JP2001151698A - インフルエンザワクチン - Google Patents

インフルエンザワクチン

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JP2001151698A
JP2001151698A JP2000271643A JP2000271643A JP2001151698A JP 2001151698 A JP2001151698 A JP 2001151698A JP 2000271643 A JP2000271643 A JP 2000271643A JP 2000271643 A JP2000271643 A JP 2000271643A JP 2001151698 A JP2001151698 A JP 2001151698A
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influenza
vaccine
dna
virus
protein
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Kenji Okuda
研爾 奥田
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Nichi Iko Pharmaceutical Co Ltd
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Nichi Iko Pharmaceutical Co Ltd
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  • Medicines Containing Antibodies Or Antigens For Use As Internal Diagnostic Agents (AREA)
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 インフルエンザウイルスに対する高い免疫能
を付与することができる新規なインフルエンザDNAワ
クチン、特に経皮投与できるインフルエンザDNAワク
チンを提供すること。 【解決手段】 インフルエンザウイルスのマトリックス
プロテインまたはその抗原性エピトープをコードする塩
基配列を有するDNAを含むインフルエンザワクチン。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、インフルエンザワ
クチン、より詳細にはインフルエンザウイルスのマトリ
ックスプロテインをコードする塩基配列を有するDNA
を用いたインフルエンザDNAワクチンに関する。
【0002】
【従来技術】インフルエンザ、特にA型インフルエンザ
は、世界的規模で流行することがある重大なウイルス感
染疾患の一つであり、効果的な予防法の確立が強く望ま
れている。しかし、インフルエンザウイルスは抗原変異
の頻度が比較的高いために、変異した抗原を有するイン
フルエンザウイルスに十分に対応できインフルエンザウ
イルス感染を高い確率で予防できるワクチンは未だ開発
されていないのが実情である。また、老人、子児あるい
は免疫力が低下した患者においては、インフルエンザ感
染による死亡例、あるいは脳炎を引き起こす症例が多数
認められている。さらに、インフルエンザ感染により、
死には至らないまでも発熱、頭痛、倦怠感などの身体症
状がもたらされれば、その患者は一定期間社会活動の停
止を余儀なくされ、これは特に先進国においては重大な
経済的損失へとつながる。従って、より効果的なインフ
ルエンザワクチンを開発する必要性が存在していた。
【0003】現在までに開発および実用化されているイ
ンフルエンザワクチンの主なものは、ヘマグルチニン
(HA)タンパク質またはニューラミニダーゼ(NA)
タンパク質に対する中和抗体の誘導を目的とするもので
ある。しかし、HAタンパク質やNAタンパク質はウイ
ルス株により抗原性の変異の度合いが大きいため、これ
らワクチンは、インフルエンザウイルスの変異への対応
が不十分で、効果を十分に発揮できない場合があるとい
う欠点があった。
【0004】また、最近になって、遺伝子工学技術の進
歩によりDNAワクチンが開発されている。DNAワク
チンとしては組み換えプラスミドを用いたものが一般的
であり、目的の抗原をコードするDNAを含む組み換え
プラスミドを生体内に投与することによって、生体内で
当該DNAによってコードされる抗原性を有するアミノ
酸配列が発現し、このアミノ酸配列により免疫反応が生
体内で惹起される。しかし、ある特定のプラスミドDN
Aワクチンを生体に投与しても、喚起される免疫反応の
程度は一定ではなく、試験動物の種類、DNAの種類、
並びに接種方法などにより免疫反応の程度は多様であ
り、DNAプラスミドがDNAワクチンとして有用であ
るかどうかを予測することは一般に困難である。
【0005】より最近になって、インフルエンザAヌク
レオプロテイン(NP)をコードするプラスミドDNA
がインフルエンザウイルス感染の予防に役立つことが報
告されている(Ulmer, 1993, Science, 259, 1745-174
9:及びDonnelly, 1995, Nature Med., 1, 583-587)。Ul
merらはウイルス内のタンパク質であるヌクレオプロテ
イン(NP)をコードするDNAをワクチンとして用い
ることにより、抗原変異にほとんど影響を受けることな
く細胞性免疫を誘導し、より強い感染防御効果を達成す
ることに成功している。しかしながら、インフルエンザ
感染の予防に効果的で、特に抗原変異に影響を受けるこ
とが少ない普遍的なインフルエンザワクチンを新たに開
発する必要性は依然として存在していた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記した従
来技術の問題点を解消することを解決すべき課題とし
た。即ち、本発明は、インフルエンザウイルスに対する
高い免疫能を付与することができる新規なインフルエン
ザDNAワクチンを提供することを解決すべき課題とし
た。また、本発明は、インフルエンザウイルスの抗原変
異によって影響を受けることが少ない普遍的なインフル
エンザDNAワクチンを提供することを解決すべき課題
とした。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決するために鋭意検討した結果、インフルエンザウ
イルスのマトリックスプロテインをコードする塩基配列
を有するDNAをマウスに投与して免疫化した場合に細
胞傷害性T細胞による細胞性免疫が活性化されることを
見出した。また、本発明者らはインフルエンザウイルス
のマトリックスプロテインをコードする塩基配列を有す
るDNAで免疫化したマウスの方が免疫化しなかったマ
ウスよりもインフルエンザ感染に対して高い耐性を示す
ことを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成
したものである。即ち、本発明によれば、インフルエン
ザウイルスのマトリックスプロテインまたはその抗原性
エピトープをコードする塩基配列を有するDNAを含む
インフルエンザワクチンが提供される。
【0008】本発明のインフルエンザワクチンの一態様
では、インフルエンザウイルスのマトリックスプロテイ
ンまたはその抗原性エピトープをコードする塩基配列
は、インフルエンザウイルスの膜タンパク質と組み込み
膜タンパク質の両方をコードしている。本発明のインフ
ルエンザワクチンの一態様では、DNAはプラスミドD
NAである。本発明のインフルエンザワクチンの一態様
では、DNAは、インフルエンザウイルスのマトリック
スプロテインとは異なる別の1または2以上のインフル
エンザ抗原をコードする塩基配列をさらに有している。
本発明のインフルエンザワクチンの一態様では、別のイ
ンフルエンザ抗原は、ヘマグルチニン、ニューラミニダ
ーゼおよび核タンパク質から成る群から選択される1ま
たは2以上のインフルエンザ抗原である。
【0009】本発明の別の側面によれば、本発明のイン
フルエンザワクチンを含む医薬組成物が提供される。本
