JP2022101943A - 人工皮革 - Google Patents

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駿一 宮原
Shunichi Miyahara
卓也 芝野
Takuya Shibano
智 柳澤
Satoshi Yanagisawa
行博 松▲崎▼
Yukihiro Matsuzaki
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Abstract

【課題】 柔軟な風合いと優れた耐久性を両立した人工皮革およびその製造方法を提供すること。【解決手段】 平均単繊維直径0.1μm以上10μm以下の極細繊維からなる繊維質基材と、高分子弾性体とを含有する人工皮革であって、前記の高分子弾性体が、親水性基を有するポリウレタンと、イソシアネート基を有する化合物とを含み、前記のポリウレタン中のウレタン結合に対する前記のイソシアネート基の割合が、0.01%以上1%以下である、人工皮革。【選択図】なし

Description

本発明は、長期の耐久性に優れた人工皮革に関するものである。
主として不織布等の繊維質基材とポリウレタンからなる人工皮革は、天然皮革にない優れた特徴を有しており、衣料や椅子張りおよび自動車内装材用途等にその使用が年々広がってきた。このような人工皮革を製造するにあたっては、繊維質基材にポリウレタンの有機溶剤溶液を含浸せしめた後、得られた繊維質基材をポリウレタンの非溶媒である水または有機溶剤水溶液中に浸漬してポリウレタンを湿式凝固せしめる工程の組み合わせが、一般的に採用されている。しかしながら、一般的に有機溶剤は、人体や環境への有害性が高いことから、人工皮革の製造に際しては、有機溶剤を使用しない手法が強く求められている。
具体的な解決手段として、従来の有機溶剤系のポリウレタンに代えて、水中にポリウレタン樹脂を分散させた水分散型ポリウレタンを用いる方法が検討されている。
しかしながら、水分散型ポリウレタン液を繊維質基材に含浸し、ポリウレタンを凝固させた人工皮革は、湿潤時に物性が低下しやすいという課題があり、ポリウレタンに架橋構造を付与することで水分散型ポリウレタン適用による物性低下を抑制することが提案されている(特許文献1、2参照)。
国際公開第2015/115290号 国際公開第2019/025964号
特許文献1、2に開示された方法においては、ポリウレタンに架橋構造を付与することで、人工皮革に求められる強度を向上させることは、ある程度可能である。しかしながら、長期間の耐湿性については不十分であり、更なる向上が求められていた。
そこで、本発明の目的は、上記の従来技術の背景に鑑み、長期の耐久性に優れた人工皮革を提供することにある。
上記の目的を達成すべく本発明者らが検討を重ねた結果、高分子弾性体中にイソシアネート基を有する化合物を特定量含むことで、簡便かつ環境に配慮したプロセスで人工皮革を製造できるだけでなく、長期の耐湿性に優れた人工皮革が得られることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は前記の課題を解決せんとするものであって、本発明の人工皮革は、平均単繊維直径0.1μm以上10μm以下の極細繊維からなる繊維質基材と、高分子弾性体とを含有する人工皮革であって、前記の高分子弾性体が、親水性基を有するポリウレタンと、イソシアネート基を有する化合物とを含み、前記のポリウレタン中のウレタン結合に対する前記のイソシアネート基の割合が、0.01%以上1%以下である。
本発明の人工皮革の好ましい態様によれば、25℃におけるN,N-ジメチルホルムアミドに対する溶解する割合が、20質量%以下である。
本発明の人工皮革の好ましい態様によれば、前記のポリウレタンが、ポリエーテルジオールおよび/またはポリカーボネートジオールを構成成分として含有する。
本発明の人工皮革の好ましい態様によれば、前記のイソシアネート基を有する化合物が、トリイソシアネート化合物である。
本発明によれば、柔軟な風合いと優れた耐湿性を両立した人工皮革が得られる。
本発明の人工皮革は、平均単繊維直径0.1μm以上10μm以下の極細繊維からなる繊維質基材と、高分子弾性体とを含有する人工皮革であって、前記の高分子弾性体が、親水性基を有するポリウレタンと、イソシアネート基を有する化合物とを含み、前記のポリウレタン中のウレタン結合に対する前記のイソシアネート基の割合が、0.01%以上1%以下である。
以下にこの構成要素について詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下に説明する範囲に何ら限定されるものではない。
[極細繊維]
本発明に用いられる極細繊維に用いることができる樹脂としては、優れた耐久性、特には機械的強度、耐熱性および耐光性の観点から、例えば、ポリエステル系樹脂やポリアミド系樹脂などが挙げられる。ポリエステル系樹脂の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなどが挙げられる。ポリエステル系樹脂は、例えば、ジカルボン酸および/またはそのエステル形成性誘導体とジオールとから得ることができる。
前記のポリエステル系樹脂に用いられるジカルボン酸および/またはそのエステル形成性誘導体としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ジフェニル-4,4’-ジカルボン酸およびそのエステル形成性誘導体などが挙げられる。なお、本発明でいうエステル形成性誘導体とは、ジカルボン酸の低級アルキルエステル、酸無水物、アシル塩化物などである。具体的には、メチルエステル、エチルエステル、ヒドロキシエチルエステルなどが好ましく用いられる。本発明で用いられるジカルボン酸および/またはそのエステル形成性誘導体としてより好ましい態様は、テレフタル酸および/またはそのジメチルエステルである。
前記のポリエステル系樹脂に用いられるジオールとしては、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。中でもエチレングリコールが好ましく用いられる。
極細繊維に用いられる樹脂としてポリアミド系樹脂を用いる場合には、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド56、ポリアミド610、ポリアミド11、ポリアミド12、共重合ポリアミド等を用いることができる。
極細繊維に用いられる樹脂には、種々の目的に応じて、酸化チタン粒子等の無機粒子、潤滑剤、顔料、熱安定剤、紫外線吸収剤、導電剤、蓄熱剤および抗菌剤等を含有することができる。
極細繊維の断面形状としては、丸断面、異形断面のいずれでも採用することができる。異形断面の具体例としては、楕円、扁平、三角などの多角形、扇形、十字型などが挙げられる。
本発明において、極細繊維の平均単繊維直径は、0.1μm以上10μm以下であることが重要である。極細繊維の平均単繊維直径が10μm以下、好ましくは7μm以下、より好ましくは5μm以下であることによって、人工皮革をより柔軟なものとすることができる。また、立毛の品位を向上させることができる。一方、極細繊維の平均単繊維直径が0.1μm以上、好ましくは0.3μm以上、より好ましくは0.7μm以上であることによって、染色を行う場合に染色後の発色性に優れた人工皮革とすることができる。また、バフィングによる起毛処理を行う際に、束状に存在する極細繊維の分散しやすさ、さばけやすさを向上させることができる。
本発明でいう平均単繊維直径とは、以下の方法で測定されるものである。すなわち、
