好適な例としては、低級アルキルを有して
いてもよいフェニル(たとえばフェニル、メシチル、トリルなど)、ナフチル、
アントリルなどを挙げることができ、なかでも好ましいものとしてはフェニルを
挙げることができる。
「低級アルコキシ基」の好適な例としては、直鎖または分枝状のもの、たとえ
ばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ
、第三級ブトキシ、ペンチルオキシ、第三級ペンチルオキシ、ネオペンチルオキ
シ、ヘキシルオキシ、イソヘキシルオキシなどを挙げることができる。
「高級アルコキシ基」の好適な例としては、直鎖または分枝状のもの、たとえ
ばヘプチルオキシ、オクチルオキシ、3,5−ジメチルオクチルオキシ、3,7
−ジメチルオクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ、ウンデシルオキシ、
ドデシルオキシ、トリデシルオキシ、テトラデシルオキシ、ヘキサデシルオキシ
、ヘプタデシルオキシ、オクタデシルオキシ、ノナデシルオキシ、イコシルオキ
シなどを挙げることができ、なかでも好ましいものとしては(C7−C17)アル
コキシを挙げることができる。
「複素環基」および「複素環」部分の好適な例としては、
窒素原子1ないし4個を有する3ないし8員(より好ましくは5または6員)
の不飽和複素単環基、たとえばピロリル、ピロリニル、イミダゾリル、ピラゾリ
ル、ピリジル、ジヒドロピリジル、ピリミジル、ピラジニル、ピリダジニル、ト
リアゾリル(たとえば4H−1,2,4−トリアゾリル、1H−1,2,3−ト
リアゾリル、2H−1,2,3−トリアゾリルなど)、テトラゾリル(たとえば
1H−テトラゾリル、2H−テトラゾリルなど)など;
窒素原子1ないし4個を有する3ないし8員(より好ましくは5または6員)
の飽和複素単環基、たとえばピロリジニル、イミダゾリジニル、ピペリジル、ピ
ペラジニルなど];
窒素原子1ないし4個を有する不飽和縮合複素環基、たとえばインドリル、イ
ソインドリル、インドリニル、インドリジニル、ベンズイミダゾリル、キノリル
、イソキノリル、インダゾリル、ベンゾトリアゾリルなど;
酸素原子1ないし2個および窒素原子1ないし3個を有する3ないし8員(よ
り好ましくは5または6員)の不飽和複素単環基、たとえばオキサゾリル、イソ
オキサゾリル、オキサジアゾリル(たとえば1,2,4−オキサジアゾリル、1
,3,4−オキサジアゾリル、1,2,5−オキサジアゾリルなど)など;
酸素原子1ないし2個および窒素原子1ないし3個を有する3ないし8員(よ
り好ましくは5または6員)の飽和複素単環基、たとえばモルホリニル、シドノ
ニルなど;
酸素原子1ないし2個および窒素原子1ないし3個を有する不飽和縮合複素環
基、たとえばベンズオキサゾリル、ベンズオキサジアゾリルなど、;
硫黄原子1ないし2個および窒素原子1ないし3個を有する3ないし8員(よ
り好ましくは5または6員)の不飽和複素単環基、たとえばチアゾリル、イソチ
アゾリル、チアジアゾリル(たとえば1,2,3−チアジアゾリル、1,2,4
−チアジアゾリル、1,3,4−チアジアゾリル、1,2,5−チアジアゾリル
など)、ジヒドロチアジニルなど;
硫黄原子1ないし2個および窒素原子1ないし3個を有する3ないし8員(よ
り好ましくは5または6員)の飽和複素単環基、たとえばチアゾリジニルなど;
硫黄原子1ないし2個を有する3ないし8員(より好ましくは5または6員)
の不飽和複素単環基、たとえばチエニル、ジヒドロジチイニル、ジヒドロジチオ
ニルなど;
硫黄原子1ないし2個および窒素原子1ないし3個を有する不飽和縮合複素環
基、たとえばベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリルなど;
酸素原子1個を有する3ないし8員(より好ましくは5または6員)の不飽和
複素単環基、たとえばフリルなど;
酸素原子1個を有する3ないし8員(より好ましくは5または6員)の飽和複
素単環基、たとえばテトラヒドロフラン、テトラヒドロピランなど;
酸素原子1個および硫黄原子1ないし2個を有する不飽和複素単環基、たとえ
ばジヒドロオキサチイニルなど;
硫黄原子1ないし2個を有する不飽和縮合複素環基、たとえばベンゾチエニル
、ベンゾジチイニルなど;
酸素原子1個および硫黄原子1ないし2個を有する不飽和縮合複素環基、たと
えばベンゾオキサチイニル;などを挙げることができ、なかでも好ましいものと
しては、窒素原子1ないし4個を有する3ないし8員の飽和複素単環基、および
酸素原子1ないし2個および窒素原子1ないし3個を有する3ないし8員の不飽
和複素単環基を挙げることができる。
「低級アルコキシを有するアリールを有する複素環基で置換されたアロイル基
」の好適な例としては、(C4−C6)アルコキシを有するフェニルを有し、窒素
原子1ないし4個を有する6員の飽和複素単環基で置換されたベンゾイル、(C4
−C6)アルコキシを有するフェニルを有し、硫黄原子1ないし2個および窒素
原子1ないし3個を有する5員の不飽和複素単環基で置換されたベンゾイル、ま
たは(C4−C6)アルコキシを有するフェニルを有し、酸素原子1ないし2個お