発明の医薬組成物の一態様では、本発明のインフルエン
ザワクチンとリポソームとを配合して成る医薬組成物が
提供される。本発明の医薬組成物の一態様では、本発明
のインフルエンザワクチンとは異なる別の1または2以
上のインフルエンザワクチンをさらに含む医薬組成物が
提供される。本発明の医薬組成物の一態様では、別のイ
ンフルエンザワクチンは、ヘマグルチニン、ニューラミ
ニダーゼおよび核タンパク質から成る群から選択される
1または2以上のインフルエンザ抗原に対するワクチン
である。
【0010】本発明のインフルエンザワクチンの一使用
態様では、本発明のインフルエンザワクチンとは異なる
別の1または2以上のインフルエンザワクチンと併用さ
れる。本発明のインフルエンザワクチンまたは医薬組成
物は、好ましくは経皮投与される。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明のインフルエンザワ
クチン並びにそれを用いた医薬組成物の実施態様および
実施方法について詳細に説明する。本発明のインフルエ
ンザワクチンは、インフルエンザウイルスのマトリック
スプロテインまたはその抗原性エピトープをコードする
塩基配列を有するDNAを含むことを特徴とする。本明
細書において、「ワクチン」という用語は免疫応答を生
じ得る物質を意味する。本明細書において、「インフル
エンザ」という用語は、特に断らない限り最も広義のイ
ンフルエンザウイルスを意味する。インフルエンザウイ
ルスは一般的には、インフルエンザウイルス属(これは
さらにA型とB型に分類される)とインフルエンザウイ
ルスC型属とに分類されるが、本明細書で「インフルエ
ンザウイルス」という用語を使用する場合には、特に断
らない限り、これら全てを包含し、またインフルエンザ
ウイルスのあらゆる変異体をも包含する。
【0012】本明細書で用いる「インフルエンザのマト
リックスプロテイン」という用語は、インフルエンザウ
イルスの5種類ある内部タンパク質の1種であるマトリ
ックスプロテインを意味する。インフルエンザマトリッ
クスプロテインの構造は公知である(LAMB,RA.,1981, V
irology, 112, 746-751)。本発明で用いるDNAは、イン
フルエンザウイルスのマトリックスプロテインまたはそ
の抗原性エピトープをコードする塩基配列を有する。本
発明で言うインフルエンザウイルスのマトリックスプロ
テインとは、当該タンパク質の免疫原性に関連するエピ
トープ(例えば、細胞傷害性T細胞が認識するエピトー
プ)であるペプチドを含む限りは、完全タンパク質でも
あるいはその断片でもよい。従って、本発明で用いるD
NAは、マトリックスプロテインの全長をコードする必
要はなく、エピトープを含む一部の断片をコードするも
のでもよい。なお、本明細書において「マトリックスプ
ロテイン」という場合には、完全タンパク質だけを意味
するのみではなく、抗原性エピトープを有するその断片
をも含む意味で用いられる場合がある。なお、インフル
エンザウイルスのマトリックスプロテインは変異が少な
いため、それに対するワクチンは抗原変異の影響を受け
ることが少なく有用である。
【0013】上記のような抗原性エピトープを含む一部
の断片をコードするDNAの例としては、インフルエン
ザウイルスの膜タンパク質(membrane protein(M1))と
組み込み膜タンパク質(integral membrane protein(M
2))の両方をコードしているDNAが挙げられる。ま
た、本発明で用いるDNAは、上記したようなインフル
エンザウイルスのマトリックスプロテインをコードする
塩基配列の少なくとも1コピーを有するものであり、2
コピー以上の上記塩基配列を有するものでもよい。
【0014】本発明のワクチンを用いて体液性免疫を生
じさせることを意図する場合には、抗原タンパク質(即
ち、マトリックスプロテイン)全体あるいはその大部分
をコードするDNAを用いることが好ましい。
【0015】本発明のインフルエンザワクチンはヒトを
含む哺乳動物に投与され、投与を受けた動物にはインフ
ルエンザに対する免疫が生じる。本発明で用いるDNA
によってコードされるインフルエンザウイルスのマトリ
ックスプロテインが生体内で合成され、これが抗原とな
って細胞傷害性T細胞が活性化されて細胞性免疫が喚起
され(場合によってはB細胞も抗体産生細胞へと分化
し、体液性免疫も喚起される)、インフルエンザに対す
る免疫が生じることになる。本発明のインフルエンザワ
クチンを用いる免疫は、インフルエンザの予防のみでな
く治療にも役立つものである。
【0016】本発明で用いるDNAは、インフルエンザ
ウイルスのマトリックスプロテインをコードする塩基配
列を生体内で発現できるような状態で保持している。本
発明で用いるDNAは、一般的には、インフルエンザウ
イルスのマトリックスプロテインをコードする塩基配列
を発現ベクターと連結させて成るDNAである。発現ベ
クターは好ましくはプラスミドベクターである。発現プ
ラスミドの作製において有用なベクターとしては、構成
性プロモーター、誘導性プロモーター、組織特異的プロ
モーター、あるいはインフルエンザウイルスのマトリッ
クスプロテイン由来のプロモーターなどのプロモーター
を含むベクターなどが挙げられるが、これらに限定され
るわけではない。
【0017】構成性プロモーターの具体例としては、例
えば、サイトメガロウイルス(CMV)由来、ラウス肉
腫ウイルス(RSV)由来、シミアンウイルス−40
(SV40)由来、あるいは単純ヘルペスウイルス(H
SV)由来のプロモーターなどのウイルス由来の強力な
プロモーターが挙げられる。組織特異的プロモーターの
具体例としては、筋βアクチンプロモーターが挙げられ
る。誘導性あるいは調節性のプロモーターとしては、例
えば、成長ホルモン調節性プロモーター、lacオペロン
配列の制御下にあるプロモーター、あるいは抗生物質誘
導性プロモーター、あるいは亜鉛誘導性メタロチオネイ
ンプロモーターなどが挙げられる。
【0018】本発明で用いるベクターは、プロモーター
(例えば、上記の構成性または誘導性プロモーター)D
NA配列を含む発現制御配列を含むことが好ましい。ベ
クターはさらに、エンハンサー要素、転写あるいはポリ
アデニル化シグナル(例えば、SV40あるいはウシ成
長ホルモン(BGH)由来)のスプライシングのための
イントロン配列などのRNAプロセシング配列、発現タ
ンパク質分泌のシグナル配列、あるいはCpGモチーフ
として知られている免疫刺激DNA配列の2以上のコピ
ーを含んでいてもよい。また、ベクターは、細菌の複製
起点配列および/または抗生物質耐性(例えば、カナマ
イシン)あるいは非抗生物質耐性(例えば、β−ガラク
トシダーゼ遺伝子)に用いられ得る選択マーカー用のD
NA配列を含んでいてもよい。
【0019】非メチル化CpGジヌクレオチドを有する
オリゴヌクレオチドは免疫系を活性化することが示され
ている(A. Kriegら、「CpG motifs in Bacterial DNA
Trigger Directed B Cell Activation」Nature 374: 54
6-549 (1995))。フランキング配列に依存して、あるC
pGモチーフは、B細胞あるいはT細胞応答に対してよ
り免疫刺激性となる場合がある。従って、DNA発現ベク
ターに存在するるCpGモチーフは、発現タンパク質に
対する免疫応答の誘発を促進するアジュバントとして作
用する。CpGモチーフ、すなわち、特定の配列におけ
るCpGジヌクレオチドを含むDNA伸長部は、長さが
5〜40塩基対程度であり得る。複数のCpGモチーフ
を、発現ベクターの非コード領域に挿入することができ
る。体液性免疫応答を所望する場合に好ましいCpGモ
チーフは、B細胞応答を優先的に刺激するCpGモチー
フである。細胞性免疫を所望する場合に好ましいCpG
モチーフは、CD8 +T細胞応答を促進することが知られ
ているサイトカインの分泌を刺激するCpGモチーフで
ある。本発明で用いるDNA中に、このようなCpGモチ
ーフを含めてもよい。
【0020】本発明で用いるDNAの中には、インフル
エンザウイルスのマトリックスプロテインをコードする
塩基配列に加えて、さらにこれとは異なる別の1または
