JP2001192980A - 皮革様シートの製造方法 - Google Patents

皮革様シートの製造方法

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JP2001192980A
JP2001192980A JP2000005247A JP2000005247A JP2001192980A JP 2001192980 A JP2001192980 A JP 2001192980A JP 2000005247 A JP2000005247 A JP 2000005247A JP 2000005247 A JP2000005247 A JP 2000005247A JP 2001192980 A JP2001192980 A JP 2001192980A
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polyurethane
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Mitsuru Kato
充 加藤
Hideaki Adachi
秀昭 足立
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Kuraray Co Ltd
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Kuraray Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 柔軟性および充実感に優れ、天然皮革に極め
て近似した良好な風合い、触感、物性を持ち、且つ耐光
性、耐久性にも優れた高級感のある皮革様シートの提
供。 【解決手段】 極細繊維形成性繊維からなる繊維質基材
に下記の条件(1−i)と(1−ii)と(1−iii)を
満足する複合樹脂エマルジョン(1−i)該複合樹脂エ
マルジョンが感熱ゲル化性であること(1−ii)該複合
樹脂エマルジョンが、ポリウレタン系エマルジョン
(A)の存在下でエチレン性不飽和モノマー(B)を乳
化重合して得られるエマルジョンであること(1−ii
i)前記ポリウレタン系エマルジョン(A)が、ポリウ
レタンを構成する高分子ポリオール成分の少なくとも3
0重量%以上が非晶性のポリカーボネートポリオールで
あることを含浸して凝固した後に、該極細繊維形成性繊
維を極細繊維化することによる皮革様シートの製造。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は皮革様シートの製造方法
に関する。より詳細には、本発明は、極細繊維よりなる
繊維質基材中に特定の複合樹脂エマルジョンが含浸・凝
固している皮革様シートの製造方法に関する。本発明方
法により得られる皮革様シートは、エマルジョン系樹脂
を繊維質基材に含浸した後に感熱凝固して得られる従来
の皮革様シートに比べて、著しく改良された柔軟性およ
び充実感を有していて、天然皮革に近似した高級感のあ
る優れた風合いや触感を有し、物性、染色性、耐光性、
耐久性にも優れている。
【0002】
【従来の技術】天然皮革の代用品(人工皮革)として、
ポリウレタンなどの樹脂成分を繊維質基材に結束剤とし
て含浸したシートが従来より製造されている。このよう
なシートのうちでも、繊維質基材が極細繊維よりなる場
合には、天然皮革に近似した良好な風合いになるため、
いわゆる高級スエード調人工皮革として用いられる。そ
の代表的な製造方法としては、(1)極細繊維形成性の
海島型の混合紡糸繊維や複合紡糸繊維よりなる繊維質基
材に樹脂を付与した後に、海成分を有機溶剤やアルカリ
水溶液などによって溶解または分解除去して島成分を極
細繊維として残留させて繊維質基材を構成している繊維
を極細繊維化する方法、および(2)極細繊維からなる
繊維質基材を予め形成し、これに樹脂を付与する方法な
どが挙げられる。
【0003】そして、上記した(1)および(2)の人
工皮革の製造方法では、繊維質基材へのポリウレタンな
どの樹脂の付与方法として、樹脂成分をジメチルホルム
アミドなどの有機溶剤に溶解した溶液を繊維質基材に含
浸させた後に水などの非溶剤中で凝固させる湿式法、お
よび樹脂成分を有機溶剤に溶解した溶液または水に分散
させたエマルジョンを繊維質基材に含浸した後に乾燥に
より凝固させる乾式法が知られている。
【0004】上記湿式法による場合は、乾式法に比べ
て、天然皮革により近い風合いを有するシートを得るこ
とが可能であるが、生産性に劣り、ジメチルホルムアミ
ドなどの有機溶剤の使用が不可欠であるという欠点があ
る。一方、乾式法のうちで、樹脂エマルジョンを使用す
る場合は、有機溶剤を使用することなくシートを得るこ
とが可能であるが、湿式法により得られる皮革様シート
に匹敵する高品質の風合いを発現するには至っていな
い。その理由としては、乾式法によって得られるシート
は、その乾燥過程で樹脂が繊維にからみつき強く拘束す
る構造をとることにより硬い風合いとなり、且つ湿式法
により得られるシートに比べて樹脂の存在しない空隙が
極めて多く発生することにより充実感が低下することが
挙げられる。
【0005】また、上記した乾式法において、特に、繊
維質基材にポリウレタンなどの樹脂を付与した後に海成
分を有機溶剤やアルカリ水溶液により溶解または分解除
去して極細繊維化を行う上記(1)の方法では、その加
工工程において極細化した繊維束中に樹脂が侵入して繊
維を強く拘束する構造になりやすく、そのため得られる
皮革様シートの風合いが硬くなることが多い。その場合
に、硬い風合いとならないように樹脂の付着量を少なく
すると、充実感のない風合いとなる。
【0006】さらに、エマルジョン樹脂を用いる上記し
た乾式法として、布帛にポリウレタンエマルジョンおよ
びポリアクリル酸エステルエマルジョンのエマルジョン
混合物を含浸させ、熱水処理して合成皮革用基布を製造
する方法(特開昭55−128078号公報)や、単繊
維繊度が0.5デニール以下の極細繊維を主体とする繊
維層を含む不織布に、平均粒度が0.1〜2.0μmで
ある水系ポリウレタンエマルジョンに無機塩類を溶解混
合したエマルジョン液を付与し、加熱乾燥して人工皮革
を製造する方法(特開平6−316877号公報)が提
案されている。しかし、これらの方法により得られる人
工皮革は、柔軟性、充実感などが十分ではなく、風合い
が十分に改良されているとは言い難い。また、2種以上
のポリマーからなる繊維の不織布を、脂肪族ジイソシア
ネート、ポリテトラメチレングリコールおよび脂肪族ジ
アミンより形成されたポリウレタンの水性エマルジョン
で加工した後に、アルカリ水溶液または有機溶剤で繊維
を部分的に分解または溶解させて極細化して人工皮革を
製造する方法が提案されている(特開平9−13287
6号公報)。しかしながら、この方法により得られる人
工皮革も、柔軟性、充実感などの点が十分改良されてい
ない。
【0007】そのため、人工皮革の製造に当たっては、
品質の高い人工皮革が得られるが、生産性が低く、しか
も有機溶剤の使用が不可欠である湿式法が工業的に専ら
採用されているのが現状である。しかしながら、水性の
樹脂エマルジョンを繊維質基材に含浸して加熱凝固する
上記した乾式法で代表される皮革様シートの製造法は、
繊維質基材への樹脂の含浸時や含浸させた樹脂の凝固時
に有機溶剤を用いる必要がないことから、環境適合性、
作業環境の安全性、工程の簡略化などの点から極めて有
効であり、かかる点から、水系の樹脂エマルジョンを用
いて柔軟性および充実感に優れる高品質の皮革様シート
を製造し得る技術の開発が強く求められている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、樹脂
エマルジョンを用いる乾式法により、極細繊維よりなる
繊維質基材を有し、柔軟性および充実感に優れていて、
天然皮革に極めて近似した良好な風合い、触感を持ち、
さらに物性に優れた、スエード調の高級感のある皮革様
シートを製造する方法並びにそれにより得られる皮革様
シートを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成すべく
本発明者らが検討を重ねた結果、極細繊維形成性繊維よ
りなる繊維質基材に、特定の感熱ゲル化性の複合樹脂エ
マルジョンを含浸して凝固させ、該エマルジョンの凝固
後に極細繊維形成性繊維を極細化すると、柔軟性に優
れ、しかも充実感のある、天然皮革に近似した物性を有
し、さらに、物性にも優れた、湿式法に比肩しうる高品
質の皮革様シートが得られることを見出した。すなわ
ち、該特定の感熱ゲル化性エマルジョンを用いることお
よび樹脂の付与後に繊維質基材を極細繊維化することに
よって、樹脂が繊維質基材中の極細繊維を強く拘束する
ことなく、適度な繊維空間を保ちながら繊維質基材中に
含浸し凝固して、柔軟性、充実感、物性、染色性、耐光
性および耐久性に優れる、高品質の皮革様シートが得ら
れることを見出して本発明を完成した。
【0010】すなわち本発明は、極細繊維形成性繊維か
らなる繊維質基材に下記の条件(1−i)〜(1−ii
i)を満足する複合樹脂エマルジョンを含浸して凝固し
た後に、該極細繊維形成性繊維を極細化することを特徴
とする皮革様シートの製造方法である。 (1−i)該複合樹脂エマルジョンが感熱ゲル化性であ
ること、(1−ii)該複合樹脂エマルジョンが、ポリウ
レタン系エマルジョン(A)の存在下でエチレン性不飽
和モノマー(B)を、ポリウレタン系エマルジョン
(A)中のポリウレタンの重量/エチレン性不飽和モノ
マー(B)の重量が90/10〜10/90の割合で乳
化重合して得られるエマルジョンであること、(1−ii
i)前記ポリウレタン系エマルジョン(A)が、ポリウ
レタンを構成する高分子ポリオール成分の30重量%以
上が非晶性のポリカーボネートポリオールであるポリウ
レタンのエマルジョンであること、
【0011】また本発明は、極細繊維形成性繊維からな
る繊維質基材に下記の条件(2−i)〜(2−iii)を
満足する複合樹脂エマルジョンを含浸して凝固した後
に、該極細繊維形成性繊維を極細化することを特徴とす
る皮革様シートの製造方法である。 (2−i)該複合樹脂エマルジョンが感熱ゲル化性であ
ること、(2−ii)該複合樹脂エマルジョンが、ポリウ
レタン系エマルジョン(A)の存在下でエチレン性不飽
和モノマー(B)を、ポリウレタン系エマルジョン
(A)中のポリウレタンの重量/エチレン性不飽和モノ
マー(B)の重量が90/10〜10/90の割合で乳
化重合して得られるエマルジョンであること、(2−ii
i)前記ポリウレタン系エマルジョン(A)が、ポリウ
レタン骨格の側鎖にエチレン性不飽和基を、ポリウレタ
ン100g当たり0.5mmol以上の割合で有するポ
リウレタンのエマルジョンであること、
【0012】また、本発明は、上記の製造方法により得
られる皮革様シートである。
【0013】
【発明の実施の形態】以下に本発明について詳細に説明
する。本発明における繊維質基材は、適度の厚みと充実
感を有し、かつ柔軟な風合を有する極細繊維よりなる繊
維質基材であればよく、従来より皮革様シートに用いら
れている極細繊維製の各種の繊維質基材を用いることが
できる。
【0014】複合樹脂エマルジョンを含浸する前の繊維
質基材を構成する極細繊維形成性繊維として、2種類以
上の高分子物質よりなる極細繊維形成性の混合紡糸繊維
および/または複合紡糸繊維が好ましく用いられる。こ
の混合紡糸繊維および/または複合紡糸繊維を構成する
高分子物質の一部を溶解および/または分解して除去
し、残りの高分子物質を極細繊維状に残留させることに
よって、皮革様シート中で繊維質基材を極細繊維構造と
