JP2001337077A - コンクリート構造物の剥離の非破壊検査方法 - Google Patents

コンクリート構造物の剥離の非破壊検査方法

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JP2001337077A
JP2001337077A JP2000160526A JP2000160526A JP2001337077A JP 2001337077 A JP2001337077 A JP 2001337077A JP 2000160526 A JP2000160526 A JP 2000160526A JP 2000160526 A JP2000160526 A JP 2000160526A JP 2001337077 A JP2001337077 A JP 2001337077A
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exfoliation
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 小石や鉄筋等の骨材を含むコンクリート構造
物中に発生している剥離を超音波を用いて短時間で高精
度に検出することができるコンクリート構造物の剥離の
非破壊検査方法を提供する。 【解決手段】 衝撃力発生手段13を用いてコンクリー
ト構造物11の表面に衝撃力を与えてコンクリート構造
物11の表面と剥離の間に定在波を発生する第1工程
と、発生した定在波によるコンクリート構造物11の弾
性振動をコンクリート構造物11の表面に取付けた超音
波探触子14により検出する第2工程と、汎用の周波数
分析法あるいは所定個数の定在波を状態変数とみた最尤
法を用いてコンクリート構造物11の剥離の位置を求め
る第3工程とを有する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、コンクリート構造
物中に発生している剥離を検出する非破壊検査方法に関
する。
【0002】
【従来の技術】従来、コンクリート構造物中に発生して
いる剥離の非破壊検査方法としては、熟練検査員がハン
マーでコンクリート構造物に衝撃を与え、そのときの反
力や音などにより異常を検知し診断する、いわゆる打音
検査方法がよく採用されている。しかし、この打音検査
は剥離の検出精度が60%程度と言われているように信
頼性が低いうえに、診断に主観的な要素が強く反映し個
人差が大きいという欠点がある。このため、打音検査に
代わる検査方法として、X線法、電磁波法、赤外線法、
超音波法等の各種検査方法の開発が試みられてきた。
【0003】しかし、X線法は検査に使用する機器の取
り扱いが煩わしく、X線被曝のリスクが伴うため有資格
者しか機器の使用ができず検査が高コストとなる。電磁
波法は鉄筋が内部に存在する場合、剥離部位の探査が不
可能になる場合が多い。更に、赤外線法では、剥離の前
方と後方の温度差により剥離の有無の判定を行なうた
め、トンネル内部等のように日照がなく検査対象物内に
剥離が起因する温度差が発生しにくい場合では、剥離の
検出が困難となる。そこで、温度差を発生させるため
に、バーナー等で検査対象物の表面を加熱することも考
えられるが、加熱することが検査対象物に疲労損傷を与
える結果となり、推奨される方法とは言えない。
【0004】超音波法は、超音波がコンクリート構造物
の表面と剥離の間を往復する際の伝播時間により剥離の
有無の判定や位置の計測を行なう手法であるが、剥離と
表面との間に多重反射が生じてこれらの反射波が重畳し
合うため、剥離からの第1反射波を用いて表面から剥離
までの往復伝播時間の計測を行なうことは困難となる。
実際には、この重畳反射波に更に送波信号が重畳するた
め、事態はより深刻となり、表面から剥離までの往復伝
播時間の計測は事実上不可能となる。しかし、超音波法
は人体に無害で取り扱いやすく、非破壊検査システムの
媒体としては捨て難いものである。このため、検査対象
物が小石や鉄筋等の骨材を含まない一様な連続体と仮定
でき、かつ、超音波センサーの使用を前提とする場合で
は、超音波センサーの物理特性を考慮して、剥離等から
の受波信号波形の予測波形を作り、これと実際の受波信
号波形とのパターンマッチングを行なうことにより表面
から剥離までの往復伝播時間を計測し、これにより剥離
の有無の判定と剥離位置の決定を行なう多重反射波モデ