2以上のインフルエンザ抗原をコードする塩基配列を有
していてもよい。そのような別の抗原をコードする塩基
配列の具体例としては、インフルエンザウイルスのヘマ
グルチニン、ニューラミニダーゼまたは核タンパク質を
コードする塩基配列が挙げられる。
【0021】異なる2種以上の抗原をコードする2つ以
上のDNA配列が1つのベクター内に存在する場合、各抗
原をコードするDNA配列の転写がそれぞれに特有の別個
のプロモーターによって指令を受けることができるよう
に、抗原をコードするDNA配列とプロモーター配列と
をベクター内に配置することができる。あるいは、1つ
のプロモーターが、互いにインフレームで接続された2
以上の抗原をコードするDNA配列の発現を駆動し、融合
タンパク質を発現するように、抗原をコードするDNA
配列とプロモーター配列とを配置してもよい。プロモー
ターの種類、並びに抗原をコードするDNA配列とプロ
モーターとの配置関係は当業者により適宜設定すること
ができる。
【0022】本発明で用いるインフルエンザウイルスの
マトリックスプロテインをコードする塩基配列を有する
DNAは、常法により大量に調製することができる。例
えば、プラスミドDNAである場合には、宿主の細菌に
形質転換し、形質転換体を大量に培養し、培養液からア
ルカリ溶解法などの当業者に周知の技法によりプラスミ
ドDNAを回収することができる。本発明の方法におい
て用いられるDNAは、好ましくは、精製プラスミドDNAで
ある。
【0023】本発明の別の側面によれば、本発明のイン
フルエンザワクチンを含む医薬組成物が提供される。本
発明の医薬組成物は、本発明のインフルエンザワクチン
と薬学的に許容可能な担体(トランスフェクション試
薬)またはアジュバンドとを含む。本発明の医薬組成物
はインフルエンザの予防または治療のために用いること
ができる。本発明で用いる薬学的に許容可能な担体と
は、生体の細胞中にDNAワクチンをトランスフェクシ
ョンするのに適したものである。このような薬学的に許
容可能な担体の具体例としては、カチオン性リポソー
ム、フルオロカーボンエマルジョン、蝸牛状剤(cochle
ate)、筒状剤(tubule)、金粒子、生体分解性ミクロ
スフェア、あるいはカチオン性ポリマーなどの公知のト
ランスフェクション試薬が挙げられる。当業者はこのよ
うなトランスフェクション試薬を用いて、本発明で用い
るDNAを適宜処方することができる。
【0024】本発明のDNAワクチンを生体に投与する
のに有用なリポソームとしては、市販のリポソーム、あ
るいはカチオン性脂質あるいはカチオン性ポリマーのい
ずれかを含むリポソームなどが挙げられる。本発明の好
ましい実施態様においては、リポソームは、ジオレイル
ホスファチジルエタノールアミン(DOPE)あるいは
コレステロールなどの中性脂質とカチオン性脂質との混
合物を含むリポソームが用いられる。そのようなリポソ
ームの調製方法は当業者に公知である。カチオン性脂質
とは異なり、カチオン性ポリマーはエステル結合を有さ
ず、その結果、インビボにおいて高い安定性を有する。
カチオン性ポリマー(デンドリマーとも称される)の構
造は、鎖状でも環状でもよく、ダイマー、オリゴマーあ
るいはポリマーの何れでもよい。中性脂質を有さない水
溶液中のカチオン性ポリマーもまた、本発明において好
ましく用いることができる。
【0025】ホスファチジルセリン、コレステロール、
およびカルシウムから成る安定なリン脂質カルシウム沈
殿剤である蝸牛状剤は、消化系で存続することができる
非毒性および非炎症性トランスフェクション試薬として
知られている。また、ポリエステルであるポリ(ラクチ
ド−コ−グリコライド)などのポリマーからなる生体分
解性ミクロスフェアを、トランスフェクションのために
DNAをマイクロカプセル化するために用いることができ
る。筒状剤はらせん状に巻かれた二層の脂質からなり、
その縁が合わされてパックされている脂質ベースの微小
筒(microcylinder)として知られている。筒状剤を用
いる場合、DNAは、動物体内に送達および制御放出を行
うための中空中心部に配置することができる。
【0026】本発明の医薬組成物を調製するために用い
ることができる免疫用アジュバントは当技術分野で周知
である。当業者は、医薬組成物を形成するための適切な
アジュバントを適宜選択することができる。本発明にお
いて好ましく用いられるアジュバントとしては、非メチ
ル化CpGジヌクレオチドを有するミョウバンまたはDN
A分子などが挙げられる(CpGアジュバントとも呼
ぶ)。非メチル化CpGジヌクレオチドを有するオリゴ
ヌクレオチドは、免疫系を活性化することが示されてい
る(A. Kriegら、「細菌性DNAトリガー特異的B細胞活
性化におけるCpGモチーフ」Nature 374:546-549 (19
95))。本明細書中上述した通り、CpGモチーフは、
プラスミドDNAワクチンベクターに挿入することができ
る。そしてCpGは細菌中で複製され、それによりCp
Gモチーフが非メチル化形態を維持することが可能にな
る。このような場合、プラスミドベクターにクローニン
グされたCpGアジュバントの投与は、プラスミドDNA
ワクチンの投与と同時である。あるいは、遊離オリゴヌ
クレオチドの形態のCpGアジュバントを、プラスミド
DNAワクチンの投与前、投与中、または投与後に投与す
ることができる。
【0027】CpGモチーフを有するオリゴヌクレオチ
ドは、安定化のために、ホスホジエステル結合において
必要に応じて改変することができる。このような改変
は、当業者には周知である。例えば、オリゴヌクレオチ
ド中のホスホジエステル結合は、ホスホロチオエート結
合と置換することができる。本発明で用いるDNAは、
受容者の免疫系に影響を与えるタンパク質、アジュバン
ト又は他の物質と結合していないものでもよい。このよ
うな場合、該ポリヌクレオチドは、滅菌塩水又は滅菌緩
衝塩水のような(但し、それには限定されない)生理的
に許容し得る溶液中にあることが望ましい。本発明のワ
クチンは、カプセル剤、懸濁液、エリキシル剤又は溶液
のような任意の投与形態で用いることができる。
【0028】本発明の医薬組成物は、本発明のインフル
エンザワクチンとは異なる別の1または2以上のインフ
ルエンザワクチン(本明細書中以下において、第2のワ
クチンとも言う)をさらに含んでいてもよい。第2のイ
ンフルエンザワクチンとしては、例えば、インフルエン
ザウイルスのヘマグルチニン、ニューラミニダーゼおよ
び核タンパク質から成る群から選ばれる少なくとも1種
の抗原に対するワクチンが挙げられる。この場合、例え
ば、インフルエンザマトリックスプロテインとは異なる
別の抗原をコードするDNA配列を、第2のベクターと結
合することによって第2のDNAワクチンを調製し、こ
れを本発明のインフルエンザワクチンと組み合わせて医
薬組成物とすることができる。あるいは、インフルエン
ザマトリックスプロテインとは異なる別の抗原を調製
し、これを第2のワクチンとして(即ち、抗原ベースの
ワクチンとして)用いてもよい。
【0029】本発明の別の態様によれば、本発明のイン
フルエンザワクチンと第2のワクチンとは単一の医薬組
成物に配合することなく、それぞれ別個の医薬組成物と
して調製し、同時あるいは逐次的に、好ましくは同時に
被験者に投与することができる。即ち、本発明のインフ
ルエンザワクチンは、本発明のインフルエンザワクチン
とは異なる第2のインフルエンザワクチンと併用するこ
とができる。この場合、本発明のインフルエンザワクチ
ンと第2のインフルエンザワクチンとを含むワクチンキ
ットの形態で提供することもできる。本発明のインフル
エンザワクチンを第2のインフルエンザワクチンと併用
する場合、それらの投与の順番は制限されず、どちらを
先に投与してもよい。また、第2のワクチンは、DNA
ワクチンでも抗原ベースのワクチン(すなわち、組換え
タンパク質あるいは全死病原体など)の何れでもよい。
一つの好ましい実施態様においては、第2のワクチンは
抗原ベースのワクチンであり、本発明のインフルエンザ
DNAワクチンは、抗原ベースの第2のワクチンと同時
に投与される。あるいはまた、別の好ましい実施態様に
おいては、まず、本発明のDNAワクチンを投与して免疫