することができる。2種類以上の高分子物質よりなる極
細繊維形成性の混合紡糸繊維および/または複合紡糸繊
維の代表例としては、2種類以上の高分子物質よりなる
海島型混合紡糸繊維および海島型複合紡糸繊維を挙げる
ことができ、それらの繊維から海成分をなしている高分
子物質を有機溶剤、アルカリ水溶液、水などを用いて除
去することによって、島成分を極細状に残留させて極細
繊維化を行うことができる。本発明で用いる繊維質基材
は、海島型混合紡糸繊維および海島型複合紡糸繊維のう
ちの一方のみを用いて形成されていても、または両方を
用いて形成されていてもよい。
【0015】上記した海島型混合紡糸繊維または海島型
複合紡糸繊維を構成しうる高分子物質としては、6−ナ
イロン、6,12−ナイロン、6,6−ナイロン、変性
ナイロンなどのポリアミド類;ポリエチレンテレフタレ
ート、ポリブチレンテレフタレート、変性ポリエステル
などのポリエステル類;ポリエチレン、ポリプロピレン
などのポリオレフィン類;ポリスチレン、ポリメタクリ
ル酸エステル、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニ
ル、ポリ塩化ビニリデン、ポリウレタンエラストマー、
ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマーな
どを挙げることができる。これらの高分子物質のうちか
ら、有機溶剤などに対する溶解性の異なるものを2種以
上選択して海成分および島成分として組み合わせること
によって、海成分を溶解または分解除去したときに島成
分が極細繊維状に残留することのできる極細繊維形成性
の海島型混合紡糸繊維または海島型複合紡糸繊維を得る
ことができる。
【0016】極細繊維形成性の海島型混合紡糸繊維また
は海島型複合紡糸繊維における島成分と海成分の割合は
特に制限されないが、一般的には、混合紡糸繊維や複合
紡糸繊維の製造の容易性、極細繊維化の容易性、得られ
る皮革様シートの物性などの点から、重量比で、島成
分:海成分=15:85〜85:15であるのが好まし
く、25:75〜75:25であるのがより好ましい。
極細繊維形成性の海島型混合紡糸繊維または海島型複合
紡糸繊維では、島成分の数、大きさ、海成分中での島成
分の分散状態などは特に制限されず、極細繊維よりなる
繊維質基材が円滑に得られるものであればいずれでもよ
い。
【0017】特に、海成分がポリエチレンおよび/また
はポリスチレンよりなり、島成分がポリアミドおよび/
またはポリエステルからなる海島型混合紡糸繊維または
海島型複合紡糸繊維を用いて形成された繊維質基材を使
用し、これに複合樹脂エマルジョンを含浸して凝固した
後に、海成分をなすポリエチレンおよび/またはポリス
チレンをベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭
化水素、四塩化炭素、パークレンなどのハロゲン化炭化
水素などのような有機溶剤を用いて溶解除去して、島成
分をなすポリアミドを極細繊維状で残留させて得られる
皮革様シートは、柔軟性および充実感に優れ、天然皮革
に極めて近い良好な風合いを有しているので、人工皮革
用素材として好適に使用できる。
【0018】また、本発明で用いる繊維質基材は、不織
布および/または編織物のいずれであってもよいが、不
織布のみからなるか、または不織布層を少なくとも一方
の表面側に有する不織布と織布および/または編布との
積層物(例えば不織布層と編織布層よりなる2層構造
物、表面と裏面が不織布層で中央が編織布層よりなる3
層構造物など)が好ましく用いられる。繊維質基材とし
て好ましく用いられる不織布としては、絡合不織布、ラ
ップ型不織布などを挙げることができ、なかでも絡合不
織布が好ましく用いられる。
【0019】さらに、本発明で用いる繊維質基材は、得
られる皮革様シートの風合いを損なわない限りは、上記
した極細繊維と共に必要に応じて他の繊維材料を併用し
て形成されていてもよい。他の繊維材料としては、通常
の繊維、収縮性繊維、潜在自発伸長性収縮性繊維、多層
貼り合わせ型潜在分割性繊維、特殊多孔質繊維などを挙
げることができ、これらの1種または2種以上を併用で
きる。これらの他の繊維は、ポリアミド系繊維、ポリエ
ステル系繊維、アクリル系繊維、ポリオレフィン系繊
維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリ塩化ビニリデン系繊
維、ポリビニルアルコール系繊維などの合成繊維、レー
ヨンなどの半合成繊維、綿、羊毛、麻などの天然繊維な
どであることができる。
【0020】繊維質基材を構成する極細繊維形成性繊維
の極細繊維化後の単繊維繊度は、柔軟性および充実感に
優れた天然皮革様の風合いの皮革様シートが得られる点
から、0.5デニール以下であるのが好ましく、0.4
デニール以下であるのがより好ましい。
【0021】繊維質基材の厚さは得られる皮革様シート
の用途などに応じて任意に選択できるが、適度な皮革様
の風合いを与える点から、複合樹脂エマルジョンを含浸
する前の厚さで0.3〜3.0mmであるのが好まし
く、0.6〜2.5mmであるのがより好ましい。
【0022】繊維質基材の見かけ密度は、得られる皮革
様シートの柔軟性の点から、繊維質基材中の繊維が極細
繊維状になっている状態で(上記した海島型の混合紡糸
繊維および/または複合紡糸繊維を用いたときには海成
分を除去して極細繊維化した後に)、0.1〜0.5g
/cm3であるのが好ましく、0.15〜0.45g/
cm3であるのがより好ましい。繊維質基材の見かけ密
度が0.1g/cm3より小さいと、得られる皮革様シ
ートの反発性および腰感が劣ったものになりやすく、天
然皮革のような風合いが得られにくくなる。一方、繊維
質基材の見かけ密度が0.5g/cm3より大きくなる
と、得られる皮革様シートの腰感が無くなったり、ゴム
様の不良な風合いとなる傾向がある。
【0023】本発明では、上記した繊維質基材へのエマ
ルジョンの含浸の際に、均一且つ速やかな含浸を行うた
めにエマルジョンの含浸に先立って繊維質基材に湿潤浸
透性を示す界面活性剤の水溶液あるいは水性エマルジョ
ンを付与しておくことも可能である。この場合、界面活
性剤の水溶液または水性エマルジョンを付与した繊維質
基材から水分が乾燥除去されることなく複合樹脂エマル
ジョンの含浸を行う必要があり、完全に乾燥が行われ水
分が消失した場合には効果がほとんど期待できない。繊
維質基材に付与する界面活性剤の量は、繊維質基材に対
して0.01〜20重量%であるのが好ましい。
【0024】本発明では、極細繊維形成性繊維からなる
繊維質基材に、感熱ゲル化性の複合樹脂エマルジョンを
含浸させ凝固して皮革様シートを製造する[上記の条件
(1−i)および(2−i)]。
【0025】ここで、本発明でいう感熱ゲル化性のエマ
ルジョンとは、加熱したときに流動性を失ってゲル状物
となるエマルジョンをいう。感熱ゲル化性の複合樹脂エ
マルジョンが加熱により流動性を失ってゲル化する感熱
ゲル化温度としては、30〜70℃であるのが好まし
く、40〜70℃であるのがより好ましい。複合樹脂エ
マルジョンが感熱ゲル化性でないと、繊維質基材にエマ
ルジョンを含浸して熱風で乾燥した際に、繊維質基材表
面へ樹脂が移動するいわゆるマイグレーションという現
象が起きて、複合樹脂を繊維質基材中に均一に分散付与
できなくなり、皮革様シートの強伸度、柔軟性などの物
性が低下し、しかも風合いが悪くなる。また、繊維質基
材に複合樹脂エマルジョンを含浸した後に熱水中でエマ
ルジョンの凝固を行う場合は、熱水中へのエマルジョン
の流出を生じ、やはり繊維質基材中に複合樹脂を均一に
分散付与できなくなり、前記と同じように、皮革様シー
トの強伸度、柔軟性などの物性の低下、風合いの悪化を
生じる。
【0026】感熱ゲル化性の複合樹脂エマルジョンとし
ては、それ自体で感熱ゲル化性を有する複合樹脂を含有
するエマルジョン、またはエマルジョン中に感熱ゲル化
剤を添加して感熱ゲル化性にした複合樹脂エマルジョン
のいずれもが使用できる。感熱ゲル化性の複合樹脂エマ
ルジョンを得るための感熱ゲル化剤としては、例えば、
無機塩類、ポリエチレングリコール型ノニオン性界面活
性剤、ポリビニルメチルエーテル、ポリプロピレングリ
コール、シリコーンポリエーテル共重合体、ポリシロキ
サンなどを挙げることができ、これらの1種または2種
以上を用いることができる。
【0027】そのうちでも感熱ゲル化剤としては、良好
な感熱ゲル化性を発現し、貯蔵安定性が良好であり、且
つ安価であることから、無機塩類とポリエチレングリコ
ール型ノニオン性界面活性剤の組み合わせが好ましく用
いられる。その場合の無機塩類としては、ポリエチレン
グリコール型ノニオン性界面活性剤の曇点を低下させる
ことのできる金属塩が好ましく用いられ、例えば、炭酸
ナトリウム、炭酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カル
シウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウ
ム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、塩化マグネシウム、
硝酸ナトリウム、硝酸鉛などを挙げることができ、これ
らの1種または2種以上を用いることができる。また、
ポリエチレングリコール型ノニオン性界面活性剤として
は、例えば、高級アルコールのエチレンオキサイド付加
物、アルキルフェノールのエチレンオキサイド付加物、
脂肪酸のエチレンオキサイド付加物、多価アルコールの
脂肪酸エステルのエチレンオキサイド付加物、高級アル
キルアミンのエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレ
ングリコールのエチレンオキサイド付加物などを挙げる
ことができ、これらの1種または2種以上を用いること
ができる。
【0028】感熱ゲル化性のエマルジョンとして感熱ゲ
ル化剤を含有するものを用いる場合、感熱ゲル化剤の配
合量は、エマルジョン中の樹脂100重量部に対して
0.2〜20重量部であるのが好ましい。
【0029】本発明で用いる複合樹脂エマルジョンは、
ポリウレタン系エマルジョン(A)の存在下でエチレン
性不飽和モノマー(B)を、ポリウレタン系エマルジョ
ン(A)中のポリウレタンとエチレン性不飽和モノマー
(B)の重量比が、90/10〜10/90の割合で乳
化重合して得られるエマルジョンである[上記の条件
(1−ii)および(2−ii)]。ポリウレタンとエチレ
ン性不飽和モノマー(B)の重量比が80/20〜15
/85であるのが好ましく、70/30〜20/80で
あるのがより好ましい。ポリウレタンの割合が10重量
%未満の場合には複合樹脂の耐溶剤性が低下し、有機溶
剤によって繊維の海成分を抽出する際に、得られるシー
トが絞りロール等の圧力によって厚みが薄くなる、いわ
ゆる「へたり」が発生するため、満足な皮革様シートと
はならない。ポリウレタン系エマルジョン(A)の割合
が90重量%を越える場合には、弾性ポリマーの耐候
性、耐加水分解性が劣り、またコスト的にも高くなるの
で、実用化が困難である。
【0030】本発明で用いる複合樹脂エマルジョンを製
造するための前記ポリウレタン系エマルジョン(A)
は、ポリウレタンを構成する高分子ポリオール成分の3
0重量%以上が非晶性のポリカーボネートポリオールで
あるポリウレタンのエマルジョンである(上記の条件
(1−iii))か、または、ポリウレタン骨格の側鎖に
エチレン性不飽和基をポリウレタン100g当たり0.
5mmol以上の割合で有するポリウレタンのエマルジ