よび窒素原子1ないし3個を有する5員の不飽和複素単環基で置換されたベンゾ
イルを挙げることができ、なかでも好ましいものとしては、(C4−C6)アルコ
キシを有するフェニルを有するピペラジニルで置換されたベンゾイル、(C4−
C6)アルコキシを有するフェニルを有するチアジアゾリルで置換されたベンゾ
イル、または(C4−C6)アルコキシを有するフェニルを有するイソオキサゾリ
ルで置換されたベンゾイルを挙げることができ、最も好ましいものとしては、ヘ
キシルオキシを有するフェニルを有するピペラジニルで置換されたベンゾイル、
ヘキシルオキシを有するフェニルを有するチアジアゾリル置換されたベンゾイル
、またはペンチルオキシを有するフェニルを有するイソオキサゾリル
で置換されたベンゾイルを挙げることができる。
「低級アルコキシを有するアリールで置換されたアル(低級)アルケノイル基
」の好適な例としては、(C4−C6)アルコキシを有するフェニルで置換された
フェニル(C3−C6)アルケノイルを挙げることができ、なかでも好ましいもの
としては、ペンチルオキシを有するフェニルで置換されたフェニルアクリロイル
を挙げることができる。
「低級アルコキシを有するアリールを有するアリールで置換されたアロイル基
」の好適な例としては、(C4−C6)アルコキシを有するフェニルを有するフェ
ニルで置換されたベンゾイルを挙げることができ、なかでも好ましいものとして
は、ペンチルオキシを有するフェニルを有するフェニルで置換されたベンゾイル
を挙げることができる。
この発明の目的化合物[I]またはその塩の製造法を以下に詳細に説明する。製造法1
目的ポリペプチド化合物[Ia]またはその塩は、発酵工程によって製造する
ことができる。
発酵工程を以下に詳細に説明する。
この発明の化合物[Ia]またはその塩は、ロイシンの存在下で栄養培地に化
合物[Ia]またはその塩を生成できるColeophoma sp.F-11899などのColeopho
ma属に属する菌株を発酵することにより製造することができる。
(i)微生物
化合物[Ia]またはその塩を製造するために用いられる微生物の詳細を以下
に説明する。
最初に、菌株F-11899を日本の福島県いわき市で採取した土壌試料から分離し
た。この生物を種々の培地にかなり限定的に増殖させ、暗灰色ないし帯褐色灰色
のコロニーを形成した。蒸気滅菌した葉状部に生成したアナモルフ(分生子類)
を、分離株を植菌することにより、三浦のLCA平板1)またはコーンミール寒天
平板に付着させたが、テレモルフもアナモルフも寒天培地には形成されなかった
。その形態学的、培養上および生理学的特性は下記の通りである。
種々の寒天培地での培養特性を表1に要約する。ポテトデキストロース寒天で
の培養株はかなり早く増殖し、25℃で2週間後に直径3.5〜4.0cmに達
した。このコロニー表面は、平坦で、フェルト状で、多少皺が寄っており、帯褐
色灰色であった。コロニー中心部は、淡い灰色ないし帯褐色灰色で、気中菌糸で
覆われていた。裏面の色は暗灰色であった。麦芽エキス寒天培地でのコロニーは
限定的に増殖し、同一条件で直径2.5〜3.0cmに達した。表面は、平たく
、薄い〜フェルト状で、オリーブ褐色であった。コロニー中心部は、帯黄色灰色
で、気中菌糸で覆われていた。裏面の色は帯褐色灰色であった。
形態学的特性を、三浦のLCA平板に付着した滅菌葉状部での培養株に基づい
て確認した。分生子類は葉状部のみに形成された。それらは粉胞子状で、表面近
くにあり、分離しており、円盤状〜びん状で、基底部で平たくなっており、単房
性で、薄膜で、黒色で、直径90〜160(〜200)μmで、高さが40〜7
0μmであった。オスチオールは、多くの場合、単一で、円形で、中央部にあり
、乳頭状で、直径10〜30μmで、高さが10〜20μmであった。分生子柄
が内側粉胞子状壁の下層から形成した。それらはガラス質で、単一または間隔を
あけて分岐し、分離し、滑らかであった。分生子形成細胞は腸芽球性で、鉢状で
、明確な形をとり、びん状〜逆さ洋なし状で、ガラス質で、滑らかで、5〜8x
4〜6μmで、捲縮輪付きであった。捲縮輪は鐘形ないし円筒形で、14〜18
x3〜5μmであった。分生子はガラス質で、円筒形で、薄肉で、無隔板性で、
滑らかで、14〜16(〜18)x2〜3μmであった。
増殖型菌糸は分離し、褐色で、滑らかで分岐していた。菌糸細胞は円筒形で、
2〜7μmの厚さがあった。厚膜胞子は無かった。
菌株F-11899は、ポテトデキストロース寒天培地上で、0ないし31℃の増殖
温度範囲および23ないし27℃の最適温度を有していた。
上記の特性は、菌株F-11899が、Coelomycetes属2),3),4)に属すことを示して
いる。したがって、我々は、この菌株を「Coelomycetes stra in F-11899」と命
名した。
表1 菌株F-11899の培養特性 略記法: G:増殖(コロニーの大きさを直径で測定)
S:コロニー表面
R:裏面
これらの特性は、25℃でのインキュベーションの14日後に観察された。色
表現は、メシュエン色ハンドブック5)に基づいた。
1) Miura,K.およびM.Y.Kudo:水性糸状菌類用の寒天培地,Trans.Ycolo.Soc
.Japan,11:116-118,1970.