応答を感作し、次いで、2週間から8週間後に、抗原ベ
ースの第2のワクチンを投与することによって、免疫応
答を高めることができる。
【0030】単回投与量のワクチンDNAを含む製剤を
調製するために担体物質と組み合わせるべきワクチンD
NAの量は、一般的には、投与経路および投与方法、用
いる塩基配列および発現ベクターの種類、発現される抗
原タンパク質あるいはペプチドの安定性および活性(免
疫原性)、被験者の性別、年齢、体重、全体的な健康状
態、予防または治療の対象となるインフルエンザの種類
または性質を含む多くの要因に依存する。投与すべきD
NAの量はまた、薬学的に許容可能な担体(トランスフ
ェクション試薬)およびアジュバンドの種類および量に
も依存する。
【0031】本発明のインフルエンザワクチンをヒトに
投与する場合、インフルエンザの予防または治療に有効
な量で投与されるが、例えば、1回当たり10〜100
0μgのDNA用量が有効であると考えられる。一般的
には、免疫学的又は予防学的に有効な用量である10μ
g〜1000μg、好ましくは約10〜300μgを筋
肉組織に直接投与する。経皮投与、皮下注入、皮内導
入、経皮圧入及び他の投与法、例えば、腹腔内、静脈内
又は吸入投与、経口投与も可能であり、投与経路は特に
限定されない。また、追加免疫接種を行うことも可能で
ある。
【0032】ワクチンを皮膚から投与する方法は、皮膚
角化層があることが障壁になっているが、尿素酸軟膏に
DNAワクチンを含ませたり、あるいは薄いSDSの中
に入れたりして、皮膚角化層を破壊することにより効率
的に投与することができる。特に、DNAワクチンは毒
性あるいは病原性を有さないので、尿素酸あるいはSD
S等を使用して皮膚の角化層を融解しつつ、DNAワク
チンが皮膚中に侵入していけば、生体にとって負荷が少
ない臨床上大変有用な方法を提供することができる。経
鼻免疫も小児には負荷が少ないため好ましく、粘膜免疫
あるいは細胞性免疫の両方を高めるので、本発明のイン
フルエンザワクチンを経鼻投与あるいは、経皮投与する
免疫方法は臨床上非常に有用である。
【0033】本発明の特徴の一つは、DNAをワクチン
として用いる点にある。DNAによる免疫感作の方がそ
の遺伝子産物による免疫感作よりも、以下の点において
有利である。 (1)第1の利点は、抗原性タンパク質はインビボで合
成され、体液性免疫応答および細胞(細胞傷害性T細
胞)仲介性免疫応答の両方を惹起する。しかし、生体内
でタンパク質の合成も行う弱毒化生存病原体から成るワ
クチンとは異なり、DNAワクチンは不本意な感染の危険
を有さない。 (2)第2の利点は、抗原ベースのワクチンによる免疫
化と異なり、DNAベースのワクチンは、効果的な免疫応
答を生じさせるための従来のアジュバントの使用を必要
としない。
【0034】(3)第3の利点は、本発明の方法で使用
されるDNAは安価で、そして製造および精製が容易であ
るという点である。 (4)第4の利点は、DNAベースの免疫化はまた、宿主
動物自体の組織内での外来抗原の産生を可能にし、それ
により以下のような利点が得られる。1つ目の利点は、
抗原提示細胞であり得る自己細胞内でのタンパク質の発
現によって、効率的に免疫系に外来抗原を提示すること
である。2つ目の利点は、宿主細胞において発現される
タンパク質の正確な折り畳み、タンパク質修飾、および
ジスルフィド結合が達成されるということである。細菌
または酵母中で合成される組換えウイルスタンパク質を
ワクチンとして使用する場合には、翻訳後、不適切に修
飾される可能性があり、これによりタンパク質の精製が
困難になるか、あるいは非精製形態で投与された場合に
はワクチンとしての効果が弱くなる可能性があるという
問題点があるが、DNAワクチンを使用する場合にはこ
のような問題点がない。
【0035】
【実施例】以下の実施例により本発明をさらに具体的に
説明するが、本発明は実施例によって限定されることは
ない。 (実施例1) <材料および方法>マウス マウスは雄BALB/cマウス(4から8週齢)を日本
SLC社(静岡、日本)から購入したものを用いて、免
疫化およびウイルス投与試験に用いた。マウスは全て、
無菌の食物および水を自由に摂取させた。ウイルスタンパク質発現プラスミド プラスミドpME18S Mは、インフルエンザA/W
SN/33ウイルスの膜タンパク質(membrane protein
(M1))と組み込み膜タンパク質(integral membrane pr
otein(M2))の両方をコードするインフルエンザA/P
R/8RNAセグメント7のcDNAの複数のコピーを
含有する。PME18S NPは、インフルエンザA/
WSN/33ウイルスの核タンパク質をコードする。こ
れらは、名古屋市立大学医学部ウイルス学科のナカジマ
氏により提供された。
【0036】ワクチン調製および免疫化方法 カチオン性リポソーム調製法の詳細は既に報告されてい
る(Gao.X., 1991, Biochem Biophys Res Communicatio
n 179, 280-285)。注入前に、0.15MのPBS(p
H7.2)中のDNAプラスミドをリポソーム溶液と2
7:3の容量比で混合した。これらの混合物をボルテッ
クスし、注入した。マウスを2週間隔で3回、経鼻投与
または筋肉内投与により免疫化した。経鼻投与の場合に
は、マウスはジエチルエーテル麻酔下において、1頭当
たりカチオン性リポソームを有する30μlの滅菌PB
S中の10megの発現プラスミドDNAを投与するこ
とによって免疫化した。筋肉内投与の場合には、既に報
告されているように、マウスの誹腹筋内にDNAワクチ
ンを注入した。免疫前および3回目の免疫の1週間後に
血液試料を採取した。3回目の免疫の2週間後にDTH
応答およびCTLアッセイを行った。
【0037】ウイルス インフルエンザA/WSN/33ウイルスは国立衛生研
究所の微生物学科のナカジマ氏から提供された。インフ
ルエンザA/PR/8ウイルスは、田代真人博士(国立
予防衛生研究所ウイルス第一部)から提供された。ウイ
ルスは感染したMDCK細胞から回収し、プラーク法で
力価を測定した。インフルエンザA/WSN/33ウイ
ルスの力価は×107PFU/μLであり、インフルエ
ンザA/PR/8ウイルスの力価は×107PFU/μ
Lであった。
【0038】組み換えタンパク質およびペプチド pME18S−MおよびpME18s−NPからのイン
フルエンザMおよびNPタンパク質をコードするDNA
を、PCRにより増幅した。PCR産物をpGEX−3
X(Pharmacia Biotech)にダイレクトクローニングに
よって挿入した。PGEX−infMおよびNPは、大
腸菌JM101に形質転換した。精製したinfMおよ
びNP融合タンパク質を細菌発現システムによって得
た。CTLアッセイに用いるペプチドとして、NPの配
列はTYQRTRALV、Mペプチドの配列は、YRK
EQQNAVDVDDを使用した。これらは、酸性また
は塩基性のアミノ酸がリッチな配列を主に合成し、使用
した。純度は95%以上である。
【0039】抗原特異的抗体および全IgG、Mを用い
るELISA ELISAは既に報告されている通り行った。血液試料
を免疫前および三回目の免疫の1週間後に回収し、−4
0℃で保存した。10μg/mlの組み換えMまたはN
Pタンパク質を96マイクロウエルプレート(Nunc, Ro
skilde, Denmark)上にコートし、ウエルをブロッキン
グ溶液(PBS中1%BSA)で処理した。連続的に希
釈した試料血清を添加し、37℃で2時間反応させた。
0.05%Tween20/PBSで洗浄した後、ウエ
ルを二次抗体(抗マウスIgG抗体)で処理した。特異
的抗体力価を検出可能な最大希釈率の反比例値として表
し、これにより各々の免疫前試料と比較した場合に≧
0.2OD単位のOD415が得られた。全IgGおよび
Mは同じ試料を用いて測定した。プレートに抗マウス普
遍Ig抗体をコートしたものを使用した。全IgGおよ
びM抗体力価は、既知の希釈率の高力価抗血清を用いて
作成した標準曲線との比較により測定した。
【0040】中和化試験 Nasser他が記載しているように(Nasser, EH, 1996, J.
