JP2001261376A - 防曇膜および防曇膜付き基体 - Google Patents

防曇膜および防曇膜付き基体

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JP2001261376A
JP2001261376A JP2000076841A JP2000076841A JP2001261376A JP 2001261376 A JP2001261376 A JP 2001261376A JP 2000076841 A JP2000076841 A JP 2000076841A JP 2000076841 A JP2000076841 A JP 2000076841A JP 2001261376 A JP2001261376 A JP 2001261376A
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Shinji Kondo
新二 近藤
Takashige Yoneda
貴重 米田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】膜の強度が高く、基体との密着性にも優れた防
曇膜の提供。 【解決手段】基体1上に一次元的に成長した多数の柱状
相2と、それを取り囲むマトリックス相3とからなる複
合膜4中の、柱状相2を除去することにより形成され、
膜の一方の表面から他方の表面まで連続する壁で取り囲
まれた一次元的に貫通する多数の気孔を有し、水に対す
る接触角が30°以下である、防曇膜5。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、一次元的に貫通す
る気孔(以下、一次元貫通気孔ともいう)を持つ防曇膜
に関する。詳しくは、窓ガラス、鏡または光学レンズ表
面等の曇り防止用防曇膜として好適に利用でき、高耐久
性を有する防曇膜に関する。
【0002】
【従来の技術】浴室や洗面台の鏡は水蒸気を多量に含む
空気に触れると、表面に光の波長程度かそれ以上の大き
さの水滴が付着し、その水滴によって光が乱反射され曇
を生じる。また、外気で冷やされた建築物の窓ガラス内
面、自動車などの風防ガラス内面または眼鏡の表面に、
光の波長程度かそれ以上の大きさの水滴が付着し、その
水滴によって光が散乱されると曇を生じる。これらは、
本来透明であるべきガラス表面に微小な水滴が付着する
ことによる。
【0003】この問題の根本的な原因は、鏡や窓に使わ
れるガラスの表面が親水性と疎水性の中間の性質(純水
の接触角で50〜90°程度)を示し、液滴が半球状に
ガラス表面に付着することに起因する。このような問題
は、ガラスのみならず水に対する濡れ性がガラスと同等
である金属、セラミックスまたはある種のプラスチック
スでも同様に起こりうる。
【0004】このように表面が微小な液滴の付着によっ
て曇る問題を解決するために、ガラスやプラスチックス
の表面に親水性の膜を形成し、水滴が付着しても半球状
にならないようにすることで防曇性を発現させる方法な
どが提案されてきた。具体的には、A)ジメチルアルキ
ルアンモニウムクロリドなどの有機カチオン界面活性剤
でガラスやプラスチックスの表面を親水化処理する方
法、B)界面活性剤や酸化チタンを練り込んだ透明樹脂
フィルムをガラスやプラスチックスの表面に貼り付ける
方法などが提案されてきた。
【0005】また、C)ガラスやプラスチックスなどの
表面に多孔質の無機膜(アルミナやアルミナ−シリカ系
など)を形成し、表面の凹凸によって親水性の向上を図
る方法などが試みられてきた。
【0006】しかし、A)の方法においては、界面活性
剤の付着力が弱いため、窓ガラスや自動車の風防ガラス
に用いた場合、すぐに界面活性剤成分が脱離して親水効
果および防曇効果がなくなる問題があった。また、B)
の方法では、界面活性剤成分が透明樹脂フィルムから溶
出して親水効果が低減したり、透明樹脂フィルムが太陽
光で劣化し透明性を失う問題があった。
【0007】C)の方法は、上記有機膜を用いる方法に
比べてある程度耐久性の向上が期待できる。しかし、こ
のような膜では、防曇効果を上げるため膜の気孔率を増
加させると、膜そのものの強度、および、膜と基板との
密着強度が低くなる、特性上相矛盾する問題が生じる場
合が多かった。
【0008】また、通常、多孔質無機膜を形成する場
合、シリカやアルミナなどの微粉末を含むセラミックス
ラリーを調整し、スラリーをディップ法やドクターブレ
ード法などでガラスやプラスチックスの表面に塗布した
後に加熱、乾燥または焼結する方法が用いられるが、こ
の方法で作られる膜では、膜中に含まれる気孔の気孔径
を揃えるのが難しく、数十μmの孔が必ず存在するのが
通例である。このように大きな孔が膜表面に存在する
と、この孔に空気中に浮遊するタバコのヤニや各種粉塵
などの微粒子がはまりこみ簡単な洗浄ではこれらを取り
除くことが困難になる問題があった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来技術が
有する前述の欠点を解消し、膜の強度が高く、基体との
密着性にも優れる防曇膜および防曇膜付き基体の提供を
目的とする。本発明はまた、汚れが落ちやすい前記防曇
膜および防曇膜付き基体の提供を目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は、基体上に一次
元的に成長した多数の柱状相と、それを取り囲むマトリ
ックス相とからなる複合膜中の、一次元的に成長した柱