2) Arx,J.A.von:菌類の属−純粋培養における胞子形成(第3版),315p.,J.
Cramer,Vaduz,1974.
3) Sutton,B.C.:Coelomycetes-粉子器を持つ不完全菌類、分生子堆と間質,6
96p.,Commonwealth Mycological Institute,Kew,1980.
4) Hawksworth,D.L.,B.C.SuttonおよびG.C.Ainsworth:菌類辞典(第7版
),445p.,Commonwealth Mycological Institute,Kew.,1983.
5) Kornerup,A.and Wanscher,J.H:メシュエン色ハンドブック(第3版),2
52p.,Methuen,London,1983.
このように命名されたCoelomycetes strain F-11899の培養株は、工業技術院
生命工学工業技術研究所(旧名:工業技術院微生物工業技術研究所)(日本、〒
305 茨城県つくば市東1丁目1−3)に、1989年10月26日、FERM B
P-2635として寄託された。
しかしながら、その後、我々は菌株F-11899の分類をさらに研究し、菌株F-118
99が、Coelomycetes属に属するColeophoma empetri(Rostrup)Petrak 19292),3 ),4)
に類似するが、いくつかの粉胞子器特性において異なる、すなわち基部で球
形または平たく、侵漬し、乳頭状ではないということを見い出した。
我々は、これらの特性を考慮し、この菌株をさらに細かく分類して、それを「
Coleophoma sp.F-11899」と改名した。
これに関連して、名前を「Coelomycetes strain F-11899」から「Coleophoma
sp.F-11899」に変更する処置を、工業技術院生命工学工業技術研究所(旧名:
工業技術院微生物工業技術研究所)にて、1990年9月21日に既に実施して
いる。
(ii)化合物[Ia]またはその塩の製造
この発明の化合物[Ia]またはその塩は、Coleophoma属に属する菌株を生成
する化合物[Ia]またはその塩が、ロイシンの存在下で好気条件(たとえば振
動する培養株、浸漬した培養株など)において、同化可能な炭素源および窒素源
を含む栄養培地内に増殖する場合に製造される。栄養培地に約0.05%〜5%
(より好ましくは約0.1%〜1%)のロイシンを含むことが望ましい。
栄養培地内の好ましい炭素源としては、炭水化物、たとえばブドウ糖、蔗糖、
澱粉、果糖またはグリセリンなどを挙げることができる。
好ましい窒素源としては、酵母エキス、ペプトン、グルテンミール、綿種子粉
、大豆ミール、トウモロコシ浸漬酒、乾燥酵母、小麦胚芽など、さらには無機ま
たは有機の窒素化合物、たとえばアンモニウム塩(たとえば硝酸アンモニウム、
硫
酸アンモニウム、燐酸アンモニウムなど)、尿素またはアミノ酸などを挙げるこ
とができる。
炭素源および窒素源は、組み合わせて都合よく用いられることもあるが、微量
の増殖因子およびかなりの量のミネラル栄養分を含んだ低純度物質もまた使用に
適するので、純粋な形で用いる必要はない。
所望するならば、培地に、炭酸ナトリウムまたはカルシウム、燐酸ナトリウム
またはカリウム、塩化ナトリウムまたはカリウム、ヨウ化ナトリウムまたはカリ
ウム、マグネシウム塩、銅塩、亜鉛塩またはコバルト塩などのミネラル塩を加え
てもよい。
必要に応じて、特に培地がひどく発泡する場合、流動パラフィン、脂肪油、植
物油、鉱油またはシリコーンなどの消泡剤を加えてもよい。
他の生物学的に活性な物質を大量に製造するために用いられる好ましい方法の
場合と同様、浸漬好気培養条件が、化合物[Ia]またはその塩の大量の製造に
は好ましい。
少量の製造には、フラスコまたはびん中の振盪培養または表面培養が用いられ
る。
さらに、増殖が大型タンク内で実施される場合、化合物[Ia]またはその塩
の製造工程における増殖の遅れを避けるために、製造タンク内の植菌には、生物
の栄養期のものを用いるのが好ましい。したがって、比較的少量の培地に生物の
胞子または菌糸体を植え、前記の植菌培地で培養して、生物の栄養期植菌物を最
初に生成し、次いで培養した栄養期植菌物を大型タンクに移すことが望ましい。
栄養期植菌物が生成される培地は、化合物[Ia]またはその塩の製造に用いら
れる培地と実質的に同じであるかまたは異なっている。
培養混合物の攪拌と通気は、種々の方法で実施してもよい。攪拌は、プロペラ
または同様の機械式攪拌装置により、発酵槽を回転または振盪することにより、
または種々のポンプ装置を用いることにより、または無菌空気を培地に通すこと
により実施してもよい。通気は無菌空気を発酵混合物に通すことにより行なって
もよい。
発酵は、発酵の条件および規模により変動することがあるが、通常、約10℃
〜40℃、好ましくは20℃〜30℃の温度で約50時間〜150時間実施する
。
発酵終了時に、化合物[Ia]またはその塩の回収のため、培養ブイヨンは、
生物学的に活性な物質の回収と精製に慣用的に用いられる種々の方法、たとえば
適当な溶媒またはいくつかの溶媒の混合物を用いる溶媒抽出、クロマトグラフィ