Virol., 70(12), 8639-44)、マイクロタイタープレー
トにウエル当たり104MDCK細胞を接種した。37
℃で10%胎児ウシ血清を含有する増殖培地中で48時
間かけて単層を成長させ、75%以上のコンフルエンシ
ーに達した。ウエルをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)
で洗浄し、MEM中に異なる濃度の血清試料を含む50
μlの溶液と一緒にインキュベートし、0.2%ウシ血
清アルブミンを含むPBSで希釈した50μlのインフ
ルエンザA/PR/8/34を接種した。ウイルスを添
加した30分後に、1m1当たり2μgのトリプシンを
含む100μlのMEMを添加した。さらに48時間
後、単層をクリスタルバイオレットで染色し、CPEを
試験した。
【0041】遅延型過敏応答 DTH反応は、既に報告されているフットパッド膨潤試
験法を用いて分析した。三回目の免疫の2週間後に、マ
ウスの各々のフットパッドに不活化インフルエンザA/
PR/8またはA/WSN/38を40μg注入した。
24時間後、フットパッド膨潤の広がりを、ピーコック
ダイアル厚さゲージ(オザキ社、東京、日本)を用いて
注入前および注入後のフットパッドの厚さの差として測
定した。コントロールマウスにはマッコウクジラのミオ
グロビンを注入した。
【0042】CTLアッセイ 免疫化マウスおよび未処理マウスから単離した脾臓細胞
を、InfNPまたはInfM1ペプチドをパルスした
放射同質遺伝子脾臓細胞の存在下で5日間培養した。6
時間クロム放出アッセイにおいてInfNPまたはIn
fM1ペプチドをパルスしたP815マストロサイトー
マ細胞(H−2d)のエフェクター細胞に仲介された溶
解によってCTL活性を測定した。E/T比率は、5:
1〜80:1であった。特異的51Cr放出の百分率は、 100×(実験による放出−自発による放出)/(最大
放出−自発放出) として計算した。
【0043】ウイルス投与 ジエチルエーテル麻酔下において、24−Gauge動
物フィーディングステンレススチール(Popper)を用い
てインフルエンザA/WSN/33ウイルス(80μl
中4.6×106PFU)を気管内投与によって同時に
感染させた。
【0044】サイトカインELIスポットアッセイ サイトカインELIスポットアッセイは既に報告されて
いる通り行った(Shirai, 1993, J.Immunol. 150(3), 7
93-799)。三回目の免疫の7日後に、細胞を脾臓、気管
近傍、鼡径部、または大動脈近傍リンパ節から単離し
た。5×106細胞/ウエルから始まる単一の細胞懸濁
物の連続的な3倍ずつの希釈物を、10μg/mlのR
10Iの存在下または非存在下において5%CO2、3
7℃で12時間インキュベートした。スポットを各ウエ
ルで計測し、希釈率を使用して、1試料当たりのサイト
カイン分泌細胞の総数を計算した。データ分析 値は全て平均値±SEMで表した。実験データおよびコ
ントロールの統計分析はtwo-tailed Studentのt試験ま
たはone-way ANOVAを用いて行った。
【0045】<結果>血清中の抗原特異的抗体ELISAの結果 血液試料は三回目の免疫の7日後に回収した。死滅した
APR/8ウイルスに対する抗体力価をELISAで分
析した。得られた結果を以下の表1に示す。
【0046】
【表1】
【0047】Mタンパク質特異的なIgGに関しては、
pME18SinfMの筋肉内投与および経鼻投与にお
いて、9.25および8.7とそれぞれ抗原特異的抗体
の誘導が示された。一方、CFAと不活化インフルエン
ザウイルスをip投与した場合には、13.6と非常に
高い値を示した。同様に、pME18SinfNPに関
しては、NPの筋肉投与および経鼻投与で高い抗体価が
認められた。全IgG及びIgMに関しては、不活化イ
ンフルエンザウイルスとCFAをipした群において非
常に高い値が認められた。これに対してDNAワクチン
を筋肉内投与または経鼻投与した群においては、Ig
G、IgMとも中程度の抗体産生であった。
【0048】インフルエンザ抗原に対するフットパッド
膨潤応答 3回目の免疫の2週間後に不活化インフルエンザウイル
スをフットパッドに注入し、その反応の結果を測定し
た。結果を表2に示す。
【0049】
【表2】
【0050】表2から分かるように、pME18S M
の筋肉内投与および経鼻投与においては、コントロール
と比較して、有意に膨潤応答が認められた。NPタンパ
ク質に関しても同様の膨潤応答が認められた。これに対
し、CFAプラス不活性化PR8に関しても膨潤応答が
認められた。一方、コントロールとして免疫したミオグ
ロビンタンパク質は免疫した群に対してのみミオグロビ
ン特異的フットパッド膨潤が認められた。
【0051】中和化試験 中和化試験の結果を表3に示す。
【0052】
【表3】
【0053】CTLアッセイ CTLアッセイは、3回免疫したマウスの脾臓細胞を取
り出し、標的としてMペプチドをパルスしたP815細
胞を用いた。CTLアッセイの結果は図1に示す。図1
から分かるように、陽性コントロールであるPR8に感
染したマウスより取り出した脾臓細胞に関しては非常に
高いCTL値を示した。これに対し、M、NPタンパク
質を使用したDNAプラスミドを経鼻および筋肉内投与
した群に関しても同様に、50〜60%程度の免疫の反
応が認められた。これに対し、不活性化PR8ウイルス
と一緒のCFAをi.p.投与した群に関しては30%
程度の比較的低い値を示した。これらの結果から、イン
フルエンザMまたはNP発現プラスミドは高レベルのC
TL応答を含むことが結論付けられた。
【0054】サイトカインELIスポットアッセイ ELIスポットアッセイを脾臓および各リンパ節につい
て行った結果を表4に示す。
【0055】
【表4】
【0056】表4の結果から分かるように、経鼻免疫で
はMALTを中心の分布が確認され、筋肉内投与におい
ては大腿リンパ節に抗原特異的リンパ球が集積してい
た。
【0057】WSNおよびPR8ウイルス投与 WSNウイルスおよびPR8について、5倍のLD50
で経鼻投与し、その結果をまとめた。得られた結果を図
2および図3に示す。Mの経鼻投与群においては、WS
Nの投与において非常に高い80%という生存率であっ
た。これに対し、CFAWSNに関しては30%前後と
比較的低い生存率であった。コントロール群に関しては
全ての死亡を確認した。PR8の感染の実験に関して
は、Mにおいてやや高い傾向がみられ、60%程度の生
存率が認められた。これに対し、CFAアジュバンドお
よびコントロールに関しては、ほとんど全てが死亡し
た。
【0058】(実施例2) <材料および方法>実験動物 雄BALB/cマウス(6〜8週齢)を日本SLC社
(静岡、日本)から購入し、無菌食物および水を自由に
摂取させて飼育した。
【0059】ウイルスタンパク質発現プラスミド及び抗
pME18S−M及びpME18S−NP発現プラスミ
ドは、pME18S発現ベクター(Casares, S. et a
l., 1997, J. Exp.Med. 186, 1481-1486)とインフルエ
ンザDNAを用いて構築した。インフルエンザ株A/P
R/8/34由来のM及びNP領域をpME18S中に
別々に挿入した。蛋白質の発現はウエスタンブロットに
より確認した。A/PR/8/34株のNP遺伝子のD
NAワクチン(A/pCMV−V1NP)はC.Bona, M
t.Sinai Hospital, NY1から提供された。抗HA(C1
79)及び抗−Mモノクローナル抗体(C111)はタ
カラバイオメディカル社(東京、日本)から購入した。
【0060】リポソームの調製 クロロホルム中の3β[N−(N7’,N7’−ジメチ
ルアミノエタン)カルバモイル]コレステロール(DC
−Chol)及びジオレオイルホスファチジルエタノー
ルアミン(DOPE)の混合物を乾燥し、真空乾燥し、
滅菌HEPES緩衝液(pH7.8)に再懸濁した。水
和した後、分散物を超音波処理し、平均粒径150から
200nmを有するリポソームを形成した(Casares,
S. et al., 1997, J. Exp.Med. 186, 1481-1486;Chen,
Z et al., 1999, Vaccine 17, 653-659;及びToda, S.