ョンである(上記の条件(2−iii))ことが必要であ
る。高分子ポリオールとして非晶性のポリカーボネート
ポリオールを用いることにより、エマルジョン粒子間の
融着が促進され、複合樹脂皮膜の力学的特性が向上す
る。また、エチレン性不飽和基がポリウレタン骨格の側
鎖に存在することにより、ポリウレタンの分子量が低下
せず、エチレン性不飽和モノマー(B)を乳化重合する
際にポリウレタン骨格中のエチレン性不飽和基とエチレ
ン性不飽和モノマー(B)が共重合しやすいため、得ら
れる複合樹脂の耐溶剤性、力学的特性が特に優れる。ポ
リウレタンを構成する高分子ポリオール成分の70重量
%以上が非晶性のポリカーボネートであり、且つポリウ
レタン骨格側鎖のエチレン性不飽和基がポリウレタン1
00g当たり0.5mmol未満である場合には、複合
樹脂の強伸度が低下し、得られる皮革様シートの物性が
低下する。
【0031】本発明で用いる複合樹脂エマルジョンを温
度50℃で乾燥して得られる厚さ100μmのフィルム
の90℃における弾性率は、5.0×107Pa以下で
あることが好ましく、3.0×107Pa以下であるの
がより好ましく、2.0×107Pa以下であるのが更
に好ましい。90℃における弾性率が5.0×107
aを超える前記乾燥フィルムを与えるような複合樹脂エ
マルジョンを用いると、得られるシートが柔軟性に劣る
硬い風合いとなる。
【0032】また 本発明で用いる複合樹脂エマルジョ
ンを温度50℃で乾燥して得られる厚さ100μmのフ
ィルムの160℃における弾性率は、5.0×105
a以上であることが好ましく、8.0×105Pa以上
であるのがより好ましく、1.0×106Pa以上であ
るのが更に好ましい。160℃における弾性率が5.0
×105Pa未満である前記乾燥フィルムを与えるよう
な複合樹脂エマルジョンを用いると、繊維質基材にエマ
ルジョンを含浸して凝固した後に、繊維質基材を構成し
ている海島型の混合紡糸繊維および/または複合紡糸繊
維における海成分を有機溶剤で抽出除去して極細繊維化
する際に、絞りロールなどで圧力を受けて厚みが薄くな
るいわゆる「へたり」を生じて、柔軟性、充実感、腰感
などの失われた不良な風合いとなりやすい。なお、本発
明における、複合樹脂エマルジョンから形成される上記
乾燥フィルムの90℃および160℃における弾性率の
測定法は、以下の実施例の項に記載するとおりである。
【0033】また、本発明で用いる複合樹脂エマルジョ
ンを温度50℃で乾燥して得られる厚さ100μmのフ
ィルムのα分散の温度(Tα)は、−10℃以下である
のが好ましく、−20℃以下であるのがより好ましい。
複合樹脂エマルジョンから得られる乾燥フィルムが前記
したα分散の温度(Tα)を有していることにより、得
られる皮革様シートの耐寒性、耐屈曲性などの物性がさ
らに優れたものとなる。なお、本発明における上記の乾
燥フィルムのα分散の温度(Tα)の測定法は、以下の
実施例の項に記載するとおりである。
【0034】ポリウレタン系エマルジョン(A)中に含
まれるポリウレタンは、一般には、高分子ポリオール、
有機ポリイソシアネート化合物、鎖伸長剤を適宜組み合
わせて反応させることによって製造することができる。
【0035】ポリウレタンの製造に用いられる上記した
高分子ポリオールとしては、ポリエステルポリオール、
ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリカーボ
ネートポリオール、ポリエーテルポリオールなどを挙げ
ることができ、ポリウレタンはこれらの高分子ポリオー
ルの1種または2種以上を用いて形成させることができ
る。
【0036】ポリウレタンの製造に用いうるポリエステ
ルポリオールは、例えば、常法に従って、ポリカルボン
酸、そのエステル、無水物などのエステル形成性誘導体
などのポリカルボン酸成分とポリオール成分とを直接エ
ステル化反応させるかまたはエステル交換反応させるこ
とによって製造することができる。また、ポリエステル
ポリオールはラクトンを開環重合することによっても製
造することができる。
【0037】ポリウレタンの製造に用いうるポリエステ
ルポリオールの製造原料であるポリカルボン酸成分とし
ては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピ
メリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ド
デカン二酸、2−メチルコハク酸、2−メチルグルタル
酸、3−メチルグルタル酸、2−メチルアジピン酸、3
−メチルアジピン酸、3−メチルペンタン二酸、2−メ
チルオクタン二酸、3,8−ジメチルデカン二酸、3,
7−ジメチルデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸;
1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカ
ルボン酸;イソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸、ナ
フタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;トリ
メリット酸、トリメシン酸などのトリカルボン酸;それ
らのエステル形成性誘導体などを挙げることができ、ポ
リエステルポリオールは前記したポリカルボン酸成分の
1種または2種以上を用いて形成されていることができ
る。そのうちでも、ポリエステルポリオールは、ポリカ
ルボン酸成分として、脂肪族ジカルボン酸またはそのエ
ステル形成性誘導体から主としてなり、場合により少量
の3官能以上のポリカルボン酸またはそのエステル形成
性誘導体を含むものを用いて製造されたものであること
が好ましい。
【0038】ポリウレタンの製造に用いうるポリエステ
ルポリオールの製造原料であるポリオール成分として
は、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコー
ル、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオー
ル、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−
プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパ
ンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタン
ジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−
1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、
1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオー
ル、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−
オクタンジオール、2,7−ジメチル−1,8−オクタ
ンジオール、1,9−ノナンジオール、2,8−ジメチ
ル−1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオー
ルなどの脂肪族ジオール;シクロヘキサンジメタノー
ル、1,4−シクロヘキサンジオール、ジメチルシクロ
オクタンジメタノールなどの脂環式ジオール;1,4−
ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンなどの芳香族
ジオール;ポリアルキレングリコール;グリセリン、ト
リメチロールプロパン、ブタントリオール、ヘキサント
リオール、トリメチロールブタン、トリメチロールペン
タンなどのトリオール;ペンタエリスリトールなどのテ
トラオールなどを挙げることができ、前記したポリオー
ル成分の1種または2種以上を用いることができる。そ
のうちでも、ポリエステルポリオールは、ポリオール成
分として、脂肪族ポリオールからなり、場合により少量
の3官能以上のポリオールを含むポリオール成分を用い
て製造されたものであることが好ましい。
【0039】ポリウレタンの製造に用い得るポリエステ
ルポリオールの製造原料であるラクトンとしては、例え
ば、ε−カプロラクトン、β−メチル−δ−バレロラク
トンなどを挙げることができる。
【0040】ポリウレタンの製造に用い得るポリカーボ
ネートポリオールは、例えば、ポリオールとジアルキル
カーボネート、アルキレンカーボネート、ジアリールカ
ーボネートなどのカーボネート化合物との反応により得
られる。ポリカーボネートポリオールの製造原料である
ポリオールとしては、ポリエステルポリオールの製造原
料であるポリオールとして先に挙げたものを用いること
ができる。また、ジアルキルカーボネートとしてはジメ
チルカーボネート、ジエチルカーボネートなどを、アル
キレンカーボネートとしてはエチレンカーボネートなど
を、ジアリールカーボネートとしてはジフェニルカーボ
ネートなどを挙げることができる。
【0041】ポリウレタンの製造に用いうるポリエステ
ルポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ポリ
オール、ポリカルボン酸およびカーボネート化合物を同
時に反応させて得られたもの、予め製造しておいたポリ
エステルポリオールとカーボネート化合物を反応させる
て得られたもの、予め製造しておいたポリカーボネート
ポリオールとポリオールおよびポリカルボン酸を反応さ
せて得られたもの、予め製造しておいたポリエステルポ
リオールおよびポリカーボネートポリオールを反応させ
て得られたものなどを挙げることができる。
【0042】ポリウレタンの製造に用い得るポリエーテ
ルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコー
ル、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレング
リコール、ポリ(メチルテトラメチレングリコール)な
どを挙げることができ、これらの1種または2種以上を
用いることができる。
【0043】ポリウレタンの製造に用いる高分子ポリオ
ールの数平均分子量は500〜10000であることが
好ましく、700〜5000であるのがより好ましく、
750〜4000であるのがさらに好ましい。なお、本
明細書でいう高分子ポリオールの数平均分子量はJIS
K 1577に準拠して測定した水酸基価に基づいて
算出した数平均分子量をいう。
【0044】ポリウレタンの製造に用いられる高分子ポ
リオールでは、その1分子当たりの水酸基の数は、ポリ
ウレタン系エマルジョン(A)の製造に支障をきたさな
い限り、2より大きくても構わない。1分子当たりの水
酸基の数が2よりも大きな高分子ポリオールは、例え
ば、ポリエステルポリオールの場合、該ポリエステルポ
リオールの製造原料の一部として、先に示した3官能以
上のポリカルボン酸やポリオールを用いることによって
製造することができる。
【0045】ポリウレタンを構成する高分子ポリオール
は、前記したように、全高分子ポリオール成分の少なく
とも30重量%以上が非晶性のポリカーボネートポリオ
ールであることが好ましい。非晶性のポリカーボネート
ポリオールとは、結晶性を示さず常温で液状のポリカー
ボネートポリオールをいう。このような非晶性ポリカー
ボネートポリオールは、ポリカーボネートポリオールの
製造に用いるポリオールの少なくとも一部として、分岐
鎖を有するポリオールを用いることにより得られる。ま
た、非晶性のポリカーボネートポリオールとして、エス
