JP2001500526A - 粘液溶解剤としての2−メチル−チアゾリジン−2,4−ジカルボン酸の使用 - Google Patents
粘液溶解剤としての2−メチル−チアゾリジン−2,4−ジカルボン酸の使用Info
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Abstract
(57)【要約】
本発明は、粘液溶解剤としての2−メチル−チアゾリジン−2,4−ジカルボン酸及び/又はその生理的に許容される塩の使用に関する。
Description
【発明の詳細な説明】
粘液溶解剤としての2−メチル−チアゾリジン−2,4−ジカルボン酸の使用
本発明は、粘液溶解剤としての2−メチル−チアゾリジン−2,4−ジカルボ
ン酸及び/又はその生理学的に許容される塩に関する。ドイツにおいては、N−
アセチルシステイン及び2−メルカプトエタンスルホネートが粘液溶解剤として
用いられており、N−アセチルシステインが最も一般的な粘液溶解剤である。医
学的適応は、粘液、例えば急性及び慢性気管支炎、気管支拡張症、ぜん息性気管
支炎、気管支喘息、細気管支炎、及びムコビシド−シスの激しい分泌を伴う呼吸
管の病気を含む。
求核性N−アセチルシステインの粘液溶解作用に関して2つのメカニズムが議
論されている。一方は、L−システインが遊離され得ることで、他方は、変化し
ていない物質の遊離スルフヒドリル基がムコタンパク質のジスルフィド結合を分
裂させることがあり得ることである。結果は、粘液構成物が分画されることであ
り、それは、粘性の減少及び粘液の排出の改善のために前もって必要とされる。
少量のL−システインは加水分解により遊離され、その大部分は、例えば肝細
胞の細胞質において検出されるアミノ酸N−デアシラーゼにより遊離される(Wl
odek,L.,Rommelspacher,H.,Susilo,R.,Radomski,J.及びHefle,G.,Bio
chem.Pharmacol.46:917〜928(1993))。
N−アセチルシステインは低毒性医薬品であると一般に受け入れられている。
しかしながら、いくつかのわずかに知られる報告は、N−アセチルシステインが
有する毒性の危険性が過小評価されてい
るという事実を指摘する(Estrela,J.M.,Saez,G.T.,Such,L.and Vina,J.
,Biochem.Pharmacol.32:3483-3485(1983),and Vina,J.,Romero,F.J.,Sae
z,G.T.and Pallardo,F.V.,Experientia 39:164-165(1983))。研究者らは、
N−アセチルシステインが毒性応答を誘発し得るという事実のため、代わりのも
のを見い出そうとくり返し試みた。L−システイン自体を適用することは絶対的
に不適当である。なぜならこのアミノ酸は極めて毒性であり、脳細胞を殺すから
である(Karlsen,R.L.,Grofova,Y.,Malthe-Sorensen,D.and Farnum,E.,
Exp.Brain.Res.208:167-180(1981))。この毒性は、いわゆるプロドラッグ、即
ち有効なアミノ酸が体内の制御された方法で放出される祖先医薬品を適用するな
ら回避することができる。
カルボニル含有物質のL−システインとのチアゾリジンへの縮合は以前に開示
されている(Susilo,R.,Rommelspacher,F.及びHoefle,G.,J.Neurochem.5
2:1793-1800(1989))。この文脈において、前記チアゾリジンは、必要に応じてア
ミノ酸が遊離されるL−システインリザーバーを形成することが重要である。簡
単な構造のチアゾリジンの例は、ホルムアルデヒド及びL−システインの縮合産
物である。しかしながら、この基質の代謝物は神経毒性であることが判明してい
る。アセトアルデヒド及びL−システインの縮合産物は祖先医薬として適してい
ない。なぜなら、それは、生理条件下で容易にその成分に分解されるからである
(Wlodek,L.,Rommelspacher,H.,Susilo,R.,Radomski,J.及びHefle,G.