(1)得られた人工皮革を厚み方向に切断した断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察する。
(2)観察面内の任意の50本の極細繊維の繊維直径をそれぞれの極細繊維断面において3方向で測定する。ただし、異型断面の極細繊維を採用した場合には、まず単繊維の断面積を測定し、当該断面積となる円の直径を以下の式で算出する。これより得られた直径をその単繊維の単繊維直径とする
単繊維直径(μm)=(4×(単繊維の断面積(μm))/π)1/2
(3)得られた合計150点の算術平均値(μm)を算出し、小数点以下第二位で四捨五入する。
[繊維質基材]
本発明で用いられる繊維質基材は、前記の極細繊維からなる。なお、繊維質基材には、異なる原料の極細繊維が混合されていることが許容される。
前記の繊維質基材の具体的な形態としては、前記の極細繊維それぞれが絡合してなる不織布や極細繊維の繊維束が絡合してなる不織布を用いることができる。中でも、極細繊維の繊維束が絡合してなる不織布が、人工皮革の強度や風合いの観点から好ましく用いられる。柔軟性や風合いの観点から、特に好ましくは、極細繊維の繊維束を構成する極細繊維同士が適度に離間して空隙を有する不織布が好ましく用いられる。このように、極細繊維の繊維束が絡合してなる不織布は、例えば、極細繊維発現型繊維をあらかじめ絡合した後に極細繊維を発現させることによって得ることができる。また、極細繊維の繊維束を構成する極細繊維同士が適度に離間して空隙を有する不織布は、例えば、海成分を除去することによって島成分の間を空隙とすることができる海島型複合繊維を用いることによって得ることができる。
前記の不織布としては、短繊維不織布、長繊維不織布のいずれでもよいが、人工皮革の風合いや品位の観点から短繊維不織布がより好ましく用いられる。
短繊維不織布を用いた場合における短繊維の繊維長は、25mm以上90mm以下の範囲であることが好ましい。繊維長を25mm以上、より好ましくは35mm以上、さらに好ましくは40mm以上とすることにより、絡合により耐摩耗性に優れた人工皮革が得られやすくなる。また、繊維長を90mm以下、より好ましくは80mm以下、さらに好ましくは70mm以下とすることにより、より風合いや品位に優れた人工皮革を得ることができる。
本発明において、繊維質基材として不織布を用いる場合、強度を向上させるなどの目的で、不織布の内部に織物や編物を挿入し、または積層し、または裏張りすることもできる。かかる織物や編物を構成する繊維の平均単繊維直径は、ニードルパンチ時における損傷を抑制し、強度を維持することができるため、0.3μm以上10μm以下であることがより好ましい。
前記の織物や編物を構成する繊維としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリ乳酸などのポリエステルや、ポリアミド6やポリアミド66などのポリアミド等の合成繊維、セルロース系ポリマー等の再生繊維、綿や麻等の天然繊維などを用いることができる。
[高分子弾性体]
次に、本発明の人工皮革は、高分子弾性体を有する。この高分子弾性体は、後述するように親水性基を有する高分子弾性体前駆体が凝固して形成される「親水性基を有するポリウレタン」と、後述するイソシアネート基を有する化合物と、を含むものである。以下、この詳細について、さらに説明する。
(1)高分子弾性体前駆体
まず、本発明に係る高分子弾性体前駆体は、親水性基を有する。本発明において「親水性基を有する」とは、そのものが「活性水素を有する基を有する」ことを指す。この活性水素を有する基の具体例としては、水酸基やカルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基等が挙げられる。
この高分子弾性体前駆体としては、後述する高分子ポリオールと、有機ジイソシアネートと、親水性基を有する活性水素成分含有化合物とを反応させて親水性プレポリマーを形成し、その後に鎖伸長剤を添加・反応させることによって調製される、水分散型ポリウレタン樹脂がより好ましく用いられる。以下に、これらについて詳細を説明する。
(1-1)高分子ポリオール
本発明で好ましく用いられる高分子ポリオールは、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオール等を挙げることができる。
まず、ポリエーテル系ポリオールとしては、多価アルコールやポリアミンを開始剤として、エチレンオキシド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、テトラヒドロフラン、エピクロルヒドリンおよびシクロヘキシレン等のモノマーを付加・重合して得られるポリオール、ならびに、前記のモノマーをプロトン酸、ルイス酸およびカチオン触媒等を触媒として開環重合して得られるポリオールが挙げられる。具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなど、およびこれらを組み合わせた共重合ポリオールを挙げることができる。
次に、ポリエステル系ポリオールとしては、各種低分子量ポリオールと多塩基酸とを縮合させて得られるポリエステルポリオールやラクトンを開重合することによって得られるポリオールなどを挙げることができる。
ポリエステル系ポリオールに用いられる低分子量ポリオールとしては、例えば、「エチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1.8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール」などの直鎖アルキレングリコールや、「ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール」などの分岐アルキレングリコール、1,4-シクロヘキサンジオールなどの脂環式ジオール、および1,4-ビス(β-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンなどの芳香族2価アルコール、などから選ばれる1種または2種以上が挙げられる。また、ビスフェノールAに各種アルキレンオキサイドを付加させて得られる付加物も、低分子量ポリオールとして使用可能である。
一方、ポリエステル系ポリオールに用いられる多塩基酸としては、例えば、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、およびヘキサヒドロイソフタル酸などからなる群から選ばれる1種または2種以上が挙げられる。
そして、ポリカーボネート系ポリオールとしては、ポリオールとジアルキルカーボネート、あるいはポリオールとジアリールカーボネートなど、ポリオールとカーボネート化合物との反応によって得られる化合物を挙げることができる。
ポリカーボネート系ポリオールに用いられるポリオールとしては、ポリエステル系ポリオールに用いられる低分子量ポリオールを用いることができる。一方、ジアルキルカーボネートとしては、ジメチルカーボネートやジエチルカーボネートなどを用いることができ、ジアリールカーボネートとしてはジフェニルカーボネートなどを用いることができる。
なお、本発明で好ましく用いられる高分子ポリオールの数平均分子量は、500以上5000以下であることが好ましい。高分子ポリオールの数平均分子量を500以上、より好ましくは1500以上とすることにより、人工皮革の風合いが硬くなるのを防ぎやすくすることができる。また、数平均分子量を5000以下、より好ましくは4000以下とすることにより、バインダーとしてのポリウレタンの強度を維持しやすくすることができる。