et al., 1997, Immunology 92, 111-117)。塗布前に、
0.15mlのPBS(pH7.2)中の適量のDNA
プラスミドを17:3の体積比で上記リポソーム溶液と
混合した。これらの混合物をボルテックスし、露出した
皮膚に塗布した。
【0061】ワクチン調製および動物の処理 経鼻(i.n.)(Shirai, A et al., 1993, J.Immunol. 1
50, 793)及び筋肉内(i.m.)(Okada,E et al., 1997,
J.Immunol. 159, 3638-3647)投与の詳細は既報の通り
行った。局所投与(t.a.)は以下の通り行った。マウス
(6〜8週齢)はネンブタール(ネンブタールナトリウ
ム溶液、Abbott Laboratories, NorthChicago, Illinoi
s, U.S.A.)で麻酔した。背中の全毛髪を剥がし、70
%エタノールで消毒した。次に、即効性接着剤(AlonAl
fa, TOA,日本)をガラススライド上に塗り、約0.5c
2を覆い、腰部付近のマウスの背中にくっつけた。2
0〜30秒後に、スライドを剥ぎ取り皮膚のケラチン層
を除去した。20〜30μlの生理食塩水に溶解した1
0〜100μgのDNA発現プラスミドの溶液を新たに
露出した皮膚領域に塗布し、免疫を行った。この操作は
実験の0日目、7日目及び14日目に行った。また、毛
髪又は表皮ケラチン細胞を除去することなくDNAワク
チンを塗布する実験も行った(Lamb,R.A. et al., 198
1, Virology112, 746-751)。
【0062】試料の回収 免疫の前、及び最後の接種から7日目に、血液および糞
抽出物を抗体測定のために採取した(Bukawa,H et al.,
1995, Nat.Med. 1, 681-685; Clerici,M et al., 199
1, J.Immunol. 146, 2214-2219;及び Davis,H.L. et a
l., 1993, Hum.Mol.Genet. 2, 1847-1851)。血液は、
マウスをイソフルランで麻酔しつつ、ヘパリン化したNa
telsonキャピラリーチューブ(Baxter Healthcare Corp
oration, McGaw Park, IL)を用いて眼窩後方血管叢か
ら回収した。糞抽出物の試料は既報の通り調製した(Da
vis,H.L. et al., 1993, Hum.Mol.Genet. 2, 1847-185
1)。簡単に説明すると、100mgの糞ペレットを1
mlのリン酸緩衝食塩水(PBS)と混合した後、試料
をボルテックスし、15分間静置し、全物質が均一に懸
濁するまで再撹拌し、12,000rpmで遠心した。
上清を回収しアッセイに使用するまで20℃で保存し
た。
【0063】ウイルス マウスに適合したインフルエンザA/PR/8/34
(H1N1)を本実施例で使用した。ウイルスは感染し
たMadin-Darby canine 腎臓(MDCK)細胞から回収
し、プラーク形成法で力価を測定した。
【0064】組み換えタンパク質およびペプチド インフルエンザMおよびNP遺伝子のほぼ全長をコード
するDNAフラグメントを、pME18S−Mおよびp
ME18s−NPからポリメラーゼ連鎖反応(PCR)
により増幅した。PCR産物をpGEX−3X(Pharma
cia Biotech)にダイレクトクローニングにより挿入し
た。pGEX−MおよびpGEX−NPを大腸菌JM1
01に形質転換した。精製したインフルエンザM蛋白質
およびNP蛋白質を細菌発現システムにより得た。CT
Lアッセイを行う際には、NP蛋白質としてペプチドT
YQRTRALVを、M1蛋白質としてペプチドKAV
KLYRKLKREを、M2蛋白質としてペプチドYR
KEQQSAVDADDを使用した。ペプチドはペプチ
ド合成機(Shimazu Corp., 東京、日本)で合成した。
これらのペプチドは塩基性及び酸性アミノ酸の両方を含
む(Atassi, M.Z. 1975, Immunochem. 12, 423-438)。
【0065】ELISAによる抗原特異的抗体アッセイ ELISAは既に報告されている通り行った(Okada,E
et al., 1997, J.Immunol. 159, 3638-3647;及びOkud
a,K et al., 1995, AIDS Res. Hum. Retrov. 11, 933-9
43)。10μg/mlの組み換えM、NPタンパク質又
はマッコウクジラミオグロビン(Okuda,K et al., 197
9, J.Immunol. 123, 182-188)、並びに5μg/mlの
M1、M2及びNP合成ペプチドを96ウエルプレート
(Nunc,Roskilde, Denmark)上にコートし、ウエルをブ
ロッキング溶液(PBS中1%ウシ血清アルブミン(B
SA))で処理した。連続的に希釈した試料血清を添加
し、37℃で2時間反応させた。0.05%Tween
20/PBSで洗浄した後、ウエルをセイヨウワサビペ
ルオキシダーゼ(HRP)標識抗マウスIgG抗体(Ph
arMingen, San Diego, CA)で処理した。糞IgA抗体
の検出のためには、抗マウスIgA及びHRP−標識抗
−ヤギIgG抗体(Sigma)を各々二次抗体及び三次抗
体として使用した。特異的抗体力価を検出可能な最大希
釈率の反比例値として表し、これにより各々の免疫前試
料と比較した場合に≧0.2OD単位のOD415が得ら
れた。
【0066】サイトカインのアッセイ 鼠径リンパ腺又は膝窩リンパ腺からの200万個のリン
パ球を、照射(30Gy)した5μgのMペプチド(K
AVKLYRKLKRE)の存在下でインビトロで再刺
激した。24時間後、培養上清中のIL−4をIL−4
特異的ELISAで定量した。IL−4 ELISAで
は、上清を回収し、モノクローナル抗体(mAb)、B
VD6−1011(抗IL−4、PharMingen, San Dieg
o, CA)を補足剤として使用した。次いで、BVD6−
24G2−ビオチン(PharMingen)をビオチニル化発色
抗体として使用した。IFN−γ ELISAでは、4
8時間培養物の上清を回収し、モノクローナル抗体(m
Ab)、R4−6A2(抗IFN−γ)を補足剤として
使用した。XMG1.2−ビオチン(PharMingen)も使
用した。アビジン結合アルカリホスファターゼを発色ア
ッセイ(Shirai, Aet al., 1994, Cytokine, 6, 329-33
6)で使用して、結合した二次抗体およびヒトサイトカ
インの存在を検出した。リンフォカインの濃度は組換え
マウスIFN−γ又はIL−4(共にPharMingenから)
について作製した標準曲線を用いて測定した。
【0067】遅延型過敏(DTH)応答 DTH応答は、既に報告されているフットパッド膨潤試
験法を用いて分析した(Ishii, N et al., 1997, AIDS
Res. Hum. Retrov. 13, 1421-1428;及びOkuda,K et a
l., 1995, AIDS Res. Hum. Retrov. 11, 933-943)。三
回目の免疫の2週間後に、マウスの各々のフットパッド
に熱不活化インフルエンザA/PR/8/34またはA
/WSN/33を約2μg注入した。24時間後、フッ
トパッド膨潤の広がりを、ピーコックダイアル厚さゲー
ジ(オザキ社、東京、日本)を用いて注入前および注入
後のフットパッドの厚さの差として測定した。コントロ
ールマウスにはマッコウクジラミオグロビンを注入し
た。
【0068】CTLアッセイ 脾臓細胞を非免疫マウスから回収した。非免疫マウスは
陰性コントロールとして使用した。約1×106個のリ
ンパ細胞を、NP1、M1又はM2ペプチドでパルスし
た同質遺伝子脾臓細胞でインビトロで再刺激した。5日
間培養後、これらの脾臓細胞の細胞毒活性をペプチドパ
ルスした標的細胞を用いる6時間51Cr放出アッセイ
により測定した(Clerici, M. et al., 1991, J.Immuno