テル基の含有量がカーボネート基の含有量の20mol
%以下である非晶性のポリエステルポリカーボネートポ
リオールを用いても良い。
【0046】ポリウレタンを構成する高分子ポリオール
のうち、非晶性のポリカーボネートポリオールの割合が
30重量%未満の場合には、ポリウレタン骨格の側鎖に
エチレン性不飽和基を、ポリウレタン100g当たり
0.5mmol以上の割合で有することが必要である。
エチレン性不飽和基の量が、ポリウレタン100g当た
り0.7mmol以上であることが好ましく、ポリウレ
タン100g当たり1.0mmol以上であることがよ
り好ましい。このようなポリウレタンを得るためには、
前記した高分子ポリオールとともに側鎖にエチレン性不
飽和基を有するポリオール化合物を用いるのがよい。こ
のような側鎖にエチレン性不飽和基を有するポリオール
化合物としては、例えば、エチレングリコールジグリシ
ジルエーテルと(メタ)アクリル酸の1:2付加物、ジ
エチレングリコールジグリシジルエーテルと(メタ)ア
クリル酸の1:2付加物、プロピレングリコールジグリ
シジルエーテルと(メタ)アクリル酸の1:2付加物、
ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルと(メ
タ)アクリル酸の1:2付加物、1,6−ヘキサンジオ
ールジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸の1:
2付加物、ビスフェノールAジグリシジルエーテルと
(メタ)アクリル酸の1:2付加物などを挙げることが
でき、これらの1種または2種以上を用いることができ
る。
【0047】ポリウレタンの製造に用いる有機ポリイソ
シアネート化合物の種類は特に制限されず、ポリウレタ
ン系エマルジョンの製造に従来から使用されている公知
の有機ポリイソシアネートのいずれもが使用できる。ポ
リウレタンの製造に用いうる有機ポリイソシアネート化
合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネー
ト、イソホロンジイソシアネート、4,4′−ジシクロ
ヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルネンジイソ
シアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,
6−トリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニル
メタンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネ
ート、キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフチレ
ンジイソシアネートなどを挙げることができ、これらの
1種または2種以上を用いることができる。
【0048】上記した有機ポリイソシアネート化合物の
うちでも、得られるポリウレタンが耐溶剤性に優れるこ
とからトリレンジイソシアネート、4,4´−ジフェニ
ルメタンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネ
ート化合物が好ましく用いられる。芳香族ポリイソシア
ネート化合物から得られたポリウレタンを用いた場合に
は、海島型の混合紡糸繊維および/または複合紡糸繊維
よりなる繊維質基材に複合樹脂エマルジョンを含浸して
凝固した後に繊維中の海成分を有機溶剤で抽出除去して
極細繊維化するときに、複合樹脂が耐溶剤性に優れるこ
とから、有機溶剤による複合樹脂の物性低下が抑制され
て、風合いおよび機械的性質に優れる皮革様シートを得
ることができる。
【0049】ポリウレタンの製造に用いる鎖伸長剤とし
ては、ポリウレタン系エマルジョンの製造に従来から用
いられている鎖伸長剤のいずれもが使用でき、そのうち
でも、イソシアネート基と反応し得る活性水素原子を分
子中に2個以上有する分子量400以下の低分子化合物
が好ましく用いられる。そのような鎖伸長剤としては、
例えば、ヒドラジン、エチレンジアミン、プロピレンジ
アミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミ
ン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン、ノルボ
ルネンジアミン、4,4′−ジアミノジシクロヘキシル
メタン、ピペラジンおよびその誘導体、フェニレンジア
ミン、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、4,
4′−ジアミノジフェニルメタン、アジピン酸ジヒドラ
ジド、イソフタル酸ジヒドラジド、N−メチル−3,
3′−イミノビス(プロピルアミン)などのジアミン
類;ジエチレントリアミンなどのトリアミン類;トリエ
チレンテトラミンなどのテトラアミン類;エチレングリ
コール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオー
ル、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ビス(β−ヒ
ドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−シクロヘキサン
ジオール、ビス−(β−ヒドロキシエチル)テレフタレ
ート、キシリレングリコール、N−メチルジエタノール
アミンなどのジオール類;トリメチロールプロパン等の
トリオール類;ペンタエリスリトール等のテトラオール
類;アミノエチルアルコール、アミノプロピルアルコー
ルなどのアミノアルコール類などが挙げられ、これらの
うち1種または2種以上を用いることができる。これら
のうちでも、エチレンジアミン、イソホロンジアミン、
ジエチレントリアミン、エチレングリコールなどが好ま
しく用いられる。
【0050】ポリウレタン系エマルジョン(A)は、エ
チレン性不飽和モノマー(B)を乳化重合する際の重合
安定性や感熱ゲル化性の付与の容易性の点から、ポリウ
レタン骨格中にポリウレタン100gに対し3〜30m
molの中和されたカルボキシル基またはスルホン酸基
を有しているのが好ましい。ポリウレタン骨格中への中
和されたカルボキシル基またはスルホン酸基の導入は、
ポリウレタン製造原料として、カルボキシル基、スルホ
ン酸基、またはそれらの塩を有し、且つ水酸基またはア
ミノ基等の活性水素原子を1個以上含有する化合物を併
用し、必要に応じて三級アミン、アルカリ金属の水酸化
物などの塩基性物質で中和することにより達成される。
このような化合物としては、例えば、2,2−ビス(ヒ
ドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロ
キシメチル)酪酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)
吉草酸などのカルボン酸基含有化合物およびこれらの誘
導体;1,3−フェニレンジアミン−4,6−ジスルホ
ン酸、2,4−ジアミノトルエン−5−スルホン酸等の
スルホン酸基含有化合物およびこれらの誘導体等が挙げ
られる。さらに、上記の化合物を共重合して得られるポ
リエステルポリオールまたはポリエステルポリカーボネ
ートポリオールなどを用いることもできる。この中で
も、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸お
よび/または2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸を
用いてポリウレタンプレポリマーを製造し、プレポリマ
ー反応終了後にトリエチルアミン、トリメチルアミン、
水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基性物質を添
加して中和する方法が好ましい。
【0051】本発明で用いるポリウレタン系エマルジョ
ン(A)は、ポリウレタン系エマルジョンの製造に従来
から用いられているのと同様の方法で製造することがで
き、例えば、(1)高分子ポリオールと有機ポリイソシ
アネート化合物を反応させて得られた末端にイソシアネ
ート基を有する疎水性のポリウレタンプレポリマーを、
乳化剤の存在下に高い機械的剪断力により水中に強制的
に乳化分散させると同時にまたはその後に、ポリアミン
などの鎖伸長剤を反応させて高分子量化させる方法や、
(2)イオン性基などを導入した末端にイソシアネート
基を有する親水性のポリウレタンプレポリマーを水中に
自己乳化させると同時にまたはその後に、ポリアミンな
どの鎖伸長剤を反応させて高分子量化させる方法などを
挙げることができる。また、水中への乳化分散をしやす
くするために、末端にイソシアネート基を有するポリウ
レタンプレポリマーをアセトン、メチルエチルケトン、
トルエン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジメチル
ホルムアミドなどの有機溶媒で希釈しても良く、これら
の有機溶媒はエチレン性不飽和モノマー(B)の乳化重
合前または乳化重合後に除去することができる。さら
に、鎖伸長剤の一部または全部をポリウレタンの乳化前
に反応させておいてもよい。
【0052】ポリウレタン系エマルジョン(A)は、エ
チレン性不飽和モノマー(B)を乳化重合する際の重合
安定性や感熱ゲル化性の付与の容易性の点から、上記
(1)の方法における乳化剤として、ポリウレタン10
0gに対し、0.5〜10gの界面活性剤を含有してい
るのが好ましい。そのような界面活性剤としては、ラウ
リル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ポリ
オキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム、ド
デシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェ
ニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ジ(2−エチル
ヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム等のアニオン性界
面活性剤;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテ
ル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポ
リオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレ
ンステアリルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキ
シプロピレンブロック共重合体等のノニオン性界面活性
剤等が挙げられ、この中でもラウリル硫酸ナトリウム、
ラウリル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレントリデ
シルエーテル酢酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤
が好ましい。
【0053】本発明に用いられる複合樹脂エマルジョン
は、ポリウレタン系エマルジョン(A)の存在下でエチ
レン性不飽和モノマー(B)を乳化重合して製造する。
エチレン性不飽和モノマー(B)としては、主として
(メタ)アクリル酸誘導体からなる単官能エチレン性不
飽和モノマー(B1)90〜99.9重量%および2官
能以上の多官能エチレン性不飽和モノマー(B2)0.