(1-2)有機ジイソシアネート
本発明で用いられる有機ジイソシアネートとしては、炭素数(NCO基中の炭素を除く、以下同様。)が6以上20以下の芳香族ジイソシアネート、炭素数が2以上18以下の脂肪族ジイソシアネート、炭素数が4以上15以下の脂環式ジイソシアネート、炭素数が8以上15以下の芳香脂肪族ジイソシアネート、これらのジイソシアネートの変性体(カーボジイミド変性体、ウレタン変性体、ウレトジオン変性体など。)およびこれらの2種以上の混合物等が含まれる。
前記の炭素数が6以上20以下の芳香族ジイソシアネートの具体例としては、1,3-および/または1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-および/2,6-トリレンジイソシアネート、2,4’-および/または4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(以下MDIと略記)、4,4’-ジイソシアナトビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトジフェニルメタン、および1,5-ナフチレンジイソシアネートなどが挙げられる。
前記の炭素数が2以上18以下の脂肪族ジイソシアネートの具体例としては、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6-ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2-イソシアナトエチル)カーボネート、および2-イソシアナトエチル-2,6-ジイソシアナトヘキサエートなどが挙げられる。
前記の炭素数が4以上15以下の脂環式ジイソシアネートの具体例としては、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、ビス(2-イソシアナトエチル)-4-シクロヘキシレン-1,2-ジカルボキシレート、および2,5-および/または2,6-ノルボルナンジイソシアネートなどが挙げられる。
前記の炭素数が8以上15以下の芳香脂肪族ジイソシアネートの具体例としては、m-および/またはp-キシリレンジイソシアネートや、α、α、α’、α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
これらのうち、好ましい有機ジイソシアネートは、脂環式ジイソシアネートである。また、特に好ましい有機ジイソシアネートは、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネートである。
(1-3)親水性基を有する活性水素成分含有化合物
本発明で好ましく用いられる親水性基を有する活性水素成分含有化合物としては、ノニオン性基および/またはアニオン性基および/またはカチオン性基と活性水素とを含有する化合物等が挙げられる。これらの活性水素成分含有化合物は、中和剤で中和した塩の状態でも用いることができる。この親水性基を有する活性水素成分含有化合物を用いることによって、人工皮革の製造方法で用いられる水分散液の安定性を高めることができる。
ノニオン性基と活性水素を有する化合物としては、2つ以上の活性水素成分または2つ以上のイソシアネート基を含み、側鎖に分子量250~9000のポリオキシエチレングリコール基等を有している化合物、および、トリメチロールプロパンやトリメチロールブタン等のトリオール等が挙げられる。
アニオン性基と活性水素を有する化合物としては、2,2-ジメチロールプロピオン酸、2,2-ジメチロールブタン酸、2,2-ジメチロール吉草酸等のカルボキシル基含有化合物およびそれらの誘導体や、1,3-フェニレンジアミン-4,6-ジスルホン酸、3-(2,3-ジヒドロキシプロポキシ)-1-プロパンスルホン酸等のスルホン酸基を含有する化合物およびそれらの誘導体、並びにこれらの化合物を中和剤で中和した塩が挙げられる。
カチオン性基と活性水素を含有する化合物としては、3-ジメチルアミノプロパノール、N-メチルジエタノールアミン、N-プロピルジエタノールアミン等の3級アミノ基含有化合物およびそれらの誘導体が挙げられる。
(1-4)鎖伸長剤
本発明に用いられる鎖伸長剤としては、水、「エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコールおよびネオペンチルグリコールなど」の低分子ジオール、「1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンなど」の脂環式ジオール、「1,4-ビス(ヒドロキシエチル)ベンゼンなど」の芳香族ジオール、「エチレンジアミンなど」の脂肪族ジアミン、「イソホロンジアミンなど」の脂環式ジアミン、「4,4-ジアミノジフェニルメタンなど」の芳香族ジアミン、「キシレンジアミンなど」の芳香脂肪族ジアミン、「エタノールアミンなど」のアルカノールアミン、ヒドラジン、「アジピン酸ジヒドラジドなど」のジヒドラジド、および、これらの2種以上の混合物が挙げられる。
これらのうち好ましい鎖伸長剤は、水、低分子ジオール、芳香族ジアミンであり、更に好ましくは水、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、4,4’-ジアミノジフェニルメタンおよびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
(1-5)水分散型ポリウレタン樹脂の構成
前記のとおり、本発明で好ましく用いられる水分散型ポリウレタン樹脂は、前記の高分子ポリオールと、有機ジイソシアネートと、親水性基を有する活性水素成分含有化合物とを反応させて親水性プレポリマーを形成し、その後に鎖伸長剤を添加・反応させることによって調製される。
(1-6)高分子弾性体前駆体の構成
高分子弾性体前駆体は、耐加水分解性の観点から、ポリエーテルジオールおよび/またはポリカーボネートジオールを構成成分として含有することが好ましい。高分子弾性体前駆体がこのポリエーテルジオールを構成成分として含有することによって、そのエーテル結合の自由度が高いことでガラス転移温度が低く、且つ凝集力も弱い為に柔軟性に優れる高分子弾性体とすることができる。一方、ポリカーボネートジオールを構成成分として含有することによって、そのカーボネート基の有する高い凝集力により、耐水性、耐熱性、耐候性、力学物性に優れる高分子弾性体とすることができる。
本発明に用いられる高分子弾性体前駆体の数平均分子量は、20000以上500000以下が好ましい。20000以上、より好ましくは30000以上であることによって、高分子弾性体の強度を高くできる。一方、500000以下、より好ましくは150000以下であることによって、粘度の安定性を高め、作業性を向上させることができる。
前記の高分子弾性体前駆体の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めることができ、例えば次の条件で測定される。
・機器:東ソー株式会社製「HLC-8220」
・カラム:東ソー株式会社製「TSKgel α-M」
・溶媒:N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)
・温度:40℃
・校正:ポリスチレン。
(2)添加剤