状相を除去することにより形成された、膜の一方の表面
から他方の表面まで連続する壁で取り囲まれた一次元的
に貫通する多数の気孔を有する防曇膜であって、水に対
する接触角が30°以下であることを特徴とする防曇膜
を提供する。
【0011】本発明においては、マトリックス相が防曇
膜を構成する材料となり、該マトリックス相は緻密質体
である。本発明の防曇膜は、二段階のプロセスで形成さ
れる。すなわち、第一段階では、一次元的に成長した多
数の柱状相と、それを取り囲むマトリックス相とからな
る複合膜を形成し、次に、第二段階で、その複合膜中の
一次元的に成長した柱状相をエッチングで除去し、マト
リックス相のみを残留させる。
【0012】第一段階において複合膜を形成する方法と
しては、一次元的に成長した柱状相とそれを取り囲むマ
トリックス相とからなる複合膜を物理的成膜法により直
接形成する方法(以下、複合膜の第一形成方法ともい
う)と、まずアモルファス前駆体膜を基体上に形成し、
つぎに熱処理によって共晶反応を起こし、これにより一
次元的に成長した柱状相とそれを取り囲むマトリックス
相とからなる複合膜を形成する方法(以下、複合膜の第
二形成方法ともいう)、とが挙げられる。
【0013】図1は、本発明の防曇膜を形成する手順を
示す模式図である。図中、a〜dは、複合膜の第一形成
方法を用いて、本発明の防曇膜を形成する手順を示し、
aは基体1上に物理的成膜法により柱状相2とマトリッ
クス相3とからなる複合膜4を形成した状態(初期)、
bは同様に複合膜4を形成した状態(中期)、cは複合
膜4の形成が終了した状態、dは選択エッチングにより
一次元的に成長した柱状相2を除去し、本発明の防曇膜
5が形成された状態、をそれぞれ示す。
【0014】また、e〜hは、複合膜の第二形成方法を
用いて、本発明の防曇膜を形成する手順を示し、eは遷
移金属を含むアモルファス前駆体膜6を基体1上に形成
した状態、fは熱処理によって膜表面に共晶組織が形成
された状態、gは表面からの酸素拡散によって共晶反応
界面が膜・基板界面まで移動し、最終的に一次元的に成
長した柱状相(遷移金属酸化物結晶)2とそれを取り囲
むマトリックス相3からなる共晶組織が形成され、複合
膜4ができた状態、hは選択エッチングにより一次元的
に成長した柱状相2を除去し、本発明の防曇膜5が形成
された状態、をそれぞれ示す。
【0015】複合膜の第一形成方法において、複合膜を
形成する物理的成膜法としては、スパッタ法、蒸着法、
CVD法、レーザーアブレーション法、分子線エピタキ
シー法などが挙げられる。このなかでもスパッタ法は、
緻密な膜を得やすいこと、基体との密着性が高い膜が得
られることに加えて量産性や大面積成膜性に優れてお
り、特に好ましい。
【0016】スパッタ法によって複合膜を形成する場
合、柱状相を形成する材料と、マトリックス相を形成す
る材料を用いてターゲットを構成する方法としては、特
に限定されないが、柱状相を形成する材料の粉末と、マ
トリックス相を形成する材料の粉末を混合したものをタ
ーゲットとすることができる。
【0017】また、柱状相を形成する材料からなるター
ゲットの上に、マトリックス相を形成する材料からなる
数mm程度の大きさの小片を多数配置し、複合ターゲッ
トとしたものも好適に利用できる。反対に、マトリック
ス相を形成する材料からなるターゲットの上に、柱状相
を形成する材料からなる数mm程度の大きさの小片を多
数配置し、複合ターゲットとしたものも好適に利用でき
る。
【0018】複合膜の第一形成方法によって複合膜を作
製する場合、柱状相とマトリックス相の材料の組み合わ
せとしては、柱状相の材料とマトリックス相の材料が製
膜時に相分離を起こす組み合わせであればよい。本発明
においては、柱状相をエッチング後の細孔部分に、柱状
相を取り囲むマトリックス相を残留相として利用するた
め、柱状相の材料としては、柱状に成長しやすい金属で
あって、酸・アルカリ等に容易に溶解し、マトリックス
相の材料との結合エネルギーが小さく還元されやすい金
属または合金が好ましい。
【0019】柱状相の材料の例としては、実用的にはス
パッタ時の取り扱いの容易さを考慮し、V、Cr、M
n、Ni、Fe、Co、Cu、Znなどの3d遷移金属
およびそれを主成分とする合金、Mgなどのアルカリ土
類金属およびそれを主成分とする合金から選ばれる1種
以上が挙げられる。その他、Al、In、SnおよびP
bなども利用できる。
【0020】残留相として利用するマトリックス相の例
としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ムライト、コ
ーディエライト、スピネル、ゼオライト、フォルステラ
イトなどの酸化物、炭化ケイ素、炭化チタン、炭化ジル
コニウムなどの炭化物、ホウ化チタン、ホウ化ジルコニ
ウム、炭化ホウ素などのホウ化物、窒化ケイ素、窒化チ
タン、窒化ジルコニウムなどの窒化物、Cr、Ni、C
u、Au、Al、Ptなどの金属、から選ばれる1種以
上が挙げられる。
【0021】複合膜の第一形成方法においては、柱状相
とマトリックス相の材料の混合比および成膜条件を制御
することにより、一次元的に成長した柱状相のまわりを
マトリックス相が取り囲んだ微細組織が形成される。例
えばスパッタ法で複合膜を形成する場合、成長する柱状
相の平均直径は、柱状相とマトリックス相の体積分率お
よび成膜条件(スパッタ時のArガス圧)によって変化
する。
【0022】一次元貫通気孔の直径は一次元的に成長す