1〜10重量%からなるのが、得られる皮革様シートの
風合いや耐候性がさらに優れることから好ましく、主と
して(メタ)アクリル酸誘導体からなる単官能エチレン
性不飽和モノマー(B1)92〜99.8重量%および
2官能以上の多官能エチレン性不飽和モノマー(B2)
0.2〜8重量%からなるのがより好ましい。
【0054】複合樹脂エマルジョンの製造に用いられる
単官能エチレン性不飽和モノマー(B1)としては、
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチ
ル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2
−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メ
タ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロ
ヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)
アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸、(メタ)ア
クリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミ
ノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、
(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)ア
クリル酸2−ヒドロキシプロピル等の(メタ)アクリル
酸誘導体;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチル
スチレン等の芳香族ビニル化合物;(メタ)アクリルア
ミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、N−〔3
−(ジメチルアミノ)プロピル〕(メタ)アクリルアミ
ド等のアクリルアミド類;マレイン酸、フマル酸、イタ
コン酸およびそれらの誘導体;ビニルピロリドン等の複
素環式ビニル化合物;塩化ビニル、アクリロニトリル、
ビニルエーテル、ビニルケトン、ビニルアミド等のビニ
ル化合物;エチレン、プロピレン等のα−オレフィン等
が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いる
ことができる。なかでも単官能エチレン性不飽和モノマ
ー(B1)としては、(メタ)アクリル酸誘導体の割合
が60重量%以上であるのが好ましく、70重量%以上
であるのがより好ましく、80重量%以上であるのがさ
らに好ましい。
【0055】複合樹脂エマルジョンの製造に用いられる
2官能以上の多官能エチレン性不飽和モノマー(B2)
としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレー
ト、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ト
リエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエ
チレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブ
タンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサ
ンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジ
オールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコー
ルジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデ
カンジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)ア
クリレート等のジ(メタ)アクリレート類;トリメチロ
ールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリス
リトールトリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)ア
クリレート類;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)ア
クリレート等のテトラ(メタ)アクリレート類;ジビニ
ルベンゼン、トリビニルベンゼン等の多官能芳香族ビニ
ル化合物;アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メ
タ)アクリレート等の2個以上の異なるエチレン性不飽
和結合含有化合物;2−ヒドロキシ−3−フェノキシプ
ロピルアクリレートとヘキサメチレンジイソシアネート
の2:1付加反応物、ペンタエリスリトールトリアクリ
レートとヘキサメチレンジイソシアネートの2:1付加
反応物、グリセリンジメタクリレートとトリレンジイソ
シアネートの2:1付加反応物等の分子量が1500以
下のウレタンアクリレート等が挙げられ、これらのうち
1種または2種以上を用いることができる。
【0056】エチレン性不飽和モノマー(B)のポリウ
レタン系エマルジョン(A)への添加は、一括、分割、
および連続のいずれの方法でも良く、また、モノマー組
成を重合の段階ごとに変化させる多段階重合や連続的に
変化させるパワーフィード法による重合を行ってもよ
い。多段階重合およびパワーフィード法による重合の場
合には、重合に用いる全エチレン性不飽和モノマー
(B)のうち、2官能以上の多官能エチレン性不飽和モ
ノマー(B2)の総量が0.1〜10重量%であるのが
好ましい。さらに、エチレン性不飽和モノマー(B)の
重合時に界面活性剤などの乳化剤を適宜添加してもよ
い。
【0057】エチレン性不飽和モノマー(B)の重合に
用いられる重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパ
ーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ジクミルパーオ
キシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、クメンヒドロパ
ーオキシド、t−ブチルヒドロパーオキシド、ジイソプ
ロピルベンゼンヒドロパーオキシドなどの油溶性過酸化
物;2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′
−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)など
の油溶性アゾ化合物;過酸化水素、過硫酸カリウム、過
硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどの水溶性過酸
化物;アゾビスシアノ吉草酸、2,2′−アゾビス−
(2−アミジノプロパン)二塩酸塩などの水溶性アゾ化
合物等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を
用いることができる。これらの中でも油溶性過酸化物、
油溶性アゾ化合物などの油溶性開始剤を用いることが好
ましい。また、前記重合開始剤とともに、還元剤、およ
び必要に応じてキレート化剤を併用したレドックス開始
剤系を用いても良い。還元剤としては、例えば、ロンガ
リット(ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシレー
ト)などのホルムアルデヒドアルカリ金属スルホキシレ
ート類;亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウムなど
の亜硫酸塩;ピロ亜硫酸ナトリウムなどのピロ亜硫酸
塩;チオ硫酸ナトリウムなどのチオ硫酸塩;亜リン酸、
亜リン酸ナトリウムなどの亜リン酸塩類;ピロ亜リン酸
ナトリウムなどのピロ亜リン酸塩;メルカプタン類;ア
スコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウムなどのアスコ
ルビン酸塩類;エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリ
ウムなどのエリソルビン酸塩類;グルコース、デキスト
ロースなどの糖類;硫酸第一鉄、硫酸銅などの金属塩な
どが挙げられる。キレート化剤としては、ピロリン酸ナ
トリウム、エチレンジアミン四酢酸塩などが挙げられ
る。これらの開始剤、還元剤およびキレート化剤の使用
量は、それぞれの開始剤系の組み合わせに応じて適量を
用いる。
【0058】本発明に用いられる複合樹脂エマルジョン
は、耐光性を向上させるために、複合樹脂骨格中に光安
定化効果を有するヒンダードアミノ基および/または紫
外線吸収性基を導入することも可能である。このような
光安定化効果を有するヒンダードアミノ基および/また
は紫外線吸収性基を複合樹脂骨格中へ導入する方法とし
ては、例えば、(1)エチレン性不飽和モノマー(B)
の一部として、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,
2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)ア
クリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチル
ピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,
2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)ア
クリロイルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチル
ピペリジンなどのエチレン性不飽和基を有するヒンダー
ドアミン化合物や、2−〔2′−ヒドロキシ−5′−
(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル〕−2H−
ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−(メタ)ア
クリロイルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4
−(メタ)アクリロイルオキシエチルベンゾフェノンな
どのエチレン性不飽和基を有する紫外線吸収剤を用いる
方法や、(2)ポリウレタン系エマルジョン(A)中の
ポリウレタン樹脂の製造原料として、4−ヒドロキシ−
2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ヒドロ
キシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、
1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,
2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(2−ヒド
ロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テ
トラメチルピペリジンとコハク酸の重縮合物、1−(2
−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,
6−テトラメチルピペリジンとアジピン酸の重縮合物な
どの水酸基を有するヒンダードアミン化合物を用いる方
法などが挙げられる。ヒンダードアミノ基および紫外線
吸収性基の導入量は複合樹脂100g当たり0.1〜5
0mmolであることがコストや効果の面から好まし
い。
【0059】また、本発明に用いられる複合樹脂エマル
ジョンは、得られる皮革様シートの性質を損なわない限
り、エマルジョン中に他の重合体を含有してもよい。そ