本発明の人工皮革を製造する際には、高分子弾性体を形成するための溶液中に、後述するようなイソシアネート基を有する化合物を添加することが重要である。またその他にも、必要により、着色剤(酸化チタン、カーボンブラックなど)、紫外線吸収剤(ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系など)や酸化防止剤[4,4-ブチリデンービス(3-メチル-6-1-ブチルフェノール)などのヒンダードフェノール;トリフェニルホスファイト、トリクロルエチルホスファイトなどの有機ホスファイトなど]などの各種安定剤、無機充填剤(炭酸カルシウムなど)、増粘剤(ウレタン変性ポリエーテルやアクリル系重合物など)などを、高分子弾性体を形成するための溶液中に含有させることができる。以下に、イソシアネート基を有する化合物について詳細を説明する。
(2-1)イソシアネート基を有する化合物
本発明の人工皮革は、高分子弾性体が、前記の親水性基を有するポリウレタンとイソシアネート基を有する化合物とを含む。このようにすることによって、イソシアネート基を有する化合物が空気中の水分を選択的に吸着し、実使用において経年劣化する高分子弾性体の劣化を抑制することができ、長期間の耐湿性に優れる人工皮革とすることができる。
特に、本発明においては、イソシアネート基を有する化合物が、イソシアネート基を複数有する化合物であることが好ましく、トリイソシアネート化合物であることがさらに好ましい。ポリイソシアネート基を複数有する場合、少ない添加量でも後述する高分子弾性体の劣化を抑制する効果を発現することができ、高分子弾性体の物性低下をより抑制することができる。
トリイソシアネート化合物としては、例えばリジントリイソシアネートや、1,3,5―トリス(イソシアナトヘキサメチレン)イソシアヌレートなどを用いることができる。
(3)高分子弾性体
本発明の人工皮革を構成する高分子弾性体は、ポリエーテルジオールおよび/またはポリカーボネートジオールを構成成分として含有することが好ましい。
本発明に係る高分子弾性体がこのポリエーテルジオールを構成成分として含有することによって、そのエーテル結合の自由度が高いことでガラス転移温度が低く、且つ凝集力も弱い為に柔軟性に優れる高分子弾性体とすることができる。一方、ポリカーボネートジオールを構成成分として含有することによって、そのカーボネート基の有する高い凝集力により、耐水性、耐熱性、耐候性といった耐久性に優れる高分子弾性体とすることができる。
本発明で用いられる親水性基を有する高分子弾性体は、人工皮革中で繊維同士を適度に把持しており、好ましくは人工皮革の少なくとも片面に立毛を有する観点から、繊維質基材の内部に存在していることが好ましい態様である。
[人工皮革]
本発明の人工皮革は、人工皮革における高分子弾性体が、親水性基を有するポリウレタンと、イソシアネート基を有する化合物を含み、前記のポリウレタン中のウレタン結合に対する前記のイソシアネート基の割合が、0.01%以上1%以下である。前記のポリウレタン中のウレタン結合に対する前記のイソシアネート基の割合が、0.01%以上、好ましくは0.05%以上、さらに好ましくは0.1%以上であることで、イソシアネート基を有する化合物が人工皮革中に十分かつ均一に存在し、実使用において経年劣化する高分子弾性体の劣化を抑制することができる。一方、前記のポリウレタン中のウレタン結合に対する前記のイソシアネート基の割合が、1%以下、好ましくは0.8%以下であることで、イソシアネート基を有する化合物が高分子弾性体前駆体と相溶性良く存在し、高分子弾性体の凝固阻害を抑制することができるとともに、高分子弾性体の物性低下を抑制することができる。
本発明において、前記のポリウレタン中のウレタン結合に対する前記のイソシアネート基の割合は、以下の方法で測定・算出される値を採用するものとする。すなわち、まず、人工皮革から、極細繊維のみを溶出し、高分子弾性体を抽出する。続いて、得られた高分子弾性体をプレスすることで、厚さ1mmの膜状シートに成型する。そして、この膜状シートをATR法にてIR測定を実施する。得られたスペクトルから、2260cm-1付近に観測されたイソシアネート基の伸縮振動に由来するピークの吸光度をイソシアネート基由来の吸光度、1720cm-1付近に観測されたウレタン結合に由来するピークをウレタン結合由来の吸光度とし、イソシアネート基由来の吸光度をウレタン結合由来の吸光度で除した値(単位なし)を100倍し、さらに小数点以下第2位で四捨五入して得られた値(%)を、前記のポリウレタン中のウレタン結合に対する前記のイソシアネート基の割合とする。
また、本発明の人工皮革は、人工皮革の25℃のN,N-ジメチルホルムアミドに溶解する割合(以下、単に溶解割合と略記することがある)が、20質量%以下であることが好ましい。前記の溶解割合が20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは12質量%以下であると、実使用時の耐溶剤性が高く、優れた耐久性を有するようになる。
この溶解割合は、以下のように測定・算出される値を採用するものとする。
(1)人工皮革から10cm四方のサンプルを3枚裁断し、この質量(mg)を小数点以下第2位まで測定する。この質量を「浸漬前の質量(mg)」とする。
(2)(1)で質量を測定した人工皮革を、25℃のN,N-ジメチルホルムアミドに浸漬し、雰囲気温度25℃で24時間放置する。
(3)(2)のサンプルを、25℃のN,N-ジメチルホルムアミドで3回洗浄した後に、80℃で60分間乾燥させたのち、この質量(mg)を小数点以下第2位まで測定する。この質量を「浸漬後の質量(mg)」とする。
(4)以下の式にて得られる値を小数点以下第2位で四捨五入し、溶解割合を算出する
溶解割合(質量%)=(浸漬前の質量(mg)-浸漬後の質量(mg))/浸漬前の質量(mg)×100
(5)上記3サンプルの算術平均値(質量%)を小数点以下第2位で四捨五入して得られる値を、その人工皮革の溶解割合とする。
なお、溶解割合を上記の範囲とするには、高分子弾性体にカルボジイミド基やイソシアネート基など、高分子弾性体の親水性基と反応する官能基を有する化合物と反応させることでより多くの3次元網目構造を付与するなどして、高分子弾性体の数平均分子量を増加させることなどが挙げられる。
本発明の人工皮革は、JIS L1913:2010「一般不織布試験方法」に記載の「41.5°カンチレバー法」にて規定される縦方向の曲げ長さが40mm以上150mm以下であることが好ましい。曲げ長さを上記範囲とすることで、適度な柔軟性と反発性を有することができる。曲げ長さについて、反発性のある人工皮革を得ることができる点から好ましくは、50mm以上、より好ましくは、55mm以上であり、柔軟性のある人工皮革を得る点から好ましくは、120mm以下、より好ましくは、110mm以下である。
本発明の人工皮革における縦方向とは、人工皮革に対して起毛処理を行った方向のことをいう。起毛処理を行った方向の探索方法としては、指でなぞった時の目視確認やSEM撮影など人工皮革の構成成分に応じて適宜採用することができる。すなわち、指でなぞった際、立毛繊維を寝かせたり、立たせたりすることができる方向が縦方向となる。また、指でなぞった人工皮革の表面をSEM撮影することで寝た立毛繊維の向きが最も多い方向が縦方向となる。一方で、本発明の人工皮革における横方向とは、縦方向に対して垂直の方向のことを横方向という。
本発明の人工皮革は、高温多湿環境下での加速劣化試験(ジャングル試験、70℃、相対湿度95%の空間中に2週間放置)後のJIS L1096:2005「織物及び編物の生地試験方法」で規定されるマーチンデール摩耗試験5万回における摩耗減量が30mg以下であることが好ましい。加速劣化試験(ジャングル試験)後の摩耗減量を上記範囲とすることで、長期間使用しても高分子弾性体の劣化を抑制でき、人工皮革の外観を維持することができる。摩耗減量は、人工皮革の外観の劣化を抑制できる観点から25mg以下であることが好ましく、20mg以下であることがより好ましい。