,Biochem.Pharmacol.46:917〜928(1993))。
本発明の問題は、粘液の激しい分泌を伴う呼吸管の病気を治療するのに適した
粘液溶解剤として機能し、現在の当該技術分野の水準で用いられる物質より副作
用の少い生理的に十分に許容される物質
を供することである。
この問題は、粘液溶解剤として2−メチル−チアゾリジン−2,4−ジカルボ
ン酸及び/又はその生理的に許容される塩を用いることにより、本発明により解
決される。
驚くことに、2−メチル−チアゾリジン−2,4−ジカルボン酸又はその生理
的に許容される塩が粘液溶解剤であることが見い出された。
2−メチル−チアゾリジン−2,4−ジカルボン酸の合成、その肝臓保護剤と
しての使用、及び2−メチル−チアゾリジン−2,4−ジカルボン酸を含むロゼ
ンジ又は軟膏の形態におけるその医薬の製造はDE-OS 21 16 629から周知である
。2−メチル−チアゾリジン−2,4−ジカルボン酸及びその生理的に許容され
る塩の粘膜溶解特性についてはまだ何も知られていない。
激しい粘液の分泌を伴う呼吸管の病気を治療するために2−メチル−チアゾリ
ジン−2,4−ジカルボン酸及び/又はその生理的に許容される塩を用いること
が好ましい。
粘液の激しい分泌を伴う呼吸管の病気、例えば急性及び慢性気管支炎、気管支
拡張症、ぜん息性気管支炎、気管支喘息、細気管支炎、及びムコビシド−シスの
場合に特に好ましく用いられる。
2−メチル−チアゾリジン−2,4−ジカルボン酸は、驚くことに、気管支の
粘液の粘度を減少させる。粘液が比較的低粘度である場合には、等モル濃度の2
−メチル−チアゾリジン−2,4−ジカルボン酸及びN−アセチルシステインは
同様の効能を示す。先の研究はリン酸緩衝液中で行われたが、チアゾリジン誘導
体のSH基は特に細胞質及び膜結合酵素により活性化される(Susilo,R.,Rommel
spacher,F.及びHoefle,G.,J.Neurochem.52:1793-1800(1989)並びにWlode
k,L.,Rommelspacher,H.,Susilo,R.,Radomski,
J.及びHefle,G.,Biochem.Pharmacol.46:917-928(1993))ので、2−メチル
−チアゾリジン−2,4−ジカルボン酸の粘液溶解活性は生体内で更により激し
いと仮定することができる。
更に、驚くことに、2−メチル−チアゾリジン−2,4−ジカルボン酸は、生
物内でフリーラジカルの形成を減少させ、スルフヒドリル基の濃度を増加させる
ことが見い出された。これにより、この化合物は、細胞保護、及び抗炎症効果を
有する。それゆえ、この物質は、今まで知られている全ての化合物、例えばN−
アセチルシステインより明らかに優れている。2−メチル−チアゾリジン−2,
4−ジカルボン酸を粘液溶解剤として用いることは、N−アセチルシステインか
ら知られている毒性の副作用をかなり減少させることができる。
完全に無害な生理物質であるピルベートは、L−システインが2−メチル−チ
アゾリジン−2,4−ジカルボン酸から遊離される時に副産物として形成される
。それゆえ、N−アセチルシステインと異なり、2−メチル−チアゾリジン−2
,4−ジカルボン酸は極めて十分に許容される。ピルベートが保護効果を有する
という示唆さえある(Rastellini,C.,Cicalese,L.,Zeevi,A.,Mattes,C.,
Stauko,R.T.,Starzl,T.E.and Rao,A.S.,Transplant.Proceed.27:3383-33
84(1995))。ピルベートは、グルコースから生理学的に形成され、細胞のエネル
ギーを生産するためのトリカルボン酸サイクルに必要である。それゆえ、体の細
胞内又は気管支内のL−システインのゆっくりとした酵素による遊離は、N−ア
セチルシステインと比べてより持続的効能についての希望を生ずるであろう遅延
効果を有する。
本発明に従って用いられる2−メチル−チアゾリジン−2,4−ジカルボン酸
の塩は、2−メチル−チアゾリジン−2,4−ジカル
ボン酸を各々の塩基と反応させることにより、一般に周知の方法で生産される。
本発明の別の対象は、一般的な基質及び希釈剤に加えて、粘液溶解剤として2
−メチル−チアゾリジン−2,4−ジカルボン酸及び/又はその生理的に許容さ
れる塩を含む医薬である。本発明の医薬は、経口、直腸、皮下、静脈内又は筋内
投与のため、又は吸入のためにデザインすることができる。