のような他の重合体としては、例えば、アクリロニトリ
ル−ブタジエン共重合体、ポリブタジエン、ポリイソプ
レン、ポリアクリレート、アクリル系共重合体、オレフ
ィン系共重合体、シリコーン、他のポリウレタン、ポリ
酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化
ビニル、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラス
トマーなどの弾性を有する重合体などを挙げることがで
きる。複合樹脂エマルジョンはこれらの重合体の1種ま
たは2種以上を含有することができる。
【0060】複合樹脂エマルジョンは、必要に応じて、
さらに公知の添加物、例えば、耐光安定剤、酸化防止
剤、紫外線吸収剤、浸透剤などの界面活性剤、増粘剤、
防黴材、ポリビニルアルコールやカルボキシメチルセル
ロースなどの水溶性高分子化合物、染料、顔料、充填
剤、凝固調節剤などの1種または2種以上を含有してい
てもよい。
【0061】極細繊維形成性繊維からなる繊維質基材に
複合樹脂エマルジョンを含浸する方法は、繊維質基材中
にエマルジョンを均一に含浸させ得る方法であればいず
れの方法を用いてもよく、一般的には、複合樹脂エマル
ジョン中に繊維質基材を浸漬する方法が好ましく採用さ
れる。さらに、繊維質基材にエマルジョンを含浸した
後、プレスロールやドクターナイフなどを用いてエマル
ジョンの含浸量を適量なものに調整することができる。
【0062】次に、繊維質基材中に含浸している複合樹
脂エマルジョンを加熱して凝固する。複合樹脂エマルジ
ョンの加熱凝固の方法としては、例えば、(1)エマル
ジョンを含浸した繊維質基材を70〜100℃の熱水浴
中に浸漬して凝固する方法、(2)エマルジョンを含浸
した繊維質基材に100〜200℃の加熱水蒸気を吹き
付けて凝固する方法、(3)エマルジョンを含浸した繊
維質基材を50〜150℃の乾燥装置中にそのまま導入
して加熱乾燥して凝固する方法などを挙げることができ
る。そのうちでも、上記(1)の熱水浴中での凝固方法
または上記(2)の加熱水蒸気を用いる凝固方法が、よ
り柔軟な風合いを有する皮革様シートが得られる点から
好ましく採用される。上記(1)〜(3)の方法におい
て複合樹脂エマルジョンを凝固する温度は、エマルジョ
ンの凝固を速やかに完了させることで繊維質基材中にお
ける複合樹脂の偏在を防止する点から、複合樹脂エマル
ジョンの感熱ゲル化温度よりも10℃以上高い温度であ
るのが好ましい。さらに、上記(1)または(2)の凝
固方法を用いた場合は、続いて加熱乾燥または風乾を行
って、皮革様シートに含まれる水分を除去する。
【0063】繊維質基材に複合樹脂エマルジョンを含
浸、凝固し、乾燥することによって最終的に得られる皮
革様シートでは、皮革様シートにおける複合樹脂の付着
量が、極細繊維化後の繊維質基材の重量に対して5〜1
50重量%であるのが好ましく、10〜100重量%で
あるのがより好ましく、20〜80重量%であるのがさ
らに好ましい。複合樹脂の付着量が5重量%未満では得
られる皮革様シートの充実感が不足し、天然皮革様の風
合いが得られなくなる。一方150重量%を越えると、
得られる皮革様シートが硬くなってやはり天然皮革様の
風合いが得られなくなる傾向がある。
【0064】本発明では、複合樹脂エマルジョンを含浸
して凝固した後に、繊維質基材を構成している極細繊維
形成性繊維を極細繊維化する処理を行って皮革様シート
を製造する。その際に、繊維質基材が上記した海島型混
合紡糸繊維および/または海島型複合紡糸繊維より形成
されている場合は、複合樹脂エマルジョンの含浸・凝固
後に、前記繊維中の海成分を有機溶剤などを用いて溶解
除去して島成分を極細繊維状に残留させて、本発明の皮
革様シートを製造する。その場合の有機溶剤などによる
海成分の除去処理は、人工皮革などの製造に当たって従
来から採用されている既知の方法や条件に準じて行うこ
とができる。極細繊維形成性繊維の極細繊維化を複合樹
脂エマルジョンの凝固後に行う工程は、複合樹脂に拘束
されている海島型繊維の海成分を除去し、複合樹脂に接
触していない島成分である極細繊維を残留させる結果、
得られる皮革様シートの全体として極細繊維からなる繊
維質基材に対する複合樹脂の拘束を弱める効果を有す
る。
【0065】上記本発明方法により得られる皮革様シー
トは、柔軟性に富み、同時に充実感を有し、天然皮革に
近似した極めて良好な風合いを有しており、従来の湿式
凝固法により得られる人工皮革と比べても何ら遜色がな
い。本発明者らの電子顕微鏡観察の結果、本発明方法に
より得られる皮革様シートでは、複合樹脂が繊維質基材
中の極細繊維を強く拘束することなく、極細繊維間に適
度な空間を残しながら繊維間空隙を埋めて凝固している
ことが観察された。そのため、本発明の皮革様シートで
は、繊維の拘束、シートのへたりによって生じる柔軟性
の低下が防止され、しかも繊維間に空間を残しながら繊
維間の空隙を埋めていて見かけの樹脂部分の充填量が増
していることにより、従来のエマルジョン含浸型の皮革
様シートに比べて、良好な柔軟性を保ちながら、充実感
のある、天然皮革に極めて近似した優れた風合いを有す
る皮革様シートが得られるのである。
【0066】本発明の皮革様シートは、上記した優れた
性質を活かして、例えば、マットレス、鞄内張り材料、
衣料用芯地、靴用芯地、クッション材、自動車、列車、
航空機などの内装材、壁材、カーペットなどの広範な用
途に有効に使用することができる。さらに、起毛処理す
ることによりスエード調の皮革様シートが得られ、それ
は衣料、椅子やソファーなどの家具の上張り材、自動車
や列車のシートの上張り材、壁材、手袋などとして好適
に使用することができる。また、本発明の皮革様シート
の片面にポリウレタン層などを既知の方法で付与するこ
とにより、スポーツシューズ、紳士靴、鞄、ハンドバッ
グ、ランドセルなどに用いられる銀付き人工皮革として
も好適に使用することができる。
【0067】
【実施例】以下、実施例などにより本発明を具体的に説
明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら制限さ
れるものではない。なお、以下の実施例および比較例に
おいて、エマルジョンの感熱ゲル化温度、フィルムの9
0℃、160℃における弾性率、α分散の温度、シート
の風合い、物性(引張強力、引裂強力)、極細繊維の繊
度は以下の方法により評価した。
【0068】[感熱ゲル化温度]試験管にエマルジョン
を10g秤取し、90℃の恒温熱水浴中で撹拌しながら
昇温し、エマルジョンが流動性を失いゲル状物となった
ときのエマルジョンの温度を感熱ゲル化温度とした。
【0069】[90℃、160℃における弾性率、α分
散の温度]エマルジョンを50℃で乾燥して得られた厚
さ100μmのフィルムを、130℃で10分間熱処理
した後、(株)レオロジ製粘弾性測定装置FTレオスペ
クトラーDVE−V4を用いて周波数11Hzで測定を
行い、90℃および160℃における弾性率(E′)と
α分散の温度(Tα)を求めた。
【0070】[風合い]皮革様シートを手で触って、天
然皮革様の風合いを有する場合を「○」と判定し、天然
皮革に比べて硬くて柔軟性が不足している場合および/
または充実感が不足していて天然皮革様の風合いを有し
ていない場合を「×」と判定した。
【0071】[引張強力]皮革様シートを12×2.5
cmに切り取り、JIS−L1096に準じて、つかみ
具間距離5cm、引張速度2.5cm/minで試験
し、最大引張応力を引張強力(N)とした。
【0072】[引裂強力]皮革様シートを10×4cm
に切り取り、短辺の中央に短辺と直角に5cmの切れ目
を入れる。JIS−K6550に準じて、つかみ具間距
離4cm、引張速度10cmで試験し、シートの引裂力
を引裂強力(N)とした。 [極細繊維の繊度]極細繊維形成性繊維の断面の顕微鏡
写真から、1本の極細繊維形成性繊維断面における島成
分の本数を数え、海成分除去後の極細繊維束1本の繊度
を該本数で割ることにより求める。
【0073】本文中で用いられる化合物の略号を表1お
よび表2に示す。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】《繊維質基材の製造》 [参考例1]6−ナイロン60部と高流動性のポリエチ
レン40部を混合紡糸し、延伸し、それを切断して得ら
れた海島型混合紡糸繊維(単繊維繊度4デニール、繊維
長51mm、6−ナイロンが島成分、繊維断面での島本
数100本)を用いて、カード、クロスラッパー、およ
びニードルパンチの各工程を通し、見掛密度0.160
g/cm3の絡合不織布を製造した。この不織布を加熱
して、海成分であるポリエチレンを溶融させて繊維間を
熱固定して、見掛密度0.285g/cm3の両面が平
滑化した絡合不織布を得た。
【0077】《ポリウレタン系エマルジョンの製造》 [参考例2]三ツ口フラスコに、PMHC2000を1
50.0g、PTMG1400を150.0g、2,4
−トリレンジイソシアネートを66.62gおよび2,
2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸を8.18
gを秤取し、乾燥窒素雰囲気下、90℃で2時間撹拌し
て系中の水酸基を定量的に反応させ、イソシアネート基
末端のポリウレタンプレポリマーを得た。これに2−ブ
タノン198.4gを加えて均一に撹拌した後、40℃
にフラスコ内温度を下げ、トリエチルアミン6.17g
を加えて10分間撹拌を行った。次いで、乳化剤として
ラウリル硫酸ナトリウム4.97gおよびECT−3N
EX(日本サーファクタント工業株式会社製アニオン性
乳化剤)4.97gを蒸留水289.7gに溶解した水
溶液を前記プレポリマーに加えホモミキサーで1分間撹
拌して乳化した後、直ちにジエチレントリアミン6.8
3gおよびエチレンジアミン1.99gを蒸留水50
4.0gに溶解した水溶液を加えてホモミキサーで1分
間撹拌し、鎖伸長反応を行った。その後、2−ブタノン
をロータリーエバポレーターにより除去して、固形分重
量35wt%のポリウレタンエマルジョン(以下、PU
と称する)を得た。PUは、ポリウレタンを構成す
る高分子ポリオール成分の50重量%が非晶性のポリカ
ーボネートポリオールであり、ポリウレタン骨格の側鎖
にエチレン性不飽和基を有しない。
【0078】[参考例3]三ツ口フラスコに、PMPA
2000を300.0g、エチレングリコールジグリシ
ジルエーテルとメタクリル酸の1:2付加物(ジオール
側鎖にメタクリロイル基を2個含有)を1.50g、
2,4−トリレンジイソシアネートを61.82gおよ
び2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸を8.69g
を秤取し、乾燥窒素雰囲気下、90℃で2時間撹拌して
系中の水酸基を定量的に反応させ、イソシアネート基末
端のポリウレタンプレポリマーを得た。これに2−ブタ
ノン197.1gを加えて均一に撹拌した後、40℃に
フラスコ内温度を下げ、トリエチルアミン5.93.g
を加えて10分間撹拌を行った。次いで、乳化剤として
ラウリル硫酸ナトリウム9.87gを蒸留水287.5
gに溶解した水溶液を前記プレポリマーに加えホモミキ
サーで1分間撹拌して乳化した後、直ちにジエチレント
リアミン6.96gおよびイソホロンジアミン5.74
gを蒸留水 500.8gに溶解した水溶液を加えてホ
モミキサーで1分間撹拌し、鎖伸長反応を行った。その
後、2−ブタノンをロータリーエバポレーターにより除
去して、固形分重量35wt%のポリウレタンエマルジ
ョン(以下、PUと称する)を得た。PUは、ポリ
ウレタンを構成する高分子ポリオール成分として非晶性
のポリカーボネートポリオールを含まず、またポリウレ
タン骨格の側鎖にエチレン性不飽和基をポリウレタン1
00g当たり2.3mmol有する。
【0079】[参考例4]三ツ口フラスコに、PMHC
2000を120.0g、PTMG1400を180.