る柱状相の直径にほぼ一致するため、エッチング後に最
終的に得られる本発明の防曇膜の一次元貫通気孔の平均
孔径は、柱状相とマトリックス相の材料の混合比および
成膜条件(スパッタ時のArガス圧や基板温度等)によ
って変えることができる。例えば、Co−SiO2系の
場合、2PaのArガス圧で製膜した膜中のCoの粒径
が8nmであるのに対して、8PaのArガス圧で製膜
した場合Coの粒径が約40nmになることが確認され
ている。
【0023】複合膜の第二形成方法において、アモルフ
ァス前駆体膜を形成する方法としては、スパッタ法、蒸
着法、CVD法、レーザーアブレーション法、分子線エ
ピタキシー法などの物理的成膜法や、ゾル・ゲル法、ス
プレーパイロリシス法または塗布法などの溶液法、さら
に、メッキ法など利用できる。このなかでもスパッタ法
は緻密な膜を得やすいこと、基体との密着性が高い膜が
得られることに加えて量産性や大面積成膜性に優れてお
り、特に好ましい。
【0024】スパッタ法等によってアモルファス前駆体
膜を形成する場合、柱状相を形成する材料と、マトリッ
クス相を形成する材料を用いてターゲットを構成する方
法としては、特に限定されないが、柱状相を形成する材
料の粉末と、マトリックス相を形成する材料の粉末を混
合したものをターゲットとすることができる。例えば、
Fe−Si−O系のアモルファス前駆体膜を形成する場
合、FeO粉末とSiO2粉末を混合したものをターゲ
ットとして使用できる。
【0025】複合膜の第二形成方法において、最初に形
成されるアモルファス前駆体膜に含まれる元素の組み合
せとしては、遷移金属とそれ以外の金属元素および酸素
がある。遷移金属の例としては、熱処理後に、膜中に含
まれる他の金属と分離して別々の化合物相となるもので
あればよいが、熱処理時の取り扱いの容易さ等を考慮
し、V、Cr、Mn、Ni、Fe、Co、Cu、Znな
どの3d遷移金属や、これらの金属を主成分とする合
金、その他の多価陽イオンCe、Nd、Sm、Erなど
の希土類元素、から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0026】遷移金属以外の金属元素としては、続いて
行われる熱処理時に遷移金属と反応しないものであれば
よい。この金属元素は熱処理時に柱状相(遷移金属化合
物針状結晶)を取り囲むマトリックス相となりエッチン
グ後に一次元貫通気孔を持つ膜を構成する成分となるた
め、膜の利用目的によって選ばれる。例えば、Si、A
l、Mg、Zr、Sn、Inなどが挙げられる。
【0027】アモルファス前駆体膜をスパッタ成膜する
場合、後に行われる加熱処理によって一次元的に成長す
る柱状相の直径は、スパッタ時のArガス圧により変化
する。例えばFe−Si−O系の膜の場合、2PaのA
rガス圧で製膜した膜を600℃で熱処理すると約4n
mの直径のヘマタイト(Fe23)が析出するが、8P
aのArガス圧で製膜した場合、同様の処理を行うと直
径約20nmのヘマタイトが析出する。一次元貫通気孔
の直径は一次元的に成長する柱状相の直径にほぼ一致す
るため、エッチング後に最終的に得られる本発明の防曇
膜の一次元貫通気孔の平均孔径は、成膜条件(スパッタ
時のArガス圧)によって、制御できる。
【0028】複合膜の第二形成方法においては、遷移金
属とそれ以外の金属および酸素を含むアモルファス前駆
体膜を加熱処理して、遷移金属酸化物とそれ以外の金属
の酸化物が分離析出する、共晶分解反応を起こさせる。
このアモルファス相からの二相析出は同時に、しかも膜
表面から起こることが重要である。加熱するときの処理
条件としては共晶分解反応が起こる条件であればよい。
すなわち、温度については、共晶分解反応が起こる温度
でなおかつ反応が充分な速度で進行する温度であればよ
い。具体的には400〜650℃程度の温度が好まし
い。
【0029】共晶分解反応を引き起こすためには遷移金
属の価数を変化させる必要がある。この方法としてアモ
ルファス前駆体膜を酸化性の雰囲気で処理する場合と還
元性の雰囲気で処理する方法の2つが可能である。酸化
物の共晶反応の場合、還元雰囲気で処理すると不均一核
形成して均一な共晶組織が形成されない場合がある。こ
の場合には酸化雰囲気下で熱処理することにより均一な
共晶組織を形成できる。
【0030】第二段階では、第一段階で形成された複合
膜から、一次元的に伸びた柱状相のみを酸やアルカリを
用いて選択的にエッチングし、取り除く。このエッチン
グ処理で用いる酸としては硫酸、塩酸、硝酸、シュウ
酸、酢酸など、柱状相のみを選択的に取り除くのに適し
たものが選ばれる。例えば、複合膜の第一形成方法によ
って作製された金属コバルト・シリカ複合膜から金属コ
バルトを取り除くには0.1mol/Lの硝酸水溶液で
数分間処理するだけで金属コバルトのみを完全に除去で
きる。
【0031】また、複合膜の第二形成方法によって形成
されたFe−Si−O系の複合膜の場合、一次元的に伸
びたヘマタイトは塩酸の水溶液に可溶であるのに対し
て、シリカは同溶液に不溶であるため、約6mol/L
の塩酸水溶液に膜を浸漬することにより選択エッチング
できる。
【0032】本発明の防曇膜は、上述のようにして形成
されたものであり、膜の一方の表面から他方の表面まで
連続する壁で取り囲まれた一次元的に貫通する多数の気
孔を有する防曇膜であって、水に対する接触角が30°
以下の膜である。水に対する接触角が30°超では、充
分な防曇効果が得られない。
【0033】本発明の防曇膜は、酸化物、炭化物、ホウ