[人工皮革の製造方法]
次に、本発明の人工皮革を製造する方法について説明する。
<繊維質基材形成工程>
本発明において、極細繊維を得る手段としては、極細繊維発現型繊維を用いることが好ましい態様である。極細繊維発現型繊維をあらかじめ絡合し不織布とした後に、繊維の極細化を行うことによって、極細繊維束が絡合してなる不織布を得ることができる。
極細繊維発現型繊維としては、溶剤溶解性の異なる2成分(島繊維が芯鞘複合繊維の場合は2または3成分)の熱可塑性樹脂を海成分と島成分とし、前記の海成分を、溶剤などを用いて溶解除去することによって島成分を極細繊維とする海島型複合繊維を用いることが、海成分を除去する際に島成分間、すなわち繊維束内部の極細繊維間に適度な空隙を付与することができるため、人工皮革用基体の風合いや表面品位の観点から好ましい。
海島型複合繊維としては、海島型複合用口金を用い、海成分と島成分の2成分(島繊維が芯鞘複合繊維の場合は3成分)を相互配列して紡糸する高分子相互配列体を用いる方式が、均一な単繊維直径の極細繊維が得られるという観点から好ましい。
海島型複合繊維の海成分としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ナトリウムスルホイソフタル酸やポリエチレングリコールなどを共重合した共重合ポリエステル、およびポリ乳酸などを用いることができるが、製糸性や易溶出性等の観点から、ポリスチレンや共重合ポリエステルが好ましく用いられる。
海成分の溶解除去は、高分子弾性体前駆体の付与後に行うことが好ましい様態である。後述するとおりである。
本発明で用いられる海島型複合繊維における海成分と島成分の質量割合は、海成分:島成分=10:90~80:20の範囲であることが好ましい。海成分の質量割合が10質量%以上であると、島成分が十分に極細化されやすくなる。また、海成分の質量割合が80質量%以下であると、溶出成分の割合が少ないため生産性が向上する。海成分と島成分の質量割合は、より好ましくは、海成分:島成分=20:80~70:30の範囲である。
また、繊維絡合体は不織布の形態をとることが好ましく、前述のように短繊維不織布でも長繊維不織布でも用いることができるが、短繊維不織布であると、人工皮革の厚さ方向を向く繊維が長繊維不織布に比べて多くなり、起毛した際の人工皮革の表面に高い緻密感を得ることができるため好ましい。
繊維絡合体として短繊維不織布を用いる場合には、得られた極細繊維発現型繊維に、好ましくは捲縮加工を施し、所定長にカット加工して原綿を得る。捲縮加工やカット加工は、公知の方法を用いることができる。
次に、得られた原綿を、クロスラッパー等により繊維ウェブとし、絡合させることにより短繊維不織布を得る。繊維ウェブを絡合させ短繊維不織布を得る方法としては、ニードルパンチ処理やウォータージェットパンチ処理等を用いることができる。
さらに、得られた短繊維不織布と織物を積層し、そして絡合一体化させる。短繊維不織布と織物の絡合一体化には、短繊維不織布の片面もしくは両面に織物を積層するか、あるいは複数枚の短繊維不織布ウェブの間に織物を挟んだ後に、ニードルパンチ処理やウォータージェットパンチ処理等によって短繊維不織布と織物の繊維同士を絡ませることができる。
ニードルパンチ処理あるいはウォータージェットパンチ処理後の複合繊維(極細繊維発現型繊維)からなる短繊維不織布の見掛け密度は、0.15g/cm以上0.45g/cm以下であることが好ましい。見掛け密度を好ましくは0.15g/cm以上とすることにより、繊維質基材が十分な形態安定性と寸法安定性が得られる。一方、見掛け密度を好ましくは0.45g/cm以下とすることにより、高分子弾性体前駆体を付与するための十分な空間を維持することができる。
このようにして得られた不織布は、緻密化の観点から、乾熱もしくは湿熱またはその両者によって収縮させ、さらに高密度化することが好ましい態様である。また、不織布はカレンダー処理等により、厚み方向に圧縮することもできる。
海島型複合繊維を用いた場合の当該繊維の海成分を除去するための脱海処理は、繊維質基材への親水性基を有する高分子弾性体前駆体を含む水分散液の付与前または/および付与後に行うことができる。水分散液付与前に脱海処理を行うと、極細繊維に直接高分子弾性体が密着する構造となりやすく、極細繊維を強く把持できることから、人工皮革の耐摩耗性が良好となりやすい。
極細繊維発現型繊維として海島型複合繊維を用いる場合の繊維極細化処理(脱海処理)は、例えば、溶剤中に海島型複合繊維を浸漬し、搾液することによって行うことができる。海成分を溶解する溶剤としては、水酸化ナトリウムなどのアルカリ水溶液や熱水を用いることができる。
極細繊維発現工程では、連続染色機、バイブロウォッシャー型脱海機、液流染色機、ウィンス染色機およびジッガー染色機等の装置を用いることができる。
一方、前記の水分散液付与前に極細繊維とセルロース誘導体やポリビニルアルコール(以下、PVAと略記することがある。)等の阻害剤を付与した後に水分散液を付与することにより、極細繊維と高分子弾性体の密着性を下げることができ、さらに柔軟な風合いを達成することもできる。
前記の阻害剤付与は、海島構造の繊維の脱海処理前または後のいずれでも行うことができる。脱海処理前に阻害剤を付与することにより、繊維の目付が下がりシートの抗張力が低下した場合においても、繊維質基材の形態保持力を高めることができる。このため、薄物のシートも安定して加工できる他に、脱海処理工程での繊維質基材の厚み保持率を高めることができ、繊維質基材の高密度化を抑制することができる。一方、前記の阻害剤付与を脱海処理後に行うことにより、繊維質基材の高密度化を実現することができるため、目的に応じ適宜調整することが好ましい態様である。
前記の阻害剤としては、繊維質基材の補強効果が高く、水に溶出にしにくいことから、PVAが好ましく用いられる。PVAの中でも、親水性基を有する高分子弾性体前駆体を含む水分散液付与時に阻害剤を溶出しにくくでき、かつ、より極細繊維と高分子弾性体の密着を阻害できるという観点から、より水に難溶性である高ケン化度PVAを適用することが、より好ましい態様である。
高ケン化度PVAは、ケン化度が95%以上100%以下であることが好ましく、より好ましくは98%以上100%以下である。ケン化度を95%以上にすることにより、親水性基を有する高分子弾性体前駆体分散液付与時の溶出を抑制することができる。
PVAの重合度は、500以上3500以下であることが好ましく、さらに好ましくは500以上2000以下である。PVAの重合度を500以上にすることにより、高分子弾性体前駆体分散液付与時の高ケン化度PVAの溶出を抑制することができる。また、PVAの重合度を3500以下にすることにより、高ケン化度PVA液の粘度が高くなりすぎず、安定して繊維質基材に高ケン化度PVAを付与することができる。
繊維質基材へのPVAの付与量は、繊維質基材の繊維質量に対し、0.1質量%以上50質量%以下であり、好ましくは1質量%以上45質量%以下である。PVAの付与量を0.1質量%以上とすることにより、柔軟性と風合いの良好な人工皮革が得られ、PVAの付与量を50質量%以下とすることにより、加工性が良く、耐摩耗性等の物理特性がより良好な人工皮革が得られる。
<高分子弾性体付与工程>
本発明において、繊維質基材として不織布を用いる場合の高分子弾性体前駆体の付与は、複合繊維からなる不織布でも、極細繊維化された不織布でもどちらに対しても行うことができる。