0g、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル
とメタクリル酸の1:2付加物(ジオール側鎖にメタク
リロイル基を2個含有)を0.80g、2,4−トリレ
ンジイソシアネートを68.09gおよび2,2−ビス
(ヒドロキシメチル)酪酸を8.76gを秤取し、乾燥
窒素雰囲気下、90℃で2時間撹拌して系中の水酸基を
定量的に反応させ、イソシアネート基末端のポリウレタ
ンプレポリマーを得た。これに2−ブタノン199.9
gを加えて均一に撹拌した後、40℃にフラスコ内温度
を下げ、トリエチルアミン5.98gを加えて10分間
撹拌を行った。次いで、乳化剤としてラウリル硫酸ナト
リウム5.01gおよびECT−3NEX(日本サーフ
ァクタント工業株式会社製アニオン性乳化剤)5.01
gを蒸留水291.7gに溶解した水溶液を前記プレポ
リマーに加えホモミキサーで1分間撹拌して乳化した
後、直ちにジエチレントリアミン6.92gおよびイソ
ホロンジアミン5.71gを蒸留水507.7gに溶解
した水溶液を加えてホモミキサーで1分間撹拌し、鎖伸
長反応を行った。その後、2−ブタノンをロータリーエ
バポレーターにより除去して、固形分重量35wt%の
ポリウレタンエマルジョン(以下、PUと称する)を
得た。PUは、ポリウレタンを構成する高分子ポリオ
ール成分の40重量%が非晶性のポリカーボネートポリ
オールであり、ポリウレタン骨格の側鎖にエチレン性不
飽和基をポリウレタン100g当たり1.1mmol有
する。
【0080】[参考例5]参考例2において、150.
0gのPMHC2000の代わりにPMHC2000を
30.0gおよびPHC2000を120.0gを使用
すること以外は参考例2と同様にして、固形分重量35
wt%のポリウレタンエマルジョン(以下、PUと称
する)を得た。PUは、ポリウレタンを構成する高分
子ポリオール成分の20重量%が非晶性のポリカーボネ
ートポリオールであり、ポリウレタン骨格の側鎖にエチ
レン性不飽和基を有しない。
【0081】[参考例6]参考例2において、PMHC
2000の代わりにPHC2000を150.0g使用
すること以外は参考例2と同様にして、固形分重量35
wt%のポリウレタンエマルジョン(以下、PUと称
する)を得た。PUは、ポリウレタンを構成する高分
子ポリオール成分として非晶性のポリカーボネートポリ
オールを含まず、またポリウレタン骨格の側鎖にエチレ
ン性不飽和基を有しない。
【0082】[参考例7]参考例3において、エチレン
グリコールジグリシジルエーテルとメタクリル酸の1:
2付加物の使用量を0.20gにすること以外は参考例
3と同様にして、固形分重量35wt%のポリウレタン
エマルジョン(以下、PUと称する)を得た。PU
は、ポリウレタンを構成する高分子ポリオール成分とし
て非晶性のポリカーボネートポリオールを含まず、また
ポリウレタン骨格の側鎖にエチレン性不飽和基をポリウ
レタン100g当たり0.3mmol有する。
【0083】《弾性ポリマーの水系エマルジョンおよび
皮革様シートの製造》 [実施例1]冷却管付きフラスコに、参考例2で得られ
たPUを240g、硫酸第一鉄七水和物(FeSO4
・7H2O)を0.020g、ピロリン酸カリウムを
0.294g、ロンガリット(ホルムアルデヒドナトリ
ウムスルホキシレートの2水塩)を0.451g、ED
TA・2Naを0.020gおよび蒸留水を234g秤
取し、40℃に昇温した後、系内を十分に窒素置換し
た。次いで、BA167.6g、HDDA5.29g、
ALMA3.53gおよびECT−3NEX(日本サー
ファクタント工業株式会社製アニオン性乳化剤)1.4
1gの混合物(モノマー)と、CHP0.353g、
ECT−3NEX0.353gおよび蒸留水27.0g
の乳化液(開始剤)を、別々の滴下ロートからフラス
コ内に5時間かけて滴下し、更に滴下終了後、40℃に
30分間保持した。その後、MMA19.2g、HDD
A0.392gおよびECT−3NEX0.157gの
混合物(モノマー)と、CHP0.039g、ECT
−3NEX0.039gおよび蒸留水3.0gの乳化液
(開始剤)を、別々の滴下ロートからフラスコ内に4
0分かけて滴下し、更に滴下終了後、50℃に1時間保
持して重合を完了させて、固形分重量40wt%のエマ
ルジョンを得た。このエマルジョン100重量部に対し
て、エマルゲン109P(花王製、ノニオン性界面活性
剤)4重量部および塩化カルシウム1重量部を配合し、
感熱ゲル化性を有するエマルジョンを得た。このエマル
ジョンの感熱ゲル化温度、エマルジョンを乾燥して得ら
れたフィルムの90℃と160における弾性率(E′)
およびα分散の温度(Tα)は表4に示したとおりであ
った。
【0084】参考例1で得られた不織布を、上記の感熱
ゲル化性エマルジョンの浴中に浸漬して感熱ゲル化性エ
マルジョンを含浸させた後、浴から取り出し、プレスロ
ールで絞り、次いで90℃の熱水浴中に1分間浸漬して
感熱ゲル化性エマルジョンを凝固させ、さらに130℃
の熱風乾燥機中で30分間乾燥してシート状物を製造し
た。次に、このシートを温度90℃のトルエン中に浸漬
し、浸漬中に2kg/cm2のプレスロールで5回の絞
り処理を行って、不織布を構成している海島型混合紡糸
繊維における海成分(ポリエチレン)を溶解除去して、
6−ナイロンの極細繊維束絡合不織布中に弾性ポリマー
が含浸・凝固している皮革様シートを製造した。この皮
革様シートの複合樹脂の付着重量は極細繊維化処理後の
不織布重量に対して59重量%であった。このシート
は、表4に示したように、風合いと物性が優れた天然皮
革様のシートであった。
【0085】[実施例2]実施例1と同様の方法で、表
3に示した原料を使用して感熱ゲル化性を有するエマル
ジョンを得た。このエマルジョンの感熱ゲル化温度、エ
マルジョンを乾燥して得られたフィルムの90℃と16
0℃における弾性率およびα分散温度は表4に示したと
おりであった。参考例1で得られた不織布を、上記の感
熱ゲル化性エマルジョンの浴中に浸漬して感熱ゲル化性
エマルジョンを含浸させた後、浴から取り出し、プレス
ロールで絞り、次いで1.5kg/cm2の圧力の加熱
水蒸気を全体に吹き付けて感熱ゲル化性エマルジョンを
凝固させ、さらに130℃の熱風乾燥機中で30分間乾
燥してシートを製造した。この後、実施例1と同様の方
法で極細繊維化処理を行って皮革様シートを得た。この
皮革様シートの複合樹脂の付着重量は極細繊維化処理後
の不織布重量に対して56重量%であった。このシート
は、表4に示したように、風合いと物性が優れた天然皮
革様のシートであった。
【0086】[実施例3]実施例1と同様の方法で、表
3に示した原料を使用して感熱ゲル化性を有するエマル
ジョンを得た。このエマルジョンの感熱ゲル化温度、エ
マルジョンを乾燥して得られたフィルムの90℃と16
0℃における弾性率およびα分散温度は表4に示したと
おりであった。実施例1と同様の方法で、参考例1で得
られた不織布に上記の感熱ゲル化性エマルジョンを含
浸、付与した後、極細繊維化処理を行って皮革様シート
を得た。この皮革様シートの複合の付着重量は極細繊維
化処理後の不織布重量に対して61重量%であった。こ
のシートは、表4に示したように、風合いと物性が優れ
た天然皮革様のシートであった。
【0087】[実施例4]実施例1と同様の方法で、表
3に示した原料を使用して感熱ゲル化性を有するエマル
ジョンを得た。このエマルジョンの感熱ゲル化温度、エ
マルジョンを乾燥して得られたフィルムの90℃と16
0℃における弾性率およびα分散温度は表4に示したと
おりであった。上記の感熱ゲル化性エマルジョン100
重量部に対して、浸透剤としてポリフローKL−260
(TCS社製基材湿潤剤)0.5重量部を添加した後、
参考例1で得られた不織布を、このエマルジョンの浴中
に浸漬して感熱ゲル化性エマルジョンを含浸させた後、
浴から取り出し、プレスロールで絞り、次いで130℃
の熱風乾燥機中で30分間加熱し、凝固および乾燥をさ