ル方法が開発されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、通常の
コンクリート構造物のように骨材が存在し、かつ検査に
利用できる超音波センサーの超音波波長が骨材のサイズ
に比べてそれほど長くない場合は、超音波は伝播に際し
て骨材の影響を強く受け、超音波センサーより発信され
た超音波は途中に存在する骨材に衝突し、散乱を繰り返
しながら伝播していく。従って、超音波センサーに受波
された受波信号には骨材による散乱の寄与が含まれてい
るため、受波信号に対して剥離と表面との間で成立する
多重反射波モデルが適用できず、剥離の診断に際し異な
った計測方法を開発する必要が生じている。更に、近年
熟練検査員の数が急減したり、あるいは、既成建築物を
長寿命化する観点から診断対象の数が急増する等の背景
により、非熟練検査員でも短時間で高精度の診断が行な
える診断方法の開発が渇望されている。本発明はかかる
事情に鑑みてなされたもので、小石や鉄筋等の骨材を含
むコンクリート構造物中に発生している剥離を超音波を
用いて短時間で高精度に検出することができるコンクリ
ート構造物の剥離の非破壊検査方法を提供することを目
的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】前記目的に沿う本発明に
係るコンクリート構造物の剥離の非破壊検査方法は、コ
ンクリート構造物の表面と底面の間に剥離が存在する場
合のコンクリート構造物の剥離の非破壊検査方法であっ
て、衝撃力発生手段を用いて前記コンクリート構造物の
表面に衝撃力を与えて前記コンクリート構造物の表面と
剥離の間に定在波を発生する第1工程と、発生した前記
定在波を前記コンクリート構造物の表面に取付けた超音
波探触子により検出する第2工程と、前記超音波探触子
に得られた受波信号の周波数分析により前記コンクリー
ト構造物の剥離の位置を求める第3工程とを有する。
【0007】衝撃力発生手段によりコンクリート構造物
の表面に、例えば繰り返し衝撃力を与えると、この繰り
返し衝撃力が引き金となりコンクリート構造物の表面と
剥離との間には多くの定在波が発生する。発生する定在
波は、コンクリート構造物中の音波の伝播速度と剥離の
位置(表面から剥離までの距離、すなわち深さ)により
一義的に決まる基本モードの定在波と、基本モードの整
数倍のモードを有する多数の高次モードの定在波とに限
られる。従って、発生している定在波の周波数が求まる
と、この周波数を用いてコンクリート構造物の剥離の位
置を決定することができる。
【0008】本発明のコンクリート構造物の剥離の非破
壊検査方法において、前記第3工程で、理論的な定在波
の周波数を、前記受波信号に対し汎用の周波数分析法に
より求めたピーク周波数に一致させることにより前記コ
ンクリート構造物の剥離の位置を求めることができる。
コンクリート構造物の表面に、例えば繰り返し衝撃力を
与えると、剥離と表面との間には図6に示すような定在
波が生じる。このとき、第jモード定在波の角周波数ω
j と周波数fj との間には、ωj =2πfj の関係があ
るので、コンクリート構造物中での音波の伝播速度を
V、コンクリート構造物中での剥離の深さをLとする
と、第jモード定在波の周波数fj 、コンクリート構造
物中での音波の伝播速度V、及びコンクリート構造物中
での剥離の深さLとの間には、(1)式の関係が成立す
る。
【0009】
【数1】
【0010】定在波の周波数は周波数分析により得られ
る周波数スペクトルのピークを与える周波数に相当する
ので、コンクリート構造物に発生する定在波を表面に取
付けた超音波探触子により検出し、このとき得られた受
波信号の周波数分析を行なうと、各定在波の周波数fj
を直接求めることができる。周波数fj を求める場合、
データ点数が少ない場合でも周波数分解能の劣化が生じ
にくい最大エントロピー法を採用することが望まれる。
いま、最大エントロピー法による周波数スペクトルのピ
ークを与える周波数をMj (j=1、2、…、M)とす
れば、コンクリート構造物中での剥離の深さは、(2)
式を最小とするLの値となる。
【0011】
【数2】
【0012】なお、コンクリート構造物中に発生する定
在波は、表面と剥離との間以外に、もし剥離がなければ
表面と底面との間にも発生する。しかし、設計時のデー
タ等を事前に調べておくと、表面と剥離との間に発生し
た定在波なのか、表面と底面との間の間に発生した定在
波なのかの区別は容易に得られる。
【0013】また、本発明のコンクリート構造物の剥離