ー、または適当な溶媒またはいくつかの溶媒の混合物からの再結晶などに付され
る。
この発明では、一般的に、化合物[Ia]またはその塩は、培養菌糸体および
培養ブイヨンの両方に見い出せる。したがって、化合物[Ia]またはその塩は
、アセトンまたは酢酸エチルなどの適当な有機溶媒またはこれらの溶媒の混合物
などを用いて抽出によって全体のブイヨンから取り出される。
化合物[Ia]またはその塩を得るために、抽出物を慣用の方法で処理する。
たとえば、溶媒留去または蒸留により抽出物を濃縮して少量にし、活性物質を含
む生成残留物、すなわち化合物[Ia]またはその塩を慣用の精製方法、たとえ
ばクロマトグラフィー、または適当な溶媒またはいくつかの溶媒の混合物からの
再結晶によって精製する。
目的化合物を化合物[Ia]の塩として単離される場合、それは、慣用の方法
によってフリー化合物[Ia]または化合物[Ia]の他の塩に転換可能である
。製造法2
目的ポリペプチド化合物[Ib]またはその塩は、化合物[Ia]またはその
塩をN−アシル基の脱離反応に付すことによって製造することができる。
この反応は、加水分解、還元、酵素との反応などの慣用の方法によって行われ
る。
加水分解は、塩基またはルイス酸などの酸の存在下で行うのが好ましい。好適
な塩基としては、無機塩基および有機塩基、たとえばアルカリ金属[たとえばナ
トリウム、カリウムなど]、アルカリ土類金属[たとえばマグネシウム、カルシ
ウムなど]、それらの水酸化物、炭酸塩または重炭酸塩、トリアルキルアミン[
たとえばトリメチルアミン、トリエチルアミンなど]、ピコリン、1,5−ジア
ザビシクロ[4.3.0]ノン−5−エン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.
2]オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク−7−エンなど
を挙げることができる。
好適な酸としては、有機酸[たとえばギ酸、酢酸、プロピオン酸、トリクロロ
酢酸、トリフルオロ酢酸など]、および無機酸[たとえば塩酸、臭化水素酸、硫
酸、塩化水素、臭化水素など]を挙げることができる。トリハロ酢酸[たとえば
トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸など]などのルイス酸などを用いる脱離反応
は、カチオン捕捉剤[たとえばアニソール、フェノールなど]の存在下で行うの
が好ましい。
この反応は、通常、反応に悪影響を及ぼさない溶媒、たとえば水、アルコール
[たとえばメタノール、エタノールなど]、塩化メチレン、テトラヒドロフラン
、それらの混合物、または他の溶媒中で行われる。液体の塩基または酸も溶媒と
して使用できる。反応温度は特に限定されず、通常、冷却ないし加温下で行われ
る。
脱離反応に適用される還元方法としては、化学還元および触媒還元を挙げるこ
とができる。
化学還元に用いられる好適な還元剤としては、金属[たとえば錫、亜鉛、鉄な
ど]または金属化合物[たとえば塩化クロム、酢酸クロムなど]と有機酸または
無機酸[たとえばギ酸、酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸、p−トルエン
スルホン酸、塩酸、臭化水素酸など]との組合せを挙げることができる。
触媒還元に用いられる好適な触媒としては、白金触媒[たとえば白金板、白金
海綿、白金黒、コロイド白金、酸化白金、白金線など]、パラジウム触媒[たと
えばパラジウム海綿、パラジウム黒、酸化パラジウム、パラジウム炭、コロイド
パラジウム、パラジウム−硫酸バリウム、パラジウム−炭酸バリウムなど]、ニ
ッケル触媒[たとえば還元ニッケル、酸化ニッケル、ラネーニッケルなど]、コ
バルト触媒[たとえば還元コバルト、ラネーコバルトなど]、鉄触媒[たとえば
還元鉄、ラネー鉄など]、銅触媒[たとえば還元銅、ラネー銅、ウルマン銅など
]などの慣用のものを挙げることができる。
還元は、通常、反応に悪影響を及ぼさない慣用の溶媒、たとえば水、メタノー
ル、エタノール、プロパノール、N,N−ジメチルホルムアミド、またはそれら
の混合物中で行われる。さらに、化学還元で用いられる前記の酸が液体である場
合、それらもまた溶媒として使用できる。また、触媒還元で用いられる好適な溶
媒としては、上記の溶媒、さらにはジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒド
ロフランなどの他の慣用の溶媒、またはそれらの混合物を挙げることができる。
この還元の反応温度は特に限定されず、通常、冷却ないし加温下で行われる。
酵素を用いる反応は、化合物[Ia]またはその塩を、N−アシル基の脱離反
応に適した酵素と反応させることによって実施できる。
前記の酵素の好適な例としては、ある種の微生物、StreptomycesまたはActino
planaceae、たとえばStreptomyces sp.No.6907(FERM BP-5809)、Streptomyces
anulatus No.4811(FERM BP-5808)、Streptomyces anulatus No.8703(FERM BP-