化物、窒化物および金属から選ばれた1種以上からな
り、用途に応じて選択されるが、耐久性、強度、化学的
安定性、形成しやすさ等の観点から、酸化物が最も好ま
しい。また、防曇性の観点からはシリカが好ましい。
【0034】また、本発明の防曇膜における、一次元的
に貫通する気孔の平均孔径は、1〜500nmであるこ
とが好ましい。1nm未満では、充分な防曇効果が得ら
れず、また、500nm超では、充分な防曇効果が得ら
れないうえに、膜の強度または基体との密着性も低下す
る可能性がある。
【0035】さらに、本発明の防曇膜の比表面積は、2
0〜2000m2/gであることが好ましい。20m2
g未満では、充分な防曇効果が得られず、また、200
0m2/g超では、充分な膜強度が得られない可能性が
ある。
【0036】本発明はまた、基体上に、前記防曇膜を有
する防曇膜付き基体を提供する。本発明の防曇膜を形成
する基体としては、複合膜の第一形成方法を用いる場合
は、ガラス、セラミックス、金属、プラスチックス等の
基板またはフィルムを使用でき、また、複合膜の第二形
成方法を用いる場合は、ガラス、セラミックス、耐熱金
属等の基板またはフィルムを使用できる。
【0037】耐熱金属としてはFe、Ni、Cr、Vな
どからなるステンレス鋼やハステロイなどの耐酸化性の
合金が好適である。また、本発明の防曇膜を、多孔質セ
ラミック基板等の、表面に凹凸を有する基体上に形成す
る場合、表面の凹凸があまり激しくなければ、第一形成
方法による複合膜、または、第二形成方法によるアモル
ファス前駆体膜を直接形成すればよい。基体表面の凹凸
が激しく第一段階の膜の直接形成が難しい場合には、基
体表面の凹凸を、樹脂その他の材料で充填したのち表面
を研磨して平滑にし、平滑な基体表面上に本発明の防曇
膜を形成すれば、充分な密着強度を確保できる。本発明
の防曇膜は様々な組成で構成できる。本発明の防曇膜
は、車両の風防ガラス、建築物の窓ガラス、鏡、光学レ
ンズ等に使用される防曇膜などに好適である。
【0038】
【作用】本発明の防曇膜は、膜表面から連続する気孔が
膜内部まで存在することから、表面に付着した水滴が膜
内部まで浸透し実用上防曇効果を示す程度に高い親水性
を有する。
【0039】さらに、本発明の防曇膜は一次元の貫通気
孔のまわりを連続したマトリックス相が取り囲んでいる
ため、従来からある多孔質無機膜に比べて原理的に膜強
度が大きく、基体との密着性も良い。膜強度が大きいこ
とは、従来の多孔質無機防曇膜がセラミック粒子を焼結
などで緩く結合したものであるのに対して、本発明の膜
では一次元貫通気孔を取り囲むマトリックスが完全に連
続した一体成形物であることによる。
【0040】また、基板との密着性についても、第一段
階の複合膜(第二形成方法によるアモルファス前駆体膜
を含めて)をスパッタ法等で形成すれば特に密着性の高
い膜が得られる。また、従来の多孔質無機膜は、防曇効
果を上げるため膜の気孔率を増加させると、膜そのもの
の強度、および、膜と基板との密着強度が低くなる、特
性上相矛盾する問題が生じる場合が多かったが、本発明
の防曇膜では、高い防曇効果を維持しつつ、膜の強度
と、基体との密着性を、両方とも高くすることができ、
防曇性と高耐久性を有する防曇膜を実現できる。
【0041】
【実施例】(実施例1)複合膜の第一形成方法を用い
て、厚さ1.2mmのソーダライムガラス基板上に金属
CoとSiO2の2相からなる複合膜を形成した。スパ
ッタに際しては、直径15.24cmの金属Coターゲ
ットの上に5mm角のSiO2チップを置いた複合ター
ゲットを用いた。ターゲットの片面の全表面積のうち2
0%を占めるようにSiO2チップの量を調節した。真
空槽を5×10-4Paまで排気したのちにArガスを導
入し、真空槽内部のガス圧が2Paになるように流量調
節し600Wの高周波入力によりプラズマを発生させ
た。成膜速度は約0.25nm/secであり、成膜時
には積極的な基板加熱や基板バイアス印加は行わなかっ
た。なお、基板周辺部は、マスクを施して、膜を形成し
なかった。
【0042】このようにして形成したCo−SiO2
合膜をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察した結果、平
均粒径約10nmのCo結晶粒子が柱状に成長してお
り、そのまわりをアモルファスのSiO2マトリックス
相が取り囲んでいることが確認された。
【0043】第二段階として、上記の方法で形成した膜
厚500nmのCo−SiO2複合膜を0.1mol/
Lの硝酸水溶液に5分間浸漬してエッチングを行った。
Co−SiO2複合膜からCoの柱状相をエッチングに
より取り除いた後の膜をSEM(走査型電子顕微鏡)で
観察した結果、Co柱状相が溶出し、SiO2マトリッ
クス相が残留していることが確認された。
【0044】図2は、以上のようにして形成された防曇
膜の液体窒素温度での等温吸脱着曲線である。図から、
差圧(P/P0)=0.6付近で明瞭な窒素ガスの吸着
・脱離が見られ、得られた防曇膜が直径10nm程度の
細孔を多数有し、孔の内壁の比表面積が約1000m2
/g(活性炭に相当する程度)であることがわかる。
【0045】また、得られた防曇膜の表面に直径約1m
mの純水の水滴を滴下して接触角を測定したところ約1
5°であった。また、得られた防曇膜を基板ごと冷蔵庫
に入れ1時間保持し5℃程度に冷やした後に、取り出し
て呼気を吹きかけたところ、膜のある部分には曇が生じ
ないのに対して、膜のないガラス表面には微小な水滴が