高分子弾性体付与後の凝固は、乾熱凝固法や液中凝固法などの当分野で通常用いられる凝固方法を適用することができる。乾熱凝固法を用いる場合、水分散液を繊維質基材に付与後、120℃以上180℃以下の温度で加熱処理し、乾熱凝固させることで、繊維質基材に高分子弾性体前駆体を付与することが好ましい。また、液中凝固としては、pH1以上3以下の凝固溶媒にて凝固処理を行う酸凝固法または80℃以上100℃以下の熱水にて凝固処理を行う熱水凝固法等を用いることができる。
水分散液中の高分子弾性体前駆体の濃度(水分散液100質量%中の高分子弾性体前駆体の含有量)は、水分散液の貯蔵安定性の観点から、10質量%以上50質量%以下が好ましく、より好ましくは15質量%以上40質量%以下である。
本発明に用いる水分散液は、貯蔵安定性や製膜性向上のために、水溶性有機溶剤を水分散液100質量%中に40質量%以下含有していてもよいが、製膜環境の保全等の点から、有機溶剤の含有量は1質量%以下とすることが好ましい。
本発明の人工皮革の製造方法では、水分散液中に無機塩を含有することができる。無機塩を含有することで、水分散液に感熱凝固性を付与することができる。本発明において、感熱凝固性とは、水分散液を加熱した際に、ある温度(感熱凝固温度)に達すると水分散液の流動性が減少し、凝固する性質のことをいう。
高分子弾性体前駆体が感熱凝固性を有していない場合、高分子弾性体前駆体が水分の蒸発とともにシート表面に移行する、マイグレーション現象が発生する。さらに、水分の蒸発とともに繊維の周囲に高分子弾性体前駆体が偏在した状態で凝固が進行するため、高分子弾性体が繊維周囲を覆い、その動きを強く拘束した構造となる。これらによって、人工皮革の風合いは著しく硬化する。
水分散液の感熱凝固温度は、55℃以上80℃以下であることが好ましい。水分散液の貯蔵時の安定性が良好となり、操業時のマシンへの高分子弾性体前駆体の付着等を抑制することができるため、感熱温度を60℃以上であることがより好ましい。繊維質基材の表層への高分子弾性体前駆体のマイグレーション現象を抑制することができ、さらに繊維質基材からの水分蒸発前に高分子弾性体前駆体の凝固が進行することで、溶剤系高分子弾性体を湿式凝固させて得られる場合に類似した構造、すなわち高分子弾性体が強く繊維を拘束しない構造を形成することが出来、良好な柔軟性、反発感を達成することが可能であるため、感熱凝固温度を70℃以下であることがより好ましい。
本発明においては、感熱凝固剤として用いる無機塩において、1価陽イオン含有無機塩を用いることが好ましい。前記の1価陽イオン含有無機塩は、好ましくは塩化ナトリウムおよび/または硫酸ナトリウムである。イオン価数が小さい1価陽イオン含有無機塩は、水分散液の安定性への影響が小さく、添加量を調整することで水分散液の安定性を担保しながらにして、感熱凝固温度を厳密に制御することができる。
さらに本発明では、水分散液中の1価陽イオン含有無機塩の含有量が、高分子弾性体前駆体100質量部に対して10質量部以上50質量部以下であることが好ましい。含有量を10質量部以上とすることで、水分散液中に多量に存在するイオンが、高分子弾性体前駆体粒子に均一に作用することで、特定の感熱凝固温度において速やかに凝固を完了させることができる。これにより、前述のような、繊維質基材中に多量の水分を含有した状態で高分子弾性体前駆体凝固を進行させることにおいて、より顕著な効果を得ることができる。結果、溶剤系高分子弾性体を湿式凝固させて得られる場合に非常に類似した構造を形成し、良好な柔軟性、反発感を達成することが可能である。さらに、添加量を上記とすることで、無機塩が高分子弾性体前駆体粒子の融着における阻害剤となり、連続被膜形成による高分子弾性体の硬化を抑制することもできる。一方で、含有量を50質量%以下とすることで、適度な高分子弾性体の連続被膜構造を残存させ、物性の低下を抑えることができる。また水分散液の安定性も保持することができる。
本発明においては、水分散液にイソシアネート基またはイソシアネート基誘導体を有する化合物を含有させることが好ましい。イソシアネート基またはイソシアネート基誘導体を有する化合物を用いることで、高分子弾性体に3次元網目構造を導入することができ、耐摩耗性等の物性を向上させることができる。
ここで言うイソシアネート基誘導体を有する化合物とは、ブロックイソシアネート化合物など、熱反応や化学反応により「イソシアネート基を有する化合物」を生成する化合物のことをいう。
前記の水分散液におけるイソシアネート基またはイソシアネート基誘導体を有する化合物の濃度は、高分子弾性体前駆体100質量部に対して、1質量部以上、より好ましくは2質量部以上とすることで、高分子弾性体に3次元網目構造をより多く導入でき、耐摩耗性等に優れた人工皮革を得ることができる。また、イソシアネート基またはイソシアネート基誘導体を有する化合物の濃度を高分子弾性体前駆体100質量部に対して、10質量部以下、より好ましくは7質量部以下とすることで、高分子弾性体が形成される際に、過剰なイソシアネート基またはイソシアネート基誘導体を有する化合物が高分子弾性体前駆体の凝固を阻害してしまうことを抑制するとともに、高分子弾性体中に過剰のイソシアネート基またはイソシアネート基誘導体を有する化合物が残存することを防ぎ、耐摩耗性等の物性の低下を抑制しやすくなる。
本発明においては、増粘剤も使用することができる。この「増粘剤」とは、水分散液に含有されることで、水分散液の粘度を前記の範囲とすることができるものであり、このような増粘剤は、ノニオン系、アニオン系、カチオン系および両イオン系の増粘剤を適用することができる。
上記のような増粘剤の種類としては、会合型増粘剤と水溶性高分子型増粘剤の中から選択できる。
会合型増粘剤としては、ウレタン変性化合物やアクリル変性化合物やそれらの共重合化合物等を適用することができる。
水溶性高分子型増粘剤としては、天然高分子化合物、半合成高分子化合物および合成高分子化合物等が挙げられる。
天然高分子化合物としては、タマリンドガム、グアーガム、ローストビーンガム、トラガントガム、デンプン、デキストリン、ゼラチン、アガロース、カゼイン、カードラン等のノニオン性のものや、キサンタンガム、カラギーナン、アラビアガム、ペクチン、コラーゲン、コンドロイチン硫酸ソーダ、ヒアルロン酸ソーダ、カルボキシメチルデンプン、リン酸デンプン等のアニオン性のものや、カチオンデンプン、キトサン等のカチオン性のものが挙げられる。
半合成高分子としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、可溶性デンプン、メチルデンプン等のノニオン性のものや、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルデンプン、およびアルギン酸塩等のアニオン性の化合物が挙げられる。
合成高分子化合物としては、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリメチルビニルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリイソプロピルアクリルアミド等のノニオン性のものやカルボキシビニルポリマ-やポリアクリル酸ナトリウム、ポリスチレンスルホン酸ソーダ等のアニオン性のものや、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート4級塩、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド、ポリアミジン、ポリビニルイミダゾリン、およびポリエチレンイミン等のカチオン性の化合物が挙げられる。