5810)、Actinoplanes utahensis IFO-13244、Actinoplanes utahensis ATCC 123
01、Actinoplanes missenrienses NRRL 12053などによって生成される酵素;な
どを挙げることができる。
この脱離反応は、通常、反応に悪影響を及ぼさない溶媒、たとえば燐酸緩衝液
、トリス塩酸緩衝液、または他の溶媒中で行われる。
反応温度は特に限定されず、室温または加温下で行われる。製造法3
目的ポリペプチド化合物[Ic]またはその塩は、化合物[Ib]またはアミ
ノ基におけるその反応性誘導体またはその塩を化合物[II]またはカルボキシ
基におけるその反応性誘導体またはその塩と反応させることによって製造するこ
とができる。
化合物[II]のカルボキシ基における好適な反応性誘導体としては、酸ハロ
ゲン化物、酸無水物、活性アミド、活性エステルなどを挙げることができる。反
応性誘導体の好適な例としては、酸塩化物;酸アジ化物;置換された燐酸[たと
えばジアルキル燐酸、フェニル燐酸、ジフェニル燐酸、ジベンジル燐酸、ハロゲ
ン化燐酸など]、ジアルキル亜燐酸、亜硫酸、チオ硫酸、硫酸、スルホン酸[た
とえばメタンスルホン酸など]、脂肪族カルボン酸[たとえば酢酸、プロピオン
酸、酪酸、イソ酪酸、ピバル酸、ペンタン酸、イソペンタン酸、2−エチル酪酸
、トリクロロ酢酸など]などの酸との混合酸無水物;芳香族カルボン酸[たとえ
ば
安息香酸など];対称酸無水物;イミダゾール、4−置換イミダゾール、ジメチ
ルピラゾール、トリアゾール、テトラゾールまたは1−ヒドロキシ−1H−ベン
ゾトリアゾールとの活性アミド;または活性エステル[たとえばシアノメチルエ
H]−エステル、ビニルエステル、プロパルギルエステル、p−ニトロフェニル
エステル、2,4−ジニトロフェニルエステル、トリクロロフェニルエステル、
ペンタクロロフェニルエステル、メシルフェニルエステル、フェニルアゾフェニ
ルエステル、フェニルチオエステル、p−ニトロフェニルチオエステル、p−ク
レジルチオエステル、カルボキシメチルチオエステル、ピラニルエステル、ピリ
ジルエステル、ピペリジルエステル、8−キノリルチオエステルなど];または
N−ヒドロキシ化合物[たとえばN,N−ジメチルヒドロキシルアミン、1−ヒ
ドロキシ−1−(1H)−ピリドン、N−ヒドロキシスクシンイミド、N−ヒド
ロキシフタルイミド、1−ヒドロキシ−1H−ベンゾトリアゾールなど]とのエ
ステル;などを挙げることができる。これらの反応性誘導体は、使用する化合物
[II]の種類に応じて任意に選択できる。
化合物[II]およびその反応性誘導体の好適な塩としては、目的ポリペプチ
ド化合物[I]で示したのと同じものを挙げることができる。
この反応は、通常、反応に悪影響を及ぼさない慣用の溶媒、たとえば水、アル
コール[たとえばメタノール、エタノールなど]、アセトン、ジオキサン、アセ
トニトリル、クロロホルム、塩化メチレン、塩化エチレン、テトラヒドロフラン
、酢酸エチル、N,N−ジメチルホルムアミド、ピリジンまたは他の有機溶媒中
で行われる。これらの慣用の溶媒を水と混合して用いてもよい。
この反応において、化合物[II]が遊離酸またはその塩の形態で使用される
場合、この反応は慣用の縮合剤の存在下で行われることが好ましく、縮合剤の例
としては、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド;N−シクロヘキシル−
N’−モルホリノエチルカルボジイミド;N−シクロヘキシル−N’−(4−ジ
エチルアミノシクロヘキシル)カルボジイミド;N,N’−ジエチルカルボジイ
ミド;N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド;N−エチル−N’−(3−ジ
メチルアミノプロピル)カルボジイミド;N,N’−カルボニルビス(2−メチ
ルイミダゾール);ペンタメチレンケテン−N−シクロヘキシルイミン;ジフェ
ニルケテン−N−シクロヘキシルイミン;エトキシアセチレン;1−アルコキシ
−2−クロロエチレン;トリアルキルホスファイト;ポリ燐酸エチル、ポリ燐酸
イソプロピル;オキシ塩化燐(塩化ホスホリル);三塩化燐;塩化チオニル;塩
化オキサリル;クロロ蟻酸低級アルキル[たとえばクロロ蟻酸エチル、クロロ蟻
酸イソプロピルなど];亜燐酸トリフェニル;2−エチル−7−ヒドロキシベン
ズイソオキサゾリウム塩;2−エチル−5−(m−スルホフェニル)イソオキサ
ゾリウム水酸化物分子内塩;1−(p−クロロベンゼンスルホニルオキシ)−6
−クロロ−1H−ベンゾトリアゾール;N,N−ジメチルホルムアミドを塩化チ
オニル、ホスゲン、クロロ蟻酸トリクロロメチル、オキシ塩化燐、塩化メタンス
ルホニルなどと反応させて調製されるいわゆるビルスマイヤー試薬;などを挙げ
ることができる。
この反応は、無機または有機の塩基、たとえばアルカリ金属炭酸塩、アルカリ
金属重炭酸塩、トリ(低級)アルキルアミン、ピリジン、ジ(低級)アルキルア
ミノピリジン(たとえば4−ジメチルアミノピリジンなど)、N−(低級)アル
キルモルホリン、N,N−ジ(低級)アルキルベンジルアミンなどの存在下で行