l. 146,2214-2219)。標的細胞は、同一の蛋白質でパル
スしたp815細胞(H−2d)を用いて調製した。特
異的51Cr放出の百分率は、100×(実験による放
出−自発による放出)/(最大放出−自発放出)として
計算した。培地単独又は培地+5%Triton X-100でイン
キュベートした標的細胞を使用して各々自発放出および
最大放出を測定した。
【0069】ウイルス投与 軽いジエチルエーテル麻酔下において、マウスを24−
Gauge動物フィーディングステンレススチール(Po
pper&Son, New York, NY)を用いて30μlのPBS
中のインフルエンザA/WSN/33又はA/PR/8
/34の5致死量(LD50)を鼻腔内投与によって同時
に感染させた。
【0070】モノクローナル抗体を用いた防御機構の分
A/PR/8/34投与によるマウスの致死性に対する
CD4+又はCD8+細胞の排除の効果を調べるために、
モノクローナル抗体(Epstein, S.L. et al.,2000, In
t. Immunol. 12, 91-101)を使用した。8から10週齢
のBALBマウスに30μgのDNAワクチンを0日
目、14日目及び28日目に局所投与により免疫化し
た。33日目に、マウスに5LD50のA/PR/8/3
4を投与した。各々100μgの抗CD−8又は抗CD
−4モノクローナル抗体を33日目、35日目及び37
日目にi.p.注入した。次いで、死亡したマウスの百
分率をさらに28日間計測した。
【0071】データ分析 値は全て平均値±標準偏差(SE)で表した。実験デー
タおよびコントロールの統計分析はtwo-tailed Student
のt試験を用いて行い、統計的有意差はp<0.05と
定義した。
【0072】<結果>各経路の免疫による免疫原性の比
本方法による高力価のインフルエンザM特異的IgG抗
体を誘導するのに必要なpME18S−Mの最適投与量
を決定するために、0日目、7日目及び14日目に皮膚
の表面ケラチン細胞または表面層を引き剥がした後に、
マウスに局所的に5、20及び100μgのDNAを投
与した。血清と糞試料を21日目に回収し、抗体価を測
定した。結果を表5に示す。
【0073】
【表5】
【0074】表5に示す通り、20μgのDNAワクチ
ンで、ストリップ法による検出可能な水準の血清インフ
ルエンザ特異血清抗体応答を誘導できることが判明し
た。DNAワクチンにより誘導される免疫応答は各経路
の免疫の間で相違を示した。本実施例で使用した局所投
与免疫を、鼻腔内(i.n.)及び筋肉内(i.m.)
免疫と比較した。局所投与免疫は3カ月後に検出可能な
強い免疫応答およびインフルエンザ特異的免疫応答を誘
導することができた。本方法で誘導された抗体産生のレ
ベルは、鼻腔内(i.n.)又は筋肉内(i.m.)注
入の場合と同様であった。この免疫応答はpGM−CS
Fのリポソームの添加により増加した。これらの結果
は、DNAワクチンの皮膚への局所投与がインフルエン
ザM蛋白質に対する免疫の有用な経路であることを示唆
している。また、皮膚の表面を引き剥がすことなく局所
投与した場合は、100μgのDNAワクチンを投与し
た場合でも、弱い抗体応答しか誘導されなかった。
【0075】局所投与したDNAワクチンに対するサイ
トカイン発現プラスミドの作用を調べるために、20μ
gのpIL−12及び/又はpGM−CSFを30μg
のDNAワクチンと一緒に塗布した。局所投与によりD
NAワクチンを接種すると、高力価のインフルエンザ特
異的血清IgG及びIgAlog2抗体が誘導された。
pIL−12と一緒又はそれなしにpGM−CSFを同
時投与すると抗体産生が増強された。これらの結果は、
pIL−12及びpGM−CSFのこれらサイトカイン
が体液性免疫を増大する効力を有していることを示唆し
ている。対照的に、糞IgA抗体産生については実質レ
ベルが常には得られなかった。
【0076】次に、DNAワクチンにより誘導されるI
gGサブクラスを調べた。血清を回収し、IgGサブク
ラスについて試験した。結果を表6に示す。表6は、血
清中の抗原特異的IgG1及びIgG2aの相対量を示
す。平均IgG1/IgG2a比を、表6と同一の方法
を用いてサイトカイン発現プラスミドを使用する場合と
使用しない場合でワクチンの局所投与によりさらに調べ
た。得られた結果は各々、1.60(pME18S−M
単独)、1.42(pIL−2を使用)、1.53(p
IL−2及びpGM−CSFを使用)および1.84
(pGM−CSFを使用)であった。筋肉内免疫では、
既報の通り(Fan, H. et al., 1999, 9,870-872; Robi
nson, H. L. et al., 1997, J.Infec.Dis. 176, 50-55;
Tamura,S. et al., 1996, J. Imunol. 156; Ulmer, J.
B. et al., 1994, Vaccine. 12,1541-1544;及びUlmer,
J.B. et al., 1993, Science, 259, 1745-1749)、Ig
G2a力価の相対的増加が生じ、Th1型免疫応答への
相対偏差がみられた。対照的に、皮膚への局所投与では
IgG1/IgG2a比のレベルが向上する傾向が見ら
れ、局所投与がTh2型応答を支持していることが示唆
される。
【0077】
【表6】
【0078】フットパッド膨潤応答 次に、局所投与したDNAワクチンが細胞仲介免疫(C
MI)応答を誘導できるかどうかを調べた。インフルエ
ンザ特異的DTH応答を3回目の免疫の1週間後におけ
るフットパッド膨潤応答を用いて分析した。pME18
S−Mを局所投与したマウスは、偽ワクチン(pCMV
なし、又はpCAGGSなし)を投与したマウスよりも
有意に大きい膨潤を示した(表7)。
【0079】
【表7】
【0080】インフルエンザDNAワクチンをpIL−
12又はpGM−CSFと一緒に塗布した場合、DTH
はDNAワクチン単独を投与した場合と比較して有意に
増加した。これらの結果は、pIL−12及びpGM−
CSFがインフルエンザDNAワクチンの塗布により誘
導されるフットパッド膨潤応答の増大においてアジュバ
ンドとしての役割を担うことを示唆している。
【0081】CTLアッセイ CTL応答もDNAワクチンの局所投与により分析し
た。マウスをDNAワクチンでサイトカインプラスミド
と一緒に処理した。最後の免疫化後に、脾臓細胞を回収
し、ペプチドをパルスした同質遺伝子脾臓細胞と一緒に
培養した。図4に示す通り、局所投与によるDNAワク
チンにより実質的レベルのCTLが誘導された。DNA
ワクチンをpIL−12又はpGM−CSFと一緒に同
時投与すると、DNAワクチン単独の場合と比べて、強
いCTL応答が誘導された。NK細胞標的としてYAC
細胞を使用した場合、弱いレベルの溶解のみが観察され
た。これらの結果は、改良した投与により高レベルのイ
ンフルエンザ特異的CTL応答が誘導されることを実証
している。pIL−12及びpGM−CSFの両方でp
ME18S−Mを免疫化すると高レベルのCTL応答が
誘導された(E:T比80:1で60.9±11.0
%)。表皮ケラチン細胞を引き剥がすことなくDNAを
ワクチン接種した場合には、有意なレベルのCTL応答
は生じなかった(E:T比80:1で12.7±2.5
%)。
【0082】サイトカインプロフィール DNAワクチンを単独又はpIL−12又はpGM−C
SFと一緒に局所投与することにより免疫化したマウス
からの脾臓細胞を同質遺伝子ペプチドと一緒に培養した
場合、これらの細胞のサイトカイン産生のレベルを調べ
た。結果を表8に示す。
【0083】
【表8】
【0084】表8に示す通り、IFN−γとIL−4の
有意な増加が、DNAワクチンを投与しないマウスと比
較して、DNAワクチンを局所投与により免疫化したマ
ウスで観察された。IL−4産生の増加は、筋肉内免疫
の場合と比較して局所投与の場合の方がIFN−γの増
加よりも高かった。これらの結果は、pME18S−M