本発明の医薬は、一般的な固体又は液体基質又は希釈剤及び医薬品工学の通常
用いられるアジュバントを用いて一般に知られている方法において作られ、ここ
でそれらの投与量は意図した適用による。好ましい調製物は経口投与又は吸入(
インハレーション)に適した適用の形態である。このような適用の形態には、錠
剤、フィルム錠剤、ロゼンジ、カプセル、丸剤、粉末、溶液もしくは懸濁液、デ
ポ−システム、又は吸入用の溶液がある。
注入溶液のような非経口調製物ももちろん考慮される。他の適切な調製物の例
は坐剤である。
各々の錠剤は、例えば活性成分を、周知のアジュバント、例えば不活性希釈剤
、例えばデキストロース、糖、ソルビトール、マンニット、ポリビニルピロリド
ン、ブラスティング剤、例えばコーンスターチ又はアルギン酸、結合剤、例えば
デンプン又はゼラチン、滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム又はタルク及び
/又はデポ−効果を作るための剤、例えばカルボキシルポリメチレン、カルボキ
シメチルセルロース、セルロースアセテートフタレート、又はポリビニルアセテ
ートと混合することにより作ることができる。錠剤は、多層からなってもよい。
従って、ロゼンジは、錠剤と同様の方法で作られたコアを、ロゼンジコーティ
ングに典型的に用いられる剤、例えばポリビニルピロ
リドン又はシェラック、アラビアガム、タルク、二酸化チタン、又は糖でコーテ
ィングすることによって作ることができる。ロゼンジコーティングは、多層から
なってもよく、錠剤について上述されるアジュバントを更に用いることができる
。
本発明の活性剤を伴う溶液又は懸濁液は、甘味剤、例えばサッカリン、シクラ
メート又は糖及び芳香化剤、例えばバニリン又はオレンジ抽出液を更に含んでも
よい。それらは、懸濁剤、例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース又は防
腐剤、例えばp−ヒドロキシベンゾエートを更に含んでもよい。活性成分を含む
カプセルは、例えば活性剤を、不活性担体、例えばラクトース又はソルビトール
と混合して、それをゼラチンカプセルにつめることにより、作ることができる。
適切な坐剤は、例えば各々の基質、例えば中性脂肪もしくはポリエチレングリ
コール又はそれらの誘導体と混合することにより作ることができる。
以下の例は、本発明をより詳細に説明するであろう。実施例1:
2−メチル−チアゾリジン−2,4−ジカルボン酸の粘液溶解活性
2−メチル−チアゾリジン−2,4−ジカルボン酸を、Schubertにより開発さ
れた周知の方法(Schubert,M.P.,J.Biol.Chem.114:341〜350(1936))を用いて
合成した。
14の患者のサンプルをテストした。医学的診断は次の通りであった:
−嚢胞性繊維症(n=5)
−気管支拡張症(n=2)
−慢性痙性気管支炎(n=7)
14の患者のうちの7人にN−アセチルシステインを与えた。これらの患者で粘
液サンプルをとる前に5時間の待ち時間を観察した。サンプルの粘性はかなり種
々であったので、アリコートの粘度を予備テストで測定し、そのサンプルを1秒
当り40のせん断速度で100mPa*s未満であるような範囲まで希釈した。サンプルの
最終濃度は最初の値の60%〜80%の間であった。
用いた粘度計はRheoStress 100測定システム(Haake,Karlsruhe)であった。
タイプC60/1の測定コーンを用いた;それらは1度の角度及び30mmの半径を有
する。
ちょうど1人のサンプルを用いてテストを時々行い、時々6までの応答者のサ
ンプルを組み合わせた。各人のアリコートは、溶融(リン酸ナトリウム緩衝液、
50mM、pH 7.0;対照サンプル)と、又は15mMもしくは30mM 2−メチル−チアゾ
リジン−2,4−ジカルボン酸と、又は15mMもしくは30mM N−アセチルシステ
イン(標準基質)と混合した。冷却したサンプルを注意深く振とうして37℃で15
分、水浴中でインキュベートした。次に粘度を粘度計を用いて測定した。
測定の結果を表1に列記し、図1〜5に示す。
表1:気管支粘膜の粘度への粘液溶解剤の効果
サンプル 粘液溶解 粘度 サンプル 粘液溶解 粘度
剤濃度 剤濃度
(mM) (mPa*s) (mM) (mPa*s)
KO-1 0 150.3 KO-2 0 11.0
CP-1 15 134.0 CP-2 15 6.7