本発明においては、高分子弾性体前駆体を繊維質基材に付与させ、凝固させた後に、高分子弾性体のキュア処理を実施することが好ましい。乾燥によるキュア処理での加熱温度は120℃以上180℃以下である。加熱温度を120℃以上、より好ましくは140℃以上、さらに好ましくは145℃以上とすることで、キュア処理の効果を高め、耐久性や耐摩耗性等の物性をより高いものとすることができる。一方、加熱温度を180℃以下、より好ましくは175℃以下、さらに好ましくは170℃以下とすることで、高分子弾性体の熱劣化を抑制することができる。
高分子弾性体前駆体を繊維質基材に付与させ、凝固させた後に、キュア処理を実施する場合には、キュア処理での加熱時間は1分以上、60分以下であることが好ましい。1分以上、より好ましくは5分以上加熱することで、3次元網目構造を十分に形成することが可能となる。加熱時間を60分以下、好ましくは30分以下とすることで、過剰加熱による高分子弾性体の劣化を防ぐことができる。
また、本発明の人工皮革の製造方法では、キュア処理での加熱直後に、10℃以上40℃以下の水溶液でシートを冷却することが好ましい。水溶液の種類は特に限定されないが、酸性溶液や塩基性溶液では高分子弾性体が劣化する懸念があるため、中性溶液であることが好ましく、取り扱いが容易な点から水を用いることが好ましい。
10℃以上40℃以下の水溶液でシートを冷却する場合、冷却時間は10分以下、好ましくは5分以下であることが、製造効率の観点から好ましい。
<仕上げ工程>
本発明の人工皮革の製造方法は、人工皮革を染色する染色工程を含むことが好ましい。この染色処理としては、当分野で通常用いられる各種方法を採用することができ、例えば、ジッガー染色機や液流染色機を用いた液流染色処理、連続染色機を用いたサーモゾル染色処理等の浸染処理、あるいはローラー捺染、スクリーン捺染、インクジェット方式捺染、昇華捺染および真空昇華捺染等による立毛面への捺染処理等を用いることができる。中でも、未起毛人工皮革または人工皮革の染色と同時に揉み効果を与えて未起毛人工皮革または人工皮革を柔軟化することができることから、液流染色機を用いることが好ましい。また、必要に応じて、染色後に各種の樹脂仕上げ加工を施すことができる。
本発明で用いられる染料は、繊維質基材を構成する繊維の種類にあわせて選択すればよく、特に限定されないが、例えば、ポリエステル系繊維であれば分散染料を用いることができ、ポリアミド系繊維であれば酸性染料や含金染料を用いることができ、更にそれらの組み合わせを用いることができる。分散染料で染色した場合は、染色後に還元洗浄を行ってもよい。
染色時に染色助剤を使用することも好ましい態様である。染色助剤を用いることにより、染色の均一性や再現性を向上させることができる。また、染色と同浴または染色後に、例えば、シリコーン等の柔軟剤、帯電防止剤、撥水剤、難燃剤、耐光剤および抗菌剤等を用いた仕上げ剤処理を施すことができる。
本発明では、染色工程の前後に問わず、製造効率の観点から、厚み方向に半裁することも好ましい態様である。
本発明の人工皮革の製造方法は、染色工程の前後に問わず、起毛工程を含むことも好ましい様態である。立毛を形成する方法は、特に限定されず、サンドペーパー等によるバフィング等、当分野で通常行われる各種方法を用いることができる。立毛長は短すぎると優美な外観が得られにくく、長すぎると、ピリングが発生しやすくなる傾向にあることから、立毛長は0.2mm以上1.0mm以下とすることが好ましい。
起毛処理を施す場合には、起毛処理の前にシリコーンエマルジョンなどの滑剤を人工皮革の表面へ付与することができる。また、起毛処理の前に帯電防止剤を付与することで、研削によって人工皮革から発生した研削粉がサンドペーパー上に堆積しにくくなる。このようにして、人工皮革が形成される。
さらに、本発明のひとつの態様において、必要に応じてその表面に意匠性を施すことができる。例えば、パーフォレーション等の穴開け加工、エンボス加工、レーザー加工、ピンソニック加工、およびプリント加工等の後加工処理を施すことができる。
次に、実施例を用いて本発明の人工皮革について、さらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
[評価方法]
(1)人工皮革の加速劣化試験
加速劣化試験として、エスペック株式会社製「PR-2J」を用いて70℃、相対湿度95%の空間に10cm四方の人工皮革を2週間静置させる加速劣化試験(ジャングル試験)を行った。
(2)人工皮革の摩耗評価
JIS L1096:2010に基づき、摩耗評価を行った。マーチンデール摩耗試験機として、James H.Heal&Co.製「Model 406」を用い、標準摩擦布として同社の「ABRASTIVE CLOTH SM25」を用いた。前述の加速劣化試験後の人工皮革に12kPaの荷重をかけ、摩耗回数は50000回とした。摩耗前後の人工皮革の質量を用いて、下記の式により、摩耗減量を算出した。
摩耗減量(mg)=摩耗前の質量(mg)-摩耗後の質量(mg)
なお、摩耗減量は小数点第一位の値を四捨五入した値を摩耗減量とした。
(3)ポリウレタン中のウレタン結合に対するイソシアネート基の割合
前記の方法によって、ポリウレタン中のウレタン結合に対するイソシアネート基の割合を測定、算出した。なお、ATR法にてIR測定を実施した際の測定装置、測定条件は以下のとおりである。
装置:TENSOR II(Bruker社製)
光源:グローバー
検知器:重水素化L-アラニンドープ硫酸三グリシン
パージ:窒素ガス
分解能:4cm-1
積算回数:256回
ATR結晶:Ge
入射角:45°
偏光:なし。
(4)人工皮革の25℃のN,N-ジメチルホルムアミドに溶解する割合(溶解割合)
前記の方法に従って、人工皮革の溶解割合を測定、算出した。
[繊維質基材用不織布Aの製造方法]
海成分としてSSIA(5-スルホイソフタル酸ナトリウム)8モル%共重合ポリエステルを用い、島成分としてポリエチレンテレフタレートを用いて、海成分が43質量%、島成分が57質量%の複合比率で、島数が16島/1フィラメント、平均単繊維直径が20μmの海島型複合繊維を得た。得られた海島型複合繊維を、繊維長51mmにカットしてステープルとし、カードおよびクロスラッパーを通して繊維ウェブを形成し、ニードルパンチ処理により、目付が550g/mで、厚みが3.0mmの不織布を製造した。このようにして得られた不織布を、98℃の温度の湯中に2分間浸漬させて収縮させ、100℃の温度で5分間乾燥させ、繊維質基材用不織布Aとした。
[高分子弾性体前駆体Aの製造方法]
高分子ポリオールとして数平均分子量(Mn)が2000のポリヘキサメチレンカーボネート、有機ジイソシアネートとして水添MDI、親水性基を有する活性水素成分含有化合物として、側鎖にポリエチレングリコールを有するジオール化合物および2,2-ジメチロールプロピオン酸を用い、アセトン溶媒中でプレポリマーを作成した。鎖伸長剤としてエチレングリコールとエチレンジアミンと水を添加して、攪拌した。減圧化でアセトンを除去して高分子弾性体前駆体Aの水分散液を得た。
[実施例1]
(繊維質基材形成工程)
繊維質基材用不織布Aに対して、ケン化度99%、重合度1400のPVA(日本合成化学株式会社製「NM-14」)の10質量%水溶液を含浸させ、140℃の温度で10分間加熱乾燥を行い、繊維質基材用不織布の繊維質量に対するPVAの付着量が30質量%のPVA付与シートを得た。