の非破壊検査方法において、前記第3工程で、所定の個
数の定在波を状態変数として選び、前記所定の個数の定
在波の和を、前記受波信号に最大尤度で一致させること
により前記コンクリート構造物の剥離の位置を求めるこ
とができる。コンクリート構造物中の剥離と表面との間
に発生する定在波のうち高周波成分(高次モードの定在
波)程減衰が激しいので、短い時間区間を考えると超音
波探触子で検出されるコンクリート構造物の弾性振動z
(t)は、基本モード(第1モード)から第4モードま
での定在波の1次結合である(3)式で近似できる。
【0014】
【数3】
【0015】ここで、ωj は剥離の深さLに対する定在
波の第jモードの角周波数であり、ω j =j2πV/
(2L)(i=1、2、3、4)により与えられる。な
お、tは時間、aj 、bj は第jモード定在波における
各成分の寄与の大きさを表している。また、(4)式で
表される各モードの定在波による弾性振動を表すxj
(t)は(5)式の微分方程式を満足する。
【0016】
【数4】
【0017】
【数5】
【0018】ここで、x(t)=(x1 (t),dx1
(t)/dt,x2 (t),dx2 (t)/dt,x3
(t),dx3 (t)/dt,x4 (t),dx4
(t)/dt)T なる状態ベクトルを導入すると、定在
波の第4モードまでの弾性振動にかかわる状態方程式は
(6)式のようになる。
【0019】
【数6】
【0020】ここで、w(t)=(0,w1 (t),
0,w2 (t),0,w3 (t),0,w4 (t))T
は遷移雑音であり、wj (t)(j=1、2、3、4)
はそれぞれ平均値0、分散σ2 の互いに独立な白色ガウ
ス雑音とする。このような遷移雑音を考慮することによ
り、短い時間区間内での弾性振動のわずかな減衰を補償
することができる。一方、超音波探触子に発生する雑音
及び第5モード以上の全ての高次モードの定在波をまと
めて雑音と見なすと、超音波探触子により与えられる観
測方程式は(7)式のようになる。
【0021】
【数7】
【0022】ここで、H=(1,0,1,0,1,0,
1,0)であり、yk 、vk はそれぞれサンプリング時
刻kΔT(ΔTはサンプリング周期)における観測値及
び観測雑音を示す。このとき、観測のサンプリング時刻
にあわせて(6)式を離散化すれば、(8)式のように
なる。
【0023】
【数8】
【0024】ここで、xk 、wk は、それぞれサンプリ
ング時刻kΔTにおける状態ベクトル及び遷移雑音ベク
トルを表し、それぞれ(9)式のようになる。なお、F
は(10)式で定義される遷移行列である。ただし、I
8 は8×8単位行列である。
【0025】
【数9】
【0026】
【数10】
【0027】このとき、wk は平均値0の白色ガウス雑
音であり、wk の共分散行列Wは(11)式で与えられ
る。ここで、Σは遷移雑音w(t)の共分散行列Σ=E
[w(t)w(t)T ]を表し、Σ=diag{0,σ
2 ,0,σ2 ,0,σ2 ,0,σ2 }となる。なお、d
iag{0,σ2 ,0,σ2 ,0,σ2 ,0,σ2 }は
引数を要素とする対角行列を表す。
【0028】
【数11】
【0029】第5モード以上の定在波と超音波探触子に
発生する雑音を加えたものを観測雑音としているが、多
数のモードの定在波を1次結合したものは統計的に白色
ガウス雑音に近い性質を持つ。このため、定在波の第4
モードまでの音圧変動(弾性振動)に関わる状態ベクト
ルxk の推定は、(12)式に示すカルマンフィルター
により行なうことができる。なお、Rは観測雑音vk
分散を示す。しかし、コンクリート構造物中の剥離の深
さL及び観測雑音vk の分散Rは未知であるため、カル
マンフィルターを直接適用することはできない。このた
め、これら2つのパラメータをθ=(L,R)T と表
し、θに種々の候補を与えることによりカルマンフィル
ターを適用する。
【0030】
【数12】
【0031】ここで、θの最適値の推定に際しては、定
在波の第4モードまでの音圧変動(弾性振動)に関わる
状態ベクトルxk を用いた観測予測値が真の観測値(受
波信号)に一致するようにθの値を決定すると、そのと
きのθ=(L,R)T の値が最適なパラメータとなる。
従って、コンクリート構造物中の剥離の深さLは、(1
3)式に示す尤度関数の最大値を求めることに帰着す
る。ここで、p(yk /θ,Yk-1 )は観測情報Yk-1
={yj ;0≦j≦k−1}及びθの下での観測値yk