CP-1 30 108.2 CP-2 30 8.1
NAC-1 15 71.2 NAC-2 15 7.1
NAC-1 30 86.0 NAC-2 30 8.8
6人の患者からとったサンプルを、サンプル番号1について組み
合わせた。それらの値は各々6(対照)又は4回の測定の平均値である。テスト
物質で得たサンプルは、全般的に、対照サンプルより低い粘度である(p<0.01
)。サンプル番号2は一人の患者からとった。
KO:対照サンプル
CP:2−メチル−チアゾリジン−2,4−ジカルボン酸
NAC:N−アセチルシステイン
図1〜5は、せん断速度をx軸にとり、粘度をy軸にとった図を示す。対照サ
ンプルについての値(図1)は、平均、150mPa*s(n=6;4つのサンプルだけ
をここで示す)である。15mMのCPは粘度を大きく減少させた(図2;134mPa*s)。
この結果は、30mM(7)CPを加えた時により明白になる(図3;108mPa*s)。N−ア
セチルシステインの等モル濃度の効果がより顕著である:各々71又は86mPa*s(図
4及び5)。最大の効果は、15mMのN−アセチルシステイン程度の低い濃度から
得られると結論づけることができる。粘液溶解剤の効能は、明らかに、強く、サ
ンプルの最初の粘度に依存する。かなり低い粘度(11mPa*s)の別のサンプルを用
いて、15mMのN−アセチルシステインが粘度を7.1mPa*sに減少させ、30mMのN−
アセチルシステインが粘度を8.8mPa*sに減少させることが見い出された(表1)
。これは、15mMのN−アセチルシステインが既に最大の効果を有するであろうこ
との別のサンプルでの発見を確認する。興味あることに、15mMのチアゾリジン誘
導体が同様の粘度の減少を引きおこすこと(6.7mPa*s)、及びこの効果が濃度を2
倍にすることにより増強され得なかったこと(30mM;8.1mPa*s)が観察された。
図面の簡単な記載
図1:
4つの対照サンプルの粘度(KO3〜KO6)。せん断速度(γ)をx軸にとり、
粘度(η)をy軸にとる。
図2:
15mMの濃度の2−メチル−チアゾリジン−2,4−ジカルボン酸(CP)を含む
図1と同じプールからの4つのサンプル(CP75,CP75A,CP75B、及びCP75C)の
粘度。せん断速度(γ)をx軸にとり、粘度(η)をy軸にとる。
図3:
30mMの濃度の2−メチル−チアゾリジン−2,4−ジカルボン酸(CP)を含む
図1と同じプールからの4つのサンプル(CP150,CP150A,CP150B、及びCP150C)
の粘度。せん断速度(γ)をx軸にとり、粘度(η)をy軸にとる。
図4:
15mMの濃度のN−アセチルシステイン(NAC)を含む図1と同じプールからの4
つのサンプル(NAC75,NAC75A,NAC75B、及びNAC75C)の粘度。せん断速度(γ)
をx軸にとり、粘度(η)をy軸にとる。
図5:
30mMの濃度のN−アセチルシステイン(NAC)を含む図1と同じプールからの4
つのサンプル(NAC150,NAC150A,NAC150B、及びNAC150C)の粘度。せん断速度
(γ)をx軸にとり、粘度(η)をy軸にとる。
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フロントページの続き
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Claims (1)
- 【特許請求の範囲】 1.2−メチル−チアゾリジン−2,4−ジカルボン酸及び/又はその生理的 に許容される塩の粘液溶解剤としての使用。 2.粘液の激しい分泌を伴う呼吸管の病気を治療するための2−メチル−チア ゾリジン−2,4−ジカルボン酸及び/又はその生理的に許容される塩の使用。 3.急性及び慢性気管支炎、気管支拡張症、ぜん息性気管支炎、気管支喘息、 細気管支炎、及びムコビシド−シスの治療のための請求項1又は2に記載の2− メチル−チアゾリジン−2,4−ジカルボン酸及び/又はその生理的に許容され る塩の使用。 4.粘液の激しい分泌を伴う呼吸管の病気を治療するための医薬であって、一 般的な基質及び/又はアジュバントを任意に加えた、2−メチル−チアゾリジン −2,4−ジカルボン酸及び/又はその生理的に許容される塩を含むことを特徴 とする医薬。
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