われてもよい。
反応温度は特に限定されず、通常、冷却ないし加温下で行われる。
上記の製造法1ないし3によって得られた化合物は、粉砕、再結晶、カラムク
ロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、再沈殿などの慣
用の方法で分離し、精製することができる。
上記の製造法1ないし3によって得られた化合物は、その水和物として得られ
ることもあり、その水和物もまたこの発明の範囲に含まれる。
目的ポリペプチド化合物[I]の各々には、不斉炭素原子および二重結合に基
づく光学異性体および幾何異性体などの立体異性体が1個またはそれ以上存在す
ることがあるが、これらのすべての異性体およびそれらの混合物もまたこの発明
の範囲に含まれる。この発明のポリペプチド化合物[I]の生物学的特性
この発明のポリペプチド化合物[I]の有用性を示すために、代表的化合物の
生物学的データを以下に示す。試験
(抗菌活性)試験化合物
:実施例1の目的化合物試験方法 実施例1の目的化合物の抗菌活性を、カンジダアルビカンス(Candida albic
ans)用の100μlのMEM(イーグルの最少必須培地)、およびアスペルギル スフミガーツス
(Aspergillus fumigatus)とクリプトコックスネオフォルマンス(
Cryptococcus neoformans)の両方用の100μlの酵母窒素系デキストロース培
地内で、96穴の微量定量プレートを用いて段階的ブイヨン希釈法により測定し
た。植菌を1x105コロニー形成単位/mlに調整した。5%CO2インキュベ
ーター内でカンジダアルビカンスとアスペルギルスフミガーツスを37℃で24
時間培養し、クリプトコックスネオフォルマンスを37℃で48時間培養した。
インキュベーション後、各穴内の微生物の増殖阻害を顕微鏡観察により確認した
。結果をMEC(最小有効濃度:μg/ml)値(表2)として示した。試験結果
表2
試験結果から、この発明の目的ポリペプチド化合物[I]が抗菌活性(特に抗
真菌活性)を有していることが認められる。
この発明の医薬組成物は、目的ポリペプチド化合物[I]または医薬として許
容されるその塩を、前記化合物を有効成分として、経腸;経肺(鼻または口腔吸
入);経眼;外用(局所塗布);経口投与;非経口投与(皮下、静脈内および筋
肉内を含む);吸入(計量式用量吸入器からのエアゾールを含む);噴霧;また
は乾燥粉末吸入に適した有機または無機の担体または賦形剤と共に含有する医薬
製剤の形態、たとえば固体、半固体または液体の形態で用いることができる。
前記有効成分を、たとえば、顆粒、錠剤、糖剤、ペレット剤、トローチ、カプ
セル剤または坐剤などの固形状;軟膏;エアゾール;吸入用粉末;液剤、乳剤ま
たは懸濁剤などの注射用の液状形態;経口摂取;点眼剤;および用途に適した他
の形態の常用の無毒の医薬として許容される担体と共に調合してもよい。必要な
らば、上記製剤に、安定化剤、増粘剤、湿潤剤、乳化剤および着色剤などの補助
剤;香料または緩衝剤;またはその他の常用添加剤を配合してもよい。
目的ポリペプチド化合物[I]または医薬として許容されるその塩は、疾患の
経過または症状に所望の抗菌効果をもたらすに十分な量が前記医薬組成物に含有
される。
前記組成物のヒトへの適用には、静脈内、筋肉内、経肺、経口投与、または吸
入によって適用するのが好ましい。目的ポリペプチド化合物[I]の治療有効用
量は、治療を受ける個々の患者の年令および症状により変化し、それらにも依存
するが、一般的に、静脈内投与の場合、ヒトの体重1kgにつき1日当たり目的
ポリペプチド化合物[I]の0.01〜20mgの範囲の量を、筋肉内投与の場
合、ヒトの体重1kgにつき1日当たり目的ポリペプチド化合物[I]の0.1
〜20mgの範囲の量を、経口投与の場合、ヒトの体重1kgにつき1日当たり
目的ポリペプチド化合物[I]の0.5〜50mgの範囲の量を感染症の治療ま
たは予防に用いればよい。
特にニューモシスティスカリニ感染症の治療または予防の場合には、下記のこ
とに注意すべきである。
吸入投与の場合、この発明の化合物は、製剤可能な粉末として加圧されてエア
ゾール噴霧方式で好都合に送出されるので、この粉末組成物を吸入粉末吸入器を
用いて吸入してもよい。吸入用の好ましい送出方式は計量式用量吸入エアゾール
方式であって、このエアゾールを、フルオロカーボンまたは炭化水素などの好適
な噴射剤中の化合物の懸濁剤または溶液として製剤してもよい。
肺および気管支を直接治療するのが望ましいので、エアゾール投与は好ましい
投与方法である。特に感染が耳および他の体腔に拡散しているような場合には、
吸入も望ましい方法である。
また、非経口投与を点滴静脈内投与を用いて実施してもよい。
以下の実施例は、この発明をさらに詳しく説明するために示したものである。実施例1
(1)発酵
蔗糖4%、綿種子粉2%、大豆粉2%、KH2PO41.6%およびCaCO3
0.2%を含む水性種培地(30ml)を100mlのエルレンマイヤーフラス
コに注ぎ、120℃で30分間滅菌した。斜面培養からフラスコにCeleophoma s
p.F-11899の一白金耳を植菌した。フラスコを回転振盪器(220rpm、5.