の条件付き確率密度関数である。
【0032】
【数13】
【0033】
【発明の実施の形態】続いて、添付した図面を参照しつ
つ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発
明の理解に供する。ここに、図1は本発明の第1及び第
2の実施の形態に係るコンクリート構造物の剥離の非破
壊検査方法に適用した検査装置のブロック図、図2は同
非破壊検査方法を適用した検査対象物の形状の説明図、
図3は同非破壊検査方法に適用した検査装置で検出され
た受波信号波形の説明図、図4は同非破壊検査方法に適
用した検査装置で検出された受波信号波形の最大エント
ロピー法による周波数分析により得られた周波数スペク
トルの説明図、図5は剥離の深さを尤度関数の最大化に
より決定する場合における尤度関数の等高線の説明図で
ある。
【0034】図1に示すように、本発明の第1及び第2
の実施の形態に係るコンクリート構造物の剥離の非破壊
検査方法に適用した検査装置10は、コンクリート構造
物11の表面に取付け超音波発振器12からの信号に基
づいて超音波パルスを発信しコンクリート構造物11中
に定在波を発生する衝撃力発生手段の一例である超音波
発信子13と、定在波によるコンクリート構造物11の
弾性振動を検出し電気信号に変換する超音波探触子14
と、超音波探触子14から出力された電気信号を増幅す
る増幅器15と、増幅器15によって増幅された信号を
AD変換して信号処理をするコンピュータ16とを有し
ている。以下、これらについて詳細に説明する。
【0035】図2に示すように、コンクリート構造物1
1は、例えば、直径10mm程度の小石からなる骨材、
砂、セメント、及び水を普通のコンクリート材と同様な
配合割合で配合して製造した、縦242mm、横110
0mm、厚さ184mmの板状体である。超音波発振器
12としては、超音波探傷や材料内での音波の伝播速度
測定等の非破壊検査において使用し、短時間に、例えば
5〜30msの間隔で多数のパルス電圧を発信する市販
の超音波発振器が利用できる。超音波発信子13と超音
波探触子14は圧電素子を使用した周知の構造を有する
もので、超音波発信子13は電圧変動を機械的振動(衝
撃)に変換するものであり、超音波探触子14は機械的
振動(弾性振動)を電圧変動に変換するものである。な
お、超音波発信子13と超音波探触子14の応答範囲
は、原則的にはどのような周波数帯域でもよい。
【0036】増幅器15は超音波探触子14が出力した
微小電気信号を処理しやすい所定の大きさの電気信号ま
で増幅するものである。コンピュータ16は、例えばパ
ーソナルコンピュータからなって、入力された信号をA
D変換するAD変換器と、AD変換された信号を処理す
る第1の演算手段、第2の演算手段、表示手段とを有し
ている。第1の演算手段は汎用の周波数分析法を用いて
コンクリート構造物中の剥離の位置を求めるためのもの
で、第2の演算手段は所定の個数の定在波を状態変数と
した最尤法によりコンクリート構造物中の剥離の位置を
求めるもので、表示手段は入力信号等の検出データや、
周波数スペクトル、尤度関数の等高線、更には剥離の位
置等の演算結果を表示するものである。第1及び第2の
演算手段は、実際にはどちらかを使用すればよい。両手
段を併用すれば、信頼度をより一層高めることができ
る。
【0037】次に、検査装置10を用いた本発明の第1
の実施の形態に係るコンクリート構造物の剥離の非破壊
検査方法について説明する。なお、コンクリート構造物
11中に剥離を設けることは困難であったので、剥離の
代わりにコンクリート構造物11の底面の位置検出、す
なわち厚み計測を行なうことにより本発明の有効性を確
認した。
【0038】図2に示すように、コンクリート構造物1
1の表面に超音波発信子13及び超音波探触子14を、
例えば機械グリスを接触媒体として取付けて、超音波発
信子13に、超音波発振器12を用いて、例えば16m
sの間隔でパルス電圧を印加して超音波パルスを発生さ
せコンクリート構造物11中に送信し、コンクリート構
造物11の表面と底面の間に定在波を発生させる。この
とき発生した定在波により形成されるコンクリート構造
物11の弾性振動は超音波探触子14で検出されて電気
信号に変換され増幅器15に入力される。増幅器15で
信号処理しやすい大きさに増幅された電気信号は、コン
ピュータ16に入力される。コンピュータ16に入力さ
れた電気信号、すなわち検査装置10で検出された受波