付着して曇が生じ不透明になった。
【0046】上述の防曇膜の耐久性を、テーバー耐摩耗
性試験により調べたところ、1000回転しても水の接
触角、防曇性能、透明性等に変化は見られなかった。な
お、テーバ耐摩耗性試験は、市販のCS10型テーバ型
摩耗輪とJIS R6252に規定するAA180番の
研磨紙と同等の品質の研磨紙を用い、500gの荷重を
かけ、60rpmで1000回転して膜を摩耗させるこ
とによって行った。以下の例におけるテーバー耐摩耗性
試験も同様である。
【0047】(比較例1)ポリスチレン微粒子(平均粒
子径0.06μm)を分散させたエチルシリケート水溶
液に塩酸を加えて粘度調整したコーティング液を、ソー
ダライムガラス基板表面に塗布した後、約400℃に加
熱し、膜厚500nmの多孔質シリカ膜を形成した。実
施例1と同様のテーバー耐摩耗性試験により耐久性を調
べたところ、1000回では、膜が一部剥離し、透明性
が損なわれた。
【0048】(実施例2)成膜速度を約0.3nm/s
ecとしたこと以外は、実施例1と同様にして、膜厚5
00nmのCo−SiO2複合膜を形成した。このCo
−SiO2複合膜内部の構造は、実施例1で得られたC
o−SiO2複合膜と同様に、Co結晶粒子の柱状相の
まわりをアモルファスのSiO2マトリックス相が取り
囲んでいるが、この場合にはCo結晶の平均粒子径が約
20nmと大きくなっていることがわかった。
【0049】上記の方法で作製した膜厚500nmの試
料を0.1mol/Lの硝酸水溶液に5分間浸漬してC
o柱状相を溶解除去した。実施例1と同様にCo柱状相
が溶出し、SiO2マトリックス相が残留した。膜の比
表面積、純水に対する接触角は、それぞれ約1000m
2/gおよび13°であり、呼気を吹きかける実験によ
り実施例1とほぼ同等の防曇効果があることが確認され
た。
【0050】(実施例3)実施例1と同様の複合ターゲ
ットを用い、次のようにして、厚さ1.2mmのソーダ
ライムガラス基板上に、Co−SiO2複合膜を形成し
た。すなわち、真空槽を5×10-4Paまで排気したの
ちにArガスを導入し、真空槽内部のガス圧が8Paに
なるように流量調節し800Wの高周波入力によりプラ
ズマを発生させた。成膜速度は約0.6nm/secで
あり、成膜時に基板温度を200℃に加熱した。
【0051】このCo−SiO2複合膜内部の構造は、
実施例1で得られたCo−SiO2複合膜と同様に、C
o結晶粒子の柱状相のまわりをアモルファスのSiO2
マトリックス相が取り囲んでいるが、この場合にはCo
結晶の平均粒子径が約100nmと大きくなっているこ
とがわかった。
【0052】上記の方法で作製した膜厚1500nmの
試料を0.1mol/Lの硝酸水溶液に15分間浸漬し
てCo粒子を溶解除去した。実施例1と同様に、Co柱
状相が溶出し、SiO2マトリックス相が残留した。膜
の比表面積、純水に対する接触角は、それぞれ約100
0m2/gおよび12°であり、呼気を吹きかける実験
により実施例1とほぼ同等の防曇効果があることが確認
された。
【0053】(実施例4)実施例1と同様の複合ターゲ
ットを用い、次のようにして、厚さ2mmのハステロイ
板上に、Co−SiO2複合膜を形成した。すなわち、
真空槽を5×10- 4Paまで排気したのちにArガスを
導入し、真空槽内部のガス圧が2Paになるように流量
調節し400Wの高周波入力によりプラズマを発生させ
た。成膜速度は約0.35nm/secであり、成膜時
には意図的な基板温度やバイアス印加は行わなかった。
【0054】このCo−SiO2複合膜内部の構造は、
実施例1で得られたCo−SiO2複合膜と同様に、C
o結晶粒子の柱状相のまわりをアモルファスのSiO2
マトリックス相が取り囲んでいるが、この場合にはCo
結晶の平均粒子径は約10nmであった。この方法で作
製した膜厚800nmの試料を0.1mol/Lの硝酸
水溶液に10分間浸漬してCo粒子を溶解除去した。実
施例1と同様に、Co柱状相が溶出し、SiO2マトリ
ックス相が残留した。膜の比表面積、純水に対する接触
角は、それぞれ約1000m2/gおよび12°であ
り、呼気を吹きかける実験により実施例1とほぼ同等の
防曇効果があることが確認された。
【0055】(実施例5)実施例1と同様の複合ターゲ
ットを用い、次のようにして、厚さ5mmのアルミナセ
ラミックス基板上に、Co−SiO2複合膜を形成し
た。すなわち、真空槽を5×10-4Paまで排気したの
ちにArガスを導入し、真空槽内部のガス圧が2Paに
なるように流量調節し400Wの高周波入力によりプラ
ズマを発生させた。成膜速度は約0.3nm/secで
あり、成膜時には意図的な基板温度やバイアス印加は行
わなかった。
【0056】このCo−SiO2複合膜内部の構造は、
実施例1で得られたCo−SiO2複合膜と同様に、C
o結晶粒子の柱状相のまわりをアモルファスのSiO2
マトリックス相が取り囲んでいるが、この場合にはCo
結晶の平均粒子径は約9nmであった。この方法で作製
した膜厚700nmの試料を0.1mol/Lの硝酸水
溶液に10分間浸漬してCo粒子を溶解除去した。実施
例1と同様に、Co柱状相が溶出し、SiO2マトリッ
クス相が残留した。膜の比表面積、純水に対する接触角
は、それぞれ約1000m2/gおよび16°であり、
呼気を吹きかける実験により実施例1とほぼ同等の防曇
効果があることが確認された。
【0057】(実施例6)実施例1と同様の複合ターゲ
ットを用い、次のようにして、厚さ1.8mmのポリエ