1cm振り)により25℃で7日間振盪し、6個の500mlのエルレンマイヤ
ーフラスコの各々に、160mlの同一滅菌種培地に2%の割合で移した。フラ
スコを回転振盪器(220rpm、5.1cm振り)により25℃で5日間振盪
した。生じた種培地を、30lのジャーファーメンター中にコーンミール4%、
ブドウ糖1%、小麦胚芽0.5%、綿種子粉1.25%、グルテンミール0.2
5%、(NH4)2SO40.6%、KH2PO41.6%、Na2HPO4・12H2
O1.6%、Zn(SO4)2・7H2O0.001%、ロイシン0.5%、アデ
カノールLG−109(消泡剤、旭電化株式会社)0.05%とシリコーンKM
−70(消泡剤、信越化学株式会社)0.05%を含む20lの滅菌生産培地に
植菌した。20l/minの通気下に250rpmで攪拌しながら25℃で6日
間発酵させた。
発酵ブイヨン中の活性化合物の生成をHPLC分析によって監視した。
(2)分離
培養ブイヨン(16.5l)を間欠混合によって16.5lのアセトンで抽出し
た。アセトン抽出物を珪藻土で濾過し、真空中で18lに濃縮した。濃縮物をダ
イヤイオンHP−20(三菱化学株式会社)のカラム(1.5l)に通した。カ
ラムを水と30%メタノール水溶液で洗浄し、メタノールと、0.2%のNaH2
PO4・2H2Oを含む60%アセトニトリル水溶液で溶離した。13lの水を溶
離物(8l)に加え、YMCゲル(ODS−AM120−S50、YMC株式会
社)のカラム(2l)に通した。カラムを、0.3%のNaH2PO4・2H2Oを
含む40%アセトニトリル水溶液で展開した。活性画分(1.38l)に460
mlの0.5%NaH2PO4・2H2O溶液を加え、YMCゲル(2l)で再度ク
ロマトグラフィーに付し、これを同じ溶媒で展開した。目的化合物
(1)を含む画分(900ml)を集め、真空中で690mlに濃縮した。この
溶液を、0.3%のNaH2PO4・2H2Oを含む40%アセトニトリル水溶液
を移動相として9.9ml/minの流速で分取HPLC、YMCパックカラム
(ODS−AM、SH−343−5AM、S−5、250X20mm内径)に付
した。活性画分(310ml)を真空中で250mlに濃縮し、上記と同一条件
で分取HPLCによるカラムクロマトグラフィーに再度付した。各画分(261
ml)を合わせ、真空中で水溶液に濃縮した。この溶液をダイヤイオンHP−2
0のカラム(30ml)に通した。カラムを水で洗浄し、80%メタノール水溶
液で溶離した。水溶液に濃縮後、溶離物を凍結乾燥して53.2mgの目的化合
物を白色粉末として得た。
(HPLC条件)
カラム : ODS-AM303(YMC,250X4.6mm内径)
溶離溶媒: 50%アセトニトリル水溶液、
0.25% NaH2PO4・2H2O
流速 : 1ml/min.
検出 : 210nmにおけるUV
滞留時間: 8.4min.