プラスミドの局所投与が、筋肉内免疫化と比較してTh
2サイトカイン産生を優先的に活性化することを示唆し
ている。
【0085】インフルエンザAウイルス投与後の生存率 3回目の免疫化の後に、5LD50のA/PR/8/34
ウイルスを投与した。生存率の結果を図5に示す。図5
に示す通り、マウスをpME18S−M単独で局所投与
して免疫した後、A/PR/8/34を投与した場合、
65%のマウスが生存した。pME18S−Mで筋肉内
免疫したグループでは、71%のマウスが防御された
(n=14)。インフルエンザ遺伝子のNP+M(Epst
ein, S.L.et al., 2000, Int. immunol. 12, 91-101)
又はNP( Ulmer, J.B. et al., 1994, Vaccine. 12,
1541-1544;及びUlmer, J.B. et al., 1993, Science, 2
59,1745-1749)から構築したDNAワクチンの免疫はイ
ンフルエンザウイルス投与に対して防御性であるとの報
告が複数ある。pME18S−MおよびA/pCMV−
V1NPの両方の局所投与免疫は、A/PR/8/34
投与に対して良好な防御(74%)を示し、この防御活
性は、pGM−CSFを添加した場合には82%まで増
大した。不活化A/PR/8/34とpGM−CSFを
局所投与により免疫した場合(n=17)、マウスの生
存率は15であった。これらの結果は、DNAワクチン
の局所投与により、A/PR/8/34投与に対する高
レベルの防御免疫が誘導されることを示唆している。局
所投与により誘導される防御免疫の機構を解明するため
に、A/PR/8/34投与の期間中にCD8+又はC
D4+細胞を排除することを試みた。CD8+細胞の排除
によりA/PR/8/34投与に対する防御活性を大き
く減少したが、CD4+細胞の排除は生存率にあまり影
響しなかった。この結果をCTL誘導のデータ(図4)
と合わせて考えると、CD8+CTL応答がpME18
S−Mによる局所投与免疫により誘導される防御活性で
重要な役割を担っていると言える。
【0086】
【発明の効果】本発明により、インフルエンザウイルス
に対する高い免疫能を被験者に付与することができ、ま
たインフルエンザウイルスの抗原変異によって影響を受
けることが少ない普遍的なインフルエンザワクチンを提
供することが可能になった。
【0087】
【配列表】SEQUENCE LISTING <110> Kenji Okuda et al <120> Influenza vaccine <130> A01411MA <160> 3
【0088】
【0089】
【0090】 <210> 3 <211> 13 <212> PRT <213> Artificial Peptide <400> 3 Tyr Arg Lys Glu Gln Gln Ser Ala Val Asp Ala Asp Asp 5 10
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、CTLアッセイの結果を示す。CTL
アッセイは、3回免疫したマウスの脾臓細胞を取り出
し、Mペプチドを添加したP815細胞と一緒に5日間
培養した後のエフェクター細胞を使用した。標的とし
て、ペプチドをパルスしたP815細胞を用いた。E:
T比率は、5:1、20:1、80:1である。
【図2】図2は、WSNウイルス投与試験の結果を示
す。WSNウイルスの5倍のLD50を経鼻投与し、死
亡率を時間とともに示した。各群は10頭のマウスから
成る。
【図3】図3は、PR8ウイルス投与試験の結果を示
す。PR8ウイルスの5倍のLD50を経鼻投与し、死
亡率を時間とともに示した。各群は10頭のマウスから
成る。
【図4】図4は、インフルエンザMタンパク質ペプチド
抗原に対するBALB/cマウスのCTL応答を示す。
各免疫グループ由来のリンパ細胞をインフルエンザペプ
チドでパルス同質遺伝子脾臓細胞を使用して5日間再刺
激した。ペプチドでパルスしたp815細胞を標的とし
て使用した。aYAC細胞をNK活性の標的細胞として
使用した。データは5〜6頭のマウスの平均力価±SE
である。対照のリンパ細胞は免疫していないマウスから
のものである。n:使用したマウスの数;*はDNAワ
クチンを投与したグループと対照の免疫していないグル
ープとの間で有意差があることを示す(p<0.0
5)。
【図5】図5は、インフルエンザDNAワクチンを免疫
したマウスの生存率を示す。第0日目、14日目及び2
8日目に、各グループのマウスを30μgのpME18
S−M及び/又はA/pCMV−V1NPで免疫し、場
合によりリポソームまたは20μgのpGM−CSFを
添加した。42日目に、5LD50のA/PR/8/34
を投与した。モノクローナル抗体は2日毎にi.v.注
入した。マウスの生存率を計測した。上向きの矢印はA
/PR/8/34の投与を示し、下向の矢印は抗体の注
入を示す。
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) // C07K 16/10 C12R 1:93) C12N 15/09 ZNA A61K 37/02 (C12N 15/09 ZNA C12N 15/00 ZNAA C12R 1:93) C12R 1:93)

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 インフルエンザウイルスのマトリックス
    プロテインまたはその抗原性エピトープをコードする塩
    基配列を有するDNAを含むインフルエンザワクチン。
  2. 【請求項2】 インフルエンザウイルスのマトリックス
    プロテインまたはその抗原性エピトープをコードする塩
    基配列が、インフルエンザウイルスの膜タンパク質と組
    み込み膜タンパク質の両方をコードしている、請求項1
    に記載のインフルエンザワクチン。
  3. 【請求項3】 DNAがプラスミドDNAである、請求
    項1または2に記載のインフルエンザワクチン。
  4. 【請求項4】 DNAが、インフルエンザウイルスのマ
    トリックスプロテインとは異なる別の1または2以上の
    インフルエンザ抗原をコードする塩基配列をさらに有し
    ている、請求項1から3の何れか1項に記載のインフル
    エンザワクチン。
  5. 【請求項5】 別のインフルエンザ抗原が、ヘマグルチ
    ニン、ニューラミニダーゼおよび核タンパク質から成る
    群から選択される1または2以上のインフルエンザ抗原
    である、請求項4に記載のインフルエンザワクチン。
  6. 【請求項6】 請求項1〜5の何れか1項の記載のイン
    フルエンザワクチンを含む医薬組成物。
  7. 【請求項7】 請求項1〜5の何れか1項の記載のイン
    フルエンザワクチンとリポソームとを配合して成る請求
    項6に記載の医薬組成物。
  8. 【請求項8】 請求項1〜5の何れか1項の記載のイン
    フルエンザワクチンとは異なる別の1または2以上のイ
    ンフルエンザワクチンをさらに含む、請求項6または7
    に記載の医薬組成物。
  9. 【請求項9】 別のインフルエンザワクチンが、ヘマグ
    ルチニン、ニューラミニダーゼおよび核タンパク質から
    成る群から選択される1または2以上のインフルエンザ
    抗原に対するワクチンである、請求項8に記載の医薬組
    成物。
  10. 【請求項10】 請求項1〜5の何れか1項に記載のイ
    ンフルエンザワクチンとは異なる別の1または2以上の
    インフルエンザワクチンと併用するための、請求項1〜
    5の何れか1項に記載のインフルエンザワクチン。
  11. 【請求項11】 経皮投与される、請求項1〜10の何
    れか1項に記載のインフルエンザワクチンまたは医薬組
    成物。
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