チレンフィルムシート上に、Co−SiO2複合膜を形
成した。すなわち、真空槽を5×10-4Paまで排気し
たのちにArガスを導入し、真空槽内部のガス圧が2P
aになるように流量調節し400Wの高周波入力により
プラズマを発生させた。成膜速度は約0.2nm/se
cであり、成膜時には意図的な基板温度やバイアス印加
は行わなかった。
【0058】このCo−SiO2複合膜内部の構造は、
実施例1で得られたCo−SiO2複合膜と同様に、C
o結晶粒子の柱状相のまわりをアモルファスのSiO2
マトリックス相が取り囲んでいるが、この場合にはCo
結晶の平均粒子径は約15nmであった。この方法で作
製した膜厚200nmの試料を0.1mol/Lの硝酸
水溶液に5分間浸漬してCo粒子を溶解除去した。実施
例1と同様に、Co柱状相が溶出し、SiO2マトリッ
クス相が残留した。膜の比表面積、純水に対する接触角
は、それぞれ約1000m2/gおよび28°であり、
呼気を吹きかける実験により実施例1とほぼ同等の防曇
効果があることが確認された。
【0059】(実施例7)エポキシ樹脂を厚さ2mmの
多孔質シリカプレート上に塗布し、硬化させたのち、基
板表面をダイアモンド研磨装置で研磨し、平滑な研磨面
を得た。この基板上に、実施例1と同様の複合ターゲッ
トを用い、次のようにして、Co−SiO 2複合膜を形
成した。すなわち、真空槽を5×10-4Paまで排気し
たのちにArガスを導入し、真空槽内部のガス圧が2P
aになるように流量調節し400Wの高周波入力により
プラズマを発生させた。成膜速度は約0.35nm/s
ecであり、成膜時には積極的な基板加熱や基板バイア
ス印加は行わなかった。
【0060】このCo−SiO2複合膜内部の構造は、
実施例1で得られたCo−SiO2複合膜と同様に、C
o結晶粒子の柱状相のまわりをアモルファスのSiO2
マトリックス相が取り囲んでいるが、この場合にはCo
結晶の平均粒子径は約9nmであった。この方法で作製
した膜厚300nmの試料を0.1mol/Lの硝酸水
溶液に5分間浸漬してCo粒子を溶解除去した。実施例
1と同様に、Co柱状相が溶出し、SiO2マトリック
ス相が残留した。膜の比表面積、純水に対する接触角
は、それぞれ約1000m2/gおよび8°であり、呼
気を吹きかける実験により実施例1とほぼ同等の防曇効
果があることが確認された。
【0061】(実施例8)厚さ1.2mmのソーダライ
ムガラス上に、次のようにして、Co−TiO2複合膜
を形成した。スパッタに際しては、直径15.24cm
の金属Coターゲットの上に0.5mm角のTiO2
ップを置いた複合ターゲットを用いた。ターゲットの片
面の全表面積のうち30%を占めるようにTiO2チッ
プの量を調節した。真空槽を5×10-4Paまで排気し
たのちにArガスを導入し、真空槽内部のガス圧が2P
aになるように流量調節し400Wの高周波入力により
プラズマを発生させた。成膜速度は約0.4nm/se
cであり、成膜時には積極的な基板加熱や基板バイアス
印加は行わなかった。
【0062】このCo−TiO2複合膜内部の構造は、
実施例1で得られたCo−SiO2複合膜と同様に、C
o結晶粒子の柱状相のまわりをアモルファスのTiO2
マトリックス相が取り囲んでいるが、この場合にはCo
結晶の平均粒子径は約8nmであった。この方法で作製
した膜厚250nmの試料を0.1mol/Lの硝酸水
溶液に5分間浸漬してCo粒子を溶解除去した。実施例
1と同様に、Co柱状相が溶出し、TiO2マトリック
ス相が残留した。膜の比表面積、純水に対する接触角
は、それぞれ約1000m2/gおよび28°であり、
呼気を吹きかける実験により実施例1とほぼ同等の防曇
効果があることが確認された。
【0063】また、エッチング後に得られたアモルファ
スのTiO2膜を空気中600℃で1時間加熱したとこ
ろ、結晶質のアナターゼに変化し、なおかつ膜の比表面
積がほとんど変化していなかった。
【0064】(実施例9)厚さ1.2mmのソーダライ
ムガラス上に、次のようにして、Co−SiC複合膜を
形成した。スパッタに際しては、直径15.24cmの
金属Coターゲットの上に0.5mm角のSiCチップ
を置いた複合ターゲットを用いた。ターゲットの片面の
全表面積のうち40%を占めるようにSiCチップの量
を調節した。真空槽を5×10-4Paまで排気したのち
にArガスを導入し、真空槽内部のガス圧が2Paにな
るように流量調節し800Wの高周波入力によりプラズ
マを発生させた。成膜速度は約0.3nm/secであ
り、成膜時には積極的な基板加熱や基板バイアス印加は
行わなかった。
【0065】このCo−SiC複合膜内部の構造は、実
施例1で得られたCo−SiO2複合膜と同様に、Co
結晶粒子の柱状相のまわりをアモルファスのSiCマト
リックス相が取り囲んでいるが、この場合にはCo結晶
の平均粒子径は約6nmであった。この方法で作製した
膜厚250nmの試料を0.1mol/Lの硝酸水溶液
に5分間浸漬してCo粒子を溶解除去した。実施例1と
同様に、Co柱状相が溶出し、SiCマトリックス相が
残留した。膜の比表面積、純水に対する接触角は、それ
ぞれ約1000m2/gおよび28°であり、呼気を吹
きかける実験により実施例1とほぼ同等の防曇効果があ
ることが確認された。
【0066】(実施例10)厚さ1.2mmのソーダラ
イムガラス上に、次のようにして、Co−Si34複合
膜を形成した。スパッタに際しては、直径15.24c
mの金属Coターゲットの上に0.5mm角のSi34