せることによりシートを製造した。この後、実施例1と
同様の方法で極細繊維化処理を行って皮革様シートを得
た。この皮革様シートの複合樹脂の付着重量は極細繊維
化処理後の不織布重量に対して52重量%であった。こ
のシートは、表4に示したように、風合いと物性が優れ
た天然皮革様のシートであった。
【0088】[比較例1]実施例1と同様の方法で、表
3に示した原料を使用して感熱ゲル化性を有するエマル
ジョンを得た。このエマルジョンの感熱ゲル化温度、エ
マルジョンを乾燥して得られたフィルムの90℃と16
0℃における弾性率およびα分散温度は表4に示したと
おりであった。実施例1と同様の方法で、参考例1で得
られた不織布に上記の感熱ゲル化性エマルジョンを含
浸、付与した後、極細繊維化処理を行って皮革様シート
を得た。この皮革様シートの複合樹脂の付着重量は極細
繊維化処理後の不織布重量に対して57重量%であっ
た。このシートは、表4に示したように、風合いは優れ
るものの、引張強さ、引裂強さといった物性が劣ってい
た。
【0089】[比較例2]比較例1と同様の方法で、表
3に示した原料を使用して感熱ゲル化性を有するエマル
ジョンを得た。エマルジョンの感熱ゲル化温度、エマル
ジョンを乾燥して得られたフィルムの90℃と160℃
における弾性率およびα分散の温度は表4に示したとお
りであった。実施例1と同様の方法で、参考例1で得ら
れた不織布に上記の感熱ゲル化性エマルジョンを含浸、
付与した後、極細繊維化処理を行って皮革様シートを得
た。この皮革様シートの複合樹脂の付着重量は極細繊維
化処理後の不織布重量に対して59重量%であった。こ
のシートは、表4に示したように、風合いは優れるもの
の、引張強さ、引裂強さといった物性が劣っていた。
【0090】[比較例3]実施例1と同様の方法で、表
3に示した原料を使用して感熱ゲル化性を有するエマル
ジョンを得た。エマルジョンの感熱ゲル化温度、エマル
ジョンを乾燥して得られたフィルムの90℃と160℃
における弾性率およびα分散の温度は表4に示したとお
りであった。実施例1と同様の方法で、参考例1で得ら
れた不織布に上記の感熱ゲル化性エマルジョンを含浸、
付与した後、極細繊維化処理を行って皮革様シートを得
た。この皮革様シートの複合樹脂の付着重量は極細繊維
化処理後の不織布重量に対して54重量%であった。こ
のシートは、表4に示したように、風合いは優れるもの
の、引張強さ、引裂強さといった物性が劣っていた。
【0091】[比較例4]実施例3において、エマルゲ
ン109Pおよび塩化カルシウムを配合しないこと以外
は実施例3と同様にして、エマルジョンを得た。このエ
マルジョンは感熱ゲル化性を示さず、エマルジョンを乾
燥して得られたフィルムの90℃と160℃における弾
性率およびα分散の温度は表4に示したとおりであっ
た。実施例1と同様の方法で、参考例1で得られた不織
布に上記の感熱ゲル化性エマルジョンを含浸・付与した
ところ、エマルジョンが熱水浴中に流出し、浴槽を汚染
した。次に、実施例3と同様の方法で、このシートの不
織布を極細繊維化処理して皮革様シートを製造した。こ
の皮革様シートの複合樹脂の付着重量は極細繊維化処理
後の不織布重量に対して31重量%であった。このシー
トは、へたりを生じて全体的にペーパーライクな充実感
のないものであり、また、引張強さ、引裂強さといった
物性も劣っていた。
【0092】
【表3】
【0093】
【表4】
【0094】
【発明の効果】本発明の製造方法によれば、極細繊維か
らなる繊維質基材の使用と複合樹脂の水系エマルジョン
による樹脂付与により、柔軟性と充実感などに優れた天
然皮革様の風合いを有し、且つ物性、耐光性、耐久性に
も優れた皮革様シートを安価に製造することができる。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 極細繊維形成性繊維からなる繊維質基材
    に下記の条件(1−i)〜(1−iii)を満足する複合
    樹脂エマルジョンを含浸して凝固した後に、該極細繊維
    形成性繊維を極細化することを特徴とする皮革様シート
    の製造方法。 (1−i)該複合樹脂エマルジョンが感熱ゲル化性であ
    ること、(1−ii)該複合樹脂エマルジョンが、ポリウ
    レタン系エマルジョン(A)の存在下でエチレン性不飽
    和モノマー(B)を、ポリウレタン系エマルジョン
    (A)中のポリウレタンの重量/エチレン性不飽和モノ
    マー(B)の重量が90/10〜10/90の割合で乳
    化重合して得られるエマルジョンであること、(1−ii
    i)前記ポリウレタン系エマルジョン(A)が、ポリウ
    レタンを構成する高分子ポリオール成分の30重量%以
    上が非晶性のポリカーボネートポリオールであるポリウ
    レタンのエマルジョンであること、
  2. 【請求項2】 極細繊維形成性繊維からなる繊維質基材
    に下記の条件(2−i)〜(2−iii)を満足する複合
    樹脂エマルジョンを含浸して凝固した後に、該極細繊維
    形成性繊維を極細化することを特徴とする皮革様シート
    の製造方法。 (2−i)該複合樹脂エマルジョンが感熱ゲル化性であ
    ること、(2−ii)該複合樹脂エマルジョンが、ポリウ
    レタン系エマルジョン(A)の存在下でエチレン性不飽
    和モノマー(B)を、ポリウレタン系エマルジョン
    (A)中のポリウレタンの重量/エチレン性不飽和モノ
    マー(B)の重量が90/10〜10/90の割合で乳
    化重合して得られるエマルジョンであること、(2−ii
    i)前記ポリウレタン系エマルジョン(A)が、ポリウ
    レタン骨格の側鎖にエチレン性不飽和基を、ポリウレタ
    ン100g当たり0.5mmol以上の割合で有するポ
    リウレタンのエマルジョンであること、
  3. 【請求項3】 複合樹脂エマルジョンを50℃で乾燥し
    て得られる厚さ100μmのフィルムの90℃における
    弾性率が、5.0×107Pa以下であり、160℃に
    おける弾性率が、5.0×105Pa以上である請求項
    1または2に記載の皮革様シートの製造方法。
  4. 【請求項4】 エチレン性不飽和モノマー(B)が、主
    として(メタ)アクリル酸誘導体からなる単官能エチレ
    ン性不飽和モノマー(B1)90〜99.9重量%およ
    び多官能エチレン性不飽和モノマー(B2)10〜0.
    1重量%よりなる請求項1〜3のいずれかに記載の皮革
    様シートの製造方法。
  5. 【請求項5】 極細繊維形成性繊維よりなる繊維質基材
    に上記の条件(1−i)〜(1−iii)および/または
    (2−i)〜(2−iii)を満足する複合樹脂エマルジ
    ョンを含浸して凝固した後に該極細繊維形成性繊維を極
    細繊維化して皮革様シートを製造する方法であって、前
    記極細繊維形成性繊維が2種以上の高分子物質よりなる
    海島型複合紡糸繊維および/または海島型混合紡糸繊維
    であり、前記繊維よりなる繊維質基材に前記複合樹脂エ
    マルジョンを含浸して凝固した後に、前記海島型複合紡
    糸繊維および/または海島型混合紡糸繊維中の海成分を
    除去して極細繊維化を行う請求項1〜4のいずれかに記
    載の皮革様シートの製造方法。
  6. 【請求項6】 複合樹脂エマルジョンとして感熱ゲル化
    温度が30〜70℃であるものを用い、該複合樹脂エマ
    ルジョンを繊維質基材に含浸した後、感熱ゲル化温度よ
    りも10℃以上高い温度で複合樹脂エマルジョンを凝固
    する請求項1〜5のいずれかに記載の皮革様シートの製
    造方法。
  7. 【請求項7】 請求項1〜6のいずれか1項の製造方法
    により得られる皮革様シート。
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