得られた目的化合物(1)は下記の物理化学的性質を有する。
外観:
白色粉末
性状:
酸性物質
融点:
165-170℃(分解)
比旋光度:
分子式:
C50H79N8O21SNa
元素分析: C50H79N8O21SNa・6H2O
計算値: C46.51,H7.10,N8.68,S2.48(%)
実測値: C46.25,H7.40,N8.86,S2.14(%)
分子量:
ESI-MS(m/z)=1161(M++1)
溶解度:
可溶: メタノール、水
わずかに可溶: 酢酸エチル、アセトン
不溶: クロロホルム
呈色反応:
正: ヨウ素蒸気反応、硫酸セリウム反応
負: ドラーゲンドルフ反応、モーリッシュ反応
薄層クロマトグラフィー(TLC): *シリカゲル60F254プレート(E.Merck製)
紫外吸収スペクトル:
赤外吸収スペクトル:
上記の物理化学的性質の分析から、またさらなる化学構造確認調査の結果、目
的化合物(1)の化学構造を確認し、下記のように定めた。
実施例2
(1)Actinoplanes utahensisの発酵
Actinoplanes utahensis IFO-13244の保存培養を調製し、寒天斜面に保持した
。斜面培養の一白金耳を、澱粉1%、蔗糖1%、ブドウ糖1%、綿種子粉1%、
ペプトン0.5%、大豆ミール0.5%およびCaCO30.1%からなる種培
地に植菌した。植菌された栄養培地を、回転振盪器を用いて、225mlの広口
エルレンマイヤーフラスコ内に30℃で約72時間インキュベートした。
このインキュベートした栄養培地を直接用いて、蔗糖2%、落花生粉末1%、
K2HPO40.12%、KH2PO40.05%とMgSO4・7H2O0.025
%からなる生産培地(20l)に植菌した。植菌された生産培地を30℃で約8
0時間30lのジャーファーメンター内で発酵させた。発酵培地を慣用の攪拌器
を用いて250rpmで攪拌し、毎分20lで通気した。増殖菌糸を濾過により
発酵ブイヨンから集め、水で一度洗浄した。洗浄した菌糸は目的化合物(2)を
得るため、直接用いられた。
(2)反応条件
目的化合物(1)(10g)の水(1000ml)中の溶液に、250mlの
1M燐酸ナトリウム緩衝液(pH5.8)、1000mlの水と上記の発酵によ
って得られた湿潤質量250gのActinoplanes utahensis IFO-13244の洗浄菌糸
を加えた。50℃で3時間攪拌しながら反応させた。下記の分析HPLCによっ
て、目的化合物(2)の増加を確認した。
10gの目的化合物(1)から、6.8gの目的化合物(2)を反応混合物中
に生成した。
(HPLC条件)
カラム : YMCパックODS-AM AM303,S-5 120A
(250mmL.x4.6mm内径,YMC株式会社)
溶離溶媒: 3%アセトニトリル水溶液、
0.5%NaH2PO4・2H2O
流速 : 1ml/min.
検出 : 210nmにおけるUV
滞留時間: 6.1min.
得られた目的化合物(2)は下記の物理化学的性質を有する。
外観:
白色粉末
融点:
150-155℃
比旋光度:
分子式:
C34H50N8O20S
分子量:
ESI-MS(m/z)=923(M++1)
溶解度:
可溶: 水
わずかに可溶: メタノール
不溶: 酢酸エチル、n−ヘキサン
呈色反応:
正: ヨウ素蒸気反応、硫酸セリウム反応、ニンヒドリン
負: FeCl3、モーリッシュ反応
薄層クロマトグラフィー(TLC):
*シリカゲル60F254プレート(E.Merck製)
赤外吸収スペクトル:
上記の物理化学的性質の分析から、またさらなる化学構造確認調査の結果、目
的化合物(2)の化学構造を確認し、下記のように定めた。
下記の実施例3ないし8における出発化合物、および下記の実施例3ないし8
における目的化合物(3)ないし(8)は下記の化学式で表される。
出発化合物
(実施例3ないし8におけるものと同一)目的化合物(3)ないし(8)
下記の実施例において、目的化合物(X)[たとえば目的化合物(3)]は実 施例(X)
[たとえば実施例(3)]の目的化合物を意味する。 実施施3
出発化合物(150mg)と4−[4−(4−ヘキシルオキシフェニル)ピペ
ラジン−1−イル]安息香酸ベンゾトリアゾール−1−イル−エステル(81m
g)のN,N−ジメチルホルムアミド(3.5ml)中の溶液に、ジイソプロピ
ルエチルアミン(0.032ml)を加え、室温で4時間攪拌した。反応混合物
を酢酸エチルで粉砕した。沈殿物を濾過により集め、減圧下で乾燥した。粉末を
水に溶解し、水を溶離溶媒とするイオン交換樹脂(DOWEX−50WX4(商
標:ダウケミカル製))カラムクロマトグラフィーに付した。目的化合物を含む
画分を合わせ、20%アセトニトリル水溶液を溶離溶媒とするODS(YMCゲ
ル、ODS−AM、S−50(商標:山村化学研究所製))カラムクロマトグラ
フィーに付した。目的化合物を含む画分を合わせ、減圧下でアセトニトリルを留
去した。残留物を凍結乾燥して、目的化合物(3)を得た。
下記の目的化合物(4)ないし(8)を実施例3と同様にして得た。実施例4 実施例5 実施例6 実施例7 実施例8
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(51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考)
C12R 1:645)
(72)発明者 橋本 正治
茨城県つくば市大角豆1194―1
(72)発明者 白石 宜之
兵庫県西宮市熊野町4―20―607
(72)発明者 大木 秀徳
兵庫県宝塚市山本南3―1―28―705
(72)発明者 川端 浩二
兵庫県川西市丸山台2―5―30