チップを置いた複合ターゲットを用いた。ターゲットの
片面の全表面積のうち40%を占めるようにSi34
ップの量を調節した。真空槽を5×10-4Paまで排気
したのちにArガスを導入し、真空槽内部のガス圧が2
Paになるように流量調節し800Wの高周波入力によ
りプラズマを発生させた。成膜速度は約0.3nm/s
ecであり、成膜時には積極的な基板加熱や基板バイア
ス印加は行わなかった。
【0067】このCo−Si34複合膜内部の構造は、
実施例1で得られたCo−SiO2複合膜と同様に、C
o結晶粒子の柱状相のまわりをアモルファスのSi34
マトリックス相が取り囲んでいるが、この場合にはCo
結晶の平均粒子径は約6nmであった。この方法で作製
した膜厚250nmの試料を0.1mol/Lの硝酸水
溶液に5分間浸漬してCo粒子を溶解除去した。実施例
1と同様に、Co柱状相が溶出し、Si34マトリック
ス相が残留した。膜の比表面積、純水に対する接触角
は、それぞれ約1000m2/gおよび28°であり、
呼気を吹きかける実験により実施例1とほぼ同等の防曇
効果があることが確認された。
【0068】(実施例11)厚さ1.2mmのソーダラ
イムガラス上に、次のようにして、Co−Cr複合膜を
形成した。スパッタに際しては、直径15.24cmの
金属Coターゲットの上に0.5mm角のCrチップを
置いた複合ターゲットを用いた。ターゲットの片面の全
表面積のうち40%を占めるようにCrチップの量を調
節した。真空槽を5×10-4Paまで排気したのちにA
rガスを導入し、真空槽内部のガス圧が2Paになるよ
うに流量調節し800Wの高周波入力によりプラズマを
発生させた。成膜速度は約0.3nm/secであり、
成膜時には積極的な基板加熱や基板バイアス印加は行わ
なかった。
【0069】このCo−Cr複合膜内部の構造は、実施
例1で得られたCo−SiO2複合膜と同様に、Co柱
状結晶粒子(柱状相)のまわりを、Cr結晶集合体から
なるマトリックス相が取り囲んでいるが、この場合には
Co結晶の平均粒子径は約6nm であった。この方法
で作製した膜厚250nmの試料を0.1mol/Lの
硝酸水溶液に5分間浸漬してCo粒子を溶解除去した。
実施例1と同様に、Co柱状相が溶出し、Crマトリッ
クス相が残留した。膜の比表面積、純水に対する接触角
は、それぞれ約1000m2/gおよび28°であり、
呼気を吹きかける実験により実施例1とほぼ同等の防曇
効果があることが確認された。
【0070】(実施例12)厚さ1.2mmのソーダラ
イムガラス上に、次のようにして、Co−ZrB2複合
膜を形成した。スパッタに際しては、直径15.24c
mの金属Coターゲットの上に1cm角のZrB2セラ
ミックスチップを置いた複合ターゲットを用いた。ター
ゲットの片面の全表面積のうち40%を占めるようにZ
rB2セラミックスチップの量を調節した。真空槽を5
×10-4Paまで排気したのちにArガスを導入し、真
空槽内部のガス圧が2Paになるように流量調節し60
0Wの高周波入力によりプラズマを発生させた。成膜速
度は約0.38nm/secであり、成膜時には積極的
な基板加熱や基板バイアス印加は行わなかった。
【0071】このCo−ZrB2複合膜内部の構造は、
実施例1で得られたCo−SiO2複合膜と同様に、C
o結晶粒子の柱状相のまわりをアモルファスのZrB2
マトリックス相が取り囲んでいるが、この場合にはCo
結晶の平均粒子径は約10nmであった。この方法で作
製した膜厚450nmの試料を0.1mol/Lの硝酸
水溶液に5分間浸漬してCo粒子を溶解除去した。実施
例1と同様に、Co柱状相が溶出し、ZrB2マトリッ
クス相が残留した。膜の比表面積、純水に対する接触角
は、それぞれ約1000m2/gおよび22°であり、
呼気を吹きかける実験により実施例1とほぼ同等の防曇
効果があることが確認された。
【0072】(実施例13)厚さ1.0mmの耐熱ガラ
ス(コーニング#7059)基板上にFe−Si−Oの
三成分からなるアモルファス前駆体膜をスパッタ法で形
成した。スパッタには、Fe34粉末とSiO2粉末を
それぞれ体積比で70%および30%の割合で混合し焼
結したものをターゲットに用いた。真空槽を5×10-4
Paまで排気した後にアルゴンガスを導入し、真空槽内
部のガス圧が2PaとなるようにArガスの流量を調節
し、4.4W/cm2の高周波を入力してプラズマを発
生させた。このときの成膜速度は約0.2nm/sec
であった。
【0073】成膜したアモルファス前駆体膜をSEMで
観察したところ、ガラス基板上に厚さ約120nmのア
モルファス膜が形成されていた。アモルファス膜中には
クラックやポアなどの欠陥が見られず、非常に緻密な膜
が形成されていた。引き続き、このアモルファス膜を空
気中600℃で2時間、加熱処理した。加熱処理によっ
て形成されたFe23−SiO2複合膜をTEMで観察
したところ、一次元的に伸びた針状のヘマタイト(Fe
23)結晶とそのまわりを取り囲むシリカ(SiO2
が共晶組織を形成していることが確認された。ヘマタイ
ト結晶は膜表面から基板との界面に向かって膜表面に垂
直に伸びており、その直径は約4nmであった。
【0074】最後に、上記の方法で熱処理した膜を基板
ごと約6mol/Lの塩酸水溶液に室温で48時間浸漬
し、ヘマタイトのみ取り除いた。ヘマタイトを取り除い
てできた防曇膜の断面をTEMで観察すると、アモルフ
ァスのシリカマトリックスと一次元的に伸びる貫通気孔
が観察された。貫通気孔の直径は、酸処理前のヘマタイ