信号波形(時間と振幅の関係)を表示手段を用いて表示
した結果を図3に示す。図3に示すように、受波してか
ら約70μs以下の領域では、超音波探触子14の表面
とコンクリート構造物11の表面との間の多重反射波や
表面波の影響が強く現れている。これらの影響が消え、
受波信号が落ちついたと見られる時間帯、例えば約80
μs以降でも、骨材の散乱のため多重反射波が読み取れ
ないことが判る。
【0039】受波信号が落ちついている、例えば、7
3.0〜193.0μs(領域D2 )の部分の信号に対
して、第1の演算手段に内蔵されている周波数分析処理
を適用し、最大エントロピー法により周波数スペクトル
を求めた。得られた周波数スペクトル(周波数と振幅の
関係)を表示手段を用いて表示した結果を図4に示す。
図4中の数字は、各ピークを与える周波数を示す。これ
らのピーク周波数を用い、コンクリート構造物11中の
音波の伝播速度3500m/sを用いて(3)式を最小
にする厚みを求めると187.3mmとなり、非常に高
精度な厚みの計測ができた(計測誤差率1.8%)。
【0040】次に、検査装置10を用いた本発明の第2
の実施の形態に係るコンクリート構造物の剥離の非破壊
検査方法について説明する。第2の実施の形態において
も、剥離の代わりにコンクリート構造物11の底面の位
置検出、すなわち厚み計測を行なうことにより本発明の
有効性を確認した。ここで、第2の実施の形態は、第1
の実施の形態と比較して、コンピュータ16に入力され
た電気信号、すなわち検査装置10で検出された受波信
号波形に適用する第1及び第2の演算手段の演算内容が
異なるだけなので、第2の演算手段の演算内容及びそれ
に伴う表示手段の表示内容についてのみ説明する。
【0041】コンクリート構造物11に生じる音圧変動
(弾性振動)を、第1〜第4モードの定在波の1次結合
で近似し、第5モード以上の高次の定在波をすべて観測
雑音と見なしている。そのため、受波信号をそのまま使
用すると超音波探触子14の中心周波数400kHz付
近に大きな信号が現れるため、観測雑音が大きくなり、
計測精度が劣化する。このため、受波信号を、第2の演
算手段に内蔵されている、例えばカットオフ周波数が5
0kHz程度の低域通過バタワースフィルター処理を行
なって、超音波探触子14の中心周波数付近の周波数成
分を除去した。次いで、低域通過バタワースフィルター
処理済の受波信号に最尤法を適用し、尤度関数の最大化
により剥離の位置決定を行なった。
【0042】なお、尤度関数の最大化では、可視化が可
能な尤度関数の等高線を演算して剥離の位置(ここでは
コンクリート構造物11の厚み)を決定する方法を採用
した。尤度関数をL−lnV平面に投影したときの尤度
関数の等高線を図5に示す。ここで、Lはコンクリート
構造物の厚み、Vは音波の伝播速度、lnは自然対数を
示す。図5に示すように、等高線はlnV軸(縦軸)と
ほぼ平行になっており、尤度関数はVの影響を受けない
ことが判る。例えば、lnVの値を−6.5とすると、
このときの等高線を最大にするLの値は186mmとな
る。図5では、等高線の間隔を粗に描いているが、密に
描けばどのようなlnVの値に対しても、等高線を最大
にする最適なLの値は186mmと求まる。この値は、
実際の厚み184mmに極めて近い値である(計測誤差
率1.09%)。
【0043】以上、本発明の実施の形態を説明したが、
本発明は、この実施の形態に限定されるものではなく、
例えば、衝撃力発生手段として多重パルス衝撃が得られ
る超音波発振器と超音波発信子を使用してコンクリート
構造物の表面に衝撃力を与えたが、ハンマー、エアーノ
ッカー等による繰り返しの機械的衝撃をコンクリート構
造物の表面に与えることも可能である。このため、コン
クリート構造物の剥離の非破壊検査方法としての利用可
能性が拡大する。また、コンクリート構造物の表面に多
重パルス衝撃を与える送信用の超音波発信子とコンクリ
ート構造物の弾性振動を検出する受信用の超音波探触子
を使用したが、送信子と受信子からなる二振動子型超音
波探触子を使用することもできる。これによって、表面
が複雑な形状を有するコンクリート構造物に対しても定
在波の発生と検出を容易に行なうことが可能となる。更
に、コンクリート構造物の表面で超音波探触子を適当な
間隔で移動させながら検査を行なうことにより、剥離が
どのような深さで、どれ位の広がりを有しているかを正
確に把握することができる。
【0044】超音波探触子に得られる受波信号の周波数