得られたPVA付与シートを、95℃の温度に加熱した濃度8g/Lの水酸化ナトリウム水溶液に浸漬して30分間処理を行い、海島型複合繊維の海成分を除去した極細繊維からなるシート(PVA付与極細繊維不織布)を得た。
(高分子弾性体付与工程)
高分子弾性体前駆体Aの固形分100質量部に対し、イソシアネート基誘導体を有する化合物として、ブロックイソシアネート化合物A(Covestro社製「IMPRAFIX2794」)の固形分の含有量が3質量部、アクリル系増粘剤の固形分の含有量が3質量部となるように添加し、水によって全体を固形分の含有量を19質量%に調製し、高分子弾性体前駆体を含む粘度2000mPa・sの水分散液を得た。前記のPVA付与極細繊維不織布を前記の水分散液に浸漬し、次いで160℃の温度の熱風で15分間乾燥した直後に、20℃の水中に5分間浸漬し、極細繊維100質量部に対して高分子弾性体が50質量部付与された、厚みが2.00mmの高分子弾性体付与極細繊維不織布を得た。
得られた高分子弾性体付与極細繊維不織布を、95℃に加熱した水中に浸漬して10分処理を行い、付与したPVAを除去して人工皮革を得た。
(仕上げ工程)
得られた人工皮革を厚さ方向に垂直に半裁し、半裁面の反対側をサンドペーパー番手180番のエンドレスサンドペーパーで研削することにより、厚みが0.75mmの立毛を有する人工皮革を得た。
得られた立毛を有する人工皮革を、液流染色機を用いて120℃の温度条件下で分散染料を用いて黒色に染色を行った。次いで乾燥機で乾燥を行い、極細繊維の平均単繊維直径が3.8μmの人工皮革を得た。得られた人工皮革の加速劣化試験(ジャングル試験)後の摩耗減量は15mgであり、優れた耐久性を有していた。また、ポリウレタン中のウレタン結合に対するイソシアネート基の割合は0.6%であり、人工皮革の25℃のN,N-ジメチルホルムアミドに溶解する割合(溶解割合)は12質量%であった。結果を表1に示す。
[実施例2]
ブロックイソシアネート化合物A(Covestro社製「IMPRAFIX2794」)の固形分の含有量を3質量部から5質量部に変えた以外は実施例1と同様に実施した。
得られた人工皮革の加速劣化試験(ジャングル試験)後の摩耗減量は18mgであり、優れた耐久性を有していた。また、ポリウレタン中のウレタン結合に対するイソシアネート基の割合は0.9%であり、人工皮革の25℃のN,N-ジメチルホルムアミドに溶解する割合(溶解割合)は8質量%であった。結果を表1に示す。
[実施例3]
PVA付与極細繊維不織布を水分散液に浸漬し、次いで160℃の温度の熱風で15分間乾燥した直後の、20℃の水中への浸漬時間を5分間から3分間に変えた以外は実施例1と同様に実施した。
得られた人工皮革の加速劣化試験(ジャングル試験)後の摩耗減量は16mgであり、優れた耐久性を有していた。また、ポリウレタン中のウレタン結合に対するイソシアネート基の割合は0.2%であり、人工皮革の25℃のN,N-ジメチルホルムアミドに溶解する割合(溶解割合)は10質量%であった。結果を表1に示す。
[実施例4]
PVA付与極細繊維不織布を水分散液に浸漬し、次いで160℃の温度の熱風での乾燥時間を15分間から30分間に変えた以外は実施例1と同様に実施した。
得られた人工皮革の加速劣化試験(ジャングル試験)後の摩耗減量は23mgであり、優れた耐久性を有していた。また、ポリウレタン中のウレタン結合に対するイソシアネート基の割合は0.05質量%であり、人工皮革の25℃のN,N-ジメチルホルムアミドに溶解する割合(溶解割合)は6質量%であった。結果を表1に示す。
[実施例5]
イソシアネート基誘導体を有する化合物として、ブロックイソシアネート化合物Aからブロックイソシアネート化合物B(第一工業製薬株式会社製「“エラストロン“(登録商標) BN-77」)に変えた以外は実施例1と同様に実施した。
得られた人工皮革の加速劣化試験(ジャングル試験)後の摩耗減量は25mgであり、優れた耐久性を有していた。また、ポリウレタン中のウレタン結合に対するイソシアネート基の割合は0.1質量%であり、人工皮革の25℃のN,N-ジメチルホルムアミドに溶解する割合(溶解割合)は18質量%であった。結果を表1に示す。
[比較例1]
PVA付与極細繊維不織布を水分散液に浸漬し、次いで160℃の温度の熱風で15分間乾燥した直後に、20℃の水中に5分間浸漬していたところ、水中に浸漬しないようにした(0分間の浸漬に変えた)以外は実施例1と同様に実施した。
得られた人工皮革の加速劣化試験(ジャングル試験)後の摩耗減量は35mgであり、耐久性が劣っていた。また、高分子弾性体中にイソシアネート基を有する化合物は観測されず(ポリウレタン中のウレタン結合に対するイソシアネート基の割合が0.0%)、人工皮革の25℃のN,N-ジメチルホルムアミドに溶解する割合(溶解割合)は5質量%であった。結果を表2に示す。
[比較例2]
ブロックイソシアネート化合物A(Covestro社製「IMPRAFIX2794」)の固形分の含有量を3質量部から10質量部に変えた以外は実施例1と同様に実施した。
得られた人工皮革の加速劣化試験(ジャングル試験)後の摩耗減量は40mgであり、耐久性が劣っていた。また、ポリウレタン中のウレタン結合に対するイソシアネート基の割合は3.0%であり、人工皮革の25℃のN,N-ジメチルホルムアミドに溶解する割合(溶解割合)は5質量%であった。結果を表2に示す。
[比較例3]
ブロックイソシアネート化合物Aを添加しなかった以外は実施例1と同様に実施した。
得られた人工皮革の加速劣化試験(ジャングル試験)後の摩耗減量は50mgであり、耐久性が劣っていた。また、イソシアネート基を有する化合物は観測されず(ポリウレタン中のウレタン結合に対する前記のイソシアネート基の割合が0.0%)、人工皮革の25℃のN,N-ジメチルホルムアミドに溶解する割合(溶解割合)は30質量%であった。結果を表2に示す。
Figure 2022101943000001
Figure 2022101943000002
本発明により得られる人工皮革は、家具、椅子および壁材や、自動車、電車および航空機などの車輛室内における座席、天井および内装などの表皮材として非常に優美な外観を有する内装材、シャツ、ジャケット、カジュアルシューズ、スポーツシューズ、紳士靴および婦人靴等の靴のアッパー、トリム等、鞄、ベルト、財布等、およびそれらの一部に使用した衣料用資材、ワイピングクロス、研磨布およびCDカーテン等の工業用資材として好適に用いることができる。

Claims (4)

  1. 平均単繊維直径0.1μm以上10μm以下の極細繊維からなる繊維質基材と、高分子弾性体とを含有する人工皮革であって、前記高分子弾性体が、親水性基を有するポリウレタンと、イソシアネート基を有する化合物とを含み、前記ポリウレタン中のウレタン結合に対する前記のイソシアネート基の割合が0.01%以上1%以下である、人工皮革。
  2. 25℃におけるN,N-ジメチルホルムアミドに対する溶解する割合が、20質量%以下である、請求項1に記載の人工皮革。
  3. 前記ポリウレタンが、ポリエーテルジオールおよび/またはポリカーボネートジオールを構成成分として含有する、請求項1または2に記載の人工皮革。
  4. 前記イソシアネート基を有する化合物が、トリイソシアネート化合物である、請求項1~3のいずれかに記載の人工皮革。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2024095846A1 (ja) * 2022-10-31 2024-05-10 東レ株式会社 人工皮革およびその製造方法

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