トの直径とほぼ同じ4nmであり、該貫通気孔がシリカ
膜中に存在することが確認された。膜の比表面積、純水
に対する接触角は、それぞれ約800m2/gおよび8
°であり、呼気を吹きかける実験により実施例1とほぼ
同等の防曇効果があることが確認された。
【0075】(実施例14)厚さ1.0mmの耐熱ガラ
ス(コーニング#7059)基板上にFe−Si−Oの
三成分からなるアモルファス前駆体膜をスパッタ法で形
成した。スパッタには、Fe34粉末とSiO2粉末を
それぞれ体積比で70%および30%の割合で混合し焼
結したものをターゲットに用いた。真空槽を5×10-4
Paまで排気した後にアルゴンガスを導入し、真空槽内
部のガス圧が8PaとなるようにArガスの流量を調節
し、4.4W/cm2の高周波を入力してプラズマを発
生させた。このときの成膜速度は約0.1nm/sec
であった。
【0076】成膜したアモルファス前駆体膜をSEMで
観察したところ、ガラス基板上に、厚さ約80nmで、
実施例13とほぼ同様のアモルファス膜が形成されてい
た。アモルファス膜中にはクラックやポアなどの欠陥が
見られず、非常に緻密な膜が形成されていた。引き続
き、このアモルファス膜を空気中600℃で2時間、加
熱処理した。加熱処理によって形成されたFe23−S
iO2複合膜をTEMで観察したところ、実施例13と
同様に、一次元的に伸びた針状のヘマタイトとそのまわ
りを取り囲むシリカが共晶組織を形成していた。ヘマタ
イト結晶は膜表面から基板との界面に向かって膜表面に
垂直に伸びており、その直径は約20nmであった。
【0077】最後に、上記の方法で熱処理した膜を基板
ごと約6mol/Lの塩酸水溶液に室温で48時間浸漬
し、ヘマタイトのみ取り除いた。膜断面の微細組織をT
EMで観察したところ、酸処理前のヘマタイトの直径と
ほぼ同じ直径の貫通気孔がシリカ膜中に存在することが
確認された。膜の比表面積、純水に対する接触角は、そ
れぞれ約1200m2/gおよび5°であり、呼気を吹
きかける実験により実施例1とほぼ同等の防曇効果があ
ることが確認された。
【0078】(比較例2)実施例13において得られた
アモルファス前駆体膜を、空気中800℃で1時間、加
熱処理した。加熱処理後の膜をTEMで観察した結果、
ヘマタイト結晶は針状ではなく直径約10nmの球状で
ありシリカマトリックスに包まれるように析出してい
た。引き続き、上記の方法で熱処理した膜を基板ごと約
6mol/Lの塩酸水溶液に浸漬したが、100時間後
にも全てのヘマタイト結晶を取り除くことはできなかっ
た。
【0079】
【発明の効果】本発明の防曇膜は、膜の一方の表面から
他方の表面まで連続する壁で取り囲まれた一次元的に貫
通する多数の気孔を有しているため、高い防曇性能を保
持しつつ、膜の強度が高く、基体との密着性にも優れて
いる。また、本発明の防曇膜は、多種類の基体に適用で
き、様々な組成で構成できる。
【0080】また、本発明の防曇膜中に含まれる気孔の
直径は1〜500nm程度でほぼ揃っており、数十μm
程度の巨大な孔は存在しない。したがって、空気中に浮
遊するタバコのヤニや各種粉塵などの微粒子がはまりこ
むことがなく、簡単な洗浄でこれらを取り除くことがで
きる。
【0081】本発明の防曇膜が、酸化物、炭化物、ホウ
化物、窒化物を主成分とする場合には、鏡、建築用窓ガ
ラス、自動車の風防ガラス、または光学レンズ表面等の
曇り防止用防曇膜などに好適である。また、Cr、N
i、Cu、Au、Al、Ptなどの金属を主成分とする
場合は、反射鏡、カーブミラーの表面コート、赤外線反
射用コーティング用の防曇膜などに好適である。
【0082】本発明の防曇膜は、表面から膜内部まで貫
通する気孔を持ち、大きな比表面積を持つことから、触
媒機能および触媒担持機能を付加して表面に付着した有
機物を光分解するなどにより、防汚機能を付加し、防曇
性が永続する膜とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の防曇膜を形成する手順を示す模式図。
【図2】実施例1の防曇膜の液体窒素温度での等温吸脱
着曲線。
【符号の説明】
1:基体 2:柱状相 3:マトリックス相 4:複合膜 5:本発明の防曇膜 6:アモルファス前駆体膜

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】基体上に一次元的に成長した多数の柱状相
    と、それを取り囲むマトリックス相とからなる複合膜中
    の、一次元的に成長した柱状相を除去することにより形
    成された、膜の一方の表面から他方の表面まで連続する
    壁で取り囲まれた一次元的に貫通する多数の気孔を有す
    る防曇膜であって、水に対する接触角が30°以下であ
    ることを特徴とする防曇膜。
  2. 【請求項2】前記防曇膜が、酸化物、炭化物、ホウ化
    物、窒化物および金属から選ばれた1種以上からなる請
    求項1に記載の防曇膜。
  3. 【請求項3】前記一次元的に貫通する気孔の平均孔径が
    1〜500nmである請求項1または2に記載の防曇
    膜。
  4. 【請求項4】前記防曇膜の比表面積が20〜2000m
    2/gである請求項1、2または3に記載の防曇膜。
  5. 【請求項5】基体上に、請求項1、2、3または4に記
    載の防曇膜を有する防曇膜付き基体。
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