分析に最大エントロピー法を採用したが、高速フーリエ
変換法を使用してもよい。また、尤度関数の最大化によ
り剥離の位置決定を行なう場合、尤度関数の等高線を用
いた可視化による方法を採用したが、パウエル法(最適
化手法)を用いて剥離の位置を自動探索する方法を採用
することもできる。この方法では、自動的に短時間で剥
離の位置を決定することができる。
【0045】
【発明の効果】請求項1〜3記載のコンクリート構造物
の剥離の非破壊検査方法においては、衝撃力発生手段を
用いてコンクリート構造物の表面に衝撃力を与えてコン
クリート構造物の表面と剥離の間に定在波を発生する第
1工程と、発生した定在波をコンクリート構造物の表面
に取付けた超音波探触子により検出する第2工程と、超
音波探触子に得られた受波信号の周波数分析によりコン
クリート構造物の剥離の位置を求める第3工程とを有す
るので、超音波を用いて小石や鉄筋等の骨材を含むコン
クリート構造物中に発生している剥離の検出と剥離の深
さ計測が高精度で可能となる。
【0046】特に、請求項2記載のコンクリート構造物
の剥離の非破壊検査方法においては、第3工程で、理論
的な定在波の周波数を、受波信号に対し汎用の周波数分
析法により求めたピーク周波数に一致させることにより
コンクリート構造物の剥離の位置を求めるので、また、
請求項3記載のコンクリート構造物の剥離の非破壊検査
方法においては、第3工程で、所定の個数の定在波を状
態変数として選び、所定の個数の定在波の和を、受波信
号に最大尤度で一致させることによりコンクリート構造
物の剥離の位置を求めるので、短時間に、かつ高精度に
コンクリート構造物中に発生している剥離の検出と剥離
の深さ計測を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1及び第2の実施の形態に係るコン
クリート構造物の剥離の非破壊検査方法に適用した検査
装置のブロック図である。
【図2】同非破壊検査方法を適用した検査対象物の形状
の説明図である。
【図3】同非破壊検査方法に適用した検査装置で検出さ
れた受波信号波形の説明図である。
【図4】同非破壊検査方法に適用した検査装置で検出さ
れた受波信号波形の周波数分析により得られた周波数ス
ペクトルの説明図である。
【図5】剥離位置を尤度関数の最大化により決定する場
合における尤度関数の等高線の説明図である。
【図6】コンクリート構造物の中の剥離と表面との間に
発生する定在波の状態の説明図である。
【符号の説明】
10:検査装置、11:コンクリート構造物、12:超
音波発振器、13:超音波発信子(衝撃力発生手段)、
14:超音波探触子、15:増幅器、16:コンピュー

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 コンクリート構造物の表面と底面の間に
    剥離が存在する場合のコンクリート構造物の剥離の非破
    壊検査方法であって、衝撃力発生手段を用いて前記コン
    クリート構造物の表面に衝撃力を与えて前記コンクリー
    ト構造物の表面と剥離の間に定在波を発生する第1工程
    と、発生した前記定在波を前記コンクリート構造物の表
    面に取付けた超音波探触子により検出する第2工程と、
    前記超音波探触子に得られた受波信号の周波数分析によ
    り前記コンクリート構造物の剥離の位置を求める第3工
    程とを有することを特徴とするコンクリート構造物の剥
    離の非破壊検査方法。
  2. 【請求項2】 請求項1記載のコンクリート構造物の剥
    離の非破壊検査方法において、前記第3工程で、理論的
    な定在波の周波数を、前記受波信号に対し汎用の周波数
    分析法により求めたピーク周波数に一致させることによ
    り前記コンクリート構造物の剥離の位置を求めることを
    特徴とするコンクリート構造物の剥離の非破壊検査方
    法。
  3. 【請求項3】 請求項1記載のコンクリート構造物の剥
    離の非破壊検査方法において、前記第3工程で、所定の
    個数の定在波を状態変数として選び、前記所定の個数の
    定在波の和を、前記受波信号に最大尤度で一致させるこ
    とにより前記コンクリート構造物の剥離の位置を求める
    ことを特徴とするコンクリート構造物の剥離の非破壊検
    査方法。
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